(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電池の残存耐用寿命(RUL)を推定するための電池診断システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20231215BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231215BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231215BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20231215BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20231215BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
G01R31/367
G01R31/392
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021043631
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-10-24
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンス・ゴロチャテギ・イバン
(72)【発明者】
【氏名】パジョビック・ミルティン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・イェ
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103954915(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0165432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/44
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池診断システムであって、
試験電池の電池サイクルおよび前記試験電池のキャパシティを示す特徴の所定のセットから前記試験電池の残存耐用寿命(RUL)を推定するように学習されたニューラルネットワークを格納するように構成されるメモリと、
前記試験電池の前記電池サイクルおよび前記キャパシティの測定のセットを提供するよう、前記試験電池を充電および放電するように構成される充電システムと、
プロセッサとを含み、
前記プロセッサは、測定の前記セットから特徴の前記所定のセットを抽出することを行うように構成され、抽出された前記特徴は、前記試験電池のキャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧を含み、
前記TIEDVDは、最小電圧しきい値と最大電圧しきい値との間の放電電圧差に対応する時間間隔として測定され、少なくとも前記最小電圧しきい値は、前記最小電圧しきい値の異なる値について決定される前記TIEDVDに基づいて、RULの線形回帰のための平均平方二乗誤差(RMSE)値を最小化するように選択され、
前記プロセッサはさらに、前記試験電池の前記RULを推定するよう、抽出された前記特徴を前記ニューラルネットワークに送出することを行うように構成され、
前記電池診断システムはさらに、
前記試験電池の推定された前記RULを出力するように構成される出力インターフェイスを含む、電池診断システム。
【請求項2】
前記キャパシティ、前記内部抵抗、前記TIEDVD、前記キャパシティフェード、前記キャパシタンスピーク、および、前記キャパシタンスピーク電圧は、前記試験電池の電圧波形および放電波形に基づいて決定され、前記電圧波形および前記放電波形は、前記電池サイクルにおいて生成される、請求項1に記載の電池診断システム。
【請求項3】
前記試験電池の電池寿命の異なるステージが、抽出された前記特徴の進展に基づいて示され、前記電池寿命の任意のステージは、少なくとも1つの抽出された特徴によって示される、請求項1に記載の電池診断システム。
【請求項4】
前記プロセッサはさらに、
ロジスティック回帰アルゴリズムに基づいて、前記試験電池についての確率値を決定することと、
前記確率値に基づいて、前記試験電池を短RULクラスまたは長RULクラスに分類することと
を行うように構成される、請求項1に記載の電池診断システム。
【請求項5】
前記短RULクラスは、所定の分類しきい値より小さい前記試験電池の前記確率値に関連付けられ、前記長RULクラスは、前記所定の分類しきい値より大きい前記確率値に関連付けられる、
請求項4に記載の電池診断システム。
【請求項6】
前記プロセッサはさらに、前記電池の前記分類に基づいて、前記短RULまたは前記長RULの各々について対応するエキスパートシステムを選択することを行うように構成される、
請求項5に記載の電池診断システム。
【請求項7】
前記ニューラルネットワークは、多変量線形回帰、フィードフォワードニューラルネッ
トワーク、または多層パーセプトロンのうちの1つを含む、請求項1に記載の電池診断システム。
【請求項8】
試験電池の残存耐用寿命(RUL)を推定するための
、コンピュータにより実行される方法であって、
前記方法は、前記方法を実施する記憶された命令と連結されたプロセッサを使用し、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記方法を実行させ、前記方法は、
前記試験電池の電池サイクルおよびキャパシティの測定のセットを提供することと、
測定の前記セットから特徴の所定のセットを抽出することと
を実行し、特徴の抽出された前記セットは、前記試験電池のキャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、およびキャパシタンスピーク電圧を含み、
前記試験電池の電池寿命の異なるステージは、特徴の抽出された前記セットの各々の進展に基づいて示され、
前記方法はさらに、
ロジスティック回帰アルゴリズムに基づいて、前記試験電池に関連付けられる確率値を決定することと、
前記確率値に基づいて、前記試験電池を短RULクラスまたは長RULクラスに分類することとを含み、前記短RULクラスは、所定の分類しきい値より小さい前記試験電池の前記確率値に関連付けられ、前記長RULクラスは、前記所定の分類しきい値より大きい前記確率値に関連付けられ、
前記方法はさらに、
抽出された前記特徴を、前記試験電池の電池サイクルおよび前記試験電池のキャパシティを示す特徴の所定のセットから前記試験電池の前記RULを推定するように学習されたニューラルネットワークに送出することと、
前記試験電池の推定された前記RULを出力すること
とを含む、方法。
【請求項9】
前記電池サイクルにおいて生成される前記試験電池の電圧波形および放電波形に基づいて、前記キャパシティ、前記内部抵抗、前記TIEDVD、前記キャパシティフェード、前記キャパシタンスピーク、および、前記キャパシタンスピーク電圧を決定することをさらに含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試験電池の電池寿命の異なるステージは、特徴の抽出された前記セットの各々の進展に基づいて示される、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記電池寿命の前記異なるステージにおいて、特徴の抽出された前記セットの各々の進展における差を組み合わせることをさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般に、電池診断システムに関し、より具体的には、電池の残存耐用寿命(RUL: remaining useful life)を推定するための電池診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
現在、充電式電池は、電気自動車、携帯端末およびデバイスなどにおいて広く利用されている。充電式電池は、繰り返し充電および/または放電され得るので、使用の容易さの恩恵を提供する。しかしながら、これらの充電式電池は、時間および/または使用により経年変化し、電気自動車および他のデバイスに対応する用途での使用には古いものとなる。典型的には、これらの充電式電池は、電池のセカンドライフ(second-life)用途のような異なる用途における再利用のためにリサイクルされる。セカンドライフ用途は、家庭用、商業用もしくは工業用エネルギー貯蔵システム(ESS: energy storage system)、または、グリッドスケールのエネルギー貯蔵システムを含み得る。ESSベースの充電式電池技術は、電気自動車の拡大により徐々に増加している。これにより、巨大なセカンドライフ電池市場が作り出されることになる。このようなセカンドライフ電池市場の出現は、充電式電池の再使用を促進している。
【0003】
