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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】多段スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20231215BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F04C18/16 C
F04C29/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021048480
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147299
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】土屋 豪
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢部 利明
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-139487(JP,A)
【文献】特開2004-144035(JP,A)
【文献】実開昭52-142217(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を順に圧縮する複数段の圧縮機本体を備え、
前記複数段の圧縮機本体の各段は、互いに噛み合った状態でケーシング内に回転可能に収容された一対のスクリューロータを有し、
前記一対のスクリューロータは、軸方向の一方端及び他方端にそれぞれ吸込側端面及び吐出側端面を有すると共に前記吸込側端面から前記吐出側端面まで延在する捩じれた歯を有するロータ歯部を含み、
前記複数段の圧縮機本体のうちの最上流に位置する初段の圧縮機本体を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータは、前記ロータ歯部の前記歯の捩れを1回転させたと仮定したときに前記軸方向に進む長さを示すリードが前記ロータ歯部の前記軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくなるよう構成されている
多段スクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の多段スクリュー圧縮機であって、
最下流に位置する最終段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータは、前記リードが前記ロータ歯部の前記軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくなるよう構成されている
多段スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の多段スクリュー圧縮機であって、
前記複数段の圧縮機本体のうちの前記初段の圧縮機本体を除く各段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータは、前記リードが前記ロータ歯部の前記軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくなるよう構成されている
多段スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載の多段スクリュー圧縮機であって、
前記少なくとも1つの或る段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータは、前記リードが前記ロータ歯部の前記軸方向の全長に亘って変化する
多段スクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の多段スクリュー圧縮機であって、
前記少なくとも1つの或る段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータは、前記ロータ歯部の前記軸方向の全長のうち、前記吐出側端面を含む前記軸方向の吐出側に偏った部分において前記リードが変化する一方、前記軸方向の残りの吸込側の部分において前記リードが同一である
多段スクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載の多段スクリュー圧縮機であって、
前記少なくとも1つの或る段の圧縮機本体は、圧力比が4.5以下である
多段スクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項6に記載の多段スクリュー圧縮機であって、
前記少なくとも1つの或る段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータは、前記吸込側端面におけるリードに対する前記吐出側端面におけるリードの比が1.5以下である
多段スクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項1に記載の多段スクリュー圧縮機であって、
前記少なくとも1つの或る段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータでは、以下の式において全巻角を190度から310度までの範囲のいずれかの値としたときに得られるリード角が前記吸込側端面におけるリード角として設定されている
【数1】
多段スクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の段階に分けて気体を圧縮する多段スクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機は、空気圧縮機や冷凍空調用圧縮機として広く普及しており、近年、省エネ化が強く求められている。そのため、スクリュー圧縮機は、高いエネルギ効率や大風量(高性能)であることが益々重要になっている。
【0003】
スクリュー圧縮機は、互いに噛合いながら回転する雌雄一対のスクリューロータと、両スクリューロータを収納するケーシングとを備えている。両スクリューロータは、それぞれ螺旋状の歯(歯溝)を有している。この圧縮機は、両スクリューロータの歯溝とそれらを取り囲むケーシングの内壁面とによって形成された複数の作動室の容積が両スクリューロータの回転に伴い増減することで気体を吸い込み圧縮するものである。
【0004】
スクリュー圧縮機では、回転するスクリューロータがケーシングに接触しないように、両者間に微小な隙間が設けられている。例えば、各スクリューロータの歯先とケーシング内の内周面との間に隙間(以下、外径隙間と称することがある)が設けられている。そのため、外径隙間を介して、相対的に圧力が高い作動室から相対的に圧力の低い作動室へ圧縮気体が漏出してしまう。圧縮気体が漏出すると、その分、費やされた圧縮動力が無駄となったり、再圧縮の動力を要したりするので、圧縮機効率が低下する。
【0005】
