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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】二次電池及び当該二次電池を含む装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20231215BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20231215BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231215BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231215BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231215BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231215BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01M10/0525
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/36 D
H01M4/36 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022532600
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2020081690
(87)【国際公開番号】W WO2021189424
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】馬建軍
(72)【発明者】
【氏名】沈睿
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
(72)【発明者】
【氏名】朱宝健
(72)【発明者】
【氏名】陳雷
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109888368(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062822(US,A1)
【文献】国際公開第2014/024473(WO,A1)
【文献】特開2012-114076(JP,A)
【文献】特表2016-532241(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109390588(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0267609(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108281656(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106410144(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0525
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、正極シート及び負極シートを含み、
前記正極シートが正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ正極活性材料を含む正極フィルムシートを含み、
前記負極シートが負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ負極活性材料を含む負極フィルムシートを含み、
前記正極活性材料が層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、
前記負極活性材料が第1の材料及び第2の材料を含み、前記第1の材料が人造黒鉛を含み、前記第2の材料が天然黒鉛を含み、
前記負極シートの抵抗Rが6.0mΩ≦R≦12.0mΩを満た、二次電池。
【請求項2】
前記負極シートの抵抗Rが8.0mΩ≦R≦10.0mΩを満たす、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記負極活性材料における前記天然黒鉛の質量割合が10%~50%である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記負極活性材料における前記天然黒鉛の質量割合が15%~30%である、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記天然黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が10.0mΩ・cm~14.0mΩ・cmであり、及び/又は、
前記人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が11.0mΩ・cm~16.0mΩ・cmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記天然黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が11.0mΩ・cm~13.0mΩ・cmであり、及び/又は、
前記人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が13.0mΩ・cm~15.0mΩ・cmである、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記負極活性材料の体積平均粒径Dv50が11μm~15μmである、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極活性材料の体積平均粒径D v 50が12μm~14μmである、請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極活性材料の黒鉛化度が92%~96%である、請求項1~のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極活性材料の黒鉛化度が93%~95%である、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記負極フィルムシートの面密度が10mg/cm2~13mg/cm2であり、及び/又は、
前記負極フィルムシートの圧縮密度が1.6g/cm3~1.8g/cm3ある、請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記負極フィルムシートの面密度が10.5mg/cm 2 ~11.5mg/cm 2 であり、及び/又は、
前記負極フィルムシートの圧縮密度が1.65g/cm 3 ~1.75g/cm 3 である、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記層状のリチウム遷移金属酸化物が、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項14】
二次電池であって、正極シート及び負極シートを含み、
前記正極シートが正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ正極活性材料を含む正極フィルムシートを含み、
前記負極シートが負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ負極活性材料を含む負極フィルムシートを含み、
前記正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、
前記負極活性材料が第1の材料及び第2の材料を含み、前記第1の材料が人造黒鉛を含み、前記第2の材料が天然黒鉛を含み、
前記負極シートの抵抗が3.0mΩ≦R≦7.0mΩである、二次電池。
【請求項15】
前記負極シートの抵抗が4.0mΩ≦R≦6.0mΩである、請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
前記負極活性材料における前記天然黒鉛の質量割合が10%~50%である、請求項14又は15に記載の二次電池。
【請求項17】
前記負極活性材料における前記天然黒鉛の質量割合が35%~50%である、請求項16に記載の二次電池。
【請求項18】
前記天然黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が8.0mΩ・cm~12.0mΩ・cmであり、及び/又は、
