(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ブース用の円弧状ドア装置
(51)【国際特許分類】
E06B 3/72 20060101AFI20231215BHJP
E05B 1/00 20060101ALI20231215BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
E06B3/72
E05B1/00 311E
E05B1/00 311J
E06B3/46
(21)【出願番号】P 2020080130
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】松原 可菜子
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047766(WO,A1)
【文献】特開平9-41815(JP,A)
【文献】特開2016-20602(JP,A)
【文献】実開昭52-750(JP,U)
【文献】特開2003-42649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-1/06
E05D 15/06
E06B 3/46
E06B 3/68-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧軌跡を描く状態で左右方向にスライド移動することでブース前部に配される出入り口を開閉する円弧形状をしたドア体を備えて構成されるブース用の円弧状ドア装置において、
前記ドア体を、該ドア体周囲の枠組みをする框枠と、該ドア体表裏の面板とを備え、前記框枠のうちの戸先側縦框から戸尻側に向けて突出するよう補強材を設け、該補強材に、少なくともブース内側の面板から突出するよう把手を設けるにあたり、
前記補強材は、複数のピース材を前記円弧形状に沿うよう左右方向一連状に連結することで形成されていることを特徴とするブース用の円弧状ドア装置。
【請求項2】
前記ピース材は直方体形状をし、補強材は、隣接するピース材の互いに対向する端面の円弧内周側の端縁コーナー部同士が当接する一連の連接状態で表裏の面板に接着されていることを特徴とする請求項1記載のブース用の円弧状ドア装置。
【請求項3】
前記ピース材は、柱状の角材を切断することで形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のブース用の円弧状ドア装置。
【請求項4】
隣接するピース材の円弧外周側の端縁コーナー部が面取りされていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載のブース用の円弧状ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等の仕切られた(区画された)ブース(部屋)の出入り口に建て付けられるブース用の円弧状ドア装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トイレブース等の仕切られたブースの出入り口に建て付けられるドア装置として、平面視で円弧状のドア体(戸体)を円弧状レールに左右スライド移動させることで出入り口の開閉をするようにした所謂円弧状のドア装置が知られている。
そしてこのような円弧状のドア体は、平板状(平面状)のドア体の場合と同様、把手が設けられることがあり、この場合に該把手は、ドア体を開閉操作する際に負荷が働くため、該負荷に耐えられるよう強固に取り付ける必要がある。このため把手を、ドア体を枠組みしている戸先側の縦框に取付けることが提唱されるが、該縦框に取り付けられた把手は、ドア体が閉鎖した状態で戸先側の戸当りに近接しているため、把手を把持してドア体を開けようとする際に戸先側戸当りが邪魔になって操作しづらいという問題がある。
