(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】作業機および車速制御システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20231215BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A01B69/00 303T
A01C11/02 322B
A01C11/02 331D
(21)【出願番号】P 2020197482
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大久保 樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 祐樹
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058120(JP,A)
【文献】特開2018-180922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0373257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/02
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置と、
前記走行装置を制御する走行制御部とを備え、
前記走行制御部は、自動走行における作業走行につながる非作業走行において、直進走行が連続して所定の第1距離以上行われると、車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速
し、
前記非作業走行は旋回走行と前記直進走行とを含む作業機。
【請求項2】
衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、
前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、
車体の方位を計測する車体方位計測部と、
前記自車位置に基づいて所定の走行経路を自動走行するように前記走行制御部を制御する自動走行制御部とを備え、
前記走行制御部は、前記車体方位計測部が計測した前記車体の方位に基づいて、所定の時間内の前記方位の変化量が所定の範囲以内の場合に前記直進走行であると判定する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
走行装置と、
前記走行装置を制御する走行制御部と、
衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、
前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、
前記自車位置に基づいて所定の走行経路を自動走行するように前記走行制御部を制御する自動走行制御部とを備え、
前記走行制御部は、自動走行における作業走行につながる非作業走行の直進走行領域において、前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速
し、
前記非作業走行は、旋回走行領域と、前記旋回走行領域に続いて走行される前記直進走行領域とを含む作業機。
【請求項4】
前記走行制御部は、前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記車速を前記第1車速まで減速する請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記作業走行は往復作業走行であり、前記非作業走行は2つの前記往復作業走行をつなぐように行われる旋回走行を含む請求項3または4に記載の作業機。
【請求項6】
走行装置と、
資材を用いた作業を行う作業装置と、
前記走行装置を制御する走行制御部と、
衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、
前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、
前記自車位置に基づいて、作業走行および非作業走行を行う所定の走行経路を自動走行するように前記走行制御部を制御する自動走行制御部とを備え、
前記作業走行は複数の往復作業走行を含み、前記非作業走行は2つの前記往復作業走行をつなぐように行われる旋回走行を含み、
前記自動走行制御部は、前記往復作業走行の終端領域から前記資材の補給位置に向かって機体を手動操作により直進走行させることができ、
前記走行制御部は、前記直進走行において、前記補給位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速する作業機。
【請求項7】
前記走行制御部は、前記補給位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記車速を前記第1車速まで減速する請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記増速および前記減速の少なくとも一方は徐々に行われる請求項1から7のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項9】
前記第1距離、前記第2距離、および前記第3距離のうちの少なくとも1つは可変である請求項1から8のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項10】
自動走行により作業走行と非作業走行とを行う作業機の車速制御システムであって、
前記自動走行における前記作業走行につながる前記非作業走行において、直進走行が連続して所定の第1距離以上行われると、前記作業機の車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速させ
、
前記非作業走行は旋回走行と前記直進走行とを含む車速制御システム。
【請求項11】
前記作業機は、衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、車体の方位を計測する車体方位計測部とを備え、
前記車体方位計測部が計測した前記車体の方位に基づいて、所定の時間内の前記方位の変化量が所定の範囲以内の場合に前記直進走行であると判定する請求項10に記載の車速制御システム。
【請求項12】
自車位置に基づいて所定の走行経路を自動走行する作業機の車速制御システムであって、
前記自動走行における作業走行につながる非作業走行の直進走行領域において、前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に、前記作業機の車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速させ
、
前記非作業走行は旋回走行領域と、前記旋回走行領域に続いて走行される前記直進走行領域とを含む車速制御システム。
【請求項13】
前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記作業機の車速を前記第1車速まで減速させる請求項12に記載の車速制御システム。
【請求項14】
前記作業走行は往復作業走行であり、前記非作業走行は2つの前記往復作業走行をつなぐように行われる旋回走行を含む請求項12または13に記載の車速制御システム。
【請求項15】
自車位置に基づいて、作業走行および非作業走行を行う所定の走行経路を自動走行し、前記作業走行は複数の往復作業走行を含み、前記非作業走行は2つの前記往復作業走行をつなぐように行われる旋回走行を含み、前記往復作業走行の終端領域から資材の補給位置に向かって機体を手動操作により直進走行させることができる作業機の車速制御システムであって、
前記直進走行において、前記補給位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に前記作業機の車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速する車速制御システム。
【請求項16】
前記補給位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記作業機の車速を前記第1車速まで減速させる請求項15に記載の車速制御システム。
【請求項17】
前記増速および前記減速の少なくとも一方は徐々に行われる請求項10から16のいずれか一項に記載の車速制御システム。
【請求項18】
前記第1距離、前記第2距離、および前記第3距離のうちの少なくとも1つは可変である請求項10から17のいずれか一項に記載の車速制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圃場等の作業地に対して、自動走行しながら作業を行う作業機および作業機の車速を制御する車速制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、作業車両(作業機)は、圃場(作業地)を走行しながら、植付作業等の作業を行う。また、作業車両(作業機)は、自動走行により、作業走行を行う。作業車両(作業機)は、走行経路を算出し、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を用いて算出した自機位置に基づいて走行経路に沿った自動走行を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような作業車両(作業機)においては、自動作業走行における、さらなる利便性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る作業機は、走行装置と、前記走行装置を制御する走行制御部とを備え、前記走行制御部は、自動走行における作業走行につながる非作業走行において、直進走行が連続して所定の第1距離以上行われると、車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速し、前記非作業走行は旋回走行と前記直進走行とを含む。
【0006】
さらに、本発明の一実施形態に係る車速制御システムは、自動走行により作業走行と非作業走行とを行う作業機の車速制御システムであって、前記自動走行における前記作業走行につながる前記非作業走行において、直進走行が連続して所定の第1距離以上行われると、前記作業機の車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速させ、前記非作業走行は旋回走行と前記直進走行とを含む。
【0007】
非作業走行を行う距離または時間が長くなると、作業効率が悪化する場合がある。非作業走行における直進走行が所定の第1距離以上行われた場合、車速を増速させることにより、非作業走行を短時間で行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0008】
また、作業機は、衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、車体の方位を計測する車体方位計測部と、前記自車位置に基づいて所定の走行経路を自動走行するように前記走行制御部を制御する自動走行制御部とを備え、前記走行制御部は、前記車体方位計測部が計測した前記車体の方位に基づいて、所定の時間内の前記方位の変化量が所定の範囲以内の場合に前記直進走行であると判定しても良い。
【0009】
また、車速制御システムにおいて、前記作業機は、衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、車体の方位を計測する車体方位計測部とを備え、車速制御システムは、前記車体方位計測部が計測した前記車体の方位に基づいて、所定の時間内の前記方位の変化量が所定の範囲以内の場合に前記直進走行であると判定しても良い。
【0010】
以上のような構成により、容易かつ適切に、作業機が直進走行していることを判定することができる。
【0011】
さらに、本発明の一実施形態に係る作業機は、走行装置と、前記走行装置を制御する走行制御部と、衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、前記自車位置に基づいて所定の走行経路を自動走行するように前記走行制御部を制御する自動走行制御部とを備え、前記走行制御部は、自動走行における作業走行につながる非作業走行の直進走行領域において、前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速し、前記非作業走行は、旋回走行領域と、前記旋回走行領域に続いて走行される前記直進走行領域とを含む。
【0012】
本発明の一実施形態に係る車速制御システムは、自車位置に基づいて所定の走行経路を自動走行する作業機の車速制御システムであって、前記自動走行における作業走行につながる非作業走行の直進走行領域において、前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に、前記作業機の車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速させ、前記非作業走行は旋回走行領域と、前記旋回走行領域に続いて走行される前記直進走行領域とを含む。
【0013】
非作業走行において、車速を増速させても、すぐに作業走行が行われる場合には、頻繁に車速の調整を行う必要があり、制御が複雑になったり、かえって作業効率が悪化したりする場合もある。以上のような構成により、増速した第2車速で走行する距離が、所定の第2距離以上の場合にのみ車速を増速することができる。その結果、効率的に車速を増速しながら、非作業走行を短時間で行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0014】
また、作業機は、前記走行制御部は、前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記車速を前記第1車速まで減速することが好ましい。
【0015】
また、車速制御システムは、前記自車位置から前記作業走行の開始位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記作業機の車速を前記第1車速まで減速させることが好ましい。
【0016】
非作業走行において車速を増速させても、作業走行に移行すると車速を戻す必要がある。以上のような構成により、作業走行の開始位置の所定の第3距離だけ手前で車速を戻す制御を行うため、作業走行の開始時には精度良く作業走行に適した車速に制御することができ、作業効率の向上を図りながら、適切な作業走行を維持することが容易となる。
【0017】
また、前記作業走行は往復作業走行であり、前記非作業走行は2つの前記往復作業走行をつなぐように行われる旋回走行を含んでも良い。
【0018】
このような構成により、非作業走行で行われる旋回走行の直進走行においても、所定の条件で車速を増速させることができるため、旋回走行を効率的に行い、作業効率を向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明の一実施形態に係る作業機は、走行装置と、資材を用いた作業を行う作業装置と、前記走行装置を制御する走行制御部と、衛星からの衛星信号を受信する衛星アンテナと、前記衛星信号に基づいて自車位置に対応する測位データを出力する衛星測位部と、前記自車位置に基づいて、作業走行および非作業走行を行う所定の走行経路を自動走行するように前記走行制御部を制御する自動走行制御部とを備え、前記作業走行は複数の往復作業走行を含み、前記非作業走行は2つの前記往復作業走行をつなぐように行われる旋回走行を含み、前記自動走行制御部は、前記往復作業走行の終端領域から前記資材の補給位置に向かって機体を手動操作により直進走行させることができ、前記走行制御部は、前記直進走行において、前記補給位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速する。
【0020】
本発明の一実施形態に係る車速制御システムは、自車位置に基づいて、作業走行および非作業走行を行う所定の走行経路を自動走行し、前記作業走行は複数の往復作業走行を含み、前記非作業走行は2つの前記往復作業走行をつなぐように行われる旋回走行を含み、前記往復作業走行の終端領域から資材の補給位置に向かって機体を手動操作により直進走行させることができる作業機の車速制御システムであって、前記直進走行において、前記補給位置までの距離が所定の第2距離以上である場合に前記作業機の車速を直前の車速である第1車速より速い第2車速まで増速する。
【0021】
以上の構成により、チョイ寄せ等の資材を補給するための非作業走行においても、車速を増速することにより、効率的な走行を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0022】
また、作業機において、前記走行制御部は、前記補給位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記車速を前記第1車速まで減速しても良い。
【0023】
また、車速制御システムは、前記補給位置までの距離が所定の第3距離になると、増速された前記作業機の車速を前記第1車速まで減速させても良い。
【0024】
補給位置まで走行すると、作業機は資材を補給するために停車する。以上のような構成により、補給位置の所定の第3距離だけ手前で減速されるため、補給位置で容易に停車することができ、資材の補給を適切に行いながら、作業効率を向上させることができる。
【0025】
また、前記増速および前記減速の少なくとも一方は徐々に行われても良い。
【0026】
このような構成により、急激な車速の変更が抑制され、スムーズな走行が維持されながら、作業効率を向上させることができる。
【0027】
また、前記第1距離、前記第2距離、および前記第3距離のうちの少なくとも1つは可変であっても良い。
【0028】
このような構成により、圃場等の周囲の状況や作業状況に応じて、車速を変更する条件を最適化することができ、より適切に作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図5】田植機の制御系を示す機能ブロック図である。
【
図8】マップ選択処理及び圃場形状取得処理に関する機能部を示す機能ブロック図である。
【
図9】ルート作成に関する機能部を示す機能ブロック図である。
【
図12】中止指示無効処理に関する機能部を示す機能ブロック図である。
【
図13】中止指示が無効にされた場合の走行形態について示す図である。
【
図14】越境判定処理に関する機能部を示す機能ブロック図である。
【
図17】経路探索及び補完経路設定に関する機能ブロック図である。
【
図18】経路探索における走行経路の一例を示す説明図である。
【
図19】タッチパネル上でのライン送りを示す説明図である。
【
図20】補完経路を必要としない旋回走行の説明図である。
【
図21】旋回走行時に後進を用いる例を説明するための説明図である。
【
図22】補完経路によって補完された旋回走行を説明するための説明図である。
【
図23】出入口付近に設定された特殊領域を示す説明図である。
【
図24】リモコンを用いた特殊領域での作業走行を実行するための制御系の機能ブロック図である。
【
図25】植付機構への動力分配と各条クラッチの制御とを示す説明図である。
【
図26】前進による直進走行が長い非作業走行経路から作業走行経路にいたる走行経路を例示する図である。
【
図27】後進による直進走行が長い非作業走行経路から作業走行経路にいたる走行経路を例示する図である。
【
図28】前進時の長距離走行時増幅機能の実施例を説明する図である。
【
図29】後進時の長距離走行時増幅機能の実施例を説明する図である。
【
図30】長距離走行時増幅機能を実施するための機能部の構成を例示する機能ブロック図である。
【
図31】変形圃場において長距離走行時増幅機能を実施する構成を例示する図である。
【
図32】高負荷圃場専用旋回機能の実施例を説明する図である。
【
図33】手動操作規制機能を実施するための機能部の構成を例示する機能ブロック図である。
【
図34】手動操作規制機能をタイムチャートに沿って説明する図である。
【
図35】自動運転停車機能を実施するための機能部の構成を例示する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、圃場を作業走行する田植機について説明する。
【0031】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(
図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(
図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)、すなわち、「左」(
図2に示す矢印Lの方向)および「右」(
図2に示す矢印Rの方向)は、それぞれ、機体の左方向および右方向を意味するものとする。
【0032】
〔全体構造〕
図1~
図3に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の機体1を備える。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構13、リンク機構13を揺動駆動する油圧式の昇降リンク13a、リンク機構13の後端部領域にローリング可能に連結される苗植付装置3、機体1の後端部領域から苗植付装置3にわたって架設されている施肥装置4、および、苗植付装置3の後端部領域に設けられる薬剤散布装置18等を備える。苗植付装置3、施肥装置4および薬剤散布装置18は、作業装置の一例である。
【0033】
機体1は、走行のための機構として車輪12、エンジン2(「動力源」に相当)、および主変速装置である油圧式の無段変速装置9を備える。無段変速装置9は、例えばHST(Hydro-Static Transmission)であり、モータ斜板およびポンプ斜板の角度を調節することにより、エンジン2から出力される駆動力(回転数)を変速する。車輪12は、操舵可能な左右の前輪12Aと、操舵不能な左右の後輪12Bとを有する。エンジン2および無段変速装置9は、機体1の前部に搭載される。エンジン2からの動力は、無段変速装置9等を介して前輪12A、後輪12B、作業装置等に供給される。
【0034】
苗植付装置3は、一例として8条植え形式に構成される。苗植付装置3は、苗載せ台21、8条分の植付機構22等を備える。なお、この苗植付装置3は、図示されていない各条クラッチの制御により、2条植え、4条植え、6条植え等の形式に変更可能である。
【0035】
苗載せ台21は、8条分のマット状苗を載置する台座である。苗載せ台21は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復移動し、縦送り機構23は、苗載せ台21が左右のストローク端に達するごとに、苗載せ台21上の各マット状苗を苗載せ台21の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。8個の植付機構22は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置される。そして、各植付機構22は、植付クラッチ(図示せず)が伝動状態に移行されることによりエンジン2から駆動力が伝達され、苗載せ台21に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗(植付苗とも称す)を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。これにより、苗植付装置3の作動状態では、苗載せ台21に載置されたマット状苗から苗を取り出して水田の泥土部に植え付けることができる。
【0036】
図1~
図3に示すように、施肥装置4(供給装置)は、粒状または粉状の肥料(薬剤やその他の農用資材)を貯留するホッパ25(貯留部)と、ホッパ25から肥料を繰り出す繰出機構26と、繰出機構26によって繰出された肥料を搬送するとともに肥料を圃場に排出する施肥ホース28(ホース)と、を有する。ホッパ25に貯留された肥料が、繰出機構26によって所定量ずつ繰り出されて施肥ホース28へ送られて、ブロワ27の搬送風によって施肥ホース28内を搬送され、作溝器29から圃場へ排出される。このように、施肥装置4は圃場に肥料を供給する。ホッパ25及び繰出機構26は機体フレーム1Eに載置支持され、作溝器29は苗植付装置3の下端部に設けられている。施肥ホース28は繰出機構26と作溝器29とに亘って延び、肥料がホッパ25から圃場へ供給される際に、肥料は施肥ホース28を経由する。
【0037】
ブロワ27は、機体1に搭載されたバッテリ73からの電力で作動し、各繰出機構26により繰り出された肥料を圃場の泥面に向けて搬送する搬送風を発生させる。施肥装置4は、ブロワ27等の断続操作により、ホッパ25に貯留した肥料を所定量ずつ圃場に供給する作動状態と、供給を停止する非作動状態とに切り換えることができる。
