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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
E01C19/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020080174
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021173136
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 貴尚
(72)【発明者】
【氏名】菅嶋 進弥
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-074573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0277179(US,A1)
【文献】特開2001-226907(JP,A)
【文献】特開2005-098013(JP,A)
【文献】韓国特許第10-0946849(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと、
該ステップの上方に配置された前記運転席の床板と、
前記ステップ及び前記床板の間に形成され、前記車体の側方に開口した収容室と、
前記収容室の内部において前記ステップより前記車体の幅方向における内方に配設され、前記車体に取り付けられた機器と、を備える転圧機械において、
前記収容室の内部で、少なくとも側方から前記機器を覆い、前記車体に取り付けられたカバーを更に備え、
該カバーは、前記車体の上下方向における下方、且つ前記幅方向における内方に向かって斜めに延びる側方傾斜被覆部を有する、ことを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記カバーは、該カバーの上下方向における中央より下側の部分に前記側方傾斜被覆部を有する、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【請求項3】
前記カバーは、開閉自在に前記車体に取り付けられており、
前記カバーは、開放状態において、前記カバーの少なくとも一部分が前記収容室の外方に位置するように構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2記載の転圧機械。
【請求項4】
前記カバーは、開放状態において、前記カバーの少なくとも一部分が前記収容室の前方に位置するように構成されている、ことを特徴とする請求項3記載の転圧機械。
【請求項5】
前記カバーは、開閉自在に前記車体に取り付けられており、
前記カバーは、閉鎖状態において、前記床板及び前記ステップよりも前記車体の幅方向における内方に位置するように構成されている、ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の転圧機械。
【請求項6】
前記カバーは、開閉自在に前記車体に取り付けられており、
前記カバーは、閉鎖状態において、前記床板及び前記ステップよりも前記車体の前後方向における後方に位置するように構成されている、ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に関し、特に機器を保護するカバーを備える転圧機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転席の下方に設けられた空間に散水装置の一部(散水ポンプ、フィルタ、バルブ類が共通のユニットベースに固定されてアセンブリ化された状態のもの(以下、単に「制御ユニット」ともいう。))を配置した転圧機械が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の転圧機械は、後部車体の左側面の下部に、作業者が運転席に乗降するためのステップを有している。更に、当該転圧機械においては、ステップと運転席の床板との間に左側方に開口する機械室が形成されており、当該機械室内に制御ユニットが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6325498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の転圧機械では、制御ユニットのメンテナンスを容易にするため、当該制御ユニットは機械室内において露出して配置されている。しかしながら、このような状態で作業者がステップを使って運転席への乗降をすると、作業者の足が制御ユニット(例えば散水ポンプ)に接触し、当該散水ポンプ等の破損を招く虞があった。また、運転席への乗降の際に当該制御ユニット(例えば散水ポンプ)に土砂等が堆積し、当該散水ポンプ等の故障を招く虞もあった。