そこで把手を、戸先側縦框部位よりも戸尻側に偏倚した位置に設けて開放操作する際に戸先側戸当りが邪魔にならないようにすることが提唱される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように把手を、戸先側縦框部位よりも戸尻側に偏倚した位置に設ける場合、該部位は、ハニカムコア材等の充填材(芯材)が設けられる(充填される、内装される)部位であるため、把手を強固に取り付けることが事実上難しい。そこでドア体は、戸先側縦框から補強材を戸尻側に向けて突設し、該補強材に把手を取り付けるようにしていたが、前記従来の補強材は、平板状のドア体の場合と同様、直線(平板)状のものであったため、該部位を覆う表裏の面板が、他部位の表裏面板のように円弧状にはならず、補強材に倣って平板状になってしまって外観性が損なわれるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、円弧軌跡を描く状態で左右方向にスライド移動することでブース前部に配される出入り口を開閉する円弧形状をしたドア体を備えて構成されるブース用の円弧状ドア装置において、前記ドア体を、該ドア体周囲の枠組みをする框枠と、該ドア体表裏の面板とを備え、前記框枠のうちの戸先側縦框から戸尻側に向けて突出するよう補強材を設け、該補強材に、少なくともブース内側の面板から突出するよう把手を設けるにあたり、前記補強材は、複数のピース材を前記円弧形状に沿うよう左右方向一連状に連結することで形成されていることを特徴とするブース用の円弧状ドア装置である。
請求項2の発明は、前記ピース材は直方体形状をし、補強材は、隣接するピース材の互いに対向する端面の円弧内周側の端縁コーナー部同士が当接する一連の連接状態で表裏の面板に接着されていることを特徴とする請求項1記載のブース用の円弧状ドア装置である。
請求項3の発明は、前記ピース材は、柱状の角材を切断することで形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のブース用の円弧状ドア装置である。
請求項4の発明は、隣接するピース材の円弧外周側の端縁コーナー部が面取りされていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載のブース用の円弧状ドア装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、円弧状のドア体の戸先側縦框よりも戸尻側部位に把手を配するため設けられる補強材が、複数のピース材を円弧状に連結したものとなるため、補強材部位においても他部位と同様、面板が円弧状になるため外観性が損なわれることがない。
請求項2の発明とすることにより、円弧状の補強材を、直方体形状をしたピース材を用いて形成することができ、しかもこれらピース材は、面板に接着されることで補強ができることになって、補強材をいちいち円弧状にした一体ものとして予め形成する必要がなく、簡単に提供できることになる。
請求項3の発明とすることにより、ピース材を柱状の角材を切断することでできることになって作業性が向上する。
請求項4の発明とすることにより、各ピース材同士の円弧外周面側のコーナー部が面取りされている結果、該部位の面板が角ばった状態になってしまうことが解消され、外観性をさらに向上できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)(B)はトイレブースの正面図、側面図である。
【
図4】(A)(B)(C)はドア体の正面図、背面図、平面図である。
【
図5】(A)(B)はドア体の内部構造を示す正面図、背面図である。
【
図6】(A)(B)はドア体の錠装置部位を示す要部の背面図、戸先側から見た縦断面図である。
【
図7】(A)(B)は補強材を円弧状に連結した状態、直線状に連結した状態を示す平面図である。
【
図8】(A)(B)(C)はドア体の補強体部位の正面図、背面図、平面図である。
【
図10】第三の実施の形態の補強材を示すものであって、(A)(B)は円弧状に連結した状態の補強材の平面図、ピース材を切断する切断線を示した柱状角材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はトイレブースであって、該トイレブース1は、左右に複数が隣接する状態で設けられたものであり、出入り口(開口)Eを構成すべく前面(正面)に左右間隙を存する状態で設けられる戸先側、戸尻側の前面パネル体2、3と、これら前面パネル体2、3が先端部(前端部)に設けられていてこれら前面パネル体2、3とトイレブース奥端の壁等の躯体面Wとのあいだを仕切る側面パネル体4とを備えることで区画形成されていること等は何れも従来通りであり、これらのこれ以上の詳細については省略する。
【0009】