前記人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が15mΩ・cm~20mΩ・cmである、請求項14~17のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項19】
前記天然黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が9.0mΩ・cm~11.0mΩ・cmであり、及び/又は、
前記人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率が16mΩ・cm~18mΩ・cmである、請求項18に記載の二次電池。
【請求項20】
前記負極活性材料の体積平均粒径Dv50が15μm~19μmである、請求項1419のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項21】
前記負極活性材料の体積平均粒径D v 50が16μm~18μmである、請求項20に記載の二次電池。
【請求項22】
前記負極活性材料の黒鉛化度が92%~95%である、請求項1421のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項23】
前記負極活性材料の黒鉛化度が93%~94%である、請求項22に記載の二次電池。
【請求項24】
前記負極フィルムシートの面密度が7mg/cm2~10mg/cm2であり、及び/又は、
前記負極フィルムシートの圧縮密度が1.5g/cm3~1.7g/cm3ある、請求項1423のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項25】
前記負極フィルムシートの面密度が7mg/cm 2 ~8mg/cm 2 であり、及び/又は、
前記負極フィルムシートの圧縮密度が1.55g/cm 3 ~1.65g/cm 3 である、請求項24に記載の二次電池。
【請求項26】
前記オリビン構造のリチウム含有リン酸塩が、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料のうちの一種又は複数種を含む、請求項1425のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項27】
前記負極シート上の任意の二つの面積が同じである円形区域をそれぞれ第1の区域と第2の区域とする場合、前記第1の区域と前記第2の区域の中心距離が20cmであり、前記第1の区域の抵抗R1と前記第2の区域の抵抗R2との間が|R1-R2|≦3mΩを満た、請求項1~26のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項28】
前記第1の区域の抵抗R 1 と前記第2の区域の抵抗R 2 との間が|R 1 -R 2 |≦1mΩを満たす、請求項27に記載の二次電池。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の二次電池を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、エネルギー蓄積装置の技術分野に属し、具体的には二次電池及び当該二次電池を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、信頼性が高い動作性能、汚染がなく、メモリ効果がない等の利点を有するため、広く応用されている。例えば、環境保護の問題がますます重視されるに連れて、新エネルギー自動車が日増しに普及し、動力型二次電池の需要は爆発的な成長を呈する。しかしながら、二次電池の応用範囲がますます広くなるに連れて、二次電池の低温電力性能及びエネルギー密度に対してより高い要求が提出される。二次電池の低温電力性能が低いと、低温環境での使用に影響を与える。エネルギー密度は電池の航続能力、即ち一回の充電後の使用時間に影響する。したがって、如何に二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で低温電力性能を向上させるかは、早急に解決すべき技術的問題となる。
【発明の概要】
【0003】
本願の第1の態様は、二次電池であって、正極シート及び負極シートを含み、
前記正極シートが正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ正極活性材料を含む正極フィルムシートを含み、
前記負極シートが負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ負極活性材料を含む負極フィルムシートを含み、
ここで、前記負極活性材料が第1の材料及び第2の材料を含み、前記第1の材料が人造黒鉛を含み、前記第2の材料が天然黒鉛を含み、
前記正極活性材料が層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、
前記負極シートの抵抗Rが6.0mΩ≦R≦12.0mΩを満たす、二次電池を提供する。
【0004】
本願の第2の態様は、二次電池であって、正極シート及び負極シートを含み、
前記正極シートが正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ正極活性材料を含む正極フィルムシートを含み、
前記負極シートが負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ負極活性材料を含む負極フィルムシートを含み、
ここで、前記正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、
前記負極活性材料が第1の材料及び第2の材料を含み、前記第1の材料が人造黒鉛を含み、前記第2の材料が天然黒鉛を含み、
前記負極シートの抵抗が3.0mΩ≦R≦7.0mΩである、二次電池を提供する。
【0005】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様及び/又は第2の態様に係る二次電池を含む装置を提供する。
【0006】
驚くべきことに、本願に係る二次電池の正極フィルムシートは特定の正極活性材料を採用し、負極フィルムシートの負極活性材料は同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、且つ負極シートの抵抗を特定の範囲内に制御し、これにより負極シートに高いエネルギー密度を有すると同時に、負極シートの活性イオンの伝送性能及び電子伝導性能を効果的に向上させることができる。それにより、二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、高い低温電力性能を得る。より好ましくは、二次電池は、さらに低い高温サイクル膨張と高い高温貯蔵性能を同時に有することができる。本願の装置は、本願に係る二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明された図面は本願のいくつかの実施例だけである。当業者であれば、創造的な労力を要することなく、さらに図面に基づいて他の図面を取得することができる。
図1】二次電池の一つの実施形態の模式図である。
図2図1の分解図である。
図3】電池モジュールの一つの実施形態の模式図である。
図4】電池パックの一つの実施形態の模式図である。
図5図4の分解図である。
図6】二次電池が電源として用いられる装置の一つの実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願の発明目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下は実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記述された実施例が単に本願を説明するためであり、本願を限定するものではない。
【0009】
簡単のために、本明細書には、いくつかの数値範囲のみが明確に開示されている。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。同様に、任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はいずれも当該範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は自体の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて若しくは他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。
