(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B05B 11/00 20230101AFI20231215BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20231215BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B05B11/00 101G
B65D47/34 110
F04B9/14 B
(21)【出願番号】P 2020130988
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-054966(JP,U)
【文献】特開昭55-124564(JP,A)
【文献】特開平11-262704(JP,A)
【文献】特開2017-210239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B11/00-11/10
B65D35/44-35/54
39/00-55/16
F04B9/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体における口部に上方付勢状態で下方移動可能に設けられるとともに、前記容器本体内の内容液を吐出する吐出孔を有するヘッドユニットと、
前記口部に装着される装着キャップに取り付けられるとともに、前記ヘッドユニットを上下動可能に支持するシリンダと、
上方付勢状態で下方移動可能に設けられた上弁体、及び前記上弁体の下方に配置され、下方付勢状態で上方移動可能に設けられた下弁体を一体に有するプランジャと、
前記下弁体が上方から接離することで前記シリンダ内と前記容器本体内との連通及び遮断が切り替えられる下弁座を有する弁支持部と、を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記シリンダに対する前記ヘッドユニットの上下動に伴い、前記シリンダの内周面上を摺動するピストン部と、
前記上弁体が下方から接離することで前記吐出孔と前記シリンダ内との連通及び遮断が切り替えられる上弁座と、を備え、
前記シリンダには、
前記シリンダの内周面に対して窪み、前記ヘッドユニットが下降端位置にあるとき前記ピストン部に対向する凹部と、
前記凹部よりも上方において前記シリンダを径方向に貫通するとともに、前記ヘッドユニットが下降端位置にあるときに前記凹部と前記ピストン部との間の隙間に連通する連通孔と、が形成されている吐出器。
【請求項2】
前記シリンダのうち前記ピストン部よりも上方に位置する部分には、前記シリンダを貫通する外気導入孔が形成され、
前記ヘッドユニットは、前記ピストン部よりも上方に位置する部分に、前記シリンダに対する前記ヘッドユニットの上下動に伴い、前記シリンダの内周面上を摺動する規制部を備え、
前記規制部は、前記ヘッドユニットが上昇端位置にあるときに前記外気導入孔を通じた前記容器本体の内外の連通を遮断し、前記ヘッドユニットが下降端位置にあるときに前記外気導入孔を通じた前記容器本体の内外を連通させる請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記ヘッドユニットは、
前記上弁座が形成された第1ステムと、
前記第1ステムに下方から組み合わされるとともに、前記ピストン部が形成された第2ステムと、を備えている請求項1又は請求項2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体の口部に取り付けられる吐出器として、蓄圧式の吐出器が知られている。この種の吐出器は、吐出孔が形成された押下ヘッドと、容器本体内に連通可能な主シリンダと、吐出孔に連通可能な副シリンダ(上部シリンダ)と、主シリンダ内及び副シリンダ内を移動可能に嵌合されるとともに、主シリンダ内及び副シリンダ内を連通する連通路が形成されたプランジャと、を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。プランジャは、主シリンダの内周面上を上下方向に摺動する主ピストンと、副シリンダの内周面上を上下方向に摺動する副ピストンと、を備えている。
【0003】
上述した吐出器を用いて内容液を吐出するには、まず押下ヘッドを押し下げる。すると、副シリンダ及びプランジャが主シリンダに対して下降することで、主シリンダ内が加圧され、主シリンダ内の内容液が連通路を通して副シリンダ内に流入する。そして、副シリンダ内への内容液の流入により副シリンダ内が加圧(蓄圧)されると、副シリンダに対してプランジャが下降する。これにより、副シリンダ内と吐出孔とが連通する。その結果、内容液が吐出孔を通して外部に吐出される。
