(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0631 20230101AFI20231215BHJP
【FI】
G06Q10/0631
(21)【出願番号】P 2020118972
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】508369261
【氏名又は名称】株式会社日立ICTビジネスサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 敬志
(72)【発明者】
【氏名】小松 宏樹
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-138823(JP,A)
【文献】特開2014-219811(JP,A)
【文献】特開平9-190475(JP,A)
【文献】特開2019-32785(JP,A)
【文献】特開2010-55167(JP,A)
【文献】特開2020-9269(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073612(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/128555(WO,A1)
【文献】特開2012-238054(JP,A)
【文献】特開2011-90625(JP,A)
【文献】特開2004-94827(JP,A)
【文献】特開2012-58848(JP,A)
【文献】特開2019-204243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定業務を構成する各タスクの所要時間、および所定期間における複数のリソース各々の稼働可能時間、の各情報を格納する記憶部と、制御部とを備え、
前記制御部は、
前記各タスクの所要時間および前記稼働可能時間の各情報に基づき、前記各タスクに前記リソースを順次割り当てて担当リソースを決定する割当処理と、前記各タスクのそれぞれに関して、当該タスクの担当リソースによる実行数を所定のタイミングで集計する処理と、前記集計の結果を出力する処理を実行するものである、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記実行数の集計に伴い、当該タスクの完了予定時における未実行数を集計し、前記集計の結果として、前記実行数および前記未実行数の情報を出力するものである、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記未実行数を閾値と比較する処理と、
前記未実行数が前記閾値を超える場合、警告を発出する処理と、をさらに実行する、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、
一定期間における前記未実行数の増加率を取得する処理と、
前記増加率が基準を超えた場合に警告を発出する処理と、をさらに実行する、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記記憶部には、前記複数のリソースの優先順位がさらに格納され、
前記制御部は、
前記割当処理において、前記複数のリソースを前記優先順位に従って前記各タスクに割当てる、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
所定業務を構成する各タスクの所要時間、および所定期間における複数のリソース各々の稼働可能時間、の各情報を格納する記憶部を備えた情報処理システムが、
前記各タスクの所要時間および前記稼働可能時間の各情報に基づき、前記各タスクに前記リソースを順次割り当てて担当リソースを決定する割当処理と、前記各タスクのそれぞれに関して、当該タスクの担当リソースによる実行数を所定のタイミングで集計する処理と、前記集計の結果を出力する処理を実行する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
企業は業務量に応じて担当者などのリソースを配置することで業務を遂行している。しかし、なにかしらの理由により急激に負荷が増加し、予定外の残業や業務遅延が発生することが少なくない。
【0003】
一例として、発注依頼、発注手配、納品検収、取引記帳という4つのタスクで構成される発注の業務プロセス(以下、ビジネスプロセス、またはBPともいう)を説明する。予定外の残業が発生する例として、年度末となる3月中旬頃にハードウェア購入などの発注依頼タスクが急激に増加し、発注担当部署の発注依頼タスクや検収担当部署の納品検収タスクの負荷が急激に増加し、3月下旬に発注担当部署や研修担当部署の担当者が長時間の残業となってしまうなどが挙げられる。
【0004】
