(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】読取システム、通信システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
G06K7/10 184
(21)【出願番号】P 2020063613
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】大鷲 祐貴
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-161483(JP,A)
【文献】特開2006-111411(JP,A)
【文献】国際公開第2006/106579(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力に応じて定まる放射領域に存在する、ICタグと通信を行う通信部と、
前記通信部によってICタグとの通信が許容される領域として定められた許容領域と、前記通信部による通信の読み取り対象外として定められた対象外領域と、の境界に応じた位置に配置され、前記許容領域の基準位置を表す第1基準ICタグと、
前記許容領域内に設定される、管理対象のICタグを収容可能な領域である収容領域の外側であって、前記許容領域の内側の何れかの位置に配置される第2基準ICタグと、
前記通信部によって前記第1基準ICタグの読取結果と、前記第2基準ICタグの読取結果とに基づいて、前記通信部の放射領域の広さが、前記第1基準ICタグを読み取らず前記第2基準ICタグを読み取ることが可能となるように前記通信部の放射領域の大きさを変更する通信範囲制御部と、
前記収容領域と、前記許容領域との境界に応じた位置に配置され、前記収容領域の基準位置を示す第3基準ICタグと、
前記通信部によってICタグを読み取った結果を、前記第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果とともに記憶する記憶部と、
を有する読取システム。
【請求項2】
前記通信範囲制御部は、
前記第1基準ICタグを読み取った場合には前記通信部の出力を減少させ、前記第2基準ICタグを読み取れない場合には前記通信部の出力を増加させることで前記放射領域の大きさを変更する
請求項1に記載の読取システム。
【請求項3】
出力に応じて定まる放射領域に存在する、ICタグと通信を行う通信部と、
前記通信部によってICタグとの通信が許容される領域として定められた許容領域と、前記通信部による通信の読み取り対象外として定められた対象外領域と、の境界に応じた位置に配置され、前記許容領域の基準位置を表す第1基準ICタグと、
前記許容領域内に設定される、管理対象のICタグを収容可能な領域である収容領域の外側であって、前記許容領域の内側の何れかの位置に配置される第2基準ICタグと、
前記収容領域と、前記許容領域との境界に応じた位置に配置され、前記収容領域の基準位置を示す第3基準ICタグと、
通信ユニットと、
記憶部と
を有する通信システム
の制御方法であって、
前記通信ユニットの通信範囲制御部が、前記通信部によって前記第1基準ICタグの読取結果と、前記第2基準ICタグの読取結果とに基づいて、前記通信部の放射領域の広さが、前記第1基準ICタグを読み取らず前記第2基準ICタグを読み取ることが可能となるように前記通信部の放射領域の大きさを変更
し、
前記記憶部が、前記通信部によってICタグを読み取った結果を、前記第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果とともに記憶する
通信
システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取システム、通信システムの制御方法に関する。
特に、本発明は、非接触IC(Integrated Circuit)タグとの通信を行う為の通信手段を備えてなる読取システム、通信システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF(Ultra High Frequency)帯のRFID(radio frequency identifier)タグは、製造工程や物流現場など様々な場所で管理を行う際に使用されている。特に、複数のRFIDタグを一括で読取りたい場合には、非常に有効な手段である。
