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特許7403403宇宙状況監視事業装置、監視装置、および、地上設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】宇宙状況監視事業装置、監視装置、および、地上設備
(51)【国際特許分類】
   B64G 3/00 20060101AFI20231215BHJP
   B64G 1/68 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B64G3/00
B64G1/68
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020125132
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021524
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063923(WO,A1)
【文献】特開2015-202809(JP,A)
【文献】特開2019-031262(JP,A)
【文献】特開2013-129307(JP,A)
【文献】特開2005-229448(JP,A)
【文献】特開2018-144632(JP,A)
【文献】特開2020-082830(JP,A)
【文献】特開2002-220099(JP,A)
【文献】米国特許第09189451(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00- 3/00
G06T 7/60
H04B 7/14- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙を飛翔する宇宙物体の状況を表す宇宙物体情報を取得し、前記宇宙物体情報を管理する宇宙状況監視事業装置であって、
静止軌道を飛翔する監視装置と、
前記監視装置へコマンドを送信し、前記監視装置により取得された監視データを受信する地上設備と
を具備し、
前記地上設備は、
複数の宇宙物体の軌道情報を記録したカタログを具備し、
前記カタログに記録されている前記複数の宇宙物体から選択した宇宙物体の軌道情報に基づいて、前記宇宙物体の軌道情報に含まれる地球固定座標系の位置座標を指向して前記監視装置を動作させるコマンドを前記監視装置に送信し、
前記監視装置は、
前記地上設備から受信したコマンドに基づいて、前記コマンドにより指定された位置座標を指向して監視データを取得し、
前記監視装置は、
データ解析装置と、
データ再取得判断装置と、
自動監視制御装置と
を具備し、
前記データ解析装置は、
取得した監視データの輝度情報を数値化した輝度データを前記データ再取得判断装置に送信し、
前記データ再取得判断装置は、
前記輝度データが予め定めた輝度レベルの判定基準ないし輝度ヒストグラムの判定基準に合致した場合に前記自動監視制御装置に監視データを再取得するデータ再取得指示を送信し、
前記自動監視制御装置は、
前記データ再取得指示に基づいて、前記地上設備から予め受信した位置座標を自律的に変更した位置座標を生成して、生成した位置座標を指向し、監視データを取得する宇宙状況監視事業装置。
【請求項2】
宇宙を飛翔する宇宙物体の状況を表す宇宙物体情報を取得し、前記宇宙物体情報を管理する宇宙状況監視事業装置であって、
通信装置を具備して静止軌道を飛翔する監視装置と、
通信装置を具備する静止衛星と、
前記静止衛星と通信する地上設備を具備し、
前記地上設備は、
複数の宇宙物体の軌道情報を記録したカタログを具備し、
前記カタログに記録された前記複数の宇宙物体から選択した宇宙物体の軌道情報に基づき、前記宇宙物体の軌道情報に含まれる地球固定座標系の位置座標を指向して前記監視装置を動作させるコマンドを、前記静止衛星を経由する静止衛星経由で監視装置に送信し、
前記監視装置は、
前記静止衛星経由で前記地上設備から受信したコマンドに基づき、前記コマンドにより指定された位置座標を指向して監視データを取得し、取得した監視データを前記静止衛星経由で前記地上設備に送信し、
前記地上設備は、
前記監視装置から送信された監視データに基づき、データ再取得のための位置座標をコマンドに設定し、前記静止衛星経由で前記コマンドを前記監視装置に送信し、
前記監視装置は、
前記静止衛星経由で前記地上設備から受信した前記コマンドに基づき、前記コマンドにより指定された位置座標を指向して監視データを取得し、取得した監視データを前記静止衛星経由で前記地上設備に送信する宇宙状況監視事業装置。
【請求項3】
前記監視装置は、監視データを取得する監視機器を備え、
宇宙物体に対して東方へ移動しながら、Local Sun Time(LST)18:00以降翌朝LST06:00までの間に太陽光が当たらない側である地球の裏側の上空で、前記監視機器を動作させて、監視データを複数回取得する
請求項または請求項に記載の宇宙状況監視事業装置。
【請求項4】
前記監視装置は、監視データを取得する監視機器を備え、
宇宙物体に対して西方へ移動しながら、Local Sun Time(LST)06:00以降LST18:00までの間に太陽光が当たる側である地球の表側の上空で、前記監視機器を動作させて、監視データを複数回取得する
請求項または請求項に記載の宇宙状況監視事業装置。
【請求項5】
請求項に記載の宇宙状況監視事業装置が具備する監視装置。
【請求項6】
請求項から請求項のいずれか1項に記載の宇宙状況監視事業装置が具備する地上設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、宇宙状況監視事業装置、監視装置、地上設備、および、加減速物体追跡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デブリ増加に伴い宇宙物体の衝突リスクが増加している。
静止軌道を飛翔する宇宙物体を静止軌道の近傍を飛翔する人工衛星によって観測することができれば、その観測は衝突回避といったリスク対策に有効である。
光学的な観測装置を用いて観測が行われる場合、光学的な観測装置が観測対象からの太陽反射光を観測することになる。そのため、太陽と観測衛星と観測対象の相対位置関係が制約条件のひとつとなる。
【0003】
静止衛星と呼ばれる人工衛星は地球の自転と同期して地球を周回する。そのため、その人工衛星を地表面から見ると、その人工衛星はあたかも静止しているように見える。
したがって、太陽と静止衛星の相対位置関係は時間に依存して決まる。
【0004】
特許文献1は、太陽光が逆光になる空間でスペースデブリを観測するための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-218834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、カメラの他に、スペースデブリにレーザ光を照射するためのレーザ送信装置が必要となる。さらに、カメラのレンズの前に、太陽光をカットするための光学フィルタを配置する必要がある。そのため、特許文献1の方法では、観測衛星による監視の費用を抑えることが困難である。
【0007】
本開示では、カタログに記録されている宇宙物体の位置座標を使って、静止軌道近傍を飛翔する監視装置に対して所望の宇宙物体の監視データの取得を指示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る宇宙状況監視事業装置は、宇宙を飛翔する宇宙物体の状況を表す宇宙物体情報を取得し、前記宇宙物体情報を管理する宇宙状況監視事業装置であって、
静止軌道を飛翔する監視装置と、
前記監視装置へコマンドを送信し、前記監視装置により取得された監視データを受信する地上設備と
を具備し、
前記地上設備は、
複数の宇宙物体の軌道情報を記録したカタログを具備し、
前記カタログに記録されている前記複数の宇宙物体から選択した宇宙物体の軌道情報に基づいて、前記宇宙物体の軌道情報に含まれる地球固定座標系の位置座標を指向して前記監視装置を動作させるコマンドを前記監視装置に送信する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る宇宙状況監視事業装置では、カタログに記録されている宇宙物体の位置座標を使って、静止軌道近傍を飛翔する監視装置に対して所望の宇宙物体の監視データ取得指示ができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る宇宙交通管理システムの構成例。
図2】実施の形態1に係る宇宙状況監視事業装置の構成例。
図3】実施の形態1に係る宇宙物体の一例である衛星の構成例。
図4】実施の形態1に係る通信衛星の構成例。