そのため、圧縮機の軸方向の吐出側領域における隣接する作動室間の外径隙間を介した圧縮気体の漏出を低減することが求められている。外径隙間を介した吐出側領域の圧縮気体の漏出を低減する技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載のスクリュー圧縮機では、吸込み空気量に対する漏洩空気量の比を低減すると共に両スクリューロータの接触によるかじりを防止するために、雌ロータに設けられた複数の歯の歯厚を吸入ポート側に対して吐出ポート側が厚肉となるよう形成している。雌ロータの歯の歯厚を吐出ポート側(雌ロータの軸方向における吐出側端部)で厚肉にすると、その分、雌ロータの吐出ポート側における隣接する作動室間の境界の幅(距離)が大きくなる。このため、雌ロータの吐出ポート側における作動室間の外径隙間を介した圧縮気体の漏出を抑制することが可能となる。なお、ここでの「歯厚」とは、スクリューロータの軸方向に垂直な断面の歯形における歯の厚みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-144035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、スクリュー圧縮機の高性能化の1つの手法として、圧縮機の多段化が挙げられる。特に、近年の空気圧縮機の分野では、吐出圧力の高圧化の要求が増えているので、スクリュー圧縮機の多段化による対応が考えられる。多段スクリュー圧縮機は、低圧段の圧縮機によって圧縮された気体を高圧段の圧縮機が吸い込んで更に圧縮することで気体を昇圧させるものであり、単段スクリュー圧縮機よりも気体を高効率で圧縮することができる。多段スクリュー圧縮機では、圧力損失が無く且つ各段の吸気温度が同じになる理想的な条件下において、当該圧縮機全体の駆動動力を最小にする各段の圧力比が存在する。各段の圧力比をこのように設定すると、各段における吐出圧力と吸込圧力との差圧(以下、各段の運転差圧と称することがある)は、高圧段の圧縮機の方が低圧段の圧縮機よりも大きくなる。
【0008】
前述したように、各段の圧縮機の運転差圧が大きくなると、その分、吐出ポート側(スクリューロータの軸方向における吐出側端部)において隣接する作動室間の外径隙間を介した圧縮気体の漏出が増大することになる。特に、高圧段の圧縮機では、運転差圧が低圧段の圧縮機よりも大きいので、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏出による効率の低下が懸念される。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、スクリューロータの歯先とケーシングの内周面との隙間(外径隙間)を介した作動室間の圧縮気体の漏出による効率低下を抑制することができる多段スクリュー圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、気体を順に圧縮する複数段の圧縮機本体を備え、前記複数段の圧縮機本体の各段は、互いに噛み合った状態でケーシング内に回転可能に収容された一対のスクリューロータを有し、前記一対のスクリューロータは、軸方向の一方端及び他方端にそれぞれ吸込側端面及び吐出側端面を有すると共に前記吸込側端面から前記吐出側端面まで延在する捩じれた歯を有するロータ歯部を含み、前記複数段の圧縮機本体のうちの最上流に位置する初段の圧縮機本体を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体における前記一対のスクリューロータは、前記ロータ歯部の前記歯の捩れを1回転させたと仮定したときに前記軸方向に進む長さを示すリードが前記ロータ歯部の前記軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくなるよう構成されている
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、初段の圧縮機本体を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体の一対のスクリューロータにおけるリードを軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくすることで、ロータ歯部の歯先厚さ(歯先の延伸方向に対して垂直な断面の歯先の厚み)が吐出側で厚くなると共に、ロータ歯部の歯先の捩じれ方向に延びるシール線の長さが短くなる。これにより、一対のスクリューロータの歯先とケーシングの内周面との隙間(外径隙間)を介した作動室間の圧縮気体の漏出による効率低下を抑制することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態としての二段スクリュー圧縮機を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の一部を構成する後段圧縮機本体の構造を示す縦断面図である。
図3図2に示す本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体をIII-III矢視から見た断面図である。
図4】スクリューロータにおけるリード角とリードの関係を示す説明図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体に対する比較例としてのスクリュー圧縮機の構造を示す断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体の構造的な特徴の効果を説明する図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体の比較例に対する雌ロータの歯厚の関係を示す特性図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体の比較例に対する雌ロータの歯先シール線の長さの関係を示す特性図である。
図9】スクリューロータにおけるリード角とリードとロータ歯部長と全巻角との関係を示す説明図である。
図10】本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体における段圧力比と吐出開口面積との関係を示す特性図である。
図11】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る二段スクリュー圧縮機の一部を構成する後段圧縮機本体の構造を示す断面図である。
図12】本発明の第2の実施の形態としての三段スクリュー圧縮機を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による多段スクリュー圧縮機の実施の形態について図面を用いて例示説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態としての二段スクリュー圧縮機を模式的に示す断面図である。
【0014】
図1において、本実施の形態は本発明の多段スクリュー圧縮機を二段スクリュー圧縮機に適用した例である。二段スクリュー圧縮機は、吸い込んだ気体を圧縮して吐出する前段圧縮機本体1と、前段圧縮機本体1から吐出された圧縮気体を更に圧縮して吐出する高圧段側の後段圧縮機本体2とを備えている。前段圧縮機本体1は、気体を順に圧縮する複数段の圧縮機本体のうち、最上流に位置する初段の圧縮機本体である。後段圧縮機本体2は、複数段の圧縮機本体のうち、最下流に位置する最終段の圧縮機本体である。前段圧縮機本体1の吐出側と後段圧縮機本体2の吸込側は、接続流路10を介して接続されている。なお、二段スクリュー圧縮機では、接続流路10にインタークーラ(図示せず)などの冷却手段を設ける構成が可能である。前段圧縮機本体1から吐出された圧縮気体を冷却手段により冷却してから後段圧縮機本体2に圧縮させることで、後段圧縮機本体2の圧縮効率が向上する。
【0015】
次に、第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機における前段圧縮機本体及び後段圧縮機本体の共通の構成及び構造を図2及び図3を用いて説明する。図2図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の一部を構成する後段圧縮機本体の構造を示す縦断面図である。図3図2に示す本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体をIII-III矢視から見た断面図である。ここでは、後段圧縮機本体の構成及び構造を説明することで、後段圧縮機本体と同様な前段圧縮機の構成及び構造の説明を省略する。図2及び図3中、左側がスクリュー圧縮機の軸方向の吸込側、右側が軸方向の吐出側である。
【0016】
