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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
F04D29/44 K
F04D29/44 U
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021516050
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2020016689
(87)【国際公開番号】W WO2020218143
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2019080610
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 優作
(72)【発明者】
【氏名】サフ アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-001115(JP,A)
【文献】特開2018-178830(JP,A)
【文献】特表2017-538886(JP,A)
【文献】特開2002-202098(JP,A)
【文献】特開2001-289198(JP,A)
【文献】特開2019-044739(JP,A)
【文献】特開2004-245087(JP,A)
【文献】特開2005-155393(JP,A)
【文献】特開2004-132342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の片吸込型の遠心送風機(30;30A)であって、
回転軸(32a)を有するモータ(32)と、
周方向に翼列を形成する複数の翼(33a)を有し、前記モータ(32)により前記回転軸(32a)の回転軸線(CL)の周りを回転駆動されて、軸方向の一方側から前記翼列の内側に吸入した空気を前記回転軸(32a)の径方向外側に向けて吹き出すインペラ(33)と、
前記インペラ(33)を収容する内部空間(A1、A2)と、前記軸方向の一方側に開口する吸込口(40a)と、前記回転軸(32a)の径方向外側に向けて開口する吐出口(40b)と、を含み、前記内部空間(A1、A2)の断面積が巻き角に応じて増加するスクロールハウジング(40)と、
を備え、
前記スクロールハウジング(40)は、前記吸込口(40a)を有して少なくとも前記翼列の一方側と対向する一方側ケース(41)と、少なくとも前記翼列の他方側と対向する他方側ケース(42)と、前記一方側ケース(41)から前記他方側ケース(42)までを接続すると共に前記翼列の径方向外側と対向する中間ケース(43)と、を有し、
前記中間ケース(43)は、前記翼列に対向して配置される周面部(43a)と、該周面部(43a)から前記翼列に向けて延出している分割壁部(43b)と、を有し、
前記内部空間(A1、A2)の前記インペラ(33)よりも径方向外側の領域は、前記分割壁部(43b)によって、一方側の空間である一方側空間(A1)と、他方側の空間である他方側空間(A2)と、に分割され、
前記周面部(43a)と前記分割壁部(43b)との境界は、前記一方側空間(A1)に面するように形成された一方側境界部(44)と、前記他方側空間(A2)に面するよう形成された他方側境界部(45)とからなり、
前記一方側境界部(44)、又は、前記他方側境界部(45)の少なくとも一方は、前記回転軸(32a)の周方向に亘って湾曲状に形成されており、
湾曲状に形成された前記一方側境界部(44)の曲率半径、及び/又は、湾曲状に形成された前記他方側境界部(45)の曲率半径は、前記巻き角に応じて大きくなることを特徴とする、遠心送風機。
【請求項2】
前記一方側ケース(41)は、前記翼列と対向する一方側基準面(41a)と、前記翼列よりも径方向外側であって前記一方側基準面(41a)よりも前記軸方向の一方側に膨出する一方側膨出面(41b)と、を有し、
前記軸方向において、前記一方側基準面(41a)に対する前記一方側膨出面(41b)の膨出する寸法(t1)が、前記巻き角に応じて大きくなり、
及び/又は、
前記他方側ケース(42)は、前記翼列と対向する他方側基準面(42a)と、前記翼列よりも径方向外側であって前記他方側基準面(42a)よりも前記軸方向の他方側に膨出する他方側膨出面(42b)と、を有し、
