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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/30 20180101AFI20231215BHJP
   H04W 80/10 20090101ALI20231215BHJP
   H04W 4/24 20180101ALI20231215BHJP
   H04W 92/24 20090101ALI20231215BHJP
【FI】
H04W76/30
H04W80/10
H04W4/24
H04W92/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022200472
(22)【出願日】2022-12-15
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太原 充啓
【審査官】中元 淳二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0039941(US,A1)
【文献】国際公開第2019/014505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線デバイス及び当該無線デバイスに割り当てられた通信アドレスを示す情報を含むセッション情報を管理する管理手段と、
前記管理手段が前記セッション情報を管理している間、前記セッション情報によって示される前記通信アドレスに関する通信パケットを検出する検出手段と、
を備え、
前記管理手段が管理している前記セッション情報の内の第1セッション情報によって示される第1通信アドレスを送信先とする前記通信パケットを転送できないことを示すメッセージを搬送する第1通信パケットを前記検出手段が検出すると、前記管理手段は、前記第1セッション情報を廃棄する、通信装置。
【請求項2】
前記通信装置は、トラフィック検出機能(TDF)を含む、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1通信パケットは、前記第1通信アドレスを送信先とする前記通信パケットを、前記無線デバイスに前記通信アドレスの割り当てを行う割当装置が受信したことに応答して、前記割当装置によって送信される、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記管理手段は、前記第1通信パケットを前記検出手段が検出すると、前記割当装置に前記第1通信アドレスの割当状況を問い合わせる問い合わせメッセージを送信し、前記問い合わせメッセージの応答として、前記第1通信アドレスが未割当であることを示す回答メッセージを前記割当装置から受信すると、前記第1セッション情報を廃棄する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記管理手段は、前記問い合わせメッセージの応答として、前記第1通信アドレスが前記第1セッション情報によって示される第1無線デバイスとは別の第2無線デバイスに割り当てられていることを示す回答メッセージを前記割当装置から受信すると、前記第2無線デバイスを示す情報を記録して前記第1セッション情報を廃棄する、或いは、前記第2無線デバイスを示す情報を他の装置に通知して前記第1セッション情報を廃棄する、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記割当装置は、パケットデータネットワークゲートウェイ(PGW)を含む、請求項3に記載の通信装置。
【請求項7】
前記管理手段は、第1装置との間で第1セッションを確立する際、前記第1装置から前記第1セッション情報を受信し、前記第1通信パケットを前記検出手段が検出すると、前記第1セッション情報を廃棄するために前記第1セッションの解放を前記第1装置に通知する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信装置と前記第1装置とはSdインタフェースで接続される、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記第1装置は、ポリシ及び課金ルール制御機能(PCRF)を含む、請求項7に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第1セッション情報は、前記第1通信アドレスが第1無線デバイスに割り当てられていることを示し、
