(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/87 20060101AFI20231215BHJP
G01S 13/46 20060101ALI20231215BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/46
G01S7/02 216
(21)【出願番号】P 2022183184
(22)【出願日】2022-11-16
(62)【分割の表示】P 2019562625の分割
【原出願日】2018-05-12
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】517027136
【氏名又は名称】ロケイタ コーポレイション プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】スモール デイヴィッド
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-537041(JP,A)
【文献】特表2014-502342(JP,A)
【文献】特開2003-110335(JP,A)
【文献】特開2009-186233(JP,A)
【文献】特開2008-151660(JP,A)
【文献】米国特許第04746924(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0207842(US,A1)
【文献】特開2004-198312(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103969640(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法であって、
信号を生成するステップと、
アンテナアレイの空間的に分散されたアンテナ要素を介して前記信号を送信するステップであって、前記アンテナ要素は、信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスで起動されるステップと、
順次的に起動される前記アンテナ要素を介して受信された入力信号に対して、前記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、前記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ且つ予め定められた方向で前記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作を加えるステップと、
前記操作された入力信号を統合期間にわたって累積して前記レシプロカルビームを形成するステップと、
前記送信された信号の戻りの前記レシプロカルビームにおける検出に基づいて前記予め定められた方向における物体の存在を推測するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記位相又はゲイン操作は、前記予め定められたシーケンスと実質的に同期して且つリターン信号の予想される受信期間と実質的に同期して前記入力信号に加えられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記統合期間は、前記リターン信号の予想される受信期間と前記アンテナ要素の起動期間のオーバーラップによって決定されるある数の部分統合期間に分割される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記送信された信号の戻りの検出は、前記送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けるステップを含む、ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
送信されている、前記生成された信号から内部で取得されたローカル信号を受信するステップと、
第1チャネルにおける前記ローカル信号を追跡して、前記推測された物体までのレンジの測定に対するベースラインを決定するステップと、
を更に含む、ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1チャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、前記送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定するステップと、
前記複数の相関値から最大相関値を識別するステップと、
前記ベースラインと前記最大相関値の離隔から、前記推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するステップと、
を更に含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、前記送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定するステップと、
前記複数の相関値から最大相関値を識別するステップと、
前記ベースラインと前記最大相関値の離隔から、前記推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するステップと、
を更に含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ローカル信号は、前記生成された信号が送信されている期間に累積され、前記操作された入力信号は、前記生成された信号が送信されていない期間に累積される、ことを特徴とする請求項5~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
ユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置であって、
複数の空間的に分散されたアンテナ要素を有するアンテナアレイと、
信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスで前記アンテナ要素を起動するスイッチングネットワークと、
信号を生成して順次的に起動される前記アンテナ要素を介して前記信号を送信するため前記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる送信機と、
前記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる受信機であって、
順次的に起動される前記アンテナ要素を介して入力信号を受信し、
前記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、前記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ且つ予め定められた方向で前記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作を受信された前記入力信号に加え、
前記操作された入力信号を統合期間にわたって累積して前記レシプロカルビームを形成し、
前記送信された信号の戻りの前記レシプロカルビームにおける検出に基づいて、前記予め定められた方向における物体の存在を推測する、
ようにする受信機と、
を備える装置。
【請求項10】
前記受信機は、前記予め定められたシーケンスと実質的に同期して且つリターン信号の予想される受信期間と実質的に同期して、前記入力信号に前記位相又はゲイン操作を加えるよう適応される、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記統合期間は、前記リターン信号の予想される受信期間と前記アンテナ要素の起動期間のオーバーラップによって決定されるある数の部分統合期間に分割される、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記受信機は、前記送信された信号の前記戻りの検出のために、前記送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付ける相関器を含む、ことを特徴とする請求項9~11の何れか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記受信機は、
送信されている、前記生成された信号から内部で取得されたローカル信号を受信し、
第1チャネルにおける前記ローカル信号を追跡して、前記推測された物体までのレンジの測定に対するベースラインを決定する、
よう適応される、ことを特徴とする請求項9~12の何れか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記受信機は、
前記第1チャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、前記送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定し、
前記複数の相関値から最大相関値を識別し、
前記ベースラインと前記最大相関値の離隔から、前記推測された物体までのレンジに関する尺度を決定する、
ように適応される、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記受信機は、
前記第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、前記送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定し、
前記複数の相関値から最大相関値を識別し、
前記ベースラインと前記最大相関値の離隔から、前記推測された物体までのレンジに関する尺度を決定する、
ように適応される、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記受信機は、前記生成された信号が送信されている期間に前記ローカル信号を累積し、前記生成された信号が送信されていない期間に前記操作された入力信号を累積するように適応される、ことを特徴とする請求項13~15の何れか1項に記載の装置。
【請求項17】
アンテナアレイにてレシプロカルビームを形成する方法であって、
信号を生成するステップと、
前記アンテナアレイの空間的に分散されたアンテナ要素を介して前記信号を送信するステップであって、前記アンテナ要素は、信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスで起動されるステップと、
順次的に起動される前記アンテナ要素を介して受信された入力信号に対して、前記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、前記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ且つ予め定められた方向で前記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作を加えるステップと、
前記操作された入力信号を統合期間にわたって累積して前記レシプロカルビームを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
アンテナアレイにてレシプロカルビームを形成する装置であって、
複数の空間的に分散されたアンテナ要素を有するアンテナアレイと、
信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスで前記アンテナ要素を起動するスイッチングネットワークと、
信号を生成し順次的に起動される前記アンテナ要素を介して前記信号を送信するため前記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる送信機と、
前記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる受信機であって、
前記順次的に起動されるアンテナアレイを介して入力信号を受信し、
前記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、前記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ且つ予め定められた方向で前記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作を受信された前記入力信号に加え、
前記操作された入力信号を統合期間にわたって累積して前記レシプロカルビームを形成する、
ようにする受信機と、
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法及び装置に関し、詳細には、自律車両などのユーザプラットフォームの環境での1又は2以上の物体に対する方向又はレンジ(距離)を決定又は推定する方法及び装置に関する。しかしながら、本発明はこの特定の使用分野に制限されないことは理解されるであろう。
【0002】
関連出願
本出願は、引用によりその内容全体が本明細書に組み込まれる、2017年5月12日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2017901780号からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
本明細書全体を通した従来技術の論議は、このような従来技術は広く知られており、又は当該分野における共通一般知識の一部を形成するものであると認められるものとして解釈すべきではない。
【0004】
モータ車両などのユーザプラットフォームは、自律的に、すなわち人間のオペレータからの入力がほとんど又は全く無く、ナビゲーションを支援するため車両の環境に関する情報を収集することによって作動するように構成することができる。情報は、ライダー、レーダー、カメラ及びマイクロフォンを含む多種多様なセンサシステムによって収集することができる。自律車両は、通常、格納された地図と一般に比較して、車両の位置を決定するためのGPSなどの測位システムを備えている。一般に、自律車両が冗長性及びクロスチェックのため複数のセンサシステムを有することが好ましい。
【0005】
ライダーは、1又は2以上のレーザービームを繰り返し走査して、放出されたパルスと戻ってくる反射パルスとの間の時間遅延から決定された物体までのレンジによって、車両の環境における反射物体の画像を生成することにより作動する。ライダーは、レーザービームの指向性が極めて優良であること、及び正確な測距のための短い広帯域のパルスを生成する能力があることに起因して、多くの点で自律車両の検出及び測距に最適なシステムである。しかしながら、米国特許第9,097,800号(Zhu)において開示されるように、避ける必要のある可能性がある固体物質を、排気プルーム及びタイヤスプレーなどの流体オブジェクトと区別するためレーダーで補うことが必要となる場合がある。現在の自律車両ライダーシステムが有する欠点は、レンジが一般には100m未満に制限され、レーザーの機械的回転を必要とし、霧又は大雨の場合には良好に作動しないことである。