しかし、その読取範囲の広さから、読取対象の物品の周辺に存在する、読取対象ではない物品も読み取ってしまう場合がある。そのため、特許文献1のように、読取ゲート構造体を電波吸収体とすることで、アンテナの読取範囲を狭め、且つ、楕円形の指向性の場合に、アンテナを90°回転させる機構を持たせることで、読取対象以外のタグを読み取らないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、読取対象以外のタグを読まないようにするため、且つ、読取範囲を限定するために、電波を遮蔽する遮蔽部材を設ける必要があった。また、アンテナによる読み取り対象領域の大きさは、周囲の環境(例えば温度等)によって変動してしまう。この場合、環境を測定し、その結果に応じて放射領域を変更するためにアンテナ出力を増減させることも考えられるが、その場合、環境を測定する必要が生じる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、環境の変化があっても、遮蔽部材を設けることなく読取範囲を定めることができる読取システム、通信システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、出力に応じて定まる放射領域に存在する、ICタグと通信を行う通信部と、前記通信部によってICタグとの通信が許容される領域として定められた許容領域と、前記通信部による通信の読み取り対象外として定められた対象外領域と、の境界に応じた位置に配置され、前記許容領域の基準位置を表す第1基準ICタグと、前記許容領域内に設定される、管理対象のICタグを収容可能な領域である収容領域の外側であって、前記許容領域の内側の何れかの位置に配置される第2基準ICタグと、前記通信部によって前記第1基準ICタグの読取結果と、前記第2基準ICタグの読取結果とに基づいて、前記通信部の放射領域の広さが、前記第1基準ICタグを読み取らず前記第2基準ICタグを読み取ることが可能となるように前記通信部の放射領域の大きさを変更する通信範囲制御部と、前記収容領域と、前記許容領域との境界に応じた位置に配置され、前記収容領域の基準位置を示す第3基準ICタグと、前記通信部によってICタグを読み取った結果を、前記第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果とともに記憶する記憶部と、を有する。
【0007】
また、本発明の一態様は、出力に応じて定まる放射領域に存在する、ICタグと通信を行う通信部と、前記通信部によってICタグとの通信が許容される領域として定められた許容領域と、前記通信部による通信の読み取り対象外として定められた対象外領域と、の境界に応じた位置に配置され、前記許容領域の基準位置を表す第1基準ICタグと、前記許容領域内に設定される、管理対象のICタグを収容可能な領域である収容領域の外側であって、前記許容領域の内側の何れかの位置に配置される第2基準ICタグと、前記収容領域と、前記許容領域との境界に応じた位置に配置され、前記収容領域の基準位置を示す第3基準ICタグと、通信ユニットと、記憶部とを有する通信システムの制御方法であって、前記通信ユニットの通信範囲制御部が、前記通信部によって前記第1基準ICタグの読取結果と、前記第2基準ICタグの読取結果とに基づいて、前記通信部の放射領域の広さが、前記第1基準ICタグを読み取らず前記第2基準ICタグを読み取ることが可能となるように前記通信部の放射領域の大きさを変更し、前記記憶部が、前記通信部によってICタグを読み取った結果を、前記第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果とともに記憶する通信システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、環境の変化があっても、遮蔽部材を設けることなく、読取範囲を定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の一実施形態による読取システム1の構成を示す概略構成図である。
【
図2】リーダライタ101の出力のレベルと各基準ICタグの読み取り状況と出力の調整との関係の一例を説明する図である。
【
図3】通信ユニット10のリーダライタ101の出力を調整する動作を説明するフローチャートである。
【
図4】通信ユニット10のリーダライタ101の読取結果を記憶する動作を説明するフローチャートである。
【
図5】通信ユニット10のリーダライタ101の読取結果を記憶する他の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】この発明の変形例による読取システム1Aの構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による読取システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による読取システム1の構成を示す概略構成図である。