前記管理手段は、前記第1セッション情報を管理している間、前記検出手段が前記第1通信アドレスを送信元又は送信先とする前記通信パケットを検出することで判定した前記第1無線デバイスのデータ通信量を第2装置に通知し、前記第1通信パケットを前記検出手段が検出すると、前記第1無線デバイスのデータ通信量を前記第2装置に通知することを停止する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
前記管理手段は、前記第1無線デバイスのデータ通信量を前記第2装置に通知するために、前記第2装置との間で第2セッションを確立し、前記第1通信パケットを前記検出手段が検出すると、前記第1無線デバイスのデータ通信量を前記第2装置に通知することを停止するために、前記第2セッションの解放を前記第2装置に通知する、請求項10に記載の通信装置。
【請求項12】
前記通信装置と前記第2装置とはGynインタフェースで接続される、請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
前記第2装置は、オンラインチャージングシステム(OCS)を含む、請求項10に記載の通信装置。
【請求項14】
前記メッセージは、インターネット制御メッセージプロトコル(ICMP)のメッセージを含む、又は、ICMPのメッセージである、請求項1に記載の通信装置。
【請求項15】
前記ICMPのメッセージは、前記第1通信パケットを転送できない事由としてホスト到達不可を示す、請求項14に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信ネットワークに関し、特に、制御情報の欠落による異常状態を回復させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、非特許文献1に開示されている移動通信ネットワークのポリシ及び課金制御(PCC:Policy and Charging Control)構成の一部を示している。パケットデータネットワークゲートウェイ(PGW)1は、移動通信ネットワークの無線デバイス(WD)5と、パケットデータネットワーク(PDN)6と、の間で送受信される通信パケットの中継を行う。例えば、PDN6はインターネットであり、通信パケットはIPパケットである。WD5は、ユーザ装置(UE)とも呼ばれる。PGW1は、例えば、WD5との間でデフォルトベアラを設定する際、WD5がPDN6との通信において使用する、IPアドレス等の通信アドレスをWD5に割り当てる機能も有する。
【0003】
トラフィック検出機能(TDF:Traffic Detection Function)3は、WD5からPDN6への通信パケットや、PDN6からWD5への通信パケットを検出し、WD5のデータ通信量を監視・記録すると共に、WD5に対するトラフィック制御を行う。トラフィック制御は、例えば、WD5に適用する制御ルールに基づきデータ通信速度を制限すること等を含み得る。なお、制御ルールは、例えば、ポリシ及び課金ルール機能(Policy and Charging Rule Function)2が、TDF3に通知する。また、TDF3は、課金処理を行うオンライン課金システム(OCS:Online Charging System)4に、WD5のデータ通信量を通知する。
【0004】
図1に示す様に、PGW1とPCRF2との間で制御信号を送受信するためのインタフェースは、Gxインタフェース(又は、参照点)として参照される。また、PCRF2とTDF3との間で制御信号を送受信するためのインタフェースは、Sdインタフェースとして参照される。さらに、TDF3とOCS4との間で制御信号を送受信するためのインタフェースは、Gynインタフェースとして参照される。
【0005】
図2は、PGW1がWD5に通信アドレスを割り当てた際と、PGW1がWD5への通信アドレスの割り当てを解除した際に図1のシステムで実行される処理を示している。なお、以下では、同じ名前の制御信号を区別するため、制御信号の信号名の前に、当該制御信号が送受信されるインタフェース名を付与する。また、図2では、図の簡略化のため、制御信号の受信に対して制御信号の受信側から制御信号の送信側に送信される確認応答信号等については省略している。
【0006】
PGW1は、S1でWD5に通信アドレスの割り当てを行うと、PCRF2との間でセッション(以下、Gxセッションと表記)を確立するため、S2において、Gx CCR(Credit Control Request)信号をPCRF2に送信する。このGx CCR信号は、初期要求であることを示す情報(I)と、Gxセッション情報と、を含む。Gxセッション情報は、確立するGxセッションの識別子と、WD5を識別する識別情報と、WD5に割り当てた通信アドレスと、を含む。WD5の識別情報は、例えば、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)である。なお、IMSIは、WD5のユーザを識別する識別情報でもある。
