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特許7403427透過型表示装置、作業支援システム、表示プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】透過型表示装置、作業支援システム、表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20231215BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20231215BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231215BHJP
   G09G 5/22 20060101ALI20231215BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/0481
G09G5/00 510A
G09G5/00 530T
G09G5/00 530M
G09G5/22 630
G09G5/00 550B
G09G5/10 Z
G09G5/00 510V
G09G5/00 550C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020179619
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070516
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 将史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 航史
(72)【発明者】
【氏名】中道 拓也
(72)【発明者】
【氏名】新岡 正彦
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016599(JP,A)
【文献】特開2015-049692(JP,A)
【文献】特開2015-069423(JP,A)
【文献】特開2012-164157(JP,A)
【文献】特開2019-117308(JP,A)
【文献】特開2016-110379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/0481
G09G 5/00
G09G 5/22
G09G 5/377
G09G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の像を透過する透過型表示装置であって、
前記対象物の像が透過するとともに前記対象物に重畳して重畳画像を表示する表示部、 前記表示部が表示する第1コンテンツと前記表示部が表示する第2コンテンツを格納する記憶部、
前記表示部が表示する画像を制御する制御部、
前記制御部に対する指示入力を入力する指示入力部、
を備え、
前記第1コンテンツは、前記指示入力にしたがって、前記表示部が表示する内容を更新することができるように構成されており、
前記制御部は、前記表示部が前記第1コンテンツを表示しているとき、前記第1コンテンツの内容を更新するように指示する前記指示入力を受け取ると、前記指示入力にしたがって、前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新し、
前記制御部はさらに、前記指示入力にしたがって更新した前記第1コンテンツの少なくとも一部を、前記表示部の最前面に表示し、
前記制御部は、前記指示入力を受け取ると、前記第1コンテンツと前記第2コンテンツが少なくとも部分的に前記表示部において重なり合っている場合であっても、前記第1コンテンツの前記少なくとも一部を前記表示部の最前面に表示し、さらに前記指示入力を受け取ってから第1時間が経過した時点で、前記指示入力にしたがって前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新し、
前記制御部は、前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新した後、さらに第2時間が経過した時点で、前記第1コンテンツの前記少なくとも一部を、前記表示部の最前面に表示する前の表示形式に戻す
ことを特徴とする透過型表示装置。
【請求項2】
前記第1コンテンツは、前記透過型表示装置を装着するユーザが実施すべき1以上の作業項目を文字列によって記述するとともに、前記ユーザが現在実施中である前記作業項目を前記表示部において他の前記作業項目とは異なる表示形式で表示することができるように構成された、手順書であり、
前記第2コンテンツは、前記作業項目に関連する図面であり、
前記指示入力部は、前記ユーザが現在実施中である前記作業項目を前記表示部上において切り替えるように指示する前記指示入力を受け取り、
前記制御部は、前記指示入力にしたがって前記表示部上において前記作業項目を切り替えるとともに、前記第1コンテンツのうち少なくとも前記切り替えた前記作業項目を前記表示部の最前面に表示する
ことを特徴とする請求項1記載の透過型表示装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記第1コンテンツと前記第2コンテンツとの間の相対的な優先度を記述した優先度データを格納しており、
前記制御部は、前記第1コンテンツの内容を更新するときを除き、前記優先度データが記述している前記優先度にしたがって、前記表示部上において前記第1コンテンツと前記第2コンテンツのうちいずれをより前面に表示するかを制御する
ことを特徴とする請求項1記載の透過型表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記優先度データが記述している前記優先度にしたがって、前記表示部上において前記第1コンテンツと前記第2コンテンツが重なり合っている重畳部分の透過度を調整し、
前記制御部は、前記重畳部分において表示する前記第1コンテンツと前記第2コンテンツの割合が、前記第1コンテンツの前記優先度と前記第2コンテンツの前記優先度との間の比率と対応するように、前記透過度を調整する
ことを特徴とする請求項記載の透過型表示装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記表示部上において前記第1コンテンツと前記第2コンテンツが重なり合った場合における前記第1コンテンツと前記第2コンテンツそれぞれの透過度を記述した透過度データを格納しており、
前記制御部は、前記透過度データが記述している前記透過度にしたがって、前記表示部上において前記第1コンテンツと前記第2コンテンツが重なり合っている重畳部分の透過度を調整する
ことを特徴とする請求項1記載の透過型表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記表示部が表示することができる画面サイズよりも大きいサイズを有する仮想画面を生成するとともに、前記仮想画面のうち一部の部分領域のみを前記表示部に表示させ、
