(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】モノアシルグリセロールリパーゼ阻害剤として有用なベンゾオキサジン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 413/06 20060101AFI20231215BHJP
A61K 31/538 20060101ALI20231215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231215BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231215BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231215BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231215BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231215BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20231215BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20231215BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231215BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20231215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C07D413/06 CSP
A61K31/538
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/24
A61P25/06
A61P25/22
A61P29/00
A61P25/04
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020531586
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2018084653
(87)【国際公開番号】W WO2019115660
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-06
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ベル,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ベンツ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】グレター,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ホルンスペルガー,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】コチェル,ビューレント
(72)【発明者】
【氏名】クーン,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】土屋 智史
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158956(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170830(WO,A1)
【文献】特表2012-524810(JP,A)
【文献】特表2013-527227(JP,A)
【文献】特表2021-504467(JP,A)
【文献】Huayou Chen et al.,Structural and energetic insights into the selective interactions of monoacylglycerol lipase with its natural substrate and small-molecule inhibitors,Medicinal Chemistry Research,2014年,23巻,2391-2404頁
【文献】DATABASE REGISTRY [online] CHEMICAL ABSTRACT SERVICE, US; Retrieved from STN ,2017年09月21日,RN 2129025-04-1 REGISTRY N-Cyclohexyl-4-[(3,4-dihydro-3-oxo-2H-1,4-benzoxazin-6-yl)carbonyl]-1-piperazinecarboxamide Supplier: Aurora Fine Chemicals
【文献】DATABASE REGISTRY [online] CHEMICAL ABSTRACT SERVICE, US; Retrieved from STN ,2016年05月02日,RN 1901859-22-0 REGISTRY 6-[[4-(Phenylmethyl)-1-piperazinyl]carbonyl]-2H-1,4-benzoxazin-3-one Supplier: Aurora Fine Chemicals
【文献】DATABASE REGISTRY [online] CHEMICAL ABSTRACT SERVICE, US; Retrieved from STN,2011年08月19日,RN 1320255-10-4 REGISTRY 1-[(3,4-Dihydro-3-oxo-2H-1,4-benzoxazin-6-yl)carbonyl]-N-[(3-fluoro-4-methylphenyl)methyl]-4-piperidinecarboxamide Supplier:Aurora Fine Chemicals
【文献】DATABASE REGISTRY [online] CHEMICAL ABSTRACT SERVICE, US; Retrieved from STN,2007年04月20日,RN 931085-56-2 REGISTRY 6-[[4-(Phenylmethyl)-1-piperidinyl]carbonyl]-2H-1,4-benzoxazin-3-one Supplier: Enamine
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
Aは
、R
4及びR
5により置換されて
いるフェニルであり;
R
4
が、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル及びメトキシからなる群より選択され;そして
R
5
が、水素又はフッ素であり、
Lは、-O-又は-CH
2-であり、
Xは、
C-Hであり、
m及びnは
、両方とも1であり、
R
1
が、水素であり
R
2
が、水素であり、そして
R
3
が、水素である]
で示され、
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
からなる群より選択される、
化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
請求項1記載の式(I)で示される化合物を製造する方法であって、
a)アミン1
【化2】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、請求項
1記載のとおりである]
を酸2
【化3】
[式中、R
2及びR
3は、請求項
1記載のとおりである]
と反応させ;又は
b)アミン1
【化4】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、請求項
1記載のとおりである]
を酸クロリド2a
【化5】
[式中、R
2及びR
3は、請求項
1記載のとおりである]
と反応させて、前記式(I)で示される化合物を形成する工程を含む、
方法。
【請求項3】
治療上有効物質としての使用のための、請求項
1記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項4】
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
からなる群より選択される化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
治療上不活性な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項5】
ほ乳類においてモノアシルグリセロールリパーゼを阻害する方法における使用のための、請求項
1記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項6】
ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、請求項
1記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項7】
ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、請求項
1記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項8】
ほ乳類においてモノアシルグリセロールリパーゼを阻害するための医薬の調製のための、
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
それらの薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される化合物
の使用。
【請求項9】
ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
それらの薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される化合物
の使用。
【請求項10】
ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
それらの薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される化合物
の使用。
【請求項11】
ほ乳類においてモノアシルグリセロールリパーゼを阻害するための医薬組成物であって、
有効量の
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
それらの薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される化合物
を含む、医薬組成物。
【請求項12】
ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬組成物であって、
有効量の
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
それらの薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される化合物
を含む、医薬組成物。
【請求項13】
ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬組成物であって、
有効量の
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
それらの薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される化合物
を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ほ乳類における治療又は予防に有用な有機化合物に関し、特に、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガン、精神障害、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛もしくは抑うつ、又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のためのモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
