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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】剥離可能な熱ゲル
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20231215BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20231215BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231215BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231215BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/013
H05K7/20 F
H01L23/36 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020522700
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018056870
(87)【国際公開番号】W WO2019083883
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】62/575,915
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/160,478
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】リン・シェン
(72)【発明者】
【氏名】カイ・ヅァン
(72)【発明者】
【氏名】リーチャン・ヅァン
(72)【発明者】
【氏名】ヤー・クン・リュー
(72)【発明者】
【氏名】フイフェン・デューン
(72)【発明者】
【氏名】ハイギャン・カン
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0050419(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107057370(CN,A)
【文献】特開2016-084378(JP,A)
【文献】特開2014-224189(JP,A)
【文献】特表2012-520375(JP,A)
【文献】特開平09-207275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
H05K 7/00- 7/20
H01L 23/00- 23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスであって、
(I)少なくとも2つの熱源と、
(II)熱ゲルから硬化され、少なくとも2つの熱源上に適用された熱伝導性複合材であって、熱ゲルが、
第1の成分であって、
一次シリコーン油と、
阻害剤と、
触媒と、
少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第1の成分と、
第2の成分であって、
一次シリコーン油と、
架橋シリコーン油と、
少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第2の成分と、を含み、
前記第1の成分の前記一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、前記第2の成分の前記一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、前記第2の成分の前記架橋シリコーン油が、ヒドロシリコーン油である、熱伝導性複合材と、
(III)熱伝導性複合材上に適用されるヒートシンク又はヒートスプレッダと、を含み、
熱ゲルが少なくとも2つの熱源から剥離可能であり、
第1の成分と第2の成分の重量比は0.5:1~2:1であり、
前記熱伝導性充填剤は、第1の熱伝導性充填剤及び第2の熱伝導性充填剤を含み、第1の熱伝導性充填剤は70μmの粒子サイズを有し、第2の熱伝導性充填剤は5μmの粒子サイズを有し、熱ゲル中の熱伝導性充填剤の総量は熱ゲルの全重量に基づいて90重量%~95重量%であり、
架橋シリコーン油のSi-H基の総含有量と一次シリコーン油のビニル基の総含有量との比が、0.03~0.07である、電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の成分の前記一次シリコーン油及び前記第2の成分の架橋シリコーン油が、1000cStより大きい動粘度を各々有する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
熱ゲルが室温で所定の位置で硬化する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
熱ゲル中の触媒の濃度が100ppmより大きい、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項5】
熱ゲルが室温~100℃の温度で硬化する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項6】
第1の成分の粘度が少なくとも100Pa.sであり、第2の成分の粘度が少なくとも100Pa.sである、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項7】
熱ゲルの伝導率は、少なくとも2W/m.Kである、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項8】
電子デバイスであって、
(I)少なくとも2つの熱源と、
(II)熱ゲルから硬化され、少なくとも2つの熱源上に適用された熱伝導性複合材であって、熱ゲルが、
第1の成分であって、
一次シリコーン油と、
阻害剤と、
触媒と、
少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第1の成分と、
第2の成分であって、
一次シリコーン油と、
架橋シリコーン油と、
少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第2の成分と、を含み、
前記第1の成分の前記一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、前記第2の成分の前記一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、前記第2の成分の前記架橋シリコーン油が、ヒドロシリコーン油である、熱伝導性複合材と、
(III)熱伝導性複合材上に適用されるヒートシンク又はヒートスプレッダと、を含み、
熱ゲルが少なくとも2つの熱源から剥離可能であり、
触媒は、Ptベースの触媒で、第1の成分に少なくとも2000ppmの重量が含まれており、
前記熱伝導性充填剤は、第1の熱伝導性充填剤及び第2の熱伝導性充填剤を含み、第1の熱伝導性充填剤は70μmの粒子サイズを有し、第2の熱伝導性充填剤は5μmの粒子サイズを有し、熱ゲル中の熱伝導性充填剤の総量は熱ゲルの全重量に基づいて90重量%~95重量%であり、
架橋シリコーン油のSi-H基の総含有量と一次シリコーン油のビニル基の総含有量との比が、0.03~0.07である、電子デバイス。
【請求項9】
熱ゲルが室温で所定の位置で硬化する、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記第1の成分の前記一次シリコーン油及び前記第2の成分の架橋シリコーン油が、1000cStより大きい動粘度を各々有する、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項11】
熱ゲルが室温~100℃の温度で硬化する、請求項に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、熱ゲルに関し、より具体的には2成分の熱ゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
熱界面材料(TIM)及び熱ゲルは、中央処理装置、ビデオグラフィックスアレイ、サーバ、ゲーム機、スマートフォン、LEDボード等の電子部品からの熱を放散するために広く使用されている。熱界面材料は、典型的には、過剰の熱を電子部品からヒートシンク等のヒートスプレッダに伝達するために用いられる。
【0003】
電子機器業界では、最終デバイスのサイズを最小化することが所望される。これは、プリント回路基板(PCB)のサイズを減少させる必要があることを意味し、PCBのより小さいコンパクトな領域上でより多くの半導体チップが必要となることを意味する。これらの用途のうちのいくつかでは、熱消散目的及び組み立てコストを低減するために、マルチチップを被覆するために、モノ-ヒートシンクが使用され得る。しかしながら、チップ上の限られた利用可能な空間を有するチップ(複数化)上でヒートシンクを組み立てることは困難である。
【0004】
異なるチップは、それらのそれぞれのアセンブリのばらつきに起因して、共通のPCB上に異なる高さを有し得る。これは、異なるチップの上面とヒートシンクとの間に異なる空隙が存在すること、すなわち、共通の最低基板ライン厚(board line thickness、BLT)が、全てのチップに対して達成され得るわけではないことを意味する。
【0005】