【0006】
自律車両では、パルス、周波数変調持続波(FMCW)及びスペクトラム拡散レーダーを含む幾つかのタイプのレーダーを用いることができ、例えば米国特許第7,969,350号(Winstead他)、第5,268,692号(Grosch他)及び第6,801,153号(Rauch他)を参照されたい。パルスレーダーは、ライダーと同様の方式で飛行時間型技術によってレンジを決定するが、FMCWレーダーは、送信された信号に周期的周波数変調を課して、送信された信号とリターン信号との間の周波数差を測定することによってレンジを決定する。拡散スペクトラムレーダーは、GPSと同様の方式で作動し、送信された信号に擬似ランダム(PRN)コードを課して、リターン信号とPRNコードの内部生成レプリカを相関付けることによってレンジを決定する。現在の自律車両レーダーシステムの重大な欠点は、指向性走査能力が制限されることであり、ほとんどのシステムが、例えば前方又は後方を向いて、方向が固定されている。広い走査範囲を有するフェイズドアレイレーダーシステムが軍事用途で用いられているが、車両での一般的使用には複雑で高価過ぎる。
【0007】
当該技術で公知のレーダーの別の形態は、「パッシブ」レーダーである。1つの装置が無線周波数(RF)エネルギーを送信及び受信する「アクティブ」レーダーとは異なり、パッシブレーダーでは、受信機が、1又は2以上の外部送信機からの信号の反射を探すことによって、環境における物体の存在を決定しようとする。一部のパッシブレーダーシステムでは、受信機及び外部送信機が共同制御下にあるが、「機会信号(signals of opportunity)」システムでは、受信機は、例えば、商用テレビジョン、ラジオ又は移動電話伝送など、発見できる適切な信号を使用している。パッシブレーダーは、個々の車両が、関連付けられる干渉リスクを有してRFエネルギーを放射する必要を回避するが、一般には、検出及びレンジの決定が、アクティブレーダーよりも複雑となる。機会信号の予測できない変化は、自律車両におけるパッシブレーダーの適用を今まで実現不可能にしてきた。
【0008】
自律車両が複数のセンサシステムに様々なタイプの情報を収集させること、並びにクロスチェックすることが重要であるが、所与のセンサシステムがナビゲーションに有用な2又は3以上のタイプの情報を収集するよう構成できる場合、複雑さ及びコストを低減することが有利になる。
【0009】
以下の説明及び請求項において「or(又は)」という用語は、文脈上明確に他の意味に解釈すべき場合を除いて、排他的な意味ではなく包含的な意味に解釈するものとする。例えば、「位相又はゲイン」という表現は、「位相、又はゲイン、又は位相とゲインの両方」を意味するものとして解釈するものとする。「comprising」、「comprises」、「including」、「includes」などは、網羅的でないと解釈するものとする。例えば。「A及びBを含むデバイス」という表現の範囲は、AとBだけを含むデバイスに限定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】オーストラリア仮特許出願第2017901780号公報
【文献】米国特許第9,097,800号明細書
【文献】米国特許第7,969,350号明細書
【文献】米国特許第5,268,692号明細書
【文献】米国特許第6,801,153号明細書
【文献】米国特許第3,021,521号明細書
【文献】米国特許第8,934,844号明細書
【文献】米国特許第9,640,865号明細書
【文献】米国特許第7,616,682号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Bharadia et al ‘Full duplex radios’, Proc SIGCOMM’13, 12-16 August 2013, Hong Kong, pp. 375-386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを克服又は改善すること、或いは有用な代替策を提供することである。好ましい形態での本発明の目的は、ユーザプラットフォームの環境を特徴付ける改善された方法及び装置を提供することである。別の好ましい形態での本発明の目的は、1又は2以上の外部送信機から信号を受信する単純なアンテナを備えた受信機を用いて、複数のユーザプラットフォームがその環境を特徴付けるのを可能にするマルチアクセス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、ユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法が提供され、本方法は、
信号を生成するステップと、
アンテナアレイの空間的に分散されたアンテナ要素を介して上記信号を送信するステップであって、上記アンテナ要素が信号の送信又は受信のための予め定められたシーケンスで起動されるステップと、
順次的に起動されるアンテナ要素を介して受信された入力信号に対して、上記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、上記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ且つ予め定められた方向の上記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作を加えるステップと、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して上記レシプロカルビームを形成するステップと、
送信された信号の戻りの上記レシプロカルビームでの検出に基づいて上記予め定められた方向における物体の存在を推測するステップと、
を含む。
【0014】
位相又はゲイン操作は、予め定められたシーケンスと実質的に同期して且つリターン信号の予想される受信期間と実質的に同期して入力信号に加えられるのが好ましい。特定の実施形態では、統合期間は、リターン信号の予想される受信期間とアンテナ要素の起動期間のオーバーラップによって決定されるある数の部分統合期間に分割される。
【0015】
送信された信号の戻りの検出が、送信された信号を符号化するのに用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けるステップを含むのが好ましい。
【0016】
本発明の方法は、送信されている生成信号から内部で取得されたローカル信号を受信するステップ、及び第1チャネルにおけるローカル信号を追跡して推測された物体までのレンジの測定のベースラインを決定するステップを含むのが好ましい。
【0017】
特定の実施形態では、本発明の方法は、第1チャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて複数の相関値を決定するステップ、複数の相関値から最大相関値を識別するステップ、及びベースラインと最大相関値との離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するステップを含むのが好ましい。
【0018】
他の実施形態では、本発明の方法は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定するステップと、複数の相関値から最大相関値を識別するステップと、ベースラインと最大相関値との離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するステップとを含む。
【0019】
好ましくは、ローカル信号は、生成された信号が送信されている期間に累積され、操作された入力信号は、生成された信号が送信されていない期間に累積される。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、ユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置が提供され、上記装置は、
複数の空間的に分散されたアンテナ要素を有するアンテナアレイと、
信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスで上記アンテナ要素を起動するスイッチングネットワークと、
信号を生成し順次的に起動されるアンテナ要素を介して上記信号を送信するため上記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる送信機と、
順次的に起動される上記アンテナ要素を介して入力信号を受信し、
上記予め定められたシーケンスと実質的に同期して受信入力信号に位相又はゲイン操作を加え、上記位相又はゲイン操作は、上記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ予め定められた方向で上記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選ばれ、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して上記レシプロカルビームを形成し、
送信された信号の戻りの上記レシプロカルビームにおける検出に基づいて上記予め定められた方向における物体の存在を推測する、
ために上記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる受信機と、
を含む。
【0021】
この受信機は、予め定められたシーケンスと実質的に同期して且つリターン信号の予想される受信期間と実質的に同期して入力信号に位相又はゲイン操作を加えるよう適応されるのが好ましい。特定の実施形態では、統合期間は、リターン信号の予想される受信期間とアンテナ要素の起動期間のオーバーラップによって決められるある数の部分統合期間に分割される。
【0022】
この受信機は、送信された信号の戻りの検出のために、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けるための相関器を含むのが好ましい。
【0023】
この受信機は、送信されている生成信号から内部で取得されたローカル信号を受信し、且つ第1チャネルにおけるローカル信号を追跡して推測された物体までのレンジの測定のベースラインを決定するよう適応されるのが好ましい。
【0024】
特定の実施形態では、この受信機は、第1チャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付け複数の相関値を決定し、複数の相関値から最大相関値を識別し、ベースラインと最大相関値との離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するよう適応される。
【0025】
他の実施形態では、この受信機は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定し、複数の相関値から最大相関値を識別し、ベースラインと最大相関値との離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するよう適応される。
【0026】
この受信機は、生成された信号が送信されている期間にローカル信号を累積して、生成された信号が送信されていない期間に操作された入力信号を累積するように適応されるのが好ましい。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、アンテナアレイにてレシプロカルビームを形成する方法が提供され、上記方法は、
信号を生成するステップと、
上記アンテナアレイの空間的に分散されたアンテナ要素を介して上記信号を送信するステップであって、上記アンテナ要素は信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスで起動されるステップと、
順次的に起動されるアンテナ要素を介して受信された入力信号に対して、上記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、上記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ且つ予め定められた方向の上記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作を加えるステップと、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して上記レシプロカルビームを形成するステップと、
を含む。
【0028】
本発明の第4の実施形態によれば、アンテナアレイにてレシプロカルビームを形成する装置が提供され、上記装置は、
複数の空間的に分散されたアンテナ要素を有するアンテナアレイと、
信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスで上記アンテナ要素を起動するためのスイッチングネットワークと、
信号を生成し順次的に起動されるアンテナ要素を介して上記信号を送信するための上記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる送信機と、
上記アンテナアレイに動作可能に関連付けられる受信機であって、
順次的に起動される上記アンテナ要素を介して入力信号を受信する段階と、
上記予め定められたシーケンスと実質的に同期して受信入力信号に位相又はゲイン操作を加える段階であって、上記位相又はゲイン操作は上記アンテナアレイに対するラウンドトリップ経路補正を組み入れ、予め定められた方向の上記アンテナアレイのレシプロカルビームを形成するために選ばれることを特徴とする段階と、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して上記レシプロカルビームを形成する段階と、
を実行する受信機と、
を含む。
【0029】
本発明の第5の実施形態によれば、物理的に別個の送信機から送信された信号を用いてユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法が提供され、本方法は、
信号を受信するための予め定められたシーケンスでアンテナアレイの空間的に分散されたアンテナ要素を選択的に起動するステップと、
上記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、上記アンテナアレイから予め定められた方向のビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第1セットを受信された入力信号に加えるステップと、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積し上記ビームを形成するステップと、
上記物理的に別個の送信機からの反射信号の上記ビームにおける検出に基づいて上記予め定められた方向における物体の存在を推測するステップと、
を含む。
【0030】