図5】実施の形態1に係る監視装置の一例である観測衛星の構成例。
図6】実施の形態1に係る監視装置の別例である観測衛星の構成例。
図7】実施の形態1に係る宇宙物体情報の例。
図8】実施の形態1に係る宇宙物体情報の例。
図9】実施の形態1に係る監視装置の衛星制御装置の構成例。
図10】実施の形態2に係る宇宙状況監視事業装置の構成例。
図11】実施の形態3の監視装置の例である観測衛星による観測態様の一例。
図12】実施の形態3の監視装置の例である観測衛星による観測態様の別例。
図13】実施の形態4に係る魚眼レンズを具備したカメラによる魚眼図の例。
図14】実施の形態4に係る魚眼レンズを具備したカメラによる魚眼図の例。
図15】実施の形態4に係る、距離を横軸に、方位角を縦軸とするグラフに宇宙物体の情報をプロットした図。
図16】実施の形態4に係る、図15を分析した図。
図17】実施の形態4に係る魚眼レンズを具備したカメラによる魚眼図の例。
図18】実施の形態4に係る、図17に対応するグラフ。
図19】実施の形態4に係る魚眼レンズを具備したカメラの魚眼図と対応するグラフ。
図20】実施の形態4に係る魚眼レンズを具備したカメラの魚眼図と対応するグラフ。
図21】実施の形態5に係る魚眼付きカメラにおける魚眼図の一例。
図22】実施の形態5に係る、図21の魚眼図において等高線をプロットした図。
図23】実施の形態5に係る、図22の魚眼図をグラフ上にプロットした図。
図24】実施の形態5に係る魚眼付きカメラにおける魚眼図の別例。
図25】実施の形態5に係る、図24において観測衛星の指向方向を維持したまま、時間遅れの後に再度取得した際の魚眼図の例。
図26】実施の形態5に係る、相対位置関係を逸脱した位置が検出された魚眼図の例。
図27】実施の形態5に係る、視線方向を監視対象に向けて移動させた場合の魚眼図の例。
図28】実施の形態6に係る監視装置の衛星制御装置の構成例。
図29】実施の形態7に係る宇宙状況監視事業装置の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。また、以下の図面では各構成の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「表」、「裏」といった方向あるいは位置が示されている場合がある。それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置、器具、あるいは部品といった構成の配置および向きを限定するものではない。
【0012】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る宇宙交通管理システム500の構成例である。
宇宙交通管理システム500は、宇宙を飛翔する宇宙物体60の状況を表す宇宙物体情報501を取得し、宇宙物体情報501を管理する。宇宙交通管理システム500は、管理事業装置40を備える。また、管理事業装置40は、宇宙交通管理装置700を備える。
宇宙交通管理システム500は、各々が宇宙物体の飛翔安全管理を行う複数の宇宙交通管理装置700を備える。宇宙交通管理装置700は、宇宙を飛翔する宇宙物体を管理する複数の管理事業者の各々により利用される管理事業装置40に実装される。複数の宇宙交通管理装置700は、互いに通信回線で接続されている。
【0013】
宇宙交通管理装置700は、他の管理事業装置40と通信する。宇宙交通管理装置700は、地上設備701に搭載されていてもよい。
例えば、メガコンステレーション事業装置41は、複数の管理事業装置の各々が具備する宇宙交通管理装置700と互換性を持つ宇宙交通管理装置700を具備する。そして、メガコンステレーション事業装置41が具備する宇宙交通管理装置700は、その他の複数の管理事業装置の各々が具備する宇宙交通管理装置700同士を通信回線で接続した宇宙交通管理システム500と、宇宙交通管理装置700経由で接続される。
【0014】
管理事業装置40は、人工衛星、あるいは、デブリといった宇宙物体60に関する情報を提供する。管理事業装置40は、人工衛星、あるいは、デブリといった宇宙物体60に関する情報を収集する事業者のコンピュータである。
管理事業装置40には、メガコンステレーション事業装置41、LEOコンステレーション事業装置42、衛星事業装置43、軌道遷移事業装置44、デブリ除去事業装置45、ロケット打ち上げ事業装置46、およびSSA事業装置47といった装置が含まれる。SSAは、Space Situational Awarenessの略語である。LEOは、Low Earth Orbitの略語である。
なお、管理事業装置40は、観測衛星といった監視装置810を備え、監視装置810により宇宙物体を監視する構成でもよい。監視装置810を備える構成については後述する。
【0015】
メガコンステレーション事業装置41は、大規模衛星コンステレーション、すなわちメガコンステレーション事業を行うメガコンステレーション事業者のコンピュータである。メガコンステレーション事業装置41は、例えば、100機以上の衛星により構成された衛星コンステレーションを管理する事業装置である。
LEOコンステレーション事業装置42は、低軌道コンステレーション、すなわちLEOコンステレーション事業を行うLEOコンステレーション事業者のコンピュータである。
衛星事業装置43は、1機から数機の衛星を扱う衛星事業者のコンピュータである。
軌道遷移事業装置44は、衛星の宇宙物体侵入警報を行う軌道遷移事業者のコンピュータである。
デブリ除去事業装置45は、デブリを回収する事業を行うデブリ除去事業者のコンピュータである。
ロケット打ち上げ事業装置46は、ロケット打ち上げ事業を行うロケット打ち上げ事業者のコンピュータである。
SSA事業装置47は、SSA事業、すなわち、宇宙状況監視事業を行うSSA事業者のコンピュータである。SSA事業者は、例えば、SSA事業により収集した宇宙物体の情報の少なくとも一部をサーバ上に公開する。SSA事業装置47は、宇宙状況監視事業装置とも呼ばれる。
【0016】
人工衛星、あるいは、デブリといった宇宙物体に関する情報を収集し、収集した情報を宇宙交通管理システム500に提供する装置であれば、管理事業装置40は、上記以外の装置でもよい。
【0017】
宇宙交通管理装置700は、プロセッサ910を備えるとともに、メモリ921、補助記憶装置922、入力インタフェース930、出力インタフェース940、および通信装置950といった他のハードウェアを備える。プロセッサ910は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0018】
宇宙交通管理装置700は、機能要素の一例として、宇宙交通管理部710と記憶部720を備える。記憶部720には、宇宙物体情報501が記憶されている。
【0019】
宇宙交通管理部710の機能は、ソフトウェアにより実現される。記憶部720は、メモリ921に備えられる。あるいは、記憶部720は、補助記憶装置922に備えられていてもよい。また、記憶部720は、メモリ921と補助記憶装置922に分けられて備えられてもよい。
例えば、宇宙交通管理装置700は宇宙物体侵入警報の機能を実現する。しかし、後述するように、宇宙交通管理装置700は宇宙物体侵入警報の機能以外の様々な機能を有する。
【0020】
プロセッサ910は、宇宙交通管理プログラムを実行する装置である。宇宙交通管理プログラムは、宇宙交通管理装置700および宇宙交通管理システム500の各構成要素の機能を実現するプログラムである。
【0021】
プロセッサ910は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ910の具体例は、CPU、DSP(Digital Signal
Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0022】
メモリ921は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ921の具体例は、SRAM(Static Random Access Memory)、あるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。
補助記憶装置922は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置922の具体例は、HDDである。また、補助記憶装置922は、SD(登録商標)メモリカード、CF、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった可搬記憶媒体であってもよい。なお、HDDは、Hard Disk Driveの略語である。SD(登録商標)は、Secure Digitalの略語である。CFは、CompactFlash(登録商標)の略語である。DVDは、Digital Versatile Diskの略語である。