このような問題を回避するため、各部署の負荷を予測し、急激に業務量が増加する際は事前に必要なリソースを準備することが期待されている。例えば、従来技術において、業務量の変化が想定される場合にも終了時限を遵守できるように改善提案を行なうための業務支援システム、業務支援方法及び業務支援プログラムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、処理時間と処理件数から業務プロセスごとの負荷を予測している。しかし、実際の業務は複数のタスクにて構成されており、タスクの種別ごとに担当者をあてがうことが多い。そのため、複数の業務に同種のタスクが含まれ、これらのタスクを同じ担当者が処理している場合、負荷予測の精度が低くなってしまう。
【0007】
例えば、同一の担当者が2つの業務にまたがって割り当てられた場合、従来技術では業務ごとに独立して負荷を予測するため、担当者の処理能力を超えた案件数が割り当てられてしまう。したがって、負荷の予測結果と実態には大きな乖離が発生してしまう。
【0008】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、リソースが複数の業務を兼任している場合においても、業務管理を適切に行うことのできる情報処理システムまたは情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の一つは、所定業務を構成する各タスクの所要時間、および所定期間における複数のリソース各々の稼働可能時間、の各情報を格納する記憶部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記各タスクの所要時間および前記稼働可能時間の各情報に基づき、前記各タスクに前記リソースを順次割り当てて担当リソースを決定する割当処理と、前記各タスクのそれぞれに関して、当該タスクの担当リソースによる実行数を所定のタイミングで集計する処理と、前記集計の結果を出力する処理を実行するもの
である、ことを特徴とする情報処理システムとする。
【0010】
上記課題を解決するための、本発明の他の一つは、所定業務を構成する各タスクの所要時間、および所定期間における複数のリソース各々の稼働可能時間、の各情報を格納する記憶部を備えた情報処理システムが、前記各タスクの所要時間および前記稼働可能時間の各情報に基づき、前記各タスクに前記リソースを順次割り当てて担当リソースを決定する割当処理と、前記各タスクのそれぞれに関して、当該タスクの担当リソースによる実行数を所定のタイミングで集計する処理と、前記集計の結果を出力する処理を実行する、ことを特徴とする情報処理方法とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リソースが複数の業務を兼任している場合においても、業務管理を適切に行うことのできる情報処理システムまたは情報処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る業務管理システムを含む情報処理システムの全体構成の一例である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る業務管理システムの機能構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るシミュレーション定義情報の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るBP定義情報の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る新規案件情報の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係るロール定義情報の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る担当者情報の一例を示す図であり、(a)、(b)図は更新の前後における担当者情報を示す。
【
図9】本実施形態に係る案件管理情報の一例を示す図であり、(a)、(b)、(c)、(d)の各図には、案件管理情報の更新状況を示す。
【
図10】本実施形態に係るタスク実行管理情報の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る集計情報の一例を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る情報処理システムが実行する処理を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の構成を示す。情報処理システム1は、業務管理システム10、および一つ以上のユーザ装置30を含む。業務管理システム10、およびユーザ装置30は、通信ネットワーク5を介して互いにデータの送受信が可能となるように接続されている。
【0015】
通信ネットワーク5は、無線方式または有線方式の通信手段であり、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、公衆通信網、
