(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】歯科補綴部品の製造方法および歯科補綴部品
(51)【国際特許分類】
A61C 13/003 20060101AFI20231215BHJP
A61C 13/087 20060101ALI20231215BHJP
A61C 13/14 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A61C13/003
A61C13/087
A61C13/14 Z
(21)【出願番号】P 2020526057
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(86)【国際出願番号】 EP2018082446
(87)【国際公開番号】W WO2019101967
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】102017221002.8
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スザンネ・ラーベ
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0286205(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0050074(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02450000(EP,A1)
【文献】特開2005-168518(JP,A)
【文献】特開昭60-069007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00-13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタを使用して歯科補綴部品(10)を製造する方法であって、
-
コンピュータが、治療される下顎および/または上顎の歯領域および/または歯欠領域を含むデジタル歯科用モデル(3)
に基づき、三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)を生成するステップと、
-
コンピュータが、前記デジタル歯科用モデル(3)
に基づき、前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)の負荷分析を実行するステップと、
-
コンピュータが、前記負荷分析の結果
に基づき、第一の三次元形状および第一の位置を有する三次元デジタル第一補強構造体モデル(4)を前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)内に配置するステップであって、
コンピュータが、前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)から、配置された前記三次元デジタル第一補強構造体モデル(4)に対応するボリュームだけ減少させる、ステップと、
- 減少された前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)を、下部の部分ボリューム(6)と上部の部分ボリューム(8)とに分割するステップであって、前記下部の部分ボリューム(6)および前記上部の部分ボリューム(8)を、それぞれ、前記三次元デジタル第一補強構造体モデル(4)に隣接させる、ステップと、
- 前記歯科補綴部品(10)の下部部分(10.1)を、3Dプリンタ(9)を使用して、前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)の前記下部の部分ボリューム(6)に従って第一の複合材料で製造するステップと、
- 前記三次元デジタル第一補強構造体モデル(4)に対応する第一の補強構造体(11)を、前記第一の位置に従って前記歯科補綴部品(10)の前記下部部分(10.1)上に配置するステップと、
- 前記歯科補綴部品(10)を完成させるために、前記第一の複合材料と前記3Dプリンタ(9)とを使用して、前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)の前記上部の部分ボリューム(8)に対応する前記歯科補綴部品(10)の上部部分(10.3)を、配置された前記第一の補強構造体(11)を含む前記歯科補綴部品(10)の前記下部部分(10.1)上に製造するステップと、
を含んでなる、歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項2】
