(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電磁サスペンション
(51)【国際特許分類】
F16F 15/03 20060101AFI20231215BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20231215BHJP
H02K 1/06 20060101ALI20231215BHJP
H02K 33/00 20060101ALI20231215BHJP
F16F 15/06 20060101ALI20231215BHJP
B60G 17/00 20060101ALN20231215BHJP
【FI】
F16F15/03 G
H02K41/02 Z
H02K1/06 Z
H02K33/00 A
F16F15/06 A
B60G17/00
(21)【出願番号】P 2020108633
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】一丸 修之
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-167320(JP,A)
【文献】特開2002-295580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0250998(US,A1)
【文献】特開2007-274820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/03
H02K 41/02
H02K 1/06
H02K 33/00
F16F 15/06
B60G 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線と磁性体とで構成される電機子と、前記電機子の外周側に配置され、永久磁石と円筒状の磁性体とで構成される永久磁石部とを有し、前記電機子と前記永久磁石部とが相対的に直線駆動するリニアモータを
有する電磁サスペンションであって、
前記円筒状の磁性体の外周部の同一円周上に、この外周部よりも凹んだ凹部とこの外周部よりも突出した凸部とを配置することを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項2】
請求項1に記載する電磁サスペンションであって、
前記凸部が、複数個に、分割されていることを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項3】
請求項1に記載する電磁サスペンションであって、
凸部の断面積が、凹部の断面積と同等以上であることを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項4】
請求項1に記載する電磁サスペンションであって、
前記凸部が、前記円筒状の磁性体と、別体で構成されることを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項5】
請求項1に記載する電磁サスペンションであって、
前記凸部は、その角部を面取りした面取り部を有することを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項6】
請求項1に記載する電磁サスペンションであって、
凸部の材料が、円筒状の磁性体の材料よりも、透磁率が高いことを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項7】
請求項1に記載する電磁サスペンションであって、
リニアモータの一端部には、円筒部端部カバーが配置され、前記円筒部端部カバーには、ばね下側連結ロッドが結合し、リニアモータの他端側には、車両側連結ロッドが配置されることを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項8】
請求項7に記載する電磁サスペンションであって、
リニアモータの外周側であって、リニアモータの中間部には、下部ばねおさえが配置され、車両側連結ロッド側には、上部ばねおさえが配置され、前記上部ばねおさえと前記下部ばねおさえとに挟まれるように、前記リニアモータの外周側には、ばねが配置されることを特徴とする電磁サスペンション。
【請求項9】
請求項1に記載する電磁サスペンションであって、