前記軸方向において、前記他方側基準面(42a)に対する前記他方側膨出面(42b)の膨出する寸法(t2)が、前記巻き角に応じて大きくなることを特徴とする請求項記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアコン装置等に用いられる遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用エアコン装置として、遠心送風機が搭載されたものが知られている。遠心送風機が作動すると、車外の空気あるいは車室内の空気が吸い込まれ、熱交換器に向かって送風される。熱交換器を通過して熱交換が行われた空気は、車室内に送風される。これにより、車室内の温度を所定の温度に調節することができる。遠心送風機に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された遠心送風機は、断面積が巻き角に応じて増加するスクロールハウジングと、このスクロールハウジングに支持されているモータと、このモータの上方側から吸入した空気を径方向外側に向けて吹き出すインペラと、を有している。
【0004】
スクロールハウジングは、翼列に対向して配置される周面部と、この周面部から翼列に向けて延出している分割壁部(仕切板)と、を有している。
【0005】
分割壁部によって、スクロールハウジングの内部空間は、上下2つの空間に分割されている。これらの空間は、それぞれ送風される空気の流路とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-132342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らによる研究の結果、特許文献1による遠心送風機では、スクロールハウジングの内部空間のうち周面部と分割壁部との境界部分において、渦流れが発生する虞のあることが分かった。渦流れが発生すると円滑な風の流れが阻害され、送風効率が低下する。
【0008】
本発明は、送風効率の高い遠心送風機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明によれば、車両用の片吸込型の遠心送風機(30;30A)であって、
回転軸(32a)を有するモータ(32)と、
周方向に翼列を形成する複数の翼(33a)を有し、前記モータ(32)により前記回転軸(32a)の回転軸線(CL)の周りを回転駆動されて、軸方向の一方側から前記翼列の内側に吸入した空気を前記回転軸(32a)の径方向外側に向けて吹き出すインペラ(33)と、
前記インペラ(33)を収容する内部空間(A1、A2)と、前記軸方向の一方側に開口する吸込口(40a)と、前記回転軸(32a)の径方向外側に向けて開口する吐出口(40b)と、を含み、前記内部空間(A1、A2)の断面積が巻き角に応じて増加するスクロールハウジング(40)と、
を備え、
前記スクロールハウジング(40)は、前記吸込口(40a)を有して少なくとも前記翼列の一方側と対向する一方側ケース(41)と、少なくとも前記翼列の他方側と対向する他方側ケース(42)と、前記一方側ケース(41)から前記他方側ケース(42)までを接続すると共に前記翼列の径方向外側と対向する中間ケース(43)と、を有し、
前記中間ケース(43)は、前記翼列に対向して配置される周面部(43a)と、該周面部(43a)から前記翼列に向けて延出している分割壁部(43b)と、を有し、
前記内部空間(A1、A2)の前記インペラ(33)よりも径方向外側の領域は、前記分割壁部(43b)によって、一方側の空間である一方側空間(A1)と、他方側の空間である他方側空間(A2)と、に分割され、
前記周面部(43a)と前記分割壁部(43b)との境界は、前記一方側空間(A1)に面するように形成された一方側境界部(44)と、前記他方側空間(A2)に面するよう形成された他方側境界部(45)とからなり、
前記一方側境界部(44)、又は、前記他方側境界部(45)の少なくとも一方は、前記回転軸(32a)の周方向に亘って湾曲状に形成されていることを特徴とする、遠心送風機が提供される。
【0011】
このとき、湾曲状に形成された前記一方側境界部(44)の曲率半径、及び/又は、湾曲状に形成された前記他方側境界部(45)の曲率半径は、前記巻き角に応じて大きくなる。
【0012】
好ましくは、前記一方側ケース(41)は、前記翼列と対向する一方側基準面(41a)と、前記翼列よりも径方向外側であって前記一方側基準面(41a)よりも前記軸方向の一方側に膨出する一方側膨出面(41b)と、を有し、
前記軸方向において、前記一方側基準面(41a)に対する前記一方側膨出面(41b)の膨出する寸法(t1)が、前記巻き角に応じて大きくなり、
及び/又は、
前記他方側ケース(42)は、前記翼列と対向する他方側基準面(42a)と、前記翼列よりも径方向外側であって前記他方側基準面(42a)よりも前記軸方向の他方側に膨出する他方側膨出面(42b)と、を有し、
前記軸方向において、前記他方側基準面(42a)に対する前記他方側膨出面(42b)の膨出する寸法(t2)が、前記巻き角に応じて大きくなる。