専用線等である。
【0016】
なお、本実施形態による情報処理システム1は上記複数の情報管理装置によって構成されているが、本発明はこれらの装置の数を限定するものではない。そのため、情報処理システム1は、以下のような機能を備えるものであれば、1以上の装置によって構成することができる。
【0017】
ユーザ装置30は、ユーザによって操作される情報処理装置であり、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等である。
【0018】
業務管理システム10は、ユーザ装置30に通信ネットワーク5を介して業務負荷予測などの各種サービスを提供する情報処理装置である。業務管理システム10は、ビジネスプロセス(BPともいう)に関する各種情報の管理、従業者を含むリソースのスケジュールの管理、BPを処理する担当者の管理、BPを構成するタスクの管理及びその集計などの情報処理サービスをユーザに提供する。
【0019】
図2は、業務管理システム10、ユーザ装置30の実現に用いるハードウェア(以下、「情報処理装置100」と称する。)の一例である。同図に示すように、情報処理装置100は、プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入力装置104、出力装置105、および通信装置106を備える。これらは図示しないバス等の通信手段を介して互いに通信可能に接続されている。
【0020】
尚、情報処理装置100は、その全ての構成が必ずしもハードウェアで実現されている必要はなく、構成の全部又は一部が、例えば、クラウドシステム(cloud system)のクラウドサーバ(cloud server)のような仮想的な資源によって実現されていてもよい。
【0021】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等を用いて構成される。プロセッサ101が、主記憶装置102に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、業務管理システム10やユーザ装置30の機能が実現される。プロセッサ101は本発明における制御部の一例である。
【0022】
主記憶装置102は、プログラムやデータを記憶する装置であり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性半導体メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0023】
補助記憶装置103は、例えば、SSD(Solid State Drive)、SDメモリカード等
の各種不揮発性メモリ(NVRAM:Non-volatile memory)、ハードディスクドライブ、光学
式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置103に格納されているプログラムやデータは主記憶装置102に随時読み込まれる。
【0024】
入力装置104は、情報の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、音声入力装置(マイクロフォン等)、音声認識装置等である。情報処理装置100が通信装置106を介して他の装置との間で情報の入力を受け付ける構成としてもよい。
【0025】
出力装置105は、各種の情報を出力するインタフェースであり、例えば、画面表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、印字装置等)、音声出力装置(スピーカ等)、音声合成装置等である。情報処理装置100が通信装置106を介して他の装置との間で情報の出力を行う構成としてもよい。
【0026】
通信装置106は、通信ネットワーク5を介した他の装置との間の通信を実現する有線方式又は無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB(Universal Serial Interface)モジュール、シリアル通信モジュール等である。
【0027】
図3に業務管理システム10が備える主な機能(ソフトウェア構成)を示している。同
図に示すように、業務管理システム10は、記憶部111、及び管理部112の各機能を備える。これらの機能は、業務管理システム10のプロセッサ101が業務管理システム10の主記憶装置102に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。また業務管理システム10は、上記の機能に加えて、オペレーティングシステム、ファイルシステム、デバイスドライバ、DBMS(DataBase Management System)等の機能を備える。
【0028】