一般に、熱ゲルは、その表面上に1つ以上のチップを含むプリント回路基板(PCB)上に適用される。多くの熱ゲルは、輸送、保管、及び使用の前に、成分が一緒に混合される単一成分系である。熱ゲルは、レベル表面が提供され、その上に、ヒートシンクが適用され得るように、チップ間の空隙を充填する。しかしながら、チップの密なレイアウトのために、熱ゲルの再加工又は再適用が必要とされる場合、チップの間隔空隙間で熱ゲルの残留物を除去することが課題である。付加的に、高い熱消散接続を達成するためには、熱ゲルの高い熱伝導率が必要とされる。更に、熱ゲルを硬化させるために、熱を適用する必要があり、これは、チップ及び/又はPCBの機能性を改変し得る。
【0006】
より容易な取り扱い、室温硬化、高い伝導性、及び残留物を伴わない剥離可能性のための低い接着性を提供する、改善された熱ゲルが所望される。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、コンピュータチップ等の発熱電子デバイスからヒートスプレッダ及びヒートシンク等の熱消散構造体に熱を伝達する際に有用である2成分の剥離可能な熱ゲルを提供する。2成分の剥離可能な熱ゲルは、適用時点の前に混合され、触媒架橋を促進する。熱ゲルは、一次シリコーン油、阻害剤、触媒、及び少なくとも1つの熱伝導性充填剤を含む、第1の成分と、一次シリコーン油、架橋シリコーン油、及び少なくとも1つの熱伝導性充填剤を含む、第2の成分と、を含み、熱ゲルは、熱ゲルが適用される基材から剥離可能である。熱ゲルの剥離可能性を増加させるために、Si-H基の総含有量とビニル基の総含有量との比は、0.03~10の範囲に制御される。
【0008】
例示的な一実施形態では、熱ゲルが提供される。熱ゲルは、第1の成分であって、一次シリコーン油と、阻害剤と、触媒と、少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第1の成分と、第2の成分であって、一次シリコーン油と、架橋シリコーン油と、少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第2の成分と、を含み、第1の成分の一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、第2の成分の一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、第2の成分の架橋第2シリコーン油が、ヒドロシリコーン油であり、熱ゲルが、熱ゲルが適用される基材から剥離可能である。より具体的な実施形態では、熱ゲルは、室温で適所で硬化する。
【0009】
より具体的な実施形態では、第1の成分に対する少なくとも1つの熱伝導性充填剤は、5ミクロン~80ミクロンの平均粒子サイズを各々有する。別のより具体的な実施形態では、第1の成分に対する少なくとも1つの熱伝導性充填剤は、70ミクロンの平均粒子サイズを有する20重量%~25重量%の第1の熱伝導性充填剤と、5ミクロンの平均粒子サイズを有する20重量%~25重量%の第2の熱伝導性充填剤と、を含む。別のより具体的な実施形態では、Si-H基の総含有量ビニル基と総含有量との比は、0.03~10の間である。別のより具体的な実施形態では、熱ゲル中の触媒の濃度は、100ppmより大きい。
【0010】
別のより具体的な実施形態では、第1の成分と第2の成分との間の重量比は、0.5:1~2:1の間である。なお別のより具体的な実施形態では、第1の成分及び第2の成分の一次シリコーン油が、1000cStより大きい動粘度を各々有する。なお別のより具体的な実施形態では、熱ゲルは、室温~100℃の温度で硬化する。上記の実施形態のいずれかのより具体的な実施形態では、第1の成分の粘度は、少なくとも100Pa.sであり、第2の成分の粘度は、少なくとも100Pa.sである。別のより具体的な実施形態では、熱ゲルの伝導率は、少なくとも2W/m.Kである。上記の実施形態のうちのいずれかのより具体的な実施形態では、触媒は、Ptベースの触媒で、第1の成分に少なくとも2000ppmの重量が含まれている。
【0011】
別の例示的な実施形態では、熱ゲルを調製する方法が提供される。本方法は、第1の成分を調製することであって、シリコーン油、阻害剤、及び触媒を反応槽に添加して混合物を形成することと、混合物を第1の速度で撹拌することと、第1の熱伝導性充填剤を反応槽に添加し、混合物を第2の速度で撹拌することと、第2の熱伝導性充填剤を反応槽に添加し、混合物を第3の速度で撹拌することと、反応槽に真空を適用し、混合物を第4の速度で撹拌することと、反応槽から真空を除去し、混合物を排出装置に移すことと、混合物をシリンジ内へ圧入することと、を含む、調製することと、第2の成分を調製することであって、第1のシリコーン油及び第2のシリコーン油を第2の反応槽に添加して、第2の混合物を形成することと、第2の混合物を第6の速度で撹拌することと、第1の熱伝導性充填剤を第2の反応槽に添加し、混合物を第7の速度で撹拌することと、第2の熱伝導性充填剤を第2の反応槽に添加し、混合物を第8の速度で撹拌することと、第2の反応槽に真空を適用し、混合物を第9の速度で撹拌することと、第2の反応槽から真空を除去し、混合物を第2の排出装置に移すことと、混合物をシリンジ内へ圧入することと、を含む、調製することと、を含む。
【0012】
より具体的な実施形態では、方法は、混合物中の空気を除去するために、排出装置に真空を適用することを更に含む。
【0013】
別の例示的な一実施形態では、電子デバイスが提供される。電子デバイスは、(I)少なくとも2つの熱源と、(II)熱ゲルから硬化され、少なくとも2つの熱源上に適用された熱伝導性複合材であって、第1の成分であって、シリコーン油と、阻害剤と、触媒と、少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第1の成分と、第2の成分であって、第1のシリコーン油と、第2のシリコーン油と、少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第2の成分と、を含み、第1の成分のシリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、第2の成分の第1のシリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、第2の成分の第2のシリコーン油が、ヒドロシリコーン油である、熱伝導性複合材と、(III)熱伝導性複合材料上に適用されるヒートスプレッシンク又はヒートスプレッダと、を含む。
【0014】
上記実施形態のいずれかのより具体的な実施形態では、熱ゲル中のSi-H基の総含有量とビニル基の総含有量との比は、0.03~10である。上記実施形態のいずれかのより具体的な実施形態では、熱伝導性複合材料は、室温でゲルから硬化される。上記実施形態のいずれかのより具体的な実施形態では、熱伝導性複合材料は、室温でゲルから100℃まで硬化される。より具体的な実施形態では、少なくとも2つの熱源は、チップダイ、又はヒートスプレッダ被覆チップ、又はPCB上のチップダイ、PCB上のヒートスプレッダ被覆チップ、若しくはPCB上のコンデンサ、若しくはPCB上の抵抗器、又はPCB上のプリント回路、又はこれらの組み合わせが挙げられる。例示的な一実施形態では、熱伝導性複合体は、熱源上の無残留物を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面と組み合わせて本発明の実施形態の以下の記載を参照することによって、本開示の上述及び他の特徴及び有利性、並びにそれらを達成する方法がより明らかになり、本発明それ自体がより良好に理解されるであろう。
【0016】
図1】熱ゲルの第1の成分を調製する方法に関するフローチャートであり、
図2】熱ゲルの第2の成分を調製する方法に関するフローチャートであり、
図3図1及び2のフローチャートによる熱ゲルを調製する方法に関するフローチャートであり、
図4A】比較例1に関連し、基材に適用されたサンプル及び基材からのその除去を示し、
図4B】比較例1に関連し、基材に適用されたサンプル及び基材からのその除去を示し、
図4C】比較例1に関連し、基材に適用されたサンプル及び基材からのその除去を示し、
図4D】比較例2に関連し、基材に適用されたサンプル及び基材からのその除去を示し、
図4E】比較例2に関連し、基材に適用されたサンプル及び基材からのその除去を示し、
図4F】比較例2に関連し、基材に適用されたサンプル及び基材からのその除去を示し、
図5A】実施例1に関連し、基材に適用されたサンプル及び基材からのその除去を示し、
図5B】実施例1に関連し、第1の基材と第2の基材との間に適用されたサンプル、並びに第1の基材及び第2の基材からのその除去を示し、
図6】電子デバイスアプリケーション用のサンプルを適用及び除去する方法を示す。
【0017】
対応する参照文字は、いくつかの図にわたって対応する部分を示す。本明細書に記載される例証は、本発明の例示的な実施態様を示すものであり、このような例証は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.熱ゲル
本開示は、コンピュータチップ等の発熱電子デバイスからヒートスプレッダ及びヒートシンク等の熱消散構造体に熱を伝達する際に有用である2成分の剥離可能な熱ゲルを提供する。2成分の剥離可能な熱ゲルは、適用時点の前に混合され、触媒架橋を促進する。熱ゲルは、一次シリコーン油、阻害剤、触媒、及び少なくとも1つの熱伝導性充填剤を含む第1の成分と、一次シリコーン油、架橋シリコーン油、及び少なくとも1つの熱伝導性充填剤を含む第2の成分を含み、熱ゲルは、熱ゲルが適用される基材から剥離可能である。
【0019】
1.第1の成分
いくつかの例示的な実施形態では、以下に記載されるような熱ゲルの第1の成分は、小さくは少なくとも50Pa.s、少なくとも75Pa.s、少なくとも100Pa.s程度、大きくは少なくとも150Pa.s、少なくとも175Pa.s、少なくとも200Pa.s、又は少なくとも50Pa.s~少なくとも200Pa.s、少なくとも75Pa.s~少なくとも175Pa.s、又は少なくとも100Pa.s~150Pa.sのような上記の値のいずれか2つの間で定義される範囲内の粘度を有する。例示的な一実施形態では、第1の成分の粘度は、少なくとも100Pa.sである。
