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特許7403520摩擦部材及び摩擦部材を備えた熱変色性筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】摩擦部材及び摩擦部材を備えた熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20231215BHJP
   B43L 19/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B43K29/02 F
B43L19/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021196247
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2020000164の分割
【原出願日】2015-11-13
(65)【公開番号】P2022024168
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2015010696
(32)【優先日】2015-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015018820
(32)【優先日】2015-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 和彦
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-250347(JP,A)
【文献】特開2012-200908(JP,A)
【文献】特開2011-051093(JP,A)
【文献】特開2013-173358(JP,A)
【文献】特開2014-128929(JP,A)
【文献】特開平08-230388(JP,A)
【文献】特開平09-254586(JP,A)
【文献】特開2014-141077(JP,A)
【文献】特開平11-208181(JP,A)
【文献】特開平09-175087(JP,A)
【文献】特開2006-044144(JP,A)
【文献】特開2000-296695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 29/02
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インクによる筆跡を消去するための摩擦部材を具備する熱変色性筆記具であって、
前記摩擦部材が、非フタル酸系可塑剤を含み、JIS K7204に規定されたテーバー摩耗試験によるテーバー摩耗量がCS-17で10mg以上であり、
当該熱変色性筆記具が、前記摩擦部を介して操作部を前方へ押圧するノック操作を行うノック式筆記具であり、
前記摩擦部材が、未使用時において、透明又は半透明に形成されているカバー部材によって覆われていると共に、前記カバー部材によって覆われている状態では、前記摩擦部材を介したノック操作をすることができないことを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
熱変色性インクによる筆跡を消去するための摩擦部材を具備する熱変色性筆記具であって、
前記摩擦部材が、非フタル酸系可塑剤を含み、JIS K7204に規定されたテーバー摩耗試験によるテーバー摩耗量がCS-17で10mg以上であり、
軸筒と、軸筒内に配置された複数の筆記体と、回転繰り出し機構と、カバー部材とを具備し、前記回転繰り出し機構が、前記カバー部材と協働して複数の前記筆記体を順番に繰り出し可能であることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項3】
熱変色性インクによる筆跡を消去するための摩擦部材を具備する熱変色性筆記具であって、
前記摩擦部材が、非フタル酸系可塑剤を含み、JIS K7204に規定されたテーバー摩耗試験によるテーバー摩耗量がCS-17で10mg以上であり、
カバー部材を具備し、前記摩擦部材が、未使用時において、前記カバー部材によって覆われ、前記カバー部材の側面には台形開口が形成されると共に、前記台形開口の前記カバー部材の頂面近傍の部分には、径方向外方に突出した突出部が形成されており、
カバー部材を具備し、前記カバー部材の頂面の中央部には円形開口が形成され、前記円形開口の周囲には、3つの円弧状の円弧開口が、周方向に沿って等間隔に形成されていることを特徴とする熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦部材及び摩擦部材を備えた熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
熱変色性インクによる筆跡を擦過して変色又は消色させる摩擦部材及び摩擦部材を備えた筆記具が公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1には、摩擦部材が、紙面等との摩擦で摩耗屑がほとんど生じないように、低摩耗性の弾性材料から形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2008/105227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の摩擦部材は低摩耗性材料から形成されることから、書籍のように印刷された文字等が予め存在する紙面上に、筆記された熱変色性インクの筆跡を擦過する際に、当該熱変色性インクの筆跡を変色又は消色させるだけでなく、印刷文字を掠れさせてしまい、結果、紙面を汚してしまうことがある。また、低摩耗性材料から形成される摩擦部材は、強く擦過すると紙面まで傷めてしまう虞もある。
