IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-細胞検出装置および細胞検出方法 図1
  • 特許-細胞検出装置および細胞検出方法 図2
  • 特許-細胞検出装置および細胞検出方法 図3
  • 特許-細胞検出装置および細胞検出方法 図4
  • 特許-細胞検出装置および細胞検出方法 図5
  • 特許-細胞検出装置および細胞検出方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】細胞検出装置および細胞検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20231215BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20231215BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20231215BHJP
   C12N 5/074 20100101ALN20231215BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/06
G01N21/17 Z
C12N5/074
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021548717
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032726
(87)【国際公開番号】W WO2021059869
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019176197
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雅也
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166910(JP,A)
【文献】特開2019-106944(JP,A)
【文献】特開2018-117557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
C12Q 1/06
G01N 21/17
C12N 5/074
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
細胞を含む培地を収めている培養容器と、
第1スリットおよび第1遮光部を備える第1スリット部材と、
前記発光部から発光された光のうち前記培地および前記第1スリットを前記の順に通過した光を受光する受光部と、を備え、
前記第1スリット部材は、前記細胞が前記第1スリットに重なる位置にある場合、前記発光部から発光された光のうち、前記培養容器中の細胞によって散乱した散乱光を前記第1遮光部によって遮光する、細胞検出装置。
【請求項2】
前記発光部は、前記第1スリット部材を挟んで前記受光部と対向して配置される、請求項1に記載の細胞検出装置。
【請求項3】
前記第1スリットと前記受光部は平面視で重なる位置に配置されている請求項1または2に記載の細胞検出装置。
【請求項4】
前記第1スリット部材は、複数の第1スリットを有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項5】
前記受光部は、前記複数の第1スリットの数と同じ数だけ備えられ、
各受光部の幅方向およびそれに直交する長さ方向の寸法は、各第1スリットの幅方向およびそれに直交する長さ方向の寸法と実質的に等しく、
各受光部は、各第1スリットと平面視で実質的に同一位置で重なるように配置され、
前記受光部の上面と前記第1スリット部材の底面との間の距離は、50μm~1000μmである、請求項4に記載の細胞検出装置。
【請求項6】
前記複数の第1スリットの幅方向の寸法は、細胞の直径よりも小さく、
前記複数の第1スリットの長さ方向の寸法は、細胞の直径よりも大きい、請求項4または5に記載の細胞検出装置。
【請求項7】
前記複数の第1スリットの幅方向の寸法は、7~25μmであり、
前記複数の第1スリットの長さ方向の寸法は、25~1000μmである、請求項4~6のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項8】
前記第1スリット部材の上面のうち前記第1スリット以外の部位に遮光性部材が配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項9】
前記受光部は、前記第1スリット部材の底面と前記培養容器の底面との間に配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項10】
前記受光部は、前記第1スリット部材の底面より下方であって前記培養容器の直下に配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項11】
前記第1スリット部材と前記受光部との間に、第2スリットおよび第2遮光部を備える第2スリット部材をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項12】
前記第2スリット部材は、前記第1スリット部材と同一の形状を有し、平面視で前記第1スリット部材の幅方向および長さ方向において実質的に同一位置となるように配置され、
