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特許7403365金属線材スケール除去方法及び金属線材スケール除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】金属線材スケール除去方法及び金属線材スケール除去装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/04 20060101AFI20231215BHJP
   B24C 3/12 20060101ALI20231215BHJP
   B24C 3/32 20060101ALI20231215BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20231215BHJP
   B24C 1/08 20060101ALI20231215BHJP
   B21C 43/04 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B21B45/04 A
B24C3/12
B24C3/32 B
B24C5/02 B
B24C5/02 C
B24C1/08
B21C43/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058706
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154360
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】松ヶ迫 亮廣
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013991(JP,A)
【文献】特開2016-203192(JP,A)
【文献】特開昭48-101351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/00 - 45/08
B24C 1/00 - 11/00
B21C 37/00 - 43/04;99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじれた金属線材を走行させながら、走行する方向に配置された複数個のブラストガンから砥粒液を投射して、金属配線の表面のスケールをウェットブラストにより除去する方法であって、
前記複数個のブラストガンを、下記のブラストガン配置条件を満たすように配置する、金属線材のスケール除去方法。
〔ブラストガン配置条件〕
最初にウェットブラストを行う第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、第2以降のブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を求め、
各ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて、各ブラストガンの投射位置角度を求める。
次に、各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べた時の、
1番目から任意番目までの各ブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度に、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度を算出し、1番目から任意番目までの各ブラストガンの算出した角度の中での最大値を求める。
そして、上記最大値が、
任意番目のブラストガンの次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度から、任意番目のブラストガンの次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる評価角度以上となるようにする。
(ただし、任意番目が最終番目のとき、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンは1番目のブラストガンとし、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンの投射位置角度は360°とする)
【請求項2】
前記単位距離当たりの線材ねじれ角度が範囲を有するときに、前記ブラストガンの必要最小個数を下記(1)~(4)に沿って決定する、請求項1に記載の金属線材のスケール除去方法。
(1)ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の積算値が360°を超えるブラストガンの最小個数をブラストガンの仮個数とし、
上記仮個数のブラストガンを用いて、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たし、かつ第1ブラストガンからの距離の小さい順とブラストガンの投射位置角度の小さい順とを一致させた配置が、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最大値のときに前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行う。
(2)前記試算の結果、前記ブラストガン配置条件を満たさない場合、第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンよりも更に遠くにブラストガンを一つ追加する。
このとき追加するブラストガンは、
単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、
第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度と、
追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる角度とが、等しくなるように配置する。
(3)前記ブラストガンを一つ追加した配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を再度行う。
(4)単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすまで、前記(2)および(3)を繰り返し行う。
