(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】配管加工装置
(51)【国際特許分類】
B23B 41/08 20060101AFI20231215BHJP
F16L 55/105 20060101ALI20231215BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20231215BHJP
F16L 41/04 20060101ALN20231215BHJP
【FI】
B23B41/08
F16L55/105
B23Q3/155 K
F16L41/04
(21)【出願番号】P 2020114034
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃
(72)【発明者】
【氏名】菊地 敏一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-130259(JP,A)
【文献】特開2017-014544(JP,A)
【文献】特開平05-263579(JP,A)
【文献】特開昭59-107297(JP,A)
【文献】特開平08-135878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 41/08
F16L 55/105
B23Q 3/155
F16L 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外面に接続可能な固定部材と、
前記配管に穿孔するための穿孔工具と、
前記配管の内部の流路を閉塞するための閉塞工具と、
前記穿孔工具が前記配管に設けた穴から流れ出た前記配管の内部の液体を排出する排水管と、
作業者が操作する操作盤と、
箱状部材と、
前記穿孔工具と前記閉塞工具のうち1つを選択するツールチェンジャーと、
前記ツールチェンジャーが選択した工具を移動させる機構と、
を備え、
前記固定部材と前記穿孔工具と前記閉塞工具は、前記操作盤により遠隔で操作され
、
前記排水管は、前記箱状部材に接続されており、
前記固定部材は、前記箱状部材に備えられ、前記箱状部材を前記配管に固定し、
前記箱状部材は、前記配管に接続する面に開口部を備え、前記開口部の周囲にパッキンを備え、
前記穿孔工具と前記閉塞工具は、前記開口部を通って前記配管に到達することができ、
前記機構は、前記ツールチェンジャーが選択した工具を移動させて前記開口部を通って前記配管に到達させる、
ことを特徴とする配管加工装置。
【請求項2】
配管の外面に接続可能な固定部材と、
前記配管に穿孔するための穿孔工具と、
前記配管の内部の流路を閉塞するための閉塞工具と、
前記穿孔工具が前記配管に設けた穴から流れ出た前記配管の内部の液体を排出する排水管と、
作業者が操作する操作盤と、
前記排水管に設けられ、前記操作盤により遠隔で操作されて開度が制御される弁
と、
を備え
、
前記固定部材と前記穿孔工具と前記閉塞工具は、前記操作盤により遠隔で操作される、
ことを特徴とする配管加工装置。
【請求項3】
前記固定部材は、油圧システムを用いたクランプである、
請求項1
または2に記載の配管加工装置。
【請求項4】
前記固定部材は、水圧システムを用いたクランプである、
請求項1
または2に記載の配管加工装置。
【請求項5】
前記閉塞工具は、内部に流体が注入されると膨張する止水用プラグを備え、
前記止水用プラグは、前記穿孔工具が前記配管に設けた穴から前記配管の内部に配置され、膨張して前記配管の内面に密着することで、前記配管の内部の流路を閉塞する、
請求項1
または2に記載の配管加工装置。
【請求項6】
前記閉塞工具は、前記配管の内部に止水材を注入する止水材注入ノズルを備え、
前記止水材注入ノズルは、前記穿孔工具が前記配管に設けた穴から前記配管の内部に挿入され、前記止水材を前記配管の内部に注入することで、前記配管の内部の流路を閉塞する、
請求項1
または2に記載の配管加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管加工装置に関し、特に配管に穿孔して配管内部の液体を排出する作業を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、火力発電所、及び化学薬品の製造プラント等の定期検査、改造工事、及び解体工事において、配管内の点検や検査、及び配管の取替えや撤去などの作業を行う場合には、配管内の流体を事前に抜き取る必要がある。しかし、配管が、高温多湿の環境や狭隘等の事情により著しく作業性が劣悪なエリアや、放射線の影響により雰囲気線量率が高いエリアに配置されていると、このような配管に対して作業を行う作業者にかかる負担が大きい。このため、作業者の負担を軽減するために、配管の加工作業において、安全性、作業効率、及び被ばく防護の観点から改善が望まれている。
