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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】成形システム
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/033 20110101AFI20231215BHJP
【FI】
B21D26/033
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021508224
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005368
(87)【国際公開番号】W WO2020195277
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019061368
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
(72)【発明者】
【氏名】井手 章博
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167315(JP,A)
【文献】特開2016-190263(JP,A)
【文献】特開昭58-024701(JP,A)
【文献】特開昭51-87604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状を呈する金属パイプを成形する成形システムであって、
前記金属パイプを成形するとき、加熱された金属パイプ材料内に気体を供給する気体供給部、及び、成形された前記金属パイプ内の前記気体を排出する排出部を有する成形装置と、
前記排出部の排気口は、内部空間を有する構造物の前記内部空間に位置し、
前記成形装置が載置される床面と、
前記床面の下部に設けられる地下ピットと、を更に備え、
前記排出部は、前記構造物としての前記地下ピットに位置すると共に前記排気口が設けられる排気管を有する、成形システム。
【請求項2】
前記成形装置は、前記金属パイプ材料を加熱するための電極と、前記電極に接続される給電ラインと、をさらに有し、
前記給電ラインは、前記地下ピットに収容される導体を有し、
前記地下ピットでは、前記排気口は、前記導体に対向している、請求項1に記載の形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱した金属パイプ材料内に気体を供給して膨張させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプの成形を行う成形装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、互いに対になる上下金型と、上下金型の間に保持された金属パイプ材料内に高圧の気体を供給する気体供給部と、当該金属パイプ材料を加熱する加熱機構と、上記上下金型が合わさることによって形成されるキャビティ部とを備える成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるような成形装置にて成形される金属パイプの生産性を向上するためには、金属パイプから高圧の気体を迅速に排出する必要がある。この場合、気体の排出音が大きくなってしまうので、当該排出音が成形装置の作業者等に対する騒音となり得る。したがって、上記排出音への対策が求められている。
【0005】
本開示は、排出音への対策可能な成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る成形システムは、中空形状を呈する金属パイプを成形する成形システムであって、金属パイプを成形するとき、加熱された金属パイプ材料内に気体を供給する気体供給部、及び、成形された金属パイプ内の気体を排出する排出部を有する成形装置と、排出部の排気口は、内部空間を有する構造物の内部空間に位置する。
【0007】
この成形システムによれば、排出部の排気口は、内部空間を有する構造物の内部空間に位置する。従って、排気口から高圧の気体が排出される際に発生する排出音は、構造物内にて発生する。この場合、構造物が排出音に対するサイレンサーとして機能する。このため当該排出音は、成形装置の周囲にて作業する作業者等に対して、騒音になりにくくなる。したがって上記成形システムを利用することによって、排出音への対策が可能になる。
【0008】
成形システムは、成形装置が載置される床面と、床面の下部に設けられる地下ピットと、を備える。排出部は、構造物としての地下ピットに位置すると共に排気口が設けられる排気管を有してよい。
【0009】
この成形システムによれば、排出部に含まれると共に排気口が設けられる排気管は、床面の下部に設けられる地下ピットに位置する。これにより、排気口から高圧の気体が排出される際に発生する排出音は、地下ピット内にて発生する。このため当該排出音は、床面上であって成形装置の周囲にて作業する作業者等に対して、騒音になりにくくなる。したがって上記成形システムを利用することによって、排出音への対策が可能になる。また、サイレンサーとして機能する構造物を地下ピットに設けることで、成形装置全体のスペース縮小に寄与する。
【0010】
成形装置は、金属パイプ材料を加熱するための電極と、電極に接続される給電ラインと、をさらに有し、給電ラインは、地下ピットに収容される導体を有し、地下ピットでは、排気口は、導体に対向してもよい。この場合、電極への通電に伴って加熱された導体を、排気口から排出される気体にて冷却できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、排出音への対策可能な成形システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る成形システムが有する成形装置の概略構成図である。
図2図2(a)は電極が金属パイプ材料を保持した状態を示す図であり、図2(b)は電極に気体供給ノズルが当接した状態を示す図であり、図2(c)は電極の正面図である。
図3図3は、成形システムの模式平面図である。
図4図4は、成形システムの要部概略斜視図である。
図5図5(a),(b)は、ブスバーと先端部との関係を示す模式図であり、図5(c)は、ブスバーと先端部とを離間させた状態を示す図である。