【0038】
各施肥ホース28は、搬送風で搬送される肥料を各作溝器29に案内する。各作溝器29は、各整地フロート15に配備される。そして、各作溝器29は、各整地フロート15と共に昇降し、各整地フロート15が接地する作業走行時に、水田の泥土部に施肥溝を形成して肥料を施肥溝内に案内する。
【0039】
図1~
図3に示すように、機体1は、その後部側領域に運転部14を備える。運転部14は、前輪操舵用のステアリングホイール10、無段変速装置9の変速操作を行うことで車速を調節する主変速レバー7A、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー7B、苗植付装置3の昇降操作と作動状態の切り換え等を可能にする作業操作レバー11、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを有する情報端末5、および、オペレータ(運転者・作業者)用の運転座席16等を備える。副変速レバー7Bは、走行車速を、作業中の作業速と移動中の移動速とに切り替える操作に用いられる。例えば、圃場間の移動は移動速で行われ、植付作業等は作業速で行われる。さらに、運転部14の前方に、予備苗を収容する予備苗収納装置17Aが予備苗支持フレーム17に支持される。
【0040】
車速を操作する操作具として、さらに、アクセルレバー7Fが設けられても良い。走行車速は、主に主変速レバー7Aの操作位置に応じて、無段変速装置9の斜板の角度とエンジン回転数とでスケジュールされるマップに即して制御される。ここで、圃場の状態や作業状況により、走行車速を維持しながらエンジン回転数のみを上げたい場合や、燃費等を考慮してエンジン回転数を下げたい場合がある。このような場合、アクセルレバー7Fによりエンジン回転数が増減される。具体的には、アクセルレバー7Fの操作位置を変更することにより、無段変速装置9の斜板の角度が維持されながら、エンジン回転数のみを現在のエンジン回転数から増減させることができる。さらに、アクセルレバー7Fの操作位置を検知するポテンショメータ(図示せず)が設けられても良い。
【0041】
上述のように、基本的には、主変速レバー7Aの操作位置に応じてエンジン回転数が決定される。ただし、このように決定されたエンジン回転数にかかわらず、アクセルレバー7Fのポテンショメータの検出値に応じて、このエンジン回転数は増減する。例えば、主変速レバー7Aの操作位置に応じて決定されたエンジン回転数で走行している際に、アクセルレバー7Fがエンジン回転数を上昇させる方向に操作されるとエンジン回転数は増大し、このエンジン回転数がアクセルレバー7Fで指示された最低限必要な指示回転数となる。
【0042】
ステアリングホイール10は、非図示の操舵機構を介して前輪12Aと連結され、ステアリングホイール10の回転操作を通じて、前輪12Aの操舵角が調節される。
【0043】
〔自動走行〕
自動走行により、田植機が圃場を田植作業する作業走行について
図1~
図3を参照しながら、
図4を用いて説明する。
【0044】
本実施形態における田植機は、手動走行および自動走行を選択的に行うことができる。手動走行と自動走行とは、自動・手動切替スイッチ7Cを切り替えることにより選択される。手動走行は、運転者が手動で、ステアリングホイール10、主変速レバー7A、副変速レバー7B、作業操作レバー11等の操作具を操作して作業走行を行うものである。自動走行は、あらかじめ設定された走行経路に沿って、田植機が自動制御で走行および作業を行うものである。また、自動走行は、運転者の搭乗を要する有人自動走行(有人自動走行モード)と、運転者の搭乗を要しない無人自動走行(無人自動走行モード)とを行うことができる。有人自動走行は、田植機から提供されるガイダンスに沿って一部の操作を運転者が行いながら、その他の走行および作業に伴う動作を田植機が自動制御するものである。無人自動走行では、運転者が搭乗することは要しないが、無人自動走行中に運転者が搭乗していても良い。また、無人自動走行は、運転者が自動走行の開始操作、例えば後述されるリモコン90(
図6参照)による開始操作を行うことにより、自動制御で作業走行を開始し、あらかじめ設定された作業走行を自動制御で行うものである。有人自動走行が行われる有人自動モードと無人自動走行が行われる無人自動モードとは、情報端末5を用いて設定される。
【0045】
田植機が植え付け作業を行う際には、まず、圃場の外周に沿って、運転者が手動操作で、作業を行わずに田植機を走行させる。この外周走行によって、圃場の外周形状(圃場マップ)が生成され、圃場が外周領域OAと内部領域IAに区分けされる。また、この際、田植機が圃場に侵入する出入口Eが設定されると共に、圃場の外周辺のうちの一辺または指定された複数辺が、田植機にマット状苗や肥料、薬剤、燃料等を補給するための苗補給辺SLとして設定される。
【0046】
圃場マップが生成される際には、田植機が作業走行を行う走行経路が設定される。内部領域IAでは、圃場の一つの辺に略平行な複数の経路を旋回経路で繋ぐ内部往復経路IPLが生成される。内部往復経路IPLは、開始点Sから終了点Gまで、内部領域IAの全体をくまなく走行する走行経路である。内部往復経路IPLが生成される際には、出入口Eの近傍に、誘導開始可能エリアGAが生成される。この誘導開始可能エリアGA内に田植機が停止されることにより、田植機は内部往復経路IPLの開始点Sまで自動走行により移動することが可能となる。なお、誘導開始可能エリアGAから行われる開始点誘導は専用の走行経路が設定されるが、この走行経路は複数設定されても良い。圃場の形状によっては、停車位置からの開始点誘導が困難な場合がある。複数の走行経路を設定しておくことにより、停車位置にかかわらず適切に開始点誘導される可能性が高まり好ましい。
【0047】
外周領域OAでは、圃場の外周に沿って外周領域OA内を周回する、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLの2つの走行経路が生成される。内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとを作業走行することにより、外周領域OAの全体の作業走行が行われる。内部往復経路IPLの作業走行(往復作業走行)が終了した後、内側周回経路IRLの作業走行開始位置までの移動は、別途設定された走行経路を走行して行われる。圃場の外形が複雑な場合、内部往復経路IPLの終点と内側周回経路IRLの開始点を離す必要がある場合がある。このような際には、内部往復経路IPLの終点から内側周回経路IRLの開始点に移動する走行経路として、圃場の任意の一辺に平行な経路を含む走行経路が設けられても良い。
【0048】
自動走行を行う場合には、このように走行経路が生成された状態で、田植機は、まず、出入口Eから圃場に侵入し、誘導開始可能エリアGAに移動して停止する。誘導開始可能エリアGAで、自動走行が開始されると、田植機はいったん後進した後開始点Sに移動し(開始点誘導)、終了点Gに至るまで内部領域IAの内部往復経路IPLの自動走行が行われる。無人自動走行における走行車速は、あらかじめ設定された走行車速の最高速度に応じて制御される。また、開始点誘導時の自動走行における走行車速は、設定された走行車速に応じた走行車速でも良いが、圃場の外周領域OAを走行する場合が多いため、より低速の所定の走行車速で開始点誘導時の自動走行が行われても良い。
【0049】
施肥装置4による施肥作業は、植え付け作業と連動して行われる。例えば、
図4に示されるように、内部領域IAに内部往復経路IPLが設定され、外周領域OAに旋回経路が設定されている。内部往復経路IPLは複数の平行経路であって、旋回経路は隣接の内部往復経路IPL同士を繋ぐ経路である。苗植付装置3による植え付け作業は内部往復経路IPLに沿って行われ、施肥装置4による施肥作業も内部往復経路IPLに沿って行われる。一方、外周領域OAの当該旋回経路では植え付け作業は行われず、施肥装置4による施肥作業も外周領域OAの当該旋回経路では行われない。
【0050】
田植機が内部往復経路IPLに沿って内部領域IAを植え付け作業しながら走行すると、田植機は内部領域IAと外周領域OAとの境界領域に到達する。内部領域IAにおける当該境界領域が『終了位置』であって、この終了位置で植付機構22が停止し、苗植付装置3が上昇する。一般的には、植付機構22の停止または苗植付装置3の上昇と同時に繰出機構26が停止して施肥装置4による施肥作業が停止する。これにより、内部領域IAにおける一つの内部往復経路IPLに沿った植え付け作業及び施肥作業が完了する。この後、田植機は、外周領域OAへ移動して、隣接の内部往復経路IPLに移動するために外周領域OAで旋回走行する。
【0051】
外周領域OAで旋回走行が完了すると、田植機は、再び内部領域IAに移動して、隣接の内部往復経路IPLに沿って植え付け作業及び施肥作業を開始する。内部領域IAのうちの内部領域IAと外周領域OAとの境界領域が『開始位置』であって、この開始位置で苗植付装置3が下降し、植付機構22が再び作動する。一般的には、苗植付装置3の下降または植付機構22の作動開始と同時に繰出機構26が動き始めて施肥装置4による施肥作業が開始される。
【0052】
内部領域IAの作業走行が終了すると、外周領域OAの作業走行が行われる。まず、田植機は、内側周回経路IRLの開始点まで手動で移動され、その後、無人自動走行により、内側周回経路IRLの作業走行を行う。次に、田植機は、外側周回経路ORLの開始点まで手動で移動され、その後、有人自動走行により、外側周回経路ORLの作業走行を行う(周回作業走行)。有人自動走行においては、手動操作された走行車速で、走行経路に沿った自動走行が行われ、作業装置はガイダンス(運転アシスト)に応じて手動で操作される。また、旋回時には、所定の位置で自動的に機体1が一時停止され、ガイダンスに応じて手動で必要な作業装置の操作が行われると、自動走行で旋回走行が行われる。以上の作業走行により、圃場全体の植え付け作業が終了する。
【0053】
なお、内部往復経路IPLおよび内側周回経路IRLは、無人の自動走行に限らず、有人の自動走行または手動走行で作業走行が行われても良い。また、外側周回経路ORLは、有人自動走行に限らず、手動走行で作業走行が行われても良く、無人自動走行で作業走行が行われても良い。さらに、内部往復経路IPLの終了点Gから内側周回経路IRLへの移動は、手動走行に限らず、有人または無人の自動走行で行われても良い。同様に内側周回経路IRLの終点から外側周回経路ORLへの移動も、手動走行に限らず、有人または無人の自動走行で行われても良い。
【0054】
また、有人自動走行は、少なくとも運転者が搭乗していることと、主変速レバー7Aが中立位置にあることとが自動走行の開始条件である。開始条件を満たした状態において、主変速レバー7Aが進行方向に移動されると自動走行が開始される。上記圃場の走行経路おいて、有人自動走行は、外側周回経路ORLでの作業走行の際に行われるが、その他の走行経路において行われても良い。また、有人自動走行において、苗植付装置3の昇降は自動制御により行われる。例えば、内部往復経路IPLや内側周回経路IRLでの有人自動走行における作業走行では、苗植付装置3の昇降は自動制御により行われる。ただし、外側周回経路ORLでの作業走行の際には、苗植付装置3の下降は手動操作により行われる。具体的には、外側周回経路ORLの旋回位置に機体1が到達すると、苗植付装置3は自動制御で上昇される。その状態で旋回が完了すると、機体1は停止し、手動操作により苗植付装置3を下降させることにより、自動走行による作業走行が継続される。外側周回経路ORLでは周囲に障害物が存在する可能性が他の走行経路より高い。円滑な作業走行を行うために、外側周回経路ORLでの作業走行では、障害物等が存在しないことが確認されたうえで、苗植付装置3の下降は手動操作により行われる。
【0055】
また、無人自動走行は、リモコン90が操作されることにより自動走行が開始され、あらかじめ設定された走行経路で自動制御により作業走行が行われる。上記圃場の走行経路において、無人自動走行は、内部往復経路IPLおよび内側周回経路IRLでの作業走行の際に行うことができる。無人自動走行においても、苗植付装置3の昇降は自動制御により行われる。
【0056】
〔制御系〕
次に、
図1~
図3を参照しながら
図5を用いて、田植機の制御系について説明する。
【0057】
田植機の制御系の中核をなす制御ユニット30は、田植機の走行制御や各種作業装置1Cの動作制御を行う。制御ユニット30は、手動走行の際には運転者が行う各種操作具1Bの操作に応じて制御を行い、自動走行の際には自車位置を取得しながら、自車位置に応じた制御を行う。
【0058】
そのため、自動走行用マイコン6等を含む制御ユニット30は、自車位置を算出するための測位ユニット8、各種設定や操作を行うと共に各種情報を表示する情報端末5、田植機の各種状態を検出するセンサ群1A、各種操作具1B、各種作業装置1C、操舵に係る前輪12Aや無段変速装置9等を含む走行機器1D等と接続される。なお、操作具1Bの1つであるモード切替スイッチ7Eは、手動走行を行う手動走行モード、有人で自動走行を行う有人自動走行モード、無人で自動走行を行う無人自動走行モードのいずれかを選択ためのスイッチである。
【0059】
センサ群1Aは、機体1の周囲の障害物を検知する障害物検知装置の一例としてソナーセンサ60が相当する。ソナーセンサ60は、例えば、機体1の前方の領域の障害物を検知する4つの前ソナー61と、機体1の後方の領域の障害物を検知する2つの後ソナー62と、機体1の側方の領域の障害物を検知する2つの横ソナー63とから構成される。なお、障害物検知装置はソナーセンサ60に限らず、障害物を検知できれば、任意の装置を用いることができる。例えば、障害物検知装置として、レーザーセンサや接触センサを用いることができる。また、障害物検知装置は、撮像装置にて機体1の周辺が撮影され、画像解析により障害物が検知される構成とされても良い。画像解析は、機械学習により生成した学習済みモデルを用いて行うこともでき、人工知能を用いた任意の手段で行うことができる。
【0060】
各種操作具1Bは、例えば、上述の主変速レバー7A、副変速レバー7B、アクセルレバー7F、ステアリングホイール10、リモコン90等が相当する。各種作業装置1Cは、例えば、作業操作レバー11が相当する。リモコン90(遠隔操縦装置)からの無線指令信号を受信し、受信した無線指令信号を電気信号に変換して制御ユニット30に送信する受信装置72は、自走車の両横側部のうち、右側の横側部に設けられている。
【0061】
図1及び
図2に示された苗植付装置3は、作業装置1Cの具体例である。苗植付装置3は、水田における作業を行う。より具体的には、苗植付装置3は、予め決められた条方向に沿って苗植付作業を行う。
【0062】
尚、本発明はこれに限定されず、作業装置1Cの具体例として、予め決められた条方向に沿って播種作業を行う播種装置が備えられていても良い。即ち、作業装置1Cは、予め決められた条方向に沿って苗植付作業または播種作業を行う植播系作業装置であっても良い。
【0063】
測位ユニット8は、機体1の位置および方位を算出するための測位データを出力する。測位ユニット8には、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信する衛星測位モジュール8A(「衛星測位部」に相当)と、機体1の三軸の傾きや加速度を検出する慣性計測モジュール8B(「車体方位計測部」に相当)が含まれている。なお、慣性計測モジュール8Bは測位ユニット8に内蔵されても良いが、別途設けられても良い。また、衛星測位モジュール8Aと慣性計測モジュール8Bは、それぞれ個別に設けられ、合わせて、機能的に測位ユニット8を構成しても良い。
【0064】
手動走行モードにおいて、制御ユニット30は、操作具1Bの操作や情報端末5の設定状態に応じて走行機器1Dを制御し、車速や操舵量を制御することにより、走行を制御する。また、制御ユニット30は、操作具1Bの操作や情報端末5の設定状態に応じて作業装置1Cの動作を制御する。
【0065】
有人自動走行モードまたは無人自動走行モードにおいて、制御ユニット30は、測位ユニット8から逐次送られてくる衛星測位データに基づいて、機体1の地図座標(自車位置)を算出する。また、制御ユニット30は、圃場マップを取得し、圃場マップおよび情報端末5の設定や操作に応じて走行経路を設定する。同時に、制御ユニット30は、走行経路中の位置に応じた作業装置1Cの動作を決定する。そして、制御ユニット30は、自車位置に基づいて走行経路中の走行位置を算出し、走行経路中の走行位置および情報端末5の設定状態に応じて、走行機器1Dおよび作業装置1Cを制御する。このようにして、制御ユニット30は、自動走行モードでの作業走行を制御する。
【0066】
また、制御ユニット30は、無人自動走行モードに比べて有人自動走行モードにおいて、車速を低減させ、加減速が緩やかに行われるように制御する。これにより、無人自動走行モードでは効率的に作業走行が行われ、有人自動走行モードでは搭乗する運転者の乗り心地を損なわないようにすることができる。
【0067】
エンジン回転数は、手動走行においては主変速レバー7Aの操作位置に応じ、自動走行においては自動走行ECU(自動走行用マイコン6)の制御に応じて、エンジン回転数制御用マイコン(制御ユニット30等に相当または内蔵)により制御される。
【0068】
なお、制御ユニット30は、上述の機能を実現できれば任意の構成とすることができ、複数の機能ブロックから構成されても良い。また、制御ユニット30の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されても良い。ソフトウエアに係るプログラムは、任意の記憶部に記憶され、制御ユニット30が備えるECUやCPU等のプロセッサ、あるいは別に設けられたプロセッサにより実行される。
【0069】
〔リモコン〕
この田植機には、
図6に示されるリモコン90が備えられ、このリモコン90を用いて田植機を遠隔操縦することができる。このリモコン90は、7つのボタンと2つのインジケータを備えている。なお、本願明細書では、ボタンは広義に解釈されるべきであり、スイッチやキーなどの種々の操作体を含むものであり、さらにソフトウエアボタンやハードウエアボタンも含まれる。第1ボタン90aは、電源ON/OFFボタンである。第2ボタン90bは、単押し操作で自動走行モードを維持した状態で機体1を一時停止させる。さらに、第2ボタン90bは、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、機体1を停止させ、自動走行モードを終了させる。その際、エンジンは停止させない。第3ボタン90cは、単押し操作で、機体1を加速させ、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、機体1を微速前進させる。第4ボタン90dは、単押し操作で、機体1を減速させ、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、機体1を微速後進させる。第5ボタン90eは、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、自動走行を開始させる。第6ボタン90fは、ファンクションボタン90gとの同時押し操作で、植付作業を開始させる。第1インジケータ90xは、バッテリ残量を示し、バッテリ残量が少なくなれば、表示色が緑から赤に変化する。第2インジケータ90yは、通信のON/OFFを示す。つまり、第2インジケータ90yは、リモコン90が操作されたことを示す。また、第2インジケータ90yは、リモコン90による操作が、田植機の制御系に受け付けられたことを示す表示を行うことも可能である。
【0070】
ファンクションボタン90gとの同時押し操作で実現する各ボタンの機能は、各ボタンの長押し、あるいは2回押しでも実現するように構成してもよい。また、電源ボタンである第1ボタン90aによって機体1を停止させるように構成してもよい。機体1を自動走行モードのままで一時的に停止させる場合には、第2ボタン90bを単押し操作する。第2ボタン90bが長押しまたは2回押し操作で機体1を停止させ、自動走行モードを終了させてもよい。アイドリングストップのためのエンジン停止が行われ場合には、リモコン90のボタン操作でエンジンの再スタートが実現するようしてもよい。なお、ファンクションボタン90gと各ボタンとの同時押し操作で実現する機能と、各ボタンの機能と、各ボタンの単押し操作で実現する各ボタンの機能とは、入れ替えてもよい。なお、この実施形態では、リモコン90は7つのボタンと2つのインジケータとを備えていたが、それぞれの数は、任意に変更してもよい。
【0071】
リモコン90のクレードル、あるいはリモコン90とデータ通信可能なコネクタが運転部14に設置されると、リモコン90が情報端末5や制御ユニット30とデータ交換可能となる。リモコン90のバッテリが充電可能な場合、クレードルを介して、充電できる。その際、クレードルが、リモコン90の装着時と非装着時とのいずれにおいても防水可能となるカバーを備えていると、田植機の洗車時に水被害を受けない。リモコン90と情報端末5との間でのデータ交換により、リモコン90の操作案内や操作結果をタッチパネル50に表示することができる。また、リモコン90と機体1との距離を管理し、当該距離が所定値を超えた場合、注意報知を行う機能を情報端末5、制御ユニット30、リモコン90の少なくとも1つに備えてもよい。同様に、情報端末5や制御ユニット30とリモコン90との間で通信不良が生じた場合に、注意報知を行う機能を情報端末5、制御ユニット30、リモコン90の少なくとも1つに備える。また、リモコン90に対する特定操作(実演モード操作など)により、田植機が予め設定されたシーケンシャルな動作を自律的に行うような構成を採用することも可能である。
【0072】
リモコン90は種々の形態で構成することができる。例えば、携帯電話やタブレットコンピュータに相応なプログラムをインストールすることで、リモコン90として利用することも可能である。
【0073】
〔情報端末〕
情報端末5は、運転座席16に着座した作業者(運転者や監視者などを含む)によって手動操作、視覚確認、音声確認できるように、運転部14に備えられている。情報端末5は、ネットワークコンピュータ機能を有する。
図7に示されるように、ハウジング5Aにはタッチパネル50と、複数の操作キーからなるハードウエアボタン群5aとが組み込まれている。さらに、タッチパネル50にも実質的に同一の操作キーがソフトウエアボタン群50aとして表示される。タッチパネル50の表示内容、例えばマップ画面やルート画面を拡大キーの操作等により拡大した場合、ソフトウエアボタン群50aは消去されるが、ソフトウエアボタン群50aに対する操作は、ハードウエアボタン群5aにより代替可能である。このため、ソフトウエアボタン群50aとハードウエアボタン群5aとにおける各操作キーの位置が互いに対応している。作業者によるキー操作が要求される場合には、ソフトウエアボタン群50aのうちの対応する操作キーが点滅または点灯等で注意喚起される。その際、ハードウエアボタン群5aの操作キーでも有効な場合は、ハードウエアボタン群5aの対応する操作キーが点滅または点灯される。田植機は、基本的には野外での使用となるので、タッチパネル50に表示される文字は、可能な限り、白地に黒文字で表示される。
【0074】
〔情報端末のグラフィックインターフェース〕
この田植機は、圃場における苗植付作業を自動走行で行うことができる。そのための必要となる情報は、情報端末5のタッチパネル50に表示される。この情報端末5には、タッチパネル50を通じて、作業者への情報表示及び作業者による操作入力を行うためのグラフィックインターフェースが備えられている。その際、タッチパネル50には田植機の走行状態を示すために田植機を模写したアイコンが表示される。この田植機は、有人での自動走行と無人での自動走行とを行うことができるので、それぞれの場合で、田植機アイコンの形状または色、あるいはその両方が変更される。作業者は、タッチパネル50の画面に表示される情報に案内されながら、種々の指令を入力する。自動作業走行では以下の処理、
(1)センサ・リモコンチェック処理、
(2)準備処理、
(3)マップ作成処理、
(4)ルート作成処理、
(5)作業走行設定処理、
(6)走行アシスト処理、
などが実施され、各処理のために必要な情報が情報端末5に表示される。
【0075】
〔自動走行中の制御における操作具の操作〕
図1~
図5を用いて、自動走行中の制御における操作具の操作について説明する。
【0076】
無人自動走行においては、走行が開始された後は、基本的に作業者の操作は介入されず、主変速レバー7Aは中立位置のまま、走行および作業は制御ユニット30により制御される。
【0077】
