(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】負荷制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20231215BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20231215BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/32
H02J13/00 311T
(21)【出願番号】P 2020168829
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石本 智之
(72)【発明者】
【氏名】高野 富裕
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023389(JP,A)
【文献】特開2017-099039(JP,A)
【文献】特開2017-199273(JP,A)
【文献】特開2008-048500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線に接続される電力系統の負荷を制御するための負荷制御装置であって、
前記負荷制御装置は、前記配電線の通過電流値を予め定められた閾値以下にするために、前記配電線に接続された複数の設備に対する有効電力および無効電力の制御量を指令値として複数の前記設備に送る指令値送信部と、
前記設備ごとに予め設定された前記有効電力および前記無効電力に対するそれぞれの制御可能量および制御単価のテーブルに基づいて、前記設備ごとの前記制御量に前記制御単価を乗じて得られる制御費用の総和が最小となる前記制御量を前記指令値として決定する指令値決定部とを備えたことを特徴とする負荷制御装置。
【請求項2】
前記設備ごとに予め設定された前記制御単価は、前記有効電力の単位電力に対する単価と前記無効電力の単位電力に対する単価とで個別に設定されており、前記設備ごとの前記制御費用は、前記有効電力の制御量に前記有効電力の単位電力に対する単価を乗じた有効電力制御費用と、前記無効電力の制御量に前記無効電力の単位電力に対する単価を乗じた無効電力制御費用との和であることを特徴とする請求項1に記載の負荷制御装置。
【請求項3】
前記有効電力の単位電力に対する単価は、順潮流に対する単価と逆潮流に対する単価とで個別に設定されており、前記有効電力の制御量は、順潮流に対する有効電力の制御量と逆潮流に対する有効電力の制御量とで個別に設定され、前記有効電力制御費用は、前記順潮流に対する有効電力の制御量に前記順潮流に対する単価を乗じたものと、前記逆潮流に対する有効電力の制御量に前記逆潮流に対する単価を乗じたものとの和であることを特徴とする請求項2に記載の負荷制御装置。
【請求項4】
前記無効電力の単位電力に対する単価は、リアクトル成分に対する単価とコンデンサ成分に対する単価とで個別に設定されており、前記無効電力の制御量は、リアクトル成分に対する無効電力の制御量とコンデンサ成分に対する無効電力の制御量とで個別に設定され、前記無効電力制御費用は、前記リアクトル成分に対する無効電力の制御量に前記リアクトル成分に対する単価を乗じたものと、前記コンデンサ成分に対する無効電力の制御量に前記コンデンサ成分に対する単価を乗じたものとの和であることを特徴とする請求項2または3に記載の負荷制御装置。
【請求項5】
前記有効電力に対する制御可能量は、順潮流に対する制御可能量と逆潮流に対する制御可能量とで個別に設定されており、前記無効電力に対する制御可能量は、リアクトル成分に対する制御可能量とコンデンサ成分に対する制御可能量とで個別に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の負荷制御装置。
【請求項6】
前記制御費用の総和が最小となる前記制御量は、前記設備ごとの前記順潮流に対する有効電力の制御量および前記逆潮流に対する有効電力の制御量がそれぞれ前記順潮流に対する制御可能量および前記逆潮流に対する制御可能量以下となること、および前記配電線の通過電流値が予め定められた前記閾値以下となることを制約条件として、前記設備ごとの前記有効電力制御費用と前記無効電力制御費用との総和で定義される目的関数の最適化計算で得られることを特徴とする請求項5に記載の負荷制御装置。
【請求項7】
前記指令値決定部は、前記制御単価が最も小さい項目に対応する前記設備から順に選択し、前記配電線の通過電流値が予め定められた前記閾値以下になるまで順に選択した前記設備の前記制御量を設定して前記指令値を決定することを特徴とする請求項1に記載の負荷制御装置。