前記第1スリット部材の底面と、前記第2スリット部材の上面との間の距離は、1~100μmである、請求項11に記載の細胞検出装置。
【請求項13】
前記受光部は、前記第2スリット部材の底面と前記培養容器の底面との間に配置される、請求項11または12に記載の細胞検出装置。
【請求項14】
前記受光部は、前記第2スリット部材の底面より下方であって前記培養容器の直下に配置される、請求項11または12に記載の細胞検出装置。
【請求項15】
前記受光部が受光した光が所定量以下であった場合に、細胞が所定数以上に増殖したと判定する判定部をさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項16】
前記細胞は、人工多能性幹細胞である、請求項1~15のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項17】
前記受光部は、フォトダイオードである、請求項1~16のいずれか1項に記載の細胞検出装置。
【請求項18】
発光部と、
細胞を含む培地を収めている培養容器と、
第1スリットを備える第1スリット部材と、
前記発光部から発光された光のうち前記培地および前記第1スリットを前記の順に通過した光を受光する受光部と、を備え、
前記第1スリット部材は、前記発光部から発光された光のうち、前記培養容器中の細胞によって散乱した散乱光が前記受光部に受光されないように構成される、細胞検出装置。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の細胞検出装置を用いた細胞検出方法であって、
前記培養容器に前記培地および細胞を供給する供給工程と、
細胞を培養する培養工程と、
前記発光部から発光された光を前記細胞を含む前記培地に照射する照射工程と、
前記第1スリット部材を通過し前記受光部が受光した光の量を取得する取得工程と、を含む細胞検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞増殖を検出する細胞検出装置および細胞検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞培養において、細胞の様子や細胞数の増加具合は、位相差顕微鏡を用いて目視で確認されている(例えば、特許文献1~3参照)。また、他の従来技術では、細胞が増殖する様子を確認するために、直接接触型のCMOSセンサを用いて細胞を撮像して観察を行う技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-106944号公報
【文献】特表2018-515787号公報
【文献】国際公開第2016/142043号
【文献】特表2015-528311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1~3に記載される従来技術では、目視による観察に時間がかかり、細胞を大量に培養する際には、作業者に多くの手間および作業時間を要する。また、上記特許文献4に記載される従来技術のCMOSセンサを用いる観察は、細胞の形状などの詳細な観察には適しているが、局所的な情報しか得られないので、例えばウェル全体の大まかな細胞数を把握するには不向きである。また、特許文献1~4のいずれの従来技術でも、高価な装置が必須であり、高額の設備コストを要する。
【0005】
さらに、生命工学分野などの発展によって細胞培養が工業化されると、大量の細胞を効率よく培養することが必要となる。
【0006】
そのため、簡便に効率よく細胞増殖を検出することができる安価な細胞検出装置および細胞検出方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態に係る細胞検出装置は、
発光部と、
細胞を含む培地を収めている培養容器と、
第1スリットおよび第1遮光部を備える第1スリット部材と、
前記発光部から発光された光のうち前記培地および前記第1スリットを前記の順に通過した光を受光するように構成された受光部と、を備え、
前記第1スリット部材は、前記細胞が前記第1スリットに重なる位置にある場合、前記発光部から発光された光のうち、前記培養容器中の細胞によって散乱した散乱光を前記第1遮光部によって遮光するように構成される。
【0008】
本開示の細胞検出方法は、上記の細胞検出装置を用いた細胞検出方法であって、
前記培養容器に前記培地および細胞を供給する供給工程と、
細胞を培養する培養工程と、
前記発光部から発光された光を前記細胞を含む前記培地に照射する照射工程と、
