(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】注射針形成体および注射用中空針
(51)【国際特許分類】
A61M 5/34 20060101AFI20231215BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A61M5/34 510
A61M5/32 540
A61M5/32 520
(21)【出願番号】P 2022107930
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2018075405の分割
【原出願日】2018-04-10
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江田 幸雄
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513558(JP,A)
【文献】実開昭60-094240(JP,U)
【文献】特開2002-165881(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043162(WO,A1)
【文献】特開2018-047227(JP,A)
【文献】特開2004-290542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/34
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器本体の先端部に装着される注射針形成体であって、
前記注射針形成体の長手軸に垂直な面における断面形状が非円形であり、先端の吐出口が前記長手軸の半径方向外側に向けて開口し、
前記長手軸の半径方向内側に最頂部を有して前記長手軸の周方向に配設された複数の中空針と、
内部空間を有する円柱形状を有し、前方端が有孔当接面で覆われ、後方端に注射器本体を取り付ける開口があり、前記有孔当接面には前記中空針を内部に受け入れ前記中空針の液流路を前記内部空間と連通させる針取付孔が配設され、前記針取付孔の形状は前記中空針の前記断面形状に対応している形成体本体と、
を有し、
前記中空針の断面形状および前記針取付孔の内周形状は、前記長手軸の半径方向内側に配設される断面方向尖頂部を有する形状であり、
前記形成体本体は、
前記針取付孔の一部を塞ぐように前記針取付孔の前記断面方向尖頂部の近傍に前記中空針と当接して前記中空針の挿入深さを規定する第1ストッパ部を有する、
注射針形成体。
【請求項2】
前記中空針の断面形状および前記針取付孔の内周形状は、前記長手軸の半径方向内側に配設される断面方向尖頂部を有する涙形である、
請求項1に記載の注射針形成体。
【請求項3】
注射器本体の先端部に装着される注射針形成体であって、
前記注射針形成体の長手軸に垂直な面における断面形状が非円形であり、先端の吐出口が前記長手軸の半径方向外側に向けて開口し、
前記長手軸の半径方向内側に最頂部を有して前記長手軸の周方向に配設された複数の中空針と、
内部空間を有する円柱形状を有し、前方端が有孔当接面で覆われ、後方端に注射器本体を取り付ける開口があり、前記有孔当接面には前記中空針を内部に受け入れ前記中空針の液流路を前記内部空間と連通させる針取付孔が配設され、前記針取付孔の形状は前記中空針の前記断面形状に対応している形成体本体と、
を有し、
前記中空針の断面形状および前記針取付孔の内周形状は、前記長手軸の半径方向に長軸を有し前記長手軸の周方向に短軸を有する楕円であり、
前記形成体本体は、
前記針取付孔の一部を塞ぐように前記針取付孔の前記長手軸の半径方向内側に前記中空針と当接して前記中空針の挿入深さを規定する第1ストッパ部を有する、
注射針形成体。
【請求項4】
前記形成体本体は、
前記針取付孔の一部を塞ぐように前記長手軸の半径方向外側に前記中空針と当接して前記中空針の挿入深さを規定する第2ストッパ部を更に有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の注射針形成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器先端の注射針形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を皮下組織に経皮投与する注射方法がある。注射には、注射針の皮膚への挿入や薬液の皮下組織への注入による痛みの問題がある。注射の痛みを緩和するために、細い針を用いられる場合がある。さらに、細い針で所望の薬液供給量を確保するために複数本の針を用いる技術もある。例えば、特許文献1には、形成体本体から複数本の針を突出させたニードル形成体(注射針形成体)が開示されている。針の突出寸法により、薬液を供給する位置の皮膚表面からの深さを規定でき、目的とする皮下組織層に正確に薬液を供給することが可能である。
