(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】車両用前照灯、及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20231215BHJP
B60Q 1/12 20060101ALI20231215BHJP
F21S 41/25 20180101ALI20231215BHJP
F21S 41/64 20180101ALI20231215BHJP
B60Q 1/115 20060101ALI20231215BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20231215BHJP
F21W 102/19 20180101ALN20231215BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20231215BHJP
F21W 102/18 20180101ALN20231215BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20231215BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
B60Q1/12 100
F21S41/25
F21S41/64
B60Q1/115
F21W102:155
F21W102:19
F21W102:20
F21W102:18
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020572301
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005486
(87)【国際公開番号】W WO2020166650
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2019025938
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019028922
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019028921
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 壮宜
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505555(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198760(WO,A1)
【文献】特開2004-210130(JP,A)
【文献】特開2009-042372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/12
F21S 41/25
F21S 41/64
B60Q 1/115
F21W 102/155
F21W 102/19
F21W 102/20
F21W 102/18
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
変更可能な位相変調パターンで前記光源から出射する光を回折し、前記位相変調パターンに基づく所定の配光パターンの光を出射する位相変調素子と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを維持しつつ当該所定の配光パターンの光の出射方向を変える
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記位相変調素子から出射する光が透過する投影レンズを更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記制御部は、車両のピッチ方向の傾斜角に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記出射方向を上下方向に変える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記制御部は、車両の速度に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記出射方向を上下方向に変える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記制御部は、車両の操舵角に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記出射方向を左右方向に変える
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記制御部は、前記出射方向を変える際に、前記出射方向が変えられる前の前記所定の配光パターンにおける前記出射方向が変えられた前記所定の配光パターンと重ならない領域内に、前記所定の配光パターンの光と異なる光が照射されるように前記位相変調パターンを調節し、
前記領域内に照射される光の明るさは、前記出射方向が変えられる前の前記所定の配光パターンにおける前記領域の明るさよりも暗い
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記出射方向は徐々に変えられる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
光源と、
変更可能な位相変調パターンで前記光源から出射する光を回折し、前記位相変調パターンに基づく所定の配光パターンの光を出射する位相変調素子と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンの外形を連続的に変化させて前記所定の配光パターンと外形が異なる配光パターンにする
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項9】
前記制御部は、車両の速度に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを当該所定の配光パターンよりも小さい配光パターンにする
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用前照灯。
【請求項10】
前記制御部は、車両の速度が所定値以上になる場合に前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを当該所定の配光パターンよりも小さい配光パターンにする
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用前照灯。
【請求項11】
前記所定の配光パターンよりも小さい配光パターンの外形は、前記所定の配光パターンの外形と相似形である
ことを特徴とする請求項9または10に記載の車両用前照灯。
【請求項12】
前記制御部は、車両のターンスイッチからの信号に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを左右方向に広げられた配光パターンにする
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用前照灯。
【請求項13】
前記制御部は、車両の操舵角に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを左右方向に広げられた配光パターンにする
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用前照灯。
【請求項14】
光を出射する光源と、
前記光を回折して所定の配光パターンとする位相変調素子と、
前記位相変調素子で回折された前記光の一部を受光する受光素子と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記光の一部を受光した前記受光素子からの信号に基づいて、前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるかを判断する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項15】
前記受光素子は、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路を伝搬する前記光を受光する
ことを特徴とする請求項14に記載の車両用灯具。
【請求項16】
前記位相変調素子は、前記位相変調素子から出射する前記光の少なくとも一部を、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路に偏向する
ことを特徴とする請求項15に記載の車両用灯具。
【請求項17】
前記位相変調素子から出射する前記光の一部を、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路に分光する分光部をさらに備える
ことを特徴とする請求項15に記載の車両用灯具。
【請求項18】
前記受光素子は、前記光の像を撮像する撮像素子とされる
ことを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載に車両用灯具。
【請求項19】
前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路上に配置される投影面をさらに備え、
前記撮像素子は、前記投影面に映し出された前記光の像を撮像する
ことを特徴とする請求項18に記載の車両用灯具。
【請求項20】
前記位相変調素子は、当該位相変調素子から出射する前記光の配光パターンを、前記所定の配光パターンとは異なる配光パターンに変更する
ことを特徴とする請求項18又は19に記載の車両用灯具。
【請求項21】
前記受光素子は、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路上に配置される光量センサとされる
ことを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項22】
前記制御部は、前記光源がオンの間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか常時判断する
ことを特徴とする請求項14から21のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項23】
前記制御部は、前記光源がオンの間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか一時的に判断する
ことを特徴とする請求項14から21のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項24】
前記制御部は、前記光源からの前記光の出射が開始されてから所定の期間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか判断する
ことを特徴とする請求項23に記載の車両用灯具。
【請求項25】
前記制御部は、前記光源を搭載する車両が停車している間の所定の期間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか判断する
ことを特徴とする請求項23に記載の車両用灯具。
【請求項26】
前記制御部は、前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるかを1/30秒以下の期間で判断する
ことを特徴とする請求項23から25のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項27】
前記位相変調素子は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされる
ことを特徴とする請求項16又は20に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯、及び車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯などの車両用灯具として、所定の配光パターンを有する光を出射し得る様々な構成が検討されている。例えば、下記特許文献1には、位相変調素子の一種であるホログラム素子を用いて光を回折することで、所定の配光パターンを形成する車両用灯具が記載されている。
【0003】
また、下記特許文献1には、車両用灯具が車両用前照灯として用いられ、ホログラム素子は参照光が照射されることで再生される回折光がロービームの配光パターンを形成するように計算されていることが記載されている。車両用前照灯として用いられるこの車両用灯具は、ホログラム素子によりロービームの配光パターンを形成する。このため、車両用前照灯として用いられるこの車両用灯具は、光源から出射する光の一部を遮蔽してロービームの配光パターンを形成するシェードが不要であり、小型化が可能であるとされる。
【0004】
また、下記特許文献1には、車両用前照灯として用いられる車両用灯具が参照光を出射する光源と、複数のホログラム素子と、参照光の進行方向を変化させて複数のホログラム素子のいずれか1つに参照光を照射させる液晶プリズムと、を備えることが記載されている。この複数のホログラム素子には、ロービームの配光パターンを形成するように計算されたホログラム素子と、配光パターンの外形がロービームの配光パターンの外形と異なる市街地用の配光パターンを形成するように計算された別のホログラム素子と、が含まれている。このため、車両用前照灯として用いられるこの車両用灯具は、参照光を照射させるホログラム素子が切り替えられることで、出射する光の配光パターンをロービームの配光パターンと市街地用の配光パターンとに変化させることができるとされている。
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様による車両用前照灯は、光源と、変更可能な位相変調パターンで前記光源から出射する光を回折し、前記位相変調パターンに基づく所定の配光パターンの光を出射する位相変調素子と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを維持しつつ当該所定の配光パターンの光の出射方向を変えることを特徴とする。
【0007】
第1の態様のこの車両用前照灯は上記特許文献1に記載の車両用前照灯と同様にシェードを用いずとも所定の配光パターンの光を出射することができるため、上記特許文献1の車両用前照灯と同様にシェードを用いる車両用前照灯と比べて小型化することができる。また、第1の態様のこの車両用前照灯では、上記のように、制御部は、位相変調パターンを調節し、所定の配光パターンを維持しつつ当該所定の配光パターンの光の出射方向を変える。このため、第1の態様のこの車両用前照灯は、所定の配光パターンが変化する場合と比べて運転者が違和感を覚えることを抑制し得るとともに、車両の進行方向の変化や車両のピッチ方向の傾き等に応じて所定の配光パターンの光の出射方向を変え得る。従って、第1の態様のこの車両用前照灯は、進行方向の視認性を向上させ得る。なお、位相変調パターンは、位相変調素子に入射する光の位相を変調するパターンである。
【0008】
また、第1の態様の上記車両用前照灯は、前記位相変調素子から出射する光が透過する投影レンズを更に備えることとしても良い。
【0009】
第1の態様のこの車両用前照灯は、位相変調素子から出射する光が透過する投影レンズを備えない場合と比べて、所定の配光パターンの大きさを容易に調節し得る。
【0010】
また、第1の態様の車両用前照灯では、前記制御部は、車両のピッチ方向の傾斜角に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記出射方向を上下方向に変えることとしても良い。
【0011】
このような構成にすることで、車両がピッチ方向に傾いたとしても、所定の配光パターンの光を適切な方向に出射し得る。
【0012】
また、第1の態様の車両用前照灯では、前記制御部は、車両の速度に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記出射方向を上下方向に変えることとしても良い。
【0013】
車両用前照灯では、高速走行の際には通常走行の際よりも遠方の視認性が要求される傾向がある。第1の態様のこの車両用前照灯は、高速走行の際に所定の配光パターンの光の出射方向を上側に傾いた方向にしてより遠方に光が照射されるようにし得る。このため、第1の態様のこの車両用前照灯は、車両の速度に応じて所定の配光パターンの光の出射方向が変化しない場合と比べて、高速走行の際の進行方向の視認性を向上し得る。
【0014】
また、第1の態様の車両用前照灯では、前記制御部は、車両の操舵角に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記出射方向を左右方向に変えることとしても良い。
【0015】
第1の態様のこの車両用前照灯では、車両の進行方向の変化に応じて所定の配光パターンの光の出射方向が左右方向に傾いた方向に変化する。例えば、第1の態様のこの車両用前照灯は、曲路において進行先に光を照射し得るため、車両の進行方向の変化に応じて所定の配光パターンの光の出射方向が変化しない場合と比べて、曲路における視認性を向上し得る。
【0016】
また、第1の態様の車両用前照灯では、前記制御部は、前記出射方向を変える際に、前記出射方向が変えられる前の前記所定の配光パターンにおける前記出射方向が変えられた前記所定の配光パターンと重ならない領域内に、前記所定の配光パターンの光と異なる光が照射されるように前記位相変調パターンを調節し、前記領域内に照射される光の明るさは、前記出射方向が変えられる前の前記所定の配光パターンにおける前記領域の明るさよりも暗いこととしても良い。
【0017】
第1の態様のこの車両用前照灯では、所定の配光パターンの出射方向を変えることによって光が非照射とされる領域内に光が照射されるとともに、この領域内に照射される光の明るさは、出射方向が変えられる前の所定の配光パターンにおけるこの領域の明るさよりも暗い。このため、第1の態様のこの車両用前照灯では、運転者が所定の配光パターンを認識し得るとともに、出射方向を変える前に光が照射されていた領域の視認性が低下したり、所定の配光パターンの光と異なる光が照射される領域が目立ったりすることを抑制し得る。従って、第1の態様のこの車両用前照灯は、所定の配光パターンの光の出射方向を変える際に運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0018】
また、第1の態様の車両用前照灯では、前記出射方向は徐々に変えられることとしても良い。
【0019】
第1の態様のこの車両用前照灯では、所定の配光パターンの光の出射方向を変える際に所定の配光パターンが徐々に移動する。このため、この車両用前照灯は、所定の配光パターンの光の出射方向を変える際に運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0020】
本発明の第2の態様による車両用前照灯は、光源と、変更可能な位相変調パターンで前記光源から出射する光を回折し、前記位相変調パターンに基づく所定の配光パターンの光を出射する位相変調素子と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンの外形を連続的に変化させて前記所定の配光パターンと外形が異なる配光パターンにすることを特徴とする。
【0021】
第2の態様のこの車両用前照灯では、制御部は、位相変調パターンを調節し、配光パターンの外形を連続的に変化させて別の配光パターンにする。このため、第2の態様のこの車両用前照灯は、上記特許文献1に記載の車両用前照灯のように配光パターンの外形が瞬時に変化する場合と比べて、運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。なお、位相変調パターンは、位相変調素子に入射する光の位相を変調するパターンである。また、配光パターンの外形の変化には、配光パターンの大きさの変化も含まれる。
【0022】
また、第2の態様の車両用前照灯では、前記制御部は、車両の速度に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを当該所定の配光パターンよりも小さい配光パターンにすることとしても良い。
【0023】
車両用前照灯では、高速走行の際には通常走行の際よりも遠方の視認性が要求される傾向がある。第2の態様のこの車両用前照灯では、高速走行の際に、所定の配光パターンよりも小さい配光パターンの光を出射し得る。このため、高速走行の際に所定の配光パターンの光が出射されている場合と比べて運転者の視線が車両前方の中央部近傍に集中され易くし得、遠方の視認性を向上し得る。また、第2の態様のこの車両用前照灯は、出射する配光パターンを車両の速度に応じて小さくした配光パターンにし得るため、運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0024】
或いは、前記制御部は、車両の速度が所定値以上になる場合に前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを当該所定の配光パターンよりも小さい配光パターンにすることとしても良い。
【0025】
第2の態様のこの車両用前照灯では、制御部が車両の速度に応じて位相変調パターンを調節する場合と同様に、高速走行の際に、所定の配光パターンよりも小さい配光パターンの光を出射し得る。このため、高速走行の際に所定の配光パターンの光が出射されている場合と比べて運転者の視線が車両前方の中央部近傍に集中され易くし得、遠方の視認性を向上し得る。また、第2の態様のこの車両用前照灯では、制御部は、特定の場合に位相変調パターンを調節するため、制御部の演算負荷の増大を抑制し得る。
【0026】
また、第2の態様の車両用前照灯では、所定の配光パターンを当該所定の配光パターンよりも小さい配光パターンにする場合、前記所定の配光パターンよりも小さい配光パターンの外形は、前記所定の配光パターンの外形と相似形であることとしても良い。
【0027】
このような構成にすることで、所定の配光パターンよりも小さい配光パターンの外形が所定の配光パターンの外形と相似形でない場合と比べて、運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0028】
また、第2の態様の車両用前照灯では、前記制御部は、車両のターンスイッチからの信号に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを左右方向に広げられた配光パターンにすることとしても良い。
【0029】
第2の態様のこの車両用前照灯では、車両のターンスイッチからの信号に応じて配光パターンが左右方向に広げられた配光パターンに変化する。例えば、第2の態様のこの車両用前照灯は、交差路等において進行先にも光を照射し得るため、車両のターンスイッチからの信号に応じて配光パターンが変化しない場合と比べて、交差路等における視認性を向上し得る。
【0030】
また、第2の態様の車両用前照灯では、前記制御部は、車両の操舵角に応じて前記位相変調パターンを調節し、前記所定の配光パターンを左右方向に広げられた配光パターンにすることとしても良い。
【0031】
第2の態様のこの車両用前照灯では、車両の進行方向の変化に応じて配光パターンが左右方向に広げられた配光パターンに変化する。例えば、第2の態様のこの車両用前照灯は、曲路において進行先にも光を照射し得るため、車両の進行方向の変化に応じて配光パターンが変化しない場合と比べて、曲路における視認性を向上し得る。
【0032】
本発明の第3の態様による車両用灯具は、光を出射する光源と、前記光を回折して所定の配光パターンとする位相変調素子と、前記位相変調素子で回折された前記光の一部を受光する受光素子と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記光の一部を受光した前記受光素子からの信号に基づいて、前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるかを判断することを特徴とするものである。
【0033】
第3の態様のこの車両用灯具によれば、上記光を受光した受光素子からの信号に基づいて、上記光の配光パターンが所定の配光パターンであるか否かが判断される。上述のように、上記光の配光パターンは、当該光が上記位相変調素子で回折されることで形成されるため、位相変調素子が不具合であると、当該位相変調素子から出射する光の配光パターンが崩れる傾向にある。したがって、上記光の配光パターンが上記所定の配光パターンであるか否かが制御部で判断されることで、位相変調素子の不具合が検出され得る。
【0034】
また、第3の態様の車両用灯具では、前記受光素子は、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路を伝搬する前記光を受光することが好ましい。
【0035】
この場合、位相変調素子から車両用灯具の外部に出射する光路から離れた位置に上記受光素子を設けることができ、このような光路上に受光素子を設けなくし得るため、配光パターンを良好に保ちつつ配光パターンを効果的に検知し得る。
【0036】
また、第3の態様の車両用灯具では、この場合、前記位相変調素子は、前記位相変調素子から出射する前記光の少なくとも一部を、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路に偏向してもよい。
【0037】
この場合、光学部品を別途設けることなく光の光路を偏向でき、部品点数を削減し得る。
【0038】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記受光素子が、上記位相変調素子から上記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路を伝搬する上記光を受光する場合、前記位相変調素子から出射する前記光の一部を、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路に分光する分光部をさらに備えてもよい。
【0039】
この場合、位相変調素子から出射する上記光の光路を、より効果的に偏向させ得る。
【0040】
また、第3の態様の車両用灯具では、前記受光素子は、前記光の像を撮像する撮像素子とされてもよい。
【0041】
この場合、画像認識に基づいて配光パターンの変化を検知し得、配光パターンを判断する際の精度や正確度を向上させ得る。
【0042】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記受光素子が撮像素子とされる場合、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路上に配置される投影面をさらに備え、前記撮像素子は、前記投影面に映し出された前記光の像を撮像してもよい。
【0043】
こうすることで、より鮮明な像を撮像し得、配光パターンが所定の配光パターンであるかの判断の精度や正確度をより向上させ得る。
【0044】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記受光素子が撮像素子とされる場合、前記位相変調素子は、当該位相変調素子から出射する前記光の配光パターンを、前記所定の配光パターンとは異なる配光パターンに変更してもよい。
【0045】
この場合、画像認識がより容易な配光パターンに変更し得、画像認識に基づいて配光パターンを判断する際の精度や正確度がより向上し得る。
【0046】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記受光素子が、上記位相変調素子から上記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路を伝搬する上記光を受光する場合、前記受光素子は、前記位相変調素子から前記車両用灯具の外部に出射する光の光路とは異なる光路上に配置される光量センサとされてもよい。
【0047】
こうすることで、車両用灯具の構成を簡易にし得る。
【0048】
また、第3の態様の車両用灯具では、前記制御部は、前記光源がオンの間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか常時判断してもよい。
【0049】
この場合、位相変調素子の不具合が常時判断されるため、位相変調素子が不具合になったことをオンタイムで把握し得る。
【0050】
また、第3の態様の車両用灯具では、前記制御部は、前記光源がオンの間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか一時的に判断してもよい。
【0051】
この場合、配光パターンが所定の配光パターンであるか常時判断される場合に比べて、制御部にかかる負荷が軽減され得る。
【0052】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記制御部が配光パターンの変化を一時的に判断する場合、前記制御部は、前記光源からの前記光の出射が開始されてから所定の期間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか判断してもよい。
【0053】
この場合、光源からの光の出射が開始されるタイミングで配光パターンが所定の配光パターンであるか判断されるため、いち早く位相変調素子の不具合を把握し得、安全性が向上し得る。
【0054】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記制御部が配光パターンの変化を一時的に判断する場合、前記制御部は、前記光源を搭載する車両が停車している間の所定の期間、前記受光素子で受光された前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるか判断してもよい。
【0055】
この場合、車両の停車中に配光パターンが判断されることにより、より効果的に安全性を保ち得る。
【0056】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記制御部が配光パターンの変化を一時的に判断する場合、前記制御部は、前記光の配光パターンが前記所定の配光パターンであるかを1/30秒以下の期間で判断してもよい。
