(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】レバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4422 20060101AFI20231215BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231215BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231215BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231215BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231215BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231215BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231215BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231215BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231215BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20231215BHJP
C07D 211/90 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A61K31/4422
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/12
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61P9/10
A61P9/12
C07D211/90
(21)【出願番号】P 2022526476
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2020123670
(87)【国際公開番号】W WO2021088672
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】201911137739.6
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522179507
【氏名又は名称】施慧達薬業集団(吉林)有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHIHUIDA PHARMACEUTICALS GROUP (JILIN) LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 999, High-Tech Industrial Park, Baishan, Jilin, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522179518
【氏名又は名称】北京吾為尓創科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING WUWEI ERCHUANG TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Rm. 02C-132, 2F, Building C, No. 28 Jia, Xinxi Rd., Haidian District Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 環
(72)【発明者】
【氏名】姚 付青
(72)【発明者】
【氏名】張 喜田
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105111137(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4422
A61K 9/08
A61K 9/14
A61K 9/20
A61K 47/12
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 9/10
A61P 9/12
C07D 211/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物であって、
前記組成物は、異なる結晶水含有量を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物を含み、含まれるレバムロジピンベシル酸塩水和物の分子式は、C
20H
25ClN
2O
5・C
6H
6O
3S・nH
2Oであり、ここで、1<n<2であり、前記組成物に含まれるレバムロジピンベシル酸塩水和物の構造式は、下式であり、前記組成物中の結晶水含有量は、4.5-
5.5%であることを特徴とする、レバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物。
【請求項2】
前記組成物中の結晶水含有量は
、4.5-5.4%であることを特徴とする、請求項1に記載のレバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物。
【請求項3】
前記組成物は、有機溶媒を含まない純水中で結晶化、沈殿、分離及び乾燥することにより調製されたものであることを特徴とする、請求項1-2のいずれか1項に記載のレバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物及び薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、レバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物を含む薬物。
【請求項5】
前記薬物は、任意の薬理学的に許容される薬物成分をさらに含む複方製剤であることを特徴とする、請求項4に記載の薬物。
【請求項6】
請求項1-3のいずれか1項に記載のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を含むレバムロジピンベシル酸塩速-徐放性製剤であって、
徐放層及び速放層を含み、
前記徐放層は、質量比で
レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩 4-5と、
ポリビニルピロリドン 30-40と、
ヒドロキシプロピルセルロース 55-65と、
微結晶セルロース 17-30と、
ステアリン酸マグネシウム 0.1-1と、
を含み、
前記速放層は、質量比で
レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩 1-2と、
微結晶セルロース 40-45と、
アルファー化デンプン 35-45と、
架橋ポリビニルピロリドン 1-8と、
ポリビニルピロリドン 5-15と、
ステアリン酸マグネシウム 0.1-1と、
を含むことを特徴とする、レバムロジピンベシル酸塩速-徐放性製剤。
【請求項7】
レバムロジピンベシル酸塩と葉酸の複方速-徐放性錠剤であって、
複方徐放層及び複方速放層を含み、
前記複方徐放層は、質量比で
レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩 4-5と、