反射信号の検出は、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けるステップを含むのが好ましい。
【0031】
本方法は、予め定められたシーケンスと実質的に同期して、物理的に別個の送信機の方向の直接経路ビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第2セットを受信された入力信号に加えるステップと、操作された入力信号を統合期間にわたって累積して直接経路ビームを形成するステップと、第1チャネルにおいて直接経路ビームの方向から受信された直接経路信号を追跡し直接経路信号の到着の時間を決定するステップとを含む。
【0032】
特定の実施形態では、本方法は、第2チャネルにおいて反射信号を追跡して反射信号の到着時間を決定するステップと、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間を区別して推測された物体までのレンジに関する尺度を取得するステップとを含む。他の実施形態では、本方法は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて複数の相関値を決定するステップと、複数の相関値から最大相関値を識別して反射信号の到着時間を決定するステップと、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間の離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するステップとを含む。
【0033】
本発明の第6の態様によれば、物理的に別個の送信機から送信された信号を用いてユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置が提供され、この装置は、
複数の空間的に分散されたアンテナ要素を有するアンテナアレイと、
信号を受信するための予め定められたシーケンスで上記アンテナ要素を起動するスイッチングネットワークと、
順次的に起動されるアンテナ要素を介して入力信号を受信し、
上記予め定められたシーケンスと実質的に同期して、上記アンテナアレイからの予め定められた方向のビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第1セットを受信された入力信号に加え、
操作された受信信号を統合期間にわたって累積して上記ビームを形成し、
上記物理的に別個の送信機からの反射信号の上記ビームにおける検出に基づいて上記予め定められた方向における物体の存在を推測する、
ための受信機と、
を含む。
【0034】
この受信機は、反射信号の検出のために、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付ける相関器を含むのが好ましい。
【0035】
この受信機は、予め定められたシーケンスと実質的に同期して、物理的に別個の送信機の方向の直接経路ビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第2セットを受信された入力信号に加え、操作された入力信号を統合期間にわたって累積して直接経路ビームを形成し、且つ第1チャネルにおいて直接経路ビームの方向から受信された直接経路信号を追跡して直接経路信号の到着時間を決定するよう適応されるのが好ましい。
【0036】
特定の実施形態では、この受信機は、第2チャネルにおいて反射信号を追跡して反射信号の到着時間を決定し、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間を区別して推測された物体までのレンジに関する尺度を取得するよう適応される。他の実施形態では、この受信機は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定し、複数の相関値から最大相関値を識別し反射信号の到着時間を決定し、且つ反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間の離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するよう適応される。
【0037】
本発明の第7の態様によれば、物理的に別個のアンテナアレイの空間的に分散されたアンテナ要素から送信された信号を用いてユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法が提供され、上記アンテナ要素は、送信された信号が同期される予め定められたシーケンスで信号を送信するために起動され、本方法は、
受信機で、順次的に起動されるアンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して、上記物理的に別個のアンテナアレイからの予め定められた方向のビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第1セットを入力信号に加えるステップであって、上記予め定められたシーケンス及び上記送信された信号とのこの同期が上記受信機に既知であるステップと、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して上記ビームを形成するステップと、
上記空間的に分散したアンテナ要素からの反射信号の上記ビームにおける検出に基づいて上記物理的に別個のアンテナアレイから上記予め定められた方向における物体の存在を推測するステップと、
を含む。
【0038】
反射信号の検出は、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けるステップを含むのが好ましい。
【0039】
本方法は、受信機で、順次的に起動されるアンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して、アンテナアレイから受信機に向かう直接経路ビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第2セットを入力信号に加えるステップと、操作された入力信号を統合期間にわたって累積し直接経路ビームを形成するステップと、受信機の第1チャネルにおいて直接経路ビームの方向から受信された直接経路信号を追跡して直接経路信号の到着時間を決定するステップとを含む。
【0040】
特定の実施形態では、本方法は、受信機の第2チャネルにおいて反射信号を追跡して反射信号の到着時間を決定するステップと、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間を区別して推測された物体までのレンジに関する尺度を取得するステップとを含む。他の実施形態では、本方法は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて複数の相関値を決定するステップと、複数の相関値から最大相関値を識別して反射信号の到着時間を決定するステップと、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間の離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するステップとを含む。
【0041】
本発明の第8の態様によれば、物理的に別個のアンテナアレイの空間的に分散されたアンテナ要素から送信された信号を用いてユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置が提供され、上記アンテナ要素は、送信された信号が同期される予め定められたシーケンスで信号を送信するために起動され、上記装置は、
順次的に起動されるアンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して、上記物理的に別個のアンテナアレイから予め定められた方向のビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第1セットを入力信号に加える段階であって、上記予め定められたシーケンス及び上記送信された信号との同期が上記受信機に既知であることを特徴とする段階と、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して上記ビームを形成する段階と、
上記空間的に分散されたアンテナ要素からの反射信号の上記ビームにおける検出に基づいて上記物理的に別個のアンテナアレイから上記予め定められた方向における物体の存在を推測する段階と、
を実行する受信機を含む。
【0042】
この受信機は、反射信号の検出のために、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付ける相関器を含むのが好ましい。
【0043】
この受信機は、順次起動されたアンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して、アンテナアレイから受信機に向かう直接経路ビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作の第2セットを入力信号に加えて、操作された入力信号を統合期間にわたって累積して直接経路ビームを形成し、第1チャネルにおいて上記直接経路ビームの方向から受信された直接経路信号を追跡し直接経路信号の到着時間を決定するよう適応されるのが好ましい。
【0044】
特定の実施形態では、この受信機は、第2チャネルにおいて反射信号を追跡して反射信号の到着時間を決定し、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間を区別して推測された物体までのレンジに関する尺度を取得するよう適応される。他の実施形態では、この受信機は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて、複数の相関値を決定し、複数の相関値から最大相関値を識別し反射信号の到着時間を決定し、且つ反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間の離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するよう適応される。
【0045】
本発明の第9の態様によれば、物理的に別個の送信アンテナアレイの空間的に分散された送信アンテナ要素から送信された信号を用いてユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法が提供され、上記送信アンテナ要素は、信号を送信するために、送信された信号が同期される第2の予め定められたシーケンスで起動され、上記方法は、
信号を受信するための第1の予め定められたシーケンスで受信アンテナアレイの空間的に分散された受信アンテナ要素を選択的に起動するステップと、
上記物理的に別個の送信アンテナアレイから予め定められた送信方向に且つ上記受信アンテナアレイから予め定められた受信方向に向かう複合ビームを形成するために選択された送信及び受信成分を有する位相又はゲイン操作の第1セットを受信機にて入力信号に加えるステップであって、上記送信成分は、順次的に起動される送信アンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して加えられ、上記受信成分は、上記第1の予め定められたシーケンスと実質的に同期して加えられ、上記第2の予め定められたシーケンス及び上記送信された信号との同期が上記受信機に既知であるステップと、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して複合ビームを形成するステップと、
上記空間的に分散された送信アンテナ要素から送信された反射信号の上記複合ビームでの検出に基づいて上記予め定められた受信方向における物体の存在を推測するステップと、
を含む。
【0046】
反射信号の検出は、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けるステップを含むのが好ましい。
【0047】
本方法は、送信アンテナアレイと受信アンテナアレイとの間の直接経路複合ビームを形成するために選択された送信及び受信成分を有する位相又はゲイン操作の第2セットを受信機にて入力信号に加えるステップであって、上記送信成分が順次的に起動される送信アンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して加えられ且つ受信成分が第1の予め定められたシーケンスと実質的に同期して加えられるステップと、操作された入力信号を統合期間にわたって累積して直接経路複合ビームを形成するステップと、受信機の第1チャネルにおいて、直接経路複合ビームの方向から受信された直接経路信号を追跡して直接経路信号の到着時間を決定するステップとを含むのが好ましい。
【0048】
特定の実施形態では、本方法は、受信機の第2チャネルにおいて反射信号を追跡して反射信号の到着時間を決定するステップと、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間を区別して推測された物体までのレンジに関する尺度を取得するステップとを含む。代替策の実施形態では、本方法は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付けて複数の相関値を決定するステップと、複数の相関値から最大相関値を識別して反射信号の到着時間を決定するステップと、反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間の離隔から、推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するステップとを含む。
【0049】
本発明の第10の態様によれば、物理的に別個の送信アンテナアレイの空間的に分散された送信アンテナ要素から送信された信号を用いてユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置が提供され、上記送信アンテナ要素は、送信された信号が同期される第2の予め定められたシーケンスで信号を送信するために起動され、上記装置は、
複数の空間的に分散された受信アンテナ要素を有する受信アンテナアレイと、
信号を受信する第1の予め定められたシーケンスで上記受信アンテナ要素を起動するためのスイッチングネットワークと、
順次的に起動される受信アンテナ要素を介して入力信号を受信し、
上記物理的に別個の送信アンテナアレイから予め定められた送信方向に及び上記受信アンテナアレイから予め定められた受信方向に向ける複合ビームを形成するために選択された送信及び受信成分を有する位相又はゲイン操作の第1セットを受信された入力信号に加えて、上記送信成分は、順次的に起動される送信アンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して加えられ、上記受信成分は、上記第1の予め定められたシーケンスと実質的に同期して加えられ、上記第2の予め定められたシーケンス及び上記送信された信号とのこの同期が上記受信機に既知であり、