【0023】
入力インタフェース930は、マウス、キーボード、あるいはタッチパネルといった入力装置と接続されるポートである。入力インタフェース930は、具体的には、USB(Universal Serial Bus)端子である。なお、入力インタフェース930は、LAN(Local Area Network)と接続されるポートであってもよい。
出力インタフェース940は、ディスプレイといった表示機器941のケーブルが接続されるポートである。出力インタフェース940は、具体的には、USB端子またはHDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)端子である。ディスプレイは、具体的には、LCD(Liquid Crystal Display)である。
【0024】
通信装置950は、レシーバとトランスミッタを有する。通信装置950は、具体的には、通信チップまたはNIC(Network Interface Card)である。宇宙交通管理装置700は、通信装置950を介して、地上設備と衛星、あるいは、衛星同士の通信を行う。
【0025】
宇宙交通管理プログラムは、プロセッサ910に読み込まれ、プロセッサ910によって実行される。メモリ921には、宇宙交通管理プログラムだけでなく、OS(Operating System)も記憶されている。プロセッサ910は、OSを実行しながら、宇宙交通管理プログラムを実行する。宇宙交通管理プログラムおよびOSは、補助記憶装置に記憶されていてもよい。補助記憶装置に記憶されている宇宙交通管理プログラムおよびOSは、メモリ921にロードされ、プロセッサ910によって実行される。なお、宇宙交通管理プログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
【0026】
宇宙交通管理装置700は、プロセッサ910を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、宇宙交通管理プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ910と同じように、宇宙交通管理プログラムを実行する装置である。
【0027】
宇宙交通管理プログラムにより利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値および変数値は、メモリ921、補助記憶装置922、または、プロセッサ910内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0028】
宇宙交通管理部710の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えてもよい。また宇宙交通管理処理の「処理」を「プログラム」、「プログラムプロダクト」または「プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記憶媒体」に読み替えてもよい。
宇宙交通管理プログラムは、上記の宇宙交通管理部の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程を、コンピュータに実行させる。また、宇宙交通管理方法は、宇宙交通管理装置700が宇宙交通管理プログラムを実行することにより行われる方法である。
宇宙交通管理プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体あるいは記憶媒体に格納されて提供されてもよい。また、宇宙交通管理プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0029】
図2は、本実施の形態に係るSSA事業装置47の構成例である。
SSA事業装置47は、宇宙を飛翔する宇宙物体60の状況を表す宇宙物体情報501を取得する。そして、SSA事業装置47は、取得した宇宙物体情報501を管理する。
SSA事業装置47は、静止軌道近傍を飛翔する監視装置810と通信する。SSA事業装置47は、静止軌道近傍を飛翔する監視装置810を含んでもよい。このとき、SSA事業装置47は、監視装置810を含むSSA事業システムともいう。SSA事業装置47は、監視装置810へコマンド711を送信し、監視装置810により取得された監視データ712を受信する地上設備701を具備する。SSA事業装置47は、上述した管理事業装置40の例である。地上設備701は上述した宇宙交通管理装置700の例である。
【0030】
以下の実施の形態において、管理事業装置40、SSA事業装置47、宇宙交通管理装置700、あるいは、地上設備701が、制御およびデータ処理の機能を実行すると記載する場合がある。この場合は、主に、宇宙交通管理部710がその機能を実現する。
【0031】
図3は、本実施の形態に係る宇宙物体60の一例である衛星30の構成例である。
衛星30は、衛星制御装置310と衛星通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35とを備える。その他、各種の機能を実現する構成要素を備えるが、図3では、衛星制御装置310と衛星通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35について説明する。衛星30は、宇宙物体60の一例である。
【0032】
衛星制御装置310は、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御するコンピュータであり、処理回路を備える。具体的には、衛星制御装置310は、地上装置から送信される各種コマンドにしたがって、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御する。
衛星通信装置32は、地上装置と通信する装置である。具体的には、衛星通信装置32は、自衛星に関する各種データを地上装置へ送信する。また、衛星通信装置32は、地上装置から送信される各種コマンドを受信する。
推進装置33は、衛星30に推進力を与える装置であり、衛星30の速度を変化させる。具体的には、推進装置33は、アポジキックモーターまたは化学推進装置、または電気推進装置である。アポジキックモーター(AKM:Apogee Kick Motor)は、人工衛星の軌道投入に使われる上段の推進装置のことであり、アポジモーター(固体ロケットモーター使用時)、またはアポジエンジン(液体エンジン使用時)とも呼ばれている。
化学推進装置は、一液性ないし二液性燃料を用いたスラスタである。電気推進装置としては、イオンエンジンまたはホールスラスタである。アポジキックモーターは軌道遷移に用いる装置の名称であり、化学推進装置の一種である場合もある。
姿勢制御装置34は、衛星30の姿勢と衛星30の角速度と視線方向(Line Of
Sight)といった姿勢要素を制御するための装置である。姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置34は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサといった装置である。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロといった装置である。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上装置からの各種コマンドにしたがって、アクチュエータを制御する。
電源装置35は、太陽電池、バッテリおよび電力制御装置といった機器を備え、衛星30に搭載される各機器に電力を供給する。
【0033】
衛星制御装置310に備わる処理回路について説明する。
処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせで実現することができる。
専用のハードウェアは、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0034】
図4は、本実施の形態に係る通信衛星811の構成例を示す図である。
図5は、本実施の形態に係る監視装置810の一例である観測衛星812の構成例を示す図である。
図6は、本実施の形態に係る監視装置810の別例である観測衛星813の構成例を示す図である。
なお、図3から図6において、同一名称の構成は同様の機能を有し、その説明を省略する場合がある。
【0035】
図4に基づいて、通信衛星811の構成を説明する。
通信衛星811は、通信装置121、推進装置122、電源装置123、およびカメラ124を備える。