図2及び図3において、後段圧縮機本体2は、互いに噛み合い回転する一対のスクリューロータとしての雄ロータ20及び雌ロータ30と、雄ロータ20及び雌ロータ30を噛み合った状態で回転可能に収容するケーシング40とを備えている。雄ロータ20及び雌ロータ30は、互いの回転中心A1、A2が平行となるように配置されている。雄ロータ20は、その軸方向(図2及び図3中、左右方向)の両側がそれぞれ吸込側軸受61と吐出側軸受62、63とにより回転自在に支持されている。雌ロータ30は、その軸方向の両側がそれぞれ吸込側軸受65と吐出側軸受66、67とにより回転自在に支持されている。
【0017】
雄ロータ20は、螺旋状の捩じれた雄歯21a(ローブ)を有するロータ歯部21と、ロータ歯部21の軸方向の両側端部にそれぞれ設けられた吸込側のシャフト部22及び吐出側のシャフト部23とで構成されている。ロータ歯部21は、軸方向の一方端(図2及び図3中、左端)及び他方端(図2及び図3中、右端)にそれぞれ、軸方向(回転中心A1)に垂直な吸込側端面21b及び吐出側端面21cを有している。ロータ歯部21では、雄歯21aが吸込側端面21bから吐出側端面21cまで延在しており、雄歯21a間に歯溝が形成されている。吸込側のシャフト部22は、例えば、ケーシング40の外側に延出しており、回転駆動源(図示せず)に接続されている。雄ロータ20は、雄歯21aの捩じれ具合に特徴を有している。雄ロータ20の当該特徴の詳細は後述する。
【0018】
雌ロータ30は、螺旋状の捩じれた雌歯31aを有するロータ歯部31と、ロータ歯部31の軸方向の両側端部にそれぞれ設けられた吸込側のシャフト部32及び吐出側のシャフト部33とで構成されている。ロータ歯部31は、軸方向一端(図3中、左端)及び他方端(図3中、右端)にそれぞれ、軸方向(回転中心A2)に垂直な吸込側端面31b及び吐出側端面31cを有している。ロータ歯部31では、雌歯31aが吸込側端面31bから吐出側端面31cまで延在しており、雌歯31a間に歯溝が形成されている。雄ロータ20に噛み合う雌ロータ30も、雌歯31aの捩じれ具合に特徴を有している。雄ロータ20の当該特徴の詳細も雄ロータ20の当該特徴と共に後述する。
【0019】
ケーシング40は、メインケーシング41と、メインケーシング41の吐出側(図2及び図3中、右側)に取り付けられた吐出側ケーシング42とを備えている。ケーシング40の内部には、雄ロータ20のロータ歯部21および雌ロータ30のロータ歯部31を互いに噛み合った状態で収容する収容室としてのボア45が形成されている。ボア45は、メインケーシング41に形成された一部重複する2つの円筒状空間の軸方向一方側(図2及び図3中、右側)の開口を吐出側ケーシング42で閉塞することによって構成されている。ボア45を形成する内壁面は、雄ロータ20のロータ歯部21の径方向外側を覆う略円筒状の第1内周面46と、雌ロータ30のロータ歯部31の径方向外側を覆う略円筒状の第2内周面47と、雄雌両ロータ20、30のロータ歯部21、31の吸込側端面21b、31bに対向する軸方向一方側(図2及び図3中、左側)の吸込側内壁面48と、雄雌両ロータ20、30のロータ歯部21、31の吐出側端面21c、31cに対向する軸方向他方側(図2及び図3中、右側)の吐出側内壁面49とで構成されている。雄雌両ロータ20、30のロータ歯部21、31とそれを取り囲むケーシング40の内壁面(ボア45の第1内周面46、第2内周面47、吸込側内壁面48、吐出側内壁面49)とによって複数の作動室C1、C2、C3、C4が形成される。
【0020】
メインケーシング41の吸込側端部には、雄ロータ20側の吸込側軸受61及び雌ロータ30側の吸込側軸受65が配設されている。吐出側ケーシング42には、雄ロータ20側の吐出側軸受62、63及び雌ロータ30側の吐出側軸受66、67が配設されている。
【0021】
ケーシング40には、図1及び図2に示すように、作動室Cに気体を吸い込むための吸込流路51が設けられている。吸込流路51は、ケーシング40の外部とボア45(作動室)とを連通させるものである。また、ケーシング40には、作動室からケーシング40外へ圧縮気体を吐出するための吐出流路52が設けられている。吐出流路52は、ボア45(作動室)とケーシング40の外部とを連通させるものである。吐出流路52は、ケーシング40の吐出側内壁面49に形成された吐出ポート52aを有している。
【0022】
図1に示す前段圧縮機本体1は、図2及び図3に示す後段圧縮機本体2と同様な構成及び構造を有している。ただし、前段圧縮機本体1は、雄ロータ20Xの雄歯及び雌ロータ(図示せず)の雌歯の捩じれ具合が後段圧縮機本体2の雄ロータ20の雄歯21a及び雌ロータ30の雌歯31aの捩じれ具合と異なっている。後段圧縮機本体2と前段圧縮機本体1の構造上の差異がある部分には、前段圧縮機本体1側の部分に符号Xを付すことで区別することにする。
【0023】
このような構成の二段スクリュー圧縮機においては、図1に示す前段圧縮機本体1及び後段圧縮機本体2の雄ロータ20、20Xが図示しない駆動源により駆動されると、雄ロータ20、20Xに噛み合っている雌ロータ30(図3参照)も共に回転する。これにより、雄雌両ロータ20、20X、30の回転に伴って作動室の容積が増加することで外部から吸込流路51を介して気体を吸い込み、作動室の容積が順次C1、C2、C3、C4にように縮小していくことで気体を圧縮する。前段圧縮機本体1は、吸込流路51を介して吸い込んだ気体を所定の中間圧力まで圧縮し、最終的に、吐出流路52を介して接続流路10へ吐出する。後段圧縮機本体2は、前段圧縮機本体1から接続流路10へ吐出された圧縮気体を吸込流路51を介して吸い込み、更に圧縮することで所定の圧力まで昇圧する。このように、二段スクリュー圧縮機では、前段圧縮機本体1と後段圧縮機本体2の2段階に分けて圧縮することで所定の吐出圧力まで昇圧する。
【0024】
ところで、二段スクリュー圧縮機を含む多段スクリュー圧縮機においては、当該圧縮機を駆動する動力を最小にすることができる各段の圧力比が存在する。各段の圧縮機本体の損失や接続流路10における圧力損失を無視することができ、かつ、接続流路10を流れる圧縮気体の冷却により後段圧縮機本体2の吸込温度が前段側圧縮機本体1の吸込温度に同じになるような理想的な圧縮行程を想定したとき、多段スクリュー圧縮機全体の動力を最小にする各段の圧縮機本体の圧力比は式(1)から求められることが知られている。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、rは多段スクリュー圧縮機の各段を、Nは多段スクリュー圧縮機の総段数を示している。また、Pは吸込圧力を、Pは吐出圧力を示している。
【0027】
二段スクリュー圧縮機の用途としての空気用圧縮機や冷凍空調用圧縮機では、運転条件としての吸込圧力及び吐出圧力が常に一定に保たれる場合は少なく、様々な圧力状態での運転に対応することが必要である。空気圧縮機の分野では、近年、吐出圧力の高圧化の要求が増えている。二段スクリュー圧縮機の低圧段側である前段圧縮機本体1及び高圧段側である後段圧縮機本体2における運転圧力比及び運転差圧を式(1)に基づき吐出圧力をパラメータとして纏めると、表1に示すとおりである。なお、表1中、Piは接続流路10における圧力を示している。
【0028】
【表1】
【0029】
二段スクリュー圧縮機では、当該圧縮機の動力を最小にする前段圧縮機本体1及び後段圧縮機本体2の圧力比(表1中、左側から3列目及び5列目を参照)が式(1)からパラメータの吐出圧力Pd(表1中、左側から1列目を参照)の変化によらずに同じになることがわかる。それに対して、前段圧縮機本体1の運転差圧(表1中、左側から6列目を参照)及び後段圧縮機本体2の運転差圧(表1中、左側から4列目を参照)はそれぞれ、吐出圧力Pdが高くなるにつれて大きくなる。また、前段圧縮機本体1の運転差圧に対する後段圧縮機本体2の運転差圧の差(表1中、左側から2列目を参照)も吐出圧力Pdが高くなるにつれて大きくなる。二段スクリュー圧縮機の吐出圧力が1.2MPaのときの前段圧縮機本体1に対する後段圧縮機本体2の運転差圧の差は、当該吐出圧力が0.8MPaのときの当該運転差圧の差に対して約1.8倍になる。このため、後段圧縮機本体2では、軸方向の吐出側においてケーシング40の第1内周面46及び第2内周面47と雄雌両ロータ20、30の歯先との隙間(外径隙間)を介した隣接する作動室間の圧縮気体の漏洩が前段圧縮機本体1の場合よりも増大することになる。そこで、本実施の形態の二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体2において、互いに噛み合う雄ロータ20の雄歯21a及び雌ロータ30の雌歯31aの捩じれ具合を変えることで、外径隙間を介した隣接する作動室間の圧縮気体の漏れを抑制するものである。
