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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】セラミックフィルタ及び鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 43/00 20060101AFI20231215BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B22D43/00 C
C04B38/00 303Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021019652
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122429
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】593017670
【氏名又は名称】株式会社アルテックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】石川 明宏
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】稲山 慎一
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205638(JP,A)
【文献】特開2020-172432(JP,A)
【文献】特開2017-214268(JP,A)
【文献】特表平07-501783(JP,A)
【文献】実開昭63-189464(JP,U)
【文献】実開昭54-100906(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00
B22D 18/00
B22D 45/00
B22D 43/00
B01D 29/00
B01D 39/20
F27D 25/00
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口を有する周壁と、前記周壁の他端を閉塞する端壁とを有し、
前記周壁は、複数のセラミック粒子が隙間を有しつつ固着することで形成されており、
アルミニウム系金属の溶湯内に浸漬されて用いられるセラミックフィルタであって、
前記周壁は前記隙間を介して前記溶湯を通湯可能とする一方、前記端壁は前記溶湯を通湯不能とし、
前記周壁は、前記端壁に向かって縮小するように傾斜した傾斜壁部と、端壁の縁から垂直に延在するとともに前記端壁と前記傾斜壁部とを繋げる垂直壁部とを備えていることを特徴とするセラミックフィルタ。
【請求項2】
前記端壁は、前記周壁とともに一体成型された前記複数のセラミック粒子からなる壁状の部位に前記溶湯を通湯不能な非通湯層を設けることで形成されている請求項記載のセラミックフィルタ。
【請求項3】
前記非通湯層はガラス質からなる請求項記載のセラミックフィルタ。
【請求項4】
一端に開口を有して他端が閉塞された筒状をなすセラミックフィルタを用い、前記開口がアルミニウム系金属からなる溶湯上に位置するように前記溶湯内に前記セラミックフィルタを浸漬し、前記溶湯を前記セラミックフィルタによって通湯して内部にろ過溶湯を貯め、前記開口から前記ろ過溶湯を取り出す工程を備えた鋳造方法において、
前記セラミックフィルタは、前記一端に前記開口を有する周壁と、前記周壁の前記他端を閉塞する端壁とを有し、前記周壁は、複数のセラミック粒子が前記溶湯を通湯可能な隙間を有しつつ固着することで形成されており、
前記端壁は前記溶湯を通湯不能であり、
前記周壁は、前記端壁に向かって縮小するように傾斜した傾斜壁部と、端壁の縁から垂直に延在するとともに前記端壁と前記傾斜壁部とを繋げる垂直壁部とを備えていることを特徴とする鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックフィルタと、鋳造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来のセラミックフィルタが開示されている。このセラミックフィルタは、上方に開口を有する容器状をなしている。このセラミックフィルタは、炭化珪素(SiC)等のセラミック粒子が連続気泡状の隙間を有しつつ固着されたものである。隙間は、セラミック粒子の粒径を調整することにより、溶湯を通湯可能であるとともに不要物を通湯不能となっている。
【0003】