前記第1スリット部材を通過し前記受光部が受光した光の量、または前記第1スリット部材および前記第2スリット部材を通過し前記受光部が受光した光の量を取得する取得工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態に係る細胞検出装置は、第1スリット部材は、発光部から発光された光のうち、培養容器中の細胞によって散乱した散乱光を第1遮光部によって遮光するように構成されることから、第1スリット部材の第1スリットに対応する培地の部位に細胞が存在する場合における受光部の受光強度(受光によって発生する電流値、即ち光電変換による電流値:Ip1とする)が、上記の部位に細胞が存在しない場合における受光部の受光強度(光電変換による電流値:Ip0とする)よりも小さくなる(Ip1<Ip0となる)。これは、上記の部位に細胞が存在すると、散乱光の成分が受光部によって受光されないことによる。その結果、第1スリットに対応する培地の部位における細胞の存否を、確実に検出することができる。従って、細胞が移動しない場合であれば、細胞が2次元的および/または3次元的に増殖することによって、受光部の受光強度が初期にIp0であったものが、経時的にIp1となり、さらにはIp1が小さくなっていく。これにより、培地全体に存在する細胞の数をほぼ正確に推定することができる。また、細胞が移動する場合であれば、単位時間当たり、例えば1分間当たりあるいは1時間当たりの、第1スリットに対応する培地の部位における細胞の存在確率(単位時間当たりの存在時間)、または第1スリットに対応する培地の部位を横切る単位時間当たりの細胞の数を、計測することによって、培地全体に存在する細胞の数をほぼ正確に推定することができる。
【0010】
また本開示の実施形態に係る細胞検出装置は、第1スリット部材が複数の第1スリットを有する場合、複数の第1スリット間で検出値を平均化処理することによって、より精密に計測することができる。従って、培地全体に存在する細胞の数をより正確に推定することができる。
【0011】
また本開示の実施形態に係る細胞検出装置は、受光部が第1スリット部材の底面と培養容器の底面との間に配置される場合、例えば、第1スリット部材および受光部を一体化した検出基板を培養容器に収容する構成とする場合、増殖した細胞の数が所定数を超えた場合に検出基板を培養容器から取り出し、使い捨てにすることができる。
【0012】
また本開示の実施形態に係る細胞検出装置は、第1スリット部材と受光部との間に、第2スリットおよび第2遮光部を備える第2スリット部材をさらに備え、第1スリット部材および第2スリット部材によって散乱光が遮光されることから、散乱光を遮光する効果が向上する。その結果、第1スリットおよび第2スリットに対応する培地の部位における細胞の存否を、より確実に検出することができる。
【0013】
従って、本開示の実施形態に係る細胞検出装置および細胞検出方法によれば、上述のような構成を有することによって、非常に安価で簡便に細胞増殖を検出することが可能となる。また、本発明の実施形態に係る細胞検出装置は、非常に安価で大量に供給することができるので、使い捨て製品として使用することが可能である。使い捨て製品として使用することによって、夾雑物が培地中に混入することを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態に係る細胞検出装置100の断面図である。
図2】本開示の実施形態に係る細胞検出装置100を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係る第1スリットの平面図である。
図4】本開示の実施形態に係る細胞検出装置101の断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る細胞検出装置101を示すブロック図である。
図6】本開示の実施形態に係る細胞検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る細胞検出装置について説明する。
【0016】
<検出装置>
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の細胞検出装置100の概略構成を示す図である。第1実施形態に係る細胞検出装置100は、発光部10と、第1スリット90および第1遮光部95を備える第1スリット部材20と、発光部10から発光された光のうち細胞を含む培地および第1スリット部材20の第1スリット90を前記の順に通過した光を受光するように構成された受光部30と、細胞を培養する培養容器40とを備える。
【0017】
培地70(以下、培養基または細胞培養培地ともいう)は、細胞の培養において、培養対象の細胞に生育環境を提供するものであり、ブドウ糖等の炭素源、ペプトン,硫酸アンモニウム等の窒素源、アミノ酸、ビタミン、リン酸塩等の無機塩類などの栄養素の供給源となるものである。また、細胞の増殖に必要な足場(増殖の基礎部)を与えるものでもある。具体的には、培地70としては、細胞の培養に必要な上記の栄養成分を含む液体から成る液体培地、またはその液体に寒天、ゼラチンなどを加えて固形化した固形培地がある。本実施形態の細胞検出装置100においては、細胞が平面的(2次元的)に移動して第1スリット90を横切るのに好適な光透過性の液体培地がよいが、細胞が2次元的に若干移動することができたり、第1スリット90の上方で重なるように3次元的に増殖することが可能な光透過性の固形培地であってもよい。
【0018】
第1スリット部材20は、発光部10から発光された光のうち、培養容器40中の細胞60によって散乱した散乱光を第1遮光部95によって遮光するように構成される。散乱光は、細胞の表面で反射、散乱される成分と、細胞を透過し細胞膜の部位で屈折する成分と、を含む。即ち、散乱光は、第1スリット部材20の主面に対してほぼ垂直に入射した光が、細胞によって光路変換された光に相当する。なお、図中の矢印L(実線)は、発光部10から発光された光の経路を示し、矢印LS1(破線)は、細胞60を透過して直進する光の経路を示し、矢印LS2(破線)は、細胞60を透過して散乱した光の経路を示す。
【0019】