【請求項3】
ねじれた金属線材を走行させながら、走行する方向に配置された複数個のブラストガンから砥粒液を投射して、金属配線の表面のスケールをウェットブラストにより除去する装置であって、
前記複数個のブラストガンが、下記のブラストガン配置条件を満たすように配置された、金属線材のスケール除去装置。
〔ブラストガン配置条件〕
最初にウェットブラストを行う第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、第2以降のブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を求め、
各ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて、各ブラストガンの投射位置角度を求める。
次に、各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べた時の、
1番目から任意番目までの各ブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度に、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度を算出し、1番目から任意番目までの各ブラストガンの算出した角度の中での最大値を求める。
そして、上記最大値が、
任意番目のブラストガンの次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度から、任意番目のブラストガンの次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる評価角度以上となるようにする。
(ただし、任意番目が最終番目のとき、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンは1番目のブラストガンとし、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンの投射位置角度は360°とする)
【請求項4】
前記単位距離当たりの線材ねじれ角度が範囲を有するときに、前記ブラストガンの必要最小個数が下記(1)~(4)に沿って決定された、請求項3に記載の金属線材のスケール除去装置。
(1)ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の積算値が360°を超えるブラストガンの最小個数をブラストガンの仮個数とし、
上記仮個数のブラストガンを用いて、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たし、かつ第1ブラストガンからの距離の小さい順とブラストガンの投射位置角度の小さい順とを一致させた配置が、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最大値のときに前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行う。
(2)前記試算の結果、前記ブラストガン配置条件を満たさない場合、第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンよりも更に遠くにブラストガンを一つ追加する。
このとき追加するブラストガンは、
単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、
第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度と、
追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる角度とが、等しくなるように配置する。
(3)前記ブラストガンを一つ追加した配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を再度行う。
(4)単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすまで、前記(2)および(3)を繰り返し行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材スケール除去方法及び金属線材スケール除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延後や熱処理後の金属線材の表面には、酸化スケールが生成し付着している。金属線材は寸法精度や機械特性の向上を目的として、伸線ダイスを用いた引抜加工が施されることがある。この引抜加工の前に、前記酸化スケールを除去(デスケーリング)する必要がある。
【0003】
前記デスケーリングの方法として、一般的に酸洗が広く行われている。酸洗は、コイル状に巻かれた金属線材を酸液槽に浸漬して酸化スケールを除去する方法である。例えば酸液の酸の種類や濃度、温度を最適化することで、様々な組成の酸化スケールを効率よく除去することができる。しかし酸洗は、劣化した酸液の廃棄にコストが掛かること、および酸の蒸発により作業環境が汚染されることなどの課題がある。
【0004】
上記酸洗以外のデスケーリングの方法として、コイル状の金属線材を巻き出し、直線状に引き伸ばして走行させ、走行する金属線材の表面に硬質粒子を高速で衝突させて酸化スケールを除去する、ブラスト方式のデスケーリングが挙げられる。ブラスト方式のデスケーリングとして、羽根車の遠心力により球状の粒子を投射するショットブラストが挙げられる。しかしこの方法では、地鉄に薄く密着した酸化スケールは完全に除去できないことや、砕けた粒子が粉じんとなって作業環境を汚染することなどの課題がある。
【0005】
上記ショットブラスト以外のブラスト方式のデスケーリング方法として、水と硬質粒子を均一に混合した混合物(スラリー)を、圧縮空気により金属線材の表面に噴射するウェットブラストが挙げられる。ウェットブラストは、使用する粒子を適切に選定することによって地鉄に薄く密着した酸化スケールを除去できること、および水分によって粒子の飛散が抑えられるため、粉じんが発生しにくいことなどの利点がある。
【0006】
