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特許7403657コーティング機器及びそのコーティング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】コーティング機器及びそのコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/22 20060101AFI20231215BHJP
   C23C 14/12 20060101ALI20231215BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20231215BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
C23C14/22 Z
C23C14/12
C23C14/50 K
C23C14/50 J
C23C14/50 H
H01L21/68 N
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022537843
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2020095077
(87)【国際公開番号】W WO2021120542
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】201911310683.X
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522241907
【氏名又は名称】江蘇菲沃泰納米科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU FAVORED NANOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.182 East Loop, Yuqi Industry Park, Huishan District, Wuxi, Jiangsu 214000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】宗 堅
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/020391(WO,A1)
【文献】特表2009-517852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0045563(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002784(US,A1)
【文献】国際公開第2016/045858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 - 14/58
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にフィルム層を形成するためのコーティング装置であって、
反応チャンバ、及び当該基材を配置するための基材位置決め領域を有するチャンバ体と、
前記チャンバ体の内壁に隣接する位置に配置された複数のモノマー放出ソースであって、各前記モノマー放出ソースは、フィルム層形成材料を前記チャンバ体の前記反応チャンバに導入するための放出入口を有する、複数の前記モノマー放出ソースと、
前記チャンバ体の前記反応チャンバに配置され、当該フィルム層形成材料を励起するプラズマ励起ソースと、
を含み、
前記基材位置決め領域は、当該基材が前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に配置されるように、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置する、
コーティング装置。
【請求項2】
前記プラズマ励起ソースの放電方式は、直流放電、交流放電、オーディオ放電、無線周波放電、マイクロ波放電、中間周波放電、ペニング放電、火花放電及びパルス放電の組み合わせのうちの1つ又は複数から選択される、請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
モノマー供給ユニットをさらに含み、前記モノマー供給ユニットは、当該フィルム層形成材料の原材料を貯蔵するための材料貯蔵器と、原材料を気化させて気化モノマーの当該フィルム層形成材料を形成するための気化器とをさらに含み、又は
モノマー供給ユニットをさらに含み、前記モノマー供給ユニットは、前記モノマー放出ソースに連通し、ガスモノマーの当該フィルム層形成材料を貯蔵するための材料貯蔵器をさらに含む、
請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項4】
当該基材を前記チャンバ体の前記反応チャンバに支持するための支持領域を有する支持フレームをさらに含み、
前記支持フレームの前記支持領域は、当該基材が前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に配置されるように、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置する、請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記支持フレームは、前記チャンバ体の前記反応チャンバにおいて前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に装着される、請求項4に記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記支持フレームは、前記チャンバ体の前記反応チャンバにおいて前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間を移動するように操作される、請求項4に記載のコーティング装置。
