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特許7403627ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/02 20150101AFI20231215BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20231215BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231215BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20231215BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231215BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231215BHJP
   A61K 33/00 20060101ALN20231215BHJP
   A61K 33/08 20060101ALN20231215BHJP
【FI】
A61K35/02
A61P19/10
A23L33/10
A61P19/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P35/00
A61K33/00
A61K33/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022502931
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 KR2020009354
(87)【国際公開番号】W WO2021010762
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0087226
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506081530
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】セオ スンマン
(72)【発明者】
【氏名】カン イルモ
(72)【発明者】
【氏名】ロー キミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェファン
(72)【発明者】
【氏名】キム デヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン ジョンヒ
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/123279(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0092176(KR,A)
【文献】国際公開第2018/023023(WO,A1)
【文献】特表2002-521415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0169524(US,A1)
【文献】Jpn. J. Rehabil. Med.,2010年,Vol. 47,p.620-625
【文献】「2 BASIC PROPERTIES OF BENTONITE」,Long-Term Stability of Bentonite A Literature Review,2010年,p.15-26,<https://inis.iaea.org/collection/NCLCollectionStore/_Public/43/066/43066643.pdf?r=1>
【文献】Nanomaterials,2020年01月,Vol. 10, No. 2,#230
【文献】Journal of Physics: Condensed Matter,2007年,Vol. 19, No. 28,#285216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61P 1/00-43/00
A23L 33/00-33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイトを有効成分として含み、
前記ベントナイトは、層間イオンがナトリウムイオン(Na)に置換されたベントナイト、層間イオンがマグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたベントナイト、及び層間イオンがカリウムイオン(K)に置換されたベントナイトからなる群から選択されるいずれか1つである、
代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記代謝性骨疾患は、
骨粗しょう症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨萎縮(bone atrophy)、線維性骨異形成症(fibrousdysplasia)、パジェット病(Paget's disease)、高カルシウム血症(hypercalcemia)、骨の腫瘍性破壊(neoplasticdestruction)、ガン(cancer)に関連する骨吸収疾病、骨溶解(osteolysis)、又は、骨関節炎(osteoarthritis)もしくは関節リウマチ(rheumatoidarthritis)に伴う代謝性骨疾患であることを特徴とする、
請求項1に記載の代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記層間イオンがナトリウムイオン(Na)に置換されたベントナイト、層間イオンがマグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたベントナイト、または層間イオンがカリウムイオン(K)に置換されたベントナイトは、破骨細胞の骨吸収を抑制するとともに、造骨細胞の骨生成を促進することを特徴とする、
