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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ガス燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20231215BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20231215BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F02M21/02 N
F02M21/02 P
F02M21/02 301C
F02D19/06 B
F02D19/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020070872
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167584
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】鹿ノ戸 義彦
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0003176(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016213168(DE,A1)
【文献】特開2009-203944(JP,A)
【文献】特開2005-054613(JP,A)
【文献】特開2013-238307(JP,A)
【文献】中国実用新案第202001108(CN,U)
【文献】特開2003-193874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02D 19/06
F02D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃焼モードと油燃料燃焼モードとの両方で運転可能なエンジン(10)の燃焼室に通じる吸気供給管(20)の開口部(24)を介してガス燃料を供給するガス燃料供給装置(30)において、
前記ガス燃料を調節するためのガス燃料供給弁(40)であって、開弁時に前記ガス燃料を前記開口部(24)方向に送り出す複数のガス供給孔(54)を有するガス燃料供給弁(40)と、
前記ガス燃料供給弁(40)と前記開口部(24)の間に設けられ、開口面積を調整可能な開口孔を有する開口調節弁(60)と
を備え、
前記ガス燃料供給弁(40)は、前記複数のガス供給孔(54)が設けられた固定プレート(50)と、スプリング(58)と、前記スプリング(58)により押され前記固定プレート(50)上に着座する可動プレート(46)を含み、
全ての前記ガス供給孔(54)の延長軸線(54C)が、全開とした場合の前記開口孔内を通過するように構成されている
ガス燃料供給装置(30)。
【請求項2】
前記開口孔の開口面積は、全開と全閉とその間の位置の少なくとも3段階に調整可能である、
請求項1に記載のガス燃料供給装置(30)。
【請求項3】
前記開口調節弁(60)は、アイリス弁(64)、スライド弁(68)、バタフライ弁(72)のいずれかである、
請求項1または2に記載のガス燃料供給装置(30)。
【請求項4】
前記開口調節弁(60)は前記ガス燃料供給弁(40)と協働して前記開口部(24)に供給される前記ガス燃料を調節する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のガス燃料供給装置(30)。
【請求項5】
前記エンジン(10)をガス燃焼モードから油燃料燃焼モードに切り替える際に、まず前記ガス燃料供給弁(40)を閉弁し、次に前記開口調節弁(60)の開口孔を全閉にする、
請求項1から4のいずれか一項に記載のガス燃料供給装置(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料燃焼モードと油燃料燃焼モードとの両方で運転可能なエンジンの燃焼室に通じる吸気供給管にガス燃料を供給するガス燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス燃料燃焼モードと油燃料燃焼モードとの両方で運転可能なエンジンが知られている。このようなエンジンにおいてガス燃料をエンジンに供給する場合、ガス燃料供給管やガス燃料供給弁を介して吸気供給管中にガス燃料を供給し、ガス燃料と吸気を混合した混合ガスをエンジンの燃焼室に供給することが引用文献1に記載されている。
