(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61G 11/16 20060101AFI20231215BHJP
B61D 15/06 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B61G11/16
B61D15/06
(21)【出願番号】P 2022176249
(22)【出願日】2022-11-02
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 侯泰
(72)【発明者】
【氏名】木村 宗太
(72)【発明者】
【氏名】高澤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】門脇 孝爾
(72)【発明者】
【氏名】根本 龍宜
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-326552(JP,A)
【文献】特開2019-093983(JP,A)
【文献】特開2017-109730(JP,A)
【文献】特開2020-093752(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111315(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61G 11/16
B61D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する台車と、前記台車と接続され床面をなす台枠と、前記台枠の幅方向の両端部に立設される側構体と、前記台枠の長手方向の両端部に立設される妻構体と、前記側構体及び前記妻構体の上端部に載置される屋根構体と、を備える鉄道車両において、
前記妻構体に設置された衝撃吸収部材と、
前記衝撃吸収部材が取り付けられる位置に、前記妻構体の強度を補強する妻構体補強部と、を有し、
前記妻構体補強部は、内部に前記妻構体を補強する複数の妻構体補強壁を有し、
前記衝撃吸収部材は、前記複数の妻構体補強壁に対応する位置に、内部に前記衝撃吸収部材を補強する複数の衝撃吸収補強壁を有し、
前記妻構体と前記衝撃吸収部材との境界面において、
前記複数の妻構体補強壁を前記境界面に投影した第一の投影面と、
前記複数の衝撃吸収補強壁を前記境界面に投影した第二の投影面と、が重畳する、
鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記複数の妻構体補強壁は、前記鉄道車両の長手方向と高さ方向で形成される面に平行な複数の妻構体垂直補強壁を有し、
前記複数の衝撃吸収補強壁は、前記鉄道車両の長手方向と高さ方向で形成される面に平行な複数の衝撃吸収垂直補強壁と、を有する
鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記複数の妻構体補強壁は、前記鉄道車両の長手方向と幅方向で形成される面に平行な複数の妻構体水平補強壁を有し、
前記複数の衝撃吸収補強壁は、前記鉄道車両の長手方向と幅方向で形成される面に平行な複数の衝撃吸収水平補強壁と、を有する
鉄道車両。
【請求項4】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記複数の妻構体補強壁または前記複数の衝撃吸収補強壁は、前記鉄道車両の長手方向に対し、前記境界面と空隙を有する、
鉄道車両。
【請求項5】
請求項1に記載された鉄道車両であって、
前記複数の妻構体補強壁は、
前記鉄道車両の長手方向と高さ方向で形成される面に平行な複数の妻構体垂直補強壁と、
前記鉄道車両の長手方向と幅方向で形成される面に平行な複数の妻構体水平補強壁とを有し、
前記複数の衝撃吸収補強壁は、
前記鉄道車両の長手方向と高さ方向で形成される面に平行な複数の衝撃吸収垂直補強壁と、
前記鉄道車両の長手方向と幅方向で形成される面に平行な複数の衝撃吸収水平補強壁と、を有する
鉄道車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鉄道車両において、
前記複数の妻構体垂直補強壁または前記複数の衝撃吸収垂直補強壁の一部は、
前記鉄道車両の長手方向に対し傾けられ、
前記境界面において、一つの妻構体垂直補強壁に対して複数の衝撃吸収垂直補強壁、あるいは、一つの衝撃吸収垂直補強壁に対して複数の妻構体垂直補強壁が設けられている
鉄道車両。
【請求項7】
請求項3に記載の鉄道車両において、
前記複数の妻構体水平補強壁または前記複数の衝撃吸収水平補強壁の一部は、