【0006】
他方、制御ユニットが配設される機械室は、運転席へ乗降する作業者のための足場としても機能するため、作業者の乗降性を確保することが求められる。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者の乗降性を確保しつつ、搭載される機器の保護を図ることのできる転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の転圧機械は、運転席への乗降のために車体の側部に設けられたステップと、該ステップの上方に配置された前記運転席の床板と、前記ステップ及び前記床板の間に形成され、前記車体の側方に開口した収容室と、前記収容室の内部において前記ステップより前記車体の幅方向における内方に配設され、前記車体に取り付けられた機器と、を備える転圧機械において、前記収容室の内部で、少なくとも側方から前記機器を覆い、前記車体に取り付けられたカバーを更に備え、該カバーは、前記車体の上下方向における下方、且つ前記幅方向における内方に向かって斜めに延びる側方傾斜被覆部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の転圧機械によれば、前記収容室の内部で、少なくとも側方から前記機器を覆い、前記車体に取り付けられたカバーが設けられている。よって、機器と作業者の足との間にカバーが配置されるため、作業者がステップを使って運転席への乗降をする際に作業者の足が機器に接触することがなく、当該機器の破損を回避することができる。また、例えば作業者が運手席に乗降する際に土砂等が落下した場合であっても、当該機器への土砂等の堆積が抑制されるため、当該機器の故障を回避することができる。更に、カバーは、前記車体の上下方向における下方、且つ前記幅方向における内方に向かって斜めに延びる側方傾斜被覆部を有する。よって、ステップの上方に作業者の足を入れる空間が形成されるため、ステップを使って運転席へ乗降する際の作業者の足場を確保でき、作業者の乗降性を確保することができる。このようにして、本発明の転圧機械によれば、作業者の乗降性を確保しつつ、搭載される機器の保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る転圧機械の全体構成を示す側面図である。
図2図1の転圧機械における後部車体を示す斜視図であり、カバーが閉鎖された状態を示すものである。
図3図2に示す後部車体に散水機器を取り付けた状態を示す側面図であり、カバーを省略して示すものである。
図4】本発明の実施形態に係るカバー、カバー用ブラケット、散水機器用ブラケット、ラッチ用ブラケットの相互接続関係を示す分解斜視図である。
図5図2の後部車体における機械室を前方から拡大して示す部分正面図であり、ステップの形状を変更して示すものである。
図6図2の後部車体における機械室を拡大して示す斜視図であり、カバーが開放された状態を示すものである。
図7図2の後部車体における運転席の床板を水平に切断して示す断面図であり、機械室を上方から見た状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る転圧機械1の全体構成を示す側面図である。図2は、図1の転圧機械1における後部車体5を示す斜視図であり、カバー30が閉鎖された状態を示すものである。図3は、図2に示す後部車体5に散水機器16を取り付けた状態を示す側面図であり、カバー30を省略して示すものである。図4は、本発明の実施形態に係るカバー30、カバー用ブラケット50、散水機器用ブラケット60、ラッチ用ブラケット70の相互接続関係を示す分解斜視図である。図5は、図2の後部車体5における機械室20を前方から拡大して示す部分正面図であり、ステップ18の形状を変更して示すものである。図6は、図2の後部車体5における機械室20を拡大して示す斜視図であり、カバー30が開放された状態を示すものである。図7は、図2の後部車体5における運転席9の床板9aを水平に切断して示す断面図であり、機械室20を上方から見た状態を示すものである。
【0013】
なお、説明の便宜上、転圧機械1の進行方向を基準に、運転席9に着座した運転者から見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は、転圧機械1の前進方向及び後進方向を示し、矢印「左」及び「右」は転圧機械1の左右(車幅)方向を示し、矢印「上」及び「下」は転圧機械1の上下方向を示している。
【0014】