内因性カンナビノイド(EC)は、カンナビノイドレセプター(CBR)、CB1及びCB2と相互作用することによりその生物学的作用を発揮するシグナル伝達脂質である。これらは、神経炎症、神経変性及び組織再生を含む複数の生理学的プロセスを調節する(Iannotti, F.A., et al., Progress in lipid research 2016, 62, 107-28.)。脳では、主な内因性カンナビノイドである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)が、ジアシルグリセロール(diacyglycerol)リパーゼ(DAGL)により産生され、モノアシルグリセロールリパーゼ、MAGLにより加水分解される。MAGLは、85%の2-AGを加水分解する。残りの15%は、ABHD6とABDH12により加水分解される(Nomura, D.K., et al., Science 2011, 334, 809.)。MAGLは、脳全体並びにニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト及びミクログリア細胞を含むほとんどの脳細胞種で発現される(Chanda, P.K., et al., Molecular pharmacology 2010, 78, 996;Viader, A., et al., Cell reports 2015, 12, 798.)。2-AGの加水分解により、プロスタグランジン(PG)及びロイコトリエン(LT)の前駆体であるアラキドン酸(AA)の形成がもたらされる。炎症を起こした組織では、AAの酸化的代謝が亢進する。炎症プロセスに関与するアラキドン酸酸素化には、PGを産生するシクロオキシゲナーゼとLTを産生する5-リポキシゲナーゼの2つの主要な酵素経路がある。炎症時に形成される種々のシクロオキシゲナーゼ産物のうち、PGE2は、最も重要なものの1つである。これらの産物は、炎症部位、例えば、神経変性障害を患っている患者の脳脊髄液中で検出され、炎症反応及び疾患の進行に寄与すると考えられている。MAGL(Mgll-/-)を欠いているマウスでは、神経系において、2-AGヒドロラーゼ活性が劇的に低下し、2-AGレベルが上昇する一方で、アナンダミド(AEA)を含む他のアラキドノイル含有リン脂質種及び中性脂肪種並びに他の遊離脂肪酸は変化しない。逆に、プロスタグランジンE2(PGE2)、D2(PGD2)、F2(PGF2)及びトロンボキサンB2(TXB2)を含む、AA及びAA由来プロスタグランジン並びに他のエイコサノイドのレベルは、強く低下する。ホスホリパーゼA2(PLA2)酵素は、AAの主な供給源と考えられてきたが、cPLA2欠損マウスでは、脳内のAAレベルは変化せず、AA産生及び脳炎症プロセスのレギュレーションのための脳内のMAGLの重要な役割が強化された。
【0003】
神経炎症は、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん及び精神障害、例えば、不安及び片頭痛)を含むが、これらに限定されない脳の疾患に特徴的な共通の病理学的変化である。脳では、エイコサノイド及びプロスタグランジンの産生により、神経炎症プロセスが制御される。炎症誘発物質であるリポ多糖(LPS)により、Mgll-/-マウスで著しく鈍化する脳エイコサノイドの堅牢で時間依存的な増加が生じる。また、LPS処置により、Mgll-/-マウスで妨げられる、インターロイキン-1-a(IL-1-a)、IL-1b、IL-6、及び腫瘍壊死因子-a(TNF-a)を含む炎症誘発性サイトカインの広範な上昇も誘発される。
【0004】
神経炎症は、中枢神経系であるミクログリア及びアストロサイトの先天性免疫細胞の活性化により特徴づけられる。抗炎症薬により、前臨床モデルにおいて、グリア細胞の活性化並びにアルツハイマー病及び多発性硬化症を含む疾患の進行を抑制することができることが報告されている(Lleo A., Cell Mol Life Sci. 2007, 64, 1403.)。重要なことに、MAGL活性の遺伝的及び/又は薬理学的破壊によっても、脳内のミクログリア細胞のLPS誘発性活性化が妨害される(Nomura, D.K., et al., Science 2011, 334, 809.)。
【0005】
加えて、MAGL活性の遺伝的及び/又は薬理学的破壊は、アルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症を含むが、これらに限定されない神経変性の幾つかの動物モデルにおいて保護的であることが示された。例えば、不可逆的MAGL阻害剤は、神経炎症及び神経変性の前臨床モデルにおいて広く使用されている(Long, J.Z., et al., Nature chemical biology 2009, 5, 37.)。このような阻害剤の全身注射により、2-AGレベルの上昇、AAレベルの低下及び関連するエイコサノイド産生の減少並びにLPS誘発性神経炎症後のサイトカイン産生及びミクログリア活性化の阻止を含む、脳内でのMgll-/マウス表現型が再現される(Nomura, D.K., et al., Science 2011, 334, 809.)。要するに、MAGLが薬剤ターゲットであることが確認される。
【0006】
MAGL活性の遺伝的及び/又は薬理学的破壊に続けて、脳内のMAGL天然基質である2-AGの内因性レベルが上昇する。2-AGは、例えば、マウスにおける抗侵害受容作用(Ignatowska-Jankowska B. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 2015, 353, 424.)に付随する疼痛、及び精神障害、例えば、慢性ストレスモデルにおける抑うつ(Zhong P. et al., Neuropsychopharmacology 2014, 39, 1763.)に対する有益な効果を示すことが報告されている。
【0007】
さらに、オリゴデンドロサイト(OL)、中枢神経系のミエリン形成細胞及びそれらの前駆体(OPC)は、それらの膜上にカンナビノイドレセプター2(CB2)を発現する。2-AGは、CB1及びCB2レセプターの内因性リガンドである。カンナビノイド及びMAGLの薬理学的阻害は両方とも、興奮毒性傷害に対するOL及びOPCの脆弱性を減弱させるため、神経保護的である可能性があると報告されている(Bernal-Chico, A., et al., Glia 2015, 63, 163.)。さらに、MAGLの薬理学的阻害により、マウスの脳内のミエリン形成OL数が増加する。このことから、MAGL阻害により、in vivoでミエリン形成OLにおけるOPCの分化が促進される可能性が示唆される(Alpar, A., et al., Nature communications 2014, 5, 4421.)。また、MAGLの阻害により、進行性多発性硬化症のマウスモデルにおいて、ミエリン再形成及び機能回復が促進されることが示された(Feliu A. et al., Journal of Neuroscience 2017, 37 (35), 8385.)。
【0008】
最後に、近年、ガン研究において、代謝、特に脂質代謝が、非常に重要であると言われている。研究者らは、新規な脂肪酸合成が腫瘍発生に重要な役割を果たしていると考えている。多くの研究から、内因性カンナビノイドは、抗増殖、アポトーシス誘導及び抗転移作用を含む抗腫瘍作用を有することが実証された。MAGLは、脂質代謝及び内因性カンナビノイド系の両方に重要な分解酵素として、さらに、遺伝子発現サインの一部として、腫瘍形成の種々の態様に寄与する(Qin, H., et al., Cell Biochem. Biophys. 2014, 70, 33;Nomura DK et al., Cell 2009, 140(1), 49-61;Nomura DK et al., Chem. Biol. 2011, 18(7), 846-856)。
【0009】
まとめると、MAGLの作用及び/又は活性化を抑制することは、神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガン及び精神障害の治療又は予防のための有望で新規な治療戦略である。さらに、MAGLの作用及び/又は活性化を抑制することは、神経保護及びミエリン再生を提供するための有望で新規な治療戦略である。したがって、新規なMAGL阻害剤に対する未だ満たされていない高い医学的ニーズが存在する。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、式(I)
【化1】
[式中、
Aは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群より選択され、ここで、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、それぞれ独立して、R
4及びR
5により置換されており、
Lは、ヘテロシクリル、-O-、-C(O)-、-S(O)
2-、-CHR
6-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
p-C(O)-NR
7-及び-(CH
2)
q-NR
8-C(O)-からなる群より選択され、
Xは、N又はC-R
9であり、
m、n、p及びqは、それぞれ独立して、0及び1からなる群より選択される整数であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される]
で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0011】
更なる態様では、本発明は、
a)アミン1
【化2】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、本明細書に記載されたとおりである]
を酸2
【化3】
[式中、R
2及びR
3は、本明細書に記載されたとおりである]
と反応させ;又は
b)アミン1
【化4】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、本明細書に記載されたとおりである]
を酸クロリド2a
【化5】
[式中、R
2及びR
3は、本明細書に記載されたとおりである]
と反応させて、前記式(I)で示される化合物を形成する工程を含む、
本明細書に記載された式(I)で示される化合物を製造する方法を提供する。
【0012】
更なる態様では、前記式(I)で示される化合物が本明細書に記載された式(Ia)で示される化合物であって、アミン3
【化6】
[式中、R
1、R
2、R
3、m及びnは、本明細書に定義されたとおりである]
を式4
【化7】
[式中、A、L
1及びR
6は、本明細書に定義されたとおりである]
で示される化合物と、還元剤の存在下で反応させて、前記式(Ia)で示される化合物を形成する工程を含む、
式(I)で示される化合物を製造する方法が提供される。
【0013】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載された方法に従って製造された、本明細書に記載された式(I)で示される化合物を提供する。
【0014】
更なる態様では、本発明は、治療上有効物質としての使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0015】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、治療上不活性な担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0016】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類においてモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)を阻害するための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0017】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0018】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0019】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類においてモノアシルグリセロールリパーゼを阻害する方法における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0020】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0021】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0022】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類においてモノアシルグリセロールリパーゼを阻害するための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0023】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0024】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0025】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類においてモノアシルグリセロールリパーゼを阻害するための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を、該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0026】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を、該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0027】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を、該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
