(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】有機マイクロスクリーンの画素の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/60 20230101AFI20231215BHJP
H10K 50/125 20230101ALI20231215BHJP
H10K 50/816 20230101ALI20231215BHJP
H10K 50/818 20230101ALI20231215BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20231215BHJP
H10K 50/852 20230101ALI20231215BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231215BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231215BHJP
H10K 102/10 20230101ALN20231215BHJP
【FI】
H10K71/60
H10K50/125
H10K50/816
H10K50/818
H10K50/84
H10K50/852
H10K59/10
G09F9/30 365
H10K102:10
(21)【出願番号】P 2021522075
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(86)【国際出願番号】 FR2019052516
(87)【国際公開番号】W WO2020084250
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】モラード ローラン
(72)【発明者】
【氏名】マンドロン トニー
(72)【発明者】
【氏名】トゥルネル ミリアム
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-048992(JP,A)
【文献】特開2006-154169(JP,A)
【文献】特開2017-162832(JP,A)
【文献】特開2013-161520(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181391(WO,A1)
【文献】特開2017-134425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203245(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108122954(CN,A)
【文献】特開2011-119238(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01672962(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/60
H10K 50/125
H10K 50/852
H10K 50/816
H10K 50/818
H10K 50/84
H10K 59/10
G09F 9/30
H10K 102/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオードマイクロスクリーンの画素を製造する方法であって、以下を連続して含む方法。
a)構造化された第1電極(E1)を含む基板(1)を設け、
b)構造化された前記第1電極(E1)上に誘電体層(2)を形成し、
c)構造化された前記第1電極(E1)がフリー領域(ZL)を有するように、前記誘電体層(2)に開口部(20)を形成し、該開口部(20)は、赤、緑、及び青のサブ画素(PR、PV、PB)を受けることを意図し、
d)可視スペクトルにおいて透明であり、導電性であり、かつ、以下を含むスペーサ層(3)を形成し、
-前記誘電体層(2)上に延在する第1部分(30)、
-前記開口部(20)内の、構造化された前記第1電極(E1)の前記フリー領域(ZL)上に延在する第2部分(31)、
e)前記スペーサ層(3)の第1部分(30)を除去し、
f)白色光を発するように構成され、以下を含む有機発光層のスタック(4)を形成し、
-前記誘電体層(2)上に延在する第1部分(40)、
-前記開口部(20)の内側で、前記スペーサ層(3)の第2部分(31)上に延びる第2部分(41)、
g)有機発光層の前記スタック(4)上に第2電極(E2)を形成し、前記第1電極(E1)との光共振器を得て、
ステップd)は、前記スペーサ層(3)の第2部分(31)が、前記開口部(20)内で第1厚さ、第2厚さ、第3厚さを有し、これらの厚さは、光共振器がそれぞれ有機発光層の前記スタック(4)によって放射された白色光からの赤色、緑色、及び青色光を透過できるように設計されている。
