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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/34 20060101AFI20231215BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20231215BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20231215BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231215BHJP
【FI】
H01L23/34 D
H01L23/34 A
H01L23/00 A
H01L25/04 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020155450
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049313
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 一希
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-181982(JP,A)
【文献】実開昭49-112285(JP,U)
【文献】特開2008-103434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34
H01L 23/00
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの半導体チップと、
前記少なくとも1つの半導体チップを一体的に封止している封止材と、
部分的に前記封止材に封止され一部が前記封止材から露出している部材を少なくとも1つと、
可逆性の示温材と、
不可逆性の示温材と、
を備え、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材はそれぞれ前記少なくとも1つの部材いずれかの表面に設けられており、
前記部材は、前記少なくとも1つの半導体チップのうちのいずれかとしての制御ICと接合されており、
前記制御ICの温度の情報を電圧として出力する温度出力機能を有する、
半導体装置。
【請求項2】
少なくとも1つの半導体チップと、
前記少なくとも1つの半導体チップを一体的に封止している封止材と、
部分的に前記封止材に封止され一部が前記封止材から露出している部材を少なくとも1つと、
可逆性の示温材と、
不可逆性の示温材と、
を備え、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材はそれぞれ前記少なくとも1つの部材いずれかの表面に設けられており、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材の両方が、同じある前記部材の表面に設けられており、
前記ある前記部材は、一方主面および前記一方主面の反対側の主面である他方主面を有し、
前記一方主面に前記可逆性の示温材が設けられており、前記他方主面に前記不可逆性の示温材が、設けられている、
半導体装置。
【請求項3】
少なくとも1つの半導体チップと、
前記少なくとも1つの半導体チップを一体的に封止している封止材と、
部分的に前記封止材に封止され一部が前記封止材から露出している部材を少なくとも1つと、
可逆性の示温材と、
不可逆性の示温材と、
を備え、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材はそれぞれ前記少なくとも1つの部材いずれかの表面に設けられており、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材の両方が、同じある前記部材の表面に設けられており、
前記ある前記部材のある1つの主面に前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材の両方が設けられており、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材とは、前記ある前記部材の前記ある主面に、それぞれが異なる向きのストライプ状に設けられて、合わせて網目状になっている、
半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記可逆性の示温材は前記少なくとも1つの部材いずれかの、前記封止材から露出している部分の表面に設けられている、
半導体装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材はそれぞれ、前記少なくとも1つの部材いずれかの、前記封止材から露出している部分の表面に設けられている、
半導体装置。
【請求項6】
請求項に記載の半導体装置であって、
前記不可逆性の示温材は、前記封止材から突き出る形で前記一部が露出している前記部材に、前記封止材から突き出ている部分のうち先端より前記封止材に近い側の部分の表面に設けられている、
