(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】充電装置を構成する出力切替部の設計方法および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20231215BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231215BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231215BHJP
B60L 53/14 20190101ALN20231215BHJP
B60L 53/30 20190101ALN20231215BHJP
B60L 53/62 20190101ALN20231215BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 P
H01M10/44 Q
B60L53/14
B60L53/30
B60L53/62
(21)【出願番号】P 2020141338
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 詩郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 奏一朗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼口 良輔
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0052507(US,A1)
【文献】特開2020-005369(JP,A)
【文献】特開2013-110870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H01M 10/44
B60L 53/14
B60L 53/30
B60L 53/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C個の充電口と、U個の電力供給ユニットと、前記U個の電力供給ユニットの出力と前記C個の充電口との間に設けられた出力切替部とを備えた充電装置の、前記出力切替部を設計する方法であって、
前記C個の充電口のそれぞれに接続されるリレーの数NをU未満となるように決定する第1ステップと、
(1)前記U個の電力供給ユニットのそれぞれの出力に接続されるリレーの数がC×N/U個となり、かつ(2)前記C個の充電口のうちの任意の2個が共有する電力供給ユニットの数がC×N/U-1個以下となるように、前記出力切替部内にC×N個のリレーを配置する第2ステップと、
を含むことを特徴とする設計方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、前記C個の充電口のそれぞれに接続されるリレーの数NをU/2とする
ことを特徴とする請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
C個の充電口と、
U個の電力供給ユニットと、
前記U個の電力供給ユニットの出力と前記C個の充電口との間に設けられた、請求項1または請求項2に記載の設計方法で設計された出力切替部と、
を備えたことを特徴とする充電装置。
【請求項4】
C個の充電口と、U個の電力供給ユニットと、前記U個の電力供給ユニットの出力と前記C個の充電口との間に設けられた、請求項1または請求項2に記載の設計方法で設計された出力切替部とを備えた充電装置の、前記出力切替部を制御する方法であって、
前記C個の充電口のうちの1個に充電対象が接続されたときに、(1)当該充電口に接続されたN個のリレーのうちの1個を閉状態として当該リレーに接続された電力供給ユニットを前記充電対象の充電のために使用すると仮定すると、残りの電力供給ユニットのうちの未使用なものに接続可能な未使用の充電口がいくつになるかという観点と、(2)当該充電口に接続されたN個のリレーのそれぞれに接続された電力供給ユニットのうちの未使用なものに接続可能な未使用の充電口が現時点においていくつあるかという観点で、閉状態とするリレーを決定する
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力供給ユニットと複数の充電口とを備えた充電装置を構成する出力切替部の設計方法および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車およびプラグインハイブリッド車等の電動車を充電するために、ショッピングセンター、レストランおよびコンビニエンスストア等の駐車場にスタンド型の充電装置を設置するケースが増えてきている。このタイプの充電装置は、商用交流電力を直流化するAC/DC変換部と、AC/DC変換部が出力する電力を昇降圧するDC/DC変換部と、DC/DC変換部が出力する電力を電動車に供給する充電口(充電コネクタ)とを備えている。AC/DC変換部およびDC/DC変換部は、通常、筐体内に収容されている。また、充電口は、通常、筐体から延びる充電ケーブルの先端に設けられている。
【0003】