【0007】
Gxセッションが確立されると、PCRF2は、TDF3との間でセッション(以下、Sdセッション)を確立するため、S3において、Sd TSR(TDF Session Request)信号をTDF3に送信する。このSd TSR信号は、Sdセッション情報を含む。Sdセッション情報は、確立するSdセッションの識別子と、WD5の識別情報と、WD5に割り当てた通信アドレスと、WD5が行う通信に適用する制御ルールと、を含む。
【0008】
Sdセッションが確立されると、TDF3は、OCS4との間でWD5に関するセッション(以下、Gynセッション)を確立するため、S4において、Gyn CCR信号をOCS4に送信する。このGyn CCR信号は、初期要求であることを示す情報(I)と、Gynセッション情報と、を含む。Gynセッション情報は、確立するGynセッションの識別子と、WD5の識別情報と、を含む。
【0009】
上記の通り、Gxセッション(又はその識別子)は、通信アドレスと、当該通信アドレスを使用するWD5(識別情報により特定)とのペアに関連付けられる。また、Sdセッション(又はその識別子)は、通信アドレスと、当該通信アドレスを使用するWD5とのペアに関連付けられる。さらに、Gynセッション(又はその識別子)は、WD5に関連付けられる。これら3つのセッションは、WD5の識別情報に基づき互いに関連付けられ得る。
【0010】
Sdセッションが確立されている間、TDF3は、WD5が送受信する通信パケットを監視し、Sdセッション情報が示す制御ルールに基づきトラフィック制御を行う。なお、WD5が送受信する通信パケットとは、WD5が使用する通信アドレスを送信先アドレス又は送信元アドレスとする通信パケットである。TDF3は、所定タイミングであるS5において、更新であることを示す情報(U)と、Gynセッションの識別子と、WD5のデータ通信量と、を含むGyn CCR信号をOCS4に送信することで、OCS4にWD5のデータ通信量を報告する。OCS4は、Gyn CCR信号を受信すると、当該信号に含まれるデータ通信量を、当該Gynセッションの識別子に関連付けられているWD5のデータ通信量として管理する。TDF3は、WD5に関連付けられたSd及びGynセッションが確立されている間、ОCS4へのデータ通信量の報告を繰り返し行う。
【0011】
その後、S6において、PGW1がWD5への通信アドレスの割り当てを解除すると、PGW1は、S7において、当該WD5に関連付けられたGxセッションの解放を要求するGx CCR信号をPCRF2に送信する。このGx CCR信号は、終了であることを示す情報(T)と、解放するGxセッションの識別子と、を含む。Gxセッションの解放により、PCRF2は、S8で、Sd RAR(ReAuth Request)信号をTDF3に送信して、PGW1が通信アドレスの割り当てを解除したWD5に関連付けられたSdセッションの解放をトリガする。このSd RAR信号は、解放をトリガするSdセッションの識別子を含む。TDF3は、Sd RAR信号の受信に応答して、S9で、終了であることを示す情報(T)と、解放するSdセッションの識別子と、を含むSd CCR信号をPCRF2に送信する。また、TDF3は、S9で、終了であることを示す情報(T)と、解放するGynセッションの識別子と、を含むGyn CCR信号をOCS4に送信する。なお、解放するGynセッションは、PGW1が通信アドレスの割り当てを解除したWD5に関連付けられたGynセッションである。これにより、WD5に関係する総てのセッションが解放され、TDF3は、WD5が送受信する通信パケットの監視を停止する。なお、セッションの解放により対応するセッション情報も廃棄される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】3GPP TS 29.212 V12.6.0(2014-9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば、あるWD5(以下、WD#1)に通信アドレスAD#1が割り当てられている状態においてPGW1がWD#1への通信アドレスAD#1の割り当てを解除したものとする。