ポリビニルピロリドン 30-40と、
ヒドロキシプロピルセルロース 55-65と、
微結晶セルロース 17-30と、
ステアリン酸マグネシウム 0.1-1と、
を含み、
前記複方速放層は、質量比で
レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩 1-2と、
葉酸 0.1-1と、
微結晶セルロース 40-45と、
アルファー化デンプン 35-45と、
架橋ポリビニルピロリドン 1-8と、
ポリビニルピロリドン 5-15と、
ステアリン酸マグネシウム 0.1-1と、
を含み、
前記レバムロジピンベシル酸塩は、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物であることを特徴とする、レバムロジピンベシル酸塩と葉酸の複方速-徐放性錠剤。
【請求項8】
複方徐放層及び複方速放層を含み、
前記複方徐放層は、質量比で
レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩 4.5と、
ポリビニルピロリドン 35と、
ヒドロキシプロピルセルロース 60と、
微結晶セルロース 23.9と、
ステアリン酸マグネシウム 0.5と、
を含み、
前記複方速放層は、質量比で
レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩 1.5と、
葉酸 0.4と、
微結晶セルロース 40.5と、
アルファー化デンプン 40と、
架橋ポリビニルピロリドン 5と、
ポリビニルピロリドン 10と、
ステアリン酸マグネシウム 0.5と、
を含むことを特徴とする、請求項7に記載のレバムロジピンベシル酸塩と葉酸の複方速-徐放性錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバムロジピンベシル酸塩(levamlodipine besylate)の技術分野に関し、特にレバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物、その調製方法、製剤及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アムロジピンは、アメリカのファイザー社によって開発され、1994年に高血圧及び狭心症の治療薬として「Norvasc」の商品名で中国市場に参入した。アムロジピンは、レバムロジピン及びデキサムロジピンからなるラセミ体である。そのL体とD体は、薬理学的機能が異なる。デキサムロジピンはカルシウムチャネル遮断活性を欠いており、平滑筋細胞の遊走の効果的な阻害剤である。レバムロジピンは、長時間作用型カルシウムチャネル拮抗薬であり、高血圧及び狭心症の治療効果を有する。そのため、従来技術では、アムロジピンを分離してレバムロジピンを取得し、その長時間作用型カルシウムチャネル拮抗作用により高血圧、狭心症を治療している(例えば、WO9525722A1、WO0160799A1、WO9310779A1)。
【0003】
遊離塩基形態のアムロジピンは安定性が低いため、好ましくは、薬学的に許容される酸付加塩の形態で投与される。そこで、レバムロジピンの様々な酸付加塩、例えば、レバムロジピンベシル酸塩、レバムロジピンマレイン酸塩、レバムロジピンニコチン酸塩、レバムロジピンアスパラギン酸塩等が開発された。
【0004】
対応するアムロジピン又はレバムロジピン塩水和物の調製には、有機溶媒を使用する必要がある場合が多い。例えば、WO03089414A1には、アムロジピンとニコチン酸をメタノールとイソプロピルアルコール又は水とイソプロピルアルコールの混合溶媒中で再結晶化することにより調製されたアムロジピンニコチン酸塩二水和物が開示されている。CN101495451Aには、レバムロジピン遊離塩基をイソプロピルアルコールと蒸留水の混合物に入れ、そこにカンファースルホン酸を加え、撹拌し、濾過した後、イソプロピルアルコール及び蒸留水で洗浄するレバムロジピンカンファースルホン酸塩水和物の調製が開示されている。CN102342937Aには、エタノール、ジメチルスルホキシド及び脱イオン水を溶媒として使用するアムロジピンマレイン酸塩水和物の調製が開示されている。WO2007017538A2には、イソプロピルアルコールでアムロジピンベシル酸塩を処理してその結晶を得る方法が開示されている。JP2007015978Aには、アムロジピン塩基とベンゼンスルホン酸一水和物とを酢酸エチル溶媒中で反応させてアムロジピンベシル酸塩を得ることが開示されている。KR20120066691Aには、レバムロジピンのエタノール溶液にベンゼンスルホン酸のエタノール溶液を加え、2時間撹拌した後、水を加え、濾過し、水で洗浄することでレバムロジピンベシル酸塩水和物を得ることが開示されている。CN105111137B、CN102659672Bに開示されたレバムロジピンベシル酸塩水和物の調製方法では、結晶化プロセスに有機溶媒が使用されている。
【0005】
つまり、従来技術では、有機溶媒を用いてレバムロジピンベシル酸塩水和物を調製することが多い。水性媒体を用いてレバムロジピンベシル酸塩水和物又はアムロジピンベシル酸塩水和物を調製する技術もいくつかある。WO03/043635A1には、水を用いて水中でアムロジピンベシル酸塩の水和物を調製することが開示されている。しかし、使用されるのは、アムロジピンベシル酸塩又はアムロジピン及びベンゼンスルホン酸水和物であり、レバムロジピン及びベンゼンスルホン酸ではない。CN1152013Cには、レバムロジピンを水に入れ、ベンゼンスルホン酸を加えて撹拌し、窒素ガスの保護下で加熱した後、冷却し、一晩結晶化させて、次に濾過し、洗浄することでレバムロジピンベシル酸塩水和物を得ることが開示されているが、製剤中のこの生成物の性能パラメータについて研究されておらず、適切な特性を有する特定のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物が提供されていない。W02006/043148A1には、アムロジピンラセミ体からL体とD体を分離する方法が開示されており、レバムロジピン-L-ヘミ酒石酸塩のジメチルホルムアミド溶媒化物と水との混合物にベンゼンスルホン酸の水溶液を加え、窒素ガス下で昇温しながら撹拌し、室温に冷却し、一晩結晶化させて、レバムロジピンベシル酸塩二水和物を得ることが記載されている。しかし、この方法では、まずレバムロジピン-L-ヘミ酒石酸塩のジメチルホルムアミド溶媒化物を調製する必要がある。これらの技術的解決策において、L体の分離を主目的とする過程におけるレバムロジピン塩又はその水和物形態が説明されたり、レバムロジピンベシル酸塩ではなくアムロジピンベシル酸塩に関したり、或いは水和物の調製方法のみが説明されたりするが、いずれにおいても純水中でレバムロジピンベシル酸塩水和物を調製する方法を最適化することは開示されておらず、得られたレバムロジピンベシル酸塩水和物含有組成物の溶出率、安定性及びこの水和物組成物を製剤化した薬物製剤の各特性について実験研究がなされていない。つまり、従来技術において、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の純水調製方法、この水和物組成物の製剤化の特性及び効果についての研究がなく、このような研究成果に基づいて有益な製剤効果のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物製品は提供されていない。
【0006】