【0003】
また、引用文献2においては油燃料燃焼モードでエンジンを運転中において吸気がガス燃料供給弁からガス燃料供給管内に漏れるおそれがあることが記載されている。すなわち、油燃料燃焼モードにおいてはガス燃料供給管内の圧力が吸気供給管内の圧力よりも下がる場合がある。このことにより吸気供給管内の吸気がガス燃料供給弁の弁体を押し上げ、ガス燃料供給弁からガス燃料供給管内に侵入し、吸気中の水分によりガス燃料供給管が腐食するおそれがあると記載されている。引用文献2には、その対策の一つとしてシャット弁100(図16参照)をガス燃料供給弁の上流側または下流側の枝管に付設することが記載されている。
【0004】
シャット弁100は先端に弁体101を有する電磁弁であり、当該弁体101が着座可能に形成された弁座106を内部に設けたガス燃料供給管105の側面に取り付けられている。シャット弁100を非通電とすると、弁体101は弁座106に着座しガス流路を遮断する。一方シャット弁100に通電すると、弁体101が弁座106から離間しガス流路を開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-193874号公報
【文献】特開2009-203944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シャット弁100をガス燃料供給弁の上流側に付設した場合には、吸気中の水分やさらにはコンタミがガス燃料供給弁に侵入し、これを腐食させるおそれがある。
【0007】
一方、シャット弁100をガス燃料供給弁140の下流側に付設した場合の模式図を図17に示す。シャット弁100がガス燃料供給弁140の下流から吸気供給管120の開口部124に至る通路に設けられている。この場合、ガス燃料供給弁140から出たガス燃料Gは、狭い弁部を通過しなければならず、この弁部で圧力降下が発生するので、ガス燃料供給弁140により吸気供給管に供給するガス燃料を適切に制御することができない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、吸気がガス燃料供給管やガス燃料供給弁に侵入することを防ぐとともに、ガス燃料供給弁の下流側に絞りによる圧力降下がない状態で、ガス燃料供給弁から適切なタイミングで適切なガス量を吸気供給管に供給できるガス燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ガス燃焼モードと油燃料燃焼モードとの両方で運転可能なエンジンの燃焼室に通じる吸気供給管の開口部を介してガス燃料を供給するガス燃料供給装置において、前記ガス燃料を調節するためのガス燃料供給弁であって、開弁時に前記ガス燃料を前記開口部方向に送り出す複数のガス供給孔を有するガス燃料供給弁と、前記ガス燃料供給弁と前記開口部の間に設けられ、開口面積を調整可能な開口孔を有する開口調節弁とを備え、全ての前記ガス供給孔の延長軸線が、全開とした場合の前記開口孔内を通過するように構成されているガス燃料供給装置が提供される。
【0010】
前記開口孔の開口面積は、全開と全閉とその間の位置の少なくとも3段階に調整可能であることが好ましい。
【0011】
前記開口調節弁は、アイリス弁、スライド弁、バタフライ弁のいずれかであることが好ましい。
【0012】
前記開口調節弁は前記ガス燃料供給弁と協働して前記開口部に供給される前記ガス燃料を調節することが好ましい。
【0013】
前記エンジンをガス燃焼モードから油燃料燃焼モードに切り替える際に、まず前記ガス燃料供給弁を閉弁し、次に開口調節弁の開口孔を全閉にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、吸気がガス燃料供給管やガス燃料供給弁に侵入することを防ぐとともに、ガス燃料供給弁の下流側に絞りによる圧力がない状態で、ガス燃料供給弁から適切なタイミングで適切なガス量を吸気供給管に供給できるガス燃料供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るガス燃料供給装置および、ガス燃料供給装置が使用されるガス燃料燃焼モードと油燃料燃焼モードとの両方で運転可能なエンジンの模式図である。
図2】ガス燃料供給弁(閉弁時)の模式図である。
図3】ガス燃料供給弁(開弁時)の模式図である。
図4】開口調節弁をガス燃料供給弁の下流側に取り付けた場合の軸方向断面図である。
図5図4においてD方向から開口孔を見た図
図6】アイリス弁(全閉時)の模式図である。
図7】アイリス弁(全開時)の模式図である。
図8】アイリス弁(中途開弁時)の模式図である。