ウェットブラストを行った技術として、例えば特許文献1には、ブラスト装置により投射材を投射し、鉄系材料からなる被加工物のスケールの除去を行うスケール除去方法であって、ビッカース硬度がHV300~600の範囲の未使用の前記投射材を前記ブラスト装置に装填する投射材装填工程と、前記ブラスト装置の操業により該ブラスト装置内の投射材の粒子径分布を所定の粒子径分布となるように調整する粒子径分布調整工程と、前記粒子径分布調整工程後の投射材を被加工物の表面に投射するスケール除去工程と、を備え、前記粒子径分布調整工程後の投射材の粒子径分布が、粒子径300μmを超える第1粒体と、粒子径300μm以下で75μmを超える第2粒体と、粒子径75μm以下の第3粒体と、に区分したときに、(第2粒体の比率)≧(第1粒体の比率)≧(第3粒体の比率)を充足する、スケール除去方法が示されている。
【0007】
特許文献2には、鋼材の機械的表面処理方法であって、ショットブラストにより鋼材のディスケ-ル、錆の除去あるいは表面あらしをする工程において、硬さが被処理材の表面硬度より高いHv900~1000、ヤング率が6.37×10~9.8×10MPaであるアモルファス微粒子を被処理材の鋼板あるいは型鋼材の外周方向より該被処理材の表面にむけてブラストする鋼材の表面処理方法が示されている。また、特許文献3には、金属材料の表面に、ノズルから高速液噴流を噴射・衝突させ、キャビテーション気泡の作用により表面処理を行う金属材料製造プロセスの表面処理装置において、水中高速水噴流の噴流軸方向に対する衝撃圧分布曲線の第2ピークを中心とする噴流の領域を衝突させてスケール除去するように構成されていることを特徴とする金属材料製造プロセスにおける表面処理装置が示されている。
【0008】
更に特許文献4には、巻かれた金属線材を前記金属線材の軸回りに螺旋状にねじれた状態に引き出して、このねじれに基づいて前記金属線材を前記軸回りに回転させながら当該金属線材の軸方向に沿って走行させ、前記軸回りに回転しながら前記軸方向に沿って走行する前記金属線材に連続的に処理を施す金属線材連続処理装置であって、ウェットブラストにより、走行する前記金属線材からスケールを除去するスケール除去部と、スケールが除去されて走行する前記金属線材に皮膜を形成する皮膜形成部とを備え、前記スケール除去部は、液体と研磨剤との混合液を走行している前記金属線材に圧縮気体で噴射するブラストガンを、走行する前記金属線材の前記軸方向に沿って複数並べて配置するとともに、前記走行方向に沿って並ぶ各ブラストガンの間隔と、前記ブラストガンの前記金属線材の前記軸回りの噴射角度とが、全ての前記ブラストガンからの前記混合液の噴射が終わる所定の前記金属線材の走行位置において、前記軸回りに回転しながら前記軸方向に沿って走行している前記金属線材の各ブラストガンから混合液が噴射された少なくとも一つずつの領域が、前記金属線材の軸回りに略全周に渡って略均等に分散するように設定されていることを特徴とする金属線材連続処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第16/174897号公報
【文献】特開2003-211360号公報
【文献】特開平11-189886号公報
【文献】特開2019-013991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
熱間圧延を行って得られた金属線材は、巻き取り機でコイル状に巻き取られる。そして酸洗、伸線加工のために、コイル状の金属線材を巻き出し、直線状に引き伸ばして走行させるときに、コイル状の金属線材を引き出す方法によって、走行する金属線材にねじれが生じることがある。上記ねじれとは、金属線材の軸心の周方向のねじれ、例えば、走行開始時に金属線材の時計で12時の位置が、1m走行後に時計で3時の位置にまで移動する金属線材の変形をいう。なお、この場合、単位距離1m当たりの線材ねじれ角度は90°である。
【0011】
金属線材に上記ねじれが生じている場合、ウェットブラストを行っても、酸化スケールが除去されず、残存する場合がある。特許文献1~3に開示のウェットブラストは、金属線材がねじれることを前提にウェットブラストガンを配置していないため、酸化スケールが残存することが考えられる。特許文献4に開示のウェットブラストは、金属線材がねじれることを前提にブラストガンを配置した技術であるが、酸化スケールを十分に除去することは難しいと思われる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、金属線材に生じる線材ねじれを考慮して、金属配線の全周にわたってスケールを除去することのできる、金属線材のスケール除去方法および金属線材のスケール除去装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様1は、
ねじれた金属線材を走行させながら、走行する方向に配置された複数個のブラストガンから砥粒液を投射して、金属配線の表面のスケールをウェットブラストにより除去する方法であって、
前記複数個のブラストガンを、下記のブラストガン配置条件を満たすように配置する、金属線材のスケール除去方法である。
〔ブラストガン配置条件〕
最初にウェットブラストを行う第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、第2以降のブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を求め、
各ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて、各ブラストガンの投射位置角度を求める。
次に、各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べた時の、
1番目から任意番目までの各ブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度に、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度を算出し、その中での最大値を求める。
そして、上記最大値が、
任意番目の次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度から、隣接する次の番目のブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる評価角度以上となるようにする。
