(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】製造データを使用した機械学習ベースの付加製造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20231215BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20231215BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20231215BHJP
B22F 10/14 20210101ALI20231215BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20231215BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20231215BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20231215BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20231215BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231215BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/165
B29C64/393
B22F10/14
B22F10/28
B22F10/85
G06N20/00 130
B33Y50/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2022530692
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(86)【国際出願番号】 US2020054263
(87)【国際公開番号】W WO2021126345
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-05
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ニラカンタン,パドマナバン
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0331402(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193790(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03495904(EP,A1)
【文献】特開2017-202632(JP,A)
【文献】特許第6501032(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第03422281(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0257306(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B29C 64/393
B29C 64/165
B22F 10/14
B22F 10/28
B22F 10/85
G06N 3/08
G06N 20/00
B33Y 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習ベースの付加製造方法であって、前記方法が、
機械学習モデルを用いて、新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルを処理して、少なくとも1つのパーツ最適化出力と、新しいパーツの付加製造を構成するための少なくとも1つのコマンド開始出力と、を提供すること
であって、前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツが付加製造されることになる解像度を定義し、かつ、異なる製作スライス解像度と比較して前記新しいパーツを付加製造するのに必要とされる時間の量を低減する、前記新しいパーツの製作スライス解像度を含むことと、
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力と、前記少なくとも1つのコマンド開始出力と、に基づいて、付加製造を使用して、前記新しいパーツを製作することと、
を含み、
前記機械学習モデルが、ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリに基づいてトレーニングされ、前記ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリが各々、少なくともデータを含み、前記データが、
以前に製作された、または製作が試みられた付加製造されたパーツに対する要件、
付加製造製作デバイスを記述する仕様、
前記付加製造されたパーツの製作のために前記製作デバイスに供給される原材料タイプの選択、
前記製作デバイス内の前記付加製造されたパーツの製作空間配向、
前記付加製造されたパーツの製作スライス解像度、および
前記付加製造されたパーツを製作する際に前記製作デバイスがたどるツールパス、
を定義
し、
前記機械学習モデルが、前記新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルに、および前記ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリに基づいて、前記新しいパーツの製作スライス解像度を含む少なくとも1つのパーツ最適化出力を提供する、方法。
【請求項2】
前記ユーザエクスペリエンスデータベース内の各エントリが、ブロックチェーン内のタイムスタンプ付きブロックである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツの製作空間配向を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツとともに付加製造された支持構造を記述する支持曲線のセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツが付加製造される材料タイプの選択を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコマンド開始出力が、前記入力ベクトルに基づいて、前記機械学習モデルによって生成されたツールパスに沿って印刷を開始するために3Dプリンタに送信されるコマンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
機械学習ベースの付加製造のためのシステムであって、前記システムが、
1つ以上の非一時的なコンピュータ可読メモリ上に格納された、またはそれにわたって分散されたユーザエクスペリエンスデータベースであって、前記ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリが各々、少なくともデータを含み、前記データが、
以前に製作された、または製作が試みられた付加製造されたパーツに対する要件、
付加製造製作デバイスを記述する仕様、
前記付加製造されたパーツの製作のために前記製作デバイスに供給される原材料タイプの選択、
前記製作デバイス内の前記付加製造されたパーツの製作空間配向、
前記付加製造されたパーツの製作スライス解像度、および
前記付加製造されたパーツを製作する際に前記製作デバイスがたどるツールパス、
を定義する、ユーザエクスペリエンスデータベースと、
前記ユーザエクスペリエンスデータベースの前記エントリに基づいてトレーニングされた機械学習モデルを実装する命令を実行するように構成されたプロセッサであって、前記機械学習モデルが、新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルを処理して、新しいパーツの付加製造を構成するための少なくとも1つのパーツ最適化出力および少なくとも1つのコマンド開始出力を提供するように構成されて
おり、前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツが付加製造されることになる解像度を定義し、かつ、異なる製作スライス解像度と比較して前記新しいパーツを付加製造するのに必要とされる時間の量を低減する、前記新しいパーツの製作スライス解像度を含み、前記機械学習モデルが、前記新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルに、および前記ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリに基づいて、前記新しいパーツの製作スライス解像度を含む少なくとも1つのパーツ最適化出力を提供する、プロセッサと、
を含む、システム。
【請求項8】
