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特許7403368インクジェット印刷装置およびその端部センサの異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置およびその端部センサの異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231215BHJP
   B65H 26/02 20060101ALI20231215BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 305
B65H26/02
B65H7/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020060804
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021160087
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121348
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 健児
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】村松 明寿香
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知孝
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-087933(JP,A)
【文献】特開2006-091179(JP,A)
【文献】特開2017-097286(JP,A)
【文献】特開2005-053167(JP,A)
【文献】特開2016-104553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 26/02
B65H 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の記録媒体から巻き出された長尺状の連続記録媒体を搬送する搬送機構と、
少なくとも1つの記録ヘッドを含み、当該少なくとも1つの記録ヘッドから前記連続記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録部と、
前記連続記録媒体における印刷位置の前記連続記録媒体の幅方向におけるずれを検出するための検査用パターンが印刷対象の画像とともに前記連続記録媒体に記録されるように、前記記録部および前記搬送機構を制御する記録制御部と、
前記連続記録媒体の側端位置を検出する少なくとも1つの端部センサと、
前記少なくとも1つの端部センサによる検出値に応じた補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正する補正部と、
前記連続記録媒体に記録された前記検査用パターンを読み取る撮像部と、
前記補正量および前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像に基づき、前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する異常検出部と
を備える、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、
前記補正量が予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記少なくとも1つの端部センサに異常が有ると判断し、
前記補正量が前記補正可能範囲に入っている場合に、前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像に基づき前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、前記補正量の時間変化と前記検査用パターンの画像とに基づき前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの記録ヘッドは、前記連続記録媒体の搬送方向に配置された複数の記録ヘッドからなり、当該複数の記録ヘッドは、互いに異なる色のインクをそれぞれ吐出するように構成されており、
前記少なくとも1つの端部センサは、前記複数の記録ヘッドにそれぞれ対応する複数の端部センサからなり、当該複数の端部センサのそれぞれは、対応する記録ヘッドの前記搬送方向の位置における前記連続記録媒体の側端位置を検出するように構成されており、
前記補正部は、前記複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正し、
前記異常検出部は、前記複数の補正量および前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像に基づき、前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記記録制御部は、前記複数の記録ヘッドから前記幅方向に予め決められた間隔で互いに離間してインクをそれぞれ吐出することにより、前記搬送方向に延びる複数の線状パターンが前記検査用パターンとして前記連続記録媒体に記録されるように、前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像が示す前記複数の線状パターンの間隔をパターン間距離として求め、前記複数の補正量および前記パターン間距離に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する、請求項4に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、
前記複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断し、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っている場合に、前記パターン間距離に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する、請求項5に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記異常検出部は、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っているが、前記パターン間距離のいずれかが予め決められた許容範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断し、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っており、かつ、前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っている場合に、前記複数の端部センサに異常が無いと判断する、請求項6に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、
前記パターン間距離のいずれかが予め決められた許容範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断し、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っている場合に、前記複数の補正量に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する、請求項5に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
前記異常検出部は、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っているが、前記複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断し、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っており、かつ、前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っている場合に、前記複数の端部センサに異常が無いと判断する、請求項8に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項10】
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正されることなく前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御する、請求項1、4、または5に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項11】
ロール状の記録媒体から巻き出された長尺状の連続記録媒体を搬送する搬送機構と、少なくとも1つの記録ヘッドを含み当該少なくとも1つの記録ヘッドから前記連続記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録部と、前記連続記録媒体の側端位置を検出する少なくとも1つの端部センサと、当該少なくとも1つの端部センサによる検出値に応じた補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正する補正部とを備えたインクジェット印刷装置において、前記少なくとも1つの端部センサにおける異常を検出するための異常検出方法であって、
前記連続記録媒体における印刷位置の前記連続記録媒体の幅方向におけるずれを検出するための検査用パターンを印刷対象の画像とともに前記連続記録媒体に前記記録部により記録する記録ステップと、
前記連続記録媒体に記録された前記検査用パターンを読み取る撮像ステップと、
前記補正量および前記読み取られる検査用パターンの画像に基づき、前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する異常検出ステップと
を備える、異常検出方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの記録ヘッドは、前記連続記録媒体の搬送方向に配置された複数の記録ヘッドからなり、当該複数の記録ヘッドは、互いに異なる色のインクをそれぞれ吐出するように構成されており、
前記少なくとも1つの端部センサは、前記複数の記録ヘッドにそれぞれ対応する複数の端部センサからなり、当該複数の端部センサのそれぞれは、対応する記録ヘッドの前記搬送方向の位置における前記連続記録媒体の側端位置を検出するように構成されており、
前記補正部は、前記複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正し、
前記記録ステップでは、前記複数の記録ヘッドから前記幅方向に予め決められた間隔で互いに離間してインクをそれぞれ吐出することにより、前記搬送方向に延びる複数の線状パターンが前記検査用パターンとして前記連続記録媒体に記録され、
前記異常検出ステップでは、前記読み取られる検査用パターンの画像が示す前記複数の線状パターンの間隔がパターン間距離として求められ、前記複数の補正量および前記パターン間距離に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無が判定される、請求項11に記載の異常検出方法。
【請求項13】
前記記録ステップでは、前記複数の補正量にしたがって前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録され、
前記異常検出ステップは、
前記複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断するステップと、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っている場合に、前記パターン間距離に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定するステップと
を含む、請求項12に記載の異常検出方法。
【請求項14】