- さらなる形状およびさらなる位置を有する少なくとも一つのさらなる補強構造体モデル(5)を、コンピュータ
が、前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)内に、前記三次元デジタル第一補強構造体モデル(4)の上方および/またはそれに隣接して配置するステップと、
-
コンピュータが、前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)から、配置された前記三次元デジタル第一補強構造体モデル(4)および前記少なくとも一つのさらなる補強構造体モデル(5)に対応するボリュームだけ減少させるステップと、
- 減少された三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)を、下部の部分ボリューム(6)と上部の部分ボリューム(8)とに分割し、前記三次元デジタル第一補強構造体の上方に位置するそれぞれのさらなる補強構造体モデルに対して、さらなる中間の部分ボリューム(7)に分割するステップと、
- 一度に前記歯科補綴部品(10)の一つの部品(10.1、10.2、10.3)を、部分ボリューム(6、7、8)の一つにより、3Dプリンタ(9)を使って、前記第一の複合材料で徐々に製造するステップであって、さらに、補強構造体モデル(4、5)の一つに対応する補強構造体(11、12)をそれぞれの位置に配置する、ステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項3】
前記負荷分析が有限要素方法を使用して実行されることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項4】
治療されるべき顎領域に隣接するおよび/または反対側の歯および/または咀嚼運動が負荷分析のために考慮されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項5】
前記下部の部分ボリューム(6)が、前記三次元デジタル第一補強構造体モデル(4)を収容するための少なくとも一つの凹部を含み、および/または各中間の部分ボリューム(7)が、さらに補強構造体モデル(5)を収容するための少なくとも一つの凹部を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項6】
前記デジタル歯科用モデル(3)が、複数の二次元光学画像を用いて計算されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項7】
前記第一の複合材料が、生体適合性であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項8】
前記第一の複合材料が、有機プラスチックマトリックスおよび無機充填体から構成され、前記有機プラスチックマトリックスの質量分率が、最大で40%であり、前記無機充填体の質量分率が、少なくとも60%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項9】
前記歯科補綴部品が光重合プロセスを用いて印刷され、前記第一の複合材料が前記光重合プロセスの開始剤および安定剤を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項10】
少なくとも一つの補強構造体モデル(4、5)は、三次元デジタル繊維バンドルモデルとして具体化され、前記少なくとも一つの補強構造体モデル(4、5)の形状には、厚さと長さがあり、少なくとも一つの前記三次元デジタル繊維バンドルモデルに対応する繊維バンドルが、前記歯科補綴部品(10)の前記下部部分(10.1)、または前記歯科補綴部品(10)の中間部分(10.2)上に補強構造体(11、12)として配置されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項11】
少なくとも一つの繊維バンドルが、ガラス繊維、または炭素繊維、またはセラミック繊維、または酸化アルミニウム製の繊維、または異なる繊維の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項10に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項12】
少なくとも一つの繊維バンドルが、生体適合性材料のマトリックスに埋め込まれた複数の繊維を含むことを特徴とする、請求項10または11のいずれかに記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項13】