前記鉄道車両の高さ方向に対し傾けられ、
前記境界面において、一つの妻構体水平補強壁に対して複数の衝撃吸収水平補強壁、あるいは、一つの衝撃吸収水平補強壁に対して複数の妻構体水平補強壁が設けられている
鉄道車両。
【請求項8】
軌道を走行する台車と、前記台車と接続されて床面をなす台枠と、前記台枠の幅方向の両端部に立設される側構体と、前記台枠の長手方向の両端部に立設される妻構体と、前記側構体及び前記妻構体の上端部に載置される屋根構体と、を備える鉄道車両において、
前記妻構体に設置された衝撃吸収部材と、
前記妻構体における前記衝撃吸収部材が取り付けられる位置に、前記妻構体の強度を補強する妻構体補強部と、を有し、
前記妻構体補強部は、内部に前記妻構体を補強する前記鉄道車両の長手方向と高さ方向で形成される面に平行な複数の妻構体垂直補強壁と、前記鉄道車両の長手方向と幅方向で形成される面に平行な複数の妻構体水平補強壁とを有し、
前記衝撃吸収部材は、前記複数の妻構体垂直補強壁に対応するように、内部に前記衝撃吸収部材を補強する前記鉄道車両の長手方向と高さ方向で形成される面に平行な複数の衝撃吸収垂直補強壁と、前記複数の妻構体水平補強壁に対応するように、内部に前記衝撃吸収部材を補強する前記鉄道車両の長手方向と幅方向で形成される面に平行な複数の衝撃吸収体水平補強壁とを有し、
前記妻構体と前記衝撃吸収部材との境界面において、
前記複数の妻構体垂直補強壁と前記複数の妻構体垂直補強壁とは、それぞれ前記鉄道車両の幅方向において一致する位置に設けられ、
前記複数の妻構体水平補強壁と前記複数の衝撃吸収体水平補強壁とは、それぞれ前記鉄道車両の高さ方向において一致する位置に設けられる
鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、床面をなす台枠と、台枠の幅方向の両端部に立設される側構体と、台枠の長手方向の両端部に立設される妻構体と、側構体及び妻構体の上端部に載置される屋根構体と、から構成される箱状態(六面体)である。鉄道車両が物体と衝突した場合の衝突安全性を向上させるため、鉄道車両の端部の妻構体に近接する部位は衝撃吸収部材を備えることがある。妻構体に接続する台枠に衝撃吸収部材を備える例が、特許文献1に開示されている。また、鉄道車両の中には、先頭車両の妻構体に先頭ステップが設けられている車両もあるが、先頭ステップは作業用ステップであって、作業者の体重を支える強度を有するだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に、鉄道車両が受ける衝突荷重を妻構体から台枠に接続される衝撃吸収部材に効率高く伝達する構造が記載されている。妻構体の近くに位置する運転士の安全性を向上させるためには、衝突による妻構体の変形を抑えることが好ましい。
【0005】
また、一般的な先頭ステップは、作業者の体重を支えるだけの強度であって、中が空洞の外枠だけで構成されているため、車両衝突の衝撃を吸収する機能は有さない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、妻構体の車外側に衝撃吸収部材を設け、妻構体車外側の衝撃吸収部材から鉄道車両の台枠に効率高く衝突による荷重を伝達し、妻構体の変形を抑えることができる鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鉄道車両において、妻構体に設置された衝撃吸収部材と、衝撃吸収部材が取り付けられる位置に、前記妻構体の強度を補強する妻構体補強部と、を有し、妻構体補強部は、内部に妻構体を補強する複数の妻構体補強壁を有し、衝撃吸収部材は、複数の妻構体補強壁に対応する位置に、内部に前記衝撃吸収部材を補強する複数の衝撃吸収補強壁を有する。
【0008】
そして、妻構体と衝撃吸収部材との境界面において、複数の妻構体補強壁を境界面に投影した第一の投影面と、複数の衝撃吸収補強壁を境界面に投影した第二の投影面と、が重畳する、鉄道車両を、提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、妻構体の車外側に備える衝撃吸収部材から効率高く台枠に衝突荷重を伝達する鉄道車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図3は、実施例1に係る鉄道車両の上面断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1に関わる鉄道車両の側面断面図である。
【
図5】
図5は、実施例2に係る鉄道車両の上面断面図である。
【
図6】
図6は、実施例3に係る鉄道車両の上面断面図である。
