(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/134 20060101AFI20231215BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20231215BHJP
F16D 43/21 20060101ALI20231215BHJP
F16F 15/30 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F16F15/134 D
F16D7/02 A
F16D43/21
F16F15/134 A
F16F15/30 Z
(21)【出願番号】P 2020098160
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/143468(WO,A1)
【文献】特開2011-027122(JP,A)
【文献】特開2002-181085(JP,A)
【文献】特開2014-066360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 15/123
F16F 15/30
F16F 15/133
F16F 15/121
F16D 7/02
F16D 43/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定用孔を有し、駆動源側の部材に固定されるフライホイールと、
前記フライホイールに固定され、前記フライホイールからのトルクを出力側の部材に伝達するとともにトルク変動を減衰するダンパ装置と、
を備え、
前記ダンパ装置は、入力回転部材と、前記入力回転部材と相対回転可能な出力回転部材と、前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転方向に弾性的に連結する1対の第1弾性部材と、を有し、
前記入力回転部材及び前記出力回転部材は、前記フライホイールの固定用孔に対応する位置に配置された複数の組付用孔と、前記1対の第1弾性部材を収容する1対の第1収容部と、を有し、
複数の前記組付用孔は、円周方向に並べて、かつ隣接する組付用孔の間隔が他の部分よりも広い1対の収容スペースが形成されるように配置されており、
前記1対の第1収容部は、前記収容スペースの径方向外方に配置されている、
動力伝達装置。
【請求項2】
前記複数の組付用孔は、それぞれ第1間隔で円周方向に並べて配置された複数の第1組付用孔及び複数の第2組付用孔を有するとともに、隣接する前記第1組付用孔と前記第2組付用孔とは、前記第1間隔より広い第2間隔をあけて配置され、
前記収容スペースは、前記第2間隔をあけて配置された第1組付用孔と第2組付用孔との間に形成されている、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記ダンパ装置は、前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転方向に弾性的に連結する1対の第2弾性部材をさらに有し、
前記入力回転部材及び前記出力回転部材は1対の第2収容部をさらに有し、前記第2収容部は、第1組付用孔及び第2組付用孔の径方向外方に配置され、前記第2弾性部材を収容する、
請求項1又は2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記1対の第2収容部と、前記第2収容部の径方向内方に配置されている少なくとも前記出力回転部材の第1組付用孔及び第2組付用孔と、は連通している、請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
複数の前記組付用孔は、前記フライホイールを前記駆動源の部材に固定するための固定部材が貫通可能である、請求項1から4のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記入力回転部材は、軸方向に間隔をあけて配置され互いに固定された第1プレート及び第2プレートを有し、
前記出力回転部材は、前記出力側の部材に連結されるハブと、前記ハブの外周部から径方向外方に延び前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置されたフランジと、を有し、
複数の前記組付用孔は、前記第1プレート、前記第2プレート、及び前記フランジに形成されている、
請求項1から5のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記ダンパ装置は、前記入力回転部材の外周部に固定されたトルクリミッタユニットをさらに有し、