請求項1に記載の代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ベントナイトは、SiO50~70重量%、Al10~25重量%、Fe1~5重量%、MgO3~6重量%、とを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ベントナイトは、CaO0~5重量%、KO0~5重量%、及びNaO0~5重量%からなる群から選択される一つ以上をさらに含むことを特徴とする、
請求項4に記載の代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項6】
ベントナイトを有効成分として含み、
前記ベントナイトは、層間イオンがナトリウムイオン(Na)に置換されたベントナイト、層間イオンがマグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたベントナイト、及び層間イオンがカリウムイオン(K)に置換されたベントナイトからなる群から選択されるいずれか1つである、
代謝性骨疾患の予防又は改善用の健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物に関し、より詳細には、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨萎縮(bone atrophy)のような代謝性骨疾患の予防又は治療に使用し得る組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代謝性骨疾患は、身体内で骨を生成する役割を担っている造骨細胞(osteoblast)と、骨を破壊する役割を担っている破骨細胞(osteoclast)との間の活性にバランスが崩れて発生することになる。破骨細胞は、骨が生成する過程において、不要になった骨組織を破壊又は吸収する多核巨細胞である。成熟した破骨細胞は、多核細胞であり、造血幹細胞に由来する。間葉系幹細胞から分化した造骨細胞は、約34ヶ月間生存して活性化された破骨細胞が、古い骨を分解させた場所で新しい骨を作る。数多くの造骨細胞が骨の基質を作り、徐々に基質が無機質化しながら骨形成が仕上がる。以後、造骨細胞の約70%以上は死滅し、一部は、骨細胞(osteocyte)及び骨ライニング細胞(bone lining cell)に分化して生存する。骨の量は、破骨細胞と造骨細胞のバランスによって保持されるため、破骨細胞に対して重要な役割を担っている分子を標的とした治療剤の開発が大事である。すなわち、骨を吸収する破骨細胞の活性が増加するようになると、骨の分解が促進し、骨がもろく折れやすい骨粗しょう症のような病気が生じるようになるため、破骨細胞の活性を調節できる因子が骨疾患の治療剤として研究されている。
【0003】
例えば、骨減少症(osteopenia)は、骨粗しょう症の前段階を称し、発生の原因は、過度な破骨細胞の吸収(resorption)及び形成に起因すると知られている。リウマチで現れる骨萎縮症(bone atrophy)も、過度な破骨細胞の吸収に関係ある。線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)は、破骨細胞の作用が盛んに現れる。パジェット病(Paget disease)と高カルシウム血症(hypercalcemia)は、破骨細胞の機能抑制による治療剤が用いられている。過度な破骨細胞の生成及び/又は活性を抑制すれば、骨の腫瘍性破壊(neoplstic bone destruction)を抑制することができ、骨溶解(osteolysis)と骨関節炎(oseteoarthritis)は、破骨細胞の吸収増加又は破骨細胞の分化増加によって発生する。
【0004】
一方、骨へ入ってきたガン細胞は、骨周りの微細環境で増殖して、破骨細胞や造骨細胞の活性を刺激することにより、溶骨型骨転移に進行するか、造骨型骨転移に進行するかを決定すると知られている。血管に沿って回るうちに骨に定着したガン細胞は、PTHrP(parathyroid hormonerelatedprotein)、インターロイキン(interleukin;IL)-1、IL-6、IL-8、それからIL-11のような骨溶解因子(osteolytic factors)を分泌する。分泌された因子は、造骨細胞におけるOPG(osteoprotegerin)の発現を減らし、RANKL(receptor activator of NF-kB ligand)の発現を増加させる。増加したRANKLは、破骨前駆細胞のRANKと結合して、多数の破骨前駆細胞を成熟化させ、結局は、過多な骨吸収による骨破壊を引き起こす。
【0005】
一方、粘土鉱物は、粒子と構造の特性上、活性表面積が広くて、各種成分の吸着と放出によって物理化学的な性質を変化させると知られている。かかる粘土鉱物のうち、ベントナイト(bentonite)は、層状ケイ酸塩鉱物の一つであって、火山灰の変換により生成され、主にスメクタイト(smectite)鉱物で構成されており、モンモリロナイト(monmorillonite)鉱物の粘土を主成分とする。したがって、主にベントナイトは、不純なモンモリロナイトを言い、韓国食品添加物公定書では、天然で算出するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムと定義している。
【0006】
現在、国内では、このような粘土鉱物に対する医薬用原料への活用は低い方であり、ベントナイトは、国内に相当量が埋蔵されているものの、石英、長石、雲母、鉄酸化物、シリカ水和物等の不純鉱物を含有しており、モンモリロナイトの含量が低くて、主に鋳物砂、粘結剤、土木用等に限って使用されている。しかしながら最近、鉱物資源を医薬品の原料化とするため鉱物資源の医薬品用基礎物質の開発が図られており、特に、ベントナイトは、今後、高付加鉱物資源としての活用が望まれて、脚光を浴びている。