前記凸部が、前記円筒状の磁性体に対して、相対的に回転運動することを特徴とする電磁サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータを有する電磁サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータを使用する電磁サスペンションは、一般的に、内周側に永久磁石を配置する円筒状の永久磁石部と、この永久磁石部に移動可能に挿入される電機子と、を有する。
【0003】
こうした本技術分野の背景技術として、特開2013-29159号公報(以下、特許文献1と称する。)がある。特許文献1には、固定子の外周側にコイルを配置すると共に、可動子の内周側に永久磁石を配置したリニアモータを使用する電磁サスペンションが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リニアモータを使用する電磁サスペンションは、従来の油圧サスペンションに配置されるレバー(梃)やギア(歯車)などの減速機構を介さずに、減衰力を発生させることができ、応答性が高く、高周波の振動源に対しても、制振性が向上する。
【0006】
一方、電磁サスペンションは、そのリニアモータが直接的に減衰力を発生させるため、また、減速機構を介さないため、そのリニアモータの体格が大きくなる。このため、従来の油圧サスペンションと比較して、電磁サスペンションは、その体格や径が大きくなるという課題がある。
【0007】
そして、特に、エンジン駆動の自動車の制振性を向上させるため、従来の油圧サスペンションを電磁サスペンションに置き換える場合、電磁サスペンションの体格や径が大きくなり、他の部品や機器と干渉(接触)してしまうという課題がある。
【0008】
更に、近年、CO2削減の問題から、HEVやEVなどの電動車が増加している。電動車は、小型のエンジンを搭載するため、また、エンジン自体がないため、エンジンルームも小型化し、電磁サスペンションを搭載するスペースも小さくなる。
【0009】
電動車の場合は、自動車の場合よりも、更に小さなスペースに、電磁サスペンションを、搭載する必要があり、更に、他の部品や機器と干渉してしまうという課題がある。
【0010】
特許文献1には、リニアモータを使用する電磁サスペンションが記載されている。しかし、特許文献1には、電磁サスペンションを自動車や電動車に搭載する際に、電磁サスペンションの体格や径に起因して、他の部品や機器と干渉してしまうという課題については記載されていない。
【0011】
そこで、本発明は、他の部品や機器との干渉を抑制(回避)し、狭い空間(小さなスペース)に搭載することができ、推力の脈動が小さく、推力が大きい、高周波の振動源に対しても、制振性が高い電磁サスペンションを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明の電磁サスペンションは、巻線と磁性体とで構成される電機子と、電機子の外周側に配置され、永久磁石と円筒状の磁性体とで構成される永久磁石部とを有し、電機子と永久磁石部とが相対的に直線駆動するリニアモータを有する電磁サスペンションであって、円筒状の磁性体の外周部の同一円周上に、この外周部よりも凹んだ凹部とこの外周部よりも突出した凸部とを配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、他の部品や機器との干渉を抑制(回避)し、狭い空間(小さなスペース)に搭載することができ、推力の脈動が小さく、推力が大きい、高周波の振動源に対しても、制振性が高い電磁サスペンションを提供することができる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成および効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1に記載するリニアモータ1を斜視的に説明する説明図である。
【
図2】実施例1に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する説明図である。
【
図3】実施例1に記載するリニアモータ1の永久磁石部20と電機子10との相対位置と推力との関係を説明する説明図である。
【
図4】実施例1に記載する電磁サスペンション2を斜視的に説明する説明図である。
【
図5】実施例1に記載する電磁サスペンション2のYZ断面を説明する説明図である。
【
図6】実施例1に記載する電磁サスペンション2を搭載する車両80を説明する説明図である。
【
図7】実施例1に記載する磁性体22のYZ断面を説明する説明図である。