前記トルクリミッタユニットは、外周部が前記フライホイールに固定されるとともに、予め設定された範囲内のトルクを伝達する、
請求項1から6のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記トルクリミッタユニットは、
前記フライホイールに固定されたカバー部材と、
前記入力回転部材に固定された摩擦部材と、
前記摩擦部材を前記カバー部材に押圧する押圧部材と、
前記押圧部材の前記摩擦部材に対する押圧力を解除するための解除機構と、
を有している、
請求項7に記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記解除機構は、
前記カバー部材に形成されたネジ孔と、
前記ネジ孔にねじ込まれることによって前記押圧部材の押圧力を解除するネジ部材と、
を有している、
請求項8に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン及び電動機を備えたハイブリッド車両では、エンジン始動時等において出力側から過大なトルクがエンジン側に伝達するのを防止するために、特許文献1に示されるようなトルクリミッタ機能を有するダンパ装置(動力伝達装置の一例)が用いられている。
【0003】
特許文献1のダンパ装置は、1対のプレート、ハブフランジ、及び複数のコイルスプリングを有するダンパ部を有している。そして、このダンパ部の外周側にトルクリミッタが設けられ、トルクリミッタのプレートが、リベットによってフライホイールに固定されている。また、フライホイールは複数のボルトによってエンジンのクランク軸に装着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、フライホイールが装着されたダンパ装置では、フライホイールをクランク軸に固定するために複数のボルトが用いられる。そして、この複数のボルトを貫通させるための孔を、ダンパ装置のハブフランジ等に形成する必要がある。複数のボルトの取付径は、固定強度を強固にするためには大きい方が好ましい。
【0006】
このように、ボルトの取付径を大きくすると、ハブフランジにおけるボルトを貫通させるための孔が、より外周側に形成される。このため、ハブフランジに形成されるコイルスプリングを収容するための窓孔もさらに外周側に形成され、装置全体が大型化する。
【0007】
本発明の課題は、フライホイール及びダンパ装置を備えた動力伝達装置において、フライホイールの固定強度を強固にし、かつ装置の大型化を避けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る動力伝達装置は、フライホイールと、ダンパ装置と、を備えている。フライホイールは、複数の固定用孔を有し、駆動源側の部材に固定される。ダンパ装置は、フライホイールに固定され、フライホイールからのトルクを出力側の部材に伝達するとともにトルク変動を減衰する。また、ダンパ装置は、入力回転部材と、入力回転部材と相対回転可能な出力回転部材と、入力回転部材と出力回転部材とを回転方向に弾性的に連結する1対の第1弾性部材と、を有している。
【0009】
そして、入力回転部材及び出力回転部材は、複数の組付用孔と、1対の第1収容部と、を有している。複数の組付用孔は、フライホイールの固定用孔に対応する位置に配置されている。1対の第1収容部は、1対の第1弾性部材を収容する。また、複数の組付用孔は、円周方向に並べて、かつ隣接する組付用孔の間隔が他の部分よりも広い1対の収容スペースが形成されるように配置されている。そして、1対の第1収容部は、収容スペースの径方向外方に配置されている。
【0010】
この動力伝達装置では、ボルト等の固定部材を、入力回転部材及び出力回転部材の組付用孔を通してフライホイールの固定用孔に挿入し、これによりフライホイール及びダンパ装置が、クランク軸等の駆動源側の部材に固定される。
【0011】
ここで、複数の組付用孔は、円周方向に並べて、かつ不等ピッチで配置されており、その一部に収容スペースが形成されている。そして、出力回転部材の第1収容部は、この収容スペースの径方向外方に配置されているので、組付用孔の取付径を大きくしても、第1収容部を比較的径方向内方に配置できる。このため、フライホイールの固定強度を強固にできるとともに、装置の大型化を避けることができる。
【0012】
(2)好ましくは、複数の組付用孔は、それぞれ第1間隔で円周方向に並べて配置された複数の第1組付用孔及び複数の第2組付用孔を有するとともに、隣接する第1組付用孔と第2組付用孔とは、第1間隔より広い第2間隔をあけて配置されている。そして、収容スペースは第2間隔をあけて配置された第1組付用孔と第2組付用孔との間に形成されている。
【0013】