上記の機能のうち、記憶部111は、シミュレーション定義情報151、BP定義情報152、新規案件情報153、ロール定義情報154、担当者情報155、案件管理情報156、タスク実行管理情報157、集計情報158の各情報を記憶する。記憶部111は、これらの情報を、例えば、データベースのテーブルや、ファイルシステムによって管理されるファイル等として記憶する。
【0029】
また、管理部112は、案件管理部161、集計部162を有する。案件管理部161は、シミュレーション定義情報151、BP定義情報152、新規案件情報153、ロール定義情報154、担当者情報155、案件管理情報156、タスク実行管理情報157を管理する。また、集計部162は、集計情報158を管理する。
【0030】
シミュレーション定義情報151の一例を
図4に示す。シミュレーション定義情報151は、業務負荷の予測シミュレーションを実行する期間または期日を定める情報である。
図4の例においては、シミュレーション定義番号1に定めるシミュレーションにおいて、実行する期間は9月1日と設定されているが、シミュレーション定義番号2のように、8月31日から9月2日など、複数の期日を設定してもよい。シミュレーション定義情報151は、案件管理部161が通信ネットワーク5を介してユーザ装置30からシミュレーション定義情報151の入力を受け付けることによって、設定される。
【0031】
BP定義情報152の一例を
図5に示す。BP定義情報152には、タスク名、ロール名、処理時間、負荷基準、及びBP優先度が、互いに関連付けられた状態で保存される。タスク名は、BPを構成する細業務または細工程である、タスクの名称を示すものである。この例においては、各BPは、1つのリソースによって完了するタスクごとに分割される。なお、本実施形態において、リソースの一例として従業員を用いているが、人員に限らず、コンピュータ等の処理装置や工作機械など、業務を実施するために必要な機械、装置などもリソースとして想定され得る。
【0032】
ロールは、1つのタスクを完了させるために必要な役割種別を示す。
図5の例においては、ビジネスプロセスX1において、タスクT11、T13に対しては同じロールR1が割り当てられている。これはタスクT11、T13が、同様の処理内容であること、または、同じ担当者で処理可能であることを示す。タスクT12の処理には、ロールR1とは異なる役割が必要であるため、ロールR2が割り当てられている。
【0033】
処理時間は、それぞれのタスクを処理するために、標準的な能力を有する担当者が要する時間を示す。負荷基準は、警告を発出するための判断基準(後述)とするタスク未実施量を示す基準値である。PB優先度は、BP処理の優先順位を示す情報であり、本実施形態においては高、中、低の三段階での表示としている。
【0034】
新規案件情報153の一例を
図6に示す。新規案件情報153は、BPごとの新規案件数、案件優先度及び案件の発生時間を示す情報を保持する。新規案件数は、各BPにおいて発生した新規の案件数を示し、案件優先度は処理すべきBPの優先順序を中、高、低の3段階で示している。
図6においては、各BPにおいて、9月1日9時に新規案件が発生したことを示している。
【0035】
ロール定義情報154の一例を
図7に示す。ロール定義情報154には、ロールの名称と、そのロールを担当する能力を持つ担当者、及び担当者の優先度がたがいに関連付けられた状態で保存されている。優先度は、高、中、低の3段階で規定される。例えば
図7において、ロールR1に対応できる担当者はA、B、Cの3名であり、それぞれの優先度は高、中、中である。
【0036】
担当者情報155の一例を
図8に示す。担当者情報155には、担当者、担当者それぞれの処理能力、及び稼働時間が、互いに関連付けられた状態で保存される。処理能力は、担当者のタスクを処理する能力を示す数値であり、1.0を基準として設定される。例えば、処理能力2.0の担当者は、処理能力1.0の担当者に対し、同じタスクを半分の時間で処理できることを意味する。稼働時間は、担当者の勤務時間を示すものである。例えば
図8では、担当者Aの9月1日の勤務時間は9時から17時までの8時間、休憩1時間を考慮すると実働7時間であることを示している。
【0037】
案件管理情報156の一例を
図9に示す。案件管理情報156は、各案件の進捗状況をタスク単位で管理するための情報であり、案件名、BP名、完了タスク、次タスク、タスク完了日時、案件優先度、及びステータスに関する情報を互いに関連付けした状態で保持している。
【0038】
図9において、完了タスクは処理が完了したタスクを示し、次タスクは次に処理すべきタスクを示している。タスク完了日時は、最後に完了したタスクの完了日時を示している。案件管理情報156の案件優先度は、新規案件情報153(
図6)の案件優先度と同じであり、案件を処理すべき優先度を示している。ステータスは、案件自体の処理状況を示すものであり、処理中、完了、などの表示がなされる。
図9の例においては、案件A006~A009が
