(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】電池ボックス及びその製造方法、電池ボックスを含む装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20231215BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20231215BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20231215BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231215BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231215BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20231215BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20231215BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/291
H01M50/293
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/6554
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2022526105
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2020124129
(87)【国際公開番号】W WO2021093581
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】201911117959.2
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】常同▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼天明
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼睿▲チィー▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼智明
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107887550(CN,A)
【文献】特開2014-144033(JP,A)
【文献】特開2009-099322(JP,A)
【文献】特表2014-509286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 10/613
H01M 10/651
H01M 10/6554
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス本体と、前記ボックス本体内に収容された複数の電池セルと、防火板とを含む電池ボックスであって、
前記防火板は、少なくとも前記複数の電池セルに対応して前記ボックス本体の内部に設けられており、前記防火板は、エアロゾル発生剤を含むホットエアロゾル防火層を備え、
前記エアロゾル発生剤は、酸化剤、可燃剤及び接着剤を含み、前記ホットエアロゾル防火層は、さらに促進剤を含み、前記促進剤は、ニトロセルロース、セルロイド、硫黄及びショウノウのうちの1種類又は複数種類を含み、
前記防火板は、自身の厚さ方向で対向する両側にそれぞれ封入層が設けられることで、両側の前記封入層の間の構造に対して隔離と保護作用を果たし、空気中の水分が前記ホットエアロゾル防火層に浸透することを防止し、
前記ボックス本体内の前記エアロゾル発生剤の総質量Aと前記ボックス本体の自由空間体積Bとの間は、0.03g/L≦A/B≦8g/Lを満た
し、前記ボックス本体の自由空間体積Bは、前記ボックス本体内の空気体積である電池ボックス。
【請求項2】
前記総質量Aと前記自由空間体積Bとの間は、0.03g/L≦A/B≦4g/Lを満た
す請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項3】
前記総質量Aと前記自由空間体積Bとの間は、0.05g/L≦A/B≦1g/Lを満たす請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項4】
前記酸化剤は、硝酸塩、ハロゲン酸塩及び過ハロゲン酸塩のうちの1種類又は複数種類を含み、前記可燃剤は、有機可燃剤及び無機可燃剤のうちの1種類又は複数種類を含む請求項
1に記載の電池ボックス。
【請求項5】
前記硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸アンモニウムのうちの1種類又は複数種類から選択され、
及び/又は、
前記ハロゲン酸塩は、ハロゲン酸カリウム及びハロゲン酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択され、
及び/又は、
前記過ハロゲン酸塩は、過ハロゲン酸カリウム及び過ハロゲン酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択され、
及び/又は、
前記有機可燃剤は、固体有機化合物から選択され、
及び/又は、
前記無機可燃剤は、リン、硫黄、炭素系可燃剤及び金属系可燃剤のうちの1種類又は複数種類から選択され、
及び/又は、
前記接着剤は、天然樹脂及び合成樹脂のうちの1種類又は複数種類を
含む請求項
4に記載の電池ボックス。
【請求項6】
前記硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸アンモニウムのうちの1種類又は複数種類から選択され、及び/又は、
前記ハロゲン酸塩は、塩素酸カリウム及び塩素酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択され、及び/又は、
前記過ハロゲン酸塩は、過塩素酸カリウム及び過塩素酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択され、及び/又は、
前記有機可燃剤は、糖類から選択され、及び/又は、
前記無機可燃剤は、リン、硫黄、バイオマス炭、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム及びマグネシウムアルミニウム合金のうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、
前記接着剤は、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、シェラック、ロジン及びエポキシ樹脂のうちの1種類又は複数種類を含む請求項4に記載の電池ボックス。
【請求項7】
前記有機可燃剤は、セルロース、ニトロセルロース、コットン屑、紙屑、木屑、ラクトース、ショ糖及びイジトールのうちの1種類又は複数種類を含む請求項4に記載の電池ボックス。
【請求項8】
前記エアロゾル発生剤は、50~80重量部の前記酸化剤と、10~35重量部の前記可燃剤と、1~5重量部の前記接着剤とを含む請求
項4に記載の電池ボックス。
【請求項9】
前記エアロゾル発生剤は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム及び金属酸化物のうちの1種類又は複数種類を
含む請求項
4に記載の電池ボックス。
【請求項10】
前記エアロゾル発生剤は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は、炭酸塩及び炭酸水素塩のうちの1種類又は複数種類を含む請求項4に記載の電池ボックス。
【請求項11】
前記炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、前記炭酸水素塩は、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、前記金属ハロゲン化物は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム及び塩化ストロンチウムのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、前記金属酸化物は、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム及び酸化ストロンチウムのうちの1種類又は複数種類を含む請求項9に記載の電池ボックス。
【請求項12】
前記エアロゾル発生剤は、20重量部以下の前記添加剤を
含む請求項
9に記載の電池ボックス。
【請求項13】
前記エアロゾル発生剤は、5~15重量部の前記添加剤を含む請求項9に記載の電池ボックス。
【請求項14】
前記促進剤の前記ホットエアロゾル防火層における重量比は、0.5%~10%で
