(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20231215BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20231215BHJP
C09D 7/42 20180101ALI20231215BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20231215BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231215BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D133/14
C09D7/42
C09D7/62
C09D7/61
(21)【出願番号】P 2020559737
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036208
(87)【国際公開番号】W WO2020115984
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2018230226
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩
(72)【発明者】
【氏名】魚住 徹
(72)【発明者】
【氏名】大村 匡弘
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082529(JP,A)
【文献】特開2010-253378(JP,A)
【文献】特開2017-082035(JP,A)
【文献】特開2014-065903(JP,A)
【文献】特開2018-002900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 -201/10
B32B 1/00- 43/00
B05D 1/00- 7/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、艶消し剤(C)、有機溶剤(D1)及び有機溶剤(D2)を含有する塗料組成物であって、
前記有機溶剤(D1)が、沸点が190~250℃の範囲内であり、かつ、溶解性パラメーターが
9.3以上10.5以下の有機溶剤であり、
前記有機溶剤(D2)が、沸点が100~140℃の範囲内であり、かつ、溶解性パラメーターが8以上9未満の有機溶剤であり、
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、前記有機溶剤(D1)の含有量が5~40質量部の範囲内であり、前記有機溶剤(D2)の含有量が35~75質量部の範囲内である、
塗料組成物。
【請求項2】
前記艶消し剤(C)が、シリカ粒子(C1)である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記シリカ粒子(C1)が、有機処理されたシリカ粒子(C1’)である、請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤(D1)及び有機溶剤(D2)の合計含有量が、前記水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、60~100質量部の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
(1)被塗物に、ベースコート塗料組成物(BC)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
(2)前記未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物(CC)を塗装して、未硬化のクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに、
(3)前記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を加熱して、両塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、前記クリヤーコート塗料組成物(CC)が請求項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
【請求項6】
(1)被塗物に、ベースコート塗料組成物(BC)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
(2)前記未硬化のベースコート塗膜上に、第1クリヤーコート塗料組成物(CC1)を塗装して、未硬化の第1クリヤーコート塗膜を形成する工程、
(3)前記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化の第1クリヤーコート塗膜を加熱して、両塗膜を同時に硬化させる工程、
(4)前記硬化させた第1クリヤーコート塗膜上に、第2クリヤーコート塗料組成物(CC2)を塗装して未硬化の第2クリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに、
(5)前記未硬化の第2クリヤーコート塗膜を加熱して硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、前記第2クリヤーコート塗料組成物(CC2)が請求項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車体の外板塗膜は、光沢のある意匠が一般的であったが、近年新しい意匠として光沢が抑えられた、所謂艶消し意匠が注目されている。
【0003】
艶消し意匠を呈する塗膜(以下「艶消し塗膜」と称することがある)を形成する手段としては、例えば、特許文献1には、低光沢二成分クリヤーコートであって、ウレタン樹脂を含むベース樹脂、前記低光沢二成分クリヤーコートの適用直前に前記ベース樹脂と組み合わされて二成分ベース樹脂混合物を形成するイソシアネート樹脂、及びシリカベースの艶消剤、を含む低光沢2成分クリヤーコートが記載されている。
【0004】
特許文献2には、被膜形成性樹脂(A)及び艶消し剤(B)を含み、さらに皮成分と芯成分とからなる非水重合体分散液(C)及び/又はブロックポリイソシアネート化合物(D)を含む塗料組成物であって、非水重合体分散液(C)が、アクリル重合体及び/又はアルキル鎖の炭素数が10~25であるヒドロキシアルキル基を有する脂肪酸の自己縮合物を含有しかつ重合性不飽和基を1分子当たり平均して1個以上有するマクロモノマーを皮成分の少なくとも一部として含有する非水重合体分散液であり、ブロックポリイソシアネート化合物(D)が、架橋反応において脱離する化合物が炭素数3~12の1官能アルコールである活性メチレン系ブロックポリイソシアネート化合物であることを特徴とする塗料組成物を用いることにより、艶安定性に優れた塗料組成物を得ることが出来ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-97260号公報
【文献】WO2016/017778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の塗料組成物では、艶消し塗膜を形成することができるが、塗装膜厚又は塗装環境が変動した場合に、形成される塗膜の艶が大きく変動する場合があった。すなわち艶安定性が不十分な場合があった。
【0007】
また、特許文献2の塗料組成物は、艶安定性が優れるが、塗装時の耐タレ性が不十分な場合があった。また、さらに優れた艶安定性を有することが求められていた。
【0008】
したがって、本発明は、形成される塗膜の艶安定性に優れ、かつ、耐タレ性に優れる塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、艶消し剤(C)ならびに特定の有機溶剤(D1)及び(D2)を含有し、該有機溶剤(D1)及び(D2)の含有量が特定の範囲内である塗料組成物が、形成される塗膜の艶安定性に優れ、かつ、耐タレ性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明によれば、以下の実施形態を含む塗料組成物及び複層塗膜形成方法を提供することができる。
【0011】
項1.水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、艶消し剤(C)、有機溶剤(D1)及び有機溶剤(D2)を含有する塗料組成物であって、
前記有機溶剤(D1)が、沸点が190~250℃の範囲内であり、かつ、溶解性パラメーターが9以上11以下の有機溶剤であり、
前記有機溶剤(D2)が、沸点が100~140℃の範囲内であり、かつ、溶解性パラメーターが8以上9未満の有機溶剤であり、
前記水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、前記有機溶剤(D1)の含有量が5~40質量部の範囲内であり、前記有機溶剤(D2)の含有量が35~75質量部の範囲内である、塗料組成物。
項2.前記艶消し剤(C)が、シリカ粒子(C1)である、項1に記載の塗料組成物。
項3.前記シリカ粒子(C1)が、有機処理されたシリカ粒子(C1’)である、項2に記載の塗料組成物。
項4.前記有機溶剤(D1)及び有機溶剤(D2)の合計含有量が、前記水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、60~100質量部の範囲内である、項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