(ただし、任意番目が最終番目のとき、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンは1番目のブラストガンとし、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンの投射位置角度は360°とする)
【0014】
本発明の態様2は、
前記単位距離当たりの線材ねじれ角度が範囲を有するときに、前記ブラストガンの必要最小個数を下記(1)~(4)に沿って決定する、態様1に記載の金属線材のスケール除去方法である。
(1)ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の積算値が360°を超えるブラストガンの最小個数をブラストガンの仮個数とし、
上記仮個数のブラストガンを用いて、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たし、かつ第1ブラストガンからの距離の小さい順とブラストガンの投射位置角度の小さい順とを一致させた配置が、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最大値のときに前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行う。
(2)前記試算の結果、前記ブラストガン配置条件を満たさない場合、第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンよりも更に遠くにブラストガンを一つ追加する。
このとき追加するブラストガンは、
単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、
第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度と、
追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる角度とが、等しくなるように配置する。
(3)前記ブラストガンを一つ追加した配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を再度行う。
(4)単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすまで、前記(2)および(3)を繰り返し行う。
【0015】
本発明の態様3は、
ねじれた金属線材を走行させながら、走行する方向に配置された複数個のブラストガンから砥粒液を投射して、金属配線の表面のスケールをウェットブラストにより除去する装置であって、
前記複数個のブラストガンが、下記のブラストガン配置条件を満たすように配置された、金属線材のスケール除去装置である。
〔ブラストガン配置条件〕
最初にウェットブラストを行う第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、第2以降のブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を求め、
各ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて、各ブラストガンの投射位置角度を求める。
次に、各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べた時の、
1番目から任意番目までの各ブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度に、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度を算出し、その中での最大値を求める。
そして、上記最大値が、
任意番目の次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度から、隣接する次の番目のブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる評価角度以上となるようにする。
(ただし、任意番目が最終番目のとき、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンは1番目のブラストガンとし、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンの投射位置角度は360°とする)
【0016】
本発明の態様4は、
前記単位距離当たりの線材ねじれ角度が範囲を有するときに、前記ブラストガンの必要最小個数が下記(1)~(4)に沿って決定された、請求項3に記載の金属線材のスケール除去装置である。
(1)ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の積算値が360°を超えるブラストガンの最小個数をブラストガンの仮個数とし、
上記仮個数のブラストガンを用いて、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たし、かつ第1ブラストガンからの距離の小さい順とブラストガンの投射位置角度の小さい順とを一致させた配置が、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最大値のときに前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行う。
(2)前記試算の結果、前記ブラストガン配置条件を満たさない場合、第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンよりも更に遠くにブラストガンを一つ追加する。
このとき追加するブラストガンは、
単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、
第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度と、
追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる角度とが、等しくなるように配置する。
(3)前記ブラストガンを一つ追加した配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を再度行う。