図6における新規案件に相当する。そのため、案件A006~A009の完了タスクの表示がなく、各案件について最初に処理すべきタスクが次タスクに表示されている。
【0039】
タスク実行管理情報157の一例を
図10に示す。タスク実行管理情報157は、案件名、BP名、次に処理すべきタスク名、その処理を行う担当者名、及び、処理完了日時の情報を、互いに関連付けた状態で保持する。
図10の例においては、案件管理情報156にも表示される案件A008の最初の実行タスクT11に対して、これを実行する担当者として担当者Aが割り当てられ、処理が完了する日時が9月1日9時30分であることを示している。同様に、案件A001などの他の案件に対しても、次の実行タスク及び担当者が順次割り当てられ、処理完了日時とともに表示される。
【0040】
集計情報158の一例を
図11に示す。集計情報158は、集計部162による集計の結果を示す情報であり、処理状況を予測した日である予測日、予測を実行したBP名、タスク名、実行数、及び未実行数を互いに関連付けた状態で保持する。
【0041】
図11の例においては、予測日9月1日におけるビジネスプロセスX1の処理状況を示しており、予測日までに処理が完了したタスクの数を実行数に、処理が完了していないタスクの数を未実行数として、タスクごとに示している。例えば、タスクT11については、実行数が10であり、未実行数が0(ゼロ)である。
【0042】
〔処理の流れ〕
続いて、情報処理システム1において行われる処理について説明する。
図12は、業務管理システム10が業務負荷予測を行う際の処理を説明するフローチャートである。以下
、同図とともに業務負荷予測処理について説明する。なお、以下では、シミュレーション定義情報151における、定義番号1のシミュレーションを実行する場合について説明する。業務負荷予測処理は、ユーザ装置30からユーザが業務管理システム10に開始を指示することによって開始される。
【0043】
ステップS1において、案件管理部161は、シミュレーション定義情報151を参照し、業務負荷の予測処理を行う日時を設定し、記憶部111(主記憶装置102または補助記憶装置103)に保持する。また、案件管理部161は新規案件情報153を参照し、予測する日時に該当する新規案件を生成し、案件管理情報156に登録する。
【0044】
本実施形態においてはシミュレーション定義情報151における、定義番号1のシミュレーションを実行する。そのため、9月1日において業務負荷予測を行うよう設定されている(
図4)。したがって、ステップS1における案件管理部161は、シミュレーション定義情報151の設定にしたがい、業務負荷の予測処理を行う日を9月1日と設定する。
【0045】
案件管理部161は、新規案件情報153から、9月1日に発生する新規案件4件(BP名X1、X3)を抽出し(
図6)、案件管理情報156に案件A006~A009として登録する(
図9(a))。これらの新規案件A006~A009は、
図9(a)に示すように、予測期間において処理中となっている案件A001~A003に追加される形で案件管理情報156に登録される。
【0046】
ステップS2において、案件管理部161は、担当者の割当処理を行うための案件抽出を行う。具体的には、案件管理情報156を参照して、担当者を割り当てる案件を選択する。その選択順位は、案件優先度に従う。
【0047】
本実施形態においては、案件A008の案件優先度が最も高い(
図9)。そのため、案件管理部161は案件A008をまず選択し、次のステップへ処理を進める。なお、案件優先度が同じ場合、案件の選択順位は、BP定義情報152のBP優先度(
図5)に基づいて決定される。
【0048】
ステップS3において、案件管理部161は、担当者の割当処理を実行する。具体的には、案件管理部161は、BP定義情報152を参照して、ステップS2において選択した案件を構成するタスクと、タスクを処理するために必要なロール、処理時間等の情報を取得する。
【0049】
次に、案件管理部161は、ロール定義情報154から、ロールを担当できる担当者を抽出して、タスクを処理する担当者の候補を抽出する。案件管理部161は、担当者情報155を参照して、担当者候補が予測日において稼働可能であるかを確認する。候補となる担当者が複数いた場合、案件管理部161は、ロール定義情報154の担当者優先度が高い順にタスクへの割当てを実行する。もし、優先度の高低が無い場合、割り当ては、ランダムに行われる。
【0050】
本実施形態において、ステップS2で案件A008が選択された場合、案件管理部161はBP定義情報152(
図5)を参照し、案件A008を構成するタスクT11と、これに対応するロール名であるロールR1とを抽出する。
【0051】
次に案件管理部161は、ロール定義情報154(
図7)からロールR1を実行可能な担当者候補であるA、B、Cの三名を取得する。案件管理部161は、担当者情報155を参照して稼働時間の空きを確認し、A、B、Cの3人とも、タスク処理を実行すべき9