ある請求項
1に記載の電池ボックス。
【請求項15】
前記促進剤の前記ホットエアロゾル防火層における重量比は、1%~10%である請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項16】
前記促進剤の前記ホットエアロゾル防火層における重量比は、2%~5%である請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項17】
前記防火板は、さらに促進層を含み、前記促進層と前記ホットエアロゾル防火層とは互いに積層して設けられており、及び/又は、前記促進層が前記ホットエアロゾル防火層の少なくとも1つの側面に設けられており、
前記促進層は、ニトロセルロース、セルロイド、硫黄及びショウノウのうちの1種類又は複数種類を含む請求項
1に記載の電池ボックス。
【請求項18】
前記促進層の厚さは、10ミクロン~200ミクロンで
ある請求項
17に記載の電池ボックス。
【請求項19】
前記促進層の厚さは、50ミクロン~100ミクロンである請求項17に記載の電池ボックス。
【請求項20】
前記封入層の厚さは、10ミクロン~200ミクロンで
ある請求項
1に記載の電池ボックス。
【請求項21】
前記封入層の厚さは、50ミクロン~100ミクロンである請求項1に記載の電池ボックス。
【請求項22】
前記ボックス本体内部の前記防火板の数量は、1つ又は複数であり、前記ボックス本体内部の前記防火板の数量が複数である場合、各前記防火板は、少なくとも1つの前記電池セルに対応して設けられている請求項1~
21のいずれか一項に記載の電池ボックス。
【請求項23】
前記防火板は、少なくとも2つの隣接する前記電池セルの間に設けられており、
及び/又は、
前記防火板は、少なくとも1つの前記電池セルの自身の幅方向における少なくとも1つの側面に設けられており、
及び/又は、
前記防火板は、少なくとも1つの前記電池セルの防爆弁側に設けられており、
及び/又は、
前記防火板は、前記ボックス本体の内部側壁及び/又は内部天井壁に設けられている請求項1~
21のいずれか一項に記載の電池ボックス。
【請求項24】
隣接する2つの前記電池セルごとの間に緩衝仕切り板が設けられており、前記緩衝仕切り板に開口を有する収容部が設けられており、前記防火板が前記収容部に設けられている請求項1~
21のいずれか一項に記載の電池ボックス。
【請求項25】
前記収容部は、前記緩衝仕切り板の周辺領域に位置しており、前記防火板の面積は、前記緩衝仕切り板の面積の10%~40%で
ある請求項
24に記載の電池ボックス。
【請求項26】
前記収容部は、前記緩衝仕切り板の周辺領域に位置しており、前記防火板の面積は、前記緩衝仕切り板の面積の15%~30%である請求項24に記載の電池ボックス。
【請求項27】
前記防火板は、さらに前記ボックス本体の外側に設けられている請求項
24に記載の電池ボックス。
【請求項28】
請求項1~
27のいずれか一項に記載の電池ボックスを含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年11月15日に提出された、名称が「電池ボックス及び装置」の中国特許出願201911117959.2の優先権を主張し、該出願の全ての内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本願は、エネルギー蓄積装置の技術分野に属し、具体的には電池ボックス及びその製造方法、電池ボックスを含む装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在のエネルギー不足及び環境保護の状況がますます厳しくなる場合に、電気自動車は、開発されたホットスポットとなり、純電気自動車が従来の燃料油車を徐々に替えることは、将来の発展の傾向となっている。自動車の航続距離及び動力性能を保証するために、通常、複数の単電池を含む電池ボックスを採用している。ここで、電池ボックスに過充電、過放電、機械乱用、熱乱用等の状況が発生すると、電池ボックス内の単電池の熱暴走を引き起こす。熱暴走した単電池は、炎を引き起こし、ボックス本体の構造の破壊を引き起こし、さらに自動車の運転者と乗客の安全を脅かす恐れがある。電池ボックス内のある1つ又は複数の単電池が熱暴走し、さらにボックス内の熱暴走の広がりをさらに悪化させ、車両全体の安全性をさらに低下させる。電池ボックスの安全性能の向上は、電気自動車の広い応用に対して重要な影響を及ぼす。したがって、電池ボックスの安全性能をどのように向上させるかは早急に解決すべき重要な技術的問題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本願は、高い安全性能を有する電池ボックス及びそれを用いた装置を提供する。
【0005】
本願の第1の態様は、ボックス本体と、ボックス本体内に収容された複数の電池セルと、防火板とを含む電池ボックスであって、防火板は、少なくとも複数の電池セルに対応してボックス本体の内部に設けられており、防火板は、エアロゾル発生剤を含むホットエアロゾル防火層を備え、ここで、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は、0.03g/L≦A/B≦8g/Lを満たす電池ボックスを提供する。
【0006】
本願は、電池ボックスにエアロゾル発生剤を含む防火板を設け、且つボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間に特定の関係を満たすように制御することにより、電池ボックスの炎を効果的に消滅させることができ、且つ電池ボックスの炎の再燃を効果的に緩和することができるので、電池ボックスが高い安全性能を有する。
【0007】
また、防火板の設置は、電池ボックスの体積及び重量を明らかに増加させないので、電池ボックスが高い体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度を有することを保証することができる。
【0008】
本願の1つの態様の実施例において、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は、0.03g/L≦A/B≦4g/Lを満たす。いくつかの実施例において、0.05g/L≦A/B≦1g/Lである。A/Bの値が適切な範囲内にあることで、防火効率を向上させ、電池ボックスの安全性能を改善することができ、同時に電池ボックス内のガス発生量を適切にし、ボックス本体内のガス圧力が大きすぎてボックス本体構造を破壊することを防止することができる。
【0009】
本願の1つの態様の実施例において、エアロゾル発生剤は、酸化剤、可燃剤及び接着剤を含み、酸化剤は、硝酸塩、ハロゲン酸塩及び過ハロゲン酸塩のうちの1種類又は複数種類を含み、可燃剤は、有機可燃剤及び無機可燃剤のうちの1種類又は複数種類を含む。適切なエアロゾル発生剤を採用することにより、より効率的な防火効果を実現することができ、迅速に消火でき、さらに消火された炎の再燃を効果的に緩和することができる。
【0010】
本願の1つの態様の実施例において、硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸アンモニウムのうちの1種類又は複数種類から選択される。上記の酸化剤を採用することにより、より高い防火効果を得ることができる。
【0011】
本願の1つの態様の実施例において、ハロゲン酸塩は、ハロゲン酸カリウム及びハロゲン酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択される。いくつかの実施例において、ハロゲン酸塩は、塩素酸カリウム及び塩素酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含む。上記の酸化剤を採用することにより、より高い防火効果を得ることができる。
【0012】
本願の1つの態様の実施例において、過ハロゲン酸塩は、過ハロゲン酸カリウム及び過ハロゲン酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択される。いくつかの実施例において、過ハロゲン酸塩は、過塩素酸カリウム及び過塩素酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含む。上記の酸化剤を採用することにより、より高い防火効果を得ることができる。
【0013】
本願の1つの態様の実施例において、有機性可燃剤は、固体有機化合物から選択される。いくつかの実施例において、有機可燃剤は、糖類を含む。いくつかの実施例において、有機可燃剤は、セルロース、ニトロセルロース、コットン屑、紙くず、木屑、ラクトース、ショ糖及びイジトールのうちの1種類又は複数種類を含む。上記可燃剤を採用することにより、より優れた防火効果を得ることができる。
【0014】