さらに、電池がセカンドライフ用途における再利用に好適であるか否かを決定することが重要であり得る。電池の再利用可能性は、電池の寿命終了までの残存するサイクルの数に基づいて決定され得る。電池の寿命終了までの残存するサイクルの数は、電池の残存耐用寿命(RUL)に対応する。RULは、以前の電池寿命における電池の使用および性能といった以前の電池寿命の完全な知識に依拠することにより推定され得る。そのような完全な知識は、電池がオンラインおよび組込み用途において展開される場合に得られ得る。しかしながら、RUL推定のために電池の以前の使用および性能に依拠することは、実行可能かつ実用的ではない場合がある。さらに、RULは、電池についての推定モデルに基づいて推定され得る。推定モデルは、異なる種類の電池の試験サイクルの測定に基づいて学習され得る。しかしながら、異なる電池の試験サイクルの測定に基づく学習は、正確な推定されたRUL結果を提供することができない場合がある。いくつかの場合では、RUL推定のための測定を得るために、多数の試験サイクルが電池に対して実行され得る。しかしながら、電池の寿命は、このような試験目的において、浪費され得る。
【0004】
したがって、電池の以前の使用および性能情報の必要性を排除しつつ、使用済電池をセカンドライフ用途の目的で再利用するために使用済電池のRULを推定し得る電池診断システムについて必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
概要
いくつかの実施形態は、電池のRULが、電池の以前の使用および性能に関する情報を必要とすることなく、家庭用または商業用などのエネルギー貯蔵システムといった、セカンドライフ市場または用途の目的で電池を再利用するための正確かつ実行可能な態様で推定され得るという認識に基づいている。
【0006】
その目的のために、いくつかの実施形態の目的は、電池のRULを推定するための電池診断システムおよび方法を提供することである。付加的または代替的には、いくつかの実施形態の別の目的は、電池の以前の使用および性能に依拠することなく、電池の限定された数の試験充電および放電サイクルからRUL推定を提供することである。付加的または代替的には、いくつかの実施形態の別の目的は、たとえばリチウムイオン電池またはリン酸鉄リチウム(LFP: Lithium Iron Phosphate)電池といった異なる種類の電池のRULを推定するためのデータドリブンな方法を提供することである。
【0007】
いくつかの実施形態の目的は、同じ種類のある数の電池の同じ条件下で、たとえば同じ化学的性質、製造者、およびモデルを共有する条件下で、取得されるキャパシティ、電圧、および電流測定の学習データセットを使用して、上記データドリブンな方法を学習させることである。いくつかの実施形態の目的は、異なる使用パターンに晒される電池のある期間、たとえば、数年にわたる期間の間に取得される測定を使用して、上記データドリブンな方法を学習させることである。より具体的には、いくつかの実施形態の目的は、異なる種類の電池に対して異なる推定モデルを設計する必要なしに、RULを推定することである。
【0008】
いくつかの実施形態は、電池についての充電/放電サイクル(すなわち、試験サイクル)の数を増加させることなく、電池のデータドリブンベースのRUL推定が提供され得るという認識に基づいている。その目的のために、いくつかの実施形態の目的は、電池の電池サイクルおよび電池のキャパシティを示す特徴の所定のセットからRULを推定する学習済ニューラルネットワークを提供することである。付加的または代替的には、いくつかの実施形態の別の目的は、異なる種類の電池についてデータドリブンなRUL推定のための最小数の特徴を提供することである。いくつかの実施形態は、抽出される特徴の数および/または観察される試験サイクルの数を増加させることなく、RUL推定の精度を増加するという認識に基づいている。その目的のために、最適な数の試験サイクルが、ロジスティック回帰アルゴリズムの実行に基づいて決定される。最適な数の試験サイクルは、試験目的のための電池寿命の浪費を防止する。抽出された(すなわち、選択された)特徴は、電池寿命の異なるステージを示す。具体的には、いくつかの実施形態は、電池が寿命の終わりに近づくにつれて異なるように進展した特徴を抽出および使用する。進展した特徴の各々は、電池の残存耐用寿命の異なるステージまたは瞬間に関する情報を提供する。特徴の各々の進展における差が組み合わされる。特徴の進展の差の組み合わせは、試験電池の電池寿命の異なるステージを表す。
【0009】
その目的のために、抽出された特徴は、試験サイクルにおいて生成される電池の波形から選択される。いくつかの実施形態では、これらの選択された特徴は、RULを推定するために健全性指標(HI: health indication)として使用される。特徴は、キャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD: time interval of equal discharging voltage difference)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧を含む。これらの特徴、すなわち、キャパシティ、内部抵抗、TIEDVD、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧は、電池の各試験サイクルの対応する波形に基づいて導出される。その目的のために、いくつかの実施形態は、キャパシティ、内部抵抗、TIEDVD、キャパシタンスピーク、キャパシタンスピーク電圧の特徴、および、キャパシティフェードを得るために、電池に対して試験サイクルを行う。
【0010】
さらに、選択された特徴は、マシンラーニングアルゴリズムに基づいて処理される。いくつかの実施形態は、特徴(すなわち、選択された特徴)の数が制限されるので、特徴を処理するためにシャローマシンラーニング(shallow machine learning)アルゴリズムが使用されるという認識に基づいている。その目的のために、いくつかの実施形態の目的は、RULの正確な推定のためにマルチプルエキスパートシステムを使用することである。マルチプルエキスパートシステムは、1)電池を短RUL電池クラスまたは長RUL電池クラスに分類するステージ、および、2)当該分類に基づいて、電池のRULを推定するステージという2つの処理ステージによって形成される。いくつかの実施形態では、電池は、所定の分類しきい値に基づいて、クラスのうちの1つに分類される。分類しきい値は、ロジスティック回帰分類方法に基づいて決定される。
【0011】
実際的に、このアプローチによって、以前の寿命における電池の以前の使用および性能についての完全な知識なしに、正確な態様で電池のRULの推定が可能になる。したがって、電池の電池寿命の未知の瞬間において、当該電池について高い精度で推定されたRULが得られる。さらに、電池は、試験目的において電池の耐用寿命を浪費することなく、最適な数の試験サイクルに基づいて試験サイクルに晒される。試験された電池は、ロジスティック回帰分類を用いて、短RULまたは長RULに分類される。そのような分類によって、いくつかの実施形態が、10%を下回る相対予測誤差で電池のRULを予測し得ることが、実験的検証により明らかになっている。
【0012】
したがって、一実施形態は、以下の電池診断システムを開示する。すなわち、当該電池診断システムは、試験電池の電池サイクルおよび試験電池のキャパシティを示す特徴の所定のセットから試験電池の残存耐用寿命(RUL)を推定するように学習されたニューラルネットワークを格納するように構成されるメモリと、試験電池の電池サイクルおよびキャパシティの測定のセットを提供するよう、試験電池を充電および放電するように構成される充電システムと、プロセッサとを含む。
【0013】
プロセッサは、測定のセットから特徴の所定のセットを抽出し、抽出された特徴のセットをニューラルネットワークに送出することを行うように構成され、抽出された特徴は、試験電池のキャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧を含み、電池診断システムはさらに、試験電池の推定されたRULを出力するように構成される出力インターフェイスを含む。
【0014】
別の実施形態は、試験電池の残存耐用寿命(RUL)を推定するための方法を開示する。当該方法は、電池サイクルおよび試験電池のキャパシティの測定のセットを提供することと、測定のセットから特徴の所定のセットを抽出し、抽出された特徴をニューラルネットワークに送出することとを含み、特徴の抽出されたセットは、試験電池のキャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧を含み、当該方法はさらに、試験電池の推定されたRULを出力することを含む。
【0015】
さらなる特徴および利点は、添付の図面に関連して解釈されると、以下の詳細な説明からより容易に明らかになるであろう。
【0016】