半導体装置。
【請求項7】
請求項2または3に記載の半導体装置であって、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材の両方が、前記ある前記部材の、前記封止材からの一連の露出表面に設けられている、
半導体装置。
【請求項8】
請求項またはに記載の半導体装置であって、
前記ある前記部材は、前記少なくとも1つの半導体チップのうちのいずれかと接合されている、
半導体装置。
【請求項9】
請求項またはに記載の半導体装置であって、
前記ある前記部材は、前記少なくとも1つの半導体チップのうちのいずれかとしてのパワー半導体チップとワイヤで接続されている、
半導体装置。
【請求項10】
請求項2または3に記載の半導体装置であって、
前記ある前記部材は、前記少なくとも1つの半導体チップのうちのいずれかとしてのパワー半導体チップと接合されている、
半導体装置。
【請求項11】
請求項に記載の半導体装置であって、
前記一方主面に前記可逆性の示温材が設けられていて前記不可逆性の示温材は設けられておらず、前記他方主面に前記不可逆性の示温材が設けられていて前記可逆性の示温材は設けられていない、
半導体装置。
【請求項12】
請求項に記載の半導体装置であって、
前記ある前記部材の前記ある1つの主面の露出表面部分を前記ある前記部材が前記封止材から突き出ている方向に沿った境界で分割した2つの領域のうち一方の領域に前記可逆性の示温材が、前記2つの領域のうち他方の領域に前記不可逆性の示温材が設けられている、
半導体装置。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記可逆性の示温材と前記不可逆性の示温材とのうち少なくともいずれかは、
前記部材の表面に、温度が上がると文字が浮かび上がるように設けられている、
半導体装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記部材は前記封止材より熱伝導度が高い、
半導体装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記部材はリード端子である、
半導体装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
リード端子をさらに備え、
前記部材はリード端子より熱伝導度が高い、
半導体装置。
【請求項17】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記温度出力機能は保護機能を働かせ、
前記不可逆性の示温材は、前記保護機能が働く温度よりも高い温度で変色する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置において、発熱は大きな問題である。例えば、パワー半導体モジュールでは、高温での使用は破壊につながるため、それぞれの製品で、保護機能や、温度の使用条件が規格化されている。
【0003】
半導体装置における半導体チップの温度の確認方法として、特許文献1では、樹脂封止された半導体チップの温度を簡単に精度よく評価するために示温材を吊りリードに設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-103434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では示温材を吊りリードに設けるという構成が示されているが、単に通電した際の内部温度の情報を色の変化により可視化するように作用するため、異なる2つ以上の目的で温度変化を可視化することは困難であるという問題点があった。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、異なる2つ以上の目的で内部温度を可視化可能である半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の半導体装置は、少なくとも1つの半導体チップと、少なくとも1つの半導体チップを一体的に封止している封止材と、部分的に封止材に封止され一部が封止材から露出している部材を少なくとも1つと、可逆性の示温材と、不可逆性の示温材と、を備え、可逆性の示温材と不可逆性の示温材はそれぞれ少なくとも1つの部材いずれかの表面に設けられており、部材は、少なくとも1つの半導体チップのうちのいずれかとしての制御ICと接合されており、制御ICの温度の情報を電圧として出力する温度出力機能を有する、半導体装置、である。

【発明の効果】
【0008】
本開示の半導体装置は、部分的に封止材に封止され一部が封止材から露出している部材を少なくとも1つ備え、可逆性の示温材と不可逆性の示温材はそれぞれ少なくとも1つの部材いずれかの表面に設けられている。これにより、異なる2つ以上の目的で内部温度を可視化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は実施の形態1の半導体装置の上面図、(b)は実施の形態1の半導体装置の断面図である。