【
図8】実施例2に記載するリニアモータ1を斜視的に説明する説明図である。
【
図9】実施例2に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する説明図である。
【
図10】実施例3に記載するリニアモータ1を斜視的に説明する説明図である。
【
図11】実施例3に記載するリニアモータ1のXY断面を説明する説明図である。
【
図12】実施例3に記載する凸部30の構成例1を説明する説明図である。
【
図13】実施例3に記載する凸部30の構成例2を説明する説明図である。
【
図14】実施例3に記載する凸部30の構成例3を説明する説明図である。
【
図15】実施例4に記載する凸部30の構成例を説明する説明図である。
【
図16】実施例5に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0017】
まず、実施例1に記載するリニアモータ1を斜視的に説明する。
【0018】
図1は、実施例1に記載するリニアモータ1を斜視的に説明する説明図である。
【0019】
実施例1に記載するリニアモータ1は、内周側に永久磁石を配置される円筒状の永久磁石部20と、永久磁石部20に移動可能に挿入される電機子10と、を有する。
【0020】
なお、
図1に示すリニアモータ1は、電磁サスペンションから抜き出したものであり、リニアモータ1の主要部品を示し、電磁サスペンションに必要な、その他のばね部(ばねやばねおさえなど)やリンク部(連結ロッドなど)などは、示していない。
【0021】
更に、リニアモータ1は、永久磁石部20の表面に、凹部40及び凸部30を有する。
【0022】
次に、実施例1に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する。
【0023】
図2は、実施例1に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する説明図である。
【0024】
リニアモータ1は、Z方向に配置される複数の永久磁石21及びその外周側に配置される円筒状の磁性体(リニアモータ1の外周部の円筒:外筒)22で構成される永久磁石部20と、永久磁石21の内周側に対向するように配置される、ティースを構成する磁性体11及びZ方向に配置される複数の巻線(コイル)12で構成される電機子10と、を有する。
【0025】
つまり、リニアモータ1は、外周側に巻線12を配置する電機子10と、内周側に永久磁石21を配置する永久磁石部20と、を有する。リニアモータ1は、磁性体11の間に巻線12が配置される電機子10と、永久磁石21の外周側に磁性体22が配置される永久磁石部20と、を有する。そして、永久磁石部20は電機子10の外周側に配置される。
【0026】
そして、リニアモータ1は、永久磁石部20と電機子10とが相対的にZ方向に移動(直線駆動)し、Z方向の力、つまり、推力を発生する。
【0027】
更に、リニアモータ1は、永久磁石部20の表面、つまり、磁性体22に、凹部40及び凸部30を有する。
【0028】
実施例1では、リニアモータ1は、5個の永久磁石21に対して、6個のティースを構成する磁性体11が配置される「5極6スロット構造」を有する。この構造は、リニアモータ1の1例であり、同様の効果が得られれば、この構造に限定されるものではない。
【0029】
実施例1では、リニアモータ1は、6個の巻線12に、3相交流を印加する3相モータであり、6個の巻線12に印加される電流値を変化させることにより、任意の位置で、任意の推力を発生させることができる。この推力は、永久磁石21により発生する磁束と巻線12により発生する磁束との相互作用により、発生する。
【0030】
ここで、リニアモータ1を、他の部品や機器が配置される狭い空間に配置する場合には、リニアモータ1が他の部品や機器と干渉する可能性があり、干渉する部分の磁性体22を削り取る必要がある。削り取った部分は、円筒状の磁性体22の外周部よりも凹んだ凹部40となる。
【0031】
リニアモータ1は、必要な推力や最大の推力を考慮して、磁束量が決定され、その磁束量に応じた磁気回路(磁石の磁束の経路)が構成される。磁性体22は、この磁気回路を構成するため、磁性体22に、凹部40が形成されると、推力の脈動が増加し、推力が低下するという現象が発生する。そこで、磁性体22に、磁性体からなり、円筒状の磁性体22の外周部よりも膨らんだ(突出した)凸部30を配置し、推力の脈動を抑制し、推力を向上させる。