前記ユーザエクスペリエンスデータベース内の各エントリが、ブロックチェーン内のタイムスタンプ付きブロックである、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツの製作空間配向を含む、請求項
7に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツとともに付加製造された支持構造を記述する支持曲線のセットを含む、請求項
7に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツが付加製造される材料タイプの選択を含む、請求項
7に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコマンド開始出力が、前記入力ベクトルに基づいて、前記機械学習モデルによって生成されたツールパスに沿って印刷を開始するために3Dプリンタに送信されるコマンドを含む、請求項
7に記載のシステム。
【請求項13】
命令を格納する1つ以上の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令が、コンピュータプロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、
複数のエントリを含むユーザエクスペリエンスデータベースでトレーニングされた機械学習モデルを用いて、新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルを処理して、少なくとも1つのパーツ最適化出力と、新しいパーツの付加製造を構成するための少なくとも1つのコマンド開始出力と、を提供する
ようにさせ、
前記ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリが各々、少なくともデータを含み、前記データが、
以前に製作された、または製作が試みられた付加製造されたパーツに対する要件、
付加製造製作デバイスを記述する仕様、
前記付加製造されたパーツの製作のために前記製作デバイスに供給される原材料タイプの選択、
前記製作デバイス内の前記付加製造されたパーツの製作空間配向、
前記付加製造されたパーツの製作スライス解像度、および
前記付加製造されたパーツを製作する際に前記製作デバイスがたどるツールパス、
を定義
し、
前記少なくとも1つのパーツ最適化出力が、前記新しいパーツが付加製造されることになる解像度を定義し、かつ、異なる製作スライス解像度と比較して前記新しいパーツを付加製造するのに必要とされる時間の量を低減する、前記新しいパーツの製作スライス解像度を含み、前記機械学習モデルが、前記新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルに、および前記ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリに基づいて、前記新しいパーツの製作スライス解像度を含む少なくとも1つのパーツ最適化出力を提供する、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月17日に出願された米国特許出願第16/717624号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、付加製造のためのソフトウェアツールの分野に関し、具体的には、製造データを使用した機械学習ベースの付加製造のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造は、3次元(3D)モデルデータから層ごとに物理的なオブジェクトを製作するために、プリンタまたは他の製作機を使用して原材料を接合するコンピュータ制御のプロセスである。したがって、付加製造は、サブトラクティブマニュファクチャリング方法と対照的であり得、サブトラクティブマニュファクチャリング方法は、未加工のワークピースから材料を切り取る、焼き払う、または別様に切除するかもしくは取り除くことによって、物理的なオブジェクトを製作する。この用途の目的のために、原材料は、有用な形状にまだ形成されていない実質的に均質な材料である。付加製造技術には、3D印刷、バインダージェット、直接エネルギー堆積、可動アームに取り付けられた加熱ノズルからの材料押し出し、粉末床溶融(直接金属レーザー溶融(DMLM)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的レーザー焼結(SLS)、および選択的熱焼結(SHS)を含む)、シートラミネーション(積層オブジェクト製造(LOM)および超音波付加製造(UAM)を含む)、バット重合、およびワイヤーアーク付加製造が含まれる。この用途の目的では、付加製造とは、原材料ではない様々なプレハブコンポーネントを単に組み立てることを意味するものではない。依然として「付加製造」と称される全体的なプロセスは、コンポーネントの付加製造から始まるが、サブトラクティブマニュファクチャリングステップをさらに含むことができる。一例として、付加製造では、オーバーハング構造の堆積をサポートするための支持構造の製作が必要になる場合があり、支持構造は、完成した製作オブジェクトの一部を形成することを意図しておらず、したがって、例えば、手動で切り取るか、または超音波エネルギーを使用して溶解させることによって、除去しなければならない。プロセスは、そのようなサブトラクティブな後処理ステップが含まれている場合でも、依然として付加製造と称されることがある。
【0004】
機械学習(ML)は、人工知能(AI)のサブセットであり、コンピュータがアルゴリズムと統計モデルを使用して、学習またはトレーニングデータセットを分析した後、明示的にコード化された命令を使用せずにタスクを正確に実行し、事実上、過去の経験から一般化するためにパターンおよび推論に依拠する。したがって、MLベースのシステムは、これまで見られなかった、または考慮されていなかった、個々のケースごとにコーディングすることが不可能な問題を解決することができる。MLアルゴリズムのタイプには、とりわけ、教師なし学習および特徴学習が含まれる。トレーニングデータでトレーニングできるMLモデルのタイプには、人工ニューラルネットワーク、決定木、サポートベクターマシン、回帰分析モデル、ベイジアンネットワーク、遺伝的アルゴリズム、主成分分析、およびクラスター分析が含まれる。
【0005】
分散型元帳は、中央管理者または中央データストレージがない、複数のネットワーク化されたコンピュータシステムにわたって分散された、複製され、共有され、同期されたデジタルデータのコンセンサスである。ブロックチェーンは、暗号化を使用してリンクされたブロックと呼ばれるレコードの増加するリストを含む分散型元帳であり、各ブロックは、前のブロックの暗号化ハッシュ、タイムスタンプ、およびトランザクションデータ(例えば、マークルツリーとして表される)を含む。一度記録されると、所与のブロックのデータは、後続のすべてのブロックを変更せずに遡及的に変更することはできず、これには、元帳が分散的に格納されているネットワーク化されたコンピュータシステムのコンセンサスが必要である。プライベートブロックチェーンは、参加者および検証者のアクセスをネットワーク管理者によって招待されたものに制限する、許可されたものである。
【発明の概要】
【0006】
一例は、機械学習ベースの付加製造方法を含む。この方法は、機械学習モデルを用いて、新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルを処理して、少なくとも1つのパーツ最適化出力と、新しいパーツの付加製造を構成するための少なくとも1つのコマンド開始出力と、を提供することを含むことができる。機械学習モデルは、ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリに基づいてトレーニングされ、ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリは各々、少なくともデータを含み、当該データは、以前に製作された、または製作が試みられた付加製造されたパーツに対する要件、付加製造製作デバイスを記述する仕様、以前に製作された、または製作が試みられた付加製造されたパーツの製作のために製作デバイスに供給される原材料タイプの選択、製作デバイス内の付加製造されたパーツの製作空間配向、付加製造されたパーツの製作スライス解像度、およびパーツを製作する際に製作デバイスがたどるツールパス、を定義する。この方法は、少なくとも1つのパーツ最適化出力と、少なくとも1つのコマンド開始出力と、に基づいて、付加製造を使用して、新しいパーツを製作することをさらに含む。
【0007】