有人自動走行においては、運転者が主変速レバー7Aの操作を行うことにより走行が開始され、旋回走行や作業を行う際にも一定の手動操作が必要な場合がある。この際、運転者は、制御ユニット30の制御により行われるガイダンスを受け、ガイダンスに応じた操作を行うことにより、走行が開始され、旋回走行や作業が行われる。例えば、経路の進行方向に対して、主変速レバー7Aを進行方向に操作させるガイダンスが行われる。ガイダンスは、音声ガイダンスや情報端末5への表示等により行われ、主変速レバー7Aの操作や作業装置1Cの操作を促すガイダンスも含まれる。さらに、有人自動走行においては、走行の開始時や後進中、旋回中にその旨の報知が行われる。
【0078】
有人自動走行において、主変速レバー7Aを中立位置にする操作は自動走行の開始のために必要であり、苗植付装置3の下降等の作業装置1Cの動作に係る操作は自動作業走行を継続するために必要である。例えば、旋回時に非作業状態にされた作業装置1Cは、旋回後に作業状態に移行させることが必要である。そのため、これらの操作を促す音声等によるガイダンスは、これら操作が行われない限り継続して行われる。例えば、有人自動走行による最外周植付作業において、手動操作により苗植付装置3が下降されないと自動走行は継続しない。そのため、主変速レバー7Aを中立位置にすることを促すガイダンスは、苗植付装置3が下降されるまで報知され続ける。
【0079】
有人自動走行における旋回中または後進中に主変速レバー7Aが中立位置に操作された場合に主変速レバー7Aを操作位置に戻すガイダンスや、無人自動制御中に主変速レバーが前後進方向に操作された場合に主変速レバー7Aを中立位置に戻すガイダンス、自動作業走行中に作業者により上昇された苗植付装置3を下降させるガイダンス、最外周植付作業における各辺の始端部で苗植付装置3を昇降するガイダンスは、ガイダンスに沿った操作が行われるまで報知され続けることが好ましい。なお、有人自動走行における旋回中または後進中に主変速レバー7Aが中立位置に操作された場合に主変速レバー7Aを操作位置に戻すガイダンスや、無人自動制御中に主変速レバーが前後進方向に操作された場合に主変速レバー7Aを中立位置に戻すガイダンス、自動作業走行中に作業者により上昇された苗植付装置3を下降させるガイダンスは、あらかじめ設定された自動走行に反する操作であり、このような操作がされた場合は、設定された自動走行を行うのに適切な操作が行われるようにガイダンス(警告)されることになる。
【0080】
この時、音声ガイダンスは所定回数、所定時間報知され、情報端末5への表示によるガイダンスのみが、上記操作が行われるまで継続される構成であっても良い。
【0081】
有人自動走行は、モード切替スイッチ7E等により有人自動走行が選択された状態で、所定の条件が整ったうえで、自動走行起動・停止スイッチ7Dが押下されることにより開始され、主変速レバー7Aが前進方向に操作されることにより走行が開始される。また、無人自動走行は、所定の条件が整ったことにより開始され、リモコン90の操作で走行が開始され、リモコン90以外の操作では走行が開始されない。
【0082】
有人自動走行において、自動走行は主変速レバー7Aを操作することにより開始される。また、有人自動走行では、旋回の終了後に手動操作により苗植付装置3が下降される。また、自動走行起動・停止スイッチ7Dの操作により、有人自動走行モードに移行される。
【0083】
ただし、最外周植付時の旋回時の苗植付装置3の昇降は、ガイダンスに従って操作される。この場合でも、撮像装置を用いた画像解析等により、苗植付装置3を昇降しても問題ないことが確認できる場合は、苗植付装置3の昇降も自動制御で行われても良い。
【0084】
なお、以上のガイダンスは、ボイスアラーム等によって行われる音声ガイダンスや、情報端末5による表示の他にも、機体1の上部等に設けられた積層灯71やリモコン90等を用いた様々な手段により報知されても良い。このようなガイダンスは、報知制御部等によって制御され、報知制御部は制御ユニット30であっても良いし、制御ユニット30に内蔵されても良く、制御ユニット30とは別に設けられても良い。
【0085】
〔ソナーセンサによる検知〕
図1~
図3、
図5を用いて、ソナーセンサによる障害物を検知する構成および検知内容に応じた走行制御について説明する。
【0086】
ソナーセンサ60は機体1の周囲の障害物を検知し、自動走行において、制御ユニット30は障害物の検知内容に応じて自動走行を制御する。具体的には、このような制御は、自動走行用マイコン6等を含む制御ユニット30に内蔵される自動走行制御部または障害物対応部等の機能ブロックが行うことができ、さらに、これらの機能ブロックは、制御ユニット30とは別に設けられても良い。
【0087】
無人自動走行により機体1が発進する際(無人自動走行開始時)に、障害物が検知されると、発進が抑制されて走行は開始されない(発信抑制モード)。例えば、前進での無人自動走行開始時には、ソナーセンサ60のうち、前ソナー61および横ソナー63の検知結果が用いられ、前ソナー61および横ソナー63が障害物を検知すると、発進が抑制されて走行は開始されない。また、後進での無人自動走行開始時には、ソナーセンサ60のうち、後ソナー62および横ソナー63の検知結果が用いられ、後ソナー62および横ソナー63が障害物を検知すると、発進が抑制されて走行は開始されない。この際、横ソナー63は、運転者が搭乗する際に通過する搭乗領域である乗降ステップ(ステップ14A)の周囲が検知され、特に、運転部14に乗り降りしようとしている人物が検知される。
【0088】
無人自動走行による走行中は障害物の検知が行われ、障害物が検知されると、自動走行の停止等の制御が行われる(障害物検知モード)。具体的には、無人自動走行による走行中にソナーセンサ60が障害物を検知すると、走行が停止され、あるいは走行車速が減速される。例えば、無人自動走行により機体1が直進走行する際には前ソナー61の検知結果が用いられ、無人自動走行により機体1が後進走行する際には後ソナー62の検知結果が用いられる。また、無人自動走行により旋回する際には、これらに加えて横ソナー63の検知結果が用いられても良く、旋回方向の横ソナー63のみの検知結果が用いられても良い。なお、走行が停止される際には、走行車速が徐々に減速されて、最終的に機体1が停止されても良い。なお、内部往復経路IPLを走行する往復作業走行の際に障害物検知が行われても良く、さらに、最外周植付時(最外周作業走行)にも障害物検知が行われても良い。また、ソナーセンサ60の検知結果を用いた走行の制御は、無人自動走行の場合に限らず、有人自動走行、あるいは手動走行の際に行われても良い。特に、外側周回経路ORL(
図4参照)は、有人自動走行あるいは手動走行で作業走行が行われる。圃場の最外周には水口等の障害物が多くある。そのため、有人自動走行あるいは手動走行による最外周作業走行においても、ソナーセンサ60を用いた障害物検知が行われても良い。
【0089】
〔苗補給〕
図1~
図5を用いて、苗補給および薬剤補給について説明する。
【0090】
田植機は、苗切れが生じると苗補給を行う。苗補給時には、前進走行で、苗補給辺SLの畦際の苗の補給位置に機体1が寄せられる。苗補給が終了すると、機体1は後進し、走行経路に復帰する。
【0091】
自動走行は、苗補給ありモードと苗補給なしモードとが設定可能である。苗補給ありモードでは、旋回経路の手前の内部往復経路IPLの終了位置(終了点)またはその近傍の終端領域で、苗補給を行うか否かを選択するために、機体1は一時停車し、自動走行は一時停止する。苗の補給が不要なときは、一時停車中にリモコン90が人為的に操作されることにより自動走行が再開されて次の内部往復経路IPLに向けて旋回走行が行われ、リモコン90が操作されるまで停車状態で機体1は待機する。苗の補給が必要なときは、苗補給が必要である状態である旨の人為的な操作が行われることにより、まずは機体1が畦に向かって所定距離だけ所定の車速で自動的に直進して停止する。その後、リモコン90による別の人為的な操作により機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることができる。この際、機体1は、例えば、リモコン90の所定のボタンを押下している間だけ所定の車速で走行する。別実施形態として、苗補給場所(補給位置)は苗補給辺ではなく、圃場の外周辺上の特定の苗補給ポイント(補給位置)であっても良い。また、苗補給ありモードでは、苗補給辺や苗補給ポイントに向かって経路が生成され、経路に沿って自動走行されても良い。
【0092】
なお、上記のように苗補給ありモードにおいて苗補給が行われる機能は、チョイ寄せ機能、あるいは単にチョイ寄せと称される場合があり、チョイ寄せ機能に係る走行はチョイ寄せ走行と称される場合がある。
【0093】
また、苗補給に係る操作は、リモコン90により行われても良いが、他の操作具1Bにより行われても良い。例えば、苗補給が不要なときは、自動走行を開始するためのスイッチ(自動開始操作具(図示せず))等の所定の操作具1Bを操作した後、主変速レバー7Aを進行方向に操作することにより、自動走行が再開されて旋回走行が行われても良い。また、苗補給が必要なときは、主変速レバー7Aを進行方向に操作することにより、操作に応じて機体1が苗補給辺SLの畦際に寄せられても良い。なお、無人自動走行の際には、搭乗者が運転部14に搭乗していない場合があるため、リモコン90により操作が行われることが好ましい。
【0094】
また、以上の説明では、苗補給を行う場合について説明したが、苗に限らず、苗補給辺SLの資材の補給位置で、他の資材を補給する際にチョイ寄せ機能が用いられても良い。
【0095】
また、苗補給なしモードでも、旋回経路と内部往復経路IPLとの境界で、制御の切り替えのために機体1は一時的に停車する。苗補給なしモードであっても、予期せぬ苗の補給が必要になったり、その他の事情が生じたりすることにより、機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることが必要となる場合がある。この際、機体1が一時的に停車している間に、リモコン90等による人為的な操作により、機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることができる。あるいは、機体1が一時的に停車する前に徐々に減速され、その間に、リモコン90等による人為的な操作により、機体1を苗補給辺SLの畦際に寄せることができる。
【0096】
なお、機体1が一時停車した後、所定の時間が経過することにより、走行が自動的に再開されても良いが、走行の再開に人為的な操作が要されても良い。
【0097】
有人自動走行中は、主変速レバー7Aの操作等をガイダンスし、これに応じた操作に基づいた走行が行われる。ただし、最外周植付作業において、外側周回経路ORLの各辺をつなぐ旋回走行(方向転換)は、運転者の操作を要さずに前後進が切り替わる。そのため、有人自動走行であっても、このような操作を要さない走行時には、走行が切り替わるとしてもガイダンスを行わないことが好ましい。ただし、外側周回経路ORLの各辺をつなぐ旋回走行においても、作業装置1Cの動作には手動操作を要する構成としても良く、この際は、作業装置1Cの動作にかかる操作を行う旨のガイダンスが報知される。
【0098】
〔苗切れ・肥料切れ等の際の制御〕
図1~
図5を用いて、苗切れ・肥料切れ等の際の制御について説明する。
【0099】
苗植付装置3や施肥装置4、薬剤散布装置18、播種機等の各種資材を供給する装置には、それぞれの資材の残量を検出するセンサ(センサ群1Aの1つ)が設けられても良い。以下、苗の残量を検出する苗切れセンサを例に説明するが、肥料、薬剤、種籾等の各種資材にも適用できる。
【0100】
苗切れセンサが、苗の残量が所定の量以下になっていることを検知すると、制御ユニット30は、情報端末5やボイスアラーム発生装置100等にその旨を報知させても良い。
【0101】
また、作業走行の開始時、あるいは停車後の作業走行の再開時に、苗切れセンサが苗の残量が所定の量以下になっていることを検知すると、制御ユニット30は、走行が行われないように制御しても良い。苗の残量が不足する状態で植付作業が行われると、圃場の途中で欠株が生じる可能性がある。そのため、このような可能性がある状態では走行を行わない構成とすることにより、欠株の発生が抑制される。
【0102】
走行経路の途中で苗の残量が所定の量以下になっていることが検知された場合、機体1が停止されても良いが、苗植付装置3を上昇させた状態で、苗補給辺SLまで走行させても良い。また、苗切れセンサの検出に基づいて、次の苗補給辺SLまで作業走行するのに必要な苗の残量が計算され、苗補給辺SLに戻るのに必要な量が残る範囲の所定の量が検知された場合、作業走行を継続しながら苗補給辺SLまで走行する構成とされても良い。また、苗の量が足りていない場合に次の作業経路に入らず、情報端末5またはリモコン90等の報知装置で作業者にその旨が報知されても良い。また、苗補給辺SLに限らず、苗切れセンサが検知した位置によっては、苗補給が可能なその他の辺まで走行する構成としても良い。自動走行の際の、苗補給辺SLまたはその他の辺までの移動は、その場所からの走行経路が生成され、その走行経路に沿った自動走行であっても良い。
【0103】
苗が切れたことを検知する苗切れセンサは、例えば、撮像装置で閾値以下まで苗が減った事もって苗切れと判断する画像解析が行われる構成であっても良いし、機械学習された学習済みモデルに撮像画像を入力して苗切れを検知しても良い。また、苗が切れたことを検知する苗切れセンサは、苗載せ台21の苗送り部の終端部分に設けられた、苗の有無を検知する苗切れセンサ(センサ群1Aの1つ)であっても良い。
【0104】
苗補給辺SLへの移動は、チョイ寄せ機能を用いることができるが、苗植付装置3を上昇させた状態(空作業)でのチョイ寄せ走行は、チョイ寄せの速度制限が解除されて、旋回領域の前後に行われるチョイ寄せに比較して、走行車速が速くても良い。これにより、苗補給辺SLから遠い位置で苗残量の低下が検知されたとしても、速やかに苗補給辺SLまで移動することができる。
【0105】
同様に、田植機は、搭載された薬剤がなくなると薬剤の補給を行う。薬剤補給時には、後進走行で、苗補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。薬剤補給が終了すると、機体1は前進し、走行経路に復帰する。
【0106】
薬補給時は有人自動走行では、自動状態を維持しながら、人の操作により旋回し、後進走行して苗補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。
【0107】
無人自動走行では、旋回経路から内部往復経路IPLに移動する際に機体1が一時的に停止され、その間に人為的な操作を行うことにより、機体1が所定の速度で後進し(チョイ寄せ)、苗補給辺SLの畦際に機体1が寄せられる。この人為的な操作は、リモコン90等で行うことができる。なお、このような人為的な操作は、旋回の途中を走行している際に受け付けることができ、旋回が終了してから、機体1は所定の速度で後進する。
【0108】
〔マップ選択処理〕
田植機におけるマップ選択処理について、
図1~
図5、及び
図8を用いて説明する。
図8の機能ブロック図には、マップ選択処理に関する機能部が含まれる。本実施形態におけるマップ選択処理では、制御ユニット30と情報端末5との間で互いに情報やデータの送受信が行われる。本実施形態では、制御ユニット30に、機体位置算出部311が備えられ、情報端末5に、表示装置551(タッチパネル50)、マップ情報記憶部552、マップ情報表示部553が備えられる。各機能部は、マップ選択に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で構築されている。
【0109】
機体位置算出部311は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。衛星測位には測位ユニット8が利用され、測位ユニット8から機体位置算出部311に、例えば緯度情報、経度情報、及び高度情報からなるGPS情報が伝達される。なお、本実施形態では高度情報は、ジオイド高と標高とが合算された機体1の高さ(測位ユニット8の高さ)が相当する。機体位置とは、実空間における機体1の位置であって、緯度情報、経度情報、及び高度情報により示される。機体位置算出部311は、このようなGPS情報に基づき、実空間における機体1の位置を算出する。
【0110】
マップ情報記憶部552は、作業地の形状を示すマップ情報を、作業地の位置を示す位置情報とマップ情報が作成された時間を示す時間情報とに基づいて記憶する。作業地の形状とは、田植機が植え付け作業を行う圃場の形状であって、圃場の外形の形状にあたる。本実施形態では、このような圃場の外形の形状を示す情報は、マップ情報として扱われる。作業地の位置とは圃場の位置であって、圃場の外周部分の位置であっても良いし、圃場に田植機が出入りする出入口Eの位置であっても良い。更には、圃場の中央部分の位置であっても良い。また、マップ情報が作成された時間を示す時間情報とは、上述した位置情報が取得された時間を示すタイムスタンプであっても良いし、マップ情報がマップ情報記憶部552に記憶された時間を示すタイムスタンプであっても良い。マップ情報には、上述した圃場の位置を緯度情報、経度情報、及び高度情報等により規定した位置情報と共に、マップ情報が作成された時間を規定した時間情報とが含まれる。なお、マップ情報における位置情報は、測位の経度・緯度情報に代えて、作業地座標に基づく座標位置、特定の基準点からのX,Y座標、などに基づいて生成することも可能である。
【0111】
表示装置551は表示画面を有する。本実施形態では表示装置551は情報端末5のタッチパネル50が相当する。本実施形態では、タッチパネル50が表示画面を兼ねる。このため、特に区別をしない場合には、表示画面をタッチパネル50として説明する。
【0112】
マップ情報表示部553は、マップ情報記憶部552に記憶されたマップ情報のうち、機体位置と位置情報と時間情報とに基づいて抽出したマップ情報を、タッチパネル50に表示させる。上述したように、マップ情報記憶部552にはマップ情報が記憶され、マップ情報には位置情報と時間情報とが含まれる。機体位置とは、機体位置算出部311により算出された実空間における機体1の位置であり、具体的には田植機の現在位置である。マップ情報表示部553は、マップ情報記憶部552に記憶されたマップ情報の中から、田植機の現在位置を含む圃場の外形の形状を示すマップ情報であって、時間情報に基づいて最新のタイムスタンプを有するマップ情報を抽出し、当該抽出したマップ情報をタッチパネル50に表示させる。これにより、田植機が圃場内にいる場合には、自動で当該圃場の形状を示す最新のマップ情報をタッチパネル50に表示することが可能となる。
【0113】
〔圃場形状取得処理〕
田植機における圃場形状取得処理について、
図1~
図5、及び
図8を用いて説明する。
図8の機能ブロック図には、圃場形状取得処理に関する機能部が含まれる。本実施形態における圃場形状取得処理では、制御ユニット30と情報端末5との間で互いに情報やデータの送受信が行われる。本実施形態では、制御ユニット30に、機体位置算出部311が備えられ、情報端末5に、表示装置551(タッチパネル50)、位置情報算定部571、マップ情報作成部572、走行経路生成部573が備えられる。各機能部は、圃場形状取得に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で構築されている。
【0114】
機体位置算出部311は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。衛星測位には測位ユニット8が利用され、測位ユニット8から機体位置算出部311に、例えば緯度情報、経度情報、及び高度情報からなるGPS情報が伝達される。なお、本実施形態では高度情報は、ジオイド高と標高とが合算された機体1の高さ(測位ユニット8の高さ)が相当する。機体位置とは、実空間における機体1の位置であって、緯度情報、経度情報、及び高度情報により示される。機体位置算出部311は、このようなGPS情報に基づき、実空間における機体1の位置を算出する。
【0115】
位置情報算定部571は、作業地の外周に沿って区切られた複数の領域の夫々を走行する際に、一つの領域における走行開始時は、機体位置と機体1における外周側の後方側端部の位置とに基づいて位置情報を算定する。作業地の外周とは、田植機が植え付け作業を行う圃場の外周部分であって、圃場を区画する畦の内周部分にあたる。作業地の外周に沿って区切られた複数の領域とは、例えば圃場の外形が多角形状である場合には、多角形の各辺が相当する。また、圃場の外形が少なくとも円弧状部を有する場合には、当該円弧状部を一つの領域として、複数の領域に区分けしても良い。もちろん、外形が多角形状である場合にも、一つの辺を分割して複数の領域に区分けしても良い。
【0116】
ここで、田植機には、機体1に対して昇降自在に、対地作業を行う作業ユニットが設けられる。対地作業を行う作業ユニットとは、苗植付装置3である。係る場合、位置情報算定部571は、上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされた時点を走行開始時とし、下降状態にある苗植付装置3が上昇位置に戻された時点を走行終了時とすると好適である。上昇位置にある苗植付装置3が下降状態とされた時点とは、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面(圃場面)に対して苗の植付ができるように植付面に近づけられ、整地フロート15が接地した時点である。このような苗植付装置3の下降は、整地フロート15にセンサ(センサ群1Aの1つ)を設けて検出することも可能であるし、苗植付装置3の昇降操作を行う作業操作レバー11の位置を検出して行うことも可能である。
【0117】
また、下降状態にある苗植付装置3が上昇位置に戻された時点とは、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面から遠ざけられ、整地フロート15が植付面から離間した時点である。このような苗植付装置3の上昇も、整地フロート15にセンサ(センサ群1Aの1つ)を設けて検出することも可能であるし、苗植付装置3の昇降操作を行う作業操作レバー11の位置を検出して行うことも可能である。
【0118】
このように、位置情報算定部571は、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面に対して苗の植付ができるように植付面に近づけられ、整地フロート15が接地した時点を走行開始時とし、苗植付装置3の植付機構22が圃場の植付面から遠ざけられ、整地フロート15が植付面から離間した時点を走行終了時とすることで、位置情報の算定を適切に行うことが可能となる。
【0119】
図8に戻り、マップ情報作成部572は、位置情報に基づいて、作業地の形状を示すマップ情報を作成する。位置情報は、上述した位置情報算定部571により算定され、マップ情報作成部572に伝達される。作業地の形状を示すマップ情報とは、田植機が圃場の外周を走行して取得した位置情報により示される緯度情報及び経度情報からなる座標を連続的に繋いだ圃場の形状を示すマップにあたる。したがって、マップ情報作成部572は、位置情報算定部571により算定された位置情報により示される緯度情報及び経度情報からなる座標を連続的に繋いだ圃場の形状を示すマップを作成する。このようなマップ情報の作成は、公知の方法を利用して作成可能であるので、説明は省略する。なお、ここでは、作成途中のマップ情報も、単にマップ情報として説明する。
【0120】
〔ルート作成処理〕
田植機におけるルート作成処理について、
図1~
図5を参照しながら、
図9~
図11を用いて説明する。
【0121】
自動走行の目標となる走行経路(ルート)は、圃場の内部領域IAの苗植付作業を行うための内部往復経路IPLと、圃場の外周領域OAの苗植付作業を行うための周回経路と、出入口Eの近傍に設定される誘導開始可能エリアGAから内部往復経路IPLの開始点(作業開始点)Sへの移動ための開始点誘導経路とからなる。なお、圃場の外周領域OAは周回経路に沿った走行によって苗植付作業が行われる領域であり、内部領域IAは、外周領域OAの内部に残される領域である。ここでの、ルート作成処理には、往復経路作成処理と、苗補給経路作成処理、周回経路作成処理と、開始点誘導経路作成処理とが含まれている。
【0122】
ルート作成に関する各種処理のために必要な機能部は、
図9に示されているように、情報端末5に構築されている。この情報端末5は、機体位置算出部311、走行制御部312、作業制御部313などの機能部を構築している制御ユニット30と車載LANなどの通信線を通じて接続している。制御ユニット30は、走行機器1Dや作業装置1Cとも接続している。情報端末5に構築されている機能部は、基準辺設定部521、往復経路作成部522、走行方向決定部523、補給辺設定部531、補給制御管理部532、周回経路作成部524、運転形態管理部525、開始点設定部541、開始点誘導経路作成部542である。
【0123】