【0003】
作業者が実施する配管の加工作業を簡易にする装置は、例えば特許文献1、2に記載されている。特許文献1に記載された遮断装置は、流体管に穿孔された挿入孔から流路内に挿入されて流路を閉塞する遮断機を備える。特許文献2に記載された管内閉塞具は、管内に挿入した閉塞部材の管周方向に沿う外周面を略全周に亘って管内面側に弾性的に押し付けて、その管内を閉塞可能であり、外周面と管内面との間に液状シール材を吐出可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-200025号公報
【文献】特開2005-249085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の遮断装置や特許文献2の管内閉塞具など、従来の配管加工装置では、配管内の流路を閉塞することができるが、配管に穿孔するための装置と配管内に残った滞水を抜き取るための装置がさらに必要であるので、作業効率の改善と作業者にかかる負担を減らすことが課題である。また、配管加工装置には、例えば原子力発電所での作業に用いるときの被ばく防護の観点から、遠隔で操作できることが望まれている。
【0006】
本発明は、配管に穿孔して配管内の液体を排出し配管内の流路を閉塞する作業を、遠隔操作にて実施できる配管加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による配管加工装置は、配管の外面に接続可能な固定部材と、前記配管に穿孔するための穿孔工具と、前記配管の内部の流路を閉塞するための閉塞工具と、前記穿孔工具が前記配管に設けた穴から流れ出た前記配管の内部の液体を排出する排水管と、作業者が操作する操作盤とを備える。前記固定部材と前記穿孔工具と前記閉塞工具は、前記操作盤により遠隔で操作される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、配管に穿孔して配管内の液体を排出し配管内の流路を閉塞する作業を、遠隔操作にて実施できる配管加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1による配管加工装置が、加工対象の配管に取付けられた状態を示す模式図。
【
図2】配管加工装置のシールボックスの構成を示す模式図。
【
図3】配管加工装置のツール挿入駆動装置の構成を示す模式図。
【
図4】配管加工装置のツール挿入駆動装置の断面を示す図。
【
図5】シールボックスの構成要素の接続を説明する図。
【
図6】ツール挿入駆動装置の構成要素の接続を説明する図。
【
図7】配管加工装置を用いて配管を加工する作業のフローを説明する図。
【
図8】配管加工装置が穿孔用ドリルで配管に穿孔する様子を示す図。
【
図9】配管加工装置が配管の内部へ止水用プラグを挿入した様子を示す図。
【
図10】配管加工装置が、止水材注入ノズルによって配管の内部へ止水材を注入する様子を示す図。
【
図11】実施例2による配管加工装置のシールボックスの構成を示す模式図。
【
図12】実施例2による配管加工装置が配管の内部へ止水用プラグを挿入した様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による配管加工装置は、配管に穿孔し、開いた穴から配管内の液体を排出し、配管内の流路を閉塞して液体が配管から溢れないように止水する加工作業を、遠隔操作にて実施できる。作業者は、本発明による配管加工装置により、配管の穿孔と配管内の液体の抜き取りから配管内の流路閉塞までの一連の作業を同一の装置で且つ遠隔操作で行うことができるので、作業効率を向上できるとともに、負担を軽減できる。本発明による配管加工装置を、例えば原子力発電所での作業に用いると、作業者の被ばく線量を抑制できるので、作業者の安全性を確保できる。また、配管に対して穿孔と内部の液体の抜き取りと流路閉塞という一連の作業を同一の装置で実施できるので、作業ステップ毎の段取り替えが不要であり、薬品や汚染水等が漏えいするリスクを低減することができる。
