(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20231215BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20231215BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20231215BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20231215BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20231215BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20231215BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231215BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231215BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20231215BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657F
H01L29/78 657A
H01L29/78 652D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 652M
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/78 655D
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
H01L29/78 658A
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
(21)【出願番号】P 2020118986
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】新田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池田 宗謙
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 真也
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073911(JP,A)
【文献】特開2012-129504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/861
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と逆側である第2主面とを有し、IGBT領域と、ダイオード領域と、前記IGBT領域及び前記ダイオード領域の間の境界領域とが面内方向に沿って設けられた、第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面上に設けられたエミッタ電極と、
前記半導体基板の前記第2主面上に設けられたコレクタ電極と
を備え、
前記半導体基板は、
前記ダイオード領域の前記第1主面側に設けられた、第2導電型の第1アノード層、及び、前記第1アノード層よりも第2導電型の不純物濃度が高い第2導電型の第1コンタクト層と、
前記ダイオード領域の前記第2主面側に設けられた第1導電型のカソード層と、
前記ダイオード領域の前記第2主面側に前記カソード層と前記面内方向で隣接して設けられた第2導電型の第1キャリア排出層と、
前記境界領域の前記第1主面側に設けられた、第2導電型の第2アノード層、及び、前記第2アノード層よりも第2導電型の不純物濃度が高い第2導電型の第2コンタクト層と、
前記境界領域の前記第2主面側に設けられた第2導電型のコレクタ層と
を含み、
前記第2アノード層の第2導電型の不純物濃度が、前記第1アノード層の第2導電型の不純物濃度よりも低
い、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1キャリア排出層の最大幅が10μm以下である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置であって、
平面視において、前記第1キャリア排出層の面積は、前記第1キャリア排出層の面積と前記カソード層の面積との和の20%以上である、半導体装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
平面視における前記第1キャリア排出層は、長辺と、当該長辺の長さの1/2以下の長さを有する短辺とを含む、半導体装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記ダイオード領域における前記エミッタ電極が前記半導体基板に接している面積を基準とした前記第1コンタクト層の占有面積比率が0.8以下である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記半導体基板は、
前記ダイオード領域の前記第1主面側に前記第1アノード層及び前記第1コンタクト層の少なくともいずれかと前記面内方向で隣接して設けられた、第1導電型の第2キャリア排出層をさらに含む、半導体装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記境界領域における前記エミッタ電極が前記半導体基板に接している面積を基準とした前記第2コンタクト層の占有面積比率が、前記ダイオード領域における前記エミッタ電極が前記半導体基板に接している面積を基準とした前記第1コンタクト層の占有面積比率よりも小さい、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一種であるパワーデバイスなどの電力用半導体装置は、家電製品や自動車、鉄道など幅広い分野で用いられている。これらの分野では、パワーデバイスで構築されるインバータ回路によって、誘導モータなどの誘導性負荷を駆動する場合が多い。これらの用途のインバータ装置は、IGBT(insulated gate bipolar transistor)またはMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などのスイッチング素子、及び、還流ダイオード(以下、単に「ダイオード」と記す)などの電力用半導体装置の素子を用いて構成される。
【0003】
インバータ装置は、高効率かつ小電力であることが求められるため、搭載する電力用半導体装置の高性能化及び低コスト化が市場から要求されている。これらの要求に応えるため、逆導通型IGBT(RC-IGBT:Reverse Conducting IGBT)が開発されている。RC-IGBTでは、IGBTとダイオードとを同一の半導体基板に内蔵して一体化したものであり、搭載素子の面積縮小、搭載素子数の削減、素子搭載面積の削減、熱抵抗の低減などが得られる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RC-IGBTのIGBT及びダイオードがそれぞれ設けられたIGBT領域及びダイオード領域のうち、ダイオード領域では、還流時のオン状態から、オフ状態に移行する際に、リカバリー動作が発生する。ダイオードがオン状態からオフ状態に変わる際、オン時にRC-IGBT内に蓄積された電子キャリア及びホールキャリアが排出されるため、カソード側からアノード側に逆方向電流が流れるリカバリー動作が行われる。リカバリー中に流れる逆方向の電流は、リカバリー電流と呼ばれ、リカバリー電流の電流値と、印加電圧値と、電流が流れる時間とに応じて発生する電力損失は、リカバリー損失と呼ばれる。
【0006】
一般的に、低いリカバリー損失を実現するためには、還流中にRC-IGBT内に蓄積されるキャリアを抑制し、リカバリー電流を低減することが必要である。そのような構成として、ダイオード領域の裏面の一部にp型ホール排出領域を設けることにより、順方向動作中に当該裏面からのホールキャリアの排出を促進してキャリア蓄積を抑制することが考えられる。しかしながら、p型ホール排出領域を設けた場合でも、ダイオード領域に近接するIGBT領域からダイオード領域へのホール流入が多い場合、効果的にリカバリー損失を低減できないという問題があった。
【0007】
そこで、本開示は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、リカバリー損失を効果的に低減可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と逆側である第2主面とを有し、IGBT領域と、ダイオード領域と、前記IGBT領域及び前記ダイオード領域の間の境界領域とが面内方向に沿って設けられた、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の前記第1主面上に設けられたエミッタ電極と、前記半導体基板の前記第2主面上に設けられたコレクタ電極とを備え、前記半導体基板は、前記ダイオード領域の前記第1主面側に設けられた、第2導電型の第1アノード層、及び、前記第1アノード層よりも第2導電型の不純物濃度が高い第2導電型の第1コンタクト層と、前記ダイオード領域の前記第2主面側に設けられた第1導電型のカソード層と、前記ダイオード領域の前記第2主面側に前記カソード層と前記面内方向で隣接して設けられた第2導電型の第1キャリア排出層と、前記境界領域の前記第1主面側に設けられた、第2導電型の第2アノード層、及び、前記第2アノード層よりも第2導電型の不純物濃度が高い第2導電型の第2コンタクト層と、前記境界領域の前記第2主面側に設けられた第2導電型のコレクタ層とを含み、前記第2アノード層の第2導電型の不純物濃度が、前記第1アノード層の第2導電型の不純物濃度よりも低い。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第2アノード層の第2導電型の不純物濃度が、第1アノード層の第2導電型の不純物濃度よりも低い、または、境界領域におけるエミッタ電極が半導体基板に接している面積を基準とした第2コンタクト層の占有面積比率が、ダイオード領域におけるエミッタ電極が半導体基板に接している面積を基準とした第1コンタクト層の占有面積比率よりも小さい。このような構成によれば、リカバリー損失を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置の別の構成を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図4】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域の構成を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域の構成を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る半導体装置のダイオード領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図7】実施の形態1に係る半導体装置のダイオード領域の構成を示す断面図である。
