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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/323 20060101AFI20231215BHJP
   C08G 65/34 20060101ALI20231215BHJP
   C08G 65/324 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C08G65/323
C08G65/34
C08G65/324
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020558015
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060080
(87)【国際公開番号】W WO2019202076
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】18168487.9
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モンツァーニ, クリスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ガリムベルティ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】トルテッリ, ヴィート
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026245(JP,A)
【文献】特開2005-240040(JP,A)
【文献】特表2011-527308(JP,A)
【文献】特表2009-532432(JP,A)
【文献】特表2010-533759(JP,A)
【文献】特表2018-502942(JP,A)
【文献】特表2010-530014(JP,A)
【文献】特表2011-527362(JP,A)
【文献】特表2019-510028(JP,A)
【文献】特表2012-532163(JP,A)
【文献】特表2018-505952(JP,A)
【文献】国際公開第2009/014009(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/
C08F 14/
C08F214/
C07C 51/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの混合物[混合物(PFF COOH-CF3)]の製造方法であって、前記混合物(PFF COOH-CF3)が、式-O-CF-R-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF
[式中:
- Rは、1個又は2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18パーフルオロカーボン基であり;
- Rは、結合又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18パーフルオロカーボン基であり;
- 互いに等しいか若しくは異なる、R 及びR のそれぞれは、F又はC~Cパーフルオロカーボン基であり;
- a及びbは、独立して、ゼロ又は1であり、合計でゼロ又は1である]
の繰り返し単位の配列からなる主鎖を有するポリマーを含み;
並びに前記ポリマーは、-COOH及び-CX F(X 及びX は、F又はC~Cパーフルオロアルキル基である)からなる群から選択される鎖端を有し;
前記方法が、
工程(1):
(1a)式CF=CF-(CR -O-R-O-(CR -CF=CF
(式中、R、R 、R 、a及びbは、上で定義された意味を有する)の少なくとも1種のパーフルオロ化合物[化合物(F)];及び
(1b)式:HO-CH-R-CH-OH
(Rは、結合又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18(フルオロ)炭化水素基である)
の少なくとも1種の水素含有化合物[化合物(H)]を、
1:1を超える化合物(H):化合物(F)のモル比で、式(I):
HO-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]-CH-OHの多量のジヒドロキシ化合物を含む;及び式(II):
の少量の化合物を場合により含む混合物(PFH OH-OH)を生成するために、反応させる工程であって;式(I)及び(II)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し、nが、化合物(I)の数平均分子量が、300~50,000であるものである工程;
工程(2):混合物(PFH OH-OH)をCOFと、式(III):
F-C(O)-O-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]n’-CH-O-C(O)-Fの多量のジフルオロホルメート化合物を含む;及び上で詳述された、式(II)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)を生成するために、反応させる工程であって、式(III)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し、n’が、化合物(III)の数平均分子量が300~50,000である工程;
工程(3):混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)を分子フッ素源で、式(IV):
F-C(O)-O-CF-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-R-]n’’-CFO-C(O)-Fの多量の過フッ素化ジフルオロホルメート化合物を含む、及び式(V):
の少量の化合物を場合により含む混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)を生成するために、フッ素化する工程であって、式(IV)及び(V)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し;n’’が、化合物(I)の数平均分子量が、300~50,000である工程;
工程(4):混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)を水の存在下で、式(VII):
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-COOHの多量の過フッ素化ジカルボン酸化合物を含む、及び上で詳述された、式(V)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFF COOH-COOH)を生成するために、加水分解する工程であって、式(VII)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し、n’’’が、化合物(VII)の数平均分子量が300~50,000であるものである工程;
工程(5):混合物(PFF COOH-COOH)を、分子フッ素源と接触させることによって、フッ素化する工程であって、標的割合の-COOH末端基を転化させて、上で詳述された、前記混合物(PFF COOH-CF3)を生成するために必要とされる量のフッ素が添加される工程
を含む方法。
【請求項2】
工程(1)に使用される前記化合物(F)において、R 及びR のそれぞれが、Fである、すなわち、その化合物(F)が以下の式:
