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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】空中映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/302 20180101AFI20231215BHJP
   H04N 13/366 20180101ALI20231215BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20231215BHJP
   H04N 13/122 20180101ALI20231215BHJP
   G02B 30/56 20200101ALI20231215BHJP
【FI】
H04N13/302
H04N13/366
H04N13/346
H04N13/122
G02B30/56
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022502644
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007632
(87)【国際公開番号】W WO2021171403
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】菊田 勇人
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105726(JP,A)
【文献】特開2007-228315(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054746(WO,A1)
【文献】特開2017-142370(JP,A)
【文献】特開2019-152724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00
G02B 30/00
G03B 21/00
G03B 35/00
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する映像表示部と、
ビームスプリッタと再帰反射シートとを有する空中結像光学系であって、前記ビームスプリッタが前記映像表示部から発する拡散光を反射して前記再帰反射シートに送り、前記再帰反射シートが前記ビームスプリッタからの光を反射して前記ビームスプリッタに送り、前記ビームスプリッタが前記再帰反射シートからの光を透過し、前記ビームスプリッタを透過した光が空中映像として再結像するように構成された前記空中結像光学系と、
前記空中結像光学系により前記拡散光が再結像される地点を見る観察者の視点位置情報を取得する視点位置情報取得部と、
前記再帰反射シートの端点及び前記観察者の眼を結ぶ直線と、前記観察者の眼から正面の前記再帰反射シートに到達する直線とがなす角度に応じて、前記映像表示部からの映像を制御する表示制御処理部と
を備え、
前記表示制御処理部は、前記角度が大きいほど低下する前記空中映像の鮮鋭度が、設定された閾値以下である領域についての前記映像を遮光する制御を行う
ことを特徴とする空中映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示素子のない空中に映像を映し出す空中映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子のない空中映像を映し出す、空中映像結像技術を使用した表示装置において表示される映像を観察者に応じて調整するシステムが存在する。例えば特許文献1では空中映像に対して観察者の視点位置に応じて表示の有無を制御することで、観察者が表示装置からの光を視認することができる位置にいた場合に観察者が空中映像を知覚することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-107218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
観察者が通過する動線上の空間に空中映像を投影する配置構造にした場合、観察者が知覚する空中映像の結像位置を通過した直後に、映像にならない不必要な光である、映像を空間に結像する前の光が観察者に視認されるという問題があった。
【0005】