前記制御部は、前記透過型表示装置を装着したユーザの動きを検出する動作センサから前記ユーザの動きを取得し、
前記制御部は、前記ユーザの動きが表している方向へ向かって、前記仮想画面のうち前記表示部が表示する前記部分領域を移動させる
ことを特徴とする請求項1記載の透過型表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記表示部が前記第1コンテンツを表示していない場合において、前記第1コンテンツの内容を更新するように指示する前記指示入力を受け取ると、前記仮想画面のうち前記第1コンテンツを表示している部分へ前記部分領域を移動させる
ことを特徴とする請求項記載の透過型表示装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記表示部とは異なる第2表示デバイスが表示する画像を制御し、
前記制御部は、前記透過型表示装置を装着したユーザの視野内において、前記表示部が表示するコンテンツと前記第2表示デバイスが重なり合っているか否かを判定し、
前記制御部は、前記表示部が表示するコンテンツと前記第2表示デバイスが前記視野内において重なり合っていると判定した場合は、前記表示部が表示するコンテンツの透過度を調整することにより、前記第2表示デバイスのほうが前記表示部が表示するコンテンツよりも前記視野内においてより明瞭に視認できるようにする
ことを特徴とする請求項1記載の透過型表示装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2表示デバイスの電源がONでありかつ前記第2表示デバイスが操作されている場合は、前記第2表示デバイス動作中であると判定し、
前記制御部は、前記第2表示デバイスが動作中であるか否かに基づき、前記表示部が表示するコンテンツと前記第2表示デバイスが表示するコンテンツを制御する
ことを特徴とする請求項記載の透過型表示装置。
【請求項10】
作業者が実施する作業を支援する作業支援システムであって、
対象物の像を透過する透過型表示装置、
前記透過型表示装置とは異なる第2表示デバイス、
を有し、
前記透過型表示装置は、
前記対象物の像が透過するとともに前記対象物に重畳して重畳画像を表示する表示部、 前記表示部が表示する第1コンテンツと前記第2表示デバイスが表示する第2コンテンツを格納する記憶部、
前記表示部が表示する画像を制御する制御部、
前記制御部に対する指示入力を入力する指示入力部、
を備え、
前記第1コンテンツは、前記指示入力にしたがって、前記表示部が表示する内容を更新することができるように構成されており、
前記制御部は、前記表示部が前記第1コンテンツを表示しているとき、前記第1コンテンツの内容を更新するように指示する前記指示入力を受け取ると、前記指示入力にしたがって、前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新し、
前記制御部はさらに、前記指示入力にしたがって更新した前記第1コンテンツの少なくとも一部を、前記表示部の最前面に表示し、
前記制御部は、前記第2表示デバイスが表示する画像を制御し、
前記制御部は、前記指示入力を受け取ると、前記第1コンテンツと前記第2コンテンツが少なくとも部分的に前記表示部において重なり合っている場合であっても、前記第1コンテンツの前記少なくとも一部を前記表示部の最前面に表示し、さらに前記指示入力を受け取ってから第1時間が経過した時点で、前記指示入力にしたがって前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新し、
前記制御部は、前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新した後、さらに第2時間が経過した時点で、前記第1コンテンツの前記少なくとも一部を、前記表示部の最前面に表示する前の表示形式に戻す
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項11】
前記第1コンテンツは、前記透過型表示装置を装着するユーザが実施すべき1以上の作業項目を文字列によって記述するとともに、前記ユーザが現在実施中である前記作業項目を前記表示部において他の前記作業項目とは異なる表示形式で表示することができるように構成された、手順書であり、
前記第2コンテンツは、前記作業項目に関連する図面であり、
前記指示入力部は、前記ユーザが現在実施中である前記作業項目を前記表示部上において切り替えるように指示する前記指示入力を受け取り、
前記制御部は、前記指示入力にしたがって前記表示部上において前記作業項目を切り替えるとともに、前記第1コンテンツのうち少なくとも前記切り替えた前記作業項目を前記表示部の最前面に表示する
ことを特徴とする請求項1記載の作業支援システム。
【請求項12】
対象物の像を透過する透過型表示装置に画像を表示する処理を実行させる表示プログラムであって、
前記透過型表示装置は、
前記対象物の像が透過するとともに前記対象物に重畳して重畳画像を表示する表示部、
前記表示部が表示する第1コンテンツと前記表示部が表示する第2コンテンツを格納する記憶部、
前記表示部が表示する画像を制御する制御部、
前記制御部に対する指示入力を入力する指示入力部、
を備え、
前記第1コンテンツは、前記指示入力にしたがって、前記表示部が表示する内容を更新することができるように構成されており、
前記表示プログラムは、前記表示部が前記第1コンテンツを表示しているとき、前記第1コンテンツの内容を更新するように指示する前記指示入力を受け取ると、前記指示入力にしたがって、前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新するステップを、前記制御部に実行させ、
前記表示プログラムは、前記指示入力にしたがって更新した前記第1コンテンツの少なくとも一部を、前記表示部の最前面に表示するステップを、前記制御部にさらに実行させ
前記表示プログラムは、前記指示入力を受け取ると、前記第1コンテンツと前記第2コンテンツが少なくとも部分的に前記表示部において重なり合っている場合であっても、前記第1コンテンツの前記少なくとも一部を前記表示部の最前面に表示し、さらに前記指示入力を受け取ってから第1時間が経過した時点で、前記指示入力にしたがって前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新するステップを、前記制御部にさらに実行させ、
前記表示プログラムは、前記表示部が表示する前記第1コンテンツの内容を更新した後、さらに第2時間が経過した時点で、前記第1コンテンツの前記少なくとも一部を、前記表示部の最前面に表示する前の表示形式に戻すステップを、前記制御部にさらに実行させる
ことを特徴とする表示プログラム。
【請求項13】
前記第1コンテンツは、前記透過型表示装置を装着するユーザが実施すべき1以上の作業項目を文字列によって記述するとともに、前記ユーザが現在実施中である前記作業項目を前記表示部において他の前記作業項目とは異なる表示形式で表示することができるように構成された、手順書であり、