【0057】
人の視覚の時間分解能は概ね1/30秒とされる。したがって、制御部が配光パターンを判断する期間が1/30秒以下とされることで、光路が偏向されたことや、配光パターンが所定の配光パターンとは異なる配光パターンに変更されたことを、運転者等が認識しづらくなり、安全性をより効果的に保ち得る。
【0058】
また、第3の態様の車両用灯具では、上記位相変調素子が、当該位相変調素子から上記車両用灯具の外部に出射する光の光路を、当該光路とは異なる光路に偏向する場合、又は、上記位相変調素子が、当該位相変調素子から出射する上記光の配光パターンを、上記所定の配光パターンとは異なる配光パターンに変更する場合、前記位相変調素子は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされてもよい。
【0059】
LCOSは、液晶分子の配向パターンを変化させることで液晶層に屈折率差を生じさせる位相変調素子である。したがって、位相変調素子をLCOSとすれば、液晶層の屈折率を変更して、位相変調素子から出射する光の光路や配光パターンを容易に変更し得る。しかし、LCOSは、上述のように液晶分子から構成されるため、不具合である場合の配光パターンの崩れが大きくなる傾向にある。このため、上述のように配光パターンの変化が検知されることで、位相変調素子の不具合がより効果的に検出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の第1実施形態における車両用前照灯を概略的に示す図である。
【
図4】
図3に示す位相変調素子の一部の厚さ方向の断面を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における車両用前照灯を含むブロック図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における所定の配光パターンを示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図8】
図8(A)はロービームの出射方向が変えられた状態の一例を示す図であり、
図8(B)はロービームの出射方向が変えられた状態の別の一例を示す図であり、
図8(C)はロービームの出射方向が変えられた状態の更に別の一例を示す図である。
【
図9】ロービームの出射方向が変えられるとともにロービームと異なる光が車両用前照灯から出射する状態の例を示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態における光学系ユニットを
図2と同様に示す図である。
【
図11】
図6に示される所定の配光パターンが左側に広げられた左拡大配光パターンを示す図である。
【
図12】本発明の第4実施形態におけるテーブルを示す図である。
【
図13】本発明の第4実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図14】本発明の第4実施形態における配光パターンの変化の様子の例を示す図である。
【
図15】本発明の第5実施形態における車両用前照灯を含むブロック図である。
【
図16】本発明の第6実施形態におけるテーブルを示す図である。
【
図17】本発明の第6実施形態における配光パターンの変化の様子の例を示す図である。
【
図18】本発明の第7実施形態における車両用灯具を概略的に示す縦断面図である。
【
図22】ロービームの配光パターンを示す図である。
【
図23】本発明の第7実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図24】本発明の第8実施形態における車両用灯具を含むブロック図である。
【
図25】本発明の第8実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図26】本発明の第9実施形態に係る車両用灯具の光学系ユニットを
図19と同様の視点で示す図である。
【
図27】本発明の第9実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図28】本発明の第9実施形態における投影面を、映し出された像とともに概略的に示す正面図である。
【
図29】本発明の第9実施形態における投影面を、映し出された他の像とともに概略的に示す正面図である。
【
図30】
図29に示される光の像が崩れている様子を示す図である。
【
図31】本発明の第10実施形態に係る車両用灯具の光学系ユニットを
図19と同様の視点で示す図である。
【
図32】本発明の第10実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図33】本発明の第11実施形態における車両用灯具を
図18と同様の視点で示す図である。
【
図34】ハイビームの配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明に係る車両用前照灯、及び車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0062】
(第1実施形態)
本発明の第1の態様としての第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における車両用前照灯を示す図であり、車両用前照灯の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。本実施形態の車両用前照灯は自動車用とされる。自動車用の前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものであり、左右の前照灯は左右方向に概ね対称の構成とされる。従って、本実施形態では、一方の車両用前照灯について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、筐体10と、灯具ユニット20と、結像レンズ81と、投影レンズ82とを主な構成として備える。
【0063】
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0064】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニット20、結像レンズ81、及び投影レンズ82が収容されている。
【0065】
本実施形態の灯具ユニット20は、ヒートシンク30と、冷却ファン35と、カバー40と、光学系ユニット50とを主な構成として備え、不図示の構成により筐体10に固定されている。
【0066】
ヒートシンク30は、概ね水平方向に延在する金属製のベース板31を有し、当該ベース板31の下方の面側には複数の放熱フィン32がベース板31と一体に設けられている。冷却ファン35は放熱フィン32と隙間を隔てて配置され、ヒートシンク30に固定されている。この冷却ファン35の回転による気流によりヒートシンク30は冷却される。また、ヒートシンク30におけるベース板31の上面にはカバー40が配置されている。
【0067】
カバー40は、ヒートシンク30のベース板31上に固定されている。カバー40は概ね矩形の形状をしており、例えばアルミニウム等の金属から成る。カバー40の内側の空間には、光学系ユニット50が収容されている。カバー40の前部には光学系ユニット50から出射する光が透過可能な開口40Hが形成されている。なお、カバー40の内壁に光吸収性を持たせるために、これらの内壁に黒アルマイト加工等が施されることが好ましい。カバー40の内壁が光吸収性を持つことで、意図しない反射や屈折等によりこれらの内壁に光が照射された場合であっても、照射光が反射して開口40Hから意図しない方向に出射することが抑制され得る。
【0068】
結像レンズ81は、カバー40の開口40Hから出射する光学系ユニット50からの光を結像するレンズである。この結像レンズ81は、カバー40の開口40Hの前方に配置され、不図示の構成により筐体10に固定されている。本実施形態の結像レンズ81は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。
【0069】
投影レンズ82は、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ82は、結像レンズ81の前方焦点よりも前方に配置され、不図示の構成により筐体10に固定されている。本実施形態では、投影レンズ82は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、投影レンズ82の後方焦点が結像レンズ81の前方焦点または前方焦点近傍に位置するように配置される。結像レンズ81によって結像される光は、結像した後発散しながら伝搬して投影レンズ82に入射し、この光の発散角が投影レンズ82で調整される。このように投影レンズ82で発散角が調整された光は、フロントカバー12を介して車両用前照灯1から出射する。
【0070】
図2は、
図1に示す光学系ユニット50の拡大図である。なお、
図2では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー40等の記載が省略されている。
図2に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、第1発光光学系51Rと、第2発光光学系51Gと、第3発光光学系51Bと、第1位相変調素子54Rと、第2位相変調素子54Gと、第3位相変調素子54Bと、合成光学系55とを主な構成として備える。
【0071】
第1発光光学系51Rは、第1光源52Rと、第1コリメートレンズ53Rとを備える。第1光源52Rは、所定の波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子とされ、本実施形態では、パワーのピーク波長が例えば638nmの赤色のレーザ光を出射する半導体レーザとされる。なお、光学系ユニット50は、不図示の回路基板を有しており、第1光源52Rは当該回路基板に実装されている。
【0072】
第1コリメートレンズ53Rは、第1光源52Rから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。第1コリメートレンズ53Rから出射する赤色の光LRが第1発光光学系51Rから出射される。この第1コリメートレンズ53Rに替わって、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズとスロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとが個別に設けられていても良い。
【0073】
第2発光光学系51Gは、第2光源52Gと、第2コリメートレンズ53Gとを備え、第3発光光学系51Bは、第3光源52Bと、第3コリメートレンズ53Bとを備える。光源52G,52Bは、それぞれ所定の波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子とされる。本実施形態では、第2光源52Gはパワーのピーク波長が例えば515nmの緑色のレーザ光を出射する半導体レーザとされ、第3光源52Bはパワーのピーク波長が例えば445nmの青色のレーザ光を出射する半導体レーザとされる。このため、本実施形態では、3つの光源52R,52G,52Bは、互いに異なる所定の波長帯域のレーザ光を出射する。光源52G,52Bは、上記の第1光源52Rと同様に、それぞれ上記の回路基板に実装されている。
【0074】
第2コリメートレンズ53Gは、第2光源52Gから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズであり、第3コリメートレンズ53Bは、第3光源52Bから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。第2コリメートレンズ53Gから出射する緑色の光LGが第2発光光学系51Gから出射され、第3コリメートレンズ53Bから出射する青色の光LBが第3発光光学系51Bから出射される。これらコリメートレンズ53G,53Bに替わって、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズとスロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとがそれぞれ個別に設けられていても良い。
【0075】
位相変調素子54R,54G,54Bは、入射する光を回折して出射するとともに出射する光の配光パターンやこの配光パターンを形成する光の出射方向を変化できるようにされている。本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bは、入射する光を反射しつつ回折して出射する反射型の位相変調素子とされ、具体的には、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされる。第1位相変調素子54Rには、第1発光光学系51Rから出射する赤色の光LRが入射し、この第1位相変調素子54Rは、この赤色の光LRを回折して出射する。第2位相変調素子54Gには、第2発光光学系51Gから出射する緑色の光LGが入射し、この第2位相変調素子54Gは、この緑色の光LGを回折して出射する。第3位相変調素子54Bには、第3発光光学系51Bから出射する青色の光LBが入射し、この第3位相変調素子54Bは、この青色の光LBを回折して出射する。こうして、第1位相変調素子54Rから赤色である第1の光DLRが出射し、第2位相変調素子54Gから緑色である第2の光DLGが出射し、第3位相変調素子54Bから青色である第3の光DLBが出射する。
【0076】
合成光学系55は、第1光学素子55fと第2光学素子55sとを有する。第1光学素子55fは、第1位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRと、第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGとを合成する光学素子である。本実施形態では、第1光学素子55fは、第1の光DLRを透過すると共に第2の光DLGを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGとを合成する。また、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGと、第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBとを合成する光学素子である。本実施形態では、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGを透過すると共に第3の光DLBを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する。このような第1光学素子55f、第2光学素子55sとして、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタを挙げることができる。この酸化膜の種類や厚みをコントロールすることで、所定の波長よりも長い波長の光を透過し、この波長よりも短い波長の光を反射する構成とすることができる。
【0077】
こうして、合成光学系55において第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとが合成された光は白色の光となり、この白色の光が合成光学系55から出射する。なお、
図1、
図2では、第1の光DLRは実線で示され、第2の光DLGは破線で示され、第3の光DLBは一点鎖線で示され、これら光DLR,DLG,DLBはずらして示されている。
【0078】
次に、上記第1位相変調素子54R、第2位相変調素子54G、及び第3位相変調素子54Bの構成について詳細に説明する。
【0079】
本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bは同様の構成とされる。このため、以下では第1位相変調素子54Rについてのみ詳細に説明し、第2位相変調素子54G及び第3位相変調素子54Bについては説明を適宜省略する。
【0080】
図3は、
図2に示す第1位相変調素子を概略的に示す正面図である。なお、
図3は光が入射する入射面EFR側から見る第1位相変調素子54Rの正面図であり、
図3には第1発光光学系51Rから出射する光LRが照射される領域である入射スポットSRが示されている。本実施形態の第1位相変調素子54Rは、正面視において概ね長方形に形成されている。第1位相変調素子54Rにはマトリックス状に配置された複数の変調部MPRが形成されている。これら変調部MPRのそれぞれは、マトリックス状に配置された複数のドットを含み、当該変調部MPRに入射する光を回折して出射する。この変調部MPRは、入射スポットSR内に1つ以上位置するように形成される。また、
図3に示すように、第1位相変調素子54Rには素子駆動回路60Rが電気的に接続され、この素子駆動回路60Rは、第1位相変調素子54Rの一方の短辺に接続される走査線駆動回路と、第1位相変調素子54Rの一方の長辺に接続されるデータ線駆動回路とを有する。
【0081】
図4は、
図3に示す第1位相変調素子の厚さ方向における断面の一部を概略的に示す図である。
図4に示すように、本実施形態の第1位相変調素子54Rは、シリコン基板62と、駆動回路層63と、複数の電極64と、反射膜65と、液晶層66と、透明電極67と、透光性基板68と、を主な構成として備える。
【0082】
複数の電極64は、シリコン基板62の一方の面側に、上記各ドットに対して1対1対応でマトリックス状に配置されている。駆動回路層63は、
図3に示す素子駆動回路60Rの走査線駆動回路及びデータ線駆動回路に接続される回路が配置される層であり、シリコン基板62と複数の電極64との間に配置される。透光性基板68は、シリコン基板62の一方の側で当該シリコン基板62と対向するように配置され、例えばガラス基板とされる。透明電極67は、透光性基板68のシリコン基板62側の面上に配置される。液晶層66は、液晶分子66aを有し、複数の電極64と透明電極67との間に配置される。反射膜65は、複数の電極64と液晶層66との間に配置され、例えば誘電体多層膜とされる。第1発光光学系51Rから出射する光LRは、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の入射面EFRから入射する。
【0083】
図4に示すように、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の入射面EFRから入射する光LRは、透明電極67及び液晶層66を透過し、反射膜65で反射され、液晶層66及び透明電極67を透過して透光性基板68から出射される。特定の電極64と透明電極67との間に電圧が印加されると、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の液晶分子66aの配向が変化する。この液晶分子66aの配向の変化により、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の屈折率が変化し、液晶層66を透過する光LRの光路長が変化する。したがって、光LRが液晶層66を透過して液晶層66から出射することで、液晶層66から出射する光LRの位相が液晶層66に入射する光LRの位相から変化し得る。上記のように、複数の電極64は、各変調部MPRにおけるドットDTごとに配置されているため、各ドットDTに対応する電極64と透明電極67との間に印加される電圧が制御されることで、液晶分子66aの配向が各ドットDTに応じて変化し、各ドットDTから出射する光の位相の変化量が各ドットDTに応じて調整され得る。位相の異なる光は互いに干渉しあって回折されるため、各ドットDTから出射する光が干渉しあって回折し、この回折された光が第1位相変調素子54Rから出射する。このため、第1位相変調素子54Rは、各ドットDTにおける液晶層66の屈折率を調整することで、入射する光を回折して出射するとともに出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。また、第1位相変調素子54Rは、各ドットDTにおける液晶層66の屈折率を変化させることで、出射する光の配光パターンを変化させたり、出射する光の向きを変えてこの光が照射される領域を変化させたりできる。
【0084】
本実施形態では、第1位相変調素子54Rにおけるそれぞれの変調部MPRに同じ位相変調パターンを形成する。また、第2位相変調素子54Gにおけるそれぞれの変調部に同じ位相変調パターンを形成し、第3位相変調素子54Bにおけるそれぞれの変調部に同じ位相変調パターンを形成する。なお、本明細書では、位相変調パターンは、入射する光の位相を変調するパターンである。本実施形態では、位相変調パターンは、各ドットDTにおける液晶層66の屈折率のパターンであり、各ドットDTに対応する電極64と透明電極67との間に印加される電圧のパターンでもあると理解できる。この位相変調パターンを調整することで、出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにしたり、所望の配光パターンの光の出射方向を変えたりし得る。
【0085】
図5は、本実施形態における車両用前照灯を含むブロック図である。
図5に示すように、本実施形態では、素子駆動回路60R,60G,60B、電源回路61R,61G,61B、ライトスイッチ72、傾斜検出装置73、ステアリングセンサ74、車速センサ75、記憶部76等が制御部71に電気的に接続される。この制御部71は、灯具ユニット20に備えられても良く、車両の電子制御装置の一部とされても良い。また、傾斜検出装置73、ステアリングセンサ74、及び車速センサ75は、車両の電子制御装置を介して制御部71に電気的に接続されても良い。制御部71は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部71は、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。以下に説明するように、車両用前照灯1の幾つかの構成が制御部71により制御される。
【0086】
素子駆動回路60Gは位相変調素子54Gに電気的に接続され、素子駆動回路60Bは位相変調素子54Bに電気的に接続される。素子駆動回路60G,60Bは、素子駆動回路60Rと同様に、位相変調素子54G,54Bの一方の短辺に接続される走査線駆動回路と、位相変調素子54R,54Bの一方の長辺に接続されるデータ線駆動回路とを有する。素子駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bに印加する電圧を調整して、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの位相変調パターンを調節する。このため、制御部71が位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの位相変調パターンを調節すると理解できる。
【0087】
本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bにおけるそれぞれの位相変調パターンは、位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRと位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGと位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBとが合成光学系55で合成された白色の光によって所定の配光パターンが形成される位相変調パターンとされる。この所定の配光パターンには光の強度分布も含まれる。このため、本実施形態では、光DLR,DLG,DLBのそれぞれは、この所定の配光パターンと重なると共に、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの強度分布は、この所定の配光パターンにおけるの光の強度分布に基づいた強度分布とされる。また、光DLR,DLG,DLBが合成された白色の光によって形成される所定の配光パターンにおける光の強度が高い部位では、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBの光の強度もそれぞれ高くなる。なお、位相変調素子54R,54G,54Bは波長依存性を有するため、本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bにおけるそれぞれの位相変調パターンは、互いに異なる位相変調パターンとされる。なお、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが合成された白色の光によって所定の配光パターンを形成した結果、これら位相変調素子54R,54G,54Bにおける位相変調パターンが互いに同じ位相変調パターンとされても良い。
【0088】
図1、
図2に示すように、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBは、合成光学系55で合成され、この合成された光は、カバー40の開口40Hから出射する。開口40Hから出射する光DLR,DLG,DLBは、結像レンズ81によって結像した後発散しながら伝搬して投影レンズ82に入射し、これら光DLR,DLG,DLBの発散角が投影レンズ82で調整される。投影レンズ82で発散角が調整された光DLR,DLG,DLB光は、フロントカバー12を介して車両用前照灯1から出射する。これら光DLR,DLG,DLBは、位相変調素子54R,54G,54Bにおける位相変調パターンに基づく配光パターンの光であるため、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは所定の配光パターンとなる。また、位相変調素子54R,54G,54Bにおける位相変調パターンを調節することで、車両用前照灯1から出射するこの所定の配光パターンの光の出射方向を当該所定の配光パターンを維持しつつ変えることができる。
【0089】
図5に示す電源回路61Rは光源52Rに電気的に接続され、電源回路61Gは光源52Gに電気的に接続され、電源回路61Bは光源52Bに電気的に接続される。これら電源回路61R,61G,61Bには不図示の電源が接続されている。電源回路61R,61G,61Bのそれぞれは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から光源52R,52G,52Bに供給される電力を調整して、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度を調節する。なお、電源回路61R,61G,61Bは、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって光源52R,52G,52Bに供給される電力を調整しても良い。この場合、デューティーサイクルを調節することによって、これら光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度が調節される。
【0090】
ライトスイッチ72は、運転者が車両用前照灯1からの光の出射または非出射を指示するスイッチである。例えば、ライトスイッチ72がオンされる場合、ライトスイッチ72は車両用前照灯1からの光の出射を指示する信号を出力する。
【0091】
傾斜検出装置73は、路面に対する車両のピッチ方向の傾斜角を検出する装置である。傾斜検出装置73は、検知した傾斜角の信号を制御部71に送る。傾斜検出装置73の構成として、例えば車高センサを用いる構成やジャイロセンサを用いる構成等が挙げられる。
【0092】
ステアリングセンサ74は、車両のステアリングホイールの回転角度、つまり車両の操舵角を検知するセンサであり、検知した操舵角の信号を制御部71に送る。このステアリングセンサ74は、右の操舵角と左の操舵角とを異なる操舵角と識別しつつこれらの操舵角を検知する。車速センサ75は、車両の走行速度を検出するセンサであり、検知した走行速度の信号を制御部71に送る。
【0093】
本実施形態の記憶部76には、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが合成された光によって形成する所定の配光パターンに関する情報と車両状態を示す情報とが関連付けられた複数のテーブルが格納される。詳細については後述するが、本実施形態の車両用前照灯1は、車両のピッチ方向の傾斜角、操舵角、及び車速に応じて所定の配光パターンの出射方向を変えるように構成されている。本実施形態では、所定の配光パターンに関する情報は、所定の配光パターンを形成する際の位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンとされ、所定の配光パターンの出射方向に応じた位相変調パターンとされる。所定の配光パターンの出射方向には、基準の出射方向と、当該基準の出射方向に対して上下方向に傾いた複数の方向と、当該基準の出射方向に対して左右方向に傾いた複数の方向と、当該基準の出射方向に対して上下方向及び左右方向に傾いた複数の方向とが含まれる。このため、これら複数の出射方向のそれぞれに応じた位相変調パターンが所定の配光パターンに関する情報として記憶部76に格納されている。本実施形態では、複数の位相変調パターンと車両の操舵角とが関連付けられたテーブルが車両のピッチ方向の傾斜角に応じて複数設けられている。また、このピッチ方向の傾斜角に応じた複数のテーブルは、車両に速度に応じて複数設けられる。このため、記憶部76に格納されるそれぞれの位相変調パターンには、車速、車両のピッチ方向の傾斜角、及び操舵角が関連付けられている。また、記憶部76には、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度に関する情報等も格納される。本実施形態では、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度は所定の強度とされる。記憶部76は、格納した情報を保持できればよく、不揮発性メモリであってもよく、揮発性メモリであってもよく、格納した情報の書き換えが可能に構成されてもよい。記憶部76として、例えば、HD(Hard Disk)に代表される磁気ディスク、半導体メモリ、光ディスク等が挙げられる。