読取システム1は、容器Cと、通信ユニット10と、基準ICタグT1と、基準ICタグT2と、基準ICタグT3とを含む。
【0011】
容器Cは、内周側に1つまたは複数の物品を収容可能な収容容器である。容器Cの形状は、箱状であり、物品を収容しているか否かに関わらす一定の形状を保持することができるものである。また、容器Cは、通信ユニット10のリーダライタ101から放射される電波を透過することが可能な材料(樹脂、紙等)で形成される。
容器Cは、容器本体C1と、蓋部C22とを含む。
容器本体C1は、開口部から連なるように凹部が形成されており、その凹部の内周側に形成された収容部C3に物品を収容可能である。蓋部C2は、容器本体C1の開口部に取り付け可能である。また、蓋部C2は、容器本体C1から取り外すことが可能である。この蓋部C2を容器本体C1からとり外すことで、物品を容器本体C1の収容部C3に収容することが可能であり、一方で、蓋部C2を容器本体C1の開口部に取り付けることで、収容された物品が容器Cの外部に出ないようにすることができる。容器Cは、この蓋部C2を有していなくてもよい。
【0012】
物品には、それぞれICタグが取り付けられる。ここでは、ICタグT11と、ICタグT12が容器Cに収容されている場合が図示されている。ICタグT11は、第1物品に取り付けられており、ICタグT12は、第1物品とは異なる物品である第2物品に取り付けられている。ICタグT11、ICタグT12、基準ICタグT1、基準ICタグT2、基準ICタグT3は、それぞれ異なる識別情報が割り当てられており、この識別情報に基づいて、各ICタグを識別できるようになっている。
【0013】
例えば、容器C内にいずれの物品が収容されているかを把握するために、通信ユニット10によって、ICタグの読取を行うが、そのとき、容器Cの外部にあるICタグも読み取ってしまうと、容器C内に収容されていないICタグを読み取ってしまうことになり、物品の把握を正確に行うことができなくなってしまう。そこで、通信ユニット10によって、容器Cの外部にあるICタグを読み取らないようにしつつ、かつ、収容部C3内のICタグが読める状態であったか否かについても確認できるようにする。
【0014】
通信ユニット10は、容器Cの複数の側部のうちいずれか1つの側部に取り付けられる。通信ユニット10は、リーダライタ101、通信範囲制御部102、記憶部103、書き込み部104を含む。
リーダライタ101は、出力に応じて定まる放射領域Rに存在する、ICタグと通信を行う。
リーダライタ101の放射領域(放射パターン)は、アンテナの形状や出力特性によって決まる。この実施形態において、リーダライタ101の放射領域の大きさは、ICタグと無線通信するための送信アンプのゲインを調整することで変更可能である。
また、リーダライタ101は、送信アンプのゲインの調整の他に、周囲の環境の変化に起因して、通信可能な領域の広さが変わることがある。例えば、周囲の温度の変化によって、通信アンプの増幅率や、空気中の屈折率などの物性値が変化することがあり、これにより、通信可能な距離や幅方向の広さが変化する。
【0015】
通信範囲制御部102は、リーダライタ101によって第1基準ICタグ(例えば基準ICタグT1)の読取結果と、第2基準ICタグ(例えば基準ICタグT2)の読取結果とに基づいて、リーダライタ101の放射領域の広さが、第1基準ICタグ(基準ICタグT1)を読み取らず第2基準ICタグ(基準ICタグT2)を読み取ることが可能となるようにリーダライタ101の放射領域の大きさを変更する。
より具体的に、通信範囲制御部102は、第1基準ICタグ(基準ICタグT1)を読み取った場合にはリーダライタ101の出力を減少させ、第2基準ICタグ(基準ICタグT2)を読み取れない場合にはリーダライタ101の出力を増加させることで、放射領域の大きさを変更する。
【0016】
通信範囲制御部102は、リーダライタ101の出力を減少させる場合には、リーダライタ101の内部の回路に設けられた送信アンプのゲインを減少させることで、放射領域の大きさが小さくなるように変更することができ、リーダライタ101の出力を増加させる場合には、当該送信アンプのゲインを増加させることで、放射領域の大きさが大きくなるように変更することができる。通信範囲制御部102は、リーダライタ101の出力を増加させることで、リーダライタ101の正面側において読取ができる距離を長くすることができ、リーダライタ101の出力を減少させることで、リーダライタ101の正面側において読取ができる距離を短くすることができる。ここで、リーダライタ101の特性にもよるが、通信範囲制御部102は、リーダライタ101の出力を増加させることで、リーダライタ101の正面側における幅方向の読取可能な幅を広くすることができ、リーダライタ101の出力を減少させることで、リーダライタ101の正面側における幅方向の読取可能な幅を狭くすることもできる。