項5.(1)被塗物に、ベースコート塗料組成物(BC)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
(2)前記未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物(CC)を塗装して、未硬化のクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに、
(3)前記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を加熱して、両塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、前記クリヤーコート塗料組成物(CC)が項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
項6.(1)被塗物に、ベースコート塗料組成物(BC)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
(2)前記未硬化のベースコート塗膜上に、第1クリヤーコート塗料組成物(CC1)を塗装して、未硬化の第1クリヤーコート塗膜を形成する工程、
(3)前記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化の第1クリヤーコート塗膜を加熱して、両塗膜を同時に硬化させる工程、
(4)前記硬化させた第1クリヤーコート塗膜上に、第2クリヤーコート塗料組成物(CC2)を塗装して、未硬化の第2クリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに、
(5)前記未硬化の第2クリヤーコート塗膜を加熱して硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、前記第2クリヤーコート塗料組成物(CC2)が項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料組成物は耐タレ性に優れ、かつ、艶安定性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の塗料組成物及び複層塗膜形成方法について詳細に説明する。
【0014】
本発明の塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある)は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、艶消し剤(C)、並びに特定の有機溶剤(D1)及び(D2)を含有し、該有機溶剤(D1)及び(D2)の含有量が特定の範囲内である塗料組成物である。
【0015】
水酸基含有アクリル樹脂(A)
水酸基含有アクリル樹脂(A)は、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)及びその他の重合性不飽和モノマー(a2)を公知の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0016】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)としては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2~10の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。さらに、該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)として、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε-カプロラクトン等のラクトン化合物との開環重合付加物等を挙げることもできる。開環重合付加物としては、具体的には、例えば、「プラクセルFA-1」、「プラクセルFA-2」、「プラクセルFA-3」、「プラクセルFA-4」、「プラクセルFA-5」、「プラクセルFM-1」、「プラクセルFM-2」、「プラクセルFM-3」、「プラクセルFM-4」、「プラクセルFM-5」(以上、いずれもダイセル化学社製、商品名)等を挙げることができる。これらの水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0018】
上記その他の重合性不飽和モノマー(a2)としては、以下の(a2-1)~(a2-8)のモノマーを挙げることができる。
【0019】
(a2-1)酸基含有重合性不飽和モノマー:
1分子中に1個以上の酸基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物で、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等の如きカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等の如きスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロプロピルアシッドホスフェート、2-メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系重合性不飽和モノマー等が含まれる。
【0020】
(a2-2)(メタ)アクリル酸と炭素数1~20の1価アルコールとのモノエステル化物:
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート,tert-ブチル(メタ)アクリレート,2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0021】
(a2-3)脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー:
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5-ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3-テトラシクロドデシルメタアクリレート、4-メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が含まれる。なかでも、耐酸性及び耐汚染性の観点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、脂環式炭化水素基及び水酸基を両方有する重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)に含まれるものとする。
【0022】
(a2-4)芳香族系重合性不飽和モノマー:
例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等が含まれる。
(a2-5)グリシジル基含有重合性不飽和モノマー:
1分子中にグリシジル基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個有する化合物で、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が含まれる。
(a2-6)窒素含有重合性不飽和モノマー:
例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルプロピルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等が含まれる。
(a2-7)その他のビニル化合物:
例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステルである「ベオバ9」、「ベオバ10」(商品名、HEXION社製)等が含まれる。
(a2-8)重合性不飽和基含有ニトリル系化合物:
例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が含まれる。
【0023】
上記その他の共重合可能な重合性不飽和モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)の使用量は、水酸基含有アクリル樹脂の製造に使用する重合性不飽和モノマー量を100質量部として、15~50質量部、好ましくは20~45質量部、さらに好ましくは25~40質量部であることが好適である。
【0025】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a1)の使用量が15質量部以上であると、硬化塗膜中の架橋により、所定の耐アルカリ性が得られやすくなるため好ましい。一方、50質量部以下とすることにより、その他の重合性不飽和モノマー(a2)との相溶性及び/又は共重合反応性が向上し、さらに塗料中の他成分との相溶性が向上することにより、塗膜の仕上り外観が向上するため好ましい。
【0026】
また、形成される塗膜の耐候性、耐アルカリ性等の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(a2)の少なくとも1種として、酸基含有重合性不飽和モノマー(a2-1)を使用することが好ましい。
【0027】