前記マトリックスが、有機樹脂および/または光重合プロセスの開始剤および安定剤から構成されることを特徴とする、請求項12に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの繊維バンドルモデルの厚さが、所定の厚さから選択されることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項15】
部分ボリューム(6、7、8)が、前記補強構造体モデル(4、5)の一つに隣接する地域において切り欠きがないように、減少された前記三次元デジタル歯科補綴部品モデル(2)が前記部分ボリューム(6、7、8)に分割されることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【請求項16】
前記補強構造体(11、12)が前記3Dプリンタを使用して短繊維強化複合材料から製造されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科補綴部品(10)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はまた、歯科補綴部品の製造方法および歯科補綴部品に関する。
【背景技術】
【0002】
永久ブリッジ器具などのより大きな永久歯科補綴部品は、典型的には、酸化ジルコニウムや金属などの強力な材料で作られる。
【0003】
いわゆる歯科複合材は、プロセスが簡単で安価であるが、物理的特性によって永久ブリッジ器具の製造に適していない。
【0004】
それにもかかわらず、複合材料の利点を活用できるようにするために、複合材料と強化ガラス繊維からの歯科ブリッジ構造物の製造が、G.Rappelli等による、Cosmetic Dentistry、No.4、2008の記事「繊維強化複合固定部分義歯を製造するための臨床および実験の手順」から公知であるが、鋳型は複合材料およびガラス繊維の層で充填され、複合材料は光重合によって硬化される。
【0005】
また、歯科用途向けのいわゆる繊維強化複合材、例えば、GC Corporation、東京、日本のeverX Posteriorなどもある。フィラーとして主にポリマーマトリックスおよびショートガラス繊維から成る材料は、製造業者の仕様によると、より大きな空洞充填に適している。歯科複合材に典型的なように、材料は、層内の空洞内に導入され、重合によって硬化される。
【0006】
これを念頭に置いて、本発明の目的は、当技術分野をさらに発展させることであり、強く費用効果の高い歯科補綴部品と、可能な限り信頼性が高く、費用効果が高い歯科補綴部品の製造方法を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一つの主題は、請求項1に記載の歯科補綴部品の製造方法および請求項17に記載の歯科補綴部品である。好ましい実施形態は、従属請求項に含まれる。
【0008】
本発明による方法は、3Dプリンタを使用して歯科補綴部品の製造することに関し、三次元デジタル歯科補綴部品モデルは、コンピュータの助けを借りておよびデジタル歯科用モデルを考慮して製造され、デジタル歯科用モデルは、治療する下顎および/または上顎の歯領域および/または歯欠領域を含み、および歯科補綴部品モデルの負荷分析は、コンピュータの助けを借りておよび歯科用モデルを考慮して実施される。
【0009】
負荷分析の結果を考慮し、第一の三次元形状および第一の位置を有する三次元デジタル第一の補強構造体モデルが、コンピュータの助けを借りて歯科補綴部品モデル内に配置され、歯科補綴部品モデルが、配置された第一の補強構造体モデルに対応するボリュームだけ減少され、減少した歯科補綴部品モデルは、下部の部分ボリュームと上部の部分ボリュームに分割され、下部の部分ボリュームおよび上部の部分ボリュームが、それぞれ、配置された第一の補強構造体モデルに隣接する。
【0010】
歯科補綴部品の下部部分は、3Dプリンタを使用して歯科補綴部品モデルの下部の部分ボリュームに従って複合材料から製造され、第一の補強構造体モデルに対応する第一の補強構造体は、歯科補綴部品の第一の部分上に配置され、第一の複合材料を使用して3Dプリンタにより、歯科補綴部品モデルの上部の部分ボリュームによる歯科補綴部品の上部部分は、歯科補綴部品を完成させるために、配置された第一の補強構造体を含む歯科補綴部品の下部部分に配置される。
【0011】
さらなる一つの発展によると、-さらなる形状およびさらなる位置を有する少なくとも一つのさらなる補強構造体モデルが、コンピュータの助けを借りて、歯科補綴部品モデル内に、第一の補強構造体モデルの上方および/またはそれに隣接して配置され、歯科補綴部品モデルは、配置された第一の補強構造体モデルおよび少なくとも一つのさらなる補強構造体モデルに対応するボリュームだけ減少され、減少した歯科補綴部品モデルが、下部の部分ボリュームと上部の部分ボリュームに分割されており、第一の補強構造体の上方に位置するそれぞれのさらなる補強構造体モデルに対して、さらなる中間の部分ボリュームに分割される。一度に歯科補綴部品の一つの部品が、部分ボリュームの一つにより、複合材料を使用して3Dプリンタにより徐々に製造され、および補強構造体モデルの一つに対応する補強構造体がそれぞれの位置に配置される。
