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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】振動検出器および振動検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01H 11/02 20060101AFI20231215BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G01H11/02 D
G01H1/00 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020133492
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029898
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土方 健司
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-128131(JP,A)
【文献】特開2011-252875(JP,A)
【文献】実開平06-033032(JP,U)
【文献】特開昭55-018946(JP,A)
【文献】特開2004-191326(JP,A)
【文献】特開平04-089533(JP,A)
【文献】特開昭50-094960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0207974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 13/00-13/045,99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機の軸受台に設けられたヘッドと、前記ヘッドに設けられた渦電流センサと、一端が前記回転機の軸に接し、他端が前記渦電流センサのセンサトップにギャップを有して配置されたターゲットを有するロッドとを備え、前記ロッドの上下振動に伴う前記ギャップの変動から前記回転機の振動を検出する振動検出器であって、
前記渦電流センサは、前記ヘッドに設けられたダンパ筒に収納されている振動検出器。
【請求項2】
前記ダンパ筒は、前記ヘッドから延伸する長さが異なる第一板バネ、第二板バネによって保持されている請求項1に記載の振動検出器。
【請求項3】
前記ダンパ筒は、加えて前記ヘッドのネジ部で固定されている請求項2に記載の振動検出器。
【請求項4】
前記ダンパ筒は、前記ヘッドのネジ部で固定されている請求項1に記載の振動検出器。
【請求項5】
前記ダンパ筒内には、オイルおよび不活性ガスが封入されている請求項1に記載の振動検出器。
【請求項6】
前記ダンパ筒は、樹脂製とする請求項1に記載の振動検出器。
【請求項7】
前記軸受台の垂直軸上に設けられた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の振動検出器。
【請求項8】
前記軸受台の垂直軸から45°離れて設けられた請求項1から請求項のいずれか1項に記載の振動検出器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の振動検出器の出力信号を受信するドライバとユニットカードによってなされる信号処理の結果が、モニタに表示される振動検出システム。
【請求項10】
前記軸受台の垂直軸上および水平軸上に、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動検出器が設けられるとともに、前記振動検出器の出力信号を受信するドライバとユニットカードによってなされる信号処理の結果が、モニタに表示される振動検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、振動検出器および振動検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力あるいは原子力発電で用いられている蒸気タービン、給水ポンプ等の軸振動の測定を行う振動計に関する技術であって、保護筒内に移動可能に挿入され外部に出ている一端にタービンの回転軸に接する接触子が設けられているとともに、他端は平面に形成された振動伝達軸を備え、前記振動伝達軸の平面に一定の間隔をおいて先端が対向するよう取り付けられた渦電流式非接触形振動検出器とを具備したプローブ一体形振動計が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-33032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示された振動計は、タービン回転軸の軸受台に設けられた取付用穴に保護筒が固定された構造であるので、地震動による揺れが生じた場合、振動計自体が軸受台および回転軸と同位相、同振幅で揺れ、相対振動=ゼロとなる相対振動計を構成するため、絶対振動の計測が不可能であるという問題点がある。また、発電所等の大型回転機を設置するプラントでは、プラント運転の安全性向上のため、軸受台の振動検出の精度向上について、強い要請がなされており、上記特許文献1に示された技術では対応出来ないものである。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、安定した振動検出を行うことができる振動検出器および振動検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される振動検出器は、回転機の軸受台に設けられたヘッドと、前記ヘッドに設けられた渦電流センサと、一端が前記回転機の軸に接し、他端が前記渦電流センサのセンサトップにギャップを有して配置されたターゲットを有するロッドとを備え、前記ロッドの上下振動に伴う前記ギャップの変動から前記回転機の振動を検出する振動検出器であって、前記渦電流センサは、前記ヘッドに設けられたダンパ筒に収納されているものである。