この場合、酸基含有重合性不飽和モノマー(a2-1)の使用量は、水酸基含有アクリル樹脂の製造に使用する重合性不飽和モノマー量を100質量部として、0.05~5質量部、好ましくは0.1~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部であることが好適である。
【0028】
また、形成される塗膜の耐アルカリ性、塗膜外観等の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(a2)の少なくとも1種として、脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(a2-3)を使用することが好ましい。
【0029】
この場合、脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(a2-3)の使用量は、水酸基含有アクリル樹脂の製造に使用する重合性不飽和モノマー量を100質量部として、1~40質量部、好ましくは10~40質量部、さらに好ましくは20~40質量部であることが好適である。
【0030】
また、形成される塗膜の耐アルカリ性等の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(a2)の少なくとも1種として、芳香族系重合性不飽和モノマー(a2-4)を使用することが好ましい。
【0031】
この場合、芳香族系重合性不飽和モノマー(a2-4)の使用量は、水酸基含有アクリル樹脂の製造に使用する重合性不飽和モノマー量を100質量部として、5~50質量部、好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは5~30質量部であることが好適である。
【0032】
上記重合性不飽和モノマーを共重合して水酸基含有アクリル樹脂を得るための共重合方法は、特に限定されるものではなく、それ自体既知の共重合方法を用いることができるが、なかでも、有機溶剤中にて重合開始剤の存在下で重合を行なう溶液重合法を、好適に使用することができる。
【0033】
上記溶液重合法に際して使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、「スワゾール1000」(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。
【0034】
これらの有機溶剤は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。高沸点のエステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用することが、本発明の塗料組成物に使用される水酸基含有アクリル樹脂の溶解性の点から、好ましい。また、これらの有機溶剤に加えて、高沸点の芳香族系溶剤を好適に組み合わせて使用することもできる。
【0035】
水酸基含有アクリル樹脂の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルパーオクトエート、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等の、それ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0036】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は80~200mgKOH/gの範囲内であることが好適であり、100~170mgKOH/gの範囲内であることがさらに好適である。水酸基価が80mgKOH/g以上であると、架橋密度が高いために所望の耐候性、耐アルカリ性、塗膜外観が得られやすくなる。また、200mgKOH/g以下であると塗膜の耐水性が向上するため好ましい。
【0037】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は2500~40000の範囲内であることが好適であり、4000~30000の範囲内であることがさらに好適である。重量平均分子量が2500以上であると所望の耐候性、耐アルカリ性、塗膜外観等の塗膜性能が得られやすくなるため好ましい。また、重量平均分子量が40000以下であると塗膜の平滑性が向上するため、仕上り性が向上し、好ましい。
【0038】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G-4000H×L」、「TSKgel G-3000H×L」、「TSKgel G-2500H×L」、「TSKgel G-2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/分、検出器;RIの条件で行ったものである。数平均分子量も上記と同様の条件で測定を行なった値である。
【0039】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は通常-40℃~85℃の範囲内であることが好ましく、-30℃~80℃の範囲内であるのが特に好ましい。ガラス転移温度が-40℃以上であると所望の塗膜硬度が得られ、また、85℃以下であると塗膜の塗面平滑性が向上するため好ましい。
【0040】
水酸基含有アクリル樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
ポリイソシアネート化合物(B)
ポリイソシアネート化合物(B)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0042】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0043】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0044】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0045】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0046】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0047】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、耐候性等の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びそれらの誘導体を好適に使用することができる。
【0048】
また、前記ポリイソシアネート化合物(B)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
【0049】
上記ポリイソシアネート化合物(B)は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせ
て使用することができる。
【0050】
艶消し剤(C)
艶消し剤(C)としては、従来から塗料に使用されているそれ自体既知の艶消し剤を使用することができる。艶消し剤の種類としては、例えば、無機微粒子、樹脂ビーズ等が挙げられる。
【0051】
艶消し剤(C)の含有量は、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、5~50質量部の範囲内であることが好ましく、10~50質量部の範囲内であることがより好ましく、10~40質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
無機微粒子としては、例えば、シリカ粒子(C1)、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、酸化スズ粒子、マグネシア粒子、又はそれらの混合物が挙げられる。なかでも特に、無機微粒子はシリカ粒子(C1)であることが、艶消し能力、貯蔵安定性等の観点から、好ましい。前記シリカ粒子(C1)の形状には特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状のものを用いることができる。
【0053】
上記シリカ粒子(C1)として使用できる市販品としては、例えば、富士シリシア社製のサイリシアシリーズ(「サイリシア350」、「サイリシア430」、「サイリシア435」、「サイリシア436」、「サイリシア450」等)、サイロホービックシリーズ(「サイロホービック100」、「サイロホービック200」、「サイロホービック702」、「サイロホービック4004」等)、サイロスフェアシリーズ(「サイロスフェア1504」、「サイロスフェア1510」等)、グレースジャパン社製のSYLOIDシリーズ(「サイロイドW300」、「サイロイドW500」等)、エボニックデグサジャパン社製のACEMATTシリーズ(「ACEMATT HK460」、「ACEMATT HK400」、「ACEMATT OK412」、「ACEMATT TS100」、「ACEMATT 3200」、「ACEMATT 3300」、「ACEMATT 3600」等)、日本シリカ工業社製のNIPGELシリーズ(「NIPGEL AZ-200」等)、NIPSILシリーズ(「NIPSIL E-200A」、「NIPSIL SS-50B」、「NIPSIL SS-178B」等)、水澤化学社製のミズカシルシリーズ(「ミズカシルP-73」、「ミズカシルP-526」等)、塩野義製薬社製のカープレックスシリーズ(「カープレックス CS-8」等)、日本アエロジル社製のAEROSILシリーズ(「AEROSIL 200」、「AEROSIL R805」及び「AEROSIL R972」等)、昭和化学工業社製のラヂオライトシリーズ(「ラヂオライト100」、「ラヂオライト200」、「ラヂオライト500」、「ラヂオライト500R」、「ラヂオライト500RS」等)、等が挙げられる。