【0010】
本明細書の説明において、説明すべきものとして、他の説明がない限り、「以上」、「以下」はその数を含む。「一種又は複数種」のうちの「複数種」の意味は二種又は二種以上である。
【0011】
本願の上記発明の概要は、本願における各開示の実施の形態や各種の実施形態を記述することを意図するものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示する。全体の出願における複数の箇所で、一連の実施例により示唆を提供し、これらの実施例は様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、代表的なグループとして列挙し、網羅すると解釈すべきではない。
二次電池
【0012】
本願の第1の態様は、二次電池を提供する。当該二次電池は、正極シートと、負極シートと、電解質とを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間に往復して挿入・脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
[正極シート]
【0013】
正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極フィルムシートとを含むことができる。例として、正極集電体は、その厚さ方向に対向する二つの表面を有し、正極フィルムシートシートが正極集電体の前記二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層される。
【0014】
正極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を採用することができ、導電及び集電の作用を果たす。いくつかの実施例において、負極集電体はアルミニウム箔を採用することができる。
【0015】
正極フィルムシートは、正極活性材料を含む。正極活性材料は、本技術分野で公知の二次電池に用いられる正極活性材料を採用することができる。いくつかの実施例において、正極活性材料は、層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物等のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0016】
本願において、「改質化合物」における「改質」は、材料にドープ改質及び/又は表面被覆改質を行うことであってもよい。
【0017】
いくつかの実施例において、正極活性材料は層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物を含む。具体的な例として、層状のリチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含むが、これらに限定されない。好ましくは、層状のリチウム遷移金属酸化物は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含む。
【0018】
いくつかの好ましい実施例において、正極活性材料は、LiNiCoM’及び少なくとも一部の表面に被覆層を有するLiNiCoM’のうちの一種又は複数種を含む。ここで、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e≦0.1、1≦f≦2、0≦g≦1である。Mは、Mn及びAlから選択される一種又は複数種である。M’は、Zr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される一種又は複数種である。Aは、N、F、S及びClから選択される一種又は複数種である。
【0019】
いくつかの実施例において、MはMnから選択され、M’はZr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される一種又は複数種であり、好ましくはZr、Al、Zn及びBのうちの一種又は複数種を含む。又は、MはAlから選択され、M’はZr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される一種又は複数種であり、好ましくはZr、Zn及びBのうちの一種又は複数種を含む。
【0020】
正極活性材料は高ニッケル三元正極活性材料を含み、これによりより高いグラム容量を有することができる。それにより、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0021】
いくつかの好ましい実施例において、LiNiCoM’材料の80%~100%の表面に被覆層を有することができる。さらに、LiNiCoM’材料の90%~100%の表面に被覆層を有することができる。
【0022】
他の実施例において、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含む。具体的な例として、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料のうちの一種又は複数種を含むが、これらに限定されない。好ましくは、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料のうちの一種又は複数種を含む。
【0023】
リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料は、被覆型複合材料、嵌入型複合材料のうちの一種又は複数種であってもよい。被覆型複合材料は、リン酸鉄リチウム粒子の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を有する。例えば、炭素被覆層はリン酸鉄リチウム粒子の80%~100%(例えば、90%~100%)の表面に被覆される。炭素被覆層は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの一種又は複数種を含むことができる。嵌入型複合材料は、リン酸鉄リチウムがカーボン担体中に分散しているものである。カーボン担体は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0024】
リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料は、被覆型複合材料、嵌入型複合材料のうちの一種又は複数種であってもよい。被覆型複合材料は、リン酸マンガンリチウム粒子の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を有する。例えば、炭素被覆層は、リン酸マンガンリチウム粒子の80%~100%(例えば、90%~100%)の表面に被覆される。炭素被覆層は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの一種又は複数種を含むことができる。嵌入型複合材料は、リン酸マンガンリチウムがカーボン担体中に分散しているものである。カーボン担体は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施例において、正極フィルムシートはさらに接着剤を含んでもよい。接着剤の種類は具体的に制限されず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムシートに用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0026】
いくつかの実施例において、正極フィルムシートは導電剤をさらに含むことができる。導電剤の種類は具体的に制限されず、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムシートに用いられる導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種又は複数種を含むことができる。
[負極シート]
【0027】
負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される負極フィルムシートとを含む。例として、負極集電体は、その厚さ方向に対向する二つの表面を有し、負極フィルムシートシートが負極集電体の前記二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層される。
【0028】
負極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を採用し、導電及び集電の作用を果たすことができる。いくつかの実施例において、負極集電体は、銅箔を採用することができる。
【0029】