【0003】
特許文献1に開示された注射針形成体は、各針の先端を針の長手方向に対して斜めに切断することにより、針先に傾斜勾配面が形成されている。そのため、薬液を吐出する吐出口は、各針の径方向における傾斜勾配面が向いている方向に向く。各針は皮膚から概ね垂直に人体に挿入されるので、薬液は吐出口の向いている方向により多く拡散する。そのため、この種の注射針では所望の範囲に所望量の薬液を注入し、皮下組織内における薬液の広がりを安定させために、各針の吐出口が所望の方向に規定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された注射針形成体では、各針は吐出口が所定の方向を向くように形成体本体に取り付けられている。しかしながら、複数本の針を備えた注射針形成体の製造工程において、吐出口が所望の方向に向くように各針を形成体本体に取り付けていくのは、手作業で行うにしても製造装置で行うにしても容易なことではなく、コスト増になっている。針の本数が増えれば、それだけ製造コストが増大する。
【0006】
本発明の目的は、注射針形成体における針の吐出口を容易に方向付ける技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施態様に従う注射針形成体は、注射器本体の先端部に装着される注射針形成体であって、先端の吐出口に長手方向に垂直な方向があり、断面の外周形状にも長手方向に垂直な方向があり、吐出口の方向と外周形状の方向が所定の相対関係に規定された中空針と、内部空間を有する円柱形状を有し、前方端が有孔当接面で覆われ、後方端に注射器本体を取り付ける開口があり、有孔当接面から内部空間まで中空針を貫通させる針取付孔が配設され、針取付孔の内周形状には中空針の外周形状に対応して方向があり、針取付孔は有孔当接面側から見て所定の方向に方向付けされている形成体本体と、を有している。
【0008】
本発明の実施態様に従う注射用中空針は、注射器本体に取り付けられる注射針形成体に用いられる注射用中空針において、先端の吐出口に長手方向に垂直な方向があり、断面の外周形状にも長手方向に垂直な方向があり、前記吐出口の方向と前記外周形状の方向が所定の相対関係に規定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中空針の吐出口と断面形状に互いに固定された方向性があり、更に形成体本体の針取付孔も方向付けされているので、形成体本体の針取付孔に中空針を挿入することで、中空針の吐出口を所定の方向に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1による注射針形成体10の斜視図である。
【
図3】実施例1による中空針12を長軸方向に垂直に切断した断面図である。
【
図4】注射針形成体10を含む注射器9の構成を示す図である。
【
図6】第2工程後の注射針形成体10の斜視図である。
【
図7】実施例1の注射針形成体10を先端側から見た平面図である。
【
図9】実施例1の変形例の注射針形成体10を先端側から見た平面図である。
【
図10】実施例2による形成体本体11を先端側から見た平面図である。
【
図11】実施例2による中空針12を先端側から見た平面図である。
【
図12】変形例におけるストッパ部を備えた基台11Aを表面部27側から見た平面図である。
【
図13】変形例の基台11AのA-A断面図である。
【
図14】実施例3による形成体本体11を先端側から見た平面図である。
【
図15】実施例3による中空針12を先端側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例による注射針形成体について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1による注射針形成体10の斜視図である。
図2は、実施例1による中空針12の斜視図である。
図3は、実施例1による中空針12を長軸方向に垂直に切断した断面図である。
