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特許7403559凍結の危険がある部品要素を静力学的に密封するためのパッキン装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】凍結の危険がある部品要素を静力学的に密封するためのパッキン装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20231215BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20231215BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
F16J15/10 U
H05B3/14 F
F16J15/12 G
F16J15/10 Z
F16J15/10 X
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021568842
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020062624
(87)【国際公開番号】W WO2020239380
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】102019207691.2
(32)【優先日】2019-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルハルト,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】フィナ,グイド ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ディーゼル,ペーター
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0352120(US,A1)
【文献】特開平06-231869(JP,A)
【文献】特開昭61-097359(JP,A)
【文献】実開昭62-192566(JP,U)
【文献】特開平11-288805(JP,A)
【文献】特開平10-147762(JP,A)
【文献】特表2006-524609(JP,A)
【文献】特開2004-325603(JP,A)
【文献】特開2020-167672(JP,A)
【文献】実開平05-062364(JP,U)
【文献】実開平06-019207(JP,U)
【文献】特開平04-071102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0017785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/12
H05B 3/14
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結の危険があるディスク状のセンサ信号に対して透過性を有する部品要素(1;1’)および/または光学的部品要素(1;1’)を、これに縁側で当接する部品ハウジング(2;2’)に対して静力学的に密封するためのパッキン装置であって、それらの間に配置される静力学的ハウジング密封用の少なくとも1つのエラストマーパッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)を含み、前記エラストマーパッキン要素が、前記エラストマーパッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)から前記部品要素(1;1’)への熱伝導で除氷を行うために電気的に加熱させるための手段を備えている前記パッキン装置において、
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)を電気的に加熱させるための前記手段が導電性エラストマーを含み、前記導電性エラストマーが、互いに間隔をもって前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)に常設されている少なくとも2つの電気接触部位(5;5a;5b)を介して、電気エネルギーを供給可能であり、
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)は、前記部品ハウジング(2;2’)の中に位置する第1の部分と、前記部品ハウジング(2;2’)の端面上に位置する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを連結するとともに、前記第1の部分および前記第2の部分よりも薄い半径方向の幅を有する第3の部分とを含み、
前記部品要素(1;1’)が前記部品ハウジング(2;2’)の端面と対向して接触する部品要素面を有しており、当該部品要素面に設けられた凹部に前記第2の部分が入り込んでいることを特徴とするパッキン装置。
【請求項2】
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)の前記導電性エラストマーは、電気エネルギーの供給で熱によって体積が次のように増大し、すなわち前記部品ハウジング(2;2’)および前記部品要素(1;1’)での押圧力の上昇によって密封作用が大きくなるように体積が増大することを特徴とする、請求項1に記載のパッキン装置。
【請求項3】
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)が、前記部品ハウジング(2)の側または前記部品要素(1)の側に形成される周溝(7)内に配置されている挿入部品として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のパッキン装置。