近年、電動車の普及に伴い、充電装置の増設のニーズが高まってきている。これを受けて、上記のようなスタンド型の充電装置を複数台並べるよりもコスト面でメリットがある、複数の充電口を備えた充電装置も検討されている。例えば特許文献1に見られるように、このタイプの充電装置は、商用交流電力を所望の直流電力に変換する複数の同一の電力供給ユニットと、複数の充電口と、電力供給ユニットと充電口の間に設けられた出力切替部とを備えている。出力切替部は、各電力供給ユニットの出力を複数の充電口のうちの任意の1個に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記複数の充電口を備えた充電装置では、充電口および電力供給ユニットの数を増やしていくと、それに伴って出力切替部に配置すべきリレーの数も増えていく。例えば、充電口の数を4、電力供給ユニットの数を6とした場合は、出力切替部に4×6=24個ものリレーを配置しなければならない。これでは、コストが安いというメリットが十分に活かせているとは言えない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、従来と同等の利便性を有する低コストな充電装置を実現することができる、出力切替部の設計方法および制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る出力切替部の設計方法は、C個の充電口と、U個の電力供給ユニットと、U個の電力供給ユニットの出力とC個の充電口との間に設けられた出力切替部とを備えた充電装置の、出力切替部を設計する方法であって、C個の充電口のそれぞれに接続されるリレーの数NをU未満となるように決定する第1ステップと、(1)U個の電力供給ユニットのそれぞれの出力に接続されるリレーの数がC×N/U個となり、かつ(2)C個の充電口のうちの任意の2個が共有する電力供給ユニットの数がC×N/U-1個以下となるように、出力切替部内にC×N個のリレーを配置する第2ステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
上記設計方法は、第1ステップにおいて、C個の充電口のそれぞれに接続されるリレーの数NをU/2とすることが好ましい。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る出力切替部の制御方法は、C個の充電口と、U個の電力供給ユニットと、U個の電力供給ユニットの出力とC個の充電口との間に設けられた、上記設計方法で設計された出力切替部とを備えた充電装置の、出力切替部を制御する方法であって、C個の充電口のうちの1個に充電対象が接続されたときに、(1)当該充電口に接続されたN個のリレーのうちの1個を閉状態として当該リレーに接続された電力供給ユニットを充電対象の充電のために使用すると仮定すると、残りの電力供給ユニットのうちの未使用なものに接続可能な未使用の充電口がいくつになるかという観点と、(2)当該充電口に接続されたN個のリレーのそれぞれに接続された電力供給ユニットのうちの未使用なものに接続可能な未使用の充電口が現時点においていくつあるかという観点で、閉状態とするリレーを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来と同等の利便性を有する低コストな充電装置を実現することができる、出力切替部の設計方法および制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明が適用される充電装置のブロック図である。
【
図2】本発明に係る出力切替部の制御方法のフロー図である。
【
図3】本発明に係る設計方法で設計された出力切替部の第1実施例を示す図である。
【
図4】
図3に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図5】
図3に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図6】
図3に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図7】
図3に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図8】
図3に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図9】従来の設計方法で設計された出力切替部の第1従来例を示す図である。
【
図10】
図9に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図11】本発明に係る設計方法とも従来の設計方法とも異なる設計方法で設計された出力切替部の第1比較例を示す図である。
【
図12】
図11に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図13】本発明に係る設計方法で設計された出力切替部の第2実施例を示す図である。
【
図14】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図15】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図16】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図17】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図18】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図19】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図20】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図21】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図22】