図2は、第1実施形態の細胞検出装置100のブロック図である。本実施形態の細胞検出装置100は、発光部10と、第1スリット部材20と、受光部30と、培養容器40と、細胞60が十分に増殖したことを判定する判定部50とを備える。発光部10、受光部30および判定部50は、互いに電気的に接続される。判定部50は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)を備えて実現されてもよい。
【0020】
判定部50は、本実施形態では必須の構成ではなく、受光部30から外部に検出結果を出力できるように構成されていればよい。例えば、検出結果を外部のパーソナルコンピューター等に備わった画像表示装置(ディスプレイ)に表示させるように構成される。また、受光部30と判定部50との間などの、電気的な接続については、信号ケーブルなどを用いた有線接続であってもよく、送受信部およびアンテナなどを用いた無線通信によって接続されてもよい。
【0021】
発光部10は、培養容器40中の細胞60に光を照射する機能を有する。発光部10としては、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子、電界発光装置(EL装置)、蛍光灯、半導体レーザ素子等のレーザ光発光装置などを採用することができる。発光部10は、第1スリット部材20を挟んで受光部30と対向して配置される。また、第1スリット部材20の第1スリット90と受光部30は平面視で重なる位置に配置されていることがよい。この場合、第1スリット90を通過した光を受光部30によって高感度に受光できる。また、第1スリット部材20の第1スリット90に対応する培地70の部位に細胞60が存在する場合における受光部30の受光強度(光電変換による電流値:Ip1)と、上記の部位に細胞60が存在しない場合における受光部30の受光強度(光電変換による電流値:Ip0)との差(Ip0-Ip1)を大きくすることができる。
【0022】
第1スリット部材20は、発光部10から発光された光のうち、培養容器40中の細胞60によって散乱した散乱光が受光部30に受光されないようにする役割を有する。第1スリット部材20の第1遮光部95は、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の透明な基板の下面(受光部30側の面)に、第1スリット90以外の部位にクロム(Cr)層等の黒色金属層、黒色樹脂層(ブラックマトリックス)等から成る遮光性材料を配置して形成することができる。
【0023】
第1スリット部材20は、1つの第1スリット90のみを有してもよく、複数の第1スリット90を有してもよい。第1スリット部材20が1つの第1スリット90を有する場合、第1スリット90の形状は、平面視において、例えば、十字形、渦巻状、格子状、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形などであってもよく、培養容器40の形状、細胞60の形状、大きさ、移動速度等の運動能力、増殖特性などに応じて適切に選択される。第1スリット部材20が複数の第1スリット90を有する場合、第1スリット90の形状は、平面視において、例えば長方形であってもよい。図3に第1スリット90の形状の一例を示す。
【0024】
図3に示されるように、長方形の第1スリット90の幅(W)方向の寸法は、細胞60の直径よりも小さく、幅方向に直交する長さ(L)方向の寸法は、長さ方向における細胞60の長さ(直径RL)よりも大きいことが好ましい。この場合、細胞60を透過し屈折して散乱(光路変換)した散乱光LS2(図2に記載)が、平面視で長さ方向において受光部30から逸れるようにして、受光部30の側へ向かうこととなる。従って、第1スリット部材20の第1スリット90を通過して受光部30に受光されてしまうことを防ぐことができる。例えば、長方形の第1スリット90の幅方向の寸法は、7μm~25μmであり、長方形の第1スリット90の長さ方向の寸法は、25μm~1000μmであることがよい。より好ましくは、第1スリット90の長さ方向の寸法は、25μm~50μmであることがよい。なお、細胞60は、平面視形状が円形状、楕円形状等の全周が曲線的な形状であることが多いことから、図3の例では円形状のものとして描いているが、円形状に限るものではない。
【0025】
細胞60の種類は、特に限定されるものではなく、動物細胞、植物細胞、酵母細胞、細菌細胞等であってよい。動物細胞としては、筋肉細胞、肝臓等の内蔵細胞、リンパ球、単球及び顆粒球等の血液細胞、神経細胞、免疫細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)等がある。これらの細胞は、組織由来の初代細胞であってよく、あるいは継代培養細胞であってもよい。なお、iPS細胞は、人間の皮膚等の体細胞に、数種類の遺伝子を導入し培養することによって、ES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)のように様々な組織および臓器の細胞に分化できる分化万能性(pluripotency)と、分裂増殖を経てもそれを維持できる自己複製能、即ちほぼ無限に増殖する能力と、を持たせた細胞である。本実施形態の細胞検出装置100は、増殖能力の高いiPS細胞の増殖数の管理に好適に用いることができる。さらに、細胞60は、大腸菌細胞などの原核細胞であってもよく、動物細胞、植物細胞などの真核細胞であってもよい。細胞60は、例えば、正常細胞、または腫瘍細胞などの異常細胞であってもよく、遺伝子導入された細胞などの人工的に作製された細胞であってもよい。また、細胞60は、生体組織の一部として培養される細胞であってもよい。細胞培養は、接着培養であってもよく、浮遊培養であってもよい。
