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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】被覆切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/16 20060101AFI20231215BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20231215BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B23C5/16
B23C5/10 Z
B23B27/14 C
B23B27/14 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022177480
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2023-02-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152527
【氏名又は名称】日進工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】郡川 聖弥
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佑介
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510541(JP,A)
【文献】特開平06-170633(JP,A)
【文献】特開平11-216609(JP,A)
【文献】特開2007-030074(JP,A)
【文献】特開2004-283951(JP,A)
【文献】特開2011-212836(JP,A)
【文献】特開2020-196119(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198445(WO,A1)
【文献】特開2013-018110(JP,A)
【文献】特開2021-010957(JP,A)
【文献】特開2021-104573(JP,A)
【文献】特開2017-159380(JP,A)
【文献】特開2016-190300(JP,A)
【文献】特開2015-166113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10
B23C 5/16
B23B51/00
C23C14/00-14/58
C23C16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線回りに回転可能な工具本体の先端側に切刃部が形成され、前記切刃部は、底刃、該底刃の外周側側面に形成された外周刃、および、前記底刃と前記外周刃とを凸R状に繋ぐR刃を有する刃部を1つ以上備え、
前記底刃はその一部が前記中心軸線に対して直交し、該底刃から前記R刃に繋がる部分のギャッシュ面が工具回転方向後方にシームレスに捻れた曲面をなすスパイラルギャッシュ形状であり、前記刃部が硬質膜で覆われており、前記刃部のうち被切削物を切削する部分が、前記硬質膜の成膜後にホーニングされていることを特徴とする、
被覆切削工具。
【請求項2】
前記切刃部は、先端面からみて前記中心軸線側から外周側に向けて等間隔で配置された複数の刃部を備え、
前記複数の刃部の各々は、前記底刃のうち前記R刃と繋がる所定長の部分が前記中心軸線に対して直交していることを特徴とする、
請求項1に記載の被覆切削工具。
【請求項3】
前記R刃は、1/4円弧を超える長さを有し、該1/4円弧を超えた位置で前記外周刃と一体に繋がることを特徴とする、
請求項2に記載の被覆切削工具。
【請求項4】
前記複数の刃部は、その内終端が前記中心軸線又は当該中心軸線付近まで延びる一対の長刃と、その内終端が前記中心軸線の途中で止まる一対の短刃とで構成され、
前記長刃と前記短刃とは、工具回転方向に交互に配置されており、
前記長刃のギャッシュの一部は、工具回転方向前方の前記短刃の内終端と前記中心軸線との間に窪み空間を形成し、
前記短刃のギャッシュは、工具回転方向前方の前記長刃の逃げ面の内終端途中で止まることを特徴とする、
請求項2に記載の被覆切削工具。
【請求項5】
前記一対の長刃のギャッシュは、前記中心軸線付近で交差することを特徴とする、
請求項4に記載の被覆切削工具。
【請求項6】
前記長刃のギャッシュは、ギャッシュ底が隣り合う前記短刃の内終端よりも中心軸線を超える長さの部位で開口することで、前記窪み空間を形成する、