【0004】
上述した吐出器においては、押下ヘッドを下降端位置まで押し下げて内容液を吐出させた後、主シリンダ内の圧力が高い状態のままとなり、主シリンダ内に内容液を十分に流入させることができない可能性があった。そこで、吐出器では、押下ヘッドが下降端位置まで押し下げられた状態において、主シリンダの内部と外部とを連通させる透孔を設けて、主シリンダ内の圧力を容器本体内に逃がす構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の吐出器では、例えば押下ヘッドを勢いよく押し下げた場合等において、押下ヘッドに対してプランジャが下降した際、押下ヘッドが下降端位置に到達する前にプランジャの下端部に設けられた主ピストンが、主シリンダに設けられた圧逃がし凹部(環状凹溝)に達し、主シリンダ内の内容液貯留空間と容器本体内とを連通する透孔が開放される可能性があった。この場合には、押下ヘッドが下降端位置まで到達する前に主シリンダ内の圧力が逃がされるため、押下ヘッドの押し下げ量に対応した規定量の内容液を安定して吐出する点で未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は、押下ヘッドの押し下げ量に対応した規定量の内容液を安定して吐出できる吐出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係る吐出器は、容器本体における口部に上方付勢状態で下方移動可能に設けられるとともに、前記容器本体内の内容液を吐出する吐出孔を有するヘッドユニットと、前記口部に装着される装着キャップに取り付けられるとともに、前記ヘッドユニットを上下動可能に支持するシリンダと、上方付勢状態で下方移動可能に設けられた上弁体、及び前記上弁体の下方に配置され、下方付勢状態で上方移動可能に設けられた下弁体を一体に有するプランジャと、前記下弁体が上方から接離することで前記シリンダ内と前記容器本体内との連通及び遮断が切り替えられる下弁座を有する弁支持部と、を備え、前記ヘッドユニットは、前記シリンダに対する前記ヘッドユニットの上下動に伴い、前記シリンダの内周面上を摺動するピストン部と、前記上弁体が下方から接離することで前記吐出孔と前記シリンダ内との連通及び遮断が切り替えられる上弁座と、を備え、前記シリンダには、前記シリンダの内周面に対して窪み、前記ヘッドユニットが下降端位置にあるとき前記ピストン部に対向する凹部と、前記凹部よりも上方において前記シリンダを径方向に貫通するとともに、前記ヘッドユニットが下降端位置にあるときに前記凹部と前記ピストン部との間の隙間に連通する連通孔と、が形成されている。
【0009】
本態様によれば、ヘッドユニットが上昇する際にシリンダ内が減圧されることで、下弁体が下弁座から上方に離反し、容器本体内の内容液がシリンダ内に流入する。一方、シリンダ内に内容液が充填された状態でヘッドユニットを押し下げると、シリンダ内が加圧されることで上弁体が上弁座から下方に離反する。これにより、シリンダ内の内容液が吐出孔を通じて吐出される。
ここで、ヘッドユニットが下降端位置まで押し下げられ、ピストン部と凹部とが対向すると、ピストン部がシリンダから径方向に離間する。これにより、シリンダの内外の圧力差によって凹部とヘッドユニットとの間の隙間、及び連通孔を通じてシリンダ内の内容液がシリンダの外部に排出される。その結果、内容液の吐出後にシリンダ内に内容液が残存するのを抑制できる。
【0010】
特に、本態様では、ヘッドユニットがピストン部及び吐出孔を有するため、ヘッドユニットの押し下げ力や押し下げ速度に関らず、吐出孔とピストン部とが一体で上下動する。そのため、ピストン部がヘッドユニットとは別に設けられる構成と異なり、規定量の内容液が吐出される前にピストン部が凹部に対向する位置まで到達するのを抑制できる。その結果、本態様に係る吐出器では、ヘッドユニットの押し下げ量に対応した規定量の内容液を安定して吐出することができる。
【0011】
しかも、本態様では、下弁体が下方付勢状態で上方移動可能に設けられている構成とした。
この構成によれば、内容液の吐出時におけるシリンダ内の加圧状態において、下弁体が不意に開弁するのを抑制できる。その結果、シリンダ内の圧力を安定させることができ、内容液の吐出態様を安定させることができる。
本態様では、上弁体が上方付勢状態で下方移動可能に設けられている構成とした。
この構成によれば、ヘッドユニットが下降端位置に到達してシリンダ内の圧力が開放された際には上弁体が上弁座に速やかに着座する。これにより、シリンダ内の内容液が吐出孔に到達するのを抑制し、吐出孔からの液だれを抑制できる。