【0026】
第1スリット部材20の第1遮光部95は、第1スリット部材20の上面(発光部10側の面)のうち第1スリット90以外の部位に遮光性部材を配置して形成されてもよい。遮光性部材は、特に限定されないが、黒色金属、黒色レジスト等の黒色樹脂であってもよい。
【0027】
受光部30は、細胞60を透過せずに第1スリット部材20の第1スリット90を通過した光と、細胞60を透過した後に直進する光とを受光する。受光部30は、例えば、シリコンフォトダイオードなどの受光素子を採用することができる。フォトダイオードは、薄膜トランジスタなどの薄膜技術を応用することによって作製することが可能であるので、安価にかつ大量に生産することができる。
【0028】
細胞60の直下に第1スリット部材20を配置し、さらに第1スリット部材20の直下に受光部30を配置することによって、細胞60による光の散乱強度を光検出強度の差として検知することが可能となり、これによって培地70の第1スリット90の部位における細胞60の有無を検出することが可能となる。培地70の第1スリット90の部位に細胞60がない場合に受光部30で受光される光量Iを下記数1に、培地70の第1スリット90の部位に細胞60がある場合に受光部30で受光される光量I’を下記数2に示す。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
ここで、Iは発光部10から発光された光の量を示し、Aは細胞60によって吸収された光の量を示し、Bは培地70によって吸収された光の量を示し、SLは細胞60によって散乱した光の量を示し、IおよびI’は、受光部30によって受光された光の量を示す。なお、細胞60を透過し散乱されずに直進する光の量はI-(B+A)で表される。
【0032】
細胞60は透過率が高いのでAは僅かであり、発光部10から発光された光の量は、細胞60を透過し直進する成分については、培地70で吸収された光量Bを除き実質的に減少しない。しかし、細胞60は、固有の屈折率を有するので、細胞60を透過した光は散乱する。散乱した光を受光部30が受光しないようにすることによって、細胞60の数が増えるにつれてSLが大きくなり、受光部30が受光する光の量I’が減少する。これは、複数の第1スリット90がある場合には、より精密に検出できる。
【0033】
つまり、細胞培養の初期において細胞60が十分に増殖していない場合には、培養容器40中の細胞60の数は少ないので、散乱による光の減少は少なく、発光部10から発光された光は、ほとんど散乱することなく受光部30に受光される。細胞60が十分に増殖していれば、培養容器40中には多数の細胞60が密集しているので、発光部10から発光された光の大部分は、細胞60を透過して散乱し、受光部30に受光される光の量はわずかである。培養容器40中において十分に細胞60が増殖した際に、細胞60の増殖数に対応する受光部30が受光する光の量を予め測定して所定量としてメモリ装置等の記憶テーブルに記憶しておき、受光部30が受光する光の量が所定量以下(所定の増殖数以上)となった場合に、細胞60が所定数以上に増殖したと判定することができる。なお、所定数は、単位面積当たり、例えば1mm2当たり、1cm2当たり等の、細胞の数であってよい。また所定数は、単位体積当たり、例えば1mm3当たり、1cm3当たり等の、細胞の数であってよい。例えば、単位面積当たり1000個~100000個程度、単位体積当たり100個~100000個程度とすることができる。
【0034】
判定部50は、受光部30が受光した光が所定量以下であった場合に、細胞60が所定数以上に増殖したと判定する役割を有する。「所定量」は、予め定められた量であればよく、例えば、培養容器40の底面一面または第1スリット部材20の上面一面に細胞60が増殖した場合に、細胞60によって散乱されず、受光部30に受光された光の量によるものであってもよい。「所定数」とは、予め定められた数であればよく、例えば、培養容器40の底面一面または第1スリット部材20の上面一面を細胞が密集して覆い、培地交換が必要となる細胞数であってもよい。細胞60が十分に増殖したか否かは、細胞60が培養容器40中で密集し、増殖速度が低下したか否か(細胞60がコンフルエントに達したか否か)によって判定することができる。
【0035】
本実施形態の変形例として、受光部30は、複数の第1スリット90の数と同じ数だけ備えられ、各受光部30の幅方向および長さ方向の寸法は、各第1スリット90の幅方向および長さ方向の寸法と実質的に等しく、各受光部30は、各第1スリット90の幅方向および長さ方向において平面視で実質的に同一位置となるように配置され、受光部30の上面と第1スリット部材20の底面との間の距離は、50μm~1000μmであってもよい。これによって、細胞60によって散乱した散乱光のうち第1スリット部材20の第1スリット90を通過した散乱光が受光部30に受光されず、受光部30を通り過ぎるので、受光部30が散乱光を受光することを確実に防ぐことが可能となる。よって、細胞増殖をさらに正確に検出することが可能となる。複数の受光部30は、ガラス基板、プラスチック基板等から成る基体80(図2に記載)の上面に配置されてもよい。