図9】アイリス弁をガス燃料供給弁の下流側に取り付けた場合の軸方向断面図である。
図10】スライド弁(全閉時)の模式図である。
図11】スライド弁(全開時)の模式図である。
図12】スライド弁(中途開弁時)の模式図である。
図13】バタフライ弁(全閉時)の模式図である。
図14】バタフライ弁(全開時)の模式図である。
図15】バタフライ弁(中途開弁時)の模式図である。
図16】従来技術に用いられたシャット弁である。
図17】従来技術に用いられたシャット弁をガス燃料供給弁の下流側に設けた場合の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(本実施形態に係るガス燃料供給装置が使用されるエンジンの全体構成例) 図1は、本実施形態に係るガス燃料供給装置30および、ガス燃料供給装置30が使用されるガス燃料燃焼モードと油燃料燃焼モードとの両方で運転可能なエンジン10の模式図である。
【0018】
図1において、吸気は矢印A方向から供給される。吸気はまず過給機22で加圧され、吸気供給管20を通ってエンジン10に入る。過給機22により、吸気の圧力は最大10気圧程度(絶対圧)まで上昇する。また、吸気供給管20の途中には開口部24が設けられており、この開口部24を介してガス燃料が、ガス燃料供給装置30により供給される。吸気供給管20に供給されたガス燃料は吸気と混合され、エンジン10に供給される。また、過給機22の下流の吸気供給管20には吸気供給管20内の圧力を測定する吸気供給管内圧力センサ26が設けられている。
【0019】
図1に示すように、ガス燃料供給装置30は、開閉弁32、ガス燃料供給管38、圧力開放管36、圧力開放弁34、ガス燃料供給弁40および開口調節弁60を主な構成要素としている。ガス燃料供給装置30においてガス燃料は矢印B方向からガス燃料供給管38に供給される。尚、供給されるガス燃料の圧力(供給ガス燃料圧)は最大で吸気圧力を3気圧程度上回る圧力となるように調整される。
【0020】
ガス燃料供給管38の上流側には開閉弁32が設けられており、開閉弁32を閉弁するとガス燃料供給管38へのガス燃料の供給が遮断され、開閉弁32を開弁するとガス燃料供給管38へのガス燃料の供給が開始される。
【0021】
開閉弁32の下流側でガス燃料供給管38から圧力開放管36が分岐している。圧力開放管36の分岐とは逆側の先端には圧力開放弁34が設けられている。圧力開放弁34を開弁すると圧力開放管36は低圧力部と連通し、ガス燃料供給管38等のガス燃料圧力は低下する。ガス燃料供給管38は分岐の下流側でガス燃料供給弁40と連通している。
【0022】
ガス燃料燃焼モードでエンジン10が運転されている場合には、開閉弁32が開弁され、圧力開放弁34は閉弁されるので、ガス燃料がガス燃料供給管38を通ってガス燃料供給弁40に導入される。ガス燃料供給弁40内の圧力は供給ガス燃料圧となる。一方、ガス燃料燃焼モードから油燃料燃焼モードに切り替わると、開閉弁32が閉弁されるとともに、圧力開放弁34が開弁されるので、ガス燃料供給管38やガス燃料供給弁40内の圧力は低下する。尚、圧力が低下した後、圧力開放弁34は閉弁する。
【0023】
ガス燃料供給弁40の下流で吸気供給管20の開口部24の上流側には開口調節弁60が設けられる。開口調節弁60は、開口面積を調整可能な開口孔を有し、当該開口孔はガス燃料供給弁40の出口側から吸気供給管20の開口部24に至る通路の一部を構成する。また、ガス燃料供給管38にはガス燃料圧力センサ39が設けられており、ガス燃料圧力センサ39はガス燃料供給管38内の圧力を測定する。
【0024】
ガス燃料供給弁40、開口調節弁60、開閉弁32および圧力開放弁34の駆動は電子制御装置80によって制御される。また、吸気供給管内圧力センサ26およびガス燃料圧力センサ39からの信号は電子制御装置80に送信される。
【0025】
一方、油燃料供給装置12はエンジン10に油燃料、例えばディーゼル燃料を供給する。この場合エンジン10はディーゼルエンジンである。油燃料供給装置12は例えばコモンレール等の燃料供給装置である。油燃料供給装置12は電子制御装置80によって制御される。
【0026】
(ガス燃料供給弁)
ガス燃料供給弁40の構成の一例を図2図3に示す。ガス燃料供給弁40は電磁弁であり,ステータ42の内部に電磁コイル44を内蔵している。ガス燃料供給弁40内には可動プレート46が上下方向に移動可能に配置されており、可動プレート46の下側には複数のガス供給孔54が設けられた固定プレート50が配置されている。可動プレート46と固定プレート50とはそれぞれ弁と弁座を構成する。
【0027】