本願の1つの態様の実施例において、無機可燃剤は、リン、硫黄、炭素系可燃剤及び金属系可燃剤のうちの1種類又は複数種類から選択される。いくつかの実施例において、無機可燃剤は、リン、硫黄、バイオマス炭、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム及びマグネシウムアルミニウム合金のうちの1種類又は複数種類を含む。上記可燃剤を採用することにより、より優れた防火効果を得ることができる。
【0015】
本願の1つの態様の実施例において、接着剤は、天然樹脂及び合成樹脂のうちの1種類又は複数種類を含む。いくつかの実施例において、接着剤は、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、シェラック、ロジン及びエポキシ樹脂のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0016】
本願の1つの態様の実施例において、エアロゾル発生剤は、50~80重量部の酸化剤と、10~35重量部の可燃剤と、1~5重量部の接着剤とを含むことができる。エアロゾル発生剤は、上記条件を満たすことで、電池ボックスがより優れた防火効果を得ることができる。
【0017】
本願の1つの態様の実施例において、エアロゾル発生剤は、添加剤をさらに含み、添加剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム及び金属酸化物のうちの1種類又は複数種類を含む。いくつかの実施例において、添加剤は、炭酸塩及び炭酸水素塩のうちの1種類又は複数種類を含む。エアロゾル発生剤に上記添加剤を添加することにより、防火効率をさらに向上させることができ、さらに消火応対を迅速且つ繰り返して行うことができ、電池ボックスの炎の再燃を防止することができる。
【0018】
本願の1つの態様の実施例において、炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、炭酸水素塩は、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、金属ハロゲン化物は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム及び塩化ストロンチウムのうちの1種類又は複数種類を含み、及び/又は、金属酸化物は、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム及び酸化ストロンチウムのうちの1種類又は複数種類を含む。エアロゾル発生剤に上記添加剤を添加することにより、防火効率をさらに向上させることができ、さらに電池ボックスの炎の再燃を防止することができる。
【0019】
本願の1つの態様の実施例において、エアロゾル発生剤は、20重量部以下の添加剤を含むことができる。いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤は、15重量部以下の添加剤を含むことができる。いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤は、5~15重量部の前記添加剤を含むことができる。エアロゾル発生剤に適量の添加剤を添加することで、防火板の防火効果を向上させることができる。
【0020】
本願の1つの態様の実施例において、ホットエアロゾル防火層は、さらに促進剤を含むことができ、促進剤は、ニトロセルロース、セルロイド、硫黄及びショウノウのうちの1種類又は複数種類を含む。防火板に促進剤を添加することで、防火板が防火を行うトリガ温度を低減させることができ、これにより防火作用をより迅速且つタイムリーに果たすことができる。
【0021】
本願の1つの態様の実施例において、促進剤の前記ホットエアロゾル防火層における重量比は0.5%~10%であってもよい。いくつかの実施例において、促進剤の前記ホットエアロゾル防火層における重量比は1%~10%である。いくつかの実施例において、促進剤の前記ホットエアロゾル防火層における重量比は2%~5%である。ホットエアロゾル防火層に適量の促進剤を含むことにより、防火作用をより迅速でタイムリーに果たすことができる。
【0022】
本願の1つの態様の実施例において、防火板は、さらに促進層を含むことができ、促進層とホットエアロゾル防火層とは互いに積層して設けられており、及び/又は、促進層はホットエアロゾル防火層の少なくとも1つの側面に設けられている。促進層は、ニトロセルロース、セルロイド、硫黄及びショウノウのうちの1種類又は複数種類を含む。防火板に促進層が含まれ、促進層が促進剤を含むことにより、防火板が防火を行うトリガー温度を低減させることができ、防火作用をより迅速且つタイムリーに果たすことができる。
【0023】
本願の1つの態様の実施例において、促進層の厚さは、10ミクロン~200ミクロンであってもよい。いくつかの実施例において、促進層の厚さは、50ミクロン~100ミクロンである。促進層の厚さは、適切な範囲内にあることで、防火作用をより迅速且つタイムリーに実現することができ、同時に電池ボックスが高いエネルギー密度を得ることができる。
【0024】
本願の1つの態様の実施例において、防火板は、自身の厚さ方向で対向する両側にそれぞれ封入層が設けられることで、両側の封入層の間の構造に対して隔離と保護作用を果たす。封入層の設置は、空気中の水分等がホットエアロゾル防火層及び選択可能な促進層に浸透することを防止することができることで、防火板の高い防火効率を確保することができる。
【0025】
本願の1つの態様の実施例において、封入層の厚さは、10ミクロン~200ミクロンであってもよい。いくつかの実施例において、封入層の厚さは、50ミクロン~100ミクロンである。封入層の厚さが適切であることで、防湿の役割を効果的に果たすことができ、同時にホットエアロゾル防火層が迅速に且つ効果的にトリガされることを確保することができる。
【0026】
本願の1つの態様の実施例において、ボックス本体内部の防火板の数量は、1つ又は複数であってもよく、ボックス本体の内部の防火板の数量が複数である場合、各防火板は、少なくとも1つの電池セルに対応して設けられている。
【0027】
本願の1つの態様の実施例において、防火板は、少なくとも2つの隣接する電池セルの間に設けられている。防火板は、熱暴走した電池セルに対して防火を行うことができ、ボックス本体内の熱暴走の広がりをより効果的に緩和することができる。
【0028】
本願の1つの態様の実施例において、防火板は、少なくとも1つの電池セルの自身の幅方向における少なくとも1つの側面に設けられている。防火板は、電池セルの表面に設けられているので、熱暴走した電池セルに対する防火作用を迅速にトリガーすることができ、ボックス本体内の熱暴走の広がりをより効果的に緩和することができる。
【0029】
本願の1つの態様の実施例において、防火板は、少なくとも1つの電池セルの防爆弁側に設けられている。電池セルの防爆弁側に防火板が設けられているので、該熱暴走の電池セルの定位置に対して直接、迅速に防火を行い、熱暴走の広がりを効果的に緩和し、消火効率を向上させることができる。
【0030】
本願の1つの態様の実施例において、防火板は、ボックス本体の内部側壁及び/又は内部天井壁に設けられている。ボックス本体の内部天井壁に設けられた防火板は、一般的に電池セルの防爆弁に対向しているので、該電池セルの熱暴走した単電池に対してより直接、迅速に防火を行い、熱暴走の広がりをより効果的に緩和し、消火効率を向上させることができる。
【0031】
本願の1つの態様の実施例において、隣接する2つの電池セルごとの間に緩衝仕切り板が設けられており、緩衝仕切り板に開口を有する収容部が設けられており、防火板が収容部に設けられている。電池サイクル及び蓄積過程において、電池セルの内部に膨張力が発生した場合、緩衝仕切り板は、緩衝作用を発揮し、電池セルの膨張による応力を効果的に放出し、電池の膨張効率を低下させる。防火板を緩衝仕切り板の収容部に設けることで、電池ボックスが高い体積エネルギー密度を有することに有利であるとともに、熱暴走した電池セルの定位置に対して防火を行うことができ、ボックス本体内の熱暴走の広がりをより効果的に緩和することができる。
【0032】
本願の1つの態様の実施例において、収容部は、緩衝仕切り板の周辺領域に位置しており、防火板の面積は、緩衝仕切り板の面積の10%~40%であってもよい。いくつかの実施例において、防火板の面積は、緩衝仕切り板の面積の15%~30%である。防火板が設けられた緩衝仕切り板は、上記条件を満たすことで、防火板の防火作用をより効果的に発揮し、同時に緩衝仕切り板が優れた緩衝作用を有することを確保することができる。
【0033】
本願の1つの態様の実施例において、防火板は、さらにボックス本体の外側に設けられてもよい。ボックス本体の全体の温度が上昇するか又は炎が溢れた場合、ボックス本体の外側の防火板がトリガーされ、ボックス本体の降温又は消火を行うことができる。ボックス本体の外側の防火板は、さらに電池ボックス外部の高温源又は火源による電池ボックスの熱暴走を緩和し、電池ボックスを総合的に火災から保護することができる。