【0030】
次に、第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体における雄ロータ及び雌ロータ(一対のスクリューロータ)の捩じれの特徴を図3及び図4を用いて説明する。なお、ここでは、雌ロータ30の雌歯31aの捩じれの特徴のみを説明し、雄ロータ20の雄歯21aの捩じれの特徴の説明は省略する。雄雌両ロータ20、30は噛み合った状態で回転するので、雄ロータ20の雄歯21aと雌ロータ30の雌歯31aの捩じれ具合は同様になる。以下では、雌ロータ30のロータ歯部31の歯先点の集合である歯先をヘリックス線と称する。また、雌ロータ30のヘリックス線において、吐出側端面31cに近い側を先行側と称し、吸込側端面31bに近い側を後続側と称する。
【0031】
図3に示す本実施の形態に係る後段圧縮機本体2における雌ロータ30は、ロータ歯部31の吸込側端面31bから吐出側端面31cに向かってリード角が徐々に大きくなるように構成されている。雌ロータ30(ロータ歯部31)のリード角とは、雌ロータ30の各歯先点におけるヘリックス線の傾きを表すものであり、ロータ歯部31のヘリックス線上の1点(歯先点)を通りロータ歯部31の軸方向(回転中心A2)に直交する平面と当該ヘリックス線とがなす角をいう。すなわち、雌ロータ30のヘリックス線の傾き線Lh(各歯先点におけるヘリックス線に対する接線)と雌ロータ30の吸込側端面31bに平行な基準線Ldとに挟まれた角度である。雌ロータ30の回転中心A2に平行な或る基線Lb上に位置する雌ロータ30の吸込側端面31bの歯先点及び先行側の歯先点におけるリード角を図3に示す。各歯先点における各基準線Ldに対するヘリックス線の傾き線Lhの傾き(リード角)は、吐出側端面31cに接近するほど大きくなっている(φ1<φ2<φ3)。後続側のヘリックス線上におけるリード角(図3では図示せず)においても、同様に、吐出側端面31cに向かって大きくなっている。
【0032】
本説明において、雌ロータ30のヘリックス線を1回転させたと仮定したときに軸方向に進む長さをリードと規定する。リード角とリードの関係を図4に示す。図4はスクリューロータにおけるリード角とリードの関係を示す説明図である。図4に示す関係から明らかなように、上述した後段圧縮機本体2の雌ロータ30は、軸方向の吸込側から吐出側に向かってリードが大きくなるように構成されていると換言することができる。雌ロータ30は、ロータ歯部31の吸込側端面31bから吐出側端面31cまでの全長に亘ってリードが徐々に変化するように構成されている。
【0033】
軸方向の吸込側から吐出側に向かってリード(リード角)が大きくなる雌ロータ30は、雌歯31aの捩れが吸込側から吐出側に向かうにつれて緩和される構造となっている。この場合、軸方向(回転中心A2)に垂直な断面の雌ロータ30の歯形が軸方向の任意の位置において略同一であるという条件下において、ヘリックス線の延伸方向に対して垂直な断面における雌ロータ30の歯先厚さt1が吸込側から吐出側に向かってリード(リード角)の大きさに応じて厚くなる。また、雌ロータ30のヘリックス線の捩じれ方向に延びるシール線Sfの長さは、同じ回転位置にある等リード(等リード角)の雌ロータの場合に比べて短くなる。
【0034】
また、後段圧縮機本体2における雄ロータ20も、後段圧縮機本体2の雌ロータ30に噛み合うように構成されるので、ロータ歯部21の吸込側端面21bから吐出側端面21cに向かってリード角が徐々に大きくなるように構成されている。すなわち、雄ロータ20も、軸方向の吸込側から吐出側に向かってリードが大きくなるように構成されている。雄ロータ20は、ロータ歯部21の吸込側端面21bから吐出側端面21cまでの全長に亘ってリードが徐々に変化するように構成されている。したがって、雄ロータ20においても、雄歯21aの捩れが吸込側から吐出側に向かうにつれて緩和される構造となっている。この場合、雄ロータ20のヘリックス線の捩じれ方向に延びるシール線Smの長さは、同じ回転位置にある等リード(等リード角)の雄ロータの場合に比べて短くなる。
【0035】
なお、前段圧縮機本体1の雄ロータ20X及び雌ロータは、後段圧縮機本体2の雄ロータ20及び雌ロータ30とは異なり、等リードのスクリューロータである。すなわち、前段圧縮機本体1の雄ロータ20X及び雌ロータは、ロータ歯部の吸込側端面から吐出側端面までのいずれの軸方向位置においてもリード角が同じとなるように構成されている。
【0036】
次に、第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の効果について比較例のスクリュー圧縮機と比べつつ図5図10を用いて説明する。図5は本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体に対する比較例としてのスクリュー圧縮機の構造を示す断面図である。図6は本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体の構造的な特徴の効果を説明する図である。図7は本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体の比較例に対する雌ロータの歯厚の関係を示す特性図である。図8は本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体の比較例に対する雌ロータの歯先シール線の長さの関係を示す特性図である。図9はスクリューロータにおけるリード角とリードとロータ歯部長と全巻角との関係を示す説明図である。図10は本発明の第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機の後段圧縮機本体における段圧力比と吐出開口面積との関係を示す特性図である。なお、図5において図1図4に示す符号と同符号の部分は同様な構造を有するものであり、同符号の部分の説明は省略する。
【0037】
図5に示す比較例のスクリュー圧縮機102は、軸方向の吸込側から吐出側までリードが変化しない等リードの雄ロータ120及び雌ロータ130を備えている。すなわち、雄ロータ120及び雌ロータ130のリード及びリード角は、ロータ歯部121、131の吸込側端面121b、131bから吐出側端面121c、131cまで一定となっている。例えば、図5に示すように、雌ロータ130の吸込側端面131bの歯先点におけるリード角φ10と吐出側端面131cの歯先点におけるリード角φ40は、同じ角度である。等リードの雌ロータ130では、雌歯131aの捩れ具合いが吸込側から吐出側に向かって一定である。この場合、ヘリックス線の延伸方向に対して垂直な断面における雌ロータ130の歯先厚さt0も、吸込側から吐出側までに亘って同じである。比較例のスクリュー圧縮機102のそれ以外の構成及び構造は、本実施の形態に係る後段圧縮機本体2と同様なものである。
【0038】
それに対して、本実施の形態に係る後段圧縮機本体2は、軸方向の吸込側から吐出側に向かってリードが大きくなる雄ロータ20及び雌ロータ30を備えている。例えば、図6に示すように、雌ロータ30の吐出側端面31cの歯先点におけるリード角φ4は、雌ロータ30の吸込側端面31bの歯先点におけるリード角φ1よりも大きくなっている。
【0039】
ここで、本実施の形態の後段圧縮機本体2の雌ロータ30の吸込側端面31bの歯先点におけるリード角φ1を比較例のスクリュー圧縮機102の雌ロータ130の吸込側端面131bの歯先点におけるリード角φ10と同じ角度に設定した場合を考える。