そして、本態様では、プランジャが下弁体及び上弁体を一体に備えているので、部品点数の削減や組立精度を向上させることができる。組立精度を向上させることで、内容液の漏れを抑制できるとともに、下弁体及び上弁体の開弁状態及び閉弁状態における圧力精度を高め、優れた操作性を具備させることができる。
【0012】
上記態様の吐出器において、前記シリンダのうち前記ピストン部よりも上方に位置する部分には、前記シリンダを貫通する外気導入孔が形成され、前記ヘッドユニットは、前記ピストン部よりも上方に位置する部分に、前記シリンダに対する前記ヘッドユニットの上下動に伴い、前記シリンダの内周面上を摺動する規制部を備え、前記規制部は、前記ヘッドユニットが上昇端位置にあるときに前記外気導入孔を通じた前記容器本体の内外の連通を遮断し、前記ヘッドユニットが下降端位置にあるときに前記外気導入孔を通じた前記容器本体の内外を連通させることが好ましい。
本態様によれば、ヘッドユニットが下降端位置にあるときに外気導入孔を通じて容器本体の内外が連通する。これにより、容器本体内に外気を効率的に導入できるので、吐出動作に伴う容器本体内の圧力低下を抑制できる。
一方、ヘッドユニットが上昇端位置にあるときに外気導入孔を通じた容器本体の内外の連通が規制部によって遮断される。これにより、例えば吐出容器が転倒した場合等であっても、容器本体内の内容液が外気導入孔を通じて漏れるのを抑制できる。
【0013】
上記態様の吐出器において、前記ヘッドユニットは、前記上弁座が形成された第1ステムと、前記第1ステムに下方から組み合わされるとともに、前記ピストン部が形成された第2ステムと、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、上弁座が形成された第1ステムと、ピストン部が形成された第2ステムと、が別部材で構成されることで、例えば上弁座及びピストン部に適した材料を選択できる等、設計自由度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押下ヘッドの押し下げ量に対応した規定量の内容液を安定して吐出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本実施形態に係る吐出器の拡大断面図である。
【
図3】本実施形態に係る吐出器の拡大断面図である。
【
図4】本実施形態に係る吐出器の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、吐出器1が容器本体2に取り付けられた吐出容器10を例にして説明する。
図1に示す吐出容器10は、内容物が収容される有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部2aに着脱可能に装着された吐出器1と、を備えている。容器本体2及び吐出器1の各中心軸は、共通の軸線上に配置されている。以下、この共通の軸線を吐出容器10の容器軸Oといい、容器軸Oに沿う容器軸O方向を上下方向という。また、上下方向に沿う容器本体2の底部側を下方といい、口部2a側を上方という。上下方向から見た平面視で容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。なお、吐出容器10の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0017】
吐出器1は、吐出孔11が形成された押下ヘッド12を有するポンプ13と、ポンプ13を口部2aに取り付ける装着キャップ14と、を備えている。
【0018】
装着キャップ14は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。装着キャップ14は、装着筒21と、ガイド筒22と、保持筒23と、を備えている。
装着筒21は、容器本体2の口部2aに着脱可能に装着される。装着筒21の上端部には、径方向の内側に張り出す第1フランジ25が形成されている。第1フランジ25は、吐出器1が口部2aに装着された状態において、口部2aの上方に配置される。
【0019】
ガイド筒22は、第1フランジ25の内周縁から上方に延びている。ガイド筒22の下端部(第1フランジ25よりも上方に位置する部分)には、径方向の内側に張り出す第2フランジ26が形成されている。
保持筒23は、第2フランジ26の内周縁から上方に延びている。すなわち、保持筒23は、ガイド筒22に対して径方向の内側に、ガイド筒22から離間して配置されている。保持筒23の上端部には、保持筒23から径方向の内側に張り出す第3フランジ27が形成されている。
【0020】