また、本願に開示される振動検出システムは、上記振動検出器の出力信号を上記記載の振動検出器の出力信号を受信するドライバとユニットカードによってなされる信号処理の結果が、モニタに表示されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される振動検出器および振動検出システムによれば、安定した振動検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による振動検出器の配置を示す図である。
図2】実施の形態1による振動検出器を示す図である。
図3】実施の形態1による振動検出システムを示すブロック図である。
図4】実施の形態1による振動検出を示す波形図である。
図5】振動検出波形を示す比較例図である。
図6】実施の形態2による振動検出器を示す図である。
図7】実施の形態2による振動検出器を示す図である。
図8】実施の形態3による振動検出器を示す図である。
図9】実施の形態4による振動検出器を示す図である。
図10】実施の形態5による振動検出器の代替配置を示す図である。
図11】実施の形態5による振動検出器の代替配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1を図に基づいて説明する。図1は回転機50である例えば火力発電所に設置されたタービン発電機の振動を測定する振動検出器100の配置状態を示す。振動検出器100は回転機50の垂直方向(Y軸)の軸受台4に設けられている。図2に振動検出器100の構成を示す。振動検出器100の構成は、軸30の振動を外部に伝達するロッド2と、渦電流センサ20とに大別される。ロッド2には、一端に軸30に摺動しながら接触するシュー1と、他端にターゲット3が設けられる。また、ロッド2の上下振動をサポートするバネ体16を格納する保護筒9が設けられる。
【0010】
渦電流センサ20は、軸受台4に固定されたヘッド11から延伸する第一板バネ6、第二板バネ7を介して、支持体8によって支持されたセンサ5によって構成される。センサ5の先端部分(センサトップ5A)がギャップG(例えば、1.5mm)を介してターゲット3に対向して設けられる。第一板バネ6の長さL1と第二板バネ7の長さL2とはL1>L2の関係を有す。また、ターゲット3の直径は、センサトップ5Aの直径の3倍以上が採用される。
【0011】
軸30の振動は、シュー1を介してロッド2を上下振動させる。ターゲット3の振動はロッド2の振動を渦電流センサ20とのギャップGの変化として伝達し、このギャップGの変化に対応してセンサ5からの出力信号として検出される。
【0012】
次に、実施の形態1による振動検出器100の動作について説明する。回転機50の軸30の振動は、シュー1に取り付けられたロッド2を介して、ターゲット3に伝達される。振動は軸受台4に固定されたヘッド11に取り付けられた渦電流センサ20のセンサ5のギャップGの変化として計測され、渦電流センサ20にはギャップGの変動に応じた電圧出力が得られる。発生した電圧変動は外部へ信号として出力する。このように、軸30の振動はターゲット3とその上部に設けられたセンサ5との距離(ギャップG)の連続した微小変動として捉えられ、電気信号として外部出力することが可能となる。
【0013】
次に、自然現象の地震動あるいは発電所用大型補機の運転に伴う地震動が生じた場合、軸受台4と回転機50すなわち軸30とは、同位相、同振幅で揺れるが、ヘッド11に振動抑制用のダンパとして機能する長さの異なる第一板バネ6、第二板バネ7により、フローティングマウントされた渦電流センサ20は、2枚の第一板バネ6、第二板バネ7の振動周波数の違いから相互にダンピングして揺れを抑え、空間での静止位置を保つ。よって軸受台4、回転機50の揺れはターゲット3とセンサ5のギャップ変動となり、地震動による軸受台4、回転機50(軸30)の揺れ=絶対振動を検知して信号出力可能な絶対振動計を構成することが可能となる。
【0014】
図3は、実施の形態1の振動検出システムを示すブロック図である。振動検出器100の渦電流センサ20の出力は、ドライバ110を介してユニットカード120に送信される。このユニットカード120ではアナログ出力回路、警報出力回路、センサ断線検出回路等が設けられており、渦電流センサ20から得られる振動変位に比例した交流波形を読み込み、所定の演算処理を行い、その結果がモニタ130に出力、表示される。
【0015】
図4に、時間経過に伴う地震動、回転機50の軸30の振動、振動検出器100の出力、モニタ130の検出、表示波形例を示す。図4において、Aは地震動、Bは軸30の振動、Cは振動検出器100の出力、Dはユニットカード120で処理されたモニタ130に表示される例を示す。図4のAに示すように、時刻t1において地震動が発生し、時刻t3で減衰する。一方、Bに示すように同時刻のt1において軸振動が発生し、時刻t2で減衰している。振動検出器100は時刻t1から時刻t3にわたり、Cの曲線に示す出力をする。この出力を入力するユニットカード120は所定の処理を実行し、Dの時刻t1から時刻t3の曲線に示す出力がモニタ130に表示される。また、Bに示すように時刻t4からt5にかけて発生する軸30の振動は、Dに示す時刻t4からt5の曲線に示す出力がモニタ130に表示される。この図4から明らかなように、この実施の形態1では安定した振動検出と絶対振動を検出することができ、回転機50の異常発生を未然に防止可能となり、プラントの安全運転に寄与できるという効果がある。
【0016】
尚、上記図4に例示した地震動および軸30の振動と同一現象が発生したとする場合に、比較例による検出、表示波形を、比較図として図5に示す。
【0017】
実施の形態2.