(4)単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすまで、前記(2)および(3)を繰り返し行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属線材に生じる線材ねじれを考慮して、金属配線の全周にわたってスケールを除去することのできる、金属線材のスケール除去方法および金属線材のスケール除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、参考例の投射領域を示したグラフである。
図2図2は、比較例1の投射領域を示したグラフである。
図3図3は、比較例2の投射領域を示したグラフである。
図4図4は、実施例1の投射領域を示したグラフである。
図5図5は、実施例2の投射領域を示したグラフである。
図6図6は、実施例3の投射領域を示したグラフである。
図7図7は、実施例4において、単位距離当たりの線材ねじれ角度が130°でブラストガンが7本の場合の投射領域を示したグラフである。
図8図8は、実施例4において、単位距離当たりの線材ねじれ角度が130°でブラストガンが8本の場合の投射領域を示したグラフである。
図9図9は、実施例4において、単位距離当たりの線材ねじれ角度が130°でブラストガンが9本の場合の投射領域を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、金属線材に生じる線材ねじれを考慮して、金属配線の全周にわたってスケールを除去することのできる、金属線材のスケール除去方法および金属線材のスケール除去装置を実現すべく鋭意検討した。その結果、下記の通り、スケール除去に使用するブラストガンを、線材ねじれを考慮して適正に配置すればよいことを見出した。以下、本発明の実施形態に係る金属線材のスケール除去方法および金属線材のスケール除去装置について説明する。
【0020】
(金属線材のスケール除去方法)
本発明の金属線材のスケール除去方法は、
ねじれた金属線材を走行させながら、走行する方向に配置された複数個のブラストガンから砥粒液を投射して、金属配線の表面のスケールをウェットブラストにより除去する方法であって、
前記複数個のブラストガンを、下記のブラストガン配置条件を満たすよう配置するところに特徴がある。
〔ブラストガン配置条件〕
最初にウェットブラストを行う第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、第2以降のブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を求め、
各ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて、各ブラストガンの投射位置角度を求める。
そして各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べた時の、
1番目から任意番目までの各ブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度に、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度を算出し、その中での最大値を求める。
そして、上記最大値が、
任意番目の次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度から、隣接する次の番目のブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる評価角度以上となるようにする。
(ただし、任意番目が最終番目のとき、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンは1番目のブラストガンとし、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンの投射位置角度は360°とする)
【0021】
前記角度はいずれも、0°~360°の範囲内での表記である。
【0022】
本発明は、上記の通り、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度が上記条件を満たせばよく、ブラストガンの金属線材に対する軸方向角度、すなわちブラストガンの金属線材の走行方向または走行逆方向に対する傾きは特に限定されず、例えば金属線材の走行方向を正としたときにブラストガンの投射中心線に対して±30°の傾きを有していてもよい。さらに、上記円周方向角度は、金属線材断面における直径で測定されるが、各ブラストガンの投射中心線は、上記直径に対して、なるだけ0°に近いことが望ましいが、±15°の傾きを有していてもよい。
【0023】
金属線材の走行方向において、隣り合うブラストガンの間隔は、上記ブラストガン配置条件を満たすことを前提に、同一であってもよいし、異なっていてもよい。隣り合うブラストガンの間隔は、個々のブラストガンのサイズ等にもよるが、例えば50~1000mmとすることが挙げられる。
【0024】
ブラストガン配置の基準となる、前記第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度は、頂上方向、すなわち時計の12時の方向に限られず、任意の角度とすることができる。また、単位距離当たりの線材ねじれ角度は、例えば1mあたりの線材ねじれ角度で示すことができ、各位置のブラストガンの線材ねじれ角度は、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる。
【0025】
前記ブラストガンの「投射位置角度」とは、第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、金属線材の表面に実際に砥粒液が投射される位置の角度をいう。
【0026】
本明細書において、金属線材に対し、最初にウェットブラストを行うブラストガンを「第1ブラストガン」、次にウェットブラストを行うブラストガンを「第2ブラストガン」と表記し、各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べた時の、投射位置角度が最も小さい「1番目のブラストガン」、投射位置角度が次に小さい「2番目のブラストガン」とは、番号の表記が区別される。