定義
本発明の特定の態様、実施態様又は実施例に関連して記載された特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は基は、本明細書に記載された任意の他の態様、実施態様又は実施例に、それらと適合しない場合を除いて適用可能であると理解されたい。本明細書で開示された全ての特徴(添付の特許請求の範囲、要約及び図面のいずれも含む)及び/又はそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの全ての工程は、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、前述の実施態様のいずれかの詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面のいずれも含む)に開示された特徴の任意の新規な1つもしくは任意の新規な組み合わせ又はそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の任意の新規な1つもしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0029】
「アルキル」という用語は、1~12個の炭素原子の一価又は多価、例えば、一価又は二価の直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素基を指す。一部の好ましい実施態様では、アルキル基は、1~6個の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含有する。他の実施態様では、アルキル基は、1~3個の炭素原子、例えば、1、2又は3個の炭素原子を含有する。このような基の例は、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル(イソプロピル)、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル及び2,2-ジメチルプロピルを含むが、これらに限定されない。特に好ましい実施態様では、アルキルは、メチルである。
【0030】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合している、先に定義されたアルキル基を指す。特に断りない限り、アルコキシ基は、1~12個の炭素原子を含有する。一部の実施態様では、アルコキシ基は、1~6個の炭素原子を含有する。他の実施態様では、アルコキシ基は、1~4個の炭素原子を含有する。さらに他の実施態様では、アルコキシ基は、1~3個の炭素原子を含有する。アルコキシ基の一部の非限定的な例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ及びtert-ブトキシを含む。好ましい実施態様では、アルコキシは、メトキシ、エトキシ及びイソプロポキシである。特に好ましい実施態様では、アルコキシは、メトキシである。
【0031】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)又はヨード(I)を指す。好ましい実施態様では、「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)又はブロモ(Br)を指す。特に好ましい実施態様では、「ハロゲン」又は「ハロ」は、フルオロ(F)である。
【0032】
「ハロアルキル」又は「ハロアルコキシ」という用語はそれぞれ、場合により1つ以上のハロゲン原子で置換されているアルキル基又はアルコキシ基を指す。ここで、各アルキル又はアルコキシは、本明細書に記載されたように定義される。好ましい実施態様では、ハロアルキル基又はハロアルコキシ基はそれぞれ、1、2又は3個のハロゲン原子、最も好ましくは、1、2又は3個のF原子を含有する。このような基の例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル(CF3)、2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ等を含むが、これらに限定されない。特に好ましいハロアルキル基は、トリフルオロメチル(CF3)である。
【0033】
「シクロアルキル」及び「炭素環」という用語は、本明細書において同義的に使用され、3~10個の環炭素原子の飽和又は部分不飽和で単環式又は二環式の炭化水素基を指す。一部の実施態様では、シクロアルキル基は、3~8個の環炭素原子の飽和単環式炭化水素基である。「二環式シクロアルキル」は、2つの炭素原子を共有する2つの飽和炭素環からなるシクロアルキル部分(すなわち、2つの環を分離する架橋が単結合又は1つもしくは2つの環原子の鎖のいずれかである)及びスピロ環部分(すなわち、2つの環が1つの共通する環原子を介して連結している)を指す。好ましい実施態様では、シクロアルキル基は、3~6個の環炭素原子、例えば、3、4、5又は6個の炭素原子の飽和単環式炭化水素基である。好ましい実施態様では、「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピルを指す。
【0034】
「ヘテロシクリル」及び「複素環」という用語は、本明細書において同義的に使用され、3~10個の環原子の飽和又は部分不飽和で単環式又は二環式の環系を指す。ここで、前記環原子のうちの1、2又は3個は、N、O及びSからなる群より選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、炭素である。好ましくは、前記環原子のうちの1、2又は3個は、Nであり、残りの環原子は、炭素である。「二環式ヘテロシクリル」は、2つの環原子を共有する2つの環からなる複素環部分(すなわち、2つの環を分離する架橋が単結合又は1つもしくは2つの環原子の鎖のいずれかである)及びスピロ環部分(すなわち、2つの環が1つの共通する環原子を介して連結している)を指す。単環式ヘテロシクリル基についての例は、1-ピペリジル、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、オキサゾリジン-2-オン、オキサゾリジン-4-オン及びオキサゾリジン-5-オンを含むが、これらに限定されない。
【0035】
「アリール」という用語は、合計6~14個の環員、好ましくは、6~12個の環員、より好ましくは、6~10個の環員を有する単環式、二環式又は三環式の炭素環系を指し、ここで、該系中の少なくとも1つの環は、芳香族である。アリールの特定の、しかし非限定的な例は、フェニルである。
【0036】
「ヘテロアリール」という用語は、合計5~12個の環員、好ましくは、5~10個の環員、より好ましくは、5~6個の環員を有する一価又は多価で単環式又は二環式の環系を指し、ここで、該系中の少なくとも1つの環は、芳香族であり、該系中の少なくとも1つの環は、1つ以上のヘテロ原子を含有する。一実施態様では、5~10員のヘテロアリールは、O、S及びNからなる群より独立して選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含む。ヘテロアリール環の一部の非限定的な例は、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジルを含む。
【0037】
「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0038】
「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0039】
「薬学的に許容し得る塩」という用語は、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持しており、生物学的に又は他の点で望ましくなくはない塩を指す。該塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、特に、塩酸、及び有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等と形成される。加えて、これらの塩は、遊離酸に無機塩基又は有機塩基を加えることにより調製することができる。無機塩基から得られる塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム塩等を含むが、これらに限定されない。有機塩基から得られる塩は、第一級、第二級及び第三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂;例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リシン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリイミン樹脂等の塩を含むが、これらに限定されない。式(I)で示される化合物の特定の薬学的に許容し得る塩は、塩酸塩である。
【0040】
「保護基」(PG)という用語は、合成化学においてそれに従来から関連する意味において、化学反応を別の非保護反応性部位において選択的に行うことができるように、多官能化合物中の反応性部位を選択的にブロックする基を意味する。保護基は、適切な時点で除去することができる。例示的な保護基は、アミノ保護基、カルボキシ保護基又はヒドロキシ保護基である。特定の保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及びベンジル(Bn)である。さらに特定の保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)及びフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)である。より特定の保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)である。例示的な保護基及び有機合成におけるそれらの適用は、例えば、「Protective Groups in Organic Chemistry」 by T. W. Greene and P. G. M. Wutts, 5th Ed., 2014, John Wiley & Sons, N.Yに記載されている。
【0041】
式(I)で示される化合物は、幾つかの不斉中心を含有することができ、光学的に純粋なエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、例えば、ラセミ体等、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性体のラセミ体又はジアステレオ異性体のラセミ体の混合物の形態で存在することができる。
【0042】
カーン-インゴルド-プレローグ順位則に従って、不斉炭素原子は、「R」又は「S」の立体配置のものであることができる。
【0043】
「MAGL」という略語は、酵素モノアシルグリセロールリパーゼを指す。「MAGL」及び「モノアシルグリセロールリパーゼ」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、(1)状況、障害又は状態を阻害すること(例えば、疾患の進行もしくは維持治療の場合にはその再発を停止させ、減少させもしくは遅延させること、少なくとも1つのその臨床的もしくは亜臨床的症状の進行を停止させ、減少させもしくは遅延させること)及び/又は(2)状態を軽減すること(すなわち、状況、障害もしくは状態又はその臨床的もしくは亜臨床的症状の少なくとも1つを退行させること)を含む。治療される患者に対する利益は、統計学的に有意であるか又は患者もしくは医師に少なくとも認識できるかのいずれかである。ただし、医薬が疾患を治療するために患者に投与される場合、結果は常に有効な治療であるとは限らないことが理解されるであろう。
【0045】
本明細書で使用する場合、「予防」という用語は、状況、障害又は状態に罹患しているか又は罹患しやすい可能性があるが、状況、障害又は状態の臨床的又は亜臨床的症状をまだ経験しておらず又は表わしていないほ乳類、特にヒトにおいて進行している状況、障害又は状態の臨床的症状の出現を防止し又は遅延させることを含む。
【0046】
本明細書で使用する場合、「神経炎症」という用語は、神経組織の急性及び慢性炎症に関する。神経組織は、神経系の2つの部分;中枢神経系(CNS)の脳及び脊髄並びに末梢神経系(PNS)の分枝末梢神経の主な組織成分である。慢性神経炎症は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症に関連している。急性神経炎症は、通常、例えば、外傷性脳損傷(TBI)の結果として、直ちに中枢神経系に対する損傷に続いて起こる。
【0047】
「外傷性脳損傷」(「TBI」、「頭蓋内損傷」としても公知)という用語は、外部からの機械的力、例えば、急速な加速もしくは減速、衝撃、爆発波、又は発射体による貫通により生じる脳に対する損傷に関する。
【0048】