前記第2コンテンツは、前記作業項目に関連する図面であり、
前記指示入力部は、前記ユーザが現在実施中である前記作業項目を前記表示部上において切り替えるように指示する前記指示入力を受け取り、
前記表示プログラムは、前記指示入力にしたがって前記表示部上において前記作業項目を切り替えるとともに、前記第1コンテンツのうち少なくとも前記切り替えた前記作業項目を前記表示部の最前面に表示するステップを、前記制御部に実行させる
ことを特徴とする請求項1記載の表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の像を透過する透過型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、透過型ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以下HMD)が製品化され、工場等現場での作業支援において利用されている。一般的に、透過型HMDを装着したユーザは、作業対象を見ながら透過型HMDの表示部に表示された作業支援に関する情報を視認することにより、作業手順を確認する。ユーザは、作業が完了するごとに、表示部に投影する情報を切り替える。作業支援に関する情報は、例えば作業項目を作業工程にしたがって記載した手順書や画像情報を含む図面である。作業者は作業項目を完了するごとに、画面内の作業手順書上において現在の作業項目として表示しているものを、次の作業項目へ進める。
【0003】
表示の切替手段に関する従来技術としては、音声コマンドを用いて手順書や画像を切り替えるものがある(特許文献1)。表示方法に関する従来技術としては、複数のコンテンツが表示される場面において、コンテンツの重なり状態を検出し、優先度の低いコンテンツを調整することにより重なり状態を回避するものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-221597
【文献】WO2017/104198
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業者は通常の作業において、以下のような手順で作業を実施する:作業手順の確認;機器または該当箇所の呼称を含めた作業対象の確認;操作の実施;操作完了後に音声コマンドによって手順書に作業完了を記録;HMD上の手順書で該当の工程が記録されたことを確認;以上が完了すると次の工程に進む。
【0006】
上記作業工程において、手順書と図面がHMD上に併せて表示されている場合、特許文献2のような従来技術はあらかじめコンテンツの優先度が決まっているので、図面の優先度が高い場合は手順書が下のレイヤもしくはずれたところに配置されることになる。そのような状況下で該当箇所の呼称等により意図せず手順書上の作業項目が次の作業項目(または前の作業項目)へ遷移した場合、作業者は手順書上で作業項目が不意に遷移したことに気付かず、1つの工程を飛ばした状態で作業を継続する可能性がある。工程を飛ばすことは重大な事故につながる可能性があるので、防止する表示方法や仕組みが必要となる。またHMD画面の大きさは有限であるので、2つのコンテンツを重ならないようにHMD表示上に収めることは、画面内で手順書と図面を小さくすることにつながり、作業者の視認性を低下させることにつながる。
【0007】
以上に鑑みると、手順書と図面の視認性を維持向上し、コンテンツ優先度を設けるだけでなく、手順書上の作業項目が遷移した際には手順書の優先度を高くし、作業者が手順書の遷移を視認できるようにすることが望ましい。
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、HMD上に作業支援情報を表示する作業支援環境において、作業者の視認性を向上し、作業ミスを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る透過型表示装置は、第1コンテンツと第2コンテンツを格納しており、表示部が前記第1コンテンツを表示しているとき、前記第1コンテンツの内容を更新するように指示する指示入力を受け取ると、前記指示入力にしたがって更新した前記第1コンテンツの少なくとも一部を、前記表示部の最前面に表示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る透過型表示装置によれば、HMD上に作業支援情報を表示する作業支援環境において、作業者の表示視認性を向上し、作業ミスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る透過型表示装置の外観図である。
図2】透過型表示装置1の全体構成を示したブロック図である。
図3】音声入力時における手順書の表示を示した図である。
図4】記憶部304の内部ブロックを示した図である。
図5】表示部100が2つのコンテンツを表示した状態を示す図である。
図6】音声認識後において表示部100が2つのコンテンツを表示した状態を示す図である。
図7】音声認識後において表示部100が2つのコンテンツを表示する他の表示例を示した図である。
図8】音声認識後の遷移元の手順を明確にするコンテンツ表示方法を示した図である。
図9】制御部305が第1コンテンツ320を遷移させる手順を示すフローチャートである。
図10A】記憶部304に優先度格納部350を追加した図である。
図10B】優先度格納部350に格納されている優先度の例を示す。
図11】コンテンツの透過度を調整した例を示す図である。
図12】コンテンツ重なり部325の透過率を格納する透過率格納部351を記憶部304に追加した構成を示す図である。
図13】コンテンツ重なり部325の透過率を制御する制御部305の構成を示す図である。
図14】3つ以上のコンテンツを含む表示例である。
図15】3つ以上のコンテンツを含む記憶部304の構成を示す図である。
図16】実施形態2に係る透過型表示装置1の構成図である。
図17】仮想画面におけるコンテンツ配置を示す図である。
図18図17の状態における表示部100の映像を示す図である。
図19】第1コンテンツ320を表示している例である。
図20図19の状態における表示部100の映像を示す図である。
図21】仮想画面を用いた場合におけるコンテンツの重なり領域を検出する制御部305の構成を示す図である。
図22】実施形態3に係る作業支援システムの構成図である。
図23】表示部100と第2表示デバイス600がユーザの視野内で重なった状態を示す図である。
図24】実施形態3における制御部305の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る透過型表示装置の外観図である。HMDを用いた作業支援においては、作業者はヘルメットを被ることが多いので、ヘルメットにHMDを接続した例を用い説明する。透過型表示装置は、表示部100、コントローラ200、スマートフォン300、を備える。
【0013】