図13に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図23】従来の設計方法で設計された出力切替部の第2従来例を示す図である。
【
図24】
図23に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図25】本発明に係る設計方法とも従来の設計方法とも異なる設計方法で設計された出力切替部の第2比較例を示す図である。
【
図26】
図25に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図27】本発明に係る設計方法で設計された出力切替部の第3比較例を示す図である。
【
図28】
図27に示した出力切替部の制御の具体例を示す図である。
【
図29】本発明が適用される別の充電装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る出力切替部の設計方法および制御方法について説明する。
【0013】
[充電装置の構成]
図1に、本発明が適用される充電装置10を示す。同図に示すように、充電装置10は、商用電源20が出力する商用交流電力を直流化するAC/DC変換部11と、AC/DC変換部11が出力する電力を昇降圧するDC/DC変換部12と、電動車に接続されるC個の充電口14-1,14-2・・・14-Cと、DC/DC変換部12および充電口14-1,14-2・・・14-Cの間に設けられた出力切替部13とを備えている。
【0014】
DC/DC変換部12は、U個の同一のユニット12-1,12-2・・・12-Uで構成されている。これらは、本発明の「電力供給ユニット」に相当する。電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uの入力は、それぞれAC/DC変換部11の出力に接続されている。また、電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uの出力は、それぞれ出力切替部13に接続されている。
【0015】
出力切替部13は、本発明に係る設計方法によって設計されたもので、複数のリレーで構成されている。ただし、出力切替部13を構成するリレーの数は、DC/DC変換部12を構成する電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uの数Uおよび充電口14-1,14-2・・・14-Cの数Cの積U×Cよりも少ない。
【0016】
出力切替部13を構成するリレーは、不図示の制御部によって開閉制御される。これにより、例えば、電力供給ユニット12-1の出力電力を充電口14-1,14-2のいずれかから出力したり、2個の電力供給ユニット12-1,12-2の出力電力を1個の充電口14-1から出力したりすることができる。ただし、前述した通り、出力切替部13を構成するリレーの数はU×Cよりも少ないので、電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uと充電口14-1,14-2・・・14-Cとの組み合わせには、充電装置10の利便性が損なわれない程度の制約がある。
【0017】
[出力切替部の設計方法]
本発明に係る出力切替部13の設計方法は、C個の充電口14-1,14-2・・・14-Cのそれぞれに接続されるリレーの数NをU未満となるように決定する第1ステップを備えている。
【0018】
Nをユニット数Uに等しくすると、出力切替部13がU×C個のリレーで構成されることとなり、低コスト化を実現することができなくなる。つまり、第1ステップによれば、充電装置10が従来よりも低コストであることが担保される。例えば、Nは、ユニット数Uの1/2であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る出力切替部13の設計方法は、さらに、(1)U個の電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uのそれぞれの出力に接続されるリレーの数がC×N/U個となり、かつ(2)C個の充電口14-1,14-2・・・14-Cのうちの任意の2個が共有する電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uの数がC×N/U-1個以下となるように、出力切替部13内にC×N個のリレーを配置する第2ステップを備えている。
【0020】
図3は、ユニット数U=6、充電口数C=4、充電口[1]~[4]のそれぞれに接続されるリレーの数N=3の条件下で、第2ステップを実行することにより出力切替部13内に4×3=12個のリレーを配置した結果(第1実施例)を示している。なお、
図3以降の各図において、〇印はリレーの位置を示している。また、
図6以降の各図において、●印は閉状態とされたリレーの位置を示している。
【0021】
図3に示すように、第1実施例では、充電口[1]~[4]のそれぞれに、3(=N)個のリレーが接続されている。例えば、充電口[1]には、電力供給ユニット[1]にも接続されるリレーと、電力供給ユニット[3]にも接続されるリレーと、電力供給ユニット[6]にも接続されるリレーとが接続されている。
【0022】
また、第1実施例では、電力供給ユニット[1]~[6]の出力のそれぞれに2(=C×N/U)個のリレーが接続されている。例えば、電力供給ユニット[1]の出力には、充電口[1]にも接続されるリレーと、充電口[4]にも接続されるリレーとが接続されている。