【0007】
従来、ベントナイトを含む骨疾患治療用組成物があったが、分解を促進して薬剤を放出できるように、薬学組成物に添加される崩壊剤として使用されるか、抽出物の濁り度、色相等を調節する添加剤として使用されており、ベントナイト自体が骨疾患を治療できる有効成分としては使用されていなかった。
【0008】
この点、本発明者らは、ベントナイト自体の骨形成、骨折の回復に必ず必要な造骨細胞の分化の促進及び破骨細胞の分化の効果に関する研究を行い、破骨細胞の骨吸収を抑制するとともに、造骨細胞の骨生成を促進するベントナイトを有効成分として含む組成物を製造することで、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は改善用の健康機能食品を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、ベントナイト自体の代謝性骨疾患の治療効能を利用した代謝性骨疾患を治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような目的を解決するために、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物を提供する。
【0013】
前記ベントナイトは、層間イオンが未置換されたベントナイト、層間イオンがナトリウムイオン(Na)に置換されたベントナイト、層間イオンがマグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたベントナイト、及び層間イオンがカリウムイオン(K)に置換されたベントナイトからなる群から選択されるいずれかであってもよい。
【0014】
前記代謝性骨疾患は、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨萎縮(bone atrophy)、線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)、パジェット病(Paget’s disease)、高カルシウム血症(hypercalcemia)、骨の腫瘍性破壊(neoplastic destruction)、ガン(cancer)に関連する骨吸収疾病、骨溶解(osteolysis)、骨関節炎(oseteoarthritis)又は関節リウマチ(rheumatoid arthritis)であってもよい。
【0015】
前記ベントナイトは、破骨細胞の骨吸収を抑制するとともに、造骨細胞の骨生成を促進することができる。
【0016】
前記ベントナイトは、SiO50~70重量%、Al10~25重量%、Fe1~5重量%、MgO3~6重量%、とを含んでいてもよい。
【0017】
前記ベントナイトは、CaO0~5重量%、KO0~5重量%、及びNaO0~5重量%からなる群から選択される一つ以上をさらに含んでいてもよい。
【0018】
また、本発明は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は改善用の健康機能食品を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるベントナイトを有効成分として含む薬学的組成物又は健康機能食品は、破骨細胞の分化及び骨吸収を抑制するとともに、造骨細胞の分化及び骨形成を増進させるため、骨粗しょう症、骨軟化症、骨減少症、骨萎縮のような代謝性骨疾患の予防、改善又は治療に有用に利用され得る。
【0020】
また、本発明に従って、ベントナイト自体を骨疾患治療の有効成分として用いる場合、従来、骨疾患治療用組成物の添加剤、崩壊剤としてベントナイトを用いるよりも省コストできる、有利な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例によるベントナイト試料をMG-63造骨細胞に処理した後、MTT assay分析の結果を比較したグラフ。
図2】本発明の一実施例によるベントナイト試料をMG-63造骨細胞に処理した後、アリザリンレッドS染色の結果を比較したグラフ。
図3】本発明の一実施例によるベントナイト試料をMG-63造骨細胞に処理した後、ALP活性に及ぼす影響を比較したグラフ。
図4】本発明の一実施例によるベントナイト試料をRAW264.7破骨細胞に処理した後、MTT assay分析の結果を比較したグラフ。
図5】本発明の一実施例によるベントナイト試料のRAW264.7細胞におけるTRAP活性に及ぼす効果を比較するグラフ。
【発明を実施するための最善の形態】
【0022】
本発明は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物を提供する。
【0023】
前記ベントナイトは、層間イオンが未置換されたベントナイト、層間イオンがナトリウムイオン(Na)に置換されたベントナイト、層間イオンがマグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたベントナイト、及び層間イオンがカリウムイオン(K)に置換されたベントナイトからなる群から選択されるいずれかであってもよい。
【0024】
前記代謝性骨疾患は、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨萎縮(bone atrophy)、線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)、パジェット病(Paget’s disease)、高カルシウム血症(hypercalcemia)、骨の腫瘍性破壊(neoplastic destruction)、ガン(cancer)に関連する骨吸収疾病、骨溶解(osteolysis)、骨関節炎(osteoarthritis)又は関節リウマチ(rheumatoid arthritis)であってもよい。