【
図8】実施の形態1に係る半導体装置のダイオード領域の構成を示す断面図である。
【
図9】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図10】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界領域の構成を示す断面図である。
【
図11】実施の形態1に係る半導体装置の終端領域の構成を示す断面図である。
【
図12】実施の形態1に係る半導体装置の終端領域の構成を示す断面図である。
【
図13】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図14】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図15】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図16】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図17】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図18】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図19】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図20】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図21】実施の形態2に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図22】実施の形態3に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界領域の構成を示す断面図である。
【
図23】実施の形態3に係る半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図24】実施の形態4に係る半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図25】実施の形態5に係る半導体装置のダイオード領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図26】実施の形態6に係る半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図27】実施の形態7に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の各実施の形態で説明される特徴は例示であり、すべての特徴は必ずしも必須ではない。また、以下に示される説明では、複数の実施の形態において同様の構成要素には同じまたは類似する符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「表」または「裏」などの特定の位置と方向は、実際の実施時の方向とは必ず一致しなくてもよい。また、ある部分が別部分よりも濃度が高いことは、例えば、ある部分の濃度の平均が、別部分の濃度の平均よりも高いこと、または、ある部分の濃度の最大値が、別部分の濃度の最大値よりも高いことを意味するものとする。
【0012】
また、以下の説明において、n及びpは半導体の導電型を示し、本開示においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。また、n-は不純物濃度がnよりも低濃度であることを示し、n+は不純物濃度がnよりも高濃度であることを示す。同様に、p-は不純物濃度がpよりも低濃度であることを示し、p+は不純物濃度がpよりも高濃度であることを示す。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1に係るRC-IGBTである半導体装置の構成を示す平面図である。また、
図2は、本実施の形態1に係るRC-IGBTである半導体装置の別構成を示す平面図である。
図1に示す半導体装置100は、IGBT領域10とダイオード領域20とがストライプ状に並んで設けられており、以下の説明では単に「ストライプ型」と呼ぶこともある。
図2に示す半導体装置101は、ダイオード領域20が縦方向と横方向に複数設けられ、ダイオード領域20の周囲にIGBT領域10が設けられており、以下の説明では単に「アイランド型」と呼ぶこともある。
【0014】
<ストライプ型の全体平面構造>
図1において、半導体装置100は、1つの半導体装置内にIGBT領域10とダイオード領域20とを備えている。IGBT領域10及びダイオード領域20のそれぞれは、半導体装置100の一端側から他端側に延設されており、IGBT領域10及びダイオード領域20の延設方向と直交する方向に交互にストライプ状に設けられている。
図1では、3個のIGBT領域10と、2個のダイオード領域20とが示され、全てのダイオード領域20がIGBT領域10で挟まれた構成が示されている。しかしながら、IGBT領域10及びダイオード領域20の数はこれに限るものでなく、IGBT領域10の数は3個以上でも3個以下でもよく、ダイオード領域20の数も2個以上でも2個以下でもよい。また、
図1のIGBT領域10とダイオード領域20との場所を入れ替えた構成であってもよく、全てのIGBT領域10がダイオード領域20に挟まれた構成であってもよい。また、IGBT領域10とダイオード領域20とがそれぞれ1つずつ互いに隣り合って設けられた構成であってもよい。
【0015】
図1に示すように、紙面下側のIGBT領域10に隣接してパッド領域40が設けられている。パッド領域40は半導体装置100を制御するための制御パッド41が設けられる領域である。以下の説明では、IGBT領域10及びダイオード領域20を合わせてセル領域と呼ぶこともある。セル領域及びパッド領域40を合わせた領域の周囲には半導体装置100の耐圧保持のために終端領域30が設けられている。終端領域30には、周知の耐圧保持構造が適宜設けられてもよい。耐圧保持構造には、例えば、半導体装置100のおもて面側である第1主面側に、p型半導体のp型終端ウェル層でセル領域を囲ったFLR(Field Limmiting Ring)や濃度勾配をつけたp型ウェル層でセル領域を囲ったVLD(Variation of Lateral Doping)が設けられてもよい。なお、FLRに用いられるリング状のp型終端ウェル層の数やVLDに用いられる濃度分布は、半導体装置100の耐圧設計によって適宜選択されればよい。また、パッド領域40のほぼ全域に亘ってp型終端ウェル層を設けてもよく、パッド領域40にIGBTセルやダイオードセルを設けてもよい。
【0016】
制御パッド41は、例えば、電流センスパッド41a、ケルビンエミッタパッド41b、ゲートパッド41c、温度センスダイオードパッド41d,41eの少なくともいずれか1つを含む。
【0017】
電流センスパッド41aは、半導体装置100のセル領域に流れる電流を検知するための制御パッドである。半導体装置100のセル領域に電流が流れる際に、セル領域全体に流れる電流の数分の1から数万分の1の電流がセル領域の一部のIGBTセルまたはダイオードセルに流れるように、電流センスパッド41aは当該セルに電気的に接続される。
【0018】
ケルビンエミッタパッド41b及びゲートパッド41cは、半導体装置100をオンオフ制御するためのゲート駆動電圧が印加される制御パッドである。ケルビンエミッタパッド41bはIGBTセルのp型ベース層に電気的に接続される。ゲートパッド41cはIGBTセルのゲートトレンチ電極に電気的に接続される。ケルビンエミッタパッド41bとp型ベース層とはp+型コンタクト層を介して電気的に接続されてもよい。温度センスダイオードパッド41d,41eは、半導体装置100に設けられた温度センスダイオードのアノード及びカソードに電気的に接続された制御パッドである。セル領域内に設けられた図示しない温度センスダイオードのアノードとカソードとの間の電圧が、温度センスダイオードパッド41d,41eを介して測定され、当該電圧に基づいて半導体装置100の温度が測定される。
【0019】
<アイランド型の全体平面構造>
図2において、半導体装置101は、1つの半導体装置内にIGBT領域10とダイオード領域20とを備えている。ダイオード領域20は、半導体装置101内の縦方向及び横方向のそれぞれに複数並んで配置されており、ダイオード領域20の周囲はIGBT領域10に取り囲まれている。つまり、IGBT領域10内に複数のダイオード領域20がアイランド状に設けられている。
図2では、ダイオード領域20は紙面左右方向に4列、紙面上下方向に2行のマトリクス状に設けた構成が示されている。しかしながら、ダイオード領域20の個数及び配置はこれに限るものではなく、IGBT領域10内に1つまたは複数のダイオード領域20が点在して設けられ、それぞれのダイオード領域20の周囲がIGBT領域10に囲まれた構成であればよい。
【0020】