電磁コイル44に電磁力が発生すると、可動プレート46は上方向に移動し固定プレート50から離間する。これによって可動プレート46と固定プレート間50に隙間52が生じ、当該隙間52と固定プレート50に設けられた複数のガス供給孔54を通って固定プレート50の下側に通じるガス燃料の流路が形成される。いわゆるガス燃料供給弁40の開弁状態である(図3)。一方、電磁力がなくなると、スプリング58により可動プレート46は下方向に押され固定プレート50上に着座する。いわゆるガス燃料供給弁40の閉弁状態である(図2)。尚、可動プレート46がステータ42に直接当たらないように、ストッパ56が設けられている。
【0028】
ガス燃料供給弁40の周囲にはガス燃料導入孔48が設けられている。ガス燃料導入孔48はガス燃料供給管38と連結されている。ガス燃料燃焼モードでエンジン10が運転されている場合には、ガス燃料はガス燃料供給管38を通ってガス燃料導入孔48からガス燃料供給弁40内に導入される。ガス燃料供給弁40内の圧力は供給ガス燃料圧となる。一方、ガス燃料燃焼モードから油燃料燃焼モードでエンジン10に切り替わると、開閉弁32が閉弁されるとともに、圧力開放弁34が開弁されるので、ガス燃料供給管38やガス燃料供給弁40内の圧力は低下する。
【0029】
ガス燃料燃焼モード運転中においてガス燃料供給弁40が閉弁されている際には、可動プレート46はスプリング58の弾性力に加えて供給ガス燃料圧によって固定プレート50に対して押圧される。一方、油燃料燃焼モード運転中においてガス燃料供給弁40が閉弁されている際には、ガス燃料供給弁40内の圧力は低下するので、可動プレート46を固定プレート50に押圧する圧力も低下する。このように、油燃料燃焼モード運転中の場合、可動プレート46を閉弁方向に押圧する力(閉弁力)は、ガス燃料燃焼モード運転中の場合の閉弁力に比べて小さい。したがって、油燃料燃焼モード運転中の場合、ガス燃料供給弁40の出口側の圧力が高くなると、閉弁状態を維持できなくなるおそれがある。
【0030】
(開口調節弁)
開口調節弁60は、ガス燃料供給弁40の出口側から吸気供給管20の開口部24に至る通路に設けられている。開口調節弁60は開口面積を調整可能な開口孔61を有し、当該開口孔61の開口面積は電子制御装置80によって調節される。開口孔61の開口面積は、全閉と全開とその間の位置の少なくとも3段階に、または0%(全閉)から100%(全開)まで連続的に変更できる。開口孔はガス燃料供給弁40の出口側から吸気供給管20の開口部24に至る通路の一部を構成する
【0031】
図4は開口調節弁をガス燃料供給弁40の下流側で開口部24の上流に取り付け、開口孔61を全開とした場合の軸方向断面図である。ガス燃料供給孔54は円筒状に形成されており、延長軸線54Cはガス供給孔54の中心軸線およびそれを延長した直線(図中の一点鎖線)である。図5図4においてD方向から開口孔61を見た図である。点54Pは、開口孔61における開口部24側の平面と延長軸線54Cの交点である。全てのガス供給孔54の延長軸線54Cは、全開とした場合の開口孔61内を通過するように構成されている。尚、本実施例においてガス供給孔54は12本であるが、これに限られるものではない。
【0032】
開口調節弁60をガス燃料供給弁40の下流に取り付けることにより、ガス燃料燃焼モードの場合、開口孔61を全開とすれば、ガス供給孔54から開口部24までの間にガス燃料の流れを遮るものがないので、ガス燃料供給弁40を制御することにより、適切なタイミングで 適切な量のガス燃料を吸気供給管20に供給することができる。また、油燃料燃焼モードの場合、吸気供給管20内の圧力がガス燃料供給弁40内の圧力よりも高くなったとしても、開口孔61を全閉とすることにより、吸気がガス燃料供給弁40やガス燃料供給管38内に侵入することがないので、吸気中の水分やコンタミによりガス燃料供給管38やガス燃料供給弁40が腐食するおそれがない。
【0033】
開口調節弁60として、例えば、アイリス弁64、スライド弁68、またはバタフライ弁72が使用される。以下、それぞれの弁について説明する。
【0034】
(アイリス弁) アイリス弁64の一例について説明する。図6図8は、アイリス弁64を開口調節弁としてガス燃料供給弁40の下流側に取り付け、アイリス弁64を軸方向下側(図9の矢印E方向)から見た場合の図である。この例のアイリス弁64は電子制御式のアイリス弁アクチュエータ66と、当該アイリス弁アクチュエータ66とリンク機構等で連結された複数の薄板65とを有し、アイリス弁アクチュエータ66が、複数の薄板65を移動させることにより開口面積が変更される開口孔を有するように構成されている。