【0054】
上記無機微粒子としては、未処理の無機微粒子であってもよく、又は、有機化合物若しくは無機化合物で表面処理された無機微粒子であってもよい。なかでも、無機微粒子は有機処理がされていることが、耐アルカリ性、艶安定性等の観点から好ましく、有機処理されたシリカ粒子(C1’)であることが特に好ましい。有機化合物での処理としては、ポリエチレン処理、ポリエチレンワックス処理、疎水表面処理等が挙げられる。
【0055】
上記無機微粒子の含有量は、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、5~25質量部の範囲内であることが好ましく、7~20質量部の範囲内であることがより好ましく、9~17質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0056】
上記無機微粒子の含有量が5質量部以上である場合、光沢が抑制された塗膜を形成することができる。また、無機微粒子の含有量が25質量部以下の場合、耐アルカリ性に優れた塗膜を形成することができる。
【0057】
また、前記樹脂ビーズとしては、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂ビーズ、MMA-EGDM(エチレングリコールジメタクリレート)共重合樹脂ビーズ、ナイロン樹脂ビーズ、ポリテトラフルオロエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。
【0058】
上記樹脂ビーズとして使用できる市販品としては例えば、積水化成品工業社製「テクポリマーシリーズ(商品名)」、住友スリーエム社製「ダイニオンシリーズ(商品名)」等が挙げられる。
【0059】
上記樹脂ビーズの含有量は、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、10~50質量部の範囲内であることが好ましく、15~50質量部の範囲内であることがより好ましく、15~40質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
上記樹脂ビーズの含有量が10質量部以上である場合、光沢が抑制された塗膜を形成することができる。また、樹脂ビーズの含有量が50質量部以下の場合、平滑性に優れた塗膜を形成することができる。
【0060】
艶消し剤(C)は、艶消し能力、貯蔵安定性等の観点から、平均粒子径が1~20μmであることが好ましく、2~15μmであることがより好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。
【0061】
本明細書において、艶消し剤の平均粒子径は、レーザー散乱法を用いて測定された粒度分布のD50値のことを指す。D50値とは体積基準の粒度分布から、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径のことである。本明細書において、艶消し剤の体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300」(商品名、日機装社製)を使用して測定された。その際、前処理として、シリカ粒子をアセトン及びイソプロピルアルコールの混合溶剤に加えて1分間超音波をかけることによって分散し、艶消し剤濃度を装置に設定された所定の透過率範囲となる濃度に調整した。
【0062】
艶消し剤(C)の吸油量は、艶消し能力の観点から、好ましくは100~400mL/100gであり、より好ましくは100~380mL/100gであり、さらに好ましくは100~360mL/100gである。
ここで、本明細書において、艶消し剤の吸油量はJIS K5101-13-2:2004に準じて測定した値である。
【0063】
有機溶剤(D1)
有機溶剤(D1)は、沸点が190℃~250℃の範囲内であり、かつ、溶解性パラメーターが9以上11以下の有機溶剤である。
【0064】
上記有機溶剤(D1)の沸点が190℃以上であると、艶安定性に優れた塗膜を得ることができ、250℃以下であると、耐タレ性に優れた塗料を得ることができる。なかでも有機溶剤(D1)の沸点は、艶安定性及び耐タレ性の観点から、好ましくは190℃~240℃、より好ましくは190℃~230℃の範囲内であることが好適である。
【0065】
上記有機溶剤(D1)の溶解性パラメーターが9以上であると、艶安定性に優れた塗膜を得ることができ、溶解性パラメーターが11以下であると、相溶性に優れた塗料を得ることができる。有機溶剤(D1)の溶解性パラメーターは、艶安定性及び相溶性の観点から、好ましくは9.3~10.5であり、より好ましくは9.5~10の範囲内である。
【0066】
有機溶剤(D1)としては、例えば、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃、溶解性パラメーター9.6)、1,4-ブタンジオールジアセテート(沸点232℃、溶解性パラメーター9.6)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃、溶解性パラメーター9.5)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃、溶解性パラメーター9.0)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(沸点190℃、溶解性パラメーター9.7)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃、溶解性パラメーター10.9)、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(沸点212℃、溶解性パラメーター9.5)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(沸点229℃、溶解性パラメーター9.4)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(沸点242℃、溶解性パラメーター9.4)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃、溶解性パラメーター9.8)、「DBE」(グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルの混合溶剤、DowDuPont社製)(沸点196~225℃、溶解性パラメーター9.8)などを挙げることができる。
【0067】
有機溶剤(D1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の塗料組成物において、上記有機溶剤(D1)の含有量は、前記水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、5~40質量部である。
【0068】
有機溶剤(D1)の含有量が、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、5質量部以上であると、艶安定性に優れた塗膜を得ることができ、40質量部以下であると、耐タレ性に優れた塗料を得ることができる。なかでも有機溶剤(D1)の含有量は、艶安定性及び耐タレ性の観点から、好ましくは10~40質量部であり、より好ましくは10~35質量部の範囲内である。
【0069】
有機溶剤(D2)
本発明の塗料組成物に用いられる有機溶剤(D2)は、沸点が100℃~140℃の範囲内であり、かつ、溶解性パラメーターが8以上9未満の有機溶剤である。
【0070】
上記有機溶剤(D2)の沸点が100℃以上であると、平滑性に優れた塗膜を得ることができ、140℃以下であると、艶安定性に優れた塗膜を得ることができる。なかでも、有機溶剤(D2)の沸点は、平滑性及び艶安定性の観点から、好ましくは100℃~130℃であり、より好ましくは110℃~130℃の範囲内である。
【0071】
上記有機溶剤(D2)の溶解性パラメーターが8以上であると、相溶性に優れた塗料を得ることができ、溶解性パラメーターが9未満であると、艶安定性に優れた塗膜を得ることができる。なかでも、有機溶剤(D2)の溶解性パラメーターは、相溶性及び艶安定性の観点から、好ましくは8.1~8.9であり、より好ましくは8.3~8.8の範囲内である。
【0072】
有機溶剤(D2)としては、例えば、酢酸プロピル(沸点102℃、溶解性パラメーター8.7)、酢酸ブチル(沸点126℃、溶解性パラメーター8.7)、酢酸イソブチル(沸点117℃、溶解性パラメーター8.4)、トルエン(沸点111℃、溶解性パラメーター8.9)、「混合キシレン」(商品名、丸善石油化学社製、沸点136℃、溶解性パラメーター8.9)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃、溶解性パラメーター8.6)などを挙げることができる。
【0073】