「神経変性疾患」という用語は、ニューロンの死を含むニューロンの構造又は機能の進行性喪失に関する疾患に関する。神経変性疾患の例は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病及び筋萎縮性側索硬化症を含むが、これらに限定されない。
【0049】
「精神障害」(mental disorder)(精神病(mental illness)又は精神系疾患(psychiatric disorder)とも呼ばれる)という用語は、苦痛又は生活機能の低下を引き起こし得る行動又は精神のパターンに関する。このような特徴は、持続性、再発性及び寛解性であり得、又は単独のエピソードとして生じ得る。精神障害の例は、不安及び抑うつを含むが、これらに限定されない。
【0050】
「疼痛」という用語は、実際の又は潜在的な組織損傷に関連する不快な感覚及び情動経験に関する。疼痛の例は、侵害受容性疼痛、慢性疼痛(特発性疼痛を含む)、神経障害性疼痛、幻肢痛及び心因性疼痛を含むが、これらに限定されない。疼痛の特定の例は、神経障害性疼痛であり、身体感覚に関与する神経系(すなわち、体性感覚系)のいずれかの部分に影響を及ぼす損傷又は疾患により引き起こされる。一実施態様では、「疼痛」は、切断又は開胸に起因する神経障害性疼痛である。
【0051】
「神経毒性」という用語は、神経系における毒性に関する。天然又は人工の有毒物質(神経毒素)に曝されることにより、神経組織に損傷を与えるような方法で、神経系の正常な活動が変化させられるときに起こる。神経毒性の例は、化学療法、放射線治療、薬物療法、薬物乱用及び臓器移植で使用される物質への暴露並びに重金属、特定の食品及び食品添加物、農薬、工業及び/又は洗浄溶媒、化粧品及び一部の天然物質への暴露により生じる神経毒性を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ほ乳類」という用語は、ヒト及び非ヒトの両方を含み、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ネズミ、ウシ、ウマ及びブタを含むが、これらに限定されない。特に好ましい実施態様では、「ほ乳類」という用語は、ヒトを指す。
【0053】
本発明の化合物
第1の態様では、本発明は、式(I)
【化8】
[式中、
Aは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群より選択され、ここで、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、それぞれ独立して、R
4及びR
5により置換されており、
Lは、ヘテロシクリル、-O-、-C(O)-、-S(O)
2-、-CHR
6-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
p-C(O)-NR
7-及び-(CH
2)
q-NR
8-C(O)-からなる群より選択され、
Xは、N又はC-R
9であり、
m、n、p及びqは、それぞれ独立して、0及び1からなる群より選択される整数であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される]
で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0054】
一実施態様では、
Aが、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルからなる群より選択され、ここで、前記アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルが、それぞれ独立して、R4及びR5により置換されており、
R4が、水素、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ及びアリールからなる群より選択され、
R5が、水素又はハロゲンである、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0055】
一実施態様では、
Aが、R4及びR5により置換されているアリールであり、
R4が、水素、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ及びアリールからなる群より選択され、
R5が、水素又はハロゲンである、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0056】
一実施態様では、
Aが、R4及びR5により置換されているヘテロアリールであり、
R4及びR5が両方とも、水素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0057】
一実施態様では、
Aが、R4及びR5により置換されているヘテロシクリルであり、
R4及びR5が両方とも、水素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0058】
好ましい実施態様では、
Aが、R4及びR5により置換されているアリールであり、
R4が、水素、ハロゲン、ハロアルキル及びアルコキシからなる群より選択され、
R5が、水素又はハロゲンである、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0059】
特に好ましい実施態様では、
Aが、R4及びR5により置換されているフェニルであり、
R4が、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル及びメトキシからなる群より選択され、
R5が、水素又はフッ素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0060】
さらに特に好ましい実施態様では、
Aが、フェニル、4-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、3-(トリフルオロメチル)フェニル、4-(トリフルオロメチル)フェニル、3-メトキシフェニル、3,5-ジフルオロフェニル及び2,3-ジフルオロフェニルからなる群より選択される、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0061】
一実施態様では、
Lが、ヘテロシクリル、-O-、-C(O)-、-S(O)2-、-CHR6-、-CH2CH2-及び-(CH2)p-C(O)-NR7-からなる群より選択され、
pが、0又は1であり、
R6が、水素又はハロゲンであり、
R7が、水素、アルキル又はシクロアルキルである、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0062】
一実施態様では、
Lが、ヘテロシクリル、-O-、-C(O)-、-S(O)2-、-CHR6-、-CH2CH2-及び-(CH2)p-C(O)-NR7-からなる群より選択され、
Xが、N又はC-R9であり、ただし、
Lが、-(CH2)p-C(O)-NR7-である場合、Xが、C-R9であるという条件である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0063】
一実施態様では、
Lが、ヘテロシクリル、-O-、-C(O)-、-S(O)2-、-CH2-、-CH2CH2-及び-(CH2)p-C(O)-NR7-からなる群より選択され、
pが、0又は1であり、
R7が、アルキル又はシクロアルキルである、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0064】
好ましい実施態様では、
Lが、-O-又は-CH2-である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0065】
特に好ましい実施態様では、
Lが、-O-である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0066】
さらに特に好ましい実施態様では、
Lが、-CH2-である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0067】
好ましい実施態様では、
Xが、N又はC-R9であり、
R9が、水素、ヒドロキシ及びハロゲンからなる群より選択される、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0068】
特に好ましい実施態様では、
Xが、C-Hである、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0069】
一実施態様では、
m及びnが両方とも、1である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0070】
好ましい実施態様では、
R1が、水素、アルキル、ハロアルキル及びヘテロアリールからなる群より選択される、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0071】
特に好ましい実施態様では、
R1が、水素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0072】
さらに特に好ましい実施態様では、
R2が、水素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0073】
さらに特に好ましい実施態様では、
R3が、水素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0074】
一実施態様では、
Aが、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルからなる群より選択され、ここで、前記アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルが、それぞれ独立して、R4及びR5により置換されており、
Lが、ヘテロシクリル、-O-、-C(O)-、-S(O)2-、-CH2-、-CH2CH2-及び-(CH2)p-C(O)-NR7-からなる群より選択され、
Xが、N又はC-R9であり、
m、n及びpが、それぞれ独立して、0及び1からなる群より選択される整数であり、
R1が、水素、アルキル、ハロアルキル及びヘテロアリールからなる群より選択され、
R2及びR3が両方とも、水素であり、
R4が、水素、ハロゲン、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ及びアリールからなる群より選択され、
R5が、水素又はハロゲンであり、
R7が、アルキル又はシクロアルキルであり、
R9が、水素、ヒドロキシ及びハロゲンからなる群より選択される、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0075】
好ましい実施態様では、
Aが、R4及びR5により置換されているアリールであり、
Lが、-O-又は-CH2-であり、
Xが、C-Hであり、
m及びnが両方とも、1であり、
R1、R2及びR3がそれぞれ、水素であり、
R4が、水素、ハロゲン、ハロアルキル及びアルコキシからなる群より選択され、
R5が、水素又はハロゲンである、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0076】
特に好ましい実施態様では、
Aが、R4及びR5により置換されているフェニルであり、
Lが、-O-又は-CH2-であり、
Xが、C-Hであり、
m及びnが両方とも、1であり、
R1、R2及びR3がそれぞれ、水素であり、
R4が、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル及びメトキシからなる群より選択され、
R5が、水素又はフッ素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0077】
さらに特に好ましい実施態様では、
Aが、フェニル、4-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、3-(トリフルオロメチル)フェニル、4-(トリフルオロメチル)フェニル、3-メトキシフェニル、3,5-ジフルオロフェニル及び2,3-ジフルオロフェニルからなる群より選択され、
Lが、-O-又は-CH2-であり、
Xが、C-Hであり、
m及びnが両方とも、1であり、
R1、R2及びR3がそれぞれ、水素である、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0078】
一実施態様では、式(I)で示される化合物は、式(Ia)
【化9】
[式中、A、m、n、R
1、R
2及びR
3は、式(I)で示される化合物に関して本明細書で定義されたとおりであり、Lは、ヘテロシクリル、-CHR
6-及び-CH
2CH
2-、からなる群、好ましくは、-CHR
6-及び-CH
2CH
2-より選択され、R
6は、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、好ましくは、水素及びアルキルから選択され、特にここで、R
6は、水素である]
で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩である。