【0012】
歯科用モデルは、例えば、口腔内カメラを使用して、二次元または三次元画像から製造される。言うまでもなく、歯科用モデルは、例えば隣接する歯の輪郭、準備部位、支台を有するインプラントなど、治療に必要な治療領域に関する情報を含む。歯科補綴部品モデルは、適切な入力手段によって手動でまたは自動的に作成される。準備部位例えば、歯のデータベースからの一つのモデル歯またはいくつかのモデル歯が、歯科用モデルの一つまたはいくつかの欠陥に仮想的に配置される。必要に応じてサイズを調整し、隣接する歯の準備部位および/または準備領域に対応する構造で補強する。
【0013】
第一の実施形態によると、負荷分析は、有限要素方法を用いて実施される。言うまでもなく、負荷分析については、歯科用モデルは、有利なことに、治療されるべき顎領域に隣接するおよび/または反対側の歯を含む。さらなる発展において、顎関節または顎関節の動き、または咀嚼運動は、歯科用モデルに含まれ、負荷分析でも使用される。この方法では、歯科補綴部品の形状だけでなく、その後の環境の影響も負荷分析の一部として考慮することができる。
【0014】
負荷分析の結果に基づき、補強構造体または補強構造体の仮想モデルは、さらなる展開によって、二つ以上の補強構造体モデルが、自動的にコンピュータによって歯科補綴部品内に自動的に位置付けられ、またはユーザによって手動で位置付けられる。
【0015】
第一の実施形態によると、三次元デジタル繊維バンドルモデルは、補強構造体モデルとして配置され、繊維バンドルモデルの形状は長さと直径を有する。歯科補綴部品の下部および上部部分の印刷の間に、長さおよび直径における繊維バンドルモデルに対応する繊維バンドルは、歯科補綴部品の第一の部分に配置される。
【0016】
あるいは、補強構造体は、短繊維強化複合材料から形成され、3Dプリンタによって製造される。この目的のために、補強構造体モデルは、形状と位置でデジタル的に計画され、および歯科補綴部品の下部部分と上部部分の製造の間、モデルに対応する補強構造体が、短繊維強化複合材料から印刷される。これを実行するために、3Dプリンタは例えば、追加ノズルを持っている。
【0017】
標準歯科複合材は、第一の複合材料として使用される。典型的な複合材料は、無機充填体と混合される有機プラスチックマトリックスから構成される。好ましい実施形態では、第一の複合材料の有機プラスチックマトリックスの質量分率は、最大で40%で、無機充填体の質量分率は少なくとも60%である。
【0018】
第一の複合材料は、例えば、歯科補綴部品のそれぞれの部分を製造するために、3Dプリンタを使用して、層ごとに固化される。好ましいさらなる発展によると、固化は、光重合、すなわち、適切な放射線源での光入力によって行われる。
【0019】
繊維バンドルまたは短繊維強化複合材を含む少なくとも一つの補強構造体を使用して、それ以外の標準複合材料から構成される歯科補綴部品は、高いレベルの安定性を提供する。従って、本発明による方法は、より大きなブリッジ器具および/または永久歯科補綴物を製造するために使用することができる。
【0020】
本発明による方法の一つの利点は、3Dプリンタの使用が、製造を特にシンプルで安価で高速にすることである。歯科補綴部品モデルをサブ分割することにより、3Dプリンタを使用して、簡単で増分的で高速な製造が可能になる。
【0021】
言うまでもなく、歯科補綴部品の第一の製造部分の繊維バンドルとして具体化された補強構造体を位置決めすることは、第一の部分ボリュームが、すでに、補強構造体を収容するボリューム領域周辺に部分的に延びる場合には、特に信頼性が高い。一つのさらなる発展によると、下部の部分ボリュームおよび/または各中間の部分ボリュームは、第一またはさらなる補強構造体を収容するための少なくとも一つの凹部を含む。
【0022】
さらに言うまでもなく、補強構造体としての繊維バンドルの場合に、繊維バンドルを配置するときに、歯科補綴部品のすでに製造された第一の部分への損傷を回避するために、第一の部分ボリュームは、補強構造体を収容するボリューム領域の周囲に延ばしすぎてはならない。補強構造体が繊維バンドルとして具体化されている場合、第一の部分ボリュームがアンダーカットなしで形成される場合、それはそれに応じて有利である。少なくとも一つの補強構造体が、繊維バンドルとして具体化される場合、部分ボリュームが、補強構造体の一つに隣接する領域においてアンダーカットを有しないように、少なくとも一つの補強構造体によって減少された歯科補綴部品モデルを部分ボリュームに分割することが特に好ましい。