【0034】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に係る電池ボックスを含む装置を提供する。本願の装置は、本願の電池ボックスを含むため、少なくとも高い安全性能を有することができる。
【0035】
本願の第3の態様は、ボックス本体、複数の電池セル、及びエアロゾル発生剤を含むホットエアロゾル防火層を備える防火板を取得するステップと、前記複数の電池セルを前記ボックス本体内に設けるステップと、前記防火板を、少なくとも前記複数の電池セルに対応して前記ボックス本体内に設けるステップと、を含み、ここで、前記ボックス本体内の前記エアロゾル発生剤の総質量Aと前記ボックス本体の自由空間体積Bとの間は、0.03g/L≦A/B≦8g/Lを満たす電池ボックスの製造方法を提供する。
【0036】
本願の製造方法は、電池ボックスにエアロゾル発生剤を含む防火板を設け、且つボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間に特定の関係を満たすように制御することにより、電池ボックスの炎を効果的に消滅させることができ、且つ電池ボックスの炎の再燃を効果的に緩和することができるので、電池ボックスが高い安全性能を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は、本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明された図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、さらに図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0038】
【
図1】本願の実施例が提供する装置の概略図である。
【
図2】本願の実施例が提供する電池ボックスの分解図である。
【
図3】本願の実施例が提供する防火板の分解図である。
【
図4】本願の実施例が提供する電池ボックス内の防火板の設置位置の概略図である。
【
図5】本願の実施例が提供する別の電池ボックス内の防火板の設置位置の概略図である。
【
図6】本願の実施例が提供する防火板を含む緩衝仕切り板の構造概略図である。
【
図7】本願の実施例が提供する別の防火板の分解図である。
【
図8】本願の実施例が提供する別の防火板の分解図である。
【
図9】本願の実施例が提供する別の防火板の分解図である。
【
図10】本願の実施例が提供する別の防火板の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本願の目的、技術案及び有益な技術効果をより明確にするために、以下に実施例を参照して、本願をさらに詳細に説明する。なお、本明細書で説明された実施例は、単に本願を解釈するために用いられ、本願を限定するものではない。
【0040】
なお、本明細書の説明において、特に明記のない限り、「若干」の意味は1つ以上であり、「複数/複数種類」の意味は2つ/2種類以上であり、「以上」、「以下」は番号そのものを含むものであり、「上」、「下」、「内」、「外」等の用語の指示する方位又は位置関係は、図面に基づいた方位又は位置関係であり、単に説明の便宜及び説明の簡略化のためのものであり、指された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構造し操作しなければならないことを指示するか又は暗示するものではないため、本願を限定するものと理解すべきではない。
【0041】
本願の説明において、特に明確な規定及び限定がない限り、「取り付け」、「連結」、「接続」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能に接続されてもよく、一体的に接続されてもよく、直接的に連結されてもよく、中間媒体を介して間接的に連結されてもよい。当業者にとって、具体的な状況に基づいて本願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0042】
簡略化のために、本明細書にはいくつかの数値範囲のみが明確に開示されている。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、又、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲端点間の各点又は単一の数値は、いずれも該範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、自身の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と明確に記載されていない範囲に組み合わせ、又は他の下限又は上限と明確に記載されていない範囲に組み合わせることができる。
【0043】
本願の上記発明の概要は、本願における各開示の実施の形態や各実現形態を記述することを意図するものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示する。全体の出願における複数の箇所で、一連の実施例により指導を提供し、これらの実施例は、様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、代表的なグループとして列挙し、網羅すると解釈すべきではない。
【0044】
本願の実施例は、電池ボックスを電源として採用する装置を提供する。装置は、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
図1は、一例としての装置1である。該装置1は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等の電動車両であってもよい。
図1に示すように、電動車両は、車両本体と電池ボックス2を含む。電池ボックス2は、車両本体に設けられている。車両本体には、電池ボックス2と電気的に接続された駆動モータが設けられている。電池ボックス2は、駆動モータに電気エネルギを供給する。駆動モータは伝動機構により車両本体上の車輪に接続され、これにより車両の走行を駆動する。選択可能に、電池ボックス2は車両本体の底部に設けられてもよい。
【0046】
電池ボックス2の安全性能は、装置に対し重要な意義を有する。したがって、本願の実施例は、高い安全性能を有する電池ボックス2を提供する。
図2を参照すると、電池ボックス2は、ボックス本体10と、ボックス本体10内に収容された複数の電池セル20と、防火板30とを含む。複数の電池セル20は、1つ以上の単電池21をそれぞれ含んでいる。
【0047】
防火板30は、少なくとも複数の電池セル20に対応してボックス本体10の内部に設けられている(
図2において破線で防火板30がボックス本体10内に位置することを示す)。
図3に示すとおり、防火板30は、エアロゾル発生剤を含有するホットエアロゾル防火層 310を備えている。ここで、ボックス本体10内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体10の自由空間体積Bとの間は、0.03g/L≦A/B≦8g/Lを満たす。
【0048】
「防火板30は、少なくとも複数の電池セル20に対応して設けられている」とは、該複数の電池セル20のうちの1つ又は複数の単電池21が熱暴走した場合、噴射された高温気流又は生成された炎が防火板30を加熱すると、防火板30が降温及び/又は消火作用を発揮することを指す。特に、防火板30の電池セル20に向かう方向での正面投影は、少なくとも部分的に電池セル20に投影されることを指す。
【0049】
ボックス本体10の自由空間とは、ボックス本体10が囲まれた空間内における、複数の電池セル20、防火板30及び他の部品等が占める空間以外の残りの空間を指す。該残りの空間の体積は、ボックス本体10内の空気体積であり、即ちボックス本体10の自由空間体積Bである。
【0050】
本願の実施例の電池ボックス2では、少なくともボックス本体10の内部に防火板30が設けられている。防火板30は、エアロゾル発生剤を含有するホットエアロゾル防火層310を含み、エアロゾル発生剤は酸化剤及び可燃剤を含む。ボックス本体10内のある1つ以上の単電池21に熱暴走が発生した場合、噴射された高温気流又は生成された炎が防火板30を加熱し、エアロゾル発生剤が熱量を吸収し且つ一定の温度に達した後に燃焼し、エアロゾルを生成する。エアロゾルは、二酸化炭素、水蒸気、さらに窒素ガス等の不活性ガスを含み、ボックス本体10内の酸素濃度を希釈することができ、消火に有利である。同時に、エアロゾルは、液体又は固体微粒子をさらに含み、微粒子は、体積が小さく且つ比表面積が大きい。微粒子は、電池の熱暴走による熱量を吸収することができ、電池ボックス2内の温度を低下させることに役立つ。特に、微粒子は、高温気流又は炎における活性基(例えばH・、OH・、O・等)を吸収し、これにより炎燃焼の反応鎖を切断し、消火効果をさらに向上させることができる。
【0051】