【請求項8】
前記配電線の通過電流値は、前記配電線の複数の地点における通過電流値であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の負荷制御装置。
【請求項9】
前記指令値送信部は、予め設定された経過時間以上継続して前記通過電流値が前記閾値を超過した場合のみ前記指令値を前記設備に送ることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の負荷制御装置。
【請求項10】
前記負荷制御装置は、前記設備に対して前記指令値を送ったときに前記設備が前記指令値に従って有効電力および無効電力の制御を実施した否かの情報を履歴として記憶し、前記履歴に基づいて前記設備ごとに前記指令値に従って有効電力および無効電力の制御を実施した実績率を算出し、前記実績率が最も大きい前記設備から順に優先して前記指令値を前記設備に送ることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の負荷制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、負荷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の配電線には需要家の設備として種々の設備が接続される。需要家の設備としては、太陽光発電、蓄電池などの分散電源設備、電気自動車、電気温水器などの電力負荷設備、コンデンサ、リアクトルなどの電力制御設備がある。分散電源設備および電力負荷設備の普及が進むにつれて配電線の通過電流が増加し、電力系統の設備容量を超過する過負荷が発生する場合がある。
【0003】
電力系統の過負荷を回避する対策としては、コネクト&マネージと呼ばれる方式がある。コネクト&マネージとは、例えば太陽光発電を例に取ると、接続申請時には過負荷となる可能性があっても接続条件付きで接続を許可し、太陽光発電がフル発電して電力系統に過負荷が発生しそうな時には接続条件に基づいて太陽光発電の出力抑制を実施するという方式である。しかしながら、コネクト&マネージでは、太陽光発電のフル発電で得られる電力を有効活用できないという問題がある。
【0004】
電力系統の過負荷を回避する別の対策として、蓄電池を活用する方法がある。例えば、電力系統の配電線の通過電流を削減させる手段として、送電線に接続された蓄電池の有効電力および無効電力の増減を制御する方法が開示されている。この制御方法においては、有効電力および無効電力のどちらを優先的に制御するかが課題となる。従来の制御方法においては、配電線の通過電流に対する削減効果の大きい方の電力を優先的に制御している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような制御を行う場合において、送電線に接続された蓄電池は需要家の設備であるため、コストも重要である。従来の制御方法においては、有効電力および無効電力のうち配電線の通過電流に対する削減効果の大きい方の電力を優先的に制御しており、コストは考慮されていなかった。また、需要家の設備には蓄電池以外の他の設備も存在するが、従来の制御方法はそれらの設備の有効電力および無効電力を活用していないという問題があった。
【0007】
本願は、上述の課題を解決するためになされたもので、需要家の多種類の設備の電力を活用すると共にコストを抑えて電力系統の負荷を制御することができる負荷制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の負荷制御装置は、配電線に接続される電力系統の負荷を制御するための負荷制御装置であって、配電線の通過電流値を予め定められた閾値以下にするために、配電線に接続された複数の設備に対する有効電力および無効電力の制御量を指令値として複数の設備に送る指令値送信部と、設備ごとに予め設定された有効電力および無効電力に対するそれぞれの制御可能量および制御単価のテーブルに基づいて、設備ごとの制御量に制御単価を乗じて得られる制御費用の総和が最小となる制御量を指令値として決定する指令値決定部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本願の負荷制御装置は、設備ごとに予め設定された有効電力および無効電力に対するそれぞれの制御可能量および制御単価のテーブルに基づいて、設備ごとの制御量に制御単価を乗じて得られる制御費用の総和が最小となる制御量を指令値として決定する指令値決定部を備えているので、需要家の多種類の設備の電力を活用すると共にコストを抑えて電力系統の負荷を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る配電系統の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る配電系統における有効電力と無効電力との関係を示した特性図である。