このセラミックフィルタは、溶湯内に浸漬されることにより、溶湯を隙間によって通湯して内部にろ過溶湯を貯める。溶湯中に含まれる異物等の不要物は隙間を通湯できず、ろ過溶湯は溶湯から不要物がろ過されたものとなる。セラミックフィルタ内のろ過溶湯は、開口からラドル等によって取り出され、鋳型等に鋳湯される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6603834号公報
【文献】特許第6729905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発明者らの確認によれば、上記従来のセラミックフィルタでは、溶湯がアルミニウム系金属からなる場合、開口から溶湯が大気に晒されるため、鋳造品が加工不良を生じ易い。
【0006】
すなわち、ろ過溶湯は、セラミックフィルタの内部に貯められることにより溶湯中の不純物が除去されていたとしても、大気中の酸素等によってアルミナやスピネル等の結晶を生じ、その結晶を含む場合がある。そのろ過溶湯をラドル等によって取り出す際、ラドル等内のろ過溶湯がその結晶を含み易い。そのろ過溶湯によって鋳造された鋳造品は、結晶が高い硬度を有することから、加工不良を生じ易い。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、溶湯がアルミニウム系金属からなる場合において、ろ過した溶湯からの鋳造品が加工不良を生じ難いセラミックフィルタ及び鋳造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセラミックフィルタは、一端に開口を有する周壁と、前記周壁の他端を閉塞する端壁とを有し、
前記周壁は、複数のセラミック粒子が隙間を有しつつ固着することで形成されており、
アルミニウム系金属の溶湯内に浸漬されて用いられるセラミックフィルタであって、
前記周壁は前記隙間を介して前記溶湯を通湯可能とする一方、前記端壁は前記溶湯を通湯不能とし、
前記周壁は、前記端壁に向かって縮小するように傾斜した傾斜壁部と、端壁の縁から垂直に延在するとともに前記端壁と前記傾斜壁部とを繋げる垂直壁部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の鋳造方法は、一端に開口を有して他端が閉塞された筒状をなすセラミックフィルタを用い、前記開口がアルミニウム系金属からなる溶湯上に位置するように前記溶湯内に前記セラミックフィルタを浸漬し、前記溶湯を前記セラミックフィルタによって通湯して内部にろ過溶湯を貯め、前記開口から前記ろ過溶湯を取り出す工程を備えた鋳造方法において、
前記セラミックフィルタは、前記一端に前記開口を有する周壁と、前記周壁の前記他端を閉塞する端壁とを有し、前記周壁は、複数のセラミック粒子が前記溶湯を通湯可能な隙間を有しつつ固着することで形成されており、
前記端壁は前記溶湯を通湯不能であり、
前記周壁は、前記端壁に向かって縮小するように傾斜した傾斜壁部と、端壁の縁から垂直に延在するとともに前記端壁と前記傾斜壁部とを繋げる垂直壁部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のセラミックフィルタ又は鋳造方法では、内部に貯められたろ過溶湯がアルミナやスピネル等の結晶を含んでいたとしても、セラミックフィルタが一端に開口を有する周壁と、周壁の他端を閉塞する端壁とを備え、その端壁は溶湯を通湯不能である。このため、ろ過溶湯中の結晶は、開口を上方に向けて配置したセラミックフィルタ内において、底に位置する端壁に溜まる一方で、溶湯の通湯によって端壁から開口に向かって舞い上がることがない。このため、そのろ過溶湯をラドル等によって取り出す際、ラドル等内のろ過溶湯がその結晶を含まないようにできる。このため、そのろ過溶湯を鋳型等に鋳湯することができることから、鋳造品が結晶を含み難い
【0011】
したがって、本発明のセラミックフィルタ又は鋳造方法によれば、溶湯がアルミニウム系金属からなる場合において、ろ過した溶湯からの鋳造品が加工不良を生じ難い。
【0012】
本発明のセラミックフィルタ又は鋳造方法では、周壁は、端壁に向かって縮小するように傾斜した傾斜壁部を備えている
【0013】
本発明のセラミックフィルタ又は鋳造方法では、端壁が溶湯を通湯不能であることから、ろ過面積が不足し易いが、そのろ過面積を周壁の傾斜壁部が拡大させる。また、ろ過面積を拡大させる分だけセラミックフィルタ内外の熱伝達効率を確保する。つまり、傾斜壁部によって、セラミックフィルタ全体に占めるろ過面積の割合を大きくすることができる。これによってセラミックフィルタ外の溶湯とセラミックフィルタ内のろ過溶湯との温度差を小さくし、溶湯やろ過溶湯が結晶を生じ難くすることができる。また、結晶が生じ難いように、バーナやヒータによって溶湯やろ過溶湯を過剰に加熱する必要がなく、鋳造費用の低廉化を実現できる。