【0020】
a.一次シリコーン油
熱ゲルは、一次シリコーン油を含む。例示的な実施形態では、一次シリコーン油は、1つ以上のポリシロキサンを含んでもよい。ポリシロキサンは、熱伝導性充填剤を湿潤し、熱ゲルのための分注可能な流体を形成する。ポリシロキサンは、触媒によって架橋される、ビニル、水酸化物、ヒドロキシル、及びアクリレート官能基等の1つ以上の架橋性基を含む。一実施形態では、1つ以上のポリシロキサンは、シリコーン油を含む。
【0021】
例示的なシリコーン油は、以下に示す一般式を有するビニルシリコーン油を含み得る。
【0022】
【化1】
【0023】
シリコーン油中のビニル基のモル比は、ヨウ素滴定により試験される。ヨウ素滴定は、1~2グラムのシリコーン油をスズ箔で包囲された円錐フラスコ内に秤量することを含む。過剰な臭化ヨウ素(IBr)溶液(利用可能な比率を有するn-ペンタン中)をフラスコに添加し、光曝露を避けるために、フラスコを更に封止する。次いで、1時間後、シールを開け、1重量%ヨウ化カリウム(KI)水溶液50mLを添加する。次いで、溶液を1~2分間振動させる。標準的な0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム(Na)水溶液を添加して、試料溶液を振動で滴定する。1mLの1重量%デンプン水溶液を、指示薬として溶液に添加する。溶液の色(例えば、青)が変化すると、滴定が停止され、チオ硫酸ナトリウムの消費が計算される。次いで、このプロセスを他のサンプルに対して繰り返す。対照アンプルを調製するために、シリコーン油を含まないプロセスを繰り返す。ビニル基(mmol/g)のモル比は、以下のとおりである:
【0024】
【数1】
【0025】
式中、N1は、ビニル基のモル比(mmol/g)であり、Vaは、ビニルシリコーン油サンプルのチオ硫酸ナトリウム溶液滴定の体積(ml)であり、Vbは、ブランクサンプルに対するチオ硫酸ナトリウム溶液滴定の体積(ml)であり、G1は、ビニルシリコーン油の重量(g)であり、M1は、標準的なチオ硫酸ナトリウム溶液のモル濃度(mol/l)である。
【0026】
シリコーン油のビニル基のモル比(mmol/g)は、小さくは0.0001、0.001、0.01、0.1程度、大きくは0.5、1、5、10程度、若しくは0.01~1、0.1~0.5、又は0.0001~10等の上記の値2つの間で定義される任意の範囲内の量であり得る。例示的な一実施形態では、ビニル基のモル比は、0.1~0.3の間の量である。
【0027】
ビニル官能性シリコーン油は、Si-CH=CH2基を有する有機シリコーン成分を含む。例示的なビニル官能性シリコーン油としては、ビニル末端シリコーン油、Si-CH=CH2基がポリマー鎖にグラフトされたビニルグラフトシリコーン油、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
例示的なビニル末端シリコーン油としては、DMS-V05、DMS-V21、DMS-V22、DMS-V25、DMS-V25R、DMS-V35、DMS-V35R、DMS-V51、及びDMS-V52等のビニル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられ、各々、Gelest,Inc.から入手可能である。
【0029】
例示的なビニルグラフトシリコーン油としては、トリメチルシロキシ末端シリコーン油、シラノール末端シリコーン油、及びビニル末端シリコーン油等のビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。例示的なトリメチルシロキシル末端シリコーン油としては、VDT-127、VDT-431、及びVDT-731が挙げられ、例示的なシラノール末端シリコーン油としては、VDS-1013が挙げられ、例示的なビニル末端シリコーン油としては、VDV-0131が挙げられ、各々、Gelest,Inc.から入手可能である。
【0030】
例示的な一実施形態では、ビニルグラフトシリコーン油は、VAT-4326等のビニルメチルシロキサン-オクチルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンターポリマー又はVPT-1323等のビニルメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンターポリマーを含むビニルメチルシロキサンターポリマーである。いくつかの例示的な実施形態において、ビニルグラフトシリコーン油は、VMM-010等のビニルメトキシシロキサンホモポリマー又はVPE-005等のビニルエトキシシロキサン-プロピルエトキシシロキサンコポリマーである。VAT-4326、VPT-1323、VMM-010、及びVPE-005は、各々、Gelest,Inc.から入手可能である。
【0031】
例示的な一実施形態では、ビニル官能性シリコーン油は、ビニルT樹脂又はビニルQ樹脂を含む。ビニルT樹脂は、ポリマー中のケイ素原子の全部又は一部を置換する3つの(三置換)酸素を有するビニルシルセスキオキサンである。例示的なT樹脂としては、Gelest,Inc.から入手可能なSST-3PV1等のポリ(フェニルビニルシルセスキキサン)が挙げられる。ビニルQ樹脂は、ポリマー中のケイ素原子の全て又は一部を置換する4つの(四置換)酸素を有する。例示的なQ樹脂としては、Gelest,Inc.から入手可能なVQM-135、VQM-146が挙げられる。ビニルQ樹脂の1つのタイプは、以下のベースポリマー構造を有する活性化硬化特殊シリコーンゴムである
【0032】
【化2】
【0033】
例示的なQ樹脂としては、Gelest,Inc.から入手可能なVQM-135、VQM-146が挙げられる。例示的な一実施形態では、ポリシロキサンは、RUNHEのRH-Vi303、RH-Vi301等、AB Specialty SiliconesのAndril(登録商標)VS200、Andril(登録商標)VS1000等のビニル官能性油である。
【0034】
例示的な低分子量シリコーン油は、ASTM D445に従って測定して、小さくは5cSt、100cSt程度、500cSt程度、大きくは5,000cSt、10,000cSt、50,000cSt程度、又は上記の値のうちのいずれか2つの間に定義される任意の範囲内の動粘度を有し得る。例示的な実施形態では、ビニルシリコーン油は、1000cSt~5000cStの範囲の動粘度を有する。低すぎる動粘度を有する熱ゲルは、デバイス上に適用されたときに熱ゲル又は熱ゲルの油ブレードの成分の蒸発をもたらす場合がある。
【0035】
一次シリコーン油ゲルは、熱ゲルの総重量に基づいて、小さくは1重量%、2重量%、4重量%程度、大きくは6重量%、8重量%、10重量%程度、又は1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、又は4重量%~5重量%等の上記の値のいずれか2つの間で定義される任意の範囲内の量であり得る。例示的な一実施形態では、熱ゲルの第1の成分は、4.854重量%の量の一次シリコーン油を含む。
【0036】
例示的シリコーン油は、小さくは50ダルトン、100ダルトン、1000ダルトン、10,000ダルトン、50,000ダルトン、70,000ダルトン、100,000ダルトン程度、大きくは1,000,000ダルトン、10,000,000ダルトン、100,000,000ダルトン程度、又は50ダルトン~100,000,000ダルトン、若しくは1000ダルトン~10,000,000ダルトン、若しくは50,000ダルトン~1,000,000ダルトン等、上記の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内の重量平均分子量を有し得る。
【0037】
第1の成分中の一次シリコーン油のビニル基含有量(mmol)は、ビニル基のモル比(mmol/g)を、第1の成分の一次シリコーン油重量(g)の重量で除算することによって計算される。
【0038】
b.触媒
熱ゲルは、付加反応を触媒するための1つ以上の触媒を更に含む。例示的な触媒は、白金含有材料を含む。触媒の存在は、室温でより高い架橋速度を可能にする。本開示の目的のために、室温は、15℃~25℃と定義される。例示的な白金含有触媒は、以下に示すような一般式を有し得る。
【0039】
【化3】
【0040】
例示的な白金含有触媒としては、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体(Ashby Karstedt触媒)、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体(Ossko触媒)、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンジメチルフマレート錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンジメチルマレイン酸錯体等が挙げられる。白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体の例としては、SIP6829.2が挙げられ、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の例としては、SIP6830.3及びSIP6831.2が挙げられ、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体の例としては、SIP6833.2が挙げられ、これらは全て、Gelest,Inc.から入手可能である。