【請求項4】
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)が、射出成形部品として形成され、前記部品要素(1’)の縁側または前記部品ハウジング(2’)の側に一体成形されていることを特徴とする、請求項1に記載のパッキン装置。
【請求項5】
前記エラストマーパッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)が、閉じたリングの形態に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のパッキン装置。
【請求項6】
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)が、正確に互いに対向して配置されている2つの接触部位(5)を有し、これら2つの接触部位が、同じ長さの2つの電流路によって互いに結合していることを特徴とする、請求項に記載のパッキン装置。
【請求項7】
前記接触部位(5)が、金属製接点ピン(6)を前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)の前記エラストマー材の中へ穿刺または食い込ませることによって実現されていることを特徴とする、請求項1に記載のパッキン装置。
【請求項8】
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)の前記接触部位(5)の領域が、導電性を上昇させるための接着促進剤を備えていることを特徴とする、請求項1またはに記載のパッキン装置。
【請求項9】
天然ゴム、熱可塑性エラストマー、エチレン・プロピレン・ジエン・モノマー・ゴム(EPDM)、シリコーン、フッ素ゴムを含んでいるエラストマー材のグループの中から、前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)のエラストマー基材が選択されていることを特徴とする、請求項1に記載のパッキン装置。
【請求項10】
金属粒子、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンナノチューブを含んでいる導電材料のグループの中から、前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)の、前記エラストマー基材に導電性を生じさせる充填材が、選択されていることを特徴とする、請求項に記載のパッキン装置。
【請求項11】
前記パッキン要素(3;4;4’;4’’;4’’’)内での前記充填材の成分が、10ないし70体積%の間の範囲、好ましくは30ないし50体積%の間の範囲にあることを特徴とする、請求項10に記載のパッキン装置。
【請求項12】
前記ディスク状の部品要素(1;1’)が光学レンズとして、ヘッドライトガラスとして、または、超音波センサもしくはレーダーセンサの、光学的に非透明なカバーディスクとして形成されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のパッキン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結の危険があるディスク状の知覚的および/または光学的部品要素を、これに縁側で当接する部品ハウジングに対して静力学的に密封するためのパッキン装置であって、それらの間に配置される静力学的ハウジング密封用のエラストマーパッキン要素を含み、前記エラストマーパッキン要素が、当該エラストマーパッキン要素から前記部品要素への熱伝導で除氷を行うために電気的に加熱させるための手段を備えている前記パッキン装置に関するものである。
【0002】
本発明の適用分野は、主に自動車技術に及んでいる。たとえば自動車内のカメラシステムおよびセンサを低温の場合も即応させるためには、これらを除氷して作動中に不凍状態に保つ必要がある場合がある。さらに、湿気による作用を防止する必要がある。このため、カメラシステムにおいては通常、最前部の光学レンズの付近に熱源が装着される。たとえば超音波センサまたはレーダーセンサのような他のセンサも、外部部品要素として、センサ信号に対し透過性があり、多くはプラスチックから成るディスク状のカバーを有している。除氷を行うには、これに対しても、このカバーの付近に熱源が必要である。このようにして、自動車のコールドスタートの際に氷および雪の層を溶かすことができ、走行中にカバーを氷および雪が付着しないように維持することができ、これによって代替のワイパーシステムまたは噴射システムが不必要になる。これに加えて、本発明によるパッキン装置は自動車技術以外でも適用でき、すなわち同様に形成された凍結の危険がある部品要素、たとえば建築技術または家電技術における部品要素で利用できる。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、とりわけ、ここで注目している前述の目的に対しても提供される、自動車技術の多面的適用のための加熱要素、特に窓ガラス、アウターミラー等のための接触面加熱手段として使用される加熱要素を開示している。
【0004】
前記加熱要素は少なくとも1つの熱電加熱体を含み、熱電加熱体は、熱可塑性導電プラスチックから形成され、少なくとも2つの導電路を介して電気エネルギーを供給可能である。その際、導電路は溶射方法により装着されており、特に規格化されたプラズマ溶射によって装着されている。このようにして装着された導電路は、それぞれ電気接続部位と、特に少なくとも1つの接点ピンと導電結合されている。