【
図3】実施の形態1に係る負荷制御装置の構成図である。
【
図4】実施の形態1に係る需要家の複数の設備の制御可能量および制御単価のテーブルを示す図である。
【
図5】実施の形態1から5に係る負荷制御装置のハードウエアの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る負荷制御装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る負荷制御装置が適用される配電系統の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電力系統1は、例えば6.6kVの高電圧の交流電力を配電線2に供給する。配電線2には、配電線2を流れる電流波形と配電線2の電圧波形とを取得するセンサ3が接続されている。また、配電線2には、需要家の多種類の設備として、例えば蓄電池-A41、蓄電池-B42、電気自動車であるEV-A43およびEV-B44、温水器-A45、コンデンサ-A46、および太陽光発電であるPV-A47などが接続されている。さらに、需要家の複数の設備に指令値を送る負荷制御装置5が備えられている。負荷制御装置5には、センサ3で取得された配電線2の電流波形および電圧波形が入力される。負荷制御装置5は、電力系統1の過負荷を回避するために、センサ3から入力される電流波形および電圧波形に基づいて需要家の複数の設備に対して有効電力および無効電力の制御量を指令値として送る。
なお、
図1に示す配電系統において、電力系統1から配電線2へ向かって電流が流れる方向を順潮流、その逆方向を逆潮流と称する。
【0013】
負荷制御装置5は、センサ3から入力された電流波形および電圧波形から、実効値計算を行って配電線2の通過電流値、力率値、電圧値、およびそれらの値から算出される有効電力並びに無効電力を算出する。
【0014】
図2は、本実施の形態の配電系統における有効電力と無効電力との関係を示した特性図である。配電線2における有効電力は、順潮流方向と逆潮流方向とに分けることができる。また、配電線2における無効電力は、配電系統がもつリアクトル成分(L成分)方向とコンデンサ成分(C成分)方向とに分けることができる。
図2において、横軸は有効電力、縦軸は無効電力である。また、横軸の右側は順潮流方向、左側は逆潮流方向である。さらに縦軸の上側はリアクトル成分、下側はコンデンサ成分である。
図2において、破線で示す円10は、電力系統1の設備容量である最大許容電流値に、負荷制御装置5で算出した電圧値を乗じて得られる皮相電力であり、同じく負荷制御装置5で算出した有効電力および無効電力のプロット点が円10の外にあると、過負荷が発生していることになる。逆にこの円10の内部であれば電力系統1の過負荷を回避することができる。
図2において、点11を負荷制御装置5で算出された有効電力、無効電力を示す位置とする。この場合、点11は円10の外側に位置するので、配電線2には過電流が流れていることになる。本実施の形態の負荷制御装置5は、この通過電流値が示す点11を移動させて円10の内部になるように制御する。例えば、無効電力のみの制御であれば点11は矢印12のように下の方向に向かって移動する。有効電力のみの制御であれば点11は矢印13のように右の方向に向かって移動する。有効電力および無効電力の両方の制御であれば点11は矢印14のように右斜め下の方向に向かって移動する。
本実施の形態の負荷制御装置5は、
図2に示すように配電線2に過電流が流れている、つまり電力系統1が過負荷のときにこの過負荷を解消するように需要家の複数の設備に対して有効電力および無効電力の制御量を決定するが、このとき制御費用が最小となるようにその制御量を決定する。その手順について、以下説明する。
【0015】
図3は、本実施の形態に係る負荷制御装置5の構成図である。本実施の形態の負荷制御装置5は、配電線2に接続された複数の設備に対する有効電力および無効電力の制御量を指令値としてそれらの設備に送る指令値送信部51と、設備ごとに予め設定された有効電力および無効電力に対するそれぞれの制御可能量および制御単価のテーブルに基づいて、設備ごとの制御量に制御単価を乗じて得られる制御費用の総和が最小となる制御量を指令値として決定する指令値決定部52とを備えている。設備ごとに予め設定された有効電力および無効電力に対するそれぞれの制御可能量および制御単価のテーブルは、記憶部53に記憶されている。センサ3で取得された配電線2の電流波形および電圧波形は、指令値決定部52に入力される。