【0025】
前記ベントナイトは、破骨細胞の骨吸収を抑制するとともに、造骨細胞の骨生成を促進することができる。
【0026】
前記ベントナイトは、SiO50~70重量%、Al10~25重量%、Fe1~5重量%、MgO3~6重量%、とを含んでいてもよい。
【0027】
前記ベントナイトは、CaO0~5重量%、KO0~5重量%、及びNaO0~5重量%からなる群から選択される一つ以上をさらに含んでいてもよい。
【0028】
また、本発明は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は改善用の健康機能食品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
下記の説明では、本発明の実施例を理解するのに必要な部分だけ説明し、その他部分の説明は、本発明の要旨を曖昧にしない範囲で省略することにご留意ください。
【0030】
以下に説明する本明細書及び請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的或いは辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自己の発明を最も最善な方法により説明するために用語の概念として適宜定義し得る原則に即して、本発明の技術思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載の実施例と図面に示された構成は、本発明の好ましい実施例に過ぎないし、本発明の技術思想をすべて代弁するものではないため、本出願時点において、これらに取り替えられる様々な均等物と変形例があり得ると理解しなければならない。
【0031】
以下、本発明を詳説する。
【0032】
本発明は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物を提供する。
【0033】
本発明における用語「予防」とは、本発明によるベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物の投与により、代謝性骨疾患の発病を阻害するか、引き延ばすあらゆる行為を意味する。
【0034】
本発明における用語「治療」とは、本発明によるベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物の投与により、代謝性骨疾患の症状が好転するか、得に変更されるあらゆる行為を意味する。
【0035】
本発明の組成物による改善、予防又は治療対象病気である「代謝性骨疾患」とは、破骨細胞の過多な生成及び/又は活性によって現れる状態又は病気を意味するものであり、骨量が低下する疾患を含む。前記骨量低下疾患とは、骨密度の低下、骨組織の軟化等の症状を伴う骨量の低下が現れる状態又は疾患を意味する。前記代謝性骨疾患の非制限的な例としては、骨粗しょう症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨萎縮(bone atrophy)、線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)、パジェット病(Paget’s disease)、高カルシウム血症(hypercalcemia)、骨の腫瘍性破壊(neoplastic destruction)、ガン(cancer)に関連する骨吸収疾病、骨溶解(osteolysis)、骨関節炎(osteoarthritis)又は関節リウマチ(rheumatoid arthritis)等がある。
【0036】
前記「骨粗しょう症(osteoporosis)」は、骨組織の石灰が減少して骨の緻密質がもろく、それにより、骨髄腔が広くなる状態であって、症状が進めるにつれて骨が弱くなるため、弱い衝撃でも骨折しやすい。骨量は、遺伝的要因、栄養攝取、ホルモンの変化、運動及び生活習慣の差異等、様々な要因により影響されて、骨粗しょう症の原因としては、加齢、運動不足、低体重、喫煙、低カルシウム食餌、閉経、卵巣切除等が知られている。一方、個人差はあるものの、白人よりは黒人が、骨吸収水準(bone resorption level)が低くて、骨量がさらに高く、大概に骨量は、14~18歳に最も高く、老後には1年に約1%ずつ減少する。特に、女性の場合、30歳以後から骨減少が進行し続き、閉経期に至ると、ホルモンの変化によって骨減少が急激に進行される。すなわち、閉経期に至ると、エストロゲン濃度が急速に減少するが、このとき、IL-7(interleukin-7)によるように、Bリンパ球(Blymphocyte)が多量生成されて、骨髓(bone marrow)にB細胞前駆体(pre-B cell)が蓄積され、これにより、IL-6の量が増加して、破骨細胞の活性を増加させるため、結局、骨量が減少するようになる。
【0037】
前記「骨軟化症」は、ビタミンDが足りないか、カルシウムを大量に排泄する腎臓疾患がある場合、骨にカルシウムが混ざらないで、軟骨が生じてしまう状態であって、骨が曲がる症状を意味する。
【0038】
前記「骨減少症」は、骨粗しょう症になる前の状態を意味し、骨がもろくなり続き、軽くなりながら、穴が開く前までの状態を意味する。
【0039】
本発明において、前記ベントナイトは、スメクタイト系粘土鉱物の一つであって、他に指定しなければ、モンモリロナイト鉱物を含む。
【0040】
前記ベントナイト(Bentonite)は、モンモリロナイト(Montmorillonite)を主な構成鉱物とする粘土鉱物の一種であって、モンモリロナイトとベントナイトという名は、フランスのモンモリヨン地方と米国ワイオミング州フォートベントン地方に由来したものであり、モンモリロナイトは、鉱物学的分類におけるセミグループに属する鉱物であって、Si-4面体層とAl-8面体層が2:1形態の結晶構造を有する微細な集合体である。
