(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】食品用増粘剤、食品、および食品の作製方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/238 20160101AFI20231215BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20231215BHJP
A23L 29/244 20160101ALN20231215BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20231215BHJP
【FI】
A23L29/238
A23L29/00
A23L29/244
A23L5/00 N
(21)【出願番号】P 2020143413
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2022-04-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長崎 洋
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0059435(US,A1)
【文献】International Journal of Biological Macromolecules 133(2019) 1156-1163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマシードガム
とローカストビーンガムと
からなり、
前記ローカストビーンガムの含有量は、前記アマシードガム100質量%に対して、1質量%~10000質量%の範囲であることを特徴とする食品用増粘剤。
【請求項2】
アマシードガム
とローカストビーンガムと
からなる食品用増粘剤を含有
し、
前記ローカストビーンガムの含有量は、前記アマシードガム100質量%に対して、1質量%~10000質量%の範囲であることを特徴とする食品。
【請求項3】
アマシードガム
とローカストビーンガムと
からなる食品用増粘剤を用い
、
前記ローカストビーンガムの含有量は、前記アマシードガム100質量%に対して、1質量%~10000質量%の範囲であることを特徴とする食品の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用増粘剤、その食品用増粘剤を含む食品、および食品の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に粘性や付着性を付与したり、ゼリーのようなゲル状態とすることを求められることがあり、このために食品添加物の増粘剤(糊料)が用いられることがよくある。増粘剤として、カラギナン、キサンタンガム等が知られている。κカラギナン等のカラギナンは単独でもゲル化するが、ローカストビーンガムやグルコマンナンと併用することによってゲル状になり、また、キサンタンガムは、ローカストビーンガムやグルコマンナンと併用することによってゲル状になり、両者は食品工業では一般的に使われている(特許文献1~3参照)。
【0003】
しかし、カラギナンは、海藻が由来の天然物を原料としているため、供給量等の問題がある。また、カラギナンとカロブビーンガムやグルコマンナンとを併用すると、しっかりした硬いゲルが形成されるが、弾力のあるゲルが求められることがある。
【0004】
キサンタンガムは、発酵により製造され、自然現象の影響を受けにくい。しかし、キサンタンガムは単独で冷水に溶解し粘性を発現するため、使用する際に分散性が悪く、凝集物が生成したり、製造中に強力な撹拌機やポンプが必要になり、このような設備がない場合は添加レベルを低くする必要がある等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭48-035463号公報
【文献】特公昭57-028254号公報
【文献】特許第3447213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水への分散性に優れ、弾力のあるゲルを形成することができる食品用増粘剤、その食品用増粘剤を含む食品、および食品の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アマシードガムとローカストビーンガムとからなり、前記ローカストビーンガムの含有量は、前記アマシードガム100質量%に対して、1質量%~10000質量%の範囲である、食品用増粘剤である。
【0008】
本発明は、アマシードガムとローカストビーンガムとからなる食品用増粘剤を含有し、前記ローカストビーンガムの含有量は、前記アマシードガム100質量%に対して、1質量%~10000質量%の範囲である、食品である。
【0009】
本発明は、アマシードガムとローカストビーンガムとからなる食品用増粘剤を用い、前記ローカストビーンガムの含有量は、前記アマシードガム100質量%に対して、1質量%~10000質量%の範囲である、食品の作製方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、水への分散性に優れ、弾力のあるゲルを形成することができる食品用増粘剤、その食品用増粘剤を含む食品、および食品の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<食品用増粘剤>
本実施形態に係る食品用増粘剤は、アマシードガムと、グルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つと、を含有する食品用増粘剤である。
【0013】
本発明者らは、陸生植物由来でカラギナンとは原料由来が異なるアマシードガムを用いて検討した結果、食品用増粘剤としてアマシードガムとグルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つとを併用することによって、水への分散性に優れ、弾力のあるゲルを形成することができることを見出した。本実施形態に係る食品用増粘剤によって、付着性が高く粘弾性の高いゲルを形成することができる。また、本実施形態に係る食品用増粘剤の食品への添加濃度を調整することによって、緩いゲルから弾力のあるゲルを得ることができる。アマシードガムは、陸生植物由来であるため、海藻が由来の天然物を原料としているカラギナンに比べて、供給量等の問題が少ない。
【0014】
アマシードガムは、アマ科アマ(Linum usitatissimum LINNE)の種子から得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。アマシードガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0015】