CF=CF(CFORO(CFCF=CF
[式中、
、a及びbは、請求項1において定義された意味を有する]
に従う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物(H)が、以下の式:
式:HO-CH-R-CH-OH
[Rは、結合又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18(フルオロ)炭化水素基である]
に従う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
混合物(PFH OH-OH)が、式(I):
HO-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]-CH-OHの多量のジヒドロキシ化合物を含み;及び式(II):
の少量の化合物を場合により含み、
ここで、式(I)及び(II)において、R、R、R 、R 、a及びbが、請求項1において定義された意味を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(2)において、混合物(PFH OH-OH)が、混合物(PFH OH-OH)を含む反応媒体を通してCOFのガス流をバブリングさせ、過剰のCOFが前記反応媒体を脱出できるようにすることによってCOFと反応させられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(2)が、式(III):
F-C(O)-O-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]n’-CH-O-C(O)-Fの多量のジフルオロホルメート化合物を含む;及び実際に前記工程(2)において変性されない/反応しない、上で詳述された、式(II)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)をもたらし、並びに式(I)の化合物の実質的に全てのヒドロキシル基がフルオロホルメート基へ転化している、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)が、請求項6において詳述された式(III)及び任意選択的に(II)の化合物から本質的になる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(3)において、混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)が、フッ素を含有するガスから選択される分子フッ素源と接触させられ、及びハロゲン化オレフィンが添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)が、式(IV)及び任意選択的に(V)の化合物から本質的になる、すなわち、有意の他の成分が前記混合物中に全く検出することができない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(4)において、混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)が、水の存在下での加水分解条件にかけられ、式(VII):
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-COOHの多量の過フッ素化ジカルボン酸化合物を含む、及び式(V)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFF COOH-COOH)をもたらす、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(5)において、工程(5)に使用される分子フッ素の量が、式:
式(VII)HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-COOH;
式(IX):
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-F
式(X):
F-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-F
の化合物のいずれかを含む;
及び式(V)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFF COOH-CF3)を生成するために調節され、
ここで、式(VII)、(IX)、(X)及び(V)において、R、R、R 、R 、n’’’、a及びbが、請求項1において定義された意味を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(5)における条件が、式(VII)、(IX)、(X)及び(V)の化合物のいずれかを含む混合物(PFF COOH-CF3)を得るために適応させられ、式-COOHの末端基及び式-CX F(X 及びX は、F又はC~Cパーフルオロアルキル基である)の末端基の全体量間のモル比が、35:65~65:35に含まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合物(PFF COOH-CF3)の化合物の-COOH末端基の反応性を活用することを狙った追加の工程、並びに特に、前記-COOH末端基が、式-COOR(Rは、一価金属;RがH又はC~C12炭化水素基である式NR の基;又はC~C12炭化水素基である)の基を提供するために塩化される及び/又はエステル化される少なくとも1つの追加の工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
混合物(PFF COOH-CF3)の式(IX)HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-Fの化合物が、式A-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-Fの化合物へ変性され、ここで、R、R,R 、R 、n’’’、a及びbが、上で定義された意味を有し、Aが、式-Xa’YZb’[式中:
- Xは、-CONR-、-COO-、-COS-、-CO-、及び式:
のいずれかの基からなる群から選択される連結有機ラジカルであり;
- a’は、ゼロ又は1であり;
- b’は、1~3の整数であり;
- Rは、水素、13個未満の炭素原子のアリール又は-YZ b’ ラジカルであり;
- Yは、結合又はオレフィン性不飽和を含まない多価の連結有機ラジカルであり;
- Zは、求電子反応、求核反応、若しくはフリーラジカル反応をとりわけ受け得る、且つ、-OH、-SH、-SR’、-NR’、-COH、-SiR’3-d、-CN、-NCO、>C=C<、-COR’、-OSOCF、-OCOCI、-OCN、-N(R’)CN、-(O)COC(O)-、-N=C、-I、-CHO、-CH(OCH、-SOCI、-C(OCH)=NH、-C(NH)=NH、-COC-Q、-OCR
(ここで、R’は、水素、アリール、又はC~Cアルキルであり;Qは、ハロゲン、-OR’、-OCOR’、又は-CH=CHであり;dは、1~3の整数であり;Rは、水素、又はC~C(フルオロ)アルキルであり、Rは、水素、又はC~Cアルキルであり;Rは、C~C(フルオロ)アルキルである)からなる群からとりわけ選択することができる官能基である]