【0041】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、白金触媒は、以下に示すように、ビニルシリコーン油及びヒドロシリコーン油と反応すると考えられる。
【0042】
【化4】
【0043】
熱ゲルは、シリコーン油の全重量に基づいて、小さくは5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、40ppm、50ppm、100ppm程度、大きくは200ppm、500ppm、1000ppm、5000ppm、10000ppm、100000ppm程度、又は10ppm~200ppm、20ppm~1000ppm、若しくは5ppm~10000ppm等の、上記の値のうちの任意の2つの間に定義される任意の範囲内の量の1つ以上の触媒を含み得る。例示的な実施形態では、触媒は、第1の成分中の少なくとも2000ppmの重量負荷を有するPt系触媒である。触媒の存在は、室温でより高い架橋速度を可能にする。
【0044】
例示的な一実施形態では、触媒は、1つ以上のシリコーン油との混合物として提供される。例示的な一実施形態では、触媒は、Shin-Etsuから入手可能なKE-1012-A、KE-1031-A、KE-109E-A、KE-1051J-A、KE-1800T-A、KE1204A、KE1218A等、Bluestarから入手可能なSILBIONE(登録商標)RT Gel 4725 SLD A等、Wackerから入手可能なSilGel(登録商標)612A、ELASTOSIL(登録商標)L3153A、ELASTOSIL(登録商標)LR3003A、ELASTOSIL(登録商標)LR3005A、SEMICOSIL(登録商標)961A、SEMICOSIL(登録商標)927A、SEMICOSIL(登録商標)205A、SEMICOSIL(登録商標)9212A、SILPURAN(登録商標)2440等、Momentiveから入手可能なSilopren(登録商標)LSR 2010A等、Dow Corningから入手可能なXIAMETER(登録商標)RBL-9200A、XIAMETER(登録商標)RBL-2004A、XIAMETER(登録商標)RBL-9050A、XIAMETER(登録商標)RBL-1552 A、Silastic(登録商標)FL 30-9201 A,Silastic(登録商標)9202 A、Silastic(登録商標)9204 A、Silastic(登録商標)9206 A、SYLGARD(登録商標)184A、Dow Corning(登録商標)QP-1 A、Dow corning(登録商標)C6 A、Dow Corning(登録商標)CV9204 A等のビニル官能性シリコーン油と合わされる。例示的な一実施形態では、触媒は、Shin-Etsuから入手可能なKE-1056、KE-1151、KE-1820、KE-1825、KE-1830、KE-1831、KE-1833、KE-1842、KE-1884、KE-1885、KE-1886、FE-57、FE-61等、Dow Corningから入手可能なSyl-off(登録商標)7395、Syl-off(登録商標)7610、Syl-off(登録商標)7817、Syl-off(登録商標)7612、Syl-off(登録商標)7780等のビニル及び水素化物官能性シリコーン油と合わされる。
【0045】
熱ゲルは、熱ゲルの全重量に基づいて、小さくは0.001重量%、0.005重量%、0.01重量%程度、大きくは0.015重量%、0.020重量%、0.025重量%程度、又は上記の値のうちのいずれかの2つの間に定義される任意の範囲内の量の触媒を含み得る。例示的な一実施形態では、熱ゲルは、約0.019重量%の量の触媒を含む。
【0046】
c.阻害剤
熱ゲルは、一次シリコーン油と第2の成分の第2の成分の架橋シリコーン油(本明細書で考察される)との反応を阻害又は制限するための1つ以上の添加阻害剤を含む。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、付加阻害剤が存在しない場合、一次シリコーン油は、添加ヒドロシリル化メカニズムに基づいて非常に迅速に架橋官能性シリコーン油と反応して、典型的な方法によって自動的に分注され得ない固相を形成する。付加阻害剤は、少なくとも1つのアルキニル化合物を含み、任意選択的に、付加阻害剤は、マルチビニル官能性ポリシロキサンを更に含む。
【0047】
例示的な付加阻害剤としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、2-エチニル-イソプロパノール、2-エチニル-ブタン-2-オール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール;トリメチル(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)シラン、ジメチル-ビス-(3-メチル-1-ブチンオキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、及び((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン等のシリル化アセチレンアルコール;マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジアチル、フマル酸ジアリル、及びマレイン酸ビス-2-メトキシ-1-メチルエチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノアリル、フマル酸2-メトキシ-1-メチルエチル等の不飽和カルボン酸エステル;アルコールがベンジルアルコール又は1-オクタノール及びエテニルシクロヘキシル-1-オールから選択される混合物等のフマル酸/アルコール混合物;2-イソブチル-1-ブテン-3-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3-メチル-3-ヘキセン-1-イン、1-エチニルシクロヘキセン、3-エチル-3-ブテン-1-イン、及び3-フェニル-3-ブテン-1-イン等の共役エンイン;I,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシクロシロキサン、及び共役エンインとビニルシクロシロキサンの混合物が挙げられる。例示的な一実施形態において、付加阻害剤は、2-メチル-3-ブチン-2-オール又は3-メチル-1-ペンチン-3-オールから選択される。
【0048】
いくつかの例示的な実施形態では、付加阻害剤は、マルチビニル官能性ポリシロキサンを更に含む。例示的なマルチビニル官能性ポリシロキサンは、Wacker Chemie AGから入手可能なPt Inhibitor 88の等のエチニルシクロヘキサノール中のビニル末端ポリジメチルシロキサンである。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、白金触媒は、以下に示すようにエチニルシクロヘキサノール及びビニル末端ポリジメチルシロキサンと錯体を形成すると考えられる。
【0049】
【化5】
【0050】
錯体の形成は、室温での触媒活性を低下させ、したがってTIMの分注性及び濡れ性を維持すると考えられている。硬化工程のより高い温度で、Ptは錯体から放出され、ビニル官能性シリコーン油及び水素化物官能性シリコーン油のヒドロシリル化を助け、「架橋」をより制御する。
【0051】
いくつかの例示的な実施形態では、熱ゲルは、熱ゲルの全重量に基づいて、小さくは0.001重量%、0.002重量%、0.005重量%、0.01重量%、0.015重量%程度、大きくは0.02量%、0.025重量%、0.03重量%、0.05重量%、0.1重量%程度、又は0.001重量%~0.1重量%、0.001重量%~0.05重量%、若しくは0.005重量%~0.02重量%等の、上記の値のうちのいずれかの2つの間に定義される任意の範囲内の量の1つ以上の阻害剤を含み得る。例示的な一実施形態では、熱ゲルは、0.005重量%の量の付加阻害剤を含む。
【0052】
例示的な一実施形態では、付加阻害剤は、Shin-Etsuから入手可能なKE-1056、KE-1151、KE-1820、KE-1825、KE-1830、KE-1831、KE-1833、KE-1842、KE-1884、KE-1885、KE-1886、FE-57、FE-61等、Dow Corningから入手可能なSyl-off(登録商標)7395、Syl-off(登録商標)7610、Syl-off(登録商標)7817、Syl-off(登録商標)7612、Syl-off(登録商標)7780等の官能性シリコーン油と合わされる。
【0053】
2.第2の成分
a.一次シリコーン油
熱ゲルの第2の成分は、上記の説明に従って一次シリコーンを含む。第1の成分の一次シリコーン及び第2の成分の一次シリコーンが、異なる一次シリコーン化合物であることは、本開示の範囲内である。また、第1の成分の一次シリコーン及び第2の成分の一次シリコーンは、同じシリコーン化合物であることもまた、本開示の範囲内である。
【0054】
第2成分中の一次シリコーン油のビニル基含有量(mmol)は、ビニル基のモル比(mmol/g)を、第2の成分の一級シリコーン油重量(g)の重量で除算することによって計算される。
【0055】
総製剤中のビニル基(Tvinyl、mmol)の総含有量は、第1の成分の一次シリコーン油中のビニル基の含有量及び第2の成分の一次シリコーン油中のビニル基の含有量を合計することによって計算される。
【0056】
b.架橋シリコーン油
熱ゲルは、架橋シリコーン油を更に含み得る。架橋シリコーン油は、Si-H基を含み得る。例示的なシリコーン油は、以下に示すような一般式を有するヒドロシリコーン油を含む。例示的なヒドロシリコーン油は、一次シリコーン油との付加反応において架橋剤として機能する。