負極フィルムシートは、負極活性材料を含む。負極活性材料は、人造黒鉛を含む第1の材料と、天然黒鉛を含む第2の材料とを含む。驚くべきことに、同時に負極シートの抵抗Rを特定の範囲内に制御すれば、負極シートが高いエネルギー密度を有すると共に、負極シートの活性イオンの伝送性能も効果的に向上させる。それにより、それを用いた二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、低温電力性能も向上する。より好ましくは、二次電池は、さらに低い高温サイクル膨張と高い高温貯蔵性能を同時に有することができる。
【0030】
発明者らは鋭意研究により、正極シートの正極活性材料が層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含む場合、負極シートの抵抗Rが6.0mΩ≦R≦12.0mΩを満たすことを発見した。
【0031】
正極活性材料が層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛と天然黒鉛を含み、且つ負極シートの抵抗Rが6.0mΩ≦R≦12.0mΩを満たす場合、正・負極活性材料の間に効果的な係合を形成させることができる。そのため、両者の利点の相乗効果が十分に発揮され、電池が高いエネルギー密度を有することを保証する前提で、さらに負極シートの凝集力及び接着力を向上させ、負極の電池サイクル過程での膨張を低下させることができ、同時に活性イオンの負極における固相拡散能力を向上させ、それにより活性イオンの正・負極間の伝送性能をさらに向上させることができる。且つ、負極活性材料粒子の間が緊密に接触すると同時に、電解液の浸潤に適する細孔ネットワークを形成し、それにより活性イオンの伝送性能をさらに向上させることができる。これにより、電池の動力学的性能が顕著に向上し、低温環境でも、負極は正極からの活性イオンを迅速に受信し、二次電池の低温電力性能を向上させることができる。さらに、二次電池は、大倍率の充放電に適し、大倍率の充電時に負極のリチウム析出が発生する確率が明らかに減少し、同時に二次電池が高い安全性能を有することができる。
【0032】
また、正極活性材料が層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含むと、正極シートは、高い面密度(例えば、14mg/cm~20mg/cm)及び圧縮密度(例えば、3.3g/cm~3.5g/cm)を有することができる。それにより、電池は高いエネルギー密度を有することができる。
【0033】
これらの実施例においては、好ましくは、7.0mΩ≦R≦11.0mΩである。より好ましくは、8.0mΩ≦R≦10.0mΩである。例えば、負極シートの抵抗Rは、8mΩ、8.5mΩ、9mΩ、9.5mΩ、9.8mΩ、10mΩ、10.5mΩ、11mΩ又は12mΩであってもよい。負極シートの抵抗Rが適切な範囲内にあれば、電池の高温サイクル膨張及び電池の低温電力性能をさらに低下させることができる。
【0034】
これらの実施例においては、好ましくは、正極活性材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含む。そうすると、上述した効果をより好適に発揮することができる。
【0035】
発明者らはさらに研究すると、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、且つ負極シートの抵抗Rが6.0mΩ≦R≦12.0mΩを満たす場合、負極活性材料がさらに下記条件のうちの一種又は複数種を満たすと、電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0036】
いくつかの好ましい実施例において、天然黒鉛の負極活性材料における質量割合は10%~50%であってもよく、好ましくは15%~30%であり、より好ましくは15%~25%であり、特に好ましくは18%~22%であり、例えば19%、20%、21%である。負極活性材料に適量の天然黒鉛を含有すると、負極活性材料が高いグラム容量を有することができ、特に負極活性材料粒子の間及び負極活性材料と負極集電体との間の接着力を改善する。これにより、負極シートが高い凝集力及び接着力を有すると同時に、負極表面の副反応も減少させ、それにより電池のサイクル膨張をさらに低減することができる。電池の高温サイクル性能及び安全性能は、いずれもさらに改善される。
【0037】
いくつかの好ましい実施例において、天然黒鉛の8MPa圧力での粉末抵抗率は、10mΩ・cm~14mΩ・cmであってもよく、好ましくは11mΩ・cm~13mΩ・cmであり、例えば10.5mΩ・cm、11.5mΩ・cm、12.0mΩ・cm、12.5mΩ・cm、13.0mΩ・cm、13.5mΩ・cm又は13.8mΩ・cmである。天然黒鉛の粉末抵抗率が適切な範囲内にあれば、負極シートの充放電過程における活性イオンの伝送性能及び電子伝導性能をさらに向上させることができ、それにより電池の電力性能、エネルギー密度及びサイクル性能を向上させる。
【0038】
いくつかの好ましい実施例において、人造黒鉛の8MPa圧力での粉末抵抗率は11mΩ・cm~16mΩ・cmであり、より好ましくは13mΩ・cm~15mΩ・cmであり、例えば12.0mΩ・cm、13.0mΩ・cm、13.5mΩ・cm、14.0mΩ・cm、14.3mΩ・cm又は14.6mΩ・cmである。人造黒鉛の粉末抵抗率が適切な範囲内にあれば、負極シートの充放電過程における活性イオンの伝送性能及び電子伝導性能をさらに向上させることができ、それにより電池の電力性能、エネルギー密度及びサイクル性能を向上させる。
【0039】
いくつかの好ましい実施例において、負極活性材料の体積平均粒径D50は、10μm~18μmであってもよく、好ましくは11μm~15μmであり、より好ましくは12μm~14μmである。負極活性材料のD50が小さいほど、その粉末抵抗率が小さくなり、負極シートの抵抗をより低減することができる。また、負極活性材料のD50が小さいほど、負極シートにおけるイオンの移動速度をより向上させることができる。負極活性材料のD50が適切であれば、低い粉末抵抗率及び高いイオン移動速度を有すると同時に、負極活性材料のグラム容量を向上させ且つ電解液の材料表面での副反応を減少させることができる。それにより、電池は高い電力性能、サイクル性能及びエネルギー密度を同時に両立する。
【0040】
発明者はさらに、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極活性材料のD50が上記範囲内にある場合、電池の高温貯蔵過程において高い容量維持率を有し、高温貯蔵性能を向上させることができることを見出した。
【0041】
負極活性材料のD50を上記所定の範囲内にするために、いくつかの実施例において、天然黒鉛の体積平均粒径D50は、10μm~16μmであってもよく、好ましくは10μm~14μmであり、より好ましくは11μm~13μmである。人造黒鉛の体積平均粒径D50は、12μm~19μmであってもよく、好ましくは12μm~16μmであり、より好ましくは13μm~15μmである。
【0042】
いくつかの好ましい実施例において、負極活性材料の黒鉛化度は、92%~96%であってもよく、好ましくは93%~95%である。負極活性材料は、黒鉛化度が適切な範囲内にあれば、小さい粉末抵抗率を有することができ、負極シートの抵抗を低下させると同時に、さらにイオンの挿入・脱離に適する層間隔を有し、それにより電池の電力性能をさらに向上させる。また、当該負極活性材料を採用する負極シートは、高い凝集力及び接着力を有することができ、電池の低サイクル膨張性能を向上させる。
【0043】
発明者はさらに、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極活性材料の黒鉛化度が上記範囲内にある場合、電池の高温貯蔵性能を向上させることができることを見出した。
【0044】
負極活性材料の黒鉛化度を上記所定の範囲内にするために、いくつかの実施例において、天然黒鉛の黒鉛化度は、95%~98.5%であってもよく、好ましくは96%~98%であり、より好ましくは96.5%~97.6%である。人造黒鉛の黒鉛化度は、90%~97.5%であってもよく、好ましくは91%~95%であり、より好ましくは92%~93.5%である。
【0045】
いくつかの好ましい実施例において、負極フィルムシートの面密度は、10mg/cm~13mg/cmであってもよく、好ましくは10.5mg/cm~11.5mg/cmである。正極材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極フィルムシートの面密度が所定の範囲内にある場合、電池が高いエネルギー密度を有することができる。同時に、電池は、良好な活性イオン及び電子伝送性能をさらに有し、それにより電池の動力学的性能をさらに改善する。また、電池が上記設計を満たす場合、分極及び副反応を低減することができ、それにより電池のサイクル性能をさらに改善する。