【0032】
実施例1では、凸部30は、磁性体22に張り付けられるテープ状の磁性体である。ただし、同様の効果が得られれば、この構造に限定されるものではない。凸部30は、磁性体22と一体で構成してもよいし、磁性体22と別体で構成してもよい。なお、凹部40は、磁性体22と一体で構成される。
【0033】
なお、凸部30にテープ状の磁性体を使用する場合、凸部30と磁性体22との間に、接着剤などが介在する場合がある。この場合は、接着剤などにより発生する隙間により、磁気抵抗が高くなることが想定される。この場合は、凸部30の厚みを厚くする、凸部30の幅を広くする、又は、磁気抵抗の小さな材料を使用する、などで対応する。
【0034】
凸部30と磁性体22とを別体で構成することにより、例えば、凸部30にテープ状の磁性体を使用することにより、別途、磁気性能を調整することができる。
【0035】
このように、リニアモータ1が、その永久磁石部20の表面、つまり、磁性体22に、凹部40及び凸部30を配置することにより、推力の脈動を抑制し、推力を向上させ、他の部品や機器との干渉を抑制し、狭い空間に、リニアモータ1を、搭載することができる。
【0036】
次に、実施例1に記載するリニアモータ1の永久磁石部20と電機子10との相対位置と推力との関係を説明する。
【0037】
図3は、実施例1に記載するリニアモータ1の永久磁石部20と電機子10との相対位置と推力との関係を説明する説明図である。
【0038】
図3には、
(1)磁性体22に凹部40及び凸部30が配置されない場合(点線301)
(2)磁性体22に凹部40が形成される(凸部30は配置されない)場合(一点鎖線302)
(3)磁性体22に凹部40及び凸部30が配置される場合(実線303)
における、推力特性(永久磁石部20と電機子10との相対位置と推力との関係)が示される。
【0039】
磁性体22に凹部40及び凸部30が配置されない場合は、必要な推力や最大の推力を考慮して決定された磁束量に応じた磁気回路が構成され、通常の推力の脈動であり、推力である。この時の推力特性は、
図3の点線301のようになる。
【0040】
磁性体22に凹部40が形成される(凸部30は配置されない)場合は、凹部40により、磁束の飽和が発生し、3相交流により発生する磁束のアンバランスが発生し、推力の脈動が増加し、推力が低下する。この時の推力特性は、
図3の一点鎖線302のようになる。
【0041】
こうした推力の脈動が増加し、推力が低下するという現象を解消するため、つまり、推力の脈動を抑制し、推力を向上させるため、磁性体22に、凸部30を配置する。
【0042】
磁性体22に凹部40及び凸部30が配置される場合は、凸部30が、凹部40により減少した磁気回路の磁気抵抗の増加を抑制させ、推力の脈動を抑制し、推力を向上させる。そして、この時の推力特性は、
図3の実線303のようになり、
図3の点線301と同様になる。つまり、通常の推力の脈動であり、推力である。
【0043】
このように、磁性体22の表面に、凹部40及び凸部30を配置することにより、推力の脈動が増加し、推力が低下するという現象を解消すると共に、他の部品や機器との干渉を抑制し、狭い空間に、リニアモータ1を、搭載することができる。
【0044】
そして、凹部40と凸部30とは、磁性体22の同一円周上に、配置されることが好ましい。つまり、凸部30は、凹部40が形成される同一円周上の磁性体22に、配置されることが好ましい。また、凸部30の体積と凹部40の体積とは同一である、又は、凸部30の体積が凹部40の体積よりも大きいことが好ましい。
【0045】
これは、凸部30が、凹部40により減少した磁気回路の磁気抵抗の増加を抑制させるものであるためである。これにより、凸部30は、推力の脈動を抑制し、推力を向上させる。 次に、実施例1に記載する電磁サスペンション2を斜視的に説明する。
【0046】
図4は、実施例1に記載する電磁サスペンション2を斜視的に説明する説明図である。
【0047】
実施例1に記載する電磁サスペンション2は、リニアモータ1、円筒部端部カバー41、ばね50、下部ばねおさえ51、上部ばねおさえ52、ばね下側連結ロッド60、車両側連結ロッド61を有する。
【0048】
リニアモータ1(永久磁石部20)の一端部には、円筒部端部カバー41が配置される。円筒部端部カバー41には、ばね下側連結ロッド60が結合する。ばね下側連結ロッド60には、その先端に、車両に配置されるタイヤ(車輪)(図示なし)、ロアアーム(図示なし)、ブレーキ(図示なし)などの部品が結合する。