有機溶剤(D2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶剤(D2)の含有量は、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、35~75質量部である。有機溶剤(D2)の含有量が、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、35質量部以上であると、耐タレ性に優れた塗膜を得ることができ、75質量部以下であると、艶安定性に優れた塗膜を得ることができる。なかでも、有機溶剤(D2)の含有量は、耐タレ性及び艶安定性の観点から、好ましくは35~70質量部であり、より好ましくは40~70質量部の範囲内である。
【0074】
また、上記有機溶剤(D1)と上記有機溶剤(D2)の合計の含有量は、形成される塗膜の艶安定性及び耐タレ性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは60~100質量部であり、より好ましくは70~90質量部の範囲内である。
【0075】
本発明の塗料組成物は、上記有機溶剤(D1)及び有機溶剤(D2)以外の有機溶剤を含有してもよい。
【0076】
上記有機溶剤(D1)及び有機溶剤(D2)以外の有機溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;プロピレングリコール-n-プロピルエーテル等のエーテル系溶剤;エタノール、プロパノール、2-エチルヘキシルアルコール等のアルコール系溶剤;メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;「スワゾール310」、「スワゾール1000」(いずれもコスモ石油株式会社製)等の芳香族炭化水素系溶剤;脂環族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0077】
本発明の塗料組成物中の有機溶剤の含有量は、塗装作業性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、100~150質量部の範囲内であることが好適であり、110~140質量部の範囲内であることがさらに好適である。
【0078】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、艶消し剤(C)並びに、特定の有機溶剤(D1)及び(D2)を含有し、該有機溶剤(D1)及び(D2)の含有量が特定の範囲内である塗料組成物である。本発明の塗料組成物を塗装して得られる塗膜は艶消し性を有する。
【0079】
本明細書において艶消し性を有するとは、形成塗膜をJIS K 5600-4-7:1999に基づいて測定した60°鏡面光沢度の値が75未満、好ましくは70未満、さらに好ましくは65未満であることをいう。
【0080】
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)以外の樹脂、硬化触媒、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤等の、塗料の分野で通常用いられる塗料用添加剤を含有することができる。
【0081】
水酸基含有アクリル樹脂(A)以外の樹脂としては、例えば、水酸基を有さないアクリル樹脂、水酸基を有してもよいポリエステル樹脂、水酸基を有してもよいポリエーテル樹脂、水酸基を有してもよいポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0082】
前記硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫サルファイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2-エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、オクタン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、バーサチック酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート等の有機金属化合物;第3級アミン等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合せて使用することができる。
【0083】
本発明の塗料組成物が硬化触媒を含有する場合、硬化触媒の含有量は、該塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、0.05~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.1~5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.2~3質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0084】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等を挙げることができる。
【0085】
光輝性顔料としては、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。
【0086】
体質顔料としては、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト等を挙げることができる。
【0087】
上記顔料はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
本発明の塗料組成物がクリヤー塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、該顔料の含有量は、得られる塗膜の透明性を阻害しない程度の量であることが好ましく、例えば該塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、通常0.1~20質量部の範囲内であることが好ましく、0.3~10質量部の範囲内であることがより好ましく、0.5~5質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0089】
本発明の塗料組成物が着色塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、該顔料の含有量は、該塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1~200質量部の範囲内であることが好ましく、2~100質量部の範囲内であることがより好ましく、5~50質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0090】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0091】
本発明の塗料組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、該紫外線吸収剤の含有量は、該塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、0.1~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2~5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3~2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0092】
光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0093】
本発明の塗料組成物が光安定剤を含有する場合、該光安定剤の含有量は、該塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、0.1~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2~5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3~2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0094】
本発明の塗料組成物は、貯蔵安定性の観点から、前記水酸基含有アクリル樹脂(A)及び艶消し剤(C)を含む主剤と、前記ポリイソシアネート化合物(B)を含む硬化剤とが分離した、2液型塗料とすることが好ましく、使用直前に両者を混合して使用することが好ましい。
【0095】
また、前記有機溶剤(D1)及び有機溶剤(D2)は、上記主剤及び/又は硬化剤に含まれていてもよく、希釈用シンナーとして上記主剤及び硬化剤と塗装直前に混合してもよい。なかでも、有機溶剤(D1)及び(D2)が、前記主剤及び硬化剤の双方に含まれていることが好ましい。
【0096】
塗装方法
本発明の塗料組成物が適用される被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;ポリオレフィン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド等のプラスチック基材;等を挙げることができる。またこれらの基材により形成された自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体又はその部品であってもよい。
【0097】