【0005】
本発明は、熱変色性インクの筆跡を容易に変色可能であり、紙面を傷めず且つ印刷文字を掠れさせない摩擦部材及び摩擦部材を備えた熱変色性筆記具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、熱変色性インクによる筆跡を消去するための摩擦部材において、JIS K7204に規定されたテーバー摩耗試験によるテーバー摩耗量がCS-17で10mg以上であることを特徴とする摩擦部材が提供される。すなわち、本態様によれば、熱変色性インクによる筆跡を擦過する際に摩擦部材が適度に摩耗するため、紙面を傷めず且つ印刷文字を掠れさせることなく、筆跡の消去が可能となる。
【0007】
また、別の態様によれば、JIS K6203に規定されたデュロメータD硬度が30以上であることを特徴とする摩擦部材が提供される。すなわち、本態様によれば、摩擦部材を所定の硬さにできるため、より安定した擦過動作が可能となる。
【0008】
また、別の態様によれば、フタル酸系可塑剤を含むことを特徴とする摩擦部材が提供される。すなわち、本態様によれば、摩擦部材が、より摩耗しやすくなるため、紙面を傷めず且つ印刷文字を掠れさせることなく、筆跡の消去が可能となる。
【0009】
また、別の態様によれば、上記態様による摩擦部材を具備する熱変色性筆記具が提供される。
【0010】
また、別の態様によれば、前記摩擦部材が、未使用時において、透明又は半透明に形成されているカバー部材によって覆われていることを特徴とする熱変色性筆記具が提供される。
【0011】
また、前軸及び後軸を備えた軸筒を具備し、前記摩擦部材が、前記前軸の後端部に設けられ且つ前記後軸の前端部内に配置されていることを特徴とする熱変色性筆記具が提供される。
【0012】
また、別の態様によれば、軸筒と、軸筒内に配置された複数の筆記体と、回転繰り出し機構と、カバー部材とを具備し、前記回転繰り出し機構が、前記カバー部材と協働して複数の前記筆記体を順番に繰り出し可能であることを特徴とする熱変色性筆記具が提供される。
【0013】
また、別の様態によれば、前記摩擦部材が、後端に露出された横断面において三角形状であり、三角形の頂点は丸く円弧状に形成され、その円弧の曲率半径は、後端側の方がより大きくなっていることを特徴とする熱変色性筆記具が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、熱変色性インクの筆跡を容易に変色可能であり、紙面を傷めず且つ印刷文字を掠れさせない摩擦部材及び摩擦部材を備えた熱変色性筆記具を提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による摩擦部材を備えた筆記具を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。
図2図1の筆記具の後端部分の斜視図である。
図3図1の筆記具の後端部分の別の斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態による摩擦部材を備えた筆記具を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。
図5図4の筆記具の前軸の斜視図である。
図6】本発明の第3実施形態による摩擦部材を備えた筆記具を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。
図7図6の筆記具の別の縦断面図である。
図8】本発明の第4実施形態による摩擦部材を備えたリフィル収納容器を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。
図9】本発明の第5実施形態による摩擦部材を備えた筆記具のカバー部材の斜視図である。
図10図9のカバー部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態による摩擦部材を備えた筆記具1を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。筆記具1は、いわゆるノック式筆記具である。
【0018】
筆記具1は、筒状に形成され且つ前軸2及び後軸3を備えた軸筒4と、軸筒4内に配置され且つ一端に筆記部5aを備えた筆記体であるリフィル5と、リフィル5を後方へ付勢するスプリング6とを有する。また、軸筒4の後端部には、クリップ7を備えた筒状に形成された内筒8及び操作部9を含む公知のノック機構10が配置されている。操作部9の後端部には、摩擦部材11が、嵌合や接着等によって取り付けられている。摩擦部材11は、カバー部材12によって覆われている。
【0019】
本明細書中では、筆記具1の軸線方向において、筆記部5a側を「前」側と規定し、筆記部5aとは反対側を「後」側と規定する。摩擦部材11を介して操作部9を前方へ押圧することによって、すなわちノック操作をすることによって、リフィル5が軸筒4内を前後方向に移動し、筆記具1の非筆記状態及び筆記状態を切り替えることができる。
【0020】
図2は、図1の筆記具1の後端部分の斜視図であり、図3は、図1の筆記具の後端部分の別の斜視図である。図2及び図3に示されるように、摩擦部材11は、操作部9に取り付けられた状態で内筒8から露出した部分の横断面形状が、略三角形となるように形成されている。具体的には、横断面において、三角形の頂点は丸く円弧状に形成され、その円弧の曲率半径は、摩擦部材11の後端側の方がより大きくなっている。摩擦部材11の後端面11aは、曲面状に形成されている。したがって、摩擦部材11の後端面11aと周面11bとの境界は稜線11cを形成している。