この場合、図2のS7~S9の処理によりWD#1に関連付けられたGxセッション、Sdセッション及びGynセッションが解放され、TDF3は、通信アドレスAD#1を送信元又は送信先とする通信パケットの監視を停止する。しかしながら、例えば、輻輳又はPCRF2の障害等により、TDF3が、S8におけるSd RAR信号を受信しなかった場合、WD#1に関連付けられたSdセッション及びGynセッションが解放されず、TDF3は、通信アドレスAD#1を送信元又は送信先とする通信パケットの監視を継続する。さらに、その後、PGW1が通信アドレスAD#1を、WD#1とは異なるWD#2に割り当てたものとする。この際に、輻輳又はPCRF2の障害等が依然として継続しており、図2のS3のSd TSR信号をTDF3が受信しなかった場合、TDF3は、通信アドレスAD#1を送信元又は送信先とする通信パケットに基づくデータ通信量を、WD#1に関連付けられたGynセッションでOCS4に報告する。つまり、WD#2によるデータ通信量が、WD#1によるデータ通信量としてOCS4に報告されるという状態(異常状態)になってしまう。
【0014】
本開示は、制御信号の欠落による異常状態を回復させるための技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一態様によると、通信装置は、無線デバイス及び当該無線デバイスに割り当てられた通信アドレスを示す情報を含むセッション情報を管理する管理手段と、前記管理手段が前記セッション情報を管理している間、前記セッション情報によって示される前記通信アドレスに関する通信パケットを検出する検出手段と、を備え、前記管理手段が管理している前記セッション情報の内の第1セッション情報によって示される第1通信アドレスを送信先とする前記通信パケットを転送できないことを示すメッセージを搬送する第1通信パケットを前記検出手段が検出すると、前記管理手段は、前記第1セッション情報を廃棄する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によると、制御信号の欠落による異常状態を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】移動通信ネットワークのPCCに関するシステム構成図。
図2】無線デバイスに通信アドレスを割り当てた際と、無線デバイスへの通信アドレスの割り当てを解除した際に行われる処理のシーケンス図。
図3】一実施形態による回復処理のシーケンス図。
図4】一実施形態による回復処理のシーケンス図。
図5】一実施形態によるトラフィック検出機能を含む通信装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
また、以下では、非特許文献1に開示されているLTE(ロングタームエボリューション)で使用されている用語を主に使用して実施形態の説明を行う。しかしながら、本発明は、任意の技術に基づく移動通信ネットワークに適用され得る。つまり、本発明は、LTE技術を使用する移動通信ネットワークに適用することに限定されず、例えば、3GPP(登録商標)で仕様化されている、NR(New Radio)としても参照される第5世代(5G)移動通信ネットワークや、その後の世代の移動通信ネットワーク等に対しても適用され得る。
【0020】
本実施形態におけるPCCのためのシステム構成は、図1の通りであり、WD5に関するGxセッション、Sdセッション及びGynセッションの確立及び解放も基本的には図2のシーケンスに従い実施される。以下では、あるWD5(以下、WD#1)への通信アドレスAD#1の割当を解除した際に、輻輳等の何らかの原因により、TDF3において、WD#1及びAD#1に関連付けられたSdセッションが解放されず、よって、WD#1に関連付けられたGynセッションが解放されなかった場合の処理について図3を用いて説明する。なお、この様な状態は、例えば、PGW1がWD#1への通信アドレスAD#1の割り当てを解除した際に、図2のS8におけるSd RAR信号をTDF3が受信しなかった場合に生じ得る。
【0021】
図3のS10は、初期状態であり、PGW1は、WD#1への通信アドレスAD#1の割当を解除しているが、TDF#3は、WD#1及び通信アドレスAD#1に関連付けられたSdセッションと、WD#1に関連付けられたGynセッションと、を維持している。したがって、TDF3は、Sdセッション情報及びGynセッション情報を保持している。ここで、WD#1への通信アドレスAD#1の割当が解除される前にWD#1と通信していたPDN6上のサーバ装置には、通信アドレスAD#1の割当解除は通知されない。また、WD#1にインストールされているアプリケーションは、通常、WD#1のユーザによるユーザ操作がないときも、バックグラウンドでPDN6上のサーバ装置と通信を行っている。したがって、WD#1への通信アドレスAD#1の割当が解除されたとしても、PDN6上のサーバ装置は、WD#1と通信できないことを認識するまで、S11に示す様に、通信アドレスAD#1を送信先とする通信パケットをPGW1に向けて送信する。