また、被塗物としては、上記金属基材又は車体の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものでもよい。更に、被塗物としては、上記金属基材又は車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、該下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成されたものでもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜が形成されたものでもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜が形成されたものでもよい。
【0098】
被塗物がプラスチック基材の場合、該プラスチック基材には、必要に応じて適宜、脱脂処理及び/又は表面処理がなされてもよい。さらに、被塗物としては、プラスチック基材面にプライマー塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、該下塗り塗膜及びベースコート塗膜が形成されたものであってもよく、下塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜が形成されたものでもよい。
【0099】
本発明の塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法が挙げられ、これらの方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法では、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうちでは、エアスプレー塗装又は回転霧化塗装が特に好ましい。本発明の塗料組成物の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10~50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0100】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行う場合には、本発明の塗料組成物の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップNo.4粘度計において、20℃で15~60秒程度の粘度範囲となるように、溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0101】
被塗物に本発明の塗料組成物を塗装してなるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行われ、加熱は公知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、特に制限されるものではなく、例えば60~200℃、好ましくは90~150℃の範囲内にあるのが好適である。加熱時間は、特に制限されるものではなく、例えば、10~60分間、好ましくは15~30分間の範囲内であるのが好適である。
【0102】
本発明の塗料組成物は、艶安定性及び耐タレ性に優れることから、上塗りトップクリヤーコート塗料として好適に用いることができる。本塗料は、自動車用塗料として特に好適に用いることができる。
【0103】
複層塗膜形成方法
本塗料が上塗りトップクリヤーコート塗料として塗装される複層塗膜形成方法としては、被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤーコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤーコート塗料として本発明の塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法を挙げることができる。該複層塗膜形成方法としては、例えば、下記方法I及び方法IIを好適に用いることができる。
【0104】
方法I
(1)被塗物に、ベースコート塗料組成物(BC)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
(2)前記未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物(CC)を塗装して、未硬化のクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに、
(3)前記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を加熱して、両塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、前記クリヤーコート塗料組成物(CC)が本発明の塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
【0105】
方法II
(1)被塗物に、ベースコート塗料組成物(BC)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
(2)前記未硬化のベースコート塗膜上に、第1クリヤーコート塗料組成物(CC1)を塗装して、未硬化の第1クリヤーコート塗膜を形成する工程、
(3)前記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化の第1クリヤーコート塗膜を加熱して、両塗膜を同時に硬化させる工程、
(4)前記硬化させた第1クリヤーコート塗膜上に、第2クリヤーコート塗料組成物(CC2)を塗装して、未硬化の第2クリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに、
(5)前記未硬化の第2クリヤーコートを加熱して硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、前記第2クリヤーコート塗料組成物(CC2)が本発明の塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
【0106】
上記方法I及びIIにおいて、被塗物としては、金属基材上に電着塗料による硬化した下塗り塗膜が形成された被塗物;該硬化した下塗り塗膜上に硬化した中塗り塗膜が形成された被塗物;該硬化した下塗り塗膜上に未硬化の中塗り塗膜が形成された被塗物;プラスチック基材上にポリオレフィン樹脂を含有するプライマー塗料による硬化した下塗り塗膜が形成された被塗物;プラスチック基材上にポリオレフィン樹脂を含有するプライマー塗料による未硬化の下塗り塗膜が形成された被塗物等を好適に使用することができる。
また、上記方法I及びIIにおいて、ベースコート塗料組成物(BC)として2種以上の塗料組成物が使用されベースコートが2層以上形成されていてもよい。また、ベースコート塗料組成物(BC)の塗装後に、該塗膜を硬化させることなく、ベースコート塗料中の溶媒の揮散を促進させるために、例えば、40~90℃で3~30分間程度のプレヒートを行ってもよい。
【0107】
ベースコート塗料組成物(BC)
前記ベースコート塗料組成物(BC)としては、例えば、水性塗料、有機溶剤系塗料を用いることが出来る。なかでも、環境負荷低減の観点から、水性塗料が好ましい。
なお、本明細書において、水性塗料とは、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成性樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。
【0108】
ベースコート塗料組成物(BC)としては、例えば被塗物が自動車車体である場合には、自動車車体の塗装において通常使用される、それ自体既知のものを使用することができる。
【0109】
具体的には、ベースコート塗料組成物(BC)は、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物などの架橋剤とを、顔料、増粘剤及び任意選択のその他の成分と共に、水又は有機溶剤に溶解又は分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、基体樹脂として水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを使用し、硬化剤としてメラミン樹脂及びブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも一つを使用する熱硬化型水性塗料を、好適に用いることができる。
【0110】
上記顔料としては、着色顔料、体質顔料、及び光輝性顔料をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0111】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック(導電性カーボンブラックを含む)、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等を挙げることができる。
【0112】
体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等を挙げることができる。
【0113】
光輝性顔料としては、例えば、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、グラファイトフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、及び酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母から選ばれる少なくとも1種の光輝性顔料を用いることが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく又は2種以上を併用してもよい。