また、従来技術では、薬物製剤中のアムロジピンベシル酸塩の溶解性が悪く、溶出率が低いため、効き目が遅いことが知られており、特別な製剤化プロセス、例えば、微粉化;アムロジピンベシル酸塩及び乳糖溶液をそれぞれダブルノズル噴霧乾燥機で噴霧造粒する製剤化プロセス(例えば、CN103006600A);又は崩壊剤の添加がしばしば必要となる。しかし、このような製剤化プロセスでは、崩壊剤、微粉化などのプロセスにより薬物製剤の安定性が低下する場合が多い。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物中の結晶水含有量が薬物製剤におけるその溶出率に関連していることを見出し、工業用途に適したレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物中の結晶水の含有量範囲、及びより高い安定性を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物中の結晶水の含有量範囲を特定し、上記の有益な効果を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を調製するための安全で、簡単で、環境に優しく、コストが低い調製方法を提供する。
【0008】
本発明の目的は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を提供することである。前記組成物は純水中で調製される。この組成物を用いて調製される薬物製剤は、溶出率が高く、安定性が良好である。
【0009】
具体的には、本発明で調製されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、以下の有益な効果を有する。
本発明で調製される水和物組成物には有機溶媒成分の残留がなく、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物はより高い熱安定性を有し、この水和物組成物で調製される固形製剤はより良好な溶出率を有し、大規模な工業生産に適する。
【0010】
本発明の別の目的は、前記レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製方法を提供することである。
【0011】
さらに、本発明によれば、最適化されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製方法が提供される。
【0012】
本発明の別の目的は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物製剤を提供することである。
【0013】
さらに、本発明によれば、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を含む複方製剤が提供される。好ましい複方製剤は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物及び葉酸を含む。別の好ましい複方製剤は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物、ビソプロロールフマル酸塩を含み、又はレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物、ビソプロロールフマル酸塩及び葉酸を含む。
【0014】
本発明の別の目的は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の経口液製剤を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、上記のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物、この組成物を含む単方及び複方製剤の製薬用途を提供することである。前記製薬用途とは、長時間作用型カルシウム拮抗薬として高血圧、狭心症及び関連疾患を治療する用途を指す。
発明の詳細な説明
【0016】
本発明に係るレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、異なる結晶水含有量を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物の組成物である。この組成物は、有機溶媒を含まない純水溶媒中でレバムロジピンベシル酸塩水和物を析出させ、常温常圧の条件下で乾燥することにより調製される。
【0017】
本発明に係るレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、化学名が(4s)-2-[(2-アミノエトキシ)メチル]-4-(2-クロロフェニル)-6-メチル-1,4-ジヒドロ-3,5-ピリジンジカルボン酸-3-エチルエステル,5-メチルエステルベンゼンスルホン酸塩水和物組成物である。
【0018】
前記レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物中の各化合物は、以下の下構造式で表され得る。
前記組成物に含まれる化合物の分子式はC
20H
25ClN
2O
5・C
6H
6O
3S・nH
2O(1<n<2)である。
【0019】
前記組成物は、純水中で調製される。本発明では、結晶水含有量が比較的多いレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、粒子が柔らかくなり、原薬と補助成分が粘結しやすくなることから、製剤化の調製要求を満たすことができないことを見出した。水和物組成物の結晶水含有量が5.8%以下である場合、製剤化の要求を満たすことができる。好ましくは、水和物組成物の結晶水含有量は5.5%以下である。
【0020】
本発明では、結晶水含有量が4.5%以上のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、熱安定性が他の結晶水含有量の製品よりも優れることを見出した。
【0021】
本発明では、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の溶出率が組成物の結晶水含有量と正の相関があることをさらに見出した。そのため、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の薬物組成物を調製することにより、より良好な溶出率を有する固形製剤が得られる。
【0022】
上記の見解に基づいて、本発明で調製されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、以下の有益な効果を有する。本発明で調製される水和物組成物は、エタノール溶媒又はアセトン溶媒のレバムロジピンベシル酸塩水和物を含まないことで、ベンゼンスルホン酸エステル系の遺伝毒性物質が生成することがない。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、より高い熱安定性を有する。この水和物組成物で調製される固形製剤は、より良好な溶出率を有し、工業生産の用途に適する。
【0023】
上記の有益な効果を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物において、含まれる水和物化合物中の結晶水数は異なり、それぞれの化合物の結晶水数の範囲は1-2個でありかつ結晶水含有量は3-6%であり、好ましい結晶水含有量は3-5.8%であり、より好ましい結晶水含有量は4.0-5.5%、より好ましい結晶水含有量は4.4-5.5%であり、さらに好ましい結晶水含有量は4.5-5.4%である。