【0094】
図6は、本実施形態における所定の配光パターンを示す図である。
図6においてSは水平線を示し、配光パターンが太線で示され、この配光パターンは、車両から25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされており、当該配光パターンの出射方向は基準の出射方向とされている。
図6に示すように、本実施形態における所定の配光パターンは、ロービームの配光パターンPLとされる。
図6に示されるロービームの配光パターンPLのうち、領域LA1は最も光の強度が高い領域であり、領域LA2、領域LA3の順に光の強度が低くなる。つまり、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bにおける位相変調パターンは、合成された光がロービームの強度分布を含む配光パターンを形成する位相変調パターンとされる。そして、第1位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRはロービームの配光パターンPLの赤色成分の光であり、第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGはロービームの配光パターンPLの緑色成分の光であり、第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBはロービームの配光パターンPLの青色成分の光である。
【0095】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。具体的には、ロービームの出射方向を変える動作について説明する。
図7は本実施形態の制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【0096】
(ステップSP1)
本実施形態では、まず、ライトスイッチ72がオンされ、ライトスイッチ72から光の出射を指示する信号が制御部71に入力される場合、制御部71の制御フローはステップSP2に進む。一方、ステップSP1において、この信号が制御部71に入力されない場合、制御部71の制御フローはステップSP3に進む。
【0097】
(ステップSP2)
本ステップでは、制御部71は、車両用前照灯1からロービームを出射するとともに、ロービームの出射方向が車両状態に応じた方向となるように、光源52R,52G,52B、及び位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。具体的には、制御部71は、電源回路61R,61G,61Bに所定の信号を出力する。電源回路61R,61G,61Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から光源52R,52G,52Bに所定の電力を供給する。このため、光源52R,52G,52Bは、それぞれ所定の強度のレーザ光を出射し、所定の強度の光LR,LG,LBが発光光学系51R,51G,51Bからそれぞれ出射する。これら光LR,LG,LBはそれぞれ対応する位相変調素子54R,54G,54Bに入射する。また、制御部71は、車速センサ75から出力される車両の走行速度の信号、傾斜検出装置73から出力される路面に対する車両のピッチ方向の傾斜角の信号、及びステアリングセンサ74から出力される車両の操舵角の信号に基づいて、記憶部76に格納されているテーブルを参照する。そして、制御部71は、検知された車速と車両のピッチ方向の傾斜角とに応じたテーブルにおける位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンのうち、操舵角に応じた位相変調パターンに基づく信号を素子駆動回路60R,60G,60Bに出力する。
【0098】
素子駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71から入力するこの信号に基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bの各ドットDTに印加する電圧をそれぞれ調整する。この電圧は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを制御部71が信号を出力する際に基にした位相変調パターンにする電圧とされる。
【0099】
上記のように、光LR,LG,LBはそれぞれ対応する位相変調素子54R,54G,54Bに入射する。このため、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンに基づく光DLR,DLG,DLBが位相変調素子54R,54G,54Bから出射し、光DLR,DLG,DLBが合成された光が車両用前照灯1から出射する。上記のように、本実施形態では、所定の配光パターンはロービームの配光パターンPLであり、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンは、検知された車速、車両のピッチ方向の傾斜角、及び操舵角に応じた位相変調パターンとされている。このため、検知された車両のピッチ方向の傾斜角、操舵角、及び速度に応じた出射方向へ白色のロービームの配光パターンPLの光が出射する。そして、制御部71の制御フローはステップSP1に進み、ライトスイッチ72がオンの状態の場合にはステップSP2に進む。このため、車両状態が変化する場合、つまり、車速、車両のピッチ方向の傾斜角、及び操舵角のいずれかが変化する場合、制御部71は、素子駆動回路60R,60G,60Bへ出力する信号を車速、車両のピッチ方向の傾斜角、及び操舵角に応じて変化させることになる。そして、車両用前照灯1から出射するロービームの出射方向が変更される。従って、制御部71は、車速、車両のピッチ方向の傾斜角、及び操舵角に応じて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、ロービームの配光パターンPLを維持しつつロービームの配光パターンPLの光の出射方向を変えると理解できる。
【0100】
本実施形態では、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの制御と光源52R,52G,52Bの制御とを同時に行う。しかし、制御部71はこれらの制御を順次行っても良い。また、制御部71は、制御部71の制御フローが後述のステップSP3に進むまで、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。
【0101】
本実施形態では、制御部71は、車両状態を示す情報の1つである車両のピッチ方向の傾斜角が上側に傾く角度の場合に光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向が傾斜角に応じて下側に傾いた方向となるように、位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。また、制御部71は、車両のピッチ方向の傾斜角が下側に傾く角度の場合に光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向が傾斜角に応じて上側に傾いた方向となるように、位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。この傾斜角に応じて傾いた角度は、傾斜角が小さい場合には小さく、傾斜角が大きい場合には大きい角度である。つまり、記憶部76に格納される複数のテーブルは、出射方向が上記のようになるようなテーブルとされている。従って、制御部71は、このようなテーブルに基づいて位相変調素子54R,54G,54Bを制御することで、車両の傾斜角に応じて位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を上下方向に変える。
【0102】
また、本実施形態では、制御部71は、車両状態を示す情報の1つである操舵角が左への操舵を示す場合に光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向が操舵角に応じて左側に傾いた方向となるように、位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。また、制御部71は、操舵角が右への操舵を示す場合、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向が操舵角に応じて右側に傾いた方向となるように、位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。この操舵角に応じて傾いた角度は、操舵角が小さい場合には小さく、操舵角が大きい場合には大きい角度である。つまり、記憶部76に格納される複数のテーブルは、出射方向が上記のようになるようなテーブルとされている。従って、制御部71は、このようなテーブルに基づいて位相変調素子54R,54G,54Bを制御することで、車両の操舵角に応じて位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を左右方向に変える。
【0103】
また、本実施形態では、制御部71は、車両状態を示す情報の1つである車両の速度が所定値以上の場合に光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向が上側に所定の角度傾いた方向となるように、位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。つまり、記憶部76に格納される複数のテーブルは、出射方向が上記のようになるようなテーブルとされている。従って、制御部71は、このようなテーブルに基づいて位相変調素子54R,54G,54Bを制御することで、車両の速度に応じて位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を上下方向に変える。
【0104】
なお、例えば、車両のピッチ方向の傾斜角が上側に傾く角度であり、操舵角が左への操舵を示し、車両の速度が所定値未満の場合、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向は、傾斜角に応じて下側に傾くとともに操舵角に応じて左側に傾いた方向とされる。また、車両のピッチ方向の傾斜角が下側に傾く角度であり、操舵角が右への操舵を示し、車両の速度が所定値以上の場合、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向は、傾斜角に応じて上側に傾くとともに操舵角に応じて右側に傾き、更に上側に所定の角度傾いた方向とされる。つまり、記憶部76に格納される複数のテーブルは、出射方向が上記のようになるようなテーブルとされている。
【0105】
図8(A)は、ロービームの出射方向が変えられた状態の一例を示す図であり、
図8(B)はロービームの出射方向が変えられた状態の別の一例を示す図であり、
図8(C)はロービームの出射方向が変えられた状態の更に別の一例を示す図である。具体的には、
図8(A)は、車両のピッチ方向の傾斜角に応じてロービームの出射方向が下側に傾いた方向とされた状態を示す図である。
図8(B)は、車両の操舵角に応じてロービームの出射方向が左側に傾いた方向とされた状態を示す図である。
図8(C)は、車両の速度に応じてロービームの出射方向が上側に傾いた方向とされた状態を示す図である。なお、
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)には、ロービームの出射方向が変えられる前の状態が破線で示されている。また、
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)では、理解を容易にするために、ロービームの配光パターンPLにおける領域LA1と領域LA2との境界を示す線及び領域LA2と領域LA3との境界を示す線の記載が省略されている。
【0106】
図8(A)に示される状態では、車両のピッチ方向の傾斜角は上方側に傾く角度となっており、車両は路面に対して上向きに傾いた状態である。このような状態として、例えば、車両の後部側に荷物等が積載されている状態が挙げられる。車両は路面に対して上向きに傾いた状態であるため、出射方向が変えられる前のロービームの配光パターンPLは、
図6に示されるロービームの配光パターンPLの位置から上側に移動した状態となる。しかし、本実施形態では、ステップSP2において、ロービームの出射方向が下側に傾いた方向に変えられる。このため、
図8(A)に示すように、ロービームの配光パターンPLを
図6に示されるロービームの配光パターンPLの位置に近づけ得る。
図8(B)に示される状態は、車両が左に操舵されている状態である。このため、本実施形態では、ステップSP2において、ロービームの出射方向が左側に傾いた方向に変えられ、ロービームの配光パターンPLは、ロービームの出射方向が変えられる前の位置から左側に移動した状態となる。
図8(C)に示される状態は、車両の速度が所定値以上である状態である。このため、本実施形態では、ステップSP2において、ロービームの出射方向が上側に所定の角度傾いた方向に変えられ、ロービームの配光パターンPLは、ロービームの出射方向が変えられる前の位置から上側に移動した状態となる。
【0107】
(ステップSP3)
本ステップでは、制御部71は、車両用前照灯1からの光を非出射とするように、光源52R,52G,52Bを制御する。具体的には、上記のようにステップSP1においてライトスイッチ72から光の出射を指示する信号が制御部71に入力されずに制御部71の制御フローがステップSP3に進んだ場合、制御部71は、光源52R,52G,52Bを制御して光源52R,52G,52Bからのレーザ光を非出射にする。この場合、電源回路61R,61G,61Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から光源52R,52G,52Bへの電力の供給を停止する。このため、光源52R,52G,52Bはレーザ光を非出射とし、車両用前照灯1は光を非出射とする。そして、制御部71の制御フローはステップSP1に進む。
【0108】
このように、本実施形態の車両用前照灯1は、車両の傾斜角、操舵角、及び速度に応じて、ロービームの出射方向を変える。なお、車両用前照灯1は、車両の傾斜角、操舵角、及び速度の少なくともいずれか1つに応じて、ロービームの出射方向を変えれば良い。例えば、車両用前照灯1は、速度に応じてロービームの出射方向を変える場合、操舵角に応じてロービームの出射方向を変えなくても良い。つまり、制御部71は、車両の速度が所定値以上の場合、ロービームの出射方向を車両の速度に応じて上側に所定の角度傾いた方向に変えるものの、操舵角に応じてロービームの出射方向を左右方向に変えなくても良い。また、制御部71は、車両の傾斜角が所定値以下の場合、傾斜角に応じてロービームの出射方向を上下方向に変えなくても良く、車両の操舵角が所定値以下の場合、操舵角に応じてロービームの出射方向を左右方向に変えなくても良い。また、制御部71は、例えば、車両の速度が遅い場合にはロービームの出射方向を上側に傾ける角度を小さくし、車両の速度が速い場合にはロービームの出射方向を上側に傾ける角度を大きくしても良い。
【0109】
ところで、車両用前照灯は、進行方向の視認性を向上させるために車両の進行方向の変化や車両のピッチ方向の傾き等に応じて出射する光の向きを変える場合がある。このため、上記特許文献1の車両用前照灯として用いられる車両用灯具のように小型化された車両用前照灯においても、車両の走行状態や車両のピッチ方向の傾き等に応じて出射する光の向きを変えて進行方向の視認性を向上させたいという要請がある。
【0110】
そこで、本実施形態の車両用前照灯1は、光源52R,52G,52Bと、位相変調素子54R,54G,54Bと、制御部71と、を備える。位相変調素子54Rは、変更可能な位相変調パターンで光源52Rから出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく配光パターンの光DLRを出射する。位相変調素子54Gは、変更可能な位相変調パターンで光源52Gから出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく配光パターンの光DLGを出射する。位相変調素子54Bは、変更可能な位相変調パターンで光源52Bから出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく配光パターンの光DLBを出射する。この車両用前照灯1では、これら光DLR,DLG,DLBが合成された光によってロービームの配光パターンPLが形成され、ロービームが車両用前照灯1から出射する。
【0111】
このため、本実施形態の車両用前照灯1は上記特許文献1に記載の車両用前照灯として用いられる車両用灯具と同様にシェードを用いずともロービームの配光パターンPLの光を出射することができ、上記特許文献1の車両用前照灯として用いられる車両用灯具と同様にシェードを用いる車両用前照灯と比べて小型化することができる。
【0112】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの配光パターンを維持しつつ、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を変える。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、ロービームの配光パターンPLが変化する場合と比べて運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1は、車両の進行方向の変化や車両のピッチ方向の傾き等に応じてロービームの出射方向を変え得る。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、進行方向の視認性を向上させ得る。
【0113】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、灯具ユニット20、結像レンズ81、及び投影レンズ82を一体的に筐体10に対して回動させたり移動させたりする装置を備えていなくてもロービームの出射方向を変えることができるため、大型化することを抑制し得る。
【0114】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、制御部71は、車両のピッチ方向の傾斜角に応じて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの配光パターンを維持しつつ、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を上下方向に変える。
【0115】
このため、車両がピッチ方向に傾いたとしても、ロービームを適切な方向に出射し得る。例えば、
図8(A)に示すように、車両が路面に対して上向きに傾いた状態となる場合であっても、ロービームの配光パターンPLの位置が上側に移動することを抑制し得る。
【0116】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、制御部71は、車両の操舵角に応じて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの配光パターンを維持しつつ、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を左右方向に変える。
【0117】
このため、本実施形態の車両用前照灯1では、車両の進行方向の変化に応じてロービームの出射方向が左右方向に傾いた方向に変化する。例えば、
図8(B)に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、曲路WRにおいて進行先に光を照射し得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、車両の進行方向の変化に応じてロービームの出射方向が変化しない場合と比べて、曲路WRにおける視認性を向上し得る。
【0118】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、制御部71は、車両の速度に応じて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの配光パターンを維持しつつ、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を上下方向に変える。
【0119】
車両用前照灯では、高速走行の際には通常走行の際よりも遠方の視認性が要求される傾向がある。本実施形態の車両用前照灯1は、
図8(C)に示すように、車両の速度が所定値以上である高速走行の際にロービームの出射方向を上側に傾いた方向にしてより遠方に光が照射されるようにし得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、車両の速度に応じてロービームの出射方向が変化しない場合と比べて、高速走行の際の進行方向の視認性を向上し得る。
【0120】
なお、ロービームの出射方向を変える際に運転者が違和感を覚えることを抑制する観点では、上記のロービームの出射方向は徐々に変えられることが好ましい。つまり、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを徐々に変化させ、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの配光パターンを維持しつつ、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を徐々に変える。例えば、ロービームの出射方向を基準の出射方向から所定方向に所定角度傾いた方向に変える場合、制御部71は、基準の出射方向に対して所定方向に傾く角度が順次増加して所定角度となるように、記憶部76に格納される複数のテーブルに基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。つまり、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを所定の時間間隔で順次変えて出射方向が所定方向に所定角度傾いた方向となる位相変調パターンにする。このような構成にすることで、ロービームの出射方向を変える際にロービームの配光パターンPLが徐々に移動することとなり、ロービームの出射方向が瞬時に変えられる場合と比べて、運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。なお、運転者が違和感を覚えることを抑制する観点では、制御部71は、ロービームの配光パターンPLの移動が人の視覚において滑らかな移動と認識されるように、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを順次変えることが好ましい。
【0121】
また、本実施形態の車両用前照灯1は、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが透過する投影レンズを備える。
【0122】
このため、本実施形態の車両用前照灯1は、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが透過する投影レンズを備えない場合と比べて、ロービームの配光パターンPLの大きさを容易に調節し得る。
【0123】
(第2実施形態)
次に、本発明の第1の態様としての第2実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0124】
本実施形態の車両用前照灯は、第1実施形態と同様に、自動車用とされる。また、本実施形態の車両用前照灯1の構成は、第1実施形態における車両用前照灯1と同様の構成とされる。また、本実施形態の制御部71の制御フローチャートは、第1実施形態における制御部71の制御フローチャートと同じとされる。しかし、本実施形態では、ステップSP2における制御部71の位相変調素子54R,54G,54Bの制御が第1実施形態における制御と異なる。このため、
図7を参照して本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。
【0125】
本実施形態では、ステップSP2において、制御部71は、車両の傾斜角、操舵角、及び速度に応じて、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの配光パターンを維持しつつ、光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向を変えるとともに、光DLR,DLG,DLBとは異なる光を位相変調素子54R,54G,54Bからそれぞれ出射させる。つまり、本実施形態では、記憶部76に格納される複数のテーブルにおける位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンのうち、基準の出射方向と異なる出射方向となる位相変調パターンは、光DLR,DLG,DLBとは異なる光を更に位相変調素子54R,54G,54Bからそれぞれ出射させる位相変調パターンとされる。制御部71は、このような複数のテーブルに基づいて位相変調素子54R,54G,54Bを制御し、車両用前照灯1は、ロービームとともに、このロービームと異なる光を出射する。
【0126】
図9は、ロービームの出射方向が変えられるとともにロービームと異なる光が車両用前照灯から出射する状態の例を示す図である。
図9に示される状態は、
図8(B)に示される状態と同様に車両が左に操舵されている状態であり、
図9には、ロービームの出射方向が変えられる前の状態が破線で示されている。また、
図9では、理解を容易にするために、ロービームの配光パターンPLにおける領域LA1と領域LA2との境界を示す線及び領域LA2と領域LA3との境界を示す線の記載が省略されている。本実施形態では、ロービームと異なる光は、
図9に示すように、出射方向が変えられる前のロービームの配光パターンPLにおける出射方向が変えられたロービームの配光パターンPLと重ならない領域AR1,AR2内に照射される。なお、
図9において、領域AR1,AR2には斜めのハッチングが施されている。つまり、制御部71は、操舵角に応じてロービームの出射方向を変える際に、この領域AR1,AR2内にロービームと異なる光が照射されるように位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節する。従って、本実施形態の車両用前照灯1では、ロービームの出射方向を変えることによって光が非照射とされる領域AR1,AR2内に光が照射される。また、本実施形態では、この領域AR1に照射される光の明るさは、出射方向が変えられる前のロービームの配光パターンPLにおけるこの領域AR1の明るさよりも暗くされている。また、この領域AR2に照射される光の明るさは、出射方向が変えられる前のロービームの配光パターンPLにおけるこの領域AR2の明るさよりも暗くされている。
【0127】
このように、本実施形態の車両用前照灯1では、ロービームの配光パターンPLの出射方向を変えることによって光が非照射とされる領域AR1,AR2内に光が照射されるとともに、この領域AR1,AR2内に照射される光の明るさは、出射方向が変えられる前のロービームの配光パターンPLにおけるこの領域AR1,AR2の明るさよりも暗い。このため、本実施形態の車両用前照灯1では、運転者がロービームの配光パターンPLを認識し得るとともに、出射方向を変える前に光が照射されていた領域AR1,AR2の視認性が低下したり、ロービームの配光パターンPLの光と異なる光が照射される領域AR1,AR2が目立ったりすることを抑制し得る。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、ロービームの配光パターンPLの光の出射方向を変える際に運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0128】
なお、ロービームの出射方向を変える際に運転者が違和感を覚える観点では、このロービームと異なる光は、領域AR1,AR2内全体に照射されることが好ましい。また、ロービームと異なる上記の光は、車両の操舵角に応じて光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向が変えられる際に出射されることが好ましく、車両の傾斜角や速度に応じて光DLR,DLG,DLBの車両用前照灯1からの出射方向が変えられる際には非出射とされることが好ましい。
【0129】
また、この領域AR1に照射される光の明るさは、出射方向が変えられる前のロービームの配光パターンPLにおけるこの領域AR1の明るさよりも暗くされていなくても良い。また、この領域AR2に照射される光の明るさは、出射方向が変えられる前のロービームの配光パターンPLにおけるこの領域AR2の明るさよりも暗くされていなくても良い。また、ロービームと異なる光は、領域AR1のみに照射されても良く、領域AR2のみに照射されても良い。また、制御部71は、ロービームと異なる光を出射する際に、光源52R,52G,52Bから出射する光の強度がロービームと異なる光を非出射とする場合と比べて高くなるように、光源52R,52G,52Bを制御しても良い。このような構成にすることで、ロービームの配光パターンPLが意図せずに全体的に暗くなることを抑制し得る。
【0130】
(第3実施形態)
次に、本発明の第1の態様としての第3実施形態について
図10を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0131】
図10は、本実施形態における光学系ユニットを
図2と同様に示す図である。なお、
図10では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー40等の記載が省略されている。
図10に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、3つの位相変調素子54R,54G,54Bに替わって、1つの位相変調素子54Sを備える点、合成光学系55に替わって導光光学系155を備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と主に異なる。