【0023】
また、第1実施例では、充電口[1],[2]が電力供給ユニット[6]を共有し、充電口[1],[3]が電力供給ユニット[3]を共有し、充電口[1],[4]が電力供給ユニット[1]を共有し、充電口[2],[3]が電力供給ユニット[2]を共有し、充電口[2],[4]が電力供給ユニット[4]を共有し、充電口[3],[4]が電力供給ユニット[5]を共有している。すなわち、任意の2つの充電口が、1(=C×N/U-1)個以下の電力供給ユニットを共有している。
【0024】
第2ステップによれば、出力切替部がU×C個のリレーで構成されている従来と同等の利便性を担保することができる。これについては、後で詳細に説明する。
【0025】
[出力切替部の制御方法]
本発明に係る出力切替部13の制御方法は、C個の充電口14-1,14-2・・・14-Cのうちの1個(例えば、14-1)に電動車が接続されたときに、(1)充電口14-1に接続されたN個のリレーのうちの1個を閉状態として当該リレーに接続された電力供給ユニットを当該電動車の充電のために使用すると仮定すると、残りの電力供給ユニットのうちの未使用なものに接続可能な未使用充電口がいくつになるかという第1の観点と、(2)充電口14-1に接続されたN個のリレーのそれぞれに接続された電力供給ユニットのうちの未使用なものに接続可能な未使用充電口が現時点においていくつあるかという第2の観点で、閉状態とするリレーを決定する。
【0026】
図2は、上記制御方法のフロー図である。同図中、iは変数であり、Rは電動車が要求する電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uの数である。例えば、各電力供給ユニット12-1,12-2・・・12-Uの出力電力が10kWであり、電動車の充電に必要な電力が30kWである場合、Rは3となる。
【0027】
電動車が接続されたときに最初に実行するステップS1では、変数iを0にする。
【0028】
次に実行するステップS2Aでは、上記第1の観点を具体化した第1手順にしたがって閉状態とするべき1個のリレーを選択することができるかどうかを判定する。選択することができた場合は、そのリレーを閉状態とする。一方、選択することができなかった場合は、ステップS2Bに進む。
【0029】
ステップ2Bでは、上記第2の観点を具体化した第2手順にしたがって閉状態とするべき1個のリレーを選択することができるかどうかを判定する。選択することができた場合は、そのリレーを閉状態とする。一方、選択することができなかった場合は、ステップS2Cに進む。
【0030】
ステップS2Cでは、第3手順にしたがって選択した1個のリレーを閉状態とする。第3手順では、例えば複数の電力供給ユニットのうち、最も番号が小さい電力供給ユニットに接続されたリレーを閉状態とする。
【0031】
ステップS2A,S2B,S2Cのいずれかで1個のリレーを閉状態とした後に実行するステップS3,S4では、1が加算された後の変数iがRに達したかどうかを判定する。変数iがRに達していれば、本フローは終了する。一方、達していなければ、ステップS2A,S2B,S2Cを再度実行し、別の1個のリレーを閉状態とする。これにより、最終的にR個のリレーを閉状態とする。
【0032】
続いて、
図4~
図8を参照しながら、第1実施例の出力切替部13を上記制御方法で制御した具体例について説明する。本具体的では、充電口[1]~[4]のうち充電口[1],[3]に電動車が接続される。充電口[1]には、電力供給ユニット[1]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[3]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[6]に接続されるリレーとが接続されている。また、充電口[3]には、電力供給ユニット[2]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[3]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[5]に接続されるリレーとが接続されている。
【0033】
・
図4,
図5:充電口[1]に30kWを要求する電動車が接続された場合
まず、第1手順(ステップS2A)として、電力供給ユニット[1]を当該電動車の充電のために使用すると仮定すると、残りの電力供給ユニット[2]~[6]のうちの未使用なものに接続可能な未使用充電口の数(以下、「第1評価値」という)がいくつになるのかを求める。電力供給ユニット[2]~[6]のうちの未使用なものは電力供給ユニット[2]~[6]であり、電力供給ユニット[2]~[6]に接続可能な未使用充電口は充電口[2]~[4]なので、電力供給ユニット[1]の第1評価値は3である(
図4(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[3],[6]の第1評価値を求める。(
図4(B),(C)参照)。
【0034】
電力供給ユニット[1],[3],[6]は、第1評価値が3であり、優劣がない。このため、第1手順では、閉状態とするべき1個のリレーを選択することができない。なお、第1評価値が他よりも大きい電力供給ユニットが1個だけ存在する場合は、当該電力供給ユニットに接続されたリレーを閉状態とすればよい。
【0035】