基準辺設定部521は、作業機の作業地である農場(圃場等)の外形の一辺を基準辺として設定する。往復経路作成部522は、基準辺に対して所定の方向で延びる複数の直進経路を含む内部往復経路IPLを作成する。走行方向決定部523は、内部往復経路IPLにおける走行方向を設定する。補給辺設定部531は、農場の外形の特定辺を作業機が消費する資材の資材補給辺として設定する。補給制御管理部532は、資材補給辺に向かって走行している内部往復経路IPLの直進経路の終端領域から、またはその次に走行する直進経路の始端領域から、あるいはその両方の領域から作業機を資材補給辺に寄せ付けるための補給走行制御を走行制御部312と連係して管理する。周回経路作成部524は、農場の外形を算出するために圃場の境界線に沿って走行する外形算出走行における走行軌跡に基づいて、農場の外周領域に少なくとも1本以上の周回経路を作成する。運転形態管理部525は、周回経路の運転形態として、有人自動走行、無人自動走行、手動走行からの選択を可能にする。開始点設定部541は、内部往復経路IPLを用いた作業走行の開始点Sを設定する。開始点誘導経路作成部542は、誘導条件を満たした作業機を開始点Sへ自動的に誘導するための開始点誘導経路SGLを作成する。
【0124】
ルート作成に関する機能部を実現するプログラムは、上述したように、情報端末5にインストールされている。各種処理は、情報端末5のタッチパネル50の画面に表示される内容と、タッチパネル50に対する操作によって進行する。
【0125】
内部領域IAでのルート作成では、植付の基準辺の選択、及び、植付方向の選択が行われる。植付基準辺の候補となる辺には、数値が付与されている。作業者は、所望の辺を基準辺として選択し、さらに、植付方向が基準辺に対して平行とするか、垂直とするかを選択する。この植付方向は、内部領域IAにおける往復走行での直進経路の方向となる。往復走行では直進経路と旋回経路とを組み合わせた経路が用いられるが、この直進経路は、直線状には限られず、大きな湾曲状、あるいは蛇行状であってもよい。
【0126】
植付方向の選択に関しては、基準辺が選択されると、自動的に往復走行での往復回数が少なくなる植付方向が自動的に選択されるように構成してもよい。また、同一圃場または類似圃場における初回の選択時は、圃場の最も長い辺に平行となるような植付方向がデフォルトとして設定され、それ以降の植付方向の選択時は、前回の選択結果がデフォルトとして設定されるように構成してもよい。
【0127】
なお、圃場形状は、長方形に限らず、台形やひし形などの四角形でもよいし、さらに三角形や、五角形以上の多角形でもよい。従って、基準辺としては、長方形の四辺に限らず、対向する辺が非平行となる辺が選択されてもよい。また、湾曲された辺を基準辺として選択した場合は、その辺に沿った走行経路が設定されてもよいし、徐々に直線状に慣らされた経路が設定されてもよい。一方で、このような場合は誤差が大きくなるので基準辺に選択できないようにしてもよい。
【0128】
内部領域IAにおける往復走行での作業では、その作業途中に苗補給が必要となる。なお、ここでの苗補給はその他の資材補給(薬剤、肥料、燃料など)に読み替えられる。苗補給では、田植機は、往復走行を中断して、畦に接近しなければならないが、この苗補給のための畦接近走行が可能となる位置での田植機の自動停止が可能である。この畦接近走行のための自動停止(苗補給辺自動停止)をするかしないかの選択がこの画面を通じて行うことができる。さらに、苗補給を行う辺は、往復走行での直進経路と交差する圃場辺であり、この辺を選択することもこの画面を通じて行うことができる。選択可能な辺は、1辺でもよいし、2辺でもよい。また、変形した圃場では、隣接する2つの辺が補給辺の候補となる可能性がある。
【0129】
圃場が特殊な場合、資材補給辺の候補は、全ての圃場辺の中から選択可能にする必要がある。このため、そのような特殊圃場が考慮される場合、資材補給辺を全ての圃場辺の中から選択できるように構成する。
【0130】
外周領域での周回経路に沿った作業走行(周り植え走行)においても、苗補給が必要な場合がある。この場合でも、機体1は圃場辺で自動停止させられる。その際、機体1が圃場辺から所定距離以上離れている場合、機体1を圃場辺に横寄せしてから、自動停止させられる。自動停止すると、補給を促す報知が行われる。
【0131】
苗補給辺の選択に関して、基準辺が選択されることで、好ましくは自動的に周り植え走行での苗補給辺が決定されるように構成されてもよいし、苗補給辺を選択してから、好ましくは自動的に基準辺が決定されるように構成されてもよい。
【0132】
苗補給では、一般的に、機体1の前部が畦(補給辺)に接近する必要があるので、旋回に入る前、あるいは旋回の途中で、畦に向かって前進する。補給後は、後進と旋回とによって、次の直進経路に入る。次の直進経路に入る際に行われる旋回制御では旋回半径を固定した制御が好都合である。この場合、機体1は、元の直進経路の通常の旋回走行が行われる位置まで後進で戻り、そこから通常の旋回走行により次の直進経路に入ることになる。薬剤補給などでは、機体1の後部が畦に接近する必要があるので、畦接近走行として、旋回してから後進する旋回後進畦寄せ走行が採用される。補給後は、前進で次の直進経路に入る。これらの一連の苗補給走行も、リモコン90等を用いた遠隔制御が可能である。
【0133】
変形している畦の近くで苗補給が行われた場合、苗補給後に次の直線経路に戻る際に行われる旋回走行において、機体1が畦に接近する可能性がある。このような旋回走行では、通常行われる旋回に比べて、旋回開始位置を畦から遠い位置に設定したり、旋回半径を変更したりする。
【0134】
苗補給のための自動停止を選択した場合、補給辺側の外周領域(枕地とも称する)OAに自動走行で直進する。この自動走行のためには、内部往復経路IPLの直進経路を延長させることによって生成された延長経路が利用される。その延長経路の走行中は、植付・播種・施肥などの作業を行われず、畦に接近した処理位置で、機体1は自動停止する。
【0135】
自動停止を選択せずに補給を行う場合には、旋回走行の前や旋回途中で、苗植付装置3が上昇している時に、手動操作またはリモコン90を用いた割込み制御によって、畦接近走行が可能となる。その場合は、補給後に次の開始点まで機体1を手動で走行させないと、自動運転の再開は不能となる。もちろん、補給が不要な場合には、自動停止を選択する必要はない。補給が不要となる例は、密苗、ロング(ロール)マット苗を採用している場合、苗植付装置3ではなく直播装置が装備されている場合、などである。補給とは関係なしに、リモコン90を用いた操作などによって、旋回走行の前や旋回途中で機体1を停止するように設定してもよい。
【0136】
リモコン90等による遠隔操縦を行っている場合には、補給資材の残量チェックは、作業者による目視ではなく、残量センサを用いて行い、その検出結果または資材切れをリモコン90に送信する構成や、音声で周囲に報知する構成を採用してもよい。残量センサによって資材切れ(資材不足)が検出された場合には、自動停止することができる。このような自動停止や資材切れ(資材不足)の報知は、内部領域IAでの作業走行だけでなく、外周領域OAでの作業走行においても行うことができる。その際、資材補給位置までの資材補給経路が作成されるように構成してもよい。
【0137】
残量センサは、カメラによる撮影画像を入力として苗などの資材残量を出力する機械学習モデルで構成することができる。また、資材残量が推定できる場合、資材補給するために自動停止する位置も推定できる。この推定位置に基づいて、資材補給のための自動停止を予約することができる。この予約は自動または手動で行うことができ、予約のキャンセルは手動で行うことができる。
【0138】
資材残量が推定できる場合、推定された残量で、次の補給可能な位置まで走行可能であるかどうかの判定が行われる。この判定結果に基づいて、資材補強のために機体1が停止し、資材補給走行を開始するための予想位置の報知が行われる。
【0139】
この実施形態では、外周領域OAでの作業走行(周り植え走行)は、周回経路として、外周領域(枕地)OAの内側に位置する内側周回経路IRLと、外周領域OAの外側に位置する外側周回経路ORLとに沿って行われる。内側周回経路IRLに沿った走行は、内側周回走行または内側周り走行と呼ばれ、外側周回経路ORLに沿った走行は、外側周回走行または外側周り走行と呼ばれる。マップ作成において機体1が走行した走行軌跡に実質的に一致するように作成される。内側周回経路IRLは、内部往復経路IPLと外側周回経路ORLの間にある経路である。内側周回走行及び外側周回走行は、有人自動、無人自動または手動で行うことができる。
【0140】
この実施形態では、外側周回経路ORLは自動走行であっても有人自動走行になるように規定されているが、外側周回経路ORLはマップ作成のティーチング走行の走行軌跡に基づいて、しかもその走行は苗植付装置3を下降させた状態での走行であるので、無人自動走行でも問題が生じる可能性は小さい。このことから、外側周回経路ORLに対しても無人自動走行が選択できるように構成してもよい。また、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLはそれぞれ別経路として設定されているのでアルゴリズムが複雑になりやすいが、最初から2つの経路のつなぎ経路を設けてもよい。または、内側周回経路IRLの終了時点でその終点から外側周回経路ORLの開始位置に向けて誘導する経路を設けてもよい。
【0141】
この実施形態では、往復走行における旋回走行のためのスペースを十分にとるために、外周領域OAに形成される周回経路は、2周の周回経路と既定されている。しかしながら、機種や作業条数によっては、1周の周回経路で十分である。したがって、周回経路が1周の周回経路で形成されることを選択できるような構成にしてもよい。但し、周回経路が1周の周回経路で形成される場合、往復走行で用いられる旋回経路には、後進を用いた切り返し経路、あるいは作業幅を超えるつなぎ直進経路でアングル状の2つの旋回経路をつなぐつなぎ旋回経路を採用することが好ましい。その際、つなぎ直進経路の走行では、周回経路を倣うような走行制御が行われるが、畦との間隔を規定している越境判定の許容範囲を拡大するなどの特例措置が採用される。さらには、旋回途中で畦との干渉リスクがある場合に後進等を用いた複数回切り返しで徐々に旋回する旋回リトライ機能も採用される。
【0142】
ルート作成処理において、通常は、予め決められた軌跡に基づき通常旋回(180度旋回)、又はコの字旋回(直進して畦に接近し次に後進してから前記通常旋回を行い最後に前進して、次の作業開始点に入る旋回)が採用されるが、空植え等の特定目的や、作業幅が畦際の旋回走行のためのスペースに比べて狭い場合には、
図10や
図11のような旋回方法が採用されても良い。
【0143】
図10と
図11には上述した特殊な旋回走行(旋回経路)が例示されている。
図10は、つなぎ旋回の一例を示している。このつなぎ旋回は、1つの直進経路から隣接する直進経路ではなく、その次の次の直進経路に移動するための移動走行である。このつなぎ旋回は、ほぼ90度の方向転換を行う第1旋回経路(
図10では符号Q1が付与されている)と、直線経路(
図10では符号Q3が付与されている)と、第2旋回経路(
図10では符号Q2が付与されている)とからなる。直線経路の長さは、移動先の直進経路の位置に応じて算定される。
図11は、後進を用いた切り返し旋回の一例を示している。切り返し旋回は、走行している直進経路から旋回走行で隣接経路に移動する際に、その旋回走行のためのスペース(畦までの距離:外周領域OAの幅)が少ない場合に用いられる。
図11で示された切り返し旋回は、第1旋回経路(
図11では符号R1が付与されている)と、後進逆旋回経路(
図11では符号R2が付与されている)と第2旋回経路(
図11では符号R3が付与されている)とからなる。第1旋回経路と後進逆旋回経路とにより切り返しと称せられる走行が実現するが、この切り返しを増やすことで、旋回走行に必要なスペースを小さくすることができる。
【0144】
〔自動運転の中断・終了、走行ライン先送り、自動運転の中断からの再開〕
自動走行の途中で自動走行が困難な状況が発生すると、自動走行は中断または終了され、走行制御は手動に移行する。自動走行が終了された場合には、自動走行での作業の再開は不可能となるが、自動走行が中断された場合には、自動走行での作業の再開は可能である。自動走行では、行われた自動走行の履歴(走破した走行経路など)が記録されている。自動走行の中断後、同じ機体位置で、あるいは手動走行で走行した後に、自動走行を再開する際には、自動走行が中断された機体位置及びその機体位置の走行経路のID等がメモリ等から読み出される。中断位置と再開位置が異なる場合において、中断位置と再開位置が同じライン上にある場合は、機体がライン上に重複した状態において、タッチパネルで再開指示可能である。中断位置と再開位置が異なるライン上にある場合は、タッチパネル50に表示される走行経路を用いて、設定されている走行経路を先送りし(ライン送りと称せられる)、機体1の現在位置に走行経路をマッチングさせる。
【0145】
タッチパネル50における走行経路の画面表示に関して追記される事項は以下の通りである。
(1)自動運転が中断された走行経路が赤色などの特徴色で描画される。その際、色変更される経路区間は、直進経路単位が好ましいが、中断点を含む直進経路の一部区間でもよい。
(2)自動運転の中断点付近に複数の経路が存在する場合、作業者によって処理対象となる走行経路が選択される。
(3)走行経路は、その走行経路の作業属性に応じて色変更される。例えば、走行経路に沿って苗植付作業が完了した経路と、苗植付作業が行われている経路と、これから行われる経路、空走り経路と呼ばれる苗植付作業を行わずに走行された経路などは、それぞれ識別可能に色塗りされる。また、苗植付作業が完了した経路の周辺は、その作業幅(各条単位)で色塗りされてもよい。
(4)手動走行においても、その走行軌跡と走行経路マップとのマッチングが行われ、手動走行で走行した作業跡も既作業領域として表示される。
(5)自動走行が中断され、複数本の走行経路に沿った手動走行を経て、再度自動走行が再開される場合での走行経路の先送りを容易にするため、走行経路早送り、早戻し機能が用意されている。
(6)自動走行を再開する際には、再開する走行ラインを選択する必要がある。その選択作業を容易にするため、自動運転再開時は、中断した走行経路、中断した走行経路の次の走行経路、中断した走行経路のひとつ前の走行経路のいずれかがデフォルトの再開走行経路として設定される。
【0146】
〔中止指示無効処理〕
田植機における中止指示無効処理について説明する。
図12は、中止指示無効処理における機能部を示すブロック図である。
図12に示されるように、本実施形態における中止指示無効処理では、制御ユニット30と情報端末5との間で互いに情報やデータの送受信が行われる。本実施形態では、制御ユニット30に、機体位置算出部311、走行制御部312が備えられ、情報端末5に、表示装置551(タッチパネル50)、マップ情報取得部51、走行中止指示部52、無効指示部53、取り消し部54、資材補給位置設定部55、補給指示受付部56、報知部57が備えられる。各機能部は、圃場形状取得に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で構築されている。
【0147】
機体位置算出部311は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。衛星測位には測位ユニット8が利用され、測位ユニット8から機体位置算出部311に、例えば緯度情報、経度情報、及び高度情報からなるGPS情報が伝達される。なお、本実施形態では高度情報は、ジオイド高と標高とが合算された機体1の高さ(測位ユニット8の高さ)が相当する。機体位置とは、実空間における機体1の位置であって、緯度情報、経度情報、及び高度情報により示される。機体位置算出部311は、このようなGPS情報に基づき、実空間における機体1の位置を算出する。
【0148】
マップ情報取得部51は、作業地の形状を示すマップ情報を取得する。作業地の形状を示すマップ形状は、上述したように、マップ情報記憶部552に記憶されている。したがって、本実施形態では、マップ情報取得部51はマップ情報記憶部552からマップ情報を取得する。
【0149】
走行制御部312は、取得されたマップ情報と機体位置とに基づいて作業地において作業を行いながら自動走行させる。本実施形態では、上述したようにルート作成処理においてマップ情報に基づいて、自動走行の目標となる走行経路が設定される。したがって、走行制御部312は、機体位置が走行経路に沿うように圃場において苗の植付作業を行いながら田植機を自動走行させる。このような走行経路にしたがって田植機を自動走行させる制御は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0150】
走行中止指示部52は、予め設定された走行停止条件を具備した場合に、走行制御部312に対して作業走行の中止指示を行う。予め設定された走行停止条件とは、自動走行を停止させるための条件である。このような走行停止条件として、例えば作業に用いる作業資材の残量が所定量以下になったこととすることが可能である。作業に用いる作業資材とは、植付作業に用いる苗、圃場に施肥する肥料、及び薬剤等が相当する。もちろん、作業資材は苗、肥料、及び薬剤のうち少なくとも何れか一方でも良い。したがって、走行中止指示部52は、植付作業に用いる苗や圃場に施肥する肥料や薬剤の残量が所定量以下になった場合に、走行制御部312に対し作業走行に中止指示を行う。なお、苗や肥料や薬剤の残量は、直接、センサで検出するようにしても良いし、初めに搭載していた搭載量から使用した量を減算して、理論的に算出したものであっても良い。
【0151】
走行制御部312は、このような中止指示を走行中止指示部52から受けると、自動走行制御を中止する。したがって、田植機は、植付作業に用いる苗や圃場に施肥する肥料や薬剤の残量が所定量以下になった場合に、自動走行を停止する。
【0152】
走行中止指示部52が、作業資材の残量が所定量以下になった場合に中止指示を行うように構成するときには、報知部57が、作業資材の残量が所定量以下である場合に、作業資材の残量が少なくなっていることを報知するように構成すると良い。報知は、情報端末5において行っても良いし、機体1から行っても良い。更には、ユーザが所持する携帯端末(例えばスマートフォン)に通知するようにしても良い。また、報知するタイミングは、作業資材の残量が所定量以下となった時点でも良いし、作業資材の残量が所定量以下となった後、予め設定された地点(例えば畦)に近づいた時点でも良い。これにより、ユーザが作業資材の残量が所定量以下であることを把握することができるのはもちろん、走行中止指示部52により中止指示が行われたことも把握することが可能となる。
【0153】
ここで、田植機は、中止指示を受けた場合でもユーザの指示に応じて例外的に自動走行ができるように構成されている。そこで、無効指示部53が、中止指示が行われた場合であっても、ユーザの指示に応じて走行中止指示部52による中止指示を無効とし、走行制御部312による自動走行を可能とする無効指示を行うように構成されている。中止指示が行われた場合とは、植付作業に用いる苗や圃場に施肥する肥料や薬剤の残量が所定量以下になり、走行中止指示部52が中止指示を行った場合である。ユーザの指示とは、例えば情報端末5による所定の操作(所定の操作ボタンの押下)や、リモコン90による所定の操作(所定の操作ボタンの押下)が相当する。したがって、無効指示部53は、植付作業に用いる苗や圃場に施肥する肥料や薬剤の残量が所定量以下になり、走行中止指示部52が中止指示を行った場合であっても、ユーザによる情報端末5による所定の操作(例えば、無効とする表示をタッチパネル50に表示しておき、ユーザが当該表示にタッチ操作を行った場合に操作したと認識することが可能である)や、リモコン90による所定の操作があったときには、走行中止指示部52による中止指示を無効とし、走行制御部312に対して自動走行を可能とする無効指示を行う。これにより、田植機が自動走行を再開する。
【0154】
また、作業機は、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合、所定距離または所定時間の間、走行中止指示部52を無効にして自動走行させるように構成することが可能である。すなわち、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合、田植機が予め設定された距離を走行する間、又は、所定時間が経過するまでの間、走行中止指示部52を無効にして自動走行させるように構成することが可能である。なお、走行中止指示部52を無効にするとは、走行中止指示部52による中止指示を無効にしても良いし、走行中止指示部52そのものの機能を無効にしても良い。いずれであっても、上記のように構成することで、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合に、田植機が予め設定された距離を走行する間、又は、所定時間が経過するまでの間、作業機が自動走行を行うことが可能となる。
【0155】
ここで、本実施形態では走行制御部312は、作業地に設定された自動走行の目標となる走行経路に沿って自動走行させる。特に、圃場における内部領域IAでは、
図13に示されるように内部往復経路IPLに沿って自動走行が行われる。このような内部往復経路IPLは、内部領域IA内を往復する複数の往復走行経路として設定される。したがって、走行制御部312は、作業地を複数の往復走行経路に沿って走行させる。この場合、走行制御部312は、上述した無効指示を受けた場合、すなわち、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合に、往復走行経路における終了位置または、次の開始位置まで走行させると良い。
【0156】
往復走行経路における終了位置とは、往復走行経路を一つの片道走行経路とする(例えば内部往復経路IPL1とする)場合には、内部往復経路IPL1の終了位置G1が相当する。係る場合、内部往復経路IPL1を走行中に、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合には、走行制御部312は内部往復経路IPL1の終了位置G1まで走行させると良い。また、往復走行経路を、往復走行経路を往路走行経路と復路走行経路とする(例えば内部往復経路IPL1と内部往復経路IPL2とからなるとする)場合には、内部往復経路IPL2の終了位置G2が相当する。この場合には、内部往復経路IPL1或いは内部往復経路IPL2を走行中に、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合には、走行制御部312は内部往復経路IPL2の終了位置G2まで走行させると良い。
【0157】
往復走行経路における次の開始位置とは、往復走行経路を一つの片道走行経路とする(例えば内部往復経路IPL1とする)場合には、次の往復走行経路である内部往復経路IPL2の開始位置S2が相当する。係る場合、内部往復経路IPL1を走行中に、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合には、走行制御部312は内部往復経路IPL2の開始位置S2まで走行させると良い。また、往復走行経路を、往復走行経路を往路走行経路と復路走行経路とする(例えば内部往復経路IPL1と内部往復経路IPL2とからなるとする)場合には、次の往復走行経路である内部往復経路IPL3の開始位置S3が相当する。この場合には、内部往復経路IPL1或いは内部往復経路IPL2を走行中に、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合には、走行制御部312は内部往復経路IPL3の開始位置S3まで走行させると良い。これにより、圃場の中央部において田植機が停車することを防止し、例えば圃場における苗や肥料の補給をし易い位置まで走行させて停車させることが可能となる。
【0158】
本実施形態では、無効指示部53による無効指示を取り消し部54が取り消しできるようにも構成されている。これにより、例えばユーザに指示に応じて無効指示部53が行った無効指示により自動走行が可能となった状態を、更にユーザの取り消し意思に応じて取り消すことが可能となる。取り消し部54による取り消しは、ユーザの取り消し意思に応じて行っても良いし、情報端末5或いは上位システムからの指示に応じて自動的に行っても良い。
【0159】
上述したように田植機は、苗の植付作業を行っている際に田植機に搭載されている苗や肥料等の作業資材が少なくなった場合に当該作業資材を補給するように構成されている。このような作業資材を補給する補給位置を、往復走行経路において設定する資材補給位置設定部55が備えられている。
【0160】
このような補給位置が設定されている場合には、走行制御部312は、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合に、次の補給位置まで走行させると良い。これにより、次の補給位置まで田植機を自動走行させることができ、作業資材の補給を行うことが可能となる。