【0021】
摩擦部材11は、後端面を用いることによって、より広い面積を擦過することができる。また、摩擦部材11は、三角形の辺に相当する稜線11cの部分を使用することにより、より広い面積を擦過することができ、三角形の頂点に相当する稜線11cの部分を使用することにより、より狭い面積を擦過することができる。なお、当然のことながら、横断面形状は、三角形に限定されず、四角形、六角形等、その他の多角形であってもよい。
【0022】
内筒8の後端部には、カバー部材12と嵌合する筒状の嵌合部8aが形成されている。嵌合部8aは、摩擦部材11を介した操作部9のノック操作を阻害しないように、且つ、操作部9及び摩擦部材11を受容するように、摩擦部材11の外形に対して略相補的に形成されている。カバー部材12は、先端が閉鎖されていることによって摩擦部材11を保護し、内筒8の嵌合部8aに嵌合するように、嵌合部8aの外周面と相補的な内周面を有している。嵌合部8aの外周面には、周方向等間隔に配置された嵌合凸部8bが形成され、対応するカバー部材12の内周面には、嵌合凹部12aが形成されている。これら嵌合凹部12a及び嵌合凸部8bが、嵌合することによって、カバー部材12が内筒8の後端部に対して取り付けられる。
【0023】
摩擦部材11を使用していない未使用時には、カバー部材12によって覆われることから、汚れ等を防ぐことができる。また、この状態では、摩擦部材11を介して操作部9を前方へ押圧することができないことから、意図せずノック操作されることが防止される。言い換えると、ノック操作をする際には、カバー部材12を内筒8から外す必要がある。
【0024】
リフィル5は、熱変色性マイクロカプセル顔料を含有した熱変色性インクを収容している。したがって筆記具1は熱変色性筆記具である。熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクをいう。熱変色性インクを用いた筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦部材11によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0025】
詳細に述べると、熱変色性マイクロカプセル顔料は、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
【0026】
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
【0027】
具体的には、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1(3H)-イソベンゾフラノン、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジメチルアミノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジブチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-エチルイソアミルアミノフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(N-フェニル-N--メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(3’-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、3-メトキシ-4-ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
【0028】
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。好ましくは、熱により有色から無色となるロイコ色素の使用が望ましい。
【0029】
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
【0030】
用いることができる顕色剤としては、具体的には、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1-フェニル-1,1-ビス( 4'-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)n-ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、前記したロイコ色素1質量部に対して、0.1~100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0032】
用いることができる変色温度調整剤は、前記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。
【0033】
用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
【0034】