図2に示すように、IGBT領域10の紙面下側に隣接してパッド領域40が設けられている。パッド領域40は半導体装置101を制御するための制御パッド41が設けられる領域である。ここでの説明でも、IGBT領域10及びダイオード領域20を合わせてセル領域と呼ぶ。セル領域及びパッド領域40を合わせた領域の周囲には半導体装置101の耐圧保持のために終端領域30が設けられている。終端領域30には、周知の耐圧保持構造が適宜設けられてもよい。耐圧保持構造には、例えば、半導体装置101のおもて面側である第1主面側に、p型半導体のp型終端ウェル層でセル領域及びパッド領域40を合わせた領域を囲ったFLRや濃度勾配をつけたp型ウェル層でセル領域を囲ったVLDが設けられてもよい。なお、FLRに用いられるリング状のp型終端ウェル層の数やVLDに用いられる濃度分布は、半導体装置101の耐圧設計によって適宜選択されればよい。また、パッド領域40のほぼ全域に亘ってp型終端ウェル層を設けてもよく、パッド領域40にIGBTセルやダイオードセルを設けてもよい。
【0021】
制御パッド41は、例えば、電流センスパッド41a、ケルビンエミッタパッド41b、ゲートパッド41c、温度センスダイオードパッド41d,41eの少なくともいずれか1つを含む。
【0022】
電流センスパッド41aは、半導体装置101のセル領域に流れる電流を検知するための制御パッドである。半導体装置101のセル領域に電流が流れる際に、セル領域全体に流れる電流の数分の1から数万分の1の電流がセル領域の一部のIGBTセルまたはダイオードセルに流れるように、電流センスパッド41aは当該セルに電気的に接続される。
【0023】
ケルビンエミッタパッド41b及びゲートパッド41cは、半導体装置101をオンオフ制御するためのゲート駆動電圧が印加される制御パッドである。ケルビンエミッタパッド41bはIGBTセルのp型ベース層及びn+型エミッタ層に電気的に接続される。なお、n+型エミッタ層はn+型ソース層と呼ばれることもある。ゲートパッド41cはIGBTセルのゲートトレンチ電極に電気的に接続される。ケルビンエミッタパッド41bとp型ベース層とはp+型コンタクト層を介して電気的に接続されてもよい。温度センスダイオードパッド41d,41eは、半導体装置101に設けられた温度センスダイオードのアノード及びカソードに電気的に接続された制御パッドである。セル領域内に設けられた図示しない温度センスダイオードのアノードとカソードとの間の電圧が、温度センスダイオードパッド41d,41eを介して測定され、当該電圧に基づいて半導体装置101の温度が測定される。
【0024】
<IGBT領域10>
図3は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域10の構成を示す部分拡大平面図である。具体的には、
図3は、
図1に示した半導体装置100または
図2に示した半導体装置101における破線82で囲った領域を拡大して示した図である。
【0025】
また、
図4及び
図5は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域10の構成を示す断面図である。具体的には、
図4は、
図3に示した半導体装置100,101の一点鎖線A-Aにおける断面図であり、
図5は、
図3に示した半導体装置100,101の一点鎖線B-Bにおける断面図である。
【0026】
図3に示すように、IGBT領域10には、アクティブトレンチゲート11とダミートレンチゲート12とがストライプ状に設けられている。半導体装置100では、アクティブトレンチゲート11及びダミートレンチゲート12は、IGBT領域10の長手方向に延設されており、IGBT領域10の長手方向がアクティブトレンチゲート11及びダミートレンチゲート12の長手方向に対応している。一方、半導体装置101では、IGBT領域10に長手方向と短手方向の区別が特段にないが、紙面左右方向がアクティブトレンチゲート11及びダミートレンチゲート12の長手方向に対応してもよく、紙面上下方向がアクティブトレンチゲート11及びダミートレンチゲート12の長手方向に対応してもよい。
【0027】
アクティブトレンチゲート11は、半導体基板のトレンチ内にゲートトレンチ絶縁膜11bを介してゲートトレンチ電極11aが設けられて構成されている。ダミートレンチゲート12は、半導体基板のトレンチ内にダミートレンチ絶縁膜12bを介してダミートレンチ電極12aが設けられて構成されている。アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11aは、ゲートパッド41cに電気的に接続される。ダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aは、半導体装置100,101の第1主面上に設けられるエミッタ電極に電気的に接続される。
【0028】
n+型エミッタ層13が、アクティブトレンチゲート11の幅方向の両側にゲートトレンチ絶縁膜11bに接して設けられる。n+型エミッタ層13は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、そのn型不純物の濃度は、例えば1.0E+17/cm3~1.0E+20/cm3である。n+型エミッタ層13は、アクティブトレンチゲート11の延設方向に沿って、p+型コンタクト層14と交互に設けられる。また、p+型コンタクト層14は、隣り合った2つのダミートレンチゲート12の間にダミートレンチ絶縁膜12bに接して設けられる。p+型コンタクト層14は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、そのp型不純物の濃度は、例えば1.0E+15/cm3~1.0E+20/cm3である。
【0029】
図3に示すように半導体装置100,101のIGBT領域10では、3つのアクティブトレンチゲート11が並んだ隣に、3つのダミートレンチゲート12が並んでいる。そして、その3つのダミートレンチゲート12が並んだ隣に、上記のものとは別の3つのアクティブトレンチゲート11が並んだ構成をしている。IGBT領域10は、このようにアクティブトレンチゲート11の組とダミートレンチゲート12の組とが交互に並んだ構成をしている。
図3では、1つのアクティブトレンチゲート11の組に含まれるアクティブトレンチゲート11の数を3としたが、1以上であればよい。また、1つのダミートレンチゲート12の組に含まれるダミートレンチゲート12の数は1以上であってもよく、ダミートレンチゲート12の数は0であってもよい。すなわち、IGBT領域10に設けられるトレンチゲートの全てがアクティブトレンチゲート11であってもよい。
【0030】
図4は、半導体装置100,101の
図3における一点鎖線A-Aでの断面図であり、IGBT領域10の断面図である。半導体装置100,101は、半導体基板からなるn
-型ドリフト層1を有している。n
-型ドリフト層1は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、そのn型不純物の濃度は、例えば1.0E+12/cm
3~1.0E+15/cm
3である。なお、上述したn
+型エミッタ層13のn型不純物の濃度は、n
-型ドリフト層1のn型不純物の濃度よりも高い。
【0031】
半導体基板の範囲は、
図4においては、n
+型エミッタ層13及びp
+型コンタクト層14からp型コレクタ層16までの範囲である。
図4においてn
+型エミッタ層13及びp
+型コンタクト層14の紙面上端を半導体基板の第1主面と呼び、p型コレクタ層16の紙面下端を半導体基板の第2主面と呼ぶ。半導体基板の第1主面は、半導体装置100,101のおもて面側の主面であり、半導体基板の第2主面は、半導体装置100,101の裏面側の主面である。半導体装置100,101は、セル領域のIGBT領域10において、第1主面と第1主面に対向する第2主面との間にn
-型ドリフト層1を有している。なお、半導体基板は、例えばウエハ及びエピタキシャル成長層の少なくともいずれか1つを含んで構成されてもよい。また、半導体基板は、高温下の安定動作が可能なワイドバンドギャップ半導体(炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド)を含んでもよい。
【0032】
図示しないが、IGBT領域10のn-型ドリフト層1の第1主面側に、n-型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高いn型キャリア蓄積層が設けられてもよい。n型キャリア蓄積層を設けることによって、IGBT領域10に電流が流れた際の通電損失を低減することができる。n型キャリア蓄積層とn-型ドリフト層1とを合わせてドリフト層と呼んでもよい。n型キャリア蓄積層は、n-型ドリフト層1を構成する半導体基板に、n型不純物をイオン注入し、その後アニールによって注入したn型不純物をn-型ドリフト層1である半導体基板内に拡散させることで形成される。
【0033】
n
-型ドリフト層1の第1主面側には、p型ベース層15が設けられている。n型キャリア蓄積層が設けられている構成では、n型キャリア蓄積層の第1主面側にp型ベース層15が設けられる。p型ベース層15は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、そのp型不純物の濃度は、例えば1.0E+12/cm
3~1.0E+19/cm
3である。p型ベース層15はアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接している。
図4の例では、p型ベース層15はダミートレンチゲート12のダミートレンチ絶縁膜12bにも接している。
【0034】
p型ベース層15の第1主面側の一部の領域には、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接するn+型エミッタ層13が設けられ、p型ベース層15の第1主面側の残りの領域には、p+型コンタクト層14が選択的に設けられている。n+型エミッタ層13及びp+型コンタクト層14は半導体基板の第1主面を構成している。なお、p+型コンタクト層14は、p型ベース層15よりもp型不純物の濃度が高い領域である。p+型コンタクト層14とp型ベース層15とを区別する必要がある場合にはそれぞれを個別に呼んでもよいし、p+型コンタクト層14とp型ベース層15とを合わせてp型ベース層と呼んでもよい。p+型コンタクト層14及びn+型エミッタ層13は、バリアメタル5を介してエミッタ電極6と接続されている。
【0035】
また、半導体装置100,101のn
-型ドリフト層1の第2主面側には、n
-型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高いn型バッファ層3が設けられている。n型バッファ層3は、半導体装置100,101がオフ状態のときにp型ベース層15から第2主面側に伸びる空乏層がパンチスルーするのを抑制するために設けられる。n型バッファ層3は、例えば、リン(P)またはプロトン(H
