(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】スラグ除去手順生成装置
(51)【国際特許分類】
B23K 37/08 20060101AFI20231215BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B23K37/08 D
B23K9/04 K
B23K9/04 Q
B23K9/04 Y
(21)【出願番号】P 2020148209
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-216095(JP,A)
【文献】特開2019-084553(JP,A)
【文献】特表2016-511697(JP,A)
【文献】特開2001-150140(JP,A)
【文献】特開2001-300770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/08
B23K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形物の形状を示す形状情報を取得する取得手段と、
並列に配置された複数のスラグチッパと、前記積層造形物の積層方向における当該複数のスラグチッパの位置を互いに独立に調整可能なストローク機構とを有するスラグ除去装置における当該ストローク機構を、当該複数のスラグチッパの当該積層方向における位置が当該積層造形物の形状に沿った位置となるように制御するための制御情報を、前記形状情報に基づいて生成する生成手段と
を備え、
前記生成手段は、前記積層造形物の積層計画における溶着ビードの高さ及び幅の情報に更に基づいて、前記制御情報を生成する
ことを特徴とするスラグ除去手順生成装置。
【請求項2】
前記積層造形物は、前記積層方向における高さが第1の高さである第1の部分と、前記積層方向における高さが当該第1の高さよりも低い第2の高さである第2の部分とを含み、
前記生成手段は、前記複数のスラグチッパのうち前記第1の部分に対向するスラグチッパの前記積層方向における位置が前記第1の高さに応じた位置となり、前記複数のスラグチッパのうち前記第2の部分に対向するスラグチッパの前記積層方向における位置が前記第2の高さに応じた位置となるように前記ストローク機構を制御するための前記制御情報を生成することを特徴とする
請求項1に記載のスラグ除去手順生成装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記複数のスラグチッパが前記積層造形物と干渉する場合に、当該複数のスラグチッパの前記積層方向における位置が当該積層造形物と干渉しない位置となるように前記ストローク機構を制御するための前記制御情報を生成することを特徴とする
請求項1に記載のスラグ除去手順生成装置。
【請求項4】
前記複数のスラグチッパの前記積層方向における位置を示す情報と、前記形状情報を前記積層造形物の位置及び姿勢を決定するポジショナの動作情報に基づいて変化させた情報とを比較することにより、当該複数のスラグチッパが前記積層造形物と干渉するかどうかを判定する判定手段を更に備えたことを特徴とする
請求項3に記載のスラグ除去手順生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に配置された複数のスラグチッパによるスラグ除去システム、スラグ除去手順生成装置、スラグ除去方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接走行台車と溶接スラグ除去走行台車とを同期状態で走行させる連結ア-ムを取り付け、溶接スラグ除去走行台車に溶接スラグ除去機本体とビ-ド表面倣い用変位検出器とをタガネ位置調整装置を介して設置し、表面倣い用検出器でビ-ド表面の凹凸または高さ状態を検出し、この検出信号にもとづいてタガネ位置調整装置のストロ-ク調整を行いながら溶接スラグ除去に適した位置に溶接スラグ除去機本体のタガネを保持させる溶接スラグ自動除去装置は、知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接を用いた積層において、下層にスラグが残っていると、スラグ巻き込みやアークスタートエラー等の不具合が発生する可能性がある。そのため、スラグチッパ等によるスラグ除去が必要になる。
【0005】
ここで、スラグ除去の作業効率の向上のためには、複数のスラグチッパを用いてスラグを除去することが考えられる。しかしながら、複数のスラグチッパを単純に並列に配置した場合、積層造形物の構造によってはスラグチッパが当たらない部分が生じ、積層造形物におけるスラグ除去の作業効率の向上には限界がある。
【0006】
本発明の目的は、複数のスラグチッパを単純に並列に配置した場合に比較して、積層造形物におけるスラグ除去の作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、並列に配置された複数のスラグチッパと、積層造形物の積層方向における複数のスラグチッパの位置を互いに独立に調整可能なストローク機構と、積層造形物の形状を示す形状情報を取得する取得手段と、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物の形状に沿った位置となるように、形状情報に基づいてストローク機構を制御する制御手段とを備えたスラグ除去システムを提供する。