【0040】
このときの比較例のスクリュー圧縮機102の雌ロータ130の歯先厚さt0に対する本実施の形態の雌ロータ30の歯先厚さt1の関係を図7に示す。図7中、横軸は雌ロータ30のロータ歯部31における軸方向位置を示している。ただし、この軸方向位置は、雌ロータ30のロータ歯部31の吸込側端面31bの位置を起点0として吐出側端面31cの位置を終点1とした場合の相対位置である。縦軸は、比較例の雌ロータ130の歯先厚さt0(ヘリックス線の延伸方向に対して垂直な断面における厚さ)に対する本実施の形態の雌ロータ30の歯先厚さt1の比を示している。
【0041】
本実施の形態に係る後段圧縮機本体2の雌ロータ30おいては、図7に示すように、歯先厚さt1が比較例の等リードの雌ロータ130の歯先厚さt0に対して吸込側から吐出側に向かって徐々に相対的に厚くなっていくことがわかる。歯先厚さt1が厚くなるということは、雌ロータ30における隣接する作動室間の境界の幅(距離)が大きくなることを意味する。すなわち、ケーシング40の第2内周面47(ボア45の内壁面)と雌ロータ30の歯先との間に形成された隙間(外径隙間)の厚み方向(幅)が長くなり、隣接する作動室間の漏れ流路の長さが長くなることを意味する。このため、隣接する作動室間の外径隙間を経由する圧縮気体の流動抵抗が増加するので、当該外径隙間を介した圧縮気体の漏洩を抑制することができる。
【0042】
また、比較例のスクリュー圧縮機102の雄ロータ120又は雌ロータ130のシール線Sm0、Sf0の長さに対する本実施の形態の雄ロータ20又は雌ロータ30のシール線Sm、Sfの長さの関係を図8に示す。図8中、横軸は雄ロータ20又は雌ロータ30の回転角度位置を示している。ただし、この回転角度位置とは、圧縮行程の開始の回転角度の位置を起点0として吐出行程の開始の回転角度の位置を終点1とした場合の相対角度の位置である。縦軸は、比較例の雄ロータ120又は雌ロータ130の歯先のシール線Sm0、Sf0の長さに対する本実施の形態の雄ロータ20又は雌ロータ30の歯先のシール線Sm、Sfの長さの比を示している。
【0043】
本実施の形態に係る後段圧縮機本体2の雄ロータ20及び雌ロータ30おいては、図8に示すように、雄ロータ20及び雌ロータ30の歯先のシール線Sm、Sfの長さが比較例の等リードの雄ロータ120及び雌ロータ130の歯先のシール線Sm0、Sf0の長さに対して吸込側から吐出側に向かって徐々に相対的に短くなっていくことがわかる。雄ロータ20及び雌ロータ30の歯先のシール線Sm、Sfの長さは、外径隙間におけるヘリックス線の延伸方向の長さと同等なものである。つまり、雄ロータ20及び雌ロータ30の歯先のシール線Sm、Sfの長さが短くなるということは、圧縮気体が漏出する領域としての外径隙間の全長が短くなることを意味する。このため、隣接する作動室間の外径隙間を経由する圧縮気体の漏れを抑制することができる。
【0044】
このように、本実施の形態の後段圧縮機本体2においては、雌ロータ30の歯先厚さt1が比較例の等リードの雌ロータ130の歯先厚さt0と比べて厚くなると共に、雄ロータ20及び雌ロータ30の歯先のシール線Sm、Sfの長さが比較例の等リードの雄ロータ120及び雌ロータ130の歯先のシール線Sm0、Sf0の長さに対して短くなる。これら2つの構造的な差異により、隣接する作動室間の外径隙間を経由する圧縮気体の漏れを抑制することができる。
【0045】
特に、前述した表1に示すように、後段圧縮機本体2では、前段圧縮機本体1よりも運転差圧が吐出圧力の高圧化に応じて大きくなる。したがって、後段圧縮機本体2の雄雌両ロータ20、30のリードを吸込側から吐出側に向かって大きくすることで、差圧が大きくなる吐出側の作動室間の圧縮気体の漏れを抑制することができるので、漏れ損失を効果的に低減して二段スクリュー圧縮機全体の高効率化を実現することができる。
【0046】
なお、比較例としての等リードのスクリューロータ(雄ロータ120及び雌ロータ130)を備えるスクリュー圧縮機102では、雄ロータ120及び雌ロータ130の全巻角が190°~310°の範囲に設定されることが多い。ここで、全巻角とは、雄ロータ120の雄歯121a及び雌ロータ130の雌歯131a(ローブ)のヘリックスの開始点(吸込側端面31bの位置)から終点(吐出側端面21c、31cの位置)までの回転角を示している。上述した図7及び図8に示す特性図は、雌ロータ130の全巻角を190°~310°の範囲に設定した場合のものである。
【0047】
この場合、等リードのスクリューロータ(雄ロータ120及び雌ロータ130)のリード角は、設定される全巻角に応じて以下の式(2)から求められる。ここで、ロータ歯部長とは、雄ロータ120及び雌ロータ130のロータ歯部121、131の吸込側端面121b、131bから吐出側端面121c、131cまでの長さを示している。スクリューロータにおけるリード角とリードとロータ歯部長と全巻角との関係を図9に示す。
【0048】
【数2】
【0049】
ところで、雄雌両ロータ20、30(スクリューロータ)のリードが吸込側から吐出側に向かって大きくなる後段圧縮機本体2では、等リードの雄雌両ロータ120、130を有するスクリュー圧縮機と比較すると、吐出行程にある作動室の吐出ポート52aに対する開口面積(以下、吐出開口面積と称することがある)が減少してしまう。当該吐出開口面積は、吐出ポート52a自体の開口面積ではないことに留意する。吐出開口面積は雄雌両ロータ20、30の回転角度の変化に応じて増減するので、代表開口面積という指標を使って吐出開口面積の大小を判定する。代表開口面積は、次の式(3)で定義されたものである。
【0050】
【数3】
【0051】
ここで、開口区間は、或る作動室が吐出行程となる雄雌両ロータ20、30の回転角度の範囲を示している。また、吐出口開口面積の最大値は、当該開口区間において吐出行程の作動室が吐出ポート52aに対して開口する面積の最大値である。
【0052】
代表開口面積が減少すると、その分、圧縮気体の吐出抵抗が増加するので、結果としてスクリュー圧縮機の圧縮効率が低下することがある。単段スクリュー圧縮機において一般的に採用される8以上の圧力比の場合では、代表開口面積の減少よる圧縮気体の吐出抵抗増加の悪影響の方が外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れ抑制の効果を上回ってしまう。このため、高圧力比の単段スクリュー圧縮機では、吸込側から吐出側に向かってリードを大きくする構造を採用することが難しい。それに対して、二段スクリュー圧縮機を含む多段スクリュー圧縮機では、各段の圧力比が単段スクリュー圧縮機よりも小さくなっているので、代表開口面積の減少による圧縮気体の吐出抵抗増加の悪影響が軽減されつつ、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れの抑制効果を確保することができるという利点がある。
【0053】
例えば、本実施の形態の後段圧縮機本体2における圧力比の変化に対する代表開口面積の変化の関係を図10に示す。図10中、横軸は後段圧縮機本体2の圧力比を示している。縦軸は等リードのスクリューロータを備えた圧力比8の単段スクリュー圧縮機の代表開口面積に対する本実施の形態の後段圧縮機本体2の代表開口面積の比を示している。なお、図10に示す特性図は、後段圧縮機本体2の雄ロータ20及び雌ロータ30は、吸込側端面21b、31bにおけるリードを基準となる単段スクリュー圧縮機の等リードのスクリューロータのリードと同じ値に設定すると共に、吸込側端面21b、31bにおけるリードに対する吐出側端面21c、31cにおけるリードの比を1.5に設定したときの結果を示している。
【0054】