図6図6は、変形例に係る成形システムの排気機構周辺の構造を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一側面に係る成形システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
<成形装置の構成>
図1は、本実施形態に係る成形システムが有する成形装置の概略構成図である。図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11を有する成形金型13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備える。なお以下では、金属パイプ材料14は成形前の中空構造体であり、金属パイプは成形後の中空構造体である。このため、金属パイプ材料14と金属パイプとのそれぞれは、中空形状を呈する。
【0015】
成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)16を備える。下型11には冷却水通路19が形成されている。また、下型11は、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。熱電対21は、スプリング22により上下移動自在に支持されている。
【0016】
更に、下型11の左右端(図1における左右端)近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(下側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置されることで、下側電極17,18は、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14に接触する。これにより、下側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0017】
下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
【0018】
成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド81に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)24を備える。このキャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられる。
【0019】
上型12の左右端(図1における左右端)近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(上側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置された状態において、上側電極17,18は、下方に移動することで、上型12と下型11との間に配置された金属パイプ材料14に接触する。これにより、上側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0020】
上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材92がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材92は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80のスライド81側に保持されている。
【0021】
パイプ保持機構30の右側部分において、電極18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されている(図2(c)を参照)。当該凹溝18aの部分には、金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の右側部分において、絶縁材91,92が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0022】
パイプ保持機構30の左側部分において、電極17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されている(図2(c)を参照)。当該凹溝17aの部分には、金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能になっている。パイプ保持機構30の左側部分において、絶縁材91,92が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0023】
図1に示されるように、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、上記スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
【0024】
加熱機構50は、電力供給部55、並びに、電力供給部55と電極17,18とを電気的に接続する電力供給ライン52を備える。電力供給部55は、直流電源及びスイッチを含み、電極17,18が金属パイプ材料14に電気的に接続された状態において、電力供給ライン52、電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能とされている。電力供給ライン52は、下側電極17に接続される給電ライン52Aと、下側電極18に接続される給電ライン52Bとを有する。
【0025】
この加熱機構50では、電力供給部55から出力された直流電流は、給電ライン52Aによって伝送され、電極17に入力される。続いて、直流電流は、金属パイプ材料14を通過して、電極18に入力される。そして、直流電流は、給電ライン52Bによって伝送されて電力供給部55に入力される。
【0026】
図1に戻り、一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに合わさる形状に構成されている(図2参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在しており、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
【0027】