【0079】
好ましい実施態様では、式(I)で示される化合物は、
R1が、アルキル、ハロアルキル及びヘテロアリールからなる群より選択され、Lが、-CH2-又は-CH2CH2-である、本明細書に記載された式(Ia)で示される化合物である。
【0080】
一実施態様では、前記式(I)で示される化合物が、以下:
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-(4-ベンジルピペラジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-(4-ベンジル-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-(ベンゼンスルホニル)ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(5S)-2-オキソ-5-フェニル-1,3-オキサゾリジン-3-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-(4-ベンゾイルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-(4-フェノキシピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-(3-フェノキシピロリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(5R)-2-オキソ-5-フェニル-1,3-オキサゾリジン-3-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
4-[[1-(3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-6-カルボニル)ピペリジン-4-イル]メチル]ベンゾニトリル;
6-[4-[(2-フェニルフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-(ピリジン-2-イルメチル)ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]-4-フルオロピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-8-フルオロ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
N-メチル-N-[1-(3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-6-カルボニル)ピペリジン-4-イル]ベンズアミド;
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-3-オン;
6-[4-(ピペリジン-1-カルボニル)ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-(3-ベンジルピロリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[3-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]アゼチジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[3-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピロリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[3-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピロリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
N-シクロプロピル-N-[1-(3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-6-カルボニル)ピペリジン-4-イル]-2-フェニルアセトアミド;
6-[4-[2-(3-クロロフェニル)エチル]-3-(1H-ピラゾール-3-イル)ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[3-(トリフルオロメチル)-4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[3-(1H-ピラゾール-3-イル)-4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
6-[3-メチル-4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン
からなる群より選択される、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0081】
一実施態様では、前記式(I)で示される化合物が、以下:
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-メトキシフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(3,5-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(4-クロロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[4-[(2,3-ジフルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
6-[4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペリジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン
からなる群より選択される、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0082】
好ましい実施態様では、式(I)で示される化合物は、式(Ia)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩であり、ここで、前記式(Ia)で示される化合物が、以下:
6-[4-[2-(3-クロロフェニル)エチル]-3-(1H-ピラゾール-3-イル)ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[3-(トリフルオロメチル)-4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;
6-[3-(1H-ピラゾール-3-イル)-4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン;及び
6-[3-メチル-4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン
からなる群より選択される。
【0083】
特定の実施態様では、本発明は、本明細書に記載された式(I)で示される化合物の薬学的に許容し得る塩、特に、塩酸塩を提供する。さらに特定の実施態様では、本発明は、本明細書に記載された式(I)で示される化合物を提供する。
【0084】
製造方法
本発明の式(I)で示される化合物の調製は、逐次又は収束合成経路で行うことができる。本発明の合成を下記一般的なスキームに示す。反応及び得られた生成物の精製を行うのに必要な技能は、当業者に公知である。該方法の下記説明において使用される置換基及び添え字は、特に断りない限り、本明細書で与えられた意味を有する。
【0085】
出発物質、中間体又は式(I)で示される化合物のうちの1つが、安定でないか又は1つ以上の反応工程の反応条件下で反応性である1つ以上の官能基を含有する場合、適切な保護基(例えば、「Protective Groups in Organic Chemistry」 by T. W. Greene and P. G. M. Wutts, 5th Ed., 2014, John Wiley & Sons, N.Y.に記載されるような)を、当技術分野において周知の方法を適用して、重要な工程の前に導入することができる。文献に記載されている標準的な方法を使用して、このような保護基を合成の後の段階で除去することができる。
【0086】
出発物質又は中間体が立体中心を含有する場合、式(I)で示される化合物をジアステレオマー又はエナンチオマーの混合物として得ることができる。同混合物を当技術分野において周知の方法、例えば、キラルHPLC、キラルSFC又はキラル結晶化により分離することができる。ラセミ化合物を、例えば、光学的に純粋な酸での結晶化により又はキラル吸着剤もしくはキラル溶出液のいずれかを使用する特異的クロマトグラフィー法による対掌体の分離により、ジアステレオマー塩を介してそれらの対掌体に分離することができる。
【0087】
当業者であれば、式(I)で示される化合物の合成において、何らかの点で望ましくない限り、「直交保護基戦略」が適用されるであろうことを認識するであろう。この戦略により、分子中の他の保護基に影響を及ぼすことなく、幾つかの保護基を一度に1つずつ切断させることが可能となる。直交保護の原理は、当技術分野において周知であり、文献(例えば、Barany and R. B. Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 7363;H. Waldmann et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1996, 35, 2056)にも記載されている。
【0088】
当業者であれば、反応の順序が中間体の反応性及び性質に応じて変わり得ることを認識するであろう。
【0089】
より詳細には、式(I)で示される化合物は、以下に示された方法により、実施例に示された方法により又は類似の方法により製造することができる。個々の反応工程に適した反応条件は、当業者に公知である。また、記載された反応に影響を及ぼす文献に記載された反応条件については、例えば、Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition, Richard C. Larock. John Wiley & Sons, New York, NY. 1999を参照のこと。溶媒の存在下又は非存在下で、反応を行うのが好都合であることが見出された。利用される溶媒の性質に特に制限はない。ただし、反応又は関与する試薬に悪影響を及ぼさず、少なくともある程度試薬を溶解することができるという条件である。記載された反応を広範囲の温度にわたって行うことができる。正確な反応温度は、本発明に重要ではない。記載された反応を-78℃~還流の温度範囲で行うのが好都合である。反応に必要な時間も、多くの要因、特に、反応温度及び試薬の性質に応じて、広く変わり得る。ただし、0.5時間~数日の期間で、通常、記載された中間体及び化合物を生成するのに十分であろう。反応順序は、スキームに示されたものに限定されないが、出発物質及びそれらの各反応性に応じて、反応工程の順序を自由に変更することができる。
【0090】
本明細書において、下記略語を使用する。
【0091】
AcOH=酢酸、aq.=水性、Boc=tert-ブチルオキシカルボニル、CAS RN=ケミカルアブストラクツ登録番号、CDI=1,1’-カルボニルジイミダゾール、CHCl3=クロロホルム、DCM=ジクロロメタン、DCE=1,2-ジクロロエタン、DCC=N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、DMA=N、N-ジメチルアセトアミド、DMAP=4-ジメチルアミノピリジン、DMF=N、N-ジメチルホルムアミド、EDCI=N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、EtOAc=酢酸エチル、EtOH=エタノール、HATU=O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、HCl=塩酸、HPLC=高速液体クロマトグラフィー、HOBt=1-ヒドロキシベンゾ-トリアゾール、Huenig塩基=iPr2NEt=N-エチルジイソプロピルアミン、K2CO3=炭酸カリウム、MeOH=メタノール、RT=室温、MeI=ヨウ化メチル、MS=質量スペクトル、NaHCO3=炭酸水素ナトリウム、Na2CO3=炭酸ナトリウム、Na2SO4=硫酸ナトリウム、sat.=飽和、SFC=超臨界流体クロマトグラフィー、TBTU=O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチル-ウロニウムテトラフルオロボラート、TEA=トリエチルアミン、TFA=トリフルオロ酢酸、THF=テトラヒドロフラン、T3P=プロピルホスホン酸無水物。
【0092】
式(I)(式中、R1、R2、R3、X、L、A、m及びnは、本明細書中で定義されたとおりである)で示される化合物をスキーム1に概説された一般的な手順に従って合成することができる。
【0093】
【0094】