本開示は上述のような課題を解決するためになされたもので、観察者に映像を空間に結像する前の光が視認されることなく空中映像を適切な表示品位で知覚させることを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、映像を表示する映像表示部と、ビームスプリッタと再帰反射シートとを有する空中結像光学系であって、前記ビームスプリッタが前記映像表示部から発する拡散光を反射して前記再帰反射シートに送り、前記再帰反射シートが前記ビームスプリッタからの光を反射して前記ビームスプリッタに送り、前記ビームスプリッタが前記再帰反射シートからの光を透過し、前記ビームスプリッタを透過した光が空中映像として再結像するように構成された前記空中結像光学系と、前記空中結像光学系により前記拡散光が再結像される地点を見る観察者の視点位置情報を取得する視点位置情報取得部と、前記再帰反射シートの端点及び前記観察者の眼を結ぶ直線と、前記観察者の眼から正面の前記再帰反射シートに到達する直線とがなす角度に応じて、前記映像表示部からの映像を制御する表示制御処理部とを備え、前記表示制御処理部は、前記角度が大きいほど低下する前記空中映像の鮮鋭度が、設定された閾値以下である領域についての前記映像を遮光する制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、空中結像を成す空中映像表示装置において、観察者が通過する動線上の空間に空中映像を投影する配置構造において、観察者が空中映像を通過した直後にいる場合でも、空中結像光学系から再結像される地点までの領域に移動する観察者位置を検知した時に映像表示部からの映像を遮光することにより、視野に映像を空間に結像する前の光が視認されない空中映像表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の空中映像表示装置100の構成を示す説明図である。
図2】実施の形態1の映像表示部10からの光が空中に映像を結像するまでを示す説明図である。
図3】実施の形態1の表示制御装置15の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態1における空中映像13の結像範囲より観察者19がビームスプリッタ11に近い位置にいる場合の制御例を示す説明図である。
図5】実施の形態2の表示制御装置15aの構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態2における空中映像13の結像範囲より観察者19がビームスプリッタ11に遠い位置であり、かつ空中映像13の結像範囲に近い位置にいる場合の制御例を示す説明図である。
図7】実施の形態2の映像表示部10における領域31a及び領域31bを示す説明図である。
図8】実施の形態2の映像表示部10における領域31a、領域31b、領域31c及び領域31dを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に従って説明する。
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1の空中映像表示装置100の構成を示す説明図である。図1において、空中映像表示装置100は、映像表示部10、ビームスプリッタ11、再帰反射シート12、視点位置検出装置14、及び表示制御装置15を備える。また、ビームスプリッタ11及び再帰反射シート12は、映像表示部10から発する拡散光を複数回反射させ、かつ透過することで異なる空間上に再結像させる空中結像光学系を構成する。映像表示部10は、表示した映像を光としてビームスプリッタ11に送る。ビームスプリッタ11が映像表示部10からの光を反射して、再帰反射シート12に送る。再帰反射シート12は、ビームスプリッタ11からの光を反射して、ビームスプリッタ11に送る。ビームスプリッタ11は、再帰反射シート12からの光を透過する。ビームスプリッタ11を透過した光は観察者19に空中映像13として知覚される。視点位置検出装置14は、観察者19の視点位置を検出した情報を表示制御装置15に送る。表示制御装置15は、視点位置検出装置14の情報から映像表示部10からの表示光を制御する機能を有する。
【0010】
映像表示部10は、例えば信号発生器や映像再生装置などから映像入力信号が入力され、表示する映像を光として出力する装置である。これは、例えば液晶ディスプレイのような液晶素子とバックライトとを備えた表示装置、有機EL素子やLED素子を用いた自発光デバイスの表示装置、又は、プロジェクタとスクリーンとを用いた投影装置が挙げられる。また前記のような2次元平面光源だけではなく、曲面を用いたディスプレイ、立体的に配置したディスプレイ、LED等の立体表示ディスプレイ、又はレンズ光学系やバリア制御を利用することにより観察者に両眼視差や運動視差による立体映像を知覚させるディスプレイを用いてもよい。