【0036】
培養容器40は、例えばシャーレ、フラスコ、マルチウェルプレート等から成る。培養容器40の形状、大きさ等は特には限定されないが、一般に細胞60が増殖するのに適切なスペースを1つ以上有するものであればよい。例えば、シャーレであれば幅または直径が数cm~数10cm程度、高さが数mm~数cm程度であり、フラスコであれば幅または直径が数cm~数10cm程度、高さが5cm~数10cm程度であり、マルチウェルプレートであれば幅または直径が数cm~数10cm程度、高さが0.5cm~数cm程度である。培養容器40は、外部から内部が観察できるように、光学的に透明な材料、例えばプラスチック、ガラス等の材料から成る。またマルチウェルプレートは、一つのウェルの平面視形状が円形、正方形等の四角形、五角形、六角形等の多角形等である。円形は細胞の等法的な増殖に適した形状であり、細胞60が増殖しやすいという利点がある。六角形はウェルの最密配置に適した形状であり、マルチウェルプレートの小型化に有利である。このように、培養容器40は細胞60および培地70を収容する役割を有する。より具体的には、培養容器40は、市販されている細胞培養容器を使用することができ、例えば、細胞培養用プレート、細胞培養用フラスコまたは細胞培養用ディッシュであってもよい。これらの細胞培養容器は通常、蓋を備え、透明な樹脂で作製されている。培養容器40は、培地70を収容するための円筒型の収容部を複数有することが好ましい。培養容器40は、細胞60および培地70を収容していない状態で細胞検出装置100に取り付けられており、その後細胞60および培地70を供給されてもよく、細胞60および培地70を収容した状態で細胞検出装置100に取り付けられてもよい。培養容器40は、細胞60が十分に増殖すれば、細胞検出装置100から取り外すことができ、細胞60および培地70を回収し、洗浄し、滅菌した後、再び細胞検出装置100に取り付けて使用することもできる。
【0037】
受光部30は、第1スリット部材20の底面より下方であって培養容器40の直下に配置されてもよい。この場合、細胞60は、培地70を含む培養容器40中で培養され、第1スリット部材20上面に接着していてもよく、培地70中に浮遊していてもよい。これによって、受光部30に、細胞60および培地70が付着することを回避することが可能となるので、受光部30を、洗浄および滅菌することなく繰り返し使用することが可能となる。
【0038】
第1スリット部材20および受光部30は、培養容器40の直下に配置されてもよい。この場合、細胞60は、培地70を含む培養容器40中で培養され、培養容器40の底に接着していてもよく、培地70中に浮遊していてもよい。これによって、第1スリット部材20および受光部30に、細胞60および培地70が付着することを回避することが可能となるので、複数の培養容器40について第1スリット部材20および受光部30を、洗浄および滅菌することなく繰り返し使用することが可能となる。
【0039】
第1スリット部材20および受光部30は、培養容器40の底面の直上に配置されてもよい。例えば、受光部30は、第1スリット部材20の底面と培養容器40の底面との間に配置されてもよい。この場合、第1スリット部材20および受光部30は、培地70中に配置されてもよく、細胞60は、第1スリット部材20の上面に接着していてもよく、培地70中に浮遊していてもよい。第1スリット部材20および受光部30は、細胞60および培地70を洗浄して取り除き、滅菌する手間を省くために使い捨て製品として作製されてもよい。
【0040】
培地70は、市販されている細胞培養培地を使用することができ、使用する細胞60に応じて選択される。培地70は、例えば、哺乳類細胞を培養する場合にはダルベッコ改変イーグル培地であってもよい。培地70は、細胞60を培養するために必要な成分をさらに含んでいてもよく、例えば、ウシ血清アルブミン、成長因子、アミノ酸、抗生物質などを含んでいてもよい。
【0041】
一般的には、細胞培養では、2日~4日に1回程度の頻度で培地交換または継代する必要がある。細胞60が培養容器40中において十分に増殖すれば、細胞60および培地70を回収し、培地交換または継代することが可能である。また、回収した細胞60および培地70をさらなる後続の実験に使用することも可能である。
【0042】
本実施形態の変形例として、細胞検出装置100は、発光部10と、細胞60を含む培地70を収めている培養容器40と、第1スリット90を備える第1スリット部材20と、発光部10から発光された光のうち培地70および第1スリット90を前記の順に通過した光を受光する受光部30と、を備え、第1スリット部材20は、発光部10から発光された光のうち、培養容器40中の細胞60によって散乱した散乱光が受光部30に受光されないように構成されてもよい。
【0043】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の細胞検出装置101の概略構成を示す図である。本実施形態に係る細胞検出装置101は、発光部11と、第1スリット91および第1遮光部96を備える第1スリット部材21と、発光部11から発光された光のうち第1スリット部材21の第1スリット91を通過した光を受光するように構成された受光部31と、細胞を培養する培養容器41とを備える。