例えば、カメラ124は、第1指向アンテナ121Eまたは第2指向アンテナ121Wの指向方向と同じ方向を指向する広角カメラである。
【0036】
通信衛星811によって、観測衛星と、静止軌道または静止軌道の近傍の軌道を飛翔する他の宇宙物体と、を視覚的に捉えることができる。このため、通信衛星811の周囲が通信による干渉および雑音の原因となる障害物がない環境であることを視覚的に確認することができる。
他の宇宙物体は、観測衛星によって観測される宇宙物体とは別の宇宙物体である。
【0037】
また、カメラ124は、魚眼レンズを有するカメラであってもよい。カメラ124は、通信衛星811から地球への方向が視線ベクトルとなるように配置される。
魚眼レンズを具備したカメラ124によって、視線ベクトルを軸にする周囲360度の視野方向においてエレベーション方向の画像情報が得られる。
通信衛星811から地球への方向が視線ベクトルとなるようにカメラ124が配置されることにより、観測衛星812と、静止軌道または静止軌道の近傍の軌道を飛翔する他の宇宙物体を視覚的に捉えることができる。さらに、軌道上の他の宇宙物体の位置を推定することが可能になる。このため、通信衛星811の周囲が通信による干渉および雑音がない環境であることを視覚的に確認することができる。
【0038】
図5に基づいて、監視装置810の一例である観測衛星812の構成を説明する。
観測衛星812は、観測装置111、衛星制御装置112、通信装置113、推進装置114、姿勢制御装置115、電源装置116、およびカメラ117を備える。
観測装置111は、宇宙物体を観測するための装置である。観測装置111は監視機器ともいう。
カメラ117は、例えば、通信衛星811を指向する広角カメラである。
【0039】
カメラ117により、通信衛星811と、静止軌道または静止軌道の近傍の軌道を飛翔する他の宇宙物体を視覚的に捉えることができる。このため、観測衛星812の周囲が通信によって干渉および雑音がない環境であることを視覚的に確認することができる。
【0040】
また、カメラ117は、魚眼レンズを有するカメラであってもよい。カメラ117は、例えば、観測衛星812から通信衛星811への方向が視線ベクトルとなるように配置される。
【0041】
魚眼レンズを具備したカメラ117によって、視線ベクトルに軸にする周囲360度の視野方向においてエレベーション方向の画像情報が得られる。
観測衛星812から通信衛星811への方向が視線ベクトルとなるようにカメラ117が配置されることにより、通信衛星811と、静止軌道または静止軌道の近傍の軌道を飛翔する他の宇宙物体を視覚的に捉えることができる。さらに、軌道上の他の宇宙物体の位置を推定することが可能となる。このため、観測衛星812の周囲が通信による干渉および雑音がない環境であることを視覚的に確認することができる。
【0042】
図6に基づいて、監視装置810の別例である観測衛星813の構成を説明する。
観測衛星813は、観測装置201、衛星制御装置202、通信装置203、推進装置204、姿勢制御装置205、および電源装置206を備える。
【0043】
観測装置201は、宇宙物体を観測するための装置である。
観測装置201は、観測衛星の軌道高度と異なる高度を飛翔する宇宙物体を光学で撮影する。具体的には、観測装置201は可視光学センサである。
観測装置201は、観測データを生成する。観測データは、観測装置201が行う観測によって得られるデータである。例えば、観測データは、宇宙物体110が映った画像を表すデータに相当する。
【0044】
衛星制御装置202は、観測衛星813を制御するコンピュータである。
衛星制御装置202は、既定の手順、または、地上設備から送信される各種コマンドにしたがって、観測装置201と推進装置204と姿勢制御装置205とを制御する。
【0045】
通信装置203は、地上設備と通信する装置である。衛星通信装置ともいう。
通信装置203は、観測データを地上設備へ送信する。また、通信装置203は、地上設備から送信される各種コマンドを受信する。
【0046】
図7は、本実施の形態に係る宇宙物体情報501の例である。
宇宙物体情報501には、宇宙物体60を識別する宇宙物体IDと、軌道情報とが設定される。軌道情報には、予報軌道情報と実績軌道情報が含まれる。
予報軌道情報は、元期、軌道要素、予測誤差、情報提供事業装置ID、および情報更新日を含む。
実績軌道情報は、UTS時刻、位置座標、計測誤差、情報提供事業装置ID、および情報更新日を含む。
【0047】
宇宙物体情報501は、他の管理事業装置40から収集した宇宙物体の軌道情報が含まれる。例えば、宇宙物体情報501には、宇宙物体の軌道情報があらかじめ記録されたカタログ590が含まれる。カタログ590は、宇宙物体を管理する管理事業者から収集する。
【0048】
図8は、本実施の形態に係る宇宙物体情報501の例を示す図である。
SSA事業装置47は、例えば、宇宙物体60の軌道の予報値が設定された宇宙物体情報501を記憶部720に記憶する。SSA事業装置47は、例えば、複数の宇宙物体60を管理する管理事業者により利用される管理事業装置40から、複数の宇宙物体60の各々の軌道の予報値を取得し、カタログ590として宇宙物体情報501に記憶してもよい。あるいは、SSA事業装置47は、複数の宇宙物体60の各々の軌道の予報値が設定された宇宙物体情報501を管理事業者から取得し、記憶部720に記憶してもよい。あるいは、SSA事業装置47は、SSA事業装置47が備える監視装置810から受信した監視データ712に基づいて、宇宙物体情報501を記憶部720に記憶してもよい。
【0049】
宇宙物体情報501には、衛星軌道予報情報52とデブリ軌道予報情報53とが含まれる。衛星軌道予報情報52には、衛星の軌道の予報値が設定されている。デブリ軌道予報情報53には、デブリの軌道の予報値が設定されている。本実施の形態では、衛星軌道予報情報52とデブリ軌道予報情報53とが宇宙物体情報501に含まれる構成であるが、衛星軌道予報情報52とデブリ軌道予報情報53とが、個々の情報として記憶部720に記憶されていても構わない。
【0050】
宇宙物体情報501には、例えば、宇宙物体ID(Identifier)511、予報元期512、予報軌道要素513、および予報誤差514といった情報が設定される。
【0051】
宇宙物体ID511は、宇宙物体60を識別する識別子である。図8では、宇宙物体ID511として、衛星IDとデブリIDが設定されている。宇宙物体は、具体的には、宇宙空間に打ち上げられるロケット、人工衛星、宇宙基地、デブリ除去衛星、惑星探査宇宙機、ミッション終了後にデブリ化した衛星あるいはロケットといった物体である。
【0052】
予報元期512は、複数の宇宙物体の各々の軌道について予報されている元期である。
予報軌道要素513は、複数の宇宙物体の各々の軌道を特定する軌道要素である。予報軌道要素513は、複数の宇宙物体の各々の軌道について予報されている軌道要素である。図8では、予報軌道要素513として、ケプラー軌道6要素が設定されている。
【0053】
予報誤差514は、複数の宇宙物体の各々の軌道において予報される誤差である。予報誤差514には、進行方向誤差、直交方向誤差、および誤差の根拠が設定されている。このように、予報誤差514には、実績値が内包する誤差量が根拠とともに明示的に示される。誤差量の根拠としては、計測手段、位置座標情報の精度向上手段として実施したデータ処理の内容、および、過去データの統計的評価結果の一部あるいはすべてが含まれる。
【0054】
なお、本実施の形態に係る宇宙物体情報501では、宇宙物体60について、予報元期512と予報軌道要素513が設定されている。予報元期512と予報軌道要素513により、宇宙物体60の近未来における時刻と位置座標を求めることができる。例えば、宇宙物体60についての近未来の時刻と位置座標が、宇宙物体情報501に設定されていてもよい。
このように、宇宙物体情報501には、元期と軌道要素、あるいは、時刻と位置座標を含む宇宙物体の軌道情報が具備され、宇宙物体60の近未来の予報値が明示的に示されている。
【0055】
***動作の説明***
次に、SSA事業装置47の動作例について説明する。
監視装置810は、静止衛星近傍を飛翔する。
地上設備701は、監視装置810へコマンド711を送信し、監視装置810により取得された監視データ712を受信する。
なお、以下の説明では、監視装置810の具体例は観測衛星812であるものとして説明する。
【0056】
<本実施の形態の動作例1>
地上設備701は、複数の宇宙物体の軌道情報を記録したカタログ590を具備する。地上設備701は、カタログ590に記録されている複数の宇宙物体から選択した宇宙物体60の軌道情報に基づいて、宇宙物体60の軌道情報に含まれる地球固定座標系の位置座標を指向して監視装置810を動作させるコマンド711を監視装置810に送信する。