転圧機械1は、例えばアーティキュレート式の振動ローラとして構成されている。図1に示すように、転圧機械1は、前部転圧輪2を備えた前部車体3と後部転圧輪4を備えた後部車体5とから構成されている。前部車体3と後部車体5とは、センタピン6を介して水平方向に屈曲可能なアーティキュレート式に連結され、相互に屈曲することで転圧機械1が旋回するように構成されている。前部転圧輪2は、転圧機械1の左右方向幅(車幅)に対応する幅の金属ドラムから構成されている。後部転圧輪4は、複数本のゴムタイヤから構成されている。
【0015】
後部車体5上の前側位置にはステアリング7を備えた操作台8が設置されており、操作台8の後側には運転席9が設置されている。運転席9に着座した作業者はステアリング7及び操作台両脇の前後進レバー10を操作し、その操作に応じて、前部車体3内に搭載されたエンジンで駆動されるHST(Hydro Static Transmission)を動力源として転圧機械1が走行するようになっている。
【0016】
また、転圧機械1は、前部転圧輪2に対応して配設された前部散水ノズル12と、後部転圧輪4に対応して配設された後部散水ノズル13と、後部車体5上に設置されて前部散水ノズル12及び後部散水ノズル13へ供給される水を貯留する散水タンク14と、散水タンク14と前部散水ノズル12、散水タンク14と後部散水ノズル13とを夫々接続する配管15(図3)と、当該配管15上に配設された散水機器16(散水ポンプ16a、フィルタ16b、及びソレノイドバルブ16c)(図3)とを有している。
【0017】
図1図3図7に示すように、転圧機械1は、運転席9への乗降のために後部車体5(車体)の側部に設けられたステップ18と、当該ステップ18の上方に配置された運転席9の床板9aと、ステップ18及び床板9aの間に形成され、後部車体5の側方としての左方に開口した機械室20(収容室)と、機械室20の内部においてステップ18より後部車体5の幅方向における内方としての右方に配設され、後部車体5に取り付けられた散水機器16と、機械室20の内部で、少なくとも側方としての左方から散水機器16を覆い、後部車体5に取り付けられたカバー30と、を備える。
【0018】
図2に示すように、ステップ18は、作業者が運転席9に乗降する際の足場の役割を果たすものであり、外側ステップ18a、内側ステップ18b、及び前側ステップ18cから構成されている。外側ステップ18aは、内側ステップ18bより左側(車幅方向外側)に配置されている。外側ステップ18a及び内側ステップ18bは、車幅方向に離間しつつ前後方向に平行に延びる一対の板状の部材である。外側ステップ18a及び内側ステップ18bの両方は、後側の端部において後部車体5に溶接等で固定されている。また、外側ステップ18aは、当該外側ステップ18aの前側の端部において、前方向且つ右方向に斜めに延びる板状の部材である前側ステップ18cと一体形成されている。また、内側ステップ18bは、当該内側ステップ18bの前側の端部において、前側ステップ18cに溶接等で固定されている。前側ステップ18cは、右側端部18dにおいて後部車体5に固定されている。前側ステップ18cは、左側端部18eから右側端部18dにかけて同等又は略同等の高さに形成されていてもよいし(図2)、左側端部18eが右側端部18dよりも上方に位置するように形成されてもよい(図5)。
【0019】
図2に示すように、床板9aは、運転席9に着座した作業者が足を載せる部分である平板状の載置部9bと、当該載置部9bの輪郭を部分的に包囲する支持部9cと、支持部9cに一体形成された平板状の被締結部9f(図7)とを有する。載置部9bは、ボルト等を用いて被締結部9fに固定される。支持部9cは、載置部9bの左側の端縁に沿って前後方向に延在する部分である左端支持部9dを含む。
【0020】
図1及び図2に示すように、機械室20は、後部車体5の左側面に画成されている、より詳細には、後部車体5の左側面の下部に、作業者が運転席9に乗降するためのステップ18が設けられ、このステップ18と運転席9の床板9aとの間に左方且つ前方に開口するように機械室20が画成されている。機械室20の内部には、後述する散水機器用ブラケット60を介して散水機器16が収容されている。更に、機械室20の内部には、カバー用ブラケット50を介してカバー30が収容されている。
【0021】
次いで、図3を用いて散水機器16について説明する。図3に示すように、散水機器16は、散水ポンプ16a、フィルタ16b、及びソレノイドバルブ16cを有する。散水ポンプ16aは、散水タンク14内の水を前部散水ノズル12及び後部散水ノズル13に供給するように構成されている。フィルタ16bは、散水ポンプ16aから吐出される水に含まれる異物をろ過するように構成されている。ソレノイドバルブ16cは、散水ポンプ16aと前部散水ノズル12及び後部散水ノズル13との間に介装され、散水ポンプ16aの作動時には開弁されて散水ポンプ16aから前部散水ノズル12及び後部散水ノズル13への水の供給を許容し、散水ポンプ16aの停止時には閉弁されて前部散水ノズル12及び後部散水ノズル13からの水の滴りを防止するように構成されている。