ポンプ13は、シリンダ31と、付勢部材32と、弁支持部33と、プランジャ34と、ステム35と、上述した押下ヘッド12と、を備えている。
シリンダ31は、装着キャップ14が容器本体2に装着された状態において、一部が口部2aから上方に突出した状態で容器本体2内に配置される。具体的に、シリンダ31は、シリンダ筒41と、取付筒42と、外フランジ43と、嵌合筒44と、を備えている。
【0021】
シリンダ筒41は、上方に位置するものほど大径に形成された多段筒状に形成されている。具体的に、シリンダ筒41は、収容筒51、摺動筒52及び連通筒53が下方から上方に連なっている。
摺動筒52の下端部には、摺動筒52の内周面に対して径方向の外側に窪んだ凹部52aが形成されている。凹部52aは、摺動筒52の全周に亘って周方向に連続的に形成されている。但し、凹部52aは、周方向に間欠的に形成されていてもよい。
【0022】
連通筒53は、口部2aの上端縁に対して上下両側に延びている。連通筒53の下端部(口部2a内に位置する部分)には、連通孔55が形成されている。連通孔55は、容器本体2内と連通筒53内とを連通している。
連通筒53の上端部(口部2aよりも上方に位置する部分)には、外気導入孔56が形成されている。外気導入孔56は、シリンダ31と装着キャップ14との間及びシリンダ31とステム35との間を通じて容器本体2内と吐出器1の外部とを連通している。
【0023】
取付筒42は、収容筒51から下方に延びている。取付筒42内には、吸上筒59が嵌合されている。吸上筒59の下端開口部は、容器本体2の底部に近接している。
【0024】
外フランジ43は、連通筒53のうち連通孔55及び外気導入孔56の間に位置する部分から径方向の外側に張り出している。外フランジ43は、装着筒21内の上端部に嵌合している。外フランジ43は、吐出器1が口部2aに装着された状態において、第1フランジ25と口部2aとの間にパッキンを介して挟まれる。
嵌合筒44は、外フランジ43から上方に突出している。嵌合筒44は、第1フランジ25内に嵌合している。
【0025】
付勢部材32は、収容筒51内に収容されている。付勢部材32の下端は、収容筒51の底壁部分に支持されている。付勢部材32の上端は、収容筒51と摺動筒52との境界部分に位置している。なお、付勢部材32は、金属材料によって形成されていてもよい。
【0026】
弁支持部33は、シリンダ筒41内に収容されている。弁支持部33は、基筒61と、摺動部62と、下弁座63と、を備えている。
基筒61は、容器軸Oと同軸に配置されている。基筒61の下端部は、付勢部材32の上端部に組み合わされている。これにより、弁支持部33は、上方付勢状態で下方移動可能に付勢部材32に支持されている。基筒61における上下方向の中央部には、基筒61を径方向に貫通する流通口65が形成されている。流通口65は、摺動筒52内において基筒61の内外を連通している。図示の例において、流通口65は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0027】
摺動部62は、基筒61の下端部から径方向の外側に向かうに従い上方に延びるテーパ筒状に形成されている。摺動部62の外周縁は、収容筒51の内周面に当接している。摺動部62は、弁支持部33の上下動に伴い、収容筒51の内周面上を摺動する。
下弁座63は、基筒61のうち流通口65よりも下方に位置する部分から径方向の内側に張り出している。下弁座63は、容器軸Oと同軸に配置された環状に形成されている。
【0028】
プランジャ34は、弁支持部33に対して上方に突出した状態で弁支持部33に組み合わされている。具体的に、プランジャ34は、プランジャ体71と、下弁体72と、上弁体73と、を備えている。
プランジャ体71は、上下方向に延びる棒状に形成されている。プランジャ体71の下端部は、基筒61内に基筒61の上方から嵌合している。プランジャ体71の下端は、流通口65よりも上方に位置している。プランジャ体71の上端部(基筒61よりも上方に突出した部分)には、流通溝75が形成されている。流通溝75は、プランジャ体71の外周面上で開口するとともに、上下方向に延在している。したがって、流通溝75は、少なくとも一部が第2ステム91内に開口している。流通溝75は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0029】
下弁体72は、プランジャ体71の下端にプランジャ体71と一体に形成されている。下弁体72は、弁付勢部77と、着座部78と、を備えている。