の基である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月20日出願の欧州特許出願第18168487.9号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、きちんと定められた繰り返し単位構造を有するが、反応性末端基の部分を容易に調整することできるある種のパーフルオロポリエーテルポリマーの合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素化ポリマーの中で、(パー)フルオロポリエーテルポリマー(PFPE)は、それらを潤滑剤として特に興味あるものにする、それらの化学的及び物理的特性でよく知られており、且つ、大変興味深い。
【0004】
PFPEポリマーの幾つかの合成が、当技術分野において開示されている。不特定の過フッ素化ポリエーテル混合物の最初の合成は、油状生成物がヘキサフルオロプロペンの光オリゴマー化の過程で得られた、1953年に報告された。それ以来、多数の異なる過フッ素化ポリエーテルが合成され、文献に記載されてきた。
【0005】
例えば、Du Pont研究者らによって最初に開示された、とりわけヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)などの、パーフルオロエポキシドの触媒重合は、式-[CF(CF)CFO]-の繰り返し単位を含む主鎖を有する、商品名Krytox(登録商標)で商業的に入手可能な製品をもたらした。その後、Montedison研究者らは、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロペンなどの、パーフルオロ-オレフィンの光化学酸化を開示し、それは、式-[(CFO)(CFCF(R)O)]-(式中、Rは、-F又は-CFである)のランダムに分布した繰り返し単位を含む主鎖を有する、商品名Fomblin(登録商標)で商業的に入手可能な製品をもたらした。部分フッ素化オキセタンの開環重合、引き続くフッ素化を伴う、別の合成が、ダイキン株式会社によって開示され、式-(CFCFCFO)-の繰り返し単位を含む主鎖を有する、商品名Demnum(登録商標)で商業的に入手可能な製品をもたらした。
【0006】
当技術分野において公知の(パー)フルオロポリエーテルポリマー間の主要な相違は、Krytox(登録商標)ポリマー及びDemnum(登録商標)ポリマーが、たった1つのタイプの繰り返し単位、すなわち、それぞれ、-[CF(CF)CFO]-及び-(CFCFCFO)-を含む、規則正しい構造で特徴付けられるホモポリマーであるという事実にある。それとは違って、Fomblin(登録商標)ポリマーは、異なる式を有し、且つ、骨格鎖に沿ってランダムに(又は統計的に)分布している2つ以上の繰り返し単位の存在で特徴付けられるコポリマーである。繰り返し単位のこのランダム(又は統計的)分布は、光化学酸化に基づいている、製造プロセスのためである。しかしながら、繰り返し単位のランダム分布は、1個の炭素原子を有する(すなわち、式-CFO-の)複数の連続した繰り返し単位を含む骨格鎖をもたらすことができ、それは、一方では、ポリマー主鎖の柔軟性を増加させるが、他方では、それらが金属及び/又はルイス酸によってより容易に攻撃されるので、ポリマー主鎖における弱点を構成する。
【0007】
フッ素化ビニルエーテルアルコールの重合、引き続く中間の部分フッ素化構造物のフッ素化が、FEIRING,Andrew E..Synthesis of New Fluoropolymers: Tailoring Macromolecular Properties with FLuorinated Substituents.Journal of Macromolecular Science.1994,vol.A31,no.11,p.1657-1673に開示された。しかしながら、この論文に記載されている第1アプローチは、同じ分子内にヒドロキシ基及びビニルエーテル基の両方を有する部分フッ素化化合物(すなわち、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHOH)から出発し、その結果、最終ポリマーは、式-(CFCFOCFCF(CF)OCFCFCFO)-のたった1つの繰り返し単位を含む主鎖を有する。この論文に記載されている別のアプローチは、例えば、米国特許第5,185,421(E.I. DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)に、及びYANG,S.ら Novel fluorine-containing anionic aqueous polyurethane.Journal of Macromolecular Science.1993,vol.30,p.241-252によって記載されているものなどの、更なるコポリマーの製造のために使用されるテレキーレックマクロジオールを提供するための式CF=CFOCFCF(CF3)OCFCFCHOHの上述の化合物と、部分フッ素化ジオール(例えば式HOCH(CFCHOHの)との間の反応を含む。
【0008】
フッ素化ポリエーテル化合物もまた、米国特許出願公開第2016/0137947号明細書(旭硝子株式会社)に開示されている。この特許出願は、特に、以下の式:
{X-O-[(CFCFO)-(CFCFCFCFO)]}-Y-{[(OCFCF-(OCFCFCFCF]-O-Z}
[式中、
mは、1~10であり;
nは、0~10であり;
Xは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基又はアリール基を有する基であり;
Yは、(m+n)価アルカン基、エーテル酸素原子が炭素-炭素原子間に挿入された(m+n)価アルカン基、(m+n)価フルオロアルカン基、エーテル酸素原子が炭素-炭素原子間に挿入された(m+n)価フルオロアルカン基、又はシクロトリホスファゼン構造(P)であり;
Zは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基又はアリール基を持たない、及びハロアルキル基(但し、ハロゲン原子はフッ素原子若しくは塩素原子である)又はエーテル酸素が炭素-炭素原子間に挿入されたハロアルキル基(但し、ハロゲン原子はフッ素原子若しくは塩素原子である)を有する基である]
で表されるフッ素化ポリエーテル化合物を開示している。部分-[(CFCFO)-(CFCFCFCFO)]-において、単位(CFCFO)の「a」数及び単位(CFCFCFCFO)の「b」数の連結次数は限定されない、すなわち、単位(CFCFO)及び(CFCFCFCFO)は、ランダムに配置され得る、交互に配置され得るか、又は複数の単位(CFCFO)及び単位(CFCFCFCFO)からなる少なくとも1つのブロックが連結され得る。以下の式:
-CFCFO(CFCFCFCFOCFCFO)
(式中、eは、1~99である)
を有する構造が好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願人は、所定の化学構造を有するパーフルオロポリエーテルポリマー、すなわち、ポリマー主鎖中のその分布が非ランダムであるが先験的に規定されている繰り返し単位で特徴付けられるパーフルオロポリエーテルポリマーであって、鎖端の性質を、カルボン酸反応基(「官能基」とも言われる)と過フッ素化された、非反応基との間で適切に調整することができるポリマーを調製するという課題に直面した。
【0010】
したがって、第1態様において、本発明は、ポリマーの混合物[混合物(PFF COOH-CF3)]の製造方法であって、前記混合物(PFF COOH-CF3)が、式-O-CF-R-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF
[式中:
- Rは、1個又は2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18パーフルオロカーボン基であり;
- Rは、結合又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18パーフルオロカーボン基であり;
- 互いに等しいか若しくは異なる、R 及びR のそれぞれは、F又はC~Cパーフルオロカーボン基であり;
- a及びbは、独立して、ゼロ又は1であり、好ましくは互いに等しく、合計でゼロ又は1である]
の繰り返し単位の配列からなる主鎖を有するポリマーを含み、
並びに前記ポリマーは、-COOH及び-CX F(X 及びX は、F又はC~Cパーフルオロアルキル基である)からなる群から選択される鎖端を有し;
前記方法が、
工程(1):
(1a)式CF=CF-(CR -O-R-O-(CR -CF=CF
(式中、R、R 、R 、a及びbは、上で定義された意味を有する)
の少なくとも1種のパーフルオロ化合物[化合物(F)];及び
(1b)式:HO-CH-R-CH-OH
(Rは、結合又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18(フルオロ)炭化水素基である)
の少なくとも1種の水素含有化合物[化合物(H)]を、
1:1を超える化合物(H):化合物(F)のモル比で、式(I):
HO-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]-CH-OHの多量の任意のジヒドロキシ化合物を含む;及び式(II):
の少量の任意の化合物を場合により含む混合物(PFHOH-OH)を生成するために、反応させる工程であって;式(I)及び(II)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し、nが、化合物(I)の数平均分子量が、300~50,000の、好ましくは400~40,000の、より好ましくは500~25,000のものであるようなものである工程;
工程(2):混合物(PFH OH-OH)をCOFと、式(III):
F-C(O)-O-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]n’-CH-O-C(O)-Fの多量の任意のジフルオロホルメート化合物を含む;及び上で詳述されたような、式(II)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)を生成するために、反応させる工程であって、式(III)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し、n’が、化合物(I)の数平均分子量が、300~50,000の、好ましくは400~40,000の、より好ましくは500~25,000のものであるようなものである工程;
工程(3):混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)を分子フッ素源で、式(IV):
F-C(O)-O-CF-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-R-]n’’-CFO-C(O)-Fの多量の過フッ素化ジフルオロホルメート化合物を含む、及び式(V):
の少量の化合物を場合により含む混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)を生成するために、フッ素化する工程であって、式(IV)及び(V)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し;n’’が、化合物(I)の数平均分子量が、300~50,000の、好ましくは400~40,000の、より好ましくは500~25,000のものであるようなものである工程;
工程(4):混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)を水の存在下で、式(VII):
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-COOHの多量の過フッ素化ジカルボン酸化合物を含む、及び上で詳述されたような、式(V)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFF COOH-COOH)を生成するために、加水分解する工程であって、式(VII)において、R、R、R 、R 、a及びbが、上で定義された意味を有し、n’’’が、化合物(I)の数平均分子量が300~50,000の、好ましくは400~40,000の、より好ましくは500~25,000のものであるようなものである工程;
工程(5):混合物(PFF COOH-COOH)を、分子フッ素源と接触させることによって、フッ素化する工程であって、標的割合の-COOH末端基を転化させて、上で詳述されたような、混合物(PFF COOH-CF3)を生成するために必要とされる量のフッ素が添加される工程
を含む方法。
【0011】
本出願人は、意外にも、上で詳述された多工程シーケンスによって、繰り返し単位のしっかり構成された及び構造化された配列を有するパーフルオロポリエーテル化合物を生成することが可能であり、ここで、反応性カルボン酸及び過フッ素化非反応性末端基のモル分率が、有意の精製/厄介な分離工程なしに、標的混合物の最終特性の目標設定を確実にするために、全ての他の工程を実質的に定量的な収率に調節することができながら、上で詳述されたようなフッ素化工程(5)においてフッ素の簡単な計量供給によって広範囲内で調整できることを見いだした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の及び以下の特許請求の範囲の目的のためには:
- 例えば「混合物(PFF COOH-COOH)」等のような表現における、式を特定する記号又は数字周りの括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をより良く区別するという単なる目的を有し、それ故に、前記括弧はまた省略することができ;
- 用語「パーフルオロポリエーテル」は、完全フッ素化主鎖を含むポリエーテルポリマーを示すことを意図する。
【0013】
前記のように、工程(1)において、少なくとも化合物(F)と少なくとも1種の化合物(H)とが反応させられる。
【0014】
前記化合物(F)において、一般に、R 及びR は、互いに等しく、a及びbは、互いに等しく、その結果、化合物(F)の構造は、同一の繰り返し単位の配列を提供するためのようなものである。更に、前記化合物(F)において、好ましくは、R 及びR のそれぞれは、好ましくはFである、すなわち、化合物(F)は、好ましくは、以下の式:
CF=CF(CFORO(CFCF=CF
(式中、
、a及びbは、上で定義された意味を有する)
に従う。前記のように、好ましくはa及びbは等しい;特に、a及びbは、化合物(F)がパーフルオロアリル基を含み得ることを意味する、1であり得るか、又は化合物(F)がパーフルオロビニル基を含み得ることを意味する、ゼロであり得る。
【0015】
好ましい化合物は、a及びbが両方ともゼロであるものである。好ましくは、Rは、C~C18パーフルオロ(オキシ)アルキレン基、すなわち、1個又は2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18パーフルオロアルキレン基である。
【0016】
好ましい化合物(F)は、以下の式(F-I)~(F-VIII):
(F-I) CF=CFO(CFOCF=CF
(F-II) CF=CFO(CFOCF=CF