(3)好ましくは、ダンパ装置は、入力回転部材と出力回転部材とを回転方向に弾性的に連結する1対の第2弾性部材をさらに有し、入力回転部材及び出力回転部材は1対の第2収容部をさらに有している。第2収容部は、第1組付用孔及び第2組付用孔の径方向外方に配置され、第2弾性部材を収容する。
【0014】
(4)好ましくは、1対の第2収容部と、第2収容部の径方向内方に配置されている少なくとも出力回転部材の第1組付用孔及び第2組付用孔と、は連通している。
【0015】
ここでは、第2収容部が出力回転部材の組付用孔と連通しているので、第2収容部を設けた場合でも、装置の大型化を避けることができる。
【0016】
(5)好ましくは、複数の組付用孔は、フライホイールを駆動源の部材に固定するための固定部材が貫通可能である。
【0017】
(6)好ましくは、入力回転部材は、軸方向に間隔をあけて配置され互いに固定された第1プレート及び第2プレートを有している。また、出力回転部材は、出力側の部材に連結されるハブと、ハブの外周部から径方向外方に延び第1プレートと第2プレートとの間に配置されたフランジと、を有している。この場合、複数の組付用孔は、第1プレート、第2プレート、及びフランジに形成されている。
【0018】
(7)好ましくは、ダンパ装置は、入力回転部材の外周部に固定されたトルクリミッタユニットをさらに有している。トルクリミッタユニットは、外周部がフライホイールに固定されるとともに、予め設定された範囲内のトルクを伝達する。
【0019】
(8)好ましくは、トルクリミッタユニットは、フライホイールに固定されたカバー部材と、入力回転部材に固定された摩擦部材と、摩擦部材をカバー部材に押圧する押圧部材と、押圧部材の摩擦部材に対する押圧力を解除するための解除機構と、を有している。
【0020】
トルクリミッタユニットが作動すると、フライホイールとダンパ装置とが相対回転する。この場合、フライホイールの固定用孔と、ダンパ装置の組付用孔と、の回転位相がずれ、フライホイールに装着されているボルト等の固定部材を取り外すことができない。
【0021】
そこで、解除機構を設け、トルクリミッタユニットの押圧部材の押圧力を解除できるようにしている。解除機構によって押圧部材の押圧力を解除することにより、フライホイールに対してダンパ装置が自由に回転可能となる。したがって、フライホイールの固定用孔とダンパ装置の組付用孔とを位置合わせすることが容易になり、フライホイール及ダンパ装置を、クラン軸等から取り外すことができる。
【0022】
(9)好ましくは、解除機構は、カバー部材に形成されたネジ孔と、ネジ部材と、を有している。ネジ部材は、ネジ孔にねじ込まれることによって押圧部材の押圧力を解除する。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明では、フライホイール及びダンパ装置を備えた動力伝達装置において、フライホイールの固定強度を強固にしつつ、装置の大型化を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置1(動力伝達装置の一例であり、以下、単に「ダンパ装置1」と記載する)の断面図である。また、
図2はダンパ装置1の正面図であり、一部の部材を取り外して、又は部材の一部を削除して示している。
図1において、O-O線は回転軸である。
図1において、ダンパ装置1の左側にエンジンが配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置される。
【0026】
なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置1の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。なお、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向に完全に一致している必要はなく、例えば、
図2に示された窓部及び窓孔を基準とした左右方向も含む概念である。また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の直径方向に完全に一致している必要はなく、例えば、
図2に示された窓部及び窓孔を基準とした上下方向も含む概念である。
【0027】
このダンパ装置1は、図示しないエンジンのクランク軸(駆動源側の部材の一例)と駆動ユニットの入力軸との間に設けられ、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するための装置である。ダンパ装置1は、フライホイール2と、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、を有している。
【0028】