【0022】
PGW1は、通信アドレスAD#1をいずれのWD5にも割り当てていない。このため、PGW1は、通信アドレスAD#1を送信先とする通信パケット(以下、転送不可通信パケット)の受信に応答して、S12で、転送不可メッセージを搬送する通信パケット(以下、制御通信パケット)を、転送不可通信パケットの送信元のサーバ装置に送信する。転送不可メッセージは、通信アドレスAD#1を使用している装置に通信パケットを転送できないことを示すメッセージであり、転送不可通信パケットの送信先である通信アドレスAD#1を示す情報を含む。転送不可メッセージとしては、例えば、RFC792で規定されているインターネット制御メッセージプロトコル(ICMP:Internet Control Message Protocol)の宛先到達不可(Destination Unreachable)メッセージを使用することができる。或いは、転送不可メッセージは、ICMPの宛先到達不可メッセージを含むものとし得る。この場合、PGW1は、例えば、コードフィールドに、事由(理由)として"ホスト到達不可(Host Unreachable)"を設定した宛先到達不可メッセージを使用し得る。なお、転送不可メッセージは、ICMPに従うメッセージに限定されない。
【0023】
本実施形態において、TDF3は、転送不可メッセージを搬送する通信パケットを監視することで、転送不可メッセージを監視・検出する。例えば、TDF3は、送信元の通信アドレスがPGW1の通信アドレスである通信パケットを監視することで、転送不可メッセージを搬送する制御通信パケットを監視することができる。したがって、S13において、TDF3は、PGW1が送信した転送不可メッセージを検出する。当該転送不可メッセージは、転送不可通信パケットの送信先である通信アドレスAD#1を示す情報を含む。TDF3は、転送不可メッセージを検出すると、転送不可メッセージに含まれている通信アドレスAD#1に関連付けられたSdセッションを維持しているかを判定する。TDF3は、転送不可メッセージに含まれている通信アドレスAD#1に関連付けられたSdセッションを維持している場合、S16において、図2のS9の処理を実行する。これにより、通信アドレスAD#1に関連付けられたSdセッションと、当該SdセッションのSdセッション情報が示すWD#1に関連付けられたGynセッションと、の解放をトリガし、Sdセッション情報及びGynセッション情報を廃棄する。なお、図3のS14及びS15はオプションであり、その説明については後述する。
【0024】
以上の構成により、制御情報等が欠落しても、通信アドレスの割当が解除されたWD5に関連付けられたSdセッション及びGynセッションが維持されてしまうといった異常状態が継続することを防ぐことができる。したがって、図4を用いて以下に説明する様に、その後、PGW#1が通信アドレスAD#1をWD#2に割り当てた際に、図2のS3のSd TSR信号をTDF3が受信しなかったとしても、WD#2が行った通信のデータ通信量が、WD#1のデータ通信量として記録されてしまうことを防ぐことができる。以下、図4の処理について説明する。
【0025】
図4のS20は、初期状態であり、PGW1は、通信アドレスAD#1をWD#2に割り当てているが、TDF3は、WD#2及び通信アドレスAD#1に関連付けられたSdセッションと、WD#2に関連付けられたGynセッションと、を確立していない。S21において、WD#2は、通信アドレスAD#1を送信先又は送信元とする通信パケットをPDN6上のサーバ装置と送受信する。しかしながら、通信アドレスAD#1に関するSdセッションがないため、TDF3は、通信アドレスAD#1を送信先又は送信元とする通信パケットを監視しない。したがって、WD#2が行った通信のデータ通信量が、WD#1のデータ通信量として記録されてしまうことを防ぐことができる。なお、この場合、WD#2が行った通信のデータ通信量が記録されないことになるが、WD#2のユーザにとって不利益は生じない。
【0026】