+)を注入して形成してよく、リン(P)及びプロトン(H
+)の両方を注入して形成してもよい。n型バッファ層3のn型不純物の濃度は、例えば1.0E+12/cm
3~1.0E+18/cm
3である。なお、半導体装置100,101は、n型バッファ層3が設けられずに、
図4で示したn型バッファ層3の領域にn
-型ドリフト層1が設けられた構成であってもよい。n型バッファ層3とn
-型ドリフト層1とを合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0036】
半導体装置100,101のn型バッファ層3の第2主面側には、p型コレクタ層16が設けられている。すなわち、p型コレクタ層16が、n-型ドリフト層1と第2主面との間に設けられている。p型コレクタ層16は、p+型コレクタ層と呼ばれてもよい。p型コレクタ層16は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、そのp型不純物の濃度は、例えば1.0E+16/cm3~1.0E+20/cm3である。p型コレクタ層16は半導体基板の第2主面を構成している。p型コレクタ層16は、IGBT領域10だけでなく、終端領域30にも設けられてもよい。p型コレクタ層16は、コレクタ電極7と接続されている。
【0037】
図4に示すように、半導体装置100,101のIGBT領域10には、半導体基板の第1主面からp型ベース層15を貫通し、n
-型ドリフト層1に達するトレンチが設けられている。いくつかのトレンチ内にゲートトレンチ絶縁膜11bを介してゲートトレンチ電極11aが設けられることでアクティブトレンチゲート11が構成されている。ゲートトレンチ電極11aは、ゲートトレンチ絶縁膜11bを介してn
-型ドリフト層1に対向している。また、いくつかのトレンチ内にダミートレンチ絶縁膜12bを介してダミートレンチ電極12aが設けられることでダミートレンチゲート12が構成されている。ダミートレンチ電極12aは、ダミートレンチ絶縁膜12bを介してn
-型ドリフト層1に対向している。
【0038】
アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bは、p型ベース層15及びn+型エミッタ層13に接している。ゲートトレンチ電極11aにゲート駆動電圧が印加されると、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接するp型ベース層15にチャネルが形成される。
【0039】
図4に示すように、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11aの上には層間絶縁膜4が設けられている。半導体基板の第1主面の層間絶縁膜4が設けられていない領域の上、及び層間絶縁膜4の上には、接触抵抗を低減可能なバリアメタル5が設けられている。バリアメタル5は、例えば、チタン(Ti)を含む導電体であってよく、具体的には、窒化チタンであってもよいし、チタンとシリコン(Si)とを合金化させたTiSiであってもよい。また、バリアメタル5は、シリサイド化によって形成されてもよい。
図4に示すように、バリアメタル5は、n
+型エミッタ層13、p
+型コンタクト層14及びダミートレンチ電極12aにオーミック接触し、n
+型エミッタ層13、p
+型コンタクト層14及びダミートレンチ電極12aと電気的に接続されている。一方、バリアメタル5は、層間絶縁膜4によってゲートトレンチ電極11aと電気的に絶縁されている。
【0040】
バリアメタル5の上には、エミッタ電極6が設けられる。エミッタ電極6は、例えば、アルミニウムシリコン合金(Al-Si系合金)などのアルミ合金で形成してもよく、アルミ合金で形成した電極上に、無電解めっき、または電解めっきでめっき膜を形成した複数層の金属膜からなる電極であってもよい。無電解めっき、または電解めっきで形成されるめっき膜は、例えば、ニッケル(Ni)めっき膜であってもよい。隣接する層間絶縁膜4の間などの微細な領域であって、エミッタ電極6では良好な埋め込みが得られない領域がある場合には、エミッタ電極6よりも埋込性が良好なタングステン膜を微細な領域に配置して、当該タングステン膜の上にエミッタ電極6を設けてもよい。なお、バリアメタル5を設けずに、n+型エミッタ層13、p+型コンタクト層14及びダミートレンチ電極12aの上にエミッタ電極6を設けてもよい。また、n+型エミッタ層13などのn型の半導体層の上のみにバリアメタル5を設けてもよい。バリアメタル5とエミッタ電極6とを合わせてエミッタ電極と呼んでよい。以上のように、エミッタ電極6は、半導体基板の第1主面上に設けられればよい。
【0041】
なお、
図4では、ダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上には層間絶縁膜4が設けられない構成を示したが、
図4の断面部分において、層間絶縁膜4はダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上に設けられてもよい。
図4の断面部分において、層間絶縁膜4がダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上に設けられた場合には、別の断面部分においてエミッタ電極6とダミートレンチ電極12aとが電気的に接続されればよい。
【0042】
p型コレクタ層16の第2主面側には、コレクタ電極7が設けられる。コレクタ電極7は、エミッタ電極6と同様、アルミ合金やアルミ合金とめっき膜との複数層で構成されていてもよい。コレクタ電極7はエミッタ電極6と異なる構成であってもよい。コレクタ電極7は、p型コレクタ層16にオーミック接触し、p型コレクタ層16と電気的に接続されている。以上のように、コレクタ電極7は、半導体基板の第2主面上に設けられればよい。
【0043】
図5は、半導体装置100,101の
図3における一点鎖線B-Bでの断面図であり、IGBT領域10の断面図である。
図4に示した一点鎖線A-Aでの断面部分とは異なり、
図5の一点鎖線B-Bでの断面部分では、アクティブトレンチゲート11に接し、半導体基板の第1主面側に設けられるn
+型エミッタ層13がない。つまり、
図3で示したn
+型エミッタ層13は、p型ベース層の第1主面側に選択的に設けられる。なお、ここでいうp型ベース層とは、p型ベース層15とp
+型コンタクト層14とを含む。
【0044】
<ダイオード領域20>
図6は、RC-IGBTである半導体装置のダイオード領域20の構成を示す部分拡大平面図である。具体的には、
図6は、
図1に示した半導体装置100,101における破線83で囲った領域を拡大して示した図である。
【0045】
また、
図7及び
図8は、RC-IGBTである半導体装置のダイオード領域20の構成を示す断面図である。具体的には、
図7は、
図6に示した半導体装置100,101の一点鎖線C-Cにおける断面図であり、
図8は、
図6に示した半導体装置100,101の一点鎖線D-Dにおける断面図である。
【0046】
ダイオードトレンチゲート21は、半導体装置100,101の第1主面に沿ってセル領域のダイオード領域20の一端側から対向する他端側に向かって延設されている。ダイオードトレンチゲート21は、ダイオード領域20のトレンチ内にダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してダイオードトレンチ電極21aが設けられることで構成される。ダイオードトレンチ電極21aはダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してn-型ドリフト層1に対向している。
【0047】
隣接する2つのダイオードトレンチゲート21の間には、p+型コンタクト層24と、それよりもp型不純物の濃度が低いp型アノード層25とが設けられている。p+型コンタクト層24は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、そのp型不純物の濃度は、例えば1.0E+15/cm3~1.0E+20/cm3である。p型アノード層25は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、そのp型不純物の濃度は、例えば1.0E+12/cm3~1.0E+19/cm3である。p+型コンタクト層24とp型アノード層25とはダイオードトレンチゲート21の長手方向に交互に設けられている。
【0048】
図7は、半導体装置100,101の
図6における一点鎖線C-Cでの断面図であり、ダイオード領域20の断面図である。半導体装置100,101は、ダイオード領域20においてもIGBT領域10と同じく半導体基板からなるn
-型ドリフト層1を有している。ダイオード領域20のn
-型ドリフト層1と、IGBT領域10のn
-型ドリフト層1とは連続して一体的に構成されており、同一の半導体基板に構成されている。
【0049】
半導体基板の範囲は、
図7においては、p
+型コンタクト層24からn
+型カソード層26までの範囲である。
図7においてp
+型コンタクト層24の紙面上端を半導体基板の第1主面と呼び、n
+型カソード層26の紙面下端を半導体基板の第2主面と呼ぶ。ダイオード領域20の第1主面とIGBT領域10の第1主面とは同一面に含まれ、ダイオード領域20の第2主面とIGBT領域10の第2主面とは同一面に含まれる。
【0050】
図7に示すように、ダイオード領域20においてもIGBT領域10と同様に、n
-型ドリフト層1の第2主面側にn型バッファ層3が設けられている。なお図示しないが、ダイオード領域20においてもIGBT領域10と同様に、n
-型ドリフト層1の第1主面側にn型キャリア蓄積層が設けられてもよい。
【0051】
ダイオード領域20に設けられるn型キャリア蓄積層及びn型バッファ層3は、IGBT領域10に設けられるn型キャリア蓄積層及びn型バッファ層3と同一の構成であってもよい。また、IGBT領域10と同じく、n-型ドリフト層1、n型キャリア蓄積層及びn型バッファ層3を合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0052】