【0041】
ベントナイトの層間に存在するカチオンの種類としては、Ca2+及びMg2+イオンがほとんどであり、Na、H、K等が少量存在するが、2価のカチオンは、1価のカチオンに比べて、4面体シリカ層との結合力が強くて、イオン交換能が小さく、よって、水と接触時、膨潤度が低く発揮する。
【0042】
本発明の一実施例におけるベントナイトは、層間イオンが未置換されたベントナイトを用いるか、層間イオンがナトリウムイオン(Na)に置換されたベントナイト、マグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたベントナイト、カリウムイオン(K)に置換されたベントナイトからなる群から選択されるいずれかを用いることができる。
【0043】
従来、骨疾患治療用組成物に用いられたベントナイトは、薬物放出調節剤、崩壊剤、添加剤等として用いられており、前記組成物に用いられたベントナイトは、カルシウム系ベントナイトであった。しかし、本発明者らは、ベントナイト自体の骨疾患治療効果を見出しており、カルシウム系ベントナイトのみならず、層間イオンがナトリウムイオン(Na)に置換されたベントナイト、マグネシウムイオン(Mg2+)に置換されたベントナイト、カリウムイオン(K)に置換されたベントナイトも、カルシウム系ベントナイトと比較して類似であるか、それよりも優れた骨疾患治療効果があることを確認した。
【0044】
また、薬物放出調節剤、崩壊剤、添加剤等としてベントナイドを用いることに比べて、ベントナイト自体を骨疾患治療剤の有効成分として用いる場合、省コストできるため、経済的効果が望まれる。
【0045】
本発明における前記ベントナイトは、SiO50~70重量%、Al10~25重量%、Fe1~5重量%、MgO3~6重量%、とを含むのが好ましい。また、前記ベントナイトは、CaO0~5重量%、KO0~5重量%、及びNaO0~5重量%からなる群から選択される一つ以上をさらに含んでいてもよい。
【0046】
本発明の一実施例による薬学的組成物は、破骨細胞の骨吸収を抑制するとともに、造骨細胞の骨生成を促進することを特徴とする。
【0047】
本発明の組成物は、造骨細胞の分化又は活性を促進させ得る。
【0048】
本発明における用語「造骨細胞(osteoblast)」とは、間葉系幹細胞から分化して生成される細胞であって、骨質を作って骨密度を増加させる役割を担い、時には、造骨細胞の活性が過度に増加すると、骨密度が増加して、骨の奇形や骨化石症等を引き起こす。
【0049】
本発明の一実施例において、ベントナイトを有効成分として含む薬学的組成物を造骨細胞に処理すると、造骨細胞の分化初期段階において、分化標識因子であるアリザリンレッドS(Alizarin red S)の活性が著しく増加することが確認できた(実験例1-2、図2)。また、本発明の一実施例において、ベントナイトを有効成分として含む薬学的組成物を造骨細胞に処理すると、骨形成の指標となる酵素であるALP(alkaline phosphatase)の活性が増加することから、造骨細胞の分化を促進させることが確認できた(実験例1-3、図3)。
【0050】
これらの結果は、本発明の組成物が細胞水準において造骨細胞の分化を促進させ得ることを立証するだけでなく、実際の動物においても、骨密度を増加させることを示唆することであり、これにより、本発明の組成物が造骨細胞の分化又は活性を促進して、骨粗しょう症のような代謝性骨疾患の予防又は治療に効果あることを裏付けることである。
【0051】
本発明における用語「破骨細胞(osteoclast)」とは、マクロファージ前駆体(macrophage precursor)から派生する細胞であって、破骨細胞前駆細胞は、マクロファージコロニー刺激因子(macrophage colony stimulating factor,M-CSF)、NF-κBの受容体活性因子リガンド(RANKL)等によって破骨細胞に分化し、融合によって多核破骨細胞(multinucleated osteoclast)を形成する。破骨細胞は、αvβ3インテグリン(integrin)等を介して骨(bone)に結合して、酸性環境を組成する一方、各種コラゲナーゼ(collagenase)及びプロテアーゼ(protease)を分泌して、骨吸収(bone resorption)を引き起こす。破骨細胞は、分化し切れた細胞に増殖ぜず、約2週間の寿命が終わると、細胞死滅(apotosis)を引き起こす。
【0052】
本発明の一実施例では、破骨細胞に分化した骨髓細胞に、ベントナイトを有効成分として含む薬学的組成物を投与した後、破骨細胞の分化標識因子であるTRAP(tarrateresistant acid phosphate)染色を施した結果、TRAP活性を濃度依存的に阻害することを確認した(実験例2-2、図5)。このように、本発明によるベントナイトを有効成分として含む組成物は、TRAP活性の抑制によって破骨細胞の分化を効果的に抑制するため、破骨細胞の活性増加による骨粗しょう症のような代謝性骨疾患を予防又は治療することができる。
【0053】
したがって、本発明の組成物は、骨代謝性疾患の予防又は治療に使用され得、特に、造骨細胞及び破骨細胞の不均衡により引き起こされる骨に関連する疾患に制限なく使用することができる。
【0054】
本発明の薬学的組成物は、有効成分のほか、薬剤学的に許容される担体を含んでいてもよい。このとき、薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常利用されるものとしてラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイル等を含むものの、これに限定されるものではない。また、前記成分のほか、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤等をさらに含んでいてもよい。