別の例は、機械学習ベースの付加製造のためのシステムを含む。システムは、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読メモリ上に格納された、またはそれにわたって分散されたユーザエクスペリエンスデータベースを含むことができる。ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリは各々、少なくともデータを含み、当該データは、以前に製作された、または製作が試みられた付加製造されたパーツに対する要件、付加製造製作デバイスを記述する仕様、付加製造されたパーツの製作のために製作デバイスに供給される原材料タイプの選択、製作デバイス内の付加製造されたパーツの製作空間配向、付加製造されたパーツの製作スライス解像度、およびパーツを製作する際に製作デバイスがたどるツールパス、を定義する。システムは、ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリに基づいてトレーニングされた機械学習モデルを実装する命令を実行するように構成されたプロセッサをさらに含む。機械学習モデルは、新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルを処理して、少なくとも1つのパーツ最適化出力と、新しいパーツの付加製造を構成するための少なくとも1つのコマンド開始出力と、を提供するように構成されている。
【0008】
さらに別の例は、上記のシステムとしてコンピュータを提供するように、または上記の方法をコンピュータと組み合わせて実行するように構成された1つ以上のコンピュータ可読媒体を含む。そのような例は、命令を格納する1つ以上の非一時的なコンピュータ可読媒体を含むことができ、命令が、コンピュータプロセッサによって実行されるときに、プロセッサに、複数のエントリを含むユーザエクスペリエンスデータベースでトレーニングされた機械学習モデルを用いて、新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルを処理して、少なくとも1つのパーツ最適化出力と、新しいパーツの付加製造を構成するための少なくとも1つのコマンド開始出力と、を提供させる。ユーザエクスペリエンスデータベースのエントリは各々、少なくともデータを含み、当該データは、以前に製作された、または製作が試みられた付加製造されたパーツに対する要件、付加製造製作デバイスを記述する仕様、付加製造されたパーツの製作のために製作デバイスに供給される原材料タイプの選択、製作デバイス内の付加製造されたパーツの製作空間配向、付加製造されたパーツの製作スライス解像度、および付加製造されたパーツを製作する際に製作デバイスがたどるツールパス、を定義する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】製造データを使用した機械学習ベースの付加製造のための例示的なシステムの機能ブロック図である。
【
図2】製造データを使用した機械学習ベースの付加製造のための例示的なシステムの機能ブロック図である。
【
図3】付加製造機械学習モデルの例示的なトレーニングを示すフロー図である。
【
図4】機械学習ベースの付加製造の一例を示すフロー図である。
【
図5A-5D】付加製造製作のための例示的な回路基板モックアップの3Dモデルの斜視図および各種平面図をそれぞれ示す。
【
図6】スパース低密度パーツビルドスタイルを使用してステレオリソグラフィ形式に変換した後の、
図5A~
図5Dのモデルの層の一部を示す。
【
図8】
図7のモデルを層状にスライスした斜視図である。
【
図9A-9D】支持曲線を追加した
図8のSTLモデルの斜視図および各種平面図をそれぞれ示す。
【
図10】支持曲線を有するモデルを示す、
図9A~Dのモデルの斜視図である。
【
図12】製造データを使用した機械学習ベースの付加製造の例示的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
企業は、顧客に販売するための製品自体として、または新製品開発サイクルの一部として社内のプロトタイプとして、付加製造されたパーツまたはアセンブリを生産する場合がある。しかしながら、付加製造は、所与のパーツまたはアセンブリについて、成功が達成される前に多くの付加製造の失敗が発生することがあるという点で、非常にヒューリスティックで反復的なプロセスになる可能性がある。部分的または完全な付加製造の後、出力パーツまたはアセンブリが期待どおりまたは所望どおりに生産されなかったり、必要な仕様または公差を満たさなかったりすると、失敗に終わる。付加製造によってパーツまたはアセンブリが正常に生産されたとしても、パーツがより最適な方法で生産された場合、つまり、生産前の処理および印刷設定の中でも、パーツの向き、印刷解像度、および材料タイプの選択に関してより適切な選択が行われた場合よりも、プリンタ時間、後処理時間、または原材料を含む必要な量以上のリソースが生産に消費されるという意味で、生産は無駄になることがある。付加製造の失敗または次善の典型的な原因は、網羅的にリストするには多すぎるが、欠陥のあるもしくは次善のパーツ印刷の向き、または欠陥のあるもしくは次善の支持構造の配置または設計を含み得る。一方、顧客の要件を抽出し、プリンタの仕様および設定を理解し、適切な材料を選択し、モデルファイルをステレオリソグラフィファイル形式に適切に変換することに注意することで、パーツの製作を確実に成功させることができる。
【0011】
各々の失敗または次善の成功は、人員およびプリンタの時間ならびに/または原材料の浪費に相当するが、付加製造プロセスの試行錯誤の過程で蓄積された「学んだ教訓」および「部族の知識」を加えることもある。この蓄積された知識は、同じパーツまたはアセンブリ、またはまったく新しいパーツもしくはアセンブリの将来の反復の付加製造の情報を提供するのに役立つ場合があるが、体系的な方法で文書化および普及されない場合、1人または数人の個々の付加製造担当者(「ユーザ」)の個人的な経験内のプライベートノウハウとしてのみ残る場合があり、任意の単一の個人、または企業の担当者の数人もしくはすべての知識のあるユーザが相談できるよりもはるかに多くのパーツまたはアセンブリを付加製造する必要があり得る大企業にとっては有用性が低くなる。内部で公開された、またはコンピュータネットワークのファイルサーバーに格納された書面によるレポートなどの従来の手段を使用して十分に文書化および普及されたとしても、そのような蓄積された知識は、おそらく数千または数百万のレポートを含む文書の大規模な電子ディレクトリまたはデータベースに直面し、1人の担当者が望ましい知識をどこで見つけるかを知り、そのような知識がディレクトリまたはデータベースに存在し得ることを知ることさえ現実的でないため、将来の反復または新しいパーツもしくはアセンブリを改善するのに使用するために、実際にはアクセスできないままである場合がある。さらに、従来の知識格納手段は、そこに格納された知識が、将来の生産ジョブの結果を改善するために有用に実装できる方法で、各付加製造生産ジョブで任意の所与のパーツまたはアセンブリに対して反復的に強化されるための準備ができた方法を提供しない。
【0012】
添付の図面に示され、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、知識をデータベースに格納することにより、企業または組織内で蓄積された付加製造の知識の自動再利用を可能にし、例えば、蓄積された知識に関する機械学習モデルをブロックチェーンとして訓練する、そして訓練された機械学習モデルを新しい付加製造プロジェクトとタスクに適用して、付加製造の成果を改善し、それによって次善の付加製造生産に関連付けられた失敗と無駄を低減する。プライベート元帳は、企業または組織内でこれまでに生産された各付加製造されたパーツまたはアセンブリに関する学んだ教訓と部族の知識を含む、オープンソースのブロックチェーンベースの分散プラットフォームとして機能することができる。各元帳ブロックは、パーツの形状、ビルドパラメータおよび向き、失敗解析モデリング、学んだ教訓、部族の知識、処理ソフトウェア、使用する機械、有限要素法(FEM)/有限要素解析(FEA)モデル、欠陥、欠点、および画像などの情報を含む様々な製造知識を含むことができる。元帳は、各参加者が入力するたびに反復的に強化される可能性がある。元帳のレコードは、暗号化を介してリンクおよび保護することができ、つまり、元帳は、ブロックチェーンとすることができる。
【0013】
次の経験をより生産的および/または無駄の少ないものにする付加製造プロセスに適用できる多くの学んだ教訓および技術的トリックは、例えば、企業または組織内など、複数のユーザが共有する履歴レコードに収集できる。履歴レコードがより豊かで拡張性が高くなり、学習エクスペリエンスが追加されると、履歴レコードでトレーニングされた機械学習モデルを含むシステムは、学習したリアルタイムの補正アクションを自動的に適用するか、または、例えば、3Dプリンタを起動するために、製造コマンドが開始される前、ユーザに修正を推奨することができる。本明細書に記載のシステムおよび方法は、それにより、付加製造の成功の可能性を高め、および/またはそれによって付加製造されるオブジェクトもしくはアセンブリの品質を向上させることができる。説明されたシステムおよび方法は、許容可能な出力を達成するために必要な印刷生産ジョブまたは印刷生産ジョブの実行の数を減らすことができ、したがって、製作コストを下げることができる。
【0014】