特に、本発明者は、ボックス本体10内のエアロゾル発生剤のgで計算された総質量Aとボックス本体10のLで計算された自由空間体積Bとの間が特定の関係を満たすように制御することにより、ボックス本体10内の炎を効果的且つ迅速に消滅させることができ、且つ電池ボックス2の炎の再燃を効果的に緩和することができ、電池ボックス2の安全性能を顕著に向上させることを意外にも見出した。
【0052】
また、エアロゾル発生剤の使用量が少ない。また、防火板30の設置は電池ボックスの体積及び重量を明らかに増加させない。したがって、本願は、さらに電池ボックス2が高い体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度を有することを保証することができる。
【0053】
説明の便宜上、電池ボックス2の消火パラメータK=A/Bを定義する。ここで、Kは、≧0.03g/L、≧0.07g/L、≧0.1g/L、≧0.15g/L、≧0.2g/L、≧0.25g/L、≧0.3g/L、≧0.4g/L、又は≧0.5g/Lであってもよい。また、Kは、≦8g/L、≦7g/L、≦6g/L、≦5g/L、≦4g/L、≦3g/L、≦2g/L、又は≦1g/Lであってもよい。電池ボックス2の消火パラメータKが適切であることで、電池ボックス2が高い防火効率を有することができ、電池ボックス2の安全性能を大幅に改善すると同時に、電池ボックス2が高い体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度を兼ね備えることができる。電池ボックス2の消火パラメータKが小さすぎると、消火作用を効果的に果たすことができない。
【0054】
いくつかの実施例において、0.03g/L≦K≦4g/Lである。例えば、0.04g/L≦K≦2g/L、0.05g/L≦K≦1g/L、0.06g/L≦K≦1g/L、0.1g/L≦K≦1g/L、0.2g/L≦K≦1g/L、0.3g/L≦K≦1g/L、又は0.3g/L≦K≦0.6g/Lである。適当な電池ボックス2の消火パラメータKにより、電池ボックス2が高い防火効率を有することができ、電池ボックス2の安全性能を大幅に改善すると同時に、電池ボックス2内のガス生成量を適切にし、ボックス本体10内のガスの圧力が大きすぎてボックス本体10の構造を破壊することを防止することができる。
【0055】
本願の実施例の電池ボックス2において、ボックス本体10は、複数の電池セル20及び関連部品を封止するために用いられる。ここで、ボックス本体10の構造及び形状は特に限定されず、当業者は需要に応じて選択又は設計を行うことができる。
【0056】
例として、
図2に示すように、ボックス本体10は、ボックスカバー11及びボックス底座12を含むことができる。ボックスカバー11は、トッププレート及びトッププレートに接続されたサイドプレートを含み、トッププレートとサイドプレートは囲んで開口を有するカバー状体を形成している。ボックスカバー11は、電池セル20を収容するための密閉空間を形成するように、ボックス底座12を被せて設けられる。複数の電池セル20は、ボックス底座12に固定され、ボックスカバー11は、ボックス底座12に被せられて設けられるので、電池セル20をボックス本体10内に密封する。
【0057】
本願の実施例の電池ボックス2において、複数の電池セル20はそれぞれ独立して1つ又は2つ以上の単電池21を含む。例えば、電池セル20に含まれる単電池21の数は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ等であってもよく、実際の需要に応じて選択することができる。ここで、単電池21の形状及び種類は、いずれも特に限定されず、例えば、三元系電池、リン酸鉄リチウム電池等であってもよく、且つ円柱状電池、角型電池等であってもよい。
【0058】
電池セル20のボックス本体10内での設置方式は特に限定されず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。例えば、複数の電池セル20は、電池セル20の厚さ方向に沿って配列して電池パックを形成し、1つ又は2つ以上の電池パックは、電池セル20の幅方向及び/又は高さ方向に沿ってボックス本体10内に配列されている。
【0059】
本願の実施例の電池ボックス2において、防火板30のボックス本体10内での設置方式は様々である。いくつかの実施例において、防火板30は、ボックス本体10内の複数の電池セル20に対応してボックス本体10内に設けられた連続性板体であってもよい。任意の1つ以上の単電池21が熱暴走し、高温熱流を噴射したか又は炎を生成した時、防火板30におけるエアロゾル発生剤の降温及び消火作用をトリガーすることができるので、ボックス本体10内の熱暴走の広がりを効果的に緩和することができる。
【0060】
連続性板体構造の防火板30のボックス本体10内での設置形態が、様々である。例えば、防火板30は、ボックス本体10の内部側壁、ボックス本体10の内部天井壁、複数の電池セル20の側面(例えば電池セル20の幅方向の少なくとも1つの側面)、複数の電池セル20の頂面(即ち防爆弁側)のうちの1つ又は両方以上に設けられている。
【0061】
いくつかの実施例において、ボックス本体10の内部に複数の防火板30が設けられ、各防火板30は少なくとも1つの電池セル20に対応して設けられている。
【0062】
第1の例として、複数の電池セル20は、電池セル20の厚さ方向に沿って配列して電池パックを形成し、1つ又は2つ以上の電池パックは、電池セル20の幅方向及び/又は高さ方向に沿ってボックス本体10内に配列されている。
図4に示すとおり、防火板30は少なくとも2つの隣接する電池セル20の間に設けられてもよい。例えば、隣接する2つの電池セル20ごとの間に防火板30が設けられてもよい。このように熱暴走した電池セル20が火災から保護され、ボックス本体10内の熱暴走の広がりをより効果的に緩和することができる。
【0063】
第2の例として、電池セル20の配列方式は、第1の例と同じである。
図5に示すとおり、防火板30は、少なくとも1つの電池セル20の自身の幅方向における少なくとも1つの側面に設けられてもよい。例えば、複数の防火板30のそれぞれは1つ以上の電池セル20に対応し、且つ該一つ以上の電池セル20の自身の幅方向におけるいずれか1つ又は2つの側面に設けられている。
【0064】
第3の例として、電池セルの配列方式は、第1の例と同じである。防火板30は、少なくとも1つの電池セル20の防爆弁側に設けられている。例えば、複数の防火板30のそれぞれは1つ以上の電池セル20に対応し、且つ該一以上の電池セル20の防爆弁側に設けられている。一般的に熱暴走した単電池21の高温気流は、防爆弁を突き破って流出し、炎も防爆弁の破裂口から広がり、単電池21の防爆弁側に防火板30が設けられることで、該熱暴走した単電池21の定位置に対して直接、迅速に消火を行い、熱暴走の広がりを効果的に緩和し、消火効率を向上させることができる。
【0065】
第4の例として、電池セルの配列方式は、第1の例と同じである。防火板30は、ボックス本体10の内部側壁及び/又は内部天井壁に設けられている。例えば、複数の防火板30のそれぞれは1つ以上の電池セル20に対応し、且つボックス本体10の内部側壁、内部天井壁又は両者の組み合わせに設けられている。ここで、ボックス本体10の内部天井壁に設けられた防火板30は、一般的に単電池の防爆弁に対向するので、該熱暴走した単電池21に対して消火をより直接、迅速に行い、熱暴走の広がりをより効果的に緩和し、消火効率を向上させることができる。
【0066】
第5の例として、電池セルの配列方式は、第1の例と同じである。また、隣り合う電池セル20の間には、緩衝仕切り板が設けられている。電池サイクル及び蓄積過程において、電池セル20の内部に膨張力が発生した場合、緩衝仕切り板は、その圧縮性により緩衝作用を発揮し、電池セル20の膨張による応力を効果的に放出し、電池の膨張効率を低下させる。
【0067】
図6を参照して、緩衝仕切り板40に開口を有する収容部41が設けられ、防火板30が収容部41に設けられている。防火板30を緩衝仕切り板40の収容部41に設置しても、電池ボックス2の体積を増加させないか、実質的に増加させないので、電池ボックス2が高い体積エネルギー密度を有することに有利である。また、このように熱暴走した電池セル20の定位置に対して防火を行うことができるので、ボックス本体10内の熱暴走の広がりをより効果的に緩和することができる。
【0068】
一般的に、充放電サイクル後の電池ボックス2は、その電池セル20の大きな面の中部領域の膨張現象が深刻であり、中部領域の周囲の領域(周辺領域と略称する)に発生した膨張が小さく、特にエッジ領域がほとんど膨張しない。したがって、収容部41を緩衝仕切り板40の周辺領域に設置することができる。これにより、さらに電池ボックス2の体積を増加させない。
【0069】
いくつかの実施例において、緩衝仕切り板40に設けられた防火板30の面積は、緩衝仕切り板40の面積の10%~40%を占め、例えば15%~30%を占める。これは、防火板30の防火作用をより効果的に発揮することができ、同時に緩衝仕切り板40の緩衝作用に影響を及ばさない。