【0023】
本発明による製造方法の別の利点は、実施するのに非常に信頼性が高く、迅速かつ簡単であり、非常に安定で費用効果の高い歯科補綴部品をもたらすことである。
【0024】
歯科用モデルは、複数の二次元光学画像を使用して有利に計算される。患者の歯状況を捕捉する簡単な方法は、口腔内カメラを使用して測定することであり、カメラは例えば、複数の二次元画像を生成する。測定された歯状態の三次元モデル(すなわち、歯科用モデル)は、その画像から既知の方法で生成することができる。
【0025】
有利には、複合材料は生体適合性である。この複合材料は、歯科治療に使用するのに適している。
【0026】
歯科補綴部品は、光重合プロセスを使用して有利に印刷され、複合材料は、光重合プロセスの開始剤および安定剤を含む。
【0027】
繊維バンドルとして具体化される少なくとも一つの補強構造体は、ガラス繊維または炭素繊維またはセラミック繊維、または酸化アルミニウム製の繊維、または異なる繊維の組み合わせを有利に含む。あるいは、またはさらなる発展として、少なくとも一つの繊維バンドルは、生体適合性材料マトリックスに埋め込まれた複数の繊維を含み、一つのさらなる展開により、マトリックスは、有機樹脂および/または光重合プロセスの開始剤および安定剤で構成される。
【0028】
繊維バンドルモデルとして具体化された少なくとも一つの補強構造体の厚さは、所定の厚さから有利に選択され、繊維バンドルモデルに対応する繊維バンドルが存在することを確実にする。繊維バンドルは通常、特定の厚さでまたは必要に応じて調整できない厚みで利用できる。一方で、長さは必要に応じて短縮することができ、繊維バンドルモデルに適合させることができる。マトリックスは、いわゆる繊維複合材料を作成する。繊維材料とマトリックス材料の可能性のある組み合わせにより、ここでは繊維バンドルと呼ばれる補強構造体を構成するための多くの自由度をもたらす。
【0029】
本発明のさらなる主題は、歯科補綴部品であり、歯科補綴部品は、上記の方法を使用して3Dプリンタを使用して全体または一部が印刷された。
【0030】
本発明のさらに別の主題は、歯科補綴部品であり、歯科補綴部品は、3Dプリンタを使用して全体または一部が印刷され、歯科補綴部品は、第一の複合材料からなり、繊維バンドルまたは短繊維強化複合材料からなる少なくとも一つの第一の補強構造体を含む。歯科補綴部品は、上記の方法を用いて好ましくは製造される。
【0031】
本発明による方法に関して考察される利点は、本発明による歯科補綴部品に従って適用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の設計例について図面に示す。図面は以下を示す。
【0033】
【
図1】本発明による製造方法の第一実施形態の概略シーケンスである。
【
図2】本発明による歯科補綴部品の第一の実施形態の概略図である。
【
図3】本発明による歯科補綴部品の第二の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、歯科補綴部品10の製造方法の本発明による第一の実施形態による6つの方法ステップを示す。
【0035】
コンピュータユニット1を使用して、三次元デジタル歯科補綴部品モデル2が生成され、負荷分析が実施される。治療する下顎および/または上顎の歯領域および/または歯欠領域を含むデジタル歯科用モデル3は、歯科補綴部品モデル2の設計または製造に使用され、また歯科補綴部品モデル2の負荷分析に使用される。歯科補綴部品モデル2は、歯科用モデル3に計画されており、および/または歯科用モデル3に適合されている。第一の実施形態によると、歯科補綴部品モデル2は、負荷分析用に歯科用モデルに配置されており、とりわけ、咀嚼運動がシミュレートされる。
【0036】
負荷分析の結果に基づき、描写されたデザイン例において、上部および下部の三次元デジタル補強構造体モデル4、5は、コンピュータの助けを借りて歯科補綴部品モデル3内に配置される。補強構造体モデル4、5の数、それぞれの三次元形状、およびそれぞれの位置は、コンピュータユニット1により完全に自動的に、またはユーザが適切な入力手段を使用して完全に手動で、または例えば、位置と形状の提案などの自動ステップ、および例えば、位置または形状のオプションの変更などの手動のステップの組み合わせにより決定される。
【0037】