説明されたシステムおよび方法は、大規模な、潜在的に世界的な歴史的人口ベースのリソースを利用することができる。機械学習モデルは、定義された完了したパーツトランザクションのセットとともに記述されたパラメータでトレーニングできるため、新しいパーツビルドの課題が提示されたときに正確な結論に達することが容易になる。
【0015】
図1は、製造データを使用した機械学習ベースの付加製造のための例示的なシステム100の機能ブロック図を示している。システム100は、クラウドコンピューティング環境に常駐し得る1つ以上の物理デバイス(例えば、サーバ)、またはラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ワークステーションなどのコンピュータ上に実装することができる。この例では、システム100のコンポーネント102、104、106、108、および110は、同じシステム上に実装されるように示されているが、他の例では、異なるコンポーネントは、異なるシステムに分散され、例えば、無線ネットワーク、有線ネットワーク、またはそれらの組み合わせを含むネットワークを介して通信することができる。システム100は、データソースとして、付加製造製作パラメータおよび測定または記録された付加製造生産結果データをパターン分解コンポーネント104に提供するためにアクセスすることができる付加製造知識ベース102を含む。付加製造知識ベース102は、例えば、ローカルバスまたはネットワーク接続によってアクセス可能な任意の記憶媒体、またはユーザが1つ以上の以前の付加製造生産ジョブからの情報を入力できるユーザインターフェースを含むことができる。いくつかの例では、知識ベース102は、単一の中央システムに格納されているか、または複数のシステムに分散されているリレーショナルデータベースである。いくつかの例では、知識ベース102は分散型元帳である。いくつかの例では、知識ベース102はブロックチェーンであり、すなわち、知識ベース102は、ブロックチェーン形式で格納されたデータベースであり得、データベース内の各エントリは、分散型元帳のタイムスタンプ付きブロックとして格納される。いくつかの例では、知識ベース102は、企業または組織内の許可されたユーザのみがそれに書き込みおよび/またはそれから読み取ることができるように構成されたプライベートブロックチェーンである。
【0016】
パターン分解コンポーネント104は、印刷されているオブジェクトまたはアセンブリを表す情報、プリンタ設定を表す情報、および印刷結果を表す情報を含む、過去の付加製造経験を表す付加製造データのセットを分解するようにプログラムされる。ここで「印刷」という言葉は、3D印刷だけでなく、あらゆるタイプの付加製造モダリティを指すために包括的に使用される。付加製造データの新しいベクトルは、例えば、基底ベクトルの線形結合に分解して、付加製造データを表す係数のセットを提供することができる。付加製造データフィールド414のタイプの例示的なリストが
図4に示されている。
【0017】
特徴抽出器106は、パターン分解コンポーネント104で生成された係数のセットの少なくとも1つを含む特徴ベクトルを生成する。機械学習モデル108は、少なくとも1つのプレハブモデル調整パラメータ、および/または新しい印刷ジョブのための印刷設定パラメータ、および/またはメトリックからの少なくとも1つの印刷ジョブ結果推定値を決定する。例として、網羅的なリストを意味するものではなく、プレハブモデル調整パラメータは、印刷ジョブで印刷されるコンポーネントまたはアセンブリの印刷方向、使用される層の数、または層の厚さ、プレハブモデルの処理段階で印刷するために3次元モデルを分割する方法を説明する形状パラメータ、またはプレハブモデルの処理段階でモデルに追加された支持構造の配置またはジオメトリを制御する情報を表すことができる。例として、網羅的なリストを意味するものではなく、印刷設定パラメータは、ジョブに使用される材料、使用される特定のプリンタもしくはプリンタのモデル、ノズル開口部の厚さもしくは温度、または3Dプリンタもしくは他の付加製造製作デバイスで修正するためにアクセスできる可能性のあるいくつかの他のパラメータのうちの任意ものを表すことができる。例として、網羅的なリストを意味するものではなく、結果推定値は、ジョブの印刷時間の推定値、印刷ジョブの原材料使用量の推定値、または印刷ジョブの成功の可能性の推定値である可能性がある。プレハブモデル調整パラメータまたは印刷設定パラメータは、それぞれパーツの最適化またはコマンドの開始を提供するか、またはそれに寄与する。機械学習モデル108によって提供されるプレハブモデル調整パラメータ、印刷設定パラメータ、および/または結果推定値は、システム100に関連付けられた、および/またはユーザインターフェース(
図1には図示せず、
図2を参照されたい)を介して、ディスプレイでユーザに提供される非一時的なコンピュータ可読媒体に格納することができる。
【0018】
図2は、製造データを使用した機械学習ベースの付加製造のための例示的なシステム200の機能ブロック図を示している。この目的のために、システム200は、付加製造データを典型的なパラメータに分解して生成された特徴を利用して、3Dプリンタまたはその他の付加製造製作デバイスの製作前モデルの処理調整または設定の変更を表すカテゴリまたは連続付加製造パラメータを生成する機械学習モデル214を組み込んでいる。図示の実装形態では、付加製造知識ベース202は、1つ以上の過去の印刷ジョブまたは印刷実行に関する付加製造データを、マシン実行可能な命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体206に動作可能に接続された汎用プロセッサ204として実装されたデータ分析コンポーネントに提供する。図示のシステム200では、付加製造データは、パーツプログラミング情報だけでなく、特定の機械またはソフトウェア変数も含むことができる。マウスまたはキーボードなどの入力デバイス218を提供して、ユーザが付加製造データを入力または修正することを含めて、システム200と対話できるようにすることができ、付加製造データおよび計算されたパラメータをユーザに表示するために、ディスプレイ220を提供することができる。
【0019】
図示の例200では、機械実行可能命令は、印刷ジョブを、異なる複雑さのレベル、または3D印刷もしくは他の方法で付加製造されるオブジェクトのタイプを表す複数のカテゴリの1つに分類する事前分類器208を含む。事前分類器208は、この決定のために任意の適切な分類モデルを利用することができ、例えば、パーツの形状に基づいてパーツを分類する確率分布を作成するか、または簡単な例では、事前分類器は、複雑さおよび/またはタイプカテゴリを明示的に指定する知識ベース202内の付加製造データに格納された1つ以上のユーザ生成変数に基づくことができる。
【0020】
パターン分解コンポーネント210は、
図1のシステム100のように、付加製造データを、付加製造データパターンの定義された基底関数系の線形結合に分解して、付加製造データを特徴付ける係数のセットを生成するようにプログラムすることができる。定義された基底関数系は、例えば、付加製造データのコーパスに対する典型的な分析を介して定義することができる。しかしながら、図示の例では、複数の基底関数系を生成することができ、各々が、事前分類器208に関連付けられた複数のカテゴリのうちの1つを表す。したがって、各印刷ジョブのパターン分解コンポーネント210で使用される基底関数系は、事前分類器208でその印刷ジョブに割り当てられたカテゴリに従って割り当てることができる。以下で説明する
図5~11は、例示的な印刷ジョブのプレハブモデル処理を示している。
【0021】
パターン分解コンポーネント210からの係数のセットを特徴抽出器212に提供して、所与の過去の印刷ジョブを表す特徴ベクトルを生成することができる。時間の経過に伴う印刷ジョブの連続反復のために複数の付加製造データのセットが取得される場合、付加製造データの任意の値の変化、中心傾向の測定、または偏差の測定も特徴ベクトルで使用することができる。
【0022】
機械学習モデル214は、例えば、分類および回帰モデルとして実装された1つ以上のパターン認識アルゴリズムを利用することができ、その各々は、抽出された特徴ベクトルを分析して、1つ以上のプレハブまたは製作パラメータまたは結果推定値をジョブに割り当てる。訓練され、製作される新しいパーツに関する情報が提供されると、機械学習モデルは、事実上、最適なパーツの印刷の向き(製作のために新しいパーツを3次元空間でどのように方向付けるかを指示する)、印刷前にモデルに追加する必要のある支持構造のタイプ、配置、および特性、スライスメカニズム、堆積層、1つ以上のツールパス、および/または1つ以上の境界曲線(提案または決定の例として)に関する提案または決定を自動的に行うことができる。プレハブまたは製作パラメータまたは結果推定値は、カテゴリ別または連続的であり得る。例えば、カテゴリパラメータは、選択した材料タイプ、または印刷ジョブに使用するプリンタのモデルを表すことができる。連続パラメータは、例えば、モデルの向き、ジョブに使用される層の数、層の厚さ、プレハブモデル処理で使用される様々な形状パラメータ、印刷時間の推定値、または印刷ジョブの成功の可能性の推定値を表すことができる。