操作された入力信号を統合期間にわたって累積して上記複合ビームを形成し、
上記空間的に分散された送信アンテナ要素からの反射信号の上記複合ビームにおける検出に基づいて上記予め定められた受信方向における物体の存在を推測する、
ための受信機と、
を含む。
【0050】
この受信機は、反射信号の検出のために、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付ける相関器を含むのが好ましい。
【0051】
好ましい実施形態では、この受信機は、送信アンテナアレイと受信アンテナアレイとの間の直接経路複合ビームを形成するために選択された送信及び受信成分を有する位相又はゲイン操作の第2セットを受信機にて入力信号に加え、送信成分が、順次的に起動される送信アンテナ要素から送信された信号の受信と実質的に同期して加えられ、受信成分が、第1の予め定められたシーケンスと実質的に同期して加えられ、操作された入力信号を統合期間にわたって累積して直接経路複合ビームを形成し、受信機の第1チャネルにおいて直接経路複合ビームの方向から受信された直接経路信号を追跡して直接経路信号の到着時間を決定する、よう適応される。
【0052】
特定の実施形態では、この受信機は、受信機の第2チャネルにおいて反射信号を追跡して反射信号の到着時間を決定し、且つ反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間を区別して推測された物体までのレンジに関する尺度を取得するよう適応される。代替策の実施形態では、この受信機は、第1チャネルにスレーブされた1又は2以上のチャネルの一連の遅延での複数のタップにおいて、送信された信号を符号化するために用いられたコードのレプリカに対して入力信号を相関付け複数の相関値を決定し、複数の相関値から最大相関値を識別し反射信号の到着時間を決定し、且つ反射信号の到着時間と直接経路信号の到着時間の離隔から推測された物体までのレンジに関する尺度を決定するよう適応される。
【0053】
以下では、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の一実施形態による、環境を特徴付けるための信号を送信及び受信するよう構成された装置を示すブロック図である。
【
図2】関連するユーザプラットフォームの環境を特徴付けるためのレシプロカルビームを形成する装置を示す略図である。
【
図3】関連するユーザプラットフォームの環境を特徴付ける複数のレシプロカルビームを同時に形成する装置を示す概略図である。
【
図4】球面アンテナアレイの選択された要素を示す概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、拡散スペクトラム信号を処理する相関器の出力を示す概略図である。
【
図6】ローカル信号と環境における物体から反射信号を
図1の装置が検出できる方式を示す図である。
【
図7】ローカル信号と環境における物体から反射信号を
図1の装置が検出できる別の方式を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態による、外部送信機からの信号を用いて関連するユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置を示すブロック図である。
【
図9】
図8に示す装置の幾何学的形状を示す図である。
【
図10】
図8の装置が直接経路信号及び環境における物体から反射信号を検出できる方式を示す図である。
【
図11】
図8に示す装置の二重反射経路に関する曖昧さの可能性を示す図である。
【
図12】本発明の別の実施形態による、外部送信機からの信号を用いて関連するユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置を示すブロック図である。
【
図14】
図12の装置が直接経路信号及び環境内の物体から反射信号を検出できる方式を示す図である。
【
図15】
図12の装置が直接経路信号及び環境内の物体から反射信号を検出できる別の方式を示す図である。
【
図16】
図12に示す装置の二重反射経路に関する曖昧さの可能性を示す図である。
【
図17】本発明の別の実施形態による、外部送信機からの信号を用いて関連するユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
レシプロカルビーム形成の実施形態
本発明の特定の態様は、自律車両などのユーザプラットフォームの環境を特徴付ける装置及び方法に関する。
図1は、複数の空間的に分散されたアンテナ要素104を有するアンテナアレイ102、プロセッサ106、送信機108及び受信機110を含む装置100を概略図で示している。プロセッサ106は、スイッチングネットワーク118及び送信線114を介して、予め定められたシーケンス(順序)の第1と第2の状態の間でアンテナ要素104を切り替えるよう構成され、第1状態では、アンテナ要素が信号を送信又は受信するよう構成され、第2状態では、アンテナ要素が信号を送信又は受信しないよう構成される。換言するとプロセッサ106は、信号を送信又は受信するための予め定められたシーケンスでアンテナ要素104を起動するよう構成される。
図1に示した実施形態では、アンテナアレイ102が平面に並べられた9つのミクロストリップパッチアンテナ要素104を有し、9つの単極スイッチ112を含むスイッチングネットワーク118によって起動及び停止される。例えば、アンテナ要素の異なる種類、数又は配列、又は異なるスイッチングネットワークを有する多くの他の構成も可能である。例えば、9つのアンテナ要素104の図示したアレイのスイッチングネットワークは、単一の1x9スイッチ又は1x3スイッチのツリー構造を含むことができる。何れの所与の時間にも1つのアンテナ要素がアクティブであるのが好ましいが、特定の実施形態では2又は3以上のアンテナ要素を同時にアクティブにすることができる。プロセッサ106は、予め定められたシーケンスから1又は2以上のアンテナ要素104を除くことができ、アンテナ要素起動期間を等しい持続時間にする必要はない。アレイ102の要素104が予め定められたシーケンスに従って順に起動されるので、寄生性の又は他の要素からの相互結合がない場合、この固有のゲインパターンに従ってRFエネルギーを送信又は受信する。好ましい実施形態では、アンテナ要素104は、非アクティブである時にアクティブアンテナ要素に実質的に非共振であるか又は実質的に非共振にできるように構成される。
【0056】
送信機108は、アンテナアレイ102及びプロセッサ106に動作可能に関連付けられる。好ましい実施形態では、RFキャリア生成器及びPRNコード生成器を含むRF増幅器/変調器116を含み、順次的に起動されるアンテナ要素104を介した送信のためのPRN符号化信号を生成するよう構成される。受信機110は同様に、アンテナアレイ102及びプロセッサ106に動作可能に関連付けられ、順次的に起動される要素104を介して、装置100の環境の1又は2以上の物体128からの送信された信号の反射によって形成されたリターン信号を受信するよう構成される。受信した信号は、一般には、受信機110の1又は2以上のチャネル124で処理されるRFフロントエンド122の中間周波数(IF)にダウンコンバートされる。各チャネルは、拡散スペクトラム信号処理の技術分野で公知であるように、送信された信号を符号化するために用いられたPRNコードの内部で生成されたレプリカと受信信号を相関付ける1又は2以上の相関器132を有する。
【0057】
装置100は、送信機108からのRFエネルギーを送信のためのアンテナアレイ102に向ける、又はアンテナアレイ102を介して受信された信号を受信機110に向けることによって送信又は受信モードでの作動を可能にする接合部120を含む。特定の実施形態では、接合部120は、RFサーキュレータ又は180度ハイブリッドカプラなどのパッシブ構成要素を含み、装置100が信号を同時に送信及び受信するのを可能にする。他の実施形態では、接合部120は、送信と受信モードの間で装置をトグル切り替えするRFスイッチなどのアクティブ構成要素を備える。接合部120の形態が何であれ、ポートの絶縁が一般には、送信機108から受信機110に漏れる「漏れ」又は「フィードスルー」信号として一般に知られる信号134を不完全に生じることになる。インピーダンスミスマッチが、スイッチ112又はアンテナ要素104から後方反射され受信機に到達する送信機によって生成されたRFエネルギーの追加のフラクションを結果として生じる可能性がある。
【0058】
漏れ信号は、例えば米国特許第3,021,521号(Hutchins)及び第6,801,153号に開示された当該技術で公知であるこのような信号を取り消すためのレーダーシステム及び幾つかの方法では一般に有害であると見なされる。基本的には、「自己干渉」という同じ問題は、全二重無線の分野で対処され、例えば、Bharadia他「全二重無線」、Proc SIGCOMM’13、2013年8月12日―16日、香港、375-386ページを参照されたい。しかしながら、本発明では、漏れ信号が、追跡ループで有利に追跡され、環境における物体128からの反射を介して取得される送信された信号の戻りに対して区別するためのベースライン擬似距離尺度を提供する。これらの漏れ信号は、以下では「ローカル」信号と呼ぶことにする。
【0059】
環境を特徴付けるために、装置100は、1又は2以上の方向のアンテナアレイ102のゲインを拡張する、すなわちRFエネルギーの送信又は受信のための1又は2以上のビーム126を形成し、物体128からの送信された信号の反射を探す。好ましい実施形態では、ビームを形成するために受信機110が、以下に説明するような適切なタイミングによって、順次的に起動されるアンテナ要素104を介して受信された入力信号に位相又はゲイン操作の適切なセットをチャネル124で加えるよう構成される。操作された信号セグメントは、累積器として公知の1又は2以上のレジスタに統合期間にわたってチャネル124に累積され所望のビーム126を形成する。一般に、統合期間は、例えば10μsの持続時間とすることができる予め定められたシーケンスの1又は2以上の完全なサイクルに対応する。注目すべきは、複数のチャネル124の受信された信号セグメントを操作及び累積することによって複数のビーム126を同時に形成できることである。
【0060】
米国特許第8,934,844号(Small)に説明されるように、この内容は全体が本明細書に組み入れられ、受信された信号セグメントの位相又はゲインを修正された拡散スペクトラム相関関係処理で便利に操作することができる。要求される位相又はゲイン操作が、基準信号、好ましくはキャリア基準信号に加えられ、1又は2以上の受信チャネル124の1又は2以上の相関器132で生成され、信号セグメントが通常の相関関係処理の一部として基準信号にミックスされた時に受信信号セグメントに転送される。重要な点は、相関関係処理の固有のコヒーレンスが、操作された信号セグメントを統合期間にわたってコヒーレントに累積してビームを形成できるようにすることである。
【0061】
一般に、所与のアンテナアレイによってビームを形成できる方向のレンジは、アレイの要素の種類及び配列に依存する。例えばアンテナ要素の平面アレイ104を有する
図1に示したアンテナアレイ102は、要素の平面の上に半球容積のビームを形成することができる。好ましい実施形態では、アンテナアレイ102は、自律車両にとって主な関心の全360°水平平面に特定の注意を払うことによって3次元スペースのほぼ何れの方向にもビームを形成することができる。これは、例えば球面表面上に並べられたアンテナ要素のアレイによって達成することができる。1つの特定の実施形態では、アンテナアレイ102が、球面表面上に並べられた80のアンテナ要素104を含み、各要素が10μsの予め定められたシーケンスで1.25μs期間に一度起動される。別の実施形態では、アレイが球面表面上に並べられた60の要素を含み、各要素が100μsの予め定められたシーケンスで1.67μs期間に一度起動される。
【0062】
ビーム126及びこの形成処理は、米国8,934,844号に記述されるものとは区別され、これによって受信機は、ローカルアンテナアレイを介して受信された外部送信機からの信号を操作してゲインパターンに影響を与える。ビーム126及びこの形成処理は、米国特許9,640,865号(Small)に記述される「複合ビーム」から区別され、この内容は全体が本明細書に組み入れられ、これによって受信機は、受信された信号セグメントを操作して、リモートの物理的に別個の「送信」アンテナアレイで並びにこのローカル「受信」アンテナアレイでゲインパターンに影響を与える。本発明の区別特徴は、ローカル環境をマッピング又は特徴付けるために、単一のアンテナアレイ102を用いてRF信号を送信及び受信し、続いてラウンドトリップ経路補正を組み入れた位相又はゲイン操作を受信された入力信号に加えて近傍の物体128の検出のための1又は2以上のビーム126を形成する装置100の能力である。これは、位置付けネットワークの近傍にある必要なく、装置100の完全に自律した作動のモードを可能にする追加の利点を有する。「レシプロカルビーム」という用語は、以下では本発明のこの実施形態で生成されるビーム126を指し、アンテナアレイを介してRFエネルギーの送信又は受信のために純粋に形成されるビームとは区別するために用いられる。
【0063】
図2に概略図で示す単純な実施形態では、ユーザプラットフォーム201によって運ばれるか又は組み込まれる装置200は、複数の個々に切り替え可能なアンテナ要素204を備えた球面アレイの形態でのマルチ要素アンテナアレイ202の単一のレシプロカルビーム226を形成するよう構成される。このレシプロカルビームは、統合期間内の順次的に起動される要素204を介して受信された信号セグメントに加えられる位相又はゲイン操作を意図的に変えることによって要求されるモニタリングゾーン236からスイープすることができる。物体228の存在は、送信された信号を符号化するために用いられたPRNコードのレプリカに対して受信された入力信号を相関付けることによって他の入力信号から区別される送信された信号の戻りを検出することによって推測することができる。例えば、所与のビーム方向における物体の存在は、無視できない相関関係パワーの出現から推測することができる。推測された物体までのレンジ238に関する尺度は、以下に説明するように累積信号の更なる処理によって取得することができる。一般には、光の速度で乗算し2で除算することによってレンジに変換することができるラウンドトリップ伝播遅延が測定される。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明の装置は、複数のレシプロカルビームを同時に形成するよう構成される。