【0011】
以下、本発明の実施例による配管加工装置について、図面を用いて説明する。本発明による配管加工装置は、任意の向きに延伸する配管を加工対象とすることができる。以下の実施例では、一例として、垂直方向に延伸する配管である垂直配管を加工対象とする。また、以下の実施例では、配管の内部に存在する液体として、水を例に挙げて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1から
図6を用いて、本発明の実施例1による配管加工装置の構成と動作を説明する。
【0013】
図1は、本実施例による配管加工装置10が、加工対象の配管101に取付けられた状態を示す模式図である。加工対象の配管101は、垂直配管であり、内部に水(滞水)が存在する。配管101は、作業者が容易に近づくことが困難なエリアに敷設されていることもある。配管加工装置10は、配管101の点検、補修、または撤去のために、穿孔と内部の水の抜き取りと流路の閉塞による止水という一連の作業を、遠隔操作によって配管101に実施する。
【0014】
なお、本実施例による配管加工装置10は、内部に水が存在する水平配管106(水平方向に延伸する配管)を加工対象とすることもできる。また、本実施例による配管加工装置10は、内部に水が存在しない垂直配管104と水平配管や、水を排水するためのドレンラインを備える垂直配管105を加工することもできる。
【0015】
配管加工装置10は、シールボックス102と、ツール挿入駆動装置103と、操作盤を備え、操作盤によって作業者に遠隔で操作される。シールボックス102は、密閉容器であり、配管101から流出した水が配管加工装置10の外部へ漏えいするのを防止するための機能を有する。ツール挿入駆動装置103は、配管101の加工に用いる複数の工具(穿孔用ドリル、止水用プラグ、及び止水材注入ノズル)を備える。シールボックス102とツール挿入駆動装置103については、後で詳しく説明する。
【0016】
配管加工装置10は、さらに、電源ケーブル301、通信ケーブル302、空気供給管303、止水材供給管304、排水管305、及び遠隔操作弁603を備える。
【0017】
図2は、配管加工装置10のシールボックス102の構成を示す模式図である。シールボックス102は、加工対象の配管である配管101に接続することができる。また、シールボックス102は、配管101に接続する面と反対側の面で、ツール挿入駆動装置103に接続する。
【0018】
シールボックス102は、金属製の箱状部材であり、配管支持用クランプ601と、排水管305と、遠隔操作弁603を備える。
【0019】
配管支持用クランプ601は、配管101の外面に接続可能な固定部材であり、例えば、作動油を媒体として動力を伝達する油圧システムを用いて配管101を把持するクランプである。配管支持用クランプ601は、シールボックス102を配管101に接続して固定する。シールボックス102は、配管支持用クランプ601を複数備えるのが好ましい。
【0020】
図2には、シールボックス102が、上下方向に並置された2つの配管支持用クランプ601を備える例を示している。これら2つの配管支持用クランプ601は、互いに対向する向き(
図2では左右方向)から配管101を挟んで支持することで、配管加工装置10が配管101に対して回転するのを防止する。また、配管支持用クランプ601は、シールボックス102と配管101との距離を変えることができる伸縮機構またはスライド機構を備えることができ、シールボックス102と配管101との接着状態を調整することができる。
【0021】
排水管305は、一端がシールボックス102の下部に接続されており、他端が貯水部(図示せず)に接続されている。貯水部は、例えば、作業者が作業を行う場所に設置することができる。排水管305は、穿孔用ドリルが配管101に設けた穴から流れ出た配管101の内部の水を、配管加工装置10から排出する。
【0022】
遠隔操作弁603は、排水管305に設けられ、排水管305を流れる水の流量を調整する。遠隔操作弁603は、作業者が操作盤を操作することで、遠隔操作で開度が制御される。
【0023】
シールボックス102は、排水管305に流量計606を備えることができる。流量計606は、排水管305を流れる水の流量を測定する。
【0024】