【0027】
ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲は、複数個のブラストガンの間で同一である必要はなく、例えば後記する実施例の通り異なっていてもよい。前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲として、例えば10~130°の範囲であることが挙げられる。
【0028】
本発明の実施形態におけるブラストガン配置条件では、上記の通り、まず、最初にウェットブラストを行う第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、第2以降のブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を求め、各ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて、各ブラストガンの投射位置角度を求める。
【0029】
次に、各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べる。そして、1番目から任意番目までの各ブラストガンについて、上記投射位置角度に、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度をそれぞれ算出する。そして、その中での最大値を求める。
【0030】
次に、任意番目の次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンについて、投射位置角度を求め、この投射位置角度から、上記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる評価角度を求める。
【0031】
そして、上記最大値が、上記評価角度以上となるようにブラストガンを配置する。
【0032】
上記ブラストガンの配置は、第1ブラストガンからの距離の小さい順と、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度の小さい順またはブラストガンの投射位置角度の小さい順とが、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。例えば後記する実施例1に示す通り、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度が、ランダムとなるようブラストガンが配置されることによって、隣り合うブラストガン同士の干渉を抑制できる等の効果を有する。
【0033】
本発明の実施形態において、上記ブラストガン配置条件を満たせば、配置するブラストガンの個数は特に限定されない。ブラストガンの必要最小個数を求める場合には、下記の好ましい実施形態により求めることができる。下記の好ましい実施形態によれば、単位距離当たりの線材ねじれ角度が一定でなく範囲を有する場合に、ブラストガンの必要最小個数を求めることができる。
【0034】
金属線材のスケール除去方法の好ましい実施形態として、単位距離当たりの線材ねじれ角度が範囲を有するときには、前記ブラストガンの必要最小個数を下記(1)~(4)に沿って決定することが挙げられる。
(1)ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の積算値が360°を超えるブラストガンの最小個数をブラストガンの仮個数とし、
上記仮個数のブラストガンを用いて、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たし、かつ第1ブラストガンからの距離の小さい順とブラストガンの投射位置角度の小さい順とを一致させた配置が、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最大値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行う。
(2)前記試算の結果、前記ブラストガン配置条件を満たさない場合、第1ブラストガンから最も離れた位置のブラストガンよりも更に遠くにブラストガンを一つ追加する。
このとき追加するブラストガンは、
単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、
第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度と、
追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる角度とが、等しくなるように配置する。
(3)前記ブラストガンを一つ追加した配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を再度行う。
(4)単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすまで、前記(2)および(3)を繰り返し行う。
【0035】
本発明の実施形態において、単位距離当たりの線材ねじれ角度の範囲は、例えば80~130°とすることができる。
【0036】
前記ブラストガンと金属線材との距離は、砥粒液の量、投射速度にもよるが、例えば20~200mmの範囲とすることができる。
【0037】
前記金属線材として、鋼線材の他、アルミニウム、銅、チタン、またはこれらの合金の線材が挙げられる。金属線材の直径も限定されないが、例えば直径が5~55mmの金属線材を適用することができる。
【0038】
前記砥粒液として、砥粒(研磨材)と例えば水とを混合させたものが挙げられる。該砥粒液を、例えば圧縮空気で、金属線材に対して投射することで、金属線材の表面のスケールを除去できる。上記砥粒(研磨材)の硬度、形状、サイズは、処理前の金属線材の表面性状に応じて適宜決定することができる。上記水には、例えば、金属線材の腐食を抑制することを目的に防錆剤等の添加剤が含まれていてもよい。また、砥粒液中の砥粒(研磨材)の濃度、すなわち砥粒(研磨材)と水の割合も、処理前の金属線材の表面性状に応じて適宜決定することができる。
【0039】
(金属線材のスケール除去装置)
本発明には、金属線材のスケール除去装置も含まれる。該金属線材のスケール除去装置は、ねじれた金属線材を走行させながら、走行する方向に配置された複数個のブラストガンから砥粒液を投射して、金属配線の表面のスケールをウェットブラストにより除去する装置であって、