【0046】
いくつかの好ましい実施例において、負極フィルムシートの圧縮密度は、1.6g/cm~1.8g/cmであってもよく、好ましくは1.65g/cm~1.75g/cmであり、特に好ましくは1.68g/cm~1.73g/cmである。リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種であり、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極フィルムシートの圧縮密度が所定の範囲内にある場合、電池が高いエネルギー密度を有することを保証することができる。同時に、負極活性材料粒子の間が緊密に接触して負極フィルムシートの抵抗を効果的に低下させることができ、それにより電池の電力性能をさらに向上させる。また、適切な圧縮密度は、さらに負極活性材料の粒子構造の健全性を保護することができ、負極シートの凝集力及び接着力を改善することに役立ち、電池のサイクル過程中の膨張及び副反応を低下し、それにより電池のサイクル寿命及び安全性能をさらに向上させる。
【0047】
発明者はさらに、正極シートの正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含む場合、負極シートの抵抗Rが3.0mΩ≦R≦7.0mΩを満たすことを発見した。
【0048】
正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛と天然黒鉛を含み、且つ抵抗Rが3.0mΩ≦R≦7.0mΩを満たす場合、正・負極活性材料の間に効果的な係合を形成させることができる。両者の利点の相乗効果が十分に発揮しされ、それにより電池が高いエネルギー密度を有することを保証される前提で、さらに負極シートの凝集力及び接着力を向上させ、負極の電池のサイクル過程での膨張を低下させることができる。同時に、活性イオンの負極における固相拡散能力を向上させ、それにより活性イオンの正・負極間の伝送性能をさらに向上させることができる。これにより、電池の動力学的性能が顕著に向上し、低温環境でも、負極は正極からの活性イオンを迅速に受信し、二次電池の低温電力性能を向上させることができる。さらに、二次電池は、大倍率の充放電に適し、大倍率の充電時に負極のリチウム析出が発生する確率が明らかに減少する。
【0049】
これらの実施例においては、好ましくは、4.0mΩ≦R≦6.0mΩであり、例えば、Rが4.2mΩ、4.5mΩ、4.6mΩ、4.7mΩ、4.8mΩ、5.0mΩ、5.3mΩ、5.5mΩである。負極シートは、抵抗Rが適切な範囲内にあれば、電池の低温電力性能及び高温サイクル性能をさらに向上させることができる。
【0050】
これらの実施例において、好ましくは、正極活性材料は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含む。そうすると、上述した効果をより好適に発揮することができる。
【0051】
発明者らはさらに研究すると、正極活性材料がリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、且つ負極シートの抵抗Rが3.0mΩ≦R≦7.0mΩを満たす場合、負極活性材料がさらに下記条件のうちの一種又は複数種を満たすと、電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0052】
いくつかの好ましい実施例において、負極活性材料における天然黒鉛の質量割合は10%~50%であってもよく、好ましくは15%~50%であり、より好ましくは35%~50%であり、例えば20%、30%、35%、40%、42%、45%、48%又は50%である。負極活性材料は、適量の天然黒鉛を含有すると、負極シートのフィルムシートの抵抗を低下させ、それによりセルの内部抵抗を改善することができる。同時に、負極シートのイオン伝送性能及びエネルギー密度がさらに向上する。したがって、電池は、高い低温電力性能、エネルギー密度及び高温サイクル性能を同時に兼ね備えることができる。
【0053】
いくつかの好ましい実施例において、天然黒鉛の8MPa圧力での粉末抵抗率は8mΩ・cm~12mΩ・cmであってもよく、好ましくは9.0mΩ・cm~11mΩ・cmである。天然黒鉛の粉末抵抗率が適切な範囲内にあれば、負極シートの充放電過程における活性イオンの伝送性能及び電子伝導性能をさらに向上させることができ、それにより電池の電力性能、エネルギー密度及びサイクル性能を向上させる。
【0054】
いくつかの好ましい実施例において、人造黒鉛の8MPa圧力での粉末抵抗率は、15mΩ・cm~20mΩ・cmであってもよく、好ましくは16mΩ・cm~18mΩ・cmである。人造黒鉛の粉末抵抗率が適切な範囲内にあれば、負極シートの充放電過程における活性イオンの伝送性能及び電子伝導性能をさらに向上させることができ、それにより電池の電力性能、エネルギー密度及びサイクル性能を向上させる。
【0055】
いくつかの好ましい実施例において、負極活性材料の体積平均粒径D50は、15μm~19μmであってもよく、好ましくは16μm~18μmである。負極活性材料は、D50が適切であれば、低い粉末抵抗率及び高いリチウムイオン移動速度を有すると同時に、負極活性材料のグラム容量を向上させ且つ電解液の材料表面での副反応を減少させ、それにより電池の電力性能、サイクル性能及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0056】
発明者らはさらに、正極活性材料がリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極活性材料のD50が上記範囲内にある場合、電池が高温貯蔵過程において高い容量維持率を有し、高温貯蔵性能を向上させることができることを見出した。
【0057】
負極活性材料のD50を上記所定の範囲内にするために、いくつかの実施例において、天然黒鉛の体積平均粒径D50は、15μm~20μmであってもよく、好ましくは15μm~19μmであり、より好ましくは16μm~18μmである。人造黒鉛の体積平均粒径D50は、14μm~19μmであってもよく、好ましくは14μm~18μmであり、より好ましくは15μm~17μmである。
【0058】
いくつかの好ましい実施例において、負極活性材料の黒鉛化度は、92%~95%であり、好ましくは93%~94%である。負極活性材料は、黒鉛化度が適切な範囲内にあれば、適切な粉末抵抗率を有することができ、それにより負極シートの抵抗が本願の所定の範囲内にあることに役立ち、同時に活性イオンの挿入・脱離に適する層間隔を有し、それにより電池の電力性能をさらに向上させる。当該負極活性材料を採用する負極シートは、さらに高い凝集力及び接着力を有することができ、電池のサイクル過程での膨張を低下させ、それにより電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0059】
発明者らはさらに、正極活性材料がリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極活性材料の黒鉛化度が上記範囲内にある場合、電池の高温貯蔵性能を向上させることができることを見出した。
【0060】
負極活性材料の黒鉛化度を上記所定の範囲内にするために、いくつかの実施例において、天然黒鉛の黒鉛化度は、95%~98.5%であってもよく、好ましくは95%~98%であり、より好ましくは96%~97%である。人造黒鉛の黒鉛化度は、89%~95%であってもよく、好ましくは90%~95%であり、より好ましくは91%~93%である。
【0061】
いくつかの好ましい実施例において、負極フィルムシートの面密度は7mg/cm~10mg/cmであってもよく、好ましくは7mg/cm~8mg/cmである。正極材料がリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極フィルムシートの面密度が所定の範囲内にある場合、電池が高いエネルギー密度を有することができる。同時に、電池は、良好な活性イオン及び電子伝送性能をさらに有し、それにより電池の電力性能をさらに改善する。また、電池が上記設計を満たす場合、分極及び副反応を低減することができ、それにより電池のサイクル性能をさらに改善する。
【0062】
