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特許7403556超伝導ループのための持続的磁束バイアス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】超伝導ループのための持続的磁束バイアス方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/10 20230101AFI20231215BHJP
   G06N 10/00 20220101ALI20231215BHJP
【FI】
H10N60/10 Z
G06N10/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021562059
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2020058730
(87)【国際公開番号】W WO2020216575
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】16/395,061
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブラット、サミー
(72)【発明者】
【氏名】トパログル、ラジット、オヌール
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0168286(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0135867(US,A1)
【文献】特開平07-294615(JP,A)
【文献】LONGOBARDI, Luigi et al,Development and Testing of a Persistent Flux Bias for Qubits,IEEE TRANSACTIONS ON APPLIED SUPERCONDUCTIVITY,2007年06月,Vol. 17, No. 2,pp. 88-89,DOI:10.1109/TASC.2007.897413
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/10
G06N 10/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能な量子ビット・デバイスであって、
調整可能な量子ビットであって、超伝導量子干渉素子(SQUID)ループを含む、前記調整可能な量子ビットと、
前記SQUIDループに誘導結合された超伝導ループと、
前記超伝導ループに誘導結合された磁束バイアス線と、
を備え、
前記超伝導ループが、前記調整可能な量子ビットのいかなる超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含み、
動作において、前記超伝導ループが前記調整可能な量子ビットに持続的バイアスを与えることによって、前記調整可能な量子ビットの周波数を調整する
調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項2】
基板をさらに備え、前記SQUIDループが前記基板の第1の表面上に形成され、前記超伝導ループが前記第1の表面に対向する前記基板の第2の表面上に形成されている、請求項1に記載の調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項3】
調整可能な量子ビット・デバイスであって、
調整可能な量子ビットであって、超伝導量子干渉素子(SQUID)ループを含む、前記調整可能な量子ビットと、
前記SQUIDループに誘導結合された超伝導ループと、
前記超伝導ループに誘導結合された磁束バイアス線と、
を備え、
前記超伝導ループが、前記調整可能な量子ビットのいかなる超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含み、
基板をさらに備え、前記SQUIDループが基板の第1の表面上に形成され、前記超伝導ループが前記第1の表面に対向する前記基板の第2の表面上に形成されており、
動作において、前記超伝導ループが前記調整可能な量子ビットに持続的バイアスを与える、
調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項4】
記SQUIDループと前記超伝導ループが、前記SQUIDループと前記超伝導ループとの間の誘導結合を最大化するように位置合わせされている、
請求項2または3に記載の調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項5】
記SQUIDループと前記超伝導ループが同心になるように位置合わせされている、
請求項2または3に記載の調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項6】