図2】実施の形態2の半導体装置の断面図である。
図3】実施の形態3の半導体装置の断面図である。
図4】(a)は実施の形態4の半導体装置の断面図、(b)は実施の形態4の半導体装置の側面図である。
図5】実施の形態5の半導体装置の側面図である。
図6】実施の形態6の半導体装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成・動作>
図1(a)は半導体装置1の上面図、図1(b)は図1(a)のA-A線での断面図である。説明のため、図1(b)では断面上にない要素も示されている。
【0011】
図1(a)に示されるように、半導体装置1はパワー半導体チップ2,3と、制御IC4と、リードフレーム10aと、リードフレーム10bと、モールド樹脂9と、を備える。
【0012】
図1(a)では半導体装置1が複数のパワー半導体チップ2と、複数のパワー半導体チップ3と、複数の制御IC4とを備える場合が例示されているが、パワー半導体チップ2,3と制御IC4のそれぞれの数は任意であってもよい。また、本実施の形態では、半導体装置1はパワー半導体モジュールであることを想定して半導体チップとしてパワー半導体チップ2,3および制御IC4を備える場合を示しているが、半導体装置1は少なくとも1つの半導体チップを備えるものであればよい。
【0013】
モールド樹脂9は封止材であり、半導体装置1の備える半導体チップとしてのパワー半導体チップ2,3と、制御IC4と、は、モールド樹脂9により一体的に封止されている。
【0014】
リードフレーム10aは複数のリード端子100aを備える。リードフレーム10bは複数のリード端子100bを備える。リード端子100aとリード端子100bを区別する必要が無い場合は、リード端子100aまたはリード端子100bのそれぞれをリード端子100と呼ぶ。
【0015】
リード端子100aのうちの1つであるリード端子101aはダイパッド102aを備え、パワー半導体チップ2,3は、それぞれ、接合材5,6によってダイパッド102aに接合されている。リード端子101a以外のリード端子100aであるリード端子103aは、金属細線であるワイヤ30でパワー半導体チップ2,3と接続される。
【0016】
リード端子100bのうちの1つであるリード端子101bはダイパッド102bを備え、制御IC4は、接合材7によってダイパッド102bに接合されている。リード端子101b以外のリード端子100b(リード端子103bと呼ぶ)は、ワイヤ30で制御IC4と接続される。
【0017】
接合材5,6,7は、それぞれ、例えばはんだである。
【0018】
各リード端子100は、部分的にモールド樹脂9に封止され一部がモールド樹脂9から露出している。
【0019】
半導体装置1は基板12に挿入され、接合材8を用いて基板12の基板パターン11と接続される。基板12を含めたものを半導体装置1と呼んでもよい。接合材8は例えばはんだである。
【0020】
半導体装置1では、図1に示されるように、リード端子100のうちの1つ以上の表面に、特性の異なる2つの示温材13,14の両方が設けられている。つまり、示温材13,14の両方が設けられたリード端子100が1つ以上ある。示温材13,14の両方が設けられたリード端子100が複数あってもよい。示温材13,14は、リード端子100の露出表面、つまり、モールド樹脂9から露出している部分の表面に設けられる。
【0021】
特性の異なる2つの示温材13、14は、例えば、示温材13が不可逆の示温材であり、示温材14が可逆性の示温材である。以下では示温材13が不可逆の示温材、示温材14が可逆性の示温材として説明する。
【0022】
示温材13,14は例えば塗料であり、リード端子100の表面に塗布されて、リード端子100の表面に設けられる。また、示温材13,14は例えばシールであり、リード端子100の表面に貼り付けされて、リード端子100の表面に設けられる。
【0023】
半導体装置1の1つ以上のリード端子100の表面に可逆性と不可逆性の示温材13,14を両方設け、モールド樹脂9内部の温度に基づいて変色させる。示温材の素材を選ぶことで、可逆性と不可逆性の示温材が変色する温度は目的に応じて任意に設定できる。可逆性の示温材が変色する温度と不可逆性の示温材が変色する温度は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0024】
図1に示されるように制御IC4の少なくともいずれかと接合されているリード端子101bの表面に示温材13,14を設けることで、当該少なくともいずれかの制御IC4の発熱を継続的に可視化し、また、履歴として残すことができる。パワー半導体チップ2,3の少なくともいずれかと接合されているリード端子101aの表面に示温材13,14を設ければ、当該少なくともいずれかのパワー半導体チップ2,3の発熱を継続的に可視化し、また、履歴として残すことができる。パワー半導体チップ2,3または制御IC4の発熱ではなくリード端子101bやリード端子101aの発熱を継続的に可視化し、また、履歴として残してもよい。
【0025】