【
図7】
図7は、実施例4に係る鉄道車両の側面断面図及び正面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施例の説明をする。まず、各方向を定義する。鉄道車両の長手(レール)方向をX方向、鉄道車両構体の幅(枕木)方向をY方向、鉄道車両構体の高さ方向をZ方向とする。以降、単に、X方向、Y方向、Z方向と記す場合がある。尚、図面において、各要素の部位に対応して付番を付して記載するが、これらは寸法を示しているものではない。
【0012】
図1は、鉄道車両1の側面図である。鉄道車両1は、床面をなす台枠10と、台枠10のY方向(幅方向、Y軸)の両端部に立設される側構体20と、台枠10のX方向(長手方向、X軸)の両端部に立設される妻構体30と、側構体20及び妻構体30の上端部に載置される屋根構体40と、を備えて構成される6面体である。
図2は、
図1に示す鉄道車両の斜視図であり、X方向、Y方向に加え、高さ方向であるZ方向(Z軸)を示している。
【0013】
鉄道車両1は、軌道5上を走行する台車と下部で接続され、床面をなす台枠10を有する。鉄道車両1は、台車7を介して軌道5を走行する。本実施の形態では、軌道5に沿って、鉄道車両1が走行しており、軌道5の上方の障害物と妻構体30が正面で衝突する場合を考える。
【0014】
鉄道車両1の妻構体30の高さ方向の下側において、妻構体30の外側(鉄道車両1の外側)に、換言すると、従前の先頭ステップに対応する位置に、衝撃吸収部材70が設置される。衝撃吸収部材70は妻構体30の外側に備えられることから、正面衝突の場合には、妻構体30よりも先に衝撃吸収部材70が障害物と接することができる。なお、衝撃吸収部材70は妻構体30の外側の下部に位置することから、先頭ステップ同様、衝撃吸収部材70をステップとして利用し、鉄道車両1のメンテナンスのための足掛けとして利用することもできる。衝撃吸収部材70に先頭ステップの外枠形状を利用することで、製造コストを低減することができる。
【0015】
鉄道車両1の台枠10の下部には、排障器14が排障器支持部12を介して鉄道車両1に設けられる。衝突において、排障器14が障害物と接した際には、排障器14が荷重を受けて変形すると同時に排障器14を経由して衝突荷重が台枠10に伝達される。伝達された衝突荷重は台枠10及びその周辺構造物の変形により吸収される。
【0016】
鉄道車両1の側構体20は、窓部22、乗降口24及び乗務員ドア26を含む開口部を有する。正面衝突において、衝撃吸収部材70が衝突荷重を受けて変形し、妻構体30が変形しながら衝突荷重が側構体20に伝達される。側構体20は窓部22を含む開口部を有し、開口部が存在しない場合と比較して剛性が低下するため、衝突荷重を受ける場合に開口部での変形が大きくなる。
【0017】
以上より、妻構体30及び側構体20へ大きな衝突荷重が伝達された場合、妻構体30及び側構体20の変形が大きくなり、鉄道車両1の乗客や乗員の空間が大きく減少し得る。開口部を多く有する側構体20と比較して台枠10は剛性が高い場合が多く、鉄道車両1の正面衝突時の安全性を鑑みると、排障器14のように衝突吸収部材70から効率的に台枠20に衝突荷重を伝達する構造が好ましい。
【実施例1】
【0018】
実施例1を
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、実施例1に係る鉄道車両の上面断面図であり、
図1に示すA-A断面図である。
図4は、
図3に示す実施例1に関わる鉄道車両の側面断面図であり、
図2に示すX-Z切断面90での断面図である。
【0019】
図3に示す通り、妻構体30には、衝撃吸収部材70が取り付けられる位置に、妻構体30の外側に面する車外側面板36と車内側に面する車内側面板38によって構成される妻構体補強部37が形成される。妻構体補強部37には、車外側面板36と車内側面板38との間に、妻構体30の強度を補強する補強壁32(以下、妻構体補強壁32)が複数設けられる。実施例1における妻構体補強壁32は、
図3に示すようにZ方向に伸びる複数の妻構体垂直補強壁32aが設けられる。また、
図4に示す通り、妻構体補強壁32は、Y方向に伸びる複数の妻構体水平補強壁32bも設けられる。複数の妻構体垂直補強壁32aは、鉄道車両1の長手方向(X方向)と高さ方向(Z方向)で形成される面に平行に設けられる。複数の妻構体水平補強壁32bは、鉄道車両1の長手方向(X方向)と幅方向(Y方向)で形成される面に平行に設けられる。
【0020】
衝撃吸収部材70は、上板75、表板76及び底板77で外形が構成され、その端部が溶接を含む手段によって妻構体30の車外側面板36を境界面として接続される。