図3に示した実施形態では、ユーザプラットフォーム301によって運ばれるか又はこれに組み込まれる装置300は、複数の個々に切り替え可能なアンテナ要素304を有する球面アンテナアレイ302の3つのレシプロカルビーム326A、326B及び326Cを形成するのに十分なチャネルを備えるよう構成される。各レシプロカルビームは例えば、物体328を検出するための要求されるモニタリングゾーン336の適当なセクタからスイープすることができる。ビームの大きな数によって、所与のモニタリングゾーン336を迅速に走査することができ、特定の実施形態では、十分な受信チャネル及び処理能力の利用可能度に応じて、数十、数百又は数千のレシプロカルビームを同時に形成するよう装置300を構成することができる。特に好ましい実施形態では、形成されたビームの数は、ビームスイープなしに要求されるモニタリングゾーン336の完全なカバレージを提供するのに十分である。例えば装置に多くの要素を有する大きなアンテナアレイを備えることによって緊密なビームを用いると、一般に角度解像度が改善する。この改善された解像度は、多くの受信チャネル及び関連付けられるプロセッサパワーを必要とするモニタリングゾーンの完全な瞬間的カバレージに多くのビームを必要とすることを犠牲にして成り立つ。
【0065】
「レシプロカルビーム」の概念を説明するために、
図4は、RF信号を送信及び受信するよう構成された球面アンテナアレイ402の3つの選択されたアンテナ要素404A、404B及び404Cを示す。この特定の例では、関心の方向442の要素404Aと404Bとの間の距離440は、λが信号波長である場合にλ/8に等しくなる。「送信」又は「受信」ビームが単独でこの方向442に形成される場合、要素404Aを介して送信又は受信される信号に対して要素404Bを介して送信又は受信される信号にλ/8の位相遅延を加えることで十分である。しかしながら、受信された信号セグメントが送信及び受信両方の選択された方向442でゲインを拡張するよう操作されるので、λ/4の相対的位相遅延(すなわち、λ/8+λ/8)を要素404Bを介して受信された信号に加える必要がある。理解し易いように、結果生じた指向性ゲイン拡張を、受信ビームに組み合わされた送信ビームとして考えることができるが、これは、ラウンドトリップ経路補正が位相又はゲイン操作の単一のセットで加えられるレシプロカルビームの真の性質を誤って伝えることを強調すべきである。
【0066】
レシプロカルビームを正しく形成するために、アンテナ要素が起動される予め定められたシーケンスと実質的に同期して位相又はゲイン操作を受信信号セグメントに加える必要がある。位相又はゲイン操作は、物体までの予想レンジの検討を要求するリターン信号の予想される受信期間と実質的に同期して加えられるのが好ましい。
図4に関して説明すると、アンテナ要素404A、404Bなどがシーケンスで起動されるので、所与のアンテナ要素から送信され物体から反射される信号セグメントは、異なるアンテナ要素を介して少なくとも一部受信される。この結果、信号が送信され且つ受信されるアンテナ要素のペアリング、及び従って受信信号セグメントに加えるべき位相又はゲイン操作の値及びタイミングは、検出される物体までのレンジに依存する。例えばアンテナ要素404A、404B、404Cなどが各々、1.25μsのシーケンスで起動される場合、要素404Aから送信され188m以内離れた物体188から反射信号は、ラウンドトリップ距離がレンジの2倍であることを思い出し、要素404Aで一部及び要素404Bで一部受信される。同様に、188mと375mとの間の距離離れた物体から反射した場合、信号は要素404B及び404Cで受信される。
【0067】
予め定められたシーケンスのアンテナ要素起動期間が、関心のレンジ、例えば、~200nsの予想遅延と比べて20μs起動期間、すなわち約30mのレンジである予想ラウンドトリップ伝播遅延に比べて長い場合、この影響は、安全に無視することができる。リターン信号は、そこから送信されるアンテナ要素を介して大部分は受信され、位相又はゲイン操作を計算してアンテナ要素起動シーケンスだけを考慮して加えることができる。受信機は、要素起動期間及び関心のレンジの知識に基づいて予想されるリターン信号受信時間を考慮するかどうか決めることができる。
【0068】
予め定められたアンテナ要素起動シーケンス及びリターン信号の予想されるレンジに関する遅延とは別に、適切な位相又はゲイン操作を決定するのに必要な他の因子は、アンテナアレイゲインを拡張する方向、すなわち、要求されるビーム方向、アンテナアレイ402の種類及び方位及びアレイにおける各要素404A、404Bなどの位置を含む。特定の実施形態では、所与の方向のレシプロカルビームを形成するための要求される位相又はゲイン操作はリアルタイムでプロセッサ106によって決定され、他の実施形態ではプロセッサがデータベース130から要求される位相又はゲイン操作を取り出す。位相又はゲイン操作は、「位相又はゲイン係数」、「アンテナ係数」又は「レシプロカルビーム係数」と呼ぶこともできる。
【0069】
好ましい実施形態では、アレイ102のアンテナ要素104から送信された信号の位相又はゲインは、1つに設定され、すなわち位相又はゲイン操作が送信機に加えられることはない。代わりに、レシプロカルビームを形成するのに必要な位相又はゲイン操作の全てが、受信されたリターン信号に加えられる。完全にするために、発明者らは、送信機108で、予め定められたアンテナ要素起動シーケンスと実質的に同期して、送信された信号セグメントに適切なレシプロカル位相又はゲイン操作を加えて、受信後にこれらのセグメントを累積して受信機110での通常の相関器処理によって、レシプロカルビームを一定の方向で形成できることに注目する。しかしながら、この方式でレシプロカルビームを形成する装置100は、望ましくない制限である、1つの時間に1つしかこのようなビームを形成できないことに制約される。受信機110は、適切な位相又はゲイン操作を、予め定められたシーケンスと実質的に同期して加えることができ、送信機108によって加えられた操作を「アンウィンド」し1又は2以上の方向で同時にレシプロカルビームを形成できる。いずれにせよ、一般には、送信された信号よりも受信された信号に位相又はゲイン操作を加えることが容易であり、装置100の設計は、位相又はゲイン操作が受信信号のみに加えられる時に大幅に単純化される。要するに、送信機で位相又はゲイン操作を加えることではレシプロカルビームを形成する場合に通常は利点がない。
【0070】
前述のように、受信機110は、一般には、接合部120で生成された信号の漏れ134によって内部で取得された「ローカル」信号、又はスイッチ112又はアンテナ要素104からの後方反射、又はこれらのある組み合わせを受信する。好ましい実施形態では、装置100は、受信機チャネル124に組み入れられた追跡ループのローカル信号を追跡し、これを1又は2以上の物体128からのリターン信号に対して区別するためのベースライン擬似距離測定として用いる。
図5は、拡散スペクトラム装置の受信チャネルの相関器の出力の概略図を示し、ローカル信号に関連付けられる相関関係ピーク544及び環境における物体から反射されたリターン信号に関連付けられる相関関係ピーク546を図示しており、各相関関係ピークは、拡散スペクトラム信号処理の技術で公知の通り、関連のPRNコードの2つのチップの持続時間に等しい幅548を有する。物体までのレンジに関する尺度を「戻り」信号と「ローカル信号」の相関関係ピーク546、544の間の離隔550から取得することができる。拡散スペクトラム技術が弱い信号を直ちに追跡できることが公知であるので、ローカル信号の追跡、すなわちローカル信号における位相同期ループ又は遅延同期ループなどの追跡ループ形成は、ローカル信号がほぼ取り消されていても一般には可能である。例えば移動中の自律車両の近くの物体から予想される複数の急速に変化する反射は、一般には追跡するのが難しいが、理解されるように一般にはこのような信号を追跡する必要はなく、好ましい実施形態ではこれが試みられることはない。他方のローカル信号は、基本的には一定になり従って追跡するのが比較的容易である。レンジ測定のための確かな「ベースライン」を提供するだけでなく、周囲の物体からの反射に関連付けられる測定とローカル信号の間の区別化手順が、この装置におけるいわゆる「共通モード」エラーの多くのソースを無くすことになる。例えば、戻りとローカル信号の両方が伝播する構成要素における熱又は電圧変動によって起こるドリフトから生じるエラーを無くし、これによってラウンドトリップ伝播遅延を測定する従来の方法と比較して改善されたレンジ推定値を提供する。
【0071】
連続波の実施形態
図1を参照すると、一定の実施形態において接合部120は、装置100が同時に信号を送信及び受信するのを可能にするRFサーキュレータなどのパッシブ構成要素を含む。ローカル信号は受信機チャネル124で追跡され、リターン信号は、同じチャネルで又はローカル信号チャネルから「スレーブ」オフされている1又は2以上の他のチャネルの何れかで処理することができる。
【0072】
特定の実施形態では、ローカル信号追跡チャネルに幾つかの追加のタップを提供することによってローカル及びリターン信号が同じチャネルで処理される。各追加のタップは、受信された信号がチャネルの共通キャリア数値的制御発振器(NCO)からのキャリア基準信号にミックスされ、且つチャネルの共通コードNCOから同期されたPRNコードレプリカの遅延コピーにミックスされる1又は2以上の相関器を有する。
図6は、送信された信号に加えられるPRNコードの1つのチップに対応する間隔654にマーク付けされた時間/距離線652上のこのチャネルからの相関器出力を示す概略図である。例えばPRNコードが100nsチップ期間を有する場合、マーク付けされた間隔654は、30mのラウンドトリップ距離に対応する。時間/距離線652は、ローカル信号の追跡から取得されるハーフチップスペーシングにおける早期、プロンプト及び後期相関値656、658及び660を示す。レンジ決定に対してベースライン測定又は「ゼロ」ポイント622として見なすことができるプロンプト相関値658に中心を置かれる「ローカル信号」相関関係ピーク644の2つのチップ幅を追跡することができる。順次的に起動されるアンテナ要素を介して受信された信号は、キャリア基準信号にミックスされ、追加のタップ644の数でPRNコードレプリカの増分的に遅延されたコピーが、この実施例ではハーフチップスペーシングで提供される。上述のように、位相又はゲイン操作が、受信信号セグメントに加えられ、要求される方向のレシプロカルビームを形成する。受信信号が送信された信号の戻りであり、加えられたPRNコードレプリカのコピーが信号の実際の到着時間に時間的に十分近い、一般に1チップ以内である場合、無視できない相関値が生じる。図示した例では、無視できない相関値666が4つのタップのグループ668に対して検出され、補間が、「ゼロ」ポイント662から約4.3コードチップ離れた位置670の最大相関値を有する相関関係ピーク646を結果として生じる。100nsチップを有するこの離隔650は、129mのラウンドトリップ距離に等価である430nsのランドトリップ遅延に対応する。従って本発明の装置は、現在形成されているレシプロカルビームに対応する方向の64.m離れた物体の存在を推測する。受信信号の類似の処理を、1又は2以上の他のチャネルで並行して起こすことができ、これらの方向における物体の検出のために他の方向でレシプロカルビームを形成するための異なる位相又はゲイン操作を加えることができる。同じ見る方向の異なるレンジの複数の物体からの反射を一般には検出することができるが、これはダイナミックレンジ及びレンジ解像度の制限に影響される。レンジ解像度は、一般には帯域幅によって、又は換言すると信号に課されるPRNコードのチッピングレート又はチップ持続時間によって決定される。例えば100ns又は20nsチップ持続時間を有するPRNコードは、それぞれ~15m又は~3mのレンジ解像度を提供する。
【0073】
要求されるタップ644の数は、関心の最大レンジに従って選ぶことができる。例えば、100nsチップを有するハーフチップスペーシング上の40タップは、最大30m離れた(600mラウンドトリップ距離)物体の検出を可能にする。
図6に示したタップ644のハーフチップスペーシングは、純粋に任意であり、要件に従って変えることができる。例えば近いスペーシングは、大きな相関関係解像度を提供し、別の例では受信チャネルが、100nsチップで最大300m離れた物体の検出を再度可能にする1/10チップスペーシングの200タップを有する。要求される精度及びタップスペーシングに応じて、タップのグループ内の補間以外からの最も大きな相関値を有するタップの位置からレンジ推定値を取得することができる。
【0074】
簡単にするために、ビーム形成のための位相又はゲイン操作のタイミングは、
図6に示したシングルチャネル実施形態では考慮されない。
図7は、チャネル1とラベル付けされた1つの受信チャネルが、ローカル信号の追跡専用であり、少数のタップ764を有する幾つかの追加のチャネルが、リターン信号を検出するためにチャネル1からスレーブオフされる好ましい方法を示す。各スレーブチャネルでは、チャネル1と同じPRNコードレプリカ、キャリアNCO及びコードNCO値が、チャネル1との周波数及び位相コヒーレンスを維持するために加えられ、各タップ764の連続PRNレプリカコード遅延が追加される。図示した例は、チャネル2から6のラベル付けされた5つのスレーブチャネルを示しており、各々が、ハーフチップスペーシングの3つのタップ764を有し、タップのグループ間で1.5チップの時間オフセット772を有する。位相又はゲイン操作が、チャネル2から6の受信信号セグメントに加えられ、要求される方向のレシプロカルビームを形成する。一般には、このチャネルがアンテナ要素を介して受信されないローカル信号専用である場合はチャネル1にビーム形成操作を加える必要はない。受信信号の同様の処理を、スレーブチャネルの1つ又は他のグループに並行して起こすことができ、他の方向でレシプロカルビームを形成するための異なる位相又はゲイン操作が加えられる。
【0075】
チャネル1‐6からの相関器出力が、送信された信号を符号化するために用いられたPRNコードの1つのチップに対応する間隔754にマーク付けされた時間/距離線752-1、752-2、752-3、752-4、752-5及び752-6に示されている。
図6の場合と同様に、チャネル1の早期、プロンプト及び後期相関値756、758及び760からコンピュータ計算された「ローカル信号」相関関係ピーク744は、「ゼロ」レンジポイント762の形態のベースライン測定の決定を可能にし、チャネル3及び4でコンピュータ計算された無視できない相関値766の補間が、ゼロポイント762から約4.3チップだけ遅れたポイント770の最大相関値を有する相関関係ピーク746の決定を可能にする。100nsチップを有することは、129mのラウンドトリップ距離に対応する。まとめると、
図7に示した5つのスレーブチャネルは、最大約8チップの遅延、すなわち240mのラウンドトリップ距離をカバーすることができる。レンジは、大きな遅延の追加のスレーブチャネルを割り当てることによって、又は1つのスレーブチャネル当たりタップ764の数及びチャネル間の時間オフセット772を増やすことによって延長することができる。
【0076】