【0017】
また、通信範囲制御部102は、アンテナが基準ICタグに対して平行な面内で90°回転することができる手段を備えている。90°回転することで、アンテナの放射範囲が楕円形だったとしても、最適な読取範囲に設定することができる。
通信範囲制御部102は、基準ICタグ(基準タグT1、T2、T3)の識別情報を予め記憶しており、リーダライタ101によって取得された識別情報のうち、基準ICタグ(基準タグT1、T2、T3)の識別情報があるか否かを判定することで、基準ICタグ(基準タグT1、T2、T3)を読み取ることができたか否かを判定することができる。
通信範囲制御部102は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0018】
記憶部103は、リーダライタ101によってICタグを読み取った結果を、第3基準ICタグ(例えば基準ICタグT2)を読めたか否かの読取結果とともに記憶する。
【0019】
記憶部は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0020】
書き込み部104は、リーダライタ101によって読み取った結果を記憶部103に書き込む。書き込み部104は、リーダライタ101によって物品のICタグから読み取った識別情報を記憶部103に書き込むとともに、第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果を書き込む。
第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果は、第3基準ICタグ(基準ICタグT3)を読み取れた場合には、第3基準ICタグの識別情報を記憶し、第3基準ICタグ(基準ICタグT3)を読み取れなかった場合には、第3基準ICタグ(基準ICタグT3)の識別情報を記憶しない(例えばNULL)ことで、読取結果がいずれであるかを示すこともできる。また、第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果は、読取結果を示すフラグを用いてもよい。
書き込み部104が、リーダライタ101によってICタグを読み取った結果を、第3基準ICタグを読めたか否かの読取結果とともに記憶部103に記憶することで、収容部C3に収容されたICタグを読み取ることが可能な状態(放射領域が正常な範囲)において、物品のICタグの読取処理を行っていたか、収容部C3に収容されたICタグに少なくとも一部のICタグを読み取ることができない状態(放射領域が正常ではない範囲)において読取処理が行われていたかを把握することができる。
【0021】
基準ICタグT1、基準ICタグT2は、放射領域を設定する上で基準となる位置を示すために用いることができ、基準ICタグT3は、容器C内に収容された物品に取り付けられたICタグ(例えば、ICタグT11、ICタグT12)を読み取ることが可能な状況であったか否かを確認するために用いることができる。
基準ICタグT1、基準ICタグT2、基準ICタグT3は、リーダライタ101を基準として概ね同じ方向に沿った位置であって、お互いに異なる距離となるように容器Cに取り付けられる。リーダライタ101を基準として、基準ICタグT1、基準ICタグT2、基準ICタグT3が取り付けられる距離は、基準ICタグT1が最も長く、基準ICタグT3が最も短く、基準ICタグT2が基準ICタグT1と基準ICタグT3との間に位置する。
また、基準ICタグT1、基準ICタグT2、基準ICタグT3に割り当てられたそれぞれの識別情報を参照することで、いずれの基準ICタグを読み取ることができたか、あるいはいずれも読み取ることができなかったのかを把握できる。また、基準ICタグT1、基準ICタグT2、基準ICタグT3に割り当てられたそれぞれの識別情報を例えば、記憶部103に予め記憶しておき、これを参照することで、いずれの基準ICタグを読み取ることができたか、あるいは、物品に取り付けられたICタグであるかを識別することもできる。
また、基準ICタグT1、基準ICタグT2、基準ICタグT3の取り付け位置は、リーダライタ101の電波放射面の中央部を基準として、この電波放射面に対向する容器Cのいずれかの部位であることが望ましいが、電波放射面に対向する容器Cの対向面の近傍におけるいずれの位置に取り付けても良い。
【0022】
基準ICタグT1は、リーダライタ101によってICタグとの通信が許容される領域として定められた許容領域と、リーダライタ101による通信の読み取り対象外として定められた対象外領域と、の境界に応じた位置に配置され、許容領域の基準位置を表す。