【0013】
好ましくは、前記分割壁部(43b)は、径方向内側の先端から前記軸方向に沿って前記他方側空間(A2)に延び、前記翼列から径方向外側に吹き出される吹出し空気流と前記他方側空間(A2)を旋回して前記翼列に吹き戻される吹戻り空気流との衝突を抑制する衝突抑制壁部(46)を有し、
前記衝突抑制壁部(46)は、前記分割壁部(43b)のうち、巻き角が180度よりも大きい領域の少なくとも一部に形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、周面部と分割壁部との境界は、一方側空間に面するように形成された一方側境界部と、他方側空間に面するよう形成された他方側境界部とからなる。一方側境界部、又は、他方側境界部の少なくとも一方は、回転軸の周方向に亘って湾曲状に形成されている。湾曲状に形成されていることにより、一方側境界部、及び/又は、他方側境界部において渦流れが発生することを抑制することができる。結果、送風効率の高い遠心送風機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1による遠心送風機が搭載された車両用エアコン装置の模式図である。
図2図2Aは、図1の2A-2A線断面図、図2Bは、図2Aの2B-2B線断面図、図2Cは、図2Aの2C-2C線断面図、図2Dは、図2Aの2D-2D線断面図、図2Eは、図2Aの2E-2E線断面図である。
図3図2Dに示された遠心送風機の要部を拡大した図である。
図4図4Aは、比較例による遠心送風機の作用を説明する図、図4Bは、実施例による遠心送風機の作用を説明する図である。
図5】実施例2による遠心送風機を上方から見た状態の断面図である。
図6図5の6-6線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例1>
【0017】
図1を参照する。図1には、車両用エアコン装置10が示されている。車両用エアコン装置10は、空気が導入される空気導入ユニット20と、この空気導入ユニット20に接続され空気導入ユニット20から空気を引き込む遠心送風機30と、この遠心送風機30に接続され遠心送風機30から送られる風が通過するHVACケース13と、このHVACケース13の内部に設けられHVACケース13内を流れる風が通過する際に熱交換を行う熱交換器14と、を有する。
【0018】
空気導入ユニット20は、車室外の空気を導入するための第1内気導入口21a、第2内気導入口21c、及び、車室内の空気を導入するための外気導入口21bが形成されている空気導入ハウジング21と、第1内気導入口21aを開閉可能に設けられた第1インテークドア22と、第2内気導入口21cと外気導入口21bとを切替え可能に設けられた第2インテークドア23と、第1内気導入口21a及び/又は外気導入口21bから導入された空気が通過する際に異物の通過を抑制するフィルタ24と、このフィルタ24の下流側から遠心送風機30の内部まで延び第1内気導入口21aを通過した空気を内側の空間に通流することが可能な筒体25と、を有する。
【0019】
第1インテークドア22は、回転可能に設けられており、例えば、図示しないアクチュエータによって回転させられる。第1インテークドア22は、第1内気導入口21aを全開としつつ、外気導入口21b又は第2内気導入口21cから導入された空気の筒体25への流入を禁止する内気ポジション(図1に示す位置)と、第1内気導入口21aを閉塞しつつ外気導入口21bから導入された空気の筒体25への流入を許可する外気ポジション(図示せず)との間で、任意の位置に調整される。
【0020】
第2インテークドア23は、回転可能に設けられており、例えば図示しないアクチュエータによって回転させられる。第2インテークドア23は、外気導入口21bを全開としつつ、第2内気導入口21cを全閉とする外気ポジション(図1に示す位置)と、外気導入口21bを全閉としつつ第2内気導入口21cを全開とする内気ポジション(図示せず)との間で、任意の位置に調整される。
【0021】
これらの第1インテークドア22及び第2インテークドア23は、それぞれ独立して作動させることができる。
【0022】
図2Aも併せて参照する。遠心送風機30は、上側から吸い込んだ空気を下流に向かって送る片吸込型の遠心送風機である。遠心送風機30は、流路面積が巻き角に応じて増加するスクロールハウジング40と、このスクロールハウジング40の下部に収納され回転軸32aが上下方向に延びているモータ32と、このモータ32の上部に接続されモータ32が作動することにより回転するインペラ33と、を有している。
【0023】