n-型ドリフト層1の第1主面側には、第1アノード層であるp型アノード層25が設けられている。p型アノード層25は、n-型ドリフト層1と第1主面との間に設けられている。p型アノード層25は、バリアメタル5を介してエミッタ電極6と接続されている。p型アノード層25のp型不純物の濃度を、IGBT領域10のp型ベース層15のp型不純物の濃度と同じにして、p型アノード層25とp型ベース層15とを同時に形成してもよい。また、p型アノード層25のp型不純物の濃度を、IGBT領域10のp型ベース層15のp型不純物の濃度よりも低くして、ダイオード動作時にダイオード領域20に注入される正孔の量を減少させるように構成してもよい。ダイオード動作時に注入される正孔の量を減少させることでダイオード動作時のリカバリー損失を低減することができる。
【0053】
p型アノード層25の第1主面側には、第1コンタクト層であるp+型コンタクト層24が設けられている。p+型コンタクト層24のp型不純物の濃度は、IGBT領域10のp+型コンタクト層14のp型不純物の濃度と同じでもよく、異なってもよい。p+型コンタクト層24は半導体基板の第1主面を構成している。なお、p+型コンタクト層24は、p型アノード層25よりもp型不純物の濃度が高い領域であり、p+型コンタクト層24とp型アノード層25とを区別する必要がある場合にはそれぞれを個別に呼んでもよく、p+型コンタクト層24とp型アノード層25とを合わせてp型アノード層と呼んでもよい。
【0054】
半導体装置100,101のn型バッファ層3の第2主面側には、n+型カソード層26と、第1キャリア排出層であるp+型キャリア排出層27とが設けられている。すなわち、n+型カソード層26及びp+型キャリア排出層27が、n-型ドリフト層1と第2主面との間に設けられている。
【0055】
n
+型カソード層26は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、そのn型不純物の濃度は、例えば1.0E+16/cm
3~1.0E+21/cm
3である。p
+型キャリア排出層27は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、そのp型不純物の濃度は、例えば1.0E+16/cm
3~1.0E+20/cm
3である。p
+型キャリア排出層27は、n
+型カソード層26と半導体基板の面内方向で隣接して設けられている。
図7の例では、n
+型カソード層26に囲まれている。n
+型カソード層26及びp
+型キャリア排出層27は半導体基板の第2主面を構成しており、コレクタ電極7と接続されている。
【0056】
なお、p+型キャリア排出層27は、フォトレジストなどを用いてダイオード領域20の裏面にp型不純物を選択的に注入して形成されてもよい。または、p+型キャリア排出層27は、ダイオード領域20の裏面全体にp型不純物を注入した後、n+型カソード層26のn型不純物を注入し、両者の濃度差を用いてダイオード領域20の裏面に部分的に形成されてもよい。
【0057】
図7に示すように、半導体装置100,101のダイオード領域20には、半導体基板の第1主面からp型アノード層25を貫通し、n
-型ドリフト層1に達するトレンチが設けられている。ダイオード領域20のトレンチ内にダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してダイオードトレンチ電極21aが設けられることでダイオードトレンチゲート21が構成されている。ダイオードトレンチ電極21aは、ダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してn
-型ドリフト層1に対向している。
【0058】
図7に示すように、ダイオードトレンチ電極21a及びp
+型コンタクト層24の上にはバリアメタル5が設けられている。バリアメタル5は、ダイオードトレンチ電極21a及びp
+型コンタクト層24とオーミック接触し、ダイオードトレンチ電極21a及びp
+型コンタクト層24に電気的に接続されている。バリアメタル5は、IGBT領域10のバリアメタル5と同一の構成であってもよい。
【0059】
バリアメタル5の上には、エミッタ電極6が設けられる。ダイオード領域20に設けられるエミッタ電極6は、IGBT領域10に設けられたエミッタ電極6と連続して構成されている。なお、IGBT領域10の場合と同様に、バリアメタル5を設けずに、ダイオードトレンチ電極21a及びp+型コンタクト層24とエミッタ電極6とをオーミック接触させてもよい。つまり、エミッタ電極6は、実質的に半導体基板の第1主面上に設けられればよい。
【0060】
なお、
図7では、ダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上に
図4のような層間絶縁膜4が設けられない構成を示したが、
図7の断面部分において、層間絶縁膜4はダイオードトレンチ電極21aの上に設けられてもよい。
図7の断面部分において、層間絶縁膜4がダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上に設けられた場合には、別の断面部分においてエミッタ電極6とダイオードトレンチ電極21aとが電気的に接続されればよい。エミッタ電極6と電気的に接続されなかったダイオードトレンチ電極21aは、ゲートパッド41cと電気的に接続されてもよい。
【0061】
n+型カソード層26の第2主面側には、コレクタ電極7が設けられる。エミッタ電極6と同様、ダイオード領域20のコレクタ電極7は、IGBT領域10に設けられたコレクタ電極7と連続して構成されている。コレクタ電極7は、n+型カソード層26にオーミック接触し、n+型カソード層26に電気的に接続されている。つまり、コレクタ電極7は、半導体基板の第2主面上に設けられればよい。
【0062】
図8は、半導体装置100,101の
図6における一点鎖線D-Dでの断面図であり、ダイオード領域20の断面図である。
図7に示した一点鎖線C-Cでの断面部分とは異なり、
図8の一点鎖線D-Dでの断面部分では、p型アノード層25とバリアメタル5との間に、p
+型コンタクト層24が設けられておらず、p型アノード層25が半導体基板の第1主面である。つまり、
図7で示したp
+型コンタクト層24は、p型アノード層25の第1主面側に選択的に設けられる。
図8において、p型アノード層25は、バリアメタル5を介してエミッタ電極6と接続されている。
【0063】
<IGBT領域10とダイオード領域20との境界領域の構成>
図9及び
図10は、本実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域10とダイオード領域20との間の境界領域50の構成を示す平面図及び断面図である。具体的には、
図9は、
図1及び
図2に示した半導体装置100,101における一点鎖線E-E近傍の平面図であり、
図10は一点鎖線E-Eにおける断面図である。なお、ここでは説明の重複を避けるため、IGBT領域10及びダイオード領域20で説明した内容、特に構成要素の省略や呼び方などの内容を適宜省略する。
【0064】
図9及び
図10には、IGBT領域10及びダイオード領域20だけでなく、IGBT領域10とダイオード領域20との間の境界領域50も図示されている。本実施の形態1では、境界領域50は、IGBT領域10のトレンチゲートとダイオード領域20のトレンチゲートとの間の領域である。IGBT領域10と、ダイオード領域20と、境界領域50とは、半導体基板の面内方向に沿って半導体基板に設けられている。ここでは、境界領域50は、隣接する一組のトレンチゲート間に設けられているが、複数のトレンチゲートに跨る領域に設けられてもよく、また隣接する一組のトレンチゲート間の一部にだけ設けられてもよい。
【0065】
境界領域50のn-型ドリフト層1の第1主面側には、第2アノード層であるp-型アノード層55が設けられている。p-型アノード層55は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層である。境界領域50のp-型アノード層55のp型不純物の濃度は、ダイオード領域20のp型アノード層25のp型不純物の濃度よりも低い。
【0066】
p-型アノード層55の第1主面側には、第2コンタクト層であるp+型コンタクト層54が設けられている。p+型コンタクト層54は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層である。p+型コンタクト層54のp型不純物の濃度は、IGBT領域10のp+型コンタクト層14のp型不純物の濃度と同じでもよく、異なってもよい。なお、p+型コンタクト層54は、p-型アノード層55よりもp型不純物の濃度が高い領域である。
【0067】
境界領域50のn-型ドリフト層1の第2主面側には、n型バッファ層3が設けられている。なお、図示しないが、境界領域50においてもIGBT領域10と同様に、n-型ドリフト層1の第1主面側にn型キャリア蓄積層が設けられてもよい。
【0068】
n型バッファ層3の第2主面側には、コレクタ層であるp型コレクタ層56が設けられている。p型コレクタ層56は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層である。p型コレクタ層56のp型不純物の濃度は、IGBT領域10のp型コレクタ層16のp型不純物の濃度と同じでもよく、異なってもよい。p型コレクタ層56は、IGBT領域10のp型コレクタ層16と、ダイオード領域20のn+型カソード層26と、半導体基板の面内方向で隣接して設けられている。
【0069】
図10の断面部分においては、境界領域50の半導体基板の範囲は、p
+型コンタクト層54からp型コレクタ層56までの範囲であり、p
+型コンタクト層54は半導体基板の第1主面に含まれ、p型コレクタ層56は半導体基板の第2主面に含まれる。
図10と異なる断面部分においては、境界領域50の半導体基板の範囲は、p
-型アノード層55からp型コレクタ層56までの範囲であり、p
-型アノード層55は半導体基板の第1主面に含まれ、p型コレクタ層56は半導体基板の第2主面に含まれる。
【0070】
境界領域50においても、エミッタ電極6は、半導体基板の第1主面上に設けられており、p+型コンタクト層54及びp-型アノード層55は、バリアメタル5を介してエミッタ電極6と接続されている。境界領域50においても、コレクタ電極7は、半導体基板の第2主面上に設けられており、p型コレクタ層56はコレクタ電極7と接続されている。