【0132】
導光光学系155は、第1発光光学系51Rから出射する光LRと、第2発光光学系51Gから出射する光LGと、第3発光光学系51Bから出射する光LBとを位相変調素子54Sに導光する。本実施形態の導光光学系155は、反射ミラー155mと、第1光学素子155fと、第2光学素子155sとを有する。反射ミラー155mは、第1発光光学系51Rから出射する光LRを反射する。第1光学素子155fは、反射ミラー155mで反射された光LRを透過するとともに、第2発光光学系51Gから出射する光LGを反射する。第2光学素子155sは、第1光学素子155fを透過した光LR及び第1光学素子155fで反射された光LGを透過するとともに、第3発光光学系51Bから出射する光LBを反射する。このような第1光学素子155f、第2光学素子155sとして、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタを挙げることができる。この酸化膜の種類や厚みをコントロールすることで、所定の波長よりも長い波長の光と透過し、この波長よりも短い波長の光を反射する構成とすることができる。
【0133】
本実施形態では、位相変調素子54Sの構成は第1実施形態の位相変調素子54R,54G,54Bと同様の構成とされる。本実施形態では、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBは、導光光学系155によって位相変調素子54Sに導光され、位相変調素子54Sに入射する。本実施形態では、光源52R,52G,52Bに供給される電力が調整されて、これら光源52R,52G,52Bごとに交互にレーザ光が出射され、発光光学系51R,51G,51Bごとに交互に光LR,LG,LBが出射される。つまり、第1発光光学系51Rが光LRを出射しているときは第2発光光学系51Gと第3発光光学系51Bは光LG,LBを非出射とし、第2発光光学系51Gが光LGを出射しているときは第1発光光学系51Rと第3発光光学系51Bは光LR,LBを非出射とし、第3発光光学系51Bが光LBを出射しているときは第1発光光学系51Rと第2発光光学系51Gは光LR,LGを非出射とする。そして、光源52R,52G,52Bごとのレーザ光の出射が順次切り換えられ、発光光学系51R,51G,51Bごとの光LR,LG,LBの出射が順次切り換えられる。つまり、制御部71は、このように光LR,LG,LBが出射するように、光源52R,52G,52Bを制御する。このため、これら発光光学系51R,51G,51Bから出射する互いに波長帯域の異なる光LR,LG,LBが順次位相変調素子54Sに入射する。また、制御部71は、位相変調素子54Sに入射する光LR,LG,LBに応じて当該光LR,LG,LBが回折された光DLR,DLG,DLBが出射するように位相変調素子54Sを制御する。つまり、位相変調素子54Sに入射する光LR,LG,LBに応じて位相変調素子54Sの位相変調部の位相変調パターンを変更する。なお、
図10では、位相変調素子54Sから順次出射するこれら光DLR,DLG,DLBはずらして示されている。
【0134】
次に、本実施形態の位相変調素子54Sからの光の出射について説明する。具体的には、ステップSP2において、出射方向を変化せずにロービームの配光パターンPLの光を車両用前照灯1が出射する場合を例に説明する。
【0135】
本実施形態では、制御部71は、上記のような光源52R,52G,52Bごとのレーザ光の出射の切り換りに同期して位相変調素子54Sの位相変調パターンを変更する。具体的には、制御部71は、光源52Rからの光LRが入射する場合には、位相変調素子54Sの位相変調パターンを、この光源52Rに対応する位相変調パターンであって、位相変調素子54Sから出射する第1の光DLRがロービームの配光パターンPLの赤色成分の光となる位相変調パターンにする。このため、位相変調素子54Sは、光源52Rからの光LRが入射する場合には、ロービームの配光パターンPLの赤色成分の光である第1の光DLRを出射する。また、制御部71は、光源52Gからの光LGが入射する場合には、位相変調素子54Sの位相変調パターンを、この光源52Gに対応する位相変調パターンであって、位相変調素子54Sから出射する第2の光DLGがロービームの配光パターンPLの緑色成分の光となる位相変調パターンにする。このため、位相変調素子54Sは、光源52Gからの光LGが入射する場合には、ロービームの配光パターンPLの緑色成分の光である第2の光DLGを出射する。また、制御部71は、光源52Bからの光LBが入射する場合には、位相変調素子54Sの位相変調パターンを、この光源52Bに対応する位相変調パターンであって、位相変調素子54Sから出射する第3の光DLBがロービームの配光パターンPLの青色成分の光となる位相変調パターンにする。このため、位相変調素子54Sは、光源52Bからの光LBが入射する場合には、ロービームの配光パターンPLの青色成分の光である第3の光DLBを出射する。
【0136】
つまり、制御部71は、このように位相変調素子54Sに入射する光LR,LG,LBの波長帯域に応じて位相変調素子54Sの位相変調パターンを変更することで、ロービームの赤色成分の光である第1の光DLRと、ロービームの緑色成分の光である第2の光DLGと、ロービームの青色成分の光である第3の光DLBとを順次位相変調素子54Sから出射させる。これら光DLR,DLG,DLBは、それぞれカバー40の開口40Hから出射し、結像レンズ81及び投影レンズ82を透過し、フロントカバー12を介して車両用前照灯1の外部に順次照射される。このとき、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBは、車両から所定の距離離れた焦点位置において、それぞれの光が照射される領域が互いに重なるように照射される。この焦点位置は、例えば車両から25m離れた位置とされる。なお、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBは、この焦点位置においてそれぞれの光DLR,DLG,DLBが照射される領域の外形が概ね一致するように照射されることが好ましい。また、本実施形態では、制御部71は、光源52R,52G,52Bから出射されるレーザ光のそれぞれの出射時間の長さが概ね同じとなるとともに、光源52R,52G,52Bから出射されるレーザ光の強度が上記第1実施形態と同様の強度となるように、光源52R,52G,52Bを制御する。このため、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さも概ね同じとなる。
【0137】
ところで、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像効果によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。本実施形態において、光源52Rがレーザ光を出射してから再度光源52Rがレーザ光を出射するまでの時間が人の視覚の時間分解能よりも短くされた場合、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で位相変調素子54Sから出射する光DLR,DLG,DLBが繰り返し照射され、赤色の光DLRと緑色の光DLGと青色の光DLBとが残像効果によって合成される。上記のように、この光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さは概ね同じであり、光源52R,52G,52Bから出射されるレーザ光の強度は、上記第1実施形態と同様の強度とされる。このため、残像効果によって合成される光の色は、第1実施形態における光DLR,DLG,DLBが合成された光と同じ白色となる。また、光DLR,DLG,DLBが合成された光の配光パターンは、ロービームの配光パターンPLとなるため、光DLR,DLG,DLBが残像効果によって合成された光の配光パターンもロービームの配光パターンPLとなる。このようにして、ロービームの配光パターンPLの光が車両用前照灯1から出射する。
【0138】
光源52R,52G,52Bからレーザ光を繰り返し出射する周期は、残像効果によって合成される光のちらつきを感じることを抑制する観点から、1/15秒以下とされることが好ましい。人の視覚の時間分解能は概ね1/30秒である。車両用前照灯であれば、光の出射の周期が2倍程度であれば光のちらつきを感じることを抑制できる。この周期が1/30秒以下であれば、人の視覚の時間分解能を概ね超える。従って、光のちらつきを感じることをより抑制できる。また、光のちらつきを感じることをより抑制する観点では、この周期は1/60秒以下であることが好ましい。
【0139】
本実施形態の車両用前照灯1は、3つの光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBを回折する位相変調素子を共通の位相変調素子とすることができるため、部品点数を減少したり、小型化したりし得る。
【0140】
以上、本発明の第1の態様について、第1~第3実施形態を例に説明したが、本発明の第1の態様はこれらに限定されるものではない。
【0141】
例えば、本発明の第1の態様としての車両用前照灯は、光源と、変更可能な位相変調パターンでこの光源から出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく所定の配光パターンの光を出射する位相変調素子と、制御部と、を備え、制御部は、位相変調パターンを調節し、所定の配光パターンを維持しつつ位相変調素子からの光の出射方向を変える限りにおいて、特に限定されるものではない。このような構成の車両用前照灯は、シェードを用いる車両用前照灯と比べて小型化することができる。また、この車両用前照灯では、運転者が違和感を覚えることを抑制し得るとともに、車両の進行方向の変化や車両のピッチ方向の傾き等に応じて所定の配光パターンの光の出射方向を変え得、進行方向の視認性を向上させ得る。
【0142】
また、第1~第3実施形態では、車両用前照灯1はロービームを照射するものとされたが、本発明の第1の態様としての車両用前照灯は特に限定されない。例えば、第1の態様としての車両用前照灯1は、ハイビームを照射するもとされても良く、市街地の走行に適した市街地用の配光パターンの光を照射するものとされても良く、雨天等における走行に適した悪天候用の配光パターンの光を照射するものとされても良い。このような場合、記憶部76にはこのような配光パターンの光を出射するための位相変調パターンに関する情報が格納される。制御部71は、ステップSP2において、記憶部76に格納される情報に基づいてこのような配光パターンの光が出射するように、位相変調素子54R,54G,54B,54Sの変調部の位相変調パターンを調節する。また、第1の態様としての車両用前照灯1は出射する光の配光パターンをロービームの配光パターンから市街地用の配光パターン、悪天候用の配光パターン、ハイビームの配光パターン等に切り換え可能とされても良い。
【0143】
また、第1~第3実施形態では、位相変調素子54R,54G,54B,54Sは、反射型の位相変調素子とされた。しかし、位相変調素子として、例えば、液晶パネルであるLCD(Liquid Crystal display)、シリコン基板上に複数の反射体が形成されたGLV(Grating Light Valve)等を用いても良い。LCDは、透過型の位相変調素子である。このLCDは、前述の反射型の液晶パネルであるLCOSと同様に、各ドットにおいて液晶層を挟み込む一対の電極の間に印加される電圧を制御することで、各ドットから出射する光の位相の変化量が調整され、出射する光の配光パターンを変化させたり、出射する光の向きを変えてこの光が照射される領域を変化させたりできる。なお、この一対の電極は透明電極とされる。また、GLVは、反射型の位相変調素子である。このGLVは、反射体のたわみを電気的に制御することによって、入射する光を回折して出射するとともに出射する光の配光パターンを変化させたり、出射する光の向きを変えてこの光が照射される領域を変化させたりできる。
【0144】
また、第3実施形態では、導光光学系155は、反射ミラー155m、第1光学素子155f、及び第2光学素子155sを備えていた。しかし、導光光学系155は、それぞれの発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子54Sに導光すれば良く、第3実施形態の構成に限定されない。例えば、導光光学系155は反射ミラー155mを備えていなくても良い。このような場合、第1発光光学系51Rから出射する光LRを第1光学素子155fに入射させる。また、第3実施形態において、所定の波長帯域の光を透過し、他の波長帯域の光を反射するバンドパスフィルタが第1光学素子155fや第2光学素子155sに用いられても良い。
【0145】
また、第3実施形態では、光学系ユニット50は、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子54Sに導く導光光学系155を備えていた。しかし、光学系ユニット50は、導光光学系155を備えていなくても良い。この場合、これら光LR,LG,LBが位相変調素子54Sに入射するように、発光光学系51R,51G,51Bを配置する。
【0146】
また、第1及び第2実施形態では、第1光学素子55fは、第1の光DLRを透過すると共に第2の光DLGを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGとを合成し、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGを透過すると共に第3の光DLBを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成した。しかし、例えば、第1光学素子55fにおいて第3の光DLBと第2の光DLGとが合成され、第2光学素子55sにおいて第1光学素子55fで合成された第3の光DLB及び第2の光DLGと第1の光DLRとが合成される構成とされても良い。この場合、第1及び第2実施形態において、第1光源52R、第1コリメートレンズ53R、及び第1位相変調素子54Rと、第3光源52B、第3コリメートレンズ53B、及び第3位相変調素子54Bとの位置が入れ替わる。また、第1及び第2実施形態において、所定の波長帯域の光を透過し、他の波長帯域の光を反射するバンドパスフィルタが第1光学素子55fや第2光学素子55sに用いられても良い。また、第1及び第2実施形態では、合成光学系55は、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBを合成すれば良く、上記実施形態の構成や上記構成に限定されない。
【0147】
また、第1及び第2実施形態では、光学系ユニット50は、第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する合成光学系55を備えていた。しかし、光学系ユニット50は、合成光学系55を備えていなくても良い。この場合、制御部71は、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが合成されるように、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。
【0148】
また、第1及び第2実施形態では、光学系ユニット50は、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子54R,54G,54Bに導く導光光学系を備えていなかった。しかし、第1及び第2実施形態の光学系ユニット50は、光LR,LG,LBを位相変調素子54R,54G,54Bに導く導光光学系を備えていても良い。
【0149】
また、第1~第3実施形態では、車両用前照灯1は結像レンズ81と投影レンズ82とを備えていた。しかし、車両用前照灯1は結像レンズ81を備えていなくても良い。このような場合、記憶部76に格納される位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンは、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBがそれぞれ結像するような位相変調パターンとされる。制御部71は、ステップSP2において、記憶部76に格納される情報に基づいて位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBがそれぞれ結像するように、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節する。光DLR,DLG,DLBがそれぞれ結像する位置は、投影レンズ82よりも光学系ユニット50側の概ね同じ位置とされる。このように結像される光DLR,DLG,DLBは、結像した後発散しながら伝搬し、この光DLR,DLG,DLBの発散角が投影レンズ82で調整され、発散角が調整された光DLR,DLG,DLB光がフロントカバー12を介して車両用前照灯1から出射する。このため、このような車両用前照灯1は、第1実施形態の車両用前照灯1と同様にして、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが透過する投影レンズを備えない場合と比べて、ロービームの配光パターンPLの大きさを容易に調節し得る。また、このような車両用前照灯1は、結像レンズ81を備えていないため、第1実施形態の車両用前照灯1と比べて、部品点数を減少し得る。なお、車両用前照灯1は、結像レンズ81及び投影レンズ82を備えていなくても良い。しかし、出射する光の配光パターンの大きさの調節を容易にする観点では、車両用前照灯1は、投影レンズ82を備えることが好ましい。
【0150】
また、第1及び第2実施形態では、互いに異なる波長の光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、光源52R,52G,52Bに一対一で対応する3つの位相変調素子54R,54G,54Bとを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、3つの位相変調素子54R,54G,54Bは、一体に形成されても良い。このような位相変調素子の構成として、位相変調素子が光源52Rに対応する領域、光源52Gに対応する領域、及び光源52Bに対応する領域に分割される構成を挙げることができる。このような構成の場合、光源52Rに対応する領域に光源52Rからの光が入射し、光源52Gに対応する領域に光源52Gからの光が入射し、光源52Bに対応する領域に光源52Bからの光が入射する。光源52Rに対応する領域の位相変調パターンは光源52Rからの光に対応する位相変調パターンとされ、光源52Gに対応する領域の位相変調パターンは光源52Gからの光に対応する位相変調パターンとされ、光源52Bに対応する領域の位相変調パターンは光源52Bからの光に対応する位相変調パターンとされる。このような構成にすることで、3つの位相変調素子54R,54G,54Bが一体に形成されるため、部品点数を減少し得る。
【0151】
また、第3実施形態では、3つの光源52R,52G,52Bが、これら光源52R,52G,52Bごとに交互に光を出射していた。しかし、部品点数の減少や小型化の観点では、少なくとも2つの光源が、当該光源ごとに交互に光を出射していれば良い。この場合、少なくとも2つの光源から出射する光が入射する位相変調素子から出射する光は残像効果によって合成され、この残像効果によって合成される光と他の位相変調素子から出射する光とが合成されて、所定の配光パターンの光が照射される。
【0152】
また、第1及び第2実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、光源52R,52G,52Bに一対一で対応する3つの位相変調素子54R,54G,54Bとを備える光学系ユニット50を例に説明した。また、第3実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、1つの位相変調素子54Sとを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、光学系ユニットは、少なくとも1つの光源と、この光源に対応する位相変調素子とを備えれば良い。例えば、光学系ユニットは、白色のレーザ光を出射する光源と、この光源から出射する白色のレーザ光を回折して出射する位相変調素子とを備えていても良い。また、光学系ユニットが光源と位相変調素子を複数備える場合、それぞれの位相変調素子には、少なくともの1つの光源が対応していれば良い。例えば、複数の光源から出射する光が合成された光が1つの位相変調素子に入射されても良い。
【0153】
(第4実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。第4実施形態における車両用前照灯1の構成は、第1実施形態における車両用前照灯1の構成と同じである。しかし、本実施形態の車両用前照灯1が出射する光の配光パターンは、第1実施形態の車両用前照灯1が出射する光の配光パターンと異なる。
【0154】
また、第1実施形態と同様に、本実施形態の記憶部76には、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが合成された光によって形成する配光パターンに関する情報と車両状態を示す情報とが関連付けられたテーブルが格納される。しかし、詳細については後述するが、本実施形態の車両用前照灯1は、車両の操舵角に応じて出射する光の配光パターンが左右方向に広げられるように構成されている。このため、本実施形態の記憶部76には、複数の配光パターンに関する情報と車両状態を示す情報としての操舵角に関する情報とが関連付けられたテーブルが格納される。
【0155】
図11は
図6に示されるロービームの配光パターンPLが左側に広げられた左拡大配光パターンPLLを示す図である。
図11においてSは水平線を示し、配光パターンが太線で示され、この配光パターンは、車両から25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされている。ここで、配光パターンの外形は、例えば、当該配光パターンにおける光の最大強度値に対して光の強度が所定の割合の値となる点の集まりによって形成される等強度線によって定義される。本実施形態の配光パターンの外形は、当該配光パターンにおける光の最大強度値に対して光の強度が2.5%の値となる点の集まりによって形成される等強度線によって定義される。
【0156】
図11では、
図6に示されるロービームの配光パターンPLと広げられた領域である拡大領域ARWとの境界が破線で示されている。左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARWの左右方向の幅Wは、ロービームの配光パターンPLにおける左側端から拡大領域ARWの左側端まで左右方向の幅とされる。本実施形態では、拡大領域ARWにおける光の強度は、ロービームの配光パターンPLにおける外周側の領域である領域LA3における光の強度と概ね同じとされる。なお、拡大領域ARWにおける光の強度は、特に限定されるものではなく、ロービームの配光パターンPLにおける領域LA2における光の強度よりも高くされても良い。また、本実施形態では、左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARW以外の領域、つまり、ロービームの配光パターンPLに対応する領域における光の強度分布は、ロービームの配光パターンPLにおける光の強度分布と同じとされる。なお、左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARW以外における光の強度分布は、ロービームの配光パターンPLにおける光の強度分布と異なっていても良い。
【0157】
次に、本実施形態の記憶部76に格納される配光パターンに関する情報であるテーブルについて説明する。
図12は、本実施形態におけるテーブルを示す図である。本実施形態のテーブルTBは、各配光パターンを形成する際の位相変調素子54R,54G,54Bの変調部における位相変調パターンと車両状態を示す情報とが関連付けられたテーブルとされる。テーブルTBにおける位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンR0,G0,B0はロービームの配光パターンPLを形成する際の位相変調パターンである。位相変調パターンRL1,GL1,BL1は、ロービームの配光パターンPLが左側に広げられた左拡大配光パターンPLLを形成する際の位相変調パターンであり、位相変調パターンRL2,GL2,BL2、位相変調パターンRL3,GL3,BL3・・・も同様に、左拡大配光パターンPLLを形成する際の位相変調パターンである。なお、位相変調パターンRL1,GL1,BL1に基づいて形成される左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARWの左右方向の幅Wが最も狭く、位相変調パターンRL2,GL2,BL2、位相変調パターンRL3,GL3,BL3・・・の順に幅Wが広くなる。本実施形態のテーブルTBでは、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0を基準にして、形成される左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARWの幅Wが広くなる順番で、これら位相変調パターンRL1,GL1,BL1、位相変調パターンRL2,GL2,BL2・・・が並べられている。一方、位相変調パターンRR1,GR1,BR1は、ロービームの配光パターンPLが右側に広げられた右拡大配光パターンを形成する際の位相変調パターンであり、位相変調パターンRR2,GR2,BR2、位相変調パターンRR3,GR3,BR3・・・も同様に、右拡大配光パターンを形成する際の位相変調パターンである。なお、位相変調パターンRR1,GR1,BR1に基づいて形成される右拡大配光パターンにおける拡大領域ARWの左右方向の幅Wが最も狭く、位相変調パターンRR2,GR2,BR2、位相変調パターンRR3,GR3,BR3・・・の順に幅Wが広くなる。本実施形態のテーブルTBでは、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0を基準にして、形成される右拡大配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが広くなる順番で、これら位相変調パターンRR1,GR1,BR1、位相変調パターンRR2,GR2,BR2・・・が並べられている。
【0158】
本実施形態では、上記のように、位相変調パターンに関連付けられる車両状態を示す情報は、車両の操舵角とされる。具体的には、この情報は、車両において操舵可能な操舵角の範囲を複数に分割して得られる操舵角に関する複数の範囲とされる。これら範囲のうち、範囲θ0はゼロを含む連続した範囲とされる。複数の範囲θL1,θL2,θL3・・・は、それぞれ左の操舵角に関する連続した範囲とされ、複数の範囲θR1,θR2,θR3・・・は、それぞれ右の操舵角に関する連続した範囲とされる。範囲θL1の下限は、範囲θ0における左の操舵角の上限以上とされ、範囲θL1の上限は、範囲θL2における左の操舵角の下限未満とされる。また、範囲θL2の下限は、範囲θL1における左の操舵角の上限以上とされ、範囲θL2の上限は、範囲θL3における左の操舵角の下限未満とされる。このように、これら範囲のそれぞれの上限と下限は、範囲θL1,範囲θL2,範囲θL3・・・の順に大きくなる。範囲θR1の下限は、範囲θ0における右の操舵角の上限以上とされ、範囲θR1の上限は、範囲θR2における右の操舵角の下限未満とされる。また、範囲θR2の下限は、範囲θR1における右の操舵角の上限以上とされ、範囲θR2の上限は、範囲θR3における右の操舵角の下限未満とされる。このように、これら範囲のそれぞれの上限と下限は、範囲θR1,範囲θR2,範囲θR3・・・の順に大きくなる。なお、左の操舵角に関する連続した範囲及び右の操舵角に関する連続した範囲の数は、特に限定されない。
【0159】
範囲θ0にはロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0が関連付けられる。範囲θL1,θL2,θL3・・・のそれぞれには、左拡大配光パターンPLLに対応する位相変調パターンが関連付けられる。範囲θL1に関連付けられる位相変調パターンに基づいて形成される左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARWの幅Wよりも、範囲θL2に関連付けられる位相変調パターンに基づいて形成される左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARWの幅が大とされる。そして、範囲θL1、範囲θL2、範囲θL3・・・の順で、それぞれの範囲に関連付けられる位相変調パターンに基づいて形成される左拡大配光パターンPLLにおける拡大領域ARWの幅Wが広くなる。本実施形態では、範囲θL1,θL2,θL3・・・のそれぞれには、10組の位相変調パターンが関連付けられている。具体的には、範囲θL1には、位相変調パターンRL1,GL1,BL1から位相変調パターンRL10,GL10,BL10までの10組の位相変調パターンが関連付けられ、範囲θL2には、位相変調パターンRL11,GL11,BL11から位相変調パターンRL20,GL20,BL20までの10組の位相変調パターンが関連付けられる。
【0160】
範囲θR1,θR2,θR3・・・のそれぞれには、右拡大配光パターンに対応する位相変調パターンが関連付けられる。範囲θR1に関連付けられる位相変調パターンに基づいて形成される右拡大配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wよりも、範囲θR2に関連付けられる位相変調パターンに基づいて形成される右拡大配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが大とされる。そして、範囲θR1、範囲θR2、範囲θR3・・・の順で、それぞれの範囲に関連付けられる位相変調パターンに基づいて形成される右拡大配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが広くなる。本実施形態では、範囲θR1,θR2,θR3・・・のそれぞれには、10組の位相変調パターンが関連付けられている。具体的には、範囲θR1には、位相変調パターンRR1,GR1,BR1から位相変調パターンRR10,GR10,BR10までの10組の位相変調パターンが関連付けられ、範囲θL2には、位相変調パターンRR11,GR11,BR11から位相変調パターンRR20,GR20,BR20までの10組の位相変調パターンが関連付けられる。なお、左の操舵角に関する連続した範囲及び右の操舵角に関する連続した範囲に関連付けられる位相変調パターンの数は特に限定されない。