【0016】
図4は、記憶部53に記憶されている需要家の多種類の制御対象設備の制御可能量および制御単価のテーブルを示す図である。
図4に示すテーブルは、複数の制御対象設備のそれぞれに対して制御可能量および制御単価を示している。制御可能量および制御単価は、それぞれ有効電力と無効電力とに対して個別に設定されている。さらに有効電力に関しては、順潮流と逆潮流とに対して個別に設定されている。また無効電力に関しては、リアクトル成分(L成分)とコンデンサ成分(C成分)とに対して個別に設定されている。なお、有効電力の単位はkWであり、無効電力の単位はkvarである。また、有効電力の制御単価は有効電力の単位電力に対する価格であり、その単位は円/kWである。無効電力の制御単価は無効電力の単位電力に対する価格であり、その単位は円/kvarである。なお、制御可能量は、それぞれの設備における制御前の電力から鑑みて増減の調整可能な幅である。
【0017】
本実施の形態の負荷制御装置5の指令値決定部52は、
図4に示すテーブルを用いて各設備の制御量に制御単価を乗じて得られる制御費用の総和が最小となるように制御量を決定している。その方法として、例えば下の(1)式に示す目的関数を用いて制御費用Fが最小となる最適化計算を行って制御量を決定することができる。
【0018】
【0019】
ここで、iは設備を特定する番号、nは配電線2に接続された需要家の複数の設備の総数である。iで特定される設備において、PNiは順潮流の有効電力の制御量、PRiは逆潮流の有効電力の制御量、QLiは無効電力のL成分の制御量、QCiは無効電力のC成分の制御量である。また、CPNiは順潮流の有効電力の制御単価、CPRiは逆潮流の有効電力の制御単価、CQLiは無効電力のL成分の制御単価、CQCiは無効電力のC成分の制御単価である。
【0020】
(1)式からわかるように、設備ごとの制御費用は、有効電力の制御量に有効電力の単位電力に対する単価を乗じた有効電力制御費用と、無効電力の制御量に無効電力の単位電力に対する単価を乗じた無効電力制御費用との和である。そして、有効電力制御費用は、順潮流に対する有効電力の制御量PNiに順潮流に対する単価CPNiを乗じたものと、逆潮流に対する有効電力の制御量PRiに逆潮流に対する単価CPRiを乗じたものとの和である。また、無効電力制御費用は、リアクトル成分に対する無効電力の制御量QLiにリアクトル成分に対する単価CQLiを乗じたものと、コンデンサ成分に対する無効電力の制御量QCiにコンデンサ成分に対する単価CQCiを乗じたものとの和である。
【0021】
このとき、電力系統1の設備容量で決まる配電線2を流れる通過電流値の閾値をIlimitとすると、制約条件として通過電流値がIlimit以下である必要がある。つまり、制約条件として、下の(2)式を満足する必要がある。
【0022】
【0023】
ここで、Pは制御前の配電線2の有効電力、Qは制御前の配電線2の無効電力、Vは配電線の電圧である。
また、有効電力および無効電力の制御量は、
図4に示すテーブルに記載された制御可能量を超えてはならないので、下の(3)式すべてを満足する必要がある。
【0024】
【0025】
本実施の形態の負荷制御装置5の指令値決定部52は、(2)式および(3)式に示す制約条件を満足すると共に(1)式に示す制御費用Fが最小となるように需要家の複数の設備に対して有効電力および無効電力の制御量を決定する。そして、負荷制御装置5の指令値送信部51は、このようにして決定した制御量を指令値として需要家の複数の設備に送る。複数の設備は負荷制御装置5から送られてきた指令値に基づいて有効電力および無効電力が制御される。その結果、電力系統1の過負荷が解消される。
【0026】
このように構成された負荷制御装置5は、需要家の多種類の設備の電力を活用すると共にコストを抑えて電力系統の負荷を制御することができる。
【0027】
なお、本実施の形態の負荷制御装置において、
図4に示したテーブルは、負荷制御装置の内部の記憶部に予め記憶されているが、負荷制御装置の外部に設けられた外部記憶装置に記憶されていてもよい。あるいは、負荷制御装置は、外部のサーバー、クラウドなどから
図4に示したテーブルを入手してもよい。ただし、制御可能量は制御前の電力から鑑みて増減の調整可能な幅であることから、負荷制御装置が需要家の複数の設備と通信を行って各設備から入手することが好ましい。
また、指令値決定部で行われる最適化計算に用いる目的関数は、(1)式に示した関数に限らず別の関数でもよい。
【0028】
実施の形態2.