【0014】
また、周壁の内側で結晶を生じても、その結晶が傾斜壁部に沿って、底にある端壁まで落ちる。端壁まで移動した結晶は、端壁が溶湯を通湯しないことから舞い上がらず、本発明の作用効果が発揮される。傾斜壁部は、直線状に端壁に向かって縮小していても、湾曲しながら端壁に向かって縮小していてもよい。
【0015】
本発明のセラミックフィルタ又は鋳造方法では、周壁は、端壁の縁から垂直に延在するとともに端壁と傾斜壁部とを繋げる垂直壁部を備えているこのため、垂直壁部もろ過面積を確保する。また、垂直壁部の高さ分だけ結晶を端壁上に貯めることができることから、本発明の作用効果がより発揮される。
【0016】
本発明のセラミックフィルタでは、端壁は、周壁とともに一体成型された複数のセラミック粒子からなる壁状の部位に溶湯を通湯不能な非通湯層を設けることで形成されていることが好ましい。この場合、上記特許公報記載のセラミックフィルタのような全体が複数のセラミック粒子からなる従来のセラミックフィルタをフィルタ本体として、フィルタ本体の一部に非通湯層を設けることで本発明のセラミックフィルタを生産できるため、生産性が高い。非通湯層は、フィルタ本体に形成されたガラス質でもよく、隙間を有しないようにセラミック粒子が固着された焼結体や一体物であってもよい。
【0017】
非通湯層はガラス質からなることが好ましい。この場合、焼成によってフィルタ本体となる成形品又は焼成後のフィルタ本体に生釉薬を施釉して施釉品とし、その施釉品を焼成することによってガラス質の非通湯層を形成することで、容易にセラミックフィルタが得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセラミックフィルタ又は鋳造方法によれば、溶湯がアルミニウム系金属からなる場合において、ろ過した溶湯からの鋳造品が加工不良を生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1、2の鋳造方法に用いる溶解炉の断面図である。
図2図2は、実施例1のセラミックフィルタの平面図である。
図3図3は、実施例1のセラミックフィルタの側面図である。
図4図4は、実施例1のセラミックフィルタに係り、溶湯に浸漬された状態の断面図である。
図5図5は、実施例1のセラミックフィルタに係り、底壁等の拡大断面図である。
図6図6は、実施例1のセラミックフィルタに係り、フィルタ本体の拡大断面図である。
図7図7は、実施例2のセラミックフィルタに係り、底壁等の拡大断面図である。
図8図8は、参考例のセラミックフィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
実施例1の鋳造方法は、図1に示す溶解炉10を用いている。この溶解炉10は、基台1上に構築されており、それぞれ炉材によって囲まれた投入室12、溶解室14及び汲み取り室16を備えている。
【0022】
投入室12は、外部にほぼ水平方向で開く投入口12aと、上方で外部に開く開口12bとを有しており、投入口12a及び開口12bにはそれぞれそれらを閉じる蓋部材18、20が設けられている。投入室12の上部には温度センサ22が設けられている。投入室12の底面12cは、投入口12aより下方に位置し、溶解室14に向かう下り傾斜とされている。
【0023】
溶解室14の天井には複数のバーナ24、26及び温度センサ25が設けられている。投入室12と溶解室14とは連通口14aによって連通している。連通口14aは投入室12の底面12cがその一部をなしている。溶解室14の底面14bは水平に形成されている。底面14bは投入室12の底面12cよりも下に位置しているため、溶解室14にはアルミニウム系金属の溶湯Mが貯められるようになっている。
【0024】
汲み取り室16の底面16aは溶解室14の底面14bと面一である。汲み取り室16と溶解室14との間には、溶湯Mの液面よりも下に突出する隔壁28が設けられている。隔壁28には、汲み取り室16と溶解室14とを連通する連通口16bが形成されている。汲み取り室16に実施例1のセラミックフィルタ30が設けられている。また、汲み取り室16には、2個の温度センサ32、34が設けられている。一つの温度センサ32はセラミックフィルタ30外に位置し、他の一つの温度センサ34はセラミックフィルタ30内に位置している。
【0025】
実施例1のセラミックフィルタ30は、図2~4に示すように、上方に矩形の開口30aを有する容器状をなしている。
【0026】