【0008】
スラグ除去システムは、積層造形物の積層方向における高さを計測する計測手段を更に備え、制御手段は、複数のスラグチッパの積層方向における位置が計測手段により計測された高さに応じた位置となるようにストローク機構を制御する、ものであってよい。
【0009】
制御手段は、複数のスラグチッパが積層造形物と干渉する場合に、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物と干渉しない位置となるようにストローク機構を制御する、ものであってよい。
【0010】
また、本発明は、積層造形物の形状を示す形状情報を取得する取得手段と、並列に配置された複数のスラグチッパと、積層造形物の積層方向における複数のスラグチッパの位置を互いに独立に調整可能なストローク機構とを有するスラグ除去装置におけるストローク機構を、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物の形状に沿った位置となるように制御するための制御情報を、形状情報に基づいて生成する生成手段とを備えたスラグ除去手順生成装置も提供する。
【0011】
生成手段は、積層造形物の積層計画における溶着ビードの高さ及び幅の情報に更に基づいて、制御情報を生成する、ものであってよい。その場合、積層造形物は、積層方向における高さが第1の高さである第1の部分と、積層方向における高さが第1の高さよりも低い第2の高さである第2の部分とを含み、生成手段は、複数のスラグチッパのうち第1の部分に対向するスラグチッパの積層方向における位置が第1の高さに応じた位置となり、複数のスラグチッパのうち第2の部分に対向するスラグチッパの積層方向における位置が第2の高さに応じた位置となるようにストローク機構を制御するための制御情報を生成する、ものであってよい。
【0012】
生成手段は、複数のスラグチッパが積層造形物と干渉する場合に、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物と干渉しない位置となるようにストローク機構を制御するための制御情報を生成する、ものであってよい。その場合、スラグ除去手順生成装置は、複数のスラグチッパの積層方向における位置を示す情報と、形状情報を積層造形物の位置及び姿勢を決定するポジショナの動作情報に基づいて変化させた情報とを比較することにより、複数のスラグチッパが積層造形物と干渉するかどうかを判定する判定手段を更に備えた、ものであってよい。
【0013】
更に、本発明は、積層造形物の形状を示す形状情報を取得するステップと、並列に配置された複数のスラグチッパと、積層造形物の積層方向における複数のスラグチッパの位置を互いに独立に調整可能なストローク機構とを有するスラグ除去装置におけるストローク機構を、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物の形状に沿った位置となるように、形状情報に基づいて制御するステップとを含むスラグ除去方法も提供する。
【0014】
更にまた、本発明は、コンピュータに、積層造形物の形状を示す形状情報を取得する機能と、並列に配置された複数のスラグチッパと、積層造形物の積層方向における複数のスラグチッパの位置を互いに独立に調整可能なストローク機構とを有するスラグ除去装置におけるストローク機構を、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物の形状に沿った位置となるように制御するための制御情報を、形状情報に基づいて生成する機能とを実現させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のスラグチッパを単純に並列に配置した場合に比較して、積層造形物におけるスラグ除去の作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態における金属積層造形システムの概略構成例を示した図である。
【
図2】本発明の実施の形態における計画装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】(a),(b)は、本発明の実施の形態の概要を示した図である。
【
図4】本発明の実施の形態における計画装置の機能構成例を示した図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるスラグ除去制御装置の機能構成例を示した図である。
【
図6】本発明の実施の形態における計画装置の動作例を示したフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態におけるスラグ除去制御装置の動作例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
[金属積層造形システムの構成]
図1は、本実施の形態における金属積層造形システム1の概略構成例を示した図である。
【0019】