一般に、需要家の複数の設備において、有効電力はエネルギーの出し入れとなるため有効電力の制御単価は高くなる。一方、無効電力はエネルギーの出し入れとならないため無効電力の制御単価は有効電力の制御単価よりも低くなる。実施の形態1の負荷制御装置において、指令値決定部は制御費用を最小にするために目的関数を用いた最適化計算を行っている。実施の形態2の負荷制御装置においては、指令値決定部が最適化計算に替えて制御単価の最も低い項目に対応する設備から順に制御量を決定して制御費用を最小にするものである。
【0029】
実施の形態1の
図4に示したテーブルから、無効電力の制御単価の方が有効電力の制御単価よりも低いことがわかる。本実施の形態の負荷制御装置の指令値決定部は、制御単価の最も低い項目に対応する設備から順に選択して制御量を設定し、制御費用の総和が最小となる制御量を指令値として決定する。その手順について、以下説明する。なお、以下の説明において、無効電力の制御単価の方が有効電力の制御単価よりも低いことを前提とする。
【0030】
現状、配電線に過電流が流れている、つまり電力系統が過負荷の状態にあるとする。負荷制御装置は、センサから入力された電流波形および電圧波形から、実効値計算を行って配電線の通過電流値、力率値、電圧値、およびそれらの値から算出される有効電力並びに無効電力を算出する。指令値決定部は、算出した無効電力がコンデンサ成分である場合はリアクトル成分の制御単価が最も低い設備から順に制御対象の設備として選択する。逆に、算出した無効電力がリアクトル成分である場合は、指令値決定部はコンデンサ成分の制御単価が最も低い設備から順に制御対象の設備として選択する。次に指令値決定部は、制御対象として選択した設備の無効電力の制御量を
図4に示したテーブルの対応する無効電力の制御可能量以下に設定して指令値を決定する。次に指令値送信部は、指令値決定部で決定された指令値を選択した設備に送る。
【0031】
次に指令値決定部は、算出した有効電力が順潮流である場合は、逆潮流の有効電力の制御単価が最も低い設備から順に制御対象の設備として選択する。逆に、算出した有効電力が逆潮流である場合は、指令値決定部は順潮流の有効電力の制御単価が最も低い設備から順に制御対象の設備として選択する。次に指令値決定部は、制御対象として選択した設備の有効電力の制御量を
図4に示したテーブルの対応する有効電力の制御可能量以下に設定して指令値を決定する。次に指令値送信部は、指令値決定部で決定された指令値を選択した設備に送る。このような手順で指令値を決定しても設備ごとの制御量に制御単価を乗じて得られる制御費用の総和は最小値に近くなる。
【0032】
このように構成された負荷制御装置は、需要家の多種類の設備の電力を活用すると共にコストを抑えて電力系統の負荷を制御することができる。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態1の配電系統においては、
図1に示すように、配電系統の配電線2には配電線2を流れる電流波形と電圧波形とを取得するセンサ3が1つ接続されている。実施の形態3の配電系統においては、複数のセンサが配電線の複数の地点にそれぞれ備えられている。本実施の形態の負荷制御装置には、複数のセンサでそれぞれ取得された電流波形と電圧波形とが入力される。この負荷制御装置は、複数のセンサからそれぞれ入力された電流波形と電圧波形とから算出された通過電流値のうち少なくとも1つの通過電流値が閾値を超過した場合に電力系統の負荷を制御する。本実施の形態の負荷制御装置が行う制御は、実施の形態1および2で説明した制御と同じである。
【0034】
このように構成された負荷制御装置は、需要家の多種類の設備の電力を活用すると共にコストを抑えて電力系統の負荷を制御することができる。また、センサが配電線の複数の地点に備えられているので、配電系統の信頼性が向上する。
【0035】
実施の形態4.