【0005】
アウターミラー背面に装着するため、前記公知の加熱体は対応的に板状に形成されていてよく、好ましくは、焼結球体またはここで使用されている熱可塑性導電プラスチックから成る顆粒から成っている。
【0006】
この種のパネルヒーティングは対応的に付加的な構成空間を必要とし、それ故ここで注目している種類のディスク状の知覚的または光学的部品要素に対しては、光路を遮断するので適していない。
【0007】
さらに、周知の技術水準から、凍結の危険がある部品を静力学的に密封するためのパッキン装置も明らかになっている。このパッキン装置は、パッキン要素から前記部材への熱伝導で除氷するために電気加熱手段を備えている。このため、通常のように加熱ワイヤー等がパッキン要素と組み合わされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/092964A2号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、製造技術的に簡単に製造でき且つパッキン要素を電気加熱するために確実に作用する手段を備えた、凍結の危険があるディスク状の知覚的および/または光学的部品要素を静力学的に密封するためのパッキン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の前提部によるパッキン装置から出発して、請求項1の特徴的構成と結び付けて解決される。後に続く従属請求項は、本発明の有利な更なる構成を表している。
【0011】
本発明は、パッキン要素を電気加熱させるための手段が導電性エラストマーを含み、導電性エラストマーが、互いに間隔をもってパッキン要素に常設されている少なくとも2つの電気接触部位を介して、電気エネルギーを供給可能であるという技術的教示を含んでいる。
【0012】
換言すれば、これによって、エラストマーパッキン要素自体を熱源として利用させる。これには、除氷すべき部品要素に対するパッキン要素の既存のエラストマー押圧力を効率的な熱伝導のために利用できるという利点がある。さらに、付加的な加熱手段のために、構成空間を必要とする別個の部品を必要としない。本発明は、ハウジングを静力学的に密封するためのパッキン要素が、ほとんどの場合、知覚的および/または光学的部品要素に対して最後に面当接する部品であるという構造的状況を活用する。実験の結果、横断面に沿った電流を生じさせるような、導電性エラストマーの電気供給は、パッキン要素の十分な加熱を生じさせ、これによって生じる熱エネルギーは、十分な除氷のために、これに縁側で当接する部品要素に伝導可能であることが明らかになった。その際、本発明による加熱手段は、ディスク状の知覚的または光学的部品要素を通る光路の邪魔にならない。
【0013】
また、本発明の具体的な目的のためにエラストマーを使用することには、これが架橋され、したがってこれに含まれている導電性充填材が架橋構造内部で不動に固定されているという利点がある。加えて、エラストマー材は熱膨張の際にフレキシブルに反応することができ、これによって加熱すべき部品要素に対する適合性が向上して熱伝導を改善させる。さらに、当然ながら密封作用も同時に良くなる。また、パッキンのエラストマー材は、寿命期間にわたって何度も膨張することによるエイジングには通常曝されていない。なぜなら、このような膨張はエラストマーにとって問題のない膨張範囲内にあるからである。これに対し、技術水準で同様の目的のために慣用されている熱可塑性プラスチックは、これに比べて破断伸びがわずかしかなく、多数の熱膨張過程により、熱力学的破損にまで至る望ましくないエイジングに曝されている可能性がある。
【0014】
第1の実施態様によれば、パッキン要素は、部品ハウジングの側または部品要素の縁側に形成される周溝内に配置されている挿入部品として形成されていてよい。半径方向または軸線方向に延びることができるこのような周溝により、前もって作成されているパッキン要素を簡単に挿入できて、電気接触させることができる。通常は、カバークラウン等の付加的な位置決め手段が固定手段として必要である。
【0015】
これとは択一的に、第2実施態様によれば、パッキン要素を、射出成形部品等として形成し、部品要素の縁側または部品ハウジングの側に直接一体成形することも考えられる。このため、補完的に、部品ハウジングまたは部品要素に保持溝を設けて、結合の安定性を強化することができる。加えて、射出成形には、パッキン要素の電気接触部位に確実な電気接触が形成可能であるという利点がある。射出成形以外に他の適当な成形方法、たとえば種々の材料成分から成る3D印刷も使用できる。
【0016】
パッキン要素の成形の際、パッキン要素の接触部位の領域に、結合部位での導電性を上昇させるための接着促進剤を備えさせてよい。それ自体公知のこのような接着促進剤は、パッキン要素の製造の前に接点ピン上に塗布させることができ、或いは、これとは択一的に、エラストマー材に混入させることができる。別個の接着促進剤を使用しない場合には、押圧によりエラストマー材の成形圧の残圧を介して確保される、エラストマー材内での接点ピンの十分な食い込みに留意すべきである。
【0017】
特に、ディスク状の知覚的または光学的部品要素は円形状を形成し、その結果この事例では、これに適合されるエラストマーパッキン要素は閉じたリングの形態に形成されている。その際、パッキン要素は、好ましくは正確に互いに対向して配置されている2つの接触部位を有し、これら2つの接触部位は、同じ長さの2つの電流路によって互いに結合している。この限りにおいては、同じ長さの電流路はリング状のパッキン要素の2つの鏡対称な半回路によって形成され、全周に沿ったパッキン要素の均一な加熱を簡単に可能にする。これ以外に、パッキン要素が他の、好ましくは閉じた形状構成を有することも考えられ、この閉じた形状構成は、通常は密封すべきディスク状の部品要素の縁輪郭によって予め与えられている。