【0023】
複数の分類および回帰モデルが使用される場合、機械学習モデル214は、様々なアルゴリズムからの首尾一貫した結果を提供するために利用され得る調停要素を含むことができる。様々なモデルの出力に応じて、調停要素は、信頼度が最も高いモデルからクラスを選択する、信頼度のしきい値を満たすすべてのモデルから複数のクラスを選択する、モデルの中から投票プロセスを介してクラスを選択する、または複数のモデルの出力に基づいて数値パラメータを割り当てることができる。あるいは、調停要素自体を、他のモデルの出力を機能として受け取り、印刷ジョブの1つ以上の出力クラスを生成する分類モデルとして実装することもできる。
【0024】
機械学習モデル214、および任意の構成モデルは、関心のある様々なクラスを表すトレーニングデータでトレーニングできる。機械学習モデル214のトレーニングプロセスは、その実装によって異なるが、トレーニングには通常、トレーニングデータを出力クラスに関連付けられた1つ以上のパラメータに統計的に集約することが含まれる。モデルには、サポートベクターマシン(SVN)、回帰モデル、自己組織化マップ、ファジー論理システム、データ融合プロセス、ブースティングおよびバギング手法、ルールベースのシステム、人工ニューラルネットワーク(ANN)など、様々な手法のいずれかを利用することができる。
【0025】
例えば、SVM分類器は、超平面と称される複数の関数を利用して、N次元の特徴空間の境界を概念的に分割することができ、N次元の各々は、特徴ベクトルの1つの関連する特徴を表す。境界は、各クラスに関連付けられた特徴値の範囲を定義する。したがって、出力クラスおよび関連する信頼値は、境界に対する特徴空間内の位置に従って、特定の入力特徴ベクトルに対して決定することができる。SVM分類器は、ユーザ指定のカーネル関数を利用して、定義された特徴空間内でトレーニングデータを整理する。最も基本的な実装では、カーネル関数は、動径基底関数である可能性があるが、ここで説明するシステムおよび方法は、いくつかの線形または非線形のカーネル関数のいずれかを利用することができる。
【0026】
ANN分類器は、複数の相互接続を持つ複数のノードを含む。特徴ベクトルからの値は、複数の入力ノードに提供される。入力ノードは各々、これらの入力値を1つ以上の中間ノードの層に提供する。特定の中間ノードは、前のノードから1つ以上の出力値を受信する。受信した値は、分類器のトレーニング中に確立された一連の重みに従って重み付けされる。中間ノードは、ノードでの伝達関数に従って、受信した値を単一の出力に変換する。例えば、中間ノードは、受信した値を合計し、その合計をバイナリステップ関数にかけることができる。ノードの最後の層は、ANNの出力クラスの信頼値を提供し、各ノードは、分類器の関連する出力クラスの1つの信頼度を表す関連する値を有する。
【0027】
回帰モデルは、抽出された特徴の様々な関数、最も一般的には線形関数に重みのセットを適用して、連続的な結果を提供する。一般に、回帰特徴はカテゴリ別であり、例えば、0または1として表されるか、連続的である可能性がある。ロジスティック回帰では、モデルの出力は、抽出された特徴のソースが特定のクラスのメンバーであるという対数オッズを表す。二項分類タスクでは、これらの対数オッズをクラスメンバーシップの信頼値として直接使用するか、ロジスティック関数を介して、抽出された特徴が与えられた場合のクラスメンバーシップの確率に変換することができる。
【0028】
ルールベースの分類器は、抽出された特徴に論理ルールのセットを適用して、出力クラスを選択する。通常、ルールは順番に適用され、各ステップでの論理的な結果が後のステップでの分析に影響を与える。特定のルールとその順序は、トレーニングデータのいずれかまたはすべて、以前のケースからの類推、または既存のドメイン知識から決定することができる。ルールベースの分類器の1つの例は、決定木アルゴリズムであり、このアルゴリズムでは、特徴セット内の特徴の値が階層ツリー構造内の対応するしきい値と比較され、特徴ベクトルのクラスが選択される。ランダムフォレスト分類子は、ブートストラップ集約または「バギング」アプローチを使用した決定木アルゴリズムの修正である。このアプローチでは、トレーニングセットのランダムなサンプルで複数の決定木がトレーニングされ、複数の決定木の平均(例えば、平均、中央値、最頻値など)の結果が返される。分類タスクの場合、各ツリーの結果は、カテゴリに分類されるため、モーダル結果を使用することができるが、特定のタスクを選択する決定木の数に応じて連続パラメータを計算することができる。
【0029】
使用される特定のモデルに関係なく、機械学習モデル214で生成されたプレハブモデル調整パラメータ、印刷設定パラメータ、および/または結果推定値は、ユーザインターフェース216を介してディスプレイ220でユーザに提供され、例えば、印刷ジョブに関連付けられたファイルまたはデータベースまたはデータベースエントリ内の非一時的なコンピュータ可読媒体206に格納され、または印刷ジョブもしくは複数の印刷ジョブの実行を構成、スケジュール、または実行するためにプリンタ222に出力することができる。
【0030】
図3は、付加製造の機械学習モデルの例示的なトレーニングの基本的なフロー図を示している。プルーフオブワーク302ごとに、情報は、パラメトリックブロックデータ304として、付加製造知識ベース、例えば、分散型元帳に入力される。プルーフオブワークとは、処理され、完成し、正常に使用または顧客に引き渡された付加製造されたパーツである。任意の完了は、ナレッジベースに記録できる部分トランザクションを構成する。プルーフオブワークチェーンは、企業または組織によって作成されたパーツの複数のパーツトランザクションを含むブロックチェーン元帳であり、各パーツトランザクションは、チェーン内のタイムスタンプ付きのブロックである。これにより、プルーフオブワークチェーンは、パーツがどのように「トランザクション」されたか、どのように作成されたか、どのように構築されたか、そのパーツを作るためにどのようなリソースの負担/費用があったか、およびパーツを正常に作成する際にどのようなタイプの問題が発生したかに関する情報を収集する。実際には、暗号通貨で使用されるブロックチェーンが常に通貨所有権の譲渡トランザクションを収集するのと同じように、プルーフオブワークチェーンは常にパーツトランザクション情報を収集することができる。知識ベースに蓄積されるユーザデータが多いほど、プルーフオブワークチェーンが長くなり、知識ベースとそのパラメトリックブロックデータ304は、機械学習モデル306をトレーニングするためのメカニズムとして強力になる。
【0031】
分散型元帳のプルーフオブワークチェーンとして知識ベースを実装すると、一元化されたデータリポジトリで提供されるものよりも、分散化、暗号化、およびセキュリティのメリットを得ることができる。しかしながら、ブロックチェーンの形式で実装されている場合でも、プルーフオブワークチェーンは必ずしも分散化された方法で格納され、多数の異なるコンピュータシステムに分散されている必要はなく、いくつかの例では、プルーフオブワークチェーンを単一の中央データサーバに格納することができる。このような場合でも、プルーフオブワークチェーンは、地理的に異なる複数の付加製造サイトから付加製造データを取得することができる。このように、プルーフオブワークチェーンのブロックチェーン形式は、プルーフオブワークチェーンが最終的に中央に格納されている場合でも、地理的に分散した企業または組織にメリットをもたらすことができる。
【0032】
図4は、機械学習ベースの付加製造プロセス400の例を示している。複数の付加製造ジョブの過程で、何人かのユーザ402、404、406、...408は、製作パラメータおよび結果情報を入力することによって、ユーザエクスペリエンスデータベース410に貢献する。ユーザエクスペリエンスデータベース410は、例えば、
図1の知識ベース102または
図2の知識ベース202に対応することができる。パラメータ化され、データベース410に格納することができる情報のタイプのリストの例は、ボックス414に提供されている。ユーザエクスペリエンスデータベース410は、機械学習ベースの付加製造プロセス400によって提供されるパーツ最適化情報422またはコマンド開始情報424から、例えば、3次元モデルを前処理して3D印刷用に準備するために使用される命令、または機械学習ベースの付加製造システムの一部としてプリンタもしくはプリントコントローラに発行されるコマンドによって、自動化された方法で更新することもできる。
【0033】
ユーザエクスペリエンスデータベース410にアクセスできるので、ユーザまたはオペレータは、顧客の注文または社内の要求に基づいて、新しいパーツトランザクション412を開始することができる。様々な情報が新しいパーツトランザクション412に関連付けられ得、その例は、ボックス414に網羅的にリストされていない。