吸込側から吐出側に向かってリードが大きくなる雄ロータ20及び雌ロータ30を備える後段圧縮機本体2の場合、圧力比を8としたとき、図10に示すように、基準である等リードのスクリューロータを備えた圧力比8の単段スクリュー圧縮機の代表開口面積(図10中、△印)よりも、代表開口面積が小さくなる。このため、代表開口面積が小さいことによる吐出抵抗の増大が予想される。それに対して、後段圧縮機本体2の圧力比を4.5以下としたときには、基準である圧力比8の単段スクリュー圧縮機の代表開口面積以上の代表開口面積を確保することができる。したがって、後段圧縮機本体2の圧力比を4.5以下に設定することで、代表開口面積の大きさによる吐出抵抗の増大の影響を軽減することができると共に、雌ロータ30の歯先厚さt0の増加及び雄ロータ20及び雌ロータ30歯先のシール線Sm、Sfの長さの短縮による作動室間の漏れの抑制効果を図ることができる。
【0055】
上述したように、第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機(多段スクリュー圧縮機)は、気体を順に圧縮する前段圧縮機本体1及び後段圧縮機本体2(複数段の圧縮機本体)を備えており、前段圧縮機本体1及び後段圧縮機本体2(複数段の圧縮機本体)の各段は互いに噛み合った状態でケーシング40内に回転可能に収容された雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)を有する。雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)は、軸方向の一方端及び他方端にそれぞれ吸込側端面21b、31b及び吐出側端面21c、31cを有すると共に吸込側端面21b、31bから吐出側端面21c、31cまで延在する捩じれた歯21a、31aを有するロータ歯部21、31を含んでいる。前段圧縮機本体1及び後段圧縮機本体2(複数段の圧縮機本体)のうちの最上流に位置する前段圧縮機本体1(初段の圧縮機本体)を除く後段圧縮機本体2(少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)における雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)は、ロータ歯部21、31の歯21a、31aの捩れを1回転させたと仮定したときに軸方向に進む長さを示すリードがロータ歯部21、31の軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくなるよう構成されている。
【0056】
この構成によれば、前段圧縮機本体1(初段の圧縮機本体)を除く後段圧縮機本体2(少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)の雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)におけるリードを軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくすることで、ロータ歯部21、31の歯先厚さt1(歯先の延伸方向に対して垂直な断面の歯先の厚み)が吐出側で厚くなると共に、ロータ歯部21、31の歯先の捩じれ方向に延びるシール線Sf、Smの長さが短くなる。これにより、雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)の歯先とケーシング40の第1内周面46及び第2内周面47(内周面)との隙間(外径隙間)を介した作動室間の圧縮気体の漏出による効率低下を抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態においては、最下流に位置する後段圧縮機本体2(最終段の圧縮機本体)における雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)に対して、リードがロータ歯部21、31の軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくなるよう構成されている。この構成によれば、運転差圧がより大きな後段圧縮機本体2の雄ロータ20及び雌ロータ30に対してリード変化のスクリューロータを採用するので、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れの抑制効果が高く、圧縮効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機において、後段圧縮機本体2(前段圧縮機本体1を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)における雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)は、リードがロータ歯部21、31の軸方向の全長に亘って変化するように構成されている。この構成によれば、ロータ歯部21、31の歯先厚さt1が軸方向の吸込側端面21b、31bから吐出側端面21c、31cに至るまでに徐々に厚くなっていくので、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏出をより抑制することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る後段圧縮機本体2(前段圧縮機本体1を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)は、圧力比が4.5以下である。この構成によれば、雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)のリード変化に伴う吐出開口面積の減少による吐出抵抗の増加を抑制しつつ、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏出抑制による圧縮機効率の向上を図ることができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機において、後段圧縮機本体2(前段圧縮機本体1を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)における雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)は、吸込側端面21b、31bにおけるリードに対する吐出側端面21c、31cにおけるリードの比が1.5以下である。この構成によれば、雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)のリード変化に伴う吐出開口面積の減少による吐出抵抗の増加を抑制しつつ、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏出抑制による圧縮機効率の向上を図ることができる。
【0061】
また、本実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機において、後段圧縮機本体2(前段圧縮機本体1を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)における雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)では、以下の式において全巻角を190度から310度までの範囲のいずれかの値としたときに得られるリード角が吸込側端面21b、31bにおけるリード角として設定されている。
【0062】
【数4】
【0063】
この構成よれば、等リードのスクリューロータのリード角を算出する上記の式に対して、等リードのスクリューロータで一般的に用いられる全巻角の値(190度から310度までの範囲)を代入することで、リードが変化する雄ロータ20及び雌ロータ30におけるリード角変化の始点となる吸込側端面におけるリード角を等リードのスクリューロータで用いられるリード角と同様な値に設定することができる。リードが変化する雄ロータ20及び雌ロータ30の吸込側端面におけるリード角を等リードのスクリューロータのリード角と同様な値に設定すると、行程容積や容積比などの雄ロータ20及び雌ロータ30の設計項目について等リードのスクリューロータの値を参考にすることができるので、設計項目の調整が容易になって設計効率が向上する。