【0011】
ビームスプリッタ11は、入射する光を透過光と反射光とに分離する光学素子である。ビームスプリッタ11は例えばアクリル板やガラス板である。アクリル板やガラス板は一般的に反射光に比べ透過光の強度が高いことから、アクリル板やガラス板に金属を付加して反射強度を向上させたハーフミラーとした光学素子を利用してもよい。また、液晶素子や薄膜素子による入射光の偏光状態により、反射の振舞いと透過の振舞いとが変化する反射型偏光板を利用してもよい。また液晶素子や薄膜素子により入射光の偏光状態で透過率と反射率との割合が変化する反射型偏光板を利用してもよい。
【0012】
再帰反射シート12は、入射した光を入射した方向にそのまま反射する再帰反射性能を持つシート状の光学素子である。再帰反射を実現する光学素子には、鏡面状に小さなガラスビーズを敷き詰めたビーズタイプの光学素子、各面が鏡面で構成される凸形状の微小の三角錐または三角錐の中心部を切り取った形状を敷き詰めたマイクロプリズムタイプの光学素子などがある。
【0013】
図2は、本開示の実施の形態1の映像表示部10からの光が空中に映像を結像するまでを示す説明図である。本実施の形態の空中映像表示装置は、映像表示部10と対にしてビームスプリッタ11と再帰反射シート12とを配置する。映像表示部10からの映像の光がビームスプリッタ11で反射され、この光が再帰反射シート12で再帰反射することにより、図2における映像表示部10からの映像の光の光路を示す実線と点線とが一点に収束するように、光が空中に再収束する。観察者19には再収束した光が視認できるため空中映像13の位置に映像が存在すると知覚される。
【0014】
また、観察者19は、空中映像13の位置に映像が存在すると知覚する構造であれば、上記で説明した構造に限るものではない。例えば、ビームスプリッタ11、再帰反射シート12を、直交した2面の鏡面を重ね合わせて平面上にアレイ状の配置をした構造や、樹脂製の構造において内部反射を用いて前記鏡面を実現する構造など、2面コーナーリフレクタアレイ(dihedral corner reflector array)を利用した構造でもよい。この構造の片方の鏡面方向に対して入射した光はもう片方の鏡面に反射しつつ、この素子構造に対して対象の位置へと光が到達する。同様に拡散する光源において同様の反射を行う光は図1と同様に再収束することで、空中映像を知覚することができる。
【0015】
視点位置検出装置14は、視点位置を検出する。視点位置は、例えば、観察者19の眼が存在する位置である。視点位置検出装置14は、例えばカメラなどの撮像デバイスである。視点位置検出装置14は、例えば複眼カメラにより観察者19の三次元的な位置情報を取得することにより、視点位置を検出する。視点位置検出装置14は、例えば可視光領域のみの単眼カメラである場合でもオプティカルフローによる三次元位置推定や顔や骨格の特徴点から視点位置を検出する。視点位置検出装置14は、赤外光を撮像するカメラと赤外線を照射する装置とにより、その赤外光の反射パターンや速度を取得することで、視点位置情報20を検出する。視点位置情報20とは、例えば、観察者19の眼が存在する位置を示す情報である。また、視点位置検出装置14は、カメラ撮像素子を用いる以外の方法として、電波、または、磁場や音などの三次元空間を波及する波形を照射し、その波を入力する機器が照射波形を取得する時間やパターンに応じて人の視点位置情報20を推定する方法がある。また、視点位置検出装置14は、観察者がいると想定される場所の足元に感圧センサを設けることで、観察者の立っている位置から視点位置情報20を取得する。
【0016】
図3は、表示制御装置15の構成を示すブロック図である。表示制御装置15は、空中結像範囲推定部16、及び表示制御処理部18を備える。表示制御装置15は、視点位置情報20が入力され、表示制御を行う。空中結像範囲推定部16は、視点位置情報20と空中結像構造情報21とが入力され、空中結像範囲情報22を表示制御処理部18に出力する。空中結像範囲情報22は、空中映像が結像する位置を三次元的に示す位置情報である。空中結像構造情報21とは、空中映像13を形成するために必要となる映像表示部10、ビームスプリッタ11、及び再帰反射シート12の光学系部材の位置関係を表す情報である。例えば、各部材の三次元CAD情報であり、各部材の三次元空間の配置位置・形状を表したものである。表示制御処理部18は、空中結像範囲情報22と表示映像情報24とが入力され、表示光の制御を行う。各ブロックにおける処理内容について以下に説明する。観察者19が知覚する画像を低下させる要因として、空中映像13を形成する光以外の光が視認されることが挙げられる。