【請求項7】
前記支持フレームの移動は、線形運動、曲線運動、摺動運動及び回転運動の組み合わせのうちの1つ又は複数から選択される、請求項6に記載のコーティング装置。
【請求項8】
前記プラズマ励起ソースは、電力を当該フィルム層形成材料に印加するための電極装置を含み、前記電極装置は、無線周波放電を行うための1対の電極、又は前記反応チャンバ内に延在する平面電極を含む、請求項4に記載のコーティング装置。
【請求項9】
前記チャンバ体の前記反応チャンバの横断面は、円形、楕円形、多角形の組み合わせのうちの1つから選択される、請求項4に記載のコーティング装置。
【請求項10】
前記支持フレームは、複数の当該基材を支持するための複数の前記支持領域を含み、複数の前記支持領域は前記プラズマ励起ソースの周囲に配置される、請求項4に記載のコーティング装置。
【請求項11】
前記支持フレームは複数の前記支持領域を有する担持スタンドを含み、前記担持スタンドは、その中心を軸として前記プラズマ励起ソース周りに回転するように操作される、請求項10に記載のコーティング装置。
【請求項12】
前記支持フレームは、前記チャンバ体の中心軸周りに回転するように操作される可動スタンドと、複数の前記支持領域を有しており、前記可動スタンドに配置され、その中心軸周りに前記プラズマ励起ソースの周囲で回転するように操作される担持スタンドと、を含む、請求項10に記載のコーティング装置。
【請求項13】
前記プラズマ励起ソースは電力を当該フィルム層形成材料に印加するための電極装置を含み、前記電極装置は、正負電極として交互に円周方向に配置される複数の第1電極と複数の第2電極とを含み、各前記第1電極及び前記第2電極はいずれも電極板である、請求項10に記載のコーティング装置。
【請求項14】
前記プラズマ励起ソースは電力を当該フィルム層形成材料に印加するための電極装置を含み、前記電極装置は、正負電極として複数の第1電極と複数の第2電極とを含み、各前記第1電極及び前記第2電極は円筒電極であり、前記第1電極は前記第2電極の周囲に外嵌される、請求項10に記載のコーティング装置。
【請求項15】
前記第2電極はさらに、前記チャンバ体の前記反応チャンバの外側に連通する抽気管である、請求項14に記載のコーティング装置。
【請求項16】
基材の表面にフィルム層を形成するためのコーティング方法であって、
当該基材を、チャンバ体の反応チャンバにおけるモノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間の位置に配置るステップ(a)と、
前記モノマー放出ソースによって、フィルム層形成材料を前記反応チャンバに導入して、前記プラズマ励起ソースの作用で、当該基材の表面にポリマーフィルム層を形成するステップ(b)と、を含
当該基材を、チャンバ体の反応チャンバにおけるモノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間の位置に配置する前記ステップ(a)は、複数の基材で前記プラズマ励起ソースを取り囲むことを含み、
前記フィルム層形成材料を前記反応チャンバに導入する前に、前記フィルム層形成材料が前記反応チャンバの半径方向において前記プラズマ励起ソースに向かって放出されるように、複数の前記モノマー放出ソースを周方向に配置することを含む、
コーティング方法。
【請求項17】
当該基材を前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間を繰り返して往復移動させるステップ、又は
前記プラズマ励起ソース周りに当該基材を回転させるステップ、
をさらに含む、請求項16に記載のコーティング方法。
【請求項18】
原料を気化させて気化モノマーである当該フィルム層形成材料を形成し、当該フィルム層形成材料を前記モノマー放出ソースに搬送して、当該フィルム層形成材料を前記チャンバ体の前記反応チャンバに供給するステップをさらに含む、請求項16に記載のコーティング方法。
【請求項19】
ガスの当該フィルム層形成材料を前記モノマー放出ソースに搬送して、当該フィルム層形成材料を前記チャンバ体の前記反応チャンバに供給するステップをさらに含む、請求項16に記載のコーティング方法。
【請求項20】
可動スタンドを前記チャンバ体の中心軸周りに回転させ、前記可動スタンドに装着される担持スタンドによって当該複数の基材を支持するステップをさらに含む、請求項16に記載のコーティング方法。
【請求項21】
前記担持スタンドを移動させ、前記担持スタンドと前記可動スタンドとを相対移動させるステップをさらに含む、請求項20に記載のコーティング方法。
【請求項22】
前記担持スタンドは、前記可動スタンドに配置されており、中心軸周りに回転するように操作される、請求項21に記載のコーティング方法。
【請求項23】
コーティングチャンバと、
前記コーティングチャンバに設けられており、基材を支持するための少なくとも1つの支持ユニットを有する少なくとも1つのスタンドであって、コーティング領域に設けられ、前記コーティング領域は、前記コーティングチャンバの中央位置と前記コーティングチャンバの周囲側面との間に位置する、少なくとも1つの前記スタンドと、
前記コーティングチャンバに連通し、前記コーティングチャンバにガスモノマー/モノマー蒸気を導入するための少なくとも1つのモノマーソースであって、前記モノマーソースの供給口は前記コーティングチャンバの前記周囲側面の位置に配置される、少なくとも1つの前記モノマーソースと、
前記コーティングチャンバの中央の領域又は位置配置され、ガスモノマー/モノマー蒸気を活性化するためのプラズマ体励起場と、
を含み、