(F-III) CF=CFO(CFOCF=CF
(F-IV) CF=CFCFO(CFOCFCF=CF
(F-V) CF=CFO-CFO-(CFO(CFO-CFO-CF=CF
(F-VI) CF=CFO-CFO-(CFO-CFO-CF=CF
(F-VII) CF=CFO-CFO-(CFO-CFO-CF=CF
(F-VIII) CF=CFO-CFO-(CFO-CFO-CF=CFに従うものである。
【0017】
上記の化合物(F)の中で、式(F-II)~(F-III)に従うものが、本発明の方法において特に有利であると分かった。
【0018】
前記のように、化合物(H)は、以下の式:
式:HO-CH-R-CH-OH
(Rは、結合又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18(フルオロ)炭化水素基である)
に従う。それ故に、化合物(H)は、その基Rにおいてフッ素原子を含み得ることが理解される。そうは言っても、Rが結合であるか又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、フッ素を含まないC~C18炭化水素基である実施形態が好ましい。
【0019】
特に好ましい実施形態によれば、Rは、結合又はC~C18(オキシ)アルキレン鎖であり;前記アルキレン鎖は、線状若しくは分岐状であり得、線状構造が好ましい。
【0020】
最も好ましい化合物(H)は、式(H-I)~(H-V):
(H-I) HO(CHOH
(H-II) HO(CHOH
(H-III) HO(CHOH
(H-IV) HO(CHOH
(H-V) HO-CHCHOCHCHOH
(H-VI) HO(CHOH
に従うものである。
【0021】
好ましくは、前記化合物(H)と前記化合物(F)との間のモル比は、1.002:1~30:1、好ましくは1.005~25:1、最も好ましくは1.008:1~20:1である。
【0022】
特定の実施形態によれば、前記工程(1)は、前記化合物(F)に及び前記化合物(H)に、ビニル基及びアリル基から選択される1個の不飽和基を含む1種以上の化合物[化合物(F-モノ)]、及び/又は1個のヒドロキシル基を含む1種の水素含有化合物[化合物(H-モノ)]を添加することを任意選択的に含む。
【0023】
前記化合物(F-モノ)は、式:CFOCF=CF、COCF=CF、COCF=CF、CFOCFOCF=CF、CFCF=CF、CF=CF(TFE)のものから選択され得る。
【0024】
前記化合物(H-モノ)は、式:CHOH、COH、COH、CFCHOH、(CFCHOH及び(CHCHOHのものから選択され得る。
【0025】
それにもかかわらず、化合物(F-モノ)が全く及び/又は化合物(H-モノ)が全く使用されない実施形態が好ましい。
【0026】
好ましくは、工程(1)は、例えば25℃~180℃、好ましくは30℃~80℃の温度でなどの、加熱下で行われる。
【0027】
好ましくは、工程(1)は、塩基の存在下で行われる。好適な塩基は、NaOH、KOH、NHOH、NaH、トリアルキルアミン、とりわけテトラメチルグアニジンなどのグアニジン、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(「DABCO」)を含む群の中で選択される。
【0028】
任意選択的に、工程(1)は、溶媒の存在下で行われ得、前記溶媒は、少なくとも1種の極性の非プロトン性溶媒又は少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル(HFE)を含む、より好ましくはそれからなる群の中で好ましくは選択される。
【0029】
好ましくは、前記極性の非プロトン性溶媒は、ジメトキシエタン(グリム)、ビス(2-メトキシエチル)エーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレンポリオキシドジメチルエーテルを含む,より好ましくはそれらからなる群の中で選択される。アセトニトリルが特に好ましい。
【0030】
工程(1)は、逆の添加順番が行われる実施形態が等しく有効であるが、前記化合物(F)を前記化合物(H)に添加することによって好ましくは行われる。
【0031】
工程(I)における化合物(F)の反応性は、C=C不飽和の消失の測定を可能にする好適な分析技術によって有利には監視され;他の技術が状態を測定するのに等しく有効であり得るが、NMRが使用され得、ここで、化合物(F)の転化は実質上定量的である、すなわち、混合物(PFH OH-OH)をそのような分析測定にかけたときに、残存C=C炭素結合は全く検出されない。
【0032】
前記のように、混合物(PFH OH-OH)は、式(I):
HO-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]-CH-OHの多量のジヒドロキシ化合物を含み;及び式(II):
の少量の化合物を場合により含み、ここで、式(I)及び(II)において、R、R、R 、R 、a及びbは、上で定義された意味を有する。
【0033】
一般に、混合物(PFH OH-OH)は、式(I)及び任意選択的に、上で詳述されたような(II)の化合物から本質的になる、すなわち、有意の他の成分は全く前記混合物中に検出することができない。
【0034】
有利には、混合物(PFH OH-OH)は、式(I)及び式(II)の化合物の全モルに対して、少なくとも75モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも85モル%の量の式(I)の化合物を含む。
【0035】
逆に、混合物(PFH OH-OH)は、式(I)及び式(II)の化合物の全モルに対して、100モル%、好ましくは最大でも99モル%、より好ましくは最大でも98モル%の量の式(I)の化合物を含む。
【0036】
化合物(I)及び(II)において、化合物(F)及び化合物(H)に関連して基R、R、R 、R 、a及びbについて示された好みは全て、変更すべきところは変更してここで適用できる。
【0037】
混合物(PFH OH-OH)は、工程(I)の終わりに、例えば、溶媒の除去、あり得る望ましくない副生成物の除去等などの、ワーク-アップ手順にかけられ得る。
【0038】
特に、特定の実施形態によれば、混合物(PFH OH-OH)の式(I)の化合物は、式(II)の化合物から分離され得、そのような分離は、蒸留/分留、吸収/溶出等などの、周知の分離技術によって達成される。
【0039】
それにもかかわらず、式(II)の化合物が混合物(PFH OH-OH)から分離されない及び除去されない実施形態が、その後の工程における更なる反応性に有害に影響を及ぼさないことは理解される。
【0040】
工程(2)において、混合物(PFH OH-OH)は、COFと反応させられる。一般に、反応条件は、ガス量のCOFが混合物(PFH OH-OH)と接触するのを可能にするように適応させられる。反応は、混合物(PFH OH-OH)を含む反応媒体を通してCOFのガス流をバブリングさせ、過剰のCOFが反応媒体から脱出できるようにすることによって、実質的に大気圧又はわずかな過圧下で実施され得る。他の実施形態によれば、反応は、所与量のCOFを密閉反応器に供給し、工程(2)の完了まで過圧を維持して、圧力下に実施され得る。
【0041】
フッ化カルボニルは、一酸化炭素と分子フッ素との反応によって、「オンラインで」、及び/又は使用される前に生成させられ得る。
【0042】
工程(2)は、溶媒の存在下で実施され得る。溶媒が使用される場合、フッ素化条件下で安定である、パー(ハロ)フッ素化溶媒を用いることが一般に好ましい。
【0043】