【0017】
空中結像範囲推定部16は、視点位置情報検出部から得られた視点位置情報20と空中映像表示装置100における空中映像の結像する光学的な配置構造を持つ空中結像構造情報21とから観察者19が知覚することができる空中映像の結像する範囲を推定する。
【0018】
例えば、再帰反射を利用した空中結像構造では、観察者19から空中映像13の方向を見た際に、視線上にビームスプリッタ11が存在し、更にビームスプリッタ11から透過した線上又は反射した線上に再帰反射シート12が存在している場合に空中映像13を知覚することができる。つまり、視点位置情報20と空中結像構造情報21との両情報から三次元光路追跡を行うことで、空中結像範囲推定部16は、映像表示部10が出力する表示領域のうち、空中映像として観察者19が知覚する範囲を推定することができる。
【0019】
上記説明の通り、観察者19の視点位置情報20は、視点位置検出装置14により検出され出力される。また、空中結像範囲情報22は、空中結像範囲推定部16より出力される。観察者19の視点位置が、観察者19が空中映像13の結像位置を通り抜けて、空中映像13の結像位置よりビームスプリッタ11に近い位置にある場合、言いかえると、観察者19が、ビームスプリッタ11及び再帰反射シート12から構成される空中結像光学系によって拡散光が再結像される地点を結んだ先にある領域から、空中結像光学系と拡散光が再結像される地点との間の領域に移動した場合、観察者19は空中映像13を知覚することができない状態になると推定される。
【0020】
前述した2面コーナーリフレクタアレイ構造においても空中映像13の結像位置を推定することが可能となる。2面コーナーリフレクタアレイ構造の場合には、入射する光路がそれぞれの鏡面に1回ずつ反射することで光路が結像される。そのため、構造と光源との入射角度との関係性により、1回以下や3回以上の反射を行う場合には観察者19に空中映像として知覚されないことが推定される。
【0021】
表示制御処理部18は、空中結像範囲情報22と表示映像情報24とから空中映像13を結像する光路を遮光する制御を行う。遮光制御方法は、例えば、映像表示部10を消灯することによる制御が挙げられる。または、遮光制御方法は、映像表示部10において液晶ディスプレイなどのバックライト部分を消灯することによる制御が挙げられる。または、遮光制御方法は、映像表示部10において有機ELディスプレイやLEDディスプレイなどは各光源を消灯することによる制御が挙げられる。または、遮光制御方法は、表示映像情報24の全画素の値を零に編集することによる制御が挙げられる。また遮光制御方法は例えば、光学フィルムや物理的な遮光装置を利用することが挙げられる。遮光装置は映像表示部10が発光した光が観察者19まで空中映像13として届くまでの光路上に設置され、電子シャッターやカーテンによる遮光制御が可能となる。また遮光制御方法は例えば、映像入力信号の全画素の値を零に変更して映像表示部10に供給することが挙げられる。
【0022】
図4は、空中映像13の位置より観察者19がビームスプリッタ11に近い位置にいる場合の制御例を示す説明図である。空中映像13に結像する前の光路を視認してしまうため、制御としては観察者19が視認する光の領域を表示遮光領域31として遮光することで、不快な光となる映像光を視認することによる不快感をなくす。
【0023】
このように構成された空中映像表示装置においては、空中映像13の画質の低下を推定した結果から空中映像13を結像する光路を遮光することにより、観察者にとって視覚的に不快となる光が視認されることなく空中映像のみを適切な表示品位で知覚することができる。
【0024】
実施の形態2
本実施の形態では、観察者19が視認する空中映像13の画質を推定して表示画質を制御する画質変換処理について説明する。
【0025】