第2手順(ステップS2B)では、充電口[1]に接続された3個のリレーのそれぞれに接続された電力供給ユニット[1],[3],[6]のうちの未使用なものに接続可能な未使用充電口が現時点においていくつあるか(以下、「第2評価値」という)を求める。電力供給ユニット[1],[3],[6]のうちの未使用なものは電力供給ユニット[1],[3],[6]である。このうち、電力供給ユニット[1]に接続可能な未使用充電口は充電口[1],[4]なので、電力供給ユニット[1]の第2評価値は2である(
図5(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[3],[6]の第2評価値を求める(
図5(B),(C)参照)。
【0036】
電力供給ユニット[1],[3],[6]は、第2評価値が2であり、優劣がない。つまり、第2手順でも、閉状態とするべき1個のリレーを選択することができない。このため、第3手順(ステップS2C)により、電力供給ユニット[1],[3],[6]のうち、最も番号が小さい電力供給ユニット[1]に接続されたリレーを閉状態とする。
【0037】
その後、第1手順~第3手順を2回実行し、最終的に3個のリレーを閉状態とする。すなわち、充電口[1]-電力供給ユニット[1]間のリレーと、充電口[1]-電力供給ユニット[3]間のリレーと、充電口[1]-電力供給ユニット[6]間のリレーとを閉状態とする。これにより、電力供給ユニット[1],[3],[6]から充電口[1]の電動車に30kWの電力を供給することが可能となる(
図8(A)参照)。
【0038】
・
図6,
図7:さらに充電口[3]に10kWを要求する電動車が接続された場合
まず、第1手順(ステップS2A)として、電力供給ユニット[2]を当該電動車の充電のために使用すると仮定すると、残りの電力供給ユニット[1],[3]~[6]のうちの未使用なものに接続可能な未使用充電口の数(第1評価値)がいくつになるのかを求める。電力供給ユニット[1],[3]~[6]のうちの未使用なものは電力供給ユニット[4],[5]であり、電力供給ユニット[4],[5]に接続可能な未使用充電口は充電口[2],[4]なので、電力供給ユニット[2]の第1評価値は2である(
図6(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[5]の第1評価値を求める(
図6(B)参照)。
【0039】
電力供給ユニット[2],[5]は、第1評価値が2であり、優劣がない。このため、第1手順では、閉状態とするべき1個のリレーを選択することができない。
【0040】
第2手順(ステップS2B)では、充電口[3]に接続された3個のリレーのそれぞれに接続された電力供給ユニット[2],[3],[5]のうちの未使用なものに接続可能な未使用充電口が現時点においていくつあるか(第2評価値)を求める。電力供給ユニット[2],[3],[5]のうちの未使用なものは電力供給ユニット[2],[5]である。このうち、電力供給ユニット[2]に接続可能な未使用充電口は充電口[2]のみなので、電力供給ユニット[2]の第2評価値は1である(
図7(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[5]の第2評価値を求める(
図7(B)参照)。
【0041】
電力供給ユニット[2],[5]は、第2評価値が1であり、優劣がない。つまり、第2手順でも、閉状態とするべき1個のリレーを選択することができない。このため、第3手順(ステップS2C)により、電力供給ユニット[2],[5]のうち、最も番号が小さい電力供給ユニット[2]に接続されたリレーを閉状態とする。
【0042】
これにより、電力供給ユニット[1],[3],[6]から充電口[1]の電動車に30kWの電力を供給しながら、電力供給ユニット[2]から充電口[3]の電動車に10kWの電力を供給することが可能となる(
図8(B)参照)。
【0043】
以上のように、第1実施例の出力切替部13(
図3参照)を上記制御方法で制御すると、充電口[1]に30kWを要求する電動車が接続されたときに使用可能な充電口の数が3となり(
図8(A)参照)、さらに充電口[3]に10kWを要求する電動車が接続されたときに使用可能な充電口の数が2となった(
図8(B)参照)。この結果は、
図9に示すようにリレーが配置された第1従来例の出力切替部を上記制御方法で制御した場合の充電口の数(
図10参照)に等しい。すなわち、本発明に係る設計方法で出力切替部を設計し、これを本発明に係る制御方法で制御すると、従来と同等の利便性を担保することができる。
【0044】
なお、本発明に係る設計方法とも従来の設計方法とも異なる設計方法で設計した第1比較例の出力切替部(
図11参照。各充電口に接続されるリレーの数Nは第1実施例と同じく3)を本発明に係る制御方法で制御すると、従来よりも利便性が劣る結果となった。具体的には、充電口[1]に30kWを要求する電動車が接続された後に、充電口[3]に10kWを要求する電動車が接続されても、当該電動車を充電することはできなかった(
図12(B)参照)。
【0045】
続いて、ユニット数U=8、充電口数C=6、充電口[1]~[6]のそれぞれに接続されるリレーの数N=4の条件下で6×4=24個のリレーが配置された第2実施例の出力切替部13(
図13参照)を設計し、これを本発明に係る制御方法で制御した具体例について、
図14~