前記異常検出ステップでは、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っているが、前記パターン間距離のいずれかが予め決められた許容範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断され、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っており、かつ、前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っている場合に、前記複数の端部センサに異常が無いと判断される、請求項13に記載の異常検出方法。
【請求項15】
前記記録ステップでは、前記複数の補正量にしたがって前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録され、
前記異常検出ステップは、
前記パターン間距離のいずれかが予め決められた許容範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断するステップと、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っている場合に、前記複数の補正量に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定するステップと
を含む、請求項12に記載の異常検出方法。
【請求項16】
前記異常検出ステップでは、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っているが、前記複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断され、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っており、かつ、前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っている場合に、前記複数の端部センサに異常が無いと判断される、請求項15に記載の異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取紙等のロール状の記録媒体を使用するインクジェット印刷装置、および、そのインクジェット印刷装置において記録媒体の側端位置を検出するための端部センサの異常を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻取紙を記録媒体として使用するインクジェット印刷装置では、巻取紙から巻き出されて搬送される記録用紙(記録媒体)である連続紙にインクを吐出することで画像が記録される。このようなインクジェット印刷装置では、通常、K色(黒)、C色(シアン)、M色(マゼンタ)、およびY色(黄)のインクをそれぞれ吐出する第1から第4記録ヘッドからなる4種類の記録ヘッドが設けられ、これら第1から第4記録ヘッドは、連続紙の搬送方向に配置されている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置では、巻取紙から巻き出されて搬送される連続紙が蛇行すると、吐出されたインクの着弾位置が目標位置から外れる見当ずれが生じたり、1画素を構成すべき複数色のインクの着弾位置が互いにずれて色ずれが生じたりする。これに対し、搬送される連続紙の側端位置を検出するための端部センサ(「エッジセンサ」とも呼ばれる)を設け、これら見当ずれや色ずれ(以下「色ずれ等」という)が防止されるように当該端部センサの検出値に基づき記録ヘッドを連続紙の幅方向(これは連続紙の搬送方向に垂直な方向であり、以下「紙幅方向」という)に移動させる構成が従来より知られている。また、色ずれ等が防止されるように印刷対象の画像の印刷位置を変更すべく当該印刷対象を表す画像データを修正する構成も従来より知られている。
【0004】
本願で開示されるインクジェット印刷装置に関連して、下記の特許文献1(特開2016-55570号公報)には、連続紙が搬送されることで生じる蛇行量MJをエッジセンサ(端部センサ)により取得し、その蛇行量MJの実測波形データHJに基づき予測波形データHYを生成し、その予測波形データHYに基づき得られるシフト量SFに基づき、画像の印刷位置を補正して印刷ヘッドに与えるように構成された印刷装置が開示されている([要約]、段落[0031]等参照)。
【0005】
また、下記の特許文献2(特開2016-104553号公報)には、センサ故障についての誤検知を防止でき、ダウンタイムの発生による生産性の低下を抑制できるインクジェット記録装置が開示されている([要約]、段落[0014],[0017],[0019],[0022]~[0024]等参照)。このインクジェット記録装置では、各ラインヘッド毎16(色毎)に記録用紙の端部の位置を検出する端部センサ24が各ラインヘッド毎16(色毎)に設けられ、端部センサ24の出力値につき異常範囲が設定されている。各端部センサ24の出力は同時に把握され、各端部センサ24の出力の関係に基づいて端部センサ24の故障が判定される。例えば、ブラックに対応する端部センサ(Kセンサ)のみが異常値判定時間に異常範囲に入っている場合には、Kセンサの故障と判定される。また、全ての端部センサ24が異常値判定時間に異常範囲に入っている場合には、記録用紙の搬送位置の変化(蛇行)または用紙無しと判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-55570号公報
【文献】特開2016-104553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにインクジェット印刷装置において搬送される記録用紙の側端位置を検出する端部センサでは、紙粉等のゴミの付着により正しい出力値(記録用紙の側端位置を示す検出値)が得られない場合がある。この場合、その出力値に基づいて、印刷データの修正またはラインヘッド等の記録手段の位置調整により画像の印刷位置が補正されると、色ずれ等が生じる。このように紙粉等により端部センサに異常が生じているか否かは、その出力値のみからは判断できない。すなわち、特許文献2に記載のインクジェット印刷装置(インクジェット記録装置)では、端部センサ24の出力値が異常範囲に入っているか否かに基づき端部センサの故障等が判定されるが、紙粉による端部センサの出力値への影響を考慮すると、端部センサ24の出力値の妥当性は、その出力値が所定範囲から外れているか否かのみによっては、必ずしも適切に判断することができない。
【0008】
そこで、インクジェット印刷装置において画像を記録すべき連続紙の蛇行による色ずれ等を防止するために当該連続紙の側端位置を検出する端部センサの異常を確実に検出することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面は、インクジェット印刷装置であって、
ロール状の記録媒体から巻き出された長尺状の連続記録媒体を搬送する搬送機構と、
少なくとも1つの記録ヘッドを含み、当該少なくとも1つの記録ヘッドから前記連続記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録部と、
前記連続記録媒体における印刷位置の前記連続記録媒体の幅方向におけるずれを検出するための検査用パターンが印刷対象の画像とともに前記連続記録媒体に記録されるように、前記記録部および前記搬送機構を制御する記録制御部と、
前記連続記録媒体の側端位置を検出する少なくとも1つの端部センサと、
前記少なくとも1つの端部センサによる検出値に応じた補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正する補正部と、
前記連続記録媒体に記録された前記検査用パターンを読み取る撮像部と、
前記補正量および前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像に基づき、前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する異常検出部とを備える。
【0010】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面において、
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、
前記補正量が予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記少なくとも1つの端部センサに異常が有ると判断し、
前記補正量が前記補正可能範囲に入っている場合に、前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像に基づき前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する。
【0011】
本発明の第3の局面は、本発明の第1の局面において、
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、前記補正量の時間変化と前記検査用パターンの画像とに基づき前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する。
【0012】
本発明の第4の局面は、本発明の第1の局面において、
前記少なくとも1つの記録ヘッドは、前記連続記録媒体の搬送方向に配置された複数の記録ヘッドからなり、当該複数の記録ヘッドは、互いに異なる色のインクをそれぞれ吐出するように構成されており、
前記少なくとも1つの端部センサは、前記複数の記録ヘッドにそれぞれ対応する複数の端部センサからなり、当該複数の端部センサのそれぞれは、対応する記録ヘッドの前記搬送方向の位置における前記連続記録媒体の側端位置を検出するように構成されており、
前記補正部は、前記複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正し、
前記異常検出部は、前記複数の補正量および前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像に基づき、前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する。
【0013】
本発明の第5の局面は、本発明の第4の局面において、
前記記録制御部は、前記複数の記録ヘッドから前記幅方向に予め決められた間隔で互いに離間してインクをそれぞれ吐出することにより、前記搬送方向に延びる複数の線状パターンが前記検査用パターンとして前記連続記録媒体に記録されるように、前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、前記撮像部により読み取られる前記検査用パターンの画像が示す前記複数の線状パターンの間隔をパターン間距離として求め、前記複数の補正量および前記パターン間距離に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する。
【0014】
本発明の第6の局面は、本発明の第5の局面において、
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、
前記複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断し、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っている場合に、前記パターン間距離に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する。
【0015】
本発明の第7の局面は、本発明の第6の局面において、
前記異常検出部は、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っているが、前記パターン間距離のいずれかが予め決められた許容範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断し、
前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っており、かつ、前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っている場合に、前記複数の端部センサに異常が無いと判断する。
【0016】
本発明の第8の局面は、本発明の第5の局面において、
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正された状態で前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御し、