シールボックス102は、配管101に接続する面に開口部607を備え、開口部607の周囲にパッキン602が設置されている。また、シールボックス102の、ツール挿入駆動装置103に接続する面は、開口部を備える。ツール挿入駆動装置103が備える工具は、これらの開口部を通って、ツール挿入駆動装置103からシールボックス102を経由して配管101に到達することができる。これらの開口部は、シールボックス102の上部に設けられるのが好ましい。シールボックス102が上部にこれらの開口部を備えると、シールボックス102の内部に配管101から水が流れ出ても、ツール挿入駆動装置103からシールボックス102に移動した工具をこの水で濡らさないようにすることができる。
【0025】
パッキン602は、配管101の表面形状に合わせて柔軟に変形する素材で構成され、シールボックス102と配管101との接着面の気密を保つことができ、配管101から流れ出た水が配管加工装置10の外部へ漏えいするのを防止する。
【0026】
シールボックス102は、さらにカメラ604と照明装置605を備えることができる。カメラ604は、シールボックス102を配管101に取付けるときにシールボックス102の位置合わせのために使用される。照明装置605は、作業が可能な明るさを確保するために使用される。カメラ604と照明装置605は、作業者の遠隔操作により操作される。
【0027】
図3は、配管加工装置10のツール挿入駆動装置103の構成を示す模式図である。
図4は、ツール挿入駆動装置103の断面を示す図である。
【0028】
ツール挿入駆動装置103は、配管101の加工に用いる工具である穿孔用ドリル306と、止水用プラグ401と、止水材注入ノズル501を備え、シールボックス102に接続する。ツール挿入駆動装置103は、さらに、ツールチェンジャー802と、ツール移動機構803を備える。ツール挿入駆動装置103は、これらの工具のうち1つをツールチェンジャー802で選択し、選択した工具をツール移動機構803でシールボックス102を経由して配管101まで移動させることができる。なお、止水用プラグ401は、止水用プラグ401を支持する部材に支持されている。
【0029】
穿孔用ドリル306は、配管101の内部の水を排出する穴を配管101に穿孔するための穿孔工具である。
【0030】
止水用プラグ401と止水材注入ノズル501は、配管101の内部の流路を閉塞するための閉塞工具である。
【0031】
止水用プラグ401は、膨張可能な部材で構成され、内部に流体が注入されると膨張して形状が変化する部材である。止水用プラグ401は、穿孔用ドリル306が配管101に設けた穴から配管101の内部に配置され、膨張して配管101の内面に密着することで、配管101の内面との隙間を埋める。止水用プラグ401は、このようにして配管101の内部の流路を閉塞することで、配管101の内部からの水の漏えいを抑制する。本実施例では、内部に空気が注入されると膨張する止水用プラグ401を用いる。
【0032】
止水材注入ノズル501は、配管101の内部に止水材を注入するためのノズルである。止水材注入ノズル501は、穿孔用ドリル306が配管101に設けた穴から配管101の内部に挿入され、止水材を配管101の内部に注入することで、配管101の内部の流路を閉塞し、配管101の内部からの水の漏えいを抑制する。
【0033】
これらの工具は、それぞれが独立してツール収納ケース804に格納されている。これらの工具の位置(
図3では上下方向の位置)は、ツール収納ケース804がツールチェンジャー802によって回転移動または直進移動することで変更可能である。
【0034】
止水用プラグ401は、配管101からの水の漏えいを防止するために膨張可能な部材であり、任意のものを用いることができる。止水材は、配管101の内部に注入されるときには流動性があるが、時間の経過とともに硬化して隙間を埋めることができる材料であり、任意のものを用いることができる。止水用プラグ401と止水材により、配管101の内部の流路を閉塞し、配管101の内部の水が配管101から流出するのを防ぐことができる。
【0035】
ツール挿入駆動装置103は、シールボックス102と接続する面に、開閉可能な一対の扉部801を備える。扉部801は、シールボックス102の、ツール挿入駆動装置103に接続する面の開口部を覆う位置に設けられている。シールボックス102のこの開口部は、扉部801が閉じると塞がれる。
【0036】