【0024】
本発明に係るレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製方法では、水溶液中で撹拌及び加熱によりベンゼンスルホン酸とレバムロジピンとが塩を形成して溶解し、冷却して結晶化することで生成物が析出し、過剰なベンゼンスルホン酸が溶液に残り、純水なレバムロジピンベシル酸塩水和物が得られ、適量の水で遠心分離洗浄し、常温乾燥させた後、異なる結晶水を有する生成物が得られる。この粉末は純水な化合物ではなく組成物となっているため、この方法で調製されるのはレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物である。
【0025】
エタノールと水の混合溶媒を使用することにより、2.5個の結晶水を含むレバムロジピンベシル酸塩エタノール水和物を調製することができる。アセトン、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールのそれぞれと水との混合溶媒を使用することにより、1.5個の結晶水を含むレバムロジピンベシル酸塩ケトン/アルコール水和物を調製することができる。しかし、これらの方法では、いずれも特定の量の有機溶媒が使用されている。ベンゼンスルホン酸とアルコールは、遺伝毒性のあるスルホン酸エステル化合物を形成する可能性がある。アセトン自体は毒性がある。
【0026】
-5℃~10℃の純水中で結晶化するのはレバムロジピンベシル酸塩水和物である。この結晶は薄片状結晶であり脆い。結晶溶液をガラス皿に置くと、結晶がお粥に似た状態であることが分かる。遠心分離過程において、結晶は互いに粘結し、カプセル化された水は乾燥後の質量の25%を占める可能性がある。この水は遠心分離では除去できない。これは、結晶の機械的強度が非常に低くて柔らかく、粘着性を有することを示している。乾燥後も結晶水を含む化合物は徐々に加熱され、サンプルは液体ではなく粘稠な塊になるまで軟化する。
【0027】
本発明に係る最適化されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製方法は、以下のとおりである。ベンゼンスルホン酸及びレバムロジピンをベンゼンスルホン酸:レバムロジピンのモル比=1-1.05で秤量し、精製水を秤量して投入口より中和釜内に投入し、46℃まで昇温し、原料であるベンゼンスルホン酸及びレバムロジピンを加え、レバムロジピン固体を溶解させる。結晶化させるため水溶液をタンク内に入れ、温度を-5℃~10℃、好ましくは-5℃~1℃の範囲内に制御し、時間を≧12時間とする。次に遠心分離して濾過し、少量のほぼ精製された水で遠心分離洗浄する。次に室温で乾燥させ、結晶水含有量が3-6%、好ましくは約5%、より好ましくは4-5.8%、より好ましくは4.5-5.5%、より好ましくは4.5%-5.4%のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を調製する。この結晶水含有量が3-6%、4-5.8%、4.5-5.5%及び4.5-5.4%のレバムロジピンベシル酸塩は、1-2個の結晶水を有する。
【0028】
専門家の努力にもかかわらず、レバムロジピンベシル酸塩水和物の単結晶を純水中で成長させることは現在のところ不可能である。
【0029】
本発明は、上記の方法により調製されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物にも関する。
【0030】
本発明は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の製剤にも関する。前記レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の製剤は、錠剤、カプセル剤、徐放剤、経口液、速-徐放剤、放出制御製剤、マイクロカプセル、マイクロスフェア、リポソームなどの薬学的に許容される製剤であってもよく、前記水和物組成物と当技術分野で知られている補助材料を原料として調製される。
【0031】
本発明に記載のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、服用に適する様々な単方製剤及び複方製剤の調製に適用され得る。
【0032】
本発明は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物及び葉酸を含む複方製剤にも関する。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物と葉酸との質量比は2-3(レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩水和物;以下同じ):0.1-1.2、好ましくは2.5:0.4である。
【0033】
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物及び葉酸を有效成分とする複方製剤は、クラスI及びIIのH型高血圧患者の治療において、血圧とホモシステインを同時に大幅に下げ、頸動脈内膜中膜の厚さを大幅に改善し、アテローム性動脈硬化症の進行を遅延させ、脳血管イベントの発生を効果的に減少させることができる。この複方製剤は、高血圧を治療するだけでなく、脳血管イベントの発生を減少できるため、高血圧患者の生活の質を改善し、寿命を延ばすことができる。
【0034】
本発明は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物、ビソプロロールフマル酸塩、及び/又は葉酸を含む複方製剤にも関する。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物と、ビソプロロールフマル酸塩と、葉酸との質量比は2-3(レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩水和物;以下同じ):2-3:0.1-1.2、好ましくは2.5:2.5:0.4である。
【0035】
本発明によれば、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の経口液製剤がさらに提供される。純水中で調製された本発明のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を用いて調製された経口液には有機溶媒が残留せず、補助剤を添加する必要もない。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を純水に溶解する。レバムロジピンベシル酸塩と純水との質量比は1-10(レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩水和物;以下同じ):1-15、好ましくは1-5:1.2-7、より好ましくは2-3:3-4、さらに好ましくは2.5:3.5である。例えば、レバムロジピン換算で2.5mgのレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を3.5mgの純水に溶解する。レバムロジピンベシル酸塩は苦味があるため、矯味剤を適切に添加することができる。例えば、アスパルチルクロロフェニルアラニンメチルエステルは、ジペプチド甘味料であり、安全性が高く、代謝にインスリンを必要とせず、虫歯を引き起こさず、カロリー摂取量を効果的に低減させ、U.S.Pharmacopeia X XIIIに記載され、用量の重量濃度範囲が0.1%~0.6%であり、糖尿病、肥満症患者に適用される。小児の服用の場合は、ストローで適量の液体を吸い取ることで経口服用することができる。