【0057】
具体的には、宇宙交通管理部710は、カタログ590から選択した宇宙物体60の軌道情報に基づいて、軌道情報に含まれる地球固定座標系の位置座標を指向して監視装置810を動作させるコマンド711を監視装置810に送信する。
【0058】
自国保有の静止衛星の近傍にデブリといった宇宙物体が接近してサービス継続に支障をきたすことがないように、宇宙物体の監視をする必要がある。このため、SSA事業装置47といった管理事業装置40は、予め静止軌道周辺の宇宙物体の軌道情報のカタログ590を保有する。
世界測地系WGS84は測位衛星システムでも利用する地球固定座標系である。本実施の形態では、この位置座標に基づき宇宙物体の軌道情報をカタログ590に記録する。また、地上設備701は、地球固定座標系の位置座標を使ってコマンド711を生成する。
【0059】
本実施の形態の動作例1では、宇宙状況監視を行うSSA事業者は、カタログに記録された宇宙物体の位置座標を使って、静止軌道近傍を飛翔する監視装置に対して所望の宇宙物体の監視データの取得指示を行うことができるという効果がある。
【0060】
<本実施の形態の動作例2>
監視装置810は、地上設備701から受信したコマンド711に基づいて、コマンド711により指定された位置座標を指向して監視データを取得する。
【0061】
観測衛星812といった監視装置810は、地上設備701から受信した地球固定座標系の位置座標により、宇宙空間を飛翔する宇宙物体60を指向する。
【0062】
本実施の形態の動作例2では、宇宙状況監視を行うSSA事業者は、カタログに記録された宇宙物体の位置座標を使って、静止軌道近傍を飛翔する宇宙物体の状況を近傍から高分解能で監視することができるという効果がある。
【0063】
<本実施の形態の動作例3>
図9は、本実施の形態に係る監視装置810の衛星制御装置112の構成例を示す図である。
監視装置810は、データ解析装置821と、データ再取得判断装置822と、自動監視制御装置823とを具備する。データ解析装置821と、データ再取得判断装置822と、自動監視制御装置823は、例えば、観測衛星812の衛星制御装置112、あるいは、観測衛星813の衛星制御装置202に備えられる。
【0064】
データ解析装置821は、取得した監視データの輝度情報を数値化した輝度データをデータ再取得判断装置822に送信する。
データ再取得判断装置822は、輝度データが予め定めた輝度レベルの判定基準ないし輝度ヒストグラムの判定基準に合致した場合に、自動監視制御装置823に監視データを再取得するデータ再取得指示を送信する。
自動監視制御装置823は、データ再取得指示に基づいて、地上設備701から予め受信した位置座標を自律的に変更した位置座標を生成して、生成した位置座標を指向し、監視データを取得する。
【0065】
宇宙物体60が、カタログ590に記録された位置座標から移動する場合に、地上設備701からコマンド711で指示した監視データの監視範囲から逸脱して監視データ中に存在しなくなる可能性がある。
監視データの背景は概ね宇宙空間であり、輝度レベルは黒をゼロ、白を100とした場合に概ねゼロレベルとなる。
所望の宇宙物体60の太陽光反射が100以下の有意な輝度レベルとなるよう感度を設定した監視装置810で監視データを取得することにより、宇宙物体60が監視データの中に含まれれば有意の輝度レベルを示す。
また2次元エリアセンサのような光学的監視データで高分解能に監視データを取得した場合、宇宙物体の反射光は多数画素に渡り有意な輝度レベルとして取得される。
星は有意の輝度レベルとなる可能性があるが、太陽光を反射する宇宙物体と比較して輝度レベルが十分低い。また点光源と同様に、1画素あるいは隣接画素を含めてせいぜい4画素以下しか有意な輝度レベルとならない。
このためデータ解析装置により取得した監視データを輝度レベルとして数値化すれば、所望の宇宙物体は多数画素に渡る有意な輝度レベルとして自動的に軌道上で存在を識別できる。
【0066】
例えば、データ再取得判断装置822が、予め輝度レベル5以上のデータが存在しない監視データには所望の宇宙物体が含まれないと判断する基準の例、を設定している。あるいは、データ再取得判断装置822が、輝度ヒストグラムの中に輝度レベル5以上の画素が10画素未満の監視データには所望の宇宙物体が含まれないと判断する基準の例、を設定している。そして、データ再取得判断装置822は、この条件に合致した場合に、自動監視制御装置823にデータ再取得を指示する。
自動監視制御装置823は予め地上設備701から受信した位置座標を自律的に変更した位置座標を生成してその位置座標を指向し、監視データを取得する。
位置座標の変更は、監視装置810の監視範囲として取得済み監視データの隣接範囲を取得するように設定するのが合理的である。なお時間経過に伴い、監視装置810と宇宙物体の相対位置変化を加味して位置座標を変更することが望ましい。
【0067】
本実施の形態の動作例3では、データ再取得をすることにより、宇宙物体がカタログの位置から移動しても監視できるという効果がある。また軌道上で自律的にデータ再取得ができるので、地上設備との通信回線が確立していない状況でも監視データを取得できるという効果がある。
【0068】
***本実施の形態の効果の説明***
本実施の形態に係るSSA事業装置によれば、カタログに記録された宇宙物体の位置座標を使って、静止軌道近傍を飛翔する監視装置に対して所望の宇宙物体の監視データの取得指示を行うことができるという効果がある。
【0069】
また、本実施の形態に係るSSA事業装置によれば、カタログに記録された宇宙物体の位置座標を使って、静止軌道近傍を飛翔する宇宙物体の状況を近傍から高分解能で監視することができるという効果がある。
【0070】
また、本実施の形態に係るSSA事業装置によれば、データ再取得をすることにより、宇宙物体が移動しても監視できるという効果がある。また軌道上で自律的にデータ再取得ができるので、地上設備との通信回線が確立していない状況でも監視データを取得できるという効果がある。
【0071】
実施の形態2.
本実施の形態では、主に、実施の形態1に追加する点あるいは異なる点について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0072】
図10は、本実施の形態に係るSSA事業装置47の構成例を示す図である。
本実施の形態では、SSA事業装置47は、通信装置を具備して静止軌道近傍を飛翔する監視装置810と、通信装置を具備する静止衛星830と、静止衛星830と通信する地上設備701を具備する。静止衛星830の構成は、例えば、図3の衛星の例と同様である。
【0073】
地上設備701は、複数の宇宙物体の軌道情報を記録したカタログ590を具備する。
地上設備701は、カタログ590から選択した宇宙物体の軌道情報に基づき、軌道情報に含まれる地球固定座標系の位置座標を指向して監視装置810を動作させるコマンドを、静止衛星830経由で監視装置810に送信する。
【0074】
静止衛星830を経由して地上設備701と監視装置810が常時通信可能な状態になるので、迅速なコマンド送信と監視データの取得とが可能になるという効果がある。
【0075】
監視装置810は、静止衛星830経由で地上設備701から受信したコマンドに基づき、コマンドにより指定された位置座標を指向して監視データを取得する。そして、監視装置810は、静止衛星830経由で監視データを地上設備701に伝送する。
【0076】
静止衛星830を経由して地上設備701と監視装置810が常時通信可能な状態になるので、迅速なコマンド送信と監視データの取得とが可能になるという効果がある。よって、デブリのような不審物の接近といった緊急事態が発生して、リスク回避といった緊急対応を要する場合でも、即座に宇宙状況を把握できるという効果がある。
【0077】
地上設備701は、監視装置810から送信された監視データに基づき、データ再取得のための位置座標をコマンドに設定する。地上設備701は、静止衛星830経由でコマンドを監視装置810に送信する。
監視装置810は、静止衛星830経由で地上設備701から受信したコマンドに基づき、コマンドにより指定された位置座標を指向して監視データを取得する。そして、監視装置810は、取得した監視データを静止衛星830経由で地上設備701に送信する。
【0078】
静止衛星830を経由して地上設備701と監視装置810が常時通信可能な状態になるので、宇宙物体が移動して監視範囲を逸脱した場合でも、即座にデータ再取得の指示ができるという効果がある。
【0079】
実施の形態3.