【0071】
<終端領域30>
図11及び
図12は、RC-IGBTである半導体装置の終端領域の構成を示す断面図である。具体的には、
図11は、
図1または
図2における一点鎖線F-Fでの断面図であり、IGBT領域10から終端領域30にかけての断面図である。また、
図12は、
図1における一点鎖線G-Gでの断面図であり、ダイオード領域20から終端領域30にかけての断面図である。
【0072】
図11及び
図12に示すように、半導体装置100の終端領域30は、半導体基板の第1主面と第2主面との間にn
-型ドリフト層1を有している。終端領域30の第1主面及び第2主面は、それぞれIGBT領域10及びダイオード領域20の第1主面及び第2主面と同一面に含まれる。また、終端領域30のn
-型ドリフト層1は、IGBT領域10及びダイオード領域20のそれぞれのn
-型ドリフト層1と同一構成であり連続して一体的に構成されている。
【0073】
n-型ドリフト層1の第1主面側に、すなわち半導体基板の第1主面とn-型ドリフト層1との間に、p型終端ウェル層31が選択的に設けられている。p型終端ウェル層31は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、そのp型不純物の濃度は、例えば1.0E+14/cm3~1.0E+19/cm3である。p型終端ウェル層31は、IGBT領域10及びダイオード領域20が含まれるセル領域を取り囲んで設けられている。p型終端ウェル層31は複数のリング状に設けられており、p型終端ウェル層31が設けられる数は、半導体装置100,101の耐圧設計によって適宜選択される。また、p型終端ウェル層31のさらに外縁側にはn+型チャネルストッパ層32が設けられており、n+型チャネルストッパ層32は平面視においてp型終端ウェル層31を取り囲んでいる。
【0074】
終端領域30のn-型ドリフト層1と半導体基板の第2主面との間には、p型終端コレクタ層16aが設けられている。p型終端コレクタ層16aは、セル領域のIGBT領域10に設けられるp型コレクタ層16と連続して一体的に構成されている。したがって、p型終端コレクタ層16aを含めてp型コレクタ層と呼んでもよい。
【0075】
図1に示した半導体装置100のようにダイオード領域20が終端領域30と隣接して設けられる構成では、
図12に示すように、p型終端コレクタ層16aは、ダイオード領域20側の端部が距離Uだけダイオード領域20にはみ出して設けられている。このような構成によれば、ダイオード領域20のn
+型カソード層26とp型終端ウェル層31との距離を大きくすることができるので、p型終端ウェル層31がダイオードのアノードとして動作することを抑制することができる。距離Uは、例えば100μmであってもよい。
【0076】
半導体基板の第2主面上にはコレクタ電極7が設けられている。コレクタ電極7は、IGBT領域10及びダイオード領域20を含むセル領域から終端領域30まで連続して一体的に構成されている。
【0077】
一方、終端領域30の半導体基板の第1主面上にはセル領域から連続しているエミッタ電極6と、エミッタ電極6から構造的に分離された終端電極6aとが設けられる。エミッタ電極6と終端電極6aとは、半絶縁性膜33を介して電気的に接続されている。半絶縁性膜33は、例えば、sinSiN(semi-insulating Silicon Nitride:半絶縁性シリコン窒化膜)であってもよい。終端電極6aと、p型終端ウェル層31及びn+型チャネルストッパ層32のそれぞれとは、終端領域30の第1主面上に設けられた層間絶縁膜4のコンタクトホールを介して電気的に接続されている。また、終端領域30には、エミッタ電極6、終端電極6a及び半絶縁性膜33を覆う終端保護膜34が設けられている。終端保護膜34は、例えば、ポリイミドである。
【0078】
<RC-IGBTの製造方法>
図13~
図20は、RC-IGBTである半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図13~
図18は半導体装置100,101の
図10の境界領域50のおもて面側を主に形成する工程を示す図であり、
図19及び
図20は、半導体装置100,101の
図10の境界領域50の裏面側を主に形成する工程を示す図である。
【0079】
まず、
図13(a)に示すようにn
-型ドリフト層1を構成する半導体基板を準備する。半導体基板は、例えば、FZ(Floating Zone)法で作製されたFZウエハ、または、MCZ(Magnetic field applied CZochralki)法で作製されたMCZウエハであってもよく、n型不純物を含むn型ウエハであってもよい。半導体基板に含まれるn型不純物の濃度は、作製される半導体装置の耐圧によって適宜選択される。例えば、耐圧が1200Vの半導体装置では、半導体基板を構成するn
-型ドリフト層1の比抵抗が40~120Ω・cm程度となるようにn型不純物の濃度が調整される。
図13(a)に示すように、半導体基板を準備する工程では、半導体基板の全体がn
-型ドリフト層1となっている。このような半導体基板の第1主面側または第2主面側から、p型またはn型の不純物イオンを注入し、その後熱処理などによって半導体基板内に拡散させることで、p型またはn型の半導体層が適宜形成され、半導体装置100,101が製造される。
【0080】
図13(a)に示すように、n
-型ドリフト層1を構成する半導体基板は、IGBT領域10及びダイオード領域20になる領域と境界領域50とを有している。また、図示しないがIGBT領域10及びダイオード領域20になる領域と境界領域50との周囲には終端領域30などとなる領域を備えている。以下では、半導体装置100,101のIGBT領域10、ダイオード領域20及び境界領域50の構成の製造方法について主として説明するが、半導体装置100,101の終端領域30などについては周知の製造方法により作製してもよい。例えば、終端領域30に耐圧保持構造としてp型終端ウェル層31を有するFLRを形成する場合、半導体装置100,101のIGBT領域10、ダイオード領域20及び境界領域50を加工する前にp型不純物イオンを注入してFLRを形成してもよい。または、半導体装置100のIGBT領域10、ダイオード領域20または境界領域50にp型不純物をイオン注入する際に同時にp型不純物イオンを注入してFLRを形成してもよい。
【0081】
次に図示しないが、半導体基板の第1主面側からリン(P)などのn型不純物を注入してn型キャリア蓄積層を必要に応じて形成する。また、
図13(b)に示すように、半導体基板の第1主面側からボロン(B)などのp型不純物を注入してp型ベース層15、p型アノード層25及びp
-型アノード層55を形成する。図示しないn型キャリア蓄積層と、p型ベース層15、p型アノード層25及びp
-型アノード層55とは、半導体基板内に不純物イオンを注入した後、熱処理により不純物イオンを拡散させることで形成される。n型不純物及びp型不純物のイオン注入は、半導体基板の第1主面上にマスク処理を施した後に行われる。マスク処理は、半導体基板上にレジストを塗布し、写真製版技術を用いてレジストの所定の領域に開口を形成し、開口を介して半導体基板の所定の領域にイオン注入を施したり、エッチングを施したりするために、半導体基板上にマスクを形成する処理である。以上のマスク処理及びイオン注入により、図示しないn型キャリア蓄積層と、p型ベース層15、p型アノード層25及びp
-型アノード層55とが、IGBT領域10及びダイオード領域20の第1主面側に選択的に形成される。同様に、p型終端ウェル層31が、終端領域30に選択的に形成される。
【0082】
p型ベース層15及びp型アノード層25のp型不純物は、同時にイオン注入されてもよい。この場合、p型ベース層15とp型アノード層25との深さ及びp型不純物濃度は互いに同じとなる。また、マスク処理によりp型ベース層15及びp型アノード層25のp型不純物が別々にイオン注入されることで、p型ベース層15とp型アノード層25との深さ及びp型不純物濃度を互いに異ならせてもよい。
【0083】
p型アノード層25及びp
-型アノード層55の濃度が異なるp型不純物は、別々にイオン注入されてもよい。例えば、
図14に示すように、フォトレジスト58を用いて、ダイオード領域20にボロンなどのp型不純物を選択的に注入した後、境界領域50にボロンなどのp型不純物を選択的に注入する。このとき、境界領域50に注入されたp型不純物の濃度を、ダイオード領域20に注入されたp型不純物の濃度よりも小さくする。続いてフォトレジスト58などを除去した後、熱処理を行ってp型不純物を拡散させることにより、p型アノード層25及びp
-型アノード層55が形成される。
【0084】
上記とは別の方法として、異なる開口率のマスクを用いて、p型アノード層25及びp
-型アノード層55の濃度が異なるp型不純物が、同時にイオン注入されてもよい。例えば、
図15に示すように、異なる開口率のマスクを用いて、境界領域50の単位面積当たりのレジスト58の開口率を、ダイオード領域20の単位面積当たりのレジスト58の開口率よりも小さくする。この場合、いずれか一方または双方のマスクをメッシュ状のマスクとして、マスクの開口率を異ならせればよい。以上により、フォトレジスト58上からダイオード領域20及び境界領域50に照射されるp型不純物の濃度が同じであっても、境界領域50のp型不純物の濃度を、ダイオード領域20のp型不純物の濃度よりも小さくすることができる。続いてフォトレジスト58などを除去した後、
図15(b)に示すように熱処理を行ってp型不純物を拡散させることにより、p型アノード層25及びp
-型アノード層55が形成される。
【0085】
図13(b)に図示されない終端領域30のp型終端ウェル層31及びp型アノード層25のp型不純物は、同時にイオン注入されてもよい。この場合、p型終端ウェル層31とp型アノード層25との深さ及びp型不純物濃度は互いに同じとなる。または、マスク処理によりp型終端ウェル層31及びp型アノード層25のp型不純物が、別々にイオン注入されることで、p型終端ウェル層31とp型アノード層25との深さ及びp型不純物濃度を互いに異ならせてもよい。または、異なる開口率のマスクを用いて、p型終端ウェル層31及びp型アノード層25のp型不純物が、同時にイオン注入されることで、p型終端ウェル層31とp型アノード層25とのp型不純物濃度を互いに異ならせることも可能である。同様に、異なる開口率のマスクを用いて、p型終端ウェル層31、p型ベース層15、p型アノード層25及びp