例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C715)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C1123)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C1327)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C1327)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C1530)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C2143)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C1327)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
摩擦部材11は、特許文献1に記載されるような従来の摩擦部材に較べて、紙面を傷めず且つ印刷文字を掠れさせないように、適度に摩耗するように形成される。具体的には、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が10mg以上であることが好ましい。テーバー摩耗量が10mg未満の摩擦部材だと、擦過時に紙面を傷めてしまい且つ印刷文字を掠れさせてしまう。
【0036】
摩擦部材11を形成するための材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物を、テーバー摩耗量が10mg以上となるように構成し、摩擦部材11を形成する。
【0037】
さらに、テーバー摩耗量が10mg以上となるように調整するために、摩擦部材11の材料に対して、より柔軟性を出すためのフタル酸系可塑剤を添加してもよい。摩擦部材11が、フタル酸系可塑剤を含むことによって、摩擦部材11がより摩耗しやすくなるため、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去が可能となる。
【0038】
また、添加される可塑剤として、フタル酸系以外にもアルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸系ポリエステル、アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジエステル、ジエチレングリコールジベンゾエート等の非フタル酸系の可塑剤を用いてもよい。それによって、環境ホルモン(内分泌攪乱物質)を抑制できる。
【0039】
さらに、摩擦部材11は、JIS K6203に規定されたデュロメータD硬度が30以上であることが望ましい。それによって、所定の硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、摩擦部材11は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能である。
【0040】
また、摩擦部材11は、筆記具1に収容された熱変色性インクの色よりも明度値が低い色で着色されていることが好ましい。すなわち、摩擦部材11の使用時に筆記具1の熱変色性インクが変色することなく摩擦部材11の表面に転写した場合に、熱変色性インクの転写を目立たなくすることができる。特に、摩擦部材11の色を黒色とすることによって、摩擦部材11の使用に伴う表面の汚れも目立たなくすることができる。
【0041】
明度値は汎用型色差計(TC-8600A、東京電色株式会社製)等の測定装置を用いてマンセル表色系を使用し、摩擦部材の明度値は表面を測定し、熱変色性インクの明度値は、紙面(旧JIS P3201;化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40~157g/m、白色度75.0%以上)上に筆記速度4.5m/min、ピッチ間隔0.1mmで筆記した描線上を測定することによって求められる。
【0042】
以下、上述した成分構成の摩擦部材の様々な実施形態について説明する。
【0043】
図4は、本発明の第2実施形態による摩擦部材111を備えた筆記具100を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。筆記具100は、いわゆるノック式筆記具である。
【0044】
筆記具100は、筒状に形成され且つ前軸102及び後軸103を備えた軸筒104と、軸筒104内に配置され且つ一端に筆記部105aを備えた筆記体であるリフィル105と、リフィル105を後方へ付勢するスプリング106とを有する。また、軸筒104の後端部には、操作部109を含む公知のノック機構110が配置されている。操作部109を前方へ押圧することによって、すなわちノック操作をすることによって、リフィル105が軸筒104内を前後方向に移動し、筆記具100の非筆記状態及び筆記状態を切り替えることができる。すなわち、ノック機構110は、ノック操作に応じて周方向に回転し、前後方向に移動しながらそれ自体、後軸103と係止又は係止解除する筒状の回転部材113を有する。
【0045】
また、回転部材113の筒状の内部には、円板状の弾性部材114が配置されている。弾性部材114は、回転部材113の内部において内径の違いによって形成された段差113aによって係止している。スプリング106によって後方へ付勢されたリフィル105は、回転部材113の内部に挿入され、弾性部材114に対して当接している。
【0046】
従来のノック式筆記具は、上述した弾性部材114に相当する部材を有していない。したがって、筆記状態から非筆記状態へ移行するためノック操作をすると、圧縮状態にあってリフィルを付勢するスプリングの付勢力が一気に解放され、リフィルを回転部材に衝突させてしまう。その衝撃によって、インク内に気泡が発生し、筆記不良等の原因となる。
【0047】