本開示は、本開示の例示的な実施形態の非限定的な例により、言及される複数の図面を参照して、以下の詳細な説明においてさらに説明される。図面のいくつかの図の全体を通じて、同様の参照番号は同様の部分を表す。示される図面は、必ずしも尺度決めされておらず、その代わりに、ここで開示される実施形態の原理を例示する際に、概して強調が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態に従った電池診断システムの原理ブロック図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態に従った、試験電池の残存耐用寿命を推定するための電池診断システムの処理パイプラインを示す図である。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態に従った、各特徴が提供する情報の量の測定として、電池の寿命期間に沿った各特徴の変動性のグラフ表示を示す図である。
【
図3B】本開示のいくつかの実施形態に従った、特徴の各々の各波形の進展を示すグラフ表示を示す図である。
【
図4A】本開示のいくつかの実施形態に従った、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)特徴についての放電曲線を示すグラフ表示を示す図である。
【
図4B】本開示のいくつかの実施形態に従った、TIEDVD特徴を決定するための電圧しきい値を選択するためのグラフ表示を示す図である。
【
図4C】本開示の一実施形態に従ったTIEDVDしきい値を選択するための方法のフローチャートを示す図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態に従った、電池の経年変化に伴う、放電波形に対する電圧のキャパシタンスピークの出現、および、放電波形の変動を示すグラフ表示を示す図である。
【
図6】本開示のいくつかの実施形態に従った、電池の経年変化に伴う、電圧に対するチャージデリバティブ(charge derivative)、および、電圧の変動を示すグラフ表示を示す図である。
【
図7】本開示のいくつかの実施形態に従った、電池を分類するためのマルチプルエキスパートシステムのブロック図を示す図である。
【
図8A】本開示の1つの例示的な実施形態に従った、電池の分類のための所定のしきい値分類値のグラフ表示を示す図である。
【
図8B】本開示のいくつかの実施形態に従った、RUL推定のために使用される特徴のテーブル表示を示す図であって、Δが実行されるべき試験サイクルの数であることを示す図である。
【
図9】本開示の1つの例示的な実施形態に従った、電池の試験サイクルの各数に対する、ロジスティック回帰アルゴリズムについての成功率に関する結果を示すグラフ表示を示す図である。
【
図10】1つの例示的な実施形態に従った、ロジスティック回帰アルゴリズムについての混同行列を示す図である。
【
図11】本開示のいくつかの実施形態に従った、多変量線形回帰および多層パーセプトロンについての誤差結果のテーブル表示を示す図である。
【
図12】本開示のいくつかの実施形態に従った、平均平方二乗誤差(RMSE: Root Mean Square Error)メトリックおよび平均相対誤差(MRE: Mean Relative Error)メトリックを用いたRUL推定のための多層パーセプトロンについての試験結果を示すグラフ表示を示す図である。
【
図13】本開示のいくつかの実施形態に従った、データセットにおける、特定の電池についてのすべての試験サイクルについての例示的なRUL推定を示すグラフ表示を示す図である。
【
図14】本開示の1つの例示的な実施形態に従った、セカンドライフ用途の目的で電池を再利用するための例示的なシナリオを示す図である。
【
図15】本開示のいくつかの実施形態に従った、試験電池のRULを推定するための方法のフロー図を示す図である。
【
図16】本開示のいくつかの実施形態に従った、電池のRULを推定するための試験電池診断システムのブロック図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記で識別された図面は、ここで開示される実施形態を記載しているが、当該議論において言及されるように、他の実施形態も企図される。本開示は、限定ではなく例示として、例示的な実施形態を提示する。ここで開示される実施形態の原理の範囲および精神に該当する多くの他の修正例および実施形態が、当業者によって考案され得る。
【0019】
詳細な説明
以下の説明では、説明目的のために、本開示の完全な理解を提供するよう、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本開示は、これらの具体的な詳細がなくても実施され得ることが当業者には明白であろう。他の場合では、装置および方法は、本開示を不明瞭にすることを避けるためにブロック図の形式のみで示される。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、「たとえば」、「例として」、および「といった」という用語、ならびに、「備える」、「有する」、「含む」、およびそれらの他の動詞形は、1つ以上の構成要素または他の項目のリストに関連して使用される場合、各々オープンエンドとして解釈されるべきであり、これは、当該リストが、他の付加的な構成要素または項目を排除すると考えられるべきではないことを意味する。「に基づいて」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。さらに、本明細書において使用される語法および用語は、説明目的のためであり、限定的であると見なされるべきではないことが理解されるべきである。この記載において利用されるいずれの見出しも、単に簡便さのためであり、法的効果または限定効果を有さない。
【0021】
電気自動車において既に使用されている充電式電池は、グリッドエネルギー貯蔵システムなどといった他の用途(すなわち、セカンドライフ用途)において再利用され得る。使用済充電式電池は、電気エネルギーの貯蔵能力を有する。充電式電池のそのような再利用性により、資源の浪費が防止され、電気自動車および他のデバイスの製造のコストが低減される。このような使用済充電式電池の残存耐用寿命(RUL)の正確な推定は、充電式電池の以前の使用および性能に関する情報を必要としなければ、再利用性にとって重要である。いくつかの実施形態は、セカンドライフ用途のための試験電池(すなわち、使用済充電式電池)のRULを推定するための方法を開示する。
【0022】
概略
提案される方法および電池診断システムは、同じ条件下で、同じ化学的性質および/または製造者を共有するある数の電池のキャパシティおよび充放電電圧/電流のしばしば取得される測定の学習データセットに基づく。たとえば、当該学習データセットは、寿命の終了まで数回の試験サイクルに晒される124個の電池またはセルを含み得る。提案される方法は、学習データセットにおける電圧および電荷測定を含む測定のセットに対応する波形を処理することによって特徴のセットを抽出することを含む。さらに、測定のセットは、電池を短RULクラスおよび長RULクラスに分類し、当該電池についてのRULサイクルを予測するよう、マシンラーニングアルゴリズムを学習させるために使用される。動作/オンラインステージでは、ある数の充電/放電試験サイクルにわたる試験電池/電流測定のキャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧を含む特徴の抽出されたセットと、学習データセットとに基づいて、健全性および以前の使用パターンの未知の状態の試験電池のRULが予測される。
【0023】
1つの例示的な実施形態では、学習データセットは、RUL推定のために使用される124個の電池に対応するデータセットの集合を含み得る。124個の電池は、寿命の終了まで数回の試験サイクルに晒される市販のLFPまたはグラファイトセルを含み得る。そのようなデータセットの集合では、電圧および放電に対応する波形が、各種類の電池またはセル(以下、セルは電池と交換可能に称される)の各試験サイクルについて測定される。いくつかの場合では、電池は、1つのセルから構成され得る。そのような場合、当該セルは、学習データセットを使用して試験サイクルを通じて評価される。いくつかの他の実施形態では、電池は、セルの集合を含み得、これらのセルは、組み合わされ、学習データセットを使用して試験サイクルに晒される。さらに、学習データセットは、各サイクルについて1回、観察されたキャパシティと、電池(たとえば、電池114)の内部抵抗の推定とを提供する。さらに、学習データセットにおける各サイクルは、セカンドライフ用途のための電池のRUL推定のために、各電池の代わりに使用される。
【0024】
図1は、本開示のいくつかの実施形態に従った電池診断システム102の原理ブロック
図100を示す。電池診断システム102は、メモリ104と、プロセッサ108と、充電システム110と、出力インターフェイス112とを含む。電池診断システム102は、電池114の残存耐用寿命(RUL)を予測するための電池114といった試験電池を診断する。電池114の例は、リチウムイオン電池、リン酸鉄リチウム(LFP)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NCMまたはNCM)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NiNiCoAlO