-型アノード層55のp型不純物は、同時にイオン注入されてもよい。
【0086】
次に、マスク処理及びn型不純物注入により、IGBT領域10のp型ベース層15の第1主面側にn
+型エミッタ層13を選択的に形成する。注入するn型不純物は、例えば、砒素(As)またはリン(P)であってもよい。また
図16(a)に示すように、マスク処理及びp型不純物注入により、IGBT領域10のp型ベース層15の第1主面側にp
+型コンタクト層14を選択的に形成し、ダイオード領域20のp型アノード層25の第1主面側にp
+型コンタクト層24を選択的に形成する。同様に、境界領域50のp
-型アノード層55の第1主面側にp
+型コンタクト層54を選択的に形成する。注入するp型不純物は、例えばボロンまたはアルミ等であってもよい。
【0087】
次に、
図16(b)に示すように、半導体基板の第1主面側からp型ベース層15と、p型アノード層25と、p
-型アノード層55とを貫通し、n
-型ドリフト層1に達するトレンチ8を形成する。例えば、トレンチ8は、半導体基板上にSiO
2などの酸化膜を堆積させた後、マスク処理によってトレンチ8を形成する部分の酸化膜に開口を形成し、開口を形成した酸化膜をマスクとして半導体基板をエッチングすることで形成される。
図16(b)では、IGBT領域10、ダイオード領域20及び境界領域50でトレンチ8のピッチを同じにして形成しているが、IGBT領域10、ダイオード領域20及び境界領域50で互いにトレンチ8のピッチを異ならせてもよい。トレンチ8のピッチ及び平面視におけるパターンは、マスク処理のマスクパターンにより適宜変更することができる。
【0088】
次に、
図17(a)に示すように、酸素を含む雰囲気中で半導体基板を加熱してトレンチ8の内壁及び半導体基板の第1主面に酸化膜9を形成する。IGBT領域10のトレンチ8に形成された酸化膜9がアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11b及びダミートレンチゲート12のダミートレンチ絶縁膜12bである。また、ダイオード領域20のトレンチ8に形成された酸化膜9がダイオードトレンチ絶縁膜21bである。半導体基板の第1主面に形成された酸化膜9は、トレンチ8に形成された部分を除いて後の工程で除去される。
【0089】
次に、
図17(b)に示すように、トレンチ8内の酸化膜9に、CVD(chemical vapor deposition)などによってn型またはp型の不純物をドープしたポリシリコンを堆積させて、ゲートトレンチ電極11a、ダミートレンチ電極12a及びダイオードトレンチ電極21aを形成する。
【0090】
次に、
図18(a)に示すように、IGBT領域10のアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11a上に層間絶縁膜4を形成する。層間絶縁膜4は、例えば、SiO
2であってもよい。堆積させた層間絶縁膜4となる絶縁膜へのコンタクトホールの形成と、半導体基板の第1主面に形成されている酸化膜9の除去とをマスク処理によって行うことで、
図18(a)の層間絶縁膜4などを形成する。層間絶縁膜4のコンタクトホールは、n
+型エミッタ層13上、p
+型コンタクト層14上、p
+型コンタクト層24上、ダミートレンチ電極12a上及びダイオードトレンチ電極21a上に形成される。
【0091】
次に、
図18(b)に示すように、半導体基板の第1主面及び層間絶縁膜4上にバリアメタル5を形成し、さらにバリアメタル5の上にエミッタ電極6を形成する。バリアメタル5は、窒化チタンをPDV(physical vapor deposition)やCVDによって成膜することで形成される。
【0092】
エミッタ電極6は、例えば、スパッタリングや蒸着などのPVDによってアルミシリコン合金(Al-Si系合金)をバリアメタル5の上に堆積させて形成されてもよい。また、形成したアルミシリコン合金の上に、無電解めっきや電解めっきでニッケル合金(Ni合金)をさらに形成してエミッタ電極6としてもよい。エミッタ電極6をめっきで形成すると、エミッタ電極6として厚い金属膜を容易に形成することができるので、エミッタ電極6の熱容量を増加させて耐熱性を向上させることができる。なお、PVDでアルミシリコン合金からなるエミッタ電極6を形成した後に、めっき処理でニッケル合金をさらに形成する場合、ニッケル合金を形成するためのめっき処理は半導体基板の第2主面側の加工を行った後に実施されてもよい。
【0093】
次に、
図19(a)に示すように半導体基板の第2主面側を研削し、半導体基板を設計した所定の厚さに薄板化する。研削後の半導体基板の厚さは、例えば、80μm~200μmであってもよい。
【0094】
次に、
図19(b)に示すように、半導体基板の第2主面側からn型不純物を注入しn型バッファ層3を形成する。さらに、半導体基板の第2主面側からp型不純物を注入しp型コレクタ層16を形成する。n型バッファ層3はIGBT領域10、ダイオード領域20、終端領域30及び境界領域50などに形成されてもよく、IGBT領域10またはダイオード領域20のみに形成されてもよい。n型バッファ層3は、例えば、リン(P)イオンを注入して形成されてもよいし、プロトン(H
+)を注入して形成されてもよいし、プロトン及びリンの両方を注入して形成されてもよい。プロトンは比較的低い加速エネルギーで半導体基板の第2主面から深い位置にまで注入することができる。また、加速エネルギーを変えることでプロトンを注入する深さを比較的容易に変更することができる。このため、n型バッファ層3をプロトンで形成する際に、加速エネルギーを変更しながら複数回注入すると、リンで形成するよりも半導体基板の厚さ方向において厚いn型バッファ層3を形成することができる。
【0095】
また、リンはプロトンと比較して、n型不純物としての活性化率を高くすることができるので、リンでn型バッファ層3を形成すれば、薄板化された半導体基板でも空乏層のパンチスルーを抑制することができる。半導体基板をより一層薄板化するには、プロトン及びリンの両方を注入してn型バッファ層3を形成するのが好ましく、この際には、プロトンはリンよりも第2主面から深い位置に注入される。
【0096】
p型コレクタ層16は、例えば、ボロン(B)を注入して形成されてもよい。p型コレクタ層16は、境界領域50にも形成され、境界領域50のp型コレクタ層16がp型コレクタ層56となる。p型コレクタ層16は、終端領域30にも形成され、終端領域30のp型コレクタ層16がp型終端コレクタ層16aとなる。半導体基板の第2主面側からイオン注入した後に、第2主面にレーザーを照射してレーザーアニールすることで、注入したボロンが活性化しp型コレクタ層16が形成される。この際、半導体基板の第2主面から比較的浅い位置に注入されたリンも同時に活性化される。一方、プロトンは380℃~420℃といった比較的低いアニール温度で活性化されるので、プロトンを注入した後はプロトンの活性化のための工程以外で、半導体基板全体が380℃~420℃より高い温度にならないように留意する必要がある。レーザーアニールは、半導体基板の第2主面近傍のみを高温にできるため、プロトンを注入した後であってもn型不純物やp型不純物の活性化に用いることができる。
【0097】
次に、
図20(a)に示すように、ダイオード領域20の第2主面側にn
+型カソード層26を選択的に形成する。ダイオード領域20の第2主面側の部分のうち、n
+型カソード層26が形成されなかったp型コレクタ層16は、p
+型キャリア排出層27となる。
【0098】
n
+型カソード層26は、例えば、リン(P)を注入して形成されてもよい。n
+型カソード層26を形成するためのn型不純物の注入量は、p型コレクタ層16を形成するためのp型不純物の注入量より多い。
図20(a)では、第2主面からのp型コレクタ層16とn
+型カソード層26との深さを同じに示しているが、n
+型カソード層26の深さはp型コレクタ層16の深さ以上である。n
+型カソード層26が形成される領域では、p型不純物が注入された領域にn型不純物を注入して最終的にn型にする必要があるので、n
+型カソード層26が形成される領域の全てで注入されたp型不純物の濃度よりもn型不純物の濃度が高い。
【0099】
次に、
図20(b)に示すように、半導体基板の第2主面上にコレクタ電極7を形成する。コレクタ電極7は、第2主面のIGBT領域10、ダイオード領域20、終端領域30及び境界領域50などの全面に亘って形成される。また、コレクタ電極7は、半導体基板であるn型ウエハの第2主面の全面に亘って形成されてもよい。コレクタ電極7は、スパッタリングや蒸着などのPVDによって、アルミシリコン合金(Ai-Si系合金)やチタン(Ti)などを堆積させて形成されてもよく、アルミシリコン合金、チタン、ニッケルまたは金など複数の金属を積層させて形成されてもよい。また、PVDで形成した金属膜上に、無電解めっきや電解めっきで金属膜をさらに形成することによって、コレクタ電極7は形成されてもよい。
【0100】
以上のような工程により半導体装置100,101は作製される。複数の半導体装置100,101は、1枚のn型ウエハなどの半導体基板にマトリクス状に一体化された状態で作製される。このため、半導体装置100,101はレーザーダイシングやブレードダイシングにより個々に切り分けられる。
【0101】
<実施の形態1のまとめ>
以上のような本実施の形態1では、ダイオード領域20の第2主面側にp+型キャリア排出層27が設けられている。ダイオードの順方向動作時に、第1主面側のp型アノード層25から注入されたホールは、第2主面側のコレクタ電極7から排出される。この際、n+型カソード層26は、ホールに対してポテンシャルバリアとなるが、p+型キャリア排出層27はp型を有するため、ホールの排出がより効率的に行われ、n-型ドリフト層1内のホール蓄積量を抑えることができる。このため、リカバリー動作時にリカバリー損失を低減することができる。
【0102】
ここで、ダイオード領域20とIGBT領域10との間に、境界領域50がない構造では、ダイオードの順方向動作時に、IGBTのp型ベース層15からダイオード領域20にホールが流入するため、リカバリー動作時のリカバリー損失を効果的に低減することが難しい。これに対して本実施の形態1では、ダイオード領域20とIGBT領域10との間に境界領域50が設けられ、境界領域50の第1表面側には、ダイオード領域20のp型アノード層25よりもp型不純物の濃度が低いp-型アノード層55が設けられている。このため、境界領域50でのホール注入が少なく、ダイオード領域20へのホールの流入も抑えられるため、リカバリー損失を効果的に低減すること可能になる。