図示するように、金属積層造形システム1は、溶接ロボット(マニピュレータ)10と、スラグ除去装置20と、CAD装置30と、計画装置40と、溶接制御装置60と、スラグ除去制御装置70とを備える。また、計画装置40は、溶接ロボット10を制御する溶接制御プログラムを、例えばメモリカード等のリムーバブルな記録媒体91に書き込み、溶接制御装置60は、記録媒体91に書き込まれた溶接制御プログラムを読み出すことができるようになっている。更に、計画装置40は、スラグ除去装置20を制御するスラグ除去制御プログラムを、例えばメモリカード等のリムーバブルな記録媒体92に書き込み、スラグ除去制御装置70は、記録媒体92に書き込まれたスラグ除去制御プログラムを読み出すことができるようになっている。
【0020】
溶接ロボット10は、複数の関節を有する腕(アーム)11を備え、溶接制御装置60が読み込んだ溶接制御プログラムに従って動作することで溶接作業を行う。また、溶接ロボット10は、腕11の先端に手首部12を介して、積層造形物100を造形するための溶接トーチ13を有している。そして、金属積層造形システム1の場合、溶接ロボット10は、軟鋼製の溶加材(ワイヤ)14を溶融しながら、溶接トーチ13を移動させて、積層造形物100を製造する。具体的には、溶接トーチ13は、溶加材14を供給しつつ、シールドガスを流しながらアークを発生させて溶加材14を溶融及び固化し、サポート材(図示せず)の周りに複数層のビードを積層して積層造形物100を製造する。図に示した積層造形物100の形状はあくまで一例であるが、ここでは、積層造形物100として、壁部101,102、屋根部103、充填部104、及び円柱部105を含むものを示している。そして、金属積層造形システム1は、積層造形物100を回転させながら複数層のビードを積層することを想定しているため、回転ポジショナ150も備えている。回転ポジショナ150は、積層造形物の位置及び姿勢を決定するポジショナの一例である。例えば、溶接ロボット10は、回転ポジショナ150により積層造形物100を回転させながら、層ごとに、周方向に高めにビードを形成することで壁部101,102を造形した後、軸方向にビードを形成することで屋根部103を造形し、その後、周方向に低めにビードを形成することで充填部104及び円柱部105を造形する。尚、ここでは、溶加材14を溶融する熱源としてアークを用いるが、レーザやプラズマを用いてもよい。また、溶接ロボット10は、この他に、溶加材14を送給する送給装置等も含むが、これについては説明を省略する。
【0021】
スラグ除去装置20は、水平に設置されたレール21の下に車輪22a,22bを介して台車23が自走するように設けられ、台車23の下に8つのスラグチッパ24が並列に配置されることで構成されている。ここで、並列とは、8つのスラグチッパ24の全てが台車23から積層造形物100へ向かっていることを意味する。また。8つのスラグチッパ24は一列に配置されている。そして、8つのスラグチッパ24の各々は、スラグ111,112,114を除去するためのニードル部25を有する。また、スラグ除去装置20は、8つのスラグチッパ24を互いに独立に積層方向に移動させることが可能なストローク機構26も有する。ここで、ストローク機構26は、例えば、スライダや伸縮アーク等で実現するとよい。更に、スラグ除去装置20は、積層造形物100におけるビードの高さを計測する高さセンサ27も有する。ここで、高さセンサ27は、積層造形物100との干渉を避ける観点から非接触である方が好ましい。非接触の計測方式は特に限定しないが、例えば三次元レーザ計測器やイメージセンサ等を利用するとよい。高さセンサ27は、積層造形物の積層方向における高さを計測する計測手段の一例である。スラグ除去装置20は、スラグ除去制御装置70が読み込んだスラグ除去制御プログラムに従って動作することでスラグ除去作業を行う。図は、スラグ除去装置20が積層造形物100の壁部101,102及び充填部104のスラグを除去している場面を示している。そして、回転ポジショナ150によって積層造形物100を回転させながらスラグを除去することを想定している。尚、ここでは、8本のスラグチッパ24を設けることとしたが、これはあくまで一例であり、複数のスラグチッパ24が設けられていればよい。
【0022】
CAD装置30は、コンピュータを用いて造形物の設計を行うと共に、設計によって得られた三次元データ(以下、「三次元CADデータ」という)を保持する機能を有している。
【0023】
計画装置40は、CAD装置30が保持する三次元CADデータに基づいて積層造形物100の積層計画及びスラグ除去計画を作成する。つまり、計画装置40は、溶接トーチ13の軌道を決定すると共に、溶接ロボット10が溶接する際の溶接条件を決定する。そして、この決定した軌道に沿って決定した溶接条件でビードを形成するように溶接ロボット10を制御するための溶接制御プログラムを生成し、この溶接制御プログラムを記録媒体91に出力する。また、計画装置40は、スラグチッパ24の軌道を決定すると共に、ストローク機構26によるスラグチッパ24の積層方向における移動量を決定する。そして、この決定した軌道に沿って決定した移動量だけ積層方向に移動させながらスラグチッパ24でスラグを除去するようにスラグ除去装置20を制御するためのスラグ除去制御プログラムを生成し、このスラグ除去制御プログラムを記録媒体92に出力する。本実施の形態では、スラグ除去手順生成装置の一例として、計画装置40を設けている。
【0024】