図4は、注射針形成体10を含む注射器9の構成を示す図である。
【0013】
実施例1による注射針形成体10は形成体本体11と複数の中空針12とを有している。更に、形成体本体11は互いに着脱可能な基台11Aとカバー11Bで構成されている。カバー11Bは形成体本体11の先端側をなす部材であり、基台11Aは形成体本体11の後端側をなす部材である。基台11Aおよびカバー11Bは、それぞれ限定されるものではないが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド・イミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルフォン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリフェニレン・スルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、PLA樹脂等の材料を単独または併用し、射出成形や粉末圧縮成型、3Dプリンタによる造形、レーザー加工や切削加工などを併用し形成してもよく、カーボンファイバーやシリカ、その他、セラミックス、金属材料などを添加することもできる。
図1には、基台11Aとカバー11Bが分離された状態が描かれている。
【0014】
図4に示すように、注射器9は、ホルダー80と、注射針形成体10と、注射器本体90とを有している。注射針形成体10は、その形成体本体11の後端において、注射器本体90の先端部91に取り付けられる。また、注射針形成体10はその先端側に、中空針12等を保護するホルダー80が着脱可能に装着される。
【0015】
中空針12は、先端の吐出口31に長手方向に垂直な方向がある。
図2には、吐出口31の方向が矢印31aによって示されている。吐出口31は長手方向に対して傾斜した勾配面に形成されており、中空針12の長手方向に垂直な面において勾配面が向いている方向を吐出口31の方向としている。
【0016】
中空針12の断面の外周形状にも長手方向に垂直な方向がある。
図3には、中空針12の断面の外周形状の方向、すなわち、楕円の長軸方向が直線31bによって示されている。本実施例の中空針12の断面の外周形状は楕円であり、楕円の長軸方向を外周形状の方向としている。
【0017】
複数ある全ての中空針12における吐出口31の方向と外周形状の方向とは相対的に同一の方向関係に固定されている。本実施例では、全ての中空針12において、吐出口31の方向は、断面の外周形状の方向と一致している。
【0018】
上記構成を有する中空針12の先端が例えば人間の皮膚に挿入され、形成体本体11に取り付けられた注射器本体90への操作により吐出口31から薬液を吐出する。
【0019】
形成体本体11は、内部空間のある円柱形状を有し、前方端が皮膚に当接する有孔当接面22で覆われ、後方端には内部空間に連通する開口がある。後方端の開口に注射器本体90が取り付けられる。
【0020】
形成体本体11には、軸方向に有孔当接面22から内部空洞まで貫通する複数の針取付孔21が配設されている。針取付孔21の内周形状は中空針12の外周形状に対応している。ここでは一例として、針取付孔21の内周形状と中空針12の外周形状は同一であり、針取付孔21の内周形状が中空針12の外周形状よりやや大きいものとする。したがって針取付孔21の内周形状にも方向がある。針取付孔21に中空針12を挿入した状態では、針取付孔21の方向と中空針12の外周形状の方向が一致する。有孔当接面22から見た複数の針取付孔21はそれぞれに規定された方向に向けられている。
【0021】
以上説明したように、本実施例によれば、中空針12の吐出口31と断面形状にそれぞれ方向性があり、それらの関係が固定されており、更に形成体本体11の針取付孔21にも所定の方向性があるので、形成体本体11の針取付孔21に中空針12を挿入することで、各中空針12の吐出口31それぞれを容易に所定の方向に向けることができる。
【0022】
また、本実施例では、中空針12の断面形状が楕円(非円形)なので、針先の開口部を所望により広く構成することができ、薬液が広範囲に展開されやすくなる。その結果、同じ液量で今まで以上に薬の効果を発現することが期待される。また、少ない液量で今までと同等の薬の効果を発現することが期待される。
【0023】
形成体本体11を構成する基台11Aは、カバー11Bと当接する表面部27から外周面上に軸方向(中空針12の長手方向)に所定長の複数の溝23を有している。溝23の終端には溝23よりも中心側に深く掘られた凹部24が設けられている。