それの例は、とりわけ、O、S、及びNなどのヘテロ原子を場合により含む、パー(ハロ)フルオロカーボン化合物であり;特に有効な溶媒は、1,2,3,4-テトラクロロヘキサフルオロブタンである。
【0044】
好ましくは、工程(2)は、抑えられた温度で、すなわち、80℃以下、好ましくは70℃以下、更により好ましくは50℃以下の温度で行われる。フルオロホルメート基へのヒドロキシル基の転化の有効性は、35℃よりも下の温度で操作するときに既に達成され;一般に、0℃を超える、好ましくは5℃を超える、より好ましくは10℃を超える温度が好ましいであろう。
【0045】
前記のように、工程(2)は、式(III):
F-C(O)-O-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]n’-CH-O-C(O)-Fの多量の任意のジフルオロホルメート化合物を含む;及び前記工程(2)において実際に変性されない/反応しない、上で詳述されたような、式(II)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)をもたらす。
【0046】
式(III)の化合物への式(I)の化合物の転化は、好適な分析技術によって監視することができる。
【0047】
上で詳述されたような、式(I)の化合物の実質的に全てのヒドロキシル基は、フルオロホルメート基へ転化する:言い換えれば、混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)は、検出できる量の、上で詳述されたような、式(I)のいかなる化合物も、式(VIII):HO-CH-R-[CH-O-CFCHF-(CR -O-R-O-(CR -CFHCF-O-CH-R-]n*-CH-O-C(O)-F(式中、R、R、R 、R 、a及びbは、上で定義された意味を有し、n*は、化合物(VIII)の数平均分子量が、300~50,000の、好ましくは400~40,000の、より好ましくは500~25,000のものであるようなものである)いかなるヒドロキシル-フルオロホルメート化合物も含まない。
【0048】
化合物(III)において、化合物(F)及び化合物(H)に関連して基R、R、R 、R 、a及びbについて示された好みは全て、変更すべきところは変更してここで適用できる。
【0049】
一般に、混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)は、式(III)及び任意選択的に上で詳述されたような式(II)の化合物から本質的になる、すなわち、有意の他の成分は前記混合物中に検出することができない。
【0050】
有利には、混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)は、式(I)及び式(II)の化合物の全モルに対して、少なくとも75モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも85モル%の量の式(III)の任意の化合物を含む。
【0051】
逆に、混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)は、式(III)及び式(II)の化合物の全モルに対して、100モル%、好ましくは最大でも99モル%、より好ましくは最大でも98モル%の量の式(III)の任意の化合物を含む。
【0052】
工程(3)において、混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)は、フッ素化を達成するために分子フッ素源と接触させられる。フッ素化条件下で、フルオロホルメート基は、有利には、いかなる有意の分解/副反応も受けず、そして一方、本質的に徹底的なフッ素化がC-H結合に関して達成され、それはC-F結合へ変換される。
【0053】
分子フッ素源の選択は、決定的に重要であるわけではない。好ましくは、前記分子フッ素源は、フッ素を含有するガスである。前記分子フッ素源がニートのフッ素ガス(F)である実施形態が予見されるが、フッ素と不活性ガスとの希釈したガス混合物が使用される技術が、等しく行うことができ、利点を有し得ることは一般に理解される。
【0054】
フッ素ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウムと混ぜ合わせられる。
【0055】
有利には、特定の実施形態によれば、フッ素化工程(2)を支援するためのフッ素ラジカルを生成するために、ハロゲン化オレフィンを添加することができる。前記ハロゲン化オレフィンは、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、オクタフルオロブテン、パーフルオロペンテン、パーフルオロヘキセン、パーフルオロヘプテン、パーフルオロオクテン、パーフルオロシクロブテン、パーフルオロシクロペンテン、パーフルオロシクロヘキセン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ジクロロジフルオロエチレン、クロロペンタフルオロプロペン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ-メチルビニルエーテル、パーフルオロ-エチルビニルエーテル、パーフルオロ-プロピルビニルエーテル;CFOClC=CClF、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエチレン異性体;及びフルオロジオキソールから選択することができる。
【0056】
好ましくは、工程(3)は、例えば、25℃~80℃、好ましくは30℃~75℃の温度でなどの、加熱下に行われる。
【0057】
化合物(IV)において、化合物(F)に関連して基R、R 、R 、a及びbについて示された好みは全て、変更すべきところは変更してここで適用できる。
【0058】
基Rに関する範囲で、この基は、実際に、基Rに対応する過フッ素化部分である。それ故に、Rは、結合又は1個若しくは2個以上のエーテル酸素を場合により含む、C~C18パーフルオロカーボン基であり、好ましくはRは、結合又はC~C18パーフルオロ(オキシ)アルキレン鎖であり;前記パーフルオロアルキレン鎖は、線状若しくは分岐状であり得、線状構造が好ましい。
【0059】
一般に、混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)は、式(IV)及び任意選択的に上で詳述されたような式(V)の任意の化合物から本質的になる、すなわち、有意の他の成分は前記混合物中に検出することができない。
【0060】
式(IV)及び(V)において、基R、R、R 、R 、a及びbについて示された好みは全て、変更すべきところは変更してここで適用できる。
【0061】
有利には、混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)は、式(IV)及び式(V)の化合物の全モルに対して、少なくとも75モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも85モル%の量の式(IV)の任意の化合物を含む。
【0062】
逆に、混合物(PFH OC(O)F-OC(O)F)は、式(IV)及び式(V)の化合物の全モルに対して、100モル%、好ましくは最大でも99モル%、より好ましくは最大でも98モル%の量の式(IV)の任意の化合物を含む。
【0063】