前記異常検出部は、
前記パターン間距離のいずれかが予め決められた許容範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断し、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っている場合に、前記複数の補正量に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無を判定する。
【0017】
本発明の第9の局面は、本発明の第8の局面において、
前記異常検出部は、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っているが、前記複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、前記複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断し、
前記パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っており、かつ、前記複数の補正量のいずれもが前記補正可能範囲に入っている場合に、前記複数の端部センサに異常が無いと判断する。
【0018】
本発明の第10の局面は、本発明の第1、第4、または第5の局面において、
前記記録制御部は、前記補正部により前記印刷位置が補正されることなく前記検査用パターンが前記連続記録媒体に記録されるように前記記録部および前記搬送機構を制御する。
【0019】
本発明の第11の局面は、ロール状の記録媒体から巻き出された長尺状の連続記録媒体を搬送する搬送機構と、少なくとも1つの記録ヘッドを含み当該少なくとも1つの記録ヘッドから前記連続記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録部と、前記連続記録媒体の側端位置を検出する少なくとも1つの端部センサと、当該少なくとも1つの端部センサによる検出値に応じた補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正する補正部とを備えたインクジェット印刷装置において、前記少なくとも1つの端部センサにおける異常を検出するための異常検出方法であって、
前記連続記録媒体における印刷位置の前記連続記録媒体の幅方向におけるずれを検出するための検査用パターンを印刷対象の画像とともに前記連続記録媒体に前記記録部により記録する記録ステップと、
前記連続記録媒体に記録された前記検査用パターンを読み取る撮像ステップと、
前記補正量および前記読み取られる検査用パターンの画像に基づき、前記少なくとも1つの端部センサにおける異常の有無を判定する異常検出ステップとを備える。
【0020】
本発明の第12の局面は、本発明の第11の局面において、
前記少なくとも1つの記録ヘッドは、前記連続記録媒体の搬送方向に配置された複数の記録ヘッドからなり、当該複数の記録ヘッドは、互いに異なる色のインクをそれぞれ吐出するように構成されており、
前記少なくとも1つの端部センサは、前記複数の記録ヘッドにそれぞれ対応する複数の端部センサからなり、当該複数の端部センサのそれぞれは、対応する記録ヘッドの前記搬送方向の位置における前記連続記録媒体の側端位置を検出するように構成されており、
前記補正部は、前記複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量にしたがって前記連続記録媒体への画像の印刷位置を補正し、
前記記録ステップでは、前記複数の記録ヘッドから前記幅方向に予め決められた間隔で互いに離間してインクをそれぞれ吐出することにより、前記搬送方向に延びる複数の線状パターンが前記検査用パターンとして前記連続記録媒体に記録され、
前記異常検出ステップでは、前記読み取られる検査用パターンの画像が示す前記複数の線状パターンの間隔がパターン間距離として求められ、前記複数の補正量および前記パターン間距離に基づき前記複数の端部センサにおける異常の有無が判定される。
【0021】
本発明の他の局面は、本発明の上記局面ならびに後述の実施形態およびその変形例に関する説明から明らかであるので、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の局面では、記録部における少なくとも1つの記録ヘッドからのインクの吐出により印刷対象の画像が記録される連続記録媒体の側端位置が少なくとも1つの端部センサにより検出され、当該少なくとも1つの端部センサによる検出値に応じた補正量にしたがって連続記録媒体への画像の印刷位置が補正される。これにより、連続記録媒体が蛇行していても、印刷位置の補正によってその蛇行が補償されることで、インクジェット印刷装置による印刷において連続記録媒体の蛇行により生じる見当ずれやカラー画像の印刷時の色ずれが抑制されるが、端部センサに異常がある場合には、連続記録媒体の蛇行を補償するように画像の印刷位置を補正することができない。そこで、連続記録媒体における印刷位置の連続記録媒体の幅方向におけるずれを検出するための検査用パターンが印刷対象の画像とともに連続記録媒体に記録され、上記検出値に応じた補正量および検査用パターン画像に基づき端部センサにおける異常の有無が判定される。これにより、端部センサによる検出値(またはそれに応じた補正量)だけでは検出できない端部センサの異常についても、検査用パターン画像に基づきこれを検出できる。したがって、本発明の第1の局面によれば、用紙の蛇行による見当ずれや色ずれの抑制のために使用される端部センサの異常を、従来よりも確実に検出することができる。
【0023】
本発明の第2の局面によれば、端部センサによる検出値に応じた補正量が予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、その端部センサに異常が有ると判断されるだけでなく、当該補正量が補正可能範囲に入っている場合においても、検査用パターンの画像に基づきその端部センサにおける異常の有無が判定される。これにより、本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。
【0024】
本発明の第3の局面によれば、端部センサによる検出値に応じた補正量の時間変化と検査用パターンの画像とに基づき端部センサにおける異常の有無を判定することで、本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。
【0025】
本発明の第4の局面では、記録部は、連続記録媒体の搬送方向に配置された複数の記録ヘッドを含み、当該複数の記録ヘッドは、互いに異なる色のインクをそれぞれ吐出するように構成されており、当該複数の記録ヘッドにそれぞれ対応する複数の端部センサかが設けられており、当該複数の端部センサのそれぞれは、対応する記録ヘッドの上記搬送方向の位置における連続記録媒体の側端位置を検出するように構成されており、当該複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量にしたがって連続記録媒体への画像の印刷位置が補正される。本発明の第4の局面によれば、このような構成において、当該複数の補正量および撮像部により読み取られる検査用パターンの画像に基づき、前当該複数の端部センサにおける異常の有無が判定され、これにより本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。
【0026】
本発明の第5の局面によれば、互いに異なる色のインクを吐出する複数の記録ヘッドから連続記録媒体の幅方向に予め決められた間隔で互いに離間してインクをそれぞれ吐出することにより、連続記録媒体の搬送方向に延びる複数の線状パターンが検査用パターンとして連続記録媒体に記録される。また、撮像部により連続記録媒体から読み取られる検査用パターンの画像が示す複数の線状パターンの間隔がパターン間距離として求められ、上記複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量および当該パターン間距離に基づき上記複数の端部センサにおける異常の有無が判定される。これにより本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。
【0027】
本発明の第6の局面によれば、補正部により印刷位置が補正された状態で検査用パターンが連続記録媒体に記録され、複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、当該複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断されるだけでなく、当該複数の補正量のいずれもが補正可能範囲に入っている場合であっても、連続記録媒体から読み取られる検査用パターン画像におけるパターン間距離に基づき当該複数の端部センサにおける異常の有無が判定される。これにより本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。また、検査用パターン画像は、互いに色の異なる複数の線状パターンからなり、補正部により印刷位置が補正された状態で連続記録媒体に記録されることから、当該複数の補正量のいずれもが補正可能範囲に入っている場合に、当該複数の端部センサにおける異常の有無を視覚的に容易に認識することができる。
【0028】
本発明の第7の局面によれば、複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量のいずれかが予め決められた補正可能範囲から外れている場合に、当該複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断され、当該複数の補正量のいずれもが補正可能範囲に入っているが、連続記録媒体から読み取られる検査用パターン画像におけるパターン間距離のいずれかが予め決められた許容範囲から外れている場合に、当該複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断され、上記複数の補正量のいずれもが補正可能範囲に入っており、かつ、それらパターン間距離のいずれもが許容範囲に入っている場合に、当該複数の端部センサに異常が無いと判断される。これにより、本発明の第6の局面と同様の効果が得られる。また、当該複数の端部センサに関し、「異常がある」と断定せずに「異常がある可能性がある」という判断が可能であることから、異常の有無につき二者択一的な判断をする場合に比べ、連続記録媒体の蛇行による色ずれ等の不具合に対し柔軟な対処が可能となる。
【0029】
本発明の第8の局面によれば、補正部により印刷位置が補正された状態で検査用パターンが連続記録媒体に記録され、連続記録媒体から読み取られる検査用パターン画像におけるパターン間距離のいずれかが許容範囲から外れている場合に、複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断されるだけでなく、当該パターン間距離のいずれもが許容範囲に入っている場合であっても、当該複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量に基づき当該複数の端部センサにおける異常の有無が判定される。これにより本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。また、検査用パターン画像は、互いに色の異なる複数の線状パターンからなり、補正部により印刷位置が補正された状態で連続記録媒体に記録されることから、当該複数の端部センサにおける異常の有無を視覚的に容易に認識することができる。
【0030】
本発明の第9の局面によれば、連続記録媒体から読み取られる検査用パターン画像におけるパターン間距離のいずれかが許容範囲から外れている場合に、複数の端部センサのいずれかに異常が有ると判断され、当該パターン間距離のいずれもが前記許容範囲に入っているが、当該複数の端部センサによる検出値にそれぞれ応じた複数の補正量のいずれかが補正可能範囲から外れている場合に、当該複数の端部センサのいずれかに異常が有る可能性があると判断され、当該パターン間距離のいずれもが許容範囲に入っており、かつ、当該複数の補正量のいずれもが補正可能範囲に入っている場合に、当該複数の端部センサに異常が無いと判断される。これにより、本発明の第7の局面と同様の効果が得られる。
【0031】