【0049】
リニアモータ1(永久磁石部20)の他端側には、車両側連結ロッド61が配置される。車両側連結ロッド61には、その先端に、車両に配置されるアッパーマウント(図示なし)などの部品が結合する。
【0050】
リニアモータ1(永久磁石部20)の外周側であって、リニアモータ1(永久磁石部20)の中間部には、下部ばねおさえ51が配置される。車両側連結ロッド61側には、上部ばねおさえ52が配置される。上部ばねおさえ52と下部ばねおさえ51とに挟まれるように、リニアモータ1(永久磁石部20)の外周側には、ばね50が配置される。
【0051】
そして、リニアモータ1(永久磁石部20)の外周側であって、ばね50が配置されていない領域のリニアモータ1(永久磁石部20)の表面、つまり、磁性体22の表面であって、同一円周上には、凹部40及び凸部30を有する。
【0052】
なお、リニアモータ1は、永久磁石部20を電機子10の外周側に配置し、永久磁石部20の永久磁石21と電機子10の磁性体11及び巻線12とを対向させることにより、永久磁石21と磁性体11及び巻線12との対向面積を大きくすることができる。そして、こうしたリニアモータ1を使用することにより、推力が大きな電磁サスペンション2を実現することができる。
【0053】
次に、実施例1に記載する電磁サスペンション2のYZ断面を説明する。
【0054】
図5は、実施例1に記載する電磁サスペンション2のYZ断面を説明する説明図である。
【0055】
電磁サスペンション2は、磁性体11及び巻線12で構成される電機子10を有し、永久磁石21及び磁性体22で構成される永久磁石部20を有する。電機子10には、車両側連結ロッド61が結合し、永久磁石部20には、円筒部端部カバー41を介して、ばね下側連結ロッド60が結合する。
【0056】
これにより、電磁サスペンション2は、ばね下側と車両側とを、相対的に変位させ、ばね下側と車両側との間に配置されるばね50とリニアモータ1とにより、車両の振動を制御する。
【0057】
そして、電磁サスペンション2に干渉する部品や機器の位置を考慮し、リニアモータ1の表面に、凹部40及び凸部30を配置する。これにより、電磁サスペンション2は、他の部品や機器と干渉することがない。
【0058】
次に、実施例1に記載する電磁サスペンション2を搭載する車両80を説明する。
【0059】
図6は、実施例1に記載する電磁サスペンション2を搭載する車両80を説明する説明図である。
【0060】
実施例1に記載する車両(自動車や電動車、車体)80は、電磁サスペンション2、ばね下側部材90、車両側部材91を有する。
【0061】
電磁サスペンション2は、ばね下側部材90と車両側部材91とに結合する。
【0062】
電磁サスペンション2に干渉する部品や機器は、ばね下側部材90側、車両側部材91側のどちらかに配置されている。また、ナックル(図示なし)などのように、ばね下側部材90側と車両側部材91側とを結合する部品や機器もある。
【0063】
このような、電磁サスペンション2に干渉する部品や機器の位置を考慮し、リニアモータ1の表面に、凹部40及び凸部30を配置する。これにより、電磁サスペンション2は、他の部品や機器と干渉することがない。
【0064】
そして、リニアモータ1の外周側であって、ばね50が配置されない領域のリニアモータ1の表面であって、同一円周上に、凹部40及び凸部30を配置することにより、電磁サスペンション2は、他の部品や機器との干渉を抑制することができる。
【0065】
次に、実施例1に記載する磁性体22のYZ断面を説明する。
【0066】
図7は、実施例1に記載する磁性体22のYZ断面を説明する説明図である。
【0067】
実施例1に記載する磁性体22は、凹部40及び凸部30を有する。
【0068】
磁性体22に凹部40を配置することにより、凹部断面42の磁路断面積が減少し、磁気回路の磁気抵抗が増加する。一方、磁性体22に凸部30を配置することにより、凸部断面31の磁路断面積が増加し、磁気回路の磁気抵抗の増加が抑制される。
【0069】
なお、ここでは、凹部40の幅(Z方向の長さ)と凸部30の幅(Z方向の長さ)とは同一であるとする。
【0070】
そして、凸部30の断面積(凸部断面31の断面積)を凹部40の断面積(凹部断面42の断面積)以上(同等以上)とする。つまり、「凸部断面31の断面積≧凹部断面42の断面積」とする。
【0071】