[フライホイール2]
フライホイール2は、エンジン側に配置されたドライブプレート3と、イナーシャ部材4と、を有している。
【0029】
ドライブプレート3は、円板状に形成され、内周部に6個の固定用孔5を有し、外周部に複数のリベット用孔6を有している。6個の固定用孔5は、同じ取付径の円周上に並べて配置されており、それぞれ3個の第1固定用孔5a及び第2固定用孔5bを有している。なお、フライホイール2の固定用孔5は、後述する入力側プレート21及びハブフランジ22の組付用孔26,43と同じ位置に配置されているので、詳細は後述する。
【0030】
イナーシャ部材4は、環状に形成され、ドライブプレート3の外周部において、エンジンとは逆側に固定されている。
【0031】
[トルクリミッタユニット10]
トルクリミッタユニット10は、ダンパユニット20の外周側に配置されている。トルクリミッタユニット10は、フライホイール2とダンパユニット20との間で伝達されるトルクを制限する。トルクリミッタユニット10は、ダンパカバー11(カバー部材の一例)と、摩擦プレート12(摩擦部材の一例)と、プレッシャプレート13と、コーンスプリング14(押圧部材の一例)と、を有している。
【0032】
ダンパカバー11は、複数のリベット15によって、イナーシャ部材4とともにドライブプレート3に固定されている。プレッシャプレート13は、ダンパカバー11との間に摩擦プレート12を挟むように配置されている。コーンスプリング14は、プレッシャプレート13とイナーシャ部材4との間に配置され、外周端部がイナーシャ部材4の内周端部に支持され、内周端部がプレッシャプレート13を押圧している。すなわち、コーンスプリング14は、プレッシャプレート13を介して摩擦プレート12をダンパカバー11に押圧している。
【0033】
ここで、
図1及び
図2に示すように、ダンパカバー11には、複数の押圧力解除用のネジ孔11aが形成されている。ネジ孔11aは軸方向に貫通している。このネジ孔11aは、摩擦プレート12の外周面よりさらに径方向外方に位置するように形成されている。また、プレッシャプレート13は、摩擦プレート12とほぼ同様の外径を有している。そして、プレッシャプレート13の外周面には、外周面からさらに径方向外方に突出する複数の突出部13aが形成されている。この突出部13aは、径方向及び円周方向において、ダンパカバー11のネジ孔11aと同じ位置に形成されている。
【0034】
なお、
図1に示すように、プレッシャプレート13の外周端部には、複数の突起が形成されており、この突起は、ダンパカバー11に向かって折り曲げられ、複数の係合部13bとして機能している。この係合部13bは、ダンパカバー11に形成された孔11bに挿入されている。したがって、プレッシャプレート13はダンパカバー11に対して相対回転不能となっている。
【0035】
[ダンパユニット20]
ダンパユニット20は、入力側プレート21(入力回転部材の一例)と、ハブフランジ22(出力回転部材の一例)と、入力側プレート21とハブフランジ22との間に配置されたダンパ部23と、から構成されている。
【0036】
<入力側プレート21>
入力側プレート21は、第1プレート211と第2プレート212とを有している(以下、第1プレート211及び第2プレート212を併せて「入力側プレート21」と記載する場合もある)。
図3に示すように、第1プレート211及び第2プレート212は、ともに中心孔を有する環状の部材である。なお、
図3は第2プレート212のみを示しているが、基本的な構成は第1プレート211も同様である。第1プレート211と第2プレート212とは、4個のストップピン24(
図2参照)によって、軸方向に所定の間隔をあけて互いに固定されている。したがって、第1プレート211と第2プレート212とは、軸方向及び回転方向に相対的に移動不能である。また、
図1に示すように、第1プレート211の外周部には、複数のリベット25によって摩擦プレート12の内周部が固定されている。
【0037】
図3に示すように、第1プレート211及び第2プレート212には、それぞれ1対の第1窓部21a(第1収容部の一例)及び第2窓部21b(第2収容部の一例)が形成されている。1対の第1窓部21aは、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。
図3では、第2プレート212の第1窓部21a及び第2窓部21bが示されているが、第1プレート211の第1窓部及び第2窓部も同様の構成である。1対の第1窓部21aは、それぞれのプレート211,212を切り起こして形成されており、円周方向の両端面に押圧面21cを有し、外周縁及び内周縁にそれぞれ支持部を有している。また、1対の第2窓部21bは、第1窓部21aとは90°の間隔をあけて、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。1対の第2窓部21bは、円周方向に延びるとともに、軸方向に貫通する円弧状の開口であり、円周方向の両端面に押圧面21dを有している。