【0161】
例えば、上述した補給位置が設定されているか否か予め判明していると好適である。そこで、補給指示受付部56が往復走行経路の走行中に作業資材の残量が所定量以下になった場合に、作業資材を補給するか否かの指示を受け付けるように構成すると良い。これにより、走行制御部312が、上述した次の補給位置まで自動走行させることが可能となる。
【0162】
一方、作業資材を補給する指示を受け付けていない場合は、走行制御部312は、往復走行経路における予め設定された地点に達した場合に停止させるようにすると良い。予め設定された地点とは、例えば往復走行経路のうち、往路走行経路における終点及び復路走行経路における終点とすることが可能であるし、あるいは、往復走行経路における終点とすることも可能である。また、往復走行経路における始点や終点とは異なる地点とすることも可能である。このような地点に達した場合に停止させることで、その都度、ユーザの指示を仰ぐことが可能となる。
【0163】
上記実施形態では、走行中止指示部52は苗の植付作業に用いる苗や肥料の残量が所定量以下になった場合に中止指示を行うとして説明したが、走行中止指示部52は、機体1の周囲に存在する物体を物体センサ(例えばソナーセンサ60)が検知した場合に、中止指示を行うように行うことも可能である。もちろん、苗や肥料の残量が所定量以下になった場合、及び、物体センサが物体を検知した場合の双方において、中止指示を行うように構成することも可能である。
【0164】
上記のように、例えばソナーセンサ60により機体1の周囲に物体が検知された場合には中止指示に応じて自動運転(自動走行)中の機体1が一時停止する。しかしながら、検知された物体が自動走行に支障がないと判定される場合(具体的には、例えばソナーセンサ60とは異なる他のセンサにより、当該物体のサイズが所定の大きさ以下であることを示す検知結果が取得された場合や、人(例えば作業者)の目視により、当該物体が無視できる大きさの障害物であると判明した場合等のように、検知された物体のサイズに基づいて、自動走行に支障がないと判定される場合)は、上述した中止指示無効処理によって、自動走行を継続するように構成することが可能である。また、その際、検知された物体の近傍では、機体1の走行速度を通常の走行速度(物体が検知されていない場合における走行速度)よりも遅い所定の走行速度にし、当該物体の傍を通過するようにしても良い。これらの操作はリモコン90や、情報端末5等で行えるようにしても良いし、自動制御プログラムで自動的に行われるようにしても良い。
【0165】
上記実施形態では、走行制御部312は、作業地を複数の往復走行経路に沿って走行させ、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合に、往復走行経路における終了位置または、次の開始位置まで走行させるとして説明したが、走行制御部312は、作業地を複数の往復走行経路に沿って走行させ、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合に、往復走行経路における終了位置や次の開始位置とは異なる場所まで走行させるように構成することも可能である。
【0166】
上記実施形態では、無効指示部53による無効指示を取り消す取り消し部54を更に備えるとして説明したが取り消し部54を備えないように構成することも可能である。
【0167】
上記実施形態では、走行中止指示部52は、作業に用いる作業資材の残量が所定量以下になった場合に、中止指示を行うとして説明したが、走行中止指示部52は作業資材の残量が所定量以下になった場合であっても、中止指示を行わないように構成することも可能である。
【0168】
上記実施形態では、往復走行経路において作業資材を補給する補給位置を設定する資材補給位置設定部55を備え、走行制御部312は、無効指示部53により中止指示が無効にされた場合に、次の補給位置まで走行させるとして説明したが、資材補給位置設定部55を備えずに構成することも可能であるし、走行制御部312は、中止指示が無効にされた場合であっても、次の補給位置まで走行させないように構成することも可能である。
【0169】
上記実施形態では、往復走行経路の走行中に作業資材の残量が所定量以下になった場合に、作業資材を補給するか否かの指示を受け付ける補給指示受付部56を備え、走行制御部312は、作業資材を補給する指示を受け付けていない場合に、往復走行経路における予め設定された地点に達した場合に停止させるとして説明したが、補給指示受付部56を備えずに構成することも可能であるし、走行制御部312は、作業資材を補給する指示を受け付けていない場合に、往復走行経路における予め設定された地点に達した場合に停止させないように構成することも可能である。
【0170】
上記実施形態では、作業資材の残量が所定量以下である場合に、作業資材の残量が少なくなっていることを報知する報知部57を備えるとして説明したが、報知部57を備えずに構成することも可能である。
【0171】
上記実施形態では、作業機が行う作業が苗の植え付け作業であるとして説明したが、作業機は他の作業を行うものであっても良い。また、作業資材は、苗、肥料、及び薬剤のうち少なくとも何れか一方であるとして説明したが、これら以外の作業資材であっても良い。
【0172】
〔越境判定処理〕
田植機における越境判定処理について説明する。
図14は、越境判定処理における機能部を示すブロック図である。
図14に示されるように、本実施形態における越境判定処理では、制御ユニット30と情報端末5との間で互いに情報やデータの送受信が行われる。本実施形態では、制御ユニット30に、機体位置算出部311、越境判定部64、越境防止制御部65、越境許可部66、再開指示部67、一時停止指示部68が備えられる。各機能部は、越境判定に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で構築されている。
【0173】
機体位置算出部311は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。衛星測位には測位ユニット8が利用され、測位ユニット8から機体位置算出部311に、例えば緯度情報、経度情報、及び高度情報からなるGPS情報が伝達される。なお、本実施形態では高度情報は、ジオイド高と標高とが合算された機体1の高さ(測位ユニット8の高さ)が相当する。機体位置とは、実空間における機体1の位置であって、緯度情報、経度情報、及び高度情報により示される。機体位置算出部311は、このようなGPS情報に基づき、実空間における機体1の位置を算出する。
【0174】
田植機は、境界付けられた作業地を走行する。そこで、越境判定部64が、境界との接触を避けるために設定された境界線と機体位置とに基づいて、機体1が境界線を越えているか否かを判定する。境界とは、
図15に示されるような例えば圃場を区画するために設けられる、圃場に隣接する畦や道(以下「畦等」とする)が相当する。境界線は、田植機がこのような境界物に接触することを防止するために、
図15に示されるように、圃場の外縁部(圃場輪郭線)に沿って設けられる。田植機にあっては、このような境界線は作業走行に利用するマップにおいて設けると好適である。このようなマップは、作業地の形状を示すマップ情報として上述したマップ情報記憶部552に記憶され、マップ情報はマップ情報取得部51によりマップ情報記憶部552から取得される。境界線はこのようなマップ情報に予め規定しておいても良いし、圃場を周回走行して圃場形状を示す圃場形状情報を取得した際に算出して設定しても良い。機体位置は、上述した機体位置算出部311から伝達される。したがって、越境判定部64は、田植機が畦等に接触することを防止するために、田植機が作業走行に利用するマップにおいて仮想的に設けられる境界線と機体位置算出部311から伝達された機体位置とに基づいて、機体1が境界線を越えているか否かを判定する。
【0175】
越境防止制御部65は、機体1が境界線を越えていると判定された場合に、機体1の走行を禁止する。「機体1が境界線を越えていると判定された場合」とは、上述した越境判定部64により田植機の機体1が境界線を越えていると判定された場合である。このため、越境判定部64の判定結果が越境防止制御部65に伝達されるように構成すると好適である。ここで、田植機は、走行制御部312により、マップ情報と機体位置とに基づいて作業地において作業を行いながら自動走行が行われる。したがって、越境防止制御部65は、越境判定部64により田植機の機体1が境界線を越えていると判定された場合に、走行制御部312に対して自動走行を禁止させ、更に自動走行だけでなく、手動走行も禁止させる。これにより、田植機は、マップ情報において境界線が設定された位置に対応する圃場における位置で停止する。
【0176】
越境許可部66は、越境許可指令により越境判定部64による判定を中断させ、機体1が境界線を越えた状態を許可する。越境判定部64は継続して機体1が境界線を越えているか否かを判定する。越境許可指令とは、境界線を越えることを許可する指令である。このような越境許可指令は、例えばユーザによるリモコン操作により境界線を越えて走行を行う指示が相当する。このような指示を取得した場合、越境許可部66は、ユーザにより機体1が境界線を越えた状態を許可された越境許可指令があったとして、越境判定部64による判定を中断させる。これにより、例えばリモコン操作により田植機が境界線を越えて圃場の外縁部側に走行することができ、例えば植え付け作業に用いる苗や肥料や薬剤の補給を行うことが可能となる。
【0177】
再開指示部67は、越境許可部66により許可された場合において、機体1における予め設定された設定部位が境界線よりも作業地の中央側に進入した場合に、越境判定部64による判定を再開させ、越境許可部66による許可を停止させる。「越境許可部66により許可された場合」とは、越境許可指令を受けた越境許可部66により機体1が境界線を越えた状態を許可された場合である。機体1における予め設定された設定部位とは、例えば機体1の中央部とすることも可能であるし、例えば前進走行時には機体1の前端部と中央部との間における所定の部位とすることも可能であるし、例えば後進走行時には機体1の後端部と中央部との間における所定の部位とすることも可能である。
【0178】
再開指示部67は、越境許可指令を受けた越境許可部66により機体1が境界線を越えた状態を許可された場合において、機体1の所定に部位に設定された設定部位が境界線よりも中央側に進入した場合に、越境判定部64に対して中断していた判定を再開させ、越境許可部66に対して機体1が境界線を越えた状態の許可を停止させる。これにより、越境判定部64による越境判定が再開される。
【0179】
また、上述した設定部位は、作業地において行われる作業の熟練度に応じて変更可能とすると好適である。作業地において行われる作業の熟練度とは、田植機が圃場において行う苗の植付作業の熟練度である。具体的には、苗の植付作業に慣れているか否かの度合いである。例えば、設定部位は、苗の植付作業に慣れているユーザ(ベテランである作業者)の場合よりも、苗の植付作業に慣れていないユーザ(初心者である作業者)の場合の方が、前進走行時には機体1の前端部と中央部との間における前端部に近い側に設定すると良く、例えば後進走行時には機体1の後端部と中央部との間における後端部に近い側に設定すると良い。これにより、慣れたユーザ程、畦等に近づけることができ、慣れていないユーザ程、畦等への接近を抑制することが可能となる。
【0180】
また、設定部位は、作業地における外周部分を走行する場合よりも、作業地における外周部分よりも中央側を走行する場合の方が機体1の内側に設定されると好適である。これにより、作業地の中央側を走行する際には外周部分を走行する場合に比べて判定条件を緩くすることができ、円滑に作業を進めることが可能となる。
【0181】
また、設定部位は、機体1の前進時は機体1の前後方向中央部よりも前方側に設けられ、機体1の後進時は機体1の前後方向中央部よりも後方側に設けると好適である。このように設定部位を設定することで、走行状態に応じて設定部位を設定できるので、利便性を向上することが可能となる。
【0182】
例えば、設定部位は、植付作業に用いる予備苗を載置する予備苗台の先端部、機体1における前側部に設けられるボンネットの先端部、苗を植え付ける植付部における機体1の幅方向両端部、衛星測位に用いられるGPSアンテナの搭載部、及び機体1の重心部のうち、少なくともいずれか一つに設定することが可能である。これにより、容易に設定部位を設定することが可能となる。
【0183】
一時停止指示部68は、越境許可部66により許可されている場合であっても、機体1が境界線よりも予め設定された量を超えたときには、機体1の走行を一時停止させる。これにより、田植機が畦等に接触することを防止することが可能となる。
【0184】
次に、
図16を用いて説明する。
図16の(a)に示されるように、内部領域IAにおいて設定された内部往復経路IPLに沿って作業走行を行い、内部領域IAと外周領域OAとの境界部分に達すると、自動運転を一時停止する。この状態で、所定時間が経過すると、田植機は外周領域OAにおいて旋回走行を行い、次の内部往復経路IPLに沿って作業走行を行う。
【0185】
内部領域IAと外周領域OAとの境界部分に達してから所定時間以内に、手動操作により前進させ、越境判定部64により機体1が境界線を越えると判定される、すなわち
図16の(b)において黒丸で示される設定部位の位置が境界線を超えると判定されると、越境防止制御部65により機体1の走行が禁止される。これにより、
図16の(b)に示されるように、田植機は一時停止する。
【0186】
この状態で、越境許可指令があると、越境許可部66は機体1が境界線を越えた状態を許可する。この場合、許可された状態は、機体1が境界線よりも予め設定された量を超えるまで継続される。したがって、この間は、田植機は前後進が可能となる。なお、機体1における変更後の設定部位が設定される位置は、
図16の(c)において白丸で示される。
【0187】
機体1の境界線を越えた状態が許可された状態において、機体1において予め設定された設定部位(白丸で示される位置に設けられた設定部位の全て)が、
図16の(d)に示されるように、内部領域IA側に進入すると、再開指示部67により越境判定部64が越境に係る判定を再開させられる。
【0188】
越境判定部64が越境に係る判定を再開すると、
図16の(e)に示されるように、機体1が境界線を越えているか否かの判定に用いる部位は、
図16の(d)に示される機体1において予め設定された設定部位が、元の部位(黒丸で示される部位)に戻される。
【0189】
上記実施形態では、越境許可部66により許可されている場合であっても、機体1が境界線よりも予め設定された量を超えたときには、機体1の走行を一時停止させる一時停止指示部68を備えるとして説明したが、一時停止指示部68を備えずに構成することも可能である。
【0190】
上記実施形態では、設定部位は、作業地において行われる作業の熟練度に応じて変更可能であるとして説明したが、設定部位は作業の熟練度に応じて変更できないように構成することも可能である。
【0191】
上記実施形態では、設定部位は、機体1の前進時は機体1の前後方向中央部よりも前方側に設けられ、機体1の後進時は機体1の前後方向中央部よりも後方側に設けられるとして説明したが、設定部位は機体1の前進時及び後進時において変更しないように構成することも可能である。また、機体1の前進時は機体1の前後方向中央部よりも後方側に設け、機体1の後進時は機体1の前後方向中央部よりも前方側に設けることも可能である。
【0192】
上記実施形態では、設定部位は、植付作業に用いる予備苗を載置する予備苗台の先端部、機体1における前側部に設けられるボンネットの先端部、苗を植え付ける植付部における機体1の幅方向両端部、衛星測位に用いられるGPSアンテナの搭載部、及び機体1の重心部のうち、少なくともいずれか一つであるとして説明したが、設定部位はこれら以外の部位に設けることも可能である。
【0193】
上記実施形態では、設定部位は、作業地における外周部分(外周領域OA)を走行する場合よりも、作業地における外周部分よりも中央側を走行する場合の方が機体1の内側に設定されるとして説明したが、設定部位は、作業地における外周部分を走行する場合と、作業地における外周部分よりも中央側を走行する場とで同じ位置に設定することも可能であるし、設定部位は、作業地における外周部分を走行する場合よりも、作業地における外周部分よりも中央側を走行する場合の方が機体1の外側に設定することも可能である。
【0194】
次に、自動走行の中断と自動走行の再開に関する実施例を、
図17と
図18とを用いて説明する。
図17に示された機能ブロック図では、情報端末5に、走行経路格納部526と、走行経路設定部527と、走行経路探索部528とが新たに備えられている。
図18に示された走行経路は、内部往復経路IPLと内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとから構成されている。この変形例では、内部往復経路IPLは、複数の互いに平行な直線状経路(走行経路要素である)からなり、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとは、圃場の上辺、左右辺と平行な直線状経路(走行経路要素である)と、圃場の下辺に沿った湾曲状経路とからなる。なお、この湾曲状経路は、経路生成処理においては、ノードLNによって接続された複数の直線部分LEとして管理されている。したがって、この変形例では、1本の湾曲状経路は、1本の走行経路要素としても取り扱うことができ、かつ、1本の湾曲状経路を構成する複数の直線部分LEのそれぞれも走行経路要素として取り扱うことができる。つまり、湾曲状経路以外の走行経路要素は、苗植付装置3の上げ下げのタイミングで設定される走行区間であるが、上記のような1本の湾曲状経路を構成する各直線部分LE(走行経路要素)は、経路生成アルゴリズムで区分けされた走行区間と見なされる。したがって、湾曲状経路は、全体として1本の走行経路要素として取り扱われるが、場合によっては、複数の連続した走行経路要素の集合としても取り扱われる。
【0195】
走行経路格納部526は、作業地の形状に合わせて、往復経路作成部522や周回経路作成部524によって生成された走行経路である走行経路要素群を格納する。走行経路設定部527は、走行経路格納部526から順次読み出された走行経路要素を自動走行の目標となる目標走行経路として設定する。設定された目標走行経路は走行制御部312に与えられる。走行制御部312は、機体位置算出部311によって算出された機体位置と目標走行経路(走行経路要素)とに基づいて機体1を操舵する自動走行モードと、運転者の手動操作に基づいて車体を操舵する手動走行モードとを有する。走行経路探索部528は、自動走行モードの停止後、再び自動走行を開始するために自動走行モードが再開された際に、自動走行の開始のために必要となる目標走行経路に用いられる走行経路要素を探索して走行経路設定部527に与える。なお、自動走行モードの停止には、一時的に自動走行モードが退避し、所定の時間の経過や所定の手動走行モードでの走行の後に自動走行モードが再開される「一時停止」、及び、自動走行モードの再開には、初期処理を含む開始手順が要求される「完全停止」が含まれる。「完全停止」は、エンジン停止やメインキーのOFFなどの、実質的に制御系がシャットダウンされるイベント発生時に生じる。「一時停止」であっても「完全停止」であっても、自動走行モードが再開時には、走行経路設定部によって、適切な目標走行経路が設定されなければならない。
【0196】
走行途中での自動走行モードから手動走行モードへの移行は、通常、作業者による走行モード切替操作などによって行われる。しかしながら、作業車の制御系が自動走行モードのための必要条件が欠如したと判定した場合には、自動的に自動走行モードの停止及び停車、その後の手動走行モードへの移行が発生する。自動走行モードでの走行の途中で、何らかの自動解除イベントが発生すると、自動走行モードの停止、さらには手動走行モードへの移行が行われる。その後に、自動走行モードを再開させるための自動再開イベント(自動走行開始のための操作)の発生に応答して、走行経路探索部528が、自動走行モードの再開時に必要な目標走行経路を探索する。走行経路探索部528による目標走行経路の探索は、作業者による手動操作によって行うことも、自動的に行うことも可能である。
【0197】
自動解除イベントには、エンジン2の緊急停止やエンジン2の一時停止も含まれており、自動走行モードの停止が付随する。自動再開イベントには、車両メインスイッチON、エンジン一時停止からの復帰、自動走行開始ボタンON、などが含まれる。走行経路探索部528による目標走行経路の探索処理は、タッチパネル50に表示される探索開始ボタンをクリックすることでも開始可能である。
【0198】
走行経路要素群を構成する各走行経路要素は、カーナビなどの道路情報で用いられているように、地図座標や圃場座標で表された各走行経路要素の位置である位置情報を属性値として、走行経路格納部526に格納されている。これにより、走行経路探索部528は、所望の自動走行モード再開位置と位置情報とに基づいて目標走行経路を探索することができる。所望の自動走行モード再開位置が現在の機体位置である場合、現在の機体位置に近い位置である走行経路要素を抽出して、抽出された走行経路要素を目標走行経路として出力すれば、現在の機体位置から自動走行モードが再開可能である。自動走行モードが停止された位置(自動解除イベント発生位置)で、自動走行モードを再開させる場合には、機体1を自動解除イベント発生位置まで運転して、自動再開イベントを発生させるとよい。また、自動走行モードが停止された位置から遠く離れた所望位置で、自動走行モードを再開させる場合には、機体1を所望位置まで運転して、自動再開イベントを発生させるとよい。
【0199】
また、現在の機体1が、自動走行モードが停止された位置から遠く離れている場合には、現在の機体位置から自動走行モードが停止された位置に設定されていた走行経路要素までの、案内走行経路を設定するアルゴリズムが利用される。
【0200】
さらに、この実施形態では、作業走行に用いられた各走行経路要素は、作業走行有りまたは作業走行無しを属性値として走行経路格納部526に格納されている。これにより、走行経路探索部528は、目標走行経路の候補として、まだ作業走行に用いられていない走行経路要素だけを、目標走行経路として探索することができる。
【0201】
走行経路探索部528による目標走行経路の探索が、作業者による手動操作によって行われる場合、走行経路要素群に対応する表示要素を表示する表示部が利用される。この実施形態では、表示部として、情報端末5のタッチパネル50が用いられる。走行経路探索部528は、タッチパネル50に、
図18に例示されているような、走行経路要素群を模式化した表示要素群を、圃場地図に重ねて表示する。作業者は、表示された表示要素群から所望の表示要素を選択する。走行経路探索部528は、選択された表示要素に対応する走行経路要素を走行経路格納部526から読み出し、走行経路設定部527に与える。走行経路設定部527は、与えられた走行経路要素を目標走行経路として設定する。
【0202】
表示要素群が多数であり、タッチパネル50の小さな画面で所望の表示要素をクリックして選択するのが困難な場合には、
図19で示すような、ライン送り機能を用いることができる。このライン送りでは、注目表示要素は、輝度変更や色彩変更によって他の表示要素と識別可能に表示される(
図19では太線で示されている)。情報端末5のメニュからライン探索を選択すると、走行経路要素群に対応する表示要素群がタッチパネル50に表示されるとともに、情報端末5のソフトウエアボタン群50aに、進行ボタン(+ボタン)と後退ボタン(-ボタン)が表示される。この進行ボタン(+ボタン)または後退ボタン(-ボタン)をクリックすることにより、注目表示要素が順次進むか、または後退する。作業者は、所望の表示要素が注目表示要素となった際に、決定ボタンを押す。これにより、走行経路探索部528は、当該表示要素に対応する走行経路要素を走行経路格納部526から読み出し、走行経路設定部527に与える。つまり、苗植付装置3の上げ下げのタイミングで設定された走行区間を単位として、ライン送り機能が可能である。通常のライン送り機能では、
図18における湾曲状経路は、複数の連続した走行経路要素の集合として、1本のラインとして取り扱われるので、湾曲状経路に対応する表示要素が注目表示要素となった際に、進行ボタンを押すと、注目表示要素は湾曲状経路の次の走行経路要素に対応する表示要素に進む。
【0203】
ただし、湾曲状経路に対応する表示要素が注目表示要素となった際に、別に設定されたボタンを操作することで、この湾曲状経路を構成する複数の連続した走行経路要素(直線部分LE)の順送りが可能となり、湾曲状経路の任意の直線部分LEに対応する表示要素の選択が可能となる。この構成により、