前記超伝導ループが前記調整可能な量子ビットの周波数を調整する磁場を生成する、請求項1ないし3のいずれかに記載の調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項7】
前記磁束バイアス線によって磁場が生成されていないときに、前記超伝導ループが磁場を生成し続ける、請求項に記載の調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項8】
前記超伝導ループが、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムのうちの1つを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項9】
前記調整可能な量子ビットが、ニオブ、アルミニウム、および窒化チタンのうちの1つを含み、前記超伝導ループが、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムのうちの1つを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の調整可能な量子ビット・デバイス。
【請求項10】
調整可能な量子ビット・デバイスを製造する方法であって、
基板の第1の表面上に、超伝導量子干渉素子(SQUID)ループを含む調整可能な量子ビットを形成することと、
前記基板の第2の表面であって、前記第1の表面に対向する前記第2の表面上に、前記調整可能な量子ビットの各超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含む超伝導ループを形成することと、
前記基板の前記第2の表面上に、前記超伝導ループに誘導結合された磁束バイアス線を形成することと、
を含み、
前記超伝導ループが前記SQUIDループに誘導結合され、
動作において、前記超伝導ループが前記調整可能な量子ビットに持続的バイアスを与える、
方法。
【請求項11】
前記超伝導ループを形成することが、前記SQUIDループと前記超伝導ループとの間の誘導結合を最大化するように、前記超伝導ループを前記SQUIDループと位置合わせすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
超伝導ループの持続的バイアス電流を使用して前記調整可能な量子ビットを調整することであって、前記持続的バイアス電流が前記磁束バイアス線からの磁束が除去されても持続する、前記調整すること、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記超伝導ループの持続的バイアス電流を使用して前記調整可能な量子ビットを調整することが、
前記調整可能な量子ビット・デバイスの温度を、前記調整可能な量子ビットの動作に適した温度から、前記超伝導ループの前記臨界温度超であるが、前記調整可能な量子ビットの各超伝導材料の前記臨界温度未満の温度まで上げることと、
前記磁束バイアス線を使用して前記超伝導ループに磁場を印加することと、
前記調整可能な量子ビット・デバイスの前記温度を前記超伝導ループの前記臨界温度未満の温度に下げ、それによって前記超伝導ループに磁束を閉じ込めることと、
前記超伝導ループの前記持続的バイアス電流を維持しながら、前記磁束バイアス線によって印加される前記磁場を除去することと、
を含み、
前記超伝導ループの前記持続的バイアス電流によって生成された前記磁場が前記SQUIDループを貫通し、前記調整可能な量子ビットの周波数を調整する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記調整可能な量子ビット・デバイスの温度を、前記調整可能な量子ビットの動作に適した温度から、前記超伝導ループの臨界温度超であるが、前記SQUIDループの各超伝導材料の臨界温度未満の温度まで上げることと、
磁束バイアス線を使用して前記超伝導ループに磁場を印加することと、
前記調整可能な量子ビット・デバイスの前記温度を前記超伝導ループの前記臨界温度未満の温度に下げ、それによって前記超伝導ループに磁束を閉じ込めることと、
前記超伝導ループの持続的バイアス電流を維持しながら、前記磁束バイアス線によって印加される前記磁場を除去することと、
を含み、
前記超伝導ループの前記持続的バイアス電流によって生成された前記磁場が前記SQUIDループを貫通し、前記調整可能な量子ビットの周波数を調整する、
請求項1ないし9のいずれかに記載の調整可能な量子ビット・デバイスを調整する方法。
【請求項15】
量子コンピュータであって、
封じ込め容器を含む真空下の冷凍システムと、
前記封じ込め容器によって画定される冷凍真空環境内に収容された量子ビット・チップであって、それぞれが、複数の、請求項1ないし9のいずれかに記載の調整可能な量子ビット・デバイスを含む、前記量子ビット・チップと、