所与のビーム方向で割り当てられるスレーブチャネルの数、及び各スレーブチャネル内のタップの数及びスペーシングにはかなりの融通性がある。例えば、
図7の5つのスレーブチャネルは、ハーフチップスペーシング上の16タップを有する単一のスレーブチャネルに置き換えることができる。しかしながら、
図7に示した分配方式の利点は、最適ビーム形成に対して適当な回数の位相又はゲイン操作の適用を容易にすることである。前述のように、信号がそれを介して送信及び受信されるアンテナ要素のペアリング、従って最適ビーム形成のために受信信号セグメントに加えるべき位相又はゲイン操作は、関心のレンジに依存する。各スレーブチャネルがコード遅延の所与のグループ、すなわち物体までのレンジに関連付けられるので、位相又はゲイン操作の異なるセットを、統合期間中の予想されるアンテナ要素ペアリングに従って加えることができる。例によって及び
図4に関して、発明者らは、各要素404A、404Bなどが1μs起動されるアンテナ要素起動シーケンスを仮定する。チャネル2のタップ764のグループは、150nsの遅延の周りにクラスタされ、これによってリターン信号の~85%が、送信されたのと同じ要素、例えば要素404Aを介して受信され、残りの~15%が、起動シーケンスの次の要素、例えば要素404Bを介して受信される。一方で、チャネル6のタップ764のグループは750nsの遅延の周りにクラスタされ、これによってリターン信号の~25%が送信されたのと同じ要素を介して受信され、~75%が次の要素を介して受信される。各スレーブチャネルの統合期間中に加えられる位相又はゲイン操作は、アンテナ要素起動シーケンスと対応するレンジ/遅延の物体から反射信号の予想受信期間の両方に従って決定することができる。例えば、異なる位相又はゲイン操作を、要素ペア404A‐404A、404A‐404B、404B‐404B、404B‐404Cに適当な回数加えることができる。換言すると、各統合期間は、リターン信号の予想受信期間とアンテナ要素の起動期間のオーバーラップによって決定されるある数の部分統合期間に分割される。
【0077】
代替策の実施形態では、位相又はゲイン操作の異なるセットが、タップ764のグループではなくチャネルの個々のタップに加えられる。本方法は、
図6に示した実施形態に用いることができ、タップ664は、幾つかのチャネル間で分配されるのではなく単一のチャネルに全てある。
【0078】
タップ及びチャネルの多くの他のグルーピングは、
図6及び7に示した例示的実施形態とは別に可能である。例えば、情報が一定のレンジウィンドウ、例えば50‐100m内の物体にのみ要求される場合、複数のチャネルを割り当てることができ、各々が、複数の方向でレシプロカルビームを形成するために加えられる位相又はゲイン操作の異なるセットを有するウィンドウをカバーするのに十分なタップを有する。別の例では、2又は3以上のチャネルのタップを交互にする、例えば、ハーフチップスペーシングの代わりにクオーターチップスペーシングのタップを提供することができ、レンジ決定の精度を上げることができる。別の例では、装置が、一定の方向における物体の存在を推測して、わずかに異なる方向のレシプロカルビームを形成するために選択された位相又はゲイン操作を追加のチャネルに割り当て、例えば物体をモニタするか又は方向決定を調整することができる。幾つかのチャネルに可変パラメータ、例えばビーム方向及びタップの数及びスペーシングを動的に割り当てる能力は、本発明の装置及び方法の重大な利点である。
【0079】
装置100が同時に信号を送信及び受信するよう構成される上述した実施形態では、受信機110が、ローカル信号の存在下でリターン信号を検出する場合の問題に遭遇する可能性がある。接合部120を形成するRFサーキュレータ又は類似のデバイスのポート絶縁及びスイッチ112とアンテナ要素104のインピーダンスミスマッチに応じて、ローカル信号は、一斉放送される信号より弱いわずか20又は30dBである可能性があり、レンジ及び反射率に応じて物体からのリターン信号よりかなり強くなることがある。加えて、一般的なPRNコードダイナミックレンジは、実際は約20dBに制限され、自己誘導「近‐遠」問題を結果として生じる。ローカル信号は、1.5チップ未満に対応するラウンドトリップ距離だけ装置から離れた、すなわちそれぞれの相関関係ピークのオーバーラップのせいでチップの3/4未満に対応するレンジの物体の検出を妨げることがある。例えば、PRNコードが100nsチップ期間を有する場合、ローカル信号は、22.5mより近い物体の検出を妨げることがある。高速チッピングレートは、ピークオーバーラップが始まるレンジを低減し、20nsチップが4.5mに低減する。
【0080】
ローカル信号からの自己干渉を軽減するために、本発明の装置は、前述のように当該技術で公知の1又は2以上のキャンセレーション技術を用いてローカル信号をキャンセルするよう構成することができる。例えば、最大110dBの自己干渉キャンセレーションが追加のハードウェアを犠牲にするにも関わらずBharadia他で報告されてきた。理想的には、ロバストローカル追跡に十分強い状態を維持しながら受信パワーが反射に関連付けられる受信パワーより弱くなるように、ローカル信号をキャンセルすべきである。
【0081】
パルス実施形態
好ましい実施形態では、ローカル信号からの自己干渉は、信号がアンテナアレイ102を介して順次送信及び受信される交互の「送信」及び「受信」期間又はウィンドウを有するパルスモードで装置を作動することによって軽減される。これらの実施形態では、接合部120が、例えば送信機108又は受信機110の何れかをアンテナアレイに選択的に接続するRFスイッチを含むことができる。送信ウィンドウの間、受信機110はローカル信号を累積して、受信ウィンドウの間、受信機は、受信信号セグメントに加えられる位相又はゲイン操作によって決定される1又は2以上の方向における物体128からの戻りを探す入力信号を累積する。
【0082】
ローカル信号からの干渉は、送信ウィンドウの間に入力信号を累積しないことによって大幅に低減される。理想的には、送信機108は受信ウィンドウの間は完全にオフに切り替えられる。しかしながら、実際には、PRNコード生成器のデジタル電子機器が、例えば、10nsの高速で、又は問題なく速くオン及びオフに切り替えられることがあり、パワー増幅器などの送信機構成要素を継続してオンに維持する必要があり、受信ウィンドウの間の低レベルノイズのソースを表す。このノイズのソースは、慎重な回路設計及び製造によって改善することができる。受信機110は、受信入力のゲインが受信と送信ウィンドウの間で迅速に調節されるようにする相互ゲイン制御のある形態を含むのが好ましい。送信及び受信ウィンドウ持続時間は、レンジ要件に従って選ぶことができ、PRNコードのチッピングレートより遅く入れ替えられ、以下に説明するブラインドスポットを改善するためにパルスシーケンスを変えられるのが好ましい。アンテナ要素起動シーケンスが、送信/受信パルスシーケンスとは関係なく、受信機110がレシプロカルビーム126を形成できることを強調すべきである。
【0083】
送信ウィンドウの間、受信機は、
図7に示すようにレンジ決定のためのベースライン測定又はゼロポイント762として作用する相関関係ピーク744を提供するためにチャネルのローカル信号を追跡し且つ累積する。送信機のパルスは、ローカル信号の追跡に影響がなく、低減されたコードデューティサイクルのために受信された相関関係パワーを低減し、ローカル信号が、PRNコードの代わりのチップ又はチップのグループでのチャネルの相関関係を追跡する。前述のように、リターン信号の検出のために、受信機は、1又は2以上の他のチャネルで、適切なスペーシング及びコード遅延の追加のタップ764の数をゼロポイント762からの要求される最大レンジに割り当てる。追加のタップ764は、PRN符号化リターン信号の代わりのチップ又はチップのグループを相関付けることによって、ローカル信号追跡チャネルと同様の方式で物体からの戻りを検出する。
【0084】
入力信号が受信ウィンドウの間にだけ累積されるので、送信及び受信ウィンドウの何れの所与のシーケンスでも、物体を検出する能力にレンジ依存の影響がある。例えば、各々の持続時間が100nsの送信及び受信ウィンドウを有するパルス方式は、存在できる何れのリターン信号も受信ウィンドウを通して検出されるので、15、45、75mなどのレンジ(100、300、500nsなどのラウンドトリップ遅延に対応する)の物体を検出するのに最適である。リターン信号と受信ウィンドウとの間のオーバーラップは、これらの最適レンジの何れの側でも低下し、30、60、90mなどのレンジの物体からの戻りに対してゼロになり、これらのレンジの周りのブラインドスポットを生じる。この影響は、ブラインドスポットを動かすためにパルス方式を変えることによって改善できる。例えば、200ns送信及び受信ウィンドウを有する最適レンジは、30、90、150mなどになり、ブラインドスポットが、約60、120、180mなどになる。100ns送信ウィンドウ及び200ns受信ウィンドウを有するパルス方式は、約45、90、135mなどのブラインドスポットを有することになる。一般には、受信ウィンドウが送信ウィンドウより長い場合はブラインドススポットがまばらであるが、全体的な送信パワー及び従ってかすかな反射を検出する能力が、低デューティサイクルによって低減されることになる。例えば擬似ランダムパターンでパルス方式を変える多くの可能性があることは明白である。
【0085】
好ましい実施形態では、装置100は、ポジショニングネットワークからポジショニング信号を受信及び処理して、追加の機能として位置‐速度-時間(PVT)ソリューションを決定するよう構成される。ポジショニング信号は、例えば、米国特許第7,616,682号(Small)に記述されるいわゆる「ポジショニングユニットデバイス」のネットワークによって提供することができる。デュアル機能を、時分割ベースで便利に可能にできる。例えばプロセッサ106は、1msシーケンスで10の100ns時間スロットを有するようプログラムすることができ、9つのスロットが位置決定に充てられ、1つが環境の特徴付けに充てられる。多い又は少ない周波数環境「スナップショット」が要求される場合に、当然ながら異なる時間共有方式が可能である。例えば状況によっては、100ms毎に1度、すなわち10Hz又は未満の更新速度でユーザプラットフォームの環境を特徴付けることで十分である。
【0086】
パッシブ実施形態
本発明の一定の他の態様は、装置と装置が1又は2以上の外部送信機からの信号を用いて環境を特徴付ける方法とに関する。大まかに、これらの態様で説明する装置及び方法は、米国8,934,844号及び米国9,640,865号に記述されるものに類似のビーム形成技術を用いる。しかしながら、マルチパスを軽減するために送信機又は受信機に向けたビームを形成する代わりに又はこれに加えて、ビームが、環境内の物体からの反射を探すために他の方向で形成される。要するに、マルチパスが軽減されるのではなく利用される。
【0087】
ローカルビーム形成によるパッシブ実施形態
図8は、本発明の実施形態による関連するユーザプラットフォーム801の環境を特徴付ける装置800の概略図を示す。この装置は、受信機810と外部送信機805からの拡散スペクトラム信号803を受信する複数の空間的に分散されたアンテナ要素804を有する球面アレイの形態のアンテナアレイ802とを含む。外部送信機805は、全指向性アンテナなどの従来の固定アンテナ807が備えられている。受信機810に動作可能に関連付けられるプロセッサ806は、スイッチングネットワーク818を介して予め定められたシーケンスでアンテナ要素804を起動する。順次的に起動されるアンテナ要素804を介して、例えば直接経路809又は間接経路811を介して受信されたRF信号は、1又は2以上の受信チャネル824で処理するRFフロントエンド822にダウンコンバートされる。
【0088】
1又は2以上の方向のアンテナアレイ802のゲインを拡張するため、すなわち1又は2以上の方向に向いた「受信」ビーム813又は813-Aを形成するために、受信機810は、1又は2以上のチャネル824の1又は2以上の相関器832で且つ予め定められたアンテナ要素起動シーケンスと実質的に同期して、順次的に起動されるアンテナ要素804を介して受信された入力信号セグメントに位相又はゲイン操作の1又は2以上のセットを加えるよう構成される。操作された信号セグメントは、1又は2以上のチャネル824内の累積器として公知の1又は2以上のレジスタに統合期間にわたって累積され、要求される受信ビームを形成する。装置800は、送信機805からの反射信号の関連ビーム813における検出に基づいて一定の方向における物体828の存在を推測する。統合期間は、一般には、予め定められたアンテナ要素起動シーケンスの1又は2以上の完全なサイクルに対応する。RFエネルギーが同じアンテナアレイを介して送信及び受信される
図1から
図4に関して説明した「レシプロカル」ビームの場合と異なり、この場合はアンテナアレイ802がRFエネルギーを受信するためだけに用いられる。この結果、所与の方向でビーム813又は813-Aを形成するために加えられる位相又はゲイン操作は、入力信号だけに対して決定する必要がある。要求される位相又はゲイン操作は、リアルタイムでプロセッサ806によって計算するか又はデータベース830から取り出すことができる。
【0089】
装置800が1又は2以上の外部送信機805からの信号を用いて関連するユーザプラットフォーム801の環境を特徴付ける方法を説明するために、システムの幾何学的形状を
図9に示している。推測された物体までのレンジに関する1又は2以上の尺度を取得するために、装置900は一般に、外部送信機905の位置、外部送信機に対するアンテナアレイ902の固有の位置及び方位αの知識を必要とする。装置900が、送信機905の位置を、例えば事前知識から又は送信された信号に符号化された情報から決定するのは簡単である。装置900がそれによって装置900の位置及び装置のアンテナアレイ902の方位αを決定できる幾つかの手段がある。例えば、関連するユーザプラットフォーム901が静止している場合、この装置は、この情報を前もって知ることができる。好ましい実施形態では、送信機905は、装置900がPVTソリューションを計算できるようにする地上ポジショニングネットワークを形成する公知の位置の幾つかのこのような送信機の1つである。この装置が送信機を追跡するためのビーム、
図8に示した直接経路ビーム813-Aなどを形成した場合、所与の送信機905に対するアンテナアレイ902の方位αを知る。別の例では、装置900は、他の手段によって、例えばGPS信号から装置900の位置、及び直接経路ビーム813-Aを形成することによって装置のアンテナアレイ902の方位αを決定することができる。この装置は、一般には、ビームスペースサーチを行うことによって所与の送信機905までの直接経路ビームを形成し、最短擬似距離に関連付けられる信号方向を決定することができる。受信機のクロックが、例えばPVTソリューションの結果として、送信機905のクロックに、又は少なくとも信機905のクロックからの公知のオフセットにアラインされている場合、擬似距離を実際のレンジに変換することができるが、最短擬似距離を有するビームは、オクルージョンがなく、直接経路に対応することになる。