【0055】
本発明の薬剤学的組成物は、目的の方法によって経口投与するか非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は局所に適用)することができ、投与量は、患者の状態及び体重、病気の度合い、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるものの、当業者にとって適宜選択することができる。
【0056】
本発明の薬剤学的組成物は、薬学的に有効な量に投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスクの割合であって、疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。本発明において、他の薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与され得るし、従来の治療剤とは順次又は同時に投与され得、単一又は多重投与されてもよい。前記した要素をいずれも考慮して、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与するのが大事であり、これは当業者にとって容易に決定することができる。
【0057】
さらに一つの様態として、本発明は、前記薬学的組成物を個体に投与する段階を含む代謝性骨疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0058】
本発明における用語「個体」とは、病気の予防、調節又は治療方法を要する対象を意味し、より具体的には、人間又は非人間である霊長類、マウス(mouse)、鼠(rat)、犬、猫、馬及び牛等の哺乳類を意味する。
【0059】
さらに一つの様態として、本発明は、ベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は改善用の健康機能食品に関する。
【0060】
本発明における用語「健康機能食品」とは、健康補助の目的で特定成分を原料とするか、食品原料に入っている特定成分を抽出、濃縮、精製、混合等の方法により製造、加工した食品を言い、前記成分によって生体防御、生体リズムの調節、病気の防止と回復等、生体調節機能を生体に対して十分発揮し得るように設計して加工された食品を言うものであり、前記健康食品用組成物は、病気の予防及び病気の回復等に係る機能を行うことができる。
【0061】
また、本発明の組成物を使用し得る健康機能食品の種類には制限がない。さらに、本発明のベントナイトを有効成分として含む組成物は、当業者の選択によって健康機能食品に含有され得る好適なその他補助成分と公知の添加剤を混合して製造することができる。添加し得る食品の例としは、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲み物、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤等、とがあり、本発明による抽出物を主成分として製造した汁、お茶、ゼリー及びジュース等に添加して製造することができる。
【0062】
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をより詳説する。しかし、これら実施例は、本発明を例示的に実施するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1~5:ベントナイト試料の製造
粘土鉱物別に骨生成及び骨吸収の活性度を測定するために、ベントナイトの乾燥粉末を受けて0.5%DMSOに溶かした後、さらに培養培地又は3次蒸留水に希釈して実験に使用した。
【0064】
下記の表1に記載したように、韓国の浦項、慶州地域のベントナイト鉱山で採取したベントナイト(Bgp35b-b、Bgp46b-b)とBgp35b-bの層間イオンをそれぞれNa、Mg2+又はKに置換して製造したベントナイトを実験に使用した。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例2:粘土鉱物の成分分析
前記実施例1~5の粘土鉱物を成分分析機(EDS)によって成分分析を行っており、その結果を下記の表2に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例3:細胞の準備
実施例3-1.造骨細胞の準備
本発明に使用したMG-63 human osteoblastic cell(骨芽細胞)は、人から抽出した造骨細胞(Human osteoblast-like cells;MG-63,KCLB 21427,Korean Cell Line Bank,Seoul national university college of medicine,Korea)を温度37℃、湿度100%と、5%のCO濃度の環境で培養した。10%の牛胎児血清(FBS;Hyclone)と1%の抗生剤を含むDulbeco’s modified eagle’s minimum essential medium(DMEM;Hyclone,Atlanta,GA)培地で培養して、2日に一回ずつ新しい培地に入れ替えた。
【0069】
実施例3-2.破骨細胞の準備
本発明に使用したRAW264.7細胞は、Korean Cell Line Bankより分譲されて、温度37℃、湿度100%と、5%のCO濃度の環境で培養した。10%の牛胎児血清(FBS;Hyclone)と1%の抗生剤を含むDulbeco’s modified eagle’s minimum essential medium(DMEM;Hyclone,Atlanta,GA)培地で培養して、2日に一回ずつ新しい培地に入れ替えた。