2)、チタン酸リチウム電池、または、充電式電池のための任意の他のリチウムベースの変形例を含み得る。いくつかの例示的な実施形態では、電池114は、セカンドライフ用途の目的で再利用するためにセカンドライフ市場に送られた使用済電池に対応し得る。
【0025】
電池114は、入力インターフェイス(図示せず)を介して電池診断システム102に接続される。メモリ104は、電池114のRULを推定するように学習されたニューラルネットワーク106を格納するように構成される。さらに、メモリ104は、電池114の電池サイクルおよび電池114のキャパシティを示す特徴の所定のセットを格納するように構成され得る。特徴の所定のセットは、電流、電圧またはキャパシティなどを含み得る。本明細書における電池サイクルは、充電サイクルおよび放電サイクルのうちの1つまたはその組み合わせの間に、電池114について測定される電圧および電流のうちの1つまたはその組み合わせの値によって形成される。その目的のために、電池サイクルは、電圧、電流、または、それらの組み合わせの測定によって表され得る充電サイクル、放電サイクル、または、それらの組み合わせに対応する。たとえば、一実施形態は、放電サイクルの電圧測定を使用する。同様に、電池114のキャパシティを示す測定は、キャパシティの測定であり得るか、または、キャパシティが容易に導出され得る任意の他の測定であり得る。たとえば、電池114が以前の充電サイクルにおいて完全に充電されたと仮定すると、次の放電サイクルの間に測定される電流は、電池114のキャパシティを計算するために使用される。同様に、電池114が以前の放電サイクルにおいて完全に放電され、かつ、現在の充電サイクルにおいて完全に充電されると仮定すると、そのキャパシティは、電池の種類に依存する同じ比例定数で、充電サイクル中における時間に亘る充電電流の積分に比例する。付加的または代替的には、メモリ104はさらに、電池114の所定の分類しきい値および所定の最適な数の試験サイクルを格納するように構成される。所定の分類しきい値は、電池114を分類するために使用され、所定の最適な数の試験サイクルは、電池114の電池サイクルを実行するためのものである。充電システム110は、電池114の電池サイクルおよびキャパシティの測定のセットを提供するよう、電池114を充電および放電するように構成される。
【0026】
プロセッサ108は、測定のセットから特徴の所定のセットを抽出するように構成される。プロセッサ108はさらに、特徴の抽出されたセットをメモリ104内のニューラルネットワークに送出するように構成される。特徴の抽出されたセットは、電池114のキャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧を含む。ニューラルネットワークは、出力インターフェイス112において出力される電池114のRULを推定する。いくつかの例示的な実施形態では、出力インターフェイス112は、電池114の推定されたRULを表示するディスプレイデバイスを含み得る。推定されたRULは、ライフサイクルの数またはカウント(たとえば、100RULサイクル、300RULサイクル)、RULレベル(たとえば、高RULレベルまたは低RULレベル)、RULのパーセンテージ値(たとえば、30%、70%)、または、RULの色指示などとして表示され得る。いくつかの他の実施形態では、推定されたRULは、出力インターフェイス112を介してオーディオ出力として出力され得る。
【0027】
実際的には、いくつかの実施形態は、健全性の状態およびRULの以前の使用パターンが未知である場合、RULを推定する。開示される方法の用途は、特徴の抽出されたセットに基づいて、セカンドライフ電池市場から購入された電池114のような電池セルのRULを予測することである。当該予測は、ある数の電池の電池サイクルの測定およびキャパシティ/電圧/電流の測定を提供する学習データセットによって補助される。これらの電池は、同じ製造者および化学的性質を共有するが、異なる使用パターンに晒される。
【0028】
より具体的には、実施形態は、電池114の以前の使用および性能情報を必要とすることなく、電池114のRULを推定するデータドリブンな方法を提供する。たとえば、いくつかの実施形態は、電池のキャパシティ測定を得るために、電池が完全に充電および/または放電されるようにする同じ条件下で測定をしばしば行いつつ、異なる態様で電池を学習することを使用する。そのようなアプローチによって、動作ステージまたはオンラインステージにおいて、未知の以前の使用パターンの(同じ化学的性質、製造者およびモデルの)試験電池114のキャパシティおよび他の測定を測定することと、将来の充放電サイクルにわたって試験電池のキャパシティの劣化を予測することとのために、同じ条件を使用することが可能になる。なお、試験電池114のための測定条件は、制御され得るが、通常、試験電池の使用パターンは未知である。さらに、いくつかの実施形態は、RULの推定のために、キャパシティが電池診断システム102についての特徴として利用可能であるという認識に基づいている。たとえば、電池114がオンラインアプリケーションにおいて使用されない場合、キャパシティを得るために試験サイクルが実行される。
【0029】
図2は、本開示のいくつかの実施形態に従った、たとえば電池114といった試験電池のRULを推定するための電池診断システム102の処理パイプライン200を示す。本明細書における電池(たとえば電池114)のRULは、電池114が持続し得るセカンドライフサイクルの数である。RULは、電池114の以前の寿命における以前の使用パターンおよび健全性の状態なしに推定される。その目的のために、同じ種類のある数の電池(たとえば、同じ化学的性質および製造者を共有)の同じ条件下で取得されるキャパシティ、電圧、および、電流測定の学習データセットが、電池114の試験サイクルを実行するための入力202として提供される。学習データセットにおける各試験サイクルは、電池114の以前の使用パターンおよび健全性の状態なしに、電池114の正確なRUL推定のために、各セルの代わりに考慮される。処理パイプライン200は、電池114の推定されたRULを提供するために電池診断システム102によって実行される動作204~210を含む。
【0030】
動作204において、充電システム110は、電池114について充放電サイクルのシーケンスを実行する。充放電サイクルのシーケンスは、入力202(すなわち、学習データセット)を使用して試験サイクルとして実行される。たとえば、δで示されるある数の試験サイクルが、電池114に対して実行される。試験サイクルは、電池114の電圧および放電特徴に対応する波形を提供する。
【0031】
動作206において、充電システム110は、測定のセットを含むデータを取得する。δ回の試験サイクルについて、測定のセット(たとえば、δ個の測定)が得られる。たとえば、試験サイクルδ=10の場合、これら10個の試験サイクルの電圧および放電波形からの特徴が抽出される。これらの特徴は、電池114のキャパシティ、内部抵抗(IR)、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード(ΔC)、キャパシタンスピーク(Cpk)、および、キャパシタンスピーク電圧(Vpk)を含む。したがって、測定204のセットは、ΔCを除く特徴の各々からの10個の測定を含む。キャパシティフェード特徴についての測定は、10回目の試験サイクルと1回目の試験サイクルとの間のキャパシティを比較することによって得られる。さらに、当該比較に基づいて、キャパシティにおける差が決定される。したがって、キャパシティフェード特徴について、(δ-1)個の測定(すなわち、9個の測定)が得られる。たとえば、10回の試験サイクルについての電池114の測定されるキャパシティは、C=[C0,C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8,C9]である。次いで、10回の試験サイクルについてのΔCの測定は、=[C1-C0,C2-C0,C3-C0,C4-C0,C5-C0,C6-C0,C7-C0,C8-C0,C9-C0]である。
【0032】
充電システム110は、測定のセットをプロセッサ108に提供する。
【0033】
動作208において、プロセッサ108は、電池114のキャパシティ、内部抵抗、TIEDVD、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンスピーク電圧の特徴といった特徴の所定のセットを抽出するよう特徴抽出動作を実行する。プロセッサ108は、特徴の抽出されたセットをニューラルネットワーク106に送出する。
【0034】