溶接制御装置60は、記録媒体91から溶接制御プログラムを読み込んで保持する。そして、この溶接制御プログラムを動作させることにより、計画装置40で作成された積層計画に従って、つまり、計画装置40で決定された軌道に沿って、計画装置40で決定された溶接条件でビードを形成するよう、溶接ロボット10を制御する。
【0025】
スラグ除去制御装置70は、記録媒体92からスラグ除去制御プログラムを読み込んで保持する。そして、このスラグ除去制御プログラムを動作させることにより、計画装置40で作成されたスラグ除去計画に従って、つまり、計画装置40で決定された軌道に沿って、計画装置40で決定された移動量だけ積層方向に移動させながらスラグチッパ24でスラグを除去するよう、スラグ除去装置20を制御する。ここで、スラグ除去制御装置70に計画装置40とスラグ除去装置20とを加えた部分は、スラグ除去システムの一例である。
【0026】
[計画装置のハードウェア構成]
図2は、計画装置40のハードウェア構成例を示す図である。
【0027】
図示するように、計画装置40は、例えば汎用のPC(Personal Computer)等により実現され、演算手段であるCPU41と、記憶手段であるメインメモリ42及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)43とを備える。ここで、CPU41は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行し、計画装置40の各機能を実現する。また、メインメモリ42は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、HDD43は、各種プログラムに対する入力データや各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
【0028】
また、計画装置40は、外部との通信を行うための通信I/F44と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構45と、キーボードやマウス等の入力デバイス46と、記録媒体91,92に対してデータの読み書きを行うためのドライバ47とを備える。尚、
図2は、計画装置40をコンピュータシステムにて実現した場合のハードウェア構成を例示するに過ぎず、計画装置40は図示の構成に限定されない。
【0029】
また、
図2に示したハードウェア構成は、溶接制御装置60又はスラグ除去制御装置70のハードウェア構成としても捉えられる。但し、溶接制御装置60について述べるときは、
図2のCPU41、メインメモリ42、磁気ディスク装置43、通信I/F44、表示機構45、入力デバイス46、ドライバ47をそれぞれ、CPU61、メインメモリ62、磁気ディスク装置63、通信I/F64、表示機構65、入力デバイス66、ドライバ67と表記するものとする。また、スラグ除去制御装置70について述べるときは、
図2のCPU41、メインメモリ42、磁気ディスク装置43、通信I/F44、表示機構45、入力デバイス46、ドライバ47をそれぞれ、CPU71、メインメモリ72、磁気ディスク装置73、通信I/F74、表示機構75、入力デバイス76、ドライバ77と表記するものとする。
【0030】
[本実施の形態の概要]
図3(a),(b)は、本実施の形態の概要を示した図である。
【0031】
図3(a),(b)には、
図1の金属積層造形システム1から、積層造形物100の壁部101,102、屋根部103、及び充填部104の部分と、スラグ除去装置20の8つのスラグチッパ24を含む部分とを抜き出し、拡大して示している。尚、ここでは、8つのスラグチッパ24をスラグチッパ24a~24hと表記し、スラグチッパ24a~24hのニードル部25をそれぞれニードル部25a~25hと表記することにする。
【0032】
本実施の形態では、スラグ除去装置20が、
図3(a)に示すように、スラグチッパ24a~24hのニードル部25a~25hを、計画装置40で計画した高さ又は高さセンサ27で計測した高さに応じて移動させることで、積層した高さに一致させた状態でスラグ除去を行う。具体的には、スラグ除去装置20は、スラグチッパ24a,24bのニードル部25a,25bを用いて壁部101のスラグ111を除去し、スラグチッパ24g,24hのニードル部25g,25hを用いて壁部102のスラグ112を除去する。そして、スラグ除去装置20は、スラグチッパ24c~24fのニードル部25c~25fを用いて充填部104のスラグ114を除去する。
【0033】
この場合、壁部101及び壁部102はそれぞれ、積層方向における高さが第1の高さである第1の部分の一例である。そして、壁部101が第1の部分の一例である場合、スラグチッパ24a,24bは、複数のスラグチッパのうち第1の部分に対向するスラグチッパの一例であり、スラグチッパ24a,24bのニードル部25a,25bを計画装置40で計画した高さ又は高さセンサ27で計測した高さに応じて移動させることは、スラグチッパの積層方向における位置が第1の高さに応じた位置となるようにすることの一例である。壁部102が第1の部分の一例である場合、スラグチッパ24g、24hは、複数のスラグチッパのうち第1の部分に対向するスラグチッパの一例であり、スラグチッパ24g,24hのニードル部25g,25hを計画装置40で計画した高さ又は高さセンサ27で計測した高さに応じて移動させることは、スラグチッパの積層方向における位置が第1の高さに応じた位置となるようにすることの一例である。