【0057】
【化6】
【0058】
シリコーン油の架橋中のSi-H基のモル比は、ヨウ素滴定によって試験される。ヨウ素滴定は、約0.1グラムの水素化シリコーン油をスズ箔で包囲された円錐フラスコ内に秤量することを含む。20mLの四塩化炭素(CCl)をフラスコに添加してシリコーン油を溶解させ、光曝露を避けるために、フラスコを更に封止する。次いで、過剰な臭素酢酸溶液(約10mLの可用性比を有する)を、10mLの水と共にフラスコに添加する。フラスコは、光の曝露を回避するために更に封止される。30分後、シールを開き、25mlの10重量%ヨウ化カリウム(KI)水溶液を溶液に添加する。次いで、溶液を1~2分間振動させる。次いで、標準的な0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム(Na)水溶液を添加して、試料溶液を振動で滴定する。1mLの1重量%デンプン水溶液を、指示薬として溶液に添加する。溶液(例えば、青)の色が変化すると、滴定が停止され、チオ硫酸ナトリウムの消費が計算される。次いで、このプロセスを他のサンプルに対して繰り返す。対照サンプルを調製するために、シリコーン油を含まないプロセスを繰り返す。Si-H基(mmol/g)の含有量は以下のとおりである
【0059】
【数2】
【0060】
式中、N2は、Si-H基のモル比(mmol/g)であり、Vdは、水素化シリコーン油サンプルに対するチオ硫酸ナトリウム溶液滴定の体積(ml)であり、Vcは、ブランクサンプルに対するチオ硫酸ナトリウム溶液滴定の体積(ml)であり、G2は、水素化シリコーン油の重量(g)であり、M2は、標準的なチオ硫酸ナトリウム溶液のモル濃度(mol/l)である。
【0061】
シリコーン油中のSi-H基(mmol/g)のモル比は、小さくは0.0001、0.001、0.01、0.1程度、大きくは1、5、10、50程度、又は0.01~1、0.1~5、又は0.0001~50等の上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内の量であり得る。例示的な一実施形態では、Si-H基のモル比は、0.2~2の量である。
【0062】
例示的な一実施形態では、シリコーン油は、有機シリコーン成分とSi-H基とを有する水素化物官能性シリコーン油を含む。例示的な水素化物官能性シリコーン油としては、Si-H基がポリマー鎖にグラフトされている、水酸化物末端シリコーン油及び水素化物グラフトシリコーン油、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
例示的な一実施形態では、水素化物末端シリコーン油は、DMS-H05、DMS-H21、DMS-H25、DMS-H31、又はDMS-H41等の水素化物末端ポリジメチルシロキサンであり、各々、Gelest,Inc.から入手可能である。例示的な一実施形態では、水素化物末端シリコーン油は、トリメチルシロキシ末端又は水素化物末端等のメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーである。例示的なトリメチルシロキシ末端コポリマーとしては、HMS-013、HMS-031、HMS-064、HMS-071、HMS-082、HMS-151、HMS-301、HMS-501が挙げられ、例示的な水素化物末端コポリマーとしては、HMS-H271が挙げられ、それらの各々は、Gelest,Inc.から入手可能である。例示的な一実施形態では、水素化物グラフトシリコーン油は、HMS-991、HMS-992、HMS-993等のトリメチルシロキシ末端を有するポリメチルヒドロシロキサンであり、各々、Gelest,Inc.から入手可能である。
【0064】
例示的な一実施形態では、水素化物グラフトシリコーン油は、HES-992等のトリエチルシロキシ末端を有するポリエチルヒドロシロキサンであり、Gelest,Inc.から入手可能である。例示的な一実施形態では、水素化物グラフトシリコーン油は、Gelest,Inc.から入手可能なHAM-301等のメチルヒドロシロキサン-オクチルメチルシロキサンコポリマーである。
【0065】
例示的な一実施形態では、水素化物官能性油はQ樹脂又はT樹脂であり、例示的なT樹脂としては、SST-3MH1.1が挙げられ、例示的なQ樹脂としては、HQM-105及びHQM-107が挙げられ、各々、Gelest,Inc.から入手可能である。
【0066】
例示的な一実施形態では、ポリシロキサンは、AB Specialty Siliconesから入手可能なAndri(登録商標)XL-10、Andri(登録商標)XL-12等、RUNHEから入手可能なRH-DH04及び等のRH-H503等、Shin-Etsuから入手可能なKE-1012-B、KE-1031-B、KE-109E-B、KE-1051J-B、KE-1800T-B、KE1204B、KE1218B等、Bluestarから入手可能なSILBIONE(登録商標)RT Gel4725SLD B等、Wackerから入手可能なSilGel(登録商標)612B、ELASTOSIL(登録商標)LR3153B、ELASTOSIL(登録商標)LR3003B、ELASTOSIL(登録商標)LR3005B、SEMICOSIL(登録商標)961B、SEMICOSIL(登録商標)927B、SEMICOSIL(登録商標)205B、SEMICOSIL(登録商標)9212B、SILPURAN(登録商標)2440等、Momentiveから入手可能なSilopren(登録商標)LSR2010B等、Dow Corningから入手可能なXIAMETER(登録商標)RBL-9200B、XIAMETER(登録商標)RBL-2004B、XIAMETER(登録商標)RBL-9050B、XIAMETER(登録商標)RBL-1552B、Silastic(登録商標)FL30-9201B、Silastic(登録商標)9202B、Silastic(登録商標)9204B、Silastic(登録商標)9206B、SYLGARD(登録商標)184B、DowCorning(登録商標)QP-1B、DowCorning(登録商標)C6B、DowCorning(登録商標)CV9204B等の水素化官能性油である。
【0067】
例示的な一実施形態では、ポリシロキサンは、Shin-Etsuから入手可能なKEシリーズ製品等、Bluestarから入手可能なSILBIONE(登録商標)、Wackerから入手可能なELASTOSIL(登録商標)、SilGel(登録商標)、SILPURAN(登録商標)、及びSEMICOSIL(登録商標)等、Momentiveから入手可能なSilopren(登録商標)等、Dow Corningから入手可能なDowCorning(登録商標)、Silastic(登録商標)、XIAMETER(登録商標)、Syl-off(登録商標)SYLGARD(登録商標)等、及びAB specialty Silicones入手可能なAndril(登録商標)等のシリコーンゴムを含む。他のポリシロキサンは、Wacker、Shin-etsu、Dowcoring、Momentive、Bluestar、RUNHE、AB Specialty Silicones、及びGelestから入手可能である。
【0068】
例示的な架橋シリコーン油は、小さくは0.5cSt、5cSt、100cSt、200cSt程度、大きくは1,000cSt、10,000cSt、100,000cSt程度、又は0.5cSt~100,000cSt、5cSt~10,000cSt、100cSt~1,000cSt、又は200cSt~1,000cSt等の、ASTMD445に従って測定されたときの上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内の動粘度を有し得る。例示的な一実施形態では、架橋シリコーン油は、300cSt~700cStの動粘度を有する。
【0069】
架橋シリコーン油は、熱ゲルの全重量に基づいて、小さくは0.1重量%、0.2重量%、0.4重量%程度、大きくは0.6重量%、0.8重量%、1.0重量%程度、又は0.1重量%~1.0重量%、0.1重量%~0.5重量%、若しくは0.1重量%~0.4重量%等の、上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内の量で存在し得る。
【0070】
例示的な実施形態では、熱ゲルの第2の成分は、4.746重量%の量の第1の成分中の一級シリコーン油と、0.26重量%の量の架橋シリコーン油と、を含む。
【0071】
例示的シリコーン油は、小さくは50ダルトン、100ダルトン、1000ダルトン、10,000ダルトン、50,000ダルトン、70,000ダルトン、100,000ダルトン程度、大きくは1,000,000ダルトン、10,000,000ダルトン、100,000,000ダルトン程度、又は50ダルトン~100,000,000ダルトン、若しくは1000ダルトン~10,000,000ダルトン、若しくは50,000ダルトン~1,000,000ダルトン等、上記の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内にある重量平均分子量を有し得る。
【0072】
全配合物中のSi-H基(TSi-H、mmol)の総含有量は、第2の成分中のシリコーン油のSi-H基(mmol/g)のモル比を、第2の成分中の架橋シリコーン油の重量(g)で割ることによって計算される。
【0073】
Si-H/Tvinylによって計算されるSi-H基(TSi-H)の総含有量とビニル基(Tvinyl)の総含有量との比は、小さくは0.0001、0.001、0.01程度、大きくは0.1、1、10、100、1000程度、又は0.001~0.1、0.01~1、又は0.001~100等の上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内の量であり得る。例示的な製剤では、Si-H基(TSi-H)の総含有量ビニル基(Tvinyl)の総含有量との比は、0.03~10であってもよい。