本発明の第10の局面によれば、補正部により印刷位置が補正されることなく検査用パターンが連続記録媒体に記録されるので、連続記録媒体の蛇行は、端部センサによって検出されるだけでなく、連続記録媒体から読み取られる検査用パターン画像にも反映される。本発明の第10の局面においても、このような検査パターン画像および端部センサによる検出値に応じた補正量に基づき端部センサにおける異常の有無が判定されることで、本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。
【0032】
本発明の第11の局面によれば、本発明の第1の局面と同様の効果が得られる。
【0033】
本発明の第12の局面によれば、本発明の第5の局面と同様の効果が得られる。
【0034】
本発明の他の局面の効果については、本発明の上記局面の効果ならびに下記実施形態およびその変形例の効果についての説明から明らかであるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示す模式図である。
図2】上記第1の実施形態における制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】上記第1の実施形態における端部センサを含む記録部の構成を説明するための平面図である。
図4】上記第1の実施形態における端部センサの構成を示す側面図である。
図5】上記第1の実施形態におけるJIパターンの配置位置を説明するための図である。
図6】上記第1の実施形態におけるJIパターンの構成を説明するための図である。
図7】紙粉等のゴミの付着によるセンサ異常を説明するための図である。
図8】JIパターン間距離が異常値を示す場合のJIパターン画像を示す図である。
図9】上記第1の実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
図10】上記第1の実施形態におけるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2の実施形態におけるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。
図12】第1の変形例における印刷制御処理を示すフローチャートである。
図13】第2の変形例におけるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。
図14】第3の変形例におけるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。
図15】第4の変形例におけるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0037】
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット印刷装置10の構成を示す模式図である。この印刷装置10は、ロール状の記録媒体としての巻取紙から長尺状の連続記録媒体としての記録用紙(以下、単に「用紙」ともいう)5を巻き出して供給する用紙送出部202と、用紙5を印刷機構200の内部へと搬送するための第1の駆動ローラ203と、印刷機構200の内部で用紙5を搬送するための複数個の支持ローラ204と、用紙5にインクを吐出して印刷を行う記録部205と、印刷後の用紙5を乾燥させる乾燥部206と、用紙5を印刷機構200の内部から出力するための第2の駆動ローラ207と、印刷後の用紙5を巻き取る用紙巻取部208とを備えている。第1の駆動ローラ203と支持ローラ204と第2の駆動ローラ207とは、用紙5を移動させるための搬送機構を構成する。記録部205には、K色(Black:黒)、C色(Cyan:シアン)、M色(Magenta:マゼンタ)、およびY色(Yellow:黄)のインクをそれぞれ吐出する第1から第4記録ヘッド列205k,205c,205m,205yが含まれている。また、印刷機構200の内部には、CCDまたはCMOS等のイメージセンサを用いて構成された撮像部209が含まれている。撮像部209は印刷済みの用紙5を撮像し、撮像によって得られたデータは制御部100へと送られる。
【0038】
<1.2 制御部の構成>
図2は、上記インクジェット印刷装置10における制御部100のハードウェア構成を示すブロック図である。この制御部100は、本体11、補助記憶装置12、表示部14、および、操作部15を備えている。本体11は、CPU111、メモリ112、ディスクインタフェース部113、表示制御部115、入力インタフェース部116、画像処理部117、印刷実行制御部118、撮像制御部119、および、ネットワークインタフェース部120を含んでいる。CPU111、メモリ112、ディスクインタフェース部113、表示制御部115、入力インタフェース部116、画像処理部117、印刷実行制御部118、撮像制御部119、および、ネットワークインタフェース部120は、システムバスを介して互いに接続されている。ディスクインタフェース部113には補助記憶装置12が接続されている。表示制御部115には表示部14が接続されている。入力インタフェース部116には、キーボードやマウス等を含む操作部15が接続されている。ネットワークインタフェース部120にはネットワーク3が接続され、本制御部100は、このネットワーク3を介してホスト装置等に接続されている。補助記憶装置12は磁気ディスク装置等である。表示部14は液晶ディスプレイ等である。表示部14は、作業者が所望する情報を表示するために使用される。操作部15は、インクジェット印刷装置10に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0039】
補助記憶装置12には、ネットワーク3を介して受け取る入稿データから印刷データを生成し当該印刷データの表す画像を印刷機構200に印刷させるための印刷制御プログラム17が格納されている。後述のように印刷機構200には、搬送される長尺状の連続紙(より一般的には連続記録媒体)としての用紙5の側端位置を検出する第1から第4端部センサ25k,25c,25m,25yが設けられており、これらの端部センサ25k,25c,25m,25yにおける異常を検出するためのセンサ異常検出プログラム18も補助記憶装置12に格納されている。CPU111は、補助記憶装置12に格納された印刷制御プログラム17およびセンサ異常検出プログラム18をメモリ112に読み出して実行することで、インクジェット印刷装置10の各種機能を実現する。メモリ112は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含んでいる。メモリ112は、CPU111が上記プログラム17,18を実行するためのワークエリアとして機能する。
【0040】
画像処理部117は、印刷制御プログラム17を実行するCPU111による制御の下、ページ記述言語で記述された入稿データに対しラスタライズ処理を施すことによりビットマップ形式の印刷データを生成する。印刷実行制御部118は、印刷制御プログラムを実行するCPU111が印刷機構200の各部を制御するためのインタフェースとして機能する。撮像制御部119は、印刷制御プログラムを実行するCPU111が、記録部205によって用紙5に記録された画像を撮像する撮像部209を制御するためのインタフェースとして機能する。
【0041】
<1.3 記録部の構成>
図3は、本実施形態における記録部205の構成を説明するための平面図である。図1および図3に示すように、記録部205は、用紙5の搬送方向に列置されたK色(黒)、C色(シアン)、M色(マゼンタ)、およびY色(黄)の記録ヘッド列(インクジェットヘッド列)205k、205c、205m、および205yから構成されている。各記録ヘッド列205x(x=k,c,m,y)は、2列に千鳥状に配置された複数個の記録ヘッド21により構成されており、用紙5の搬送方向に直交する紙幅方向に延びている。これら複数個の記録ヘッド21は、用紙5の幅全体に亘って配列されている。
【0042】
図3に示すように、各記録ヘッド21は、紙幅方向に並ぶ多数のノズル(インク吐出部)20を含む。K色の記録ヘッド列205kにおける各記録ヘッド21の各ノズル20はK色のインクを吐出し、C色の記録ヘッド列205cにおける各記録ヘッド21の各ノズル20はC色のインクを吐出し、M色の記録ヘッド列205mにおける各記録ヘッド21の各ノズル20はM色のインクを吐出し、Y色の記録ヘッド列205yにおける各記録ヘッド21の各ノズル20はY色のインクを吐出する。
【0043】
図1および図3に示すように、記録ヘッド列205k,205c,205m,205yにそれぞれ対応する端部センサ25k,25c,25m,25yが設けられている。各端部センサ25x(x=k,c,m,y)は、対応する記録ヘッド列205xの搬送方向の位置における用紙5の側端位置を検出できるように当該記録ヘッド列205xに対して搬送方向において近接して配置されている。以下では、端部センサ25k,25c,25m,25yを区別することなく1つの端部センサに言及する場合には、これを符号“25”で示すものとする。
【0044】
図4は、本実施形態における端部センサ25の構成を示す側面図である。図4に示すように、端部センサ25は、間隙を開けて互いに向き合う発光素子251と受光素子252とを含み、搬送される用紙5の一方の端部がその間隙を通過するように配置されている。発光素子251は、紙幅方向に長さLeの範囲に亘って受光素子252に向かって発光する(以下、紙幅方向に長さLeの当該範囲を「発光範囲」といい、同じ符号“Le”で示すものとする)。受光素子252は、発光素子251から発せられた光のうち用紙5の端部で遮られない光を受け取り、その受光量に応じた値の信号を出力する。このため、この端部センサ25の出力信号の値は用紙5の側端位置の検出値(検出結果)に相当する。なお、本実施形態における端部センサ25の構成は、図4に示すような構成に限定されず、搬送される用紙5の側端位置を検出して当該側端位置を示す信号を出力できるものであれば他の構成であってもよい。
【0045】
<1.4 JIパターンの構成>
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10では、印刷機構200内を搬送される用紙5に対して各記録ヘッド列205x(x=k,c,m,y)からインクを吐出することにより、入稿データの表す印刷対象としての画像(以下「対象画像」という)を用紙5に記録する。このとき、対象画像に加えて、印刷動作の監視や制御のための画像(以下「検査制御画像」という)も用紙5に印刷される。
【0046】
図5は、印刷における色ずれを監視するためのJI(Jet Inspection)パターンの配置位置を説明するための図であり、図6は、JIパターンの構成を説明するための図である。本実施形態では、印刷機構200内を搬送される連続紙として用紙5に対しページ単位で印刷が行われ、図5に示すように、JIパターンの画像302が、各ページの開始位置を示すページ開始位置マーク301に近接するように印刷される。図6に示すように、JIパターン画像302は、第1記録ヘッド列205kから吐出されるK色インクにより記録されるべき線状パターン32kと、第2記録ヘッド列205cから吐出されるC色インクにより記録されるべき線状パターン32cと、第3記録ヘッド列205mから吐出されるM色インクにより記録されるべき線状パターン32mと、第4記録ヘッド列205yから吐出されるY色インクにより記録されるべき線状パターン32yとから構成される。これら4つの線状パターン32k,32c,32m,32yは、第1から第4記録ヘッド列205k,205c,205m,205yから紙幅方向に予め決められた間隔で互いに離間してインクをそれぞれ吐出することにより用紙5にJIパターン画像302として記録される。色ずれのない印刷により用紙5に記録されるJIパターン画像302では、これら4つの線状パターン32k,32c,32m,32yは、搬送方向に延び紙幅方向に等間隔に並ぶ。
【0047】
<1.5 端部センサにおける異常の検出>