図18に示したような湾曲状経路における所望の位置の直線部分LEを選択することも可能である。さらに、長い湾曲状経路の場合、直線部分LEの数が多数となり、その取り扱いが煩わしくなるので、当該湾曲状経路を構成する多数の直線部分LEの一部をライン集合体としてライン送りの一単位として取り扱うことも可能である。
【0204】
次に、走行している直進経路から直進経路へ移行するための旋回走行の変形例を、
図17と
図20と
図21と
図22とを用いて説明する。この特殊な旋回走行のために、
図17で示すように、情報端末5に補完経路設定部529が構築されている。補完経路設定部529と直接データ交換を行う機能部は、走行経路格納部526と走行経路設定部527とである。
【0205】
ここでは、走行経路格納部526は、外周領域OAを走行するために作成された少なくとも1本以上の周回経路と、外周領域の内側に位置する内部領域IAを走行するために作成された複数の内部往復経路IPLとを格納する。内部往復経路IPLは、その1本を特に限定する場合には、直進経路と称せられる。周回経路は、一回り経路と二回り経路とのいずれかが選択可能であり、二回り経路は内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとからなる。一回り経路は、外側周回経路ORLである。
【0206】
走行経路設定部527は、走行経路格納部526から読み出した周回経路と直進経路を自動走行の目標となる目標走行経路として設定する。この変形例では、走行制御部312は、互いに平行に延びている内部往復経路IPLの直進経路同士を繋ぐ旋回経路に基づいて機体を非作業で走行させる旋回走行モードを有する。補完経路設定部529は、以下に説明するように、旋回経路を補完する補完経路を設定する。
【0207】
図20で示すように、圃場が長方形の場合、内部往復経路IPLの走行中の直進経路の終点と次に走行すべき直進経路の始点とが横方向でほぼ揃っているので、それらを繋ぐ旋回走行は、半円状もしくは半楕円状の旋回経路TPに沿った走行となる。なお、
図20と
図21と
図22とでは、直進経路の終点には「e」が、直進経路の始点には「s」が付与されている。この直進経路の終点と直進経路の始点との間隔が短い場合に用いられる旋回経路TPは、単純な180度旋回走行を行う経路である。直進経路の終点と直進経路の始点との間隔が長い場合に用いられる旋回経路TPは、2回の90度旋回走行とその間の直進走行とを行う経路である。
【0208】
しかしながら、
図21で示すように、圃場形状が長方形以外の形状では、周回経路に近い走行中の直進経路(内部往復経路IPL)の終点と次に走行すべき直進経路(内部往復経路IPL)の始点とが、斜めに大きく離れてしまうことがある。そのような場合、旋回経路が、単純な半円状の旋回経路もしくは半楕円状の旋回経路とはならない。このため、
図21で示すように、走行中の直進経路の終点からすぐに単純な180度旋回走行を行い、次に走行すべき直進経路に移行し、その位置から、非作業での後進によって次に走行すべき直進経路の始点に移動する。後進によって達した直進経路の始点からは、通常の前進での作業走行が行われる。この走行形態は、走行中の直進経路の終点と次に走行すべき直進経路の始点とがあまり離れていない場合には有効である。走行中の直進経路の終点と次に走行すべき直進経路の始点とが大きく離れている場合、後進距離が大きくなる。このような後進での走行は、未作業領域を荒らすことがあり、続いて行われる苗植付作業に悪影響を与える可能性がある。この問題を回避するための走行形態の一例が、
図22に示されている。この走行形態の基本的な特徴は、単純な半円状の旋回経路もしくは半楕円状の旋回経路で繋ぐことができない直進経路の終点と直進経路の始点とを、補完経路CLで補完された単純な旋回経路によって繋ぐことである。この補完経路CLは、補完経路設定部529によって設定される。
【0209】
図22では、L1で示された直進経路(走行中経路)の終点からL2で示された直進経路(次走行経路)の始点までの旋回走行において、補完経路CLが用いられている。なお、以下、L1が付与された直進経路は第1直進経路と称し、L2が付与された直進経路は第2直進経路と称する。第1直進経路の延長線は、内側周回経路IRLと交点CLSで交わる。さらに、第1直進経路と交点CLSで交わる内側周回経路IRLにおける、第2直進経路の始点に近接する点を近傍点CLEとする。補完経路設定部529は、第1直進経路の延長線区間及び、内側周回経路IRLの交点CLSと近傍点CLEとの間の区間を、補完経路CLとする。これにより、第1直進経路の終点から第2直進経路の始点は、補完経路CLと、近傍点CLEから第2直進経路の始点への旋回経路とによって繋ぐことができる。補完経路CLは、予め生成されている内部往復経路IPLを流用するので、新たな経路生成は不要である。なお、近傍点CLEから第2直進経路の始点への旋回経路は、近傍点CLEと第2直進経路との間隔が短いので、
図11で示したような後進を用いた切り返し旋回経路が用いられる。
【0210】
図22に示されているような、切り返し旋回経路を避けるために、補完経路CLとして最外周の外側周回経路ORLの直線部分を用いることができる。この場合、外側周回経路ORLに設定される近傍点CLEと第2直進経路の始点まで間隔が長くなるので、その間を繋ぐ走行経路として、切り返し旋回経路ではなく、
図10において点線で示したような180度旋回経路が用いられる。その間隔がさらに長ければ、
図10において点線で示したような2回90度旋回経路とその間の直進走行を用いた旋回経路(半楕円状旋回経路の一種)が用いられる。
【0211】
図22の例では、補完経路設定部529は、既に生成されて走行経路格納部526に格納されている周回経路を補完経路CLとして流用している。これに代えて、補完経路設定部529は、既に生成されている周回経路に平行な経路を補完経路CLとしてもよい。経路の平行移動は、新たに補完経路CLを生成することに比べて演算負荷が低くいという利点がある。
【0212】
さらに別な走行形態として、補完経路設定部529は、内部往復経路IPLに平行な経路を補完経路CLとして設定することも可能である。例えば、
図22の例では、第2直線経路を第1直線経路に重なる位置まで平行移動して、補完経路CLとして利用することができる。あるいは、第1直線経路をそのまま、第2直線経路の始点に最接近する位置まで延長し、その延長線を補完経路CLとして利用することができる。
【0213】
補完経路設定部529には、補完経路CLの設定に関する、以下のような条件を登録することができる。
(1)自動走行モードでの内部往復経路IPLの走行では、走行中の内部往復経路IPLの終点と、次に走行すべき内部往復経路IPLの始点とが、旋回走行モードでの走行によって繋がれる。その際、補完経路設定部529は、走行中の内部往復経路IPLの終点から、次に走行すべき内部往復経路IPLの始点までの距離が所定値以上であるという条件が満たされた場合に、補完経路CLを設定する。
【0214】
(2)設定可能な補完経路CLが複数算出される場合には、補完経路設定部529は、補完経路CLを含めた旋回走行経路の長さが最も短いものを選択する。
【0215】
(3)補完経路設定部529は、内部領域IAに進入しない補完経路CL、または内部領域IAでの走行距離が短い補完経路CLを優先的に設定する。
【0216】
(4)補完経路設定部529は、機体1が補完経路CLを走行する際の走行方向に一致する走行方向を有する走行経路を補完経路CLとして優先的に設定する。このため、周回経路及び内部往復経路IPLは、走行方向を属性値の1つとして、走行経路格納部526に格納される。
【0217】
上述した実施形態の説明では、リモコン90は、自動走行の開始操作や中止操作、資材補給時のチョイ寄せなどに用いられていたが、操舵難度が高く、自動走行が困難な領域の手動操縦にも適している。特に、傾斜地など、機体1が危険に晒される領域では、機体1に運転者が乗り込まないので、リモコン90を用いた遠隔操縦は有利である。
【0218】
図23には、そのような操舵難度が高い特殊領域SAとして、出入口E付近の領域が示されている。特殊領域SAでの作業走行がリモコン90によって手動操縦される際に機能する制御系の機能ブロック図が
図24に示されている。この機能ブロック図では、情報端末5に、新たに作業管理部530が備えられている。作業管理部530は、農場を、外周領域OAと、外周領域OAの内側に位置する内部領域IAと、操舵難度が高い特殊領域SAとに区分けする。走行経路設定部527は、外周領域OAを走行するための内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとからなる周回経路、及び内部領域IAを走行するための内部往復経路IPLを、自動走行の目標となる目標走行経路として設定する。走行制御部312は、機体位置算出部311によって算出された機体位置と目標走行経路とに基づいて機体を操舵する自動走行モードと、機体1に乗り込んだ作業者による手動操作に基づいて機体1を走行させる手動走行モードと、車外の作業者によるリモコン90を用いた遠隔操作に基づいて機体1を走行させるリモコン走行モードとを有する。
【0219】
特殊領域SAでの走行モードとして、デフォルトでリモコン走行モードを割り当てことが可能であり、その場合、機体1が特殊領域SAに入る直前に、走行モードはリモコン走行モードに切り替えられる。これにより、自動走行が困難となる特殊領域では、作業者によるリモコン90を用いた遠隔操作で、作業走行が行われる。特殊領域での自動走行が禁止されるので、作業機が特殊領域に進入する直前に機体1が強制停止され、リモコン90を用いた手動走行が必要であることが報知される。
【0220】
特殊領域SAとして設定された出入口E付近の苗植付作業は、圃場全体の作業の最終段階となり、その作業領域の形状が複雑(変形多角形形状)であり、狭い作業幅と広い作業幅が混在する。さらに、苗植付作業では、作業車の正確な位置決めが必要であるとともに、既に苗植付けが完了した領域に重ねて苗植付けを行うことは避けなければならない。このことから、部分的な作業行程において、作業幅は頻繁に変更する必要がある。苗植付作業における作業幅の変更は、苗植付装置3における苗植付条数の変更によって可能となる。その変更な、リモコン90を用いて遠隔操作で行う必要がある。
【0221】
このことから、特殊領域SAにおける遠隔操縦には、上述したようなリモコン90の機能だけでなく、さらに特別な機能を付加した機能拡張仕様のリモコン90が用いられる。このリモコン90には、
図24に示すように、走行機器操作部91と作業機器操作部92とが備えられている。走行機器操作部91は、機体1の走行開始や走行停止、車速、機体1の操向(操舵)を遠隔操作するために設けられており、作業者の操作に応じた走行制御信号を走行制御部312に無線で送信する。作業機器操作部92は、苗植付装置3などの作業装置の動作を遠隔操作するために設けられており、作業者の操作に応じた作業制御信号を作業制御部313に無線で送信する。
【0222】
作業機器操作部92は、苗植付装置3の昇降、植付機構22のON・OFFなどを指令することができる。さらに、この作業機器操作部92には有効条指定部921が設けられている。有効条指定部921は、苗植付装置3の作業幅、つまり苗植付条数を指定することができる。
図25に示すように、エンジン2からの動力は、各条クラッチECを介して各植付機構22に分配される。各条クラッチECは、苗植付装置3による作業開始及び作業停止を所定条数毎に選択可能に構成されている。この例では、各条クラッチECは、苗植付装置3による作業開始及び作業停止を2条毎に選択可能に構成されているが、各条クラッチECは、1条毎、又は3条以上毎に選択可能に構成されてもよい。作業者が、リモコン90の有効条指定部921を操作することで、所望の苗植付条数を指定し、作業制御部313に送信する。作業制御部313は指定された苗植付条数に基づいて、各条クラッチECをON・OFF制御し、所望の苗植付条数、つまり所望の作業幅を作り出す。
【0223】
農場の畦などの境界線が直線ではなく凹凸形状である場合、あるいは、境界線が鋭角で交わっている場合、その領域近傍の作業走行における操舵は、出入口Eの近傍領域と同様に、複雑となり、自動走行には適さないので、リモコン90を用いた手動操縦が有効となる。そのような領域は、圃場毎に異なるので、それを特殊領域SAとするためには、圃場毎に設定する必要がある。このため、情報端末5に構築された作業管理部530が、表示部の一例であるタッチパネル50に表示された圃場の地図を用いて、作業者が、圃場の任意の領域を特殊領域SAとして設定することができる。
【0224】
本発明のリモコン走行モードは、以下に述べるような種々の制御条件で実施可能である。
(1)特殊領域SAにおける苗植付作業などの対地作業がリモコン走行モードでのみ可能とする。特殊領域SAにおける対地作業を伴わない走行は、リモコン走行モード以外でも可能である。
(2)予め設定されたシーケンシャルな動作、走行開始、各条クラッチECをON・OFF、所定距離の苗植付作業、走行停止などを、1単位の作業走行動作としてプログラム化し、この1単位の動作を1単位のリモコン動作で実行される。1単位のリモコン動作は、リモコン90の特定ボタンの組み合わせ操作や特別に設けられたプログラムボタンの操作などである。
(3)特殊領域SAに機体1に入っている場合、特別な操作を行わない限り、リモコン走行モードが維持される。
(4)機体1に作業者が搭乗しており、この作業者によって手動運転が行われている際に、機体1が特殊領域SAに達しても、リモコン走行モードには移行せずに、搭乗者による手動走行である搭乗手動走行モードが続行される。機体1が特殊領域SAに達した時に、一端停車して、リモコン走行モードと搭乗手動走行モードのいずれかを選択できる制御を実行してもよい。
【0225】
次に旋回走行に用いられる操舵制御を説明する。操舵機構の動作により、前輪12Aの操舵角が調節される。従来、田植機の旋回に関して、
図11において実線で示された旋回走行(90度旋回+直進+90度旋回)や
図11において点線で示された旋回走行(90度旋回)では、旋回開始時に操舵角は最大切れ角まで回し、その後、操舵角をニュートラルに戻すことで、90度旋回が行われていた。最大切れ角での旋回は、旋回性能が向上するが、圃場を荒らす問題と、旋回精度が悪くなる問題がある。このことから、この実施形態では、旋回開始時に最大切れ角が用いられず、旋回走行の旋回度(
図11では90度)に応じた、最大切れ角より小さな旋回開始時切れ角が用いられる。旋回開始時切れ角は、旋回度をパラメータとして算出してもよいが、車速もパラメータとすればさらによい。また、目標旋回経路を設定しておき、機体位置算出部311によって算出される機体位置に基づいて目標旋回経路からのずれ量を算出し、このずれ量に基づいて操舵角を微調整してもよい。
【0226】
操舵角の算出には、搭載されている操舵機構の左右最大切れ角及び切れ角の中央値が参照値として用いられる。但し、各田植機に搭載されている操舵機構は、それぞれ異なる個性を有するため、この左右最大切れ角及び切れ角の中央値は各田植機によって異なる可能性がある。したがって、共通の目標操舵角を用いて操舵制御を行うと、適切な操舵角が現出されない可能性がある。このため、この実施形態では、操舵機構の左右最大切れ角及び切れ角の中央値が予め測定され、その値が記憶されている。実際の操舵制御時には、記憶された左右最大切れ角及び切れ角の中央値を参照して、操舵角制御信号が生成される。
【0227】
〔長距離走行時増幅機能〕
次に、自動走行による非作業走行における長距離走行時増幅機能について、
図1~
図5,
図26~
図31を用いて説明する。
【0228】
自動走行において、機体1は、走行しながら苗の植え付け等の作業が行われる作業走行の走行経路となる作業走行経路WLと、作業が行われない非作業走行の走行経路となる非作業走行経路NWLとを走行する。作業走行経路WLでは、あらかじめ設定された車速V0で走行が行われる。車速V0は、適切に作業を行うために、比較的低い車速に抑えられる。非作業走行経路NWLでは、あらかじめ設定された、車速V0よりさらに遅い車速V1で走行が行われる。
【0229】
非作業走行に続いて作業走行が行われる場合において、非作業走行の走行距離が長い場合がある。例えば、
図26に示すように、非作業走行経路NWLの前進走行により作業走行経路WLの作業走行の開始位置である植付開始点WSPまで走行し、作業走行経路WLの植付開始点WSPから苗の植え付け作業走行を行う場合、非作業走行経路NWLにおける直進走行の走行距離が長くなる場合がある。また、
図27に示すように、作業走行経路WLの植付開始点WSPまで非作業走行経路NWLを後進で非作業走行し、作業走行経路WLの植付開始点WSPから前進して苗の植え付け作業走行を行う場合、後進の直進走行の走行距離が長くなる場合がある。
【0230】
このような場合、自動走行では、非作業走行は比較的低速な車速V1で行われ、非作業走行が行われる時間が長くなる。そのため、
図28,
図29に示すように、前進または後進による非作業走行において、直進走行する距離が所定の距離TS1(「第1距離」に相当)以上である場合、または、直進走行する時間が所定の時間以上である場合、走行車速を設定された車速V1等の直前の車速(「第1車速」に相当)より速い車速V2(「第2車速」に相当)に増速する処理を行っても良い。
【0231】
非作業走行においては作業を行わず、適切に作業を行うために車速を抑制する必要がない。また、低速での非作業走行を行う距離または時間が長くなると、作業効率が悪くなる。長距離走行時増幅機能を実施することにより、低速(車速V1)での非作業走行を行う距離または時間が長くなる状況において、車速を増速(車速V2)することにより、非作業走行中の走行車速を最適化することができ、作業効率を向上させることができる。
【0232】
長距離走行時増幅機能に係る走行は、
図30に例示する、制御ユニット30により制御される。制御ユニット30は、走行制御部312と自動走行制御部75とを備える。走行制御部312は、自動走行制御部75の制御、または、主変速レバー7A等の操作具1Bの操作に応じて走行機器1D(「走行装置」に相当)を制御して機体1を走行させる。自動走行制御部75は、自動走行中に、衛星測位モジュール8A(「衛星測位部」に相当)が出力する測位データに基づいて求められる自車位置に応じて、所定の走行経路を走行するように走行制御部312を制御しながら、苗植付装置3等の作業装置1Cを制御する。
【0233】
走行制御部312は、非作業走行で直進走行する距離が所定の距離TS1以上となると、自動走行における走行車速を、あらかじめ設定された車速V1より速い車速V2に増速する。非作業走行中に直進走行する距離は、走行機器1Dや測位ユニット8等を用いて計測する。走行機器1Dを用いて直進走行する距離を計測する場合、車輪12の車軸やエンジン2から車輪12に駆動力を伝達する駆動軸の回転数を測定する回転数センサ12Cを設け、車軸や駆動軸の回転数から走行距離が算出される。また、測位ユニット8を用いて直進走行する距離を計測する場合、走行制御部312は、測位ユニット8の慣性計測モジュール8B(「車体方位計測部」に相当)により非作業走行中の車体の方位の変化を計測し、所定の時間または距離だけ走行する間の車体の方位の変化量が所定の範囲内である場合、機体1が直進走行していると判定する。同時に、走行制御部312は、測位ユニット8の衛星測位モジュール8Aが出力する自車位置の変化量から走行距離を算出する。そして、走行制御部312は、非作業走行中に直進走行する距離が所定の距離TS1以上であるか否かを判定する。
【0234】
このように、走行機器1Dや測位ユニット8を用いて直進走行であるか否かを判定することにより、容易に、非作業走行中に直進走行しているか否かを判定でき、容易に長距離走行時増幅機能を実施することができる。
【0235】
また、走行制御部312は、自車位置から植付開始点WSPまで直進走行する距離が所定の距離TS2(「第2距離」に相当)以上である場合、直進走行した距離にかかわらず、自動走行における走行車速を、あらかじめ設定された車速V1より速い車速V2に増速しても良い。自動走行は、所定の走行経路を走行する。また、植付開始点WSPの圃場マップ上の位置(座標)はあらかじめ分かっており、自車位置も測位ユニット8により圃場マップ上の位置(座標)が分かる。そのため、走行制御部312は、自車位置から植付開始点WSPまでの距離を算出し、所定の距離TS2以上であるか否かを判定することができる。
【0236】
このように、非作業走行が所定の距離または時間行われた後に走行車速を増速するだけでなく、自動走行中は走行経路があらかじめ定められているため、自車位置から植付開始点WSPまでの距離が所定の距離TS2以上であるか否かが事前に分かり、自車位置から植付開始点WSPまでの距離が所定の距離TS2以上であると判定された際には、走行車速が増速される。その結果、非作業走行の開始時点から走行車速を増速することが可能となり、より効率的に走行を行うことができる。
【0237】
さらに、走行制御部312は、車速V2に増速した非作業走行中において、自車位置から植付開始点WSPまでの距離が所定の距離TS3(「第3距離」に相当)以下になると、車速を車速V1に減速しても良い。
【0238】
このように、非作業走行中の増速状態において、植付開始点WSPが近付くと、走行車速を作業走行に適した車速V1に減速することにより、植付開始点WSPに向けて減速を開始し、植付開始点WSPの時点までに作業に適した車速にまで減速し、作業走行を適切な走行車速で行うことができる。
【0239】
なお、長距離走行時増幅機能は、作業走行経路WLにつながる旋回経路を含む非作業走行経路NWLにおいて実施されても良い。例えば、非作業走行による旋回中に直進走行が含まれるような非作業走行経路NWLにおいて、直進走行の距離または時間が長い場合に長距離走行時増幅機能が実施されても良い。また、非作業走行における旋回前または旋回後に直進走行が含まれるような非作業走行経路NWLにおいて、直進走行の距離または時間が長い場合に長距離走行時増幅機能が実施されても良い。さらに、直進走行に限らず、旋回走行の距離または時間が長い場合に長距離走行時増幅機能が実施されても良い。旋回走行は、直進走行に比べて低速で行うことが好ましいが、自動走行における車速V1より速い車速で走行しても問題ない場合がある。このような場合、旋回走行を含む非作業走行の距離または時間が長い場合、車速V1より速く、旋回走行に支障のない車速V2に増速しても良い。
【0240】
このように、旋回経路を含む非作業走行経路NWLの直進領域、あるいは旋回経路においても、車速を増速することができるため、より効率的に走行を行うことができる。
【0241】
作業走行経路WLにつながる非作業走行経路NWLの例として、以下のような場合が例示される。
【0242】
図31に示すように、変形圃場の場合、2つの直進経路IPSL間を旋回走行する際に、非作業走行による直進走行が長くなることがある。例えば、作業走行経路WL1を作業走行した後、傾斜した圃場の外周辺で旋回し、その後、作業走行経路WL2で作業走行を行う場合、非作業走行による直進走行が長くなる。この際の旋回走行は、主に以下の種類の旋回走行経路で行われる。
【0243】
1つ目の旋回走行では、作業走行経路WL1の終了位置まで作業走行した後、非作業走行で外周領域OAまで進んで非作業走行経路NWL1を旋回走行する。すると、外周辺が傾斜しているため、機体1は作業走行経路WL2の途中の領域まで進むこととなり、作業走行経路WL2の開始位置まで非作業走行経路NWL2を後進する必要が生じる。そして、非作業走行経路NWL2において長距離走行時増幅機能が実施され、非作業走行経路NWL1において長距離走行時増幅機能が実施されても良い。なお、図では、非作業走行経路NWL2は作業走行経路WL2と並べて描かれているが、実際には、非作業走行経路NWL2は作業走行経路WL2上に設けられる。
【0244】
2つ目の旋回走行では、作業走行経路WL1の終了位置まで作業走行した後、非作業走行経路NWL3を、非作業走行で外周領域OAに進み、直進走行を挟んで2度の旋回走行を行い、作業走行経路NW2の開始位置まで前進走行が行われる。そして、非作業走行経路NWL3において長距離走行時増幅機能が実施される。
【0245】
また、他の作業走行経路WLにつながる非作業走行経路NWLの例として、苗等の資材を補給する際のチョイ寄せ走行の経路であっても良い。
【0246】
チョイ寄せにおいて、内部往復経路IPLの終端領域で機体1が停止された後、苗補給位置等の補給位置まで、機体1は非作業走行で前進あるいは後進による直進走行を行い、資材を補給した後、非作業走行で後進あるいは前進による直進走行を行い、終端領域に戻る。通常のチョイ寄せ走行は車速V1より低速の所定の車速で行われるが、この終端領域と補給位置との間の非作業走行において、長距離走行時増幅機能が実施されて、非作業走行の距離または時間が長い場合に車速が直前の走行における車速より増速されも良い。これにより、単に資材補給のために行われる非作業走行を、比較的早い車速で行うことができ、効率的にチョイ寄せ走行を行うことができる。増速される車速は、走行効率と適切なチョイ寄せ走行とのバランスを考慮して設定できるが、チョイ寄せ時の車速は車速V1より遅い場合もあるため、増速された車速は車速V1より遅くなる場合もある。