ツールチェンジャー802は、扉部801の位置に工具のうち1つを移動させることで、使用する工具を選択する。
【0037】
ツール移動機構803は、選択された工具を直進移動させて、工具をツール収納ケース804から取り出したりツール収納ケース804に収納したりする機構を備える。ツール移動機構803は、扉部801が開いたら、選択された工具をツール収納ケース804から配管101に向かって(
図4では左方向に)移動させる。ツール移動機構803によってツール収納ケース804から移動した工具は、開いた扉部801と、ツールチェンジャー802の、ツール挿入駆動装置103に接続する面の開口部と配管101に接続する面の開口部607を通り、配管101に到達する。
【0038】
ツール挿入駆動装置103は、このようにして、作業者の遠隔操作により、使用する工具を選択し、選択した工具を配管101まで移動させることができる。
【0039】
一対の扉部801は、互いに対向する位置に、柔軟に変形する素材で構成されたパッキン805を備える。パッキン805は、扉部801が開いてツール挿入駆動装置103から配管101へ工具が移動していると、この工具(またはこの工具を支持する部材)と扉部801との間を隙間なく埋めることができるように、工具(または工具を支持する部材)の表面形状に合わせて柔軟に変形する。また、パッキン805は、工具(または工具を支持する部材)の表面形状に合う形状を備えてもよい。
【0040】
ツール挿入駆動装置103は、扉部801が閉じており、全ての工具をツール収納ケース804に格納した状態では、シールボックス102と連通せず、シールボックス102からツール挿入駆動装置103に水が流入しない。また、ツール挿入駆動装置103は、扉部801が開いており、ツール挿入駆動装置103から配管101へ工具が移動している状態では、パッキン805により工具(または工具を支持する部材)と扉部801との隙間が埋められているので、シールボックス102と連通せず、シールボックス102からツール挿入駆動装置103に水が流入しない。ツール挿入駆動装置103は、扉部801により気密性を保つことができる。
【0041】
ツール挿入駆動装置103には、電源ケーブル301、通信ケーブル302、空気供給管303、及び止水材供給管304が接続されている。電源ケーブル301は、配管加工装置10に電力を供給するケーブルであり、例えば、穿孔用ドリル306に電力を供給する。通信ケーブル302は、配管加工装置10の操作盤に接続され、作業者が操作盤を用いて配管加工装置10を遠隔操作するための通信に使用されるケーブルである。空気供給管303は、止水用プラグ401を膨らませるために、止水用プラグ401に空気を供給する。止水材供給管304は、配管101の内部に注入される止水材を、止水材注入ノズル501に供給する。
【0042】
図4に示すように、ツール移動機構803は、ツール挿入駆動装置103の上部に設置されるのが好ましい。上述したように、ツール挿入駆動装置103からシールボックス102に移動した工具を水で濡らさないようにするために、シールボックス102の開口部は、シールボックス102の上部に設けられるのが好ましい。このため、選択された工具をシールボックス102に移動させるツール移動機構803は、ツール挿入駆動装置103の上部に位置するのが好ましい。
【0043】
図5は、シールボックス102の構成要素の接続を説明する図である。
【0044】
シールボックス102が備える照明装置605の点灯と消灯、配管支持用クランプ601の操作、カメラ604の撮像、及び遠隔操作弁603の開度の制御は、電気制御で行われる。このため、照明装置605、配管支持用クランプ601、カメラ604、及び遠隔操作弁603は、外部の電源709に接続された電源ケーブル301に接続され、電源ケーブル301により電力が供給される。
【0045】
照明装置605、配管支持用クランプ601、カメラ604、及び遠隔操作弁603は、作業者が操作盤710を操作することで、遠隔で操作される。このため、照明装置605、配管支持用クランプ601、カメラ604、及び遠隔操作弁603は、操作盤710に接続された通信ケーブル302に接続され、操作盤710と通信を行うことで作業者に遠隔操作される。
【0046】
また、作業者は、排水管305を流れる水の流量を、排水管305に設置された流量計606を用いて監視することができる。
【0047】
図6は、ツール挿入駆動装置103の構成要素の接続を説明する図である。