弁付勢部77は、側面視で径方向を軸方向とする環状に形成されている。弁付勢部77は、上下方向に弾性変形可能に構成されている。弁付勢部77は、外周面の一部がプランジャ体71の下端に連なっている。なお、弁付勢部77は、環状に限らず、コイル状や板ばね状であってもよい。
【0030】
着座部78は、弁付勢部77から下方に突出している。着座部78は、弁付勢部77の付勢力によって下方付勢状態で上方移動可能に、下弁座63に上方から着座している。下弁体72は、下弁座63に対して上方から接離することで、シリンダ31内において流通口65を通じた弁支持部33の内外の連通及び遮断を切り替える。すなわち、下弁体72の開弁状態(
図2参照)においては、容器本体2内が下弁座63の内側及び流通口65を通じて摺動筒52内における弁支持部33の外側空間(貯留空間S1)に連通する。一方、下弁体72の閉弁状態(
図1参照)においては、下弁座63の内側及び流通口65を通じた容器本体2内と貯留空間S1との連通が遮断される。本実施形態において、下弁体72は、弁付勢部77が圧縮変形させられた状態で、着座部78が下弁座63に着座するように設定されている。
【0031】
上弁体73は、プランジャ体71の上端にプランジャ体71と一体に形成されている。具体的に、上弁体73は、プランジャ体71のうち流通口65の上方に位置する部分から上方に突出している。上弁体73は、上方に向かうに従い漸次縮径している。上弁体73は、プランジャ34が弁支持部33を介して付勢部材32に支持されていることで、上方付勢状態で下方移動可能に構成されている。なお、本実施形態では、プランジャ34が一体形成された構成について説明したが、これに限られない。プランジャ34は、下弁体72及び上弁体73が相対移動不能な構成であればよい。この場合、例えば下弁体72及び上弁体73がプランジャ体71に別々に固定される構成であってもよい。
【0032】
ステム35は、弁支持部33及びプランジャ34を介して上方付勢状態で下方移動可能に付勢部材32に支持されている。ステム35は、第1ステム81及び第2ステム82が上下方向に組み合わされた構成である。
【0033】
第1ステム81は、取付筒85と、上弁座86と、突当部87と、を備えている。
取付筒85は、容器軸Oと同軸に配置されている。取付筒85内には、取付筒85の下方からプランジャ34が挿入されている。取付筒85は、第3フランジ27の内側を通じて装着キャップ14よりも上方に突出している。
【0034】
上弁座86は、取付筒85における上下方向の中央部から径方向の内側に張り出している。上弁座86は、容器軸Oと同軸に配置された環状に形成されている。上弁座86には、上述した上弁体73が下方から着座している。したがって、第1ステム81は、上弁座86を介してプランジャ34に下方から支持された状態で、プランジャ34に対して上下動可能に構成されている。
【0035】
上弁体73は、上弁座86に対して下方から接離することで、上弁座86を通じたステム35の内外の連通及び遮断を切り替える。すなわち、上弁体73の開弁状態(
図3参照)においては、第1ステム81及び押下ヘッド12の吐出孔11を通じて吐出容器10の外部と貯留空間S1とが連通する。一方、上弁体73の閉弁状態においては、第1ステム81及び吐出孔11を通じた吐出容器10の外部と貯留空間S1との連通が遮断される。本実施形態において、上弁体73は、付勢部材32が圧縮変形させられた状態で、上弁座86に着座するように設定されている。ステム35は、上弁体73が上弁座86に下方から押し付けられることで、付勢部材32の付勢力により上方付勢状態で下方移動可能に構成されている。
【0036】
突当部87は、取付筒85のうち上弁座86よりも下方に位置する部分から径方向の外側に突出している。突当部87は、押下ヘッド12が上昇端位置にあるとき第3フランジ27に対して下方から近接又は当接している。
【0037】
第2ステム82は、嵌合筒91と、ピストン部92と、規制部93と、を備えている。
嵌合筒91は、容器軸Oと同軸に配置されている。嵌合筒91内の上端部には、取付筒85が上方から嵌合されている。取付筒85が嵌合筒91内に嵌合された状態において、嵌合筒91の上端縁は、突当部87に下方から近接又は当接している。なお、嵌合筒91における上下方向の中央部には、径方向の内側に突出する突出部95が形成されている。突出部95は、取付筒85の下端縁が上方から近接又は当接している。
【0038】
ピストン部92は、嵌合筒91の下端から下方に向かうに従い径方向の外側に延びるテーパ筒状である。ピストン部92の下端縁は、摺動筒52の内周面に接している。したがって、シリンダ31内のうち、弁支持部33及びプランジャ34の外側空間であって、ステム35と弁支持部33の摺動部62とで囲まれた空間は内容液の貯留空間S1を構成している。上述した流通口65は、貯留空間S1に開口している。