前記複数の調整可能な量子ビット・デバイスのうちの少なくとも選択された1つに電磁エネルギーを導き、この量子ビット・デバイスから電磁エネルギーを受け取るように、前記冷凍真空環境内に配置された複数の電磁導波路と、
を備える、
量子コンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束バイアス方法、より詳細には、超伝導ループのための持続的磁束バイアス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導量子ビットは、量子プロセッサを構築するための主要な候補の1つである。超伝導量子ビットにはいくつかの異なるスタイルがある。磁束によって周波数を調整できるものもあり、量子ビット間のクロストークを回避するために量子ビットの周波数を微調整することが可能である。磁束は、外部磁束バイアス線を使用して量子ビットに印加され、磁束バイアス線を流れる電流が量子ビット周波数を変化させる磁場を生成する。しかしながら、磁束調整可能な量子ビットは、外部磁束バイアス線からのノイズに非常に敏感である。外部磁束バイアス線のノイズは、量子ビットの位相緩和を引き起こし、あらゆる量子状態の寿命を短くし、量子プロセッサにおける量子ビットの有効性を制限する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によると、調整可能な量子ビット・デバイスは、調整可能な量子ビットを含み、調整可能な量子ビットは、超伝導量子干渉素子(SQUID)ループを含む。調整可能な量子ビット・デバイスは、SQUIDループに誘導結合された超伝導ループ、および超伝導ループに誘導結合された磁束バイアス線をさらに含む。超伝導ループは、調整可能な量子ビットのいかなる超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含む。動作において、超伝導ループは、調整可能な量子ビットに持続的バイアスを与える。
【0004】
本発明の一実施形態によると、調整可能な量子ビット・デバイスを製造する方法は、基板の第1の表面上に、SQUIDループを含む調整可能な量子ビットを形成することを含む。本方法は、基板の第2の表面であって、第1の表面に対向する第2の表面上に、調整可能な量子ビットの各超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含む超伝導ループを形成することをさらに含む。本方法は、基板の第2の表面上に、超伝導ループに誘導結合された磁束バイアス線を形成することをさらに含む。超伝導ループは、SQUIDループに誘導結合されており、動作において、超伝導ループは、調整可能な量子ビットに持続的バイアスを与える。
【0005】
本発明の一実施形態によると、SQUIDループおよびバイアス超伝導ループを含む調整可能な量子ビット・デバイスを調整する方法は、調整可能な量子ビット・デバイスの温度を、調整可能な量子ビットの動作に適した温度から、バイアス超伝導ループの臨界温度超であるが、SQUIDループの各超伝導材料の臨界温度未満の温度まで上げることを含む。本方法は、磁束バイアス線を使用してバイアス超伝導ループに磁場を印加し、調整可能な量子ビット・デバイスの温度をバイアス超伝導ループの臨界温度未満の温度に下げ、それによって磁束をバイアス超伝導ループに閉じ込めることをさらに含む。本方法は、バイアス超伝導ループの持続的バイアス電流を維持しながら、磁束バイアス線によって印加される磁場を除去することをさらに含む。超伝導ループの持続的バイアス電流によって生成された磁場は、SQUIDループを貫通し、調整可能な量子ビットの周波数を調整する。
【0006】
本発明の一実施形態によると、量子コンピュータは、封じ込め容器を含む真空下の冷凍システムと、封じ込め容器によって画定される冷凍真空環境内に収容された量子ビット・チップとを含み、量子ビット・チップは、複数の調整可能な量子ビット・デバイスを含む。量子コンピュータは、複数の調整可能な量子ビット・デバイスのうちの少なくとも選択された1つに電磁エネルギーを導き、この量子ビット・デバイスから電磁エネルギーを受け取るように、冷凍真空環境内に配置された複数の電磁導波路をさらに含む。複数の調整可能な量子ビット・デバイスのそれぞれは、調整可能な量子ビットを含み、調整可能な量子ビットは、SQUIDループと、SQUIDループに誘導結合された超伝導ループと、超伝導ループに誘導結合された磁束バイアス線と、を含む。超伝導ループは、調整可能な量子ビットのいかなる超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含む。動作において、超伝導ループは、調整可能な量子ビットに持続的バイアスを与える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態による調整可能な量子ビット・デバイスの概略図である。