本実施例において、回転軸32aの上端側(モータ32の先端側)を適宜「一方側」といい、下端側を適宜「他方側」という。回転軸32aがモータ32の上部に位置していると共に上下方向を向いている本実施例においては、上側が一方側であり、下側が他方側となる。なお、回転軸32aの位置や指向する方向によって、一方側、他方側の指す方向は、変わりうる。
【0024】
図3を参照する。スクロールハウジング40は、対数螺旋形状を呈する。スクロールハウジング40は、空気導入ハウジング21に連結されている上部ケース41(一方側ケース41)と、この上部ケース41に対向して設けられた下部ケース42(他方側ケース42)と、これらの上部ケース41から下部ケース42までを接続しインペラ33の外周に対向している中間ケース43と、を有している。
【0025】
上部ケース41、下部ケース42、及び、中間ケース43は、例えば、射出成形によって製造することができる。スクロールハウジング40を3つの部材に分割することにより、複雑な形状であっても各部材を樹脂成形品によって構成することができる。
【0026】
図1を参照する。スクロールハウジング40の内部に空気を導入するための吸込口40aは、上部ケース41に形成されている。HVACケース13へ接続され空気を吐出する吐出口40bは、上部ケース41、下部ケース42、及び、中間ケース43によって形成されている。
【0027】
インペラ33は、複数の翼33aを有し、これらの翼33aがモータ32によって回転軸線CLを中心に回転可能とされている。これらの翼33aは、立てられた状態で円形状に配置されている。換言すれば、翼33aは、周方向に翼列をなすように配置されている。
【0028】
HVACケース13は、内部に空気流路が形成され、遠心送風機30により送風された空気が流入する。HVACケース13には複数の吹出口(図示せず)が形成され、空気流路に流入した空気を車室内に向けて吹き出す。また、空気流路を上側と下側とに分割するように、ケース分割壁部13a,13bが配置されている。
【0029】
図3を参照する。上部ケース41は、翼列の上方に対向する上部一般面部41a(一方側基準面41a)と、この上部一般面部41aから連続して径方向外側に形成され上方側に膨出している上部膨出部41b(一方側膨出面41b)と、上部膨出部41bから下方側に向かって延びる上部側壁部41c(一方側周面部41c)と、上部一般面部41aから上方に突出し空気導入ハウジング21に嵌合されている突出嵌合部41dと、を有する。
【0030】
下部ケース42は、翼列の下方に対向する下部一般面部42a(他方側基準面42a)と、この下部一般面部42aから連続して径方向外側に形成され下方側に膨出している下部膨出部42b(他方側膨出面42b)と、下部膨出部42bから上方側に向かって延びる下部側壁部42c(他方側周面部42c)と、を有する。
【0031】
中間ケース43は、翼列の外周面に対向して配置される周面部43aと、この周面部43aから翼列に向けて延出している分割壁部43bと、を有している。
【0032】
上部膨出部41b及び下部膨出部42bは、共に翼列よりも径方向外側に位置している。また、上部側壁部41cの下端部、及び、下部側壁部42cの上端部は、中間ケース43の上下の端部を嵌め込むことができるよう、周方向に亘って溝状に形成されている。
【0033】
突出嵌合部41dは、上部一般面部41a及び上部膨出部41の境界部分の外周に形成され、周方向に連続している。
【0034】
周面部43aの上下の端部は、溝状に形成された上部側壁部41cの下端部、及び、下部側壁部42cの上端部に、それぞれ嵌め込まれている。周面部43aの上下の端部は、上部側壁部41cの下端部、及び、下部側壁部42cの上端部に嵌め込むことができるよう径方向外側に突出している。これにより、上部ケース41と中間ケース43との嵌合部、及び、下部ケース42と中間ケース43との嵌合部は、それぞれラビリンス構造となる。加えて、上部ケース41、下部ケース42、及び、中間ケース43の内周面は、略面一に形成されている。
【0035】
スクロールハウジング40内のインペラ33が収容されている内部空間A1、A2のうち、インペラ33よりも径方向外側の領域は、上方側の空間である上部空間A1(一方側空間A1)と、下方側の空間である下部空間A2(他方側空間A2)と、に分割壁部43bによって分割されている。分割壁部43bは、インペラ33の周囲から吐出口40bに亘って形成されている(図1参照)。
【0036】
周面部43aと分割壁部43bとの境界は、上部空間A1に面するように形成された上部境界部44(一方側境界部44)と、下部空間A2に面するよう形成された下部境界部45(他方側境界部45)と、からなる。
【0037】
これらの上部境界部44、及び、下部境界部45は、共に、回転軸32a(図1参照)の周方向に亘って湾曲状に形成されている。より詳細には、上部境界部44、及び、下部境界部45は、風の流れ方向に垂直な断面を基準として、中心角が略90°の扇形を呈する。