【0035】
図6は開口孔の開口面積が0%すなわち全閉の場合の図である。図7は開口孔の開口面積が100%すなわち全開の場合の図である。開口孔の内側を全てのガス供給孔54の延長軸線54Cが通過するように構成されている。図8は開口孔の開口面積が0%と100%の間であり例えばおよそ50%の場合の図である。開口孔の内側を半数のガス供給孔54の延長軸線54Cが通過するように構成されている。このように、アイリス弁アクチュエータ66は、複数の薄板65を中央方向に移動させることにより、開口孔の開口面積を小さくし、逆に複数の薄板65を中央方向から遠ざける方向に移動させることにより、開口孔の開口面積を大きくすることができる。アイリス弁64の開口孔の開口面積は、全閉と全開とその間の位置の少なくとも3段階に、または0%から100%まで連続的に変更できる。
【0036】
図9はこのアイリス弁64を開口調節弁としてガス燃料供給弁40の下流側で開口部24の上流側に取り付けた場合の軸方向断面図である。図9のアイリス弁は全開の状態を表す。アイリス弁はその構造上上下の幅を薄く形成することができるので、ガス燃料供給弁40から開口部24までの距離を小さく抑えられる。ガス燃料燃焼モードの場合、開口孔を全開とすれば、ガス供給孔54から開口部24までの間にガス燃料の流れGを遮るものがないので、ガス燃料供給弁40を制御することにより、適切なタイミングで 適切な量のガス燃料を圧力降下することなく吸気供給管20に供給することができる。また、油燃料燃焼モードの場合にはアイリス弁64を全閉にすることにより、ガス燃料供給弁40内への吸気の侵入を防ぐことができる。
【0037】
(スライド弁) スライド弁68の一例について説明する。図10~12は、スライド弁68を開口調節弁としてガス燃料供給弁40の下流側に取り付け、スライド弁68を軸方向下側(図9の矢印E方向を参照)から見た場合の図である。この例のスライド弁68は電子制御式のスライド弁アクチュエータ70と、当該スライド弁アクチュエータ70とリンク機構等で連結されたスライド薄板69とを有し、スライド弁アクチュエータ70が、スライド薄板69を移動させることにより開口面積が変更される開口孔を有するように構成されている。
【0038】
図10は、開口孔の開口面積が0%すなわち全閉の場合の図である。図10は開口孔の開口面積が100%すなわち全開の場合の図である。開口孔の内側を全てのガス供給孔54の延長軸線54Cが通過するように構成されている。図11は開口孔の開口面積が0%と100%の間であり例えばおよそ50%の場合の図である。開口孔の内側をおよそ半数のガス供給孔54の延長軸線54Cが通過するように構成されている。このように、スライド弁アクチュエータ70は、スライド薄板69を一方向に移動させることにより、開口面積を小さくし、その逆方向に移動させることにより、開口面積を大きくすることができる。スライド弁68の開口孔の開口面積は、全閉と全開とその間の位置の少なくとも3段階に、または0%から100%まで連続的に変更できる。
【0039】
スライド弁68はその構造上上下の幅を薄く形成することができるので、ガス燃料供給弁40から開口部24までの距離を小さく抑えられる。ガス燃料燃焼モードの場合、開口孔を全開とすれば、ガス供給孔54から開口部24までの間にガス燃料の流れGを遮るものがないので、ガス燃料供給弁40を制御することにより、適切なタイミングで適切な量のガス燃料を圧力降下することなく吸気供給管20に供給することができる。また、油燃料燃焼モードの場合にはスライド弁68を全閉にすることにより、ガス燃料供給弁40内への吸気の侵入を防ぐことができる。
【0040】
(バタフライ弁) バタフライ弁72の一例について説明する。図13図15は、バタフライ弁72を開口調節弁としてガス燃料供給弁40の下流側に取り付け、バタフライ弁72を軸方向下側(図9の矢印E方向を参照)から見た場合の図である。この例のバタフライ弁72は電子制御式のバタフライ弁アクチュエータ75と、円形薄板73と、バタフライ弁アクチュエータ75と連結されるとともに、円形薄板73の直径方向に付設された棒軸74とを有し、円形薄板73を、棒軸74を中心として回転駆動させることにより、開口面積が変更される開口孔を有するように構成されている。この例のバタフライ弁72の場合の開口面積とは、開口孔を軸方向(図9の矢印E方向を参照)に見た場合の開口している部分の面積である。
【0041】