図5は、表示制御装置15aの構成を示すブロック図である。本実施の形態では、実施の形態1における表示制御装置15を表示制御装置15aに置き換えるが、それ以外の構成は、実施の形態1と同じである。表示制御装置15aは、空中結像範囲推定部16、空中映像視覚推定部17、及び表示制御処理部18aを備える。表示制御装置15aは、視点位置情報20、空中結像構造情報21、及び表示映像情報24が入力され、表示制御を行う。空中結像範囲推定部16は、視点位置情報20及び空中結像構造情報21が入力され、空中結像範囲情報22を空中映像視覚推定部17に出力する。空中映像視覚推定部17は、空中結像範囲情報22が入力され、空中映像画質推定情報23を表示制御処理部18aに出力する。空中映像画質推定情報23は、観察者が視覚する空中映像13の映像品位を表す情報である。例えば、白輝度を表示した際の明るさを表す輝度値や、白輝度と黒輝度を隣接して表示した際のコントラスト比を示す情報や、RGBなどの色を表示した際の色度を示す情報などが挙げられる。表示制御処理部18aは、空中映像画質推定情報23及び表示映像情報24が入力され、表示光の制御を行う。各ブロックにおける処理内容について以下に説明する。表示映像情報24は、例えば信号発生器などから入力される。
【0026】
空中映像視覚推定部17は、空中結像範囲推定部16により得られた空中映像として知覚することができる範囲における、観察者19に視認される空中映像13の画質を推定する。
【0027】
以下、空中映像視覚推定部17における左右の眼の画質推定方法について詳細に記載する。まず空中映像の結合位置での各画素に対して、両眼の位置関係を結ぶ光路を推定する。対象の空中映像画素と右眼とが結ぶ三次元直線、及び対象の空中映像画素と左眼とが結ぶ三次元直線とを算出し、これらの直線と再帰反射シート12とが交差するそれぞれの角度を算出する。
【0028】
再帰反射を利用した空中映像結像構造は、構成される光学系部材及び観察者位置によって各眼が視認する光による映像の画質が変化する。本実施の形態では、観察者19が知覚する空中映像13において、右眼と左眼とがそれぞれ視認する光による映像の各画素の画質を推定しパラメータとしてマッピングする。本実施の形態でいう画質とは、観察者19が知覚する画質であって、観察者19が知覚する空中映像13の明るさ、先鋭さ、又は色度が挙げられる。再帰反射シート12の端点及び眼を結ぶ直線と、眼から正面の再帰反射シート12に到達する直線とがなす角が、大きくなる、つまり観察者19が空中映像13の結像位置に近すぎると、観察者19が知覚する空中映像13の明るさや先鋭さが変化する。例えば、ビームスプリッタ11や再帰反射シート12の表面に光学的に波長変化するフィルム素材や偏光フィルムなどが利用されていた場合に、観察者19が空中映像13として知覚する光の入射角度に応じて回折や、偏光による波長の変化や反射透過率の変化などが発生し、知覚する空中映像13の明るさや色度が変化する。
【0029】
また、観察者19が知覚する画像を低下させる要因として、空中映像13を形成する光以外の光が視認されることが挙げられる。例えば、ビームスプリッタ11において板厚さの大きい素材で両面とも同様の反射率と透過率とを有していた場合、空中映像13を形成する際の反射と透過とが両面で実行され、結像範囲の異なる2つの空中映像13を形成することがある。その場合、空中映像13を知覚するための光を二重に視認することとなり、空中映像の先鋭さを低下させることとなる。また再帰反射シート12の表面において、再帰反射ではなく鏡面反射をすることで、再帰反射シート12の奥に鏡像が視認される場合がある。この鏡像が空中映像13と干渉することにより観察者19が知覚する空中映像13の画質を低下する要因となる。
【0030】
図6は、空中映像13の結像範囲より観察者19がビームスプリッタ11に遠い位置であり、かつ空中映像13の結像範囲に近い位置にいる場合の制御例を示す説明図である。映像表示部10で表示した映像が結像して空中映像13となることから、それぞれの眼の視覚領域と遮光領域または制御領域は映像表示部の表示範囲を用いて説明する。再帰反射シート12の左側の端点及び左眼を結ぶ直線と、左眼から正面の再帰反射シート12に到達する直線とがなす角が、大きくなるほど観察者19が視認する光による画像の鮮鋭度34は低下する。具体的には、左眼の視覚領域32における鮮鋭度34が中央付近に対して左側で低下する。鮮鋭度34が設定された閾値以下の左眼の視覚領域32を領域32aとする。なお、閾値は、人間の視覚特性に基づいた認知できるコントラスト比や輝度を基に設定される。
【0031】
再帰反射シート12の右側の端点及び左眼を結ぶ直線と、左眼から正面の再帰反射シート12に到達する直線とがなす角が、大きくなるほど観察者19が視認する光によって知覚する画像の鮮鋭度34は同様に低下する。具体的には、左眼の視覚領域32における鮮鋭度34が中央付近に対して右側で低下する。鮮鋭度34が設定された閾値以下の左眼の視覚領域32を領域32bとする。