【請求項2】
前記スペーサ層(3)の第2部分(31)及び前記誘電体層(2)が、ステップe)の終わりに100nm以上のステップ高さを有するように、ステップe)が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップe)は、化学機械研磨によって行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)で形成された前記スペーサ層(3)は、可視スペクトルにおいて導電性で透明な少なくとも1つの酸化物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化物又は複数の前記酸化物は、インジウムスズ酸化物、スズ酸化物SnO
2及び亜鉛酸化物ZnOから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップd)は、前記第1厚さが100nm、前記第2厚さが50nm、前記第3厚さが10nmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)で形成された前記開口部
(20)の幅は500nm~10μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)で形成された前記誘電体層(2)は、SiO
2及びSiNから選択された材料からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)で形成された前記誘電体層(2)の厚さは、150nm~300nmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1電極(E1)及び前記第2電極(E2)は、金属材料からな
る、及び/又は、透明導電性酸化物からなる、請求項1~9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
-ステップa)で設けられた前記基板(1)は、可視スペクトルにおいて透明であり、
-ステップa)で設けられた構造化された前記第1電極(E1)は、可視スペクトルにおいて半透明であり、
-ステップg)で形成された前記第2電極(E2)は、可視スペクトルにおいて反射性である。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
-ステップa)で設けられた前記基板(1)が、半導体材
料又はガラスであり、
-ステップa)で設けられた構造化された前記第1電極(E1)は、可視スペクトルにおいて反射性であり、
-ステップg)で形成された前記第2電極(E2)は、可視スペクトルにおいて半透明である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)マイクロスクリーンの技術分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、仮想現実又は拡張現実ヘッドセット及び眼鏡、カメラビューファインダ、ヘッドアップディスプレイ、ピコプロジェクタなどの製造に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
先行技術、特に特許文献1から知られているトップエミッティング有機発光ダイオードマイクロスクリーンの画素は、連続して以下を含む。
-基板、
-可視スペクトルにおいて反射性であり、基板上に形成される第1電極、
-第1電極上に形成されるスペーサ層、
-白色光を発するように構成され、スペーサ層上に形成された有機発光層のスタック、
-可視スペクトルにおいて半透明であり、スタック上に形成される第2電極、光共振器を形成する第1及び第2電極。
【0004】
スペーサ層は、第1、第2及び第3部分を有し、その厚さは、光共振器がスタックによって放射された白色光からの赤色、緑色及び青色光の透過をそれぞれ可能にするように調整されて、赤色、緑色及び青色のサブ画素をそれぞれ画定する。
【0005】
従来技術からのこのような画素は、干渉フィルタを形成するファブリペロー光共振器によってカラーフィルタを省略することを考慮することを可能にする。フィルタされた波長の範囲は、スペーサ層の第1、第2及び第3部分の厚さによって決定され、光共振器が、有機発光層のスタックによって放射された白色光からの赤色、緑色及び青色光の透過をそれぞれ可能にするように、(第1及び第2電極によって区切られた)光キャビティの厚さを調整することができる。
【0006】