実施の形態1から3の負荷制御装置は、配電線の通過電流値が予め定められた閾値を超過したときは直ちに電力系統の負荷を制御している。しかしながら、太陽光発電の発電量は非常に変動が大きく、配電線の通過電流が閾値を超える時間が数秒から数分間となる場合がある。このような配電線の通過電流が閾値を超える時間が数秒から数分間である場合に直ちに電力系統の負荷を制御すると、かえって配電系統が不安定となる。
【0036】
実施の形態4の負荷制御装置は、予め設定された経過時間以上継続して配電線の通過電流値が閾値を超過した場合のみ電力系統の負荷を制御するものである。なお、本実施の形態の負荷制御装置の指令値決定部が決定する指令値は、実施の形態1から3で説明した指令値のいずれかと同じである。本実施の形態の負荷制御装置は、センサから入力された測定値から通過電流値を算出するときに、算出された通過電流値が予め設定された経過時間以上継続して閾値を超過したか否かを判断する。予め設定された経過時間は、配電線に接続される需要家の複数の設備の種類によって決定される。1つの例を挙げると、需要家の設備として太陽光発電が接続されている場合には、予め設定された経過時間は5~10分程度である。負荷制御装置の指令値送信部は、予め設定された経過時間以上継続して通過電流値が閾値を超過している場合は、指令値決定部で決定された指令値を送る。逆に、通過電流値が予め設定された経過時間以上継続して閾値を超過していない場合は、負荷制御装置の指令値送信部は指令値決定部で決定された指令値を送らない。
【0037】
このように構成された負荷制御装置は、需要家の多種類の設備の電力を活用すると共にコストを抑えて電力系統の負荷を制御することができる。また、配電系統の安定性が向上する。
【0038】
実施の形態5.
需要家の複数の設備は負荷制御装置から送られてくる指令値に基づいて有効電力および無効電力を制御するが、それらの設備は必ずしも指令値に従って制御されるとは限らない。なぜなら、需要家の設備の制御に関しては、需要家の要求が優先される場合があるからである。例えば、需要家の設備が蓄電池でありこの蓄電池の電力で工場設備を稼働させている場合がある。このようなときに需要家の設備が有効電力を低減する指令値を受信しても、その指令値に従って制御されない場合が考えられる。
【0039】
実施の形態5の負荷制御装置は、需要家の複数の設備に対して指令値を送ったときに指令値に従って有効電力および無効電力の制御を実施した否かの情報を履歴として記憶する。そして、本実施の形態の負荷制御装置は、記憶した履歴に基づいて、設備ごとに指令値に従って有効電力および無効電力の制御を実施した実績率を算出する。そして、本実施の形態の負荷制御装置は、実施の形態1から4の制御方法において、配電線の通過電流値が閾値以下となるまで実績率が最も大きい設備から順に優先して選択して制御量を決定する。
【0040】
このように構成された負荷制御装置は、需要家の多種類の設備の電力を活用すると共にコストを抑えて電力系統の負荷を制御することができる。また、実績率が最も大きい設備から順に優先して制御量が決定されるので、電力系統の過負荷が回避されまでの時間が短くなる。
【0041】
なお、実施の形態1から5に係る負荷制御装置5は、ハードウエアの一例を
図5に示すように、プロセッサ100と記憶装置101から構成される。記憶装置101は、図示していないが、ランダムアクセスメモリなどの揮発性記憶装置と、フラッシュメモリなどの不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ100は、記憶装置101から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ100にプログラムが入力される。また、プロセッサ100は、演算結果などのデータを記憶装置101の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0042】
本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0043】
1 電力系統、2 配電線、3 センサ、5 負荷制御装置、41 蓄電池-A、42 蓄電池-B、43 EV-A、44 EV-B、45 温水器-A、46 コンデンサ-A、47 PV-A、51 指令値送信部、52 指令値決定部、53 記憶部、 100 プロセッサ、101 記憶装置。