【0034】
また、充填部104は、積層方向における高さが第1の高さよりも低い第2の高さである第2の部分の一例である。そして、スラグチッパ24c~24fは、複数のスラグチッパのうち第2の部分に対向するスラグチッパの一例であり、スラグチッパ24c~24fのニードル部25c~25fを計画装置40で計画した高さ又は高さセンサ27で計測した高さに応じて移動させることは、スラグチッパの積層方向における位置が第2の高さに応じた位置となるようにすることの一例である。
【0035】
また、本実施の形態では、スラグ除去装置20が、
図3(b)に示すように、屋根部103とスラグチッパ24c~24fのニードル部25c~25fとの干渉が生じる場合に、スラグチッパ24c~24fを積層方向に移動することで、干渉の回避も行う。具体的には、スラグ除去装置20は、
図3(a)と同様に、スラグチッパ24a,24bのニードル部25a,25bを用いて壁部101のスラグ111を除去し、スラグチッパ24g,24hのニードル部25g,25hを用いて壁部102のスラグ112を除去する。一方で、スラグ除去装置20は、屋根部103とニードル部25c~25fとの干渉が生じるので、スラグチッパ24c~24fを積層方向に移動させ、ニードル部25c~25fによるスラグ除去は行わないようにする。
【0036】
[本実施の形態の詳細]
以下、このような概要を実現する金属積層造形システム1について、計画装置40及びスラグ除去制御装置70の構成及び動作を中心に詳細に説明する。
【0037】
(計画装置の機能構成)
図4は、本実施の形態における計画装置40の機能構成例を示した図である。図示するように、本実施の形態における計画装置40は、CADデータ取得部51と、CADデータ分割部52と、積層計画部53と、溶接制御プログラム生成部54と、スラグ除去計画部55と、干渉判定部56と、スラグ除去制御プログラム生成部57と、制御プログラム出力部58とを備える。
【0038】
CADデータ取得部51は、CAD装置30から、積層造形物100の三次元形状を表す三次元CADデータを取得する。本実施の形態では、積層造形物の形状を示す形状情報の一例として、三次元CADデータを用いており、形状情報を取得する取得手段の一例として、CADデータ取得部51を設けている。
【0039】
CADデータ分割部52は、CADデータ取得部51が取得した三次元CADデータを複数の層に分割(スライス)することで、各層の形状をそれぞれが表す複数の層形状データを生成する。その際、CADデータ分割部52は、三次元CADデータを複数の層に分割し易い内部形式に変換してもよい。例えば、
図1に示した円柱状の積層造形物100の場合は、中心軸から半径方向外側へ複数の層に分割するとよい。
【0040】
積層計画部53は、CADデータ分割部52が生成した複数の層形状データの各層の高さ及び幅に合ったビードを溶着する際の溶接トーチ13の位置や溶接条件を含む積層計画を生成する。このような積層計画を生成するには、ビードの高さや幅の他、ビードの断面形状を近似するモデルが必要である。これらは測定実験の実測値や、溶着金属量の断面積から計算して推定したものでもよい。例えば、溶接速度やワイヤ送給速度を数条件振って溶着量を変えつつ、ビードオンプレート溶接や鉛直に数層の積層を行い、各々の条件にて1層当たりの高さや幅を測定した結果をデータベース化する。そして、積層する際に積層する所望の高さや幅を満たす溶接速度と溶着量を選択し、測定した結果から各層の推定形状を随時計算し、溶接トーチ13の位置を決める。尚、溶着断面の計算は溶加材14の材質や、既に積層した部位の形状の状態によって計算方法を変えるようにしてもよい。この計算方法によって造形物を内包する積層を計画していく。
【0041】
また、積層計画部53は、溶接トーチ13の位置の時間的変化(軌道)や溶接条件の時間的変化も積層計画に含める。その際、積層計画部53は、溶接トーチ13の位置の時間的変化として回転ポジショナ150の動作情報を積層計画に含めてもよい。例えば、溶接トーチ13の積層方向における位置については、溶接トーチ13の位置の時間的変化を積層計画に含め、溶接トーチ13の積層造形物100の周方向における位置については、回転ポジショナ150の回転角度の時間的変化を積層計画に含めてよい。更に、積層計画部53は、積層造形物100の形状の時間的変化も積層計画に含める。例えば、積層計画部53は、積層造形物100の三次元形状を回転ポジショナ150の動作情報に応じて変化させた情報を積層計画に含めてよい。
【0042】
溶接制御プログラム生成部54は、積層計画部53が生成した積層計画に従って溶接を行うように溶接ロボット10を制御するための溶接制御プログラムを生成する。
【0043】
スラグ除去計画部55は、CADデータ分割部52が生成した複数の層形状データの各層の高さ及び幅に応じて、スラグチッパ24の位置を含むスラグ除去計画を生成する。このようなスラグ除去計画は、積層計画部53と同様の方法で得られたスラグチッパ24の位置にビードの高さや幅のオフセットを加味して生成するとよい。或いは、このようなスラグ除去計画は、積層計画部53により生成された積層計画における溶接トーチ13の積層軌道やエアカット軌道にビードの高さや幅のオフセットを加味して生成してもよい。
【0044】