いくつかの好ましい実施例において、負極フィルムシートの圧縮密度は、1.5g/cm~1.7g/cmであってもよく、好ましくは1.55g/cm~1.65g/cmであり、より好ましくは1.55g/cm~1.6g/cmである。正極材料がリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウム及び炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極活性材料が同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極シートの抵抗Rが特定の範囲内にあり、且つ負極フィルムシートの圧縮密度が所定の範囲内にある場合、電池が高いエネルギー密度を有することを保証することができる。同時に、負極活性材料粒子の間が緊密に接触して負極フィルムシートの抵抗を効果的に低下させることができ、それにより電池の電力性能をさらに向上させる。また、適切な圧縮密度は、さらに負極活性材料の粒子構造の健全性を保護することができ、負極シートの凝集力及び接着力を改善することに役立ち、電池のサイクル過程中の膨張及び副反応を低下させ、それにより電池のサイクル寿命及び安全性能をさらに向上させる。
【0063】
本願において、抵抗Rを満たす負極シートとは負極集電体の少なくとも一つの表面に負極フィルムシートが設置される負極シートを指し、特に負極集電体の対向する二つの表面に負極フィルムシートが設置される負極シートを指す。第1の材料の選択、第2の材料の選択、第1の材料及び第2の材料の比率、天然黒鉛の割合、負極フィルムシートの圧縮密度、導電剤の種類、導電剤の含有量等のうちの一つ又は複数を調整することにより、負極シートの抵抗Rを必要な範囲内にすることができる。第1の材料、第2の材料の選択はそれぞれ独立して粉末抵抗率、黒鉛化度、粒径分布、表面被覆改質等のうちの一つ又は複数を含むが、それらに限定されない。
【0064】
本願の任意の負極シートにおいて、選択的に、負極活性材料は、さらにハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン系材料、スズ系材料のうちの一種又は複数種を含むことができる。ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素の酸化物、ケイ素炭素複合物、ケイ素合金のうちの一種又は複数種から選択することができる。スズ系材料は単体スズ、スズの酸化物、スズ合金のうちの一種又は複数種から選択することができる。
【0065】
本願の任意の負極シートにおいて、好ましくは、負極シート上の任意の二つの面積が同じである円形区域を、それぞれ第1の区域と第2の区域と記す。前記第1の区域と前記第2の区域の中心距離は20cmであり、且つ前記第1の区域のシート抵抗Rと第2の区域のシート抵抗Rとの間は|R-R|≦3を満たす。負極シート上の任意の二つの面積が同じであり且つ中心距離が20cmである円形区域の間の抵抗差が小さいことは、負極シートの抵抗変動が小さいと示す。即ち、負極フィルムシートにおいて、第1の材料及び第2の材料の分散均一性が高い。負極シートにおいて、各位置での圧縮密度、サイクル安定性及び電解液の分布の均一性を向上させることができ、これにより負極シートの異なる位置での活性イオンの伝送性能及び電子伝導性能を実質的に同一のレベルにすることができ、それにより負極シートの各位置での容量の発揮、サイクル及び貯蔵寿命及び動力学的性能をいずれも向上させる。負極シートの全体の一致性が高いことは、二次電池のエネルギー密度、高温性能及び低温電力性能をさらに向上させることができる。好ましくは、|R-R|≦1である。
【0066】
いくつかの実施例において、負極フィルムシートは、さらに接着剤を含むことができる。例として、負極フィルムシートに用いられる接着剤は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの一種又は複数種から選択される。
【0067】
いくつかの実施例において、負極フィルムシートはさらに増粘剤を含んでもよい。例として、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0068】
いくつかの実施例において、負極フィルムシートは導電剤をさらに含むことができる。例として、負極フィルムシートに用いられる導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種又は複数種から選択することができる。
【0069】
本願において、負極シートの抵抗Rは本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、BER1300多機能シート抵抗器を採用して測定することができる。まず、負極シートを一定の寸法の測定試料に裁断する。抵抗計、圧力表示器の電源及びコンピュータを開き、空気弁を開き、アルコールを浸潤する無塵紙で上下の銅プローブを洗浄する。コンピュータソフトウェアをクリックし、ポート、圧力及び測定モードを選択し、端子測定面積154.02mmを入力し、測定シートを二つのプローブの間に置き、ソフトウェア上の実行ボタンをクリックすれば、測定することができる。測定が終了した後に測定結果を記録し、測定結果の正確性を確保するために、5組の測定試料を同時に測定してその平均値を計算することができる。
【0070】
抵抗Rの測定方法を参照して負極シートの任意の二つの面積が同じであり且つ中心距離が20cmである円形区域のそれぞれの抵抗R及びRを測定し、且つ抵抗差|R-R|を計算することができる。
【0071】
天然黒鉛、人造黒鉛の8MPa圧力下での粉末抵抗率は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、PRCD1100粉末抵抗率計を用いて、国家標準GB/T30835-2014を参照して測定することができる。
【0072】
負極フィルムシートの面密度は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、片面に塗布され且つ冷間圧延された負極シート(両面に塗布されたシートであれば、まずそのうちの一面の負極フィルムシートを拭き取ることができる)を取り、面積がSの小さなウエハに打ち抜き、その重量を秤量してMに記録する。次に、上記秤量後の負極シートの負極フィルムシートを拭き取り、負極集電体の重量を秤量し、Mに記録する。負極フィルムシートの面密度=(負極シートの重量M-負極集電体の重量M)/Sである。
【0073】
負極フィルムシートの圧縮密度は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法を採用して測定することができる。例えば、片面に塗布され且つ冷間圧延された負極シート(両面に塗布されたシートであれば、まずそのうちの一面の負極フィルムシートを拭き取ることができる)を取り、負極フィルムシートの厚さを測定し、さらに上記方法に応じて負極フィルムシートの面密度を測定し、負極フィルムシートの圧縮密度=負極フィルムシートの面密度/負極フィルムシートの厚さである。
【0074】
負極活性材料のD50は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、標準GB/T19077.1-2016を参照し、レーザ粒度分析計(例えば、Malvern Master Size 3000)を使用して測定することができる。ここで、D50の物理的な定義は、材料の累積体積分布パーセントが50%に達する時に対応する粒径である。
【0075】
負極活性材料の黒鉛化度は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、X線回折計(例えば、Bruker D8 Discover)を用いて測定することができる。測定はJIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照し、d002の大きさを測定する。次に、式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に基づいて計算して黒鉛化度を得る。ここで、d002はnmで計算した黒鉛の結晶構造における層間隔である。X線回折分析測定において、CuKα線を放射源とし、線波長λ=1.5418Åであり、走査2θ角範囲が20°~80°であり、走査速度が4°/minである。
[電解質]
【0076】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願に電解質の種類が具体的に制限されず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は固体電解質及び液体電解質(即ち、電解液)から選択される少なくとも一種であってもよい。
【0077】