請求項4に記載の被覆切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高硬度鋼等を切削加工するための被覆切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物の高硬度化に対応し、近年、切削工具の工具先端部に硬質膜を形成してもともと硬質の工具先端部の硬度をさらに高め、切削時の損傷を抑制する被覆切削工具の開発・改良が進んでいる。例えば、特許文献1-3には、工具先端部の耐久性や耐酸化性を高めた被覆切削工具が開示されている。また、成膜前にホーニングを行う表面被覆切削工具が特許文献4,5に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された被覆切削工具では、被切削物を指向する工具先端部に中間皮膜を形成した後、この中間皮膜の上に、より硬質の表面皮膜を形成している。膜種は、金属元素を含む複数種類の元素の複合微粒子である。中間皮膜は炭化物を含有し、硬質の表面膜種は窒化物又は炭窒化物を含有するとされる。特許文献2及び特許文献3に開示されているのは、膜が含有する元素の種類が特許文献1と異なる被覆切削工具である。
特許文献4に開示されている表面被覆切削工具は、Rホーニングされた基材に成膜された硬質膜の表面に分散されたボイドの面積比率を最適化する。特許文献5に開示されている表面被覆切削工具は、硬質膜の表面を機械加工することなく、硬質被覆層の表面の切刃位置とすくい面位置に存在するマクロ粒子の面積比率を最適化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6555796号公報
【文献】特許第5673904号公報
【文献】特許第5764181号公報
【文献】特許第4895586号公報
【文献】特許第4936703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被覆切削工具のうち径が比較的小さい超硬小径エンドミルの場合、工具先端部への硬質膜の被覆は、気相中で工具先端部の表面に物理的手法により膜の層を堆積させる物理蒸着(Physical Vapor Deposition:PVD)法などで行われることが多い。そのため、硬質膜が被覆された工具先端部は、たとえ特許文献1-3の技術によっても、その表面で膜の粒子の一部(ドロップレット)が無秩序に突起したり窪んだりして工具の輪郭精度が部位によって必ずしも均一にならず、被切削物の加工精度が設計値通りにならないことがある。また、工具先端部の構造によっては、特許文献4,5の技術によっても硬質膜が剥がれて、工具先端部の一部が損傷しやすくなることがある。
【0006】
本発明の目的の一つは、工具輪郭精度を高めるとともに硬質膜が剥がれにくく且つ工具先端部の損傷が生じにくい構造を有する被覆切削工具を提供することにある。本発明の他の目的は、本開示により自ずと明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、中心軸線回りに回転可能な工具本体の先端側に切刃部が形成され、前記切刃部は、底刃、該底刃の外周側側面に形成された外周刃、および、前記底刃と前記外周刃とを凸R状に繋ぐR刃を有する刃部を1つ以上備え、前記底刃はその一部が前記中心軸線に対して直交し、該底刃から前記R刃に繋がる部分のギャッシュ面が工具回転方向後方にシームレスに捻れた曲面をなすスパイラルギャッシュ形状であり、前記刃部が硬質膜で覆われており、前記刃部のうち被切削物を切削する部分が、前記硬質膜の成膜後にホーニングされていることを特徴とする、被覆切削工具である。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、硬質膜の成膜後のホーニングにより、工具輪郭精度が高まり、成膜後に硬質膜が剥がれにくく且つ工具先端部の損傷が生じにくい構造を有する被覆切削工具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るエンドミルの構造例を示す外観斜視図である。
図2】(a)は、エンドミルの右側面図、(b)は底面図である。
図3】切刃部の右側面の部分拡大図である。
図4】切刃部を構成する刃部の部分拡大図である。
図5】切刃部の正面図である。
図6】(a)、(b)は、切刃部の寸法を示す説明図である。
図7】切刃部の外観斜視拡大図である。
図8】長刃のギャッシュ底付近の部分拡大図である。
図9】短刃のギャッシュ底付近の部分拡大図である。
図10】ホーニング例を示す説明図(写真)である。
図11】ホーニング例を示す説明図(写真)である。