【0070】
実験例1:ベントナイトが造骨細胞の分化の促進に及ぼす影響
実験例1-1.細胞毒性実験
前記実施例3-1で準備した造骨細胞の生存率をMTT[3-(4,5-dimethylthylthiazole-2-yl)-2,5-diphenyl-tetrazolium bromide]還元方法を利用して測定した。MTT溶液は、生きている細胞におけるミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ(dehydrogenases)によってホルマザン(formazan)を形成して、細胞の生存有無を確認することができた。
【0071】
MG-63細胞に実施例1~5のベントナイト試料をそれぞれ250、500、1000μg/mLで処理し、96well plateに5×10cells/wellで、37℃で24時間培養した。24時間が経った後、各ウェルに20μlのMTT溶液を添加して、さらに2時間培養した後、培養液を取り除き、100μlのジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)を添加して、570nmで吸光度を測定し、何も処理していない対照群を100%に換算して、その値を計算した。
【0072】
図1は、本発明の一実施例によるベントナイト試料をMG-63造骨細胞に処理した後、MTT assay分析の結果を比較したグラフである。
【0073】
図1を参照すると、実施例1~5のベントナイト試料を処理した結果、細胞生存率が75%程と減少しており、これは細胞毒性が若干増加したからであると判断される。
【0074】
また、実施例1~5のベントナイト試料は、250、500μg/mLの濃度で処理した場合、対照群に比べて、75%以上の細胞生存率を示したが、1000μg/mLの濃度で処理した場合は、50%未満の細胞生存率を示し、濃度によって造骨細胞に対する細胞生存率が相違することを示した。
【0075】
実験例1-2:無機化分析
96well plateで14日間処理した後、アリザリンレッド(Alizarin Red;Sigma Chemical,St.Louis,MO,USA)染色を利用して無機化度を測定した。無機化(mineralization)は、骨成形の間に起こる骨化(ossification)の一特徴である。
【0076】
MG-63細胞に実施例1~5のベントナイト試料をそれぞれ250、500、1000μg/mLで処理して、70%(v/v)エタノールで1時間固定した後、イオン化水(pH4.2)中、室温で1時間、40mMアリザリンレッドSで染色した。アリザリンレッドS溶液を吸出させて取り除いた後、オービタルロテーター(orbital rotator)上で、攪拌した細胞をPBS中で15分間攪拌した。次いで、細胞を新鮮なPBSで1回洗浄し、10mMリン酸ソジウム(pH7.0)中で10%(w/v)セチルピリジニウムクロリドで15分間脱色させた。抽出した菌株を95well plateに移し、マイクロプレートリーダーを利用して、562nmでの吸収能を測定し、何も処理していない対照群を100%に換算して、その値を計算した。
【0077】
図2は、本発明の一実施例による実施例1~5のアリザリンレッドS染色の結果を比較したグラフである。
【0078】
図2を参照すると、造骨細胞であるMG-63における実施例1~5によるベントナイトを処理時、前の濃度を処理した群における無機質作用が増加することを確認しており、処理した濃度が増加するほど、無機質作用がさらに大きく増加することが確認できた。これらの結果から、ベントナイトが造骨細胞であるMG-63細胞株における無機窒化作用を増進させる結果を示した。
【0079】
実験例1-3:ALP活性の測定
MG-63細胞におけるALP活性を測定することにより、造骨細胞におけるベントナイトが骨密度を増加させることを確認した。造骨細胞は、細胞分化時、特異にAlkaline phosphatase(ALP)活性を示すため、ALP活性を測定することにより、造骨細胞の細胞分化の有無と度合いを確認することができる。ALPがp-nitrophenylphosphateをp-nitrophenolとphosphateに分解させることを利用して、405nmでの対照群の吸光度に対する各々の物質の吸光度の比に計算して、ALP活性を測定することにより、造骨細胞に対する影響を観察した。
【0080】
細胞を96well plateに5×10cells/wellで24時間培養した。実施例1~5のベントナイト試料をそれぞれ250、500、1000μg/mLでウェルに加えて、3日間培養し続けた。
【0081】
細胞を生理食塩水で3回洗浄した後、0.1%Triton X-100、1.5mM MgCl、及び15mMp-ニトロフェニルリン酸を含有するpH10の0.1M NaHCO-NaCO緩衝液中で37℃で1時間培養して、細胞活性を測定することにより、好適な処理期間後、細胞中のアルカリ性ホスファターゼ活性を分析した。1M NaOHを加えて反応を中断させた後、405nmでの吸収能を測定した。リン酸塩の活性単位は、時間当たり1μmのp-ニトロフェノールが遊離する酵素活性の量と定義した。何も処理していない対照群を100%に換算して、その値を計算した。
【0082】
図3は、本発明の一実施例によるベントナイト試料をMG-63造骨細胞に処理した後、ALP活性に及ぼす影響を比較したグラフである。
【0083】
図3を参照すると、ベントナイトは、骨細胞における有意にALPの活性を増加させ、このような活性増加が濃度依存的であることが分かる。骨細胞におけるALP活性の増加から、造骨細胞が活発に分化することが分かる。よって、ベントナイトは、骨粗しょう症、骨減少症のような骨疾患に効果的であることが分かる。