次に、歯科補綴部品モデル2は、配置された補強構造体モデル4、5に対応するボリューム、つまり補強構造体モデル4、5が占めるボリューム領域だけ減少され、下部の部分ボリューム6、中間の部分ボリューム7、および上部の部分ボリューム8に分割される。下部の部分ボリューム6は、部分ボリューム6の下面から下部補強構造体モデル4まで延びる。中間の部分ボリューム7は、下部補強構造体モデル4から上部補強構造体モデル5まで延びる。上部の部分ボリューム8は、上部補強構造体モデル5から、第一の表面とは反対側の歯科補綴物モデル2の第二の表面まで延びる。歯科補綴物モデル2は、それぞれ、補強構造体モデル4、5の延伸に沿って分離される。
【0038】
歯科補綴部品10は、いくつかのステップで製造される。まず、歯科補綴部品10の下部部分10.1は、3Dプリンタ9を使用して歯科補綴部品モデル2の下部の部分ボリューム6に従って複合材料から製造される。これに続いて、下部補強構造体モデル4の配置を行なう。
【0039】
補強構造体モデル4が第一の実施形態による繊維バンドルモデルとして計画または設計される場合、補強構造体モデル4に形状が対応する第一の繊維バンドルは、特に長さと厚さに関して、歯科補綴部品10の第一の部分10.1の下部補強構造体11として、下部補強構造体モデル4に計画された位置に配置される。
【0040】
補強構造体11が第二の実施形態による短繊維強化複合材料からなる場合、補強構造体モデル4の三次元形状に対応した短繊維強化複合材製の本体が、下部補強構造体モデル4の予定位置に、下部補強構造体11として、配置される。第一のオプションによると、このような補強構造体11は、例えば、さらなる3Dプリンタを使用してあらかじめまたは並列に製造され、次に歯科補綴部品10の下部部分10.1上に配置される。あるいは、補強構造体11は、同じ3Dプリンタを使用して、歯科補綴部品10の下部部分10.1上に直接製造される。
【0041】
次に、歯科補綴部品10の中間部分10.2が、中間の部分ボリュームに応じた第一の複合材料7を使用して3Dプリンタ9により、歯科補綴部品10の下部部分10.1および下部補強構造体11上に配置される。
【0042】
上部補強構造体モデル5に対応する上部補強構造体12は、上部補強構造体モデル5に対して計画された位置において歯科補綴部品10の中間部分10.2上に配置される。この目的のため、上部補強構造体モデル5に対応する繊維バンドルが、好ましくは、位置付けられ、または上部補強構造体モデル5に対応する形状が、3Dプリンタによって、短繊維強化複合材料からの計画された位置において生成される。
【0043】
第一の複合材料を使用して3Dプリンタ9により、歯科補綴部品モデル2の上部の部分ボリューム8による歯科補綴部品10の上部部分10.3が、配置された第一の補強構造体12を含む歯科補綴部品10の中間部分10.2上に配置される。
【0044】
言うまでもなく、第一の強化繊維バンドル4を一つだけ有する歯科補綴部品10を製造するため、歯科補綴部品モデル2は、上部の部分ボリューム8が第一の繊維バンドル4にも隣接し、歯科補綴部品10の上部部分10.3は、上部の部分ボリューム8に従って配置された第一の補強構造体11を備えた下部部分10.2に直接配置されるように、第一の繊維バンドル4に沿ってのみ下部の部分ボリューム6と上部の部分ボリューム8に分割される。
【0045】
二つ以上の補強構造体モデル4、5が歯科補綴部品モデル2に配置されて補強されている場合、歯科補綴部品モデルは、三つ以上の部分ボリュームに分割される。これにより、さらなる中間の部分ボリュームと、さらなる補強構造体を印刷および配置または製造する対応する製造ステップとが、さらなる繊維バンドルごとに追加される。
【0046】
図2は、本発明による歯科補綴部品10の第一の実施形態を概略的に示す。歯科補綴部品10は、補強構造体11として単一のガラス繊維挿入子を有する3部ブリッジとして具体化される。ブリッジ10は、3Dプリンタを使用して複合材料から印刷される。厚さDを有するガラス繊維バンドル11は、ブリッジ10の上部上面全体に平行なブリッジ内に延在する。一つのさらなる発展によると、歯科補綴部品10の全外表面に対して、例えばブリッジ10の上側に対して、ガラス繊維バンドル11の定義可能な最小距離は、繊維バンドルが常に複合材料の十分に厚い層によって覆われていることを確実にする。
【0047】
図3は、本発明による歯科補綴部品10の第二の実施形態を概略的に示す。歯科補綴部品10は、短繊維強化複合材料で作られた単一の補強構造体11を有する3部ブリッジとして具体化される。
【符号の説明】
【0048】
1 コンピュータユニット
2 三次元デジタル歯科補綴部品モデル
3 歯科補綴部品モデル
4 補強構造体モデル
5 補強構造体モデル
6 部分ボリューム
7 部分ボリューム
8 部分ボリューム
9 3Dプリンタ
10 歯科補綴部品モデル
11 補強構造体
12 補強構造体