5は平面視で円弧形状をしたハンガー式のドア体(戸体)であって、該ドア体5は、ドア体5の左右上端縁部に設けたブラケット6aから上方に突出する状態でハンガーローラ(吊りローラ)6が設けられるが、該ハンガーローラ6が左右方向に転動案内される吊りレール(ハンガーレール、案内レール)7は、前記ドア体5の円弧形状に沿うよう円弧状をし、出入り口Eの上方とトイレブース1内に入り込む状態において左右方向一方(戸尻側)の側面パネル4の上端部とに亘るよう配設されている。そして前記ハンガーローラ6が吊りレール7を水平方向に転動することにより、ドア体5は左右方向にスライド移動して前記出入り口Eを閉鎖する閉鎖姿勢と、トイレブース1の戸尻側側面パネル体4側のトイレブース1内に入り込む状態になって出入り口Eを開放(開口)する開放姿勢とに変姿するようになっている。尚、Tはトイレブース1内に設けられる便器である。
【0010】
前記ドア体5は、四周に設けた上下の横框5a、5b、左右の戸先側、戸尻側の縦框5c、5d、上下方向中間部位に設けた横框5eによって枠組み形成されているが、さらに戸先側縦框5cの上半部部位に対して戸尻側に間隙を存する状態で平行状に隣接する補助縦框5fが設けられたものとなっており、これら框材に囲繞される空間にハニカムコア材(ペーパーコア材)等の充填材(芯材)8が充填された状態で、表裏面が面板9により被覆されたものとなっている。この場合に、面板9と各框5a~5fおよび充填材8とは接着剤10により接着された一体物になっている。
【0011】
前記ドア体5には、開閉操作するための把手11と、該把手11の上側に隣接する状態で施錠用の操作具(操作摘み)12とが設けられるが、把手11は、上下方向に長いコ字形をしており、把持部11bの上下両側に設けられる両脚片部11aが、面板9を貫通する状態で、戸先側縦框5cから戸尻側に向けて突出(延出)するよう上下に設けた後述の補強材(ライナー)13に取り付け支持されている。
尚、本実施の形態のドア体5は、吊レール7を戸尻側が低くなるようにして、自然状態(開閉操作していない状態)で自重で全開側に移動する自開式のものであり、このため開閉操作が必要のないブース外側の面には把手11を設ける必要はないが、本実施の形態のものでは、把手11が内外両側に設けられたものとなっている。また逆に、ドア体5が自閉式のものであった場合には、開放操作をするため室外側に把手11を設ける必要があることになる。
因みに、上側の補強材13の上端面には、前記補助縦框5fの下端縁部が当接した構成になっており、これによって、上下が上側横框5a、上側補強材13、左右が戸先側縦框5c、補助縦框5fにより囲繞された空間Sが形成されるが、該空間Sには、前記施錠用の操作具12と、該操作具12に連動連結される状態で連結杆14とが配され、そして上側横框5aから突出した連結杆14の上端部に設けたラッチ15が、前記操作具12の操作により、吊レール7に設けたラッチ受け17に係脱自在に係止することにより、全閉姿勢のドア体5の戸尻側への移動が規制され、これによってドア体5の施錠ができるようになっている。
【0012】
前記上下の補強材13は、柱状の角材を切断することで形成される直方体形状をしたピース材13aの複数を用いて形成されたものであるが、その場合に、各ピース材13aを、隣接するピース材13aの互いに対向する端面13b同士を当接して直線状に並べた状態で、円弧内周面となる側を粘着(接着)テープ18で粘着(接着)することで折曲自在になる状態で一連状に連結されたものとなっている。そしてこの場合に、ピース材13aは、円弧外周側コーナー部13dが予め面取りされたものとなっている。
そして、前記粘着テープ18によりピース材13aが折曲自在で直線状に連結された補強材13を戸先側縦框5cに連結することになるが、これには、戸先側縦框5cと、該縦框5cに隣接する最端部のピース材13aとが、表裏両面においてコ字形をしたステープル(タッカー、針状連結材)13eを介して連結されている。
またこのものでは、上側の補強材13については、前記戸先側縦框5cに連結される最端部のピース材13aに隣接するピース材13aと補助縦框5fの下端部とのあいだも前記ステープル13eを介して連結されたものとなっており、このようにして本実施の形態においては、前記ピース材13aがドア体5の框側に固定することで補強材13が補強されたものとなっている。
因みに、戸先側縦框5cと最端部のピース材13aとの連結としては、補強材13を連結形成するための粘着テープ18を、最端部のピース材13aよりも長く延長されたものとし、該延長部位を戸先側縦框5cに粘着して連結するようにしても実施できることになる。