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14を膨張させるための作動圧力を有するガスを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。なお、第2チューブ67は、逆止弁69から二股に分岐しており、一方の気体供給機構40まで延びるガス供給ラインL1と、他方の気体供給機構40まで延びるガス供給ラインL2とを有する。
【0028】
成形装置10は、成形された金属パイプ内の気体を排気する排気機構(排出部)200A,200Bを備える。排気機構200Aはガス供給ラインL1に接続されており、排気機構200Bはガス供給ラインL2に接続されている。このため、排気機構200Aは、ガス供給ラインL1と一方の気体供給機構40のガス通路46とを介して金属パイプ内の気体を排気する。また、排気機構200Bは、ガス供給ラインL2と他方の気体供給機構40のガス通路46とを介して金属パイプ内の気体を排気する。排気機構200A,200Bのそれぞれは、例えば各供給ラインから分岐すると共に排気口が設けられる排気管(詳細は後述)を有する。排気機構200A,200Bのそれぞれは、制御部70によって開閉が制御される圧力制御弁、安全弁等を有する。圧力制御弁、安全弁等が設けられる位置は、特に限定されない。
【0029】
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、駆動機構80及び電力供給部55等を制御する。
【0030】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とを有する。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0031】
<成形装置を用いた金属パイプの成形方法>
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
【0032】
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。この挟持は電極17,18に形成される凹溝17a,18a、及び絶縁材91,92に形成される凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。
【0033】
このとき、図2(a)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している。また、上側電極17,18の下面と下側電極17,18の上面とは、それぞれ互いに接触している。ただし、金属パイプ材料14の両端部全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に電極17,18が当接するような構成であってもよい。
【0034】
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50の電力供給部55を制御し電力を供給する。すると、電力供給ライン52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。すなわち、金属パイプ材料14は通電加熱状態となる。
【0035】
続いて、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対して成形金型13を閉じる。これにより、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とが組み合わされ、下型11と上型12との間のキャビティ部内に金属パイプ材料14が配置密閉される。
【0036】
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする。このとき、図2(b)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面18bに沿うように漏斗状に変形する。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面17bに沿うように漏斗状に変形する。シール完了後、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティ部の形状に沿うように成形する。
【0037】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。
【0038】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0039】
上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行い、型開きを行うことにより、例えば略矩形筒状の本体部を有する金属パイプを得る。
【0040】
<成形システムの構成>
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態に係る成形システム1について説明する。図3は、成形システム1の模式平面図である。図4は、成形システム1の要部概略斜視図である。
【0041】
図3に示されるように、成形システム1は、成形装置10と、金属パイプ材料14が載置される第1載置部101と、成形後の金属パイプが載置される第2載置部102と、金属パイプ材料14もしくは金属パイプを搬送する搬送機構103と、制御部70とを備える。また、図4に示されるように、成形システム1は、成形装置10の一部が載置される床面300と、床面300の下部に設けられる地下ピット400(構造物)とをさらに備える。なお、図4においては説明のため、成形装置10の一部と床面300の一部とが省略されている。以下では、水平方向において電極17と電極18が対向する方向を「X軸方向」とし、水平方向におけるX軸方向と直交する方向を「Y軸方向」とし、上下方向を「Z軸方向」とする。
【0042】
第1載置部101は、方向Xにおいて成形装置10の中心よりも一方側に位置しており、且つ、方向Yにおいて成形装置10の中心よりも一方側に位置している。また、第2載置部102は、方向Xにおいて成形装置10の中心よりも他方側に位置しており、且つ、方向Yにおいて成形装置10の中心よりも一方側に位置している。搬送機構103は、成形装置10に対する金属パイプ材料14の設置と、成形後の金属パイプの取出しとを実施する機構であり、本体部103a及びロボットアーム103bを有する。搬送機構103は、方向Xにおいて第1載置部101と第2載置部102との間に位置している。方向Yにおいて、本体部103aは、第1載置部101及び第2載置部102よりも成形装置10と離間しているが、これに限られない。