既述のように、インクジェット印刷装置10において、連続紙としての用紙5が蛇行して搬送されることにより生じる色ずれ等を抑えるために、用紙の側端位置を検出する端部センサを設け、その検出結果に基づき記録ヘッドを紙幅方向に移動させる構成(以下「記録ヘッド移動構成」という)や、その検出結果に基づき印刷対象の画像の位置を変更すべく当該印刷対象を表す画像データを修正する構成(以下「画像データ修正構成」という)が従来より知られている。本実施形態に係るインクジェット印刷装置10も、第1から第4端部センサ25k,25c,25m,25yによりそれぞれ得られる検出値(以下「センサ検出値」ともいう)SEk,SEc,SEm,SEyに基づき色ずれ等を防止するために記録ヘッド移動構成または画像データ修正構成のいずれかを備えており、記録ヘッド移動構成または画像データ修正構成により、用紙5の蛇行が補償されるように端部センサ25xの検出結果に基づき対象画像および検査制御画像(以下、両者を併せて「印刷画像」という)の位置が紙幅方向にシフトされる(x=k,c,m,y)。本実施形態におけるこれらの構成の詳細は、従来と同様であって周知であるのでその説明を省略する。以下では、本実施形態において用紙5の蛇行による色ずれ等を防止するために使用される端部センサ25が用紙5の側端位置を正しく検出できなくなるという異常(以下「センサ異常」という)について説明する。なお以下では、説明の便宜上、画像データ修正構成により端部センサ25の検出結果に基づき印刷画像の位置が紙幅方向にシフトされるものとする。
【0048】
図4に示す端部センサ25の構成からわかるように、用紙5のうち端部センサ25における発光素子251と受光素子252との間隙を通過する部分の側端5seが発光範囲Le内にあるときには、端部センサ25は、その側端5seの位置(以下「側端位置」という)を示す信号を検出値として出力する。しかし、その側端5seが発光範囲Leから外れていれば、そのときに端部センサ25から出力される検出値は、用紙5の側端位置を示すものではなく、発光範囲Leの両端位置のいずれかを示すことになる。このため本実施形態では、発光範囲Leのうち両端を除く所定範囲に対応する検出値の範囲が検出可能範囲Rdとして予め設定されている。端部センサ25から出力される検出値が検出可能範囲Rdにあるときには、基本的に端部センサ25は正常に動作していると考えることができる。後述のように本実施形態では、端部センサ25による検出値に基づき印刷画像の紙幅方向における位置のシフト量(以下「画像位置補正量」または単に「補正量」という)が算出され、印刷が実行されている間は、所定の時間刻みで当該検出値に応じた補正量にしたがって印刷画像の位置がシフトされる(この印刷画像の位置のシフトは用紙の蛇行を補償(蛇行による色ずれ等を抑制)するためのものであり、以下では「蛇行補償のための補正」ともいう)。しかし、端部センサ25の検出値が検出可能範囲Rdから外れているときに当該端部センサ25の検出値に基づき算出される画像位置補正量は補正可能な範囲を逸脱したものとなる。
【0049】
そこで本実施形態では、検出可能範囲Rdに対応する補正可能範囲Rcが予め設定されており、端部センサ25による検出値に基づき算出される補正量が補正可能範囲Rcから外れているか否かに応じて(x=k,c,m,y)、センサ異常か否かが判定される(詳細は後述)。
【0050】
また、端部センサ25に紙粉等のゴミが付着している場合には、発光素子251から発せられ受光素子252で受け取られるべき光が当該ゴミで遮られることにより、端部センサ25による検出値が用紙5の側端位置を示す値とは異なることがある。またこの場合、用紙5の側端5seが発光範囲Leから外れていても、端部センサ25から出力される検出値が検出可能範囲Rdに入っていることもある。
【0051】
図7は、紙粉等のゴミの付着により生じるこのようなセンサ異常を説明するための図である。図7では、C色(シアン)のインクを吐出する第2記録ヘッド列205cに近接して配置された端部センサ25cによる検出値SEcの時間的変化を示している。図7において横軸に付されている数値は、所定時間間隔で側端位置を検出する端部センサ25cの各検出時刻を当該時間間隔を単位として示している。この例では、用紙5が印刷機構200内を蛇行して搬送され、端部センサ25cによる検出値は、図7において点線で示すように変化すると予想される。しかし図7に示すように、時刻3の経過後で時刻4の経過前に紙粉が端部センサ25cに付着することにより、時刻12以降において検出値が一定となり変化しない。したがって、この時刻12の経過後は端部センサ25cは異常が生じた状態となっている。
【0052】
上記のように紙粉等のゴミの付着によって端部センサ25に生じる異常(センサ異常)は、その検出値が検出可能範囲Rdを外れているか否か(補正量が補正可能範囲Rcを外れているか否か)を調べるだけでは検出することができない。しかし、このようなセンサ異常は、用紙5においてページ毎に記録される既述のJIパターン画像302(図5図6)に基づき検出することができる。以下、このようなセンサ異常のJIパターン画像302によるセンサ異常の検出について説明する。
【0053】
用紙の側端5seが発光範囲Leから外れていることによりセンサ異常が生じる場合と、紙粉等のゴミが端部センサ25に付着することによってセンサ異常が生じる場合のいずれであっても、端部センサ25による検出値は用紙5の側端位置を示していないので、蛇行補償のための補正を正しく行うことができない。すなわち、色ずれ等の防止のための画像位置のシフトを正しく行うことができない。このため、図3に示すように搬送方向において互いに異なる位置に配置されている第1から第4記録ヘッド列205k,205c,205m,205yによりそれぞれ記録される線状パターン32k,32c,32m,32yからなるJIパターン画像302において、それら線状パターン32k,32c,32m,32yのいずれかの位置が本来の位置からずれる。ここで図6に示すように、第1記録ヘッド列205kによって記録される線状パターン(以下「K色線状パターン」という)32kを基準とし、K色線状パターン32kと第4記録ヘッド列205yによって記録される線状パターン(以下「Y色線状パターン」という)32yとの間隔(以下「K-Yパターン間距離」という)を符号“Dy”で示し、K色線状パターン32kと第3記録ヘッド列205mによって記録される線状パターン(以下「M色線状パターン」という)32mとの間隔(以下「K-Mパターン間距離」という)を符号“Dm”で示し、K色線状パターン32kと第2記録ヘッド列205cによって記録される線状パターン(以下「C色線状パターン」という)32cとの間隔(以下「K-Cパターン間距離」という)を符号“Dc”で示するものとする。以下では、これらK-Yパターン間距離Dy、K-Mパターン間距離Dm、および、K-Cパターン間距離Dcを「JIパターン間距離」と総称するものとする。なお、用紙5の側端とK色線状パターン32kとの間隔を符号“Dk”で示す。
【0054】
いずれの端部センサ25k,25c,25m,25yについてもセンサ異常が生じていない場合(いずれの端部センサ25k,25c,25m,25yにも異常が無い場合)すなわち端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれもが用紙5の側端位置を正しく検出している場合には、用紙5が蛇行していても、それらの検出値SEk,SEc,SEm,SEyに基づき蛇行補償のための補正(画像位置のシフト)が行われるので、図6に示すように、JIパターン画像302において3つの線状パターン32k,32c,32m,32yが所定の許容範囲内で等間隔で並んでおり、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyは下記式(1)および(2)を満たす。
Dc≒(1/3)Dy …(1)
Dm≒(2/3)Dy …(2)
【0055】
これに対し、端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれかにつきセンサ異常が生じている場合(端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれかに異常がある場合)には、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyは上記式(1)および(2)の少なくとも一方を満たさない。例えば、図7に示すように紙粉の付着によって第2端部センサ25cにセンサ異常が生じている場合には、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyは、図8に示すような距離(間隔)となり、所定の許容範囲内での等間隔でなくなるので上記式(1)を満たさない。このとき、JIパターン画像302におけるC色の線状パターン32cの位置は、センサ異常が生じていない場合に比べ大きくずれている。したがって、紙粉の付着などに起因するセンサ異常のように、端部センサ25による検出値だけでは検出できないセンサ異常であっても、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyを調べることによりこれを検出することができる。
【0056】
なお以下において、端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれをも特定することなく「センサ異常が生じていない」という表現を使用した場合、この表現は「端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれについてもセンサ異常が生じていない」ことを意味し、また、端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれをも特定することなく「センサ異常が生じている」という表現を使用した場合、この表現は「端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれかにつきセンサ異常が生じている」ことを意味するものとする。
【0057】
一方、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyを調べるだけではセンサ異常が生じているか否か(端部センサにおける異常の有無)を確定できない場合もある。例えば、撮像部209の不具合により、線状パターン32k、32c、32m、および32yの全部または一部を良好に読み取れない場合が挙げられる。あるいは、記録部205の不具合により、線状パターン32k、32c、32m、および32yの全部または一部を良好に印刷できない場合が挙げられる。
【0058】
上記のようにJIパターン間距離Dc,Dm,Dyを調べるだけではセンサ異常が生じているか否かを確定できない場合であっても、センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyのいずれかが検出可能範囲Rdから外れていれば、すなわち当該センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyに対応する補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れていれば、センサ異常が生じていると判断することできる。
【0059】
また、一見、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyに異常が存在しないと思われる場合においても、補正量CAk、CAc、CAm、CAyが時間的に変動するようなケースには、センサ異常の可能性があると判断することができる。
【0060】
<1.6 印刷制御処理およびセンサ異常検出処理>
本実施形態では、制御部100は、CPU111が所定プログラムを実行することにより、プロセス管理機能を有するオペレーティングシステム(以下「OS」と略記する)が動作するように構成されている。そして後述のように、印刷制御プログラム17およびセンサ異常検出プログラム18が、補助記憶装置12からメモリ112に読み出され、このOSによって提供される機能を利用してアプリケーションとしてCPU111により実行されることで、印刷制御処理およびセンサ異常検出処理が、互いに並行に動作する2つのプロセスとなる。なお、このOSでは、CPU111で動作する複数のプロセスの間での同期やデータの授受および共有のためのシステム関数が提供されるものとする。
【0061】
図9は、本実施形態においてCPU111が印刷制御プログラム17を実行することにより実現される印刷制御処理を示すフローチャートである。本実施形態に係るインクジェット印刷装置10では、入稿データに基づく印刷を行うために、制御部100が図9に示す手順にしたがって印刷データの生成や、印刷機構200ならびに用紙送出部202および用紙巻取部208の制御等を行う(図1図2参照)。このために、CPU111は、上記OSによる管理の下、まず、印刷制御プログラム17を補助記憶装置12からメモリ112に読み出してアプリケーションとして実行する。これにより、図9に示す印刷制御処理が1つのプロセスとして起動され、CPU111が印刷制御プログラム17にしたがって下記のように動作する。