コントローラ200とスマートフォン300は有線接続されている。スマートフォン300から送られた映像信号と操作信号をコントローラ200が受信し、コントローラ200が処理した映像を表示部100上に表示する。図1は、コントローラ200とスマートフォン300の接続が有線接続されている例を示したが、映像信号と操作信号を無線通信してもよい。作業者500の目40の前には表示部100が配置されている。作業者500は、外界の作業対象41と外界に重畳された表示部100の作業内容を含む映像を確認し、作業対象41の該当箇所に対して作業を実施する。
【0014】
図2は、透過型表示装置1の全体構成を示したブロック図である。コントローラ200とスマートフォン300は、入力インターフェースを介して、マイク400、リモコン401、スピーカ402とそれぞれ接続されている。コントローラ200は、入力インターフェース201、音声認識部202、無線通信部203、記憶部204、制御部205を備える。スマートフォン300は、入力インターフェース301、音声認識部302、無線通信部303、記憶部304、制御部305、ジャイロスコープ306、タッチパネル307、表示部308、スピーカ309、マイク310を備える。
【0015】
マイク400もしくはマイク310に対して入力した音声データは音声認識部302に送られる。音声認識部302は、どういった音声が入力されたかを解析し、解析結果をテキストデータで制御部305に出力する。音声認識部302が認識することが想定されている語彙が記憶部304内のリストに登録されており、音声認識部302による音声解析結果とリスト内の語彙が一致した場合、対応する語彙をテキストデータとして出力する。以下記載する「音声認識がされた」とは、入力された音声がリストに登録された語彙に一致したことと定義する。例えば音声データが「作業完了」であった場合、「作業完了」という語彙がリストに登録されていれば「作業完了」というテキストデータを出力する。
【0016】
制御部305はテキストデータに応じた処理を実施し、表示部308へ表示映像を送信し、スピーカ309またはスピーカ402へ音声を送信し、記憶部304に記録データを送信する。記録データは手順書の工程毎の完了記録や音声データ等である。
【0017】
表示部100の表示映像の変更が発生する場合は、制御部305から入力インターフェース301と入力インターフェース201を介し、制御部205に映像信号を出力する。制御部205は入力された映像信号に応じ、表示の前処理を実施して表示部100へ表示する。表示の前処理は、輝度、色の調整などの処理である。この際、前述した記録データを記憶部204に送信してもよいし、輝度、色等の前処理情報を記録してもよい。
【0018】
制御部305はジャイロスコープ306から出力されるデータを処理し、表示部308の映像表示に反映する。例えばスマートフォンを縦向きから横向き(ランドスケープ表示)に変更した際に表示部308の表示を横向きに変更してもよい。表示部100の映像にも反映する場合は、制御部305から入力インターフェース301と入力インターフェース201を介し、制御部205に映像信号を出力し、適切な前処理をした上で表示部100へ表示する。
【0019】
タッチパネル307は表示部308を操作する入力デバイスであり、タッチパネル307から入力されたデータに応じ、制御部305から表示部308に映像信号を出力する。
【0020】
マイク400、リモコン401、スピーカ402は有線で接続してもよいし、Bluetooth(登録商標)などの無線で接続してもよい。またスマートフォン300、コントローラ200のどちらかだけにつないでもよいし、スマートフォン300内のスピーカ309とマイク310のみで十分機能を満たせる場合、接続しなくてもよい。
【0021】
図2は、入力インターフェース301と入力インターフェース201を介してスマートフォン300とコントローラ200を接続する例を示したが、無線で接続する場合は、無線通信部303と無線通信部203を接続することにより同様の機能を実現可能である。無線通信部303と無線通信部203はクラウド等のサーバと接続し、データのアップロード/ダウンロードを実施してもよい。
【0022】
図2はスマートフォン300が音声データを処理することを前提にしているが、音声データの処理をコントローラ200側で実施してもよい。マイク400とマイク310として指向性の高いマイクを用いてもよい。指向性の高いマイクを用いることにより、周囲の他の作業者の話し声などによる誤認識を防止でき、作業者500の声のみを取得することが可能となる。音声認識部302と音声認識部202が作業者500の声を個人識別する機能を設けることも、誤認識抑制には有効である。作業者500の声を個人識別できることにより、周囲の話し声による誤認識を防ぐだけでなく、他の作業者による改ざんを防ぎ、然るべき作業者のみが作業可能な仕組みを作ることができる。
【0023】
図3は、音声入力時における手順書の表示を示した図である。表示部100にはコンテンツ220が表示されており、コンテンツ220は手順書である。コンテンツ220のタイトル部にはNo、項目、処置の内容が記載されており、作業者500は各作業内容を確認し、順々に処置欄が記載している作業を実施する。例として現在実施している作業には下線を付した。現在の作業を明確に示すために、下線以外にも枠で囲む、文字色を変更する、背景色を変更するなどの手法を用いてもよい。文字色が白色、背景色が黒色の場合、文字色を緑色、黄色等に変更することも効果的である。また反対に背景色に色をつけても効果的である。
【0024】
作業手順は必要最小限の行数にしており、タイトル、前の作業、現在の作業、次の作業の4行表示としている。このような表示により情報量を絞り、現在の作業を明確にして、作業の抜け漏れによるヒューマンエラーを抑止する。さらにこのような表示とすることにより、作業者は実施すべき作業を即時確認できるので、作業内容を探す時間を短縮でき効率向上につながる。
【0025】
図3において、作業者500は現在実施すべき作業であるNo.2を実施している。作業者は作業項目と処置内容を確認し、対象41に対して作業を実施する。作業が完了したら音声コマンドにより作業を完了する。作業者は、No.2の確認欄にチェックマークが入ったことを確認する。手順書は、図3下図のように次の項目であるNo.3の作業に進む。このときコンテンツ220は、No.3の作業を中心としてその前後の作業を表示するように更新される。
【0026】
図4は、記憶部304の内部ブロックを示した図である。ここではスマートフォン300が音声認識する場合の例を記載する。記憶部304は、第1コンテンツ320、第2コンテンツ330、語彙リスト340を格納している。制御部305は記憶部304にアクセスし、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330を取得する。制御部305は、表示部100に表示する前処理を実施した上で、表示部100に各コンテンツを表示する。音声認識部302は音声データが入力されると、記憶部304の語彙リスト340を取得し、語彙リスト340に格納された語彙と音声データを比較する。第1コンテンツ320と第2コンテンツ330は、表示部100に表示するための座標情報を含む。以下では第1コンテンツ320を手順書、第2コンテンツ330を図面とする。