このタイプのフィルタリングは、ボトムエミッティングマイクロスクリーンの場合と同様の方法で達成することができる。用語を簡単にするために、ボトムエミッションの場合、干渉効果ははるかに小さいが、共振器を引き続き参照する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術からのそのような画素は、赤色、緑色及び青色のサブ画素を電子的に制御することが、スペーサ層及び/又は有機発光層のスタック内の導電層による隣接するサブ画素間の横方向電気伝導の存在に起因して、隣接するサブ画素間のクロストーク現象を引き起こしやすいという点で、完全に満足できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の欠点を完全に又は部分的に是正することを目的とする。この目的のために、本発明の1つの主題は、有機発光ダイオードマイクロスクリーンの画素を製造する方法であって、以下を連続して含む。
a)構造化された第1電極を含む基板を設け、
b)構造化された前記第1電極上に誘電体層を形成し、
c)構造化された前記第1電極がフリー領域を有するように、前記誘電体層に開口部を形成し、該開口部は、赤、緑、及び青のサブ画素を受けることを意図し、
d)可視スペクトルにおいて透明であり、導電性であり、かつ、以下を含むスペーサ層を形成し、
-前記誘電体層上に延在する第1部分、
-前記開口部内の、構造化された前記第1電極の前記フリー領域上に延在する第2部分、
e)前記スペーサ層の第1部分を除去し、
f)白色光を発するように構成され、以下を含む有機発光層のスタックを形成し、
-前記誘電体層上に延在する第1部分、
-前記開口部の内側で、前記スペーサ層の第2部分上に延びる第2部分、
g)有機発光層の前記スタック上に第2電極を形成し、前記第1電極との光共振器を得て、
ステップd)は、前記スペーサ層の第2部分が、前記開口部内で第1厚さ、第2厚さ、第3厚さを有し、これらの厚さは、光共振器がそれぞれ有機発光層の前記スタックによって放射された白色光からの赤色、緑色、及び青色光を透過できるように設計されている。
【0010】
このような本発明の方法によれば、隣接するサブ画素間のクロストークの影響を大幅に低減しつつ、ファブリペロー光共振器を得ることができる。これは、次の理由で可能となる。
(i)ステップe)でスペーサ層の第1部分を除去し、
(ii)ステップf)で、有機発光層のスタックの第2部分(すなわち、電極間に位置する有効部分)を開口部の内側に埋め込む。
【0011】
したがって、本発明のこのような方法によれば、スペーサ層の第1部分や有機発光層のスタック内の導電層の存在に起因しやすい横方向の電気伝導をなくすことができる。
【0012】
このような本発明の方法によれば、構造化された第1電極のエッジにスペーサ層が存在することを保証することができ、エッジ効果を回避することができる。これは、ステップd)でスペーサ層の第2部分を開口の内側に埋め込むことによって可能になる。
定義
-用語「マイクロスクリーン」は、各画素の面積が30μm×30μm以下であるスクリーンを意味するものと理解される。
-用語「基板」は、好ましくは電子デバイス又は電子部品の集積化を可能にする基材からなる自立性の物理的キャリア(self-supporting physical carrier)を意味するものと理解される。例えば、基板は、従来、半導体材料の単結晶インゴットから切り出されたウエハである。
-用語「構造化された電極」は、一組のパターンを画定する不連続な表面を示す電極を意味するものと理解される。
-用語「誘電体層」は、300Kにおいて10-8S.cm-1未満の導電率を有する誘電体材料で形成された層を意味するものと理解される。
-用語「フリー領域」は、誘電体層によって覆われていない第1電極の領域を意味するものと理解される。
-用語「可視スペクトル」は、380nm~780nmの電磁スペクトルを意味するものと理解される。
-用語「透明」は、可視スペクトルにわたって平均化された70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上の強度透過係数をスペーサ層が有することを意味するものと理解される。
-用語「導電性」は、スペーサ層が300Kで102S/cm以上の導電率を有することを意味するものと理解される。
-「開口部の内側」という用語は、スペーサ層の第2部分の表面が誘電体層の表面よりも低いレベルに位置することを意味するものと理解される。同様に、有機発光層のスタックの第2部分の表面は、誘電体層の表面よりも低いレベルに位置することが理解される。
-「厚さ」という用語は、画素又はサブ画素の表面に対する法線に沿った寸法を意味するものと理解される。
【0013】
本発明による方法は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。
【0014】
本発明の一特徴によれば、ステップe)は、スペーサ層の第2部分及び誘電体層が、ステップe)の終わりに100nm以上のステップ高さを有するように実行される。
【0015】