【0022】
図3に示すように、配管15は、散水タンク14及び散水ポンプ16aを接続する第1配管15aと、散水ポンプ16a及びフィルタ16bを接続する第2配管15bと、フィルタ16b及びソレノイドバルブ16cを接続する第3配管15cと、ソレノイドバルブ16c及び前部散水ノズル12を接続する第4配管15dと、ソレノイドバルブ16c及び後部散水ノズル13を接続する第5配管15eとから構成されている。これにより、散水タンク14に貯留されている水は、第1配管15aを介して散水ポンプ16aに吸入される。当該散水ポンプ16aから吐出された水は、フィルタ16bを通過して、ソレノイドバルブ16cの作用により、前部散水ノズル12及び後部散水ノズル13に供給される。
【0023】
更に、散水機器16は、図示しない切換バルブ、ドレンバルブを有してもよい。切換バルブは、ソレノイドバルブ16cと後部散水ノズル13とを接続する第5配管15eに設けられ、当該第5配管15eを開閉するように構成されている。これにより、前部散水ノズル12から前部転圧輪2への散水を継続しつつ、後部散水ノズル13から後部転圧輪4への散水を任意に実行、中止し得るようになっている。ドレンバルブは、配管15上の各所に介装され、開弁により配管15内の水を排出する。
【0024】
次いで、図4を用いて、カバー用ブラケット50、散水機器用ブラケット60、ラッチ用ブラケット70について説明する。図4に示すように、カバー用ブラケット50は、全体として左右方向を向いた面を有する平板状の部材から形成されており、第1カバー取付部51と第2カバー取付部52とを含んでいる。第1カバー取付部51は、後述するカバー30の第1ヒンジ部31及び後述する散水機器用ブラケット60の第1散水機器取付部61に対応する部分である。第2カバー取付部52は、第1カバー取付部51の下方に位置し、後述するカバー30の第2ヒンジ部32(図5)に対応する部分である。第1カバー取付部51及び第2カバー取付部52の両方は、左右方向を向いて面が形成されている。
【0025】
第1カバー取付部51及び第2カバー取付部52には、当該第1カバー取付部51及び第2カバー取付部52を左右方向に貫通する一対の上側貫通孔51a及び一対の下側貫通孔52aが形成されている。図4に示すように、後述する第1ヒンジ部挿通孔31a及び上側貫通孔51aに第1ボルト90を挿通し、且つ、図示しない第2ヒンジ部挿通孔及び下側貫通孔52aに第1ボルト90を挿通し、当該第1ボルト90を例えばナット等に螺合することにより、カバー30がカバー用ブラケット50を介して後部車体5に取り付けられる。
【0026】
また、第1カバー取付部51には、一対の上側貫通孔51aよりも後側に、当該第1カバー取付部51を左右方向に貫通する一対の第1連通孔51bが形成されている。当該一対の第1連通孔51bは、カバー用ブラケット50を散水機器用ブラケット60に取り付けるために使用される。カバー用ブラケット50及び散水機器用ブラケット60の接続については後述する。
【0027】
図4に示すように、散水機器用ブラケット60は、第1散水機器取付部61、第2散水機器取付部62、第3散水機器取付部63、第1連結部64、及び第2連結部65を含んでいる。
【0028】
第1散水機器取付部61は、左右方向を向いて面が形成された平板状の部分であり、第1カバー取付部51に対応する部分である。第1散水機器取付部61には、当該第1散水機器取付部61を左右方向に貫通する一対の第2連通孔61bが形成されている。又、第1散水機器取付部61には、一対の第2連通孔61bよりも下側に、当該第1散水機器取付部61を左右方向に貫通する一対の第1取付孔61aが形成されている。図4に示すように、第1カバー取付部51の第1連通孔51b及び第1散水機器取付部61の第2連通孔61bに第2ボルト91を挿通し、当該第2ボルト91を例えば後部車体5に螺合することにより、カバー用ブラケット50及び散水機器用ブラケット60が一体となって後部車体5に取り付けられる。また、第1散水機器取付部61の第1取付孔61aは、図示しないボルト等を用いて、フィルタ16bを取付けるために利用される。
【0029】
第2散水機器取付部62は、上下方向を向いて面が形成された平板状の部分である。第2散水機器取付部62には、当該第2散水機器取付部62を上下方向に貫通する4つの第2取付孔62aが形成されている。第2散水機器取付部62の第2取付孔62aは、図示しないボルト等を用いて、散水ポンプ16aを取付けるために利用される。
【0030】