【0074】
3.熱伝導性充填剤
熱ゲルの第1及び第2の成分は、1つ以上の熱伝導性充填剤を含む。しかしながら、熱ゲルの第1及び第2の成分のうちの1つのみが1つ以上の熱伝導性充填剤を含むことは、本開示の範囲内である。更に、熱ゲルの第1及び第2の成分のいずれも1つ以上の熱伝導性充填剤を含まないことは、本開示の範囲内である。
【0075】
例示的な実施形態では、第1及び第2の成分は、一次充填剤及び二次充填剤が提供される二峰性アルミニウム充填剤を各々含む。一次充填剤は、バルク充填剤として動作し、成分の成分のためのマトリックスを提供するように機能し、一方二次充填剤は、一次充填剤によって形成されたマトリックス内の空隙が充填される充填/均一性機能を有する。
【0076】
例示的な熱伝導性充填剤としては、金属、合金、非金属、金属酸化物及びセラミック、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。金属としては、アルミニウム、銅、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、インジウム、及び鉛が挙げられるが、それらに限定されない。非金属としては、カーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、窒化ホウ素、及び窒化ケイ素が挙げられるが、それらに限定されない。金属酸化物又はセラミックとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、及び酸化スズが挙げられるが、それらに限定されない。
【0077】
熱ゲルは、熱ゲルの全重量に基づいて、小さくは75重量%、77重量%、80重量%程度、大きくは90重量%、92重量%、95重量%程度、又は75重量%~95重量%、若しくは77重量%~92重量%、80重量%~90重量%等の、上記の値のうちの任意の2つの間に定義される任意の範囲内の量の組み合わされた熱伝導性充填剤の総量を含み得る。
【0078】
例示的な熱伝導性充填剤は、小さくは5ミクロン、10ミクロン、20ミクロン程度、大きくは40ミクロン、60ミクロン、80ミクロン程度、又は上記の値のうちの任意の2の間に定義される任意の範囲内のASTM B822に従ってレーザ回折分析器を通して測定される平均粒子サイズ(D50:質量中央径(mass-median-diameter、MMD)又は質量による平均粒子径又は対数正規分布質量中央径)を有し得る。
【0079】
例示的な一実施形態では、熱ゲルの第1の成分及び/又は第2の成分は、第1の熱伝導性充填剤及び第2の熱伝導性充填剤、を含むことができ、第1の熱伝導性充填剤は、70ミクロンの粒子サイズを有し、第2の熱伝導性充填剤は、5ミクロンの粒子サイズ径を有する。より具体的な実施形態では、第1の熱伝導性充填剤と第2の熱伝導性充填剤との比は、小さくは1:5、1:4、1:3、1:2程度、大きくは1:1、1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1程度、又は1:5~5:1、1:1~3:1、若しくは1.5:1~3:1等の、上記の値のうちの任意の2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。
【0080】
4.添加剤(着色剤)
熱ゲルは、有機及び無機顔料及び有機染料等の2成分間を区別するための着色剤を含む。本開示の範囲内では、熱ゲルの第1の成分及び第2の成分のうちの1つのみが着色剤又は他の添加剤を含むことは、本開示の範囲内である。また、熱ゲルの第1の成分及び第2の成分の両方が着色剤又は他の添加剤を含むこともまた、本開示の範囲内である。更に、熱ゲルの第1の成分も第2の成分も着色剤又は他の添加剤を含まないことは、本開示の範囲内である。
【0081】
例示的な有機顔料としては、Clariant International Ltd.(ムッテンツ、スイス)からの青色ベンゾイミダゾロン顔料、Novoperm Carmine HF3C等のベンゾイミダゾロンが挙げられる。例示的な無機顔料としては、カーボンブラック及び鉄系化合物が挙げられる。例示的な鉄系化合物としては、α-Fe、α-Fe・HO、Fe、及びこれらの組み合わせ等の酸化鉄化合物が挙げられる。例示的な有機染料には、ベンゾ[kl]チオキサンテン-3,4-ジカルボキシイミド、N-オクタデシル-(8CI);ベンゾチオキサンテン-3,4-ジカルボン酸-N-ステアリルイミドが含まれる。
【0082】
いくつかの例示的な実施形態では、着色剤は、α-Fe、α-Fe・HO、及びFeからなる群から選択される無機顔料である。
【0083】
いくつかの例示的な実施形態では、着色剤は有機顔料である。より具体的な実施形態では、着色剤は、式(I)~(XVI)からなる群から選択される有機である。
【0084】
より具体的な実施形態では、着色剤は、ピグメントレッド176としても知られ、CAS登録番号12225-06-8を有する、式(I)の有機顔料である。
【0085】
【化7】
【0086】
より具体的な実施形態では、着色剤は、ビス[4-[[1-[[(2-メチルフェニル)アミノ]カルボニル]-2-オキソプロピル]アゾ]-3-ニトロベンゼンスルホン酸]カルシウムとしても知られ、CAS登録番号12286-66-7を有する、式(II)の有機顔料である。
【0087】
【化8】
【0088】
より具体的な実施形態では、着色剤は、ジエチル4,4’-[(3,3’-ジクロロ[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(アゾ)]ビス[4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1-フェニル-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート]としても知られ、CAS登録番号6358-87-8を有する、式(III)の有機顔料である。
【0089】
【化9】
【0090】
より具体的な実施形態では、着色剤は、2,2’-[(3,3’-ジクロロ[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(アゾ)]ビス[N-(2,4-ジメチルフェニル)-3-オキソ-ブタンアミドとしても知られ、CAS登録番号5102-83-0を有する、式(IV)の有機顔料である。
【0091】
【化10】
【0092】
より具体的な実施形態では、着色剤は、(29H,31H-フタロシアニナート(2-)-N29,N30,N31,N32)銅としても知られ、CAS登録番号147-14-8を有する、式(V)の有機顔料である。
【0093】
【化11】
【0094】
より具体的な実施形態では、着色剤は、ブリリアントグリーンフタロシアニンとしても知られ、CAS登録番号1328-53-6を有する、式(VI)の有機顔料である。
【0095】
【化12】
【0096】
より具体的な実施形態では、着色剤は、9,19-ジクロロ-5,15-ジエチル-5,15-ジヒドロ-ジインドロ[2,3-c:2’,3’-n]トリフェノジオキサジンとしても知られ、CAS登録番号6358-30-1を有する、式(VII)の有機顔料である。
【0097】
【化13】
【0098】
より特定の実施形態では、着色剤は、5,12-DIHYDROQUIN[2,3-B]ACRIDINE-7,14-DIONE、5,12-ジヒドロキノン[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、及びCAS 1047-16-1としても知られる式(VIII)の有機顔料である。
【0099】
【化14】
【0100】
より具体的な実施形態では、着色剤は、2,9-ビス(3,5-ジメチルフェニル)アントラ[2,1,9-def:6,5,10-d’e’f]ジイソキノリン-1,3,8,10(2H,9H)-テトラオンとしても知られ、CAS登録番号4948-15-6を有する、式(IX)の有機顔料である。
【0101】
【化15】
【0102】
より具体的な実施形態では、着色剤は、4,4’-ジアミノ-[1,1’-ビアントラセン]-9,9’,10,10’-テトラオン又はピグメントレッド177としても知られ、CAS登録番号4051-63-2を有する、式(X)の有機顔料である。
【0103】
【化16】
【0104】
より具体的な実施形態では、着色剤は、3,3’-[(2-メチル-1,3-フェニレン)ジイミノ]ビス[4,5,6,7-テトラクロロ-1H-イソインドール-1-オン]としても知られ、CAS登録番号5045-40-9を有する、式(XI)の有機顔料である。
【0105】
【化17】
【0106】
より具体的な実施形態では、着色剤は、ビス[4-[[1-[[(2-クロロフェニル)アミノ]カルボニル]-2-オキソプロピル]アゾ]-3-ニトロベンゼンスルホン酸]カルシウムとしても知られ、CAS登録番号71832-85-4を有する、式(XII)の有機顔料である。
【0107】
【化18】
【0108】
より具体的な実施形態では、着色剤は、3,4,5,6-テトラクロロ-N-[2-(4,5,6,7-テトラクロロ-2,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-1H-インデン-2-イル)-8-キノリニル]フタルイミドとしても知られ、CAS登録番号30125-47-4を有する、式(XIII)の有機顔料である。
【0109】
【化19】
【0110】