【0036】
具体的には、本発明は、レバムロジピンベシル酸塩の速-徐放性製剤に関する。この速-徐放性製剤は、徐放層と速放層とを含む。徐放層は質量比で、レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩4-5と、ポリビニルピロリドン30-40と、ヒドロキシプロピルセルロース55-65と、微結晶セルロース17-30と、ステアリン酸マグネシウム0.1-1とを含む。速放層は質量比で、レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩1-2と、微結晶セルロース40-45と、アルファー化デンプン35-45と、架橋ポリビニルピロリドン1-8と、ポリビニルピロリドン5-15と、ステアリン酸マグネシウム0.1-1とを含む。
【0037】
好ましくは、前記レバムロジピンベシル酸塩速-徐放性製剤は、徐放層と速放層とを含む。徐放層は質量比で、レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩4.5と、ポリビニルピロリドン35と、ヒドロキシプロピルセルロース60と、微結晶セルロース23.9と、ステアリン酸マグネシウム0.5とを含む。速放層は、質量比でレバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩1.5と、微結晶セルロース 40.5と、アルファー化デンプン40と、架橋ポリビニルピロリドン5と、ポリビニルピロリドン10と、ステアリン酸マグネシウム0.5とを含む。
【0038】
本発明は、レバムロジピンベシル酸塩と葉酸の複方製剤の速-徐放性製剤にも関する。この製剤は、複方徐放層と複方速放層とを含む。複方徐放層は質量比で、レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩4-5と、ポリビニルピロリドン30-40と、ヒドロキシプロピルセルロース55-65と、微結晶セルロース17-30と、ステアリン酸マグネシウム0.1-1とを含む。複方速放層は質量比で、レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩1-2と、葉酸0.1-1と、微結晶セルロース40-45と、アルファー化デンプン35-45と、架橋ポリビニルピロリドン1-8と、ポリビニルピロリドン5-15と、ステアリン酸マグネシウム0.1-1とを含む。
【0039】
好ましくは、前記レバムロジピンベシル酸塩速-徐放性製剤は、複方徐放層と複方速放層とを含む。複方徐放層は質量比で、レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩4.5と、ポリビニルピロリドン35と、ヒドロキシプロピルセルロース60と、微結晶セルロース23.9と、ステアリン酸マグネシウム0.5とを含む。複方速放層は質量比で、レバムロジピン換算でレバムロジピンベシル酸塩1.5と、葉酸0.4と、微結晶セルロース40.5と、アルファー化デンプン40と、架橋ポリビニルピロリドン5と、ポリビニルピロリドン10と、ステアリン酸マグネシウム0.5とを含む。
【0040】
本発明は、前記レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物、この組成物を含む単方及び複方製剤の製薬用途にも関する。前記製薬用途とは、長時間作用型カルシウム拮抗薬として高血圧、狭心症及び他の関連疾患を治療するための用途である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】水中でのレバムロジピンベシル酸塩水和物の粥状結晶の写真である。
【
図2】レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の粉末回折図である。同図において、上から下へそれぞれ1.5結晶水を有するレバムロジピンベシル酸塩(結晶化溶媒:アセトン+水)の標準粉末の回折シミュレーションスペクトル、本発明の方法により調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物粉末の回折図、2.5結晶水を有するレバムロジピンベシル酸塩(結晶化溶媒:エタノール+水)の標準粉末の回折シミュレーションスペクトルである。
【
図3】サンプル1(結晶水含有量2.0%)を45℃のオーブンに0日間放置した後のクロマトグラムである。
【
図4】サンプル1(結晶水含有量2.0%)を45℃のオーブンに5日間放置した後のクロマトグラムである。
【
図5】サンプル2(結晶水含有量4.5%)を45℃のオーブンに0日間放置した後のクロマトグラムである。
【
図6】サンプル2(結晶水含有量4.5%)を45℃のオーブンに5日間放置した後のクロマトグラムである。
【
図7】サンプル3(結晶水含有量5.4%)を45℃のオーブンに0日間放置した後のクロマトグラムである。
【
図8】サンプル3(結晶水含有量5.4%)を45℃のオーブンに5日間放置した後のクロマトグラムである。
【
図9】レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物錠剤の溶出率は水和物の結晶水含有量と相関することを示す。
【
図10】ビーグル犬に10mgレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の試験製剤及び参照製剤を経口投与した後の平均血中薬物濃度-時間曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実施例1:固形製剤タブレットを満たすレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製、並びに物理的及び化学的パラメータ試験
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製
51kgの精製水を秤量し、精製水を投入口より反応釜内に投入して撹拌し、46℃まで昇温し、レバムロジピン1.60kgと、ベンゼンスルホン酸0.65kgを0.2kgの水に溶解した水溶液とを加えた。全てのレバムロジピンがベンゼンスルホン酸と有機塩を生成するように、レバムロジピンとベンゼンスルホン酸とのモル比とを約1:1.05とした。精製水の総量は51.2kgであり、レバムロジピンの投入量の32倍であった。完全に溶解した後、結晶化バケット内に移し、冷凍庫に入れて結晶化した。
図1に示すように、結晶は水中で粥状を呈した。温度を-5℃~10℃の範囲で制御し、本実験では温度を-5℃に制御し、時間を≧12時間に制御した。次に遠心分離機の回転速度2000r/minで遠心分離して濾過した。次に2kgの精製水でリンスし、具体的には、遠心分離機を停止させた後、精製水をフィルターバッグの表面に注ぎ、その後、遠心分離機を起動して遠心分離した後、乾燥した。室温:20℃、湿度:52%、オーブン通過風量:12000m
3/時間、乾燥温度30±2℃、乾燥時間:1.5時間、結晶水含有量:5.3%であった。
【0043】
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成の物理的及び化学的パラメータ試験