図22を参照しながら説明する。本具体的では、充電口[1]~[6]のうち充電口[2]~[5]に電動車が接続される。充電口[2]には、電力供給ユニット[1]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[4]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[6]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[7]に接続されるリレーとが接続されている。充電口[3]には、電力供給ユニット[1]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[3]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[6]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[8]に接続されるリレーとが接続されている。充電口[4]には、電力供給ユニット[2]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[4]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[6]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[8]に接続されるリレーとが接続されている。また、充電口[5]には、電力供給ユニット[2]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[3]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[5]に接続されるリレーと、電力供給ユニット[8]に接続されるリレーとが接続されている。
【0046】
・
図14,
図15:充電口[4]に20kWを要求する電動車が接続された場合
まず、第1手順(ステップS2A)により、充電口[4]に接続された4個のリレーのうちの1個に接続された電力供給ユニット[2]の第1評価値を求める(
図14(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[4],[6],[8]の第1評価値を求める(
図14(B)~(D)参照)。
【0047】
電力供給ユニット[2],[4],[6],[8]は、第1評価値が5であり、優劣がない。このため、第2手順(ステップS2B)により、電力供給ユニット[2],[4],[6],[8]の第2評価値を求める(
図15(A)~(D)参照)。
【0048】
電力供給ユニット[2],[4],[6],[8]は、第2評価値が3であり、優劣がないので、第3手順(ステップS2C)により、電力供給ユニット[2],[4],[6],[8]のうち、最も番号が小さい電力供給ユニット[2]に接続されたリレーを閉状態とする。
【0049】
その後、第1手順~第3手順をもう1度実行し、最終的に2個のリレーを閉状態とする。すなわち、充電口[4]-電力供給ユニット[2]間のリレーと、充電口[4]-電力供給ユニット[4]間のリレーとを閉状態とする。これにより、電力供給ユニット[2],[4]から充電口[4]の電動車に20kWの電力を供給することが可能となる(
図22(A)参照)。
【0050】
・
図16,
図17:さらに充電口[3]に20kWを要求する電動車が接続された場合
まず、第1手順(ステップS2A)により、充電口[3]に接続された4個のリレーのうちの1個に接続された電力供給ユニット[1]の第1評価値を求める(
図16(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[3],[6],[8]の第1評価値を求める(
図16(B)~(D)参照)。
【0051】
電力供給ユニット[1],[3],[6],[8]は、第1評価値が4であり、優劣がない。このため、第2手順(ステップS2B)により、電力供給ユニット[1],[3],[6],[8]の第2評価値を求める(
図17(A)~(D)参照)。
【0052】
電力供給ユニット[6],[8]は、電力供給ユニット[1],[3]よりも第2評価値が小さいので、電力供給ユニット[1],[3]よりも優先的に使用されるべきである。ただし、電力供給ユニット[6],[8]には優劣がないので、第3手順(ステップS2C)により、電力供給ユニット[6],[8]のうち、最も番号が小さい電力供給ユニット[6]に接続されたリレーを閉状態とする。
【0053】
その後、第1手順~第3手順をもう1度実行し、最終的に2個のリレーを閉状態とする。すなわち、充電口[3]-電力供給ユニット[6]間のリレーと、充電口[3]-電力供給ユニット[8]間のリレーとを閉状態とする。これにより、電力供給ユニット[2],[4]から充電口[4]の電動車に20kWの電力を供給しながら、電力供給ユニット[6],[8]から充電口[3]の電動車に20kWの電力を供給することが可能となる(
図22(B)参照)。
【0054】
・
図18,
図19:さらに充電口[2]に10kWを要求する電動車が接続された場合
まず、第1手順(ステップS2A)により、充電口[2]に接続された4個のリレーのうちの1個に接続された未使用の電力供給ユニット[1]の第1評価値を求める(
図18(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[7]の第1評価値を求める(
図18(B)参照)。
【0055】
電力供給ユニット[1],[7]は、第1評価値が3であり、優劣がない。このため、第2手順(ステップS2B)により、電力供給ユニット[1],[7]の第2評価値を求める(
図19(A),(B)参照)。