月1日9時に稼働可能であることを確認する。
【0052】
最後に案件管理部161は、担当者優先度が最も高いAを、担当者として案件A008のタスクT11に割り当てる。案件管理部161は、タスクT12、T13に対しても上記と同様の処理を行い、タスクT12、T13それぞれに対して担当者の割当を行う。
【0053】
ステップS4において、案件管理部161は、担当者情報155を参照し、タスクを処理するために必要な時間を算出する。本実施形態においては、
図5、
図8を参照すると、タスクT11の1件当たり処理時間は30分、担当者Aの処理能力は1.0であるため、タスク実行時間は30分/1.0=30分とする。なお、担当者CにタスクT11が割り当てられた場合、担当者Cの処理能力は0.5であるため、タスク実行時間は30分/0.5=60分となる。
【0054】
ステップS5において、案件管理部161は、割当結果をタスク実行管理情報157に登録する。本実施形態においては、
図10に示すように、案件A008のそれぞれのタスクに対して担当者A、D、Aが割り当てられる。
【0055】
ステップS6において、案件管理部161は、割当結果に基づき案件管理情報156の更新を行う。更新は、タスク実行管理情報157(
図10)を参照して実行される。
【0056】
本実施形態においては、案件A008のタスクT11を担当者Aが9月1日の9:00~9:30にて作業実施することが予測されるため、案件管理部161は、案件管理情報156の案件名A008の完了タスクをT11、次タスクをT12、タスク完了日時を9/1の9:30へと更新する(
図9(b))。
【0057】
次に、タスクT12を担当者Dが9月1日の9:30~10:10にて作業実施することが予測されるため、案件管理部161は、案件管理情報156において案件A008の完了タスクをT12、次タスクをT13、タスク完了日時を9月1日の10:10に更新する(
図9(c))。
【0058】
さらに、タスクT13を担当者Aが9月1日の10:10~10:50にて作業実施することが予測されるため、案件管理部161は、案件管理情報156において案件A008の完了タスクをT31、次タスクなし、タスク完了日時を9月1日の10:50へと更新する(
図9(d))。
【0059】
ステップS7において案件管理部161は、タスク実行管理情報157に基づいて、担当者情報155を更新する。本実施形態を用いて説明すると、
図8(b)に示すように、案件管理部161は、タスク実行管理情報157の各担当者の稼働時間に基づき、担当者情報155において、担当者Aの9月1日の稼働時間を9:30~10:10、10:55~17:00に更新する。同様に、案件管理部161は、担当者Dの9月1日の稼働時間を9:00~9:30、10:10~17:00に変更する。
【0060】
ステップS8において案件管理部161は、予測日において他に割当て可能な案件があるか確認する。案件がある場合(S8:YES)、案件管理部161は、業務負荷予測処理をステップS2に戻し、別の新たな案件について担当者の割り当てを行う。
【0061】
本実施形態においては、例えば案件A008に対する担当者の割当が完了した後は、案件A001~A003、A007、A009に対して順次担当者の割り当てを行う。そして、割当すべき案件がなくなった場合、または割当てできる担当者がいなくなった場合(S8:NO)、案件管理部161は、業務負荷予測処理をステップS9に進める。
【0062】
ステップS9において、集計部162は、予測日におけるタスクの実行結果を集計する。集計部162は、集計情報158として、予測日における各タスクの実行数、未実行数を集計する。さらに集計部162は、集計の結果を、集計結果テーブルに出力する。
図11の例では、集計情報158のうち、ビジネスプロセスX1について集計した結果を示しているが、X2、X3に対しても同様の集計、出力がなされる。予測日における未実行数に前の日までに残った未実行数を加算して表示している。なお、予測日における未実行数のみを表示してもよい。
【0063】
ステップS10において、集計部162は、シミュレーション定義情報151(
図4)を参照し、予測日とシミュレーションの期間の最終日とが一致するかを確認する。一致しない場合(S10:NO)、業務負荷予測処理はステップS1に戻され、予測日が新たに設定される。一致する場合(S10:YES)、集計部162は業務負荷予測処理をステップS11に進める。
【0064】
ステップS11において、集計部162は、高負荷箇所の検出を行う。詳細には、集計部162は、BP定義情報152(
図5)の負荷基準と、集計情報158の未実行数とを比較し、負荷の高低を判断する。
【0065】
未実行数が負荷基準よりも高い場合、集計部162は、警告をユーザに対して発出し、注意を促す。