【0039】
本実施形態において、押下ヘッド12が下降端位置以外の位置にあるとき、ピストン部92は、シリンダ31に対するステム35の上下動に伴い摺動筒52の内周面上を摺動する。一方、押下ヘッド12が下降端位置(
図4参照)にあるとき、ピストン部92は、凹部52aと径方向で対向する。すなわち、押下ヘッド12が下降端位置にあるとき、ピストン部92と凹部52aの内面とが離間することで、貯留空間S1が連通孔55を通じて容器本体2内に連通する。
【0040】
規制部93は、嵌合筒91の上端部から下方に向かうに従い径方向の外側に延びるテーパ筒状である。規制部93の下端縁は、連通筒53の内周面に接している。したがって、規制部93は、ステム35の上下動に伴い連通筒53の内周面上を摺動する。本実施形態において、押下ヘッド12が上昇端位置にあるとき、規制部93は、外気導入孔56よりも上方に位置している。したがって、規制部93は、外気導入孔56及び連通筒53を通じた容器本体2の内外の連通を遮断している。一方、押下ヘッド12が下降端位置にあるとき、規制部93は、外気導入孔56と連通孔55との間に位置している。したがって、外気導入孔56及び連通筒53を通じて容器本体2の内外が連通する。
【0041】
押下ヘッド12は、第1ステム81の上端部に取り付けられている。具体的に、押下ヘッド12は、外装部100と、連結筒101と、を備えている。
外装部100は、有頂筒状に形成されている。外装部100の周壁には、上述した吐出孔11が開口している。
連結筒101は、外装部100の頂壁部から下方に延びている。連結筒101は、取付筒85内に取付筒85の上方から嵌合している。したがって、押下ヘッド12は、ステム35と一体に組み付けられ、ステム35とともに上下動する。ポンプ13のうち押下ヘッド12及びステム35は、本実施形態のヘッドユニットを構成する。
【0042】
連結筒101の下端開口部は、上弁座86を通じて貯留空間S1に連通可能に構成されている。一方、連結筒101の上端部は、吐出孔11に連通している。なお、吐出器1は、有頂筒状のキャップ110を備えている。キャップ110は、押下ヘッド12を上方から覆った状態で、ガイド筒22に着脱可能に装着される。
【0043】
次に、上述した吐出容器10の操作方法について説明する。
図1に示す吐出容器10において、内容液を吐出させるには、まず押下ヘッド12を押し下げる。すると、ステム35、プランジャ34及び弁支持部33が押下ヘッド12と一体で押し下げられる。押下ヘッド12等が押し下げられる過程では上弁座86が上弁体73に押し付けられることで、貯留空間S1と吐出孔11との連通が遮断されている。また、押下ヘッド12等が押し下げられる過程において、ピストン部92が摺動筒52の内周面上を摺動することで、貯留空間S1が加圧される。そのため、貯留空間S1の圧力によって下弁体72が下弁座63に押し付けられることで、貯留空間S1と容器本体2内の連通が遮断されている。また、ピストン部92が凹部52aに対向した際に、貯留空間S1内の空気が連通孔55を通過して容器本体2内に流入する。
【0044】
押下ヘッド12の押し下げを解除すると、付勢部材32の上方付勢力によって弁支持部33、プランジャ34、ステム35及び押下ヘッド12が一体となって上昇する。押下ヘッド12等が押し上げられる過程において、ピストン部92が摺動筒52の内周面上を摺動することで、貯留空間S1が減圧される。これにより、
図2に示すように、下弁体72が引き上げられ、下弁座63から離反する。すると、容器本体2内の内容液が吸上筒59を通じて吸い上げられ、シリンダ31(収容筒51)内に流入する。収容筒51内に流入した内容液は、下弁座63の内側、及び流通口65を通じて貯留空間S1内に流入する。
【0045】
上述した押し下げ動作を複数回行うと、貯留空間S1内に内容液が充填される。この状態において、さらに押下ヘッド12を押し下げると、貯留空間S1の圧力が付勢部材32の付勢力よりも大きくなる。すると、貯留空間S1内の圧力が摺動部62に上方から作用することで、
図3に示すように、弁支持部33及びプランジャ34が一体となってステム35に対して下方に移動する。これにより、上弁体73が上弁座86から下方に離反し、貯留空間S1と吐出孔11とが連通する。すると、貯留空間S1内の内容液は、上弁座86の内側を通じて連結筒101内に流入した後、吐出孔11を通じて外部に吐出される。なお、貯留空間S1内の圧力が付勢部材32の付勢力を下回ると、弁支持部33及びプランジャ34が一体となってステム35に対して上方に移動する。これにより、上弁体73が上弁座86に再び着座する。