【0038】
第1プレート211及び第2プレート212には、4個のリベット用孔21eと、6個の組付用孔26と、が形成されている。リベット用孔21eは、リベット25をかしめるための孔であり、リベット25と対応する位置に形成されている。6個の組付用孔26は、フライホイール2をクランク軸に固定するための孔であり、ボルト27(
図1及び
図2参照)が貫通可能な大きさを有している。組付用孔26の配置については後述する。
【0039】
<ハブフランジ22>
ハブフランジ22は、入力側プレート21からのトルクを出力側の装置に伝達するための部材である。ハブフランジ22は、
図1及び
図2に示すように、ハブ30と、フランジ40と、を有している。
【0040】
ハブ30は、筒状に形成されており、第1プレート211及び第2プレート212の中心孔内に延びている。ハブ30の内周部にはスプライン孔が形成されており、このスプライン孔に出力側の部材がスプライン係合可能である。
【0041】
フランジ40は、
図2及び
図4に示すように、ハブ30の外周面から径方向外方に延びる円板状に形成され、第1プレート211と第2プレート212との軸方向間に配置されている。フランジ40は、それぞれ1対の第1窓孔41a(第1収容部の一例)及び第2窓孔41b(第2収容部の一例)と、それぞれ1対の第1ストッパ用孔42a及び第2ストッパ用孔42bと、ボルト27を組み付けるための6個の組付用孔43と、を有している。
【0042】
第1窓孔41aは、回転軸Oを挟んで対向して配置されており、第1プレート211及び第2プレート212の第1窓部21aと対応する位置に形成されている。第1窓孔41aは、円周方向の両端面に押圧面41cを有している。そして、第1窓孔41aの円周方向のR1側(以下、単に「R1側」と記載する)の押圧面41cは、対向する押圧面41cに向かって(すなわち、円周方向に)膨らむように突出する突出部41dを有している。
【0043】
第2窓孔41bは、第1窓孔41aとは90°の間隔をあけて、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。すなわち、第2窓孔41bは、第1プレート211及び第2プレート212の第2窓部21bと対応する位置に形成されている。第2窓孔41bは矩形状に形成されており、第2窓孔41bの径方向位置(孔の径方向の幅の中央位置)は、第1窓孔41aの径方向の中心位置よりも径方向内側に位置している。第2窓孔41bは、円周方向の両端面に押圧面41fを有しており、両押圧面41f間の距離は、入力側プレート21の第2窓部21bの両押圧面21d間の距離(円周方向の長さ)より短く設定されている。
【0044】
図4に示すように、第1ストッパ用孔42aは、第1窓孔41aのR1側において、円弧状に延びる長孔である。第1ストッパ用孔42aは、第1窓孔41aとは離れて形成されている。第1ストッパ用孔42aの第1窓孔41aから離れた側の端部は、第2窓孔41bの径方向外側にまで延びている。また、第1ストッパ用孔42aの第1窓孔41aに近い方の端部は、第1窓孔41aの突出部41dに向かって延びている。
【0045】
第2ストッパ用孔42bは、第1窓孔41aの円周方向のR2側(以下、単に「R2側」と記載する)において、円弧状に延びる長孔である。第2ストッパ用孔42bのR1側の端部は、第1窓孔41aの径方向の中央部に連通している。
【0046】
また、第1ストッパ用孔42a及び第2ストッパ用孔42bにおいて、R2側の端部近傍には、外周側に膨らむ切欠42cが形成されている。この切欠42cは、入力側プレート21のリベット用孔21eに対応する位置に、同様の大きさとなるように形成されている。この切欠42c及びリベット用孔21eを通して、リベット25をかしめることが可能である。
【0047】
また、第1ストッパ用孔42a及び第2ストッパ用孔42bにはストップピン24が軸方向に貫通している。このため、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24が各ストッパ用孔42a,42b内において移動可能な範囲で相対回転可能である。言い換えれば、ストップピン24と各ストッパ用孔42a,42bとによってストッパ機構が構成されており、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24が各ストッパ用孔42a,42bの端面に当接することによって、互いの相対回転が禁止される。