図11の例を用いると、タスクT12の未実行数は15であり、負荷基準10よりも高くなっている。これは、タスクの未実行数を許容すべき数を超えていることを意味する。そのため集計部162は警告を発出し、BP名X1のタスクT12において、9月1日に高負荷状態が発生していることを、ユーザに対して知らせる。
【0066】
警告を受けたユーザは、どのタスクにおいてどの程度の高負荷状態が発生していること確認することができる。ユーザは、担当者の割当、稼働時間等を確認し、新たな担当者を用意したり、案件の発生日時を後ろ倒しにしたりするなどの措置を講ずることができる。
【0067】
以上の各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために具体例を挙げて記述したものであり、記述した全ての構成を備える構成に必ずしも限定されるものではない。本発明は以上に説明した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
【0068】
例えば、タスクの割当を実行する際には、担当者の稼働時間とタスクの処理時間を比較することによって割当を行っていた。本発明では、これに限らず、リソースの処理能力とタスクの処理負荷を比較することによって割当を行うことができる。例えば、リソースがコンピュータ等の装置の場合、装置の単位時間当たりの処理能力や一日の処理能力と、タスクの処理量を比較することによって、リソースの割り当てを行うことができる。
【0069】
また、ステップS11において、集計部162は、未実行数の増加率を算出し、基準値と比較する構成としてもよい。例えばシミュレーションの予測日において、予測日の前日よりも未実行数が急増し、未実行数の増加分が基準値を超える状態となった場合、案件発生に伴って生じる業務上の負荷が上昇したと考えることができる。このような考慮に基づき、集計部162は、警告を発出し何らかの措置をユーザに促す構成とすることができる。
【0070】
また、上記実施形態において、業務管理システム10は業務負荷を予測するシミュレーションを実行していたが、シミュレーションだけではなく、実際に発生した案件を入力し、日々の業務負荷を把握する処理を実行してもよい。
【0071】
本明細書により、少なくとも以下の事項が明らかにされる。すなわち、業務管理システム10は、所定業務を構成する各タスクの所要時間、および所定期間における複数のリソース各々の稼働可能時間、の各情報を格納する記憶部と、制御部とを備える。前記制御部は、その情報処理方法において、前記各タスクの所要時間および前記稼働可能時間の各情報に基づき、前記各タスクに前記リソースを順次割り当てて担当リソースを決定する割当処理と、前記各タスクのそれぞれに関して、当該タスクの担当リソースによる実行数を所定のタイミングで集計する処理と、前記集計の結果を出力する処理を実行してもよい。
【0072】
このような処理を行うことにより、例えば担当者が複数の業務を兼任している場合においても、業務管理システム10は、適切に負荷を算出し、集計することができる。
【0073】
また実施形態において、前記制御部は、前記実行数の集計に伴い、当該タスクの完了予定時における未実行数を集計し、前記集計の結果として、前記実行数および前記未実行数の情報を出力してもよい。
【0074】
業務管理システム10は、未実行数を集計することにより、業務の処理が適切に実行できているかを適切に把握することができる。あるいは、残務がどのくらい残っているかを把握できる。
【0075】
また実施形態において、前記制御部は、前記未実行数を閾値と比較する処理と、前記未実行数が前記閾値を超える場合、警告を発出する処理と、をさらに実行してもよい。
【0076】
未実行数を閾値と比較することにより、業務管理システム10は、業務負荷が課題になっている状態を適切に把握することが可能である。また、警告を発出することにより、ユーザに対して適切な対応を促すことができる。
【0077】
また実施形態において、前記制御部は、一定期間における前記未実行数の増加率を取得する処理と、前記増加率が基準を超えた場合に警告を発出する処理と、をさらに実行してもよい。
【0078】
例えばシミュレーションを実行する期間において未実行数が急増し、基準値を超える状態となった場合、案件発生に伴って生じる業務上の負荷が上昇したと考えることができる。このような考慮に基づき、集計部162は、警告を発出して何らかの措置をユーザに促すことができる。
【0079】
また実施形態において、前記記憶部には、前記複数のリソースの優先順位がさらに格納され、前記制御部は、前記割当処理において、前記複数のリソースを前記優先順位に従って前記各タスクに割当ててもよい。
【0080】
優先順位に従ってリソースを割り当てるため、能力の高いリソースや、疲れの少ないリソースを優先して割り当てるなどの処理が可能となる。そのため、業務の処理効率を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
情報処理システム 1
業務管理システム 10
ユーザ装置 30