動作210において、ニューラルネットワーク106は、電池114についてのRULの推定のために電池114を分類する。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク106は、RUL分類器を含む。RUL分類器は、たとえば、電池の残存サイクルの数に依存して、電池114を短RULクラスまたは長RULクラスに分類するロジスティック回帰ベースの分類器に対応する。たとえば、いくつかの実現例では、短RULクラスは、150より少ない残存サイクルを有する電池を定義し、長RULクラスは、150より多い残存サイクルを有する電池を定義する。150サイクルという数は、RUL推定の性能を改善するよう、回帰分析によって決定される。ロジスティック回帰ベースの分類器は、分類が特徴の抽出されたセットをオーバーフィッティングすることを防止する正則化ベースのアルゴリズムに基づく。さらに、RUL分類器は、特徴の抽出されたセットに基づいて、電池114についての確率値を計算する。当該確率値は、所定の分類しきい値と比較され、電池114は、比較に基づいて分類される。例示的な例のシナリオでは、電池114についての確率値は、範囲[0,1]内で計算される。計算された確率値は、電池を分類するために、0.5といった所定の分類しきい値と比較される。たとえば、計算された確率値は0.3であり、電池114は、確率値すなわち0.3が、所定の分類しきい値である0.5より小さいので、短RULのケースに属する。電池114の確率値が所定の分類しきい値を超える場合、電池114は長RULクラスに属する。たとえば、計算された確率値が0.7である場合、0.7は所定の分類しきい値である0.5より大きいので、電池114は長RULクラスに属する。ニューラルネットワーク106は、当該分類に基づいて電池114のRULを推定する。推定されたRULは、プロセッサ108に提供される。プロセッサ108はさらに、推定されたRULを出力インターフェイス112を介して出力212として提供する。
【0035】
特徴の選択
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態に従った、各特徴が提供する情報の量の測定として、電池114の寿命期間に沿った各特徴の変動性のグラフ表示300を示す。グラフ表示300は、キャパシティ(C)波形302、内部抵抗(IR)波形304、TIEDVD波形306、キャパシティフェード(ΔC)波形308、キャパシタンスピーク(C
pk)波形310、および、キャパシタンスピーク電圧(V
pk)波形312を含む。電池114のキャパシティはアンペア時(Ah: Ampere-hour)で測定され、IRはΩで測定され、TIEDVDは分(min)で測定され、ΔCはAhで測定され、C
pkはAh V
-1で測定され、V
pkは電圧Vで測定される。波形302~312の各々は、電池114のRULの異なる瞬間/ステージにおける特徴の各々の測定といった情報を提供する。たとえば、電池114の寿命の終わり(EoL: end-of-life)において、キャパシティ波形302、IR波形304、TIEDVD波形306、ΔC波形308およびC
pk波形310は、C、IR、TIEDVD、ΔCおよびC
pkの対応する特徴がより多くの情報を提供することを示している。電池114が経年変化するにつれて、特徴C、IR、TIEDVD、ΔCおよびC
pkが有意味になる。
【0036】
図3Aに示されるように、キャパシティおよび内部抵抗の特徴に関する情報は、電池114の寿命が若い(すなわち、使用されていない)場合、有用ではない場合がある。ΔC波形308が提供するキャパシティフェード特徴に関する情報について、寿命開始時において情報はより少なく、中間寿命において情報はなく、EoLにおいて情報はより多い。さらに、TIEDVD波形306およびV
pkのV
pk波形312は、電池のEoLにおいて異なる特性を示す。TIEDVD特徴は、電池114の全寿命期間に沿って何らかの情報を提供するが、EoLではやや高い。V
pk波形312は、V
pkが電池114の寿命開始時においてより多くの情報を提供し、EoLではほとんど情報を提供しないことを示す。C
pk波形310およびV
pk波形312は、
図3Aに示されるように、互いに相補的である。波形300の各々が異なる特性を示すと、特徴波形302~312は、電池114のRULとして組み合わされた情報を提供する波形314に組み合わされる。さらに、波形314への特徴の情報の追加は、RULの各ステージにおいて、特徴波形302~312のうちの1つから十分な情報が存在することを示す。波形314では、少なくとも特徴302~312のうちの1つ以上から提供される、電池114の全寿命期間に沿ってRULの決定について情報がどのように存在するかが理解され得る。
【0037】
異なるステージにおいて進展する特徴(たとえば、C、IR、TIEDVD、ΔC、C
pkおよびV
pk)の各々が、
図3Bを参照してさらに記載される。
【0038】
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態に従った、電池114の1つのセルについてのRULに各対応する特徴の進展316を示すグラフ表示を示す。すなわち、キャパシティ特徴318、IR特徴320、TIEDVD322、キャパシティフェード(ΔC)特徴324、キャパシタンスピーク(C
pk)特徴326およびキャパシタンスピーク電圧(V
pk)特徴328の進展316を示すグラフ表示を示す。キャパシティ特徴318は、電池114の1つの完全な放電サイクルにおいて抽出される電荷の合計量を提供する。IR特徴320(単位はオーム(Ω))は、各電池サイクルについて測定される。1サイクル当たり1つの測定が学習データセットに含まれ、これは、充電状態(SoC: State of Charge)の80%での10個の電流パルスを平均化することによって得られる。
図3Bに示されるように、IR特徴320は、電池114が自身のEoLに近い場合に急激に増加する。TIEDVD特徴322は、一定の電流および既知の電流を放電している間における2つの電圧しきい値(V
max,V
min)の間の時間経過である。TIEDVD322は、電池寿命および何らかのノイズと共に線形に進展する。時間経過は、秒または分などを単位として測定され得る。
図3Bに示されるように、キャパシティ特徴318、IR特徴320、および、ΔC特徴324に対する最も有意な変化は、電池114の最後の100~200サイクルにおいて生じる。ΔC特徴324は、電池114の2つの連続するサイクル同士間のキャパシティにおける変動に関する。ΔC特徴324は、(製造プロセスによる)セルの初期キャパシティの変動を決定し、電池114が経年変化したと結論づけるのを防止するために使用される。さらに、電池114のいくつかの連続するサイクル後に、キャパシティにおいて急速な減衰が存在する。この急速な減衰は、経年変化した電池、新しい電池、または、より少ない数のサイクルを有する電池を決定するのに有用である。
【0039】
さらに、C
pk特徴326およびV
pk特徴328の両方は、キャパシティ特徴318、IR特徴320、TIEDVD322、および、ΔC特徴324の各々とは異なる傾向を示す。
図3Bに示されるように、C
pk特徴326およびV
pk特徴328における変化は、電池114の中間寿命において見られる。C
pk特徴326は、電池寿命に沿って進展し、より最初のほうの数のサイクル、たとえば、最初の数百サイクルにおいて増加し、残りのサイクルにおいて減少する。V
pk特徴328はさらに、電池114の寿命と共に変動する。寿命の最初の80サイクルでは、V
pk特徴328はあまり有意ではない。しかしながら、V
pk特徴328は、電池114がEoLに近づくと有意味になる。
【0040】
いくつかの実施形態は、電池114のある特徴、すなわち、TIEDVD特徴322が、電池114が新しい場合に最大から最小まで電圧を放電するための時間間隔を示すという認識に基づいている。TIEDVDパラメータは、ある放電電圧差に対応する時間間隔として定義される。TIEDVDパラメータに基づく示される劣化は、電池キャパシティならびにRULの劣化と同様であり、これは
図4Aおよび
図4Bを参照してさらに記載される。
【0041】
図4Aは、本開示のいくつかの実施形態に従った、特徴TIEDVD322の抽出についての放電曲線402を示すグラフ表示400を示す。放電曲線402は、横軸における時間(サイクル/T)と、縦軸における電圧(電圧/V)とに対応する。たとえば、放電曲線402では、その全範囲において電圧(電圧/V)が放電され、最大電圧(V
max)レベル404から最小電圧(V
min)レベル406までの時間が時間間隔t
i(HI)で測定される。時間間隔t
i(HI)は、瞬間t
Vmaxと瞬間t
Vminとの差であり、瞬間t
Vmaxは、電圧(電圧/V)がV
maxレベル404に達する瞬間に対応し得、t
Vminは、電圧(電圧/V)がV
minレベル406に達する瞬間に対応し得る。このt
i(HI)特徴は、この特定のサイクルについてのTIEDVD特徴322である。電池114が新しい場合を考えると、時間間隔(サイクル/T)は、電池114が経年変化するにつれて、線形に減少する。いくつかの場合では、V
maxレベル404およびV