また、スラグ除去計画部55も、積層計画部53と同様に、スラグチッパ24の位置の時間的変化(軌道)をスラグ除去計画に含める。その際、スラグ除去計画部55は、スラグチッパ24の位置の時間的変化として回転ポジショナ150の動作情報をスラグ除去計画に含めてもよい。例えば、スラグチッパ24の積層方向における位置については、スラグチッパ24の位置の時間的変化をスラグ除去計画に含め、スラグチッパ24の積層造形物100の周方向における位置については、回転ポジショナ150の回転角度の時間的変化をスラグ除去計画に含めてよい。更に、スラグ除去計画部55は、積層造形物100の形状の時間的変化も積層計画に含める。例えば、スラグ除去計画部55は、積層造形物100の三次元形状を回転ポジショナ150の動作情報に応じて変化させた情報をスラグ除去計画に含めてよい。
【0045】
干渉判定部56は、スラグ除去計画部55により生成されたスラグ除去計画における積層造形物100の形状とスラグチッパ24の位置との干渉が発生するかどうかを判定する。例えば、干渉判定部56は、積層造形物100の形状の時間的変化に関する情報と、スラグチッパ24の位置の時間的変化に関する情報とを比較することにより、このような干渉が発生するかどうかを判定する。本実施の形態では、複数のスラグチッパの積層方向における位置を示す情報と、形状情報をポジショナの動作情報に基づいて変化させた情報とを比較することにより、複数のスラグチッパが積層造形物と干渉するかどうかを判定する判定手段の一例として、干渉判定部56を設けている。
【0046】
スラグ除去制御プログラム生成部57は、スラグ除去計画部55が生成したスラグ除去計画に従ってスラグ除去を行うようにスラグ除去装置20を制御するためのスラグ除去制御プログラムを生成する。この場合、スラグ除去制御プログラムは、ストローク機構を、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物の形状に沿った位置となるように制御するための制御情報の一例であり、スラグ除去制御プログラム生成部57は、このような制御情報を形状情報に基づいて生成する生成手段の一例である。また、干渉判定部56によりスラグ除去計画における積層造形物100の形状とスラグチッパ24の位置との干渉が発生すると判定された場合、スラグ除去制御プログラム生成部57は、スラグ除去計画におけるスラグチッパ24の位置を積層造形物100の形状と干渉しないように修正した上で、スラグ除去制御プログラムを生成する。この場合、スラグ除去制御プログラムは、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物と干渉しない位置となるようにストローク機構を制御するための制御情報の一例であり、スラグ除去制御プログラム生成部57は、複数のスラグチッパが積層造形物と干渉する場合にこのような制御情報を生成する生成手段の一例である。
【0047】
制御プログラム出力部58は、溶接制御プログラム生成部54が生成した溶接制御プログラムを記録媒体91に出力し、スラグ除去制御プログラム生成部57が生成したスラグ除去制御プログラムを記録媒体92に出力する。
【0048】
(溶接制御装置及びスラグ除去制御装置の機能構成)
本実施の形態における溶接制御装置60の機能構成は既存の溶接制御装置60の機能構成と同様なので説明を省略し、ここでは、本実施の形態におけるスラグ除去制御装置70の機能構成についてのみ説明する。
【0049】
図5は、本実施の形態におけるスラグ除去制御装置70の機能構成例を示した図である。図示するように、本実施の形態におけるスラグ除去制御装置70は、スラグ除去制御プログラム取得部81と、スラグ除去制御プログラム記憶部82と、高さデータ受信部83と、スラグ除去制御プログラム実行部84とを備える。
【0050】
スラグ除去制御プログラム取得部81は、記録媒体91に記録されたスラグ除去制御プログラムを取得する。
【0051】
スラグ除去制御プログラム記憶部82は、スラグ除去制御プログラム取得部81が取得したスラグ除去制御プログラムを記憶する。
【0052】
高さデータ受信部83は、1層ビードが形成されるごとにその高さを計測する高さセンサ27から、計測された高さを示す高さデータを受信する。
【0053】
スラグ除去制御プログラム実行部84は、スラグ除去制御プログラム記憶部82に記憶されたスラグ除去制御プログラムを読み出して実行する。これにより、スラグ除去制御プログラム実行部84は、スラグ除去計画部55が生成したスラグ除去計画に従ってスラグ除去を行うよう、スラグ除去装置20を制御する。この場合、スラグ除去制御プログラム実行部84は、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物の形状に沿った位置となるように形状情報に基づいてストローク機構を制御する制御手段の一例である。また、スラグ除去制御プログラム実行部84は、複数のスラグチッパが積層造形物と干渉する場合に、複数のスラグチッパの積層方向における位置が積層造形物と干渉しない位置となるようにストローク機構を制御する制御手段の一例でもある。その際、スラグ除去制御プログラム実行部84は、高さデータ受信部83が高さセンサ27から受信した高さデータに基づいて、スラグチッパ24の積層方向における位置を修正しながら、スラグ除去を行う。この場合、スラグ除去制御プログラム実行部84は、複数のスラグチッパの積層方向における位置が計測手段により計測された高さに応じた位置となるようにストローク機構を制御する制御手段の一例である。