【0048】
ツール挿入駆動装置103が備える扉部801の開閉、ツールチェンジャー802による工具の移動、及びツール移動機構803による工具の移動は、電気制御で行われる。このため、扉部801、ツールチェンジャー802、及びツール移動機構803は、電源ケーブル301により電源709から電力が供給される。穿孔用ドリル306は、ツールチェンジャー802を介して、電源709から電力が供給される。
【0049】
扉部801、ツールチェンジャー802、及びツール移動機構803は、作業者が操作盤710を操作することで、遠隔で操作される。このため、扉部801、ツールチェンジャー802、及びツール移動機構803は、通信ケーブル302によって操作盤710と通信を行うことで作業者に遠隔操作される。
【0050】
配管101の内部に配置された止水用プラグ401は、圧縮空気により膨張して形状が変化する。ツール挿入駆動装置103に接続された空気供給管303は、空気圧縮機1014に接続され、空気圧縮機1014から圧縮空気を、ツールチェンジャー802を介して止水用プラグ401に供給する。
【0051】
止水材注入ノズル501が配管101の内部に注入する止水材は、止水材タンク1015に格納されている。ツール挿入駆動装置103に接続された止水材供給管304は、止水材タンク1015に接続され、止水材タンク1015から止水材を、ツールチェンジャー802を介して止水材注入ノズル501に供給する。
【0052】
止水材は、止水材注入ノズル501により、圧縮空気で配管101の内部に注入される。空気供給管303は、空気圧縮機1014から圧縮空気を、ツールチェンジャー802を介して止水材注入ノズル501に供給する。
【0053】
図7は、本実施例による配管加工装置10を用いて配管を加工する作業のフローを説明する図である。作業者は、配管加工装置10を遠隔で操作することにより、以下の処理を実施する。
【0054】
ステップ201で、配管加工装置10を用いる配管の加工作業が開始される。配管加工装置10は、例えば、作業者の遠隔操作で動く運搬装置によって、加工対象である配管101の位置まで運ばれる。
【0055】
ステップ202で、配管加工装置10は、配管101に取付けられ、取付けの完了後に起動する。配管加工装置10は、シールボックス102が備える配管支持用クランプ601によって、作業者の遠隔操作により、配管101に取付けられる。
【0056】
ステップ203で、配管加工装置10は、ツール挿入駆動装置103が使用する工具を穿孔用ドリル306に設定する。
【0057】
ステップ204で、配管加工装置10は、配管101に穿孔する。作業者は、配管加工装置10の操作盤710を操作することで、配管101に穴を開けることができる。
【0058】
ステップ205で、配管加工装置10は、配管101への穿孔の完了後に、穿孔用ドリル306を穴から引抜くことで、配管101の内部の水を穴から排出する。配管101の内部の水は、穿孔用ドリル306が開けた穴からシールボックス102の開口部607(
図2)を通ってシールボックス102の内部に流れ、排水管305によって配管加工装置10から流出する。
【0059】
排水管305で排水するときには、配管加工装置10は、シールボックス102が備える遠隔操作弁603によって、排水流量を調整する。作業者は、排水管305を流れる水の流量を流量計606で測定し、この水の流量に応じて遠隔操作弁603の開度を変える。例えば、排水管305を流れる水の流量が多いときには、遠隔操作弁603の開度を小さくし、排水管305に接続された貯水部に流入する水の流量を減らす。
【0060】
ステップ206で、作業者は、配管101の内部からの排水後に、配管101への止水の要否を判定する。作業者は、排水管305から水が流出しているか否かを監視する。配管101の穴からシールボックス102に流れ出た水は、排水管305の一端から排水管305に流れ、排水管305の他端から流出する。作業者は、排水管305から水が流出しているか否かを、例えば、撮影した映像を見たり直接目視したりすることにより、監視することができる。また、例えば、作業者は、排水管305に設置された流量計606を用いて、排水管305から水が流出しているか否かを監視することができる。
【0061】