用語「ステップ高さ」は、誘電体層の表面とスペーサ層の第2部分の表面との間の、画素の表面に対する法線に沿った寸法を意味するものと理解される。
【0016】
このようなステップ高さによって得られる1つの利点は、赤、緑、及び青のサブ画素間のクロストークの影響を大幅に低減できることである。具体的には、有機発光層のスタック内の導電層の存在によって引き起こされやすい横方向の電気伝導は、このステップ高さによって大きく制限される。
【0017】
本発明の1つの特徴によれば、ステップe)は、化学機械研磨によって行われる。
【0018】
このように、得られる1つの利点は、スペーサ層の第1部分を除去する動作の速度である。
【0019】
本発明の1つの特徴によれば、ステップd)で形成されたスペーサ層は、可視スペクトルにおいて導電性で透明な少なくとも1つの酸化物を含む。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、前記酸化物又は複数の前記酸化物は、インジウム錫酸化物、錫酸化物SnO2及び亜鉛酸化物ZnOから選択される。
【0021】
本発明の一特徴によれば、ステップd)は、前記第1厚さが100nm、前記第2厚さが50nm、前記第3厚さが10nmとなるように行われる。
【0022】
本発明の一特徴によれば、ステップc)で形成された前記開口部は、500nm~10μmの幅である。
【0023】
本発明の一特徴によれば、ステップb)で形成された誘電体層は、SiO2及びSiNから選択された材料からなる。
【0024】
本発明の一特徴によれば、ステップb)で形成された誘電体層は、150nm~300nmの厚さを有する。
【0025】
このようにして得られる1つの利点は、以下の両方の組み合わせである。
-ステップb)で行われた化学機械研磨による材料の消費後に、スペーサ層の第2部分と誘電体層との間に、満足なステップ高さ(典型的には100nm以上)を達成するのに十分な厚さ、
-誘電体層の形成時間を過度に増加させない程度に十分に薄い厚さ。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、第1及び第2電極は、金属材料からなり、好ましくはAl、Ag、Pt、Cr、Ni、Wから選択され、及び/又は、透明導電性酸化物からなる。
【0027】
このような金属材料は、可視スペクトルにおける高強度の反射係数と高い電気伝導率の両方を示す。電極が透明又は半透明でなければならない場合、可視スペクトルにおいて導電性で透明である酸化物が優先される。
【0028】
本発明の1つの特徴によれば、ステップa)で設けられた基板は可視スペクトルにおいて透明であり、ステップa)で設けられた構造化された第1電極は可視スペクトルにおいて半透明であり、ステップg)で形成された第2電極は可視スペクトルにおいて反射性である。
【0029】
用語「透明」は、基板が、可視スペクトルにわたって平均化された70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上の強度透過係数を有することを意味するものと理解される。
【0030】
用語「半透明」は、構造化された第1電極が、可視スペクトルにわたって平均化された30%~70%の強度透過係数を有することを意味するものと理解される。
【0031】
用語「反射性」は、第2電極が、可視スペクトルにわたって平均化された70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上の強度反射係数を有することを意味するものと理解される。
【0032】
このようにして得られる1つの利点は、いわゆるボトムエミッティング構造、すなわち基板を通して発光する構造を得ることである。
【0033】
本発明の1つの特徴によれば、ステップa)で設けられた基板は、半導体材料、好ましくはシリコン又はガラスでからなり、ステップa)で設けられた構造化された第1電極は、可視スペクトルにおいて反射性であり、ステップg)で形成された第2電極は、可視スペクトルにおいて半透明である。
【0034】
用語「半導体」は、材料が300Kにおいて10-8S.cm-1~102S.cm-1の間の電気伝導率を有することを意味するものと理解される。
【0035】
用語「反射性」は、構造化された第1電極が、可視スペクトルにわたって平均化された70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上の強度反射係数を有することを意味するものと理解される。
【0036】
用語「半透明」は、第2電極が、可視スペクトルにわたって平均化された30%~70%の強度透過係数を有することを意味するものと理解される。
【0037】