いくつかの実施例において、電解質は電解液を採用する。電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0078】
いくつかの実施例において、電解質塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート)、LiBOB(リチウムビスオキサレートボラート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロオキサラートホスフェート)から選択される一種又は複数種であることができる。
【0079】
いくつかの実施例において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)から選択される一種又は複数種であることができる。
【0080】
いくつかの実施例において、電解液は添加剤をさらに含むことができる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに電池のある性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等を含むことができる。
[セパレータ]
【0081】
電解液を用いる二次電池、及び固体電解質を用いるいくつかの二次電池においては、さらにセパレータが含まれる。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置されて隔離の役割を果たす。本願は、セパレータの種類に特に制限がなく、任意の公知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを選択することができる。いくつかの実施例において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される一種又は複数種であってもよい。セパレータは単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよい。
【0082】
本願の二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、方形又は他の任意の形状であってもよい。図1は、一例としての方形構造の二次電池5である。
【0083】
いくつかの実施例において、二次電池は外装を含むことができる。当該外装は、正極シート、負極シート及び電解質を封止するために用いられる。
【0084】
いくつかの実施例において、二次電池の外装はソフトパッケージであってもよく、例えば、バグ式ソフトパッケージである。ソフトパッケージの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの一種又は複数種を含むことができる。二次電池の外装は、ハードケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケース等である。
【0085】
いくつかの実施例において、図2を参照し、外装はケース51及びカバープレート53を含むことができる。ここで、ケース51は底板と底板に接続された側板を含み、底板と側板の嵌合で収容室を形成する。ケース51は収容室に連通する開口を有し、カバープレート53は前記開口にカバーすることができる。それにより、前記収容室を閉鎖する。
【0086】
正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスで電極アセンブリ52を形成する。電極アセンブリ52は、前記収容室に封止されている。電解質は、電解液を採用することができ、電解液が電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調整することができる。
【0087】
いくつかの実施例において、二次電池は、電池モジュールに組み立てることができる。電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数が電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0088】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列することができる。これらの複数の二次電池5は、さらに締結具によって固定されていてもよい。
【0089】
選択的に、電池モジュール4は、さらに収容空間を有するハウジングを含み、複数の二次電池5が当該収容空間に収容される。
【0090】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てることができる。電池パックに含まれる電池モジュールの数量は電池パックの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0091】
図4及び図5は、一例としての電池パック1である。図4及び図5を参照すると、電池パック1に電池ボックスと電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ボックスは、上部筐体2及び下部筐体3を含む。上部筐体2は下部筐体3にカバーして設けられ、そして電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、電池ボックス内に任意に配置されることができる。
【0092】
本発明者はさらに研究により、電池に採用された正極活性材料に基づいて負極シートを協調的に設計して二次電池のより優れた性能を発揮できることを見出した。
[製造方法]
【0093】
二次電池の製造方法は、負極シート、正極シート及び電解質を組み立てて二次電池を形成する工程を含むことができる。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シートを順に巻回するか又は積層することにより、セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置して隔離の役割を果たし、電極アセンブリ(即ち、セル)を得る。電極アセンブリを外装に配置し、電解液を注入して封止し、二次電池を得る。
【0094】
いくつかの実施例において、二次電池の製造は正極シートを製造する工程をさらに含むことができる。例として、正極活性材料、導電剤及び結着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、NMPと略称する)に分散させて均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経た後、正極シートを得る。
【0095】
いくつかの実施例において、二次電池の製造は負極シートを製造する工程をさらに含むことができる。例として、負極活性材料、接着剤、及び選択可能な増粘剤及び導電剤を溶剤(脱イオン水であってもよい)に分散させて均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経た後、負極シートを得る。
装置
【0096】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様の二次電池を含む装置を提供する。前記二次電池は、前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、携帯機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー蓄積システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0097】
前記装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0098】
図6は、一例としての装置である。当該装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。当該装置の二次電池への高電力及び高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0099】
他の例としての装置は携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は一般的に薄型化が要求され、二次電池を電源として採用することができる。
実施例
【0100】
以下の実施例は本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は単に説明を説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって自明である。特に断らない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比は、いずれも重量に基づいて計算するものである。また、実施例で使用された全ての試薬を購入して取得するか又は従来の方法に従って合成して取得することができ、且つさらに処理する必要がなくて直接使用することができる。また、実施例において使用された器械はいずれも購入して取得することができる。