ダイパッドを有さないリード端子100、つまりリード端子103aやリード端子103bの表面に示温材13,14を設け、当該リード端子100の発熱を継続的に可視化し、また、履歴として残してもよい。
【0026】
半導体装置1を基板12に実装する際のはんだ付け時にリード端子100の先端部が高温にさらされることが考えられる。不可逆性の示温材13は、図1に示されるようにリード端子100の根元に設けることが好ましい。不可逆性の示温材13は、例えば、モールド樹脂9から突き出る形で一部が露出しているリード端子100に、モールド樹脂9から突き出ている部分のうち先端よりモールド樹脂9に近い側の部分の表面に設けられる。
【0027】
可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13の両方を用いることで、可逆性の示温材14では内部温度が特定の温度に達しているかを継続的に可視化し、内部の初期不良や経年劣化等を確認でき、不可逆性の示温材14では特定の温度に達したことを履歴として残すことが可能となる。このように、可逆性と不可逆性の示温材を用いることで、異なる2つ以上の目的で内部温度を可視化可能である。可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13を同じリード端子100の表面に設けることで、可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13の温度の差異を抑えることができる。
【0028】
サーモカメラ等の装置を用いて半導体装置1の温度を測定することも可能であるが、モールド樹脂9の内部温度と表面温度は異なり、サーモカメラ等では内部温度を精度良く測定することは難しい。リード端子100に設けられた可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13を用いることで、モールド樹脂9の内部温度を精度良く可視化し、また、履歴として残すことができる。
【0029】
<A-2.効果>
半導体装置1は部分的にモールド樹脂9に封止され一部が封止材から露出している部材であるリード端子100を少なくとも1つ備え、可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13はそれぞれ少なくとも1つのリード端子100いずれかの表面に設けられている。これにより、異なる2つ以上の目的で内部温度を可視化可能である。
【0030】
可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13はそれぞれ少なくとも1つのリード端子100いずれかのモールド樹脂9から露出している部分の表面に設けられている。これにより、異なる2つ以上の目的で内部温度を可視化可能である。
【0031】
可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13の両方が、同じリード端子100の表面に設けられている。これにより、可逆性の示温材14と不可逆性の示温材13の温度の差異を抑えることができる。
【0032】
不可逆性の示温材13は、モールド樹脂9から突き出る形で一部が露出しているリード端子100に、モールド樹脂9から突き出ている部分のうちモールド樹脂9に近い側の部分の表面に設けられている。これにより、はんだ付け時に不可逆性の示温材13が高温にさらされることを抑制できる。
【0033】
<B.実施の形態2>
図2は、実施の形態2の半導体装置1bの断面図である。半導体装置1bは、示温材13,14の設けられ方以外は実施の形態1の半導体装置1と同様である。本実施の形態でも、示温材14は可逆性、示温材13は不可逆性の示温材である。
【0034】
図2に示されるように、不可逆性の示温材13が設けられるのは、リード端子100の根元部分だけでなくてもよい。不可逆性の示温材13をリード端子100の表面の広い範囲に設けておけば、はんだ付け時に不可逆性の示温材13の一部が変色しても、他の部分により動作時の温度の履歴を残すことができる。
【0035】
本実施の形態の半導体装置1bは、制御IC4の温度によって示温材13、14を変色させる構造を特徴とする。図2に示すように、示温材13と示温材14とは、ダイパッド102bで制御IC4と接合されている同じリード端子101bに設けられる。
【0036】
パワー半導体モジュールにおいては、製品によって、制御IC4の温度の情報を電圧として出力してMCU(Micro Controller Unit、マイクロコントローラユニット)等にフィードバックし、保護機能を働かせる温度出力機能を有する。
【0037】
不可逆性の示温材13は、保護機能が働く温度よりも大きい温度で変色する。可逆性の示温材14が変色する温度は、目的に応じ任意に選ぶことができる。
【0038】
可逆性の示温材14が保護機能を働かせる温度よりも大きい温度で変色するものである場合、保護機能が働くよりも前に示温材14が変色していたら、その時に半導体装置1bの温度出力機能を正しく使えていない、もしくは不良等が起きていることを確認できる。
【0039】