第3散水機器取付部63は、上下方向を向いて面が形成された平板状の部分である。第3散水機器取付部63には、当該第3散水機器取付部63の左右方向における端縁に複数の切り欠き63aが形成されている。第3散水機器取付部63の切り欠き63aは、ソレノイドバルブ16cを取り付けるために利用される。第3散水機器取付部63は、後述する第2連結部65と一体形成されている。
【0031】
第1連結部64は、左右方向を向いて面が形成された平板状の部分であり、第1散水機器取付部61と第2散水機器取付部62とを接続するように構成されている。第1連結部64には、当該第1連結部64を左右方向に貫通する一対の第3取付孔64aが形成されている。第1連結部64の第3取付孔64aは、例えば第2ボルト91を用いて、散水機器用ブラケット60を後部車体5に取付けるために利用される。又、第1連結部64には、第2連結部65が接続されている。第1連結部64は、第1散水機器取付部61、第2散水機器取付部62、及び第2連結部65と一体形成されていてもよいし、別体に形成されて溶接等で互いに接続されていてもよい。
【0032】
第2連結部65は、前後方向を向いて面が形成された平板状の部分であり、右側の端部において第1連結部64と接続されている。第2連結部65には、当該第2連結部65を前後方向に貫通する4つの第3連通孔65aが形成されている。当該第3連通孔65aは、後述するラッチ用ブラケット70を散水機器用ブラケット60に取り付けるために利用される。ラッチ用ブラケット70及び散水機器用ブラケット60の接続については後述する。
【0033】
ラッチ用ブラケット70は、全体として前後方向を向いた面を有する平板状の部材から形成されており、本体部71と係止部72とを含んでいる。本体部71は、前後方向を向いて面が形成された平板状の部分であり、第2連結部65に対応して設けられている。本体部71には、当該本体部71を前後方向に貫通する一対の第4連通孔71aが形成されている。図4に示すように、第3ボルト92を、本体部71の第4連通孔71a及び第2連結部65の第3連通孔65aに挿通し、当該第3ボルト92をナット等に螺合することにより、ラッチ用ブラケット70が散水機器用ブラケット60に固定される。係止部72は、本体部71の左側の端部から屈曲して形成され、前方向且つ右方向に斜めに延びる部分である。係止部72は、後述するカバー30のラッチ34と協働し、これにより、カバー30が閉鎖状態に維持される。
【0034】
このように、散水機器用ブラケット60に散水機器16が固定される。具体的には、第1散水機器取付部61にフィルタ16bが固定され、第2散水機器取付部62に散水ポンプ16aが固定され、第3散水機器取付部63にソレノイドバルブ16cが固定される。又、カバー用ブラケット50に後述するカバー30が固定される。更に、散水機器用ブラケット60にカバー用ブラケット50及びラッチ用ブラケット70が固定される。以上のような状態で、散水機器16及びカバー30は、機械室20の内部に収容される。そして、第1カバー取付部51の第1連通孔51b及び第1散水機器取付部61の第2連通孔61bに第2ボルト91を挿通し、且つ、第1連結部64の第3取付孔64aに例えば第2ボルト91を挿通し、当該第2ボルト91を後部車体5に螺合することにより、散水機器16及びカバー30が後部車体5に取り付けられる。
【0035】
次いで、カバー30について説明する。図1図2図7に示すように、カバー30は、左方且つ前方から散水機器16を覆う板状の金属製部材から形成されている。図4図5に示すように、カバー30は、第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32と、左側被覆体33と、ラッチ34と、前側被覆体35とを有している。
【0036】
前側被覆体35は、散水機器16を前側から覆う板状の部材である。前側被覆体35の右側の端部には、第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32が取り付けられている。第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32は、カバー30を後部車体5に取り付ける部材である。第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32は、カバー30の上下方向、左右方向、前後方向への直線移動を規制しつつ、カバー30の回転を許容する部材であり、その機構自体は公知であるため詳細な説明を省略する。
【0037】