図12】本実施形態に係るエンドミルの使用態様例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を硬質被覆切削工具の一例となるエンドミルに適用した場合の実施の形態例を説明する。本実施形態のエンドミルは、例えば、合金工具鋼(SKD11)や粉末高速度工具鋼(SKH55等)を被切削物として、精密な金型や部品加工等をする際に用いられる。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエンドミルの構造例を示す外観斜視図である。図2(a)は、このエンドミルの右側面図、同(b)は底面図である。図3は、切刃部の右側面の部分拡大図である。図4は、切刃部を構成する刃部の部分拡大図である。図5は、切刃部の正面図である。図6(a),(b)は、切刃部の寸法を示す説明図である。図7は、切刃部の外観斜視拡大図である。図8は、長刃部のギャッシュ底付近の部分拡大図である。図9は、短刃部のギャッシュ底付近の部分拡大図である。図10図11は、ホーニング前後の切刃部の表面状態を示す図(写真)である。図12は、エンドミルの使用態様例を示す図である。以下、これらの図を適宜参照しながら本実施形態のエンドミルの構成例を説明する。
【0012】
[エンドミルの構成例]
本実施形態のエンドミル1は、図1及び図2に破線で例示した略円柱状の工具本体10と、図1及び図2に実線で例示した工具本体10の先端側、すなわち工具本体10の外周において外径が小さくなる所定部位11よりも被切削部を指向する工具先端部に設けられた切刃部20とを有する。工具本体10及び切刃部20は、この種の被覆切削工具において採用される超硬合金で製造することができる。
【0013】
工具本体10のうち所定部位11よりも工具基端側(工具本体10の先端側と反対方向の側)は、図示しない工作機械に取り付けられるシャンク部となる。シャンク部の端部12の外径は、工作機械側の取付機構のサイズに合わせて工具本体10の外径よりも小さく成形されている。切刃部20の外径Dは、本実施形態ではφ6であることを前提として説明するが、外径Dのサイズは任意であってよい。シャンク部の外径は、切刃部20の外径Dと同じ、あるいは、切刃部20の外径Dより大きくてもよい。
【0014】
切刃部20の形状、構造は、外径Dに関わらず同じである。また、工具本体10及び切刃部20のそれぞれの中心軸線は共通である。本明細書では、該共通の中心軸線を中心軸線O1という。また、工具本体10において、軸線O1に直交する方向を径方向、径方向のうち軸線O1に接近する向きを径方向内側又は中心側、軸線O1から離間する向きを径方向外側又は外周側という。また、軸線O1回りに周回する周方向のうち切削加工時に工具本体10が回転させられる方向を工具回転方向(矢印で図示)という。また、工具回転方向で被切削物の切削を開始する方向を前方又は工具回転前方、その反対方向を後方又は工具回転後方という。また、切刃部20のうち被切削物と対向する面を先端面、先端面から工具基端側の方向を工具基端方向又は工具基端側ということがある。
【0015】
[切刃部の構成概要]
切刃部20は、それぞれ硬質膜を成膜した後にホーニングされた4つの刃部21A、21B、21C、21Dを有する(図1図5図6)。4つの刃部21A、21B、21C、21Dは、それぞれ中心軸線O1回りに、周方向に等間隔で、径方向内側から径方向外側に向けて回転対称に設けられている。
刃部21A、21Cは、径方向内側の端部である内終端がそれぞれほぼ中心軸線O1まで延び、後述する逃げ面の勾配が交差する。刃部21B、21Dは、それぞれの内終端が中心軸線O1に至らず、途中で途切れる。刃部21B、21Dにおける後述する逃げ面の勾配は、刃部21A、21Cと同じである。本明細書では、便宜上、刃部21A、21Cを「長刃」と表記し、刃部21B、21Dを「短刃」と表記することがある。長刃と短刃とは、中心軸線O1回りに交互に配置される。そのため、短刃で切削しきれなかった内終端付近の部分が回転方向後方の長刃で直ちに切削されることになる。
【0016】
本実施形態の切刃部20は、図5及び図6に例示される通り、刃部21A(長刃)と刃部21B(短刃)との間に、切り屑排出機構の一部をなすギャッシュ24Aが存在する。長刃のギャッシュ24Aは、中心軸線O1を超える。刃部21B(短刃)と刃部21C(長刃)との間にギャッシュ24Aとは異なる構造の短刃のギャッシュ24Bが存在する。短刃のギャッシュ24Bは中心軸線O1を超えない。
刃部21C(長刃)と刃部21D(短刃)との間にギャッシュ24Aと同じ構造のギャッシュ24Cが存在する。刃部21D(短刃)と刃部21A(長刃)との間にギャッシュ24Bと同じ構造のギャッシュ24Dが存在する。
【0017】
図6(a)は図5の先端部分だけを抜き出した線図であり、図6(a)に破線で示す切刃部20の中心軸線O1付近の部分100の拡大図が同(b)である。