図4に示す通り、衝撃吸収部材70は、妻構体30と、台枠10に跨って配置されてもよい。
【0021】
衝撃吸収部材70は、衝撃吸収部材70の強度を補強するため、その内部に複数の補強壁72(以下、衝撃吸収補強壁72と称する)を有する。衝撃吸収補強壁72は、
図3及び
図4に示す通り、複数の衝撃吸収垂直補強壁72a及び複数の衝撃吸収水平補強壁72bが設けられる。複数の衝撃吸収垂直補強壁72aは、鉄道車両1の長手方向(X方向)と高さ方向(Z方向)で形成される面に平行に設けられる。衝撃吸収水平補強壁72bは、鉄道車両1の長手方向(X方向)と幅方向(Y方向)で形成される面に平行に設けられる。
【0022】
尚、複数の衝撃吸収垂直補強壁72aのそれぞれは、
図3に示す通り、複数の妻構体垂直補強壁32aのそれぞれに対応するように、Y軸上の同じ位置に設けられる。また、複数の衝撃吸収水平補強壁72bは、
図4に示す通り、複数の妻構体水平補強壁32bのそれぞれに対応するように、Z軸上の同じ位置に設けられる。
【0023】
また、妻構体補強壁32は、妻構体垂直補強壁32a及び妻構体水平補強壁32bのいずれか一方であっても良い。衝撃吸収補強壁72は、衝撃吸収垂直補強壁72aおよび妻構体水平補強壁32bのいずれか一方であっても良い。
【0024】
このように、複数の妻構体補強壁32を境界面に投影した投影面と、複数の衝撃吸収補強壁72を境界面に投影した投影面とが重畳することなる。
【0025】
換言すると、妻構体30の補強壁32のうち境界面に最近の板厚を、鉄道車両1の長手方向(X方向)に境界面に投影した補強壁32の投影面と、衝撃吸収部材70の補強壁72のうち境界面に最近の板厚を、鉄道車両1の長手方向に境界面に投影した投影面とが重畳することなる。
【0026】
衝撃吸収部材70が衝撃吸収補強壁72を有することにより、衝撃吸収補強壁72が無い通常の先頭ステップと比較して、衝撃吸収部材70が衝突を受ける際に衝撃吸収部材70が座屈することを抑制し、衝撃吸収部材70が吸収する衝撃荷重を増加させることができる。
【0027】
図3の右側には、妻構体30と衝撃吸収部材70を離間して示しているが、2点鎖線で表す通り、妻構体垂直補強壁32aと衝撃吸収垂直補強壁72aは、衝撃吸収部材70と妻構体30境界面において、同じY方向位置(鉄道車両1の同じ幅方向位置)に存在する。同様に、
図4に示す通り、妻構体水平補強壁32bと衝撃吸収水平補強壁72bは、衝撃吸収部材70は、上板75、表板76及び底板77で外形が構成され、その端部が溶接を含む手段によって妻構体30の境界面において、同じZ方向位置(鉄道車両1の同じ高さ方向位置)に存在する。
【0028】
以上の妻構体補強壁32及び衝撃吸収補強壁72の位置関係、即ち、妻構体30と衝撃吸収部材70との境界面において、複数の妻構体補強壁32と複数の衝撃吸収補強壁72のそれぞれが重畳することにより、衝撃吸収部材70が衝撃荷重を受ける際、衝撃吸収補強壁72から妻構体補強壁32へ荷重が伝達され、効率高く衝撃荷重を台枠10に伝達することができる。
【0029】
本構成により、
図3に示す通り、衝撃吸収部材70の表板76から妻構体30の車内側面板38までの構造が衝撃荷重を受けて変形しやすい。即ち、衝撃荷重を吸収しやすい圧潰領域80として作用することができる。
【0030】
また、本構成により、妻構体30を介して台枠10側へより多くの衝撃荷重を伝達することができ、妻構体30の変形が大きくなることを避け、台枠10が車両の長手方向に変形して衝撃荷重を吸収することを促進できる。
【0031】
さらに、衝撃吸収部材70の板厚を妻構体30若しくは台枠10より薄くする、又は、衝撃吸収部材70の材質を妻構体30若しくは台枠10の材質より柔らかいものとすること等により、衝撃吸収部材70の剛性を妻構体30又は台枠10の剛性より低くすることができる。例えば、衝撃荷重が小さい場合を鑑みると、本構成により妻構体30又は台枠10がほとんど変形することなく衝撃荷重を衝撃吸収部材70で吸収し得る。このとき、衝突に対する修理には、衝撃吸収部材70を交換するのみでよくなり、修理が容易になる効果も得られる。
【0032】
なお、本実施例1では、衝撃吸収部材70が上板75、表板76及び底板77によって外形が構成される例を示したが、妻構体30の車外側面板36に接する位置において衝撃吸収部材70は裏板を有してもよい。
【0033】
以上の通り、実施例1によれば、妻構体の車外側に衝撃吸収部材を設け、妻構体車外側の衝撃吸収部材から鉄道車両の台枠に効率高く衝突による荷重を伝達し、妻構体の変形を抑えることができる鉄道車両を提供することができる。