【0247】
また、内部往復経路IPLを走行中に、所定のセンサ等により、苗等の資材がなくなった、あるいは残り少なくなったことを検知すると、自動走行制御部75は、機体1を停止させる場合がある。このような場合、手動走行により補給位置まで機体1が走行され、資材の補給が行われる、このような、圃場の任意の位置から資材の補給位置まで移動する際に、チョイ寄せ機能を適用しても良い。圃場の途中で機体1が停止した際に、所定の操作が行われることにより、自動走行制御部75は、チョイ寄せ機能を行う状態に移行する。そして、手動操作により、補給位置に向けて、前進または後進による非作業走行が行われ、資材の補給後に、手動操作により、停止した位置に向けて、前進または後進による非作業走行が行われる。
【0248】
このように、圃場の任意の位置と補給位置との間の非作業走行にチョイ寄せ走行を適用し、チョイ寄せ走行の際に、長距離走行時増幅機能が実施されて、非作業走行の距離または時間が長い場合に車速が直前の走行における車速より増速されも良い。これにより、圃場の途中で資材を補給する必要が生じたとしても、資材を補給するための非作業走行を効率的に行うことができる。
【0249】
なお、長距離走行時増幅機能における走行車速の増速および減速は、急激に行われても良いが、徐々に加速および減速が行われても良い。走行速度の変更が徐々に行われることにより、周囲の状況変化等に適切に対応することが容易となると共に、急激な走行車速の変化により搭乗者等が不快を感じることを抑制することができる。
【0250】
また、車速V2等の増速後の車速や車速V1は、あらかじめ定められた車速でも良いが、自動走行の開始時あるいは自動走行中に任意に設定できる構成であっても良く、自動走行中に任意に変更できる構成であっても良い。また、距離TS1,距離TS2,距離TS3は、あらかじめ定められた距離でも良いが、自動走行の開始時あるいは自動走行中に任意に設定できる構成であっても良く、自動走行中に任意に変更できる構成であっても良い。これにより、圃場の状況や作業状況、運転者の技量等により、最適な長距離走行時増幅機能を実施することができる。
【0251】
なお、これらの設定、変更は、情報端末5等により行うことができる。長距離走行時増幅機能は機体1に搭載される制御ユニット30により制御されても良いが、管理サーバ等の機外に設けられた制御システムにより、遠隔制御されても良い。
【0252】
〔高負荷圃場専用旋回機能〕
次に、自動走行による旋回時の高負荷圃場専用旋回機能について、
図1~
図4,
図5,
図30,
図32を用いて説明する。
【0253】
圃場は湿田圃場等のように圃場の状況が他の圃場と異なる場合もあり、圃場内においても状況は常に一定ではない。また、自動走行は、所定の走行車速で走行するように制御され、エンジン回転数も走行車速に対応した回転数に保たれる。湿田圃場等の負荷が高い圃場の場合、自動走行における所定の走行車速・エンジン回転数では、旋回中に車輪12が地面にはまってしまい、走行車速が低下したり、機体1が停車したりして、適切な旋回走行が行えず、効率的な走行が行えない場合がある。
【0254】
このような状況を回避するため、本実施形態では、高負荷圃場における旋回走行の際に、通常の自動走行を行う通常モードに対して、走行車速を増速したり、エンジン回転数を増加させたり、エンジンパワー(トルク)を向上させたりする湿田モードに移行する高負荷圃場専用旋回機能を実施する。
【0255】
高負荷圃場専用旋回機能に係る走行は、
図30に例示する、制御ユニット30により制御される。制御ユニット30は、走行制御部312と自動走行制御部75とを備える。通常モードから湿田モードへの切り替えは、情報端末5による設定や、所定の操作具1Bによる操作に基づいて行われても良いし、圃場の状況を自動的に判断して切り替えても良い。
【0256】
操作・設定により旋回時に湿田モードに切り替える場合には、運転者は、圃場の状況を確認して負荷が高いと判断した場合、情報端末5による設定や、所定の操作具1Bによる操作により、湿田モードに設定する。湿田モードに設定されることにより、走行制御部312は、旋回時には、湿田モードに対応した制御を行う。情報端末5による設定は、自動走行の開始時の各種設定と同時に行われても良いし、自動走行中に行う構成としても良い。
【0257】
自動的に判断して旋回時に湿田モードに切り替える場合には、自動走行制御部75は、圃場の状況または機体1の滑りから負荷が高いと判断した場合、湿田モードに設定する。
【0258】
湿田モードに設定されている場合、旋回走行時には、走行制御部312は、車速の増速、エンジン回転数の増加、およびエンジンパワー(トルク)の向上のうちの少なくとも1つを組み合わせて行う。車速を増速する場合、走行制御部312は、自動走行により、直進経路IPSLを自動走行の車速V1で走行させた後、旋回経路IPRLを旋回する際に、車速を車速V1より速い車速V3に増速するように制御する。そして、旋回後に直進経路IPSLを走行する際には、車速を車速V1に戻す。エンジン回転数を増加する場合、走行制御部312は、自動走行により、直進経路IPSLを自動走行の車速V1に対応した回転数に制御した後、旋回経路IPRLを旋回する際に、車速V1に対応した回転数より大きな所定の回転数にエンジン回転数を増加させるように制御する。そして、旋回後に直進経路IPSLを走行する際には、エンジン回転数を車速V1に対応した回転数に戻す。エンジンパワー(トルク)を向上させる際には走行制御部312は、旋回走行時に、無段変速装置9を制御して、エンジンパワー(トルク)を向上させる。
【0259】
このように、高負荷圃場での自動走行において、湿田モードに設定し、旋回走行の際に、車速の増速、エンジン回転数の増加、およびエンジンパワー(トルク)の向上のうちの少なくとも1つを組み合わせて行うことにより、旋回車速の低下や機体1の停止を抑制し、効率的に旋回走行を行うことが可能となる。
【0260】
なお、機体1の滑りから負荷が高いと判断する場合、測位ユニット8により出力された自車位置の単位時間当たりの変化距離から算出された車速と、回転数センサ12Cにより計測された車軸あるいは駆動軸の回転数から算出された車速とを比較し、測位ユニット8を用いて算出した車速より回転数センサ12Cを用いて算出した車速の方が、所定の車速または所定の割合以上遅い場合に、機体1が滑り、圃場の負荷が高いと判断することができる。この場合、圃場内の走行中に圃場の各領域において負荷が所定以上高いか否かを随時判断して、その都度、自動走行制御部75は、湿田モードと通常モードとを切り替えても良いが、圃場での最初の外周走行時に、その圃場の負荷が所定以上高いか否かを最初に判断して、圃場の負荷が所定以上高と判断される場合には、自動走行制御部75は、自動走行の開始時に湿田モードに設定しても良い。
【0261】
また、管理サーバ(図示せず)に過去に走行した際の負荷の状況が記録された圃場マップを格納しておき、自動走行制御部75は、管理サーバ(図示せず)から過去の圃場マップを取得し、圃場マップに記録された圃場の負荷が所定の負荷より高い場合に、湿田モードに設定する構成としても良い。
【0262】
また、機体1の滑りから負荷が高いか否かの判断を、自動走行における設定車速と、実際に走行している機体1の車速を比較しても良い。例えば、上述のように測位ユニット8を用いて実際の車速を算出し、この車速が設定車速より所定の車速または割合以上遅い場合、自動走行制御部75は、湿田モードに設定しても良い。この場合の湿田モードの切り替えは、走行中に随時行われても良い。
【0263】
以上のように、自動走行制御部75が圃場の負荷を判断して、湿田モードまたは通常モードに設定するため、より的確に圃場が高負荷であることを判断することができ、適切に湿田モードに設定することができる。
【0264】
〔高負荷圃場時の増速機能〕
次に、高負荷圃場において、自動走行による車速を調整する高負荷圃場時の増速機能について、
図1~
図4,
図5を用いて説明する。
【0265】
上述のような湿田圃場等高負荷圃場では、自動走行中に車輪12が地面にはまってしまい、走行車速が低下したり、機体1が停車したりして、適切な車速で自動走行が行えず、効率的な走行が行えない場合がある。
【0266】
このような状況を回避するため、本実施形態では、高負荷圃場において、走行車速が一定以上低下すると、指示車速を増速させて走行車速を増速させる高負荷圃場時の増速機能を実施する。
【0267】
高負荷圃場時の増速機能に係る走行は、
図30に例示する、制御ユニット30により制御される。制御ユニット30は、走行制御部312と自動走行制御部75とを備える。
【0268】
自動走行中に、走行制御部312は、自動走行制御部75から指示される所定の指示車速で機体1が走行するように制御を行う。自動走行制御部75は、自動走行中に、機体1の走行車速(実車速)を取得し、指示車速と比較する。実車速は、測位ユニット8により出力された自車位置の単位時間当たりの変化距離から算出される。
【0269】
自動走行制御部75は、実車速と指示車速とを比較し、指示車速が実車速より所定の車速以上速いか否かを判定する。指示車速が実車速より所定の車速以上速い状態が、所定の時間以上継続した場合、自動走行制御部75は、指示車速を増速して、走行制御部312に増速した指示車速で走行するように制御させる。指示車速は、あらかじめ定められた車速だけ増速されても良いが、実車速と指示車速との差分に応じた車速だけ増速されても良く、実車速と指示車速との差分またはこれに所定のマージンを加えた車速だけ増速されても良い。
【0270】
さらに、自動走行制御部75は、指示車速を増速した後も、実車速と指示車速との比較を継続する。そして、引き続き、指示車速が実車速より所定の車速以上速い状態が、所定の時間以上継続した場合、自動走行制御部75は、さらに指示車速を増速する。逆に、指示車速と実車速との差が所定の車速より小さくなると、自動走行制御部75は、その指示車速を維持する。
【0271】
さらに、実車速が指示車速より速くなった場合、または、指示車速が変更された場合、自動走行制御部75は、指示車速を当初の指示車速、または変更された指示車速に戻しても良いし、指示車速を所定の車速だけ減速しても良い。
【0272】
このように、実車速と指示車速とを比較し、その差分に応じて指示車速を増速することにより、圃場の負荷により機体1が滑る等して実車速が十分に出ていないとしても、実車速を増速するように制御することができ、実車速を指示車速に近づけ、適切な走行車速で走行し、効率的な走行を行うことができる。
【0273】
〔手動操作規制機能〕
次に、自動走行中の手動操作規制機能について説明する。
【0274】
自動走行中に所定の条件が成立すると、自動走行が一時停止状態となり、機体が停止する。自動走行が一時停止した状態となると、所定の操作を行ったり、所定時間操作を行わなかったりすることにより、操作の内容または操作の有無に応じて、自動走行が再開されたり、自動走行または手動走行に係る別の状態に移行したりする。
【0275】
例えば、苗補給ありモードにおいて、機体1が内部往復経路IPLの所定の終端領域まで走行すると、機体1は停車すると共に、自動走行は一時停止する。自動走行が一時停止した状態で、自動開始操作具(図示せず)の操作に続いて主変速レバー7Aを前進方向に操作する等の所定の操作が行われたり、何の操作も行わずに所定時間経過したりすると、自動走行が再開され、機体1は旋回走行に移行する。また、自動走行が一時停止した状態で、主変速レバー7Aを前進方向に操作する等の所定の操作が行われると、チョイ寄せが行われる状態に移行し、所定の距離だけ前進走行したり、主変速レバー7A等の操作に応じて苗を補給するための走行が開始されたりする。
【0276】
また、自動走行が一時停止された際には、情報端末5への表示やボイスアラーム等により、ガイダンスや警告等が行われる。ガイダンスや警告等として、自動走行が一時停止されている旨の警告、機体1の状態を知らせる種々の警告、次に行うことができる操作についてのガイダンス等が行われる。機体1の状態を知らせる種々の警告としては、測位ユニット8が衛星信号を適切に受信できていない旨の警告、衛星信号の受信不良等により自動走行が停止(終了)した旨の警告等が含まれる。ガイダンスとしては、自動走行を再開するための操作に関する手順、チョイ寄せを行うための操作に関する手順等が含まれる。
【0277】
このように自動走行が一時停止された際に、ガイダンスや警告が行われているにもかかわらず、作業者・運転者(オペレータ)が誤った操作を行い、オペレータの意図に反した走行が行われる場合がある。
【0278】
例えば、苗補給ありモードでの自動走行中に、内部往復経路IPLの終端領域で機体1が停止して自動走行が一時停止した際に、オペレータは自動走行を再開させて旋回走行を開始するつもりで操作を行ったにもかかわらず、操作を誤って、手動走行で機体1を前進走行させてしまう場合がある。具体的には、自動走行が一時停止した状態で、自動走行が再開されるための操作を誤ることにより、自動走行が再開されず、誤った操作に対応する走行が開始されてしまう。また、自動走行が一時停止した状態で、自動開始操作具(図示せず)の操作した後、主変速レバー7Aを前進方向に操作する前に、衛星信号の受信不良等により自動走行が停止してしまい、その後主変速レバー7Aを前進方向に操作することにより、手動走行での前進走行が開始されてしまう場合もある。
【0279】
このように、自動走行が一時停止した際に、オペレータがその意図に反した操作を行うことを抑制するために、本実施形態では、手動操作規制機能を実施する。
【0280】
手動操作規制機能は、自動走行が一時停止した場合に、所定の時間が経過するまでの間は、自動開始操作具(図示せず)や主変速レバー7A等の操作具1Bの操作を受け付けない機能である。
【0281】
オペレータの手動操作が無効とされる手動操作規制機能が実施されることにより、オペレータがガイダンスや警告に意識を向けることが促され、オペレータがガイダンスや警告に則した適切な操作を行う可能性を向上させることができる。その結果、オペレータは、オペレータの意図に則して、機体1を走行させることができる。
【0282】
【0283】
手動操作規制機能は、
図33に例示する、制御ユニット30により制御される。制御ユニット30は、走行制御部312と、自動走行制御部75と、報知制御部77とを備える。また、制御ユニット30は、操作具1B、走行機器1D、情報端末5、およびボイスアラーム発生装置100等と接続される。走行制御部312は、自動走行制御部75の制御、または、主変速レバー7A等の操作具1Bの操作に応じて走行機器1D(「走行装置」に相当)を制御して機体1を走行させる。自動走行制御部75は、自動走行中に、測位ユニット8が出力する測位データに基づいて求められる自車位置に応じて、所定の走行経路を走行するように走行制御部312を制御する。報知制御部77は、自動走行制御部75等の制御に応じて、情報端末5やボイスアラーム発生装置100等の報知部に、ガイダンスや警告を行わせる。
【0284】
図34に示すように、自動走行制御部75は、自動走行が一時停止になってから、あるいは機体1が停車してから、所定の時間が経過するまで、操作具1Bによる操作を受け付けない。
【0285】
図34に示すタイムチャートに沿って、手動操作規制機能における状態の遷移の例について説明する。
【0286】
自動走行中に、ある時刻t0で自動走行が一時停止し、機体1が停車したとする。この時刻t0までは、自動走行制御部75は、操作具1Bによる操作を有効に受け付け、報知制御部77を制御して、情報端末5やボイスアラーム発生装置100等の報知部に、自動走行中の状況に応じたガイダンスおよび警告を行わせる。
【0287】
自動走行が一時停止し、機体1が停車すると、自動走行制御部75は、所定の時間tw1(「第一時間に相当」)の間、操作具1B等による操作を受け付けず、操作されても操作を無効とする。また、自動走行が一時停止すると、自動走行制御部75は、報知制御部77を介して、自動走行が一時停止している旨の警告や、移行可能な状態に移行するために必要な操作や自動走行を再開するために必要な操作等に関するガイダンスを報知させる。そして、オペレータは、この操作具1B等による操作を受け付けない期間の間、警告やガイダンスに意識を向けることができる。
【0288】
具体的には、オペレータは、自動走行を再開するために必要な操作等に関するガイダンスを確認し、適切な操作を行って、自動走行を再開させることができる。また、自動開始操作具(図示せず)を操作した後、主変速レバー7Aを前進方向に操作する前に、衛星信号の受信不良等により自動走行が停止(終了)してしまっても、オペレータは警告やガイダンスに注意が向いているため、自動走行が停止(終了)してしまっている旨の報知や、この状態で自動走行を再開するための操作についてのガイダンスを確認できる可能性が向上し、適切な操作を行って、自動走行を再開させることができる。自動走行が停止(終了)した場合、自動走行を再開させるには、主変速レバー7Aを中立位置に戻した後、自動開始操作具(図示せず)を操作し、その後に主変速レバー7Aを前進方向に操作する必要がある。そのため、自動走行が停止(終了)した場合は、主変速レバー7Aを中立位置に戻す旨のガイダンスを含めて行われることが好ましい。また、異なる状態に移行する場合にも、オペレータは、移行可能な状態に移行するために必要な操作に関するガイダンスを確認して、適切に操作を行い、意図した状態の移行を適切に行う可能性が向上される。このように、オペレータが警告やガイダンスに注意を向ける時間を設け、オペレータが警告やガイダンスを考慮して次の操作を行う契機とすることができるため、自動走行の一時停止中に手動操作規制機能を実施することにより、オペレータの意図に則した適切な操作が行われる可能性を向上させることができる。
【0289】
このような、ガイダンスや警告が報知されている間に、時刻t1になると、自動走行制御部75は、時刻t1以降、操作具1B等による操作を受け付け、操作を有効とし、操作に応じた制御を行う。
【0290】
その後、時刻t2にて、操作具1B等によって操作が行われたとすると、自動走行制御部75は操作に応じた制御を行う。例えば、自動走行を再開するための操作が行われると、自動走行制御部75は自動走行を再開させる。また、異なる状態に移行するための操作、例えば、チョイ寄せを開始する操作が行われると、状態を移行して、主変速レバー7Aの操作に応じたチョイ寄せ走行を行わせる制御を行う。同時に、自動走行制御部75は、操作に応じて行われる走行の際に行われるガイダンスや警告が行われるように、報知制御部77を制御する。
【0291】
なお、自動走行が一時停止した時刻t0からの経過時間が、時間tw1より長い時間tw2(「第二時間に相当」)となる時刻t3まで操作がされない場合、つまり、自動走行が一時停止してから何の操作もされずに所定の時間tw2が経過すると、自動走行制御部75は、自動走行を自動的に再開させても良い。
【0292】
また、自動走行を再開するための操作、あるいは異なる状態に移行するための操作を行う操作具1Bとして、リモコン90、機体1に設けられるボタンスイッチ、情報端末5に表示される画面スイッチ等の任意のものが含まれても良い。例えば、チョイ寄せ走行を行うための、主変速レバー7Aと異なるボタン等が機体1に別途設けられても良い。チョイ寄せ走行を行うためのボタン等が、主変速レバー7Aと別に設けられることにより、主変速レバー7Aを誤って操作することにより、意図せずにチョイ寄せ走行が行われることを容易に回避することができる。
【0293】
自動走行が一時停止している間に行われるガイダンスや警告は、所定時間行われ、あるいは所定回数行われると終了しても良い。この場合、操作を有効とするまでの時間tw1の始点は、自動走行が一時停止された時刻t0でも良いが、ガイダンスや警告が終了した時刻としても良い。ガイダンスや警告が終了してから所定の時間tw1の間操作が無効となることにより、オペレータは、全てのガイダンスや警告を受ける機会を得ることができ、それに応じた的確な操作を行うことが容易となる。
【0294】
さらに、ガイダンスや警告が行われた後、操作の途中で自動走行が停止(終了)した場合、それに伴うガイダンスや警告が行われることが好ましい。このように、操作具1Bの操作中であっても、別途ガイダンスや警告が報知される場合、自動走行制御部75は、自動走行が終了した時点で、再び操作具1Bの操作を無効とすることが好ましい。この場合、自動走行が終了した時刻、あるいは自動走行の終了に伴うガイダンスや警告が終了した時刻から、所定の時間tw1の間、自動走行制御部75は操作具1Bによる操作を受け付けない構成とすることが好ましい。
【0295】
このような構成により、操作の途中で自動走行が終了したとしても、オペレータが操作の途中で自動走行が終了したことに気付かずに操作を行うことが抑制され、適切な操作を行い、オペレータの意図に則した走行が行われる。
【0296】
以上のようなガイダンスや警告は、情報端末5に文字やイラストを表示したり、ボイスアラーム発生装置100から音声によるガイダンスや警告を行ったりする他、種々の方法、装置により行われても良い。例えば、リモコン90に文字等を表示したり、リモコン90に所定の振動を与えたり、オペレータが携帯するその他の携帯端末等に文字等の表示、音声の発生を行ったりすることができる。さらに、これらのうちの1つ以上が任意に組み合わされて行われても良い。
【0297】
また、上述のようなガイダンスや警告の具体例は以下のようになる。自動走行が一時停止した場合は、「自動運転が一時停止しました」との情報端末5への表示が行われたり、ボイスアラーム発生装置100から音声が発生されたりする。また、衛星信号の受信不良が発生した場合、「GPSが低下しました」との情報端末5への表示が行われたり、ボイスアラーム発生装置100から音声が発生されたりする。さらに、衛星信号の受信不良やその他の理由により自動走行が停止(終了)した場合、「自動走行が終了しました」との情報端末5への表示が行われたり、ボイスアラーム発生装置100から音声が発生されたりする。この場合、さらに、「自動走行を再開するためにレバーを中立位置に戻してください」や「GSボタンを押した後、レバーを操作してください」との情報端末5への表示が行われたり、ボイスアラーム発生装置100から音声が発生されたりする。また、チョイ寄せ走行に移行された場合、「チョイ寄せ中です」との情報端末5への表示が行われたり、ボイスアラーム発生装置100から音声が発生されたりする。
【0298】
〔報知音削減機能〕
次に、
図1~
図5を用いて、自動走行中の手動操作規制機能について説明する。
【0299】
上述のように、自動走行中には、運転者や作業者等のオペレータに、必要な操作を促したり、注意喚起を促したりするために、様々なガイダンスや警告等の報知が行われる。このような報知により、オペレータは、作業や走行を継続するために必要な操作を把握でき、作業や走行の状況、機体1の周囲の状況等を把握することができる。そのため、経験の浅いオペレータにとっては、作業や走行に熟達していなくても、状況や行うべき操作を理解しやすくなり、オペレータの負担を軽減しながら、適切な作業や走行を継続することができる。
【0300】
このような報知は、状況が変化するまで、あるいは必要な操作が行われるまで、繰り返し行われる。あるいは、所定の報知が、所定の時間または所定の回数繰り返される。例えば、外側周回経路ORLでの作業走行における旋回後の作業走行再開の際には、苗植付装置3の下降は手動操作により行われ、苗植付装置3の下降を要する状態になってから、苗植付装置3の下降が行われるまで、苗植付装置3の下降を促す報知が継続される。
【0301】
しかしながら、作業に熟練した作業者にとっては、外側周回経路ORLで苗植付装置3の下降操作を行うことは、ガイダンス等を確認するまでもなく容易に行うことができる。逆に、不必要な報知が継続されると、作業に熟練した作業者はかえって煩わしく感じ、負担となる場合もある。
【0302】
このような状況を抑制するために、本実施形態では、報知を削減し得る報知音削減機能を実施することができる。
【0303】
具体的には、報知音削減機能は、報知を削減せずに行う通常モードと、報知が削減される削減モードに切り替えることができ、削減モードに設定されている際には、報知が削減されて行われる。報知音削減機能におけるモードの切り替えは、自動走行の開始時に、情報端末5等により行うことができ、自動走行中に設定を変更することも可能である。また、報知音削減機能は、制御ユニット30の自動走行制御部75(
図33等参照)等の所定の機能ブロックにより制御により実施される。
【0304】
削減モードにおいては、同一の報知を繰り返す回数、あるいは同一の報知を繰り返す時間が削減される。例えば、外側周回経路ORLで苗植付装置3の下降を促す「植付装置を下降させて下さい」という報知を、通常モードでは苗植付装置3が下降されるまで繰り返されていたとすると、削減モードでは1度だけこの報知が行われる。
【0305】
なお、削減モードにおける報知の削減は、回数や時間の削減に限らず、同一の報知が行われる間隔を通常モードの際の間隔より広げても良く、あるいは削減モードにおいては一部または全部の報知を行わないようにしても良い。