短刃ギャッシュ幅(ギャッシュ24B-ギャッシュ24Dの開口間隔)t111は約0.25mm、長刃ギャッシュ交差(ギャッシュ24A-ギャッシュ24Cの開口部分が図左側からみて重なる長さ)t112は約0.44mmである。ただし、t111,t112は例示であって、後述するギャッシュ底のサイズにより適宜変更可能である。
【0018】
[刃部の構造例]
図6(b)に示された部分100以外の形状、構造は、長刃および短刃に関わらず、ほぼ同じになる。例えば、図1及び図2に表示されている刃部(短刃)21Bの形状、構造は、以下のようになる。
[短刃の概要]
刃部21Bは、工具先端部の外表面及び先端面と工具回転方向の切削空間を臨むギャッシュ面23Bとの交差稜線を切刃(エッジ)とする第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3及び外周刃21B4を有する。第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3及び外周刃21B4のすくい角は、本実施形態では負角(ネガティブ形状)とするが、負角に限定されるものではない。第1底刃部22B1と第2底刃部22B2は、刃部21Bの「底刃」を構成する。
【0019】
刃部21Bは、第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3及び外周刃21B4の各々から工具回転方向後方に所定幅(周方向の長さ)をもつ逃げ面22Bを有する。第1底刃部21B1、第2底刃部21B2のそれぞれの逃げ面を底刃逃げ面22B1、22B2という。また、R刃21B3の逃げ面をR刃逃げ面22B3という。また、外周刃21B4の逃げ面を外周刃逃げ面22B4という。逃げ面22B(22B1,22B2,22B3,22B4)は、第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3及び外周刃21B4よりも工具回転方向後方が相対的に低くなるように傾斜している。
【0020】
底刃逃げ面22B1の幅t21(図6(a))は、ほぼ均等である。外周刃逃げ面22B4の幅は、底刃逃げ面22B1の幅t21よりも大きい。R刃逃げ面22B3の幅は、底刃逃げ面22B1との接続部分から徐々に大きくなり、外周刃逃げ面22B4の幅まで徐々に拡がる。底刃逃げ面22B1、R刃逃げ面22B3及び外周刃逃げ面22B4は、互いに滑らかに連なる。そのため、シームレス加工された構造となっている。
【0021】
第1底刃部21B1は、先端面で第2底刃部21B2よりもt222の長さで径方向外側に形成されている。便宜上、刃部21Bの先端側で中心軸線O1に直交する仮想線を基準線L1と規定し(図4の部分拡大図下段)、第1底刃部22B1と基準線L1とのなす角度を第1底刃角θ1とする。第1底刃角θ1は、基準線L1とほぼ同じ角度、すなわち約0゜(工具回転方向の後方から見た中心軸線O1を包含する平面に対して約90°)であることが好ましい。「約0°」とは、必ずしも厳密に0°である必要がなく、僅かな誤差を許容することを意味する。
【0022】
第2底刃部21B2は、第1底刃部21B1に対して径方向内側に連なり、中心軸線O1に向かう。第2底刃部21B2と基準線L1とのなす角度を第2底刃角θ2とする。第2底刃角θ2は、第1底刃角θ1よりも僅かに工具基端側に向かうことが好ましい(図4の部分拡大図下段)。例えば、第2底刃角θ2は、第1底刃角θ1よりも3゜以上10゜以下の範囲で大きい(工具回転方向の後方から見た中心軸線O1を包含する平面に対して約93°~100°)ことが好ましい。
これにより、刃部21Bのうち中心軸線O1に最も近い部分は、先端面と被切削物の表面との間に隙間が生じる。そのため、切削負荷が大きくなりすぎるのを抑制することができ、硬質膜が離れにくくなっている。
【0023】
刃部21Bが、底刃に基準線L1とほぼ同じ角度の第1底刃角部21B1を有することから、第1底刃角部22B1が「さらい刃」として機能する。このさらい刃のスクレーパ効果、すなわち、カスプハイト(加工面粗さを表す指標)を小さくする効果により、切削加工時における被切削物の仕上げ面の加工精度(平滑精度)を、第1底刃角部21B1が存在しない場合よりも格段に高めることができる。
【0024】
R刃21B3は、底刃の第2底刃部21B2、第1底刃部21B1と外周刃21B4とを、継ぎ目なく円弧状又は略円弧状(凸R状)に繋ぐ(図3図4)。R刃21B3は、1/4円弧を超える長さt221を有し、少なくとも1/4円弧の始端と終端との間の曲率変化率が0.005未満である。R刃21B3から外周刃21B4の加工切り替わりを1/4円弧を越えた位置で外周刃21B4と接続することにより、1/4円弧の始端と終端は、すべてR刃21B3のR輪郭となり、工具輪郭精度、特にR輪郭精度を高精度に維持することができる。
【0025】