【0027】
図5は、表示部100が2つのコンテンツを表示した状態を示す図である。表示部100上に第1コンテンツ320と第2コンテンツ330が表示されており、第1コンテンツが背面に配置され、第2コンテンツ330が前面に配置されている。第1コンテンツ320はNo.2の作業が現在実施中の作業として表示しており、作業者500は第2コンテンツ330の詳細を確認し、作業対象41の処置を開始しようとしている。図5の状態において、第1コンテンツは内容が隠れているので、作業者はその内容を確認できない。
【0028】
図6は、音声認識後において表示部100が2つのコンテンツを表示した状態を示す図である。音声認識が入ると、制御部305は第1コンテンツを前面に表示し、第2コンテンツを背面に表示する。第1コンテンツの手順はNo.3に進む。このような表示とすることにより、積極的に作業記録した場合と誤認識により意図せず作業記録された場合いずれにおいても、作業者500は第1コンテンツ320の内容が変わった(現在の作業項目が1つ進んだ)ことを確認できる。もし意図せず作業記録がされた場合には、元の正しい作業に戻り、正しい手順で作業を実行することができる。
【0029】
図7は、音声認識後において表示部100が2つのコンテンツを表示する他の表示例を示した図である。第1コンテンツ320において重要な手順は、現在実施している作業(No.2)とその前後の作業(No.1、No.3)である。したがってタイトル部分は第1コンテンツ320の遷移を把握する目的においては不要である。そこで表示部100は音声認識後に第1コンテンツ320の一部分のみ最前面に表示してもよい。具体的には、現在実施している作業(No.2)とその前後の作業(No.1、No.3)のみを最前面に表示してもよい。図7においては遷移後の状態を示した。
【0030】
図6図7の例では音声認識時に第2コンテンツ330を背面に表示したが、前面に表示されている第1コンテンツ320に注目させるために、第2コンテンツ330を非表示にしてもよい。このような表示により、作業者500は第1コンテンツ320の遷移をより視認しやすくなる。また元の作業がどの作業であったか明確にするために、第1コンテンツ320の遷移元を表示することも、作業ミス低減のためには有効である。
【0031】
図8は、音声認識後の遷移元の手順を明確にするコンテンツ表示方法を示した図である。音声認識によりNo.2からNo.3に現在の作業が進む際、No.2から遷移したことを明確にするための表示形式を用いてもよい。例えばNo.2を点線で囲む、文字の色を変える、点線で示した領域を塗りつぶす、などが考えられる。例えば第1コンテンツ320の文字色が白、背景色が黒の場合、例えば点線の領域に色をつけることも有効であり、特に緑色や黄色等明るい色が好ましい。このように音声誤認識により次の作業に進んだのかそれとも前の作業に戻ったのか不明確だった場合でも、図8のような表示により作業者500は元のやるべき作業を確実に把握でき、正しい手順で作業することができる。
【0032】
第1コンテンツ320が遷移する際に、視角だけでなく聴覚、触覚の五感を併用することにより、さらに作業者500に遷移を気づかせることが可能となる。例えば視覚に加え、第1コンテンツ320が遷移する際にスピーカ309またはスピーカ402からビープ音を出力してもよい。出力する音声により第1コンテンツ320の遷移方向、遷移元を伝えてもよい。具体的には「前の作業に遷移しました」「次の作業に遷移しました」「No.2からNo.3に遷移しました」「No.3からNo.2に遷移しました」、という音声をスピーカ309またはスピーカ402から出力する。またスピーカ309またはスピーカ402に骨伝導スピーカを使用し、音だけでなく触覚を利用することも有効である。骨伝導スピーカは騒音レベルが高い作業現場においても骨を介し作業者500に振動を把握させられる。言うまでもなく前述した表示方法と組み合わせることも可能である。
【0033】
図9は、制御部305が第1コンテンツ320を遷移させる手順を示すフローチャートである。ここでは音声認識前の状態を通常状態、音声認識後に第1コンテンツ320の遷移後の状態を手順書遷移状態とし、第1コンテンツ320の表示の通常状態から手順書遷移状態への遷移手順と手順書遷移状態から通常状態への遷移手順を説明する。
【0034】
図9:ステップS901)
音声認識部202または音声認識部302は、手順書が表示している現在の作業項目を1つ進めるための音声コマンドが認識されたか否かを判断する。音声コマンドが認識されるとS902へ進む。音声コマンドが認識されなければ本ステップを継続する。
【0035】
図9:ステップS902~S904)
制御部305は、第1コンテンツ320を最前面に表示する(S902)。制御部305は、第1コンテンツ320を最前面に表示してから所定時間t1が経過したか否かを判断する(S903)。経過していなければ経過するまで待機し、経過後にS904へ進む。t1経過後、制御部305は第1コンテンツが表示している現在の作業項目を1つ進める(S904)。
【0036】
図9:ステップS903:補足)
第1コンテンツ320の最前面への表示と手順の遷移を同時に実施すると、作業者500は手順の遷移を見逃す可能性がある。そこで本ステップにおいて、第1コンテンツ320を最前面に表示し、作業者500にその表示を認識させた上で、第1コンテンツ320の手順を遷移させる時間間隔としてt1を設ける。t1は具体的には0.3~3秒の範囲で調整可能とする。これにより、時間が短すぎて作業者500が気づかないことや、時間が長すぎて遷移を確認するまで待つことによる作業時間の増加を避けることができる。
【0037】
図9:ステップS905~S906)
制御部305は、S904の後に所定時間t2が経過したか否かを判断する(S905)。経過していなければ経過するまで待機し、経過後にS906へ進む。t2経過後、制御部305は第1コンテンツ320を、最前面に表示する前の状態(S902よりも前の状態)に戻す。
【0038】
図9:ステップS905:補足)
例えば通常状態で第1コンテンツ320が背面に配置され、第2コンテンツ330が前面に配置されていると仮定する。この場合、手順書が遷移するとき第1コンテンツ320が前面に配置され、第2コンテンツ330が背面に配置された状態になる。作業者が第2コンテンツ330を確認するためには通常状態に戻す必要がある。そこで第1コンテンツ320の手順遷移を前面で表示した後、t2が経過した後に、S906において第1コンテンツ320を通常状態に戻す。t2は具体的には1~5秒の範囲で調整可能とし、作業者500が手順の遷移を確実に確認した後に通常状態に戻す。
【0039】
図9:ステップS903とS905:補足)
t1とt2の時間設定は、リモコン401で調整できるようにしてもよいし、スマートフォン300の表示部308の画面上でタッチパネル307により調整できるようにしてもよい。作業者500によっては設定値より早く遷移させたい場合がある。その場合、音声によってt1とt2の値によらず第1コンテンツ320を遷移させてもよいし、リモコン401もしくはタッチパネル307上で入力する指示によって遷移させてもよい。