前記スタンドの前記支持ユニットは、基材の表面に薄膜を製造するように、前記プラズマ体励起場と相対的に往復して近接及び離間することを特徴とする、
コーティング機器。
【請求項24】
前記スタンドは、基材を前記プラズマ体励起場と前記モノマーソースとの間で往復移動させるように支持して移動させ、又は往復揺動させ、又は楕円周運動させ、又は球面運動させ、又は遊星運動させるように、配置される、請求項23に記載のコーティング機器。
【請求項25】
基材の表面にフィルム層を形成するためのコーティング装置であって、
反応チャンバ、及び当該基材を配置するための基材位置決め領域を有するチャンバ体と、
フィルム層形成材料を前記チャンバ体の前記反応チャンバに導入するための放出入口を有するモノマー放出ソースと、
前記チャンバ体の前記反応チャンバに配置され、当該フィルム層形成材料を励起するプラズマ励起ソースと、
当該基材を前記チャンバ体の前記反応チャンバ内で支持するための支持領域を有する支持フレームと、
を含み、
前記基材位置決め領域は、当該基材が前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に配置されるように、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置し、
前記支持フレームの前記支持領域は、当該基材が前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に構成されるように、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置し、
前記プラズマ励起ソースは、前記チャンバ体に、前記モノマー放出ソースと間隔を持って装着され、又は
前記プラズマ励起ソースは、前記支持フレームに装着され、前記支持フレームにおける前記モノマー放出ソースに対向する側に位置する、
コーティング装置。
【請求項26】
基材の表面にフィルム層を形成するためのコーティング装置であって、
反応チャンバ、及び当該基材を配置するための基材位置決め領域を有するチャンバ体と、
フィルム層形成材料を前記チャンバ体の前記反応チャンバに導入するための放出入口を有するモノマー放出ソースと、
前記チャンバ体の前記反応チャンバに配置され、当該フィルム層形成材料を励起するプラズマ励起ソースと、
当該基材を前記チャンバ体の前記反応チャンバ内で支持するための支持領域を有する支持フレームと、
を含み、
前記基材位置決め領域は、当該基材が前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に配置されるように、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置し、
前記支持フレームの前記支持領域は、当該基材が前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に構成されるように、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置し、
前記チャンバ体は2つの対向する側壁を有し、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとは、それぞれ前記チャンバ体の前記反応チャンバ内に配置され、互いに対向する2つの前記側壁に隣接する位置に設けられ、又は
前記チャンバ体は2つの隣接する側壁を有し、前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとは、それぞれ前記チャンバ体の前記反応チャンバ内に配置され、前記チャンバ体の隣接する2つの前記側壁に隣接する位置に設けられる、
コーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は堆積式コーティングに関して、特に、コーティング機器及びコーティング方法に関し、前記方法はフィルム層を基材に付与し形成し、前記基材はフィルム層形成材料の放出ソースとプラズマ励起ソースとの間に設けられることで、フィルム層成形工程において前記フィルム層形成材料の過度分解を防止する。
【背景技術】
【0002】
コーティング機器は、基材の表面にポリマーコート層又は薄膜を形成するように配置され、前記基材の製造材料は、金属、ガラス、セラミック、ポリマー、繊維、粉末及び半導体を含むが、これらに限定されず、前記基材の多種の性能、例えば、疎水性、親水性、疎油性、防錆、防カビ、防湿、電気/熱伝導率、生物医学、光学、摩擦性能を向上させる。
【0003】
典型的なコーティング機器はプラズマ体化学気相成長法PECVD (Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)を利用し、ガスフィルム層形成材料を真空室に導入するように製造され、前記真空室には1つ又は複数の前記基材が配置され、これによって、前記基材の表面にポリマーコート層を形成する。より具体的に、前記ガスフィルム層形成材料は有機材料、有機シリコーン材料、無機材料、及び以上の組み合わせを含むが、これらに限定されず、電気エネルギーをモノマーに放出することで、多種の活性前駆体を生成し、前記基材をプラズマ化するように活性化されるモノマーガス又はモノマー蒸気である。そして、活性前駆体と前記モノマーとの間は反応が生じ、又は活性前駆体自体は反応が生じて、その後、ポリマー薄膜は前記基材の表面に堆積形成される。
【0004】
モノマーは活性前駆体を生成するように励起されるべきであるが、モノマーはプラズマ励起媒体において過度に曝されると、モノマーの過度分解を招致し、堆積速度及びポリマーフィルム層の均一性に悪影響を及ぼす。
【0005】