【0084】
実験例2:ベントナイトの破骨細胞での骨分化向上の効果の確認
実験例2-1:細胞毒性実験
前記実施例3-2において準備した破骨細胞の生存率をMTT[3-(4,5-dimethylthiazole-2-yl)-2,5-diphenyl-tetrazolium bromide]還元方法を利用して測定した。MTT溶液は、生きている細胞におけるミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ(dehydrogenases)によってホルマザン(formazan)を形成して、細胞の生存有無を確認することができた。
【0085】
細胞毒性を確認するために、RAW264.7細胞を96well plateに5×10cells/wellで、37℃で培養し、実施例1の試料1~5をそれぞれ250、500、1000μg/mLで処理して、24時間培養した。24時間が経った後、各ウェルに20μlのMTT溶液を添加して、さらに2時間培養した後、培養液を取り除き、100μlのジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)を添加して、570nmにおける吸光度を測定し、対照群を100%に換算して、その値を計算した。
【0086】
図4は、本発明の一実施例によるベントナイト試料をRAW264.7破骨細胞に処理した後、MTT assay分析の結果を比較したグラフである。
【0087】
図4を参照すると、実施例1~5のベントナイト試料を処理した結果、細胞生存率が75%程と減少しており、これは細胞毒性が若干増加したからであると判断される。
【0088】
また、実施例1~5のベントナイト試料は、250、500μg/mLの濃度で処理した場合、対照群に比べて75%以上の細胞生存率を示したが、1000μg/mLの濃度で処理した場合は、50%未満の細胞生存率を示し、濃度によって造骨細胞に対する細胞生存率が相違することを示した。
【0089】
実験例2-2:TRAP-陽性多核細胞形成の抑制実験
破骨細胞の分化時に発現するTRAPタンパク質の度合いを染色によって確認し、RAW264.7細胞の破骨細胞の分化に対するベントナイトの影響を測定した。
【0090】
RAW264.7細胞を96well plateに5×10cells/wellとなるように入れて、24時間、37℃、CO培養器で付着(pre-incubation)させた後、分化誘導培地(50ng/ml receptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL))と共に、実施例1~5のベントナイト試料をそれぞれ250、500、1000μg/mLの濃度で処理して、処理した。計5日間培養しており、培地を取り除いた後、500ulPBS(pH 7.4)で細胞を1回洗浄し、3.5%ホルムアルデヒド(formaldehyde)で10分、エタノール/アセトン(ethanol/acetone;1:1)で1分間処理して、細胞を固定させた。次に、500ulの蒸留水を用いて2回洗浄した後、白血球酸性リン酸化酵素キット(Leukocyte Acid Phosphatase Kit)387-A(Sigma、米国)を用いて、TRAP染色を行った。
【0091】
TRAP活性は、RAW264.7細胞を染色過程と同様に、エタノール/アセトンまで処理した後、蒸留水で2回洗浄し、10mM酒石酸ナトリウム(sodium tartrate)及び6mMp-NPP(p-nitrophenylphosphate)の含まれた50mMクエン酸バッファー(citrate buffer;pH4.5)を500ulずつ分注した後、37℃で1時間反応させた。反応後、酵素反応液を新しいプレートに100ulずつ分注して、0.1N NaOHで反応を中止した後、405nmで吸光度を測定した。
【0092】
図5は、本発明の一実施例によるベントナイト試料のRAW264.7細胞におけるTRAP活性に及ぼす効果を比較するグラフである。
【0093】
図5を参照すると、破骨細胞の分化マーカーであるTRAPの活性が実施例1~5いずれにおいて減少することが確認でき、ベントナイトが破骨細胞の形成とTRAP活性を抑制して、骨吸収を抑制することにより、骨疾患の予防又は治療に肯定的な効果が与えられることを確認した。
【0094】
今まで、本発明の一実施例によるベントナイトを有効成分として含む代謝性骨疾患の予防又は治療用の薬学的組成物に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から外れない限りでは、様々な実施の変形が可能であることは自明である。
【0095】
よって、本発明の範囲は、説明した実施例に限って定めてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものによって定めなければならない。
【0096】
すなわち、前述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならないし、本発明の範囲は、詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到するあらゆる変更又は変形した形態が本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によるベントナイトを有効成分として含む薬学的組成物又は健康機能食品は、破骨細胞の分化及び骨吸収を抑制するとともに、造骨細胞の分化及び骨形成を増進させるため、骨粗しょう症、骨軟化症、骨減少症、骨萎縮のような代謝性骨疾患の予防、改善又は治療に有用に利用され得る。
【0098】
また、本発明によってベントナイト自体を骨疾患治療の有効成分として用いる場合、従来の骨疾患治療用組成物の添加剤、崩壊剤としてベントナイトを用いることよりも省コストできる。
図1
図2
図3
図4
図5