【0048】
ここで、1対の第1窓孔41aの径方向位置は同じであるが、第1ストッパ用孔42aのピッチ半径P1(第1ストッパ用孔42aの径方向中央部の半径)は、第2ストッパ用孔42bのピッチ半径P2よりも大きい。すなわち、第1ストッパ用孔42aと第2ストッパ用孔42bとは、径方向にずれた位置に形成されている。
【0049】
このため、第1ストッパ用孔42aのR2側の端部を、第1窓孔41aの径方向の中央部(すなわち突出部41d)に向かって延ばすことができる。また、第2ストッパ用孔42bのR1側の端部を、第1窓孔41aの径方向の中心部に連通させることができる。
【0050】
[固定用孔5、組付用孔26,43の配置]
固定用孔5及び組付用孔26,43の配置について、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、固定用孔5は、これらの図では示されていないが、組付用孔26,43と同じ位置に形成されている。
【0051】
6個の組付用孔26,43は、同じ半径の円周上に並べて配置されており、それぞれ3個の第1組付用孔261,431及び第2組付用孔262,432を有している。3個の第1組付用孔261,431と、3個の第2組付用孔262,432と、は回転軸Oを挟んで対向するように配置されている。また、3個の第1組付用孔261,431及び3個の第2組付用孔262,432は、それぞれ第1間隔G1で配列されている。そして、隣接する第1組付用孔261,431と第2組付用孔262,432との間は、第1間隔G1より広い第2間隔G2で配列されている。
【0052】
すなわち、6個の組付用孔26,43において、隣接する第1組付用孔261,431と第2組付用孔262,432との間(第2間隔G2が形成されている部分)は、他の部分に比較して広い1対の収容スペースCが形成されている。1対の収容スペースCは、回転軸Oを挟んで対向する位置に形成されている。そして、この収容スペースCの径方向外方に、第1窓孔41aが形成されている。
【0053】
なお、ハブフランジ22のフランジ40において、3個の第1組付用孔431のうちの円周方向の真ん中に位置する第1組付用孔431は、第2窓孔41bの径方向内方に形成されている。そして、第1組付用孔431の外周部は、第2窓孔41bと連通している。第2組付用孔432についても同様であり、3個のうちの1個の第2組付用孔432の外周部は第2窓孔41bと連通している。
【0054】
<ダンパ部23>
ダンパ部23は、入力側プレート21とハブフランジ22とを回転方向に弾性的に連結するための機構であり、
図1及び
図2に示すように、1対のコイルスプリング47(第1弾性部材の一例)と、1対の樹脂部材48(第2弾性部材の一例)と、ヒス発生機構50と、を有している。
【0055】
コイルスプリング47はフランジ40の第1窓孔41aに収容され、樹脂部材48はフランジ40の第2窓孔41bに収容されている。また、コイルスプリング47及び樹脂部材48は、第1プレート211及び第2プレート212の各窓部21a,21bによって、軸方向及び径方向に支持されている。
【0056】
なお、樹脂部材48は、
図2に示すように、入力側プレート21の第2窓部21bに対して、円周方向に隙間を介して配置されている。一方、樹脂部材48は、フランジ40の第2窓孔41bに対して、円周方向に隙間なく配置されている。
【0057】
コイルスプリング47のR1側の端面には第1スプリングシート61が設けられ、R2側の端面には第2スプリングシート62が設けられている。第1スプリングシート61及び第2スプリングシート62は、コイルスプリング47の端面を支持するとともに、入力側プレート21の押圧面21c及びハブフランジ22の押圧面41cに支持されている。第1スプリングシート61には、コイルスプリング47側に向かって円弧状に凹む凹部が形成されており、この凹部の中央部に円周方向に貫通する孔が形成されている。そして、フランジ40の第1窓孔41aの突出部41dが、この凹部に嵌まり込んでいる。
【0058】
[トルクリミッタユニット10とダンパユニット20の組付け]
このダンパ装置1の組み立てに際しては、まず、トルクリミッタユニット10とダンパユニット20とを、それぞれ別に組み付ける。その後、トルクリミッタユニット10摩擦プレート12の内周部と、第1プレート211の外周部とを、リベット25によってかしめ固定する。
【0059】
このとき、第1プレート211にはリベット用孔21eが形成され、またフランジ40にはリベット用の切欠42cが形成されているので、これらの孔21e及び切欠42cを利用して、かしめ工具をリベット25に当て、リベット25をかしめることができる。
【0060】