ここで、凸部30の断面積(凸部断面31の断面積)とは、円筒状の磁性体22の外周部よりも膨らんだ(突出した)部分の断面積であり、凹部40の断面積(凹部断面42の断面積)とは、円筒状の磁性体22の外周部よりも凹んだ部分の断面積である。
【0072】
また、凸部30の材料の透磁率が磁性体22の材料の透磁率よりも高い材料を使用する場合には、凸部30の材料の透磁率と磁性体22の材料の透磁率とが同一の材料を使用する場合と比較して、凸部断面31の断面積を小さくすることができる。
【0073】
このように、凸部30の材料に、磁性体22の材料よりも、透磁率が高い材料を使用することにより、凸部断面31の断面積を小さくすることができ、凸部30の吐出部を最小限にすることができる。また、凸部30の材料に、磁性体22の材料よりも、磁気抵抗の小さな材料を使用することにより、凸部断面31の断面積を小さくすることができ、凸部30の吐出部を最小限にすることができる。
【0074】
つまり、磁性体22に凹部40が形成され、減少した磁束(凹部断面42を流通するはずであった磁束)と、同等の磁束を、磁性体22に凸部30を配置し、凸部断面31に、流通させればよい。
【0075】
このように、実施例1に記載する電磁サスペンション2は、巻線12と磁性体11とで構成される電機子10と、電機子10の外周側に配置され、永久磁石21と円筒状の磁性体22とで構成される永久磁石部20とを有し、電機子10と永久磁石部20とが相対的に直線駆動するリニアモータ1を使用する。
【0076】
そして、円筒状の磁性体22の外周部の同一円周上には、この外周部よりも凹んだ凹部40とこの外周部よりも膨らんだ(突出した)凸部30とが配置される。
【0077】
実施例1によれば、他の部品や機器との干渉を抑制し、狭い空間に搭載することができる高応答なリニアモータ方式の車載向けの電磁サスペンション2を提供することができる。そして、実施例1によれば、推力の脈動が小さく、推力が大きい、高周波の振動源に対しても、制振性が高いリニアモータ1を使用(搭載)する車載向けの電磁サスペンション2を提供することができる。
【0078】
なお、実施例1では、車載向けの電磁サスペンション2について説明したが、実施例1に記載する電磁サスペンション2は、車載向け以外の他の製品の制振装置にも使用することができる。
【実施例2】
【0079】
次に、実施例2に記載するリニアモータ1を斜視的に、及び、実施例2に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する。
【0080】
図8は、実施例2に記載するリニアモータ1を斜視的に説明する説明図であり、
図9は、実施例2に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する説明図である。
【0081】
実施例2に記載するリニアモータ1は、実施例1に記載するリニアモータ1と比較して、特に、凹部40及び凸部30が相違し、他の基本的な構成は、実施例1に記載するリニアモータ1と実質的(実施例2では、実施例1と比較して、磁性体11がばね下側連結ロッド60側に長い)に同様である。
【0082】
リニアモータ1は、円筒状の磁性体22には、同一の幅及び同一の深さの円周状(360度の範囲で)の溝が形成される。そして、リニアモータ1は、円周状の溝の一部分に凸部30が配置され、凸部30が配置されない円周状の溝の他の部分に、凹部40が形成される。
【0083】
つまり、リニアモータ1の外周側であって、ばね50が配置されない領域のリニアモータ1の表面(永久磁石部20の表面、磁性体22の表面)であって、同一円周上に、凹部40及び凸部30が配置される。
【0084】
なお、凸部30は、磁性体22と別体で構成されることが好ましい。凸部30は、磁性体22と一体で構成されてもよい。凹部40は、磁性体22と一体で構成される。
【0085】
そして、磁性体22に円周状の溝を形成し、凹部40を形成することにより、磁性体22(永久磁石部20、リニアモータ1)の製作性が向上する。
【0086】
そして、凸部30は、特に、X方向への物体の移動に際する凸部30の干渉を抑制するため、また、他の部品や機器との干渉を抑制するため、凸部30の角部に、その角部を面取りした面取り部32が形成される。
【0087】
なお、面取り部32の面取り方法には、R面取りやC面取りなどが考えられる。そして、面取り部32は、多面断面であってもよく、曲面断面であってもよい。
【0088】
面取り部32を形成することにより、電磁サスペンション2に使用されるリニアモータ1の設置性が向上する。