minレベル406は、電池114の特定の化学的性質に依存し得る。いくつかの例示的な実施形態では、V
maxレベル404は3.3Vに対応し得、V
minレベル406は電池114の3.15Vに対応し得る。
【0042】
図4Bは、いくつかの実施形態に従った、TIEDVDを決定するために最小電圧を選択する概略図を示す。グラフ表示408は、最小電圧(V
min)レベル406に依存するTIEDVD特徴322に基づくRULの線形回帰412についての平均平方二乗誤差(RMSE)値の分析を示す。最小電圧(V
min)レベル406についての値は、線形回帰412についての平均平方二乗誤差(RMSE)値を最小化することによって選択される。
【0043】
図4Cは、一実施形態に従ったTIEDVDしきい値を選択するための方法のフローチャートを示す。この例示的な実施形態では、当該方法は、
図4Bに関連して示されるv_minパラメータの値を選択する。v_minパラメータの選択された値は、RUL推定の精度を向上させる。当該方法は、セル測定およびグランドトゥルース(ground truth)RUL値の対を含む学習データのセットに基づいてあらかじめ実行され得る。考慮されるv_minの各値について、
図4Aに関連して記載されるように、方法は、410において、電圧放電曲線測定をTIEDVD特徴に変換する。次に、考慮されるv_minの各値について、方法は、420において、TIEDVD特徴からRULを推定する線形回帰を実行し、その線形回帰について関連する平均平方二乗誤差(RMSE)を計算する。方法は、430において、最も低いRMSEにつながるv_minの値を選択する。
【0044】
同様に、電池114が経年変化するにつれて、C
pk特徴326を生成する放電波形の低電圧部分に小さな乱れが現れる。これは、
図5および
図6を参照してさらに記載される。
【0045】
図5は、本開示のいくつかの実施形態に従った、電池114の経年変化に伴う、放電(Q
discharge)波形に対する電圧のキャパシタンスピークの出現、および、放電波形502の変動を示すグラフ表示500である。電池114が経年変化すると、放電波形の低電圧部分に小さな乱れが現れる。当該乱れは、電池114の寿命におけるある瞬間まで増加し、電池114がEoLに近づくとより滑らかになる。さらに、乱れの増加により、電池等価キャパシタンス(C
pk)におけるピークが生成され、これは
図6に示される。
【0046】
図6は、本開示のいくつかの実施形態に従った、電池114の経年変化に伴う、電圧に対するチャージデリバティブ、および、電圧の変動を示すグラフ表示600を示す。いくつかの実施形態では、電圧に対するチャージデリバティブおよび電圧の変動の決定は、充電システム110によって、電池114の試験サイクル中に実行される。充電システム110は、インクリメンタルキャパシティ(IC: incremental capacity)分析に基づいて、電圧の変動を決定し得る。IC分析では、電池114の特性(たとえば、酸化電位または還元電位などといった電池114の化学的性質に関連する特性)が追跡される。IC分析の間、乱れは、
図6に示されるように、低電圧領域においてピーク602のような小さなピークとして現れる。ピークの値は、そのサイクルについてのキャパシタンスピーク特徴326であり、当該ピークが位置する電圧は、そのサイクルについてのキャパシタンスピーク電圧特徴328である。
【0047】
RUL分類
図7は、本開示のいくつかの実施形態に従った、電池114を分類するためのマルチプルエキスパートシステム700のブロック図を示す。メモリ104に格納されるニューラルネットワーク106は、RUL分類器702、入力ユニット704、および、出力ユニット706を含むマルチプルエキスパートシステム700を含み得る。さらに、マルチプルエキスパートシステム700は、短RULエキスパート708および長RULエキスパート710を含む。RUL分類器702は、電池114を分類するために、シャローマシンラーニングアルゴリズムといった実行可能命令のセットを含み得る。いくつかの実施形態は、電池を分類するために、所定の分類しきい値に基づいてRUL分類器702の実行可能命令のセットを実行するという認識に基づいている。
【0048】
電池114のキャパシティ特徴318、IR特徴320、TIEDVD322、ΔC特徴324、Cpk特徴326およびVpk特徴328(特徴318~328とも称される)である選択された特徴は、RUL分類器702への入力(xi)として提供される。RUL分類器702は、電池114を短RULクラスまたは長RULクラスに分類するためのロジスティック回帰アルゴリズムに対応する。ロジスティック回帰ベースのRUL分類器702は、電池114の分類が、特徴の選択されたセット(すなわち、特徴318~328)をオーバーフィッティングすることを防止するように正則化される。したがって、RUL分類器702は、正則化されたロジスティック回帰に対応する。正則化されたロジスティック回帰は、以下のように表され得る。
【0049】
【0050】
式中、
【0051】
【0052】
は、電池114が短RULクラスおよび長RULクラスに属する確率値を提供する予測出力であり、
xは、n次元特徴配列であり、
wは、n次元重み配列である。
【0053】
正則化されたロジスティック回帰は、重み配列wにおける重みに対する正則化を提供する。正則化は、ロジスティック回帰アルゴリズムが特徴(たとえば、特徴318~326)をオーバーフィッティングすることを防止する。
【0054】
出力クラス(すなわち、短RULクラスまたは長RULクラスのうちの1つ)は、分類器の出力に基づいて得られる。出力クラスは、出力ユニット706に提供される。ロジスティック回帰アルゴリズムは、(2)におけるコスト関数を最小化することによってwをフィッティングする。
【0055】
【0056】
式(2)において、
【0057】
【0058】
は、従来のロジスティック回帰のための伝統的なコスト関数を表し、
【0059】
【0060】
は、リッジ正則化(Ridge regularization)を表す。リッジ正則化により、RUL分類器702がオーバーフィッティングしにくくすることが可能になる。より具体的には、リッジ正則化は、大きな値を有する重みにペナルティを設定することによって、大きな重みを防止する。ペナルティは、大きな重みの二乗値に設定されてもよい。これにより、大きな重みがより小さい値に低減される。パラメータ「m」は、学習データセットにおける例の数を表し、λは正則化パラメータを表し、E(xi,w,yi)は、(3)によって与えられる従来のロジスティック回帰のために使用される従来のコスト関数を表す誤差関数である。
【0061】
【0062】
動作において、RUL分類器702は、入力xiに基づいて電池114を分類する。電池114は、ロジスティック回帰アルゴリズムに基づいて、短RULクラスまたは長RULクラスとして分類される。RUL分類器702はさらに、分類された入力xiを入力ユニット704に提供する。入力ユニット704は、分類された入力xiを、当該分類に基づいて、短RULエキスパート708または長RULエキスパート710に提供する。
【0063】
いくつかの例示的な実施形態では、RUL分類器702は、
【0064】
【0065】
を所定の分類しきい値と比較することによって電池114を分類する。分類しきい値は、試験サイクルの最適な数に基づいて決定される。試験サイクルの最適な数は、ロジスティック回帰アルゴリズムによってあらかじめ決定される。
【0066】
試験サイクルの最適な数の決定
典型的には、試験サイクルの数(δで示される)がより多ければ、式(4)によって示される電池114のRULに関するより多くの情報の収集が可能になる。
【0067】
【0068】
たとえば10回の試験サイクルといった特定の数の試験サイクルδは、ΔC特徴322を除く各特徴についてδ個の測定(すなわち、10個の測定)を提供する。しかしながら、これは、試験目的のために、RULの低減という犠牲により得られる。したがって、試験サイクルの数と、達成される成功率との間にはトレードオフが存在する。試験サイクルの最適な数を決定するために、ロジスティック回帰アルゴリズムは、電池114の分類のための初期アルゴリズムとして実行される。
【0069】
1つの例示的な実施形態では、分類しきい値は、サイクルの最適な数として、150回のRULサイクルに基づいてあらかじめ決定される。これは、
図8Aを参照してさらに記載される。
【0070】
図8Aは、本開示の1つの例示的な実施形態に従った、電池114の分類のための所定のしきい値分類値のグラフ表示800を示す。
図8Aに示されるように、グラフ表示800は、分類アルゴリズムによる異なるしきい値について縦軸上のF1スコアメトリックに対応し、横軸上のサイクルの最適な数は、150RULサイクルにおいて確立される(たとえば、ピーク802)。F1スコアメトリックは、異なるしきい値(たとえば、100サイクル、150サイクル、200サイクル)を有する分類についての精度に関する尺度を提供する。いくつかの例示的な実施形態では、δ個の測定のための変数の異なるセットが試験される。変数のセットは、特徴318~326のうちの1つ以上を含み得るか、および/または、除外し得る。