【0046】
ここで、
図4に示すように、押下ヘッド12を下降端位置まで押し下げた場合には、ピストン部92と凹部52aとが対向することで、ピストン部92と凹部52aの内面との間に隙間が形成される。これにより、貯留空間S1が、ピストン部92と凹部52aとの間、及び連通孔55を通じて容器本体2内に連通する。これにより、貯留空間S1の圧力が開放されるとともに、貯留空間S1内と容器本体2内の圧力差によって貯留空間S1内に残存した内容液が連通孔55を通じて容器本体2内に排出される。その結果、内容液の吐出後に貯留空間S内に内容液が残存するのを抑制できる。なお、押下ヘッド12の押し下げを解除すると、再びピストン部92が摺動筒52の内周面に接し、連通孔55を通じた貯留空間S1と容器本体2内との連通が遮断される。
【0047】
このように、本実施形態では、ピストン部92及び吐出孔11を有するヘッドユニット(押下ヘッド12及びステム35)を備える構成とした。
この構成によれば、ヘッドユニットの押し下げ力や押し下げ速度に関らず、吐出孔11とピストン部92とが一体で上下動する。そのため、ピストン部92が、貯留空間S1内の圧力上昇により押下ヘッド12の下降とは個別に作動する構成と異なり、規定量の内容液が吐出される前にピストン部92が凹部52aに対向する位置まで到達するのを抑制できる。その結果、ヘッドユニットの押し下げ量に対応した規定量の内容液を安定して吐出することができる。
【0048】
しかも、本実施形態では、下弁体72が下方付勢状態で上方移動可能に設けられている構成とした。
この構成によれば、内容液の吐出時における貯留空間S1内の加圧状態において、下弁体72が不意に開弁するのを抑制できる。その結果、貯留空間S1内の圧力を安定させることができ、内容液の吐出態様を安定させることができる。
本実施形態では、上弁体73が上方付勢状態で下方移動可能に設けられている構成とした。
この構成によれば、押下ヘッド12が下降端位置に到達して貯留空間S1内の圧力が開放された際には上弁体73が上弁座86に速やかに着座する。これにより、貯留空間S1内の内容液が吐出孔11に到達するのを抑制し、吐出孔11からの液だれを抑制できる。
そして、本実施形態では、プランジャ34が下弁体72及び上弁体73を一体に備えているので、部品点数の削減や組立精度を向上させることができる。組立精度を向上させることで、内容液の漏れを抑制できるとともに、下弁体72及び上弁体73の開弁状態及び閉弁状態における圧力精度を高め、優れた操作性を具備させることができる。
【0049】
本実施形態の規制部93は、押下ヘッド12が上昇端位置にあるときに外気導入孔56を通じた容器本体2の内外の連通を遮断し、押下ヘッド12が下降端位置にあるときに外気導入孔56を通じた容器本体2の内外を連通させる構成とした。
この構成によれば、押下ヘッド12が下降端位置にあるときに外気導入孔56を通じて容器本体2の内外が連通する。これにより、容器本体2内に外気を効率的に導入できるので、吐出動作に伴う容器本体2内の圧力低下を抑制できる。
一方、押下ヘッド12が上昇端位置にあるときに外気導入孔56を通じた容器本体2の内外の連通が規制部93によって遮断される。これにより、例えば吐出容器10が転倒した場合等であっても、容器本体2内の内容液が外気導入孔56を通じて漏れるのを抑制できる。
【0050】
本実施形態のステム35は、上弁座86が形成された第1ステム81と、ピストン部92が形成された第2ステム82と、を備える構成とした。
この構成によれば、第1ステム81及び第2ステム82が別部材で構成されることで、例えば上弁座86及びピストン部92に適した材料を選択できる等、設計自由度の向上を図ることができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、ステム35が第1ステム81及び第2ステム82に分割されている構成について説明したが、第1ステム81及び第2ステム82が一体に形成されていてもよい。また、ステム35の少なくとも一部と押下ヘッド12とが一体に形成されていてもよい。すなわち、本発明に係るヘッドユニットは、吐出孔11とピストン部92とが相対移動不能に一体に構成されていればよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…吐出器
2…容器本体
2a…口部
11…吐出孔
12…押下ヘッド(ヘッドユニット)
14…装着キャップ
31…シリンダ
34…プランジャ
35…ステム(ヘッドユニット)
52a…凹部
56…外気導入孔
55…連通孔
63…下弁座
72…下弁体
73…上弁体
86…上弁座
87…突当部
92…ピストン部
93…規制部