ここでは、基準ICタグT1は、容器Cにおいて、通信ユニット10が取り付けられた側部に対向する側部のうち、容器Cの外面側に取り付けられる。この基準ICタグT1は、外面に貼り付けられてもよいし、外面の一部に設けられた窪みに取り付けるようにしてもよい。基準ICタグT1が設けられることで、少なくとも基準ICタグT1とリーダライタ101との間に容器Cの収容部C3が位置することになる。これにより、基準ICタグT1は、容器Cの外部側と容器Cの内部側との境界の位置を示すことができる。ここでは、容器Cの外部側が対象外領域として設定され、基準ICタグT1が取り付けられた容器Cの外面よりも内側(少なくとも収容部C3を含む領域)が許容領域として設定される。
また、この基準ICタグT1は、放射領域の最大距離の位置を示すものとして用いることができる。
【0023】
基準ICタグT3は、許容領域内に設定される、管理対象のICタグを収容可能な領域である収容領域と、許容領域との境界に応じた位置に配置され、前記収容領域の基準位置を示す。
基準ICタグT3は、容器Cにおいて、通信ユニット10が取り付けられた側部に対向する側部のうち、容器Cの内周側に取り付けられる。この基準ICタグT3は、内周面に貼り付けられてもよいし、内周面の一部に設けられた窪みに取り付けるようにしてもよい。基準ICタグT3が設けられることで、少なくとも基準ICタグT3とリーダライタ101との間に容器Cの収容部C3が位置することになる。これにより、基準ICタグT3は、通信ユニット10が取り付けられた容器Cの側部に対向する側部のうち、収容部C3と容器本体C1との境界の位置を示すことができる。言い換えると、基準ICタグT3は、収容部C3のうち通信ユニット10が設けられた容器Cの部位とは反対側の部位の位置を表すことができるため、この基準ICタグT3をリーダライタ101によって読み取ることができていれば、基準ICタグT3よりもリーダライタ101側すなわち収容部C3に収容されたICタグ(例えばICタグT11、ICタグT12)を読取可能な状態であったことを示すことができる。
【0024】
基準ICタグT2は、収容領域(例えば収容部C3)の外側であって対象領域の内側の何れかの位置に配置される。
ここでは、基準ICタグT2は、容器Cにおいて、通信ユニット10が取り付けられた側部に対向する側部のうち、容器Cの外面側と容器Cの内周面側との間に設けられる。この基準ICタグT2は、容器Cの外面側と容器Cの内周面側との間に埋め込まれてもよいし、容器Cの側部を構成する、外面側部材と内周面側部材との間に挟み込むようにしてもよい。
基準ICタグT2が設けられることで、少なくとも基準ICタグT2とリーダライタ101との間に容器Cの収容部C3が位置することになるとともに、基準ICタグT2が収容部C3の外側であることを示すことができる。これにより、基準ICタグT2は、容器Cの外部側と容器Cの収容部C3との間のいずれかの位置を示すことができる。
また、この基準ICタグT2は、最小距離の位置を示すものとして用いることができる。
ここでは、リーダライタ101は、許容領域の境界が、基準ICタグT1と基準ICタグT2との間に位置するように通信範囲制御部102によって制御される。仮に、基準ICタグT1を読み取ることができない状態であって、基準ICタグT2を読み取ることができる状態に放射領域が調整されている状態において、環境(温度、湿度、気圧等)が変化し、この環境の変化に伴って、リーダライタ101の特性が変化することで、基準ICタグT2を読み取ることができない状態に放射領域が変動したとしても、基準ICタグT3を読み取ることができていれば、収容部C3に存在するICタグを読み取ることが可能な状態であったことを把握することができる。仮に、基準ICタグT2を読み取ることができない状態であり、かつ、基準ICタグT3が読み取ることができなかった場合には、収容部C3内の少なくとも一部のICタグについて、読取できなかった可能性があることを把握することができる。
【0025】
図2は、リーダライタ101の出力のレベルと各基準ICタグの読み取り状況と出力の調整との関係の一例を説明する図である。
例えば、初期状態として想定した環境下において最適な出力レベルが100である場合、通信範囲制御部102は、例えば、通信の開始時において、リーダライタ101の送信アンプのゲインを出力レベル60に応じた値に変更する。この場合、最小距離である基準ICタグT2を読み取ることができなかった場合(
図1符号200、
図2「T2読取」が「×」)、出力を増加する。ここで、通信範囲制御部102は、リーダライタ101の送信アンプのゲインを出力レベル80まで増加させた場合には、基準ICタグT3を読み取ることができるようになる(