R刃21B3は工具先端側から工具基端側に向けて徐々に捻れながら形成されている(図1図4)。そのため、切削加工時における切削抵抗が低減され、被切削物の加工寸法精度を、ほぼ設計値通りに維持することができる。
【0026】
R刃21B3のねじれ角は、加工能率の低下防止及び工具寿命の低下防止の観点から、0°~40°の範囲の角度が好ましい。基準線L1から切刃端218Bまでの中心軸線O1と平行の線上の長さが切刃長t51(図3)となる。切刃長t51は、外径Dの80%~90%、特に顕著な効果が得られる約82~84%が好ましい。
【0027】
[コーティング]
第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3及び外周刃21B4は、すべての部分を硬質膜で成膜(コーティング)した後、ホーニングされている。
【0028】
ホーニング前に成膜された硬質膜は、単層構造よりも複数種類の膜材が積層された積層膜構造のものが好ましい。本実施形態では、一例として、第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3及び外周刃21B4において、それぞれの刃部基材の表面に第一層を積層し、この第一層の表面に第二層を積層し、さらに第二層の表面に第三層を積層した硬質膜である。第一層、第二層及び第三層は、それぞれの下層においては隣接した上層の結晶の成長を抑制する膜質を含んで構成される。ただし、必ずしも上記のような積層構造の硬質膜に限定されるものではない。
【0029】
[ホーニング]
ホーニングは、成膜後の刃部21Bの表面、特に、第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3及び外周刃21B4及びその周辺を平滑化するとともに被切削物との接触面積(例えば刃先の曲率R)を大きくする表面処理法の一種である。例えば、図4上段拡大図に示されるように、あえて切削性を犠牲にした形状の刃先28に加工する手法がホーニングである。
【0030】
ホーニングには様々な実施法があるが、本実施形態では、刃部21Bの工具基材よりも硬い微粉の研磨材を切刃部20全体にあてるブラスト加工により、ホーニングを実施した。ホーニングは、研磨加工等でも実施が可能であるが、微粉をあてることにより、底刃全域、R刃21B3及び外周刃21B4の全域にわたってほぼ均一にホーニングすることができ、作業時間を短縮することができるため効果的である。また、ホーニングに際して、硬質膜表面のドロップレットが除去される。ブラスト加工時間を調整することにより、ホーニングの大きさを適宜変えることができる。
【0031】
ホーニングは、刃部21Bの剛性を高める一方で、切削負荷が高くなり、予期しないトラブルが発生することが一般に知られている。そのため、微細加工を主たる目的とするエンドミルにおいて、硬質膜を成膜した後にホーニングをする例は少なかった。本実施形態では、成膜後に少なくとも底刃、R刃21B3及び外周刃21B4にホーニングすることにより、切削負荷を抑制したまま、刃部21Bの損傷を抑制することができた。本実施形態では、特に、切刃部21Bを覆った硬質膜のうち被切削物を切削する部分が成膜前の切刃部21Bの曲率以上の曲率(「刃先R」という)になるまでホーニングした。一例を挙げれば、図10及び図11に示す通りである。
【0032】
図10の上段は、硬質膜の成膜後、ホーニング前における第1底刃部21B1、第1底刃逃げ面22B1、底刃すくい面23Bの部分拡大写真(走査電子顕微鏡撮影:400倍)である。前述の通り、第1底刃部21B1は、ギャッシュ面23Bと第1底刃部21B1の交差稜線なので、被切削物と接触する部分の刃先Rはきわめて小さい。図10上段の例では、第1底刃部21B1の刃先Rは0.002mmである。また、成膜によって、表面にドロップレット(粒状突起)が散在していることが見てとれる。
【0033】
図10の下段は当該部分のホーニング後の部分拡大写真(同条件による走査電子顕微鏡撮影)である。ホーニングによって、第1底刃部21B1の刃先Rは0.011mmまで大きくなり、且つ、平滑化によりドロップレットが除去されている。ドロップレットが除去された結果、R刃21Bの外表面のR精度も真円弧に近いものとなり、工具の輪郭精度を格段に高めることができた。
【0034】
図11の上段は、硬質膜の成膜後、ホーニング前におけるR刃逃げ面22B3の部分拡大写真(走査電子顕微鏡撮影:1000倍)であり、図11の下段は、当該部分のホーニング後の部分拡大写真(同条件による走査電子顕微鏡撮影)である。図11より、硬質膜表面のドロップレットが除去され、凹凸が大幅に減少して平滑度が高まっている。そのため、表面の凹凸を契機に硬質膜が剥がれることを防止することができる。また、工具初期摩耗を抑制することができ、切削加工の初期から安定した加工精度を維持することができる。なお、特許文献4,5に開示されているように硬質膜の成膜前にホーニングすると、成膜後にホーニングした場合よりも短い時間で硬質膜が剥がれることを確認している。これは、ホーニングによって基材表面が図11に示すように平滑化されるため、その後に硬質膜を被覆しても剥がれやすくなるためと考えられる。