【0114】
上記ベースコート塗料組成物(BC)の固形分含有量は通常60質量%以下とすることができ、また、塗布時における固形分含有量は通常10~50質量%とすることができる。
【0115】
ベースコート塗料組成物(BC)に添加することができる添加剤としては、本発明の塗料組成物について例示したものを含む紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤等の、一般的な塗料用添加剤を使用することができる。
【0116】
クリヤーコート塗料組成物(CC1)
クリヤーコート塗料組成物(CC1)としては、例えば被塗物が自動車車体である場合には、自動車車体の塗装において通常使用される、それ自体既知のものを使用することができる。
【0117】
具体的には、クリヤーコート塗料組成物(CC1)は、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物などの架橋剤とを、任意選択のその他の成分と共に有機溶剤に溶解又は分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、基体樹脂として水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを使用し、硬化剤としてメラミン樹脂及びブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも一つを使用する熱硬化型溶剤塗料を、好適に用いることができる。
【0118】
上記クリヤーコート塗料組成物(CC1)の固形分含有量は通常60質量%以下とすることができ、また、塗布時における固形分含有量は通常30~50質量%とすることができる。
【0119】
クリヤーコート塗料組成物(CC1)に添加することができる任意選択の成分としては、本発明の塗料組成物について例示したものを含む着色顔料、体質顔料、及び光輝性顔料などの顔料や、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤等の、一般的な塗料用添加剤を使用することができる。
【実施例】
【0120】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。さらにまた、表中の配合量は固形分質量である。
【0121】
水酸基含有アクリル樹脂(A)の製造
製造例1
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにエトキシエチルプロピオネート31部を仕込み、窒素ガス通気下で120℃に昇温した。120℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記に示すモノマーと重合開始剤とからなる組成配合のモノマー混合物を4時間かけて滴下した。
スチレン 15部、
イソボルニルアクリレート 30部、
2-エチルヘキシルアクリレート 20部、
2-ヒドロキシエチルアクリレート 34部、
アクリル酸 1部、
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル 6部。
次いで、120℃で窒素ガスを通気しながら1時間熟成させた後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5部及びエトキシエチルプロピオネート5部の混合物を1時間かけて滴下し、その後、約120℃において1時間熟成させ、エトキシエチルプロピオネート27.5部で希釈することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(A-1)溶液を得た。得られたアクリル樹脂の固形分に基づく水酸基価は164mgKOH/gであり、重量平均分子量は約8,000であり、ガラス転移温度は-6℃であった。
【0122】
艶消し剤(C)の性状
評価手順
市販の艶消し剤(C-1)~(C-3)の平均粒子径及び吸油量を以下の手順で評価し、結果を表1にまとめた。
【0123】
平均粒子径:レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300」(商品名、日機装社製)を使用してD50値を測定した。その際、前処理としてシリカ粒子をアセトン及びイソプロピルアルコールの混合溶剤に加えて1分間超音波をかけることによって分散し、艶消し剤濃度を装置に設定された所定の透過率範囲となる濃度に調整した。
【0124】
吸油量:JIS K5101-13-2:2004に準じて測定した。
【0125】
【0126】
塗料組成物の製造
実施例1
製造例1で得た水酸基含有樹脂(A-1)117部(固形分70部)、下記ポリイソシアネート化合物(B-1)30部(固形分30部)、上記艶消し剤(C-1)15部(固形分15部)、下記有機溶剤(D1-1)22部及び下記有機溶剤(D2-1)55部を、回転翼式攪拌機を用いて攪拌して混合し、さらに「スワゾール1000」(コスモ石油社製、沸点150℃以上185℃以下、溶解性パラメーター9.0)を加えて、20℃におけるフォードカップNO.4による粘度が20秒となるように調整して、塗料組成物(1)を得た。
【0127】
実施例2~9及び比較例1~4
実施例1において、配合組成を下記表2-1~表2-3に示すものとする以外は、実施例1と同様にして、20℃におけるフォードカップNO.4による粘度が20秒である塗料組成物(2)~(13)を得た。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
なお、表2-1~表2-3において、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及び艶消し剤(C)の配合量は固形分の配合量であり、(B-1)、(C-1)、(C-2)、(C-3)、(D1-1)、(D1-2)、(D2-1)及び(D2-2)は下記の通りである。
(B-1)「スミジュールN3300」:商品名、住友バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、固形分100%、イソシアネート基含有率21.8%。
(C-1)「サイリシア436」:商品名、富士シリシア社製、有機化合物で表面処理されたシリカ粒子。
(C-2)「ACEMATT OK-412」:商品名、エボニックインダストリーズ社製、有機化合物で表面処理されたシリカ粒子。
(C-3)「サイリシア430」:商品名、富士シリシア社製、無処理シリカ。
(D1-1)「DBE」:商品名、DowDuPont社製、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルの混合溶剤、沸点196~225℃、溶解性パラメーター9.8。
(D1-2)ジプロピレングリコールn―ブチルエーテル:沸点229℃、溶解性パラメーター9.4。
(D2-1)酢酸ブチル:沸点126℃、溶解性パラメーター8.7。
(D2-2)「混合キシレン」:商品名、丸善石油化学社製、沸点136℃、溶解性パラメーター8.9。
【0132】
試験板の作製
実施例10
艶安定性評価及び耐アルカリ性評価用の試験板の作製
30cm×45cmのサイズであり、かつリン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmの3枚のダル鋼板上に、「エレクロンGT-10」(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を硬化膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。その上に「TP-65-2」(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を硬化膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。次いで、温度23℃、相対湿度68%の塗装ブース条件(ブース条件1)において、該塗膜上に水性ベースコート塗料組成物「WBC-713T NO.202」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料、黒塗色)を膜厚15μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で3分間プレヒートを行った。その後、未硬化の該ベースコート塗膜上に、実施例1で得た塗料組成物(1)を、各鋼板上にそれぞれ硬化膜厚が25μm、35μm又は45μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱して硬化させることにより、試験板1~3を作製した。ここで、塗料組成物(1)の膜厚が25μmの試験板が試験板1、膜厚が35μmの試験板が試験板2、膜厚が45μmの試験板が試験板3である。
【0133】
また、上記塗装ブース条件1を、温度27℃、相対湿度77%の塗装ブース条件(ブース条件2)に変更する以外は、上記試験板2の作製と同様にして、試験板4を作製した。
【0134】
さらに、上記塗装ブース条件1を、温度19℃、相対湿度51%の塗装ブース条件(ブース条件3)に変更する以外は、上記試験板2の作製と同様にして、試験板5を作製した。
【0135】
耐タレ性評価用の試験板の作製