【0038】
図2A図2Eを参照する。図2B図2Eは、図2Aの部分断面図であり、図2Bが最も巻き角の小さな部位(巻き角度が0°)における断面図である。巻き角は、図2C図2Dの順に大きくなり図2Eが最も巻き角の大きな部位(巻き角度が180°よりも大きく、360°よりも小さな部位)である。
【0039】
上部膨出部41bの膨出量は、巻き角が大きくなるにつれて大きくなる。つまり、軸方向(上下方向)を基準として、上部一般面部41aに対して上部膨出部41bの膨出する寸法t1は、巻き角に応じて大きくなる。上部膨出部41bの上面は、周方向に沿ってテーパ状に形成されている。
【0040】
下部膨出部42bについても同様である。下部膨出部42bの膨出量は、巻き角が大きくなるにつれて大きくなる。つまり、軸方向(上下方向)を基準として、下部一般面部42aに対して下部膨出部42bの膨出する寸法t2は、巻き角に応じて大きくなる。下部膨出部42bの下面は、周方向に沿ってテーパ状に形成されている。
【0041】
上部境界部44の曲率半径(扇形状の半径に同じ。以下同様。)、及び、下部境界部45の曲率半径は、共に、巻き角が大きくなるにつれて大きくなる。換言すれば、上部境界部44の曲率半径、及び、下部境界部45の曲率半径は、巻き角に応じて大きくなる。
【0042】
遠心送風機30の作用及び効果について説明する。
【0043】
図1を参照する。車両用エアコン装置10は、遠心送風機30を作動させることにより、上方の空気導入ユニット20から空気を吸入すると共に、HVACケース13へ吐出する。HVACケース13へ吐出された空気は、熱交換器14において熱交換されることにより、所定の温度となり、図示されない吹出口から車室内へ吐出される。なお、吹出口は複数が形成され、それぞれに対し、開閉ドア(図示せず)が設けられている。
【0044】
このとき、第1インテークドア22の位置、第2インテークドア23の位置、回転軸32aの回転速度、及び、開閉ドアの位置は、制御部(図示せず)によって制御することができる。制御部は、車両の外気温度、日射の量や方向、車室内の温度、乗員の設定した温度などに基づき、これらを制御する。これにより、車外及び/又は車室内から適切な空気を取り込むとともに、車室内の温度を所定の温度に調節することができる。特に、第1インテークドア22を内気ポジションとし、第2インテークドア23を外気ポジションとなるよう調整することで、空気導入ユニット20と遠心送風機30とを、内外気2層流モードとして運転することができる。すなわち、第1内気導入口21aから車室内の空気(内気)を取り込んで筒体25の内部に通流させ、下部空間A2に吐出すると同時に、外気導入口21bから車両の外気を取り込んで吸込口40aと筒体25との間の領域に通流させ、上部空間A1に吐出することができる。
【0045】
図4Aを参照する。比較例による遠心送風機130は、上部境界部144及び下部境界部145が、周方向に亘って角状に形成されている。つまり、湾曲状に形成されていない。インペラ133によってスクロールハウジング140内に導かれる風は、矢印151、152によって示されるように、遠心送風機130の上方から下方に流れてきた慣性によって主に下端を通過して径方向外方に向かう。上部空間A1及び下部空間A2に吐出された風は、矢印153~156によって示されるように、スクロールハウジング140の内周面に沿って上方に向かって流れつつ、スクロールハウジング140の周方向に沿って(図面表裏方向に向かって)流れる。
【0046】
このとき、矢印157、158によって示されるように、上部境界部144及び下部境界部145の近傍において、渦流れが発生する虞がある。渦流れが発生すると円滑な風の流れが阻害され、送風効率が低下する。
【0047】
図4Bを参照する。実施例による遠心送風機30においても、インペラ33によってスクロールハウジング40内に導かれる風は、矢印51、52によって示されるように、慣性によって主に下端を通過して径方向外方に向かう。上部空間A1及び下部空間A2に吐出された風は、矢印53~56によって示されるように、スクロールハウジング40の内周面に沿って上方に向かって流れつつ、スクロールハウジング40の周方向に沿って(図面表裏方向に向かって)流れる。
【0048】
ここで、周面部43aと分割壁部43bとの境界は、上部空間A1に面するように形成された上部境界部44と、下部空間A2に面するよう形成された下部境界部45と、からなる。上部境界部44及び下部境界部45は、回転軸32a(図1参照)の周方向に亘って湾曲状に形成されている。湾曲状に形成されていることにより、上部境界部44及び下部境界部45において渦流れが発生することを抑制することができる。結果、送風効率の高い遠心送風機30を提供することができる。