【0035】
[短刃のギャッシュ]
刃部21Bの工具回転方向前方部分に形成されたギャッシュ面23Bは、第1底刃部21B1、第2底刃部21B2、R刃21B3に沿ったスパイラルギャッシュ(捻れギャッシュ)形状の面である。このスパイラルギャッシュ形状の面は、中心軸線O1方向に対して所定角度で樋状に窪むギャッシュ底242Bの一底辺241Bまで延びる。
【0036】
該底辺241Bは、壁と底とが凹R状に角度を変える。ギャッシュ底242Bは、工具回転方向前方の刃部(長刃)21Cの逃げ面22Cの内終端途中で開口し、該開口部分を始端244Bとして、後端245Bまで均一勾配で傾斜する平面であり(図9)、その終端245Bは、工具基端側のフルート溝26Bと連なる。基準線L1に対するギャッシュ底242Bの傾斜角(工具回転方向の後方から見た中心軸線O1を包含する平面に対する角度)は、刃部21Bの傾斜角よりも大きくなっている。そのため、切削加工時に生じる気流や切り屑がギャッシュ底242Bに集中的に導かれ、切削加工時に生じる先端面付近の切り屑詰まりを抑制することができる。
【0037】
ギャッシュ底242Bの一底辺241Bと対向する他底辺からは、ギャッシュ壁243Bが外周方向に形成され、底刃3番面(底刃逃げ面よりも傾斜角を大きくした逃がし面又はさらい面、以下同じ)25Bに連なっている。上記基準線L1に対する底刃3番面25Bの工具基端側方向の角度は、ギャッシュ底242Bよりも小さい。そのため、上記気流が、上記角度でない場合に比べてギャッシュ底242Bに、より容易に導かれることとなる。底刃3番面25Bは、回転方向前方(長刃)21Cの逃げ面22Cに連なっている。
【0038】
[フルート溝]
フルート溝26Bは、ギャッシュ底242Bの終端245Bと回転方向前方の刃部(長刃)21Cのギャッシュ面とに連なる切り屑排出機構の一部である。フルート溝26Bは、工具本体10の基端側へ向かうに従って、工具回転方向とは反対の方向に捻れ、深さはt61まで一定で、それ以降は徐々に深さを浅くしながら切り上がり、やがてその終端が工具本体10の外周と同化する。
【0039】
フルート溝26Bには、ギャッシュ面23Bと、ギャッシュ底242Bの終端245Bから連なる部分と、ギャッシュ面23Bとは基準線L1に対する傾斜角度が異なる底刃3番面25Bから連なる部分があり、それぞれが合流する接点がある。
この接点と基準線L1との長さが最適フルート長t61(図3)となる。最適フルート長t61は、切刃部20の剛性を実用レベルに確保する観点からは、外径Dの60%~80%、特に約70%が好ましい。
【0040】
刃部21Bの底刃(第1底刃部21B1、第2底刃部21B2)と、工具回転方向前方の刃部21Cの底刃あるいは工具回転方向後方の刃部21Aの底刃とのなす角度A21(図3)は、43°~47°が好ましい。この範囲の角度であれば、被切削物の切削加工時の摩擦抵抗が小さく、切り屑詰まりが生じにくく、工具先端部の損傷が生じにくい構造となることが確認されている。
【0041】
「他の短刃」
刃部21Bに対して中心軸線O1を中心に180°回転させたもう一つの刃部21Dについても、同様の形状、構造、作用となる。刃部21Dと刃部21Bとの対応関係は、以下の通りとなる。
第1底刃部21D1・・・第1底刃部21B1、第2底刃部21D2・・・第2底刃部21B2、R刃21D3・・・R刃21B3、外周刃21B4・・・外周刃21B4、逃げ面22D・・・逃げ面22B、底刃逃げ面22D1・・・底刃逃げ面22B1、R刃逃げ面22D3・・・R刃逃げ面22B3、外周刃逃げ面22D4・・・外周刃逃げ面22B4、切刃端218D・・・切刃端218B、ギャッシュ面23D・・・ギャッシュ面23B、ギャッシュ底242D・・・ギャッシュ底242B、ギャッシュ底の一底辺241B・・・同底辺241D、ギャッシュ底の始端244D・・・同始端244B、ギャッシュ底の終端245D・・・同終端245B、底刃3番面25D・・・底刃3番面25B、フルート溝26D・・・フルート溝26B。
【0042】
「長刃概要」
次に、図5等に表示されている刃部(長刃)21Aについて説明する。刃部(長刃)21Aは、切刃部20の先端面中央付近の構造が刃部(短刃)21Bと異なるだけで、その他の部分の形状等は、刃部(短刃)21Bと同じである。そこで、以下は、刃部(短刃)21Bと異なる部分を中心に説明する。なお、刃部(短刃)21Bの対応構成については、符号添え字(B→A)だけを代え、当該構成についての重複説明については省略する。