グルコマンナンは、コンニャクイモの塊茎に存在する多糖類である。例えば、コンニャクイモを水洗後、スライスして乾燥して粉砕し、さらに澱粉質等の不純物を分離したものがコンニャク精粉と呼ばれる。このコンニャク精粉にはグルコマンナンが約75~85質量%程度含まれている。グルコマンナンは、グルコース(単糖の一種)とマンノース(単糖の一種)が、およそ2:3の割合で多数結合した食物繊維である。グルコマンナンとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0016】
ローカストビーンガムは、マンノースとガラクトースとを4:1のモル比で含有するガラクトマンナンであり、カロブビーンガムとも称される。ローカストビーンガムは、例えば、マメ科イナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)の種子の胚乳部分を分離および精製することにより得られる。ローカストビーンガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0017】
本実施形態に係る食品用増粘剤において、グルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つの含有量は、例えば、アマシードガム100質量%に対して、1質量%~10000質量%の範囲であり、好ましくは10質量%~2000質量%の範囲である。グルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つの含有量がアマシードガム100質量%に対して1質量%未満であると、弾力のあるゲルを形成することができない場合があり、10000質量%を超えると、作業性が悪い場合がある。グルコマンナンおよびローカストビーンガムを併用する場合は、配合比は質量でグルコマンナン1に対してローカストビーンガムが0.01~100の範囲であり、好ましくは0.1~10の範囲である。
【0018】
本実施形態に係る食品用増粘剤は、アマシードガム、グルコマンナン、ローカストビーンガムの他に、澱粉、加工澱粉、寒天、カラギナン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、グルコマンナン、こんにゃく粉(芋)、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、アルギン酸エステル、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、カラヤガム、プルラン、カードラン、トラガントガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、大豆水溶性多糖類、メチルセルロ-ス、ウェランガム、カシアガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、グァーガム酵素分解物、ファーセレラン、および発酵セルロース等の他の成分を含んでもよい。
【0019】
他の成分の含有量は、例えば、アマシードガム100質量%に対して1質量%~2000質量%の範囲であり、好ましくは10質量%~500質量%の範囲である。
【0020】
本実施形態に係る食品用増粘剤は、粉末の形態であってもよいし、粒状に造粒した顆粒の形態であってもよい。
【0021】
<食品>
本実施形態に係る食品は、上記食品用増粘剤を含有する食品であり、アマシードガムと、グルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つと、を含有する食品である。
【0022】
食品としては、例えば、ゼリー、グミ、ヨーグルト等のデザート類、タレ、ドレッシング、冷菓、調味料、畜肉製品、水産製品、麺類、惣菜等に好適に適用することができる。本実施形態に係る食品用増粘剤を食品に添加することにより、弾力のあるゲルを形成することができる。
【0023】
本実施形態に係る食品用増粘剤の食品中の添加量は、食品全体の質量に対して、例えば、0.1質量%~10質量%の範囲であり、好ましくは0.2質量%~2質量%の範囲である。食品用増粘剤の食品中の添加量が、食品全体の質量に対して0.1質量%未満であると、弾力のあるゲルを形成することができない場合があり、10質量%を超えると、作業性が悪い場合がある。
【0024】
本実施形態に係る食品は、上記食品用増粘剤の他に、一般的に食品に用いられる食品素材、食品添加物等を含んでもよい。
【0025】
<食品の作製方法>
本実施形態に係る食品の作製方法は、アマシードガムと、グルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つと、を含有する食品用増粘剤を用いる方法である。
【0026】
ゼリーは、例えば、上記食品用増粘剤を用いて一般的に用いられる水に分散後加熱する方法により作製すればよい。また、ヨーグルトは、例えば、上記食品用増粘剤を水に加え加熱後、50℃以下に冷却し、30℃以上の酸乳に加える方法により作製すればよい。
【0027】
本実施形態に係る食品用増粘剤を食品に添加することにより、弾力のあるゲルを形成することができる。また、食品を製造する際に、水への分散性に優れる。
【0028】
本実施形態に係る食品用増粘剤を用いることによって、食品のゲル強度を、例えば、10g/cm2以上に、好ましくは10~100g/cm2の範囲にすることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
<実施例1,2、参考例3,4、比較例1~5>
表1に示す配合比(質量%)で各材料を、予め増粘剤と砂糖を混合し、その混合物を水道水に混合して混合液を調製した。調製した混合液の分散性を目視にて確認した。混合液を調製してから20℃で2時間静置した後の粘度(mPa・s)を、粘度計(東機産業製、TV10M型)を用いて、20℃、30rpm、60秒、ローターNo.2またはNo.3の条件で測定した。また、同様にして混合液を調製し、5℃で24時間静置した後の性状を目視で確認した。さらに、同様にして混合液を調製し、90℃で加熱後、冷却して5℃で24時間静置した後の性状を目視で確認し、ゲル強度、破断距離を下記の方法で測定した。
【0031】
[ゲル強度、破断距離の測定]
レオメーター(サン科学製、CR200D型)を用い、直径20mmのプランジャーでテーブル速度60mm/分の条件でゲル強度(g/cm2)、および破断距離(mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
表1において、「しっかりしたゲル」は硬いゲルを示し、「弾力のあるゲル」は、柔らかく、指で押すと指が沈み込み、指を戻すと形状が復元するようなゲルを示す。破断距離に対するゲル強度の比率(ゲル強度/破断距離)が3.5以上の場合、「しっかりしたゲル」であり、3.5未満の場合、「弾力のあるゲル」とした。
【0033】
【0034】
以上のように、実施例によって、水への分散性に優れ、弾力のあるゲルを形成することができる食品用増粘剤を得ることができた。