【0070】
理解できるように、ボックス本体10の内部の複数の防火板30の設置方式は、さらに前述の任意の2つ以上の設置例の組み合わせであってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、防火板30は、さらにボックス本体10の外側に設けられてもよい。例えば、防火板30をボックス本体10の外壁面に貼り付ける。ボックス本体10の全体の温度が上昇するか又は炎が溢れた場合、ボックス本体10の外側の防火板30がトリガされ、ボックス本体10の降温又は消火を行うことができる。当然のことながら、ボックス本体10の外側の防火板30は、さらに電池ボックス2の外部の高温源又は火源による電池ボックス2の熱暴走を緩和し、電池ボックス2を総合的に火災から保護することができる。
【0072】
いくつかの実施例において、防火板30におけるエアロゾル発生剤は、酸化剤、可燃剤及び接着剤を含み、前記酸化剤は、硝酸塩、ハロゲン酸塩及び過ハロゲン酸塩のうちの1種類又は複数種類を含み、前記可燃剤は、有機可燃剤及び無機可燃剤のうちの1種類又は複数種類を含む。該エアロゾル発生剤のガス発生速度が速く、燃焼生成物中の二酸化炭素、水蒸気、さらに窒素などの不活性ガスの炎に対する窒息作用、水蒸気及び物質分解などによる冷却作用、生成された微細金属粒子の燃焼反応連鎖への終了作用により、効率的な防火効果を実現することができ、消火を迅速に且つタイムリーに行うことができ、且つ消火された炎の再燃を効果的に緩和することができる。また、該エアロゾル発生剤の性能が安定し、且つ燃焼生成物の環境への汚染が小さく、生物に対して明らかな毒害がない。
【0073】
いくつかの実施例において、酸化剤として使用される硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸アンモニウムのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0074】
いくつかの実施例において、酸化剤として使用されるハロゲン酸塩は、ハロゲン酸カリウム及びハロゲン酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。例えば、ハロゲン酸塩は、塩素酸カリウム及び塩素酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0075】
いくつかの実施例において、酸化剤として用いられる過ハロゲン酸塩は、過ハロゲン酸カリウム及び過ハロゲン酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。例えば、過ハロゲン酸塩は過塩素酸カリウム及び過塩素酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0076】
いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤の酸化剤は、硝酸塩及び過ハロゲン酸塩を含み、且つ硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸アンモニウムのうちの1種類又は複数種類を含み、過ハロゲン酸塩は、過塩素酸カリウム及び過塩素酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0077】
いくつかの実施例において、有機可燃剤は、固体有機化合物から選択することができる。選択可能に、有機可燃剤は、糖類を含む。例えば、有機可燃剤は、セルロース、ニトロセルロース、コットン屑、紙屑、木屑、ラクトース、ショ糖及びイジトールのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0078】
いくつかの実施例において、無機可燃剤は、リン、硫黄、炭素系可燃剤及び金属系可燃剤のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。選択可能に、無機可燃剤は、リン、硫黄、バイオマス炭、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム及びマグネシウムアルミニウム合金等のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0079】
いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤の可燃剤は、ラクトース、スクロース及びイジトール及びバイオマス炭(例えば木炭等)のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0080】
接着剤は、エアロゾル発生剤の各成分、例えば酸化剤、可燃剤などを一体に接着することにより、層状のホットエアロゾル防火層310を形成するために用いられる。また、防火板30が他の層構造をさらに含む場合、接着剤は、さらにホットエアロゾル防火層310を、隣接する層構造と接着することができる。本明細書において接着剤の種類は特に限定されず、それは、天然樹脂及び合成樹脂のうちの1種類又は複数種類であってもよい。天然樹脂としては、シェラック、ロジン等が挙げられる。合成樹脂としては、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂等が挙げられる。いくつかの実施例において、接着剤は、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、シェラック、ロジン及びエポキシ樹脂のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0081】
いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤は、50~80重量部の酸化剤、例えば55~75重量部の酸化剤、又は60~70重量部の酸化剤を含むことができる。酸化剤の含有量が適切な範囲内にあることで、酸化剤は十分な酸素を提供することができ、可燃剤が迅速に燃焼することに用いられる。特に、含有量が適切である酸化剤は炎に対して窒息作用、冷却作用、及び/又は燃焼反応連鎖への終了作用を有するガス又は微粒子を大量に生成することで、効率的な防火効果を実現することができる。
【0082】
いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤は、10~35重量部の可燃剤、例えば15~30重量部の可燃剤、又は20~25重量部の可燃剤を含むことができる。可燃剤の含有量が適切な範囲内にあることで、エアロゾル発生剤の燃焼を促進し、炎に対して窒息作用、冷却作用、及び/又は燃焼反応連鎖への終了作用を有する大量のガス又は微粒子を迅速に生成することで、効率的な防火効果を実現することができる。
【0083】
いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤は、1~5重量部の接着剤を含み、例えば2~4重量部の接着剤を含むことができる。
【0084】
いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤は、さらに添加剤を含むことができ、添加剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム及び金属酸化物のうちの1種類又は複数種類を含む。エアロゾル発生剤に該添加剤を添加することにより、エアロゾル中の微細固体微粒子を増加させ、燃焼反応連鎖への終了作用を強化し、防火効率を向上させることができる。特に、該防火板30を採用して、消火反応を迅速且つ繰り返して行うことができるので、電池ボックス2の炎の再燃を防止することができる。特に、炭酸塩、炭酸水素塩及び/又はハロゲン化アンモニウムを含有するエアロゾル発生剤が燃焼する時、炭酸塩、炭酸水素塩及び/又はハロゲン化アンモニウムが分解し、熱量を吸収し、電池ボックス2の着火温度を低下させる。また、分解により生成されたガスは燃焼することができず、燃焼を支持せず、着火周囲環境の酸素濃度を希釈することができる。したがって、エアロゾル発生剤に炭酸塩、炭酸水素塩、ハロゲン化アンモニウムのうちの1種類又は複数種類が添加される場合、防火板30の消火効率をさらに向上させることができる。
【0085】
いくつかの実施例において、添加剤は、炭酸塩及び炭酸水素塩のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0086】
選択可能に、添加剤として用いられる炭酸塩は、周期律表における第IA族金属元素の炭酸塩及び第IIA族金属元素の炭酸塩のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。例えば、炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0087】