可逆性の示温材14が保護機能を働かせる温度よりも小さい温度で変色するものである場合、可逆性の示温材により、温度出力機能が初期不良、経年劣化なく動作していることを継続的に可視化し、確認できる。
【0040】
また、保護機能を働かせる温度よりも大きい温度で変色する不可逆性の示温材13が、保護機能が働くよりも前に変色した場合、半導体装置1bの温度出力機能を正しく使えていない、もしくは不良等が起きていることを履歴として残すことができる。
【0041】
<C.実施の形態3>
図3は、実施の形態3の半導体装置1cの断面図である。
【0042】
半導体装置1cはパワー半導体チップ2,3と接合されているダイパッド102aを有する同じリード端子101aに、可逆性の示温材15と不可逆性の示温材16の両方を塗布または貼り付けた構造を特徴とする。
【0043】
実施の形態2で述べた温度出力機能では制御IC4の温度を電圧として出力しているが、例えば半導体装置1の内部で故障等が発生しパワー半導体チップ2,3の急激な温度上昇が起きた際、パワー半導体チップ2,3や制御IC4の素子破壊が起こり、温度出力機能では温度情報を取得できないことも考えられる。
【0044】
パワー半導体チップ2,3と接合されているリード端子101aに可逆性、不可逆性の示温材15,16を塗布または貼り付けることで、可逆性の示温材15では制御IC4よりも高温であるパワー半導体チップ2,3の温度情報を継続的に可視化でき、不可逆性の示温材16では、制御IC4の温度出力機能では取得できない可能性のあるパワー半導体チップ2,3の急激な温度上昇に対して、温度の履歴を残すことが可能となる。
【0045】
また、リード端子101aではなく、ワイヤ30でパワー半導体チップ2,3と接続されているリード端子103aの表面に可逆性と不可逆性の示温材を設け、リード端子103aの急激な温度上昇を継続的に可視化し、また、履歴を残してもよい。
【0046】
<D.実施の形態4>
図4(a)は実施の形態4の半導体装置1dの断面図、図4(b)は実施の形態4の半導体装置1dをパワー半導体チップ2,3側から、つまり図4(a)の矢印B側から見た側面図である。
【0047】
半導体装置1dは、半導体装置1と、各リード端子100aおよびリード端子100bの配置と、示温材の設けられ方を除けば同様の構成である。
【0048】
半導体装置1dは、可逆性、不可逆性の示温材が1つのリード端子100の両面に塗布または貼り付けられた構造を特徴とする。
【0049】
リード端子は通常平板状であり、一方主面および一方主面の反対側の主面である他方主面を有する。本実施の形態では、可逆性の示温材をあるリード端子100の一方主面に、不可逆性の示温材を当該あるリード端子100の他方主面に塗布または貼り付ける。また、当該一方主面に不可逆性の示温材は設けられておらず、当該他方主面に可逆性の示温材は設けられていない。このように、リード端子100の両主面に、異なる目的での変色をさせるように示温材を設ける。一方主面に可逆性の示温材が、他方主面に不可逆性の示温材が設けられるリード端子100はいくつあってもよい。図4(a)では、リード端子101aとリード端子101bはそれぞれ、一方主面に可逆性の示温材が、他方主面に不可逆性の示温材が設けられている場合が示されている。
【0050】
可逆性、不可逆性の示温材のうちどちらがどちらの主面に塗布または貼り付けられてもよい。ただし、半導体装置1dが基板12に実装された後は、図4(a)の示温材13や示温材16が設けられている面のような半導体装置1d側の面は確認が困難となる。そのため、示温材14や示温材15のように、基板12に実装される際に外側を向く面に可逆性の示温材を塗布または貼り付け、その裏面に示温材13や示温材16のように不可逆性の示温材を塗布又は貼り付けることが望ましい。
【0051】
1つのリード端子100の一方主面に可逆性の示温材を、他方主面に不可逆性の示温材を塗布または貼り付けることで、1つの示温材が塗布または貼り付けられる面積が大きくなり、1つの面に可逆性、不可逆の両方の示温材を設けるよりも、容易に示温材の状態を確認できる。
【0052】
<E.実施の形態5>
図5(a)および図5(b)は、実施の形態5の半導体装置1eの側面図である。
【0053】
図5(a)では、リード端子100の露出表面部分の片面が縦に分割された2つの領域に、可逆性の示温材17と不可逆性の示温材18が片方ずつ塗布または貼り付けされている。つまり、リード端子100の一方の主面の露出表面部分をリード端子100がモールド樹脂9から突き出ている方向に沿った境界で分割した2つの領域のうち一方の領域に可逆性の示温材17が、当該2つの領域のうち他方の領域に不可逆性の示温材18が設けられている。変色温度以上になった場合、可逆性の示温材17と不可逆性の示温材18は異なる色へと変色する。
【0054】
図5(b)では、可逆性の示温材19と不可逆性の示温材20が、リード端子100の一方の主面の露出表面部分に、それぞれがストライプ状で、合わせて網目状になるように、設けられている。変色温度以上になった場合、可逆性の示温材19と不可逆性の示温材20は異なる色へと変色する。
【0055】
本実施の形態では、このように、リード端子100のある1つの主面に可逆性の示温材と不可逆性の示温材の両方が設けられる。