【0043】
刃部21Aは、工具先端部の外表面及び先端面と工具回転方向の切削空間を臨むギャッシュ面23Aとの交差稜線を切刃とする第1底刃部21A1、第2底刃部21A2、R刃21A3及び外周刃21A4を有する。第1底刃部22A1と第2底刃部22A2は、刃部21Aの「底刃」を構成する。R刃21A3及び外周刃21A4の形状、構造、外周刃21A4のねじれ角、切刃長は、刃部21Bと同じである。
【0044】
刃部21Aは、また、第1底刃部21A1、第2底刃部21A2、R刃21A3及び外周刃21A4の各々から工具回転方向後方に所定幅(周方向の長さ)t21をもつ逃げ面22Aを有する(図6(a))。この幅t21は刃部21Bの逃げ面22Bの幅t22と同じであってもよいが、異なる幅であってもよい。第1底刃部21A1及び第2底刃部21A2の逃げ面が底刃逃げ面22A1、R刃21A3の逃げ面がR刃逃げ面22A3、外周刃21A4の逃げ面が外周刃逃げ面22A4である。逃げ面22Aは、工具回転方向後方に向かうにつれて基端側に低くなるように傾斜している。傾斜角度、各逃げ面の幅、第1底刃角θ1、第2底刃角θ2は、刃部21Bのものと同じであり、底刃逃げ面22A1の内終端が中心軸線O1付近まで至る点が異なる。
【0045】
[長刃のギャッシュ]
ギャッシュ底242Aは、底面の始端244Aが工具回転方向前方の刃部(短刃)21Bの内終端よりも中心軸線O1を超える長さの部位で開口することで、第2底刃部21A2の内周端と中心軸線O1との間に窪み空間21AXを形成している点が異なる(図3図8)。この窪み空間は、先端面に流れ込むクーラント、あるいは切り屑排出時の入口となっている。ギャッシュ底242Aの終端245Aは、工具基端側のフルート溝26Aに連なっている。フルート溝26Aは、刃部(短刃)21Bのフルート溝26Bと同じである。
【0046】
ギャッシュ底242Aの始端244Aから終端245Aに至るまで均一勾配で傾斜する平面の長さは、刃部21Bのギャッシュ底242Bのものより長い。ただし、長さは異なるが、角度は同じである。
【0047】
刃部21Aのギャッシュ面23Aは、刃部21Bのギャッシュ面23Bと同じ形状のスパイラルギャッシュである。ただし、ギャッシュ底242Aが上記のようにギャッシュ底242Bよりも長いことから、ギャッシュ壁となる部分の形状がギャッシュ面23Bと異なるものとなる。ギャッシュ面23Aと対向するギャッシュ壁243Aについても同様である。
【0048】
[他の長刃]
刃部21Aに対して中心軸線O1を中心に180°回転させたもう一つの刃部21Cについても、同様の形状、構造、作用となる。刃部21Cと刃部21Aとの対応関係は、以下の通りとなる。
第1底刃部21C1・・・第1底刃部21A1、第2底刃部21C2・・・第2底刃部21A2、R刃21C3・・・R刃21A3、外周刃21C4・・・外周刃21A4、逃げ面22C・・・逃げ面22A、底刃逃げ面22C1・・・底刃逃げ面22A1、R刃逃げ面22C3・・・R刃逃げ面22A3、外周刃逃げ面22C4・・・外周刃逃げ面22A4、切刃端218C・・・切刃端218A、ギャッシュ面23C・・・ギャッシュ面23A、ギャッシュ底242C・・・ギャッシュ底242A、ギャッシュ底の一底辺241C・・・同底辺241A、ギャッシュ底の始端244C・・・同始端244A、ギャッシュ底の終端245C・・・同終端245A、底刃3番面25C・・・底刃3番面25A、フルート溝26C・・・フルート溝26A。
【0049】
[使用態様]
次に、エンドミル1の使用態様例を図12を参照して説明する。エンドミル1は、シャンク部の外径毎に異なる内径のコレットを使用して工作機械MCの主軸のミーリングチャックにセットされる。その後、切刃部20の先端面を被切削物500に対向させ、切り込みを開始する。被切削物500は、例えば四角柱状の合金工具鋼(SKD11)や粉末高速度工具鋼(SKH55等)である。工作機械MCを操作することで、フライス加工、穴あけ加工、中ぐり加工などを1本のエンドミル1で使い分けて行うことで、被切削物500を図示のような複雑な形状に加工することができる。
【0050】
[変形例]
本実施形態では、被覆切削工具としてエンドミル1を例に挙げて説明したが、硬質膜で被覆された切削工具であれば、エンドミルに限らず、切刃部を有する他の穴あけ工具にも同様に適用が可能である。本実施形態では、また、ラジアスエンドミルを例示して説明したが、スクエアエンドミルにも同様に適用が可能である。また、本実施形態では、4枚刃のエンドミルを例に挙げたが、刃部の数は任意であってよい。
【0051】
本実施形態による開示は、以下の各態様の発明を含んでいる。
[態様1]