工程(4)において、混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)は、水の存在下での加水分解条件にかけられる。フルオロホルメート基の加水分解を達成するために、液体水が混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)に添加されてもよいが、少なくとも50%の相対湿度(RH)の、加湿ガス、例えば加湿空気の流れが、混合物(PFF OC(O)F-OC(O)F)を水と接触させるための有効なビヒクルであり得ることは一般に理解される。
【0064】
工程(4)において、水への暴露時に、フルオロホルメート末端基を有する式(IV)の化合物は、有利にも、脱炭酸及び脱フッ化水素によって分解し、カルボン酸誘導体へ変換され、それ故に炭素原子パーフルオロホルメート基を「失う」。
【0065】
フルオロホルメート末端基の転化は、実質上定量的であり、反応の進行は、適切な分析技術によって監視することができる。
【0066】
工程(4)の結果は、それ故に、式(VII):
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-COOHの多量の過フッ素化ジカルボン酸化合物を含む、及び上で詳述されたような、式(V)の少量の化合物を場合により含む混合物(PFF COOH-COOH)である。
【0067】
一般に、混合物(PFF COOH-COOH)は、式(VII)及び任意選択的に上で詳述されたような式(V)の任意の化合物から本質的になる、すなわち、有意の他の成分は前記混合物中に検出することができない。
【0068】
式(VII)及び(V)において、基R、R、R 、R 、a及びbについて示された好みは全て、変更すべきところは変更してここで適用できる。
【0069】
有利には、混合物(PFF COOH-COOH)は、式(VII)及び式(V)の化合物の全モルに対して、少なくとも75モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも85モル%の量の式(VII)の任意の化合物を含む。
【0070】
逆に、混合物(PFF COOH-COOH)は、式(VII)及び式(V)の化合物の全モルに対して、100モル%、好ましくは最大でも99モル%、より好ましくは最大でも98モル%の量の式(VII)の任意の化合物を含む。
【0071】
工程(5)において、前記混合物(PFF COOH-COOH)は、分子フッ素源と接触させることによってフッ素化される。工程(3)に使用されるようなフッ素源に関連して既に明確に説明された同じ考察がここで適用できる。
【0072】
前記のように、工程(5)において、標的割合の-COOH末端基を転化させて、上で詳述されたような、混合物(PFF COOH-CF3)を生成するための化学量論的に必要とされる量のフッ素が添加される。
【0073】
実際に、混合物(PFF COOH-COOH)におけるように、もっぱらカルボン酸基が、脱炭酸及び非反応性過フッ素化基の形成によって、フッ素化に向けて反応性であり、カルボン酸及び過フッ素化鎖端の相対量は、前記工程(5)に使用される分子フッ素の量を調節することによって容易に目標を設定することができる。
【0074】
結果として、工程(5)に使用される分子フッ素の量は、式:
式(VII)HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-COOH;
式(IX):
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-F
式(X):
F-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-F;
化合物のいずれかを含む;及び式(V)の少量の任意の化合物を場合により含む混合物(PFF COOH-CF3)を生成するために調節され得;
ここで、式(VII)、(IX)、(X)及び(V)において、R、R、R 、R 、n’’’、a及びbは、上で定義された意味を有する。
【0075】
特に、工程(5)に使用される分子フッ素の量は、上で詳述されたような、式(IX)
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-Fの多量の任意の化合物を含む混合物(PFF COOH-CF3)を生成するために調節され得る。言い換えれば、条件は、上で詳述されたような、式(VII)、(IX)、(X)及び(V)の化合物のいずれかを含む混合物(PFF COOH-CF3)を得るために適応させられ得、ここで、式-COOHの及び式-CX F(X 及びX は、F又はC~Cパーフルオロアルキル基である)の末端基の全体量間のモル比は、35:65~65:35、好ましくは40:60~60:40、最も好ましくは45:55~55:45に含まれる。
【0076】
本発明の方法は、当技術分野において公知の標準的な技術に従って、混合物(PFF COOH-CF3)の成分を単離する、分離する、精製するための追加の工程を更に含み得る。
【0077】
特に、本発明の方法は、とりわけ分留、分子蒸留、不活性担体上での吸着などの公知の技術に基づき得る、混合物(PFF COOH-CF3)に適用される分離工程を含み得、それは、混合物(PFF COOH-CF3 MONO)の全ての他の成分に対する、上で詳述されたような、式(IX):
HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-Fの任意の化合物の相対量が、混合物(PFF COOH-CF3)中の前記成分の相対量に対して増加している、混合物(PFF COOH-CF3 MONO)を提供するであろう。この分離工程は、混合物(PFF COOH-CF3 MONO)を単離するために、式(IX)の多量の任意の化合物を既に含む混合物(PFF COOH-CF3)に適用される場合に特に有効であり、ここで、式(IX)の任意の化合物の量は、混合物(PFF COOH-CF3 MONO)の化合物の全モルに対して、80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、及び更にそれ以上まで高められ得る。
【0078】
更に、本発明の方法は、混合物(PFF COOH-CF3)の化合物の-COOH末端基の反応性を活用することを狙った追加の工程を含み得る。とりわけ、前記-COOH末端基は、式COOR(Rは、一価金属;RがH又はC~C12炭化水素基である式NRN4の基;又はC~C12炭化水素基である)の基を提供するために塩化され得る及び/又はエステル化され得る。或いは、前記-COOH末端基は、式-COX(Xは、F、Clである)の対応するアシルハライド基へ変換され得る。
【0079】
どのタイプの化学でも、それらの反応性カルボン酸、カルボキシル誘導体又はカルボニルハライド基に更に適用され得;特に、前記基は、例えば米国特許第3,810,874号明細書(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING COMPANY)1974年5月14日に記載されているように、異なる反応体と反応させられ得る。
【0080】
それ故に、例えば、上で詳述されたような、混合物(PFF COOH-CF3)の式(IX)の任意の化合物HOOC-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-Fは、式A-R-[-CF-O-CFCF-(CR -O-R-O-(CR -CFCF-O-CF-Rn’’’-Fの化合物へ変性することができ、ここで、R、R、R 、R 、n’’’、a及びbは、上で定義された意味を有し、Aは、-XYZ[式中:
- Xは、多価の、好ましくは二価の、好ましくは、-CONR-、-COO-、-COS-、-CO-、及び式:
のいずれかの基からなる群から選択される、連結有機ラジカルであり;