【0103】
<実施の形態2>
図21は、本実施の形態2に係る半導体装置のIGBT領域10とダイオード領域20との間の境界領域50の構成を示す平面図であり、具体的には
図9に対応する平面図である。
【0104】
ここで実施の形態1の
図9の構成では、境界領域50のp
+コンタクト層54及びp
-型アノード層55の面積と、ダイオード領域20のp
+コンタクト層24及びp型アノード層25の面積とはそれぞれ実質的に同じであった。このため、実施の形態1では、境界領域50におけるエミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp
+コンタクト層54の占有面積比率が、ダイオード領域20におけるエミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp
+コンタクト層24の占有面積比率と実質的に同じであった。
【0105】
これに対して本実施の形態2の
図21の構成では、境界領域50のp
+コンタクト層54の面積は、ダイオード領域20のp
+コンタクト層24の面積よりも小さくなっている。そして、境界領域50には、p
-型アノード層55の代わりに、p
-型アノード層55よりもp型不純物の濃度が高く、かつ、平面視での面積が大きいp型アノード層55aが設けられている。p型アノード層55aのp型不純物の濃度は、例えばp型アノード層25のp型不純物の濃度と同程度である。以上の結果、本実施の形態2では、境界領域50におけるエミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp
+コンタクト層54の占有面積比率が、ダイオード領域20におけるエミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp
+コンタクト層24の占有面積比率よりも小さくなっている。ただし、本実施の形態2に係る境界領域50は、p
+コンタクト層54とp型アノード層55aとを含む構成に限ったものではなく、実施の形態1と同様に、p
+コンタクト層54とp
-型アノード層55とを含む構成であってもよい。なお、それ以外の構成については、実施の形態1の構成と同様である。
【0106】
<実施の形態2のまとめ>
ダイオードの順方向動作時には、ダイオード領域20の第1主面側のp+コンタクト層24は、電子に対してポテンシャルバリアとなる。そして、エミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp+コンタクト層24の占有面積比率が大きいほど、電子の蓄積が多くなり、リカバリー損失が大きくなる。本実施の形態2では、ダイオード領域20とIGBT領域10との間に境界領域50が設けられ、境界領域50におけるエミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp+コンタクト層54の占有面積比率が比較的小さい。このため、境界領域50での電子注入が少なくなり、ダイオード領域20への電子の流入も抑えられるため、リカバリー損失を効果的に低減すること可能になる。
【0107】
<実施の形態3>
図22は、本実施の形態3に係る半導体装置のIGBT領域10とダイオード領域20との間の境界領域50の構成を示す断面図であり、具体的には
図10に対応する断面図である。本実施の形態3では、p
+型キャリア排出層27の面内方向における最大幅が10μm以下である。なお、その他の構成については、実施の形態1または実施の形態2の構成と同様である。
【0108】
実施の形態1で説明したように、p+型キャリア排出層27により、ダイオードの順方向動作時に、ホールの排出がより効率的に行われるため、n-型ドリフト層1内のホール蓄積量を抑えることができる。しかしながら、コレクタ電極7からの電子注入はn+型カソード層26からしか行われないため、ダイオード領域20内で電流密度が多少不均一になる。このため、リカバリー動作時に局所的な高電流密度化に起因するインパクトイオン化電流が生じやすく、リカバリー損失の増加を招く要因となりうる。
【0109】
図23は、リカバリー中のインパクトイオン化電流によるリカバリー損失の増加の影響をシミュレーションにて検証した結果を示す図である。
図23の結果は、ダイオード領域20の第2主面にてp
+型キャリア排出層27とn
+型カソード層26とが一定の距離間隔で繰り返される構造において、p
+型キャリア排出層27の幅であるWpと、繰り返しピッチとを振り分けてリカバリー損失を計算した結果である。繰り返しピッチは、
図23では示されていないが6μm~60μmの範囲である。縦軸は、インパクトイオン化を計算しない場合のリカバリー損失Err1と、インパクトイオン化を計算した場合のリカバリー損失Err2との比(=Err2/Err1)である。Err2/Err1が大きいほど、インパクトイオン化電流によるリカバリー損失の増加が多いことを表す。
【0110】
<実施の形態3のまとめ>
本実施の形態3では、p
+型キャリア排出層27の面内方向における最大幅、つまりWpが10μm以下である。このような構成によれば、
図23の計算結果から、インパクトイオン化電流によるリカバリー損失への影響を抑えることができ、効果的にリカバリー損失を低減できる。
【0111】
<実施の形態4>
本実施の形態4では、平面視において、p+型キャリア排出層27の面積は、p+型キャリア排出層27の面積とn+型カソード層26の面積との和の20%以上である。なお、それ以外の構成については、実施の形態1~3の構成と同様である。
【0112】
図24は、本実施の形態4において、p
+型キャリア排出層27の面積とn
+型カソード層26の面積との和を基準としたp
+型キャリア排出層27の面積比率と、リカバリー損失との関係をシミュレーションで計算した結果である。p
+型キャリア排出層27の面積比率が大きいほどリカバリー損失は低く、p
+型キャリア排出層27の面積比率が20%以上であれば、リカバリー損失の低減は飽和しており、ほぼ同等の損失低減効果を得ることができる。
【0113】
<実施の形態4のまとめ>
本実施の形態4では、p+型キャリア排出層27の面積は、p+型キャリア排出層27の面積とn+型カソード層26の面積との和の20%以上であるため、効果的にリカバリー損失を低減することができる。
【0114】
<実施の形態5>
図25(a)~
図25(c)のそれぞれは、本実施の形態5に係る半導体装置のダイオード領域20を拡大した平面図である。本実施の形態5では、平面視におけるp
+型キャリア排出層27は、長辺Wp1と、当該長辺Wp1の長さの1/2以下の長さを有する短辺Wp2とを含む。なお、それ以外の構成については、実施の形態1~4の構成と同様である。
【0115】
<実施の形態5のまとめ>
本実施の形態5では、p+型キャリア排出層27の短辺Wp2が比較的短いため、p+型キャリア排出層27の長辺Wp1を比較的長くすることによって、p+型キャリア排出層27の面積比率を比較的大きくすることができる。これにより、リカバリー時のダイナミックアバランシェを抑制することと、順方向動作時のキャリア密度を抑制することとを両立できるため、リカバリー損失を効果的に低減できる。
【0116】
<実施の形態6>
本実施の形態6では、ダイオード領域20におけるエミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp
+型コンタクト層24の占有面積比率が0.8以下である。なお、それ以外の構成については、実施の形態1~5の構成と同様である。
図26は、本実施の形態5において、ダイオード領域20におけるエミッタ電極6が半導体基板に接している面積を基準としたp
+型コンタクト層24の占有面積比率と、リカバリー損失(Err)との関係をシミュレーションで計算した結果である。p
+型コンタクト層24の占有面積比率が大きいほどリカバリー損失は大きく、p
+型コンタクト層24の占有面積比率が0.8(80%)を超えると、リカバリー損失は急激に増加することが分かる。
【0117】
<実施の形態6のまとめ>
上述したように、ダイオードの順方向動作時に、ダイオード領域20の第1主面側のp+型コンタクト層24は、電子に対してポテンシャルバリアとなる。このため、エミッタ電極6が半導体基板に接している面積に対するp+型コンタクト層24の面積が大きいほど、電子の蓄積が多くなり、リカバリー損失が大きくなる。本実施の形態6では、ダイオード領域20のp+型コンタクト層24の面積比率が0.8以下であるため、ダイオード領域20でのキャリア蓄積を抑制することが可能となり、リカバリー損失を効果的に低減することができる。
【0118】
<実施の形態7>
図27は、本実施の形態7に係る半導体装置のIGBT領域10とダイオード領域20との間の境界領域50の構成を示す平面図であり、具体的には
図9に対応する平面図である。本実施の形態7に係る半導体基板は、第2キャリア排出層であるn
+型キャリア排出層28をさらに含んでいる。このn
+型キャリア排出層28は、ダイオード領域20の第1主面側にp型アノード層25及びp
+型コンタクト層24の少なくともいずれかと面内方向で隣接して設けられている。
図27の例では、n
+型キャリア排出層28は、p型アノード層25及びp
+型コンタクト層24に囲まれている。
【0119】
<実施の形態7のまとめ>
ダイオードの順方向動作時に、半導体基板の第1主面側のn+型キャリア排出層28は、電子に対してポテンシャルバリアとならないので、第2主面側のn+型カソード層26から注入された電子が、n+型キャリア排出層28を通して効率的に排出される。このため、順方向動作時にダイオード領域20における電子の蓄積が少なくなり、リカバリー損失を効果的に低減することが可能になる。
【0120】
なお、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0121】
6 エミッタ電極、7 コレクタ電極、10 IGBT領域、20 ダイオード領域、24,54 p+型コンタクト層、25 p型アノード層、26 n+型カソード層、27 p+型キャリア排出層、28 n+型キャリア排出層、50 境界領域、55 p-型アノード層、56 p型コレクタ層。