[ダンパ装置1のクランク軸への組付]
以上のようにして組み付けられたトルクリミッタユニット10及びダンパユニット20は、リベット15によってフライホイール2に固定される。そして、これらのダンパ装置1の全体をクランク軸に固定する場合は、6個のボルト27を、それぞれ第2プレート212、ハブフランジ22、及び第1プレート211の組付用孔26,43を利用してフライホイール2の固定用孔5に挿入して、クランク軸のネジ穴に装着する。これにより、ダンパ装置1をエンジンのクランク軸に固定することができる。
【0061】
[動作]
エンジンからフライホイール2に伝達されたトルクは、トルクリミッタユニット10を介してダンパユニット20に入力される。ダンパユニット20では、トルクリミッタユニット10の摩擦プレート12が固定されている入力側プレート21にトルクが入力され、このトルクは、コイルスプリング47及び樹脂部材48を介してハブフランジ22に伝達される。そして、ハブフランジ22から、出力側の電動機、発電機、変速機等に動力が伝達される。
【0062】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、出力側からエンジンに過大なトルクが伝達される場合がある。このような場合は、トルクリミッタユニット10によってエンジン側に伝達されるトルクが所定値以下に制限される。
【0063】
[ダンパ装置1のクランク軸からの取り外し]
以上のような動作中にトルクリミッタユニット10が作動すると、フライホイール2とダンパユニット20とが相対回転する。この場合、フライホイール2の固定用孔5と、ダンパユニット20の組付用孔26,43と、の回転位相がずれる。したがって、ダンパユニット20の組付用孔26,43を通して工具を挿入しても、フライホイール2に装着されているボルト27を取り外すことができない。
【0064】
そこで、トルクリミッタユニット10のコーンスプリング14の押圧力を解除するために、解除ボルト70を、ダンパカバー11の押圧力解除用のネジ孔11aにねじ込む。解除ボルト70をねじ込んでいくと、ボルト先端がプレッシャプレート13の突出部13aに当接し、プレッシャプレート13をエンジン側に押す。ここで、ダンパカバー11とプレッシャプレート13とは相対回転不能であるので、ネジ孔11aと突出部13aとの回転位相がずれることはない。これにより、プレッシャプレート13を介して摩擦プレート12を押圧していたコーンスプリング14の押圧力が解除される。コーンスプリング14の押圧力が解除されると、フライホイール2及びダンパカバー11に対してダンパユニット20が自由に回転可能となる。
【0065】
このような状態では、ダンパユニット20を回転させて、ダンパユニット20の組付用孔26,43と、フライホイール2の固定用孔5と、を位置合わせすることが容易になる。そして、組付用孔26,43から工具を挿入し、ボルト27を取り外せば、ダンパ装置1をクランク軸から取り外すことができる。
【0066】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0067】
(a)トルクリミッタユニット10及びダンパユニット20の構成は前記実施形態に限定されない。また、トルクリミッタユニット10を有していないダンパ装置にも、本発明を適用することができる。
【0068】
(b)フライホイール2の固定用孔5及びダンパユニット20の組付用孔26,43の個数は前記実施形態に限定されない。
【0069】
(c)前記実施形態では、ダンパ部23に樹脂部材48設けたが、コイルスプリング47のみを有するダンパ部であってもよい。
【0070】
(d)前記実施形態では、入力側プレート21において、組付用孔26と第2窓部21bとは連通していないが、第2窓部21bの径方向内方の組付用孔261,262と第2窓部21bとを連通させてもよい。
【符号の説明】
【0071】
2 フライホイール
5 固定用孔
10 トルクリミッタユニット
11 ダンパカバー(カバー部材)
11a 押圧力解除用のネジ孔
12 摩擦プレート(摩擦部材)
13 プレッシャプレート
14 コーンスプリング(押圧部材)
20 ダンパユニット
21 入力側プレート(入力回転部材)
211 第1プレート
212 第2プレート
21a 第1窓部(第1収容部)
21b 第2窓部(第2収容部)
22 ハブフランジ(出力回転部材)
26,43 組付用孔
261,431 第1組付用孔
262,432 第2組付用孔
27 ボルト(固定部材)
30 ハブ
40 フランジ
41a 第1窓孔(第1収容部)
41b 第2窓孔(第2収容部)
47 コイルスプリング(第1弾性部材)
48 樹脂部材(第2弾性部材)
70 押圧力解除用のボルト
C 収容スペース