この点、筆記具100は、弾性部材114を有することから、スプリング106の付勢力が一気に解放されたとしても、リフィル105の回転部材113に対する衝突は、弾性部材114の弾性変形によって吸収される。また、筆記具100を誤って落下させた場合でも、リフィル105の回転部材113に対する衝突による衝撃を軽減させることができる。したがって、筆記具100によれば、筆記不良等の問題が生じることがない、という効果を奏する。さらに筆記具100を落下させた場合において、衝撃を軽減させることができることから、ボールペンの筆記部先端に包持されたボールが外れてしまうことが防止される。なお、弾性部材114は、別体ではなく、回転部材113と二色成形等で一体に形成してもよい。
【0048】
図5は、図4の筆記具100の前軸102の斜視図である。本実施形態では、前軸102の後端部に摩擦部材111が設けられている。すなわち、前軸102及び後軸103は、前軸102の後端部が後軸103の前端部内において互いに螺合することで取り付けられる。前軸102のねじ部102aの後端部分の周面が、平坦な円筒状に形成され、摩擦部材111を構成する。前軸102及び後軸103が、螺合以外、例えば圧入によって取り付けられる場合でも、前軸102の後端部分に摩擦部材111を形成可能である。すなわち、前軸102の後端部分に設けられた摩擦部材111は、使用していない未使用時には、カバー部材としての後軸103の前端部分によって覆われることから、汚れ等を防ぐことができる。また、後軸103を透明又は半透明の材料で形成することによって、前軸102の後端部分に設けられた摩擦部材111の摩耗状況を容易に視認することが可能となる。
【0049】
後軸103の透明材料又は半透明材料に、紫外線吸収剤を含有させることで、紫外線による摩擦体の劣化を防ぐことができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。透明性を高める観点からは、特に、白色系のベンゾエート系である日の丸合成樹脂工業株式会社製の商品名「TINUVIN770 DF」が好ましい。また、後軸103の材料中に含有させ成形する以外に、紫外線吸収剤の液化し後軸103の表面に塗布してもよい。
【0050】
なお、後軸103の前端部分に摩擦部材111を形成してもよい。後軸103の前端部が前軸102の後端部内において互いに螺合等するようにしてもよく、その場合も前軸102の後端部分又は後軸103の前端部分に摩擦部材111を形成してもよい。
【0051】
図6は、本発明の第3実施形態による摩擦部材211を備えた筆記具200を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。また、図7は、図6の筆記具200の別の縦断面図である。筆記具200は、回転繰り出し機構を有するいわゆる複式筆記具である。
【0052】
筆記具200は、筒状に形成され且つ前軸202及び後軸203を備えた軸筒204と、軸筒204内に配置され且つ一端に筆記部205aを備えた筆記体である複数のリフィル205と、対応するリフィル205を後方へ付勢する複数のスプリング206とを有する。また、軸筒204の後端部には、回転部209を含む公知の回転繰り出し機構210が配置されている。回転部209を周方向に回転させることによって、すなわち回転繰り出し操作をすることによって、複数のリフィル205が順番に軸筒204内を前後方向に移動し、筆記具200の非筆記状態及び筆記状態を切り替えることができる。
【0053】
回転部209の後端部には、保持部材214が取り付けられる。保持部材214は、摩擦部材211を受容して保持するように形成されている。また、回転部209の後端部の外周面には、クリップ部212aを備えたカバー部材212が、摩擦部材211及び保持部材214を受容しながら、着脱可能に嵌合している。すなわち、カバー部材212は、取り付けられた状態で摩擦部材211を覆っている。
【0054】
回転繰り出し機構210は、筒状の回転部209と、回転部209に接続された筒状の円筒カム213と、円筒カム213と協働する複数の摺動子215とを有する。回転部209は、後軸203の後端部に対して軸線周りに回転可能に取り付けられている。円筒カム213の前端面にはカム斜面213aが設けられている。カム斜面213aは、仮に筒状の円筒カム213を周方向に展開すると、1つの山を形成するように構成されている。摺動子215の前端部には、リフィル205の後端部が接続され、摺動子215の後端部には、スプリング206が接続されている。すなわち、リフィル205及び摺動子215は、後方へ付勢され、前後方向に沿ってのみ移動可能に構成されている。また、摺動子215は、スプリング206によって後方へ付勢されることによって、円筒カム213のカム斜面213aに対して常に押圧されることによって、当接している。
【0055】
回転部209を回転させると、回転部209に接続された円筒カム213も回転する。円筒カム213の回転によって、カム斜面213aに当接した摺動子215の各々は、順番に前後に移動する。すなわち、摺動子215は、カム斜面213aに沿って相対的に摺動する。カム斜面213aの山に到達した摺動子215に接続されたリフィル205の筆記部が、軸筒204から突出し、筆記状態となる。
【0056】
回転部209の外周面には、1つの係止突起209aが設けられている。また、カバー部材212には、回転部209への取り付けを阻害することなく且つ回転部209の係止突起209aを受容するように、係止溝212bが形成されている。回転繰り出し式の筆記具200には、回転部209を回転させるために、カバー部材212を取り付けた状態でないと、回転させることができないように構成されている。すなわち、回転部209の後端部は、軸筒204の後端部から少しだけ後方へ突出しているが、その部分を把持して回転部209を回転させるのは困難である。他方、図7に示されるように、カバー部材212を取り付けた状態では、カバー部材212のいずれかの部分を把持して回転させると、係止溝212bと回転部209の係止突起209aとが係止し、回転部209を回転させることができる。