【0032】
再帰反射シート12の左側の端点及び右眼を結ぶ直線と、右眼から正面の再帰反射シート12に到達する直線とがなす角が、大きくなるほど観察者19が視認する光によって知覚する画像の鮮鋭度35は低下する。具体的には、右眼の視覚領域33における鮮鋭度35が中央付近に対して左側で低下する。鮮鋭度35が設定された閾値以下の左眼の視覚領域33を領域33aとする。
【0033】
また、再帰反射シート12の右側の端点及び右眼を結ぶ直線と、右眼から正面の再帰反射シート12に到達する直線とがなす角が、大きくなるほど観察者19が視認する光によって知覚する画像の鮮鋭度35は低下する。具体的には、右眼の視覚領域33における鮮鋭度35が中央付近に対して右側で低下する。鮮鋭度35が設定された閾値以下の右眼の視覚領域33を領域33bとする。
【0034】
領域32a、領域32b、領域33a、及び領域33bのような、鮮鋭度が低下した領域においては観察者19にとって各眼が同一の画素を視認していると感じにくくなり、空中映像13の位置関係が知覚することができず不快な光と感じる。このため、観察者19が知覚する画質が大きく異なる部分の画素は遮光することが望ましい。具体的には、左眼の視覚領域32及び右眼の視覚領域33を合わせた領域のうち、領域32a又は領域33aの領域31aと、領域32b又は領域33bの領域31bとを遮光するような制御動作をおこなう。
【0035】
図7は、映像表示部10における領域31a及び領域31bを示す説明図である。上記の説明では、左眼の視覚領域32及び右眼の視覚領域33の領域の内部で遮光範囲を決めていたが映像表示部10における左眼の視覚領域32及び右眼の視覚領域33の領域の外部まで領域31a及び領域31bを拡張して遮光範囲を広げても良い。
【0036】
図8は、映像表示部10における領域31a、領域31b、領域31c及び領域31dを示す説明図である。領域31aより左側の領域を領域31cとする。また、領域31bより右側の領域を領域31dとする。上記の説明では、観察者19にとって不快な光と感じる領域を遮光するように制御していたが、例えば領域31a及び領域31bにおいて明るさおよび先鋭さを落とすフィルタ処理を表示映像情報24に行うことで、ぼやけ、明るさの変化、又はコントラストの変化等、各眼が感じる画質の変化を視認しにくくし、領域31c及び領域31dにおいては光を遮光するような制御としても良い。
【0037】
表示制御処理部18aは、空中映像画質推定情報23から空中映像13の画質を変化させる制御を行う。空中映像13の画質制御方法としては、映像光源への光学フィルタによる制御方法が挙げられる。例えば、拡散フィルムや位相差フィルムを配置し、その設置位置および角度を機械的に制御することにより、空中映像13の明るさや解像度を局所的に変化させることが可能となる。また空中映像13の画質制御方法として、映像表示部10に入力される表示映像情報24に対して、フィルタ処理や色変換処理を行うことで表示画質を制御することも挙げられる。フィルタ処理では入力される表示映像情報24の周波数領域ごとのフィルタにより、先鋭さや解像感を制御することが可能である。また画質制御方法は例えば、映像入力信号に対してフィルタ処理や色変換処理を行って映像表示部10に供給する方法としてもよい。
【0038】
このように構成された空中映像表示装置においては、観察者が空中映像13の結像範囲よりビームスプリッタ11から遠い位置にあり、かつ空中映像13の結像範囲に近い位置にいる場合に、再帰反射シート12の端点及び眼を結ぶ直線と、眼から正面の再帰反射シート12に到達する直線とがなす角が、大きくなっても空中映像を適切に知覚することができる。
【0039】
以上のように本開示の実施の形態について説明したが、本開示はこれらの実施の形態に限るものではない。
【符号の説明】
【0040】
10 映像表示部
11 ビームスプリッタ
12 再帰反射シート
13 空中映像
14 視点位置検出装置
15 表示制御装置
16 空中結像範囲推定部
17 空中映像視覚推定部
18 表示制御処理部
19 観察者
20 視点位置情報
21 空中結像構造情報
22 空中結像範囲情報
23 空中映像画質推定情報
24 表示映像情報
31 表示遮光領域
32 左眼の視覚領域
33 右眼の視覚領域
100 空中映像表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8