アセトン+水とエタノール+水中で1.5結晶水、2.5結晶水を有するとともに有機溶媒を含むレバムロジピンベシル酸塩アセトン水和物及びレバムロジピンベシル酸塩エタノール合物水和物の単結晶を調製することができる。しかし、レバムロジピンベシル酸塩水和物の単結晶は純水中では結晶化することができず、レバムロジピンベシル酸塩水和物の組成物しか調製できない。本発明の方法で調製された組成物粉末は、上記の1.5結晶水及び2.5結晶水を有するレバムロジピンベシル酸塩単結晶のシミュレートされた粉末データと類似する。試験状況は以下の通りである。
使用したX線粉末回折計(モデルD8 Advance)はドイツのBruker社製の装置である。サンプルは、それぞれ実施例1で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物、1.5結晶水レバムロジピンベシル酸塩の単結晶、2.5結晶水レバムロジピンベシル酸塩の単結晶である。
【0044】
レバムロジピンベシル酸塩粉末の結晶形の検出方法
粉末サンプルをサンプル台に置き、平らにし、D8 Advance装置により回折データを収集した。装置設定パラメータは、Cuターゲットソース(Kα)、波長λ=1.5406オングストロームである。試験電圧及び試験電流は、それぞれ40kV、40mAであり、試験範囲は5~45°であり、走査速度は0.02°/sである。粉末回折データを収集し、標準の2.5結晶水及び1.5結晶水含有X線単結晶データでシミュレートされた粉末データと直接比較した。標準のシミュレートされた粉末データは、X-単結晶データに基づいてMercuryソフトウェアにより得られる。回折結果を
図2に示す。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物粉末の結晶水含有量は、1.5結晶水含有レバムロジピンベシル酸塩と2.5結晶水含有レバムロジピンベシル酸塩との間である。
【0045】
実施例2:特定の結晶水含有量を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製
純水中で調製された未分離のレバムロジピンベシル酸塩水和物は、一定の割合の結晶水を含む化合物であり、大規模な工業生産が困難である。その1つの結晶水は、解離温度が低いため空気中に容易に解離する。この水和物の結晶水含有量を保持するために、化合物を比較的低い温度、対応する湿度及び大気圧に保持する必要がある。明らかに、調製されたこのレバムロジピンベシル酸塩水和物は、薬学上必要ではなく、直接打錠法には適していない。これに対し、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の調製は、様々な種類の製剤の要求を満たすことができる。
【0046】
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の安定性は温度に関係する。明らかに、温度が低いほど化合物は安定する。実施例1の乾燥条件下で対応する結晶水含有量を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を得ることができ、関連する品質基準の要求を満たす。
【0047】
【0048】
結晶水含有量がより低いレバムロジピンベシル酸塩組成物を得るために、空気の湿度をより低くして乾燥時間を短縮させる必要がある。レバムロジピンベシル酸塩組成物の結晶水含有量が低いほど、レバムロジピンベシル酸塩組成物の粒子表面には、結晶水の解離による空隙が多くなり、空気中の酸素ガスとレバムロジピンベシル酸塩との接触面積が大きくなり、酸化反応が発生する機会が増えるため、製剤の長期保存には不利である。
【0049】
実施例3:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物粒子の材料特性
固形製剤タブレット製剤の調製の要求を満たすために、直接打錠法を採用する。含有量の均一性を保証するために、原薬の粒子を10メッシュ以下の篩を通過させる必要がある。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を整粒する必要がある。粒度を10メッシュに制御する。結晶水が比較的高いレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の粒子は柔らかく、整粒過程において粘結しやすいため、整粒の要求を満たすことができない。水和物組成物の結晶水含有量が5.8%以下である場合、整粒の要求を満たすことができる。
【0050】
実施例1で調製された結晶水含有量が3-6%のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を乾燥させることで、異なる結晶水含有量を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物の組成物が得られた。その物理的特性を測定した結果、結晶水含有量が5.8%以上のサンプル粒子は柔らかくなり、原薬と補助材料は粘結しやすく、製剤の調製に適してないことを見出した。水和物の結晶水含有量を5.5%以下に制御することにより、製剤の要求をより良好に満たすことができる。
【0051】
1、サンプルの調製:実施例2の方法により対応する含水量を有するサンプルを調製した。
2、結果を下表に示す。
【0052】
【0053】
実施例4:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の熱安定性
本発明の実施例2の方法により結晶水含有量が異なる組成物をサンプルとして調製して熱安定性を測定した。
【0054】
サンプルをそれぞれ褐色のボトルに入れ、オーブンに置き、温度を45℃に調整し、5日間放置した後、関連物質を検出した。
【0055】
検出方法は以下のとおりである。
クロマトグラフィー条件及びシステム適用性試験
オクタデシルシラン結合シリカゲルをフィラー、メタノール-0.03mol/Lリン酸二水素カリウム溶液(75:25)を移動相として使用し、検出波長は238nmであり、理論段数は、レバムロジピンで計算して500以上でなければならない。
【0056】
試験品溶液の調製
本製品を約17mg精密に量り取り、100mlメスフラスコに入れ、移動相を入れて溶解し、目盛りまで希釈し、均一に振とうし、5ml精密に量り取り、25mlメスフラスコに入れ、移動相を目盛りまで入れ、均一に振とうすることで試験品溶液が得られた。
【0057】
測定方法
対照品溶液及び試験品溶液をそれぞれ10μl精密に量り取り、液体クロマトグラフィーに注入し、クロマトグラムを記録し、ピーク面積を測定し、外部標準法で計算した。
試験データを下表に示す。
【0058】
【0059】
サンプル1-3を45℃のオーブンで5日間放置した後のクロマトグラムを
図3-
図8に示す。
【0060】
純水中で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物を濾過し、乾燥させて得られた生成物の中で、結晶水含有量が4.5-5.4%のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、熱安定性が他の結晶水含有量の組成物よりも優れていることがわかる。サンプル1の外観には明らかな変化がなく、一部の結晶水が失われた後、粒子間の融合が発生せず、粒子内部に空隙が残ったので酸化反応を起こしやすい。サンプル2、3では、失われた結晶水が少ないため、粒子内部の空隙が少なく、酸化反応の程度が低下する。