【0043】
床面300は、成形装置10の基台15、成形金型13、気体供給機構40、及び駆動機構80等が載置される載置面である。床面300は、例えば工場等の床自体でもよいし、当該床上に設けられる台の表面でもよい。床面300には、給電ライン52A,52B等が挿通する開口301が設けられる。また、地下ピット400は、成形装置10の一部を収容するための収容空間である。地下ピット400の少なくとも一部は、成形装置10において床面300上に位置する部分に重なっている。床面300上の空間と、地下ピット400とは、開口301を介してつながっている。図示はしないが、地下ピット400の出入り口は、方向Zにおいて成形装置10と重ならない箇所に設けられる。なお、開口301は、蓋などによって塞がれてもよい。
【0044】
加熱機構50における電力供給部55は、給電ライン52A,52Bを介して電極17,18に電力を供給する装置である。電力供給部55は、方向Yにおいて成形装置10の中心よりも他方側に位置しており、地下ピット400に収容されている。電力供給部55は、方向Zにおいて基台15に重ならない位置に配置されている。
【0045】
給電ライン52Aは、複数の電線52aと、ブスバー52b(導体)とを有する。複数の電線52aは、電極17とブスバー52bとを接続するための配線である。このため、電線52aにおける一方の端子は電極17に接続され、電線52aにおける他方の端子はブスバー52bに接続される。電線52aの大部分は、床面300上に引き回されている。電線52aの他方の端子を含む一部は、床面300に設けられる開口301を介して地下ピット400内に配置されている。ブスバー52bは、電力供給部55と電線52aとをつなぐ導電構造体であり、地下ピット400に収容されている。ブスバー52bは、例えば銅等の金属製もしくは合金製の導電体であり、給電ライン52Aにおいて最も発熱し得る箇所である。ブスバー52bは、例えば地下ピット400内に固定される台座401上に載置される。ブスバー52bは、方向Zにおいて基台15に重ならない位置に配置されている。ブスバー52bは、略L字型の本体部56と、電線52aが取り付けられる端子部57とを有する。端子部57は、方向Zにおいて本体部56の床面300側に取り付けられている。
【0046】
給電ライン52Bは、複数の電線52cと、ブスバー52d(導体)とを有する。複数の電線52cは、電極18とブスバー52dとを接続するための配線である。このため、電線52cにおける一方の端子は電極18に接続され、電線52cにおける他方の端子はブスバー52dに接続される。各電線52cの大部分は、床面300上に引き回されている。電線52cの他方の端子を含む一部は、床面300に設けられる開口301を介して地下ピット400内に配置されている。ブスバー52dは、電力供給部55と電線52cとをつなぐ導電構造体であり、ブスバー52bと同様に地下ピット400に収容されている。ブスバー52dは、例えば銅等の金属製もしくは合金製の導電体であり、給電ライン52Bにおいて最も発熱し得る箇所である。ブスバー52dもまた、例えば地下ピット400内に固定される台座401上に載置される。ブスバー52dは、方向Zにおいて基台15に重ならない位置に配置されている。ブスバー52dは、略L字型の本体部58と、電線52cが取り付けられる端子部59とを有する。端子部59は、方向Zにおいて本体部58の床面300側に取り付けられている。
【0047】
図4に示されるように、給電ライン52Aが接続される気体供給機構40には排気管210が取り付けられており、給電ライン52Bが接続される気体供給機構40には排気管220が取り付けられている。排気管210は排気機構200Aの構成要件の一つであり、主部211及び先端部212を有する。排気管220は排気機構200Bの構成要件の一つであり、主部221及び先端部222を有する。主部211,221のそれぞれは、床面300上に引き回されている。先端部212,222のそれぞれは、開口301を介して地下ピット400に収容されている。地下ピット400にて、先端部212はブスバー52bの外周面に沿うように配設されており、先端部222はブスバー52dの外周面に沿うように配設されている。本実施形態では、先端部212は、ブスバー52bの本体部56において方向Zに沿って延在する部分と、本体部56において方向Xに沿って延在する部分との両方に沿うように配設されている。先端部222は、先端部212と同様に、ブスバー52dの本体部58において方向Zに沿って延在する部分と、本体部58において方向Xに沿って延在する部分との両方に沿うように配設されている。図3では省略されているが、排気管210はガス供給ラインL1から分岐しており、排気管220はガス供給ラインL2から分岐している。
【0048】
排気管210,220は、高圧ガスに耐え得る材質から構成され、例えば金属製又は合金製のパイプである。この場合、排気管210,220は、導電性を示し得る。給電ライン52Aの抵抗増加等を抑制する観点から、先端部212は、ブスバー52bに対して離間している。先端部212とブスバー52bとの接触を防止する観点から、先端部212とブスバー52bとの間には絶縁材等が設けられてもよい。同様に、先端部222は、ブスバー52dに対して離間している。
【0049】
ここで、図5(a)~(c)を参照しながら、地下ピット400内におけるブスバー52b,52dと、先端部212,222との配置について説明する。図5(a),(b)は、ブスバー52b,52dと先端部212,222との関係を示す模式図である。図5(c)は、ブスバー52bと先端部212とをより離間させた状態を示す図である。なお、図5(a)~(c)においては、先端部212,222のそれぞれには、安全弁213,223が取り付けられている。安全弁213,223は、地下ピット400内に設けられてもよいし、床面300上に設けられてもよい。
【0050】
上述したように、先端部212はブスバー52bに沿って配設されており、先端部222はブスバー52bに沿って配設されている。加えて、先端部212に設けられる排気口214は、ブスバー52bに対向するように設けられている。これにより、排気口214から排出される気体は、ブスバー52bに吹き付けられる。本実施形態では、先端部212には複数の排気口214が設けられているが、これに限られない。なお、図示はしないが、先端部222に設けられる排気口は、ブスバー52dに対向するように設けられている。