なお、確立しているSdセッションに関連付けられていない通信アドレスを送信先又は送信元とする通信パケットを検出する様にTDF3を構成することもできる。この場合、オプションのS22において、TDF3は通信アドレスAD#1を送信先又は送信元とする通信パケットを検出する。TDF3は、確立しているSdセッションに関連付けられていない通信アドレスAD#1を送信先又は送信元とする通信パケットを検出すると、オプションのS23で、確立しているSdセッションに関連付けられていない通信アドレスAD#1が使用されていることを、例えば、エラーログとして記録する。なお、エラーログを記録することに代えて、或いは、加えて、確立しているSdセッションに関連付けられていない通信アドレスAD#1が使用されていることを保守者に通知する構成とし得る。この構成により、保守者は、確立しているSdセッションに関連付けられていない通信アドレスAD#1が使用されている状況を把握することができ、その原因の追究を開始することができる。
【0027】
続いて、図3におけるオプションのステップS14及びS15について説明する。TDF3は、S13において、転送不可メッセージを検出すると、S14において、PGW1に問い合わせメッセージを送信する。問い合わせメッセージは、S13において検出した通信アドレスAD#1の割当状況を問い合わせるメッセージである。S15において、PGW1は、問い合わせメッセージに応答して回答メッセージをTDF3に送信する。回答メッセージは、通信アドレスAD#1の割当状況を示す情報を含む。図3では、割当状況として、通信アドレスAD#1が、未割当、つまり、どのWD5にも割り当てられていないことが示されている。割当状況として、通信アドレスAD#1が未割当であることを示す回答メッセージを受信した場合、TDF3は、S16において、単に、図2のS9を実行する。
【0028】
なお、例えば、PGW1がS12で転送不可メッセージを送信してからS14で問い合わせメッセージを受信するまでの間に、PGW1が、通信アドレスAD#1を、WD#1とは異なるWD#2に割り当てることも生じ得る。この場合、例えば、TDF3は、S15において、通信アドレスAD#1が、WD#2に割り当てられていることを示す回答メッセージを受信する。この場合、TDF#3は、例えば、所定期間の間、PCRF2から、通信アドレスAD#1及びWD#2に関連付けられたSdセッション確立のためのSd TSR信号を受信するかを判定する。そして、当該Sd TSR信号を受信すると、通信アドレスAD#1及びWD#2に関連付けられたSdセッション及びGynセッションを確立する。一方、所定期間が経過しても、PCRF2から、通信アドレスAD#1及びWD#2に関連付けられたSdセッション確立のためのSd TSR信号を受信しない場合、TDF3は、図4のS23の処理を行う。
【0029】
なお、S14及びS15のメッセージは、TDF3とPGW1との間で、直接、送受信される構成であっても、PCRF2を介して送受信される構成であっても良い。
【0030】
以上、転送不可メッセージを検出することで、既に割り当てが解除された通信アドレスに関するセッションを解放する。この構成により、既に割り当てが解除された通信アドレスに関するセッションが維持されるという異常状態を回復させることができる。なお、図3において、S11の通信パケットは、PDN6上のサーバ装置からの通信パケットであるとした。しかしながら、移動通信ネットワーク内の装置がTDF3及びPGW1を介してWD5に送信する通信パケットであっても良い。例えば、TDF3がPGW1を介してWD5にプローブの通信パケットを送信して、転送不可メッセージが送信されるか否かを判定しても良い。
【0031】
図5は、本実施形態によるTDF3を含む通信装置の機能ブロック図である。制御部32は、Sdインタフェースを介してPCRF2との間で制御信号を送受信して、Sdセッションの確立及び解放を含むSdセッションの管理を行う。また、制御部32は、Gynインタフェースを介してOCS4との間で制御信号を送受信して、Gynセッションの確立及び解放を含むGynセッションの管理を行う。制御部32は、Sdセッションを維持している間、Sdセッション情報を維持管理し、Gynセッションを維持している間、Gynセッション情報を維持管理する。
【0032】