態様1の発明は、工具本体の先端側に形成された切刃部が硬質膜で覆われており、前記切刃部を覆った前記硬質膜のうち、被切削物を切削する部分が、成膜後にホーニングされていることを特徴とする被覆切削工具である。
態様1の発明によれば、硬質膜の成膜前ではなく、成膜後にホーニングすることで、工具初期摩耗、硬質膜の剥がれ及び工具先端部の損傷を抑制することができ、加工初期から安定した加工精度、加工面を維持することができる。また、 ホーニングを行うことで工具表面のドロップレットを除去し、工具の輪郭精度を高めることができる。
なお、ホーニングによっても、切刃部が露出しないことが望ましいが、工具先端部の輪郭精度を維持できる範囲であれば、切刃部の一部が露出していてもよい。
【0052】
[態様2]
態様2の発明は、態様1の発明において、前記工具本体が中心軸線回りに回転可能であり、前記切刃部は、先端面からみて前記中心軸線側から外周側に向けて当間隔で配置された複数の刃部を備え、前記複数の刃部の各々は、底刃と、該底刃の外周側側面に形成された外周刃と、前記底刃と前記外周刃とを凸R状に繋ぐR刃とを有し、前記底刃のうち前記R刃と繋がる所定長の部分が前記中心軸線に対して直交していることを特徴とする被覆切削工具である。
態様2の発明によれば、当該部分がさらい刃として機能し、スクレーパ効果を奏することができる。そのため、加工面の平坦度(平滑度)を向上させることができる。
【0053】
[態様3]
態様3の発明は、態様2の発明において、前記R刃のギャッシュ面が工具回転方向後方に捻れるスパイラルギャッシュ形状であることを特徴とする被覆切削工具である。
態様3の発明によれば、R刃のギャッシュ面をつなぎ目のないシームレス形状にすることで、工具輪郭精度、特にR輪郭精度を高めることができる。これにより、被切削物の高精度な加工が可能となる。また、直刃のギャッシュ形状に比べ、スパイラルギャッシュ形状にすることで切削性を高めることができ、また、R刃の欠損を抑制することができる。
【0054】
[態様4]
態様4の発明は、態様2の発明において、前記R刃は、1/4円弧を超える長さを有し、該1/4円弧を超えた位置で前記外周刃と一体に繋がることを特徴とする被覆切削工具である。
態様4の発明によれば、R刃から外周刃の加工切り替わりが1/4円弧を越えた位置で行われることから、1/4円弧の始端と終端はすべてR刃のR輪郭となり、R輪郭精度を高めることができる。
【0055】
[態様5]
態様5の発明は、態様2の発明において、前記複数の刃部は、その内終端が前記中心軸線又は当該中心軸線付近まで延びる一対の長刃と、その内終端が前記中心軸線の途中で止まる一対の短刃とで構成され、前記長刃と前記短刃とは、工具回転方向に交互に配置されており、前記長刃のギャッシュの一部は、工具回転方向前方の前記短刃の内終端と前記中心軸線との間に窪み空間を形成し、前記短刃のギャッシュは、工具回転方向前方の前記長刃の逃げ面の内終端途中で止まることを特徴とする被覆切削工具である。
態様5の発明によれば、切削抵抗が短刃よりも大きい長刃の強度を低下させることなく、窪み空間を通じて切削時のクーラントや切り屑を効果的に排出することができる。
【0056】
[態様6]
態様6の発明は、態様5の発明において、前記一対の長刃のギャッシュは、前記中心軸線付近で交差することを特徴とする被覆切削工具である。
態様6の発明によれば、隣り合う短刃のギャッシュとの連通性を高めることができ、切り屑詰まりをより効果的に防止することができる。
【0057】
[態様7]
態様7の発明は、態様1から態様6の発明のいずれかにおいて、ホーニング前の前記硬質膜が、刃部基材の表面に積層された第一層と、前記第一層の表面に積層された第二層と、前記第二面の表面に積層された第三層とを有し、前記第一層、前記第二層及び前記第三層が、それぞれの下層においては隣接した上層の結晶の成長を抑制する膜質を含んで構成されることを特徴とする被覆切削工具である。
態様7の発明によれば、結晶を微細化することができ、単層または2層構造の場合に比べて、硬質膜の硬度をより高めることができる。そのため、各層の特徴を組み合わせることで高硬度材への加工を長寿命で安定した加工が可能となる。
なお、第三層は、第一層及び第2層に比べて最も靱性が高い膜種を用いてもよい。これにより、工具先端部の欠損をより効果的に抑制することができる。
【要約】
【課題】硬質膜が剥がれにくく、刃の損傷が生じにくい刃先構造を実現する。
【解決手段】工具本体の先端側に形成された切刃部が硬質膜で覆われている被覆切削工具において、切刃部のうち被切削物を切削する部分28を、硬質膜の成膜後にホーニングすることにより、工具初期摩耗や硬質膜の剥がれを抑制し、加工初期から安定した加工精度、加工面を維持するようにした。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12