より具体的な実施形態では、着色剤は、[1,3-ジヒドロ-5,6-ビス[[(2-ヒドロキシ-1-ナフタレニル)メチレン]アミノ]-2H-ベンズイミダゾール-2-オナト(2-)-N5,N6,O5,O6]ニッケルとしても知られ、CAS登録番号42844-93-9を有する、式(XIV)の有機顔料である。
【0111】
【化20】
【0112】
より具体的な実施形態では、着色剤は、ピグメントレッド279としても知られ、CAS登録番号832743-59-6を有する、式(XV)の有機顔料であり、式中各Rは、独立して、水素、アルキル、アリール、及びハロゲンからなる群から選択される。更により具体的な実施形態では、各Rは独立して、水素、C-Cアルキル、フェニル、及びハロゲンからなる群から選択される。別のより具体的な実施形態では、各Rは塩素であり、更により具体的には、各Rは7-クロロである。
【0113】
【化21】
【0114】
より具体的な実施形態では、着色剤は、ピリミド[5,4-g]プテリジン-2,4,6,8-テトラミン、4-メチルベンゼンスルホネート塩基加水分解物としても知られ、CAS登録番号346709-25-9を有する、式(XVI)の有機顔料である。
【0115】
【化22】
【0116】
もう1つの具体的な実施形態では、着色剤は、BAI YANから入手可能なIron Red等のα-Feである。別のより具体的な実施形態では、着色剤は、BAI YANから入手可能なIron Yellow等のα-Fe・HOである。更に別のより具体的な実施形態では、着色剤は、BAI YANから入手可能なIron Blue等のFeである。なお更に別のより具体的な実施形態では、着色剤は、Clariant International Ltd.(ムッテンツ、スイス)から入手可能なNovoperm Carmine HF3C等の、化学式C3224を有する式(I)の顔料である。
【0117】
いくつかの例示的な実施形態では、熱ゲルは、着色剤を、着色剤を含まずに100重量%の熱界面材料を基準として、小さくは0.001重量%、0.005重量%、0.01重量%程度、大きくは0.015重量%、0.02重量%、0.025重量%、0.03重量%、0.05重量%程度、又は0.001重量%~0.05重量%、若しくは0.005重量%~0.02重量%等の、上記の値のうちのいずれかの2つの間に定義される任意の範囲内の量で含む。
【0118】
B.熱ゲルを形成する方法
図1を参照すると、熱ゲルの第1の成分を調製する方法100が示されている。工程102において、反応槽を開き、シリコーン油、阻害剤、及び触媒を秤量し、反応槽に添加して混合物を形成する。混合物を一定時間撹拌する。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分20回転(rpm)未満、25rpm、30rpm程度、大きくは35rpm、37rpm、40rpm程度、又は上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは1分、3分、5分程度、大きくは6分、8分、10分程度、又は上記の値の2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物を30rpm未満の速度で5分間撹拌する。
【0119】
次いで、方法100は、第1の熱伝導性充填剤が反応槽に添加される行程104に進む。次いで、反応槽内に得られた混合物をある期間撹拌する。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分5回転(rpm)未満、7rpm、9rpm程度、大きくは10rpm、12rpm、15rpm程度、又は上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは1分、3分、5分程度、大きくは6分、8分、10分程度、又は上記の値の2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物を10rpm未満の速度で5分間撹拌する。
【0120】
次いで、方法100は、第2の熱伝導性充填剤を反応槽に添加し、得られた混合物を第1の速度で第1の期間にわたって撹拌し、続いて第2の速度で第2の期間にわたって撹拌する工程106に進む。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分5回転(rpm)未満、10rpm、20rpm、30rpm程度、大きくは40rpm、50rpm、60rpm、70rpm程度、又は上記の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは5分、10分、20分、30分程度、大きくは40分、50分、60分、70分程度、又は上記の値のうちの2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物を10rpmで10分間撹拌し、続いて54rpmで1時間撹拌する。
【0121】
次に、方法100は、混合物が、撹拌が一定期間継続する間、反応槽内で真空下にある工程108に進む。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分40回転(rpm)未満、45rpm、50rpm程度、大きくは55rpm、60rpm、65rpm、70rpm程度、又は上記の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは10分、15分、20分程度、大きくは30分、40分、50分程度、又は上記の値の2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物は、真空下にあり、54rpmで30分間撹拌される。
【0122】
次いで、方法100は、真空が停止され、反応槽の内容物が、真空が適用されて、得られるペースト内の空気を除去する排出装置に移る工程110に進む。次いで、真空を停止し、得られたペーストをシリンジ内へ圧入する。
【0123】
図2を参照すると、熱ゲルの第2の成分を調製する方法200が示されている。工程202において、反応槽を開き、シリコーン油及び架橋シリコーン油を秤量し、反応槽に添加して混合物を形成する。混合物を一定時間撹拌する。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分20回転(rpm)未満、25rpm、30rpm程度、大きくは35rpm、37rpm、40rpm程度、又は上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは1分、3分、5分程度、大きくは6分、8分、10分程度、又は上記の値の2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物を30rpm未満の速度で5分間撹拌する。
【0124】
次いで、方法200は、1つ以上の熱伝導性充填剤が反応槽に添加される行程204に進む。次いで、反応槽内に得られた混合物をある期間撹拌する。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分5回転(rpm)未満、7rpm、9rpm程度、大きくは10rpm、12rpm、15rpm程度、又は上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは1分、3分、5分程度、大きくは6分、8分、10分程度、又は上記の値の2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物を10rpm未満の速度で5分間撹拌する。
【0125】
次いで、方法200は、第2の熱伝導性充填剤を反応槽に添加し、得られた混合物を第1の速度で第1の期間にわたって撹拌し、続いて第2の速度で第2の期間にわたって撹拌する工程206に進む。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分5回転(rpm)未満、10rpm、20rpm、30rpm程度、大きくは40rpm、50rpm、60rpm、70rpm程度、又は上記の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは5分、10分、20分、30分程度、大きくは40分、50分、60分、70分程度、又は上記の値のうちの2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物を10rpmで10分間撹拌し、続いて54rpmで1時間撹拌する。
【0126】
次に、方法200は、混合物が、撹拌が一定期間継続する間、反応槽内で真空下にある工程208に進む。例示的な撹拌速度は、小さくは毎分40回転(rpm)未満、45rpm、50rpm程度、大きくは55rpm、60rpm、65rpm、70rpm程度、又は上記の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。撹拌速度の例示的な時間は、小さくは10分、15分、20分程度、大きくは30分、40分、50分程度、又は上記の値の2つの間に定義される任意の範囲内である。例示的な実施形態では、混合物は、真空下にあり、54rpmで30分間撹拌される。
【0127】
次いで、方法200は、真空が停止され、反応槽の内容物が、真空が適用されて、得られるペースト内の空気を除去する排出装置に移る工程210に進む。次いで、真空を停止し、シリンジが使用されるときに成分がシリンジ内で混合されるシリンジ内へ得られたペーストを圧入する。
【0128】