【0044】
第1スリット部材21は、発光部11から発光された光のうち、培養容器41中の細胞61によって散乱した散乱光を第1遮光部96によって遮光するように構成され、第1スリット部材21と受光部31との間に第2スリット部材22をさらに備え、第2スリット部材22は、第2スリット92および第2遮光部97を備える。
【0045】
図5は、第2実施形態の細胞検出装置101のブロック図である。本実施形態において、発光部11、第1スリット部材21、受光部31、培養容器41、判定部51、細胞61、培地71、第1スリット91、および第1遮光部96は、特に言及されない場合、それぞれ第1実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
【0046】
第2スリット部材22は、第1スリット部材21の第1スリット91を通過した光のうち細胞61によって散乱した散乱光を遮光し、受光部31に受光されないようにする役割を有する。第2スリット部材22は、第1スリット部材21と同一の形状を有し、第1スリット部材21の幅方向および長さ方向に実質的に同一位置となるように配置されてもよい。第1スリット部材21の第1スリット91と第2スリット部材22の第2スリット92とは、平面視で実質的に重ねられ、発光部11から発光された光であって細胞61を透過せずに第1スリット91を通過した光は、実質的に全て第2スリット92を通過することが好ましい。これによって、受光部31が受光する光の量について散乱光による減少幅を大きくすることができるので、さらに正確に細胞61の増殖を検出することが可能となる。
【0047】
第1スリット部材21の底面と第2スリット部材22の上面とは、散乱光をより効果的に遮光するように、間隔を開けて配置されてもよい。第1スリット部材21の底面と第2スリット部材22の上面との間の距離は、好ましくは1~100μmである。これによって、第1スリット部材21の第1スリット91を通過した散乱光を第2スリット部材22によって十分に遮光することが可能となるので、第1スリット部材21の第1スリット91を通過した散乱光が第2スリット部材22の第2スリット92も通過して受光部31に受光されることを防ぐことが可能となる。
【0048】
第2スリット92は、その形状が第1スリット91と相似形状であり、それらの寸法が同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1スリット部材21の底面と第2スリット部材22の上面との間の距離(距離D12とする)が短い場合、第2スリット92の寸法が第1スリット91の寸法と同じあり、距離D12が長い場合、第2スリット92の寸法が第1スリット91の寸法よりも大きい構成であってもよい。これは、距離D12が長くなると、細胞61による散乱光の拡散する範囲が広がること、距離D12の部位に存在する培地71による光の吸収が大きくなることから、受光素子の感度が低下する傾向があるからである。例えば、距離D12が1個の細胞61の大きさ(10μm~50μm程度)と同程度以下である場合、第2スリット92の寸法と第1スリット91の寸法とを同じにしてもよく、距離D12が1個の細胞61の大きさを超える場合、第2スリット92の寸法を第1スリット91の寸法よりも大きくしてもよい。この場合、第2スリット92の開口面積が第1スリット91の開口面積の1倍を超え2倍程度以下となるようにしてもよい。
【0049】
第2スリット部材22の第2遮光部97は、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の透明な基板の下面(受光部31側の面)に、第2スリット92以外の部位にクロム(Cr)層等の黒色金属層、黒色樹脂層(ブラックマトリックス)等から成る遮光性材料を配置して形成することができる。遮光部97は、第2スリット部材22の上面(発光部11側の面)のうち第2スリット92以外の部位に遮光性部材を配置して形成されてもよい。
【0050】
第1スリット部材21、第2スリット部材22および受光部31は、培養容器41の直下に配置されてもよい。この場合、細胞61は、培地71を含む培養容器41中で培養され、培養容器41の底に接着していてもよく、培地71中に浮遊していてもよい。これによって、第1スリット部材21、第2スリット部材22および受光部31に、細胞61および培地71が付着することを回避することが可能となるので、複数の培養容器41について、第1スリット部材21、第2スリット部材22および受光部31を、洗浄し、滅菌することなく繰り返し使用することが可能となる。
【0051】
受光部31は、細胞61を透過せずに第1スリット部材21の第1スリット91および第2スリット部材22の第2スリット92を通過した光と、細胞61を透過した後に直進する光とを受光する役割を有する。受光部31は、例えば、シリコンフォトダイオードなどの受光素子を採用することができる。
【0052】
受光部31は、第2スリット部材22の第2スリット92の幅方向および長手方向の寸法よりも大きな幅方向および長手方向の寸法を有してもよい。なぜなら、第1スリット部材21の第1スリット91を通過した散乱光は、第2スリット部材22によって十分に遮光されるからである。受光部31は、複数の受光素子を備えており、例えば、複数の受光素子の配置領域が培養容器41の底面を覆うように構成されてもよい。また受光部31は、図2の構成と同様に、ガラス基板、プラスチック基板等から成る基体81上に複数の受光部31が配置された構成であってもよい。