【0061】
純水中でレバムロジピンベシル酸塩を調製して得られた沈殿結晶は、レバムロジピンベシル酸塩と2個の結晶水のレバムロジピンベシル酸塩水和物である。上記の実施例3に記載のように、2個の結晶水を有するレバムロジピンベシル酸塩水和物では、原薬と補助材料が粘結しやすく、製剤の調製に適してない。有機溶媒及び水で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物では、調製過程においてアルコール、ケトンなどの有機溶媒はレバムロジピンベシル酸塩と反応してベンゼンスルホン酸エステル類生成物が生成する。ベンゼンスルホン酸エステル類が遺伝毒性を有することは当該技術分野の常識である(例えば、邵曉ウェ、ベンゼンスルホン酸エステルの遺伝毒性の検出と合成研究、吉林大学修士論文、CNKI中国知網修士論文データベース、発表日時:2019年5月1日)。さらに、調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物製品には、必ず有機溶媒成分が残留する。これらの有機成分には、様々な程度の害がある。例えば、当該技術分野で知られているように、アセトンは神経系及び粘膜に毒性作用を有する。以上より、有機溶媒で調製された水和物には、有機分子が結合しており、結晶水の含有量を調整することで安定性が改善されても、本発明の純水で調製された水和物組成物に比べて、その毒性により薬学上に利点がない。
【0062】
実施例5:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物固形製剤の溶出率
本発明の実施例2の方法によりレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を調製した。前記水和物組成物は、異なる結晶水含有量を有する。以下の処方に従って錠剤に製剤化した。
【0063】
【0064】
錠剤の重さは約125mgである。上記の処方に従って必要な錠剤の数に応じて原薬及び補助材料を秤量し、均一に混合し、直接打錠した。ここで、デンプンを造粒して60メッシュの篩をかけた。
【0065】
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物錠剤(各錠剤は2.5mgレバムロジピンを含む)の溶出率を測定した。
溶出率の測定方法:暗所操作
本製品を取り、溶出率測定法(中国薬局方2015年版四部通則0931)に従って、塩酸溶液(9→1000)200mlを溶媒とし、50回転/分間の回転速度で操作した。30分間後、適量の溶液を取り、濾過し、次の濾液を取って試験品溶液とした。別途、レバムロジピンベシル酸塩対照品17mgを精密に量り取り、100mlメスフラスコに入れ、メタノールを2ml加えて溶解した後、塩酸溶液(9→1000)を加えて目盛りまで希釈し、均一に振とうし、5ml精密に量り取り、50mlメスフラスコに入れ、塩酸溶液(9→1000)を加えて目盛りまで希釈し、均一に振とうして対照品溶液とした。上記の2種類の溶液を取り、分光光度法(中国薬局方2015年版四部通則0401)に従って、238nm波長でそれぞれ吸光度を測定し、各錠剤の溶出量を算出した。制限は表示量の80%であり、規定を満たさなければならない。
測定結果は下表に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物錠剤の溶出率と水和物の結晶水含有量との関係図を
図9に示す。
【0069】
上記の分析から分かるように、溶出率は、組成物の結晶水含有量と正の相関がある。明らかに、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の薬物組成物の調製により、固形製剤はより良好な溶出率を有する。
【0070】
実施例6:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物又は+葉酸錠剤製剤
【0071】
【0072】
錠剤の重さは約125mgである。本実施例で使用されるレバムロジピンベシル酸塩は、実施例1の方法で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物であるが、実際の製造用途では実施例1の製品に限定されない。本発明で保護されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、いずれも対応する製剤の調製に適用できる。上記の処方に従って必要な錠剤の数に応じて原薬及び補助材料を秤量し、均一に混合して直接打錠した。複方錠剤は、二層錠にプレスされてもよい。つまり、2つの原薬をそれぞれ補助材料と混合して二層錠を作製してもよい。
【0073】
実施例7
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物+ビソプロロールフマル酸塩又は+葉酸錠剤
【0074】
【表8】
錠剤の重さは約200mgである。本実施例で使用されるレバムロジピンベシル酸塩は、実施例1の方法で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物であるが、実際の製造用途では実施例1の製品に限定されない。本発明で保護されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、いずれも対応する製剤の調製に適用できる。上記の処方に従って必要な錠剤の数に応じて原薬及び補助材料を秤量し、均一に混合して直接打錠した。
【0075】
実施例8:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物+葉酸速-徐放剤
【0076】
【0077】
二層錠の重さは約220mgである。本実施例で使用されるレバムロジピンベシル酸塩は、実施例1の方法で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物であるが、実際の製造用途では実施例1の製品に限定されない。本発明で保護されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、いずれも対応する製剤の調製に適用できる。
【0078】
上記の処方に従って必要な錠剤の数に応じて原薬及び補助材料を秤量し、均一に混合して直接打錠した。各錠剤は、レバムロジピン換算で6mgレバムロジピンベシル酸塩+0.4mg葉酸を含む。
【0079】
実施例9:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物+又はビソプロロールフマル酸塩又は+葉酸カプセル剤
【0080】
【0081】
錠剤の重さは約125mgである。本実施例で使用されるレバムロジピンベシル酸塩は、実施例1の方法で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物であるが、実際の製造用途では実施例1の製品に限定されない。本発明で保護されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、いずれも対応する製剤の調製に適用できる。上記の材料を秤量→混合→カプセル化した。
【0082】
実施例10:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の経口液製剤の調製