【0049】
なお、上部境界部44、又は、下部境界部45の少なくとも一方が湾曲状に形成されていることにより、湾曲状に形成された部位における渦流れの発生を抑制することができる。つまり、上部境界部44、又は、下部境界部45の少なくとも一方が湾曲状に形成されていることにより、本発明の効果は生じる。
【0050】
図2A乃至図2Eを参照する。上部境界部44の曲率半径、及び、下部境界部45の曲率半径は、巻き角が大きくなるにつれて大きくなる。スクロールハウジング40内を流れる風の風量は、巻き角が大きくなるにつれて大きくなる。このため、より巻き角の大きな位置において渦流れが発生しやすくなるものと考えられる。一方、湾曲形状の曲率半径を大きくすることにより、より渦流れの発生を抑制することができる。渦流れの発生しやすい領域においてより有効に渦流れの発生を抑制すると共に、渦流れの発生しにくい領域において大きな流路面積を確保することができる。
【0051】
上部一般面部41aに対する上部膨出部41bの膨出する寸法は、巻き角に応じて大きくなる。上部境界部44が湾曲状に形成され流路面積が狭くなる分は、上部膨出部41bが形成されることにより、所定の流路面積を確保することができる。よって、送風効率の低下を防止できる。
【0052】
下部膨出部42bについても同様である。つまり、下部一般面部42aに対する下部膨出部42bの膨出する寸法は、巻き角に応じて大きくなる。下部境界部45が湾曲状に形成され流路面積が狭くなる分は、下部膨出部42bが形成されることにより、所定の流路面積を確保することができる。よって、送風効率の低下を防止できる。
【0053】
<実施例2>
次に、実施例2による遠心送風機30Aを図面に基づいて説明する。
【0054】
図5及び図6を参照する。図5は、図2Aに対応し、図6は、図2Eに対応している。実施例2による遠心送風機30Aは、衝突抑制壁部46を有している。その他の基本的な構成については、実施例1による遠心送風機30と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0055】
衝突抑制壁部46は、分割壁部43bの径方向内側の先端から軸方向に沿って、下部空間A2に向かって延びてなる。衝突抑制壁部46は、分割壁部43bのうち、巻き角が180度よりも大きく360°よりも小さな領域(矢印61参照)に形成されている。
【0056】
衝突抑制壁部46は、スクロールハウジング40の舌部47に重なる位置まで(一点鎖線L2参照)形成されている。また、衝突抑制壁部46は、巻き角が大きくなるにつれて下方へ長く延びている。衝突抑制壁部46の下側の端面は、周方向に沿ってテーパ状に形成されている。
【0057】
実施例2による遠心送風機30Aにおいても、インペラ33から吐出される風は、主に、矢印52、55、56によって示される。一方、これよりも少ない風量であるが、一部の風は、矢印59によって示されるように、上部から径方向外方に吐出される。衝突抑制壁部46が形成されていることにより、翼列から径方向外側に吹き出される吹出し空気流(矢印59参照)と下部空間A2を旋回して翼列に吹き戻される吹戻り空気流(矢印55、56参照)との衝突が抑制される。これにより、風の円滑な流れを確保することができ、送風効率の低下を防止できる。
【0058】
以上に説明した遠心送風機も本発明所定の効果を奏する。
【0059】
衝突抑制壁部46は、特に、風量が多く空気流の衝突の影響が大きくなりやすい巻き角が大きな領域、即ち、巻き角が180度よりも大きい領域に衝突抑制壁部46を設けることで、空気流を円滑に流すことができる。
【0060】
尚、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の遠心送風機は、車両用エアコン装置に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0062】
30…遠心送風機
32…モータ、32a…回転軸
33…インペラ、33a…翼
40…スクロールハウジング、40a…吸込口、40b…吐出口
41…上部ケース(一方側ケース)、41a…上部一般面部(一方側基準面)、41b…上部膨出部(一方側膨出面)
42…下部ケース(他方側ケース)、42a…下部一般面部(他方側基準面)、42b…下部膨出部(他方側膨出面)
43…中間ケース、43a…周面部、43b…分割壁部
44…上部境界部(一方側境界部)
45…下部境界部(他方側境界部)
46…衝突抑制壁部
A1…上部空間(一方側空間・内部空間)
A2…下部空間(他方側空間・内部空間)
CL…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6