【0056】
電力供給ユニット[1]の第2評価値が、電力供給ユニット[7]の第2評価値よりも小さいので、電力供給ユニット[1]に接続されたリレーを閉状態とする。これにより、電力供給ユニット[2],[4]から充電口[4]の電動車に20kWの電力を供給し、かつ電力供給ユニット[6],[8]から充電口[3]の電動車に20kWの電力を供給しながら、電力供給ユニット[1]から充電口[2]の電動車に10kWの電力を供給することが可能となる(
図22(C)参照)。
【0057】
・
図20,
図21:さらに充電口[5]に20kWを要求する電動車が接続された場合
まず、第1手順(ステップS2A)により、充電口[5]に接続された4個のリレーのうちの1つに接続された未使用の電力供給ユニット[3]の第1評価値を求める(
図20(A)参照)。同様に、電力供給ユニット[5]の第1評価値を求める(
図20(B)参照)。
【0058】
電力供給ユニット[3],[5]は、第1評価値が2であり、優劣がない。このため、第2手順(ステップS2B)により、電力供給ユニット[3],[5]の第2評価値を求める(
図21(A),(B)参照)。
【0059】
電力供給ユニット[3]の第2評価値が、電力供給ユニット[5]の第2評価値よりも小さいので、電力供給ユニット[3]に接続されたリレーを閉状態とする。
【0060】
その後、第1手順~第3手順をもう1度実行し、最終的に2個のリレーを閉状態とする。すなわち、充電口[5]-電力供給ユニット[3]間のリレーと、充電口[5]-電力供給ユニット[5]間のリレーとを閉状態とする。これにより、電力供給ユニット[2],[4]から充電口[4]の電動車に20kWの電力を供給し、電力供給ユニット[6],[8]から充電口[3]の電動車に20kWの電力を供給し、かつ電力供給ユニット[1]から充電口[2]の電動車に10kWの電力を供給しながら、電力供給ユニット[3],[5]から充電口[5]の電動車に20kWの電力を供給することが可能となる(
図22(D)参照)。
【0061】
以上のように、第2実施例の出力切替部13(
図13参照)を上記制御方法で制御すると、充電口[4]に20kWを要求する電動車が接続されたときに使用可能な充電口の数が5となり(
図22(A)参照)、充電口[3]に20kWを要求する電動車が接続されたときに使用可能な充電口の数が4となり(
図22(B)参照)、充電口[2]に10kWを要求する電動車が接続されたときに使用可能な充電口の数が3となり(
図22(C)参照)、さらに充電口[5]に10kWを要求する電動車が接続されたときに使用可能な充電口の数が2となった(
図22(D)参照)。この結果は、
図23に示すようにリレーが配置された第2従来例の出力切替部を上記制御方法で制御した場合の充電口の数(
図24参照)に等しい。すなわち、本発明に係る設計方法で出力切替部を設計し、これを本発明に係る制御方法で制御すると、従来と同等の利便性を担保することができる。
【0062】
なお、本発明に係る設計方法とも従来の設計方法とも異なる設計方法で設計した第2比較例の出力切替部(
図25参照)を本発明に係る制御方法で制御すると、従来よりも利便性が劣る結果となった。具体的には、充電口[2],[3],[4],[5]に電動車が接続された後に未使用の充電口[1]に新たな電動車が接続されても、当該電動車を充電することはできなかった(
図26(D)参照)。
【0063】
また、第2実施例の出力切替部13と同一の第3比較例の出力切替部(
図27参照。各充電口に接続されるリレーの数Nは第2実施例と同じく4)を本発明に係る制御方法とは異なる制御方法で制御しても、従来よりも利便性が劣る結果となった。具体的には、充電口[2],[3],[4],[5]に電動車が接続された後に未使用の充電口[1],[6]のいずれかに新たな電動車が接続されても、当該電動車を充電することはできなかった(
図28(D)参照)。
【0064】
[変形例]
なお、本発明に係る出力切替部の設計方法および制御方法は、これまで説明してきたものに限定されない。
【0065】
例えば、本発明は、
図29に示した充電装置10’に適用することもできる。同図に示すように、充電装置10’は、商用電源20が出力する商用交流電力を直流化するAC/DC変換部11と、AC/DC変換部11が出力する電力を昇降圧するDC/DC変換部12と、電動車に接続されるC個の充電口14-1,14-2・・・14-Cと、AC/DC変換部11およびDC/DC変換部12の間に設けられた出力切替部13とを備えている。
【0066】
AC/DC変換部11は、U個の同一のユニット11-1,11-2・・・11-Uで構成されている。本例では、これらのユニットが「電力供給ユニット」に相当する。一方、DC/DC変換部12を構成するC個の同一のユニット12-1,12-2・・・12-Cは、「電力供給ユニット」に相当しない。
【0067】
充電装置10’に本発明を適用しても、充電装置10に本発明を適用した場合と同じ効果が得られる。
【0068】
また、本発明は、電動車以外の複数の充電対象の充電を同時並行的に行う充電装置に適用することもできる。
【0069】
また、第3手順(ステップS2C)では、電力供給ユニットの状態(例えば、温度、累積稼働時間等)に基づいて閉状態とするべき1個のリレーを決定してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10,10’ 充電装置
11 AC/DC変換部
12 DC/DC変換部
13 出力切替部
14-1,14-2・・・ 充電口
20 商用電源