【0024】
一方、カバー11Bは、基台11Aと当接する後端部28から、基台11Aの溝23と位置、形状、および大きさが対応する爪部25を有している。爪部25の先端には径方向内側に向けた突起部26が設けられている。
【0025】
爪部25には弾性があり、溝23に爪部25を添わせて基台11Aの表面部27とカバー11Bの後端部28を当接させると、突起部26が凹部24に嵌合し、基台11Aとカバー11Bが係止されて形成体本体11として一体化する。複数ある基台11Aの溝23は表面部27の外周に不等間隔に配置され、それと同数あるカバー11Bの爪部25は後端部28において基台11Aの溝23と同一の間隔に配置されている。
【0026】
そのため、カバー11Bは、基台11Aに対して所定の回転方向の位置でのみ取り付けることができるようになっている。針取付孔21が例えば非対称あるいは不規則に配置され、基台11Aにおける針取付孔21Aとカバー11Bにおける針取付孔21Bとが回転方向の所定の相対位置でしか一致しない場合であっても、基台11Aとカバー11Bとを所定の相対位置に位置付けることができる。
【0027】
カバー11Bは、基台11Aに中空針12を取り付けるとき、中空針12の把持を容易にして操作性を高める機能と、形成体本体11に取り付けられた中空針12のカバー11Bの有孔当接面22からの先端の露出長を調整する機能とを有する。カバー11Bの厚さL1を規定することにより、中空針12の先端の露出長を規定するこができる。中空針12の露出長は注射時における中空針12の皮膚への挿入深さを規定する重要なパラメータである。
【0028】
以下、本実施例の注射針形成体10の製造工程について説明する。
【0029】
注射針形成体10は、第1工程として、基台11Aの針取付孔21に中空針12を取り付け、第2工程として、基台11Aにカバー11Bを取り付けることにより、製造される。
【0030】
図5は、第1工程を説明するための図である。第1工程では基台11Aに中空針12を取り付ける。
【0031】
基台11Aを固定した状態で、外周面に接着剤を塗布した中空針12を、基台11Aの針取付孔21Aに挿入する。もしくは、中空針12を基台11Aの針取付孔21Aに挿入したあと、針取付孔21Aと中空針12の間隙を埋めるように、接着剤を注入してもよい。その際、中空針12の外周形状を針取付孔21Aの内周形状に合わせて挿入するので、中空針12の外周形状の方向と所定の相対関係にある方向に向いた吐出口31が所定の方向に向けられる。
【0032】
そして、針取付孔21Aに挿入した中空針12を表面部27からの露出長L2の位置に固定し、その状態で接着剤を硬化させる。これにより、基台11Aに中空針12が固定される。
【0033】
なお、本実施例では、基台11Aに中空針12を接着剤で固定する例を示しているが、どのような方法で固定してもよい。他の例として、融着(熱融着、超音波融着、高周波融着)で固定してもよい。また、別の固定方法の1形態として、針取付穴21の径を中空針12の外径以下とすることで、圧入し、固定する方法も採ることができる。
【0034】
図1を用いて第2工程について説明する。第2工程では基台11Aにカバー11Bを取り付ける。
【0035】
基台11Aを固定した状態で、
図1に示したように、基台11Aの溝23に、カバー11Bの爪部25を沿わせ、基台11Aに取り付けられた中空針12の位置に、カバー11Bの針取付孔21B一致させて、カバー11Bの後端部28と基台11Aの表面部27とを当接させる。
【0036】
図6は、第2工程後の注射針形成体10の斜視図である。
【0037】
基台11Aの表面部27にカバー11Bの後端部28を当接させると、爪部25の突起部26が溝23の凹部24に嵌り、基台11Aにカバー11Bが固定される。カバー11Bの厚さがL1で、基台11Aの表面部27からの中空針12の露出長がL2なので、カバー11Bの有孔当接面22からの中空針12の露出長はL3=L1-L2となる。このL3は例えば1.0mm~1.5mmが好ましく、1.1~1.3mmが更に好ましい。
【0038】
本発明による中空針12は好ましくは外径が0.4mm以下であり、より好ましくは0.3mm以下である。
【0039】
図7は、実施例1の注射針形成体10を先端側から見た平面図である。
【0040】