【0062】
まず、外部からネットワーク3を介して与えられる入稿データに対しラスタライズ処理を施すように画像処理部117を制御し、これによりビットマップ形式の印刷データを生成する(ステップS12)。この印刷データの表す画像は、入稿データが示す印刷対象の画像である対象画像に加えて、JIパターン画像302を含む検査制御画像を含んでいる(図5図6参照)。
【0063】
その後、生成された印刷データの表す画像を印刷するための印刷実行制御を開始する(ステップS14)。具体的には、印刷データの表す画像(対象画像および検査制御画像からなる印刷画像)を用紙5に記録するために、記録部205とともに、用紙送出部202、駆動ローラ203,207、乾燥部206、撮像部209、および、用紙巻取部208を制御する動作を開始する(図1参照)。これにより、用紙送出部202から巻き出されて搬送される用紙5に記録部205により対象画像および検査制御画像が記録され、それら記録された画像が撮像部209により読み取られ、その後、それら画像の記録された用紙5が用紙巻取部208に巻き取られる。また、記録部205内を搬送される用紙5の側端位置が、端部センサ25k,25c,25m,25yにより検出される。さらに、このような印刷実行制御の開始とともに、後述のセンサ異常検出処理が開始される(図10参照)。すなわち、上記OSによる管理の下、センサ異常検出プログラム18を補助記憶装置12からメモリ112に読み出してアプリケーションとして実行する。これにより、図10に示すセンサ異常検出処理が印刷制御処理のプロセスとは並行に動作する別のプロセスとして起動される。
【0064】
このようにして印刷実行制御およびセンサ異常検出処理が開始されると、その印刷実行制御の下で用紙5の側端位置を検出する端部センサ25k,25c,25m,25yにより得られる検出値すなわちセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyを取得し(ステップS16)、それらのセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyに基づき、用紙5の蛇行が補償されるような補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAyをそれぞれ算出する(ステップS18)。 次に、算出された補正量CAk,CAc,CAm,CAyにしたがって画像位置を紙幅方向にシフトさせる(ステップS22)。すなわち、搬送方向において各端部センサ25xに対応する位置で、印刷画像の位置を補正量CAxにしたがって紙幅方向にシフトさせる(x=k,c,m,y)。
【0065】
その後、印刷制御処理とは並行に動作するプロセスとしてステップS14で開始されたセンサ異常検出処理が終了したか否かを判定する(ステップS24)。
【0066】
このステップS24での判定の結果、センサ異常検出処理が終了していない場合には、ステップS26へ進み、生成された印刷データについての印刷出力が終了したか否か、すなわち当該印刷データの表す印刷画像の用紙5への記録が終了したか否かを判定する。その判定の結果、当該印刷データについての印刷出力が終了していない場合にはステップS16へ戻る。以降、センサ異常検出処理が終了しない限り、当該印刷データについての印刷出力が終了するまで、ステップS16~S26を繰り返し実行する。
【0067】
ステップS16~S26を繰り返し実行している間に、ステップS24でセンサ異常検出処理が終了した判定されるか、または、ステップS26で上記印刷データについての印刷出力が終了したと判定されると、印刷実行制御を停止する(ステップS28)。これにより、記録部205、用紙送出部202、駆動ローラ203,207、乾燥部206、撮像部209、および、用紙巻取部208は動作を停止し、上記印刷データについての印刷が終了する。また、この時点でセンサ異常検出処理が継続中(センサ異常検出処理のプロセスが動作中)のときには、センサ異常検出処理が停止される。
【0068】
次に、センサ異常検出処理において設定されたセンサ情報に応じて後処理を実行し(ステップS29)、その後に印刷制御処理を終了する。このセンサ情報および後処理の詳細については後述する。
【0069】
図10は、CPU111がセンサ異常検出プログラム18を実行することにより実現されるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。このセンサ異常検出処理が印刷制御処理のプロセスとは並行に動作する別のプロセスとして既述のように起動されると、CPU111は、センサ異常検出プログラム18にしたがって下記のように動作する。
【0070】
まず、印刷制御処理において開始された印刷実行制御の下で撮像部209により用紙5から読み取られる印刷画像の中からJIパターン画像302を取得する(ステップS102)(図5図6参照)。次に、取得されたJIパターン画像302からJIパターン間距離Dc,Dm,Dyを算出する(ステップS104)(図6図8参照)。
【0071】
次に、印刷制御処理においてセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAyを取得する(ステップS106)。すなわち、印刷制御処理で補正量CAk,CAc,CAm,CAyが算出されると(図9のステップS18)、これらは、メモリ112のうちセンサ異常検出処理のプロセスと印刷制御処理のプロセスとで共用される領域(以下「共用メモリ」ともいう)に格納されるものとし、ステップS106では、この共用メモリから補正量CAk,CAc,CAm,CAyを取得する。ただし、ここで取得される補正量CAk,CAc,CAm,CAyは、印刷制御処理において比較的短い所定時間間隔で得られるセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される補正量CAk,CAc,CAm,CAyのうち(図7参照)、上記JIパターン画像302を含む印刷画像が読み取られた時点またはそれに最も近い時点に得られたセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される補正量CAk,CAc,CAm,CAyである。
【0072】
その後、取得された補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れているか否かを判定する(ステップS108)。この判定の結果、これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れている場合には、補正可能範囲Rcから外れている補正量CAx(xはk,c,m,yのいずれか)に対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常を示す状態値ST2とをセンサ情報として設定し(ステップS116)、センサ異常検出処理を終了する。
【0073】
一方、ステップS108において、補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれもが補正可能範囲Rcを外れていないと判定された場合には、ステップS110へ進み、ステップS104で算出されたJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れているか否かを判定する。この判定の結果、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれも許容範囲内に入っている場合にはステップS118に進む。

【0074】
ステップS118では、補正量CAk,CAc,CAm,CAyの時間変化の異常の有無または補正量CAk,CAc,CAm,CAy間の相互比較を考慮してセンサ異常の可能性が検討される。先述のように、端部センサ25に紙粉が付着したような場合には補正量CAk,CAc,CAm,CAyは補正可能範囲Rc内であるため、端部センサ25の異常を判断することは容易ではない。しかし、ステップS118の段階では、前段のステップS110において、JIパターン間距離が許容範囲を外れていないことが確認済みであるため、端部センサ25の出力に基づく蛇行補正は正常に行われていると一応推測することが可能である。このため、ステップS118の段階で少しでも異常な振る舞いをする端部センサ25は異常である蓋然性が高いとみなすことができる。そこで、ステップS118では、補正量CAk,CAc,CAm,CAyを所定時間チェックし、いずれかの補正量CAx(xはk,c,m,yのいずれか)に不自然な変動が見られた場合には、当該補正量CAxに異常があると判定して、ステップS120に進む。ステップS120では対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常の可能性を示す状態値ST1とをセンサ情報として設定し、センサ異常検出処理を終了する。補正量CAxの不自然な変動とは、所定時間内の補正量CAxの変動が不自然に大きい/または少ない例が挙げられる。さらに、図3に示すように本実施形態における印刷機構200は複数の端部センサ25k,25c,25m,25yを備えているので、一部の端部センサ25x(xはk,c,m,yのいずれか)の補正量CAxが他の端部センサ25z(zはk,c,m,yのいずれかであってz≠x)の補正量CAzと比較して不自然に異なる場合には、当該一部の端部センサ25xの補正量CAxに異常があると判定することも可能である。
【0075】
ステップS118で補正量CAk,CAc,CAm,CAyに異常がないと判定した場合には、ステップS122に進み、センサ正常を示す状態値ST0をセンサ情報として設定し、ステップS102へ戻る。
【0076】
以上説明したステップS118の実行時点では、それより以前のステップS22において、印刷位置が補正された状態でJIパターンの画像302が用紙5に記録されている。そして、異常検出部としての制御部100は、S110での判断結果(JIパターン間距離が許容範囲を外れているか否か)とS118での判断結果(補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかに時間変化に異常があるか等)とに基づいて、端部センサ25が正常であるか(ステップS122)、または異常の可能性があるか(ステップS120,S112)のいずれかの判定を下している。
【0077】
ステップS102~S110,S118,S122を繰り返し実行している間に、ステップS108で補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れていると判定された場合には、センサ異常が生じていると判断し(端部センサ25k,25c,25m,25yのいずれかに異常があると判断し)、補正可能範囲Rcから外れている補正量CAx(xはk,c,m,yのいずれか)に対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常を示す状態値ST2とをセンサ情報として設定し(ステップS116)、センサ異常検出処理を終了する。
【0078】
また、ステップS102~S110,S118,S122を繰り返し実行している間に、ステップS110でJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れていると判定された場合には、その直前のステップS108で補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれもが補正可能範囲Rcに入っていると判定されていることを考慮してセンサ異常とは断定せず、センサ異常が生じている可能性があると判断し、許容範囲から外れているJIパターン間距離Dx(xはc,m,yのいずれか)に対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常の可能性を示す状態値ST1とをセンサ情報として設定し(ステップS112)、センサ異常検出処理を終了する。
【0079】
また、ステップS102~S110,S118,S122を繰り返し実行している間に、ステップS118で補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが異常であると判定された場合には、その直前のステップS110で算出されたJIパターン間距離Dc,Dm,Dyがいずれも許容範囲内に入っていると判定されていることを考慮してセンサ異常とは断定せず、センサ異常が生じている可能性があると判断し、異常と判定された補正量補正量CAx(xはk,c,m,yのいずれか)に対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常の可能性を示す状態値ST1とをセンサ情報として設定し(ステップS120)、センサ異常検出処理を終了する。