【0040】
図9:ステップS902、S904、S906:補足)
これらステップにおける第1コンテンツ320の遷移は、コンテンツを瞬間的に切り替えてもよいし、徐々に変化するように切り替えてもよい。例えばS902において第1コンテンツ320を背面から前面に遷移させる場合、第1コンテンツ320の透過度を100%(背面にある状態)=>50%(半分見える状態)=>0%(前面にある状態)のように自然な形で遷移させてもよい。
【0041】
図10Aは、記憶部304に優先度格納部350を追加した図である。優先度格納部350は、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330それぞれの作業工程ごとの優先度を格納している。制御部305は、第1コンテンツ320、第2コンテンツ330、優先度格納部350が格納している優先度を読み込み、優先度にしたがって、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330のどちらを前面もしくは背面に表示するか決定する。
【0042】
図10Bは、優先度格納部350に格納されている優先度の例を示す。手順書工程ごとに、その内容、図面名、優先度が対応づけられている。優先度は100%が最も高く、0%が最も低い。
【0043】
優先度欄が100/0である工程(#1と#2)においては、手順書を前面に表示するとともに図面を背面に表示し、手順書と図面が重なりあっている部分は手順書のみが見える表示となる。手順書が100%の優先度であれば、通常状態と手順書遷移状態は同じ表示となるので、作業者500は第1コンテンツ320の遷移を確実に見ることができ、手順を漏らすことなく作業することができる。
【0044】
工程#Nは、図面上の配線へ赤線を引く作業であり、作業者は図面を見て作業をするので、図面を最前面に表示する必要がある。そこで#Nにおける通常状態では最前面に図面を表示する。したがって優先度は0/100となっている。ただし手順書遷移状態に遷移するときは、手順を最前面に配置するとともに図面を最背面に配置する点は変わらない。
【0045】
工程#3は、手順書も図面も使用する作業である。そこで、手順書と図面ともに作業者500に見える状態とするために、優先度は20/80とした。この場合、手順書と図面が重なり合っている部分は、手順書よりも図面のほうが明確に視認できるように、手順書と図面それぞれの透過度を調整する。具体的には、重なり合っている部分は手順書のほうが透過度を高くする。手順書の透過度と図面の透過度との間の比率は、例えば優先度比率の反対にすればよい。この例においては、手順書透過度:図面透過度=4:1となる。
【0046】
図11は、コンテンツの透過度を調整した例を示す図である。第1コンテンツ320と第2コンテンツ330の一部が重なり、コンテンツ重なり部325が作られる。図11においては第1コンテンツ320を背面に配置するとともに第2コンテンツ330を前面に配置し、コンテンツ重なり部325の透過率を変更している。
【0047】
図12は、コンテンツ重なり部325の透過率を格納する透過率格納部351を記憶部304に追加した構成を示す図である。コンテンツ重なり部325における各コンテンツの透過度の比率は、必ずしも優先度の比率にしたがってセットしなくともよい。例えば作業工程ごとに透過度をカスタマイズしたい場合がこれに該当する。このような場合は、作業工程ごとに各コンテンツの透過度を指定するデータを透過率格納部351に格納する。この場合の優先度は、いずれのコンテンツを前面に配置するのかを指定するために用いることになる。
【0048】
図13は、コンテンツ重なり部325の透過率を制御する制御部305の構成を示す図である。制御部305は、重なり領域検出部305-1、視野イメージ作成部305-2を備える。重なり領域検出部305-1は、記憶部304の第1コンテンツ320と第2コンテンツ330それぞれの座標情報からコンテンツ重なり部325の座標を計算し、その座標を視野イメージ作成部305-2に出力する。視野イメージ作成部305-2は、コンテンツ重なり部325の座標、第1コンテンツ320、第2コンテンツ330、優先度、透過率を用いて、表示部100の映像を生成する。透過率の制御はコンテンツ重なり部325に対してのみ適用し、それ以外の領域は各コンテンツを見ることができる状態とする。これにより、多くの情報を作業者500に提供することができる。
【0049】
優先度と透過率は、作業者500が調整可能なものとしてもよい。現場の知見として、初心者は図面の詳細部分を慎重に確認し作業することが多く、その場合は図面の優先度を高くしてもよい。優先度の切替は、例えば作業熟練度によりモードを設け、初心者モード、熟練者モードなどのように段階を設けてもよい。作業者500が優先度を変更できてもよく、優先度の変更は音声、スマートフォンの画面操作などによって変更できるようにしてもよい。
【0050】
図14は、3つ以上のコンテンツを含む表示例である。表示部100は第1コンテンツ320と第2コンテンツ330以外に、第3コンテンツ360、第4コンテンツ370、第5コンテンツ380を表示する。第3コンテンツ360は作業進捗を示しており、例では60項目のうち25項目が終わったことを示している。第3コンテンツ360はパーセント表示など様々な表示方法が可能である。第4コンテンツ370は時刻、第5コンテンツ380はバッテリ容量を示している。各コンテンツの表示領域を分けて互いに干渉せずに済むようにしてもよい。あるいは、必要なコンテンツを必要なタイミングで表示し、画面サイズを最大限に使用することによって視認性を向上させてもよい。作業中は第1コンテンツ320と第2コンテンツ330の優先度を高くし、その他のコンテンツは背面に表示する。作業には時間制約があるので、作業終了時刻をあらかじめ記憶部304に格納しておき、作業終了時刻が近づくと、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330よりも作業終了時刻を例えば数秒間だけ優先度を高くし、また文字色を変更し時刻が近づいていることを知らせてもよい。第5コンテンツ380のバッテリ容量が少なくなった際も同様に表示してもよい。
【0051】
図15は、3つ以上のコンテンツを含む記憶部304の構成を示す図である。図10と比較し、第3コンテンツ360、第4コンテンツ370、第5コンテンツ380、作業終了時刻格納部390を追加している。制御部305は、第1コンテンツ320、第2コンテンツ330、第3コンテンツ360、第4コンテンツ370、第5コンテンツ380、作業終了時刻格納部390、優先度格納部350の情報を読込み、どのコンテンツを前面または背面に配置するかを決定する。
【0052】
<実施の形態2>