ここで図3を参照すると、熱ゲルを調製するための方法300が提供される。工程302において、方法100及び200のそれぞれに従って、第1の成分及び第2の成分が調製される。次に、工程304において、第1の成分及び第2の成分は、小さくは0.5:1、0.75:1、1:1程度、大きくは1.5:1、1.75:1、2:1程度、又は上記の値の2つの間に定義される任意の範囲内の比(第1の成分:第2の成分)で一緒に混合される。大きすぎる又は低すぎる比(第1の成分:第2の成分)は、より小さい容積成分の重量の変動が、阻害剤、触媒、架橋シリコーン油、及び/又は他の低荷重原料の目標重量比のより大きな変動をもたらし得るため、使用時に動作不調をもたらす可能性がある。例示的な実施形態では、第1の成分及び第2の成分は、静的ミキサーによって1:1比で混合される。
【0129】
第1の成分及び第2の成分を混合した後、得られた混合物を、次に工程306で示されるように表面上に適用する。混合物は、自動分配機又はシリンジ等の手動分配機によって適用され得る。
【0130】
図6は、図1図3に従って調製された熱ゲル608を適用する方法600を示す。工程610に示すように、プリント回路基板(PCB)602は、チップ604、606を含む。より多い又は少ない数のチップ、がPCB602上に提供され得ることは、本開示の範囲内である。工程620では、熱ゲル608は、上で考察されるように、手動分注又は自動分注装置を介してPCB602及びチップ604、606上に適用される。熱ゲル608は、熱ゲル608がチップ604、606の上部表面を被覆するように適用される。熱ゲル608が適用されると、ヒートシンク612は、工程630に示されるように熱ゲル608上に適用され、熱ゲル608が硬化する。工程640は、熱ゲル608が硬化して熱伝導性複合体609を形成するデバイスの最終構造を示す。
【0131】
導電性熱複合体609を再加工する必要がある場合、方法600に示されるように、熱伝導性複合体609をデバイスから除去することができる。デバイスから熱ゲル608を除去するために(工程640から)、ヒートシンク612は、工程650に示されるように熱伝導性複合体609から除去される。次に、工程660に示すように、熱伝導性複合体609は、PCB602及びチップ604、606から除去され(例えば、剥離され、図5A)、デバイスをその元の状態に戻す。本明細書で更に詳細に考察されるように、熱伝導性複合体609は、PCB602及びチップ604、606上に残された残留物を伴わずに除去される。
【0132】
C.熱ゲルの特性
本開示の熱ゲルは、第1の成分と第2の成分との間の重量比が、約1:1で混合され得る。有利には、このような比は、調製/混合の容易さをもたらし、熱ゲルを形成する。更に、混合比は、適用時点の前の成分の容易で正確な混合を提供する。例えば、熱ゲルの調製は、第1の成分と第2の成分との混合比が、異なる混合比と比較して1:1である場合、バッチプロセスにおいてより容易に行うことができる。
【0133】
方法100、200及び300から得られた熱ゲルを自動的に分注することができる。熱ゲルは、所定の位置で硬化するが、熱ゲルを表面に再加工又は再適用する必要がある場合は、剥離可能又は簡単に除去される。したがって、熱ゲルの容易な除去は、熱ゲルが再加工又は再適用される必要があるときに、清浄化時間が短縮される。
【0134】
更に、上記のように、熱ゲルは、所定の位置で硬化することができる。アセンブリ後、熱ゲルは、約2時間で硬化を開始し、24時間~48時間後に完全に硬化することができる。硬化時間は、周囲環境の温度に依存する。例えば、約80℃の温度で動作する電子部品は、異なる温度で動作する電子部品とは異なる硬化時間をもたらすであろう。
【0135】
本開示の熱ゲルは、小さくは1W/m.K、1.5W/m.K、若しくは2W/m.K程度、又は大きくは2.5W/m.K、3W/m.K、若しくは4W/m.K程度、又は1W/m.K~4W/m.K、1.5W/m.K~3W/m.K、又は2W/m.K~2.5W/m.Kのような、上記の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内の熱伝導率を有する。例示的な熱伝導率試験方法標準は、ASTM D5470である。別の例示的な一実施形態では、上記のような熱界面材料は、約2.8W/mKの熱伝導率を有する。
【実施例
【0136】
比較例1、比較例2、及び実施例1の比較
実施例1及び比較例1の熱ゲルを、表1に示す配合及び以下の説明に従って調製した。比較例2の熱ゲルは、Parker Chomericsから入手可能なGel30である。
【0137】
【表1】
【0138】
実施例1の熱ゲルは、2成分系である。一次シリコーン油は、ビニル基を有するポリジメチルシロキサンであり、一次シリコーン油は、2000cStの動粘度を有する。実施例1の熱ゲルの第2の成分の架橋シリコーン油は、メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサンのコポリマーであり、架橋シリコーン油は、500cStの動粘度を有する。Si-H基(TSi-H)の総含有量とビニル基(Tvinyl)の総含有量との比は、0.07である。第1の成分及び第2の成分は、それぞれ方法100及び200に従って調製された。次いで、実施例1の熱ゲルを表面上に適用する前に、第1の成分及び第2の成分を静的ミキサーによって1:1比で混合した。得られた実施例1の熱ゲルは、3W/m.Kの熱伝導率を有した。
【0139】
比較例1の熱ゲルを単一成分系として調製した。一次シリコーン油は、ビニル基を有するポリジメチルシロキサンであり、一次シリコーン油は、2000cStの動粘度を有する。比較例1の熱ゲルの架橋シリコーン油は、メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサンのコポリマーであり、架橋シリコーン油は、500cStの動粘度を有する。Si-H基(TSi-H)の総含有量とビニル基(Tvinyl)の総含有量との比は、0.005である。比較例2の熱ゲルは、単一成分系として調製され、一般に、金属酸化物(アルミナ)充填剤を有するシリコーン油に基づく。
【0140】
次に、実施例1の熱ゲルを、図5Aに示すように、厚さ1mmのシートとしてヒートスプレッダ201上に印刷した。図5Aにも示されるように、硬化後、実施例1のシートは、ヒートスプレッダ201から容易に除去可能であった。更に、実施例1の熱ゲルは、ドットパターンとしてヒートスプレッダ203上に適用された。実施例1のドットパターンはまた、銅板205によって非接触面上に押圧された。図5Bに示すように、硬化後、実施例1の熱ゲルは、両方の表面203、205から容易に剥離される。
【0141】
対照的に、図4Aに示すように、比較例1の熱ゲルは、基材101に適用され、図4B及び図4Cに示されるように、比較例1の適用された熱ゲルは、容易に除去可能ではなく、容易に除去可能であった実施例1とは異なり、基材101に対して、膨潤しなかった。
【0142】
また、図4Dに示すように、比較例2の熱ゲルは、基材101に適用され、図4E及び図4Fに示されるように、比較例1の適用された熱ゲルは、容易に除去可能ではなく、容易に除去可能であった実施例1とは異なり、基材101に対して、膨潤しなかった。
【0143】
本発明は、例示的な設計を有するものとして説明したが、本発明は、本開示の趣旨及び
範囲内で更に修正することができる。したがって、本出願は、その一般的原理を利用した
本発明のあらゆる変形、使用、又は適応を包含することが意図されている。更に、本出願
は、本発明が関連し、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る技術分野における既知の又は
慣習的な実践に属する本開示からのそのような逸脱を包含することが意図されている。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
[1]
熱ゲルであって、
第1の成分であって、
一次シリコーン油と、
阻害剤と、
触媒と、
少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第1の成分と、
第2の成分であって、
一次シリコーン油と、
架橋シリコーン油と、
少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、を含む、第2の成分と、を含み、
前記第1の成分の前記一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、前記第2の成分の前記一次シリコーン油が、ビニルシリコーン油であり、前記第2の成分の前記架橋第2シリコーン油が、ヒドロシリコーン油であり、
前記熱ゲルが、前記熱ゲルが適用される基材から剥離可能である、熱ゲル。
[2]
前記熱ゲルが、室温で適所で硬化する、[1]に記載の熱ゲル。
[3]
前記第1の成分及び前記第2の成分に対する前記少なくとも1つの熱伝導性充填剤が、5ミクロン~80ミクロンの平均粒子サイズを各々有する、[1]に記載の熱ゲル。
[4]
前記第1の成分に対する前記少なくとも1つの熱伝導性充填剤が、70ミクロンの平均粒子サイズを有する20重量%~25重量%の第1の熱伝導性充填剤と、5ミクロンの平均粒子サイズを有する20重量%~25重量%の第2の熱伝導性充填剤と、を含む、[1]に記載の熱ゲル。
[5]
Si-H基の総含有量とビニル基の総含有量との比が、0.03~10である、[1]に記載の熱ゲル。
[6]
前記熱ゲル中の前記触媒の濃度が、100ppmよりも大きい、[1]に記載の熱ゲル。
[7]
前記第1の成分と前記第2の成分との間の重量比が、0.5:1~2:1である、[1]に記載の熱ゲル。
[8]
前記第1の成分及び前記第2の成分の前記一次シリコーン油が、1000cStよりも大きい動粘度を各々有する、[1]に記載の熱ゲル。
[9]
前記第1の成分の粘度が、少なくとも100Pa.sであり、前記第2の成分の粘度が、少なくとも100Pa.sである、[1]に記載の熱ゲル。
[10]
前記熱ゲルの伝導率が、少なくとも2W/m.Kである、[1]に記載の熱ゲル。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6