図1符号210、
図2「T3読取」が「○」)。しかし、最小距離である基準ICタグT2を読み取ることが出来なかった場合(
図1符号210、
図2「T2読取」が「×」であって「T3読取」が「○」)、通信範囲制御部102は、出力を増加する。
そして、通信範囲制御部102は、リーダライタ101の送信アンプのゲインを出力レベル100まで増加させた場合には、最小位置を示す基準ICタグT2を読み取ることができるようになる(
図1符号220、
図2「T2読取」及び「T3読取」が「○」)。通信範囲制御部102は、基準ICタグT2を読み取ることができた場合には、リーダライタ101の出力を維持する。
ここで、環境の変化等の要因によって、リーダライタ101の送信アンプのゲインを出力レベル120相当の大きさまで放射領域が拡大し、最大距離である基準ICタグT1を読み取ることができるようになり(
図1符号230、
図2「T1読取」が「○」)、基準ICタグT1を読み取ることができた場合には、通信範囲制御部102は、リーダライタ101の出力を減少させる。そして、通信範囲制御部102は、リーダライタ101の送信アンプのゲインを出力レベル100まで減少させた場合には、最大距離である基準ICタグT1を読み取らないようになるため、出力を維持する。
ここで、通信範囲制御部102は、出力を増加または減少させる場合における変更の度合いは、予め決められた度合い毎に変更するようにしてもよい。例えば、出力のレベルを5単位で変更するようにしてもよいし、10単位で変更するようにしてもよい。変更の度合いが小さいほど、通信範囲の微調整がし易い。
【0026】
通信範囲制御部102は、このような調整を繰り返すことで、基準ICタグT1と基準ICタグT2との間に、放射領域の長手方向における先端部が位置するように制御することで、そのときの環境に応じた最適な出力となるように収束させることができる。
【0027】
また、ここでは、通信の開始時において、リーダライタ101の出力のレベルを60から行ったが、120から行って出力を減少させつつ、基準ICタグT1と基準ICタグT2との間に、放射領域の長手方向における先端部が位置するように制御するようにしてもよい。
【0028】
通信ユニット10は、通信範囲制御部102によってリーダライタ101の出力を制御することで、容器Cの外部にICタグがあったとしても、遮蔽部材を用いることなく、当該外部のICタグの読み取りを防止することができ、かつ、環境の変化によって放射領域に変動があったとしても、基準ICタグT3を読み取ることができたか否かの履歴を記憶部103に記憶することで、収容部C3の全てのICタグを読み取ることが可能な状態であったか否かを、確認することが可能となる。
例えば、
図2に示すように、リーダライタ101の出力のレベルを100にすることで、基準ICタグT2と基準ICタグT3の両方を読み取ることができている場合であっても、環境の変化の影響を受けた場合には、出力のレベルが100になるようなゲインを送信アンプに与えたとしても、基準ICタグT3を読み取ることができない場合も生じ得る。このような場合であっても、基準ICタグT2を読み取ることができていれば、収容部C3のいずれのICタグについても読み取ることができる状態であったことを把握することができる。
【0029】
次に、上述した通信ユニット10の動作を説明する。
図3は、通信ユニット10のリーダライタ101の出力を調整する動作を説明するフローチャートである。
通信ユニット10の通信範囲制御部102は、リーダライタ101によってICタグと通信を行い、ICタグから識別情報の読み出しを行い(ステップS101)、読み出しの結果、基準ICタグT1を読み取ることができたか否かを判定する(ステップS102)。
通信範囲制御部102は、読み出し処理の結果において、基準ICタグT1の識別番号が検出された場合には(ステップS102-YES)、基準ICタグT1を読み取ることができたと判定し、リーダライタ101の出力を減少させる(ステップS103)。そして、通信範囲制御部102は、リーダライタ101による通信を終了するか否かを判定し(ステップS104)、終了しない場合(ステップS104-NO)にはステップS101に移行し、読み取り処理を終了する場合(ステップS104-YES)には、処理を終了する。
処理の終了については、外部から処理終了のコマンドの入力があった場合に終了するようにしてもよい。
【0030】
一方、ステップS102において、基準ICタグT1の識別情報が検出されなかった場合(ステップS102-NO)、通信範囲制御部102は、基準ICタグT2を読み取ることができたか否かを判定する(ステップS105)。