【0080】
なお、ステップS112,S116,S120,S122で設定されるセンサ情報は、メモリ112のうちセンサ異常検出処理のプロセスと印刷制御処理のプロセスとで共用される領域すなわち共用メモリに格納されるものとする(図9のステップS29参照)(後述する他の実施形態や変形例においても同様)。このため、印刷制御処理におけるステップS29の後処理は、センサ異常検出処理により設定されたセンサ情報を用いて行われる。
【0081】
印刷制御処理で実行される後処理(図9のステップS29)として、以下のような処理を行うことが考えられる。ただし本実施形態では、これらの処理に限定されず、これらと異なる処理であっても、またこれらの処理に加えて他の処理を含む場合であっても、センサ情報に含まれる状態値ST0~ST2に応じた適切な処理を行えばよい。
(1)センサ異常を示す状態値ST2がセンサ情報に含まれる場合、そのセンサ情報に含まれる識別情報IDで特定される端部センサ25xを使用せずに、当該端部センサ25xの前後に配置されている端部センサの検出値から当該端部センサ25xの検出値を補間等によって予測する。そして、以後における印刷制御処理では、その予測した値を当該端部センサ25xによる検出値に代わりに用いて補正量CAk,CAc,CAm,CAyを算出する(図9のステップS16,S18)。
(2)センサ異常の可能性を示す状態値ST1がセンサ情報に含まれる場合、要注意としてセンサ異常に関するユーザの判断を補足する機能を実施する。例えば、センサ情報に含まれる識別情報IDで特定される端部センサ25xにつきセンサ異常の可能性があることを示す警告情報を、音声または表示によりユーザに告知する。
(3)センサ異常を示す状態値ST2またはセンサ異常の可能性を示す状態値ST1がセンサ情報に含まれる場合、自動クリーニングやノズル欠けの復活のためのフラッシングを所定量の印刷出力毎に挟むように印刷機構200を制御する。
(4)端部センサ25k,25c,25m,25yのうちセンサ異常が所定の頻度以上で生じる端部センサ25xがある場合には、その端部センサ25xをセンサ情報に基づき特定し、その端部センサ25xが故障している可能性があることを示す警告情報を、音声または表示によりユーザに告知する。
(5)センサ正常を示す状態値ST0がセンサ情報に含まれる場合には、後処理を省略してもよいが、端部センサ25k,25c,25m,25yが正常に動作していることを示すログ情報を制御部100において蓄積するようにしてもよい。
【0082】
<1.7 効果>
上記のような本実施形態によれば、センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れているか否かを判定するだけでなく、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れているか否かをも判定し(図10のステップS108,S110)、両判定結果に基づきセンサ異常が検出される。端部センサによる検出値にのみ基づきセンサ異常が検出されていた従来技術では、端部センサのおける紙粉等のゴミの付着によって当該端部センサが用紙の側端位置を正しく検出できないために用紙の蛇行補償のための補正が適切に行われない場合であっても、センサ異常が生じていることを検出できなかった。これに対し本実施形態によれば、いずれかの端部センサ25x(xはk,c,m,yのいずれか)による検出値SExが検出可能範囲Rd内であるために補正量CAxが補正可能範囲Rcに入っているが、その端部センサ25xのおける紙粉等のゴミの付着によって当該検出値SExが正しい値ではない場合には、JIパターン間距離Dxが許容範囲から外れることになり、これによりセンサ異常を検出することができる。このように、用紙の蛇行による色ずれ等の防止のために用紙5の側端位置を検出する端部センサの異常(センサ異常)を、従来よりも確実に検出することができる。
【0083】
また本実施形態によれば、センサ異常が生じている場合には、少なくともいずれかのJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが正常位置からずれていることを用紙5に記録されたJIパターン画像を観察することで視覚的に容易に確認することができる。
【0084】
さらに本実施形態によれば、センサ異常か否かを示す2種類のセンサ情報のいずれかが設定されるだけでなく、センサ異常とは断定できないがセンサ異常の可能性がある場合には、そのようなセンサ異常の可能性を示すセンサ情報が設定される(図10のステップS112)。これにより、センサ異常の有無につき二者択一的な判断をする場合に比べ、用紙5の蛇行による色ずれ等の不具合に対し柔軟に対処できるようになる。このため、センサ異常に関して得られるセンサ情報に応じたより適切な対応が可能となる。
【0085】
さらにまた本実施形態によれば、JIパターン間距離に基づく判定だけではセンサ異常を確実に判定できない場合に、センサ補正値CAk,CAc,CAm,CAyの時間変化や相互比較などを加味して画像位置補正量CAxのいずれかの異常の可能性を判断している(図10のステップS118)。これにより、より多くの要素に基づく判断が可能になるのでより柔軟に対処できるようになる。
【0086】
<2.第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、センサ異常検出処理において、センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れているか否かが判定され、その判定の結果、これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれもが補正可能範囲Rcに入っている場合に、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れているか否かが判定される(図10のステップS108,S110)。しかし、図11に示すように、補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れているか否かの判定を必須としなくてもよい。図11は、このような構成を採用した場合のセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。図11では、このセンサ異常検出処理のうち上記第1の実施形態におけるセンサ異常検出処理(図10)と同一の部分には同一のステップ番号を付している。図11図10と比較すればわかるように、図11のセンサ異常検出処理では、上記第1の実施形態におけるセンサ異常検出処理を構成するステップS108が削除されている。また、ステップS110で「Yes」と判定されると、センサ異常を示すセンサ情報を設定するステップS116に直ちに移行する。他の部分は上記第1の実施形態におけるセンサ異常検出処理と同じである。
【0087】
<3.変形例>
<3.1 第1の変形例>
上記第1の実施形態では、センサ異常検出処理(図10)において、用紙5の蛇行補償のための補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAyおよびJIパターン間距離Dc,Dm,Dyに基づき、端部センサ25k,25c,25m,25yが正常に動作しているか否かが判断されるが、これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れている場合には、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyを考慮することなく、センサ異常が発生していると判断される(図10のステップS108→S116)。これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyは、印刷制御処理(図9)において、センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される(図9のステップS16,S18)。このため、印刷制御処理において、センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される補正量CAk,CAc,CAm,CAyに基づきセンサ異常を検出するようにしてもよい。図12は、このような構成を採用した場合の印刷制御処理を示すフローチャートである。図12では、この印刷制御処理のうち上記第1の実施形態における印刷制御処理(図9)と同一の部分には同一のステップ番号を付している。図12図9と比較すればわかるように、図12の印刷制御処理では、上記第1の実施形態における印刷制御処理(図9)に対しステップS20およびS25が追加されており、他の部分は上記第1の実施形態における印刷制御処理と同じである。なお、上記第2の実施形態において、図9の印刷制御処理に代えて図12の印刷制御処理を用いてもよい。
【0088】
以下、図12に示す印刷制御処理を採用したインクジェット印刷装置を第1の変形例として説明する。なお本変形例において、印刷制御処理以外の構成については上記第1の実施形態と同様であるので、同一または対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。ただし、図12に示す印刷制御処理に対応して、図10に示すセンサ異常検出処理を修正してもよい。例えば、図10のフローチャートにおいて、ステップS116を削除し、ステップS108で補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcを外れていると判定された場合に、センサ情報の設定を行わずにセンサ異常検出処理を終了するようにしてもよい。
【0089】
本変形例に係るインクジェット印刷装置においても、入稿データに基づく印刷を行うために、CPU111は、既述のOSによる管理の下、まず、印刷制御プログラム17を補助記憶装置12からメモリ112に読み出してアプリケーションとして実行する。これにより、図12の印刷制御処理が1つのプロセスとして起動され、CPU111が、本変形例における印刷制御プログラム17にしたがって、すなわち図12に示す手順にしたがって、下記のように動作する。
【0090】
まず、ステップS12~S18において、上記第1の実施形態と同様にして(図9)、印刷データの生成、印刷実行制御の開始、センサ異常検出処理の開始(センサ異常検出処理プロセスの起動)、センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyの取得、および、これらのセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyに基づく補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAyの算出を行う。その後、上記第1の実施形態とは異なり、算出された補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れているか否かを判定する(ステップS20)。この判定の結果、これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれもが補正可能範囲Rcに入っている場合には、ステップS22へ進み、上記第1の実施形態における印刷制御処理のステップS22~S29と同様の処理を行う。
【0091】
一方、ステップS20での判定の結果、これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れている場合には、センサ異常が生じていると判断し、補正可能範囲Rcから外れている補正量CAx(xはk,c,m,yのいずれか)に対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常を示す状態値ST2とをセンサ情報として設定し(ステップS25)、ステップS28へ進む。以降の処理(ステップS28,S29)は、上記第1の実施形態における印刷制御処理と同様である。
【0092】