【0057】
なお、回転部209に形成された係止突起209aの数及び形状は任意に設定可能であり、把持部として機能するカバー部材212の係止溝の数及び形状も、少なくとも1つの係止突起209aと係止可能な範囲において、任意に設定可能である。
【0058】
摩擦部材211は、円柱状に形成され、後端部、すなわち先端部は、筆跡を擦過しやすいように半球状に形成されている。保持部材214は、摩擦部材211の円柱状の部分を受容するように、当該部分が円筒状に形成されており、摩擦部材211を着脱可能に保持している。したがって、摩擦部材211は、筆記具200の後端部に取り付けられた状態で使用可能であり、また、筆記具200から取り外した状態でも使用可能である。摩擦部材211を使用していない未使用時には、カバー部材212によって覆われることから、汚れ等を防ぐことができる。
【0059】
図8は、本発明の第4実施形態による摩擦部材311を備えたリフィル収納品300を示し、(a)は側面図であり、(b)は縦断面図である。
【0060】
リフィル収納品300はリフィル収納容器301と、リフィル収納容器301内に収納された1本のリフィル305とから構成される。なお、リフィル収納容器301内に複数本のリフィル305を収納するようにしてもよい。また、リフィル305は第3実施形態でのリフィル205として用いることができることが好適である。
【0061】
リフィル収納容器301は、筒状の容器本体(軸筒)304と、容器本体304の頂部側の開口部302を開閉するほぼ中実の柱状のキャップ306とを有する。なお、容器本体304の底部側の開口部307内には尾栓308が封密に嵌合されている。リフィル305は、リフィル収納容器301内に筆記部305aがキャップ306に向けて位置するように配置される。
【0062】
本実施形態では、キャップ306を摩擦部材311として使用することができる。すなわち、キャップ306が、上述した材料によって形成される。また、容器本体304又は尾栓308を摩擦部材311として形成してもよい。
【0063】
リフィル収納品300が摩擦部材311を有することによって、リフィル305の予備としてリフィル収納品300を持ち歩く際に、リフィル収納品自体が筆記具の筆跡の擦過に使用可能であり、リフィル収納品300内のリフィル305を交換のため取り出した後でも、筆記具の筆跡の擦過に使用可能である。また、筆記具とは別体であることから、右手に筆記具を持ち、左手にリフィル収納品300の摩擦部材311を持ち、筆記は右手、擦過は左手といった便利な使用も可能である。
【0064】
図9は、本発明の第5実施形態による摩擦部材11を備えた筆記具のカバー部材412の斜視図であり、図10は、図9のカバー部材412の側面図である。カバー部材412以外の基本的構成は、第1実施形態による筆記具1と同一であるため説明を省略する。ただし、本実施形態による筆記具は、カバー部材412が嵌合する内筒8の後端部形状及び摩擦部材の形状が異なる。すなわち、これら部材の横断面形状は、カバー部材412が嵌合可能なように円形に形成されている。
【0065】
カバー部材412は、截頭円錐台形状の外形を有する。カバー部材412は、摩擦部材11を保護する。カバー部材412の内周面には、嵌合凹部412aが形成されている。嵌合凹部412aが、対応する内筒8の嵌合凸部8bに嵌合することによって、カバー部材412が内筒8の後端部に対して取り付けられる。
【0066】
カバー部材412の先端である頂面412bは、緩やかなドーム状に形成されている。頂面412bの中央部には円形開口412cが形成されている。円形開口412cの周囲には、3つの円弧状の円弧開口412dが、周方向に沿って等間隔に形成されている。カバー部材412の頂面412bに円形開口412c及び円弧開口412dが形成されていることによって、カバー部材412を幼児等が誤飲したとしても、気道を閉塞することなく安全性を確保することが可能となる。
【0067】
カバー部材412の円錐状の側面412eには、3つの台形状の台形開口412fが、周方向に沿って等間隔に形成されている形成されている。詳細には、円錐状の側面412eは略均一の肉厚で形成されており、側面412eの各々をカバー部材412の中心軸線に平行な平面で以て切除するように形成することによって、台形開口412fが形成される。このように形成した結果として、内部に貫通しなかったカバー部材412の側面、すなわち台形開口412f近傍の部分には、平坦な平面412gが形成され、台形開口412fの各々の頂面412b近傍の部分には、径方向外方に突出した突出部412hが形成される。
【0068】
摩擦部材11を使用する場合等にカバー部材412を取り外す際に、指が滑ることなく突出部412hに指を引っ掛けることができることから、カバー部材412の取り外しを容易に行うことができる。また、カバー部材412の取り外しの際にカバー部材412を把持する場合も、指が台形開口412f周囲の平面412gに当たることから、皮膚に優しく把持をすることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 筆記具
2 前軸
3 後軸
4 軸筒
5 リフィル
6 スプリング
7 クリップ
8 内筒
9 操作部
10 ノック機構
11 摩擦部材
12 カバー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10