本実施の形態では、主に、実施の形態1および2に追加する点あるいは異なる点について説明する。なお、実施の形態1および2と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0080】
図11は、本実施の形態の監視装置810の例である観測衛星812による観測態様の一例を示す図である。
観測衛星812は監視装置810の例である。また。観測衛星812,813の観測装置111,201は、監視機器の例である。本実施の形態では、観測衛星812の観測装置111を用いて説明する。
【0081】
監視装置810は、監視機器を備える。
監視装置810は、宇宙物体に対して東方へ移動しながら、LST18:00以降翌朝LST06:00までの間に太陽光が当たらない側である地球の裏側の上空で、監視機器を動作させて、監視データを複数回取得する。LSTは、Local Sun Timeの略語である。LSTは、太陽同期軌道ともいう。
【0082】
具体的には、観測衛星812は、地球を周回して静止軌道近傍を飛翔する宇宙物体を観測する。観測衛星812は、観測装置111と推進装置114を具備する。
観測衛星812は、観測衛星812が減速するように推進装置114を制御することによって、観測衛星812の軌道高度を下降させ、軌道高度の下降に伴って地球の自転速度に対する観測衛星812の周回速度が上がることによって、観測衛星812が宇宙物体に対して東方へ移動しながら、LST18:00以降翌朝LST06:00までの間に太陽光が当たらない側である地球の裏側の上空で観測装置111を動作させる。
【0083】
図12は、本実施の形態の監視装置810の例である観測衛星812による観測態様の別例を示す図である。
【0084】
監視装置810は、監視機器を備える。
監視装置810は、宇宙物体に対して西方へ移動しながら、LST06:00以降LST18:00までの間に太陽光が当たる側である地球の表側の上空で、監視機器を動作させて、監視データを複数回取得する。
【0085】
具体的には、観測衛星812は、観測衛星812が増速するように推進装置114を動作させることによって、観測衛星812の軌道高度を上昇させ、軌道高度の上昇に伴って地球の自転速度に対する観測衛星812の周回速度が下がることによって、観測衛星812が宇宙物体に対して西方へ移動しながら、LST06:00以降LST18:00までの間に太陽光が当たる側である地球の表側の上空で観測装置111を動作させる。
【0086】
本実施の形態に係るSSA事業装置47によれば、宇宙物体に対する太陽反射光を監視装置が捉えるのに合理的な時間帯に監視データを再取得することにより、迅速かつ確実に宇宙物体の監視データを取得できるという効果がある。
なお、地上設備と監視装置の情報授受を静止衛星経由で実施してもよい。
【0087】
実施の形態4.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から3に追加する点あるいは異なる点について説明する。なお、実施の形態1から3と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0088】
監視装置810は、軌道半径方向と平行な視線ベクトルを有する魚眼レンズ付きカメラを具備する。具体的には、図5で説明した観測衛星812のカメラ117が、軌道半径方向と平行な視線ベクトルを有する魚眼レンズ付きカメラである。
【0089】
あるいは、監視装置810は、軌道半径方向と平行な視線ベクトルを有する広角カメラ、または軌道半径方向に対して東西方向を指向する視線ベクトルを有する複数の広角カメラを具備する。具体的には、図5で説明した観測衛星812のカメラ117が、軌道半径方向と平行な視線ベクトルを有する広角カメラ、または軌道半径方向に対して東西方向を指向する視線ベクトルを有する複数の広角カメラであってもよい。
【0090】
以下に、魚眼レンズを具備したカメラ、または広角カメラを具備したカメラを備えた観測衛星の動作について説明する。
【0091】
図13は、本実施の形態に係る魚眼レンズを具備したカメラによる魚眼図の例を示す図である。
静止軌道よりも低い軌道高度を飛翔して相対的に東方移動しながら静止軌道近傍の宇宙物体を監視する観測衛星の具備する魚眼レンズ付きカメラで軌道傾斜角0度の静止軌道に全ての宇宙物体が飛翔していた場合、撮像した画像は図13のように魚眼レンズの視野の中で宇宙物体が一列に整列する。
【0092】
図14は、本実施の形態に係る魚眼レンズを具備したカメラによる魚眼図の例を示す図である。
宇宙物体が0度以外の軌道傾斜角を有する場合、魚眼カメラ付きカメラの取得画像において、宇宙物体は一列に整列せず、図14のようにばらつく。
魚眼レンズ付きカメラの画像の視野中心を原点として、横軸が軌道傾斜角0度の静止軌道面とすれば、横軸からの角度が宇宙物体の方位角、中心からの距離が前記観測衛星と宇宙物体の距離に相当する。
【0093】
図15は、距離を横軸に、方位角を縦軸とするグラフに宇宙物体の情報をプロットした図である。図16は、図15を分析した図である。
距離を横軸に、方位角を縦軸とするグラフに宇宙物体の情報をプロットすると、図15のように、方位角0度付近と方位角180度付近に情報が密集する。
このグラフを分析すると、図16のように、方位角0度付近は東方の宇宙物体を、また方位角180度付近は西方の宇宙物体であり、方位角の偏差は、軌道傾斜角が0度でないことに起因してばらついていることが判る。
【0094】
図17は、本実施の形態に係る魚眼レンズを具備したカメラによる魚眼図の例である。図18は、図17に対応するグラフである。
観測衛星が東方に移動して、時間遅れの後に複数の撮像をすると、西方の宇宙物体は概ね相対的な分布を維持しながら距離が離れ、東方の宇宙物体は概ね相対的な分布を維持しながら距離が接近し、観測衛星が追い越した後は西方に移動することになる。
厳密にはθ度の軌道傾斜角を有する軌道を飛翔する宇宙物体は方位角が1年間で±θ度変動することになるが、短時間に複数回撮像する間の変動は微小量である。
【0095】
図19は、本実施の形態に係る魚眼レンズを具備したカメラの魚眼図と対応するグラフである。
次に宇宙物体が移動している場合について説明する。
時間差をもって複数回撮像した画像では上述のように東方宇宙物体は概ね相対的な分布を維持して距離が近づくはずであるが、仮に宇宙物体の軌道高度が静止軌道と異なる場合、あるいは、宇宙物体が推進装置を稼働して移動する場合は、相対的な分布から逸脱することになる。
【0096】
図20は、本実施の形態に係る魚眼レンズを具備したカメラの魚眼図と対応するグラフである。
相対関係を維持した場合、宇宙物体の位置は予め予測することが可能であり、実測値がこれを逸脱していれば、宇宙物体が移動物体であることが判る。
東方において予測よりも接近スピードが遅い場合、つまり予測より距離が離れている場合、宇宙物体の軌道高度が静止軌道よりも低高度であることが推定され、観測衛星の軌道高度と静止軌道の高度の間の高度であることが推定される。
また方位角方向に偏差がある場合は軌道面外方向の移動を伴うことが判る。しかし、通常人工衛星において短時間に大きな面外移動を実現することが難しい。よって、この場合は静止軌道近傍であって、面外速度成分を有して横切ったデブリであることが推定される。
【0097】
なお、魚眼レンズ付きではない広角カメラであっても同様の分析が可能である。
また、広角カメラは軌道半径方向に対して線対称に配置していれば、個別のカメラの視線ベクトルは軌道半径方向と平行でなくても、同様の分析が可能である。
【0098】
本実施の形態に係るデータ処理によれば、監視対象の近傍に他の宇宙物体が密集していた場合に、予め監視対象を見分けることができるので、確実に監視装置で監視対象のデータを得られるという効果がある。
また、監視対象の近傍に不審な動きをする移動物体があった場合に、予め識別して、監視装置で監視データを取得できるという効果がある。
また、監視対象に回避行動をとるようアラームを出すことができるという効果がある。
【0099】
実施の形態5.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から4に追加する点あるいは異なる点について説明する。なお、実施の形態1から4と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0100】
本実施の形態では、監視装置810は、魚眼レンズ付きカメラまたは広角カメラを具備し、監視対象を指向制御する。
【0101】
魚眼レンズを具備したカメラによる撮像情報によれば、視線ベクトルに対して周囲360°の視野方向に対してエレベーション方向の画像情報が得られる。よって、監視装置810である観測衛星812から見て通信衛星811に向かう視線ベクトルとなる配置で撮像すれば、通信衛星811と、静止近傍軌道を飛翔する他の宇宙物体を視覚的に捉えることができ、かつ、軌道上の位置を推定できるという効果がある。