このようにして得られる1つの利点は、トップエミッティング構造、すなわち第2電極を通しての発光を得ることである。そして、基板は、マイクロスクリーンの発光効率に影響を与えることなく、赤、緑及び青のサブ画素を制御するための回路を含むことができる。基板がガラスである場合にはTFT(薄膜トランジスタ)回路が選択され、基板が半導体材料、特にSiである場合にはCMOS(相補型金属酸化物半導体)回路が選択される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
他の特徴及び利点は、本発明の様々な実施形態の詳細な開示から明らかになり、その開示は、例及び添付図面への参照を伴う。
【0039】
【
図1】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図2】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図3】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図4】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図5】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図6】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図6Bis】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図7】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【
図8】本発明に係る方法のステップを示す、基板の法線に沿った概略断面図である。
【0040】
なお、上記の図面は、読みやすさと理解しやすさのために概略図であり、縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
簡単のために、種々の実施形態において同一であるか、又は同一の機能を実行する要素は、同一の符号を有する。
【0042】
図1~8に示すように、本発明の1つの主題は、有機発光ダイオードマイクロスクリーンの画素を製造する方法であって、以下の連続するステップを含む。
a)構造化された第1電極E1を含む基板1を提供し、
b)構造化された第1電極E1上に誘電体層2を形成し、
c)構造化された第1電極E1がフリー領域ZLを有するように、誘電体層2に開口部20を形成し、開口部20は、赤、緑、及び青のサブ画素PR、PV、PBを受けることを意図し、
d)可視スペクトルにおいて透明であり、導電性であり、以下を含むスペーサ層3を形成し、
-誘電体層2上に延在する第1部分30、及び
-開口部20内において、構造化された第1電極E1のフリー領域ZL上に延在する第2部分31、
e)スペーサ層3の第1部分30を除去し、
f)白色光を放射するように構成され、以下を含む有機発光層のスタック4を形成し、
-誘電体層2上に延在する第1部分40、及び
-開口部20内において、スペーサ層3の第2部分31上に延在する第2部分41、
g)第1電極E1との光共振器を得るために、有機発光層のスタック4上に第2電極E2を形成し、
ステップd)は、スペーサ層3の第2部分31が、光共振器が有機発光層のスタック4によって放射された白色光からの赤色、緑色、及び青色の光をそれぞれ透過可能にするように設計された、開口部20内の第1、第2、第3厚さを有するように実行される。
【0043】
ステップa)及びb)を
図1に示す。ステップc)を
図2に示す。ステップd)は、
図3から
図5に示されている。ステップe)を
図6に示す。ステップf)を
図7に示す。ステップg)を
図8に示す。
【0044】
基板とアーキテクチャの種類
ボトムエミッティングアーキテクチャとして知られる第1アーキテクチャによれば、
-ステップa)で設けられた基板1は、可視スペクトルにおいて透明であり、ガラス製であってもよい。
-ステップa)で設けられた構造化された第1電極E1は、可視光スペクトルにおいて半透明であり、例えば、透明導電性酸化物から形成されていてもよい。
-ステップg)で形成された第2電極E2は、可視スペクトルにおいて反射性を有し、例えば、金属材料で形成されていてもよい。
【0045】
トップエミッティングアーキテクチャとして知られる第2アーキテクチャによれば、
-ステップa)で設けられた基板1は、半導体材料、好ましくはシリコン又はガラスからなる。
-ステップa)で設けられた構造化された第1電極E1は、可視スペクトルにおいて反射性であり、例えば、金属材料から形成されていてもよい。
-ステップg)で形成された第2電極E2は、可視光スペクトルにおいて半透明であり、例えば、透明導電性酸化物からなる。
【0046】
構造化された第1電極