上記のような本変形例では、用紙5の蛇行補償のために、所定時間間隔で取得されるセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyに基づき補正量CAk,CAc,CAm,CAyが算出される毎に、これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyが補正可能範囲Rcを外れているか否かが判定される(ステップS16~S20)。この判定の結果、これらの補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れている場合には、補正可能範囲Rcから外れている補正量CAxに対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常を示す状態値ST2とをセンサ情報として設定され、印刷実行制御およびセンサ異常検出処理が停止される(ステップS28)。その後、設定されたセンサ情報に応じて既述の後処理が実行され(ステップS29)、印刷制御処理を終了する。したがって、本変形例によれば、上記第1の実施形態と同様の効果が得られることに加え、センサ異常の発生を迅速に検出し、そのセンサ異常に応じた後処理を行うことができる。
【0093】
<3.2 第2の変形例>
上記第1および第2の実施形態では、センサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyから算出される補正量(画像位置補正量)CAk,CAc,CAm,CAy、および、JIパターン画像302から算出されるJIパターン間距離Dc,Dm,Dyに基づき、センサ異常がより確実に検出される。このセンサ異常の検出のために、上記第1の実施形態では図10に示すセンサ異常検出処理が使用され、上記第2の実施形態では図11に示すセンサ異常検出処理が使用される。しかし、センサ異常の検出のために使用可能なセンサ異常検出処理は、図10および図11に示すものに限定されず、センサ検出値に基づく補正量およびJIパターン画像に基づきセンサ異常を従来よりも確実に検出できるものであれば、他のセンサ異常検出処理を使用してもよい。例えば、図10および図11に示すセンサ異常検出処理に代えて、図13に示すセンサ異常検出処理を使用してもよい。
【0094】
図13図10と比較すればわかるように、図13のセンサ異常検出処理では、図10のセンサ異常検出処理(上記第1の実施形態におけるセンサ異常検出処理)に対しステップS115が追加されており、他の部分は図10の印刷制御処理と同様である。この図13のセンサ異常検出処理では、図10のセンサ異常検出処理とは異なり、ステップS108で補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れていると判定された場合には、さらに、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れているか否かが判定される(ステップS115)。この判定の結果、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれもが許容範囲に入っていれば、補正可能範囲Rcから外れている補正量CAx(xはk,c,m,yのいずれか)に対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常の可能性を示す状態値ST1とがセンサ情報として設定され(ステップS114)、センサ異常検出処理が終了する。一方、ステップS115での判定の結果、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れている場合には、許容範囲から外れているJIパターン間距離Dx(xはk,c,m,yのいずれか)に対応する端部センサ25xの識別情報IDとセンサ異常を示す状態値ST2とがセンサ情報として設定され(ステップS116)、センサ異常検出処理が終了する。
【0095】
このように図13のセンサ異常検出処理では、補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れているという条件、および、JIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れているという条件のうち、双方の条件が満たされる場合にセンサ異常が発生していると判断され(ステップS116)、一方の条件のみが満たされる場合にセンサ異常と断定せずにセンサ異常の可能性ありと判断され(ステップS114)、いずれの条件も満たされない場合にセンサ正常と判断される(ステップS112)。
【0096】
上記のようなセンサ異常検出処理を採用する場合においても、用紙の蛇行による色ずれ等の防止のために用紙5の側端位置を検出する端部センサの異常(センサ異常)を従来よりも確実に検出することができ、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0097】
<3.3 第3の変形例>
上記第2の変形例における図13に示すセンサ異常検出処理に代えて図14に示すセンサ異常処理を使用してもよい。以下、図14に示すセンサ異常処理を行うインクジェット印刷装置を第3の変形例として説明する。図14は、本変形例におけるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。図14では、このセンサ異常検出処理のうち上記第2の変形例におけるセンサ異常検出処理(図13)と同一の部分には同一のステップ番号を付している。
【0098】
図14図13と比較すればわかるように、図14のセンサ異常検出処理では、図13のセンサ異常検出処理におけるステップS115が削除されており、他の部分は図13のセンサ異常検出処理と同様である。
【0099】
図14に示すように、本変形例におけるセンサ異常検出処理では、ステップS108で補正量CAk,CAc,CAm,CAyのいずれかが補正可能範囲Rcから外れていると判定された場合には、センサ異常が生じていると判断し、ステップS116へ進む。ステップS108で補正量CAy,CAm,CAc,CAkのいずれもが補正可能範囲Rcに入っていると判定されたが、ステップS110でJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れていると判定された場合には、センサ異常が生じている可能性があると判断し、ステップS114へ進む。ステップS108で補正量CAy,CAm,CAc,CAkのいずれもが補正可能範囲Rcに入っていると判定され、かつ、ステップS110でJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれもが許容範囲に入っていると判定された場合には、センサ異常が生じていない(センサ正常)と判断し、ステップS112へ進む。
【0100】
<3.4 第4の変形例>
上記第3の変形例における図14に示すセンサ異常検出処理に代えて図15に示すセンサ異常処理を使用してもよい。以下、図15に示すセンサ異常処理を行うインクジェット印刷装置を第4の変形例として説明する。図15は、本変形例におけるセンサ異常検出処理を示すフローチャートである。図15では、このセンサ異常検出処理のうち上記第3の変形例におけるセンサ異常検出処理(図14)と同一の部分には同一のステップ番号を付している。
【0101】
図15図14と比較すればわかるように、図15のセンサ異常検出処理では、上記第3の変形例におけるセンサ異常検出処理におけるステップS108,S110がステップS109,S111にそれぞれ置き換えられており、他の部分は上記第3の変形例におけるセンサ異常検出処理と同じである。
【0102】
図15に示すように、本変形例におけるセンサ異常検出処理では、ステップS109でJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれかが許容範囲から外れていると判定された場合には、センサ異常が生じていると判断し、ステップS116へ進む。ステップS109でJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれもが許容範囲に入っていると判定されたが、ステップS111で補正量CAy,CAm,CAc,CAkのいずれかが補正可能範囲Rcから外れていると判定された場合には、センサ異常が生じている可能性があると判断し、ステップS114へ進む。ステップS109でJIパターン間距離Dc,Dm,Dyのいずれもが許容範囲に入っていると判定され、かつ、ステップS111で補正量CAy,CAm,CAc,CAkのいずれもが補正可能範囲Rcに入っていると判定された場合には、センサ異常が生じていない(センサ正常)と判断し、ステップS112へ進む。
【0103】
<3.5 その他の変形例>
上記第1および第2の実施形態では、用紙5の蛇行補償のための画像位置の補正に応じて、対象画像の印刷位置だけでなくJIパターン画像302の印刷位置もシフトされ(図9のステップS16~S22参照)、その結果、端部センサ25k,25c,25m,25yが用紙5の側端位置を正しく検出しているときには、用紙5が蛇行しても、用紙5に記録されるJIパターン画像302における線状パターン32k,32c,32m,32yは正常位置に維持される。しかし、JIパターン画像302における線状パターン32k,32c,32m,32yが、それぞれ、記録ヘッド列205k,205c,205m,205yにおける特定のノズル20からインクを吐出することにより用紙5に記録されるようにしてもよい。すなわち、印刷画像のうちJIパターン画像302については、蛇行補償のための補正(画像データ修正)を行うことなく、記録ヘッド列205k,205c,205m,205yにより用紙5に記録するようにしてもよい。このようにすれば、用紙5に記録されるJIパターン画像302における線状パターン32k,32c,32m,32yの位置が、用紙5の蛇行に応じて正常位置からずれることになる。したがって、この場合、当該線状パターン32k,32c,32m,32yの位置の正常位置からのずれ量をセンサ検出値SEk,SEc,SEm,SEyと比較することによりセンサ異常を検出することができる。
【0104】
上記第1および第2の実施形態では、用紙5の蛇行補償のための画像位置の補正は、印刷対象を表す画像データを修正すること(画像データ修正構成)により行われるが、これに代えて、記録ヘッドを紙幅方向に移動させること(記録ヘッド移動構成)により行ってもよい。また、記録ヘッドを紙幅方向に移動させる代わりに用紙5を紙幅方向に移動させてもよい。
【0105】
上記第1および第2の実施形態では、センサ異常の検出のために紙幅方向における印刷位置のずれを検出できる検査用パターンとして、Y色インクにより記録されるべき線状パターン32yと、M色インクにより記録されるべき線状パターン32mと、C色インクにより記録されるべき線状パターン32cと、K色インクにより記録されるべき線状パターン32kとから構成されるJIパターンが使用されているが(図5図6)、ここで検査用パターンとして使用可能なパターンは、このJIパターンに限定されない。このJIパターンに代えて、用紙5における印刷位置のずれを検出できる他のパターン(例えば、特開2015-182364号公報に記載された用紙5のずれの方向やずれ量を検出できるチャート)を検査用パターンとして使用してもよい。
【0106】
上記第1および第2の実施形態や変形例におけるセンサ異常検出処理(図10図11図13)では、端部センサ25x(x=k,c,m,y)における異常の有無を示す状態値は、センサ正常を示す状態値ST0と、センサ異常の可能性を示す状態値ST1と、センサ異常を示す状態値ST2との3つの状態値を取り得るが(ステップS112,S114,S116参照)、これに代えて、センサ正常を示す状態値とセンサ異常を示す状態値との2つの状態値のみを取り得るように構成されていてもよい。この場合、ステップS114の処理はステップS116と同じ処理となる。
【符号の説明】
【0107】
5 …用紙(連続記録媒体)
10 …インクジェット印刷装置
17 …印刷制御プログラム
18 …センサ異常検出プログラム
21 …記録ヘッド
20 …ノズル
25 …端部センサ
25k,25c,25m,25y …端部センサ
32k,32c,32m,32y …線状パターン
100…制御部
111…CPU
200…印刷機構
205…記録部
205k,205c,205m,205y …記録ヘッド列
209…撮像部
302…JIパターン画像(検査用パターンの画像)
Le …発光範囲
Dc,Dm,Dy …JIパターン間距離
図1
図2
図3
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図5
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図15