図16は、本発明の実施形態2に係る透過型表示装置1の構成図である。実施形態2は実施形態1に加え、頭部動作センサ101が追加されている。頭部動作センサ101は、加速度センサなどのようにユーザの頭の動きが取得できるものであればよく、表示部100とともにユーザの頭部に装着する。頭部動作センサ101は、頭部の動きを表す検出信号を、制御部205と制御部305へ出力する。以下では頭部動作センサ101を用いることにより、作業者の視認性をさらに向上する表示方法を説明する。
【0053】
図17は、仮想画面におけるコンテンツ配置を示す図である。制御部305は、表示部100が表示することができる画面サイズよりも大きい仮想画面10を生成する。表示部100は仮想画面10のうち一部のみを表示することができる。仮想画面10は、表示部100、第1コンテンツ320、第2コンテンツ330を含む。作業者500が頭を振ると、頭部動作センサ101がその動きを検出して制御部305へ通知する。制御部305は、その動きの方向へ表示部100を移動させる。これにより作業者500は、所望のコンテンツを表示部100内に表示することができる。仮想画面10を用いることにより、表示部100の大きさに捉われずコンテンツを大きく表示することができるので、高い視認性を提示するとともに、作業者500が必要なとき必要なコンテンツを取得できる。
【0054】
図18は、図17の状態における表示部100の映像を示す図である。図17においては表示部100内にコンテンツが表示されていなので、表示部100には何も表示されておらず、作業対象41に対して何も重畳されていない。
【0055】
図19は、第1コンテンツ320を表示している例である。作業者500は、頭部を動かすことによって第1コンテンツ320側に表示部100を動かし、第1コンテンツ320を表示部100に表示させることができる。
【0056】
図20は、図19の状態における表示部100の映像を示す図である。図19の状態においては表示部100内に第1コンテンツ320が表示されており、作業者500は第1コンテンツ320が作業対象41に重畳された映像を見ている。
【0057】
仮想画面の適用により視認性向上を図れるが、他方で表示部100内に第1コンテンツ320が見えなくなる場合がある。その状態で第1コンテンツ320内の作業項目が遷移すると、作業者500はその遷移に気づかない場合がある。そこで実施形態1と同様に、仮想画面を用いた場合であっても、第1コンテンツ320が遷移する際には、表示部100の前面に第1コンテンツ320を表示する。これにより、第1コンテンツ320の遷移を作業者500に認識させることができる。遷移の手順については実施形態1と同様のものが適用可能である。
【0058】
第1コンテンツ320を表示部100内に固定することも、作業者500に認識させる上で有効である。例えば作業者500が頭部を動かした際に必ず表示部100に第1コンテンツ320を表示し、手順書の遷移を認識させる。
【0059】
図21は、仮想画面を用いた場合におけるコンテンツの重なり領域を検出する制御部305の構成を示す図である。図21の構成は、図13と比較して、頭部回転角検出部305-3が追加されている。重なり領域検出部305-1は、頭部回転角検出部305-3から得られた仮想画面上の座標の移動量を取得し、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330それぞれの座標情報から重なり領域を検出し、検出領域を視野イメージ作成部305-2に出力する。
【0060】
表示制御は、スマートフォン300とコントローラ200いずれが実施してもよい。第1コンテンツ320が手順書遷移状態に遷移した場合は、第1コンテンツ320を表示部100の最前面に表示することは、実施形態1~2ともに共通である。
【0061】
<実施の形態3>
図22は、本発明の実施形態3に係る作業支援システムの構成図である。図22の作業支援システムは、透過型表示装置1と第2表示デバイス600を用いた併用作業により、視認性だけでなく操作性も向上させることを図る。
【0062】
本実施形態3において、実施形態2で説明した構成に加えて、透過型表示装置1内にカメラ102を配置するとともに、第2表示デバイス600を追加した。第2表示デバイス600は、タブレット、電子ペーパなどのように携帯可能でかつスマートフォン300と比較し表示領域のサイズが大きいデバイスである。例えば図面の拡大表示を行う場合、透過型表示装置のみでは、音声によって拡大をしようとすると細かい調整が難しい。また図面内の線をなぞり記録するような作業もあり、そういった作業では透過型表示装置単体での音声操作による記録は困難である。そこで第2表示デバイスを使用することにより、細かな文字や図面を表示する際、ストレスなくレスポンスよく拡大縮小操作、手書きによる記録などを実施できる。第2表示デバイス600として電子ペーパを用いることにより、屋外での視認性が向上し、発光を伴う透過型表示装置では視認性が低下する屋外での明るい環境でも作業できる。このように第2表示デバイス600を用いることにより、操作性を向上し、作業適用範囲を拡大することが可能となる。特に第2表示デバイス600には図面を表示することが好ましく、手順書を透過型表示装置に表示し音声操作することにより、それぞれのデバイスの特徴を活かした作業が可能となる。
【0063】
本実施形態3の作業支援システムにおいては、透過型表示装置1と第2表示デバイス600が連携するので、最適なコンテンツを最適なデバイスに表示するシステムが必要となる。以下、透過型表示装置と第2表示デバイス600を用いた併用作業における表示方法を説明する。以下ではスマートフォン300が透過型表示装置1と第2表示デバイス600を制御する例を説明する。
【0064】
制御部305は、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330を読み出し、透過型表示装置1に対しては入力インターフェース301および入力インターフェース201を介し映像信号を送信する。制御部205は表示前の処理を実施した上で、表示部100に表示させる。第2表示デバイス600に対しては、制御部305から無線通信部303を介し第2表示デバイス600に映像信号もしくはデータファイルを送信する。透過型表示装置1と第2表示デバイス600は離して使用するので、無線での接続が多いと考えるが、有線接続でもよい。その場合、入力インターフェース301を介し接続し、同様の制御を実施する。
【0065】
上記ではスマートフォン300が透過型表示装置1と第2表示デバイス600を制御する例を記載したが、第2表示デバイス600がマスタのデバイスとして、スマートフォン300やコントローラ200を制御し、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330を送信してもよい。この場合、第2表示デバイス600上での操作結果を表示部100に反映してもよい。例えば第2表示デバイス600上の図面で拡大操作を行った場合、表示部100に表示している図面も拡大して表示する。このように第2表示デバイスと連携することにより、表示部100の操作性を向上でき、表示部100上でも図面内の詳細を確認することが可能となる。