構造化された第1電極E1は、有利には金属材料で形成され、好ましくは、Al、Ag、Pt、Cr、Ni、Wから選択されるか、又は透明導電性酸化物で形成される。
【0047】
第1電極E1はアノードであることが好ましい。ただし、第1電極E1は、有機発光層のスタック4の構造が反転していれば、カソードであってもよい。
【0048】
ステップa)は、以下のステップを含むことができる。
a1)基板1を提供し、
a2)当業者に公知の堆積技術を用いて、ブランケット堆積により基板1上に第1電極E1を堆積し、
a3)リソグラフィにより第1電極E1を構成する。
【0049】
構造化された第1電極E1のパターンは、0.5μm~1μmの幅で分離されていることが好ましい。この幅により、好ましくは4μm~5μmのマイクロスクリーンのサブ画素のマトリックス配列のピッチを得ることができる。
【0050】
アーキテクチャがボトムエミッティングアーキテクチャである場合、構造化された第1電極E1は、可視スペクトルにおいて半透明になるように設計された厚さを有する。第1電極E1は、例えば透明導電性酸化物(例えばITO)からなる。
【0051】
アーキテクチャがトップエミッティングアーキテクチャである場合、構造化された第1電極E1は、可視スペクトルにおいて反射するように設計された厚さを有する。第1電極E1は、例えば、金属材料からなる。
【0052】
誘電体層
ステップb)で形成された誘電体層2は、SiO2及びSiNから選択された材料からなることが好ましい。
【0053】
ステップb)は、当業者に公知の堆積技術を用いて実施することができる。
【0054】
ステップb)で形成された誘電体層2の厚さは、有利には、150nm~300nmである。
【0055】
ステップc)は、有機発光層のスタック4の堆積の不連続性を保証するために、スペーサ層3及び誘電体層2の第2部分31がステップe)の終わりに100nm以上のステップ高さを有するのに十分に急峻なエッチング側壁を得るために、当業者に知られたエッチング技術を用いて実施することができる。ステップc)で形成された開口部20は、有利には、500nm~10μmの幅を有する。誘電体層2の開口部20は、矩形の断面を有していてもよい。ここで、「断面」とは、画素表面の法線に沿った断面、すなわち、誘電体層2の厚みを意味するものとする。変形例として、誘電体層2の開口部20は、異なる形状の断面を有することができ、これは、光の抽出に有益であり、例えば放物線状の断面を有する。
【0056】
スペーサ層の形成
ステップd)で形成されたスペーサ層3は、有利には、導電性であり、可視スペクトルにおいて透明である少なくとも1つの酸化物(以下、透明導電性酸化物のTCOと呼ぶ)を含む。酸化物は、有利には、酸化インジウムスズ、酸化スズSnO2及び酸化亜鉛ZnOから選択される。酸化亜鉛ZnOは、アルミニウムドープされていることが好ましい。酸化スズSnO2は、アルミニウムがドープされていることが好ましい。酸化インジウムスズ、酸化スズSnO2及び酸化亜鉛ZnOの他の誘導体も考えられる。
【0057】
ステップd)は、スペーサ層3の第2部分31が、赤、緑、及び青のサブ画素PR、PV、PBをそれぞれ受けることを意図した、開口部20内の第1、第2、及び第3厚さを有するように実行される。この目的のために、ステップd)は、以下の連続するステップを含むことができる。
d
1)誘電体層2上及び誘電体層2の開口部20内に第1TCO3aを堆積し、
d
2)青色サブ画素PBを受けるための開口部20をマスキングし、
d
3)第1TCO上に第2TCO3bを配置し、
d
4)緑色サブ画素PVを受けるための開口部20をマスキングし、
d
5)第2TCO上に第3TCO3cを配置する。
ステップd
1)を
図3に示す。ステップd
2)及びd
3)を
図4に示す。ステップd
4)及びd
5)を
図5に示す。
【0058】
ステップd1)、d3)、d5)は、当業者に公知の堆積技術を用いて実行される。ステップd2)、d4)は、感光性樹脂5を用いて行うことができる。スペーサ層3の第2部分31の第1厚さは、ステップd1)で堆積された第1TCO3aの厚さに対応する。スペーサ層3の第2部分31の第2厚さは、ステップd1)及びd3)でそれぞれ堆積された第1TCO3a及び第2TCO3bの厚さの合計に対応する。スペーサ層3の第2部分31の第3厚さは、ステップd1)、d3)及びd5)でそれぞれ堆積された第1TCO3a、第2TCO3b及び第3TCO3cの厚さの合計に対応する。なお、第1TCO3a、第2TCO3b、第3TCO3cは、同一の材料でも異なる材料でもよい。
【0059】
ステップd)は、有利には、第1厚さが100nm、第2厚さが50nm、第3厚さが10nmとなるように実施される。これらの厚さの値は、実験的な堆積条件にリンクした通常の許容範囲内で理解され、用語の数学的意味において完全に等しい値ではない。
【0060】
スペーサ層の除去