中間体1(市販されているか又はスキーム5及び6もしくは文献に記載されている方法により調製されるかのいずれか)(式中、A、L、X、R1、m及びnは、本明細書で定義されたとおりである)と、ベンゾオキサジン-3(4H)-オンカルボン酸化合物2(式中、R2及びR3は、本明細書で定義されたとおりである)との反応により、式(I)で示される化合物が与えられる(工程a、スキーム1)。この種のアミドカップリングを、周知のカップリング試薬、例えば、DCC、HATU、EDCI、HOBt、TBTU、T3P等のうちの1つ、及び塩基、例えば、Huenig塩基、トリエチルアミン又はDMAPを使用することにより、適切な溶媒、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、DMA、DCM又はジオキサン中において、好ましくは、0℃~室温で達成することができる。
【0095】
代替的には、ベンゾオキサジン-3(4H)-オンカルボン酸化合物2を溶媒なし又は場合により、溶媒、例えば、DCM中において、例えば、塩化チオニル又は塩化オキサリルでの処理により、その酸クロリド2aに変換することができる(スキーム1、工程b)。適切な溶媒、例えば、DCM又はDMF、及び塩基、例えば、Et3N、Huenig塩基、ピリジン又はDMAP下、0℃~該溶媒の還流温度の範囲の温度での酸クロリド2aと中間体1との反応により、(I)式の化合物が生成される(スキーム1、工程c)。
【0096】
一実施態様では、式(I)で示される化合物は、式(Ia)(式中、A、m、n、R1、R2及びR3は、式(I)で示される化合物に関して本明細書で定義されたとおりであり、Lは、ヘテロシクリル、-CHR6-及び-CH2CH2-からなる群、好ましくは、-CHR6-及び-CH2CH2-より選択され、ここで、R6は、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、好ましくは、水素及びアルキルから選択され、特にここで、R6は水素である)で示される化合物である。前記式(Ia)で示される化合物は、スキーム2に概説された一般的な手順に従って合成することができる。
【0097】
【0098】
このため、中間体1a(市販されているか又は文献に記載されているかのいずれか)(式中、R1、m及びnは、本明細書で定義されたとおりである)とベンゾオキサジン-3(4H)-オンカルボン酸化合物2(式中、R2及びR3は、本明細書で定義されたとおりである)との反応により、中間体3(式中、R1、R2、R3、m及びnは、本明細書で定義されたとおりである)が与えられる(工程a、スキーム2)。続けて、中間体3をアルデヒド又はケトン4(市販されているか又は文献に記載されているかのいずれか)(式中、Aは、本明細書で定義されたとおりであり、L1は、ヘテロシクリル、共有結合又はメチレン(CH2)、好ましくは、共有結合又はメチレンであり、R6は、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、好ましくは、水素及びアルキルから選択され、特にここで、R6は、水素である)と共に使用する還元的アミノ化により、還元剤、例えば、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドの存在下で、場合により、触媒量の酢酸(すなわち、4に対して1モル当量未満)の存在下で、溶媒、例えば、DCE、MeOH、EtOH、THF、DCM又はそれらの混合物中において、式(Ia)で示される化合物が与えられる(工程d、スキーム2)。
【0099】
ベンゾオキサジン-3(4H)-オンカルボン酸化合物2を、スキーム3及び4で概説された一般的な合成手順により例示することができる各種の条件により調製することができる。
【0100】
【0101】
市販の3-アミノ-4-ヒドロキシ-安息香酸5a(式中、R2及びR3は、本明細書で定義されたとおりである)の環化をクロロアセチルクロリドの存在下、溶媒、例えば、CHCl3、DCM、THF又はそれらの混合物、好ましくは、THFと水との混合物中、好ましくは、0℃~室温の温度範囲で達成して、対応するベンゾオキサジン-3(4H)-オンカルボン酸化合物2を与えることができる(スキーム3、工程a)。
【0102】
【0103】
代替的には、市販の3-アミノ-4-ヒドロキシ-ベンゾニトリル5b(式中、R2及びR3は、本明細書で定義されたとおりである)から出発して、溶媒、例えば、CHCl3、DCM又はTHF、好ましくは、CHCl3と水との混合物中において、塩基、例えば、Na2CO3、TEA、NaHCO3、K2CO3又はそれらの混合物、好ましくは、Na2CO3、及び相間移動触媒、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド又はそれらの混合物、好ましくは、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドの存在下で、0℃~室温の温度範囲において、クロロアセチルクロリドとの反応により、対応するベンゾオキサジン-3(4H)-オンカルボニトリル化合物6(式中、R2及びR3は、本明細書で定義されたとおりである)が与えられる(スキーム4、工程a)。水酸化ナトリウム溶液を使用するアルカリ条件下又は塩酸溶液、好ましくは、濃塩酸水溶液(水中の約37%wt/wt)を使用する酸性条件下で、70℃~100℃の温度範囲、好ましくは、反応混合物の沸点付近でのその後のニトリル加水分解により、対応するベンゾオキサジン-3(4H)-オンカルボン酸化合物2が与えられる(スキーム4、工程b)。
【0104】
一実施態様では、中間体1は、タイプB又はC(式中、A及びnは、本明細書で定義されたとおりである)の中間体である。タイプBの中間体を、例えば、スキーム5で概説された合成手順により例示されたように調製することができる。
【0105】
【0106】
タイプCの中間体を、例えば、スキーム6で概説された合成手順により例示されたように調製することができる。
【0107】
【0108】
アミノアルコール化合物10又は10a(式中、Aは、本明細書で定義されたとおりであり、好ましくは、Aは、本明細書で定義されたように、R4及びR5により置換されているアリール又はヘテロアリール、最も好ましくは、本明細書で定義されたように、R4及びR5により置換されているフェニルである)のそれぞれとケトン11(式中、nは、本明細書で定義されたとおりである)との反応による還元的アミノ化により、還元剤、例えば、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ナトリウムボロヒドリド又はナトリウムシアノボロヒドリド、好ましくは、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドの存在下、場合により、酢酸の存在下、好ましくは、触媒量(すなわち、11に対して1モル当量未満)で、溶媒、例えば、DCE、MeOH、EtOH、THF、DCM又はそれらの混合物、好ましくは、DCE中で、0℃~溶媒の沸点の温度範囲、好ましくは、室温で、中間体12又は12aがそれぞれ与えられる(スキーム5及び6における工程a)。溶媒、例えば、DCM、CH3CN、THF、ジオキサン又はそれらの混合物中、0℃~溶媒の沸点の温度範囲、好ましくは、室温での、例えば、CDI又はトリホスゲン、好ましくは、CDIを使用するその後の環化により、オキサゾリドン中間体13又は13aがそれぞれ生成される(工程b、スキーム5及び6)。最後に、酸性条件を使用するBoc保護基の除去、例えば、溶媒、例えば、MeOH中、室温付近でのジオキサン中の4M HCl又はDCM中のTFA、好ましくは、ジオキサン中の4M HClによる処理により、タイプB又はCの対応する中間体がそれぞれ与えられる(工程c、スキーム5及び6)。
【0109】
一実施態様では、本発明は、
a)アミン1
【化16】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、本明細書に記載されたとおりである]
を酸2
【化17】
[式中、R
2及びR
3は、本明細書に記載されたとおりである]と反応させ;又は
b)アミン1
【化18】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、本明細書に記載されたとおりである]
を酸クロリド2a
【化19】
[式中、R
2及びR
3は、本明細書に記載されたとおりである]
と反応させて、前記式(I)で示される化合物を形成する工程を含む、本明細書に記載された式(I)で示される化合物を製造する方法を提供する。
【0110】
一実施態様では、アミン1
【化20】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、本明細書に記載されたとおりである]
を酸2
【化21】
[式中、R
2及びR
3は、本明細書に記載されたとおりである)と反応させて、前記式(I)で示される化合物を形成することを含む、本明細書に記載された式(I)で示される化合物を製造する方法が提供される。
【0111】
一実施態様では、アミン1
【化22】
[式中、A、L、X、R
1、m及びnは、本明細書に記載されたとおりである]
を酸クロリド2a
【化23】
[式中、R
2及びR
3は、本明細書に記載されたとおりである]
と反応させて、前記式(I)で示される化合物を形成する工程を含む、本明細書に記載された式(I)で示される化合物を製造する方法が提供される。
【0112】
更なる態様では、前記式(I)で示される化合物が本明細書に記載された式(Ia)で示される化合物であって、アミン3
【化24】
[式中、R
1、R
2、R
3、m及びnは、本明細書で定義されたとおりである]
を式4
【化25】
[式中、A、L
1及びR
6は、本明細書で定義されたとおりである]
で示される化合物と、還元剤の存在下、好ましくは、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドの存在下で反応させて、前記式(Ia)で示される化合物を形成することを含む、式(I)で示される化合物を製造する方法が提供される。
【0113】
一態様では、本発明は、本明細書に記載されたいずれか1つの方法に従って製造された、本明細書に記載された式(I)で示される化合物を提供する。
【0114】
MAGL阻害活性
本発明の化合物は、MAGL阻害剤である。このため、一態様では、本発明は、ほ乳類におけるMAGLを阻害するための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0115】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類におけるMAGLを阻害する方法における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0116】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類におけるMAGLを阻害するための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0117】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類におけるMAGLを阻害するための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物を該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0118】
4-ニトロフェニルアセタートの加水分解に続いて、405~412nmで吸光する4-ニトロフェノールを生じさせることによって、MAGLの酵素活性を測定することにより、MAGL阻害活性について化合物をプロファイリングした(G.G. Muccioli, G. Labar, D.M. Lambert, Chem. Bio. Chem. 2008, 9, 2704-2710)。
【0119】
アッセイを384ウェルアッセイプレート(透明な底部を有する黒色、結合表面処理を行っていない、Corning Ref.3655)中で、総容量40μLで行った。ポリプロピレンプレート中の100% DMSO(VWR Chemicals 23500.297)において、3倍希釈段階で化合物の希釈を行い、アッセイにおいて25μM~1.7nMの最終濃度範囲を与えた。化合物希釈液(100% DMSO)1μLをアッセイバッファー(50mM TRIS(GIBCO,15567-027)、1mM EDTA(Fluka,03690-100ml))中のMAGL(リコンビナント野生型) 19μLに加えた。このプレートを2000rpmで1分間振とうし(Variomag Teleshake)、ついで、RTで15分間インキュベーションした。反応を開始するために、6% EtOHを含むアッセイバッファー中の4-ニトロフェニルアセタート(Sigma N-8130)20μLを加えた。アッセイにおける最終濃度は、1nM MAGL及び300μM 4-ニトロフェニルアセタートであった。振とう(1分、2000rpm)し、RTで5分間インキュベーションした後、405nmでの吸光度を1回目に測定した(Molecular Devices, SpectraMax Paradigm)。ついで、2回目の測定をRTで80分間のインキュベーション後に行った。2回の測定値から、傾きを2回目の測定値から1回目の測定値を引くことにより計算した。