針取付孔21に中空針12を取り付けると、中空針12の吐出口31が有孔当接面22の径方向の外側に向くように、有孔当接面22における針取付孔が方向付けされている。中空針12の吐出口31が外側を向くので、薬液を広い範囲に供給することができる。
【0041】
図8は、注射針形成体10の断面図である。注射器本体90には、その先端91の外周に筒状のルアーロック部92が形成されている。ルアーロック部92は、内部にはねじ山が形成され、雌ねじとなっている。先端91は先細りのテーパ状に形成されている。一方、基台11Aの内部空間30は、注射器本体90の先端91と嵌合するように先開きのテーパ状に形成されている。基台11Aの後端には、その外周の一部を突出させたフランジ25が複数形成されている。フランジ25は、ルアーロック部92の内部にねじ込まれ、螺合する。これにより、注射器本体90に基台11Aが固定される。
【0042】
実施例1では、中空針12の先端の吐出口31の方向と、中空針12の外周形状の方向とが一致し、それらの方向が共に有孔当接面22の径方向の外側に向いているが、本発明がこれに限定されることは無い。
【0043】
変形例として、中空針12の先端の吐出口31の方向と、中空針12の外周形状の方向とが直交していてもよい。
図9は、実施例1の変形例の注射針形成体10を先端側から見た平面図である。本変形例では、破線の直線31bで示された中空針12の外周形状の方向は有孔当接面22の周方向を向き、破線の矢印31aで示された中空針12の先端の吐出口31の方向は、有孔当接面22の径方向の外側を向いている。本変形例によれば有孔当接面22の周方向に広い範囲で薬液を供給することができる。
【0044】
なお、本実施例では、中空針12の取付時の操作性を向上するために、形成体本体11が基台11Aとカバー11Bとで構成した例を示したが、本発明がこれに限定されることはない。他の例として、形成体本体11を単体部材とした構成であってもよい。その場合、形成体本体11は
図6に示した基台11Aとカバー11Bが一体化した形状とすればよい。一体型の形成体本体11は上記第1工程のみで製造することができる。その際、中空針12の先端から露出長L3の部分を把持すればよい。
【0045】
また、本実施例の形成体本体11は、針取付孔21が有孔当接面22から内部空間まで貫通するのみの構成であった。したがって、中空針12の長手方向の取り付け位置は、製造を手作業で行う場合には作業員が、自動化の場合には製作機械が、
図5に示した露出長L3を確認しながら位置合わせを行うことになる。しかし、本発明がこれに限定されることはない。他の例として、形成体本体11が、針取付孔21に挿入される中空針12の液流路と形成体本体11の内部空間とを連通させつつ中空針12の後端の一部と当接して中空針12の挿入深さを規定するストッパ部を有する構成としてもよい。中空針12の断面形状が楕円なので、ストッパ部は中空針12の後端における楕円の長軸方向の両端近傍あるいはどちらか一方の端部近傍で中空針12と当接するようにするとよい。これによれば、楕円の中空針12の後端における楕円の長軸方向端部をストッパ部に当接させるので、液流路をほとんど削減することなく、中空針12の基台11Aへの深さの調整を容易にすることができる。
【0046】
また、本実施例では、注射針形成体10が複数(3本)の中空針12を備える例を示したが、1本以上の中空針12を備えていればよい。針取付孔21は、中空針12と同数形成されていればよい。
【実施例2】
【0047】
実施例2による注射針形成体10は、中空針12の断面の外周形状、形成体本体11の針取付孔21の内周形状が実施例1とは異なる。
【0048】
図10は、実施例2による形成体本体11を先端側から見た平面図である。
図11は、実施例2による中空針12を先端側から見た平面図である。
【0049】
形成体本体11には、有孔当接面22から内部空洞へ貫通する針取付孔21が複数(
図10の例では3つ)設けられている。中空針12の外周形状は涙形であり、涙形の頂点が、中空針12の長手方向に垂直な断面における尖頂部である断面方向尖頂部32をなしている。形成体本体11の針取付孔21の内周形状は中空針12の外周形状に対応してやはり断面方向尖頂部33を有している。形成体本体11の有孔当接面22が円形であり、針取付孔21が内周形状の断面方向尖頂部33を径方向の内側に向けて配設されている。
【0050】
したがって、中空針12および針取付孔21の断面方向尖頂部32、33を有孔当接面22の径方向の内側に向けるので、有孔当接面22の面積を有孔に利用して中空針12を配置することができる。