また、周囲が通信して干渉雑音がない環境であることを視覚的に確認できるという効果がある。
【0102】
図21は、本実施の形態に係る魚眼付きカメラにおける魚眼図の一例を表す図である。
図21を用いて、魚眼レンズ付きカメラのデータ処理について説明する。
観測衛星が静止軌道上の通信衛星を指向した場合に、静止軌道上の他の衛星が配列しているため、仮に全ての衛星が軌道傾斜角0度で静止軌道上に整列していた場合、魚眼レンズ付きカメラの取得画像である魚眼図は図21のようになる。
【0103】
図22は、図21の魚眼図において等高線をプロットした図である。
予め観測衛星の軌道高度と、通信衛星に指向する指向方向が既知であれば、観測衛星からの等高線を図22のように魚眼図内にプロットすることができる。
【0104】
図23は、図22の魚眼図をグラフ上にプロットした図である。
魚眼図の中心に通信衛星があり、横軸が静止軌道面の東方向となるよう配置し、これを方位角0度とした各静止衛星の方位角を縦軸とし、観測衛星からの距離を横軸にして各静止衛星をグラフ上にプロットすると、図23のようになる。
通信衛星を指向中心とした場合、通信衛星よりも東側の静止衛星は方位角が0度に並び、西側の衛星は方位角が180度に並ぶことになる。
【0105】
図24は、本実施の形態に係る魚眼付きカメラにおける魚眼図の別例を表す図である。
実際の静止軌道近傍衛星は、軌道傾斜角が0度以外となっている場合があり、この例を図24に示す。通信衛星よりも東側の衛星に0度以外の軌道傾斜角がある場合、縦軸方位角、横軸距離のグラフ上では、方位角0度付近の縦軸のばらつきにとして現れ、西側の衛星では方位角180度付近の縦軸のばらつきとして現れる。
【0106】
図25は、図24において観測衛星の指向方向を維持したまま、時間遅れの後に再度取得した際の魚眼図の例を表す図である。
図26は、相対位置関係を逸脱した位置が検出された魚眼図の例を表す図である。
仮に観測衛星の指向方向を維持したまま、時間遅れの後に再度魚眼図を取得すると、図25のように、静止軌道上の東側の衛星群は、概ね相対関係を維持して接近することになる。
従って静止軌道衛星群については、概ね相対関係を維持する前提により、時間遅れの後に取得した魚眼図上の位置が予測可能である。
これに対して相対位置関係を逸脱して、予測と異なる位置にある対象があるとすれば、移動中の衛星であると推定できる。
また一般に人工衛星の面外位置の変更を短時間に実施することは難しいため、方位角に大きな変動がある場合は、たまたま静止軌道近傍を横切った宇宙物体である可能性が高い。
【0107】
図27は、視線方向を監視対象に向けて移動させた場合の魚眼図の例を表す図である。
これまで、視線方向を維持したまま、時間経過の後に取得した監視データとの比較について示したが、視線方向を監視対象に向けて移動させた場合について補足説明する。
監視装置の角度の変更に伴う静止軌道近傍軌道の物体との距離が変わるため、魚眼図は図27のように変化することになる。この例は宇宙物体が軌道傾斜角0度で整列している例を示す。
視線方向の相違に伴う監視対象や軌道上物体との相対関係の変化は幾何学的に解析可能なので、魚眼図における見え方が変化しても、データを分析する上で悪影響はない。
なお魚眼レンズ付きではない広角カメラを利用する場合であっても、同様のデータ処理が可能である。
【0108】
本実施の形態に係るデータ処理によれば、監視対象の近傍に他の宇宙物体が密集していた場合に、予め監視対象を見分けることができるので、確実に監視装置で監視対象のデータを得られるという効果がある。
また監視対象の近傍に不審な動きをする移動物体があった場合に、予め識別して、監視装置で監視データを取得できるという効果がある。
また監視対象に回避行動をとるようアラームを出すことができるという効果がある。
【0109】
実施の形態6.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から5に追加する点あるいは異なる点について説明する。なお、実施の形態1から5と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0110】
図28は、本実施の形態に係る監視装置810の衛星制御装置112の構成例を示す図である。
本実施の形態に係る監視装置810は、静止軌道近傍を飛翔する。
監視装置810は、魚眼レンズ付きカメラまたは広角カメラと、データ解析装置821と、監視対象識別装置824と、自動監視制御装置823とを具備する。図28に示すように、データ解析装置821と、監視対象識別装置824と、自動監視制御装置823とは、例えば、衛星制御装置112に備えられる。
【0111】
データ解析装置821は、魚眼レンズ付きカメラまたは広角カメラで取得した監視データの輝度情報を数値化して輝度データとし、輝度データの輝度分布を距離と方位角情報に換算したマップ情報を監視対象識別装置824に送信する。
監視対象識別装置824は、マップ情報と、地上設備から予め送信された宇宙物体のマップ情報である先見マップ情報とをマッチング解析して、監視対象を識別し、識別した監視対象を抽出する。
【0112】
監視装置810が、データ解析装置821と、監視対象識別装置824と、自動監視制御装置823を具備することにより、実施の形態4,5で説明したデータ処理を監視装置810が軌道上で自動的に実施することができる。
【0113】
監視データには静止軌道近傍の宇宙物体の他に背景の天体、あるいは、墓場軌道と呼ばれる静止軌道よりも遠方の宇宙物体も含まれる可能性がある。しかし、西方移動における18:00から翌06:00まで、あるいは、東方移動における06:00から18:00までの監視では、監視対象と太陽の位置関係が良好である。よって、静止軌道近傍の物体の輝度が高く、遠方の天体は輝度が低いので、天体を除去することは容易である。また、明るい天体はスターセンサの具備するスターカタログにより予め位置座標または方位角が既知なので識別可能である。
【0114】
静止軌道近傍を飛翔する宇宙物体については、予め地上で具備する宇宙物体の軌道情報カタログデータにより特定監視タイミングと指向方向において視野に入る宇宙物体を識別することができる。よって、距離と方位角の先見マップ情報を予め地上から監視装置に伝送し、軌道上で取得したマップ情報と比較すれば、軌道上配列がカタログ情報通りの宇宙物体群のマッチングをとることが可能である。
なお、墓場軌道の宇宙物体については、予め地上で具備する宇宙物体の軌道情報により対象を識別することができるので、除外可能である。
データ解析装置821がデータを数値化して、軌道上物体を識別する処理内容は実施の形態4,5で説明した内容と同様である。
【0115】
<本実施の形態の動作例1>
また、監視対象識別装置824は、抽出した監視対象の軌道上位置座標を画像情報から解析し、予め地上設備から送信された先見位置座標と相違がある場合は、相違を補正した後の位置座標を自動監視制御装置823に送信する。
自動監視制御装置823は、監視装置810の視線ベクトルを、監視対象識別装置824から取得した位置座標に向けて監視データを取得する。
【0116】
複数の軌道物体の中から、監視対象を抽出する方法としては、予めSSA事業者から入手した軌道上物体情報を先見情報として、監視対象を抽出する方法が有効である。しかし、軌道上物体情報に含まれる誤差情報に起因して、予測した位置からずれている場合がある。その場合は周辺を飛翔する宇宙物体との相対位置関係のマッチングをして、監視対象を識別し、更に予測軌道との差分を解析することにより、軌道情報を補正した上で、自動監視制御装置823に伝送する。
自動監視制御装置823は監視対象識別装置824により補正された監視対象の位置座標を指向することで、高分解能で狭域監視性能に優れた監視装置本体により高分解能監視データ取得を確実に実施することができる。
【0117】
<本実施の形態の動作例2>
監視対象識別装置824は、マップ情報と先見マップ情報とをマッチング解析した結果、有意な移動が認められる宇宙物体を識別して監視対象として抽出する。監視対象識別装置824は、抽出した監視対象の軌道上位置座標を画像情報から解析し、位置座標を自動監視制御装置823に送信する。
自動監視制御装置823は、監視装置810の視線ベクトルを、監視対象識別装置824から取得した位置座標に向けて監視データを取得する。
【0118】
有意な移動をする物体としては、デブリの通過、あるいは、制御能力を喪失して浮遊する宇宙物体の接近が考えられる。衝突を回避するために回避行動を迅速に実施する必要がある場合に、本実施の形態の動作例2の監視装置810によれば、軌道上で迅速に移動物体の監視データを取得することができるという効果がある。
【0119】
実施の形態7.