【0066】
図23は、表示部100と第2表示デバイス600がユーザの視野内で重なった状態を示す図である。このような状態では、第2表示デバイス600の視認性が損なわれ、作業者500の作業を妨げる状況となる。そこで、第2表示デバイスの稼働状況、もしくは表示部100と第2表示デバイス600の重なり状態を検出し、表示部100の透過度を調整してもよい。
【0067】
図24は、実施形態3における制御部305の構成図である。以下では、第2表示デバイスの稼働状況の検出、表示部100と第2表示デバイス600の重なり状態検出、表示部100の透過度調整について説明する。
【0068】
制御部305は、実施形態2で説明した構成に加えて、カメラ画像認識部305-4、第2表示デバイス動作検出部305-5、コンテンツ制御部305-6を備える。記憶部304の構成は図12と同様である。
【0069】
第2表示デバイス動作検出部305-5は無線通信部303を介し、第2表示デバイス600が動作しているか否かを検出する。例えば第2表示デバイス600の電源が入っているか、Sleep状態でないか、ページ操作や手書き操作をしているか、に基づき動作しているか否かを判定できる。第2表示デバイス600から定期的に状態を送信してもよいし、第2表示デバイス動作検出部305-5から通信可能か問いかけてもよい。第2表示デバイス600が動作しているか否かは、ファイル情報を取得することによって判定してもよい。例えば第2表示デバイス動作検出部305-5は、定期的に第2表示デバイス600のファイル情報を取得し、ファイル内に変更(例えば手書きのメモが追加されている)があれば動作中と判定する。ファイル情報は現在閲覧中のページ情報を含むようにし、現在閲覧中のページが取得前の状態と変化していたら動作中と判定する。情報を取得する周期は例えば2~3秒間隔とし、30秒間何も変更がなかったら第2表示デバイス600は動作していないとして判断してもよい。第2表示デバイス動作検出部305-5は以上のような判定を実施し、コンテンツ制御部305-6に第2表示デバイス600の動作状態を出力する。
【0070】
コンテンツ制御部305-6は、第1コンテンツ320、第2コンテンツ330、優先度から、透過型表示装置1に表示するコンテンツと第2表示デバイス600に表示するコンテンツを決定する。例えば図10Bの#3、#Nのように図面を使用する作業であれば、必ず第2表示デバイス600に図面を送信する。図面を使用しない図10Bの#1、#2のような工程であれば送信しなくてもよい。少なくとも図面を使用する作業に関しては、第2表示デバイス600に図面を表示する。コンテンツ制御部305-6は、表示するコンテンツを視野イメージ作成部305-2に送信するとともに、表示部100に表示するコンテンツ情報を重なり領域検出部305-1に送信する。
【0071】
第2表示デバイス600が故障した際には第2表示デバイス動作検出部305-5が状態を検出し、コンテンツ制御部305-6は作業に必要なコンテンツを視野イメージ作成部305-2に送信する。第2表示デバイス600の電源が立ち上がった際の自動接続も実施してもよい。第2表示デバイス動作検出部305-5は常時第2表示デバイス600を監視しているので、第2表示デバイス600の電源が立ち上がった場合、第2表示デバイス動作検出部305-5から第2表示デバイス600が動作中である信号をコンテンツ制御部305-6に送信することにより、自動接続が可能となる。
【0072】
デバイスの重なりをカメラによって検出してもよい。カメラ画像認識部305-4はカメラ102が取得した映像を取り込み、画像情報を重なり領域検出部305-1に出力する。カメラ102の取得映像は作業者500の視線と同等のものであり、カメラ102の映像に第2表示デバイス600が含まれていて、かつ表示部100にコンテンツが表示されていれば重なっている可能性がある。重なり領域検出部305-1は、第1コンテンツ320と第2コンテンツ330それぞれの座標・サイズ情報、頭部回転角検出部305-3から得られる表示部100のコンテンツ位置情報、カメラ画像認識部305-4が取得した第2表示デバイス600の映像から、表示部100のコンテンツと第2表示デバイスの重なりの有無と重なり領域を算出する。重なりが生じている場合、表示部100のコンテンツ全体もしくは重なり部のみ透過率を調整する。透過率Tの範囲は、0<T≦100%としており、100%とすれば完全にコンテンツをOFFする。
【0073】
遠隔のサーバ等から無線通信部を介し指示を受けた場合、最適なデバイスにコンテンツを表示してもよい。例えば遠隔の管理者から現場の作業者500に複数の形態、テキストデータ、図面によって指示が来た場合、テキストデータは透過型表示装置1、図面は第2表示デバイス600に表示する。このようにすることにより、テキストはすぐに作業者500がハンズフリーで確認でき、図面は操作性よく細かい部分を確認できる。
【0074】
実施形態3においても実施形態1~2と同様に、第1コンテンツ320内の作業項目が遷移する際は、表示部100の最前面に第1コンテンツ320を表示する。
【0075】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0076】
以上の実施形態において、作業者が透過型表示装置に対してコマンドを送信する手段として音声コマンドを例示したが、透過型表示装置に対する指示入力を与える手段はこれに限るものではなく、任意の手段を用いることができる。例えば操作ボタンなどの指示入力手段が考えられる。
【0077】
以上の実施形態において、透過型表示装置1としてHMDを例示したが、虚像を用いる透過型表示装置全般(例えばヘッドアップディスプレイ)に対して本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 透過型表示装置
10 仮想画面
100 表示部
101 頭部動作センサ
102 カメラ
200 コントローラ
300 スマートフォン
41 作業対象
40 目
500 作業者
201 400 マイク
401 リモコン
402 スピーカ
201 入力インターフェース
202 音声認識部
203 無線通信部
204 記憶部
205 制御部
301 入力インターフェース
302 音声認識部
303 無線通信部
304 記憶部
305 制御部
305-1 重なり領域検出部
305-2 視野イメージ作成部
305-3 頭部回転角検出部
305-4 カメラ画像認識部
305-5 第2表示デバイス動作検出部
305-6 コンテンツ制御部
306 ジャイロスコープ
307 タッチパネル
308 表示部
309 スピーカ
310 マイク
220 コンテンツ
320 第1コンテンツ
325 コンテンツ重なり部
330 第2コンテンツ
340 語彙リスト
350 優先度格納部
351 透過率格納部
360 第3コンテンツ
370 第4コンテンツ
380 第5コンテンツ
390 作業終了時刻格納部
600 第2表示デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24