図13は、開口孔の開口面積が0%すなわち全閉の場合の図である。図14は、開口孔の開口面積が100%すなわち全開の場合の図である。開口孔の内側を全てのガス供給孔54の延長軸線54Cが通過するように構成されている。図15は、弁開口孔の開口面積が0%と100%の間であり例えばおよそ50%の場合の図である。開口孔の内側をおよそ半数のガス供給孔54の延長軸線54Cが通過するように構成されている。このように、バタフライ弁アクチュエータ75は、円形薄板73を回転させることにより、開口面積を小さくし、また、開口面積を大きくすることができる。バタフライ弁72の開口孔の開口面積は、全閉と全開とその中間位置の少なくとも3段階に、または0%から100%まで連続的に変更できる。
【0042】
バタフライ弁72はその構造上上下の幅を薄く形成することができるので、ガス燃料供給弁40から開口部24までの距離を小さく抑えられる。ガス燃料燃焼モードの場合、開口孔を全開とすれば、ガス供給孔54から開口部24までの間にガス燃料の流れを遮るものがないので、ガス燃料供給弁40を制御することにより、適切なタイミングで適切な量のガス燃料を圧力降下することなく吸気供給管20に供給することができる。また、油燃料燃焼モードの場合にはバタフライ弁72を全閉にすることにより、ガス燃料供給弁40内への吸気の侵入を防ぐことができる。
【0043】
電子制御装置80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成される。電子制御装置80の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0044】
(燃焼モード切り替え時の作動説明) ガス燃料燃焼モードと油燃料燃焼モードとの両方で運転可能なエンジンについて、燃焼モードを切り替える際の各部の作動について説明する。各部の作動は、電子制御装置80によって制御される。油燃料燃焼モードにおいて、電子制御装置80は、油燃料の供給量や供給タイミングが別途決定された目標値となるよう油燃料供給装置12を制御する。油燃料供給装置12により調量された油燃料がエンジン10に供給される。エンジン10は油燃料の燃焼によって運転される。
【0045】
油燃料燃焼モードからガス燃料燃焼モードに切り替える際には、電子制御装置80は、油燃料供給装置12からの油燃料の供給を停止するとともに、ガス燃料の供給を開始する。ガス燃料の供給開始について詳しく述べると、まず電子制御装置80は圧力開放弁34を閉弁し、開閉弁32を開弁する。そして電子制御装置80は開口調節弁60の開口孔を全開とし、これに続いてガス燃料の供給量や供給タイミングが別途決定された目標値となるようガス燃料供給弁40の制御を開始する。
【0046】
ガス燃料燃焼モードから油燃料燃焼モードに切り替える際には、電子制御装置80は、ガス燃料の供給を停止するとともに、油燃料の供給を開始する。ガス燃料の供給停止について詳しく述べると、まず電子制御装置80は、ガス燃料供給弁40を閉弁し、次に、開口調節弁60の開口孔を全閉とする。そして、電子制御装置80は開閉弁32を閉弁した後、圧力開放弁34を開弁する。圧力開放弁34を開弁することにより、ガス燃料供給弁40やガス燃料供給管38内の圧力は低下する。圧力低下後、圧力開放弁34は閉弁される。したがって、ガス燃料供給弁40中の圧力が下がる前に、開口調節弁60の開口孔が全閉される。
このように、ガス燃料燃焼モードから油燃料燃焼モードに切り替える際に、ガス燃料供給弁40中の圧力が下がる前に、まずガス燃料供給弁40を閉弁し、次に、開口調節弁60の開口孔を全閉するので、吸気がガス燃料供給弁40や、ガス燃料供給管38に侵入するおそれが無く、吸気中の水分やコンタミによりガス燃料供給弁40や、ガス燃料供給管38を腐食するおそれがない。
【0047】
(ガス燃料供給弁40と開口調節弁60の協働制御) 次に、電子制御装置80が開口調節弁60をガス燃料供給弁40と協働させて吸気供給管20に供給されるガス燃料を調節する場合について説明する。
ガス燃料供給弁40に通電がなされると、可動プレート46はステータ42方向に吸引されストッパ56に衝突する。作動回数が多くなると衝突部分が摩耗する場合がある。摩耗が進むと次第に可動プレート46のストロークが大きくなる(図2のS1の部分)。この場合ガス燃料の通路(図3の隙間52)が大きくなり絞り効果が小さくなるので、ガス燃料の供給量は大きくなる。そこで、開口調節弁60の開口孔の開口面積を小さくし、ガス燃料が開口孔を通過する際の絞り効果を大きくすることによりガス燃料の供給量を補正することができる。開口調節弁60は少なくとも3段階に、または連続的に開口孔の開口面積を変更できるので、ガス燃料が開口孔を通過する際の絞り効果を適切に調整することができる。
【0048】