【0161】
また、記憶部76には、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度に関する情報、車両状態を示す情報である車両の操舵角の初期値、参照角等も格納される。参照角は、制御部71が後述する車両用前照灯1の制御において参照するとともに書き換える角度であり、操舵角に対応する角である。このため、参照角には、右の角度と左の角度とが含まれる。この参照角の初期値は、操舵角の初期値とされている。本実施形態では、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度は所定の強度とされ、操舵角の初期値はゼロとされる。
【0162】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。具体的には、車両の操舵角に応じて出射する光の配光パターンを変化させる動作について説明する。
図13は、本実施形態の制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
【0163】
(ステップSP51)
本実施形態では、まず、ライトスイッチ72がオンされ、ライトスイッチ72から光の出射を指示する信号が制御部71に入力されると、制御部71の制御フローはステップSP52に進む。一方、本ステップにおいて、この信号が制御部71に入力されない場合、制御部71の制御フローはステップSP56に進む。
【0164】
(ステップSP52)
本ステップでは、制御部71は、車両状態を検知する。具体的には、制御部71は、ステアリングセンサ74から出力される信号に基づいて、車両の操舵角を検知する。そして、制御部71の制御フローはステップSP53に進む。
【0165】
(ステップSP53)
本ステップでは、制御部71は、ステップSP52において検知した操舵角、記憶部76に格納されているテーブルTB、及び記憶部76に格納されている参照角に基づいて、車両状態が変化したか否かを判断する。具体的には、テーブルTBにおける操舵角に関する複数の範囲のうち、ステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲と、参照角が含まれる範囲とが同じか否かを判断する。この2つの範囲が同じ場合には、車両状態が変化していないものとして、制御部71の制御フローはステップSP54に進む。一方、この2つの範囲が異なる場合には、車両状態が変化したものとして、制御部71の制御フローはステップSP55に進む。
【0166】
(ステップSP54)
本ステップでは、制御部71は、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが維持されるように、光源52R,52G,52B、及び位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。具体的には、制御部71は、電源回路61R,61G,61Bに所定の信号を出力する。電源回路61R,61G,61Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、電源から光源52R,52G,52Bに所定の電力を供給する。このため、光源52R,52G,52Bは、それぞれ所定の強度のレーザ光を出射し、所定の強度の光LR,LG,LBが発光光学系51R,51G,51Bからそれぞれ出射する。これら光LR,LG,LBはそれぞれ対応する位相変調素子54R,54G,54Bに入射する。また、制御部71は、記憶部76に格納されているテーブルTBを参照し、記憶部76に格納されている参照角が含まれる範囲に関連付けられている位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンに基づく信号を素子駆動回路60R,60G,60Bに出力する。なお、参照角が含まれる範囲に関連付けられている位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンが複数ある場合、位相変調パターンの上記の並び順において、ロービームの位相変調パターンR0,G0,B0から最も離れた位相変調パターンに基づく信号を制御部71は出力する。例えば、参照角が含まれる範囲が範囲θL1の場合、制御部71は位相変調パターンRL10,GL10,BL10に基づく信号を出力する。
【0167】
素子駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71から入力するこの信号に基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bの各ドットDTに印加する電圧をそれぞれ調整する。この電圧は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを制御部71が信号を出力する際に基にした位相変調パターンにする電圧とされる。例えば、参照角が含まれる範囲が範囲θL1の場合、この電圧は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを位相変調パターンRL10,GL10,BL10にする電圧とされる。
【0168】
上記のように、光LR,LG,LBはそれぞれ対応する位相変調素子54R,54G,54Bに入射する。このため、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンに基づく光DLR,DLG,DLBが位相変調素子54R,54G,54Bから出射し、光DLR,DLG,DLBが合成された光が車両用前照灯1から出射する。上記のように、位相変調パターンは、参照角が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンとされている。このため、参照角が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンに基づく配光パターンの光が車両用前照灯1から出射する。そして、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。このため、ステップSP53において車両状態が変化していないと判断される場合、記憶部76に格納されている参照角が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンに基づく配光パターンの光が車両用前照灯1から出射し続ける。このため、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは変化されずに維持される。
【0169】
本実施形態では、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの制御と光源52R,52G,52Bの制御とを同時に行う。しかし、制御部71はこれらの制御を順次行っても良い。また、制御部71は、制御部71の制御フローが後述のステップSP56に進むまで、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。
【0170】
(ステップSP55)
本ステップでは、制御部71は、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが車両状態に応じた配光パターンとなるように、光源52R,52G,52B、及び位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。制御部71は、ステップSP54と同様にして、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。また、制御部71は、記憶部76に格納されているテーブルTBを参照し、所定の時間間隔で素子駆動回路60R,60G,60Bに出力する信号を変化させて位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを調節する。この制御部71による位相変調パターンの調節については、ステップSP52において検知した操舵角と、記憶部76に格納されている参照角との関係に応じて説明する。
【0171】
まず、ステップSP52において検知した操舵角の向きと、記憶部76に格納されている参照角の向きとが同じ場合について説明する。なお、ステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲または参照角が含まれる範囲がゼロを含む範囲θ0の場合は、この操舵角の向きと参照角の向きとは同じであるとする。制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを、参照角が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンからステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンまで、上記位相変調パターンの並び順に従って順次変更する。上記のように、テーブルTBにおける複数の位相変調パターンは、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0を基準にして、形成される配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが広くなる順番で並べられている。このため、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは、この位相変調パターンの変化に応じて、所定の時間間隔で順次変化し、出射する光の配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが順次広げられるか順次狭められる。そして、出射する光の配光パターンがステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲に関連付けられている特定の配光パターンとなる。
【0172】
例えば、参照角が含まれる範囲が範囲θ0で、ステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲が範囲θL2である場合、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを位相変調パターンR0,G0,B0から位相変調パターンRL20,GL20,BL20までそれぞれ順次変更する。この場合、
図14に示すように、ロービームの配光パターンPLの外形が所定の時間間隔で連続的に左側に広がるように変化する。そして、ロービームの配光パターンPLが左側に広げられた左拡大配光パターンPLLとなる。つまり、制御部71は、車両の操舵角に応じて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、ロービームの配光パターンPLの外形を連続的に変化させてロービームの配光パターンPLを左側に広げられた左拡大配光パターンPLLにすると理解できる。
【0173】
また、例えば、参照角が含まれる範囲が範囲θL2で、ステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲が範囲θ0である場合、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを位相変調パターンRL20,GL20,BL20から位相変調パターンR0,G0,B0までそれぞれ順次変更する。この場合、
図14に示す場合とは逆に、左拡大配光パターンPLLの拡大領域ARWの幅Wが所定の時間間隔で連続的に狭められ、左拡大配光パターンPLLがロービームの配光パターンPLとなる。
【0174】
このように、ステップSP52において検知した操舵角が参照角よりも大きい場合、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは連続的に左右方向に広がるように変化し、ステップSP52において検知した操舵角が参照角よりも小さい場合、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは連続的に左右方向に狭まるように変化する。そして、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは、いずれの場合も、ステップSP52において検知した操舵角に応じた配光パターンとなる。
【0175】
次に、ステップSP52において検知した操舵角の向きと、記憶部76に格納されている操舵角の向きとが異なる場合について説明する。制御部71は、上記の場合と同様に、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを、参照角が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンからステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンまで、上記位相変調パターンの並び順に従って順次変更する。例えば、参照角が含まれる範囲が範囲θR1でステップSP52において検知した操舵角が含まれる範囲が範囲θL1である場合、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを位相変調パターンRR10,GR10,BR10から位相変調パターンRL10,GL10,BL10までそれぞれ順次変更する。この場合、右拡大配光パターンの拡大領域ARWの幅Wが所定の時間間隔で連続的に狭められ、右拡大配光パターンがロービームの配光パターンPLとなり、更にロービームの配光パターンPLの外形が左側に広がるように変化する。そして、右拡大配光パターンが左拡大配光パターンPLLとなる。
【0176】
上記のように、制御部71は、本ステップにおいて、車両状態に応じて、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンの外形を連続的に変化させてこの配光パターンと外形が異なる別の配光パターンにする。上記のように、制御部71は、車両の操舵角に基づいて車両状態を検知する。このため、制御部71は、操舵角に応じて、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節すると理解できる。そして、制御部71は、記憶部76に格納される参照角をステップSP52で検知した操舵角に書き換え、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。
【0177】
なお、本実施形態では、ステップSP54と同様に、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの制御と光源52R,52G,52Bの制御とを同時に行う。しかし、制御部71はこれらの制御を順次行っても良い。また、制御部71は、制御部71の制御フローが後述のステップSP56に進むまで、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。
【0178】
(ステップSP56)
本ステップでは、制御部71は、車両用前照灯1からの光を非出射とするように、光源52R,52G,52Bを制御する。具体的には、上記のようにステップSP51においてライトスイッチ72から光の出射を指示する信号が制御部71に入力されずに制御部71の制御フローがステップSP56に進んだ場合、制御部71は、光源52R,52G,52Bを制御して光源52R,52G,52Bからのレーザ光を非出射にする。このため、車両用前照灯1からの光が非出射となる。制御部71は、記憶部76に格納される参照角を操舵角の初期値に書き換え、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。
【0179】
このように、本実施形態の車両用前照灯1は、車両の操舵角に応じてロービームの配光パターンPLの外形を連続的に変化させ、ロービームの配光パターンPLを左右方向に広げられた配光パターンにする。なお、制御部71の制御フローは特に限定されるものではない。
【0180】
なお、本実施形態では、制御部71に傾斜検出装置73及び車速センサ75が電気的に接続されなくてもよい。
【0181】
ところで、上記特許文献1に記載の車両用前照灯として用いられる車両用灯具では、ホログラム素子の切り替えに応じて配光パターンの外形が瞬時に変化する。このため、配光パターンの切り替えの際に運転者が違和感を覚える場合がある。
【0182】
そこで、本実施形態の車両用前照灯1は、光源52R,52G,52Bと、位相変調素子54R,54G,54Bと、制御部71と、を備える。位相変調素子54Rは、変更可能な位相変調パターンで光源52Rから出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく配光パターンの光DLRを出射する。位相変調素子54Gは、変更可能な位相変調パターンで光源52Gから出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく配光パターンの光DLGを出射する。位相変調素子54Bは、変更可能な位相変調パターンで光源52Bから出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく配光パターンの光DLBを出射する。
【0183】
本実施形態の車両用前照灯1では、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、車両用前照灯1から出射する配光パターンの外形を連続的に変化させて別の配光パターンにする。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、上記特許文献1に記載の車両用前照灯として用いられる車両用灯具のように配光パターンの外形が瞬時に変化する場合と比べて、運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0184】
なお、配光パターンの外形を変える際に運転者が違和感を覚えることを抑制する観点では、制御部71は、配光パターンの変化が人の視覚において滑らかな変化と認識されるように、位相変調パターンを順次変えることが好ましい。つまり、記憶部76に格納されるテーブルにおける配光パターンの数、それぞれの配光パターンの広げられる拡大領域ARWの幅W等は、配光パターンの変化が人の視覚において滑らかな変化と認識されるようなもとされることが好ましい。ここで、配光パターン内の所定の参照点と車両用前照灯1の特定の部位を通る平面における配光パターンの外形及び上記特定の部位を通る直線と上記所定の参照点及び上記特定の部位を通る基準直線とのなす角度は、配光パターンの外形の変化に応じて変化する。なお、車両用前照灯1の特定の部位として、例えば、車両用前照灯1の投影レンズ82の中心が挙げられる。また、配光パターン内の所定の参照点として、例えば、配光パターンにおける光の強度が最大となる点が挙げられる。配光パターンの外形の変化量が大きいとこの角度の変化量も大きく、配光パターンの外形の変化量が小さいとこの角度の変化量も小さい。このように、この角度の変化量によって配光パターンの外形の変化量を表すことができる。配光パターンの変化が人の視覚において滑らかな変化と認識されるようにする観点では、位相変調パターンを変化させる際のこの角度の変化量が0.5°以下であることが好ましく、0.1°以下であることがより好ましい。つまり、この角度の変化量がこのようになるように、記憶部76に格納されるテーブルにおける配光パターンの数、それぞれの配光パターンの広げられる拡大領域ARWの幅W等を設定することが好ましい。
【0185】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、制御部71は、車両の操舵角に応じて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、ロービームの配光パターンPLを左右方向に広げられた左拡大配光パターンPLLまたは右拡大配光パターンにする。
【0186】
本実施形態の車両用前照灯1では、車両の進行方向の変化に応じて配光パターンが左右方向に広げられた左拡大配光パターンPLLまたは右拡大配光パターンに変化する。例えば、
図11に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、曲路WRにおいて進行先にも光を照射し得る。このため、車両の進行方向の変化に応じて配光パターンが変化しない場合と比べて、曲路WRにおける視認性を向上し得る。
【0187】
また、本実施形態の車両用前照灯1は、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが透過する投影レンズ82を備える。
【0188】
このため、本実施形態の車両用前照灯1は、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが透過する投影レンズ82を備えない場合と比べて、ロービームの配光パターンPLの大きさを容易に調節し得る。
【0189】
(第5実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第5実施形態について詳細に説明する。なお、第4実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0190】
本実施形態の車両用灯具は、第4実施形態と同様に、自動車用とされる。また、本実施形態の車両用前照灯1の構成は、第4実施形態における車両用前照灯1と同様の構成とされる。
【0191】
図15は、本実施形態における車両用前照灯を含むブロック図である。
図15に示すように、本実施形態の制御部71には、傾斜検出装置73、ステアリングセンサ74、及び車速センサに替わってターンスイッチ77が電気的に接続される。ターンスイッチ77は、車両の電子制御装置を介して制御部71に電気的に接続されても良い。ターンスイッチ77は、運転者が車両のターンランプの状態の選択をするスイッチである。例えば、ターンスイッチ77は、左のターンランプが点滅する状態が選択された場合、この状態を指示する信号を出力し、右のターンランプが点滅する状態が選択された場合、この状態を指示する信号を出力し、左右のターンランプが非点灯とされる状態が選択された場合、信号を出力しない。
【0192】
本実施形態の記憶部76に格納されるテーブルは、車両状態を示す情報がターンランプの状態とされる点において、第4実施形態におけるテーブルTBと主に異なる。本実施形態では、左右のターンランプが非点灯とされる状態には、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0が関連付けられる。左のターンランプが点滅する状態には、左拡大配光パターンPLLに対応する位相変調パターンの全てが関連付けられる。右のターンランプが点滅する状態には、右拡大位相変調パターンの全てが関連付けられる。なお、本実施形態のテーブルにおける複数の位相変調パターンは、第4実施形態と同様に、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0を基準にして、形成される配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが広くなる順番で並べられている。
【0193】
また、本実施形態では、記憶部76には、車両状態を示す情報であるターンランプの状態の初期状態、参照状態等も格納される。参照状態は、制御部71が後述する車両用前照灯1の制御において参照するとともに書き換える状態であり、ターンランプの状態に対応する状態である。この参照状態の初期状態は、ターンランプの状態の初期状態とされ、このターンランプの状態の初期状態は、左右のターンランプが非点灯とされる状態とされる。
【0194】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。具体的には、ターンスイッチ77からの信号に応じて出射する光の配光パターンを変化させる動作について説明する。
【0195】
本実施形態の制御部71の制御フローチャートは、第4実施形態における制御部71の制御フローチャートと同じとされる。しかし、本実施形態のステップSP52における制御部71の車両状態の検知は、第4実施形態における制御部71の車両状態の検知と異なる。また、本実施形態のステップSP53における制御部71の判断は、第4実施形態における制御部71の判断と異なる。また、本実施形態のステップSP54,SP55における制御部71の位相変調素子54R,54G,54Bの制御は、第4実施形態における位相変調素子54R,54G,54Bの制御と異なる。このため、
図13を参照して本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。
【0196】
(ステップSP52)
本実施形態のステップSP52では、制御部71は、ターンスイッチ77からの信号に基づいて、ターンランプの状態を検知する。そして、制御部71の制御フローはステップSP53に進む。
【0197】
(ステップSP53)
本実施形態のステップSP53では、制御部71は、ステップSP52において検知したターンランプの状態、及び記憶部76に格納されている参照状態に基づいて、車両状態が変化したか否かを判断する。具体的には、ステップSP52において検知したターンランプの状態と参照状態とが同じであるか否かを判断する。ステップSP52において検知したターンランプの状態と参照状態とが同じである場合には、車両状態が変化していないものとして、制御部71の制御フローはステップSP54に進む。ステップSP52において検知したターンランプの状態と参照状態とが異なる場合には、車両状態が変化したものとして、制御部71の制御フローはステップSP55に進む。
【0198】
(ステップSP54)
本実施形態のステップSP54では、第4実施形態のステップSP54と同様に、制御部71は、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが維持されるように、光源52R,52G,52B、及び位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。制御部71は、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。また、制御部71は、記憶部76に格納されているテーブルを参照し、記憶部76に格納されている参照状態に関連付けられている位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンに基づく信号を素子駆動回路60R,60G,60Bに出力する。なお、参照状態が左または右のターンランプが点滅する状態である場合、参照状態に関連付けられている位相変調パターンのうち、位相変調パターンの上記の並び順において、ロービームの位相変調パターンR0,G0,B0から最も離れた位相変調パターンに基づく信号を制御部71は出力する。つまり、参照状態が左のターンランプが点滅する状態が参照状態である場合、拡大領域ARWの幅Wが最も広い左拡大配光パターンPLLに対応する位相変調パターンに基づく信号を制御部71は出力する。また、参照状態が右のターンランプが点滅する状態である場合、拡大領域ARWの幅Wが最も広い右拡大配光パターンに対応する位相変調パターンに基づく信号を制御部71は出力する。
【0199】
このため、第4実施形態と同様にして、参照状態に関連付けられている特定の位相変調パターンに基づく配光パターンの光が車両用前照灯1から出射する。そして、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。このため、ステップSP53において車両状態が変化していないと判断される場合、記憶部76に格納されている参照状態に関連付けられている特定の位相変調パターンに基づく配光パターンの光が車両用前照灯1から出射し続ける。このため、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは変化されずに維持される。
【0200】
(ステップSP55)
本実施形態のステップSP55では、第4実施形態のステップSP55と同様に、制御部71は、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが車両状態に応じた配光パターンとなるように、光源52R,52G,52B、及び位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。制御部71は、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。また、制御部71は、記憶部76に格納されているテーブルを参照し、所定の時間間隔で素子駆動回路60R,60G,60Bに出力する信号を変化させて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節する。この制御部71による位相変調パターンの調節については、ステップSP52において検知したターンランプの状態と、記憶部76に格納されている参照状態との関係に応じて説明する。
【0201】