左側被覆体33は、前側被覆体35の左側の端縁から後方へ向かって連続して延び、散水機器16を左側から覆う板状の部材である。左側被覆体33及び前側被覆体35は、一枚の金属板をプレス加工等することで形成されている。カバー30の左側被覆体33は、後部車体5の下方、且つ後部車体5の右方(内方)に向かって斜めに延びる側方傾斜被覆部33aを含む。具体的には、図5に示すように、カバー30の左側被覆体33は、当該カバー30の左側被覆体33の上下方向における中央より下側の部分に設けられた側方傾斜被覆部33aと、当該カバー30の左側被覆体33の上下方向における中央より上側の部分に設けられた側方上側被覆部33bとを含む。側方上側被覆部33bは、後部車体5の上下方向に沿って延びる部分である。なお、左側被覆体33は、側方上側被覆部33bを含まなくてもよく、側方傾斜被覆部33aが左側被覆体33の全体に亘って斜めに延びて構成されてもよい。
【0038】
ラッチ34は、本体部34aとストッパ部34bとを有している。本体部34aは、ねじ93を用いて、カバー30の左側被覆体33に取り付けられる。ストッパ部34bは、本体部34aに回動可能に設けられている。カバー30を閉鎖する際にストッパ部34bがラッチ用ブラケット70の係止部72に係合することで、カバー30の閉鎖状態が維持される。更に、左側被覆体33には取っ手33cが取り付けられている。作業者は、当該取っ手33cを用いて、カバー30の開閉を行うことができる。
【0039】
図6に示すように、カバー30は、第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32を介して、開閉自在に後部車体5に取り付けられている。具体的には、カバー30は、第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32を介して、前後方向に回動自在となるように、後部車体5に取り付けられている。また、カバー30は、開放状態において、当該カバー30の少なくとも一部分が機械室20の外方に位置するように構成されている。より具体的には、第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32が機械室20における前側に取り付けられており、これにより、カバー30は、開放状態において、当該カバー30の少なくとも一部分が機械室20の前方に位置するように構成されている。なお、カバー30は、左右方向に回動自在となるように後部車体5に取り付けられてもよい。この場合、カバー30は、開放状態において、当該カバー30の少なくとも一部分が機械室20の左方に位置するように構成される。
【0040】
図7に示すように、カバー30は、閉鎖状態において、床板9a及びステップ18よりも後部車体5の幅方向における右方(内方)に位置するように構成されている。具体的には、カバー30の閉鎖状態において、当該カバー30の側方上側被覆部33bは、内側ステップ18bより右方、且つ、床板9aの左端支持部9dより右方に位置している。なお、図7に示すように、床板9aの左端支持部9dは、内側ステップ18bよりも右方に位置している。つまり、図7に示すように、車幅方向の左方から右方にかけて順に、ステップ18(外側ステップ18a及び内側ステップ18b)、床板9aの左端支持部9d、カバー30の側方上側被覆部33bが配置される。これにより、作業者のための階段状の足場が確保される。
【0041】
更に、図7に示すように、カバー30は、閉鎖状態において、床板9a及びステップ18よりも後方に位置するように構成されている。具体的には、前側被覆体35は、カバー30の閉鎖状態において、床板9aの支持部9cの前側端部9eよりも後方に位置している。支持部9cの前側端部9eは、支持部9cにおいて前側に位置する部分であり、図7に示すように、前方且つ右方に斜めに延びる部分である。更に、前側被覆体35は、カバー30の閉鎖状態において、前側ステップ18cの上方に位置している。なお、前側被覆体35は、カバー30の閉鎖状態において、前側ステップ18cよりも後方に位置してもよい。
【0042】
次いで、図5から図7を用いて、本発明の実施形態に係る転圧機械1の作用、効果について説明する。
【0043】
図5に示すように、本実施形態に係る転圧機械1によれば、少なくとも左方から散水機器16を覆い、後部車体5に取り付けられたカバー30が設けられている。よって、散水機器16と作業者の足との間にカバー30が配置されるため、作業者がステップ18を使って運転席9への乗降をする際に作業者の足が散水機器16に接触することがなく、当該散水機器16の破損を回避することができる。また、例えば作業者が運転席9に乗降する際に土砂等が落下した場合であっても、当該散水機器16への土砂等の堆積が抑制されるため、当該散水機器16の故障を回避することができる。更に、カバー30は、後部車体5の上下方向における下方、且つ後部車体5の幅方向における右方(内方)に向かって斜めに延びる側方傾斜被覆部33aを有する。よって、ステップ18の上方に作業者の足を入れる空間が形成されるため、ステップ18を使って運転席9へ乗降する際の作業者の足場を確保でき、作業者の乗降性を確保することができる。このようにして、本実施形態の転圧機械1によれば、作業者の乗降性を確保しつつ、搭載される散水機器16の保護を図ることができる。