図2】本発明の一実施形態による調整可能な量子ビット・デバイスの概略図である。
図3】本発明の一実施形態による量子コンピュータ・チップの製造方法を示す流れ図である。
図4】超伝導ループの持続的バイアス電流を使用して調整可能な量子ビットを調整する方法を示す流れ図である。
図5】調整可能な量子ビットの周波数をさらに調整する方法を示す流れ図である。
図6】本発明の一実施形態による量子コンピュータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態による、調整可能な量子ビット・デバイス100の概略図である。調整可能な量子ビット・デバイス100は、調整可能な量子ビット102を含む。調整可能な量子ビット102は、超伝導量子干渉素子(SQUID)ループ104を含む。調整可能な量子ビット・デバイス100はまた、SQUIDループ104に誘導結合された超伝導ループ106、および超伝導ループ106に誘導結合された磁束バイアス線108を含む。超伝導ループ106は、調整可能な量子ビット102のいかなる超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含む。動作において、超伝導ループ106は、調整可能な量子ビット102に持続的バイアスを与える。
【0009】
本明細書において、「持続的(persistent)」という言葉は、一定かつ継続的であると定義される。持続的バイアスは、システムの他の特性時間よりもはるかに長い期間持続することができる。例えば、この期間は、調整可能な量子ビットの緩和時間および位相緩和時間よりもはるかに長い場合がある。期間は、数分、数時間、または数日の期間であってもよい。この期間は、システムの温度が超伝導ループの超伝導材料の臨界温度未満に維持される時間の長さにわたって継続することができる。
【0010】
本発明の一実施形態によると、調整可能な量子ビット・デバイス100は、基板110をさらに含む。図1に示すように、SQUIDループ104は、基板110の第1の表面上に形成されてもよく、超伝導ループ106は、第1の表面に対向する基板の第2の表面上に形成されてもよい。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態による、調整可能な量子ビット・デバイス200の概略図である。図2は、基板202の側面図を示す。基板202は、第1の表面204と、第1の表面204の反対側の第2の表面206とを有する。調整可能な量子ビット・デバイス200は、第1の表面204上に形成されたSQUIDループ210を含む調整可能な量子ビット208を有する。調整可能な量子ビット・デバイス200は、第2の表面206上に形成された超伝導ループ212を有する。超伝導ループ212は、SQUIDループ210に誘導結合されている。調整可能な量子ビット・デバイス200はまた、超伝導ループ212に誘導結合された磁束バイアス線214を有する。
【0012】
本発明の一実施形態によると、SQUIDループ210は、第1の平面内に実質的にあるように形成され、超伝導ループ212は、第1の平面から離間した、第1の平面に実質的に平行な第2の平面内に実質的にあるように形成される。本発明の一実施形態によると、SQUIDループ210および超伝導ループ212は、SQUIDループ210と超伝導ループ212との間の誘導結合を最大化するように位置合わせされている。例えば、基板202の側面図において、超伝導ループ212は、図2に示すように、SQUIDループ210と垂直に位置合わせされてもよい。超伝導ループ212の中心は、SQUIDループ210の中心と垂直に位置合わせされてもよい。代替として、超伝導ループ212の中心は、側面図において、SQUIDループ210の中心から横方向にオフセットされていてもよい。超伝導ループ212は、SQUIDループ210を完全にまたは部分的に覆ってもよい。
【0013】
超伝導ループ212とSQUIDループ210との間の誘導結合は、超伝導ループ212とSQUIDループ210がどの程度位置合わせされているかに依存することがある。例えば、誘導結合は、超伝導ループ212がSQUIDループ210を完全に覆うように超伝導ループ212とSQUIDループが位置合わせされているときに最大化され得る。
【0014】
本発明の一実施形態によると、超伝導ループは、調整可能な量子ビットの周波数を調整する磁場を生成する。多くの場合、周波数の衝突を回避するために、量子ビット周波数をごくわずか調整する必要がある。調整は、従来、磁束バイアス線を使用して調整可能な量子ビットに磁束を印加することによって達成されていた。しかしながら、磁束バイアス線は、システムにノイズを導入し、その結果、調整可能な量子ビットの位相緩和が生じる。調整可能な量子ビットの周波数を制御するために使用されるバイアス電流のわずかな変動でさえ、量子ビットのコヒーレンスに壊滅的な影響を与える可能性がある。したがって、本発明の実施形態は、超伝導ループを使用して、調整可能な量子ビットの周波数を調整する持続的な磁場を生成する。