【0018】
本発明をさらに改善させる処置によれば、接触部位をそれぞれ、金属製接点ピンをパッキン要素の導電性エラストマー材の中へ穿刺または食い込ませることによって実現することが提案される。適合は、熱によるエラストマー材の膨張によって接触した後に有利な態様でさらに強化される。
【0019】
本発明による目的のために、好ましくは、天然ゴム、熱可塑性エラストマー、エチレン・プロピレン・ジエン・モノマー・ゴム(EPDM)、シリコーン、フッ素ゴムを含んでいるエラストマー材のグループの成分であるエラストマー基材がパッキン要素の製造のために使用される。
【0020】
このようなエラストマー基材に導電性を生じさせるパッキン要素の充填材は、好ましくは、金属粒子、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ(Carbonanotube)を含んでいる導電材料のグループの中から選択されている。
【0021】
種々の実験から、本発明の対象である適用例において本発明による除氷作用を達成するには、他方多大な電気エネルギーを消費する必要なしにこれを達成するには、パッキン要素内での充填材の成分は、10ないし70体積%の間の範囲にあるべきであることが明らかになった。特に好ましくは、30ないし50体積%の間の範囲が前述の最適な目的を達成するには特に有効であることが裏付けられた。混合成分により、パッキン要素の比電気抵抗を支配的な構造的境界条件に応じて調整でき、加えていわゆるPTC効果(PTC=Positive Temperature Coefficient 正の温度係数)の意味での密封自動軽減制御のために適した高さのエラストマー基材の熱膨張係数を利用することができる。
【0022】
本発明による解決手段の有利な適用例の意味では、ディスク状の部品要素がカメラシステム等の光学レンズとして、車両照明のヘッドライトガラスとして、または、超音波センサもしくはレーダーセンサの、光学的に非透明なカバーディスクとして形成されていることが提案される。これ以外に、縁側でのハウジング密封を提供し、取り付け場所で凍結の危険性がある、好ましくはディスク状の他の部品要素も、本発明による解決手段を具備することができる。
【0023】
ヘッドライトの事例では、除氷機能以外に、ガラスの曇りも阻止することができる。これは、従来では、使用する照明手段の廃熱によって達成されていた。照明手段としてLEDランプを使用することが増えているので、ヘッドライト内で放熱量が少なくなり、ヘッドライトの曇りは確実に阻止されない。したがって、このためにも本発明による解決手段は対策を提供する。
【0024】
以下では、本発明を改善させる更なる処置が、本発明の有利な実施形態の説明とともに図を用いてより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態による本発明のパッキン装置を備えたカメラシステムの光学レンズ装置の部分縦断面図である。
図2】第2実施形態による本発明のパッキン装置を備えたカメラシステムの光学レンズ装置の部分縦断面図である。
図3】第3実施形態による本発明のパッキン装置を備えたカメラシステムの光学レンズ装置の部分縦断面図である。
図4】カバークラウンと第1実施形態での本発明によるパッキン装置とを備えた他のカメラシステムの概略縦断面図である。
図5】他の実施形態によるパッキン装置を備えた図4のカメラシステムの細部の概略縦断面図である。
図6A】第1実施形態による本発明のパッキン装置における電気接触を説明するための概略縦断面図である。
図6B】第1実施形態による本発明のパッキン装置における電気接触を説明するための概略縦断面図である。
図7A】第2実施形態による本発明のパッキン装置における電気接触を説明するための概略縦断面図である。
図7B】第2実施形態による本発明のパッキン装置における電気接触を説明するための概略縦断面図である。
図8】細部における電気接触を説明するための概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1によれば、自動車の(以後詳細に図示しない)カメラシステムにおいて、ディスク状の光学部品要素1がフロントレンズの形態で使用され、光学部品要素は、種々の他の光学レンズとともに、部品ハウジング2としてのチューブ状のレンズホルダ内に挿着されている。光学部品要素1の、外側にある表面は、自動車内での使用場所において、対応的な環境の影響により霧や凍結に曝されている。光学部品要素1は、部品ハウジング2に対し、半径方向のリング状エラストマーパッキン要素3と軸線方向のリング状エラストマーパッキン要素4とを介して、部品ハウジング2に対し静力学的に密封されている。
【0027】
ここでは、このパッキン装置の範囲で、軸線方向のリング状エラストマーパッキン要素4は導電性エラストマーから成り、導電性エラストマーは、互いに対向して配置され且つパッキン要素4に常設されている2つの電気接触部位5(そのうちここでは1つのみが図示されている)を介して、電気エネルギーを供給可能であり、その結果パッキン要素4が加熱し、これによってディスク状の部品要素1に対する押圧力のためにこれに熱が伝わり、所望の除氷作用を発揮する。その際、電気接触部位5は、導電性パッキン要素4のエラストマー材の中への金蔵製接点ピン6の穿刺および食い込みによって実現されている。ここでは、パッキン要素4は、部品ハウジング2と隣接レンズとの間に形成された周溝7内に配置されている挿入部品として形成されている。加熱すべき部品要素1に対するパッキン要素4の、ここではかなり大きな当接面のために、優れた熱伝導がある。