【0054】
(計画装置の動作)
図6は、本実施の形態における計画装置40の動作例を示したフローチャートである。
【0055】
計画装置40では、まず、CADデータ取得部51が、CAD装置30から三次元CADデータを取得する(ステップ401)。
【0056】
次に、CADデータ分割部52が、ステップ401で取得された三次元CADデータを複数の層に分割して、層形状データを生成する(ステップ402)。
【0057】
次に、積層計画部53が、ステップ402で生成された層形状データから積層計画を生成する(ステップ403)。
【0058】
次いで、溶接制御プログラム生成部54が、ステップ403で生成された積層計画に基づいて、溶接制御プログラムを生成する(ステップ404)。具体的には、積層計画に従ってビードを形成するように溶接ロボット10を制御する溶接制御プログラムを生成する。
【0059】
一方で、スラグ除去計画部55が、ステップ402で生成された層形状データからスラグ除去計画を生成する(ステップ405)。
【0060】
次に、干渉判定部56が、ステップ405で生成されたスラグ除去計画の各時点において、積層造形物100とスラグチッパ24とが干渉するかどうかを判定する(ステップ406)。ここで、積層造形物100とスラグチッパ24とが干渉するかどうかの判定は、スラグ除去計画の各時点における積層造形物100の形状及びスラグチッパ24の位置の情報に基づいて行えばよい。
【0061】
積層造形物100とスラグチッパ24とが干渉すると判定すれば、干渉判定部56は、ステップ405で生成されたスラグ除去計画における干渉すると判定された時点におけるスラグチッパ24の位置を修正する(ステップ407)。具体的には、干渉判定部56は、積層造形物100とスラグチッパ24とが干渉しないように、スラグチッパ24が積層方向に移動するようにスラグ除去装置20のストローク機構26を制御する。そして、干渉判定部56は、処理をステップ408へ進める。
【0062】
積層造形物100とスラグチッパ24とが干渉すると判定しなければ、干渉判定部56は、スラグチッパ24の位置を修正することなく、処理をステップ408へ進める。
【0063】
その後、スラグ除去制御プログラム生成部57が、ステップ405で生成されたスラグ除去計画、又は、ステップ405で生成され、ステップ407でスラグチッパ24の位置が修正されたスラグ除去計画に基づいて、スラグ除去制御プログラムを生成する(ステップ408)。具体的には、スラグ除去計画に従ってスラグを除去するようにスラグ除去装置20を制御するスラグ除去制御プログラムを生成する。
【0064】
最後に、制御プログラム出力部58が、ステップ404で生成された制溶接制御プログラムを記録媒体91に出力し、ステップ408で生成されたスラグ除去制御プログラムを記録媒体92に出力する(ステップ409)。
【0065】
(溶接制御装置及びスラグ除去制御装置の動作)
本実施の形態における溶接制御装置60の動作は既存の溶接制御装置60の動作と同様なので説明を省略し、ここでは、本実施の形態におけるスラグ除去制御装置70の動作についてのみ説明する。
【0066】
スラグ除去制御装置70では、まず、スラグ除去制御プログラム取得部81が、記録媒体92からスラグ除去制御プログラムを取得してスラグ除去制御プログラム記憶部82に記憶する。そして、スラグ除去制御プログラム実行部84がスラグ除去制御プログラム記憶部82に記憶されたスラグ除去制御プログラムを読み出してこれを実行する。
【0067】
図7は、このスラグ除去制御プログラム実行部84の動作例を示したフローチャートである。尚、ここでは、i番目の層のj番目のパスをP(i,j)と表記することにする。また、k個のスラグチッパ24を配列に配置してスラグを除去するものとして説明する。
【0068】
スラグ除去制御プログラム実行部84は、まず、層のインデックスiを1に設定する(ステップ701)。つまり、1つ目の層に着目する。
【0069】
また、スラグ除去制御プログラム実行部84は、パスのインデックスjを1に設定する(ステップ702)。つまり、1つ目のパスに着目する。
【0070】
次に、スラグ除去制御プログラム実行部84は、層のインデックスiを層の個数nまで1ずつ増加させ、パスのインデックスjをパスの個数mまで1ずつ増加させながら、各インデックスi,jの組み合わせについてステップ702~ステップ706の処理を行う。
【0071】
即ち、スラグ除去制御プログラム実行部84は、パスP(i,j)からパスP(i,j+k-1)の溶接が終了したかどうかを判定する(ステップ703)。ここで、パスP(i,j)からパスP(i,j+k-1)までの溶接が終了したかどうかの判定は如何なる方法で行ってもよい。例えば、スラグ除去制御プログラム実行部84が溶接制御装置60からこれらのパスの溶接が行われた時刻の情報を受信し、この時刻から予め定められた時間が経過したかどうかを調べる方法によって行うことが考えられる。
【0072】
その結果、パスP(i,j)からパスP(i,j+k-1)の溶接が終了したと判定しなければ、スラグ除去制御プログラム実行部84は、ステップ703を繰り返す。