図1Aに示すように、従来のコーティング機器はチャンバ体1と、フィルム層形成材料をチャンバ体1に導入するためのフィルム層形成材料の放出ソース2と、フィルム層形成材料に電気エネルギーを印加し、前記フィルム層形成材料を励起するためのプラズマ励起ソース3と、を含む。図面に示すように、1つ又は複数の基材4は前記プラズマ励起ソース3の相対する電極の間に設けられる。前記フィルム層形成材料は前記プラズマ励起ソース3の相対する電極の間の空間に分散し、励起過程を経ることで、活性前駆体を生成する。フィルム層形成材料は前記プラズマ励起ソース3の作用で励起され、前記プラズマ励起ソース3に配置される前記基材4に堆積すべきであるため、フィルム層形成材料には過度分解が発生する恐れがある。また、前記基材4の、前記プラズマ励起ソース3の電極の間での曝露も、前記基材4に対する損傷を招致する恐れがある。
【0006】
図1Bに示すように、別の従来のコーティング機器はチャンバ体1、フィルム層形成材料の放出ソース2と、フィルム層形成材料の前記放出ソース2とコーティング対象である基材4との間に設けられるプラズマ励起ソース3とを含む。コーティング方法期間で、前記基材4に達する前、活性前駆体を生成するための励起過程を実行するように、フィルム層形成材料は前記プラズマ励起ソース3の相対する電極の間の空間を通過する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
名称が「前駆体を、遠位基材を塗装するための励起媒体に気化する」である米国特許番号US7,968,154B2、及び名称が「フィルム層形成材料を少なくとも1つの基材に付与する」である米国特許番号US8,029,872B2は、気化モノマーソース及びプラズマ励起媒体を含むコーティング機器を開示している。前記基材及び気化されたモノマーソースはそれぞれプラズマ励起媒体の対向する両側に位置し、気化モノマーソースはプラズマ励起媒体を通過してから、プラズマ励起媒体の対向側の基材の表面に堆積し、ポリマーフィルム層を形成する。従って、気化されたモノマーはプラズマ励起媒体を通過した場合のみ、基材の表面に堆積できる。プラズマ励起媒体は大部分の気化モノマーを比較的長い時間内で分解させ、気化モノマーを過度に分解させる恐れがあるため、形成したフィルム層は、気化されたフィルム層形成材料の化学性質を保持し難い。
【0008】
名称が「マルチソース低電力低温プラズマ体重合コーティング装置及び方法」である米国特許出願番号US16/095179は、コーティング装置を開示し、前記コーティング装置は、単一の大面積、大電力高周波放電源の代わりとして、複数の小面積、低電力の光源高周波放電を組み合わせる。ところが、前記方法は依然として、ある程度でモノマーの化学モノマー構成を過度に破壊し、形成されたポリマーフィルム層の品質が不十分であり、装置の構成が複雑で、且つ組立が困難である。
【0009】
本発明の主な利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、プラズマ体重合コーティング方法期間で、フィルム層形成材料を過度に破壊することないように、基材の表面にはフィルム層が形成される。
【0010】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、コーティング対象である前記基材は、フィルム層形成材料をチャンバ体に導入するためのモノマー放出ソースと、フィルム層形成材料を励起するためのプラズマ励起ソースとの間に配置されることで、ガスモノマー又は気化モノマーであるフィルム層形成材料は、基材に達する前、前記プラズマ励起ソースを通過する必要がなくなるため、フィルム層形成材料の過度分解を低減させる。
【0011】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、少なくとも一部のフィルム層形成材料がプラズマ励起ソースに達する前、基材を位置決める領域に達するように、コーティング対象である基材は、前記プラズマ励起ソースより、前記モノマー放出ソースまでの距離が小さい位置に配置され、これによって、基材に達する前に、全てのフィルム層形成材料がいずれもプラズマ励起ソースを通過する必要がなくなる。
【0012】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、前記モノマー放出ソースと、前記基材を支持するための支持フレームとを含み、前記プラズマ励起ソースの構造は所望の活性前駆体の間の反応レベルを保持でき、これは、所定割合のモノマーが前記プラズマ励起ソースに達することによって発生したものであり、別の部分のモノマーはまだ活性前駆体に分解していなく、基材の表面に形成されたポリマーフィルム層の品質を向上させる。
【0013】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、いくつかの実施形態によれば、コーティング対象である基材は前記支持フレームに支持され、前記支持フレームはモノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間を移動し、前記基材と前記プラズマ励起ソースとの間の距離を調節し、基材の表面に堆積形成されるポリマー材料の構成成分を制御して調節する。
【0014】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、いくつかの実施形態によれば、前記プラズマ励起ソースは前記チャンバ体の反応チャンバの略中央位置に設けられ、また、複数の前記基材は前記プラズマ励起ソースの周囲に配置され、前記フィルム層形成材料は、前記チャンバ体の内壁に隣接する位置での前記モノマー放出ソースに放出され、径方向で反応チャンバに分散され、プラズマ励起ソースに達する前、基材を配置する領域を通過する必要がある。