【0028】
しかしながら、図2によれば、半径方向に配置される1つのリング状エラストマーパッキン要素3にだけ、電気的に加熱するための本発明による手段を備えさせることも可能であり、これによって半径方向外側の縁領域から部品要素1内への熱伝導が導入される。
【0029】
図3に図示した組み合わせ変形実施形態によれば、半径方向に配置されるリング状エラストマーパッキン要素3も、部品要素1と部品ハウジング2との間に位置するように軸線方向に配置されるリング状パッキン要素4も、本発明に従って導電性エラストマーから成り、これらリング状パッキン要素は、ここでは共通の1つの金属製接点ピン6’を介して、接触部位5の実現のために(典型的には)電気を供給可能である。その際、ここでは金属製接点ピン6は多重に屈曲させた金属薄板によって実現されており、金属薄板はエラストマーパッキン要素3と4に差し込まれているのではなく、それぞれのパッキン下面においてこれにそれぞれ当接する。前述した両実施形態に比べると、このパッキン装置は加熱すべき部品要素1への最大熱入力をもたらすことができる。
【0030】
図4に図示したカメラシステムの実施形態では、カメラシステムは、実質的に、スリーブ状の部品ハウジング2’を挿着したカメラハウジング7から成り、スリーブ状の部品ハウジングの遠位端部には、光学レンズとして形成された部品要素1’が配置されている。部品要素1’は、カバークラウン8を用いて、ねじ結合により部品ハウジング2’に着脱可能に固定される。その際、ディスク状の部品要素1’は縁側を軸線方向に配置されているエラストマーパッキン要素4’に適合され、このエラストマーパッキン要素は本発明による導電性エラストマーから成っている。この個所では、この場合も熱伝導が行われる。スリーブ状の部品ハウジング2’の近位端部側では、部品ハウジング2’によって形成される光路の端部にカメラシステムの光学センサ9が配置されている。電流供給部10は、この場合も導電性パッキン要素4’電気を供給するために用いられ、このために、正確に対向してパッキン要素4’に配置される2つの金属製接点ピン6aと6bが設けられている。このようにして2つの同じ長さの電流路が生じ、これらの電流路はそれぞれ接点ピン6aと6bの両側を起点とし、パッキン要素4’の一様な加熱を保証する。
【0031】
図5に図示した、前述したカメラシステムの変形実施形態では、本発明に従って形成される導電性エラストマーパッキン要素4’は、形状拘束的な多重パッキンとして形成され、多重パッキンは、軸線方向において部品要素1’に対し密封を行うとともに、半径方向において、部品ハウジング2’にねじ止めされたカバークラウン8に対する密封を行う。その際、このリング状エラストマーパッキン要素4’’は、部品要素1’への熱伝導を改善するために、軸線方向に、前述の実施形態に比べてより幅広の当接面を備えている。
【0032】
図6Aおよび図6Bのシーケンス図は、部品ハウジング2’を含めた、エラストマーパッキン要素4’’’のための第1および第2の接触部位5aおよび5bの機械的および電気的結合の第1の可能性を説明するものである。その際、第1のステップで、図6Aによれば、まず各電気接触部位5aおよび5bのためにそれぞれ設けられた金属製接点ピン6を、(典型的には)射出成形によりハウジング部品2’を成形する前に金型内へ挿入して、射出被覆する。次に、導電性パッキン要素4’’’を形成するため、図6Bによれば、このために空けられている部品ハウジング2’の繰り抜き部内へ導電性エラストマー材を噴射させる。金属製接点ピン6の端部側でのエラストマー材の保持は、接着促進剤を挿入することによって改善される。このように、基本的には、射出部位11を起点として、金属製接点ピン6を導電性エラストマー材でオーバースプレーする。
【0033】
これに対し、図7Aおよび図7Bのシーケンス図は、接点ピン6を(典型的には)両接触部位5aと5bに電気的および機械的に結合させる第2の可能性を示している。これは、両金属製接点ピン6を(典型的には)すでに予め成形したリング状エラストマーパッキン要素4’’’内へいわゆるステッチングすることによって行う。この場合、第1のステップで、図7Aによれば、まずスリーブ状の部品ハウジング2’を射出部位12を介してプラスチックから射出成形し、その後導電性エラストマー材を他の射出部位11を介して射出して、パッキン要素4’’’を形成させる。次に、図7Bによれば部品ハウジング2’内および/またはパッキン要素4’’’内に食い込んでいる両金属製接点ピン6を(典型的には)エラストマー材の中へステッチングする。図8に示した詳細図によれば、部品ハウジング2’での金属製接点ピン6の食い込みは、この領域で金属製接点ピン6に一体成形されている逆鉤13aを介して行い、これに対し同様にパッキン要素4’’’での食い込みは、金属製接点ピン6の遠位端部側に配置されている他の逆鉤13bを介して行う。
【0034】
本発明は、前述した実施形態に限定されない。むしろ、後述する請求の範囲の保護範囲によって包括されるようなそれらの変形実施形態も考えられる。たとえば、本発明によるパッキン装置を、凍結の危険性がある他の部品要素に対しても利用すること、たとえばヘッドライトガラス、超音波センサまたはレーダーセンサ等の光学的に非透明なカバーディスクに対し利用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1,1’ 部品要素
2,2’ 部品ハウジング
3,4,4’,4’’,4’’’ パッキン要素
5,5a,5b 電気接触部位
6 金属製接点ピン
7 周溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8