ステップe)は、有利には、スペーサ層3及び誘電体層2の第2部分31がステップe)の最後で100nm以上のステップ高さを有するように実施される。
【0061】
ステップe)は、有利には化学機械研磨によって実施される。ステップe)は、誘電体層2の表面を解放するために行われる。また、このようなステップe)により、誘電体層2の表面を平坦化することができる。
【0062】
ステップe)は、スペーサ層3の第1部分30が過度に薄い厚さを有する場合、下にある誘電体層2の一部の除去を伴うことがある。
【0063】
次に、ステップd2)及びd4)で使用した開口部20内に残留する感光性樹脂5を、ステップe)の後に、当業者に公知の剥離技術を用いて除去する。
【0064】
次に、
図6bisに示すように、誘電体層2の自由表面及びスペーサ層3の第2部分31上に誘電体膜2'を形成するのが有利である。非限定的な例として、誘電体膜2'は、Al
2O
3、HfO
2、Ta
2O
5から選択される材料で形成されてもよい。誘電体膜2'の厚さは、1nm~10nm、好ましくは1nm~5nmであることが好ましい。誘電体膜2'は、原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)によって形成することができる。次に、トレンチの底部の開口部20内の誘電体膜2'をエッチングして、スペーサ層3の第2部分31を解放する。誘電体膜2'は、赤、緑、青のサブ画素PR、PV、PBの寸法が不当に小さくならないように開口部20の底部でエッチングされるとともに、電気的な絶縁機能が保証される。開口部20の底部の誘電体膜2'のエッチングは、リソグラフィによって行うことができる。得られた誘電体膜2'は、第1電極E1と第2電極E2との短絡を避けるように配置されている。必要に応じて、ステップf)は、有機発光層のスタック4の第1部分40が誘電体膜2'上に延びるように実行される。
【0065】
有機発光層のスタック
ステップf)で形成された有機発光層のスタック4は、赤、緑、青のサブ画素PR、PV、PB毎に一定の厚さを有する。
【0066】
非限定的な例として、スタック4は、タンデムアーキテクチャにおいて3つの発光層を含むことができる。より正確には、構造化された第1電極E1がアノードであり、第2電極E2がカソードである場合、スタック4は、以下を含み得る。
-構造化された第1電極E1上に形成される第1正孔輸送層、
-第1正孔輸送層上に形成された青色光を発する第1発光層、
-第1発光層上に形成される第1電子輸送層、
-第1電子輸送層上に形成される電荷発生層(相互接続層としても知られる)、
-電荷発生層上に形成される第2正孔輸送層、
-第2正孔輸送層上に形成された緑色光を発する第2発光層、
-第2発光層上に形成された赤色光を発する第3発光層、
-第3発光層上に形成され、第2電極E2で被覆される第2電子輸送層。
【0067】
変形例として、スタック4は、以下を含むことができる。
-タンデム構造(従来の構造)に配置されない、それぞれ青色、緑色及び赤色光を発光する3つの発光層。
-従来の構造に配置された、それぞれ黄色及び青色光を発する2つの発光層;
-タンデム構造に配置された、それぞれ黄色及び青色光を発する2つの発光層。
【0068】
ステップf)は、当業者に公知の堆積技術を用いて実施される。
【0069】
第2電極
第2電極E2は、好ましくは、Al、Ag、Pt、Cr、Ni、Wから選択される金属材料、又は透明導電性酸化物で形成される。
【0070】
第2電極E2はカソードであることが好ましい。ただし、有機発光層のスタック4の構造が反転している場合には、第2電極E2をアノードとしてもよい。
【0071】
ステップg)は、当業者に公知の堆積技術を用いて実施され、ステップg)は、有機発光層のスタック4の第1部分40と第2部分41との間のステップにおける変化を保証するために、十分にコンフォーマルな堆積を介して実施されることが好ましい。
【0072】
第2電極E2は、有利には、空気及び湿度から第2電極E2及び有機発光層のスタック4を保護するように設計された封止層(図示せず)で被覆されている。
【0073】
アーキテクチャがボトムエミッティングアーキテクチャである場合、第2電極E2は、可視スペクトルにおいて反射するように設計された厚さを有する。第2電極E2は、例えば金属材料で形成される。
【0074】
アーキテクチャがトップエミッティングアーキテクチャである場合、第2電極E2は、可視スペクトルにおいて半透明であるように設計された厚さを有する。第2電極E2は、例えば、透明な導電性酸化物(例えばITO)からなる。
【0075】
本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者は、実施形態の技術的に有効な組み合わせを考慮し、それらを等価物に置き換えることができる。