より詳細には、このセラミックフィルタ30は、等しい長さで垂直に延びる4つの第1側壁41a~41dを有している。第1側壁41aと第1側壁41cとは平行であり、第1側壁41bと第1側壁41dとは平行であり、第1側壁41aと第1側壁41bとは直交し、第1側壁41bと第1側壁41cとは直交し、第1側壁41cと第1側壁41dとは直交し、第1側壁41dと第1側壁41aとは直交している。
【0027】
各第1側壁41a~41dの下端には、下方に向かうに従って互いに近づく方向に下り傾斜する傾斜壁42a~42dが接続されている。傾斜壁42a~42dは本発明における傾斜壁部に相当する。各傾斜壁42a~42dの下端の位置は等しくされている。傾斜壁42a~42dの下端には、下方に向かって垂直に短く延びる4つの第2側壁43a~43dが接続されている。第2側壁43a~43dは本発明における垂直壁部に相当する。各第2側壁43a~43dの下端の位置も等しくされている。第1側壁41a~41dと傾斜壁42a~42dと第2側壁43a~43dとは、本発明における周壁に相当する。第2側壁43a~43dの下端には四角形状の底壁44が水平に接続されている。底壁44は本発明における端壁に相当する。第2側壁43a~43dは底壁44の各辺から延びている。
【0028】
このセラミックフィルタ30は、図3及び図4に示すように、フィルタ本体50と非通湯層51~54とからなる。フィルタ本体50は、図6に示すように、SiCからなるセラミック粒子60が連続気泡状の隙間62を有しつつ固着されたものである。隙間62は、溶湯Mは通湯可能であるが、異物等の不要物は通湯不能な内径を有している。
【0029】
非通湯層51~54はガラス質である。このセラミックフィルタ30は以下のように製造されている。まず、SiCからなるセラミック粒子60をアルミナ(Al23)、二酸化珪素(SiO2)等の結合剤とともに成形し、成形品とする。この成形品は焼成によってフィルタ本体50となるものである。フィルタ本体50における端壁44に相当する部分は端壁本体55となっており、第1側壁41a~41dに相当する部分は第1側壁本体56となっている。
【0030】
この成形品における端壁本体55の上面及び下面と、第1側壁本体56の上部の内面及び外面とに生釉薬を施釉する。生釉薬は、フィルタ本体50の隙間62を形成する成形品の空隙に含侵する。生釉薬は、アルミナ、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化珪素及びカオリナイト(Al4Si410(OH8))を含む。こうして、施釉品を得る。その施釉品を乾燥し、所定温度で焼成する。これにより、施釉品はフィルタ本体50となり、生釉薬はガラス質の非通湯層51~54となり、セラミックフィルタ30が得られる。
【0031】
こうして得られたセラミックフィルタ30を用いてアルミニウム合金製の鋳造品を鋳造する場合、図2に示すように、まずセラミックフィルタ30の第1側壁41a、41cの上端に複数個の取付穴61を開ける。また、第1側壁41aに取付棒63を載せるとともに、第1側壁41cに取付棒65を載せ、各取付棒63、65とともに各取付穴61にボルト67の軸部を挿通し、ボルト67の軸部にナット69を螺合する。そして、両取付棒63、65を溶解炉10の上面に固定することにより、セラミックフィルタ30を汲み取り室16に設ける。これにより、セラミックフィルタ30は、開口30aが溶湯M上に位置した状態で、溶湯M内に浸漬される。
【0032】
図4及び図5に示すように、セラミックフィルタ30は、溶湯M内に浸漬されることにより、溶湯Mを隙間62によって通湯して内部にろ過溶湯M1を貯める。この際、図6に示すように、溶湯M中に含まれる不要物Uは隙間62を通湯できず、ろ過溶湯M1は溶湯Mから不要物Uがろ過されたものとなる。図4に示すセラミックフィルタ30内のろ過溶湯M1は、開口30aからラドル等によって取り出され、鋳型等に鋳湯される。
【0033】
この際、この鋳造方法では、内部に貯められたろ過溶湯M1が開口30aを通じて大気中の酸素に触れることによりアルミナやスピネル等の結晶Cを含んでいたとしても、セラミックフィルタ30が溶湯M内で水平に延びる端壁44を備え、その端壁44は非通湯層51、52によって溶湯Mを通湯不能である。このため、ろ過溶湯M1中の結晶Cは、セラミックフィルタ30内において、溶湯Mの通湯によって開口30aに向かって上方に舞い上がることがない。なお、非通湯層53、54によって第1側壁41a~41dの上部には溶湯Mが付着しない。
【0034】