【0071】
図8Bは、本開示のいくつかの実施形態に従った、RUL推定のために使用される特徴のテーブル表示804を示す。
図8Bに示されるように、テーブル804は、合計4δ個の測定を作成する。ここで、C
pk特徴324およびV
pk特徴324は、単一の特徴(すなわち、特徴806)に組み合わされてもよい。
【0072】
さらに、RUL分類器702による電池114の分類と、試験サイクルの最適な数の決定とに使用されるロジスティック回帰アルゴリズムは、異なる試験サイクル値について評価される。当該評価は、RUL分類器702の分類タスクについての成功率の結果に基づく。これは、
図9を参照してさらに記載される。
【0073】
図9は、本開示の1つの例示的な実施形態に従った、電池114の試験サイクルの各数についての成功率に関する結果を示すグラフ表示900を示す。1つの例示的な実施形態では、ロジスティック回帰アルゴリズムは、学習データセットの60%を学習のために用い、20%を交差検証のために用い、および、20%を試験のために用いて、異なる試験サイクルδの値について評価される。
図9に示されるように、試験サイクル902の値は、10を超えるδについて一定のままである。これは、試験サイクル902の値が、分類のためのロジスティックアルゴリズムの精度における改善に影響を与えることを示す。したがって、試験サイクルδ=10は、ロジスティック回帰アルゴリズムの評価に基づいて、サイクルの最適な数として決定される。さらに、電池114の分類(すなわち、短RULまたは長RULへの電池114の分類)の全体的な精度は、混同行列を使用して評価される。これは、
図10を参照してさらに記載される。
【0074】
図10は、1つの例示的な実施形態に従った、短RULまたは長RULへの電池114の分類に対応するロジスティック回帰アルゴリズムのための混同行列1000を示す。
図10に示されるように、得られる分類における全体的な精度は、約97.27%であり、「短RUL」を検出することについては93.7%の精度であり、「長RUL」を検出することについては98.1%の精度である。電池114についてのこの高い精度は、電池114の電池寿命の未知の瞬間において達成される。すなわち、電池114の試験サイクルにおける測定前に、電池114のどのくらいの数のサイクルが使用されたかは未知である。
【0075】
RUL推定
さらに、電池診断システム102は、RUL分類器702による電池114の分類に基づいて、電池114の実際のRUL推定を行う。本明細書におけるRUL推定は、直接的なRUL推定アプローチに対応する。RUL推定は、プロセッサ108が特徴318~326の選択されたセットをニューラルネットワーク106に送出すると、開始される。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク106は、多変量線形回帰(MLR: multivariable linear regression)アルゴリズムに対応する。MLRアルゴリズムは、式(5)により、入力配列としての特徴318~326のセットについての予測出力を計算する。
【0076】
【0077】
式中、
【0078】
【0079】
は、予測されたRULであり、xは4δ+1の次元測定配列であり、wは4δ+1の次元重み配列である。MLRアルゴリズムは、式(6)において関数を最小化することによってwをフィッティングする。
【0080】
【0081】
式中、第1の被加数は、通常の最小二乗項であり、第2の被加数は、RUL分類器702による分類の場合におけるようにオーバーフィッティングを避けるために導入されるリッジ正則化項である。パラメータmは、学習例の数である。
【0082】
プロセッサ108は、特徴のセット(たとえば、40個の特徴)から、RUL推定により関連する特徴318~326を選択する。このために、当該選択は、逐次前進的選択(SFS: sequential forward selection)法および逐次後退的選択(SBS: sequential backward selection)法に基づいて実行され得る。プロセッサ108は、SFS法またはSBS法を実行するように構成され得る。SFS法は、測定の空のセットから始まり、それらの各々を独立して評価し、最良に発揮された1つの特徴を選択する。選択された特徴(たとえば、特徴318)は保存され、他の特徴(たとえば、特徴320~326)の各々に加えられる。SFS法は、すべての特徴318~326が加えられるまで、測定を選択し続ける。さらに、誤差がより少ない反復が、特徴の最良の組み合わせとして選択される(たとえば、
図3Aの特徴314)。SBS法は、完全なデータセットから開始し、各測定が取り除かれる際の誤差を評価することによって、特徴の最良の組み合わせを選択する。特徴318~326の選択された最良の組み合わせは、ニューラルネットワーク106への入力として提供される。誤差におけるより少ない影響を有する1つ以上のデータセットは、あまり重要ではないと考えられる。このようなデータセットは排除される。
【0083】
いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク106は、多層パーセプトロン(MLP: Multi-Layer Perceptron)またはフィードフォワードニューラルネットワーク(FFNN: Feed-Forward Neural Network)に対応する。特徴318~326は、MLPニューラルネットワーク106に送出される。MLPニューラルネットワーク106は、特徴318~326の数が制限されるので、単一の隠れ層を含む。したがって、単一の隠れ層は、32個のニューロンといった、RUL推定のためのニューロンを有し得る。
【0084】
MLRおよびMLPアルゴリズムの各シミュレーションは、学習、検証、および試験のランダムな生成により異なる結果を提供する。これは、
図11を参照してさらに記載される。
【0085】
図11は、本開示のいくつかの実施形態に従った、多変量線形回帰(MLP)および多層パーセプトロンアルゴリズムのシミュレーションに基づく誤差結果を示すテーブル1100を示す。提供される誤差メトリックは、平均平方二乗誤差(RMSE(単位はサイクル))および平均相対誤差(MRE(単位は%))である。テーブル1100において、グローバルMLRアルゴリズム1102およびグローバルMLPアルゴリズム1104は、学習データセット全体で学習される(学習のために学習データセットの60%を維持、相互検証のために学習データセットの20%を維持、および試験のために学習データセットの20%を維持)。MREの場合、非常に低いRUL(すなわち、数サイクル)を有する電池114の50%近くが、平均化された誤差に対する大きな影響に寄与する。より少ないRULを有する電池114についての数サイクルの小さな誤差(たとえば、2サイクルのうちの1つ)は、大きなMREにつながる。テーブル1100におけるMRE>150サイクルの列は、RULサイクルのより大きい値で調整されたMREに、より良好なMREメトリックを与える。テーブル1100の最後の行には、マルチプルエキスパートシステム700についての結果1106が示される。結果1106は、電池114の寿命の任意の未知の瞬間における電池114についてのRULの推定において15.2%の平均MREを得るとともに、10%未満が電池114の長RULに条件付けされることにより、グローバルアルゴリズムの性能が向上されることを示す。
【0086】
電池114について予測されるべき観察されるRULサイクルの各値についてのRMSEおよびMREメトリックが、
図12を参照してさらに記載される。
【0087】
図12は、本開示のいくつかの実施形態に従った、平均平方二乗誤差(RMSE)メトリック1202および平均相対誤差(MRE)メトリック1204を用いた電池114のRUL推定のための多層パーセプトロンアルゴリズムについての試験結果を示すグラフ表示1200を示す。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク106は、多層パーセプトロンアルゴリズムに対応し、ニューラルネットワーク106は、特徴318~326の数が制限されるので、32個のニューロンといったRUL推定のためのニューロンを有する単一の隠れ層を含む。RMSEメトリック1202およびMREメトリック1204は、予測されるべき観察されるRULサイクルの各値について得られるRMSEおよびMREに関する情報を提供する。MLPアルゴリズムのためのMREメトリック1204において、誤差は実際的に、観察されるRULの全範囲について10~20%以内である。
【0088】
図13は、本開示のいくつかの実施形態に従った、学習データセットを使用する、電池114についてのすべての試験サイクルについての例示的なRUL推定を示すグラフ表示1300を示す。たとえば、学習データセットは、100個のデータセットの数に対応し得る。