検出部31は、制御部32が管理しているSdセッション情報に含まれる制御ルールに基づき、PDN6からPGW1に向かう通信パケットと、PGW1からPDN6に向かう通信パケットを監視してトラフィック制御を行う。さらに、検出部31は、Sdセッション情報によって示される通信アドレスに関する通信パケットを監視・検出する。通信アドレスに関する通信パケットは、当該通信アドレスを送信先又は送信元とする通信パケットを含む。検出部31は、Sdセッション情報によって示される通信アドレスを送信先又は送信元とする通信パケットによるデータ通信量を制御部32に通知する。制御部32は、検出部31からのデータ通信量に基づきGynセッション上でOCS4にWD5のデータ通信量を通知する。また、通信アドレスに関する通信パケットは、当該通信アドレスを送信先とする通信パケットを転送できないことを示す転送不可メッセージを搬送する転送不可通信パケットを含む。検出部31は、転送不可通信パケットを監視することで転送不可メッセージを検出する様に構成される。
【0033】
検出部31は、転送不可メッセージを検出すると、制御部32に、転送不可メッセージの検出と、転送不可となった通信パケットの送信先の通信アドレスAD#1と、を通知する。制御部32は、検出部31から転送不可メッセージの検出が通知されると、転送不可となった通信アドレスAD#1に関連付けられたSdセッションの解放をトリガしてSdセッション情報を廃棄する。また、解放するSdセッションに関連付けられたWD#1に関するGynセッションの解放もトリガしてGynセッション情報を廃棄する。このSdセッション及びGynセッションの解放によりWD#1のデータ通信量のOCS4への通知も停止される。
【0034】
なお、制御部32は、検出部31が転送不可メッセージを検出すると、WD5に通信アドレスの割り当てを行うPGW1に通信アドレスAD#1の割当状況を問い合わせる構成とすることができる。制御部32は、問い合わせの応答として、通信アドレスAD#1がいずれのWD5にも割り当てられていないことを示す回答メッセージをPGW1から受信すると、Sdセッションの解放をトリガし得る。なお、問い合わせの応答として、通信アドレスAD#1がWD#1とは別のWD#2に割り当てられているとの回答を受信した場合、制御部32は、WD#2を示す情報を記録してSdセッションの解放をトリガする、或いは、WD#2を示す情報を保守者に通知して、Sdセッションの解放をトリガし得る。WD#2を示す情報を保守者に通知することは、例えば、保守者が使用する装置にWD#2を示す情報を通知することで行われ得る。なお、WD#2を示す情報を記録又は保守者に通知してSdセッションの解放をトリガする処理は、所定期間が経過してもWD#2及び通信アドレスAD#1に関連付けられたSdセッションの確立がPCRF2から要求されない場合に行う構成とし得る。
【0035】
なお、図1のシステム構成の個々の機能ブロックは、1つの装置に対応するもの、つまり、1つの装置に含まれるものであっても、相互に通信可能な複数の装置で実現されるものであっても良い。また、複数の機能ブロックを1つの装置で実現することもできる。例えば、PGW1とTDF3とを1つの装置に含めて実現することもできる。
【0036】
本開示によるTDF3は、1つ以上のプロセッサを有する装置の当該1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を上記TDF3として機能させるコンピュータプログラムにより実現され得る。コンピュータプログラムは、1つ以上のプロセッサが実行可能なプログラム命令を含み得る。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0037】
以上の構成により、制御信号の欠落による異常状態を回復させることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0038】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
32:制御部、31:検出部
【要約】      (修正有)
【課題】制御信号の欠落による異常状態を回復させる通信装置を提供する。
【解決手段】移動通信ネットワークにおいて、トラフィック検出機能(TDF)を含む通信装置3は、無線デバイス及び当該無線デバイスに割り当てられた通信アドレスを示す情報を含むセッション情報を管理する制御部32と、制御部32がセッション情報を管理している間、セッション情報によって示される通信アドレスに関する通信パケットを検出する検出部31と、を備え、制御部32が管理しているセッション情報の内の第1セッション情報によって示される第1通信アドレスを送信先とする通信パケットを転送できないことを示すメッセージを搬送する第1通信パケットを検出部31が検出すると、制御部32は第1セッション情報を廃棄する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5