まず、ステップSP52において検知したターンランプの状態が左または右のターンランプが点滅する状態であり、参照状態が左右のターンランプが非点灯とされる場合について説明する。制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0からステップSP52において検知したターンランプの状態に関連付けられている特定の位相変調パターンまで、上記位相変調パターンの並び順に従って順次変更する。上記のように、テーブルにおける複数の位相変調パターンは、第1実施形態と同様に、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0を基準にして、形成される配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが広くなる順番で並べられている。このため、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは、この位相変調パターンの変化に応じて、所定の時間間隔で順次変化し、出射する光の配光パターンにおける拡大領域ARWの幅Wが順次広げられる。そして、出射する光の配光パターンがステップSP52において検知したターンランプの状態に関連付けられている特定の配光パターンとなる。
【0202】
例えば、ステップSP52において検知したターンランプの状態が左のターンランプが点滅する状態の場合、ロービームの配光パターンPLの外形が所定の時間間隔で連続的に左側に広がるように変化する。そして、ロービームの配光パターンPLが左側に広げられた左拡大配光パターンPLLとなる。一方、ステップSP52において検知したターンランプの状態が右のターンランプが点滅する状態の場合、ロービームの配光パターンPLの外形が所定の時間間隔で連続的に右側に広がるように変化する。そして、ロービームの配光パターンPLが右側に広げられた右拡大配光パターンとなる。
【0203】
次に、ステップSP52において検知したターンランプの状態が左右のターンランプが非点灯とされる状態であり、参照状態が左または右のターンランプが点滅する状態である場合について説明する。この場合、制御部71は、上記の場合と異なり、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを、ステップSP52において検知したターンランプの状態に関連付けられている特定の位相変調パターンからロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0まで、上記位相変調パターンの並び順に従って順次変更する。このため、参照状態が左のターンランプが点滅する状態の場合、左拡大配光パターンPLLの拡大領域ARWの幅Wが所定の時間間隔で連続的に狭められ、左拡大配光パターンPLLがロービームの配光パターンPLとなる。一方、参照状態が右のターンランプが点滅する状態の場合、右拡大配光パターンの拡大領域ARWの幅Wが所定の時間間隔で連続的に狭められ、右拡大配光パターンがロービームの配光パターンPLとなる。
【0204】
このようにして、制御部71は、本ステップにおいて、車両状態に応じて、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンの外形を連続的に変化させてこの配光パターンと外形が異なる別の配光パターンにする。上記のように、制御部71はターンスイッチ77から出力される信号に基づいて車両状態を検知する。このため、制御部71は、ターンスイッチ77からの信号に応じて、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節すると理解できる。そして、制御部71は、記憶部76に格納される参照状態をステップSP52で検知したターンランプの状態に書き換え、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。
【0205】
なお、本実施形態のステップSP56では、制御部71は、第4実施形態におけるステップSP56と同様にして車両用前照灯1からの光が非出射とした後、記憶部76に格納される参照状態をターンランプの初期状態に書き換え、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。
【0206】
本実施形態の車両用前照灯1では、上記のように、制御部71は、ターンスイッチ77からの信号に応じてロービームの配光パターンPLの外形を連続的に変化させ、ロービームの配光パターンPLを左右方向に広げられた配光パターンにする。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、交差路等において進行先にも光を照射し得るため、ターンスイッチ77からの信号に応じて配光パターンが変化しない場合と比べて、交差路等における視認性を向上し得る。
【0207】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について詳細に説明する。なお、第4実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0208】
本実施形態の車両用灯具は、第4実施形態と同様に、自動車用とされる。また、本実施形態の車両用前照灯1の構成は、第4実施形態における車両用前照灯1と同様の構成とされる。
【0209】
図16は、本実施形態におけるテーブルを示す図である。
図16に示すように、本実施形態のテーブルTBは、第4実施形態と同様に、各配光パターンを形成する際の位相変調素子54R,54G,54Bの変調部における位相変調パターンと車両状態を示す情報とが関連付けられたテーブルとされる。テーブルTBにおける位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンR0,G0,B0はロービームの配光パターンPLを形成する際の位相変調パターンである。位相変調パターンRS1,GS1,BS1は、ロービームの配光パターンPLの外形が概ね相似形に小さくされた縮小配光パターンを形成する際の位相変調パターンである。位相変調パターンRS2,GS2,BS2、位相変調パターンRS3,GS3,BS3・・・も同様に、ロービームの配光パターンPLの外形が概ね相似形に小さくされた縮小配光パターンを形成する際の位相変調パターンである。なお、位相変調パターンRS1,GS1,BS1に基づいて形成される縮小配光パターンの外形が最も大きく、位相変調パターンRS2,GS2,BS2、位相変調パターンRS3,GS3,BS3・・・の順に外形が小さくなる。そして、位相変調パターンRS50,GS50,BS50に基づいて形成される縮小配光パターンの外形が最も小さい。本実施形態のテーブルTBでは、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0を基準にして、形成される縮小配光パターンにおける外形が小さくなる順番で、これら位相変調パターンRS1,GS1,BS1、位相変調パターンRS2,GS2,BS2・・・が並べられている。なお、これら位相変調パターンの組の数は特に限定されるものではない。
【0210】
本実施形態では、位相変調パターンに関連付けられる車両状態を示す情報は、車両の速度とされる。具体的には、この情報は、車両の速度の範囲とされ、車両の速度が所定値V1未満である範囲と、車両の速度が所定値V1以上である範囲とされる。車両の速度が所定値V1以上である範囲には、外形が最も小さい縮小配光パターンに対応する位相変調パターンRS50,GS50,BS50が関連付けられる。車両の速度が所定値V1未満である範囲には、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0、及び外形が最も小さい縮小配光パターン以外の縮小配光パターンに対応する位相変調パターンの全てが関連付けられる。
【0211】
また、記憶部76には、車両状態を示す情報である車両の速度の初期値、参照速度等も格納される。参照速度は、制御部71が後述する車両用前照灯1の制御において参照するとともに書き換える速度であり、車両の速度に対応する速度である。この参照速度の初期値は、車両の速度の初期値とされ、この車両の速度の初期値はゼロとされる。
【0212】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。具体的には、車両の速度に基づいて出射する光の配光パターンを変化させる動作について説明する。
【0213】
本実施形態の制御部71の制御フローチャートは、第4実施形態における制御部71の制御フローチャートと同じとされる。しかし、本実施形態のステップSP52における制御部71の車両状態の検知は、第4実施形態における制御部71の車両状態の検知と異なる。また、本実施形態のステップSP53における制御部71の判断は、第4実施形態における制御部71の判断と異なる。また、本実施形態のステップSP54,SP55における制御部71の位相変調素子54R,54G,54Bの制御は、第4実施形態における位相変調素子54R,54G,54Bの制御と異なる。このため、
図15を参照して本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。
【0214】
(ステップSP52)
本実施形態のステップSP52では、制御部71は、車速センサ75からの信号に基づいて、車両の速度を検知する。そして、制御部71の制御フローはステップSP53に進む。
【0215】
(ステップSP53)
本ステップでは、制御部71は、ステップSP52において検知した速度、記憶部76に格納されているテーブルTB、及び記憶部76に格納されている参照速度に基づいて、車両状態が変化したか否かを判断する。具体的には、ステップSP52において検知した速度が含まれる範囲と、参照速度が含まれる範囲とが同じか否かを判断する。この2つの範囲が同じ場合には、車両状態が変化していないものとして、制御部71の制御フローはステップSP54に進む。一方、この2つの範囲が異なる場合には、車両状態が変化したものとして、制御部71の制御フローはステップSP55に進む。
【0216】
(ステップSP54)
本実施形態のステップSP54では、第4実施形態のステップSP54と同様に、制御部71は、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが維持されるように、光源52R,52G,52B、及び位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。制御部71は、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。また、制御部71は、記憶部76に格納されているテーブルTBを参照し、記憶部76に格納されている参照速度が含まれる範囲に関連付けられている位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンに基づく信号を素子駆動回路60R,60G,60Bに出力する。なお、参照速度が所定値V1未満である場合、参照速度が含まれる範囲に関連付けられている位相変調パターンのうち、ロービームに対応する位相変調パターンR0,G0,B0に基づく信号を制御部71は出力する。つまり、参照速度が所定値V1未満である場合、ロービームに対応する位相変調パターンR0,G0,B0に基づく信号を制御部71は出力し、参照速度が所定値V1以上である場合、外形が最も小さい縮小配光パターンに対応する位相変調パターンRS50,GS50,BS50に基づく信号を制御部71は出力する。
【0217】
このため、第4実施形態と同様にして、参照速度が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンに基づく配光パターンの光が車両用前照灯1から出射する。そして、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。このため、ステップSP53において車両状態が変化していないと判断される場合、記憶部76に格納されている参照速度が含まれる範囲に関連付けられている特定の位相変調パターンに基づく配光パターンの光が車両用前照灯1から出射し続ける。このため、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンは変化されずに維持される。
【0218】
(ステップSP55)
本実施形態のステップSP55では、第4実施形態のステップSP55と同様に、制御部71は、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが車両状態に応じた配光パターンとなるように、光源52R,52G,52B、及び位相変調素子54R,54G,54Bを制御する。制御部71は、光源52R,52G,52Bから所定の強度のレーザ光を出射させる。また、制御部71は、記憶部76に格納されているテーブルTBを参照し、所定の時間間隔で素子駆動回路60R,60G,60Bに出力する信号を変化させて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節する。この制御部71による位相変調パターンの調節については、ステップSP52において検知した速度と、記憶部76に格納されている参照速度との関係に応じて説明する。
【0219】
まず、ステップSP52において検知した速度が所定値V1以上であり、参照速度が所定値V1未満である場合について説明する。制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0から位相変調パターンRS50,GS50,BS50まで、上記位相変調パターンの並び順に従って順次変更する。上記のように、テーブルTBにおける複数の位相変調パターンは、ロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0を基準にして、形成される縮小配光パターンにおける外形が小さくなる順番で並べられている。
【0220】
このため、
図17に示すように、車両用前照灯1から出射するロービームの配光パターンPLの外形が所定の時間間隔で連続的に小さくなるように変化し、ロービームの配光パターンPLは概ね相似形に小さくされた縮小配光パターンPLS50となる。つまり、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、ロービームの配光パターンPLの外形を連続的に変化させてロービームの配光パターンPLを概ね相似形に小さくされた縮小配光パターンPLS50にすると理解できる。なお、
図17では、理解を容易にするために、ロービームの配光パターンPLにおける領域LA1と領域LA2との境界を示す線及び領域LA2と領域LA3との境界を示す線の記載が省略されている。また、本実施形態では、ロービームの配光パターンPLが概ね相似形に小さくされた縮小配光パターンPLSの位置は、カットオフラインCFの位置が概ね変化しない位置とされる。
【0221】
次に、ステップSP52において検知した速度が所定値V1未満であり、参照速度が所定値V1以上である場合について説明する。この場合、制御部71は、上記の場合と異なり、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを、位相変調パターンRS50,GS50,BS50からロービームの配光パターンPLに対応する位相変調パターンR0,G0,B0まで、上記位相変調パターンの並び順に従って順次変更する。このため、
図17に示す場合とは逆に、車両用前照灯1から出射する縮小配光パターンPLS50の外形が所定の時間間隔で連続的に大きくなるように変化し、縮小配光パターンPLS50はロービームの配光パターンPLとなる。
【0222】
このようにして、制御部71は、ステップSP55において、検出した車両状態に応じて、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンの外形を連続的に変化させてこの配光パターンと外形が異なる別の配光パターンにする。上記のように、制御部71は、車両の速度に基づいて車両状態を検知する。このため、制御部71は、車両の速度に基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節すると理解できる。そして、制御部71は、記憶部76に格納される参照速度をステップSP52で検知した速度に書き換え、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。
【0223】
なお、本実施形態のステップSP56では、制御部71は、第4実施形態におけるステップSP56と同様にして車両用前照灯1からの光が非出射とした後、記憶部76に格納される参照速度を初期値に書き換え、制御部71の制御フローはステップSP51に進む。
【0224】
なお、本実施形態では、制御部71に傾斜検出装置73及びステアリングセンサ74が電気的に接続されなくてもよい。
【0225】
本実施形態の車両用前照灯1では、上記のように、制御部71は、車両の速度が所定値V1以上になる場合に位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、ロービームの配光パターンPLの外形を連続的に変化させ、ロービームの配光パターンPLをロービームの配光パターンPLよりも小さい縮小配光パターンPLS50にする。車両用前照灯では、高速走行の際には通常走行の際よりも遠方の視認性が要求される傾向がある。本実施形態の車両用前照灯1では、高速走行の際に、ロービームの配光パターンPLよりも小さい縮小配光パターンPLS50の光を出射し得る。このため、高速走行の際にロービームが出射されている場合と比べて運転者の視線が車両前方の中央部近傍に集中され易くし得、遠方の視認性を向上し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、制御部71は、車両の速度が所定値V1以上であるという特定の場合に位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節する。このため、制御部71の演算負荷の増大を抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、ロービームの配光パターンPLよりも小さい縮小配光パターンPLS50の外形は、ロービームの配光パターンPLの外形と概ね相似形である。このため、ロービームの配光パターンPLよりも小さい縮小配光パターンPLS50の外形がロービームの配光パターンPLの外形と概ね相似形でない場合と比べて、運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。なお、ロービームの配光パターンPLよりも小さい縮小配光パターンPLS50Sの外形は、ロービームの配光パターンPLの外形と相似形でなくても良い。
【0226】
なお、高速走行の際の視認性を向上する観点では、制御部71は、車両の速度に応じて位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節し、配光パターンの外形を連続的に変化させ、当該配光パターンよりも小さい配光パターンにしても良い。具体的には、制御部71は、出射する光の配光パターンが車両の速度が速くなるにつれてより小さい配光パターンになるように、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの変調部における位相変調パターンを調節しても良い。このような構成として、テーブルTBにおいて位相変調パターンに関連付けられる車両の速度の範囲を3つ以上とした構成が挙げられる。このような構成であっても、高速走行の際に、ロービームの配光パターンPLよりも小さい配光パターンの光を出射し得る。このため、高速走行の際にロービームが出射されている場合と比べて運転者の視線が車両前方の中央部近傍に集中され易くし得、遠方の視認性を向上し得る。また、このような構成にすることで、出射する配光パターンを車両の速度に応じて小さくした配光パターンにし得るため、運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0227】
なお、本発明の第2の態様について、第4~第6実施形態を例に説明したが、本発明の第2の態様はこれらに限定されるものではない。
【0228】
例えば、本発明の第2の態様としての車両用前照灯は、光源と、変更可能な位相変調パターンでこの光源から出射する光を回折し、位相変調パターンに基づく所定の配光パターンの光を出射する位相変調素子と、制御部と、を備え、制御部は、位相変調パターンを調節し、所定の配光パターンの外形を連続的に変化させ所定の配光パターンと外形が異なる配光パターンにする限りにおいて、特に限定されるものではない。このような構成の車両用前照灯は、配光パターンの外形が瞬時に変化する場合と比べて、運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0229】
また、第4~第6実施形態では、車両用前照灯1はロービームを照射するものとされたが、本発明の第2の態様としての車両用前照灯は特に限定されない。第1の態様と同様に、例えば、第2の態様の車両用前照灯1は、ハイビームを出射するものとされても良く、市街地の走行に適した市街地用の配光パターンの光を照射するものとされても良く、雨天等における走行に適した悪天候用の配光パターンの光を照射するものとされても良い。つまり、制御部71は、このような配光パターンの光が出射するように、位相変調素子54R,54G,54B,54Sの変調部の位相変調パターンを調節する。また、車両用前照灯1は出射する光の配光パターンをロービームの配光パターンPLから市街地用の配光パターン、悪天候用の配光パターン、ハイビームの配光パターン等に切り換え可能とされても良い。この場合、第4~第6実施形態のように、制御部は、位相変調パターンを調節し、出射する光の配光パターンの外形を連続的に変化させて、ロービームの配光パターンPLを市街地用の配光パターンや悪天候用の配光パターン等に変えても良い。
【0230】
また、第4~第6実施形態では、位相変調素子54R,54G,54B,54Sは、反射型の位相変調素子とされた。しかし、位相変調素子として、例えば、LCD、GLV等を用いても良い。
【0231】
また、第2の態様としての車両用前照灯は、
図10に示される第3実施形態の車両用前照灯1と同様の構成とされてもよい。つまり、光学系ユニット50は、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、1つの位相変調素子54Sと、導光光学系155とを備える構成とされてもよい。この場合、3つの光源52R,52G,52Bは、これら光源52R,52G,52Bごとに交互に光を出射し、位相変調素子54Sは、光源52R,52G,52Bごとの光の出射の切り換りに同期して位相変調パターンを変更する。このような車両用前照灯であっても、前述のように、位相変調素子54Sから出射する光DLR,DLG,DLBを残像効果によって合成させることで、例えば、ロービームの配光パターンPLの光を出射できる。そして、このような車両用前照灯は、3つの光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBを回折する位相変調素子を共通の位相変調素子とすることができるため、部品点数を減少したり、小型化したりし得る。
【0232】
また、第4~第6実施形態では、第1光学素子55fは、第1の光DLRを透過すると共に第2の光DLGを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGとを合成し、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGを透過すると共に第3の光DLBを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成した。しかし、第1の態様と同様に、例えば、第1光学素子55fにおいて第3の光DLBと第2の光DLGとが合成され、第2光学素子55sにおいて第1光学素子55fで合成された第3の光DLB及び第2の光DLGと第1の光DLRとが合成される構成とされても良い。また、第4~第6実施形態において、所定の波長帯域の光を透過し、他の波長帯域の光を反射するバンドパスフィルタが第1光学素子55fや第2光学素子55sに用いられても良い。また、第4~第6実施形態では、合成光学系55は、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBを合成すれば良く、第4~第6実施形態の構成や上記構成に限定されない。
【0233】
また、第4~第6実施形態では、光学系ユニット50は、第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する合成光学系55を備えていた。しかし、第1の態様と同様に、第2の態様の光学系ユニット50は、合成光学系55を備えていなくても良い。
【0234】
また、第4~第6実施形態では、光学系ユニット50は、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子54R,54G,54Bに導く導光光学系を備えていなかった。しかし、第1の態様と同様に、第4~第6実施形態の光学系ユニット50は、光LR,LG,LBを位相変調素子54R,54G,54Bに導く導光光学系を備えていても良い。
【0235】
また、第4~第6実施形態では、車両用前照灯1は結像レンズ81と投影レンズ82とを備えていた。しかし、第1の態様と同様に、第2の態様の車両用前照灯1は結像レンズ81を備えていなくても良い。また、第1の態様と同様に、第2の態様の車両用前照灯1は、結像レンズ81及び投影レンズ82を備えていなくてもよい。
【0236】
また、第4~第6実施形態では、制御部71は、記憶部76に格納されるテーブルにおける位相変調パターンに関する情報に基づいて位相変調素子54R,54G,54Bを制御していた。しかし、制御部71は、ステアリングセンサ74からの信号や車速センサ75からの信号やターンスイッチ77からの信号等に基づいて位相変調パターンを演算し、この演算された位相変調パターンに基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bを制御しても良い。
【0237】
また、第4~第6実施形態では、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度は所定の強度とされていた。しかし、制御部71は、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度を位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンの変化に応じて変化させても良い。つまり、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBの配光パターンに応じて光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光の強度を調節しても良い。このような構成にすることで、出射する光の配光パターンが意図せずに全体的に暗くなったり、明るくなったりすることを抑制し得る。
【0238】
また、第4実施形態における車両用前照灯1では車両の操舵角に応じて出射する配光パターンの外形が変化し、第5実施形態における車両用前照灯1ではターンスイッチ77からの信号に応じて出射する配光パターンの外形が変化し、第6実施形態における車両用前照灯1では車両の速度に基づいて出射する配光パターンの外形が変化していた。しかし、本発明の第2の態様の車両用前照灯は、これらの車両用前照灯1が組み合わされたものとされても良い。例えば、車両用前照灯の制御部は、車両の操舵角に応じて位相変調パターンを調節して出射する光の配光パターンを変化させるとともに、車両のターンスイッチ77からの信号に応じて位相変調パターンを調節して配光パターンの外形を変化させても良い。なお、この場合、例えば、制御部は、車両の操舵角よりも車両のターンスイッチ77からの信号を優先して配光パターンの外形を変化させても良い。
【0239】
また、第4~第6実施形態では、互いに異なる波長の光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、光源52R,52G,52Bに一対一で対応する3つの位相変調素子54R,54G,54Bとを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、第1の態様と同様に、3つの位相変調素子54R,54G,54Bは、一体に形成されても良い。
【0240】
また、第4~第6実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、光源52R,52G,52Bに一対一で対応する3つの位相変調素子54R,54G,54Bとを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、第1の態様と同様に、第2の態様の光学系ユニットは、少なくとも1つの光源と、この光源に対応する位相変調素子とを備えれば良い。例えば、光学系ユニットは、白色のレーザ光を出射する光源と、この光源から出射する白色のレーザ光を回折して出射する位相変調素子とを備えていても良い。また、光学系ユニットが光源と位相変調素子を複数備える場合、それぞれの位相変調素子には、少なくともの1つの光源が対応していれば良い。例えば、複数の光源から出射する光が合成された光が1つの位相変調素子に入射されても良い。
【0241】
(第7実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第7実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同様の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0242】
図18は、本実施形態における車両用灯具を示す図であり、当該車両用灯具の鉛直方向の縦断面を概略的に示す図である。本実施形態の車両用灯具は車両用前照灯1とされる。
図18に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、結像レンズ81及び投影レンズ82を備えない点において、第1実施形態の車両用前照灯1と主に異なる。
【0243】
図19は、
図18に示す本実施形態の光学系ユニット50の拡大図である。なお、
図19では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー40等の図示が省略されている。
図19に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、第1光源52Rと、第2光源52Gと、第3光源52Bと、第1位相変調素子54Rと、第2位相変調素子54Gと、第3位相変調素子54Bと、合成光学系55と、第1受光素子83Rと、第2受光素子83Gと、第3受光素子83Bと、を主な構成として備える。