【0034】
また、衝撃吸収部材が台枠に効率的に衝突による荷重を伝達し、妻構体の変形を抑えることができるため、妻構体の近くに位置する運転士の安全性を向上させることができる。
【0035】
また、衝撃吸収部材に先頭ステップの外枠形状を利用することで、製造コストを低減することができる。
【実施例2】
【0036】
図5は、実施例2に係る鉄道車両の上面断面図である。実施例2の鉄道車両1は、実施例1の鉄道車両1の妻構体30、台枠10、妻構体補強部37、衝撃吸収部材70等と基本的に同じ構成である。但し、実施例1では妻構体30の複数の妻構体垂直補強壁32aがX方向に沿う(X軸に平行となる)形状を示していたが、本実施例2では
図5に示す通り妻構体垂直補強壁32aの一部がX方向及びY方向に対し角度を有する。この角度は、例えば、X軸に対して、30度傾けたトラス構造としてもよい。
【0037】
妻構体垂直補強壁32aが車外側面板36に接する位置と、衝撃吸収垂直補強壁72aが車外側面板36に接する位置とが一致する。即ち、妻構体30と衝撃吸収部材70との境界面において、妻構体補強壁32のそれぞれに対応する衝撃吸収補強壁72とが重畳する。また、境界面において一つ衝撃吸収垂直補強壁72aに対し、X方向及びY方向に対し角度を有する一部の妻構体垂直補強壁32aとが重畳する。実施例2においても、複数の妻構体補強壁32を境界面に投影した投影面と、複数の衝撃吸収補強壁72を境界面に投影した投影面と、が重畳することなる。
【0038】
この構成によれば、衝撃吸収部材70から妻構体30への衝撃荷重を効率高く伝達することができ、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、実施例2では、妻構体垂直補強壁32aの一部がX方向及びY方向に対し斜めを向いて構成される実施例を示したが、衝撃吸収垂直補強壁72aの一部がX方向及びY方向に対して傾けても良く、傾きは、例えば30度でトラス構造としてもよい。さらに、妻構体水平補強壁32b及び衝撃吸収水平補強壁72bの一部がX方向及びZ方向に対して傾けても良く、傾きは、例えば30度でトラス構造としてもよい。
【0040】
以上より、妻構体30の妻構体補強壁32及び衝撃吸収補強壁72が車外側面板36において同じ位置で接すれば、妻構体補強壁32又は衝撃吸収補強壁72が向く方向はX~Z方向に一致しなくてもよい。即ち、妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72とで、鉄道車両1の長手方向に対する角度、鉄道車両1の高さ方向に対する角度が異なっていても良い。
【0041】
以上の通り、実施例2によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0042】
図6は、実施例3に係る鉄道車両の上面断面図である。実施例3の鉄道車両1は、実施例1及び実施例2の鉄道車両1の妻構体30、台枠10、妻構体補強部37、衝撃吸収部材70等と基本的に同じ構成である。実施例3においても、複数の妻構体補強壁32を境界面に投影した投影面と、複数の衝撃吸収補強壁72を境界面に投影した投影面と、が重畳することなる。上述した実施例1及び2では衝撃吸収補強壁72が妻構体30の車外側面板36と接する構成を示してきた。しかし、衝撃吸収部材70が衝撃荷重により変形し圧潰することを鑑みると、
図6に示す通り衝撃吸収垂直補強壁72aと車外側面板36との間に空隙100が存在した場合にも、衝撃吸収部材70の圧潰により垂直補強壁72aは車外側面板36と接することができる。
【0043】
即ち、衝撃吸収部材70が衝突により変形開始した後に空隙100の離間距離が少なくなり、衝撃吸収垂直補強壁72aが車外側面板36と接することができれば、上述した実施例と同様に衝突荷重を衝撃吸収部材70から妻構体30及び台枠10へと効率高く伝達することができる。
【0044】
なお、実施例3では、衝撃吸収垂直補強壁72aと車外側面板36との間に空隙がある例を示したが、妻構体垂直補強壁32a又は妻構体水平補強壁32b及び衝撃吸収水平補強壁72bと、車外側面板36との間に空隙を設けてもよい。即ち、複数の妻構体補強壁32と複数の衝撃吸収補強壁72は、鉄道車両1の長手方向に対し、境界面の付近で空隙を有する。
【0045】
以上のように、複数の妻構体補強壁または複数の衝撃吸収補強壁は、鉄道車両1の長手方向に対し、妻構体30と衝撃吸収部材70との境界面と空隙を有する。
【0046】