作業者は、排水管305から水が流出しており、配管101から継続的に排水されていると判断した場合には、配管101への止水が必要であると判定する。また、作業者は、排水管305から水が流出しておらず、配管101から排水されていないと判断した場合には、配管101への止水が不要であると判定する。配管101への止水が必要であると判定された場合には、ステップ207の処理が実行される。配管101への止水が不要であると判定された場合には、ステップ212に進み、配管の加工作業が完了する。
【0062】
ステップ207で、配管加工装置10は、ツール挿入駆動装置103が使用する工具を止水用プラグ401に設定する。
【0063】
ステップ208で、配管加工装置10は、止水用プラグ401を、配管101に開けた穴から配管101の内部へ挿入し、空気を供給して膨張させて配管101の内面全体に密着させる。配管加工装置10は、止水用プラグ401を配管101の内部で膨張させて、配管101の内面と止水用プラグ401との隙間を埋めることで、配管101の内部からの水の漏えいを抑制する。止水用プラグ401を配管101の内部へ挿入した後では、作業者は、配管101の穴から水が漏れているか否かを調べなくてもよい。
【0064】
ステップ209で、配管加工装置10は、ツール挿入駆動装置103が使用する工具を止水材注入ノズル501に設定する。
【0065】
ステップ210で、配管加工装置10は、止水材注入ノズル501を用いて、配管101の穴から配管101の内部へ止水材を注入し、止水材を硬化させる。配管加工装置10は、配管101の穴から配管101の内部へ止水材注入ノズル501を挿入して、止水材を配管101の内部へ注入する。止水材は、圧縮空気とともに止水材注入ノズル501に供給され、止水用プラグ401と配管101の内面との間と、止水用プラグ401の上部に注入され、硬化して配管101の内部の水の流路を閉塞させることで止水を行う。
【0066】
ステップ211で、作業者は、止水材の硬化後に、配管101の内部から水が漏洩しているか否かを調べる。作業者は、排水管305の他端から水が流出しているか否かを監視し、排水管305から水が流出している場合には、配管101の穴からの水の漏洩が有ると判定する。また、作業者は、排水管305から水が流出していない場合には、配管101の穴からの水の漏洩が無いと判定する。
【0067】
ステップ211で配管101の内部から水が漏洩していると判定された場合には、ステップ209とステップ210の処理を実行し、配管加工装置10は、止水材注入ノズル501を用いて配管101の内部へ止水材をさらに注入する。配管加工装置10は、配管101の内部からの水の漏洩が無くなるまで、配管101の内部へ止水材を注入する。
【0068】
ステップ211で配管101の内部から水が漏洩していないと判定された場合には、ステップ212に進み、配管の加工作業が完了する。
【0069】
図8は、配管101に取付けられた配管加工装置10が、穿孔用ドリル306で配管101に穿孔する様子を示す図である。
【0070】
穿孔用ドリル306は、作業者の遠隔操作により、ツール挿入駆動装置103からシールボックス102の内部に押し出され、シールボックス102を通って配管101の外面に到達する。その後、穿孔用ドリル306は、作業者の遠隔操作により、先端が配管101の内面に到達するまで穿孔を行う。穿孔用ドリル306により開けられた配管101の穴からは、配管101の内部の水がシールボックス102に流出する。配管101から流出した水は、排水管305によって配管加工装置10から流出する。
【0071】
図9は、配管101に取付けられた配管加工装置10が、配管101に穿孔して開けた穴から配管101の内部へ止水用プラグ401を挿入した様子を示す図である。
【0072】
止水用プラグ401は、作業者の遠隔操作により、ツール挿入駆動装置103からシールボックス102を経由して配管101の穴を通って、配管101の内部へ移動する。配管101の内部へ挿入された止水用プラグ401は、作業者の遠隔操作により空気供給管303で空気が供給されると膨張し、配管101の内面の全体と密着する。
【0073】
図10は、配管101に取付けられた配管加工装置10が、止水用プラグ401を配管101の内部へ挿入して膨張させた後で、止水材注入ノズル501によって配管101の内部へ止水材502を注入する様子を示す図である。
【0074】