【0034】
「顧客の要件」は、注文したパーツの使用方法、パーツの必要な寸法、形状、および曲率(モデルファイルで指定され得る)、ならびに従来の製作技術(金属のブロックからの機械加工など)を使用して製造するのではなく、顧客がパーツを付加製造するように注文した理由に関する情報を含むことができる。このようなデータは、デモンストレーション、機能プロトタイプ、概念モデル、シミュレーション、テスト、設計改善、提案、モックアップ、ツーリング、およびアセンブリ計画に関連する構造化データを含み得る。また、このカテゴリ内には、完成したパーツにかかると予想される荷重もしくはクランプ圧力、パーツをツーリングに使用するかどうか、パーツをプロトタイプもしくはデモンストレーションパーツとして使用するかどうか、または逆に、パーツが生産もしくはミッション環境で機能することが期待されるかどうかに関する情報も含まれ得る。モデルファイルは、例えば、コンピュータ支援設計およびコンピュータ支援製造(CAD/CAM)ファイル、CATIAファイル、Creo Elements(以前のPro/ENGINEER)ファイル、またはNXファイルであり得る。
【0035】
「プリンタの仕様」には、プリンタのメーカー、パーツの最大製作寸法が決まるプリンタのチャンバ容積(ビルドエンベロープとも呼ばれる)、最大のプリンタ層解像度能力、プリンタの精度および許容誤差、受け入れられる材料のタイプ(プリンタが印刷できるもの)、プリンタでサポートされているソフトウェアプラットフォーム、ならびにプリンタのキャリブレーション情報を含めることができる。
【0036】
「材料の選択および推論」は、3Dプリンタまたは他の付加製造デバイスに供給するために選択された原材料を指定または特徴づける情報を含む。例として、材料のタイプは、ABS、ASA、ESD-7、Ultem 1010樹脂、Ultem 9085樹脂、Ultem 2300、Ultem PEI、Antero、ポリカーボネート、ナイロン-12、炭素繊維、チタン合金、PEKK、PPSU、PEEK、アルミニウム、およびインコネルを含み得る。関連する「推論」は、ある材料が別の材料よりも選択された理由を知るのに有益に役立ち得る。例えば、製作されたパーツが純粋に展示のために(例えば、デモンストレーションコンポーネントとして)使用される場合、より耐久性が低く、その結果、より安価であるか、または印刷が容易な原材料を使用することができる。対照的に、製作されたパーツが生産またはミッション条件下で使用され、引張強度、耐久性、剛性、柔軟性、耐熱性、耐傷性、または他の使用特性に関する特定のより厳しい仕様を満たす必要がある場合、何らかの異なる印刷原料が提案される場合がある。
【0037】
パーツための提供されるCADファイルは、3Dモデルで一般的に使用される製品モデルデータ交換標準(STEP)ファイル形式である場合があり、プレハブプロセスの一部としてステレオリソグラフィ(STL)ファイル形式に変換する必要がある。オペレータは、すべてのソリッドトポロジがSTEPファイルからSTLファイル形式に正しくインポートされていることを確認する必要がある。変換が不正確だと、印刷に失敗する。「ソリッドトポロジのインポート」は、モデルのすべての曲線とソリッドフィーチャが正確に表現された正しい形式でモデルがインポートされるようにするために、検出または提案されたインポート手順(インポートステップおよび/またはインポート設定)について説明する。
【0038】
流体力学シミュレーションは、パーツの主要構造にしっかりと取り付けられると予想されるパーツの小さなコンポーネントを含む、パーツのすべてのパーツが印刷終了時に実際にしっかりと固定されるように、製作されるモデルに対する液体環境の影響をシミュレートすることができる。これらのシミュレーションに関する情報は、ジョブに関連付けられたデータの「水密モデルの確保、流体力学(CFD)の計算」カテゴリにカプセル化されている。一例として、
図5~
図11に示される例のように、製作されるパーツがプリント回路基板のモックアップである場合、回路基板モックアップは、小さなコンポーネントが緩んだり、印刷されたモックアップから脱落したりすることがあるように、印刷後に希望どおりにしっかりと取り付けられていないことがある回路基板とともに印刷されたコンデンサおよび他の小さなコンポーネントを含み得る。CFDシミュレーションは、例えば、モデルを調整してモデルのサブコンポーネント間に材料を追加し、印刷後に相互に確実に接続することで、印刷前にモデルを修正することができるように、このようなモデルの不具合を検出するのに役立つ。
【0039】
開いた曲線は、ワイヤーフレームまたはソリッドで設計されたモデルの形状の欠陥であり、パーツ設計者は、CADモデルに開いた曲線があるパーツを設計し、そのCADモデルを付加製造オペレータに渡して印刷することができる。しかしながら、3D印刷ソフトウェアとプリンタは、モデルに開いた曲線を認識せず、印刷することができない。開いた曲線は、手動または特別なソフトウェアルーチンを使用して閉じることができる。知識ベースの「開いた曲線の閉鎖またはマージ」カテゴリは、モデル内のそのような障害に関する情報と、実動前段階の一部としてそれらを修復するために実行された修正措置を格納することができる。
【0040】
「幾何学的属性」は、パーツのX-Y-Z寸法、パーツの曲率、輪郭、および/またはスプライン、パーツの厚さ、印刷解像度に応じて、パーツの1つ以上の部分が薄すぎて印刷できないという判断などを含む。パーツまたはその一部の寸法公差、およびパーツに供給されると予想される応力とひずみに関連する情報は、「公差、有限要素解析(FEA)、荷重要件」カテゴリに分類され、同様に知識ベースに格納され、特定の機械精度、FDMプロセスの熱的性質、機械加工後、ハードマウントポイント、圧入ブッシングとピン、摩耗、ねじ込みインサートに関する情報を含むことができる。この情報は、材料タイプの選択と材料の密度に影響を与える可能性がある。
【0041】
「用途、環境データ」のカテゴリは、パーツが工具、地面のサポート、または屋外(したがって、日光、風、雨、雪、凍結/解凍などの要素にさらされる)、屋内、クリーンルーム環境、実験室環境、水中、圧力下、熱下、塩水または酸性条件下などでの使用を目的としているかどうかなどの情報を含む。このような情報は、設計の進化、工具、デモンストレーション、テスト、フィットチェック、インフラストラクチャ、UV効果、重量と耐久性に関する考慮事項、ツールアセンブリ、パーツボンディング、インサートとブッシングの統合、作業環境、公差、ハードマウントポイント、データム、静的および動的荷重、取り扱い、使用温度、化学的適合性、材料クリープ挙動、相互作用、美学、および表面粗さ(Ra)に関する情報を含む。この情報は、同様に、材料タイプの選択および材料の密度に影響を与える可能性がある。
【0042】
「学んだ教訓、成功と失敗」のカテゴリに格納されている情報は、過去の生産実行でオペレータが犯した間違いであり、印刷の失敗、または逆に、例外的な仕事の完了(「エピック」)をもたらした誤った選択につながった。このような情報には、例えば、不正確なファイル変換をもたらしたファイル変換ステップまたは設定、解像度の不適切または過剰な選択を含む印刷失敗をもたらしたプリンタ設定、不適切な向き、不適切な支持構造設計、材料の不適切な選択などを含むことができる。他の「学んだ教訓」は、最適と思われる向き、ベース領域に対するZの高さ、輪郭、ロフト、曲率、材料の挙動情報、後処理ステップ、超音波タンク効果を含むことができる。「技術的トリック」は、経験豊富なオペレータが生産が困難なパーツを生産するために使用する特別なセットアップに関する部族の知識および個人的な秘密を含み、この情報は、経験豊富なオペレータから新しいユーザに渡されることはない、またはほとんど伝わらない。これらのカテゴリの情報は、ユーザがパラメータ化された形式でエンコードするか、自然言語処理を使用して自動分析および数値形式に消化して機械学習モデル418のトレーニングまたはモデルによる新しいパーツトランザクションの処理412を促進できる自然言語の説明形式で格納することができる。
【0043】
一般に、背が高く印刷されたパーツは、平らに印刷されたパーツよりも多くの支持構造材料を必要とし、および/または印刷失敗のリスクが高くなる。「セットアップおよび配向」のカテゴリの情報は、例えば、必要な支持構造材料の量を最小限に抑え、および/またはパーツ印刷の失敗の可能性を最小限に抑えながら、印刷の容易性を最大限に高めるために選択されたパーツの3次元の向きに関する情報を含む。このような情報は、例えば、モデルファイルの原点軸に関して与えられた角度および/またはオフセットのセットとして表すことができる。このカテゴリの下には、X-Y方向の材料を最大化するためのビルドの向き、スライスパラメータ、パーツの内部スタイル、可視表面スタイル、サポートスタイルとベース、壁の安定化、アンカー柱、自立角度、ツールパスの設定、境界曲線、垂直対水平穴、および解像度に関する情報がある。
【0044】