選択可能に、添加剤として用いられる炭酸水素塩は、周期律表における第IA族金属元素の炭酸水素塩及び第IIA族金属元素の炭酸水素塩のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。例えば、炭酸水素塩は、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0088】
金属ハロゲン化物は、金属フッ化物、金属塩化物、金属臭素化物、金属ヨウ化物のうちの1種類又は複数種類を含むことができ、例えば金属塩化物である。金属ハロゲン化物における金属元素は、周期律表における第IA族金属元素及び第IIA族金属元素のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。例えば、金属ハロゲン化物は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム及び塩化ストロンチウムのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0089】
ハロゲン化アンモニウムは、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムのうちの1種類又は複数種類を含むことができ、例えば塩化アンモニウムである。
【0090】
金属酸化物は、周期律表における第IA族金属元素の酸化物及び第IIA族金属元素の酸化物のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。例えば、金属酸化物は、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム及び酸化ストロンチウムのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0091】
いくつかの実施例において、エアロゾル発生剤に含まれる添加剤の重量部数は、≦20であり、又は≦15である。選択可能に、エアロゾル発生剤に含まれる添加剤の重量部数は0.5~15であってもよく、例えば5~15であり、又は8~12である。
【0092】
いくつかの実施例において、防火板30は、さらに促進剤を含むことができ、促進剤は、ニトロセルロース、セルロイド、硫黄及びショウノウのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。防火板30に促進剤を添加することで、防火板30が防火を行うトリガー温度を低下させることができる。前記促進剤の着火点が低く、電池ボックスの電池が熱暴走した場合、促進剤は、熱量を迅速に吸収して自己燃焼を開始し、防火板30の温度を迅速に上昇させ、エアロゾル発生剤中の酸化剤及び還元剤等の反応を開始させつことで、防火作用を迅速且つタイムリーに果たすことができる。促進剤は、防火板30のトリガー温度を、本来の500℃程度から500℃未満の範囲まで低下させることができる。ここでのトリガー温度とは、防火板30の周囲の環境温度である。該防火板30を採用することで、複数回の消火を実現することができ、炎の再燃を防止することができる。
【0093】
促進剤を、防火板30に様々な方法で添加することができる。一例として、
図7を参照すると、ホットエアロゾル防火層310に上記促進剤を含むことができる。即ち、促進剤をホットエアロゾル防火層310内に分散させる。
【0094】
いくつかの実施例において、促進剤のホットエアロゾル防火層310における重量比は、0.5%~10%であってもよく、例えば1%~10%、1%~5%、又は2%~5%であってもよい。
【0095】
別の例として、
図8~
図10を参照すると、防火板30は、さらに促進層320を含むことができ、該促進層320に上記促進剤が含まれる。
【0096】
促進層320の防火板30における設置形態が複数種類ある。例えば、促進層320とホットエアロゾル防火層310が互いに積層して設けられてもよい。具体的には、ホットエアロゾル防火層310は自身の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、促進層320は、対向する2つの表面のうちのいずれか1つ又は両方に積層して設けられてもよい。又は、防火板30は、2層以上のホットエアロゾル防火層310を含み、促進層320は、少なくとも2層の隣接するホットエアロゾル防火層310の間に設けられてもよい。
【0097】
さらに例えば、促進層320は、ホットエアロゾル防火層310の少なくとも1つの側面に設けられている。具体的には、促進層320は、ホットエアロゾル防火層310のいずれか1つ又は複数の側面に貼り合わせて設けられている。
【0098】
いくつかの実施例において、促進層320は、さらに接着剤を含有することができる。接着剤により促進剤はホットエアロゾル防火層310に接着される。ここで、促進層320に含有された促進剤の重量パーセント含有量は60%以上であってもよく、例えば80%~95%である。
【0099】
いくつかの実施例において、促進層320の厚さは、10ミクロン~200ミクロンであってもよく、例えば30ミクロン~150ミクロン、又は50ミクロン~100ミクロンであってもよい。
【0100】
いくつかの実施例において、防火板30は、さらに封入層330を含むことができる。例えば、防火板30は、自身の厚さ方向で対向する両側にそれぞれ封入層330が設けられることで、両側の封入層330の間の構造(例えば、ホットエアロゾル防火層310及び選択可能な促進層320など)に対して隔離と保護作用を果たす。封入層330の設置は空気中の水分等がホットエアロゾル防火層310及び選択可能な促進層320に浸透することを防止することで、防火板30の高い防火効率を確保することができる。
【0101】
一例として、防火板30は、防火板30自身の厚さ方向の両側に設けられた封入層330、及び両側の封入層330の間に封入された防火層を含み、該防火層は、上記ホットエアロゾル防火層310及び選択可能な促進層320を含む。防火層が促進層320を含む場合、ホットエアロゾル防火層310及び促進層320の設置方式は前述のとおりである。
【0102】
防火板30において、封入層330は、良い防湿性を有する材料を採用することができる。さらに、封入層330の材料は燃えにくくなる。例えば、封入層330の材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン等から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0103】
防火板30において、封入層330の厚さは、10ミクロン~200ミクロンであってもよく、例えば、30ミクロン~150ミクロン、又は50ミクロン~100ミクロンであってもよい。封入層330の厚さが適切であることで、防湿の役割を効果的に果たすことができ、同時にホットエアロゾル防火層310が迅速に且つ効果的にトリガされることを保証することができる。
実施例
【0104】
以下の実施例は、本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は、単に解釈的に説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で、様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に明記ない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比は、いずれも重量に基づいて計算し、且つ実施例で使用された全ての試薬は、商業的に購入して取得するか又は従来の方法に従って合成して取得することができ、さらに処理する必要がなく直接使用することができ、又、実施例で使用された装置は、いずれも商業的に購入して取得することができる。
実施例1
【0105】
防火板は、自身の厚さ方向において、順に封入層、ホットエアロゾル防火層及び封入層を含み、ホットエアロゾル防火層の一部の側面に促進層が貼り付けられている。封入層の材料は、ポリエチレンテレフタレートであり、封入層の厚さは、50ミクロンである。ホットエアロゾル防火層は、エアロゾル発生剤を含む。エアロゾル発生剤は、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウム、ラクトース、マグネシウム粉末、塩化アンモニウム、炭酸水素カリウムを含み、且つ各成分の質量比は40:20:10:10:8:8である。接着剤は、フェノール樹脂を採用し、接着剤のホットエアロゾル防火層における質量比は、4%である。促進層は、促進剤であるセルロイド及び接着剤であるフェノール樹脂を含み、且つ促進剤の含有量は、85%である。促進層の厚さは80μmである。
【0106】
複数の電池セルは、需要に応じて端板及び側板を利用して一定の付勢力で電池モジュールに組み立てられ、ここで、防火板は、隣接する2つの電池セルごとの間に設けられており、且つ各電池セルは、1つの単電池を有する。端板は、電池モジュールの両端に位置し、側板は電池モジュールの両側に位置し、且つ一方側の端板に10mm直径の穴が残されておく。電池モジュールは、25±5℃で、1C電流で充電カットオフ電圧まで充電し、使用に備える。単電池の間、単電池の側面にそれぞれ温度センサが取り付けられ、電池モジュールの正負極の引き出し位置に電圧検出器が取り付けられている。