【0073】
一方、パスP(i,j)からパスP(i,j+k-1)の溶接が終了したと判定すれば、スラグ除去制御プログラム実行部84は、パスP(i,j)からパスP(i,j+k-1)の何れかのパスのビードの実際の高さが計画上の高さと異なるかどうかを判定する(ステップ704)。ここで、ビードの実際の高さとしては、高さデータ受信部83が高さセンサ27から受信した高さデータによって示されるビードの高さを用いればよい。また、ビードの計画上の高さとしては、スラグ除去制御プログラムに設定されているビードの高さを用いればよい。
【0074】
その結果、何れかのパスのビードの実際の高さが計画上の高さと異なると判定したとする。この場合、スラグ除去制御プログラム実行部84は、ビードの実際の高さが計画上の高さと異なると判定されたパスに対するスラグチッパ24の積層方向における位置を修正する(ステップ705)。具体的には、スラグ除去制御プログラム実行部84は、スラグチッパ24の積層方向における位置を、ビードの実際の高さに合わせて修正する。そして、スラグ除去制御プログラム実行部84は、処理をステップ706へ進める。
【0075】
一方、何れかのパスのビードの実際の高さが計画上の高さと異なると判定しなかったとする。つまり、何れのパスのビードの実際の高さも計画上の高さと異ならないと判定したとする。この場合、スラグ除去制御プログラム実行部84は、スラグチッパ24の積層方向における位置を修正することなく、処理をステップ706へ進める。
【0076】
次に、スラグ除去制御プログラム実行部84は、パスP(i,j)からパス(i,j+k-1)のスラグを除去するようスラグ除去装置20を制御する(ステップ706)。
【0077】
その後、スラグ除去制御プログラム実行部84は、パスのインデックスjにkを加算する(ステップ707)。つまり、k個隣りのパスに着目する。そして、パスのインデックスjがパスの個数mを超えたかどうかを判定する(ステップ708)。
【0078】
その結果、パスのインデックスjがパスの個数mを超えていないと判定すれば、スラグ除去制御プログラム実行部84は、処理をステップ703へ戻す。
【0079】
一方、パスのインデックスjがパスの個数mを超えたと判定すれば、スラグ除去制御プログラム実行部84は、処理をステップ709へ進める。
【0080】
その後、スラグ除去制御プログラム実行部84は、層のインデックスiに1を加算する(ステップ709)。つまり、次の層に着目する。そして、層のインデックスiが層の個数nを超えたかどうかを判定する(ステップ710)。
【0081】
その結果、層のインデックスiが層の個数nを超えていないと判定すれば、スラグ除去制御プログラム実行部84は、処理をステップ702へ戻す。
【0082】
一方、層のインデックスiが層の個数nを超えたと判定すれば、スラグ除去制御プログラム実行部84は、処理を終了する。
【0083】
[本実施の形態の効果]
以上述べたように、本実施の形態では、積層造形物100の形状情報に基づき、各スラグチッパ24の積層方向における位置を積層造形物100の形状に沿った位置に設定して、スラグを除去するようにした。これにより、複数のスラグチッパ24を並列に配置した場合に、積層造形物100におけるスラグ除去の作業効率がより一層向上することとなった。
【0084】
[変形例]
上記では、スラグチッパ24として、ニードル部25を有するものを用いたが、スラグを物理的に除去する機能を有するものであれば、その方式は限定しない。例えば、スラグチッパ24として、平タガネを有するものを用いてもよい。
【0085】
また、上記では、スラグ除去装置20を溶接ロボット10から独立した構成としたが、この限りではない。溶接ロボット10の腕11の先端に溶接トーチ13に代えてスラグチッパ24を取り付けることでスラグ除去装置20を構成してもよい。
【0086】
更に、上記では、スラグ除去制御装置70は、複数のスラグチッパ24が配置される方向を積層造形物100の軸方向と一致させた状態で、複数のスラグチッパ24の積層方向における位置を変化させるものとしたが、この限りではない。スラグ除去制御装置70は、複数のスラグチッパ24が配置される方向を積層造形物100の軸方向と異なるように変化させてもよい。例えば、積層造形物100の軸方向に対して一定の角度をなすようにビードが形成されている場合、つまり、積層造形物100の軸の周りに螺旋状にビードが形成されている場合を考える。このような場合、スラグ除去制御装置70は、複数のスラグチッパ24が配置される方向がこのビードが形成される方向に垂直になるように、台車23を鉛直軸を中心に一定の角度だけ回転させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…金属積層造形システム、10…溶接ロボット、20…スラグ除去装置、30…CAD装置、40…計画装置、51…CADデータ取得部、52…CADデータ分割部、53…積層計画部、54…溶接制御プログラム生成部、55…スラグ除去計画部、56…干渉判定部、57…スラグ除去制御プログラム生成部、58…制御プログラム出力部、60…溶接制御装置、70…スラグ除去制御装置、81…スラグ除去制御プログラム取得部、82…スラグ除去制御プログラム記憶部、83…高さデータ受信部、84…スラグ除去制御プログラム実行部、91,92…記録媒体、150…回転ポジショナ