【0053】
受光部31は、第2スリット部材22の底面と培養容器41の底面との間に配置されてもよい。この場合、第1スリット部材21、第2スリット部材22および受光部31は、培地71中に配置されてもよく、細胞61は、第1スリット部材21の上面に接着していてもよく、培地71中に浮遊していてもよい。第1スリット部材21、第2スリット部材22および受光部31は、細胞61および培地71を洗浄して取り除き、滅菌する手間を省くために使い捨て製品として作製されてもよい。
【0054】
受光部31は、第2スリット部材22の底面より下方であって培養容器41の直下に配置されてもよい。この場合、第1スリット部材21および第2スリット部材22は、培地71中に配置されてもよく、細胞61は、第1スリット部材21の上面に接着していてもよく、培地71中に浮遊していてもよい。これによって、受光部31に、細胞61および培地71が付着することを回避することが可能となるので、受光部31を、洗浄および滅菌することなく繰り返し使用することが可能となる。第1スリット部材21、および第2スリット部材22は、細胞61および培地71を洗浄して取り除き、滅菌する手間を省くために使い捨て製品として作製されてもよい。
【0055】
細胞61の直下に第1スリット部材21を配置し、さらにその直下に第2スリット部材22を配置し、さらにその直下に受光部31を配置することによって、光の散乱強度を光検出強度の差として検知することが可能となり、これによって細胞61の有無を検出することが可能となる。
【0056】
<検出方法>
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の細胞検出方法のフローチャートである。本実施形態に係る細胞検出方法は、本発明の細胞検出装置を用いた細胞検出方法であって、培養容器に培地および細胞を供給する供給工程A1と、細胞を培養する培養工程A2と、発光部から発光された光を細胞を含む培地に照射する照射工程A3と、第1スリット部材を通過した光、または第1スリット部材および第2スリット部材を通過した光を、受光部が受光した光の量を取得する取得工程A4とを含む。
【0057】
供給工程A1は、培養容器に培地および細胞を供給する工程である。培地と細胞とは、同時に供給されてもよく、すなわち細胞を混合した培地を培養容器に供給してもよい。また、培地を培養容器に供給した後、細胞を混合した少量の培地をさらに供給してもよい。培地は、細胞の種類に応じて選択することができる。
【0058】
培養工程A2は、細胞を培養する工程である。培養温度、培養時間、および培養雰囲気などの培養条件は、細胞および培地に応じて選択することができる。
【0059】
照射工程A3は、発光部から発光された光を培地中の細胞に照射する工程である。照射工程A3は、例えば、細胞および培地の種類および量に応じて予め定められた期間にわたって細胞を培養した後に行われる。
【0060】
取得工程A4は、受光部が受光した光の量を取得する工程である。細胞が増殖するにつれて、細胞を透過して散乱する光の量が増加するので、受光部が受光する光の量は減少する。
【0061】
本実施形態において、取得工程A4の後に、受光部が受光した光が所定量以下であった場合に、細胞が所定数以上に増殖したと判定する判定工程A5がさらに含まれてもよい。判定工程A5では、細胞および培地の種類、培養容器に供給される細胞および培地の量、培養容器の種類などに応じて、十分に増殖した細胞に光を照射して受光部が受光する光の量を予め測定しておき、所定量としてもよい。細胞および培養容器の種類などに応じて、培養容器中に細胞が密集し、増殖速度が低下すれば、所定数以上に細胞が増殖したと判定されてもよい。また、判定工程A5は、受光部が受光した光が所定量以下となるタイミングまでに、周期的に、例えば1分毎、1時間毎あるいは1日毎等に、判定動作を繰り返すことができる。
【0062】
以上、本発明は、例えば、上記実施形態のように、発光部が細胞を含む培地を収めている培養容器の上方にあり、受光部が培養容器を挟んで発光部と対向する下方にあり、第1スリットおよび第1遮光部を備える第1スリット部材が培養容器の中または外にある構成において、発光部と第1スリット部材と受光部の組が複数組あってもよい。また、発光部が細胞を含む培地を収めている培養容器の側方にあり、受光部が培養容器を挟んで発光部と対向する側方にあり、第1スリットおよび第1遮光部を備える第1スリット部材が培養容器の中または外にあってもよい。この構成において、発光部と第1スリット部材と受光部の組が複数組あってもよい。これらの構成を採用することによって、細胞の数をより正確に推定することができる。
【0063】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10,11 発光部
20,21 第1スリット部材
22 第2スリット部材
30,31 受光部
40,41 培養容器
50,51 判定部
60,61 細胞
70,71 培地
80 基体
90,91 第1スリット
92 第2スリット
95,96 第1遮光部
97 第2遮光部
100,101 細胞検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6