特に、このセラミックフィルタ30では、端壁44が溶湯Mを通湯不能であることから、ろ過面積が不足し易いが、そのろ過面積を第1側壁41a~41d及び傾斜壁42a~42dが確保している。また、第1側壁41a~41d及び傾斜壁42a~42dで溶湯Mをろ過し、セラミックフィルタ30内外の熱伝達効率を確保する。これによってセラミックフィルタ30外の溶湯Mとセラミックフィルタ30内のろ過溶湯M1との温度差を小さくし、溶湯Mやろ過溶湯M1が結晶を生じ難くしている。また、結晶Cが生じ難いように、図1に示すバーナ24、26によって溶湯Mやろ過溶湯M1を過剰に加熱する必要がなく、鋳造費用の低廉化を実現できる。
【0035】
また、図5に示すように、第1側壁41a~41dや傾斜壁42a~42dの内側で結晶Cを生じても、その結晶Cが溶湯Mの通湯によって第1側壁41a~41dや傾斜壁42a~42dの内側に固着せず、端壁44まで落ちる。端壁44まで移動した結晶Cは、端壁44が溶湯Mを通湯しないことから舞い上がらない。
【0036】
また、このセラミックフィルタ30は、ろ過面積を確保する第2側壁43a~43dを備え、この第2側壁43a~43dの高さ分だけ結晶Cを端壁44上に貯めることができる。
【0037】
このため、セラミックフィルタ30内のろ過溶湯M1をラドル等によって取り出す際、ラドル等内のろ過溶湯M1は結晶Cを含まないようにできる。このため、そのろ過溶湯M1を鋳型等に鋳湯することができることから、鋳造品が結晶を含み難い
【0038】
したがって、このセラミックフィルタ30又は鋳造方法によれば、溶湯Mがアルミニウム系金属からなる場合において、ろ過した溶湯Mからの鋳造品が加工不良を生じ難い。
【0039】
また、このセラミックフィルタ30は、フィルタ本体50と非通湯層51~54とからなるため、市販のセラミックフィルタをフィルタ本体50として用いることができる。また、このセラミックフィルタ30は、端壁本体55及び第1側壁本体56にガラス質の非通湯層51~54を形成したものであることから、製造も容易である。
【0040】
(実施例2)
実施例2のセラミックフィルタ71は、図7に示すように、端壁44が焼結体57によって形成されている。焼結体57は隙間を有しないように耐熱性のあるセラミック粒子が固着されている。他の構成は実施例1と同様である。
【0041】
このセラミックフィルタ71においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。なお、焼結体57に代え、金属等の一体物を採用することも可能である。
【0042】
参考例
参考例のセラミックフィルタ72は、図8に示すように、円筒状の側壁46と、側壁46の下端から一体に延びる傾斜壁47と、傾斜壁47の下端から一体に水平に延びる端壁48とを有している。開口72aは円形である。
【0043】
つまり、端壁48と傾斜壁47との間に第2側壁を備えておらず、端壁48と傾斜壁47とが直接接続されている。傾斜壁47は湾曲しながら下り傾斜している。端壁48の上面に非通湯層51が形成され、端壁48の下面に非通湯層52が形成され、側壁46の上部内面に非通湯層53が形成され、側壁46の上部外面に非通湯層54が形成されている。他の構成は実施例1と同様である。
【0044】
このセラミックフィルタ72では、第2側壁の作用効果は奏しないものの、他の作用効果については実施例1と同様に奏することができる。なお、傾斜壁47が直接接続することにより端壁が形成されているのであれば、その端壁は、面積は小さいものの、本発明の端壁に相当する。
【0045】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0046】
例えば、実施例1、2及び参考例のセラミックフィルタ30、71、72は、炭化珪素(SiC)からなるセラミック粒子60を採用したが、セラミック粒子はジルコン(ZrSiO4)、アルミナ(Al23)等の溶湯に対して耐熱性のあるセラミック粒子であれば、SiCからなるセラミック粒子には限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明はアルミニウム系金属製品の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
30a、72a…開口
M…溶湯
M1…ろ過溶湯
30、71、72…セラミックフィルタ
44、48…端壁(底壁)
41a~41d…第1側壁(周壁)
42a~42d…傾斜壁部(周壁、傾斜壁)
43a~43d…垂直壁部(周壁、第2側壁)
U…不要物
62…隙間
60…セラミック粒子
50…フィルタ本体
51~54、57…非通湯層(51~54…ガラス質、57…焼結体)
55…端壁本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8