付加製造では、スライスと呼ばれる層に材料を配置して、層ごとに(スライスごとに)パーツを構築することが伴う。多くの3Dプリンタは、5,000分の1、7,000分の1、10,000分の1、および13,000分の1インチの解像度でスライスを印刷するオプションを提供するが、より細かい解像度の印刷にはより多くの印刷時間がかかる可能性があるというトレードオフがある。例えば、モックアップは、一般に粗い解像度で印刷することができ、生産またはミッションの設定で使用されることが予想されるコンポーネントは、より細かい解像度で印刷する必要がある場合がある。「スライス解像度」カテゴリは、特定のジョブに対して選択した印刷解像度パラメータを格納することができる。
【0045】
「サポートパラメータ」は、モデル内の張り出したコンポーネントが適切に印刷されることを確実にするために、試作段階中にモデルに追加された支持構造を自動的に生成するために使用される情報を伝達する。「ツールパス」は、各スライスの印刷に使用されるラスターパターン、つまり、印刷中にプリントヘッドがたどる移動経路に関する情報を伝達する。「境界曲線」は、例えば、パラメトリック方程式として表される、パーツの周辺(パーツの穴の内周を含む可能性がある)に関する情報を伝達する。印刷ソフトウェアは、解像度、モデルのサイズと密度、支持体の量、材料タイプなど、上記の要因の多くに基づいて、特定のパーツの印刷にかかる時間の推定値を生成でき、この情報は、知識ベースの「時間の推定値」カテゴリに格納することができる。例えば、一部のパーツは、完了するまでに200時間以上の連続印刷が必要になる場合がある。推定時間と実際の印刷時間との差もこのカテゴリに格納することができる。「予測後処理」カテゴリに格納される情報は、印刷されたパーツから削除する必要のある支持構造材料の量、削除に必要な時間、および削除する必要のある方法(例えば、手動切断または超音波溶解)、および/または注文どおりに完成したパーツを顧客に提供するために印刷後に必要となる可能性のある他の組み立てステップに関する情報を含み得る。例として、このような後処理情報は、機械的および超音波タンク手段による支持体の除去、プラスチック溶接、ねじ込みインサート、パーツ結合、ブッシング、およびめっきに関する情報を含むことができる。
【0046】
したがって、ユーザエクスペリエンスデータベース410は、いくつかの以前の印刷物制作ジョブから収集された上記のカテゴリの情報を格納し得る。機械学習モデル418は、例えば、ディープニューラルネットワーク420を使用して、このユーザエクスペリエンスデータベース410上で訓練することができる。新しいパーツトランザクション412に関する上記の情報のいずれかまたはすべてをパラメータ化する入力ベクトル416は、パーツ最適化出力422および/またはコマンド開始出力424を決定するために処理するためにトレーニングされた機械学習モデル418に供給され得、いずれの場合も、入力ベクトル416の隙間を修正、更新、または充填している。それによって生成されたコマンドは、3Dプリンタなどの付加製造デバイス426に送信されて、印刷ジョブのためにプリンタをプログラムすることができる。場合によっては、そのような出力422、424は、モデルファイルを前処理するか、または印刷ジョブのためにプリンタをプログラムするステップを実行する前に、確認のために人間のオペレータに提案として提供することができる。
【0047】
したがって、機械学習モデル108、214、306、または418は、一方ではパーツプログラミングに一般的に関連する情報を記録し、他方では特定の機械変数および/または特定のソフトウェア変数を記録することができる。このコンテキストでは、パーツプログラミングは、(1)3Dプリンタを構成し、(2)STLモデルの方向付け(CADをステレオリソグラフィ形式に変換)、(3)STLモデルを一連の水平面と交差させてスライス曲線を作成することにより、STLモデルを「スライスし」、(4)サポート曲線を作成し、一時的な支持がパーツのどこに構築されるかを定義し、この支持は最終的に廃棄され、(5)モデルとサポート曲線のツールパスフィルを作成し、(6)ツールパスファイルを保存し、(7)パーツ構築のためにツールパスファイルをプリンタにダウンロードすることからなり得る。特定のマシン変数および/または特定のソフトウェア変数は、製作マシン固有のキャリブレーション値、ヘッドモーター電流、ヘッドパージおよび制御パラメータ、自動ロードパラメータ、ステッピングモーター電流、XYZ軸速度パラメータ、パージおよびチップワイプの場所、ヘッド温度セットバックおよびノーウーズパラメータ、曲線の終わりおよびエラー監視後のパージ、モデル構築中に使用されるヘッドおよびチャンバの温度、ヘッド速度、スライス間の距離(インチ単位)、ヘッドを動かすための最小速度と最大速度(インチ/秒)、原点、モデルを開始するためのXおよびY座標位置、クリアランス移動、接着剤なしの移動中にヘッドを上げる量(インチ単位)、遅延時間とエンコーダティックレート(ミリ秒単位、流量)、加速/減速中の流体緩和時間、加速/減速中の望ましい流れ精度で構成され得る。次に、機械学習モデル410は、ユーザエクスペリエンスデータベース410(ブロックチェーンの形をとることができる)および入力ベクトル416に格納された上記のパラメータからのトレーニングに基づいて、パーツ最適化およびコマンド開始出力422、424を生成することができる。つまり、機械学習モデルは、過去のパーツジョブデータに基づいて、新しいパーツジョブに対して自動化された方法でパーツプログラミングおよびパラメータ設定を実行することができる。
【0048】
図4の流れ図による機械学習ベースの付加製造システムの例示的な動作は説明されていない。新しいパーツトランザクション412は、機械学習モデル418にブロードキャストされる。ユーザエクスペリエンスデータベース410のプルーフオブワーク履歴レコードは、新しいパーツトランザクションデータをブロックにコンパイルする。プルーフオブワークの履歴レコードは、ブロックを追加するたびに復元力が増し、知識が豊富になり、反復的に強化され、機械学習モデル418に供給され、ブロックを追加するたびに、または定期的に反復的に再トレーニングされる。機械学習モデル418は、履歴に基づいて次の部分のトランザクションに関するリアルタイムのフィードバックを提供する。機械学習モデル418は、類似性の概念を利用し、一方では、ボクセルデータ、方向データ、幾何学データ、技術言語データ、ならびに製作デバイスの変数およびパラメータと、他方では、3D印刷されるパーツとの間のマッピングを作成する。これらのマッピングは、例えば、構造化された確率分布内で表すことができる。プルーフオブワーク履歴レコード410は、機械学習モデル418とともに、入力に基づいて、モデルの向き、支持構造、ツールパス、および境界曲線の可能性を学習する。機械学習モデル418は、ニューラルネットワークおよびパターン認識を利用して、提案、予測、警告を行う。機械学習モデル418は、ユーザ/オブジェクトの相互作用を最適化する出力422、424を提供する。
【0049】
図5-11は、エンクロージャの組み立て計画で使用するための集積回路基板モックアップの顧客要求の3Dプリントのプロセス例を示している。
図5Aは、回路基板のCADモデル500の4分の3の斜視図である。
図5Bは、回路基板のCADモデル500の右側平面図である。
図5Cは、回路基板のCADモデル500の正面図である。
図5Dは、回路基板のCADモデル500の上面図である。これらの図面の各々において、軸の図示された表示は、ビュー間で一貫しているモデルの原点を示すと解釈されるべきではない。見てわかるように、モデル500は、平面ボードの主要なサブコンポーネントと、集積回路(IC)パッケージ(「チップ」)およびコンデンサなどの様々な突出したサブコンポーネントを含む。CADモデル500は、印刷処理ソフトウェアと互換性のあるSTL(ステレオリソグラフィ)形式に変換できる。3Dプリンタは、モデラーのタイプ、材料、スライスの高さ、および押し出しチップを選択して構成される。
【0050】
パーツビルドスタイルは、説明されているように構成することができる。この例では、顧客とのレビューに基づいて「スパース、低密度」スタイルを選択することができる。この設定は、内部領域のラスターレッグ間にギャップがある一方向ラスターパターンを利用することにより、使用されるモデル材料の量を最小限に抑える。パターンの例が
図6に示され、これは、ステレオリソグラフィ形式に変換した後のモデルの層の部分600を示している。上部と下部の露出された層は、ソリッドラスターパターンで構築される。パーツの境界に追加の輪郭が追加され、別の輪郭が一方向のスパースラスターを囲む。他の印刷ジョブの場合、他のビルドスタイルを選択でき、「ソリッド」(完全に高密度のラスターツールパス)、「スパース、高/二重高密度」(クロスハッチラスターパターン)、および「ヘキサグラム」(3方向クロスハッチラスターパターン)オプションも使用可能である。「拡張」可視表面スタイルを選択して、可視表面ラスターと非可視の内部ラスターに独立したコントロールを提供することができる。
【0051】