前記複数個のブラストガンが、下記のブラストガン配置条件を満たすよう配置されたところに特徴を有する。
〔ブラストガン配置条件〕
最初にウェットブラストを行う第1ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を0°としたときの、第2以降のブラストガンの金属線材に対する円周方向角度を求め、
各ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて、各ブラストガンの投射位置角度を求める。
そして各ブラストガンの投射位置角度を小さい順に並べた時の、
1番目から任意番目までの各ブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度に、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度を算出し、その中での最大値を求める。
そして、上記最大値が、
任意番目の次に投射位置角度の大きい次番目のブラストガンの、ブラストガンの金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求めた投射位置角度から、隣接する次の番目のブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる評価角度以上となるようにする。
(ただし、任意番目が最終番目のとき、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンは1番目のブラストガンとし、最終番目のブラストガンの次番目のブラストガンの投射位置角度は360°とする)
【0040】
前記金属線材のスケール除去装置の好ましい実施形態として、前記単位距離当たりの線材ねじれ角度が範囲を有するときには、前記ブラストガンの必要最小個数が下記(1)~(4)に沿って決定される。
(1)ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の積算値が360°を超えるブラストガンの最小個数をブラストガンの仮個数とし、
上記仮個数のブラストガンを用いて、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たし、かつ第1ブラストガンからの距離の小さい順とブラストガンの投射位置角度の小さい順とを一致させた配置が、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最大値のときに、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行う。
(2)前記試算の結果、前記ブラストガン配置条件を満たさない場合、第1ブラストガンから最も離れた位置のブラストガンよりも更に遠くにブラストガンを一つ追加する。
このとき追加するブラストガンは、
単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値のときに、
第1ブラストガンから最も離れた位置にあるブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を加えた角度と、
追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて得られる投射位置角度から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲の半分を引いて求められる角度とが、等しくなるように配置する。
(3)前記ブラストガンを一つ追加した配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすかの試算を再度行う。
(4)単位距離当たりの線材ねじれ角度の最大値において、前記ブラストガン配置条件を満たすまで、前記(2)および(3)を繰り返し行う。
【0041】
上記除去装置における、ブラストガンの配置に関する、好ましい条件を含む詳細については、上記金属線材のスケール除去方法で述べた通りである。
【0042】
本発明の金属線材のスケール除去装置は、金属線材のスケール除去後の工程として、金属線材の表面に被膜を施すための被膜形成装置や、金属線材を所望の線径に引抜き加工する伸線加工装置などと共に設置されていてもよい。また、コイル材が配備されるサプライスタンドと、金属線材のスケール除去装置との間に、サプライスタンドから巻き出された金属線材を直線状に矯正する直線矯正機などが併せて設置されていてもよい。
【0043】
以下では、上記金属線材のスケール除去方法を用いた実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えることも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0044】
(参考例)
まず、参考例として、線材ねじれが生じていない場合に、金属線材の走行方向からみたときに、ブラストガンを千鳥状に配置した構成、および該構成でのブラストガン配置条件の適否の結果を表1に示す。表1および後記の表2~11において、例えばブラストガンNo.1のブラストガンは、第1ブラストガンを示す。表1の構成を、ブラストガンNo.を横軸とし、ブラストガンの投射位置角度を縦軸として、投射領域を示したグラフを図1に示す。図1において、ドットはブラストガンの投射位置角度を示し、ドットの上下に示した線幅は、ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲を示している(以下、図2~9についても同じ)。図1から、参考例によれば、金属配線の全周(0~360°)が投射位置角度で網羅されており、投射されていない領域は存在していない。ただし、この参考例は、線材ねじれを考慮したものではない。
【0045】
【表1】
【0046】
(比較例1)
比較例1は、ブラストガンの配置は上記参考例と同じであって、単位距離当たりの線材ねじれ角度を107°とした例である。この比較例1の構成を表2に示し、投射領域を図2に示す。図2から、107°の線材ねじれを考慮すると、金属線材の周方向において、100~150°近辺と、280~300°近辺に、砥粒液の投射されない領域、すなわちデスケーリングされない領域が存在することがわかる。