【0090】
関連するユーザプラットフォーム901の環境を特徴付けるために、装置900は,少数のビームを形成及びスイープすることによって又はスイープすることなく関心の全エリアをモニタするのに十分な数のビームを同時に形成することによって、外部送信機905からのPRN符号化信号を探すビームスペースサーチを実行し、送信機905からのPRN符号化信号が受信される方向を決定する。
図9に示すように、装置900は、まだ未知のレンジ938として物体928からの送信された信号803の反射を介して恐らく到着するベアリングβを有する方向から無視できない又は閾値の上の信号911を発見する。装置900がこの直接経路信号911の経路長を測定できる場合、送信機905までのレンジ919及び送信機のアンテナアレイ902の方位αと共にこの情報を用いて、いわゆるバイスタティックレンジ長円921を決定することができる。装置900は、一般には、装置900の位置及び送信機位置の知識から送信機までのレンジ919を決定することができる。長円921とベアリングβの交差は、本装置が物体928までのレンジ938を推定するのを可能にする。送信機905に対するアンテナアレイ902の向きの知識、すなわち角度αは、レンジ推定では不可欠である。例えばアンテナアレイ902が点線の外形923で示されるように半時計周りに90度向けられた場合、ベアリングβとバイスタティックレンジ長円921との交差925は大きく異なるレンジ927を示すことになる。
【0091】
完全にするために、発明者らは、分析が、一部の状況では関心とすることができる外部送信機905から物体928までのレンジ949を提供することに注目する。
【0092】
間接信号経路長917を測定するための様々な方法を説明する。間接経路信号911が、専用追跡チャネルで受信機が取得及び追跡するのに十分安定している場合、例えばユーザプラットフォーム901及び物体928の両方が静止しているか又は十分ゆっくりと移動する場合に、受信機は、間接経路信号911の擬似距離測定を実行することができる。受信機と外部送信機905のクロック間のオフセットが、例えば以前に計算されたPVTソリューションによって公知である場合、測定される擬似距離は、クロックオフセットの補正後に、実際の間接信号経路長917に対応することになる。一方、クロックオフセットが未知である場合、受信機は、間接及び直接経路信号911、909に対して測定された擬似距離を区別することによってクロックオフセットを推定し、経路長差の正確な測定を取得することができる。
【0093】
好ましい実施形態では、受信機は、追跡ループで間接経路信号911の追跡を試みることはない。代わりに受信機は、第1チャネル内の追跡ループの直接経路信号909を追跡し、
図7に関して上述した状況と同様の1又は2以上のスレーブチャネルの増分PRNコード遅延の一連のタップを用いて間接経路信号を検出する。
図10に示した1つの特定の例では、受信機は、第1チャネル1029を直接経路信号909に充て、第2のスレーブチャネル1031を間接経路信号911に充て、各チャネルは、1つのチップ間隔1054にマーク付けされた時間‐距離線によって表される。各チャネルでは、受信された信号が適切な位相又はゲイン修正キャリア基準信号にミックスされ、適当なビーム813-A又は813を形成し、複数の適切に遅延されたPRNコードレプリカにミックスされる。
図10に示した実施形態では、第1チャネル1029は、早期、プロンプト及び後期相関値1056、1058及び1060に基づいて「直接経路信号」相関関係ピーク1033を決定するためのハーフチップスペーシングの3つのタップのグループ1064を有する。このピークの決定された位置1062は、「レシプロカルビーム」態様におけるローカル信号によって提供される「ゼロポイント」測定に類似の直接経路信号909の到着時間を提供する。スレーブチャネル1031は、ハーフチップスペーシングの一連のタップ1064を有し、適切に修正されたキャリア基準信号及び増分的に遅延されたPRNコードレプリカのコピーが受信信号にミックスされる。この特定の例では、4つのタップのグループに対して重大な相関値が測定され、単純な補間が、「直接経路信号」ピーク1033の位置1062から約5.75コードチップ離れた位置1070の最大相関値を有する「間接経路信号」相関関係ピーク1035を結果として生じる。これは、100nsチップを持ち間接と直接信号経路911、909の間の172.5mの経路長差に対応する間接及び直接経路信号911、909の到着時間の間の差を決定する。レンジに関する尺度は、タップのグループ内の補間からではなく最大相関値を有するタップの位置から代わりに取得することができる。タップ1064の数及びスレーブチャネル1031におけるタップのスペーシングは、予想される最大経路長差及び相関器解像度に従って選ぶことができる。
【0094】
しかしながら、複数の反射から発生する曖昧さの可能性が残る。例えば、
図11は、
図8のシステムの幾何学的形状を示し、この時間は二重反射経路の可能性を考慮する。送信機1105から送信され装置1100によって受信された信号が単一反射経路1111に沿って伝播したと仮定する場合、角度α及びβ、送信機レンジ1119及び間接信号経路長1117の知識、又は送信機レンジとの差の知識は、長さ1137を決定するのに十分である。装置1100は、推測された物体1128までのレンジの推定値としてこの長さを解釈する。しかしながら、信号が、第2物体1145を介して単一反射経路1111までの等しい長さの二重反射経路1143に沿って移動した場合、物体は、例えば小さなレンジ1141を有する位置1139にあるとすることができる。一般に、候補位置をクロスチェックするために追加の送信機からの信号を用いる場合、物体レンジを正しく決定する装置の可能性が改善される。装置1100の受信機は、当然ながら異なるPRNコードのために異なる送信機からの信号を区別することができる。他の方向における物体から反射信号を探すための追加のビームの形成は、レンジ推定の精度を向上させるのを助ける。
【0095】
リモートビーム形成を備えたパッシブ実施形態
図12は、本発明の別の実施形態によるユーザプラットフォーム1201の環境を特徴付ける装置1200の概略図を示す。図示した実施形態では、この装置は、複数の空間的に分散されたアンテナ要素1204を有する球面アンテナアレイ1202を備えた外部送信機1205からの拡散スペクトラム信号を受信する受信機1210を含む。装置1200は、全指向性アンテナなどの従来の固定アンテナ1207を備えるだけでよい。外部送信機1205からのRF信号は、前もって又は信号に符号化された関連の情報からの何れかで受信機1210に公知の予め定められたシーケンスでスイッチングネットワーク1218を介して起動されるアンテナ要素1204を介して放送される。直接経路1209又は間接経路1211を介して送信機1205から受信された信号を含む受信入力信号は、RFフロントエンド1222でダウンコンバートされる。位相又はゲイン操作の1又は2以上のセットが、1又は2以上のチャネル1224の1又は2以上の相関器1232の受信信号セグメントに加えられ、操作された信号セグメントが、一般には予め定められたシーケンスの1又は2以上の完全なサイクルに対応する統合期間にわたって累積される。米国第9,640,865号に説明されるように順次的に起動されるアンテナ要素1204からの信号の受信と実質的に同期して位相又はゲイン操作が加えられる場合、アンテナアレイ1202から要求される方向に向かう1又は2以上の「送信」ビーム1247又は1247‐Aが生じることになる。要求される位相又はゲイン操作は、リアルタイムでプロセッサ1206によって計算するか又はデータベース1230から取り出すことができる。ビームを正しく形成するために、受信機1210は、送信アンテナ要素1204の起動シーケンス、送信機1205によって送信された信号に加えられるPRNコード及び起動シーケンスとのPRNコードの同期、並びにアンテナアレイ1202の向き及び構成を知る必要がある。
【0096】
特定の実施形態では、装置1200は、アンテナアレイ1202から様々な方向を指す「送信」ビーム1247を形成して且つ起動されたアンテナ要素1204から送信された反射信号の検出に基づく方向における物体1228の存在を推測することによって、外部送信機1205からの信号を用いて関連するユーザプラットフォーム1201の環境を特徴付ける。
図13に示した
図12のシステムの幾何学的形状を参照すると、装置1300は、例えば少数のビーム1247を形成及びスイープすることによって、又は十分な数のビームを形成してスイーピングなしに関心の全エリアをモニタすることによって、外部送信機1305からのPRN符号化信号を探すビームスペースサーチを実行する。装置1300は、適当なPRNコードを有する信号が受信される送信機1305からのビーム方向を探す。
図13に示すように、装置1300は、まだ未知のレンジ1338の物体1328からの反射を介して事前に到着する送信機ビーム角度δ に関連付けられる無視できない又は閾値より上の信号1311を発見する。装置1300がこの間接経路信号1311の経路長1317を測定できる場合、装置1300の位置及び送信機1305の位置、又は同等に送信機までのレンジ1319と共にこの情報を用いて、バイスタティックレンジ長円1321を決定することができる。長円とベアリングδ の交差は、装置1300が推測された物体1328までのレンジ1338を推定するのを可能にする。これに代えて又は加えて、この装置は、送信機1305から推測された物体1328までのレンジ1349を推定することができる。
【0097】
関連するユーザプラットフォーム1301が静止しており且つ装置1300が送信機1305に対する装置の向き又は「見る方向」1351を知らない場合、本装置は、生成する環境の何れの「マップ」も正しい位置に置くことができない点に留意されたい。例えば、本装置は送信機1305から推測された物体1328までのベアリングδ 及びレンジ1349、並びに装置自体から物体までのレンジ1338を推定することができるが、見る方向1351に対してこの物体までの方向βを決定することはできない。しかしながら、関連するユーザプラットフォーム1301が移動を開始するとすぐに、装置1300は、推測された物体1328又は送信機1305までのレンジの変化をモニタすることによって装置の向き及び従って方向βを決定することができる。
【0098】
図12を参照すると、アレイ1202からリモートにビーム1247及び1247-Aを形成する受信機1210では、適切なゲイン及び位相操作を、起動されたアンテナ要素1204からの信号セグメントの受信と実質的に同期して受信信号セグメントに加えるべきである点に留意されたい。アレイ1202の各要素1204の要求される位相又はゲインオフセットを受信機1210が計算又は調べることができるが、伝播遅延を知らない場合を除いて、受信信号にこれらのオフセットを加える時間を知らないことになるので、受信機は、それぞれの信号経路の伝播遅延の知識を必要とする。米国第9、640、865号に記述されるように、送信された信号が符号化されるPRNコードへの公知のアラインメント又はアンテナ要素起動シーケンスとの同期は、信号が追跡される場合に、受信機1210が要求される位相又はゲインオフセットを正しいタイミングによって受信信号に加えるのを可能にする。これは、直接経路信号1209の場合にも該当し、受信機が間接経路信号を追跡できる場合、擬似距離測定を用いて、
図8及び9に関して説明するように間接信号経路長1217を決定することができる。しかしながら、前述のように、間接経路信号1211を追跡するのは難しいことが多い。
【0099】
好ましい実施形態では、受信機1210は、追跡ループによって間接経路信号1211を追跡しようとしない。代わりに、第1チャネル内の追跡ループで直接経路信号1209を追跡し、1又は2以上のスレーブチャネルの増分遅延の一連のタップを利用して間接経路信号1211に関連付けられる相関関係ピークをサーチする。この処理は、
図10に関して説明した「ローカルビーム形成」実施形態の処理に類似であるが、リモートに間接経路ビーム1247を形成するための追加のタイミング要件に対処するよう適応される。
図14に示す1つの例示的実施形態では、受信機が、直接経路チャネル1429にスレーブされた複数のチャネル1431-1、1431-2、1431-3、...1431-nを各要求される間接経路ビーム1247に割り当てる。各チャネルは、1チップ間隔1454にマーク付けされた時間/距離線によって表され、各スレーブチャネルが、間接と直接経路信号1211、1209の間の予想される経路長差をカバーする必要がある限り延長するハーフチップスペーシングの一連のタップ1464を有する。直接経路チャネル1429は、
図10の対応するチャネル1029と同じ方式で多くは作動し、直接経路信号1209が追跡され、直接経路信号の到着時間を示す相関関係ピーク1433が位置1462に決定される。チャネル1429の直接経路信号の相関関係に暗示されることは、直接経路ビーム1247-Aを形成するために受信信号に適切な位相及びゲイン操作を加えられたということである。各スレーブチャネル1431-1...1341-nでは、要求される間接経路ビーム1247を形成するための適切な位相又はゲイン操作が受信信号に加えらえるが、直接経路ビーム操作に対して量を増やすことによって時間的なオフセットがある。1つの例では、時間オフセットはチャネル1431-1でゼロであり、間接経路信号の伝播遅延が直接経路信号と同じであり、物体1228が送信機1205又は装置1200に特に近い場合、又はシステムのスケールが、アンテナ要素起動期間の持続時間と比較して無視できるほど伝播遅延に対して十分小さい場合、ビーム1247を形成するのに適切であると事実上仮定する。時間オフセットは、アンテナ要素起動期間Tのあるフラクションfずつ次のチャネル1431-2...1431-nで増分され、アンテナ要素が各期間に起動されると仮定する。すなわち、時間オフセットは、f・Tずつ増分され、fは同期に対するビーム品質の感度に従って選ばれる。例によってのみ、fを、0.05、0.1、0.15、又は0.2とすることができる。100μsシーケンスの等しい期間に起動される80のアンテナ要素のアンテナアレイは、T=1.25μsを有し、この場合、f・T増分を、例えば62.5ns、125ns、187.5ns又は250nsとすることができる。
【0100】