【0089】
なお、更に、車両80が大きな段差を乗り越える場合など、車両80の姿勢が大きく変化する場合は、他の部品や機器との干渉の程度も大きくなる。
【0090】
そして、こうした場合、ばね下側に配置される部品や機器と車両側に配置される部品や機器とは、その位置が、電磁サスペンション2に対して、相対的に変化することになる。つまり、電磁サスペンション2に干渉する部品や機器の位置が、電磁サスペンション2に対して、相対的に変化することになる。
【0091】
つまり、特に、電磁サスペンション2(リニアモータ1)を、他の部品や機器が配置される狭い空間に配置する場合には、車両80の予測することができない不規則な挙動に対しても、リニアモータ1が他の部品や機器と干渉する可能性がある。
【0092】
そこで、凸部30を、磁性体22に対して、XY平面において、相対的に、回転可能に配置することが好ましい。つまり、凸部30は、磁性体22に対して、相対的に、回転運動することが好ましい。
これにより、他の部品や機器との干渉の程度を低減し、連続して発生する可能性のある他の部品や機器との干渉を抑制する。
【0093】
つまり、凸部30が、磁性体22に対して、回転可能に配置されることにより、凹部40の位置が変化する。凹部40の位置が変化することにより、車両80の挙動に対しても、他の部品や機器との干渉の程度を低減し、連続して発生する可能性のある他の部品や機器との干渉を抑制し、更に、他の部品や機器の損傷を抑制(他の部品や機器の変形を防止)することができる。これにより、更に、電磁サスペンション2の信頼性が向上する。
【実施例3】
【0094】
次に、実施例3に記載するリニアモータ1を斜視的に、及び、実施例3に記載するリニアモータ1のXY断面を説明する。
【0095】
図10は、実施例3に記載するリニアモータ1を斜視的に説明する説明図であり、
図11は、実施例3に記載するリニアモータ1のXY断面を説明する説明図である。
【0096】
実施例3に記載するリニアモータ1は、実施例2に記載するリニアモータ1と比較して、凹部40及び凸部30が相違し、他の基本的な構成は、実施例2に記載するリニアモータ1と同様である。
【0097】
リニアモータ1は、円筒状の磁性体22には、円周状の溝が形成される。そして、リニアモータ1は、円周状の溝の一部分に2分割された凸部30が配置され、2分割された凸部30が配置されない円周状の溝の他の部分に、凹部40が形成される。
【0098】
なお、
図10では、説明のため、2分割された凸部30を、永久磁石部20から分離して示す。
【0099】
2分割された凸部30を、例えば、円周状の溝に、それぞれ圧入し、それぞれ配置することにより、凸部30の製作性が向上する。更に、2分割された凸部30を使用することにより、電磁サスペンション2を車両80に搭載させた後に、凸部30を配置することができ、作業性が向上すると共に、電磁サスペンション2の性能調整を可能にする。
【0100】
また、凸部30の分割数を増加し(凸部30を複数個に分割し)、必要な特性に応じて、凸部30の分割数を調整してもよい。更に、凸部30の分割数を調整し、複数の凹部40を形成してもよい。
【0101】
また、凸部30を、磁性体22に対して、XY平面において、回転可能に配置することが好ましい。これにより、他の部品や機器との干渉の程度を低減し、連続して発生する可能性のある他の部品や機器との干渉を抑制する。
【0102】
次に、実施例3に記載する凸部30の構成例を説明する。
【0103】
図12、
図13、
図14は、実施例3に記載する凸部30の構成例1、構成例2、構成例3を説明する説明図である。
【0104】
凸部30を、電磁サスペンション2を車両80に搭載させた後に、配置することにより、作業性が向上すると共に、電磁サスペンション2の性能調整を可能にする。
【0105】
図12に示す構成例1は、凸部30を2分割し、それぞれの同一の片側に、同一のツバ部を配置し、ツバ部に穴を形成し、2分割された凸部30を、ネジ止めした構成例である。これにより、凸部30を、低コストで製作でき、容易に取り付けることができる。
【0106】
図13に示す構成例2は、凸部30を2分割し、それぞれの肉厚を厚くし、他の部品や機器との干渉を抑制するため、凸部30の角部に、その角部を面取りした面取り部32を形成した構成例である。そして、それぞれの同一の片側に、同一のツバ部を配置し、ツバ部に穴を形成し、ツバ部にザグリを形成し、2分割された凸部30を、ネジ止めした構成例である。これにより、電磁サスペンション2に使用されるリニアモータ1の設置性が向上し、ザグリにより、ネジによる、例えば、ブレーキホースなどの損傷を抑制することができる。