【0051】
成形システム1において、制御部70は、例えば固定された制御盤に組み込まれており、方向Yにおいて成形装置10の中心よりも一方側に位置する。このため、制御部70は、方向Yにおいて成形装置10を挟んで加熱機構50の反対側に位置する。加えて、制御部70は、方向Yにおいて成形装置10を挟んで排気管210,220の先端部212,222の反対側に位置する。これにより、作業者が制御盤を用いる場合、加熱機構50から発生する熱、及び排気機構200A,200Bから排出される気体の影響を受けにくくなる。また、制御部70は、方向Yにおいて搬送機構103を挟んで成形装置10の反対側に位置する。これにより、作業者が制御盤を用いる場合、搬送機構103の動作が作業者によって阻害されない。
【0052】
<作用効果>
次に、本実施形態に係る成形システム1の作用効果について説明する。成形システム1によれば、排気機構200Aの排気口214は、内部空間を有する構造物である地下ピット400の内部空間に位置する。従って、排気口214から高圧の気体が排出される際に発生する排出音は、地下ピット400内にて発生する。この場合、地下ピット400が排出音に対するサイレンサーとして機能する。このため当該排出音は、成形装置10の周囲にて作業する作業者等に対して、騒音になりにくくなる。したがって上記成形システム1を利用することによって、排出音への対策が可能になる。また、サイレンサーとして機能する構造物を地下ピットに設けることで、成形装置全体のスペース縮小に寄与する。
【0053】
上述した成形システム1によれば、排気機構200Aに含まれると共に排気口214が設けられる排気管210の先端部212は、床面300の下部に設けられる地下ピット400に位置する。これにより、排気口214から高圧の気体が排出される際に発生する排出音は、地下ピット400内にて発生する。加えて、排気機構200Bに含まれると共に排気口が設けられる排気管220の先端部222もまた、地下ピット400に位置する。これにより、先端部222に設けられる排気口から高圧の気体が排出される際に発生する排出音も、地下ピット400内にて発生する。このため、上記排出音は、床面300上であって成形装置10の周囲にて作業する作業者等に対して、騒音になりにくくなる。したがって成形システム1を利用することによって、排出音への対策が可能になる。
【0054】
本実施形態の成形システム1では、成形装置10は、金属パイプ材料14を加熱するための電極17,18と、電極17,18に接続される給電ライン52A,52Bと、を有し、給電ライン52Aは、地下ピット400に収容されるブスバー52bを有し、地下ピット400では、排気口214は、ブスバー52bに対向している。このため、電極17への通電に伴って加熱されたブスバー52bを、排気口214から排出される気体にて冷却できる。加えて、給電ライン52Bは、地下ピット400に収容されるブスバー52dを有し、地下ピット400では、先端部222に設けられる排気口がブスバー52dに対向している。このため、電極18への通電に伴って加熱されたブスバー52dもまた、上記排気口から排出される気体にて冷却できる。
【0055】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、各給電ラインは、ブスバーを有さなくてもよい。また、先端部は、ブスバーの外周面に沿って配設されているが、ブスバーの内周面に沿って配設されてもよい。
【0056】
上記実施形態では、地下ピットにて、排気管の排気口は、ブスバーに対向しているが、これに限られない。例えば、水冷式のケーブル等を用いてブスバーが冷却される場合、排気管の排気口は、ブスバーに対向しなくてもよい。すなわち、排気口から排出されるガスにて、ブスバーを冷却しなくてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、サイレンサーとして機能する構造物として、床下の地下ピットが用いられた。しかし、構造物は、排気部を配置可能な内部空間を有し、当該内部空間で発生した音を外部へ漏れることを遮断できるものであれば特に限定されない。例えば、図6に示すように、成形システムが、構造物としてタンク500を有してよい。排気機構200A,200Bの排気口214が、当該タンク500の内部空間に位置する。タンク500を用いる場合、当該タンク500の位置は特に限定されない。例えば、タンク500は、地下ピットではなく、床面300上に配置されてよい。
【0058】
例えば、比較例に係る構造として、排気部の先端にマフラーを設けて防音を行う構造が挙げられる。しかし、このようなマフラーは、排気圧が高い場合に、排気圧に耐えることができず、損傷する可能性がある。これに対し、タンク500は、十分な広さの内部空間を有しているため、排気圧が高い場合でも損傷する可能性が低く、長期間利用することができる。このような効果は、地下ピットで防音した場合も同様に得ることができる。
【0059】
上記実施形態では、成形システムは、成形装置に加えて、第1載置部、第2載置部、搬送機構等を備えているが、これに限られない。例えば、成形システムは、第1載置部、第2載置部、及び搬送機構の少なくとも何れかを備えなくてもよい。また、第1載置部、第2載置部、及び搬送機構等は、上記実施形態にて示される構成に限られない。
【0060】
例えば、上記実施形態における成形装置は加熱機構を必ずしも有していなくてもよく、金属パイプ材料はすでに加熱されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…成形システム、10…成形装置、13…成形金型、14…金属パイプ材料、17,18…電極、40…気体供給機構、50…加熱機構、52…電力供給ライン、52A,52B…給電ライン、52b,52d…ブスバー(導体)、55…電力供給部、60…気体供給部、80…駆動機構、103…搬送機構、200A,200B…排気機構、210,220…排気管、212,222…先端部、214…排気口、300…床面、301…開口、400…地下ピット(構造物)、500…タンク(構造物)、L1,L2…ガス供給ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6