【0047】
【表2】
【0048】
(比較例2)
比較例2は、特許文献4の記載と同様の配置とし、単位距離当たりの線材ねじれ角度を80°とした例である。この比較例2の構成を表3に示し、投射領域を図3に示す。図3から、特許文献4の配置では、No.1のブラストガンとNo.12のブラストガンとの間に、投射されない領域、すなわちデスケーリングされない領域が存在することがわかる。
【0049】
【表3】
【0050】
(実施例1~3)
実施例1~3は、規定するブラストガン配置条件を満たすようにブラストガンを配置した例であり、単位距離当たりの線材ねじれ角度を、実施例1では50°、実施例2では80°、実施例3では前記比較例1と同じ107°とした。これら実施例1~3の構成を表4~6に示し、各構成での投射領域を図4~6に示す。これら図4~6の結果から、線材ねじれ角度が50°、80°、107°のいずれの場合も、金属配線の全周(0~360°)において、投射位置角度で網羅されており、投射されていない角度領域は存在していない。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
(実施例4)
実施例4では、好ましい実施形態として、単位距離当たりの線材ねじれ角度が80°~130°の範囲を有する場合に、ブラストガンの必要最小個数を決定する方法について示す。具体的には、単位距離当たりの線材ねじれ角度が80°~130°である場合に、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値の80°のときは、前記実施例2の構成の通り、ブラストガンが7本で金属配線の全周をカバーできる結果が得られた。しかし、単位距離当たりの線材ねじれ角度が最大値の130°の場合は、下記表7に示す構成となり、その投射領域は図7に示す通りである。この図7に示す通り、No.1のブラストガンとNo.7のブラストガンとの間に、砥粒液が投射されない領域、すなわちデスケーリングされない領域が存在した。
【0055】
【表7】
【0056】
そこで、単位距離当たりの線材ねじれ角度が該角度の範囲の最大値である130°の場合、前記実施例2の構成から、ブラストガンを最低どの程度増加させる必要があるのかを、以下の通り求めた。
【0057】
まず、単位距離当たりの線材ねじれ角度を80°としたときに、最大距離位置にあるブラストガン(No.7)の、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に前記第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求められる投射位置角度(311°)に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲(60°)の半分(30°)を加えた角度(341°)と、追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求められる投射位置角度(1°)から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲(40°)の半分(20°)を引いて求められる角度(361-20=341°)とが、等しくなるように、既に配置しているブラストガンの最大距離位置(No.7)よりも遠い位置(No.8)に、ブラストガンを一つ追加し、ブラストガン8個の構成とした。単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値の80°であってブラストガンの個数が8個の構成について表8に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
次に、上記ブラストガン8個の配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度を最大値の130°とした場合について、ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行った。その結果を表9および図8に示す。この表9および図8から明らかな通り、上記ブラストガン8個の配置では、ブラストガン配置条件を満たしていなかった。
【0060】
【表9】
【0061】
そこで、さらに、単位距離当たりの線材ねじれ角度を80°としたときに、最大距離位置にあるブラストガン(No.8)の、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に前記第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求められる投射位置角度(1°)に、前記ブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲(40°)の半分(20°)を加えた角度(21°)と、追加するブラストガンの、金属線材に対する円周方向角度から、単位距離当たりの線材ねじれ角度に第1ブラストガンからの距離を乗じて求められる線材ねじれ角度を引いて求められる投射位置角度(46°)から、追加するブラストガンがデスケーリングできる金属線材の円周方向角度範囲(50°)の半分(25°)を引いて求められる角度(46-25=21°)とが、等しくなるように、既に配置しているブラストガンの最大距離位置(No.8)よりも遠い位置(No.9)に、ブラストガンを一つ追加し、ブラストガン9個の構成とした。単位距離当たりの線材ねじれ角度が最小値の80°であってブラストガンの個数が9個の構成について表10に示す。
【0062】
【表10】
【0063】
次に、上記ブラストガン9個の配置で、単位距離当たりの線材ねじれ角度を最大値の130°とした場合について、ブラストガン配置条件を満たすかの試算を行った。その結果を表11および図9に示す。この表11および図9から明らかな通り、上記ブラストガン9個の配置とすることで、単位距離当たりの線材ねじれ角度を最大値の130°とした場合に、ブラストガン配置条件を満たした。つまり、単位距離当たりの線材ねじれ角度の範囲が例えば80°~130°である場合に、ブラストガンの必要最小個数は9個であることがわかった。
【0064】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9