【0044】
又、本実施形態に係る転圧機械1によれば、カバー30は、当該カバー30の上下方向における中央より下側の部分に、側方傾斜被覆部33aを有している。このように、運転席9への乗降をする際に作業者の足が入る空間を必要最小限の大きさにすることで、カバー30によって覆われる散水機器16の設置スペースを確保しつつ、作業者の乗降性を確保することができる。
【0045】
又、本実施形態に係る転圧機械1によれば、カバー30は、開閉自在に後部車体5に取り付けられており、カバー30は、開放状態において、当該カバー30の少なくとも一部分が機械室20の外方に位置するように構成されている。このため、カバー30を開放することにより、散水機器16のメンテナンスを容易に行うことができる。更に、カバー30は開放状態において機械室20の内部に位置することがないため、運転席9に着座した作業者は、開放された状態のカバー30を視認することができる。よって、カバー30を開放した状態で転圧機械1の走行を開始するという作業者の操作ミスが低減され、ひいては対象物(例えば工事用道具等)へのカバー30の接触による当該カバー30の破損を防止できる。
【0046】
又、本実施形態に係る転圧機械1によれば、カバー30は、開放状態において、カバー30の少なくとも一部分が機械室20の前方に位置するように構成されている。このため、カバー30を開放状態にすることにより、散水機器16のメンテナンスを容易に行うことができる。更に、運転席9に着座した作業者は、転圧機械1を操作する際の自然な目線位置において、開放された状態のカバー30をより一層容易に視認することができる。よって、カバー30を開放した状態で転圧機械1の走行を開始するという作業者の操作ミスがより一層低減され、ひいては対象物(例えば工事用道具等)へのカバー30の接触による当該カバー30の破損をより確実に防止できる。
【0047】
又、本実施形態に係る転圧機械1によれば、カバー30は、閉鎖状態において、床板9a及びステップ18よりも後部車体5の幅方向における右方(内方)に位置するように構成されている。このため、作業者がステップ18を使って運転席9へ乗降をする際に、カバー30によって作業者の足場が占められることがなく、作業者の乗降性を確保することができる。更に、カバー30の閉鎖状態において、当該カバー30が後部車体5から外方に位置することがないため、転圧機械1の走行中、対象物(例えば工事用道具等)へのカバー30の接触による当該カバー30の破損を防止できる。
【0048】
又、本実施形態に係る転圧機械1によれば、カバー30は、閉鎖状態において、床板9a及びステップ18よりも後部車体5の前後方向における後方に位置するように構成されている。このように、カバー30の閉鎖状態において、当該カバー30が後部車体5から前方に位置することがないため、転圧機械1の走行中、対象物(例えば前部車体3等)へのカバー30の接触による当該カバー30の破損を防止できる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に係る転圧機械1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0050】
例えば、上記実施形態では、カバー30が、後部車体5の左側面に設けられた機械室20に取り付けられる態様について説明した。しかし、カバー30は、後部車体5の右側面に設けられた機械室(図示せず)に取り付けられてもよい。後部車体5の右側面に設けられた機械室には、前部転圧輪2及び後部転圧輪4に塗布する被着防止剤のための液剤装置が収容されてよい。
【0051】
また、上記実施形態では、カバー30が、第1ヒンジ部31及び第2ヒンジ部32を介して、後部車体5に対して回動自在に取り付けられる態様について説明した。しかし、カバー30は、後部車体5に対してスライド自在(直線移動可能)に取り付けられてもよい。この場合、カバー30は、例えば床板9aの下面に設けたスライドレール等に取り付けられて、機械室20の前方又は左方にスライド可能に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 転圧機械
5 後部車体(車体)
9 運転席
9a 床板
16 散水機器(機器)
18 ステップ
20 機械室(収容室)
30 カバー
33a 側方傾斜被覆部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7