- aは、ゼロ又は1であり;
- bは、1~3の整数であり;
- Rは、水素、(例えば、CH、-CHCF、-C13)、13個未満の炭素原子のアリール(例えば、-C、-CCH)又は-YZラジカルであり;
- Yは、結合又はアルキレン(例えば、-CH-、-C-)、オキサ-アルキレン(例えば、-CHOCH-)、シクロアルキレン(例えば、-c-C10-)、チア-アルキレン(例えば、-CHSCH-)、アリーレン(例えば、-C-)、若しくはそれらの組み合わせ、例えばアラルキレン(aralkylene)及びアルカリーレン(alkarylene)などのオレフィン性不飽和を含まない多価の連結有機ラジカルであり;
- Zは、求電子反応、求核反応、若しくはフリーラジカル反応をとりわけ受け得る、且つ、-OH、-SH、-SR’、-NR‘、-COH、-SiR’3-d、-CN、-NCO、>C=C<、-COR’、-OSOCF、-OCOCI、-OCN、-N(R’)CN、-(O)COC(O)-、-N=C、-I、-CHO、-CH(OCH、-SOCI、-C(OCH)=NH、-C(NH)=NH、-COC-Q、-OCR
(ここで、R’は、水素、アリール、又はC~Cアルキルであり;Qは、ハロゲン、-OR’、-OCOR’、又は-CH=CHであり;dは、1~3の整数であり;Rは、水素、又はC~C(フルオロ)アルキルであり、Rは、水素、又はC~Cアルキルであり;Rは、C~C(フルオロ)アルキルである)
からなる群からとりわけ選択することができる官能基である]の基である。
【0081】
参照により本明細書中に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それがある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0082】
本発明がこれから以下の実施例に関連して説明され、その目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0083】
実施例1
【0084】
工程1a)HO(CH[OCFCFHO(CFOCFHCFO(CH2)OHの合成
磁気撹拌、温度プローブ及び還流冷却器を付けた3口丸底フラスコに、9.73gのNaOH、37.60gの1,4-ブタンジオール及び240mlのアセトニトリルを装入した。混合物を、水酸化ナトリウムの完全な溶解まで撹拌下に40℃で加熱した。次いで、120.48gのCF=CF-O(CFO-CF=CFを滴加した。結果として生じた混合物を、8時間撹拌下に40℃に保持し、次いで、パーフルオロ-ビス-ビニルエーテル化合物の完全な転化まで、2時間60℃で加熱した。アセトニトリルを減圧下に60℃で蒸発させ、粗残留物を120mlの水及び120mlのCHClで抽出し;水相を100mlの新鮮なCHClで再び抽出し、2つの有機相を集め、ブライン(100ml)で抽出した。有機相を分離し、無水NaSOで処理し、濾過し;濾液を回収し、溶媒を減圧下に蒸発させて式HO(CHO-CFCFHO(CFOCF=CFの生成物におけるヒドロキシ基とビニル基との間の分子内反応から得られる副生成物としての5.2モル%の環状化合物、すなわち、式:
の化合物
と;
式HO(CH[OCFCFHO(CFOCFHCFO(CHOH[nは、数平均分子量(NMRによって測定されるような)が約2030であったようなものである]の94.8モル%のポリマーとを含有する144gの混合物を得た。
【0085】
工程1b):フルオロホルメート基としてのヒドロキシル基の保護
工程(a)において得られた52.4gのポリマー混合物を、280gの1,2,3,4-テトラクロロヘキサフルオロブタンに希釈し、機械撹拌機、2つの入口パイプ、熱電対及びガスのオーバーフローが外にガス抜きされるのを可能にする、出口パイプを備えた500mlのステンレス鋼反応器へロードした。反応器を20℃に及び激しい撹拌下に保ちながら、3.0Nl/hのフッ化カルボニル(3.0Nl/hの元素状フッ素と4.0Nl/hの一酸化炭素との間の反応によって得られる)を反応器に供給した。フッ化カルボニルのこの供給を2h30mの継続時間続行した。この反応時間後に、ポリマーの全ての-CHOH末端基が対応する-CHOC(O)Fフルオロホルメート末端基へ転化することが分かった。この段階で、それ故に、反応混合物は、式:F-C(O)O(CH[OCFCFHO(CFOCFHCFO(CHO-C(O)-F[nは、数平均分子量(NMRによって測定されるような)が約2030であったようなものである]の多量の化合物を含んだ。
【0086】
工程1c):フルオロホルメート誘導体のフッ素化及びカルボン酸パーフルオロ誘導体へのそれの加水分解
工程1b)から得られた反応混合物を、そのようなものとして使用し、同じステンレス鋼反応器中に維持した。そのような反応器における温度を40℃に上げ、希釈した元素状フッ素(ヘリウム中25%vol/vol)を反応器に供給し、その転化率をガスクロマトグラフィー分析によって監視した。フッ素転化率が60%よりも下に低下したとき、一酸化炭素(ヘリウム中16%vol/vol)を、第2入口パイプによって反応器に供給して全ての残存水素原子の完全な転化を達成した(モル比F:COは、約15:1であった)。フッ素化の終わりに(溶液の小サンプルに関してH-NMR分析によってチェックし、確認した)、それ故に、反応混合物は、式:F-C(O)O(CF-[OCFCFO(CFOCFCFO(CFO-C(O)-F[nは、数平均分子量(NMRによって測定されるような)が約2030であったようなものである]の多量の化合物を含んだ。残存フッ素を不活性ガスによってガス抜きし、粗混合物をPFA丸底フラスコに排出し、入口パイプによって湿った空気を供給しながら激しい撹拌下に保った。8h後に、19F-NMR分析は、対応する-CFC(O)OHカルボシル酸末端基への先行-CFCFOC(O)Fパーフルオロホルメート末端基の全ての完全な転化を裏付け、その量は、内部標準として1,2,3,4-テトラクロロヘキサフルオロブタンを使った19F-NMRによって定量的に測定された。この段階での反応混合物は、式:
HOOC-(CF-[OCFCFO(CFOCFCFO(CFn-1O-CFCFO(CFOCFCFO(CF-COOH[nは、数平均分子量(NMRによって測定されるような)が約2030であったようなものである]の多量の化合物を含有した。
【0087】
工程1d)-CF末端基を提供するためのカルボン酸末端基の選択的フッ素化及び引き続くエタノールでのエステル化
依然として1,2,3,4-テトラクロロヘキサフルオロブタンに溶解した、工程1c)において得られた二官能性のカルボン酸ポリマーを、機械撹拌機、2つの入口パイプ、熱電対及び出口パイプを備えた500mlのステンレス鋼反応器へロードした。反応器を20℃に保ちながら、希釈した元素状フッ素(ヘリウム中8.5%vol/vol)を、-CFCOOH末端基の半分を対応する-CF中性末端基へ転化させるためのそのような量で反応器に供給した(転化率は19F-NMR分析によって確認した)。生混合物を、PFA丸底フラスコ(冷却器を備えた)に排出し、100℃で過剰のエタノール(EtOH)で処理してカルボン酸基を全て対応する-CFC(O)OCHCHエチルエステルへ転化させた。溶液を次いで水で2回洗浄して過剰のEtOH及びHFを除去し、次いで溶媒を留去して、-残留物として-61.3gの油状生成物を得、その19F及びH-NMR分析は、主鎖として式-(CFCFCFCFO-CFCFOCFCFCFOCFCFO)基の繰り返し単位の配列、及び末端基として、約48:52のモル比で式:-OCFCFCF及び-OCFCFCFC(O)OCHCHの基の混合物、並びに約2910の数平均分子量を有する構造を裏付けた。