【0015】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、いくつかの実施形態によれば、前記基材を支持するための前記支持フレームは、前記反応チャンバにおいて前記プラズマ励起ソースに対して回転する回転台を含むように実施され、前記基材と前記プラズマ励起ソースとの間の相対位置を変更することで、前記反応チャンバに分散された気化フィルム層形成材料に対する撹拌の役割を果たし、前記基材の表面に形成されるポリマーフィルム層の均一性を向上させる。
【0016】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、いくつかの実施形態によれば、前記基材とフィルム層形成材料の前記モノマー放出ソースとの間の相対運動は制御可能であるため、前記プラズマ励起ソースの励起によって影響されずに、前記フィルム層形成材料の、前記基材に達する量を調節し、活性前駆体とモノマーとは十分に反応でき、高品質のポリマーフィルム層は前記基材の表面に堆積する。
【0017】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、いくつかの実施形態によれば、前記基材と前記プラズマ励起ソースとの間の相対運動は制御可能であるため、前記表面に達する活性前駆体の量を制御し、基材の表面にポリマーフィルム層を形成する前、活性前駆体とモノマーとを十分に反応させる。
【0018】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、いくつかの実施例によれば、前記基材は、その中心軸周りに回転するとともに、回転台に沿って回転する支持フレームに支持されることで、前記基材と前記プラズマ励起ソースとの間の相対位置を調節し、前記基材に達する活性前駆体及びモノマーの量を調節し、前記基材の表面にポリマーフィルム層を形成する。
【0019】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、コーティング対象である基材は前記プラズマ励起ソースの外側に配置されることで、コーティングプロセスで、前記プラズマ励起ソースの、前記基材に対する損壊を避ける。
【0020】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、前記フィルム層は均一に前記基材の表面に形成され、堆積速度を高める。
【0021】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、ポリマーフィルム層を形成するフィルム層形成材料の使用量を高めるため、浪費を避け、コストを低減させる。
【0022】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、ポリマーフィルム層の分子構成におけるグラフト成長及び架橋を強化させ、ポリマーフィルム層の分子構成の完全性を実現し、ポリマーフィルム層の優れた性能を確保する。
【0023】
本発明の別の利点はコーティング機器及びコーティング方法を提供することにあり、前記機器の構成は簡単であり、操作及びメンテナンスは容易である。
【0024】
本発明の他の利点及び特点は、以下の詳しい説明によって十分に体現され、添付の請求項が特別に指摘した手段及び装置の組み合わせを利用して実現される。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の態様によれば、上記目的、他の目的及び利点を実現できる本発明の、基材の表面にフィルム層を形成するためのコーティング機器であって、前記コーティング機器はチャンバ体と、モノマー放出ソースと、プラズマ励起ソースとを含む。前記チャンバ体は反応チャンバ、及び前記基材を位置決めるための基材位置決め領域を有する。前記モノマー放出ソースは、フィルム層形成材料を前記チャンバ体の前記反応チャンバに導入するための放出入口を有する。前記プラズマ励起ソースは前記チャンバ体の反応チャンバに設けられ、前記フィルム層形成材料を励起し、前記基材が前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に配置されるように、前記基材位置決め領域は前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置する。
【0026】
本発明の別の態様によれば、本発明は基材の表面にフィルム層を形成するためのコーティング機器を提供し、前記コーティング機器は、反応チャンバを有するチャンバ体と、支持フレームと、モノマー放出ソースと、プラズマ励起ソースとを含む。前記支持フレームは、前記チャンバ体の前記反応チャンバ内で前記基材を支持するための支持領域を有する。前記モノマー放出ソースは、フィルム層形成材料を前記チャンバ体の前記反応チャンバに導入するための放出入口を有する。前記プラズマ励起ソースは前記チャンバ体の前記反応チャンバに設けられ、前記フィルム層形成材料を励起し、前記基材は前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に配置されるように、前記支持フレームの前記支持領域は前記モノマー放出ソースと前記プラズマ励起ソースとの間に位置する。
【0027】
本発明の別の態様によれば、本発明は基材の表面にフィルム層を形成するためのコーティング方法を提供し、前記コーティング方法は、
(a)チャンバ体の反応チャンバにおけるモノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間に前記基材を配置するステップと、
(b)前記プラズマ励起ソースの作用で前記基材の表面にポリマーフィルム層を形成するように、前記モノマー放出ソースによって、フィルム層形成材料を前記反応チャンバに導入するステップと、を含む。
【0028】
後続の記載及び図面に対する理解によって、本発明のさらなる目的及び利点は十分に体現される。
【0029】