【0015】
本発明の一実施形態によると、超伝導ループは、磁束バイアス線によって磁場が生成されていないときに、磁場を生成し続ける。以下でより詳細に説明するように、ユーザは、磁束バイアス線を使用して超伝導ループに磁束を導入することができる。システムの温度を制御することによって、ユーザは、磁束バイアス線が磁場を生成するのを止めた後も、磁束がループに残るように、磁束を超伝導ループに閉じ込めることができる。このようにして、調整可能な量子ビットは、ノイズの多い磁束バイアス線から分離されるが、依然として超伝導ループに閉じ込められた持続的磁束によって調整される。
【0016】
本発明の一実施形態によると、超伝導ループは、例えば、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムのうちの1つまたは複数を含む。調整可能な量子ビットは、例えば、ニオブ、アルミニウム、および窒化チタンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0017】
図3は、本発明の一実施形態による、量子コンピュータ・チップを製造する方法300を示す流れ図である。方法300は、基板の第1の表面上に、超伝導量子干渉素子(SQUID)ループを含む調整可能な量子ビットを形成する(302)ことを含む。方法300は、基板の第2の表面であって、第1の表面に対向する第2の表面上に、調整可能な量子ビットの各超伝導材料の臨界温度よりも低い温度である臨界温度を有する超伝導材料を含む超伝導ループを形成する(304)ことをさらに含む。本方法は、基板の第2の表面上に、超伝導ループに誘導結合された磁束バイアス線を形成する(306)ことをさらに含む。超伝導ループは、SQUIDループに誘導結合されており、動作において、超伝導ループは、調整可能な量子ビットに持続的バイアスを与える。
【0018】
本発明の一実施形態によると、本方法は、超伝導ループの持続的バイアス電流を使用して調整可能な量子ビット308を調整することをさらに含み、持続的バイアス電流は、磁束バイアス線からの磁束が除去されたときに持続する。図4は、超伝導ループの持続的バイアス電流を使用して調整可能な量子ビットを調整する方法400を示す流れ図である。方法400は、調整可能な量子ビット・デバイスの温度を、調整可能な量子ビットの動作に適した温度から、超伝導ループの臨界温度超であるが、調整可能な量子ビットの各超伝導材料の臨界温度未満の温度まで上げる(402)ことを含む。この温度では、超伝導ループの材料は、超伝導でなくなるが、調整可能な量子ビットを形成する超伝導材料は、超伝導のままである。調整可能な量子ビットの動作に適した温度は、例えば、100mK未満であってもよい。調整可能な量子ビット・デバイスの温度を、100mK未満から、超伝導ループの臨界温度超であるが、調整可能な量子ビットの各超伝導材料の臨界温度未満の温度まで上げる(402)ことができる。例えば、超伝導ループがチタンで形成され、調整可能な量子ビットがニオブおよびアルミニウムで形成されている場合、調整可能な量子ビット・デバイスの温度は、100mK未満から、チタンの臨界温度である0.39K超であるが、ニオブ(T=9.26K)およびアルミニウム(T=1.20K)の臨界温度のうちの低い方である1.20K未満の温度まで上げることができる。
【0019】
方法400は、磁束バイアス線を使用して超伝導ループに磁場を印加する(404)ことをさらに含む。磁束バイアス線は、超伝導ループに誘導結合されているため、磁束バイアス線の電流は、超伝導ループに作用する対応する磁場を有し、これにより磁束が超伝導ループを貫通することになる。方法400は、調整可能な量子ビット・デバイスの温度を超伝導ループの臨界温度未満の温度に下げ(406)、それによって超伝導ループに磁束を閉じ込めることをさらに含む。超伝導ループを形成する材料が超伝導状態に戻ると、超伝導ループ領域を貫通している磁束は、超伝導ループに閉じ込められる。
【0020】
方法400は、超伝導ループの持続的バイアス電流を維持しながら、磁束バイアス線によって印加される磁場を除去する(408)ことをさらに含む。超伝導ループを貫通する磁束が超伝導ループに閉じ込められているため、磁束バイアス線の電流は、もはや必要ではない。したがって、磁束バイアス線によって印加される磁場を除去することができる。磁束バイアス線の電流がゼロに減少すると、調整可能な量子ビットのコヒーレンスは、磁束バイアス線のノイズによってもはや影響を受けなくなる。
【0021】