【0107】
図14に示す構成例3は、凸部30を2分割し、それぞれの肉厚を厚くし、他の部品や機器との干渉を抑制するため、凸部30の角部に、その角部を面取りした面取り部32を形成した構成例である。そして、ツバ部を形成せずに、肉厚を厚くした凸部30に、直接、穴を形成し、2分割された凸部30を、ネジ止めした構成例である。これにより、電磁サスペンション2に使用されるリニアモータ1の設置性が向上し、ツバ部による、例えば、ブレーキホースなどの損傷を抑制することができる。
【実施例4】
【0108】
次に、実施例4に記載する凸部30の構成例を説明する。
【0109】
図15は、実施例4に記載する凸部30の構成例を説明する説明図である。
【0110】
実施例4に記載するリニアモータ1は、実施例2に記載するリニアモータ1と比較して、凸部30が相違し、他の基本的な構成は、実施例2に記載するリニアモータ1と同様である。
【0111】
図15に示す構成例は、凸部30に、弾性のある磁性体からなる部材を使用した構成例である。そして、凸部30は、一体に形成され、凹部40が形成される部分には、外側に曲線的に広がる部位を有する。これにより、凸部30を、
図15の下から上に向かって、磁性体22に形成される円周状の溝に、挿入することにより、簡単に凸部30を配置することができる。
【実施例5】
【0112】
次に、実施例5に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する。
【0113】
図16は、実施例5に記載するリニアモータ1をYZ平面で切り取って説明する説明図である。
【0114】
実施例5に記載するリニアモータ1は、実施例3に記載するリニアモータ1と比較して、永久磁石部20の両端が相違し、他の基本的な構成は、実施例3に記載するリニアモータ1と同様である。
【0115】
リニアモータ1は、永久磁石部20の両端にねじ部25が形成される。これにより、永久磁石部20に形成されるねじ部25を使用して、永久磁石部20(リニアモータ1(電磁サスペンション2))を、ばね下側や車両側に、固定することができる。
【0116】
なお、この際、永久磁石部20をZ軸中心に回転させる必要がある。ここで、ばね下側に配置される部品や機器や車両側に配置される部品や機器が、永久磁石部20と干渉する可能性がある場合には、永久磁石部20をZ軸中心に回転させることができない。
【0117】
そこで、磁性体22に、同一円周上に、360度の範囲で、円周状の溝を形成する。これにより、永久磁石部20と干渉する可能性がある、ばね下側に配置される部品や機器や車両側に配置される部品や機器を、360度の範囲で、回避することができる。
【0118】
そして、永久磁石部20をZ軸中心に回転させることができ、永久磁石部20に形成されるねじ部25を使用して、永久磁石部20を、ばね下側や車両側に、固定することができる。
【0119】
更に、円周状の溝の一部分に凸部30を配置し、凸部30が配置されない円周状の溝の他の部分に、凹部40が形成される。電磁サスペンション2を車両80に搭載させた後に、凸部30を配置することができ、作業性が向上すると共に、電磁サスペンション2の性能調整を可能にする。
【0120】
これにより、永久磁石部20と、ばね下側や車両側とを、強固に、固定することができ、リニアモータ1(電磁サスペンション2)の信頼性が向上する。
【0121】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0122】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に、置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に、他の実施例の構成を、追加することも可能である。
【符号の説明】
【0123】
1…リニアモータ
2…電磁サスペンション
10…電機子
11…磁性体
12…巻線
20…永久磁石部
21…永久磁石
22…磁性体
25…ねじ部
30…凸部
31…凸部断面
32…面取り部
40…凹部
41…円筒部端部カバー
42…凹部断面
50…ばね
51…下部ばねおさえ
52…上部ばねおさえ
60…ばね下側連結ロッド
61…車両側連結ロッド
80…車両
90…ばね下側部材
91…車両側部材