本実施の形態では、主に、実施の形態1から6に追加する点あるいは異なる点について説明する。なお、実施の形態1から6と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0120】
図29は、本実施の形態に係るSSA事業装置47の構成例である。
【0121】
SSA事業装置47は、静止軌道近傍を飛翔する第1の監視装置810aと、地上に設置された第2の監視装置840と、複数の宇宙物体の軌道情報を記録するカタログ590を備える。また、SSA事業装置47は、計測誤差精査装置471と、加減速物体追跡装置472とを具備する。第1の監視装置810aの具体例は、観測衛星812である。また、第2の監視装置840の具体例は、SSA事業装置47の地上設備701が具備する観測装置である。
【0122】
<本実施の形態の動作例1>
カタログ590は、公開されている情報から取得した公開軌道情報と、第1の監視装置810aで取得した第1の軌道情報と、第2の監視装置840で取得した第2の軌道情報とを記録する。
SSA事業装置47は、特定宇宙物体の公開軌道情報に基づき、第1の監視装置810aと第2の監視装置840とにより特定宇宙物体の監視情報を取得する。SSA事業装置47は、第1の監視装置810aにより第1の監視情報を取得し、第2の監視装置840により第2の監視情報を取得する。監視情報は、第1の監視情報と第2の監視情報とを含む。
計測誤差精査装置471が、特定宇宙物体における公開軌道情報と第1の軌道情報と第2の軌道情報に基づき信憑性の高い軌道情報を選択して、更新情報である第3の軌道情報を生成する。
【0123】
公開情報による軌道情報は、位置情報の精度が悪いという課題がある。また第1の監視装置および第2の監視装置において、光学的監視手段によって取得した物体情報は、監視装置から見た方位角の計測精度は高いが、距離方向誤差が大きいという課題がある。またレーダないしレーザによる監視手段によって取得した物体情報は、監視装置から見た距離方向の制度は高いが方位角の誤差が大きいという課題がある。
【0124】
そこで、公開軌道情報の基づき特定監視対象の監視情報を、第1の監視装置および第2の監視装置で取得することにより、公開情報の誤差を低減したカタログ590の更新が可能となる。
また、監視装置の位置と監視手段に応じて軌道情報を構成する位置情報として、信憑性の高い情報を選択することにより、軌道情報の精度を向上することが可能となる。
慣性空間の星、あるいは、静止軌道近傍を飛翔する宇宙物体であって、人為的な推進装置の動作を伴わず、自然現象のみに依存して飛翔する物体は、特定時間経過後の位置を推定することが容易である。しかし、公開軌道情報の誤差が大きい場合に、第1の監視装置ないし第2の監視装置の視野範囲を逸脱して監視できないリスクがある。
【0125】
本実施の形態の動作例1によれば、軌道情報の内包誤差を低減することにより、第1の監視装置ないし第2の監視装置で確実に視野範囲に捉えることができるという効果がある。
【0126】
<本実施の形態の動作例2>
SSA事業装置47は、第3の軌道情報に基づき、第1の監視装置810と第2の監視装置840の両方または一方で、特定宇宙物体の監視情報を再度取得する。
計測誤差精査装置471は、第3の軌道情報と更新した第1の軌道情報と更新した第2の軌道情報に基づき第3の軌道情報を更新する。計測誤差精査装置471は、更新前後の第3の軌道情報を比較評価して、特定宇宙物体の人為的加減速運動の有無を識別する。そして、計測誤差精査装置471は、人為的加減速運動のある宇宙物体の情報を加減速物体追跡装置472に追跡情報の初期値として記録する。
【0127】
静止軌道近傍を飛翔する宇宙物体には、人為的な推進装置の動作を伴う場合がある。自然現象のみに依存して飛翔する宇宙物体と比較して、時間経過に伴う加減速後位置が、推定位置と有意な相違がある宇宙物体の場合には、人為的加減速運動のある宇宙物体として識別可能となる。
本実施の形態の動作例2では、静止軌道上で人為的加減速運動をする宇宙物体を識別する。予め、軌道投入、軌道離脱、あるいは軌道遷移のために非定常移動計画が公開されている宇宙物体については、人為的加減速運動が識別されても、他の衛星に対して悪影響あるいは危険がないよう予め配慮されている。しかし、非定常移動計画が公開されていない宇宙物体は不審物体として追跡する必要がある。
【0128】
<本実施の形態の動作例3>
加減速物体追跡装置472は、更新後の第3の軌道情報に基づき、第1の監視装置810と第2の監視装置840の両方または一方で、特定宇宙物体の監視情報を再度取得する。
計測誤差精査装置471が、更新後の第3の軌道情報と再更新した第1の軌道情報と再更新した第2の軌道情報に基づき第3の軌道情報を再更新する。そして、計測誤差精査装置471が、更新前、更新後、再更新後の第3の軌道情報を比較評価して、特定宇宙物体の加減速情報を取得して、特定宇宙物体の軌道情報の更新値を追跡情報として記録する。
【0129】
本実施の形態の動作例3によれば、第3の軌道情報に関して時間経過を追うことにより、位置計測誤差の内包するオフセット誤差を排除でき、意図的な宇宙物体の移動方向を把握することが可能となる。
【0130】
<本実施の形態の動作例4>
加減速物体追跡装置472が、第3の軌道情報に基づく第1の監視装置810と第2の監視装置840の両方または一方による監視情報の更新を繰り返し、特定宇宙物体の軌道情報の更新値を追跡情報として記録する。
【0131】
第3の軌道情報に関して時間経過を追うことにより、意図的な宇宙物体の移動方向を把握することが可能となり、静止軌道上の他の宇宙物体に対する接近を予測することが可能となる。
特に、時間経過に伴う加減速の方向や大きさが変動する場合には、特定宇宙物体の移動履歴により人為的な意図を類推する手がかりになるという効果がある。
【0132】
<本実施の形態の動作例5>
SSA事業装置47は、特定宇宙物体の人為的移動に伴い影響を受ける宇宙物体事業者に対して、加減速物体追跡装置472により記録された追跡情報を提供する。
【0133】
通信衛星および気象衛星といった社会インフラストラクチャ―として必須なクリティカルインフラストラクチャ―に対して、不審な行動をする宇宙物体が接近する場合がる。このとき、衝突といったリスクを回避するために、衛星の退避行動を実施するといった対処行動が必要になる。
そこで、関係する宇宙物体事業者に対して加減速物体追跡装置472により記録された追跡情報を提供する。これにより、宇宙物体事業者のリスク回避行動が実施可能になるという効果がある。
【0134】
以上の実施の形態1から7では、宇宙交通管理システム、SSA事業システム、およびSSA事業装置といった各システムおよび各装置の各部を独立した機能ブロックとして説明した。しかし、各システムおよび各装置の構成は、上述した実施の形態のような構成でなくてもよい。各システムおよび各装置の機能ブロックは、上述した実施の形態で説明した機能を実現することができれば、どのような構成でもよい。また、各システムおよび各装置は、1つの装置でも、複数の装置から構成されたシステムでもよい。
また、実施の形態1から7のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、これらの実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1から7では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0135】
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示の範囲、本開示の適用物の範囲、および本開示の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0136】
30 衛星、310,112,202 衛星制御装置、32 衛星通信装置、33,122,114,204 推進装置、34,115,205 姿勢制御装置、35,123,116,206 電源装置、111,201 観測装置、121,113,203 通信装置、124,117 カメラ、40 管理事業装置、41 メガコンステレーション事業装置、42 LEOコンステレーション事業装置、43 衛星事業装置、44 軌道遷移事業装置、45 デブリ除去事業装置、46 ロケット打ち上げ事業装置、47 SSA事業装置、500 宇宙交通管理システム、501 宇宙物体情報、590 カタログ、471 計測誤差精査装置、472 加減速物体追跡装置、52 衛星軌道予報情報、53 デブリ軌道予報情報、511 宇宙物体ID、512 予報元期、513 予報軌道要素、514 予報誤差、60 宇宙物体、700 宇宙交通管理装置、701 地上設備、710 宇宙交通管理部、711 コマンド、712 監視データ、720 記憶部、810 監視装置、810a 第1の監視装置、811 通信衛星、812,813 観測衛星、821 データ解析装置、822 データ再取得判断装置、823 自動監視制御装置、824 監視対象識別装置、830 静止衛星、840 第2の監視装置、910 プロセッサ、921 メモリ、922 補助記憶装置、930 入力インタフェース、940 出力インタフェース、941 表示機器、950 通信装置。
図1
図2
図3
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図5
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