止水材注入ノズル501は、作業者の遠隔操作により、ツール挿入駆動装置103からシールボックス102を経由して配管101の穴を通り配管101の内部へ挿入され、配管101の内部へ止水材502を注入する。止水材502は、空気供給管303で供給された圧縮空気とともに、止水材供給管304で止水材注入ノズル501に供給され、止水用プラグ401と配管101の内面との間と止水用プラグ401の上部に注入され、硬化して配管101の内部の水の流路を閉塞させることで止水を行う。
【0075】
本実施例による配管加工装置10では、以上のようにして、配管101に穿孔して配管101の内部の水を排出し、配管101の内部の流路を閉塞する一連の作業を、遠隔操作にて実施することができ、作業効率を改善するとともに、作業者にかかる負担を減らすことができる。
【0076】
本実施例による配管加工装置10は、ツール挿入駆動装置103が複数の工具(穿孔用ドリル306、止水用プラグ401、及び止水材注入ノズル501)を備え、ツールチェンジャー802で使用する工具を選択する。このため、本実施例による配管加工装置10は、配管101に穿孔して配管101の内部の水を抜き取る作業から、配管101の内部の流路を閉塞する作業までの一連の作業を、同一の装置で実施でき、作業効率を向上できる。
【0077】
また、本実施例による配管加工装置10は、シールボックス102が排水管305とパッキン602を備え、配管101から流出した水を排水管305が配管加工装置10から排出し、配管101から流出した水が配管加工装置10の外部へ漏えいするのをパッキン602が防止する。このため、本実施例による配管加工装置10は、配管101から流出した水を、配管101が設置されている施設内に漏らさずに、配管101を加工できる。
【実施例2】
【0078】
図11と
図12を用いて、本発明の実施例2による配管加工装置10を説明する。
図11と
図12において、
図1から
図10と同一の符号は、実施例1と同一または共通する要素を示し、これらの要素については説明を省略する。
【0079】
本実施例による配管加工装置10は、配管支持用クランプが水圧システムを用いて配管101を把持するクランプである点と、止水用プラグ401が水が注入されると膨張する点が、実施例1による配管加工装置10と異なる。
【0080】
図11は、本実施例による配管加工装置10のシールボックス102の構成を示す模式図である。シールボックス102を配管101に接続させる配管支持用クランプ1101は、水を媒体として動力を伝達する水圧システムを用いたクランプである。
【0081】
図12は、配管101に取付けられた配管加工装置10が、配管101に穿孔して開けた穴から配管101の内部へ止水用プラグ401を挿入した様子を示す図である。配管101の内部へ挿入された止水用プラグ401は、水が供給されると膨張し、配管101の内面の全体と密着する。
【0082】
本実施例による配管加工装置10は、ツール挿入駆動装置103に接続された水供給管1202を備える。水供給管1202は、水を蓄えた水貯蔵タンク1203に接続されている。水供給管1202は、止水用プラグ401を膨らませるために、水貯蔵タンク1203から水を、ツールチェンジャー802を介して止水用プラグ401に供給する。
【0083】
本実施例による配管加工装置10も、実施例1による配管加工装置10と同様に、配管101に穿孔して配管101の内部の水を排出し、配管101の内部の流路を閉塞する一連の作業を、遠隔操作にて実施することができ、作業効率を改善するとともに、作業者にかかる負担を減らすことができる。
【0084】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10…配管加工装置、101…配管、102…シールボックス、103…ツール挿入駆動装置、104…内部に水が存在しない垂直配管、105…ドレンラインを備える垂直配管、106…水平配管、301…電源ケーブル、302…通信ケーブル、303…空気供給管、304…止水材供給管、305…排水管、306…穿孔用ドリル、401…止水用プラグ、501…止水材注入ノズル、502…止水材、601…配管支持用クランプ、602…パッキン、603…遠隔操作弁、604…カメラ、605…照明装置、606…流量計、607…開口部、709…電源、710…操作盤、801…扉部、802…ツールチェンジャー、803…ツール移動機構、804…ツール収納ケース、805…パッキン、1014…空気圧縮機、1015…止水材タンク、1101…配管支持用クランプ、1202…水供給管、1203…水貯蔵タンク。