【0244】
図19に示すように、本実施形態では、第1光源52Rは、パワーのピーク波長が例えば638nmの赤色成分のレーザ光を下方に出射する。第2光源52Gはパワーのピーク波長が例えば515nmの緑色成分のレーザ光を前方に出射し、第3光源52Bはパワーのピーク波長が例えば445nmの青色成分のレーザ光を後方に出射する。本実施形態では、上記制御部71によって光源52R,52G,52Bに電力が供給される。これら光源52R,52G,52Bは、不図示の構成によりカバー40に固定されている。
【0245】
第1光源52Rの下方には、第1コリメートレンズ53Rが配置されている。第2光源52Gの前方には、第2コリメートレンズ53Gが配置されている。第3光源52Bの後方には、第3コリメートレンズ53Bが配置されている。これらコリメートレンズ53R,53G,53Bは、不図示の構成によりカバー40に固定されており、レーザ光のファスト軸方向及びスロー軸方向をコリメート可能とされる。
【0246】
なお、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズと、スロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとが個別に設けられることで、上記レーザ光のファスト軸方向及びスロー軸方向がコリメートされてもよい。
【0247】
第1位相変調素子54Rは、前後方向及び上下方向に対して略45°傾斜した状態で第1コリメートレンズ53Rの下方に配置されている。第2位相変調素子54Gは、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rとは反対方向に略45°傾斜した状態で第2コリメートレンズ53Gの前方に配置されている。第3位相変調素子54Bは、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rと同方向に略45°に傾斜した状態で第3コリメートレンズ53Bの後方に配置されている。本実施形態において、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれは、正面から入射した光を回折して当該光を上記正面から出射する反射型の位相変調素子とされ、例えば、前述の反射型のLCOSとされる。
【0248】
第1位相変調素子54Rの前方斜め上方には、第1受光素子83Rが配置されている。本実施形態において、この第1受光素子83Rは、第1位相変調素子54Rに正対した状態で、不図示の構成によりカバー40に固定されている。
図20は、第1受光素子83Rを概略的に示す正面図である。
図20に示すように、この第1受光素子83Rは、受光面83Rfを有している。第1受光素子83Rは、この受光面83Rfに入射する光の光量を電気信号に変換して上記制御部71に出力する光量センサとされ、例えば、フォトダイオードとされる。
【0249】
図19に示すように、第2位相変調素子54Gの後方斜め上方及び第3位相変調素子54Bの前方斜め上方には、それぞれ第2受光素子83G、第3受光素子83Bが配置されている。これら受光素子83G,83Bは、それぞれ位相変調素子54G,54Bに正対した状態で、不図示の構成によりカバー40に固定されている。これら受光素子83G,83Bも第1受光素子83Rと同様に受光面を有している。受光素子83G,83Bは、これら受光面に入射する光の光量を電気信号に変換して制御部71に出力する光量センサとされ、例えば、フォトダイオードとされる。
【0250】
合成光学系55は、第1光学素子55fと第2光学素子55sとを有する。第1光学素子55fは、第1位相変調素子54Rの前方かつ第2位相変調素子54Gの上方に配置され、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rと反対方向に略45°傾いた状態で配置される。この第1光学素子55fは、例えば、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタとされ、所定波長よりも長い波長の光を透過し、該所定波長よりも短い波長の光を反射するように上記酸化膜の種類や厚みが調整される。本実施形態において、第1光学素子55fは、第1光源52Rから出射する赤色成分の光を透過し、第2光源52Gから出射する緑色成分の光を反射するように構成される。
【0251】
第2光学素子55sは、第1光学素子55fの前方かつ第3位相変調素子54Bの上方に配置され、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rと反対方向に略45°傾いた状態で配置される。この第2光学素子55sは、第1光学素子55fと同様に、波長選択フィルタとされる。本実施形態において、第2光学素子55sは、第1光源52Rから出射する赤色成分の光及び第2光源52Gから出射する緑色成分の光を透過し、第3光源52Bから出射する青色成分の光を反射するように構成される。
【0252】
次に、車両用前照灯1の機能構成についてより詳細に説明する。
【0253】
図21は、
図18に示す車両用前照灯1を含むブロック図である。
図21に示すように、本実施形態における車両用前照灯1は、制御部71と、第1位相変調素子54Rに接続される素子駆動回路60Rと、第2位相変調素子54Gに接続される素子駆動回路60Gと、第3位相変調素子54Bに接続される素子駆動回路60Bと、光源52R,52G,52Bに接続される電源回路59と、記憶部76と、警告部駆動回路78と、警告部79と、を含んでいる。
【0254】
素子駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71に接続されており、制御部71から出力された信号に基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bに所定の電圧を印加する。これにより、位相変調素子54R,54G,54Bの各ドットDTにおける液晶層66の屈折率が調整される。このように各ドットDTにおける屈折率が調整されることで、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBのそれぞれが、例えばロービームのような所定の配光パターンとされ得る。また、このように各ドットDTにおける屈折率が調整されることで、所定の配光パターンが維持された状態で、光DLR,DLG,DLBの各光路が、位相変調素子54R,54G,54Bから開口40Hに向かう光路とされたり、位相変調素子54R,54G,54Bから受光素子83R,83G,83Bに向かう光路とされたりし得る。
【0255】
電源回路59は、光源52R,52G,52B及び制御部71に接続されている。光源52R,52G,52Bをオンにする信号が制御部71に入力すると、制御部71は、この電源回路59を制御して、電源回路59から光源52R,52G,52Bに上記信号に対応する電力を供給させる。
【0256】
本実施形態の記憶部76には、位相変調素子54R,54G,54Bの不具合を検出するための基準値データが格納されている。本実施形態において、この基準値データは、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でない状態において各受光素子83R,83G,83Bに生じる電圧値として予め求められている。記憶部76は、制御部71から信号が入力されると、この基準値データを制御部71に出力する。
【0257】
警告部駆動回路78は、制御部71及び警告部79に接続されている。所定の駆動信号が制御部71に入力すると、制御部71は、この警告部駆動回路78を介して、所定の電圧を警告部79に印加する。
【0258】
警告部79は、例えば、制御部71によって印加される上記電圧によって発光する発光ダイオードなどの発光素子とされる。この警告部79は、例えば、車両のコンビネーションメータなどに組み込まれており、警告部79が作動することで、当該コンビネーションメータの所定の箇所が発光する。なお、警告部79は、発光素子である必要はなく、運転者等に警告部79が作動していることを把握させる構成であればよい。例えば、警告部駆動回路78から印加される電圧によって発音する発音素子であってもよく、あるいは、発光素子と発音素子との双方を備える構成であってもよい。
【0259】
次に、車両用前照灯1における光の出射について、車両用前照灯1からロービームが出射される場合を例にして説明する。
【0260】
不図示のライトスイッチがオンにされた信号が、例えば車両の電子制御装置(ECU)を介して制御部71に入力すると、制御部71は、電源回路59から光源52R,52G,52Bに電力を供給させる。これにより、第1光源52Rから赤色レーザ光が生成され、第2光源52Gから緑色レーザ光が生成され、第3光源52Bから青色レーザ光が生成される。
【0261】
図19に示すように、上記赤色レーザ光は下方に出射し、第1コリメートレンズ53Rでコリメートされる。また、上記緑色レーザ光は前方に出射し、第2コリメートレンズ53Gでコリメートされる。また、上記青色レーザ光は後方に出射し、第3コリメートレンズ53Bでコリメートされる。
【0262】
制御部71は、素子駆動回路60Rを制御して、素子駆動回路60Rから位相変調素子54Rに所定の電圧を印加させる。この電圧により、位相変調素子54Rから出射する光の配光パターンがロービームの配光パターンとなるように、位相変調素子54Rの各ドットDTにおける屈折率が変更される。コリメートされた赤色レーザ光が下方に伝搬して、位相変調素子54Rに入射すると、当該位相変調素子54Rで回折されて反射することにより、ロービームの配光パターンとされた第1の光DLRとなる。この光DLRが、位相変調素子54Rから前方に出射する。
【0263】
コリメートされた緑色レーザ光及び青色レーザ光は、それぞれ前方及び後方に伝搬して位相変調素子54G,54Bに入射する。上記赤色レーザ光と同様に、緑色レーザ光及び青色レーザ光は、所定の電圧が印加された位相変調素子54G,54Bで回折されて反射することにより、ロービームの配光パターンとされた光DLG,DLBとなる。これら光DLG,DLBが、それぞれ位相変調素子54G,54Bから上方に出射する。
【0264】
赤色成分の光である第1の光DLRは、上述のように、位相変調素子54Rの前方に配置された第1光学素子55fを透過する。また、緑色成分の光である第2の光DLGは、上述のように、位相変調素子54Gの上方に配置された第1光学素子55fで反射する。このため、第2の光DLGは、第1光学素子55fで90度方向転換して前方に伝搬する。その結果、光DLR,DLGからなる第1合成光LS1が前方に伝搬する。
【0265】
第1光学素子55fの前方に配置された第2光学素子55sは、上述のように、赤色成分の光及び緑色成分の光を透過する。このため、第1合成光LS1は、第2光学素子55sを透過する。また、青色成分の光である第3の光DLBは、上述のように、位相変調素子54Bの上方に配置された第2光学素子55sで反射する。このため、第3の光DLBは、第2光学素子55sで90度方向転換して前方に伝搬する。その結果、光DLR,DLG,DLBからなる第2合成光LS2が前方に伝搬する。
【0266】
第2合成光を形成する光DLR,DLG,DLBは、上述のように、いずれもロービームの配光パターンとされる配光パターンを有している。このため、開口40Hから出射する第2合成光LS2が所定の距離だけ前方に伝搬することで、光DLR,DLG,DLBが重なり合い、
図22に示すような白色光であるロービームの配光パターンPLが形成され得る。なお、
図22において、配光パターンは太線で示されており、直線Sは水平線を示す。また、領域PLA1は最も光強度が大きい領域であり、領域PLA2、領域PLA3の順に光強度が小さくなる。
【0267】
以下、本明細書では、位相変調素子54R,54G,54Bから開口40Hを介して車両用前照灯1の外部に出射する光DLR,DLG,DLBの光路を標準光路OPSということがある。また、本明細書では、光DLR,DLG,DLBが標準光路OPSを伝搬してロービームの配光パターンPLを形成するように位相変調素子54R,54G,54Bに電圧が印加されている状態を、標準モードということがある。
【0268】
本実施形態では、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bに印加される電圧を、上記標準モードの電圧とは異なる電圧に所定のタイミングで変更する。以下、標準モードとは異なる電圧が位相変調素子54R,54G,54Bに印加されている状態を検出モードということがある。本実施形態では、車両用前照灯1が標準モードから検出モードに切り替わることにより、ロービームの配光パターンPLが維持された状態で、光DLR,DLG,DLBの光路が、標準光路OPSから、位相変調素子54R,54G,54Bから受光素子83R,83G,83Bに向かう検出光路OPEに偏向される。この結果、光DLR,DLG,DLBが受光素子83R,83G,83Bに入射し、入射した光量に基づく信号が制御部71に入力する。制御部71は、この信号に基づいて位相変調素子54R,54G,54Bの不具合を検出する。本実施形態では、このような検出プロセスが、光源52R,52G,52Bからの光の出射が開始されてから所定の期間にわたって実行される。なお、この所定の期間は、1/30秒以下とされてもよい。以下、この検出プロセスについてより詳細に説明する。
【0269】
なお、本実施形態において、位相変調素子54Rが不具合でない状態で検出モードとされた場合、
図20において実線の円形で示すように、光DLRは、受光素子83Rの受光面83Rfの内側に入射スポットSrの全体が位置するように、受光素子83Rに入射する。同様に、位相変調素子54G,54Bが不具合でない状態で検出モードとされた場合、光DLG,DLBは、受光素子83G,83Bの受光面の内側に入射スポットの全体が位置するように、受光素子83G,83Bに入射する。なお、
図20では、図が煩雑になることを避けるために、入射スポットSrの形状が円形で示されているが、実際の入射スポットSrの形状は円形であるとは限らない。
【0270】
図23は、本実施形態における制御部71による検出プロセスの制御を示すフローチャートの一例を示す図である。
図23に示すように、本実施形態における検出プロセスは、ステップSP11~ステップSP15を含んでいる。
【0271】
(ステップSP11)
本実施形態では、車両のACC電源(アクセサリ電源)がオンになると制御部71が作動する。したがって、ACC電源がオンされた時点が
図23のスタートとなる。まず、上述のライトスイッチがオンになると、上記ECUを介して、ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力する。この場合、制御部71は、ライトスイッチがオンであると判断し、検出プロセスをステップSP12に進める。一方、ライトスイッチがオンになった信号が制御部71に入力しない場合、制御部71は、ステップSP11を繰り返す。以下、本明細書において「判断」とは、制御部71がこのように入力する信号に応じて場合分けをして検出プロセスの次に進むステップを変更することをいう。
【0272】
(ステップSP12)
上述のように、ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力すると、制御部71は、電源回路59を制御して、電源回路59から光源52R,52G,52Bに電力を供給させる。これにより、光源52R,52G,52Bからの光の出射が開始される。また、ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力すると、制御部71は、素子駆動回路60R,60G,60Bを制御して、素子駆動回路60R,60G,60Bから位相変調素子54R,54B,54Gに所定の電圧を印加させる。この電圧は、標準モードとは異なる電圧とされ、この電圧により、車両用前照灯1が検出モードになる。こうして、光DLR,DLG,DLBの光路が検出光路OPEとされる。
【0273】
(ステップSP13)
車両用前照灯1が検出モードにされることで、光DLR,DLG,DLBは、受光素子83R,83G,83Bに入射する。上述のように、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合になっていない状態では、光DLR,DLG,DLBの入射スポットの全体が、それぞれ受光素子83R,83B,83Gの受光面の内側に位置する。したがって、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でない場合、光DLR,DLG,DLBが、それぞれ受光素子83R,83G,83Bに入射することで、受光素子83R,83G,83Bのそれぞれにおいて、入射スポット全体の光量に相当する電圧が生じる。こうして、受光素子83R,83G,83Bのそれぞれから、入射スポット全体の光量に相当する検知電圧値データが、信号として制御部71に入力する。
【0274】
上記検知電圧値データが制御部71に入力すると、制御部71は、上述した基準値データを記憶部76から読み出し、受光素子83Rから入力した検知電圧値データ、受光素子83Gから入力した検知電圧値データ、及び受光素子83Bから入力した検知電圧値データのそれぞれと、基準値データとを比較する。本実施形態において、この比較は、検知電圧値データと基準値データとの差の絶対値が所定の範囲内にあるか否かに基づいて行われる。制御部71は、検知電圧値データと基準値データとの差の絶対値が所定の範囲内にあるときは、位相変調素子が不具合になっていないと判断し、上記絶対値が所定の範囲内にないときは、位相変調素子が不具合になっていると判断する。上述のように、基準値データは、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でない状態において各受光素子83R,83G,83Bに生じる電圧値として予め求められたデータである。このため、入射スポットの全体の光量に応じた上記検知電圧値データは、基準値データと概ね等しくなり得る。したがって、この場合、制御部71は、検知電圧値データと基準値データとの差の絶対値が所定の範囲内にあると判断する。こうして、制御部71は、光DLR,DLG,DLBの配光パターンがそれぞれ変化しておらず、また、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でないと判断する。この結果、制御部71は、検出プロセスをステップSP15に進める。
【0275】
一方、位相変調素子54R,54G,54Bが劣化したり、製造時に所定の規格からずれていたりする等により不具合であると、不具合でない位相変調素子と同じ電圧が印加された場合でも、位相変調素子54R,54G,54Bの液晶分子66aの配向の仕方が、不具合である位相変調素子と不具合でない位相変調素子との間で異なり得る。このように、同じ電圧が印加された場合に液晶分子66aの配向の仕方が異なることで、光DLR,DLG,DLBの配光パターンが崩れて、例えば、
図20において破線の円形で示すように、入射スポットSrの外縁がぼやけたり、入射スポットSrの位置がずれたりして、入射スポットSrの一部又は全部が、受光面83Rfからはみ出す場合がある。なお、受光面Rfからはみ出している場合の入射スポットSrの形状も、円形であるとは限られない。この場合、入射スポットSrの全体が受光素子に入射する不具合でない場合と比べて、受光素子に入射する光の光量が減少して、受光素子83R,83G,83Bから生じる電圧が小さくなる。したがって、例えば、位相変調素子54Rのみが不具合である場合、基準値データよりも小さな検知電圧値データが受光素子83Rから制御部71に入力する。あるいは、位相変調素子54R,54G,54Bのすべてが不具合である場合、基準値データよりも小さな検知電圧値データが各受光素子83R,83G,83Bから制御部71に入力する。
【0276】
位相変調素子54R,54G,54Bの少なくとも1つが不具合である場合に、検知電圧値データが制御部71に入力すると、制御部71は、上記基準値データを記憶部76から読み出し、これら検知電圧値データと基準値データとを比較する。上述のように、受光素子83R,83G,83Bから制御部71に入力した検知電圧値データの少なくとも1つは基準値データよりも小さい。このため、これら検知電圧値データと基準値データとの差の絶対値の少なくとも1つが所定の範囲内にない場合、制御部71は、光DLR,DLG,DLBの少なくとも1つの配光パターンが変化していると判断する。こうして、制御部71は、位相変調素子54R,54G,54Bの少なくとも1つが不具合であると判断する。この場合、制御部71は、警告部駆動回路78を制御して、警告部駆動回路78から警告部79に駆動信号を出力させる。その結果、制御部71は、検出プロセスをステップSP14に進める。
【0277】
なお、上記では、位相変調素子54R,54G,54Bの少なくとも1つが不具合であると判断した場合に制御部71が検出プロセスをステップSP14に進める例を説明したが、位相変調素子54R,54G,54Bの少なくとも2つが不具合であると判断した場合に制御部71が検出プロセスをステップSP14に進めてもよいし、位相変調素子54R,54G,54Bのすべてが不具合であると判断した場合に制御部71が検出プロセスをステップSP14に進めてもよい。
【0278】
(ステップSP14)
警告部駆動回路78から警告部79に上記駆動信号が入力すると、警告部79は、当該駆動信号に基づいて警告を発する。上述のように、発光ダイオードから構成される警告部79がコンビネーションパネルに設けられている場合、警告部79によってコンビネーションパネルの所定の箇所が発光し、運転者等は、位相変調素子54R,54G,54Bの不具合を把握し得る。
【0279】
制御部71は、警告部79に警告を発生させると、検出プロセスをステップSP15に進める。
【0280】
(ステップSP15)
ステップSP14において警告部79が警告を発した場合、又は、ステップSP13において制御部71が位相変調素子54R,54G,54Bがすべて不具合でないと判断した場合、制御部71は、素子駆動回路60R,60G,60Bを制御して、素子駆動回路60R,60G,60Bから、ステップSP12とは異なる電圧を位相変調素子54R,54G,54Bに印加させる。こうして、制御部71は、検出モードから標準モードに切り替える。これにより、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの光路が、検出光路OPEから、標準光路OPSに偏向される。制御部71は、検出モードから標準モードに切り替えた後、検出プロセスを終了させる。
【0281】
このように、本実施形態における制御部71は、ステップSP11~ステップSP15を行うことにより、光源52R,52G,52Bからの光の出射が開始してから所定の期間、検出プロセスを実行する。
【0282】
ところで、上記特許文献1に記載されたような車両用灯具において、位相変調素子が、劣化していたり、所定の規格からずれていたりすると、当該位相変調素子から出射する光の配光パターンが、設計された配光パターンから崩れる懸念がある。
【0283】
そこで、本実施形態における車両用前照灯1では、受光素子83R,83G,83Bから生じる電圧に基づいて、制御部71が位相変調素子54R,54G,54Bの配光パターンの変化を検知する。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、位相変調素子54R,54G,54Bの不具合を効果的に検出し得る。
【0284】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、検出モードにおいて、光DLR,DLG,DLBの光路が検出光路OPEに偏向されるため、この検出光路OPE上に受光素子83R,83G,83Bを配置することができる。こうすることで、光の光量を検知するために、標準光路OPS上に受光素子83R,83G,83Bを配置する必要がなくなり、標準モードの際に光が受光素子に照射されることが防止される。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、外部に出射する光の配光パターンを良好に保ちつつ、位相変調素子54R,54G,54Bの不具合を効果的に検出し得る。
【0285】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、位相変調素子54R,54G,54BがLCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされる。このため、本実施形態における車両用前照灯1によれば、位相変調素子54R,54G,54Bに印加する電圧を調整することで、光DLR,DLG,DLBの光路を偏向させ得る。したがって、光DLR,DLG,DLBの光路を偏向させるために、別途光学部品などを設ける必要がなく、部品点数を削減し得る。また、LCOSは、液晶分子から構成されるため、不具合である場合の配光パターンの崩れが大きくなる傾向にある。このため、上述のように配光パターンの変化が検知されることで、位相変調素子の不具合がより効果的に検出され得る。
【0286】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、制御部71は、光源52R,52G,52Bがオンの間、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合であるか否かを一時的に判断する。このため、本実施形態における車両用前照灯1によれば、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合であるか否かを常に判断する場合に比べて、制御部71にかかる負荷が軽減され得る。
【0287】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、制御部71は、光源52R,52G,52Bからの光の出射が開始されたタイミングで配光パターンが所定の配光パターンであるか判断する。このため、運転者等は、いち早く位相変調素子の不具合を把握し得る。したがって、本実施形態における車両用前照灯1によれば、安全性を効果的に高め得る。
【0288】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、受光素子83R,83G,83Bがフォトダイオードなどの光量センサとされることで、光量データに基づいて配光パターンを判断することができる。したがって、本実施形態における車両用前照灯1によれば、受光素子が後述する撮像素子である場合と異なり、画像比較に基づいて配光パターンを判断する必要がなく、検出プロセスのアルゴリズムを簡易にすることができる。また、本実施形態における車両用前照灯1によれば、受光素子83R,83G,83Bをフォトダイオードなどの光量センサとすることで、配光パターンのデータを取得するためにカメラなどの装置を車両用前照灯1内に設置する必要がなく、構造を簡易にすることができる。
【0289】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、検出プロセスが実行される期間が1/30秒以下とされる。人の視覚の時間分解能は概ね1/30秒とされる。したがって、本実施形態における車両用前照灯1によれば、検出プロセスの期間が1/30秒以下とされることで残像効果が生じ得、検出光路OPEに偏向されたことを運転者等が認識し難くなるため、安全性をより効果的に保ち得る。なお、残像効果をより効果的に生じさせるために、検出プロセスの期間を1/60秒以下とすることがより好ましい。
【0290】
(第8実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第8実施形態について説明する。なお、上述した第7実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0291】
本実施形態における車両用前照灯1は、車両の停車時から所定の期間にわたって検出プロセスが実行される点等において、光源からの光の出射が開始されてから所定の期間にわたって検出プロセスが実行される第7実施形態における車両用前照灯1と主に異なる。
【0292】
図24は、本発明の第8実施形態における車両用前照灯1を含むブロック図である。
図24に示すように、本実施形態の車両用前照灯1では、車速センサ75が制御部71に接続されている。
【0293】
図25は、本実施形態における制御部71による検出プロセスの制御を示すフローチャートの一例を示す図である。本実施形態において、この検出プロセスは、例えば、1/30秒以下の期間にわたって実行される。
図25に示すように、この検出プロセスは、ステップSP21~SP27を含んでいる。
【0294】
(ステップSP21)
本実施形態では、車両のIG電源(イグニッション電源)がオンになると制御部71が作動する。したがって、IG電源がオンされた時点が
図25のスタートとなる。まず、上述のライトスイッチがオンになると、ECUを介して、ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力する。この場合、制御部71は、ライトスイッチがオンであると判断し、検出プロセスをステップSP22に進める。一方、ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力しない場合、制御部71は、ステップSP21を繰り返す。
【0295】
(ステップSP22)
第7実施形態の同様に、制御部71は、ライトスイッチがオンとされた上記信号に基づいて、電源回路59を制御して、電源回路59から光源52R,52G,52Bに電力を供給させる。
【0296】
(ステップSP23)
光源52R,52G,52Bに電力が供給された後、車速センサ75から速度がゼロである信号が制御部71に入力すると、制御部71は、車両が停止したと判断し、検出プロセスをステップSP24に進める。一方、速度がゼロである信号が入力しない場合、制御部71は、車両が動いていると判断し、検出プロセスをステップSP21に戻す。
【0297】
(ステップSP24)
制御部71は、速度ゼロと判断した場合、第7実施形態と同様に、素子駆動回路60R,60G,60Bを制御して、標準モードとは異なる電圧を位相変調素子54R,54B,54Gに印加させる。これにより、車両用前照灯1が検出モードとされる。