実施例1
負極シート
【0101】
負極活性材料(75重量%の人造黒鉛及び25重量%の天然黒鉛)、導電剤Super P、接着剤SBR、増粘剤CMC-Naを96.2:0.8:1.8:1.2の重量比で混合し、且つ適量の脱イオン水に十分に撹拌することにより、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体である銅箔の二つの表面に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、負極シートを得る。
正極シート
【0102】
正極活性材料LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略称する)、導電剤Super P、接着剤PVDFを96.5:1.5:2の重量比で適量のNMP中で十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の二つの表面に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、正極シートを得る。
セパレータ
【0103】
PP/PE複合セパレータを用いた。
電解液の調製
【0104】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合した後、LiPFを上記溶液に均一に溶解し、電解液を得る。当該電解液において、LiPFの濃度は1mol/Lである。
二次電池の作製
【0105】
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層して巻回し、電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に入れ、上記作製された電解液を添加し、封止、静置、化成、エイジング等の工程を経た後、二次電池を得る。
実施例2~25及び比較例1~12
【0106】
製造方法は実施例1と類似し、異なることは以下である。負極シートの製造工程における関連パラメータを調整し、対応する二次電池を得る。詳細は表1及び表2に示すとおりである。また、表1における実施例1~12及び比較例1~6の電池は、いずれも正極活性材料NCM811を採用する。表2における実施例13~25及び比較例7~12の電池は、いずれも正極活性材料リン酸鉄リチウム(LFPと略称する)を採用する。
測定内容
【0107】
以下の測定において、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物である場合、放電カットオフ電圧は2.8Vであり、充電カットオフ電圧は4.2Vである。正極活性材料がリン酸鉄リチウムである場合、放電カットオフ電圧は2.5Vであり、充電カットオフ電圧は3.65Vである。
(1)負極シートの高温サイクル膨張率の測定
【0108】
負極シートの初期厚さをHと記す。25℃の環境で、電池に対して充放電測定を行い、1.0C(即ち、1h内に理論容量の電流値を完全に放電する)の定電流で放電カットオフ電圧まで放電する。次に、1.0Cの定電流で充電カットオフ電圧まで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電を継続し、この時に電池が満充電状態であり、即ち、100%SOC(State of Charge、荷電状態)である。満充電の電池を5min静置した後、1.0Cの定電流で放電終止電圧まで放電し、この時の放電容量が電池の1.0Cでの実際容量であり、Cと記す。45℃で、二次電池を新威充放電機で100%DOD(100%放電深度、即ち満充電後に満放電)の1C/1C充放電サイクルを行う。サイクル数が600に達すると、サイクルを停止する。次に、二次電池を100%SOCまで充電し、二次電池を解体して負極シートに対応する厚さを測定し、Hと記す。45℃、1C/1Cサイクル600回を行った後、電池の負極シートの膨張率は(H/H-1)×100%である。
(2)電池の低温リチウム析出性能の測定
【0109】
まず、(1)の方法で電池の1.0Cにおける実際容量Cを測定した。次に、電池を-10℃の環境下に置き、xC、定電流で充電カットオフ電圧まで充電し、さらに定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min静置し、電池セルを解体して界面のリチウム析出状況を観察する。負極の表面にリチウムが析出しないと、充電倍率を増大して再び測定し、負極の表面にリチウムが析出するまで終止する。負極表面のリチウム析出の最大充電倍率を記録し、低温リチウム析出倍率を確定する。
(3)電池の高温貯蔵性能の測定
【0110】
まず、(1)の方法によって電池の1.0Cでの実際容量Cを測定した。次に、25℃で電池を1Cの充電電流、定電流で充電カットオフ電圧まで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電を継続し、この時に電池が満充電状態である。満充電状態の電池を60℃の環境下に置き、30日放置した後に取り出して25℃で残容量Cを測定し、一回の貯蔵周期とする。今回の放電容量は1回目の貯蔵後の放電容量である。放電容量がCの90%まで、1回目の貯蔵測定工程を繰り返し、この時の貯蔵時間を記録する。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
実施例1~12と比較例1~6の比較結果から分かるように、正極シートが層状のリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極シートが同時に人造黒鉛と天然黒鉛を含み、且つ抵抗Rが6.0mΩ≦R≦12.0mΩを満たし、特に8.0mΩ≦R≦10.0mΩを満たす時、負極シートが充放電過程において低いサイクル膨張を有することができ、同時に負極シートのリチウムイオン伝送性能を効果的に向上させる。それにより、二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、二次電池の低サイクル膨張性能及び低温電力性能を向上させることができる。また、電池の高温貯蔵過程での容量維持率も明らかに向上する。
【0114】
実施例13~25と比較例7~12の比較結果から分かるように、正極シートがオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含み、負極シートが同時に人造黒鉛と天然黒鉛を含み、且つ抵抗Rが3.0mΩ≦R≦7.0mΩを満たし、特に4.0mΩ≦R≦6.0mΩを満たす時、負極シートが充放電過程において低いサイクル膨張を有することができ、同時に負極シートのリチウムイオン伝送性能を効果的に向上させる。それにより、二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、二次電池の低サイクル膨張性能及び低温電力性能を向上させることができる。より好ましくは、電池の高温貯蔵過程での容量維持率も明らかに向上させることができる。
【0115】
また、実施例6~8及び実施例18~21の結果から分かるように、正極シートが特定の正極活性材料を採用し、負極シートが同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、且つ負極活性材料における天然黒鉛の質量割合が特定の範囲内にある場合、電池の低サイクル膨張性能、低温電力性能及び高温貯蔵性能をさらに向上させることができる。
【0116】
実施例9~12及び実施例22~25の結果から分かるように、正極シートが特定の正極活性材料を採用し、負極シートが同時に人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、且つ負極フィルムシートの圧縮密度及び/又は面密度が特定の範囲内にある場合、電池の低サイクル膨張性能、低温電力性能及び高温貯蔵性能をさらに向上させることができる。
【0117】
以上の説明は本願の具体的な実施形態だけであり、本願の保護範囲はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な修正又は置換を容易に想到でき、これらの修正又は置換はいずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、正の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6