適切な向きは、ビルド時間と完成した印刷パーツの外観の両方に影響を与える。パーツの形状によっては、パーツがプリンタチャンバーのエンベロープの中に収まるかどうかによっても違いが生じる場合がある。ビルド時間を短縮するために、最小限のサポートで済むようにパーツを方向付けることができる。パーツの外観を最適化するために、スライスを垂直面に沿って重ねて配置するような向きにすることができる。ほとんどの場合、
図7に示すように、パーツはXY平面に対して面積が最大になるように方向付ける必要がある。
図7のパーツ700の向きは、
図5Aに示される向きから反転されていることに留意されたい。
図7に示すICボードの向きでは、描写の左上にあるXYZ原点座標は、モデルを開始するためのプリントヘッドの原点を表す。
【0052】
この適切な向きに続いて、「スライス」操作が行われる。スライス操作は、STLファイルの断面を分析することによってパーツ曲線を計算する。これらのパーツ曲線は、STLモデルを一連の水平面と交差させることによって作成される。スライスはモデルの下部から始まり、一定の間隔またはスライスの高さで上部に向かって順番に進む。スライスの高さの値は、プリンタで使用されている材料とチップのサイズに基づく。図示の例では、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)材料と、0.010インチの層堆積物と互換性のあるチップサイズが選択されている。ABSは、ラピッドプロトタイピングのために業界で使用されている人気のある熱可塑性プラスチックである。用途に応じて、他の材料タイプを使用することもできる。印刷中に、材料は最終製品を生成するために層ごとに追加される。各層が0.010インチである結果として得られる33層でスライスされたSTLモデル800が
図8に示されている。
【0053】
印刷用に準備するためのモデルの生産前処理の次のステップでは、支持構造がモデルに追加される。モデルの領域のほぼ全体の下に支持材料が必要である。「SMARTSupports」スタイルを選択して、使用する支持材料の量を最小限に抑え、ビルド時間を短縮し、プリント回路基板パーツのサポートの取り外し可能性を向上させることができる。サポート領域の境界曲線の形状とサイズは、材料と時間の削減を実現するために、層ごとに変更される。モデルへの支持構造の追加は、いくつかの例では、ソフトウェアによって達成され、特定の定量的パラメータによって通知される自動化されたプロセスである可能性がある。つまり、多くの場合、支持構造を追加するために、支持構造を手動でモデル化するための人間による設計作業を行う必要はない。
【0054】
支持曲線でスライスされたプリント回路基板パーツモデル900は、
図9A~Dに斜視図および様々な平面図で示されている。これらの支持曲線は、角度、穴の周囲、キャビティ、オーバーハング、中空の属性、およびモデルの外側に伸びる部分を維持および構築するために使用される。支持曲線は、溶融堆積印刷プロセス中にモデルがたるんだり、モデル自体が崩壊したりするのを防ぐ。得られた支持構造は、最終的には機械的または化学的除去によって廃棄される。モデル900には、基礎層と支持材料層を含む43層が示されている。
図9Aは、回路基板のSTLモデル900の4分の3の斜視図である。
図9Bは、回路基板のSTLモデル900の右側平面図である。
図9Cは、回路基板のSTLモデル900の正面図である。
図9Dは、回路基板のSTLモデル900の上面図である。
図10は、支持曲線を備えたSTLモデル1000を示している。
【0055】
次に、サポート曲線が追加されたSTLファイルに基づいて、ツールパスと境界曲線が作成され、モデルとそれに関連する支持構造の両方を印刷するために、プリンタヘッドの押し出しチップの詳細な位置データと軌道が提供される。
図11は、
図10のモデルの単層1100を示している。
【0056】
図5~
図11に示すような詳細な3D印刷では、支持構造の機械的除去(手動で切断するか、手動または自動の鋸引きまたは研磨ツールを使用するなど)は、そのような機械的除去に関係するパーツを損傷するリスクが高いために達成できない場合がある。したがって、プリント回路基板部品は、超音波タンク混合物(例えば、水と水酸化ナトリウム(NaOH)の50%~50%混合物、例えば、11ガロンの水と950グラムの水酸化ナトリウムとからなる)に浸漬して、支持材料、音波の方向付けられたエネルギーを攪拌することによって支持材料を溶解し、完成した統合回路基板のモックアップパーツをもたらし得る。
【0057】
図12は、機械学習ベースの付加製造のための方法1200を示している。ユーザエクスペリエンスデータベースには、複数のユーザからの付加製造ユーザエクスペリエンスデータを1202で入力できる。例えば、ユーザエクスペリエンスデータベースは複数のエントリで構成することができ、ユーザエクスペリエンスデータベースの各エントリは、少なくとも付加製造されたパーツに対する要件を定義するデータ、付加製造製作デバイスを記述する仕様、パーツの製作のために製作デバイスに供給される原材料タイプの選択、製作デバイス内のパーツの製作空間配向、パーツの製作スライス解像度、およびパーツを製作する際にデバイスがたどるツールパスを含む。例えば、ユーザエクスペリエンスデータベース内の各エントリは、ブロックチェーン内のタイムスタンプ付きのブロックである。機械学習モデル(MLモデル)は、ユーザエクスペリエンスデータベースに基づいて1204でトレーニングすることができる。次に、機械学習モデルを用いて、1206で新しいパーツトランザクションを記述する入力ベクトルを処理して、少なくとも1つのパーツ最適化出力と、新しいパーツの付加製造を構成するための少なくとも1つのコマンド開始出力と、を提供する。例として、少なくとも1つのパーツ最適化出力は、新しいパーツの製作空間配向、新しいパーツの製作スライス解像度、新しいパーツとともに付加製造された支持構造を記述する支持曲線のセット、および/または新しいパーツが付加製造される材料タイプの選択を含むことができ、少なくとも1つのコマンド開始出力は、例えば、入力ベクトルに基づいて、機械学習モデルによって生成されたツールパスに沿って印刷を開始するために3Dプリンタに送信されるコマンドを含むことができる。次いで、3Dプリンタなどの付加製造製作デバイスを、1208で、コマンド開始出力に基づいて制御して、例えば、MLモデル出力に基づいて、それに応じて新しいパーツを製作することができる。いくつかの例では、コンピュータ可読媒体は、方法1200を実行するようにコンピュータプロセッサに命令するために実行される命令を含むことができる。
【0058】
本明細書に記載された機械学習ベースの付加製造システムおよび方法は、前のパーツビルドから学んだ教訓を自動的に組み込んで、エラーの繰り返しを防ぎ、付加製造生産システムの手頃な価格、信頼性、および保守性を可能にすることができる。説明したシステムおよび方法の機械学習モデルは、製造プロセスで発生する可能性のある潜在的な欠陥や不具合の予測ツールとしても機能することができる。説明されているシステムおよび方法にブロックチェーン技術を組み込むことで、サイトの地理に関係なく、地理的に分散している可能性のある企業または組織内で効率的な付加製造体験データを共有することができる。本システムおよび方法は、新しいプログラムの構築コストを劇的に削減し、設計の改善を迅速に可能にし、個々の担当者または担当者グループの個人的な経験よりも永続的で、アクセスしやすく、より簡単かつグローバルに利用できる情報の強力なリポジトリになり得る。
【0059】
上で説明したのは、本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的で構成要素または方法論の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者であれば、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることが分かるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む、本出願の範囲内に入るこのような変更形態、修正形態、および変形形態のすべてを包含することが意図されている。さらに、本開示または特許請求の範囲で、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第1の(a first)」、もしくは「他の(another)」要素、またはそれらの同等物を挙げている場合、このような要素を1つまたは2つ以上含むと解釈されるべきであり、2つ以上のこのような要素を要求することも除外することもない。本明細書で使用する場合、「含む(includes)」という用語は、限定することなく含むことを意味し、また「含む(including)」という用語も、限定することなく含むことを意味する。「に基づく(based on)」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。「パーツ」という用語は、パーツまたはアセンブリを意味する。「プリンタ」という用語は、3Dプリンタを意味する。