【0120】
【0121】
一態様では、本発明は、前記式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩が本明細書に記載されたMAGLアッセイで測定された場合、25μM未満、好ましくは、10μM未満、より好ましくは、5μM未満のMAGL阻害についてのIC50を有する、本明細書に記載された式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0122】
一実施態様では、本明細書に記載された式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、本明細書に記載されたMAGLアッセイで測定された場合、0.000001μM~25μMのIC50(MAGL阻害)値を有し、特定の化合物は、0.000005μM~10μMのIC50値を有し、さらに特定の化合物は、0.00005μM~5μMのIC50値を有する。
【0123】
一実施態様では、本発明は、前記式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩が下記工程を含むアッセイで測定された場合、25μM未満、好ましくは、10μM未満、より好ましくは、5μM未満のMAGLについてのIC50を有する、本明細書に記載された式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩を提供する。
a)DMSO中の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の溶液を提供する工程;
b)アッセイバッファー(50mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;1mM エチレンジアミン四酢酸)中のMAGL(リコンビナント野生型)の溶液を提供する工程;
c)工程a)からの化合物溶液 1μLを工程b)からのMAGL溶液 19μLに加える工程;
d)混合物を2000rpmで1分間振とうする工程;
e)RTで15分間インキュベーションする工程;
f)アッセイバッファー(50mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;1mM エチレンジアミン四酢酸、6% EtOH)中の4-ニトロフェニルアセタート溶液 20μLを加える工程;
g)混合物を2000rpmで1分間振とうする工程;
h)RTで5分間インキュベーションする工程;
i)405nmでの混合物の吸光度を1回目に測定する工程;
j)RTでさらに80分間インキュベーションする工程;
k)405nmでの混合物の吸光度を2回目に測定する工程;
l)k)で測定された吸光度からi)で測定された吸光度を差し引き、吸光度の傾きを計算する工程;
ここで、
i)工程f)後のアッセイにおける式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の濃度は、25μM~1.7nMの範囲にあり;
ii)工程f)後のアッセイにおけるMAGLの濃度は、1nMであり;
iii)工程f)後のアッセイにおける4-ニトロフェニルアセタートの濃度は、300μMであり;
iv)工程a)~l)を式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の異なる濃度で、それぞれ少なくとも3回繰り返す。
【0124】
本発明の化合物の使用
一態様では、本発明は、治療上有効物質としての使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0125】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0126】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症もしくは神経変性疾患又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0127】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経変性疾患の治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0128】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類におけるガンの治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0129】
一態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0130】
好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0131】
特に好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症の治療又は予防のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0132】
一態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0133】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症もしくは神経変性疾患又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0134】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類におけるガンの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0135】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経変性疾患の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0136】
一態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0137】
好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0138】
特に好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0139】
一態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0140】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症もしくは神経変性疾患又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0141】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経変性疾患の治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0142】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類におけるガンの治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0143】
更なる態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつ、ガンもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0144】
好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0145】
特に好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症の治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載された式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩の使用を提供する。
【0146】
一態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、ガンもしくは精神障害又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物を該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0147】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経炎症もしくは神経変性疾患又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物を該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0148】
一実施態様では、本発明は、ほ乳類における神経変性疾患の治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物を該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0149】
一態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安、片頭痛、抑うつもしくは疼痛又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物を該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0150】
好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病又はそれらの任意の可能性のある組み合わせの治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物を該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0151】
特に好ましい実施態様では、本発明は、ほ乳類における多発性硬化症の治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載された式(I)で示される化合物を該ほ乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0152】
医薬組成物及び投与
一態様では、本発明は、本明細書に記載された式(I)で示される化合物と、治療上不活性な担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0153】
式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、医薬(例えば、医薬製剤の形態で)として使用することができる。該医薬製剤は、例えば、経口的に(例えば、錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の形態で)、経鼻的に(例えば、点鼻スプレーの形態で)又は直腸的に(例えば、坐剤の形態で)体内投与することができる。ただし、投与は、非経口的に、例えば、筋肉内又は静脈内(例えば、注射液剤の形態で)でも達成することもできる。
【0154】
式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤の製造のために、薬学的に不活性な無機又は有機の補助剤と共に加工することができる。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等を、例えば、錠剤、糖衣剤及び硬ゼラチンカプセル剤用のこのような補助剤として使用することができる。
【0155】
軟ゼラチンカプセル剤に適した補助剤は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体物質及び液状ポリオール等である。
【0156】
液剤及びシロップ剤の製造に適した補助剤は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコース等である。
【0157】
注射液剤に適した補助剤は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等である。
【0158】
坐剤に適した補助剤は、例えば、天然油又は硬化油、ロウ、脂肪、半固体又は液体ポリオール等である。
【0159】
さらに、該医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香味料、浸透圧を変えるための塩、バッファー、マスキング剤又は酸化防止剤を含有することができる。また、それらは、他の治療上価値のある物質を更に含有することもできる。
【0160】