【0064】
[第1の実施の形態の変形例]
次に、第1の実施の形態の変形例に係る二段スクリュー圧縮機について図11を用いて例示説明する。図11は本発明の第1の実施の形態の変形例に係る二段スクリュー圧縮機の一部を構成する後段圧縮機本体の構造を示す断面図である。なお、図11において、図1図10に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図11に示す第1の実施の形態の変形例に係る二段スクリュー圧縮機が第1の実施の形態に係る二段スクリュー圧縮機(図3参照)と異なる点は、以下のとおりである。第1の実施の形態の後段圧縮機本体2は、雄雌両ロータ20、30が軸方向の吸込側端面21b、31bから吐出側端面21c、31cまでの全体に亘ってリードが変化するように構成されている。それに対して、本変形例に係る後段圧縮機本体2Aでは、雄雌両ロータ20A、30Aが吸込側端面21b、31bから吐出側に向かって或る位置までリードが変化しない等リードに構成されている一方、当該位置を起点として吐出側端面21c、31cに向かってリードが徐々に大きくなるように構成されている。
【0066】
具体的には、本実施の形態に係る後段圧縮機本体2Aの雌ロータ30Aでは、例えば図11に示すように、雌ロータ30Aの吸込側端面31bにおけるリード角φ1は、吸込側端面31bから軸方向の吐出側に向かって或る位置おけるリード角φ2Aと同値である。すなわち、雌ロータ30Aは、吸込側端面31bからリード角φ2Aを示す軸方向の当該位置までの範囲においてリード角(φ1=φ2A)が変化しない雌歯31Aaを有しており、吸込側端面31bを含む吸込側の或る範囲において等リードになっている。一方、雌ロータ30の吐出側端面31cにおけるリード角φ3は、リード角φ2Aよりも大きくなるように構成されている。すなわち、雌ロータ30Aは、リード角φ2Aを示す軸方向の当該位置から吐出側端面31cに向かってリード角が徐々に大きくなる雌歯31Aaを有しており、吐出側端面31cを含む吐出側の或る範囲においてリードが変化する。
【0067】
後段圧縮機本体2Aの雄ロータ20Aも、雌ロータ30Aと同様に、吸込側端面21bから軸方向の或る位置まではリード角が変化しない等リードになっている。一方、当該或る位置から吐出側端面21cに向かってリード角が徐々に大きくなるリード変化のロータになっている。
【0068】
このように、本変形例においては、後段圧縮機本体2Aの雄ロータ20A及び雌ロータ30Aは、ロータ歯部21A、31Aの軸方向の全体のうち、吐出側に偏った部分においてリードが変化する一方、前記軸方向の残りの吸込側の部分においてリードが同一となるように構成されている。スクリューロータの加工は、等リードの部分の方がリード変化の部分よりも容易である。したがって、軸方向の吸込側において外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏出による圧縮効率の低下が小さい場合には、リード変化の領域を軸方向の吐出側の一部分に限定することで、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏出抑制の効果を得つつ、製造の容易性を優先して低コスト化を図ることができる。
【0069】
上述した第1の実施の形態の変形例においては、第1の実施の形態と同様に、前段圧縮機本体1(初段の圧縮機本体)を除く後段圧縮機本体2A(少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)の雄ロータ20A及び雌ロータ30A(一対のスクリューロータ)におけるリードを軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくすることで、ロータ歯部21A、31Aの歯先厚さt1(歯先の延伸方向に対して垂直な断面の歯先の厚み)が吐出側で厚くなると共に、ロータ歯部21A、31Aの歯先の捩じれ方向に延びるシール線Sf、Smの長さが短くなる。これにより、雄ロータ20A及び雌ロータ30A(一対のスクリューロータ)の歯先とケーシング40の第1内周面46及び第2内周面47(内周面)との隙間(外径隙間)を介した作動室間の圧縮気体の漏出による効率低下を抑制することができる。
【0070】
また、本変形例に係る後段圧縮機本体2A(前段圧縮機本体1を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)における雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)は、ロータ歯部21A、31Aの軸方向の全長のうち、吐出側端面21c、31cを含む軸方向の吐出側に偏った部分においてリードが変化する一方、軸方向の残りの吸込側の部分においてリードが同一である。この構成によれば、リードが同一の部分において加工が容易になると共に、リードが変化する部分において外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れの抑制効果を得ることができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る三段スクリュー圧縮機の構成について図12を用いて例示説明する。図12は本発明の第2の実施の形態としての三段スクリュー圧縮機を模式的に示す断面図である。図12において、図1図11に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0072】
図12に示す第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、本発明の多段スクリュー圧縮機を、二段スクリュー圧縮機(図1を参照)でなく、三段スクリュー圧縮機に適用したことである。二段スクリュー圧縮機は、吐出圧力が2.3MPaを超えると、各段の圧縮機本体1、2の圧力比が大きくなるので、三段スクリュー圧縮機を採用することが適切な場合がある。
【0073】
三段スクリュー圧縮機は、気体を順に圧縮する複数段の圧縮機本体のうち、最上流に位置する初段の圧縮機本体としての第1段圧縮機本体1と、最下流に位置する最終段の圧縮機本体としての第3段圧縮機本体2と、第1段圧縮機本体1と第3段圧縮機本体2との中間に位置する中間段の圧縮機本体としての第2段圧縮機本体3とを備えている。三段スクリュー圧縮機は、第1段圧縮機本体1が圧縮して吐出した気体を第2段圧縮機本体3が吸い込んで更に圧縮し、第2段圧縮機本体3から吐出された圧縮気体を第3段圧縮機本体2が吸い込んで更に圧縮して昇圧するものである。第1段圧縮機本体1の吐出側と第2段圧縮機本体3の吸込側は、第1接続流路11を介して接続されている。第2段圧縮機本体3の吐出側と第3段圧縮機本体2の吸込側は、第2接続流路12を介して接続されている。なお、第1接続流路11及び第2接続流路12には、インタークーラ(図示せず)などの冷却手段を設ける構成が可能である。
【0074】
本実施の形態においては、第1段圧縮機本体1、第2段圧縮機本体3、第3段圧縮機本体2のうち、少なくとも第3段圧縮機本体2の雄雌両ロータ20、30はそれぞれ、吸込側から吐出側に向けてリードが徐々に大きくなるように構成されている。第3段圧縮機本体2の運転差圧は、第1段圧縮機本体1の運転差圧や第2段圧縮機本体3の運転差圧よりも大きくなる。例えば、三段スクリュー圧縮機の吐出圧力が2.3MPaの場合には、第3段圧縮機本体2の運転差圧が1.493MPaと非常に大きなものとなる。したがって、第3段圧縮機本体2では、第1段圧縮機本体1及び第2段圧縮機本体3よりも、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れによる圧縮効率の低下の問題が懸念される。そこで、運転差圧の最も大きな第3段圧縮機本体2に対して、吸込側から吐出側に向けてリードが大きくなる雄雌両ロータ20、30を用いることで、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れを効果的に抑制して圧縮効率の低下を抑制するものである。