図13に示されるように、予測RUL曲線1304は、実際のRUL線1302上に正確に存在する。これは、マルチプルエキスパートシステム700の短RULエキスパート708が関与する予測曲線1304の低いRUL値(150RULサイクルを下回る)について特に顕著である。さらに、より高いMREにもかかわらず、予測RUL曲線1304の絶対的な予測は、
図13に示されるように、はるかにより正確である。
【0089】
例示的な実施形態
図14は、本開示の1つの例示的な実施形態に従った、セカンドライフ用途の目的で電池114を再利用するための例示的なシナリオ1400を示す。例示的なシナリオ1400は、充電式電池(すなわち、電池114)および電池診断システム102を含み得る電気自動車1402を含むように示される。電気自動車1402は、充電式電池(すなわち電池114)によって電力供給される。電気自動車1402のための電池114のサービスがひとたび完了すると、電池114は電池診断システム102によって診断される。電池診断システム102は、
図1および
図7の説明において記載されるように、推定されたRUL1404を提供する。電池114は、推定されたRUL1404に基づいて、セカンドライフ用途に再利用される。セカンドライフ用途は、用途1406および用途1408を含み得る。たとえば、用途1406はソーラーベースのエネルギー貯蔵システムに対応し、用途1408は再生可能エネルギーベースのエネルギー貯蔵システムに対応する。
【0090】
図15は、本開示のいくつかの実施形態に従った、試験電池(たとえば、電池114)のRULを推定するための方法のフロー
図1500を示す。ブロック1502において、試験電池の電池サイクルおよびキャパシティの測定のセットが、電池診断システム102に提供される(
図2参照)。測定のセットは、学習データセットを使用する電池114の試験サイクルを通じて、充電システム110によって取得される(すなわち、
図2の動作206)。試験サイクルは、電池114についての充放電サイクルのシーケンスを含む(すなわち、動作204)。いくつかの実施形態では、試験電池の電池サイクルについての最適な数は、ロジスティック回帰アルゴリズムに基づいてあらかじめ決定される(
図8A参照)。
【0091】
ブロック1504において、特徴の所定のセットが測定のセットから抽出される(すなわち、動作208)。ブロック1506において、特徴の抽出された所定のセットは、
図1のニューラルネットワーク108のようなニューラルネットワークに送出される。ニューラルネットワーク108は、多変量線形回帰、フィードフォワードニューラルネットワーク、または、多層パーセプトロンを含む。特徴の所定のセットは、試験電池のキャパシティ、内部抵抗、等放電電圧差の時間間隔(TIEDVD)、キャパシティフェード、キャパシタンスピーク、および、キャパシタンス電圧を含む。キャパシタンスピークおよびキャパシタンスピーク電圧は、(
図5および
図6の説明において記載されるように)電池サイクルにおいて生成される試験電池の電圧および放電波形に基づいて導出される。いくつかの実施形態では、試験電池の電池寿命の異なるステージは、(
図3Bの説明において記載されるように)特徴の抽出されたセットの各々に基づいて示される。
【0092】
ブロック1508において、試験電池の残存耐用寿命(RUL)は、特徴の抽出された所定のセットに基づいて推定される。RULの推定は、(
図7の説明において記載されるように)試験電池を短RULまたは長RULに分類することを含む。短RULクラスは、所定の分類しきい値内に該当し、長RULは、所定の分類しきい値を超える。分類器は、分類に基づいて、分類された短RULまたは長RUL(すなわち、短RULエキスパート708または長RULエキスパート710)の各々について対応するエキスパートシステムを選択する。ブロック1510では、試験電池の推定されたRULが出力される。
【0093】
図16は、本開示のいくつかの実施形態に従った、電池のRULを推定するための試験電池診断システム1600のブロック図を示す。電池診断システム1600は、
図1の電池診断システム102に対応する。電池診断システム1600は、格納された命令を実行するように構成されるプロセッサ1602と、プロセッサ1602によって実行可能な命令を格納するメモリ1604とを含む。プロセッサ1602はプロセッサ108に対応し、メモリ1604はメモリ104に対応する。プロセッサ1602は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、コンピューティングクラスタ、または、任意の数の他の構成であり得る。メモリ1604は、ランダムアクセスメモリ(RAM: random access memory)、リードオンリメモリ(ROM: read only memory)、フラッシュメモリ、または、任意の他の好適なメモリシステムを含み得る。プロセッサ1602は、バス1612を介して1つ以上の入力デバイスおよび出力デバイスに接続される。これらの命令は、電池114のような試験電池のRULを推定するための方法1500を実現する。
【0094】
いくつかの実現例では、電池診断システム1600は、試験電池114の電池サイクルおよび現在のキャパシティを示す測定を受け入れるために、異なる種類および組み合わせの入力インターフェイスを有し得る。一実現例では、電池診断システム1600内のヒューマンマシンインターフェイス1612は、システム1600をキーボードおよび/またはポインティングデバイス1624に接続し、ポインティングデバイス1624は、たとえば、マウス、トラックボール、タッチパッド、ジョイスティック、ポインティングスティック、スタイラス、または、タッチスクリーンを含み得る。
【0095】
付加的または代替的には、電池診断システム1600は、システム1600を試験電池114に接続するように適合される入力インターフェイス1618に接続され得る。試験電池114は、電気自動車、フラッシュライト、スマート電子デバイスといった電気デバイスに電力供給するために設けられる外部接続を有する1つ以上の電気化学セルを含み得る電気電池または充電式電池である。入力インターフェイス1618は、その充電および/または放電サイクル中において電池の電圧および電流といった試験電池114のパラメータを測定するように適合され得る。試験電池114は、たとえば
図1の充電システム110のような充電システム(
図16には図示せず)によって充電および/または放電され得る。
【0096】
付加的または代替的には、ネットワークインターフェイスコントローラ(NIC: network interface controller)1616は、電池診断システム1600をバス1612を介してネットワーク1630に接続するように適合され得る。試験電池114の電池サイクルおよびキャパシティを示す測定1628は、格納および/またはさらなる処理のために、ネットワーク1630を通じてメモリ1604内にダウンロードおよび格納され得る。付加的または代替的には、NIC1616は、試験電池114の電流および/または電圧を測定するために、電池診断システム1600を電流/電圧メータ1626に接続するように適合され得る。
【0097】
入力インターフェイス1618に加えて、電池診断システム1600は、試験電池114の推定されたRULを出力するよう1つ以上の出力インターフェイスを含み得る。たとえば、電池診断システム1600は、電池診断システム1600を出力デバイス1622に接続するように適合される出力インターフェイス1620にバス1614を介してリンクされ得る。出力デバイス1622は、コンピュータモニタ、プロジェクタ、ディスプレイデバイス、スクリーン、モバイルデバイス、または、充電式電池(すなわち、電池114)を利用し得るデバイスを含み得る。
【0098】
電池診断システム1600は、学習されたニューラルネットワーク1606および特徴の所定のセット1608を使用してRULを推定するように構成される。ニューラルネットワーク1606はニューラルネットワーク106に対応する。ニューラルネットワーク1606は、試験電池114の電池サイクルおよび試験電池114のキャパシティを示す特徴の所定のセット1608から試験電池114のRULを推定するように学習される。
【0099】
各電池サイクルは、充電サイクルおよび放電サイクルの1つまたは組み合わせの間に、異なるキャパシティで特定の種類の電池について測定される電圧および電流の1つまたは組み合わせの値からモデル化される。電池サイクルを形成するための測定の例は、放電サイクル中に測定されるテール電圧、放電サイクル中における測定される電流、充電サイクル中における電圧、充電サイクル中における電流、充電およびその後の放電サイクル中における電圧、充電およびその後の放電サイクル中における電圧、または、一般的に、あらかじめ定義されておらず、変動が許容されており、したがって劣化情報を含む充放電中における電圧/電流のいずれかを含む。たとえば、ストレージデバイス1610は、電池114のRUL推定のための学習済モデルのセットを格納するように適合され得る。ストレージデバイス1610は、ハードドライブ、光学ドライブ、サムドライブ、ドライブのアレイ、または、それらの任意の組み合わせを使用して実現され得る。