用量は、広い範囲で変えることができ、当然、各特定の症例における個々の要求に適合させられるであろう。一般的には、経口投与の場合、体重1kg当たり約0.1mg~20mg、好ましくは、体重1kg当たり約0.5mg~4mg(例えば、ヒト一人当たり約300mg)の一日用量であって、好ましくは、例えば同じ量からなることができる1~3回の個々の用量に分割された一日用量が適切である。ただし、必要性が示されれば、本明細書に与えられた上限を超えることができることは明らかであろう。
【0161】
本発明によれば、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、2型糖尿病関連微小血管合併症(例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性ニューロパシー及び糖尿病性腎症であるが、これらに限定されない)、冠動脈疾患、肥満及び基礎となる炎症性疾患、慢性炎症性及び自己免疫性/炎症性疾患の治療又は予防に使用することができる。
【実施例】
【0162】
本発明は、下記実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。ただし、特許請求の範囲は実施例の範囲に限定されると解釈されるべきではない。
【0163】
調製例がエナンチオマーの混合物として得られる場合、純粋なエナンチオマーを本明細書に記載された方法により又は当業者に公知の方法、例えば、キラルクロマトグラフィー(例えば、キラルSFC)又は結晶化により分離することができる。
【0164】
全ての反応実施例及び中間体を、特に断りない限り、アルゴン雰囲気下において調製した。
【0165】
中間体A-1
3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-6-カルボン酸
0℃に冷却されたTHF(15mL)及び水(30mL)中の3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸(10.0g、65.3mmol)及び炭酸カリウム(10.83g、78.36mmol)の溶液に、クロロアセチルクロリド(8.85g、78.36mmol)を加えた。ついで、この反応混合物を25℃で一晩撹拌した。この反応を、濃塩酸を使用してpHが2になるまでクエンチした。固体沈殿物をろ別し、水(50mL)及びMeOH(5mL)で洗浄して、粗製の表記化合物(8.6g、65%)を淡黄色の固体として与えた。MS(ESI):m/z=194.1[M+H]+。
【0166】
中間体A-2
8-フルオロ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-6-カルボン酸
表記化合物を中間体A-1と同様に、ただし、3-アミノ-5-フルオロ-4-ヒドロキシ安息香酸(CAS RN 1025127-44-9)を使用して調製し、表記化合物をオフホワイト色の固体として与えた。MS(ESI):m/z=212.1[M+H]+。
【0167】
中間体B-1
(5S)-5-フェニル-3-(4-ピペリジル)オキサゾリジン-2-オン
工程[A]tert-ブチル 4-[[(2S)-2-ヒドロキシ-2-フェニル-エチル]アミノ]ピペリジン-1-カルボキシラート
氷浴で0℃に冷却されたDCE(2mL)中の(S)-2-アミノ-1-フェニルエタノール(CAS RN 56613-81-1、0.207g、1.51mmol)及びtert-ブチル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシラート(CAS RN 79099-07-3、0.250g、1.25mmol)の溶液に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(0.399g、1.88mmol)を2回にわけて加え、続けて、酢酸(0.014mL、0.251mmol)を加えた。得られた反応混合物を室温で一晩撹拌した。この混合物をEtOAcで希釈し、NaHCO3飽和水溶液に注いだ。水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固させて、粗製の表記化合物(0.42g)を無色の固体として与えた。MS(ESI):m/z=321.21[M+H]+。
【0168】
工程[B]tert-ブチル 4-[(5S)-2-オキソ-5-フェニル-オキサゾリジン-3-イル]ピペリジン-1-カルボキシラート
ジオキサン(3mL)中の(R)-tert-ブチル 4-((2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシラート(0.42g、1.31mmol)の溶液に、CDI(0.101g、0.624mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この混合物を真空中で濃縮し、EtOAcで希釈し、水で洗浄した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。残留物を0~50% EtOAc-ヘプタン勾配で溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表記化合物(0.410g、90%)を無色の固体として与えた。MS(ESI):m/z=291.2[M-tBu+H]+。
【0169】
工程[C](5S)-5-フェニル-3-(4-ピペリジル)オキサゾリジン-2-オン
ジオキサン中の4M HCl(1.91mL、7.62mmol)をDCM(3mL)中のtert-ブチル 4-[(5S)-2-オキソ-5-フェニル-オキサゾリジン-3-イル]ピペリジン-1-カルボキシラート(0.330g、0.953mmol)の溶液に加えた。この反応混合物を室温で4時間撹拌した。この混合物を蒸発乾固させた。残留物をジイソプロピルエーテルで粉砕した。固体沈殿物をろ別し、高真空下でさらに乾燥させて、表記化合物(0.225g、96%)を無色の固体である塩酸塩として与えた。MS(ESI):m/z=247.2[M+H]+。
【0170】
中間体B-2
(5R)-5-フェニル-3-(4-ピペリジル)オキサゾリジン-2-オン
表記化合物を中間体B-1と同様に、ただし、工程[A]において、(R)-2-アミノ-1-フェニルエタノール(CAS RN 2549-14-6)を使用して調製し、表記化合物を無色の固体として与えた。MS(ESI):m/z=247.1[M+H]+。
【0171】
実施例1
6-(4-ベンジルピペリジン-1-カルボニル)-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン
フラスコ中において、3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-6-カルボン酸(中間体A-1、0.042g、0.217mmol)、4-ベンジルピペリジン(CAS RN 31252-42-3、0.038mL、0.217mmol)及びHATU(0.091g、0.239mmol)をDMF(1mL)中で混合した。ついで、Huenig塩基(0.095mL、0.544mmol)を加えた。この反応混合物を室温で2時間撹拌した。この反応物をEtOAcで希釈し、水に注いだ。水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮した。残留物を0~100% EtOAc-ヘプタン勾配で溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表記化合物(0.050g、66%)を無色の固体として与えた。MS(ESI):m/z=351.2[M+H]+。
【0172】
表2に列記された下記実施例を示された中間体及び/又は市販の化合物を使用し、言及された精製法、例えば、分取HPLC(Gemini NXカラム)又はシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用することにより、実施例1の調製について記載された手順と同様に調製した。
【0173】
【0174】
中間体C-1
6-(3-(1H-ピラゾール-3-イル)ピペラジン-1-カルボニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン
3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-カルボン酸(50mg、259μmol、CAS RN 134997-87-8)、2-(1H-ピラゾール-3-イル)ピペラジン(43.3mg、285μmol、CAS RN 111781-55-6)、HATU(118mg、311μmol)及びTEA(78.6mg、108μL、777μmol)をDMF(1.23mL)に溶解させた。この反応混合物をRTで48時間撹拌した。この反応混合物を真空中で濃縮した。残留物をMeOHで溶解させ、ついで、シルカゲルで処理した。懸濁液を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(12g シリカゲルカラム、n-ヘプタン中の0~100% EtOAc)により精製して、黄色の固体(83mg、98%)を与えた。MS(ESI):m/z=328.3[M+H]+。
【0175】
中間体C-2
6-(3-(トリフルオロメチル)ピペラジン-1-カルボニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン
3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-カルボン酸(100mg、518μmol、CAS RN 134997-87-8)、2-(トリフルオロメチル)ピペラジン(87.8mg、569μmol、CAS RN 131922-05-9)、HATU(236mg、621μmol)及びTEA(157mg、216μl、1.55mmol)をDMF(2.5mL)に溶解させた。この反応混合物をRTで15時間撹拌した。この反応混合物を分取HPLCにより精製して、オフホワイト色の固体(144mg、82.7%)を与えた。MS(ESI):m/z=330.2[M+H]+。
【0176】
中間体C-3
6-(3-メチルピペラジン-1-カルボニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン
3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-カルボン酸(100mg、518μmol、CAS RN 134997-87-8)、2-メチルピペラジン(57mg、569μmol、CAS RN 109-07-9)、HATU(236mg、621μmol)及びTEA(157mg、216μL、1.55mmol)をDMF(2.5mL)に溶解させた。この反応溶液をRTで15時間撹拌した。この反応混合物を分取HPLCにより精製して、黄色の固体(123mg、86.3%)を与えた。MS(ESI):m/z=276.2[M+H]+。
【0177】
実施例34
6-[3-メチル-4-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-カルボニル]-4H-1,4-ベンゾオキサジン-3-オン
DCM(1.7mL)中の6-(3-メチルピペラジン-1-カルボニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(116mg、421μmol、中間体C-3)、4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(88mg、67.6μl、506μmol、CAS RN 455-19-6)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(89.3mg、421μmol、CAS RN 56553-60-7)をRTで72時間撹拌した。この反応混合物を濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(24g シリカゲルカラム、DCM中の0~10% MeOH)により精製して、白色の固体(12mg、6.57%)を与えた。MS(ESI):m/z=434.3[M+H]+。
【0178】
表3に列記された下記実施例を示された中間体及び/又は市販の化合物を使用し、言及された精製法、例えば、分取HPLC(Gemini NXカラム)又はシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用することにより、実施例34の調製について記載された手順と同様に調製した。
【0179】
【0180】
実施例A
式(I)で示される化合物を下記組成の錠剤を製造するための有効成分としてそれ自体公知の方法で使用することができる。
1錠当たり
有効成分 200mg
微結晶セルロース 155mg
トウモロコシデンプン 25mg
タルク 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 20mg
425mg
【0181】
実施例B
式(I)で示される化合物を下記組成のカプセル剤を製造するための有効成分としてそれ自体公知の方法で使用することができる。
1カプセル当たり
有効成分 100.0mg
トウモロコシデンプン 20.0mg
乳糖 95.0mg
タルク 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
220.0mg