固形製剤は、小児及び嚥下困難患者には適していない。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の経口液は全ての患者の服用に適する。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、いずれも経口液製剤の調製に適する。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物で調製された経口液は有機溶媒の残留を含まず、補助剤を添加する必要もない。2.5mgレバムロジピンのレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物を3.5mgの純水に溶解する。レバムロジピンベシル酸塩は苦味があるため、矯味剤を適切に添加することができる。例えば、アスパルチルクロロフェニルアラニンメチルエステルは、ジペプチド甘味料であり、甘さはショ糖の180~300倍であり、甘みが良く安全性が高く、代謝にインスリンを必要とせず、虫歯を引き起こさず、カロリー摂取量を効果的に低減させ、U.S.Pharmacopeia X XIIIに記載され、用量の重量濃度範囲が0.1%~0.6%であり、糖尿病、肥満症患者に適用される。小児の服用の場合は、ストローで適量の液体を吸い取ることで経口服用することができる。
【0083】
調製プロセス
レバムロジピン10gのレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物+矯味剤(例えば、アスパルチルクロロフェニルアラニンメチルエステル14g)を精製水14Lに溶解し、撹拌し、4mlの褐色のボトルに入れ、蓋をした。日陰の涼しい場所に保管した。本実施例で使用されるレバムロジピンベシル酸塩は、実施例1の方法により調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物であるが、実際の製造用途では実施例1の製品に限定されない。本発明で保護されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物は、いずれも対応する製剤の調製に適用できる。
【0084】
実施例11:レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物錠剤の急性毒性
本実験の錠剤処方は、実施例5の錠剤処方を使用し、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の結晶水含有量は5.3%である。
【0085】
本実験では、2つの投与経路でLD50を測定した。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の錠剤経投与及び腹腔内投与し、錠剤を均一な粉末に粉砕し、さらに10%アラビアガムで経口及び腹腔内投与に適切な濃度の混合液を調製した。動物は昆明マウスを使用し、雄と雌の数は同じであり、それぞれの体重は18-28gであり、各グループ10匹であり、使用前に16時間絶食させた。用量については、経口投与:1.2605、1.0714、0.910、0.7141、0.6580(g/kg)、腹腔内投与:0.7743、0.6582、0.5594、0.4755、0.4042(g/kg)であり、用量勾配:0.85である。投与経路:経口投与及び腹腔内投与。実験方法:上記のマウスを100匹取り、16時間絶食させ、10グループにランダムに分けた。5グループに0.35ml/10gの用量で経口投与し、残りの5グループに0.2ml/10gの用量で腹腔内投与した。観察指標:投与後に動物を7日間観察し、毒性反応の状況及び死亡数を記録した。投与の0分後に、動物は目を閉じ、怠惰になり、毛皮が疎らで、1時間後に死亡し始め、死亡前の症状は平衡障害やけいれんなどで、死後の検査では大きな変化は見られなかった。
【0086】
【表11】
有意性指数G=0.2018 X50=2.9531 SX=0.0164 Gは比較的小さい。
異質性の検定Ch2=1.07 Ch2.05=7.82 Sb=3.3878 :異質性なし
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物(レバムロジピン換算)に換算した結果、LD50=24.925±1.7542mg/kgとなった。
【0087】
【表12】
有意性指数G=0.2002 X50=2.7612 SX=0.0172 Gは比較的小さいため、省略した。
異質性の検定Ch2=1.51 Ch2.05=7.82 Sb=3.3.0947:異質性なし
レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物(レバムロジピン換算)に換算した結果、LD50=16.0212±1.3774mg/kgとなった。
【0088】
実施例12:徐放剤の薬物動態
本試験で使用されるレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の速-徐放剤の処方は実施例8を参照されたい。
【0089】
本試験は、レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の徐放錠(試験製剤;規格:10mg/錠)のビーグル犬体内での薬物動態行為を研究し、速放-徐放の二重薬物動態特徴を有するかを調査し、本発明の実施例1に記載の方法で調製されたレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の溶液を参照製剤としてビーグル犬の相対的バイオアベイラビリティを評価した。成犬で健康なビーグル犬5匹(全て雄)を2グループに分け、単回投与試験を行った。ビーグル犬に対して空腹時に試験製剤及び参照製剤を10mg/匹の用量で経口投与し、異なる時点の血漿サンプルを収集した。液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析により血漿中のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物(レバムロジピン換算)の濃度を測定し、薬物動態パラメータを算出した。結果を下表に示す。
【0090】
【0091】
ビーグル犬に10mgレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の試験製剤及び参照製剤を経口投与した後の平均血中薬物濃度-時間曲線を
図10に示す。
【0092】
結果から分かるように、ビーグル犬にレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の徐放錠を経口投与した後、犬体内でのレバムロジピンの平均ピーク血中薬物濃度は47.4ng/mlであり、参照製剤のピーク濃度69.8ng/mlよりも32%低減し、徐放錠は、速放製剤のピーク濃度を効果的に低減できることを示している。投与の1h後のレバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の徐放錠の血中薬物濃度は参照製剤のピーク濃度の20%以上であり、平均ピーク時間は7.3hであり、参照製剤のピーク時間2.0hよりも長くなり、速放-徐放の二重放出特徴を有し、特定の時間内で安定した血中薬物濃度を維持することができる。レバムロジピンベシル酸塩水和物組成物の徐放錠は、参照製剤に対するバイオアベイラビリティが 86.0%であり、ビーグル犬での2つの製剤の吸収度が基本的に同じであることを示している。犬の胃腸管が比較的短く、薬物の排泄が比較的速いことを考えると、ヒト試験での徐放性製剤の徐放効果及び吸収度は、犬よりも優れていると予想されている。