【0075】
本実施の形態においては、第2段圧縮機本体3の雄雌両ロータ20(雌ロータは図示せず)に対しても吸込側から吐出側に向けてリードが徐々に大きくなるように構成してもよい。第2段圧縮機本体3の運転差圧は第1段圧縮機本体1の運転差圧に比べると大きくなっているので、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れによる圧縮効率低下の問題を考慮すべき場合がある。そこで、運転差圧が比較的大きな第2段圧縮機本体3に対しても、吸込側から吐出側に向けてリードが大きくなる雄雌両ロータ20を用いることで、第2段圧縮機本体3における外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れを抑制することで、三段スクリュー圧縮機全体の更なる高効率化を実現することができる。
【0076】
一方、第2段圧縮機本体3の運転差圧が比較的小さく、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏れによる圧縮効率の低下が比較的小さい場合には、雄雌両ロータ20Xを等リードに構成することも可能である。この場合、雄雌両ロータ20Xの製造がリード変化のスクリューロータに比べて容易となるので、低コスト化を図ることができる。
【0077】
上述した第2の実施の形態に係る三段スクリュー圧縮機(多段スクリュー圧縮機)においては、第1の実施の形態と同様に、第3段圧縮機本体2(第1段圧縮機本体1を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体)の雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)におけるリードを軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくすることで、ロータ歯部21、31の歯先厚さt1が吐出側で厚くなると共に、ロータ歯部21、31の歯先の捩じれ方向に延びるシール線Sf、Smの長さが短くなる。これにより、雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)の歯先とケーシング40の第1内周面46及び第2内周面47(内周面)との隙間(外径隙間)を介した作動室間の圧縮気体の漏出による効率低下を抑制することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る三段スクリュー圧縮機(多段スクリュー圧縮機)において、第1段圧縮機本体1、第2段圧縮機本体3、第3段圧縮機本体2(複数段の圧縮機本体)のうち、第1段圧縮機本体1(初段の圧縮機本体)を除く第2段圧縮機本体3及び第3段圧縮機本体2(各段の圧縮機本体)における雄ロータ20及び雌ロータ30(一対のスクリューロータ)は、リードがロータ歯部21、31の軸方向の吸込側から吐出側に向かって大きくなるよう構成されている。
【0079】
この構成によれば、運転差圧が第1段圧縮機本体1よりも大きい第2段圧縮機本体3及び第3段圧縮機本体2に対して、外径隙間を介した作動室間の圧縮気体の漏出を抑制することができるので、三段スクリュー圧縮機(多段スクリュー圧縮機)全体の圧縮効率の低下を効果的に抑制することができる。
【0080】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。すなわち、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0081】
例えば、上述した実施の形態においては、後段圧縮機本体2の雌ロータ30の吸込側端面31bの歯先点におけるリード角φ1を比較例のスクリュー圧縮機102の雌ロータ130の吸込側端面131bの歯先点におけるリード角φ10と同じ角度に設定した場合について説明した。しかし、後段圧縮機本体2の雌ロータ30の吸込側端面31bの歯先点におけるリード角φ1は、比較例のスクリュー圧縮機102の雌ロータ130の吸込側端面131bの歯先点におけるリード角φ10よりも大きく設定することも小さく設定することも可能である。
【0082】
また、上述した実施の形態においては、各段の雄ロータ20、20Xが回転駆動源に駆動される構成の例を示した。しかし、各段の雌ロータ30、30Xが回転駆動源に駆動される構成も可能である。また、前段圧縮機本体1では雄ロータ20Xが回転駆動源に駆動される一方、後段圧縮機本体2では雌ロータ30が回転駆動源に駆動される構成も可能である。また、前段圧縮機本体1と後段圧縮機本体2とで各段の雄ロータ20、20Xと雌ロータ30、30Xが逆のパターンで駆動される構成も可能である。また、各段の雄雌両ロータ20、20X、30、30Xを同期させて駆動する構成も可能である。また、1つの回転駆動源が主ギアを回転させて主ギアに噛み合う副ギアで各段の圧縮機本体1、2を駆動する構成も可能である。また、複数段の圧縮機本体1、2の各々に回転駆動源を配設して個別で駆動する構成も可能である。
【0083】
また、上述した第1の実施の形態及びその変形例においては、前段圧縮機本体1及び後段圧縮機本体2、2Aとこれらを接続する接続流路10とで構成した二段スクリュー圧縮機に本発明を適用した例を示した。また、第2の実施の形態においては、本発明を第1段圧縮機本体1と第2段圧縮機本体3と第3段圧縮機本体2とこれらを接続する第1接続流路11及び第2接続流路12とで構成した三段スクリュー圧縮機に適用した例を示した。しかし、本発明は、前段圧縮機本体1及び後段圧縮機本体2とこれらを接続する接続流路10とを一組として複数組を接続する構成も可能である。また、第1段圧縮機本体1と第2段圧縮機本体3と第3段圧縮機本体2とこれらを接続する第1接続流路11及び第2接続流路12とを一組として複数組を接続する構成も可能である。すなわち、複数段の圧縮機とこれらを接続する接続流路とを一組とする構成や複数段の圧縮機とこれらを接続する接続流路とを一組として複数組を接続する多段スクリュー圧縮機の構成が可能である。
【0084】
また、第2の実施の形態においては、第1段圧縮機本体1、第2段圧縮機本体3、第3段圧縮機本体2のうち、少なくとも第3段圧縮機本体2に対して雄雌両ロータ20、30のリードが変化する構成の例を示した。しかし、第1段圧縮機本体1、第2段圧縮機本体3、第3段圧縮機本体2のうち、第2段圧縮機本体3の雄雌両ロータ20、30のみリードが変化する構成も可能である。何らかの理由で第2段圧縮機本体3の方が第3段圧縮機本体2よりも段圧力比を大きく設定した場合には、第2段圧縮機本体3に対して優先的にリードが変化する構成を適用する一方、第3段圧縮機本体2に対しては製造の容易性を優先して等リードの構成を適用することも可能である。すなわち、複数段の圧縮機本体のうちの最上流に位置する第1段圧縮機本体1を除く少なくとも1つの或る段の圧縮機本体に対して雄雌両ロータ20、30のリードが変化する構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…前段圧縮機本体又は第1段圧縮機本体(初段の圧縮機本体)、 2…後段圧縮機本体又は第3段圧縮機本体(最終段の圧縮機本体)、 3…第2段圧縮機本体(圧縮機本体)、 20、20A、20X…雄ロータ(スクリューロータ)、 21、21A…ロータ歯部、 21a…雄歯(歯)、 21b…吸込側端面、 21c…吐出側端面、 30、30A…雌ロータ(スクリューロータ)、 31、31A…ロータ歯部、 31a…雌歯(歯)、 31b…吸込側端面、 31c…吐出側端面、 40…ケーシング、 φ1、φ2、φ3、φ4…リード角
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図12