妻構体補強壁32及び衝撃吸収補強壁72が車外側面板36との間に空隙を有しても、妻構体補強壁32及び衝撃吸収補強壁72をX方向に延長して得られる妻構体補強壁32及び衝撃吸収補強壁72の車外側面板36に投影される投影面の位置が一致すればよい。即ち、妻構体30と衝撃吸収部材70との境界面において、妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72とが重畳すればよい。
【0047】
以上の通り、実施例2によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、妻構体と前記衝撃吸収部材との境界面と空隙を有するため、衝突衝撃部材を妻構体に取り付けや取り外しが容易となる。
【実施例4】
【0048】
図7は、実施例4に係る鉄道車両の側面断面図及び正面部分図である。実施例3の鉄道車両1は、実施例1及び実施例2の鉄道車両1の妻構体30、台枠10、妻構体補強部37、衝撃吸収部材70等と基本的に同じ構成である。
【0049】
上述した実施例では、車外側面板36で接する妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72とが同じ向き、即ち、垂直(Z方向)又は水平(Y方向)方向の向きに同様に延びて構成される例を示してきた。
【0050】
しかし、妻構体補強壁32から衝撃吸収補強壁72への荷重伝達を鑑みると、妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72は一部分のみが一致していれば、衝撃吸収部材70から妻構体30及び台枠10への荷重伝達を効率高く実施することができる。
【0051】
一例を
図7に示す。
図7はX-Z平面図であり、妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72が車外側面板36で接する部分領域を視座Bより正面図(Y-Z平面図)として別に示している。妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72は垂直方向(Z方向)及び水平方向(X方向)に対し斜めを向いて構成されるが、その方向は一致しておらず、視座Bで見た際に部分的に重なるのみである。実施例4においても、複数の妻構体補強壁32を境界面に投影した投影面と、複数の衝撃吸収補強壁72を境界面に投影した投影面と、が重畳することなる。
【0052】
図7に示すように妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72が車外側面板36を介して部分的に重なっていれば(投影面)、重なっている領域により衝撃吸収部材70から妻構体30へ衝撃荷重を伝達することができ、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、実施例1から実施例4においては、衝撃吸収部材70と妻構体30との間に車外側面板36を設ける構成例を示したが、衝撃吸収部材70から妻構体30への荷重伝達を鑑みると、車外側面板36を必ずしも設けなくてもよい。
【0054】
即ち、衝撃吸収部材70と妻構体30との界面となる仮想境界面において、妻構体補強壁32と衝撃吸収補強壁72が正面(Y-Z平面)で見て部分的に重なっていればよい。
【0055】
以上の通り、実施例4によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:鉄道車両
5:軌道
7:台車
10:台枠
12:排障器支持部
14:排障器
20:側構体
22:窓部
24:乗降口
26:乗務員ドア
30:妻構体(先頭)
32:妻構体補強壁
32a:妻構体垂直補強壁
32b:妻構体水平補強壁
36:車外側面板
37:妻構体補強部
38:車内側面板
40:屋根構体
70:衝撃吸収部材
72:衝撃吸収補強壁
72a:衝撃吸収垂直補強壁
72b:衝撃吸収水平補強壁75:上板
76:表板
77:底板
80:圧壊領域
90:X-Z切断面
100:空隙
X:長手(レール)方向、X軸
Y:幅(枕木)方向、Y軸
Z:高さ方向、Z軸
【要約】
【課題】妻構体の車外側に衝撃吸収部材を設け、妻構体車外側の衝撃吸収部材から鉄道車両の台枠に効率高く衝突による荷重を伝達し、妻構体の変形を抑えることができる鉄道車両を提供できる。
【解決手段】鉄道車両であって、妻構体及び前記妻構体の車外側下部に衝撃吸収部材を備え、衝撃吸収部材は内部に補強壁を有し、前記妻構体と前記衝撃吸収部材との界面における境界面において、複数の妻構体補強壁を境界面に投影した第一の投影面と、複数の衝撃吸収補強壁を境界面に投影した第二の投影面と、が重畳するよう構成された鉄道車両を提供する。
【選択図】
図3