通信範囲制御部102は、読み出し処理の結果において、基準ICタグT2の識別番号が検出された場合には(ステップS105-YES)、基準ICタグT2を読み取ることができたと判定し、リーダライタ101の出力を維持する(ステップS106)。そして、通信範囲制御部102は、処理をステップS104に移行する。
【0031】
一方、ステップS105において、基準ICタグT2の識別情報が検出されなかった場合(ステップS105-NO)、基準ICタグT2を読み取ることができなかったと判定し、リーダライタ101の出力を増加する(ステップS107)。そして、通信範囲制御部102は、処理をステップS104に移行する。
【0032】
図4は、通信ユニット10のリーダライタ101の読取結果を記憶する動作を説明するフローチャートである。
図3に示す処理と、
図4に示す処理は並列処理にて行ってもよい。
通信ユニット10の書き込み部104は、リーダライタ101が各ICタグから識別情報の読み出しを行うと(ステップS201)、読み出しの結果、基準ICタグT3を読み取ることができたか否かを判定する(ステップS202)。
書き込み部104は、読み出し処理の結果において、基準ICタグT3の識別番号が検出された場合には(ステップS202-YES)、基準ICタグT3を読み取ることができたと判定し、ステップS201において得られたICタグの識別情報とともに、第3基準ICタグを読めたことを示す情報(例えばフラグ1)を記憶する。ここでは、物品に取り付けられたICタグから得られた識別情報と、基準ICタグT3を読み取れた読取結果とを記憶し、基準ICタグT3の識別情報そのものについては、記憶しなくてもよい。また、放射領域の先端部が基準ICタグT1と基準ICタグT2との間に位置する場合には、基準ICタグT2と基準ICタグT3との両方についても読み取っているため、このような場合には、基準ICタグT2の識別情報について識別した上で、基準ICタグT2を記憶しなくてもよい。
そして、書き込み部104は、リーダライタ101による読取処理を終了したか否かを判定し(ステップS204)、終了していない場合(ステップS204-NO)にはステップS201に移行し、読取処理が終了した場合(ステップS204-YES)には、処理を終了する。
【0033】
一方、ステップS202において、基準ICタグT3の識別情報が検出されなかった場合(ステップS202-NO)、書き込み部104は、基準ICタグT1を読み取ることが出来なかったと判定し、ステップS201において得られたICタグの識別情報とともに、基準ICタグT3を読めなかったことを示す情報(例えばフラグ0)を記憶する。その後、通信範囲制御部102は、処理をステップS204に移行する。
【0034】
上述した実施形態において、基準ICタグT1を用いることで、許容領域の基準位置を把握することができるが、容器Cの外部にあるICタグと通信を行った可能性があるか否かを把握するためにも用いることができる。
図5は、通信ユニット10のリーダライタ101の読取結果を記憶する他の動作を説明するフローチャートである。
図5に示す処理と、
図3や
図4に示す処理は、並列処理にて行ってもよい。
通信ユニット10の書き込み部104は、リーダライタ101が各ICタグから識別情報の読み出しを行うと(ステップS301)、読み出しの結果、基準ICタグT1を読み取ったか否かを判定する(ステップS302)。
書き込み部104は、読み出し処理の結果において、基準ICタグT1の識別番号が検出された場合には(ステップS302-YES)、基準ICタグT1を読み取ることができたと判定し、ステップS301において得られたICタグの識別情報とともに、第1基準ICタグ(基準ICタグT1)を読めたことを示す情報(例えばフラグ1)を記憶する。ここでは、物品に取り付けられたICタグから得られた識別情報と、基準ICタグT1を読み取れた読取結果とを記憶し、基準ICタグT1の識別情報そのものについては、記憶しなくてもよい。また、基準ICタグT1を読み取った場合には、基準ICタグT2と基準ICタグT3との両方についても読み取っているため、このような場合には、基準ICタグT2及び基準ICタグT3の識別情報について識別した上で、基準ICタグT2及び基準ICタグT3の識別情報を記憶しなくてもよい。
そして、書き込み部104は、リーダライタ101による読取処理を終了したか否かを判定し(ステップS304)、終了していない場合(ステップS304-NO)にはステップS301に移行し、読取処理が終了した場合(ステップS304-YES)には、処理を終了する。
【0035】