【0306】
また、削減モードにおいて、回数や時間を削減するか、間隔を広げるか、報知を行わないようにするかの設定は、選択的に行われる構成とされても良い。さらに、報知を行わないように設定する場合の設定は、どの報知を行わないようにするかを選択できる構成としても良い。また、以上の設定は、報知の内容ごとに行うことができる構成とされても良い。
【0307】
また、ガイダンスや警告等の報知は、情報端末5への表示、ボイスアラーム発生装置100から音声の発生、その他の種々の態様で行うことができる。
【0308】
〔自動運転停車機能〕
次に、自動走行中の自動運転停車機能について、
図1~
図5、
図35を用いて説明する。
【0309】
自動走行中には、種々の条件が成立すると機体1が自動的に停車される場合がある。例えば、自動走行中にソナーセンサ60が障害物を検知すると、障害物を検知し次第、あるいは障害物までの距離が所定の距離より短いことが検知されると、機体1が停車される。他にも、越境判定において、機体1が越境し、または越境しようとしていることが検知されたり、肥料等の資材がつまったことが検知されたり、衛星信号の受信不良が発生したり、機体1に傾斜センサ81が設けられている場合に、機体1が所定の角度以上傾斜していることが検知されたり、機体1がスリップしていることが検知されたり、機体1が走行経路を逸脱していることが検知されたりすると、機体1が停車するように制御される。
【0310】
種々の条件が成立して機体1が停車される場合、機体1は条件の成立と共に直ちに急停車するように制御される。しかしながら、機体1が停車される条件によっては、急停車することが必要な場合があるが、その反面、機体1が急停車されると、作業者に過度の負担がかかる場合があり、または、作業効率が悪化したり、圃場が荒れたりして、かえって適切でない場合もある。
【0311】
例えば、障害物が検知された場合は、機体1を直ちに停車させないと、障害物に機体1が衝突する等のリスクが高くなる場合がある。また、機体1が越境した場合、機体1を直ちに停車させないと、機体1が圃場から突出したり、畦に衝突したりしてしまう場合がある。さらに、機体1が所定以上傾斜した場合は、機体1を直ちに停車させないと、機体1が転倒する場合もある。
【0312】
逆に、資材がつまった状態で多少の走行が行われたとしても、資材のつまりを解消させた後に、資材を供給せずに走行した経路を、資材を供給した後で再度走行すればすむ。また、衛星信号の受信環境の悪化や、機体1のスリップ、走行経路の逸脱等の場合は、程度によっては走行を継続させたり、機体1を徐々に停止させたりすればよい場合が多く、急停車を要する場合はまれである。
【0313】
さらに、機体1を停車させる条件にかかわらず、機体1を停車させる必要が生じた圃場内の位置によっても、急停車を行った方が良い場合と行わない方が良い場合とに分かれる。特に、外側周回経路ORLは、畦に近い領域を走行することもあり、機体1を停車させる必要性が大きい。例えば、畦際には水口等の障害物が多く、機体1が畦に衝突することは機体1が破損等する可能性もあり回避すべきである。そのため、外側周回経路ORLを走行中に障害物を検知した場合は、機体1を急停車させることが適切である。また、外側周回経路ORLを走行中に、衛星信号の受信環境が悪化したり、機体1が走行経路を逸脱して位置ずれが生じたりした場合、機体1が畦等の障害物に衝突する可能性が高まるため、機体1を急停車させることが適切である。
【0314】
以上のように、機体1を停車させる条件の内容や、機体1を停車させる条件が成立した圃場内の位置によって、機体1を急停車させる必要があったり、急停車させる必要がなく、むしろ、機体1を徐々に停車させた方が適切な場合があったりする。
【0315】
そこで、本実施形態では、機体1を停車させる条件が成立した際に、条件の内容または条件が成立した圃場内の位置によって、機体1を急停車させたり、徐々に停車させたりするように、機体1を停車させる際の負の加速度(減速度)を異ならせる自動運転停車機能を実施する。
【0316】
自動運転停車機能は、
図35に例示する、制御ユニット30により制御される。制御ユニット30は、走行制御部312と、自動走行制御部75と、異常検知部78と、越境判定部64(「越境センサ」に相当)とを備える。また、制御ユニット30は、走行機器1D、センサ群1A、情報端末5、および測位ユニット8等と接続される。
【0317】
越境判定部64は、測位ユニット8が出力する自車位置と圃場マップとから、機体1が圃場から越境することを検知する。越境は、自車位置と圃場の外周との距離を検出し、自車位置と圃場の外周との距離が所定の距離以下となったことを越境として検知する。
【0318】
異常検知部78は、後述するように、越境判定部64の検知結果や、センサ群1Aが取得する種々の情報等を受け取り、受け取った情報から、機体1または機体1の周囲に生じた異常を検知する。
【0319】
走行制御部312は、自動走行制御部75の制御、または、操作具1Bの操作に応じて走行機器1D(「走行装置」に相当)を制御して機体1を走行させる。
【0320】
自動走行制御部75は、自動走行中に、測位ユニット8が出力する測位データに基づいて求められる自車位置に応じて、所定の走行経路を走行するように走行制御部312を制御する。また、自動走行制御部75は停車制御部79を備える。停車制御部79は、異常検知部78が検知した異常に基づいて、機体1を停車させるように走行制御部312を制御する。
【0321】
センサ群1Aは、障害物センサの1つであるソナーセンサ60、機体1の傾斜を検出する傾斜センサ81、車輪12の車軸やエンジン2から車輪12に駆動力を伝達する駆動軸の回転数を測定する回転数センサ12C、資材がつまったことを検知する資材づまりセンサ83等のうちの任意のものが含まれる。なお、傾斜センサ81は、機体1がどの方向にどの程度傾斜しているかを検出することができればよく、測位ユニット8の慣性計測モジュール8Bが用いられても良い。
【0322】
異常検知部78は、各種の異常を検知し、検知内容に応じて、機体1を停車させる条件が成立したか否かを判定し、自動走行制御部75の停車制御部79に判定結果を受け渡す。異常検知部78は、センサ群1Aや測位ユニット8、越境判定部64等と協働して、機体状態や機体1の周囲状態等の状態を検出し、検出した状態に対応する異常を検知するセンサとして機能する。
【0323】
例えば、機体1を停車させる条件のうちの障害物検知の場合、異常検知部78は、ソナーセンサ60から障害物を検知したことを示す障害物検知信号を受信し、障害物検知信号を自動走行制御部75の停車制御部79に送信する。障害物検知信号を受信した停車制御部79は、障害物検知信号に応じて機体1が停車するように走行制御部312を制御する。
【0324】
また、機体1を停車させる条件のうちの機体1が越境する越境検知の場合、異常検知部78は、越境判定部64から越境を検知したことを示す越境信号を受信し、越境信号を自動走行制御部75の停車制御部79に送信する。越境信号を受信した停車制御部79は、越境信号に応じて機体1が停車するように走行制御部312を制御する。
【0325】
また、機体1を停車させる条件のうちの機体1が傾斜する傾斜検知の場合、異常検知部78は、傾斜センサ81から機体1の傾斜を検知したことを示す傾斜信号を受信し、傾斜信号を自動走行制御部75の停車制御部79に送信する。傾斜信号を受信した停車制御部79は、傾斜信号に応じて機体1が停車するように走行制御部312を制御する。
【0326】
また、機体1を停車させる条件のうちの、苗や肥料等の資材がつまる資材づまり検知の場合、異常検知部78は、資材づまりセンサ83から資材づまりを検知したことを示す資材づまり信号を受信し、資材づまり信号を自動走行制御部75の停車制御部79に送信する。資材づまり信号を受信した停車制御部79は、資材づまり信号に応じて機体1が停車するように走行制御部312を制御する。
【0327】
また、機体1を停車させる条件のうちの機体1がスリップしたスリップ検知の場合、まず、異常検知部78は、回転数センサ12Cの検出値から、車輪12の回転数に対応する車速を算出する。これとは別に、異常検知部78は、測位ユニット8から出力される自車位置の単位時間当たりの変化量から車速を算出する。そして、異常検知部78は、算出した2つの車速を比較し、車輪12の回転数に対応する車速が自車位置の変化量から算出した車速より所定の速度以上速い場合、機体1がスリップしていると判定し、スリップ信号を自動走行制御部75の停車制御部79に送信する。スリップ信号を受信した停車制御部79は、スリップ信号に応じて機体1が停車するように走行制御部312を制御する。
【0328】
他にも、異常検知部78は、測位ユニット8が衛星信号の受信感度が低下した衛星信号受信異常や、自車位置と走行経路に所定の距離以上のずれが生じた位置ずれ異常等を検知し、これらの異常を検知した場合にも、機体1を停車させるように走行制御部312を制御する。さらに、異常検知部78は、有人自動走行中に運転者が運転座席16から離れたことを検知した場合や、苗や肥料等の資材がなくなった場合等を、異常として検知し、機体1が停車するように走行制御部312を制御する構成とすることもできる。
【0329】
このような異常を検知した際に、機体1を停車させる条件が整ったと判断して、異常検知部78は機体1を停車させる。そして、自動走行制御部75の停車制御部79は、条件の内容に相当する異常の内容に応じて、機体1を停車させる際の減速度を異ならせる。つまり、異常検知部78で検知できる種々の異常が、機体1を急停車させる条件に対応する異常と、機体1を徐々に停車させる条件に対応する異常とに区分けされる。そして、自動走行制御部75の異常検知部78は、機体1を急停車させる条件に対応する異常を検知した場合は機体1を急停車させるように走行制御部312を制御し、機体1を徐々停車させる条件に対応する異常を検知した場合は機体1を徐々に停車させるように走行制御部312を制御する。このような機体1の停車において、急停車する場合の減速度は、徐々に停車する場合の減速度に比べて大きくなる。
【0330】
例えば、機体1を急停車させる条件に対応する異常は、障害物検知、越境検知、および傾斜検知であり、機体1を徐々停車させる条件に対応する異常は、その他の、資材づまり検知、スリップ検知、衛星信号受信異常、位置ずれ異常等である。
【0331】
このように、機体1を停車させる条件に対応する異常が、機体1を急停車させる条件に対応する異常と、機体1を徐々に停車させる条件に対応する異常とに区分けされる。そして、機体1を急停車させる条件に対応する異常が検知された場合には、機体1が急停車され、機体1を徐々に停車させる条件に対応する異常が検知された場合には、機体1が徐々に停車される。これにより、機体1が停車されても、作業者に過度の負担がかかったり、作業効率が悪化したり、圃場が荒れたりすることを、可能な範囲で抑制しながら、作業者の負担や作業効率、圃場の荒れにもかかわらず、急停車する必要がある場合には機体1が急停車されて、重大な異常に適切に対応することができる。そのため、異常の内容に応じて、機体1を適切な態様で停車させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0332】
なお、異常を、機体1を急停車させる条件に対応する異常と、機体1を徐々停車させる条件に対応する異常との2つに区分けする場合に限らず、3つ以上の減速度の異なる停車の態様を設け、それぞれの異常が、減速度の異なる3つ以上の停車の態様に対応する条件に振り分けられても良い。そして、異常検知部78は、検知した異常の内容に応じて、異なる減速度で機体1が停車するように、走行制御部312を制御する。
【0333】
これにより、検知した異常に応じて、より適切な態様で機体1を停車させることができる。
【0334】
また、異常を検知した際には、機体1が停車されるだけではなく、異常検知部78は、機体1を減速させて、徐行するように走行制御部312を制御しても良い。
【0335】
異常の内容によっては、機体1を停車させる必要がない場合もある。異常が検知された際に、機体1を停車させる減速度が異なる態様の他に、機体1を徐行させる態様を設け、異常を、それぞれの態様で機体1を制御する条件として振り分ける。これにより、異常の内容に応じて、適切に機体1の走行状態を制御することができる。
【0336】
また、異常の内容によっては、圃場の同じ位置を走行するたびに、同じ異常が検知される場合がある。例えば、圃場に設けられる水口や立木は、常に同じ場所にあり、その近傍を走行する度に障害物として検知される。また、圃場の状態は毎年同じ傾向にあり、過去に機体1がスリップした位置で、その後にも機体1がスリップする可能性がある。
【0337】
そのため、異常の内容と異常が発生した位置を含む圃場の情報(圃場情報)を記憶しておき、走行する際には、圃場情報を参照して、異常が発生した位置として記憶された位置においては、記憶された異常の内容に応じて機体1を急停車、徐々に停車、あるいは徐行させても良い。例えば、圃場マップ(圃場情報)に異常の内容と異常が発生した位置とを記憶して、管理サーバ85または情報端末5に保存し、その後に走行する際には、異常検知部78は、通信部86を介して圃場マップを取得し、取得した圃場マップを参照して、過去に異常を検知した位置において、過去に検知した異常に応じて機体1を急停車、徐々に停車、あるいは徐行させるように走行制御部312を制御する。
【0338】
これにより、適切に異常の検知ができない状態であっても、過去の実績から適切に走行状態を制御することができる。
【0339】
また、障害物センサは、ソナーセンサ60に代わり、あるいはソナーセンサ60と共に、機体1の周囲の画像を撮影できる撮像装置82とすることもできる。異常検知部78は、撮像装置82が撮影した画像を解析し、障害部の存在を検知する。画像の解析は、AIを用いた機械学習により生成した学習済みモデルを用いて行うこともできる。撮像装置82を用いて障害物を検知することにより、容易に障害物の検知を行うことができる。
【0340】
なお、撮像装置82を用いて障害物を検知する場合、障害物の大きさを容易に判定することができる。障害物が大きい場合は機体1を急停車させることが必要となる場合が多いが、障害物が小さい場合は、障害部を容易に回避することができる等、機体1を急停車させることを要さない場合もある。
【0341】
そのため、障害物の大きさを判定することができる場合、自動走行制御部75の停車制御部79は、検知した障害物が所定の大きさ以上の場合の減速度に比べて減速度を小さくしても良い。
【0342】
これにより、障害物の大きさに応じて機体1を停車する際の減速度を最適にすることができ、より作業効率を向上させることができる。
【0343】
また、ソナーセンサ60は、反射波が戻ってくる時間から障害物までの距離を判定することができる。また、撮像装置82を用いて障害物を検知する場合も、画像解析により障害物までの距離を判定することができる。障害物までの距離が近い場合は機体1を急停車させる必要があるが、障害物までの距離が遠い場合、障害物を回避して走行したり、障害物が走行の妨げにならなくなる場合もあるので、機体1を急停車させることを要さない場合がある。
【0344】
そのため、停車制御部79は、検知された障害物までの距離が所定の距離以下の場合は、前記所定の距離より長い場合の前記減速度に比べて前記減速度を小さくさせても良い。
【0345】
これにより、障害物までの距離に応じて機体1を停車する際の減速度を最適にすることができ、より作業効率を向上させることができる。
【0346】
なお、機体1を急停車させる必要性は、異常の内容のみならず、異常が検知された圃場内の位置によっても変わる。そのため、機体1を停車させる際の減速度を決める条件として、異常の内容に変わり、あるいは異常の内容に加えて、異常が検知された圃場内の位置が考慮されても良い。すなわち、異常が検知された圃場内の位置に応じて、停車制御部79は、機体1を停車させる際の減速度を異ならせても良い。
【0347】
例えば、圃場の外周辺に沿って圃場の内側を周回する外周走行経路は、畦等の圃場の外周領域の近傍を走行する。圃場の外周領域には水口等の障害物が設けられることが多く、外周走行経路を走行中に異常が検知された際には機体1を急停車させる必要性が高くなる。また、外周走行経路を走行中に異常が検知された際には、走行経路が少しずれると、畦等に機体1が衝突したり、機体1が越境したりする可能性が高くなる。そのため、停車制御部79は、外周走行経路を走行中に異常が検知された際には、機体1を急停車させることが好ましい。
【0348】
このように、異常が検知された圃場内の位置に応じて、機体1を停車させる際の減速度を異ならせることにより、圃場内の位置に応じて適切に機体1を停車させることができ、作業効率を向上させることができる。
【0349】
なお、急停車させる際の減速度と、徐々に停車させる際の減速度とは、それぞれあらかじめ定められた減速度としても良いが、設定により可変としても良い。また、急停車させる条件となる異常と、徐々に停車させる条件となる異常とは、それぞれあらかじめ定められた条件としても良いが、条件を設定により可変としても良い。また、異常の内容に応じた減速度や、圃場内の位置に応じた減速度は、あらかじめ定められた減速度としても良いが、設定により可変としても良く、異常の内容毎、あるいは圃場内の位置毎に、それぞれ個別の減速度を設定できる構成としても良い。さらに、上記設定は、情報端末5等により、自動走行の開始時に設定することができ、自動走行中に情報端末5等により設定を変更できる構成としても良い。
【0350】
以上のような設定を任意に行うことにより、圃場の状況や作業状況に応じて、より最適に機体1の停車を制御することができ、より作業効率を向上させることができる。
【0351】
〔機体スリップ検知機能〕
次に、自動走行中の自動運転停車機能について、
図1~
図5、
図35を用いて説明する。
【0352】
自動走行において、自動走行制御部75が指示する指示車速に応じて、自動走行制御部75は走行機器1Dやエンジン2等を制御して、機体1を走行させる。自動走行において、機体1の車速に応じて、植え付けられる苗の供給や、散布される肥料の供給が調整され、圃場全体において適切な植え付けや肥料の散布が行われる。圃場がぬかるんでいる際には、指示車速に応じて機体1を走行させても、機体1がスリップし、実際の機体1の車速が指示車速を大きく下回ることがある。実際の機体1の車速が指示車速に対してずれると、適切な植え付けや肥料の散布が行われなくなる。
【0353】
そのため、実際の機体1の車速が、指示車速または指示車速に応じて制御された車速に対して、所定の速度、または所定の割合以上遅い場合、機体スリップ検知機能を実施する。機体スリップ検知機能は、実際の機体1の車速が、指示車速または指示車速に応じて制御された車速に対して、所定の速度、または所定の割合以上速い場合、機体1がスリップしていると判断し、自動走行制御部75の制御により、自動走行を一時停止させる機能である。
【0354】
このように、機体1がスリップしていると判断された際に自動走行を一時停止させることにより、作業走行が停止され、不適切な車速で走行することにより、植え付けや肥料の散布が計画通りに行われないことを抑制することができ、適切な作業走行を行うことができる。
【0355】
ここで、実際の機体1の車速は、測位ユニット8が出力する自車位置の単位時間当たりの変化量から算出される。また、指示車速に応じて制御された車速は、車輪12の車軸やエンジン2から車輪12に駆動力を伝達する駆動軸の回転数を測定する回転数センサ12Cが検出する車軸や駆動軸の回転数から算出される。
【0356】
自動走行制御部75は、自車位置の変化量から算出される車速が指示車速より遅い場合、すなわち、自車位置の変化量から算出される車速と、回転数センサ12Cを用いて算出される車速とを比較し、自車位置の変化量から算出される車速の方が、所定の速度、または所定の割合以上遅い場合、機体1がスリップしていると判断し、自動走行を一時停止させる。
【0357】
なお、自動走行制御部75は、機体1がスリップしていると判断した場合、直ちに自動走行を一時停止させても良いが、一時的にスリップしている場合もあるので、所定時間、スリップしている状態が継続した後に自動走行を一時停止させても良い。
【0358】
例えば、自動走行制御部75は、5秒以上継続して機体1がスリップしていると判断した後で、自動走行を一時停止させても良い。さらに、自動走行制御部75は、3秒以上継続して機体1がスリップしていると判断すると、苗植付装置3を上昇させたり、施肥装置4の繰出機構26を停止させたりして作業装置を停止させ、その後、合計で5秒以上継続して機体1がスリップしていると判断した後に、自動走行を一時停止させても良い。
【0359】
これにより、作業走行に影響が出るほどスリップが継続した場合のみ、自動走行が一時停止されるため、スリップが継続する場合のみ作業走行を停止して適切な作業走行を行いながら、作業効率を向上させることができる。
【0360】
〔別実施形態〕
(1)走行経路は、圃場の外周に沿った非作業走行を行うことにより設定される。走行経路は、情報端末5または制御ユニット30にて生成することができる。この際、情報端末5または制御ユニット30に、独立した機能ブロックとして経路設定部が設けられる構成とすることができる。また、情報端末5および制御ユニット30の両方に経路設定部が設けられ、選択的に、情報端末5または制御ユニット30のいずれで経路設定を行うかを決定する構成とすることもできる。また、外部のサーバ等で走行経路を生成し、生成された走行経路を情報端末5または制御ユニット30が受信できる構成としても良い。作業機の作業走行で得られた各種データ(マップ形状取得処理やルート作成処理などで作成されたデータ、走行中の検出された障害物に関する障害物データ、走行中に得られた走行状態データ、作業状態データ、圃場状態データなど)は、外部に設置された中央コンピュータやクラウドサービス用コンピュータにアップロードされても良い。さらに、作業前に、登録されているそのようなデータはダウンロードされても良い。
【0361】
(2)制御ユニット30は、任意の機能ブロックに細分化できる。例えば、自動走行の際の走行を制御する自動走行制御部、手動走行の際の走行を制御する手動走行制御部、各種の作業装置を制御する作業装置制御部、情報端末5やその他の機器との間で情報の送受信を行う通信部、ソナーセンサ60を制御し、障害物を検知する障害物検知部、障害物の検知結果に応じて自動走行制御部や手動走行制御部に指令を出す障害制御部、積層灯71を制御する積層灯制御部、主変速レバー7A等を制御する変速機操作部等が、制御ユニット30の機能ブロックとして個別に設けられても良い。また、
図8,
図9における情報端末5および制御ユニット30の構成要素は、説明のために特定の構成要素のみを示しているが、情報端末5および制御ユニット30は、各図で示された全ての構成要素を搭載しても良く、必要に応じて任意の構成要素を組み合わせて搭載しても良い。
【0362】
(3)上記各実施形態において、田植機が行う各種の報知を行う報知装置は情報端末5やボイスアラーム発生装置100に限らず、種々の報知装置を用いて行うことができる。例えば、リモコン90にLEDを設けて点灯パターンにより種々の情報が報知されても良いし、リモコン90にモニタを設けて種々の情報が表示されても良い。また、積層灯71やセンターマスコット20、ライト、その他の発光体の点灯パターン、作業者が所持するスマートフォンやモバイル端末、パーソナルコンピュータ等への表示や振動、リモコン90等の振動等により報知することができる。また、報知装置が行う各種報知は、制御ユニット30、または制御ユニット30に内蔵される報知制御部、あるいは制御ユニット30の外部に設けられる報知制御部により、走行状態、作業状態、各種センサの検知状態等に応じて制御される。
【0363】
(5)燃料切れ、バッテリ切れ、植付苗、肥料、薬剤などの資材切れ(資材不足)が発生した位置、あるいはそれらの発生が予測される位置が算出された場合には、その報知において、資材切れ(資材不足)の位置をタッチパネル50に、好ましくは走行経路上に表示する構成としてもよい。
【0364】
(6)上記各実施形態では、田植機を例に説明したが、本発明は、田植機を始め、直播機、管理機(薬剤や肥料等の散布を行う)、トラクタ、収穫機等の各種農作業機、さらに、作業地を作業走行する各種作業機に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0365】
本発明は、田植機等の農作業機、その他の作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0366】
1 :機体
1C :作業装置
1D :走行機器(走行装置)
8A :衛星測位モジュール(衛星測位部)
8B :慣性計測モジュール(車体方位計測部)
75 :自動走行制御部
312 :走行制御部
TS1 :距離(第1距離)
TS2 :距離(第2距離)
TS3 :距離(第3距離)
V1 :車速(第1車速)
V2 :車速(第2車速)