【0051】
なお、本実施例において、中空針12は、その先端が、断面方向尖頂部32が中空針の長手方向に最も長くなるように、中空針12の長手方向に対して傾斜した勾配面となっているものであってもよい。中空針12の断面方向尖頂部32に中空針12自体のもっとも長い位置が来るので、中空針12の先端をより鋭く尖らせ、皮膚へ挿入しやすくすることができる。
【0052】
また、本実施例の中空針12の断面方向尖頂部32その先端が鋭角となっているが、本発明がこれに限定されることはない。他の例として、中空針12の断面方向尖頂部32は所定の曲率を有する曲線形状であってもよい。中空針12の断面方向尖頂部32を所定の面取り曲率で曲率面取りすることにより、中空針12の先端に適度な強度を持たせることができる。
【0053】
また、本実施例の注射針形成体10において、基台11Aの針取付孔21Aは表面部27から内部空間まで貫通するのみであるが、本発明がこれに限定されることはない。以下、変形例について説明する。
【0054】
図12は、変形例におけるストッパ部を備えた基台11Aを表面部27側から見た平面図である。
図13は、変形例の基台11AのA-A断面図である。
図13には中空針12が破線で示されている。基台11Aには、針取付孔21Aの尖頂部を含む一部を塞ぐストッパ部29が設けられている。基台11Aは、針取付孔21Aに挿入される中空針12の液流路と基台11Aの内部空間とを連通させつつ中空針12の後端の断面方向尖頂部32を含む一部と当接して中空針12の挿入深さを規定するストッパ部を有する。本変形例では、ストッパ部29は針取付孔21Aと内部空間30の間に設けられている。針取付孔21Aに中空針12を挿入していくと、後端の断面方向尖頂部32近傍において中空針12がストッパ部29に突き当たる。その位置で中空針12を固定すれば、中空針12を所定の挿入深さに位置決めすることができる。
【0055】
製造工程において、非円形の中空針12の長手方向の後端における断面方向尖頂部32を含む一部をストッパ部29に当接させれば、中空針12を形成体本体11へ所望の深さに挿入できるので、中空針12を所望の深さに容易に取り付けることができる。
【実施例3】
【0056】
実施例3による注射針形成体10は、中空針12の断面の外周形状、形成体本体11の針取付孔21の内周形状が第1、2の実施例とは異なる。
【0057】
図14は、実施例3による形成体本体11を先端側から見た平面図である。
図15は、実施例3による中空針12を先端側から見た平面図である。
【0058】
形成体本体11には、有孔当接面22から内部空間へ貫通する針取付孔21が複数(
図14の例では6つ)設けられている。中空針12の外周形状は二等辺三角形であり、その二等辺三角形の頂点が断面方向尖頂部32をなしている。形成体本体11の針取付孔21の内周形状は中空針12の外周形状に対応してやはり断面方向尖頂部33を有している。形成体本体11の有孔当接面22が円形であり、針取付孔21が内周形状の断面方向尖頂部33を径方向の内側に向けて配設されている。
【0059】
したがって、中空針12および針取付孔21の断面方向尖頂部32、33を有孔当接面22の径方向の内側に向けるので、有孔当接面22の面積を有効に利用して中空針12を配置することができる。
【0060】
なお、本実施例では、
図14に示したように、中空針12の外周形状において、二等辺三角形の3つの角が鋭角である例を示したが、これに限定されることは無い。他の例として、各角を、所定の曲率を有する曲線形状としてもよい。中空針12の断面方向の角を所定の面取り曲率で曲率面取りすることにより、中空針12に適度な強度を持たせることができる。
【0061】
上述した本発明の実施例は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施例にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…注射針形成体、11…形成体本体、11A…基台、11B…カバー、12…中空針、21…針取付孔、21A…針取付孔、21B…針取付孔、22…有孔当接面、23…溝、24…凹部、25…爪部、26…突起部、27…表面部、28…後端部、30…内部空間、31…吐出口、31a…矢印、31b…直線、32…断面方向尖頂部、33…断面方向尖頂部、80…ホルダー、9…注射器、90…注射器本体、91…先端部