一方、ステップS302において、基準ICタグT1の識別情報が検出されなかった場合(ステップS302-NO)、書き込み部104は、基準ICタグT1を読み取ることが出来なかったと判定し、ステップS301において得られたICタグの識別情報とともに、基準ICタグT1を読めなかったことを示す情報(例えばフラグ0)を記憶する。その後、通信範囲制御部102は、処理をステップS204に移行する。
【0036】
このように、収容部C内のICタグを読み取る際に、基準ICタグT1を読み取ったか否かを判定し、基準ICタグT1を読み取っていた場合には、放射領域が許容領域の外部まで到達していることを検出することができる。この場合、容器Cの外部に存在するICタグを読み取っている可能性がある。そのため、基準ICタグT1を読み取っているか否かについても、ログとして残すことで、基準ICタグT1とともに読み取ったICタグについては、容器Cの外部のICタグを読み取っている可能性があることを把握することができる。
また、
図5に示すフローチャートのステップS303においては、基準ICタグT1を読み取ったか否かの読取結果とともに、読み取ったICタグの識別情報を記憶するようにした。しかし、ステップS302において、基準ICタグT1を読み取っていると判定された場合に、基準ICタグT1とともに読み取られたICタグの識別情報について記憶部103に記憶せず、そのデータを破棄するようにしてもよい。
【0037】
上述した実施形態において、各基準ICタグは、リーダライタ101の放射領域における長手方向に沿って並ぶように設けられる場合についてしたが、
図6に示す変形例のように、読取システム1において、放射領域の長手方向Xに並ぶように基準ICタグTX1、基準ICタグTX2、基準ICタグTX3を設けるだけでなく、幅方向Yに並ぶように、基準ICタグTY1、基準ICタグTY2、基準ICタグTY3を設けるようにしてもよい。
これにより、環境の変化に伴ってリーダライタ101の幅方向の放射領域の大きさが変動したとしても、基準ICタグTY1、基準ICタグTY2、基準ICタグTY3を用いることで、放射領域の大きさを変更することが可能である。また、幅方向においても、収容部C3にあるICタグについて読取可能な状態であったか否かを、基準ICタグTY3を読み取ることができたか否かに基づいて把握することが可能となる。
【0038】
また、この変形例において、通信ユニット10Aの通信範囲制御部102Aは、基準ICタグTX1を読めたか否かに応じてリーダライタ101Aの出力を増減や維持させるとともに、基準ICタグTY1を読めたか否かに応じてリーダライタ101Aの出力を増減させることができる。そして、書き込み部104Aは、リーダライタ101Aによって読み取った結果とともに、基準ICタグTX3を読むことができたか否か、及び基準ICタグTY3を読むことができたか否かを記憶部103Aに書き込むようにしてもよい。これにより、幅方向においても、収容部C3内にある各ICタグの識別情報を全て読める状態にあったか否かを把握することができる。
【0039】
また、上述した変形例において、X方向及びY方向に直交する方向であるZ方向においても、上述と同様に3つの基準ICタグが並ぶように設け、Z方向における放射領域の大きさを変更するとともに、Z方向において収容部C3内にある各ICタグの識別情報を全て読める状態にあったか否かを記憶するようにしてもよい。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、所定の位置に設置された基準ICタグをリーダライタによって読み取れたか否かに応じて、送信アンプによってリーダライタの出力を調整し、最適な読取範囲を設定することで、電波遮蔽部材を使用することなく、最適な放射領域となるように設定することができる。また、所定の位置に設置された基準ICタグを読めたか否かの結果とともに、リーダライタによって読み取られたICタグの識別情報を記憶するようにしたので、収容部に収容された物品のICタグを全て読取できる状態であったか否かを把握することができる。
また、アンテナが、基準ICタグに対し平行な面内で90°回転することができる手段を備えているため、前記アンテナの放射範囲が楕円形の場合でも、最適な読取範囲を設定することができる。
【0041】
上述した実施形態における通信ユニット10、通信ユニット10Aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0042】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…読取システム、10,10A…通信ユニット、101,101A…リーダライタ、102,102A…通信範囲制御部、103,103A…記憶部、104,104A…書き込み部