図14に示す例では、時間オフセットはチャネル1431-1ではゼロであり、各次のスレーブチャネルで250nsずつ増分される。チャネル1431-2の隣接するタップのペア1453の2つの無視できない相関値の測定は、信号のトレースを暗示し、位置1470の明白な相関関係ピーク1435をチャネル1431-1のタップのグループ1455の周りに嵌め合わせることができる。弱い相関関係ピーク1457をチャネル1431-4に嵌め合わせることができる。この結果は、スレーブチャネルの全ての中で、位相又はゲイン操作がチャネル1431-3に加えられる500ns時間オフセットが間接経路信号1211を受信するための最良品質のビーム1247の形成を結果として生じたことを示す。これは、直接経路信号1209の到着時間に対する間接経路信号1211の到着時間を示す相関関係ピーク1435と1433の間の離隔に一致し、約5.75コードチップ又は575nsである。これは、間接経路信号と直接経路信号との間の172.5mの経路長差に対応する。チャネル1431-3の位相又はゲイン操作に課せられた500ns時間オフセットは、満足される「実質的同期」要件のための間接経路信号と直接経路信号との間の実際の575ns伝播時間差に十分近く、適切なビーム1247の形成を結果として生じる。
【0101】
この観察は、スレーブチャネル1431-1、1431-2...1431-nの全てが多数のタップを有する
図14に示した例示的実施形態が、受信機資源の使用には効果がないことを示している。
図15は、はるかに少ないタップによって同じ結果を達成する好ましい実施形態を示す。前述のように、各チャネルは、1チップ(例えば100ns)間隔1554にマーク付けされたタイムラインによって表され、第1チャネル1529が、位置1562に中心を置かれた相関関係ピーク1533を取得するために早期、プロンプト及び後期タップを有する直接経路信号1209を追跡する。要求される間接経路ビーム1247を形成するための適切な位相又はゲイン操作が、スレーブチャネル1531-1、1531-2、1531-3及び1531-4の各々の受信信号セグメントに加えられ、例えば、0ns、250ns、500ns及び750nsずつの「直接経路」ビーム操作に対する時間のオフセットがある。しかしながら、ここでは、各スレーブチャネルは、「直接経路」位置1562に対して、時間オフセットの同じシーケンス、すなわち、0ns、250ns、500ns及び750nsを有するハーフチップ(例えば50ns)スペーシングの分配アラウンド位置の少数のタップ1564のみを有する。チャネル1531-3及び1531-4のタップのサブセットに対して測定された大きな相関値が、「直接経路」相関関係ピーク1533の位置1562より約585ns遅い位置1570の最大相関値を有する相関関係ピーク1535のフィッティングを可能にし、
図14で取得されたのと同じ結果になる。いずれにせよ受信機は、任意的に、測定された伝播遅延時間差を用いて、位相又はゲイン操作のタイミングを調節してビーム品質を調整することができる。
【0102】
間接経路信号と直接経路信号1211、1209との間の予想される伝播時間差がアンテナ要素起動期間Tより小さくなるようにシステムがスケールされる場合に、間接経路ビーム1247に割り当てられたマルチスレーブチャネルを有する
図14及び15に示した方法が必要なくなる点に留意されたい。例えばTが10μsの大きさであり且つ伝播時間差が、30mの経路長差に対応する100ns又はTの1%より大きくならないと予想される場合、適切な位相又はゲイン操作が直接経路ビーム1247-Aを形成するのに必要なものと同じタイミングで加えられる場合に、間接経路ビーム1247の品質の無視してよい劣化しか起こらない。換言すると、「実質的に同期」要件は、何れの追加の時間オフセット無しでも満足され、この場合、
図10に示した場合と同様の間接経路ビーム方向当たり1つのスレーブチャネルだけを割り当てることで一般には十分である。
【0103】
曖昧さが複数の反射から生じる可能性がある。説明するために、
図16は
図12のシステムの幾何学的形状を示しており、ここでは二重反射経路の可能性を考える。装置1600によって受信された信号が単一の反射経路1611を介して伝播したと仮定される場合、角度δ、送信機レンジ1619及び間接信号経路長1617、又は送信機レンジとの差の知識があれば、長さ1637を決定するのに十分である。装置1601は、物体1628までのレンジの推定値としてこの長さを解釈する。しかしながら、信号は、異なるレンジ及び方向の2つの物体1661及び1659を介して単一反射経路1611までの等しい長さの二重反射経路1643に沿って移動することができる。前述のように、レンジ推定値が正確である可能性は、同じ送信機1605又は他の送信機からの信号を用いて他の方向で形成された送信ビーム1247から決定される候補位置をクロスチェックすることによって増やすことができる。
【0104】
図12に関して上述した方法は、マルチ要素アンテナアレイを必要とすることなく、関連するユーザプラットフォーム1201の環境を装置1200が特徴付けるのを有利に可能にし、手持式デバイスへの小型化を可能にし、例えばユーザプラットフォームが車両以外の人である場合に特に有用になる。必要なビーム1247、1247-Aは、外部送信機1205に関連付けられるアンテナアレイ1202で形成される。ビームを形成するための位相又はゲイン操作が受信機1210で加えられるので、本発明のシステムは、何れの数のユーザプラットフォーム1201も同じ信号を利用できることを意味するマルチアクセスである。
【0105】
複合ビーム形成によるパッシブ実施形態
図17は、外部送信機1705からの拡散スペクトラム信号を用いる本発明の別の実施形態による関連するユーザプラットフォーム1701の環境を特徴付ける装置1700の概略図を示す。この実施形態では、外部送信機に複数の空間的に分散された送信アンテナ要素1704‐Tを有する送信アンテナアレイ1702-Tが備えられ、装置1700に複数の空間的に分散された受信アンテナ要素1704-Rを有する受信アンテナアレイ1702-Rが同様に備えられる。送信機1705及び装置1700の両方にアンテナアレイが存在することで、受信機1710は米国第9,640,865号に記述されるように「複合」ビーム形成技術を適用できる。2つのアンテナアレイ1702-R及び1702-Tはアンテナ要素の同じ形状又は同じ数又は種類を有する必要はないが、「複合」ビームを正しく形成するためには受信機1710が両方のアレイの構成を知る必要がある点に留意されたい。外部送信機1705によって生成された拡散スペクトラム信号が第1の予め定められたシーケンスでスイッチングネットワーク1718-Tを介して起動される送信アンテナ要素1704-Tを介して放送され、第2の予め定められたシーケンスでスイッチングネットワーク1718-Rを介して起動される受信アンテナ要素1704-Rを介して受信される。第1の予め定められたシーケンスは、事前に又は送信された信号に符号化された関連の情報からの何れかで受信機1710に公知であり、受信機がローカルアンテナアレイ1702-Rの予め定められたシーケンスを知っていることを予期できる。この受信機は、例えば第1の予め定められたシーケンスへのPRNコードのアラインメントから第1の予め定められたシーケンスとの信号の同期を知る必要がある。
【0106】
受信された入力信号がRFフロントエンド1722でダウンコンバートされた後に、受信機1710は、1又は2以上のチャネル1724で、起動された送信アンテナ要素1704-Tから送信された信号の受信と実質的に同期して且つ受信アンテナ要素1704-Rを起動するための第1の予め定められたシーケンスと実質的に同期して、位相又はゲイン操作の1又は2以上のセットを加えることができる。各チャネル1724の操作された受信信号が統合期間にわたって累積され、第1及び第2の予め定められたシーケンスの長さの少なくとも1つの完全なサイクルを一般に延長する統合期間を有する要求される「複合」ビームを形成する。各「複合」ビームは、送信アレイ1702-Tから向けられる送信ビーム1747又は1747-Aと受信アレイ1702-Rから向けられる受信ビーム1713又は1713-Aの組み合わせとして考えることができる。
図17に示した例では、受信機1710が2つのチャネル1724に2つの複合ビームを形成している。直接経路信号1709に対応するこれらの第1のビームは、送信アレイ1702-Tから受信アレイ1702-Rに向かって走る送信ビーム1747-A及び受信アレイから送信アレイに向かって走る受信ビーム1713-Aを含む。第2のビームは、適切なPRNコードを有する無視できないか又は閾値より上の信号1711の受信機1710での受信を結果として生じる方向にそれぞれのアンテナアレイから推定される物体1728に向かって走る送信及び受信ビーム1747及び1713を含む。装置1700は、関心のエリアから1又は2以上の複合ビームをスイープすることによって、又は関心のエリアをカバーするために複合ビームの十分な数を同時に形成することによって、及び適切なPRNコードを有する無視できないか又は閾値より上の信号を探すことによって、関連付けられるユーザプラットフォー1710の環境を特徴付けることができる。すなわち、この装置は、送信機1705から送信された信号の反射によって取得される信号を探す。
【0107】
本発明の装置が「受信」ビーム成分1713の角度又は方向から推定される物体1728への方向を推定した状態で、前述したように送信機までのレンジ1719と間接信号経路長1717から決定することができるバイスタティックレンジ長円とこの方向の交差からレンジ1738を推定することができる。送信機レンジ1719は、装置1700と送信機1705の位置から決定することができ、決定される唯一のパラメータとして間接信号経路長1717を残す。受信機1710が間接経路信号1711を追跡できる場合、擬似距離区別方法を、
図8及び9に関して説明したように加えることができる。しかしながら、
図15に関して説明したものに類似の方法が用いられるのも好ましい。この場合、複合ビームの「送信」部分1747を形成するのに必要な位相又はゲイン操作の成分は、増分的に増える時間オフセットによって複数のスレーブチャネル1531-1などに加えられ、複合ビームの「受信」成分1713を形成するのに必要な位相又はゲイン操作の成分が、ローカルアレイと同じタイミングで各スレーブチャネルに加えられる。一般に、複合ビームのそれぞれの部分の位相成分が合計され、ゲイン成分が乗算され、組み合わされた位相又はゲイン操作のセットは、「受信」成分に対する「送信」成分スライドとして各スレーブチャネル1531-1などで異なる。前述のように、予想される伝播時間差が送信アンテナ要素1704-Tの起動期間に比べて大きくない場合、送信部分1747を形成するのに必要な位相又はゲイン操作の適用を遅らせる必要はない。
【0108】
図18の外形図に示すように、複合ビームから取得された角度α、β及びδ と共に、直接及び間接経路信号1809、1811の経路長は、装置1800が推定される物体1828の方向及びレンジの推定値を取得するのに十分である。複合ビームによって提供される追加の角度情報は、高い確度を有する環境の特徴付けを可能にする。例えば、2つの物体1859及び1861を包含する二重反射経路1843の可能性を、この長さが短か過ぎるので除外することができる。角度α及びβを含む3又は4以上の反射を伴い、且つ単一反射経路1811の長さ1817に等しい全長を有する経路が予想されることがあるが、このような経路に沿った無視できない信号の受信は益々可能性が低くなる。多くの状況で、推測された物体の存在又は不存在を、同じ送信機1805又は他の送信機からの信号を用いて他の方向で形成された複合ビームから決定された候補位置をクロスチェックすることによって確認することができる。
【0109】
図8、12及び17に示したシステムの各々では、外部送信機805、1205又は1705が、ポジショニングネットワークを形成する公知の位置の複数の類似の送信機の1つであるのが好ましく、ポジショニングネットワーク内で装置800、1200又は1700は、PVTソリューションを計算することができる。これは、環境特徴付け機能の一部として又はこれに加えて実行することができる。例えば
図8の装置800は、PVTソリューションを計算するための十分な数の信号を受信するための送信機805の同じ数に向けられる幾つかのビーム813-A、及び他の方向の1又は2以上のビーム813を形成して、環境内の物体828からの反射を探すことができる。同様に、
図12の装置1200は、位置決定のためにそれ自体に向けた同じ数の送信機アレイ1202から走る幾つかのビーム1247-A、及び他の方向の1又は2以上のビーム1247を形成して、環境内の物体1228からの反射を探すことができる。
【0110】
図12に関して上述した装置1200は、リモートビーム形成技術の利用がマルチ要素アンテナアレイを必要とすることなく関連するユーザプラットフォーム1201の環境を特徴付けるのを可能にし、手持式デバイスへの小型化を可能にするので特に有利である。
図17の装置1700は、複合ビーム形成技術の利用が物体レンジの曖昧さの可能性を低減するので有利である。重要なことは、
図12及び17に示したシステムがマルチアクセスであり、適切な装置1200又は1700を有するユーザプラットフォーム1201又は1701の何れの数も、1又は2以上のアンテナアレイを備えた送信機1205、1705のネットワーク内で作動できるということを意味する。これは、環境を特徴付ける、又はPVTソリューションを決定するのに必要な信号操作の全てが、装置のそれぞれの受信機内で実行されるためである。一方で所与のユーザプラットフォームの装置が、例えば有線又は無線手段を介して、その固有の使用に一定の方向の1又は2以上のビームを形成するようアンテナアレイを備えた外部送信機に命じる場合、他のユーザプラットフォームの装置は、この送信機へのアクセスを拒否される。従って、
図12に示したシステムは、マルチアクセス方法を提供し、単純なアンテナ1207を備えた適当な装置1200を有する複数のユーザプラットフォーム1201は、マルチ要素アンテナアレイ1202を備えた1又は2以上の外部送信機1205から受信された信号を用いてユーザプラットフォームの環境を特徴付けることができる。
【0111】
本発明の実施形態の少数を、信号の送信、受信及び処理によってユーザプラットフォームの環境を特徴付ける方法及び装置に関して説明した。簡単にするために、受信機内のハードウェアに実施することができるチャネル、相関器及びタップなどの要素に関して信号処理を説明した。しかしながら、最新のコンピュータプロセッサを有するこれらの及び他の要素はソフトウェアで実施することもでき、受信された信号を処理するための資源のアサインメントにおける高い融通性を提供することが理解されるであろう。一般に信号処理は、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、ハードウェア、ファームウェア及びソフトウェアの何れの組み合わせでも起こすことができる。
【0112】
本発明を特定の実施例に関して説明してきたが、本発明が多くの他の形態でも実施できることが当業者によって理解されるであろう。
【符号の説明】
【0113】
100 装置
102 アンテナアレイ
104 複数の空間的に分散されたアンテナ要素
106 プロセッサ
108 送信機
110 受信機
112 単極スイッチ
114 送信線
116 RF増幅器/変調器
118 スイッチングネットワーク
120 接合部
122 RFフロントエンド
124 1又は2以上のチャネル
126 1又は2以上のビーム
128 物体
132 相関器
134 信号