超伝導ループの持続的バイアス電流によって生成された磁場は、SQUIDループを貫通し、調整可能な量子ビットの周波数を調整する。超伝導ループは、SQUIDループに誘導結合されているため、超伝導ループに閉じ込められた磁束は、部分的にSQUIDループを貫通する。超伝導ループに閉じ込められた磁束がSQUIDループを貫通する程度は、超伝導ループとSQUIDループとの間の相互インダクタンスMによって決まる。貫通する磁束は、SQUIDの臨界電流の変位を引き起こす。臨界電流の変化は、調整可能な量子ビットの周波数の変化をもたらす。さらに、磁束は、超伝導ループに閉じ込められているため、超伝導ループは、SQUIDループを貫通する持続的な、すなわち一定かつ継続的な磁束を提供する。したがって、量子ビットの周波数は、調整可能な量子ビット・デバイスの温度が超伝導ループの臨界温度未満に維持されている限り、調整された状態にある。
【0022】
本発明の一実施形態による方法は、調整可能な量子ビットの周波数をさらに調整することを含む。例えば、調整可能な量子ビットの初期調整後、ユーザは、超伝導ループによって生成される磁場を変化させることによって、量子ビットの周波数を調整することを決定することができる。図5は、調整可能な量子ビットの周波数をさらに調整するための方法500を示す流れ図である。方法500は、調整可能な量子ビット・デバイスの温度を、超伝導ループの臨界温度超であるが、調整可能な量子ビットの各超伝導材料の臨界温度未満の温度まで上げる(502)ことを含む。方法500は、磁束バイアス線を使用して、以前に印加された磁場よりも弱いまたは強い磁場を超伝導ループに印加する(504)ことをさらに含む。方法500は、調整可能な量子ビット・デバイスの温度を、第2の超伝導ループの臨界温度未満の温度に下げる(506)ことを含む。方法500は、磁束バイアス線によって印加される磁場を除去する(508)ことをさらに含む。
【0023】
上述したように、図1に概略的に示される調整可能な量子ビット・デバイス100は、調整可能な量子ビット102を調整する磁場を生成する超伝導ループ106を含む。一部の用途では、システムが静的な状態で動作し、時折再調整が必要になる半静的な調整のみが望ましい場合がある。これは、例えば、相互共振ゲートが使用される、SQUIDループを組み込んだトランスモン、電荷、または位相量子ビット・システムの場合であり、周波数衝突を回避するために、わずかな調整可能性が望ましい。以下の性能の推定は、超伝導ループが半径Rを有し、SQUIDループが半径Rを有し、R<Rであると仮定する。上部バイアス・ループ内の1個の蓄積磁束量子Φに対する循環電流量は、Ibias=Φ/Lselfによって与えられ、ここで
【数1】

であり、d=1μmは超伝導ループを形成するワイヤの幅である。
【0024】
相互インダクタンスは、
【数2】

で与えられ、ここで、Hは超伝導ループおよびSQUIDループが形成される基板の厚みである。R=100μm、R=10μm、H=250μmとすると、相互インダクタンスは、M≒0.1pHとなる。量子ビットSQUIDループの臨界電流を1%だけ抑制するために、バイアス・ループに1mAの電流を循環させ、これは、ループに閉じ込められた約325個の磁束量子にほぼ対応する。これは、5GHzのトランスモン量子ビットの周波数を約25MHz調整するのに十分である。
【0025】
複数の調整可能な量子ビット・デバイスを使用して、量子コンピュータを形成することができる。図6は、本発明の一実施形態による量子コンピュータ600の概略図である。量子コンピュータ600は、封じ込め容器602を含む真空下の冷凍システムを含む。量子コンピュータ600は、封じ込め容器602によって画定される冷凍真空環境内に収容された量子ビット・チップ604を含む。量子ビット・チップ604は、複数の調整可能な量子ビット・デバイス606、608、610を含む。量子コンピュータ600はまた、複数の調整可能な量子ビット・デバイス606、608、610のうちの少なくとも選択された1つに電磁エネルギーを導き、この量子ビット・デバイスから電磁エネルギーを受け取るように、冷凍真空環境内に配置された複数の電磁導波路612、614を含む。調整可能な量子ビット・デバイス606、608、610はそれぞれ、図1の調整可能な量子ビット・デバイス100と同様に、調整可能な量子ビット、超伝導ループ、および磁束バイアス線を含む。各調整可能な量子ビットの周波数は、対応する磁束バイアス線を使用して、対応する超伝導ループに磁束を閉じ込めることによって個々に調整することができる。異なる磁束を各超伝導ループに閉じ込めることができ、これにより各調整可能な量子ビットを個々に持続的に調整することができる。
【0026】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図するものでもない。記載された実施形態の範囲から逸脱することなく、多くの修正形態および変形形態が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見られる技術に対する実際の適用または技術的改善を最もよく説明するために、または当業者が本明細書に開示される実施形態を理解できるようにするために選択された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6