【0056】
半導体装置1eを基板に実装した後は、半導体装置1e側の面は確認が困難になるため、基板に実装した際に外側になる面に可逆性、不可逆性の示温材を塗布または貼り付けることが好ましい。
【0057】
リード端子100の露出部分を上下に分割し、つまりモールド樹脂9に近い側と遠い側に分割し、可逆性の示温材および不可逆性の示温材を塗布または貼り付けることも可能ではあるが、モールド樹脂9に近い側と遠い側では温度分布が異なることが考えられる。図5(a)のように縦に分割して、もしくは図5(b)のように網目状に示温材を塗布または貼り付けることで、可逆性の示温材17と不可逆性の示温材18の温度の異なりを抑制できる。
【0058】
本実施の形態では可逆性と不可逆性の示温材はリード端子100の1つの面に塗布または貼り付けられるため、リード端子100の両面に塗布または貼り付けられるよりも、各示温材の状態の確認が容易となる。
【0059】
<F.実施の形態6>
図6は実施の形態6の半導体装置1fをパワー半導体チップ2,3の側から見た側面図である。
【0060】
示温材21をリード端子100に設ける際に、温度が上がると文字が浮き上がるように設けることで、単に示温材を変色させるよりも、より視覚に訴えることができる。文字は例えば温度を示す数字であってもよい。図6では、温度が上がるとNGという文字が浮き上がるように示温材21が設けられている場合が示されている。
【0061】
示温材21は例えば不可逆性の示温材であり、可逆性の示温材は、示温材21が設けられているリード端子100の、示温材21が設けられている面と逆側の面に設けられる。または、示温材21は例えば可逆性の示温材であり、不可逆性の示温材は、示温材21が設けられているリード端子100の、示温材21が設けられている面と逆側の面に設けられる。このように、可逆性の示温材と不可逆性の示温材とのうち少なくともいずれかは、リード端子100の表面に、温度が上がると文字が浮かび上がるように設けられる。可逆性の示温材と不可逆性の示温材の両方が、リード端子100の表面に、温度が上がると文字が浮かび上がるように設けられてもよい。
【0062】
<G.実施の形態7>
実施の形態1から6では、1つのリード端子100に可逆性の示温材と不可逆性の示温材の両方が設けられる場合について示したが、1つのリード端子100に可逆性の示温材が、別のリード端子100に不可逆性の示温材が設けられていてもよい。このような構成によっても、モールド樹脂9の内部の温度を継続的に可視化し、また、履歴として残すことができる。
【0063】
また、可逆性の示温材と不可逆性の示温材が設けられるのは、リード端子100の表面ではなく、半導体装置の電気的な接続には用いられない吊りリードの表面であってもよい。さらに、可逆性の示温材と不可逆性の示温材が設けられるのは、より一般に、部分的にモールド樹脂9に封止され一部がモールド樹脂9から露出している部材(以下、部材200とする)の表面であってもよい。
【0064】
つまり、半導体装置は少なくとも1つの半導体チップを一体的に封止しているモールド樹脂9と、部分的にモールド樹脂9に封止され一部がモールド樹脂9から露出している部材200を少なくとも1つと、を備え、可逆性の示温材と不可逆性の示温材はそれぞれ少なくとも1つの部材200いずれかの表面に設けられている、という構成であってもよい。その場合も、部材200として熱伝導度がモールド樹脂9の熱伝導度より高いものを用いることで、部材200に可逆性の示温材と不可逆性の示温材が設けられることにより、実施の形態1から6で説明したのと同様、異なる2つ以上の目的でモールド樹脂9内部の温度を可視化できる。実施の形態1から6のリード端子100は、部材200の例である。
【0065】
例えば、部材200として、リード端子100よりも熱伝導度が高いものを用いることで、モールド樹脂9内部の温度をより正確に可視化できる。
【0066】
また、1つの部材200がモールド樹脂9から複数箇所で露出している場合も考えられるが、温度の異なりを抑える為、可逆性の示温材と不可逆性の示温材の両方が、同じある部材200の、モールド樹脂9からの一連の露出表面に設けられていることが望ましい。
【0067】
また、実施の形態1~6では可逆性と不可逆性の示温材の両方が、リード端子100の露出表面に設けられている場合を示したが、不可逆性はモールド樹脂9から露出していない部分の表面に設けられてもよい。
【0068】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1,1b,1c,1d,1e,1f 半導体装置、2,3 パワー半導体チップ、4 制御IC、5,6,7,8 接合材、9 モールド樹脂、10a,10b リードフレーム、11 基板パターン、12 基板、13,14,15,16,17,18,19,20,21 示温材、30 ワイヤ、100,100a,100b,101a,101b,103a,103b リード端子、102a,102b ダイパッド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6