【0013】
そしてドア体5としては、前述したように補強材13が戸先側縦框5cに連結されると共に、充填材8、操作具12等の必要な部材が組み込まれたものの表裏に、接着剤(例えばホットメルトタイプ(高温で溶融し、低温で固化するタイプ)の接着剤)10が塗布された面板9を当てがい、表裏面側から金型を押し当てた状態で加熱した後、冷却することで形成されることになるが、このような加工方法は既に公知(例えば特公昭62-25512号公報)である。
このような面板9を接着するための接着剤としては、溶剤が揮発して固化することで接着するタイプ、混合した2液の成分が反応して固化することで接着するタイプ、水分と反応して固化することで接着するタイプ等、各種のタイプの接着剤のなかから必要において好適のものを適宜選択して採用し、そして接着剤のタイプに対応した接着工程を経て面板9の接着ができることになるが、この場合に、面板9の接着後の形状維持をするため接着工程においては金型を押し当てて成形することはいうまでもない。
【0014】
このようにしてドア体5が形成される際に、前記ピース材13aが直線状に連結された補強材13は、ドア体5が円弧形状に加工されることに伴い、隣接するピース材13aの互いに対向する端面13b同士が、円弧内周側コーナー部13cが当接(近接)し、円弧外周側ほど対向間隔が離間(楔形状の間隔で離間)した状態となって表裏の面板9と接着して一体化されることとになるが、この場合に、接着剤10は、前記端面13b同士の離間した隙間に入り込むことになってピース材13a同士の接着剤10による接着(連結)もなされることになって補強材13の強度アップが図れることになる。
【0015】
叙述の如く構成された本実施の形態において、トイレブース1の前部に配される出入り口Eを開閉するためのドア体5を円弧形状にしたものにおいて、該ドア体5に、戸先側縦框5cから戸尻側に向けて突出するよう補強材13を設け、該補強材13に、面板9から突出する状態で把手11を設けるにあたり、該補強材13は、複数のピース材13aが円弧形状に添うよう左右方向に一連状に連結されたものになっているため、ドア体5は、補強材13が設けられる部位においても、他部位と同様、面板9が円弧形状になるため、外観性が損なわれることもない。
【0016】
そしてこの場合に、ピース材13aとしては直方体形状をしたものが採用され、補強材13は、隣接するピース材13aの互いに対向する端面13bの円弧内周側のコーナー部13c同士が当接する一連状の連結状態で面板9に接着されることで一体化されたものとなり、この結果、補強材13を、複数のピース材13aを用いて形成したものであっても強度維持を図ることができることになって、補強材13を予め円弧形状にした一体ものとして形成する必要がなく、簡単かつ容易に提供できることになる。
しかもピース材13aは、柱状の角材を単純に切断することにより形成されるので、加工が簡単で作業性が向上する。
【0017】
しかもこのように形成された補強材13は、隣接するピース材13aの円弧外周側のコーナー部13dが面取りされたものになっているため、該コーナー部13d部位の面板9が角ばった状態になってしまうことが解消され、外観性をさらに向上できることになる。
【0018】
尚、本発明は前記実施の形態のものに限定されないことは勿論であって、
図9に示す第二の実施の形態のように、円弧外周側コーナー部13dが面取りされないものであっても同様にして実施することができる。
またピース材13aとしては、
図10(A)に示す第三の実施の形態のように、円弧形状に対応させて正面視で台形形状に形成され、辺長の短い上底側が円弧内周面側となり、長い下底側が円弧外周面側となるよう連結されることになる。そしてこの場合のピース材13aとしては、同図(B)に示すように、直線状の角材を、上底と下底とが交互となるよう切断することで形成できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等の仕切られたブースの出入り口に建て付けられるブース用の円弧状ドア装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 トイレブース
5 ドア体
5c 戸先側縦框
9 面板
10 接着剤
11 把手
13 補強材
13a ピース材
13b 端面
13c 円弧内周側コーナー部
13d 円弧外周側コーナー部
18 粘着テープ
E 出入り口