次に、実施の形態2を図に基づいて説明する。図6に示すように、この実施の形態2による振動検出器100は、前述した実施の形態1の図2の渦電流センサ20に代替した渦電流センサ20Aとしたものであり、これ以外は図2と同様である。渦電流センサ20Aは、ヘッド11にダンパ機能を有する第一板バネ6、第二板バネ7によって支持されるとともに、同じくダンパ機能を有するダンパ筒12内にセンサ5が設けられている。ダンパ筒12は樹脂製で、内部に低粘度のオイル13、例えばシリコンオイルと、不活性ガス14、例えば窒素ガスが封入されている。センサ5の先端部のセンサトップ5Aはダンパ筒12から突出しており、封止材15は、例えばオーリングで、オイル13、不活性ガス14が漏洩しないよう封止されている。この構成により、センサ5がダンパ筒12の内部を上下方向に自由に動くことが可能であり、前述した実施の形態1と同様にセンサ5とターゲット3のギャップGの変動に対応した電圧出力が得られる。尚、オイル13の粘度、流入量、および不活性ガス14の封入圧力は、試験の上最適値が設定される。尚、前述した図6に代替して図7に示すようにダンパ筒12Cがヘッド11にネジ部17にねじ込んで固定される構成の渦電流センサ20Cを備えた振動検出器100であってもよい。
【0018】
このように、実施の形態2の図6によれば、地震動による揺れが発生した場合、ヘッド11、回転機50(軸30)と同位相、同振幅で揺れるが、ヘッド11に支持されたダンパ筒12の内部に封入されたオイル13と不活性ガス14によりフローティングマウントされたセンサ5は、オイル13と不活性ガス14でダンピングされて揺れを抑えて空間での静止位置を保つ。また、第一板バネ6、第二板バネ7によりフローティングマウントされたダンパ筒12は、より大きな揺れでも空間での静止位置を保ち、オイル13、不活性ガス14のフローティング作用を補完する。また、図7に示す構成では加えてヘッド11によるダンパ機能によって、よりフローティング作用を補完する。よって、軸受台4、軸30の振動はターゲット3とセンサ5とのギャップGの変動となり、絶対振動の検出を可能とする。以上の各振動の検出、表示波形は前述した図4と同様であり、この実施の形態2においても実施の形態1と同様の効果がある。
【0019】
実施の形態3.
次に、実施の形態3を図に基づいて説明する。図8に示すように、この実施の形態3による振動検出器100は、前述した実施の形態2の図7に示した渦電流センサ20Cとダンパ筒12Cをそれぞれ渦電流センサ20B、ダンパ筒12Aとしたものである。これ以外は図7と同様である。渦電流センサ20Bは、センサトップ5Aがダンパ筒12A内に収納されるとともにヘッド11のネジ部17にねじ込み固定されている。尚、図8に示すギャップGは10mm~15mmとしている。このように、実施の形態3によれば、オイル13、不活性ガス14の封止材を必要とせず、簡単な構造となるとともに、前述した実施の形態2と同様の効果がある。
【0020】
実施の形態4.
次に、実施の形態4を図に基づいて説明する。図9に示すように、この実施の形態4による振動検出器100は、前述した実施の形態3の渦電流センサ20Bの支持がヘッド11のネジ部17のみで固定されたものである。この実施の形態4によれば、より簡素化された構成で安定した振動検出と絶対振動を検出できる。
【0021】
実施の形態5.
次に、実施の形態5を図に基づいて説明する。図10に示すように、この実施の形態5は、前述した実施の形態1から実施の形態4のいずれかと同様、同じまたはそれぞれ異なる振動検出器100を軸受台4において軸30の垂直方向(Y軸)に1台、水平方向(X軸)に1台設けるとともに、これらの振動検出器100のそれぞれの出力信号を図3に示したドライバ110、ユニットカード120で処理後、モニタ130にてそれぞれ表示するものである。このように、軸受台4のY軸、X軸上にそれぞれ振動検出器100を設ける構成を採用することにより、発生する地震動の成分解析判定が容易となり、前述の効果に加えてより正確な振動検出が可能となる。
【0022】
尚、実施の形態1の図1で示した振動検出器100の配置に代替して、図11に示すように45°の位置に設けてもよい。このような構成を採用することで、実施の形態1と同様の効果がある。また、回転機50としてタービン発電機の例を示したが、タービン同様、送水機等の大型高速の回転機であってもよい。さらに、ダンパとして第一板バネ6、第二板バネ7で支持する構成を示したが、コイルバネであってもよい。
【0023】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0024】
1 シュー、2 ロッド、3 ターゲット、4 軸受台、5 センサ、
5A センサトップ、6 第一板バネ、7 第二板バネ、11 ヘッド、
12,12A ダンパ筒、13 オイル、14 不活性ガス、
20,20A,20B,20C 渦電流センサ、30 軸、50 回転機、
100 振動検出器、130 モニタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11