【0107】
残りの自由空間の需要に応じて、適切なサイズのボックス本体を選択して製造し、ボックス本体の材質は、2mmの厚さの鋼材を選択する。電池ボックスのボックス本体は、ボックスカバーとボックス底座を含む。ボックスカバーは、トッププレート及びトッププレートに接続されたサイドプレートを含む。端板と近接するサイドプレートに突き刺しに用いられる直径8mmの穴が残されておく。突き刺し穴に隣接するサイドプレートに直径40mmの防爆弁穴が予め残され、且つテスト前にマッチングする防爆弁を取り付ける。防爆弁が取り付けられたサイドプレートに対向する他方側の蓋板に直径17mmの穴が予め残され、ボックス本体内で温度、電圧を検出するためのケーブルの引き出しに用いられる。
【0108】
電池モジュールをボックス底座に固定し、ボックスカバーをボックス底座に設ける。ボックスカバーとボックス底座との間に発泡ゴム緩衝シールリングを配置し、且つボルトで締め付けて密封する。電池モジュールの端板の予め設定される穴とボックス本体に予め残す突き刺し穴を位置合わせる。
【0109】
単電池は、外装ケースと、外装ケースに外装されたベア電池コアと、電解液とを備えている。ベア電池コアは、正極シート、セパレータ及び負極シートを含む巻回構造体であり、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に介在して隔離の役割を果たす。
【0110】
ここで、正極活性材料LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電性カーボンブラック及び接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比8:1:1に応じて溶剤N~メチルピロリドン(NMP)に分散させ、均一に撹拌し、正極スラリーを得る。正極スラリーを正極集電体アルミニウム箔上に均一に塗布し、乾燥、冷間圧延、分割、裁断した後、正極シートを得る。
【0111】
負極活性材料である人造黒鉛、導電性カーボンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及び接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)を重量比89:6:3:2に応じて溶剤脱イオン水に分散させ、均一に撹拌し、負極スラリーを得る。負極スラリーを負極集電体銅箔上に均一に塗布し、乾燥、冷間圧延、分割、裁断した後、負極シートを得る。
【0112】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で均一に混合し、有機溶媒を得る。1mol/LのLiPF6を上記有機溶媒に溶解し、電解液を得る。
【0113】
セパレータは、PP/PE/PP複合フィルムを用いる。
【0114】
電池ボックスにおいて、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aは、1.5gであり、ボックス本体の自由空間体積Bは、50Lである。即ち、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は、A/B=0.03g/Lを満たす。
実施例2~10及び比較例1~2
【0115】
実施例1と異なり、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aを調整することにより、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は異なる関係を満たし、詳細は表1に示すとおりである。
実施例11~14
【0116】
実施例1と異なり、防火板は、ボックス本体の内部側壁面に設けられている。また、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aを調整することにより、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は異なる関係を満たし、詳細は表1に示すとおりである。
実施例15~18
【0117】
実施例1と異なり、防火板は、促進層を含有せず、即ち促進剤を含有しない。エアロゾル発生剤は、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ストロンチウム、ラクトース、マグネシウム粉末、硫黄を含み、且つ各成分の質量比は、35:15:20:15:5:7である。接着剤のホットエアロゾル防火層における質量比は、3%であり、且つボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aを調整することにより、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は、異なる関係を満たし、詳細は表1に示すとおりである。
比較例3
【0118】
実施例1と異なり、電池ボックスに防火板が設けられていない。
比較例4
【0119】
実施例1と異なり、防火板は、自身の厚さ方向において順に封入層、促進層及び封入層を含む。
【0120】
実施例19~25及び比較例5
【0121】
実施例1と異なり、電池ボックスにおいて、ボックス本体の自由空間体積Bは、100Lであり、且つボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aを調整することにより、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は異なる関係を満たし、詳細は表1に示すとおりである。
実施例26~29及び比較例6
【0122】
実施例19と異なり、防火板は促進層を含有せず、即ち促進剤を含有しない。また、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aを調整することにより、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は異なる関係を満たし、詳細は表1に示すとおりである。
比較例7
【0123】
実施例19と異なり、電池ボックスに防火板が設けられていない。
実施例30~35及び比較例8
【0124】
実施例1と異なり、電池ボックスにおいて、ボックス本体の自由空間体積Bは200Lであり、且つボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aを調整することにより、ボックス本体内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間は異なる関係を満たし、詳細は表1に示すとおりである。
比較例9
【0125】
実施例30と異なり、電池ボックスに防火板が設けられていない。
【0126】
テスト部
(1)電池ボックスの安全性能テスト
電池ボックスを、突き刺し試験台に置き、突き刺し口と突き刺し鋼針とを位置合わせ、鋼針を水平に保持する。3mmのステンレス鋼針を用いて0.1mm/sの速度で突き刺しを行い、突き刺しの深さが第1の単電池の中央部に達した時点で、突き刺しを停止し、鋼針を単電池に残す。ビデオにより実験過程の全体を記録し、電池ボックスの発火状況を観察するために用いられる。
【0127】
【0128】
実施例1~18と比較例1~4、実施例19~29と比較例5~7、実施例30~35と比較例8~9との比較から分かるように、本願の実施例は、電池ボックスにエアロゾル発生剤を含む防火板を設置し、且つボックス内のエアロゾル発生剤の総質量Aとボックス本体の自由空間体積Bとの間に特定の関係を満たすように制御することにより、電池ボックスの炎を効果的に消滅させることができ、且つ電池ボックスの炎の再燃を効果的に緩和することができるので、電池ボックスが高い安全性能を有する。
【0129】
実施例1~10と実施例15~18の結果から分かるように、防火板は、酸化剤及び可燃剤を含有することで、電池ボックスの炎を効果的に消滅させることができる。特に、防火板にさらに添加剤及び促進剤を含有することで、電池ボックスの炎を効果的に消滅させることができ、且つ電池ボックスの炎の再燃を効果的に防止することができる。
【0130】
実施例19~22と実施例26~29の結果から分かるように、防火板にさらに促進剤を含有することで、電池ボックスの防火効率をさらに向上させることができる。
【0131】
前記のように、単に本願の具体的な実施形態であり、本願の保護範囲はこれらに限定されるものではなく、当業者は、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な修正又は置換を容易に想到でき、これらの修正又は置換は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲を基準とすべきである。