【0298】
次に、制御部71は、ステップSP25~ステップSP27を実行することにより、位相変調素子54R,54B,54Gが不具合であるか否かを判断し、位相変調素子54R,54B,54Gが不具合であると判断した場合には、警告を発生する。これらステップSP25~ステップSP27は、第7実施形態のステップSP13~ステップSP15と同様であるため、説明を省略する。
【0299】
このように、本実施形態における制御部71は、ステップSP21~ステップSP27を行うことにより、車両が停車してから所定の期間、検出プロセスを実行する。
【0300】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両の停車時から所定の期間にわたって検出プロセスが実行される。こうすることで、第7実施形態と同様に、位相変調素子54R,54B,54Gの不具合を効果的に検出し得る。
【0301】
また、本実施形態の車両用前照灯1によれば、制御部71が車両の停車中に検出プロセスを実行するため、走行中に検出プロセスが行われる場合に比べて、安全性が高まり得る。
【0302】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、上記検出プロセスが行われる期間が1/30秒以下とされる。したがって、本実施形態における車両用前照灯1によれば、上述のように残像効果が生じ得、標準光路OPSから検出光路OPEに偏向されたことを運転者等が認識し難くなる。
【0303】
(第9実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第9実施形態について説明する。なお、上述した第7及び第8実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0304】
第7及び第8実施形態の車両用前照灯1では、受光素子83R,83G,83Bがフォトダイオードなどの光量センサである例を説明したが、本実施形態の受光素子は撮像素子とされる。この点において、本実施形態の車両用前照灯1は、第7及び第8実施形態の車両用前照灯1と主に異なる。以下、このような本実施形態の車両用前照灯1について説明する。
【0305】
図26は、本実施形態に係る車両用灯具の光学系ユニット50を
図19と同様の視点で示す図である。
図26に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、第1受光素子83Rと、第2受光素子83Gと、第3受光素子83Bと、集光レンズ185R,185G,185Bと、集光レンズ185Rを透過した第1の光DLRの像が映し出される投影面184Rと、集光レンズ185Gを透過した第2の光DLGの像が映し出される投影面184Gと、集光レンズ185Bを透過した第3の光DLBの像が映し出される投影面184Bと、を有している。本実施形態において、受光素子83R,83G,83Bは、カメラなどの撮像装置に搭載されたCMOSやCCDなどの撮像素子とされる。受光素子83R,83G,83Bと、集光レンズ185R,185G,185Bと、投影面184R,184G,184Bとは、不図示の構成によりカバー40に固定されている。なお、集光レンズ185R,185G,185Bは必須の構成要素ではない。
【0306】
集光レンズ185Rと投影面184Rとは、第1の光DLRの検出光路OPE上に配置される。また、集光レンズ185Gと投影面184Gとは、第2の光DLGの検出光路OPE上に配置される。また、集光レンズ185Bと投影面184Bとは、第3の光DLBの検出光路OPE上に配置される。
【0307】
第1受光素子83Rは、投影面184Rに映し出された像を撮像可能な位置に配置される。第2受光素子83Gは、投影面184Gに映し出された像を撮像可能な位置に配置される。第3受光素子83Bは、投影面184Bに映し出された像を撮像可能な位置に配置される。
【0308】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の制御部71による検出プロセスについて説明する。
図27は、本実施形態における制御部71による検出プロセスの制御フローチャートの一例を示す図である。
図27に示すように、この検出プロセスは、ステップSP31~ステップSP35を含んでおり、第7実施形態と同様に、例えば1/30秒以下の期間で実行される。
【0309】
ステップSP31は、第7実施形態のステップSP11と同様であるため、説明を省略する。
【0310】
(ステップSP32)
ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力すると、制御部71は、電源回路59を制御して、電源回路59から光源52R,52G,52Bに電力を供給させる。また、ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力すると、制御部71は、素子駆動回路60R,60G,60Bを制御して、素子駆動回路60R,60G,60Bから位相変調素子54R,54B,54Gに所定の電圧を印加させる。これにより、車両用前照灯1が検出モードとされ、光DLR,DLG,DLBの光路が検出光路OPEとされる。本実施形態において、検出モードにおける光DLR,DLG,DLBの配光パターンは、ロービームの配光パターンPLが形成される配光パターンとされる。したがって、本ステップにより、光DLR,DLG,DLBが、それぞれ集光レンズ185R,185G,185Bで集光されて、ロービームの配光パターンPLと概ね等しい形状の光DLR,DLG,DLBの像が、それぞれ投影面184R,184G,184Bに映し出される。
【0311】
図28は、投影面184Rを概略的に示す正面図である。
図28に示すように、光DLRの光路が検出光路OPEとされることで、上述のように、ロービームの配光パターンPLと概ね等しい形状の光DLRの像が投影面184Rに映し出される。なお、
図28において、実線で示された像IMは位相変調素子54Rが不具合でない場合の光DLRの像を示しており、破線で示された像IMaは位相変調素子54Rが不具合である場合の光DLRの像を示している。
【0312】
(ステップSP33)
位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でない場合、投影面184R,184G,184Bには、上述のように、
図28において実線で示された像IMが映し出される。本ステップにおいて、撮像素子とされた受光素子83R,83G,83Bは、光DLR,DLG,DLBの像IMをそれぞれ撮像して、これら像IMの電気信号を制御部71に出力する。制御部71は、この電気信号を処理して、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの像IMの検知画像データを生成する。
【0313】
本実施形態において、記憶部76には、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でない場合に投影面184R,184G,184Bに映し出される光DLR,DLG,DLBの画像データが、基準画像データとして予め格納されている。制御部71は、検知画像データを生成すると、基準画像データを記憶部76から読み出し、検知画像データと基準画像データとを比較する。この画像比較は、既知の方法を用いて行うことができる。本実施形態では、検知画像データ及び基準画像データをそれぞれ2次元座標に対応付けた上で、検知画像データの任意の特徴点が、当該特徴点に対応する基準画像データの特徴点からどの程度離れているかに基づいて、両画像の一致を判断する。互いに対応する特徴点同士の離間距離が所定の範囲内にある場合、制御部71は、両画像が一致すると推定する。この場合、制御部71は、光DLR,DLG,DLBの配光パターンが変化していないと判断し、その結果、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でないと判断する。一方、上記離間距離が所定の範囲を超えている場合、制御部71は、両画像が不一致であると推定する。この場合、制御部71は、光DLR,DLG,DLBの少なくとも1つの配光パターンが変化していると判断し、その結果、位相変調素子54R,54G,54Bの少なくとも1つが不具合であると判断する。
【0314】
上述した検知画像データが位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でない場合に生成されたデータであると、上記離間距離が所定の範囲内にある。したがって、制御部71は、これら検知画像データと基準画像データが一致すると推定する。この場合、制御部71は、光DLR,DLG,DLBの配光パターンが変化していないと判断し、また、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でないと判断する。その結果、制御部71は、検出プロセスをステップSP35に進める。
【0315】
一方、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合であると、上述したように、液晶分子66aの配向の仕方が変化することによって光DLR,DLG,DLBの配光パターンが崩れ、投影面184R,184G,184Bに映し出される像がぼやけ得る。この場合、投影面184R,184G,184Bには、例えば、
図28の像IMaのように、像IMに比べて広がった像が映し出され得る。したがって、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合である場合、受光素子83R,83G,83Bは、光DLR,DLG,DLBの像IMaを撮像して、これら像IMaの電気信号を制御部71に出力する。制御部71は、この電気信号を処理して光DLR,DLG,DLBのそれぞれの像IMaの検知画像データを生成する。制御部71は、記憶部76から基準画像データを読み出し、これら検知画像データと基準画像データとを比較する。上記離間距離が所定の範囲内にない場合、制御部71は、検知画像データと基準画像データとが不一致であると推定する。この場合、制御部71は、光DLR,DLG,DLBの少なくとも1つの配光パターンが変化していると判断し、これにより、位相変調素子54R,54G,54Bの少なくとも1つが不具合であると判断する。その結果、制御部71は、警告部79に駆動信号を出力して、検出プロセスをステップSP34に進める。
【0316】
次に、制御部71は、ステップSP35及びステップSP34を実行する。これらステップSP35及びステップSP34は、第7実施形態のステップSP15及びステップSP14と同様であるため、説明を省略する。
【0317】
このように、本実施形態における制御部71は、ステップSP31~ステップSP35を行うことにより、光源52R,52G,52Bからの光の出射が開始してから所定の期間、検出プロセスを実行する。
【0318】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1によれば、受光素子83R,83G,83Bを撮像素子から構成して検出プロセスを実行できるため、画像認識に基づいて配光パターンの変化を検出し得、配光パターンの変化の判断の精度や正確度が向上し得る。
【0319】
なお、本実施形態では、第7実施形態の受光素子を光量センサから撮像素子に変更した例を説明したが、第8実施形態の受光素子を光量センサから撮像素子に変更してもよい。
【0320】
また、本実施形態では、投影面184R,184G,184Bに映し出される像がロービームの配光パターンPLと概ね等しい例を説明したが、検出モードにおいて位相変調素子54R,54G,54Bに印加される電圧を、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBの配光パターンがロービームの配光パターンPLとは異なる配光パターンになるような電圧にして、ロービームの配光パターンPLの像とは異なる検出モード用の像が映し出されるようにしてもよい。このような検出モード用の像として、例えば、
図29に示すような市松模様状の像IPが挙げられる。この像IPは、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でない場合に投影面184R,184G,184Bに映し出される像である。この場合において、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合になると、市松模様の外縁がぼやけて、例えば、
図30に示すような像IPaのような像が投影面184R,184G,184Bに映し出され得る。像IPと像IPaとを比較する場合、像IPの外縁は直線状に規定されているため、上記ステップSP33において、像IPの外縁に対する像IPaの歪みを容易に算出し得る。したがって、ロービームの配光パターンPLの像を映し出す場合に比べて、画像比較の正確度や精度がより高まり得る。なお、このように配光パターンが像IPとなるような電圧を印加する場合において、検出プロセスの期間を1/30秒以下にすれば、上述の残像効果が生じて、配光パターンが変更されたことを運転者等に認識させにくくし得る。
【0321】
(第10実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第10実施形態について説明する。なお、上述した第7~第9実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0322】
第7~第9実施形態の車両用前照灯1では、受光素子83R,83G,83Bで受光された光DLR,DLG,DLBの配光パターンの変化が一時的に判断される例を説明したが、本実施形態の車両用前照灯1では、光源が作動している間、受光素子83R,83G,83Bで受光された光DLR,DLG,DLBの配光パターンの変化が常時判断される。主にこの点において、本実施形態の車両用前照灯1は、第7~第9実施形態の車両用前照灯1と異なる。以下、このような本実施形態の車両用前照灯1について説明する。
【0323】
図31は、本実施形態に係る車両用灯具の光学系ユニット50を
図19と同様の視点で示す図である。
図31に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、前後方向において第1位相変調素子54Rと第1光学素子55fとの間に配置された第1分光部581Rと、上下方向において第2位相変調素子54Gと第1光学素子55fとの間に配置された第2分光部581Gと、上下方向において第3位相変調素子54Bと第2光学素子55sとの間に配置された第3分光部581Bと、を有している。本実施形態では、これら分光部581R,581G,581Bは、例えば、99%の光を透過し、1%の光を反射するように構成されたハーフミラーとされる。
【0324】
第1分光部581Rは、前後方向及び上下方向において略45°傾斜した状態でカバー40に固定されている。第2分光部581Gは、前後方向及び上下方向において第1分光部581Rと反対方向に略45°傾斜した状態でカバー40に固定されている。第3分光部581Bは、前後方向及び上下方向において第1分光部581Rと同一方向に略45°傾斜した状態でカバー40に固定されている。
【0325】
第1分光部581Rの上方には、フォトダイオードから構成される第1受光素子83Rが配置されており、第2分光部581Gの後方には、フォトダイオードから構成される第2受光素子83Gが配置されており、第3分光部581Bの前方には、フォトダイオードから構成される第3受光素子83Bが配置されている。
【0326】
また、本実施形態において、位相変調素子54R,54G,54Bは、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBがロービームの配光パターンPLとなるような3次元構造を有する回折格子とされる。
【0327】
このような構成において、光源52Rから光が出射すると、この光はコリメートレンズ53Rでコリメートされた後、位相変調素子54Rに入射する。位相変調素子54Rに入射した光は、位相変調素子54Rの3次元構造を透過することによってロービームの配光パターンPLとなり、第1の光DLRとして前方に出射する。また、光源52G,52Bから光が出射すると、これらの光はコリメートレンズ53G,53Bでコリメートされた後、位相変調素子54G,54Bに入射する。位相変調素子54G,54Bに入射した光は、位相変調素子54G,54Bの3次元構造を透過することによって、ロービームの配光パターンPLとなる。こうして、光DLG,DLBがそれぞれ上方に出射する。
【0328】
第1の光DLRは、前方に配置された第1分光部581Rに入射する。これにより、光DLRの大部分が第1分光部581Rを透過して前方に出射し、光DLRの残りの一部が第1分光部581Rで反射して上方に伝搬する。こうして、第1の光DLRの一部が、標準光路OPSから検出光路OPEに分光される。第2の光DLGは、上方に配置された第2分光部581Gに入射する。これにより、光DLGの大部分が第2分光部581Gを透過して上方に出射し、光DLGの残りの一部が第2分光部581Gで反射して後方に伝搬する。こうして、第2の光DLGの一部が、標準光路OPSから検出光路OPEに分光される。第3の光DLBは、上方に配置された第3分光部581Bに入射する。これにより、光DLBの大部分が第3分光部581Bを透過して上方に出射し、光DLBの残りの一部が第3分光部581Bで反射して前方に伝搬する。こうして、光DLBの一部が、標準光路OPSから検出光路OPEに分光される。
【0329】
分光部581R,581G,581Bを透過した大部分の光DLR,DLG,DLBは、合成光学系55で合成されて第2合成光LS2となり、ロービームが形成される。
【0330】
一方、光DLRの上記一部は、光源52Rが作動している間、検出光路OPEを伝搬して、上方に配置された受光素子83Rに入射し続ける。また、光DLGの上記一部は、光源52Gが作動している間、検出光路OPEを伝搬して、後方に配置された受光素子83Gに入射し続ける。また、光DLBの上記一部は、光源52Bが作動している間、検出光路OPEを伝搬して、前方に配置された受光素子83Bに入射し続ける。
【0331】
以下、このような車両用前照灯1の検出プロセスについて説明する。
図32は、本実施形態における制御部71の制御フローチャートの一例を示す図である。
図32に示すように、本実施形態における検出プロセスは、ステップS41~ステップS44を含んでいる。
【0332】
(ステップSP41)
本ステップは第7実施形態のステップSP11と同様とされる。このため、詳細な説明を省略する。
【0333】
(ステップSP42)
ライトスイッチがオンとされた信号が制御部71に入力すると、制御部71は、光源52R,52G,52Bをオンにする。これにより、上述のように、光源52R,52G,52Bから出射する光の大部分が開口40Hを介して外部に出射する。一方、上記光の一部は、分光部581R,581G,581Bで分光され、光源52R,52G,52Bの作動中、受光素子83R,83G,83Bに入射し続ける。その結果、光源52R,52G,52Bが作動している間、受光素子83R,83G,83Bから検知電圧値データが制御部71に入力し続ける。
【0334】
(ステップSP43)
回折格子から構成される位相変調素子54R,54G,54Bが、高温化したり、製造時に規格からずれたりすること等によって設計時とは異なる形状とされ、不具合であると、位相変調素子54R,54G,54Bに入射する光は、設計時とは異なる回折をする。その結果、光DLR,DLG,DLBが位相変調素子54R,54G,54Bから出射すると、これら光は、設計時とは異なる配光パターンとなり得る。この場合、上述したように、受光素子83R,83G,83Bに入射する光の光量が変化して、受光素子83R,83G,83Bから生じる電圧が変化し得る。このため、本ステップにおいても、第7実施形態のステップSP13と同様に、制御部71は、検知電圧値データと上記基準値データとの差の絶対値が所定の範囲内にあるか否かを判断する。上記絶対値が所定の範囲内にある場合、制御部71は、配光パターンが変化しておらず、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合でないと判断する。その結果、制御部71は、検出プロセスをステップSP41に戻す。
【0335】
一方、上記絶対値が所定の範囲内にない場合、制御部71は、配光パターンが変化していると判断し、また、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合であると判断する。その結果、制御部71は、警告部79に駆動信号を出力して、検出プロセスをステップSP44に進める。
【0336】
(ステップSP44)
制御部71から警告部79に上記駆動信号が入力すると、警告部79は、当該駆動信号に基づいて警告を発する。制御部71は、警告部79に警告を発生させると、検出プロセスをステップSP41に戻す。
【0337】
このように、本実施形態における制御部71は、光源52R,52G,52Bがオンの間、上記検出プロセスを繰り返して、配向パターンが所定の配光パターンであるか常時判断する。
【0338】
以上説明したように、本実施形態における車両用前照灯1では、制御部71が、光源52R,52G,52Bがオンの間、受光素子83R,83G,83Bで受光された光の配光パターンが所定の配光パターンであるか常時判断する。このため、運転者等は、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合になったことをオンタイムで把握し得る。
【0339】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、位相変調素子54R,54G,54Bが回折格子とされるため、位相変調素子54R,54G,54Bに印加される電圧を調整するステップが不要である。したがって、検出プロセスのためのアルゴリズムの構築が容易になり得る。
【0340】
また、本実施形態における車両用前照灯1では、標準光路OPSから検出光路OPEへの偏向が分光部により行われる。このため、本実施形態における車両用前照灯1によれば、第7~第9実施形態のように位相変調素子54R,54G,54Bの液晶分子66aの配向パターンを変えて光路を偏向する場合に比べて、光路をより大きく偏向し得る。このため、本実施形態における車両用前照灯1によれば、位相変調素子54R,54G,54Bで光路を偏向する場合に比べて、標準光路OPSからより離れた位置に受光面や受光素子を配置し得る。したがって、本実施形態における車両用前照灯1によれば、標準光路OPSを伝搬する光が受光面や受光素子に照射されることがより効果的に抑制され得、配光パターンの崩れをより効果的に抑制し得る。
【0341】
なお、本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bが回折格子である例を説明したが、第7~第9実施形態と同様に、位相変調素子54R,54G,54Bを、出射する光の配光パターンを所定の配光パターンから変更し得るLCOS等の位相変調素子としてもよい。また、本実施形態において位相変調素子をLCOSとする場合、例えば、位相変調素子から出射する光の一部の成分が検出光路OPEを伝搬し、当該光の他の成分が標準光路OPSEを伝搬するように位相変調素子の上記液晶層の屈折率を変更することによって、配向パターンが所定の配光パターンであるか常時判断し得る。
【0342】
(第11実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第11実施形態について説明する。第7~第10実施形態では、受光素子が検出光路OPEを伝搬する光を受光する例を説明したが、本実施形態の受光素子は、標準光路OPSを伝搬する光を受光する。この点において、本実施形態の車両用前照灯1は、第7~第10実施形態の車両用前照灯1と異なる。以下、このような車両用前照灯1について説明する。
【0343】
図33は、本実施形態における車両用灯具を
図1と同様の視点で示す図である。
図33に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、灯室R内に配置されたカメラ683を有している。カメラ683は、カバー40の外部に配置されており、不図示の構成により筐体10に固定されている。カメラ683は、受光素子であるCMOSやCCDを有しており、この受光素子が標準光路OPSを伝搬する光を受光するように配置される。例えば、この受光素子は、車検等の検査の際に車両用前照灯1の前方に投影面が配置された場合に、標準光路OPSで外部に出射して当該投影面に映し出された像を撮像する。本実施形態の制御部71は、例えば、第9実施形態のステップSP33と同様にして、この投影面に映し出された像の相違を判断する。こうすることで、位相変調素子54R,54G,54Bが不具合になっているか否か、あるいは、位相変調素子54R,54G,54Bが歩留り品等により不具合であるか否か等を検出し得る。
【0344】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1によれば、標準光路OPSを伝搬する光を受光素子が受光するように構成されるため、位相変調素子54R,54G,54Bの不具合を検出するために光路を検出光路OPEに偏向する必要がなくなり得る。
【0345】
なお、本実施形態において、制御部71は、光源52R,52G,52Bがオンの間、受光素子で受光された光の配光パターンが所定の配光パターンであるかを常時判断してもよく、一時的に判断してもよい。
【0346】
以上、本発明の第3の態様について、第7~第11実施形態を例に説明したが、本発明の第3の態様はこれらに限定されるものではない。
【0347】
例えば、第7実施形態では、検出プロセスを作動するタイミングを光源始動時とし、第8実施形態では、当該タイミングを停車時とした。しかし、制御部71が、光源52R,52G,52Bがオンの間、受光素子83R,83G,83Bで検知された配光パターンを一時的に判断する場合、この判断のタイミングは特に限定されない。例えば、車両の走行中に配光パターンの変化を検出してもよい。この場合、検出プロセスの期間を1/30秒以下とすれば、上述のように残像効果が生じ得、走行中に光路が偏向された違和感を、運転者等に認識されなくし得る。
【0348】
また、第7~第9実施形態では、制御部71が、光源がオンの間、受光素子で受光された光の配光パターンが所定の配光パターンであるか一時的に判断する例として、位相変調素子54R,54G,54BがLCOSである場合を説明した。しかし、第7~第9実施形態において、位相変調素子54R,54G,54Bを回折格子としてもよい。この場合、標準光路OPS上に分光部を設けて、光の一部を検出光路OPEに分光した上、光源52R,52G,52Bが作動している間の所定の時点で、分光された光のデータに基づいて制御部71が配光パターンの変化を判断してもよい。こうすることで、位相変調素子54R,54G,54Bが回折格子である場合でも、配光パターンの変化を一時的に判断し得る。
【0349】
また、第7~第9実施形態では、屈折率を変更可能な位相変調素子としてLCOSを用いた例を説明したが、屈折率を変更可能なその他の位相変調素子を用いてもよい。例えば、このような他の位相変調素子としてGLVを挙げ得る。
【0350】
また、第7、第8、及び第10実施形態では、光量センサとしてフォトダイオードを用いた例を説明したが、例えば、他の光量センサとしてサーミスタ等を用いてもよい。
【0351】
また、第7~第10実施形態において、撮像素子と光量センサとの双方を設けてもよい。例えば、光源52R,52Gから出射する光を撮像素子が受光し、光源52Bから出射する光を光量センサが受光するように構成してもよい。
【0352】
また、第7~第11実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bの全てに対して不具合を判断する例を説明したが、位相変調素子54R,54G,54Bの1つ又は2つについて不具合を判断するようにしてもよい。この場合、不具合の判断対象が減るため、検出プロセスを簡易にし得る。
【0353】
また、第7~第11実施形態では、車両用前照灯1が複数の光源を有している例を説明したが、光源は1つ以上あればよい。ただし、互いに異なる波長の光を出射する光源を複数設けることで、所望の色の光を生成し得る。
【0354】
また、第7~第11実施形態では、車両用灯具としての車両用前照灯1はロービームを照射するものとされたが、本発明の第3の態様としての車両用灯具は特に限定されない。例えば、第3の態様としての他の実施形態における車両用灯具は、
図22において破線で示す領域、すなわち、ロービームが照射される領域よりも上方の領域に、ロービームよりも強度の低い光を照射するように構成されてもよい。このような低強度の光は、例えば標識認識用の光OHSとされる。この場合、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光に標識認識用の光OHSが含まれていることが好ましい。また、このような実施形態では、ロービームと標識認識用の光OHSとで夜間照明用の配光パターンが形成されると理解することができる。なお、ここでいう「夜間」とは、単に「夜間」という意味に限定されず、トンネル等の暗所を含むものとする。また、第3の態様としての他の別の実施形態における車両用灯具は、
図34に示すようなハイビームを照射するように構成されてもよい。なお、
図34において、ハイビームの配光パターンPHは太線で示されており、直線Sは水平線を表している。このハイビームの配光パターンPHにおいて、領域PHA1は光強度が強い領域であり、PHA2はPHA1よりも光強度が低い領域である。また、第3の態様としてのさらに別の実施形態では、本発明の第3の態様における車両用灯具を、画像を構成する光を出射するものとして適用してもよい。このような場合、車両用灯具から出射する光の方向や、該車両における車両用灯具の取り付け位置は特に限定されない。
【0355】
本発明の第1の態様によれば、小型化しつつ進行方向の視認性を向上し得る車両用前照灯が提供され、本発明の第2の態様によれば、違和感を覚えることを抑制し得る車両用前照灯が提供され、本発明の第3の態様によれば、位相変調素子の不具合を検出し得る車両用灯具が提供され、自動車等の分野において利用可能である。