電子制御装置80は可動プレート46の作動回数に基づいて開口調節弁60の開口孔を小さくするように制御することにより、ガス燃料の供給量を補正することができる。可動プレート46の作動回数が多くなるにしたがって、衝突部分の摩耗量が多くなると考えられるからである。例えば、可動プレート46の作動回数と開口孔の開口面積の関係を予め実験等で求め、これをマップとし記憶装置に記憶しておくことができる。電子制御装置80は可動プレート46の作動回数をマップに入力することにより、適切な開口孔の開口面積を決定し、この開口面積となるように開口孔を調整する。
【0049】
別の方法で、電子制御装置80はガス燃料供給装置30の運転時間に基づいて開口調節弁60の開口孔を小さくするように制御することにより、ガス燃料の供給量を補正することができる。ガス燃料供給装置30の運転時間が長くなるにしたがって衝突回数が増え、衝突部分の摩耗量が多くなると考えられるからである。例えば、ガス燃料供給装置30の運転時間と開口孔の開口面積の関係を予め実験等で求め、これをマップとし記憶装置に記憶しておくことができる。電子制御装置80はガス燃料供給装置30の運転時間をマップに入力することにより、適切な開口孔の開口面積を決定し、この開口面積となるように開口孔を調整する。
【0050】
別の方法で、電子制御装置80は、電磁コイル44に通電した時点から可動プレート46がストッパ56に衝突するまでの時間(Ts)を計測し、この時間に基づいて開口孔を調整することにより、ガス燃料の供給量を補正することができる。例えば、時間(Ts)が長くなった場合には、可動プレート46のストローク量が長くなり、隙間52の絞り効果が小さくなったと予想できるからである。
【0051】
電磁コイル44に通電した時点から可動プレート46がストッパ56に衝突するまでの時間(Ts)は、例えば、電磁コイル44への通電電流をモニタすることにより計測することができる。可動プレート46がストッパ56に衝突した際に通電電流に変化点が現れるからである。
【0052】
例えば、電磁コイル44に通電した時点から可動プレート46がストッパ56に衝突するまでの時間(Ts)と開口孔の開口面積の関係を予め実験等で求め、これをマップとし記憶装置に記憶しておくことができる。電子制御装置80は電磁コイル44への通電電流をモニタすることにより時間(Ts)を求め、これをマップに入力することにより、適切な開口孔の開口面積を決定し、この開口面積となるように、開口孔を調整する。
【0053】
このように、ガス燃料の通路である隙間52の拡大による、ガス燃料の供給量への影響を開口調節弁60で補正することができる。また、ガス燃料供給装置30および電子制御装置80は、ガス燃料を供給するエンジン10やこれに連結する例えば発電機からのフィードバック信号に基づいてガス燃料の供給を制御するように構成されている。例えば、ガス燃料の通路である隙間52が拡大した場合には、供給するガス燃料が増えるので、ガス燃料を減らすフィードバック信号が生成される。このフィードバック信号を受け取った電子制御装置80は、ガス燃料供給弁40の開弁時間を短くしてガス燃料を減らす代わりに、開口孔の開口面積を小さくするよう制御しエンジンに供給するガス燃料を減らすようにしてもよい。
【0054】
尚、電子制御装置80は一つの電子制御装置として構成されてもよいし、複数の電子制御装置から構成されてもよい。また、ガス燃料燃焼モードと油燃料燃焼モードとの間の切り替えの判断は、電子制御装置80によって行われてもよいし、別の電子制御装置で切り替えの判断が行われ、その判断結果を電子制御装置80が受信するように構成してもよい。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0056】
10:エンジン、12:油燃料供給装置、20:吸気供給管、22:過給機、24:開口部、26:吸気供給管内圧力センサ、30:ガス燃料供給装置、32:開閉弁、34:圧力開放弁、36:圧力開放管、38:ガス燃料供給管、39:ガス燃料圧力センサ、40:ガス燃料供給弁、42:ステータ、44:電磁コイル、46:可動プレート、48:ガス燃料導入孔、50:固定プレート、52:隙間、54:ガス供給孔、56:ストッパ、58:スプリング、60:開口調節弁、61:開口孔、64:アイリス弁、65:薄板、66:アイリス弁アクチュエータ、68:スライド弁、69:スライド薄板、70:スライド弁アクチュエータ、72:バタフライ弁、73:円形薄板、74:棒軸、75:バタフライ弁アクチュエータ、80:電子制御装置
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