11cm×45cmのサイズであり、かつリン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、「エレクロンGT-10」(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を硬化膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。その上に「TP-65-2」(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を硬化膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させて、試験用被塗物を得た。次いで、該試験用被塗物の長尺側の端部から3cmの部分に、直径5mmのポンチ孔を、2cm間隔で21個一列状に設けた。次いで、該試験用被塗物上に、温度19℃、相対湿度51%の塗装ブース条件(ブース条件3)において、水性ベースコート塗料組成物「WBC-713T NO.202」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料、黒塗色)を膜厚15μmとなるように塗装し、室温で5分間放置した。次いで、80℃で3分間プレヒートを行った後、該未硬化の塗膜上に、実施例1で得た塗料組成物(1)を、長尺方向にほぼ30μm~60μmの膜厚が得られるように膜厚勾配をつけて塗装し、室温で10分間放置した。その後、140℃で20分間加熱してこの両塗膜を一緒に硬化させることにより、耐タレ性評価用の試験板6を得た。
【0136】
実施例11~18、比較例5~8
実施例10において、塗料組成物(1)に代えて、下記表3-1~表3-3に示した塗料組成物を用いる以外は、実施例10と同様にして、実施例11~18、比較例5~8のそれぞれについての試験板1~6を得た。
【0137】
実施例19
艶安定性評価及び耐アルカリ性評価用の試験板の作製
30cm×45cmのサイズであり、かつリン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmの3枚のダル鋼板上に、「エレクロンGT-10」(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を硬化膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。その上に「TP-65-2」(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を硬化膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。該塗膜上に水性ベースコート塗料組成物「WBC-713T NO.202」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料、黒塗色)を膜厚15μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で3分間プレヒートを行った。その後、未硬化の該塗膜上に、「マジクロン TC-69 クリヤー」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系自動車用溶剤型上塗りクリヤー塗料)を膜厚35μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱してこの両塗膜を一緒に硬化させた。次いで、温度23℃、相対湿度68%の塗装ブース条件(ブース条件1)において、該塗膜上に、実施例3で得た塗料組成物(3)を各鋼板上にそれぞれ硬化膜厚が25μm、35μm又は45μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱して硬化させることにより、試験板1~3を得た。ここで、塗料組成物(3)の膜厚が25μmの試験板が試験板1、膜厚が35μmの試験板が試験板2、膜厚が45μmの試験板が試験板3である。
【0138】
また、上記塗装ブース条件1を、温度27℃、相対湿度77%の塗装ブース条件(ブース条件2)に変更する以外は、上記試験板2の作成と同様にして、試験板4を得た。
【0139】
さらに、上記塗装ブース条件1を、温度19℃、相対湿度51%の塗装ブース条件(ブース条件3)に変更する以外は、上記試験板2の作成と同様にして、試験板5を得た。
【0140】
耐タレ性評価用の試験板の作製
11cm×45cmのサイズであり、かつリン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmの1枚のダル鋼板上に、「エレクロンGT-10」(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を硬化膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。その上に「TP-65-2」(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を硬化膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。該塗膜上に水性ベースコート塗料組成物「WBC-713T NO.202」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料、黒塗色)を膜厚15μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で3分間プレヒートを行った。その後、未硬化の該塗膜上に、「マジクロン TC-69 クリヤー」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系自動車用溶剤型上塗りクリヤー塗料)を膜厚35μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱してこの両塗膜を一緒に硬化させて試験用被塗物を得た。次いで、該試験用被塗物の長尺側の端部から3cmの部分に、直径5mmのポンチ孔を、2cm間隔で21個一列状に設けた。その後、該試験用被塗物上に、温度19℃、相対湿度51%の塗装ブース条件(ブース条件3)において、実施例3で得た塗料組成物(3)を、長尺方向にほぼ30μm~60μmの膜厚が得られるように膜厚勾配をつけて塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱してこの塗膜を硬化させることにより、耐タレ性評価用の試験板6を得た。
【0141】
実施例10~19及び比較例5~8について、それぞれの試験板1~試験板6を用いて、下記性能試験方法に基づいて、艶消し性、艶安定性(膜厚変動によるグロス差)、艶安定性(塗装ブース条件変動によるグロス差)、艶安定性(総合評価)、耐タレ性、及び耐アルカリ性の評価を行った。評価結果を表3-1~表3-3に示す。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
性能試験方法
艶消し性:
塗装ブース条件1にて、膜厚35μmで塗装したときの試験板2の60°鏡面光沢度により評価した。75未満が合格である。
【0146】
艶安定性(膜厚変動によるグロス差):
塗装ブース条件1にて膜厚25μmに塗装した試験板1と、塗装ブース条件1にて膜厚45μmで塗装したときの試験板3の60°鏡面光沢度の差を下記の基準で評価した。S及びAが合格である。
S:差が5未満、
A:差が5以上10未満、
B:差が10以上。
【0147】
艶安定性(塗装ブース条件変動によるグロス差):
塗装ブース条件2にて膜厚35μmに塗装した試験板4と、塗装ブース条件3にて膜厚35μmで塗装したときの試験板5の60°鏡面光沢度の差を下記の基準で評価した。S及びAが合格である。
S:差が5未満、
A:差が5以上10未満、
B:差が10以上。
【0148】
艶安定性(総合評価):
上記艶安定性(膜厚変動によるグロス差)及び上記艶安定性(塗装ブース条件変動によるグロス差)の結果を基に、下記の基準で評価した。S及びAが合格である。
S:艶安定性(膜厚変動によるグロス差)及び艶安定性(塗装ブース条件変動によるグロス差)がいずれもS、
A:艶安定性(膜厚変動によるグロス差)及び艶安定性(塗装ブース条件変動によるグロス差)のうち、少なくとも一つがAであり、Bがない、
B:艶安定性(膜厚変動によるグロス差)及び艶安定性(塗装ブース条件変動によるグロス差)のうち、少なくとも一つがB。
【0149】
耐タレ性:
前記耐タレ性評価用試験板6のポンチ孔下端部から3mmの塗膜のタレが観察される位置を調べ、該位置の膜厚(タレ限界膜厚(μm))を測定することにより、耐タレ性の評価を行なった。タレ限界膜厚が大きいほど耐タレ性は良好であることを示す。
あるいはS及びAが合格である。
S:タレ限界膜厚が45μm以上、
A:タレ限界膜厚が35μm以上45μm未満、
B:タレ限界膜厚が35μm未満。
【0150】
耐アルカリ性:
塗装ブース条件1にて、膜厚35μmで塗装したときの試験板2の塗膜表面に1%水酸化ナトリウム水溶液を0.5mL滴下して、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した後に、塗面をガーゼで拭き取り、外観を目視により、下記の基準で評価した。S及びAが合格である。
S:塗膜表面の異常が全くない、
A:塗膜表面の変色(白化)が認められる、
B:塗膜表面の変色(白化)が著しい。