以下の詳しい説明、図面及び請求項によって、本発明の以上及び他の目的、特徴並びに利点は十分に表現される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】従来技術のコーティング機器の模式図である。
図1B】別の従来技術のコーティング機器の模式図である。
図2A】本発明の第1好適な実施例によるコーティング機器の原理模式図である。
図2B】本発明の上記第1好適な実施例による前記コーティング機器の原理模式図であり、前記コーティング方法を実施するように、前記コーティング機器には基材が配置されることを説明する図である。
図2C】本発明の上記第1好適な実施例による実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図である。
図2D】本発明の上記第1好適な実施例による別の実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図である。
図3A】本発明の第2好適な実施例によるコーティング機器の原理模式図である。
図3B】本発明の上記第2好適な実施例による前記コーティング機器の原理模式図であり、支持フレームは前記基材を携帯するとともに、モノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間を移動することを説明する図である。
図3C】本発明の上記第2好適な実施例による前記コーティング機器の原理模式図であり、支持フレームは前記基材を携帯するとともに、モノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間を移動することを説明する図である。
図4A】本発明の上記第2好適な実施例による実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図である。
図4B】本発明の上記第2好適な実施例による別の実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図である。
図5A】本発明の上記第2好適な実施例による実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図であり、支持フレームは、前記プラズマ励起ソースが装着されるとともに、前記基材を携帯してモノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間を移動することを説明する図である。
図5B】本発明の上記第2好適な実施例による実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図であり、支持フレームは、前記プラズマ励起ソースが装着されるとともに、前記基材を携帯してモノマー放出ソースとプラズマ励起ソースとの間を移動することを説明する図である。
図6A】本発明の上記第2好適な実施例による実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図であり、支持フレームは前記基材を携帯し、モノマー放出ソースに近くまたは遠く移動することを説明する図である。
図6B】本発明の上記第2好適な実施例による可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図であり、支持フレームは前記基材を携帯し、モノマー放出ソースに近くまたは遠く移動することを説明する図である。
図7】本発明の第3好適な実施例によるコーティング機器の原理模式図である。
図8】本発明の上記第3好適な実施例による可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図である。
図9】本発明の上記第3好適な実施例による別の実施可能な形態の前記コーティング機器の原理模式図である。
図10】本発明の第4好適な実施例によるコーティング機器のモジュール模式図である。
図11】本発明の上記第4好適な実施例による前記コーティング機器の構成ブロック図である。
図12】本発明の第1変形実施例によるコーティング機器の構成模式図である。
図13】本発明の第2変形実施例によるコーティング機器の構成模式図である。
図14】本発明の第2変形実施例による前記コーティング機器の変形実施形態の構成模式図である。
図15】本発明の第2変形実施例による前記コーティング機器の変形実施形態の公転フレームのモジュール模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の記載は、当業者が本発明を実現できるように本発明を開示するためである。以下の記載中の好ましい実施例は例示とするだけであり、当業者は、他の自明な変形を想到できる。以下の記載中に定められる本発明の基本原理は他の実施案、変形案、改善案、均等案、及び本発明の精神、範囲を逸脱しない他の技術案に適用されることができる。
【0032】
当業者が理解すべきなのは、本発明の開示において、用語である「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等が指示する方位または位置関係は、添付図面に示す方位または位置関係に基づくものであり、示す装置または素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構造し操作されることを指示または暗示することがなく、本発明の記載を便利にさせて記載を簡単化するためだけであり、よって、上記用語は、本発明への制限と理解できない。
【0033】
理解するように、用語である「一」は、「少なくとも」または「1つまたは複数」と理解すべきであり、即ち、1つの実施例において、1つの素子の数量は1つであってもよく、他の実施例において、該素子の数量は複数であってもよく、用語である「一」は、数量への制限と理解できない。
【0034】
図2A及び図2Bに示すように、コーティング機器は、新規のプラズマ体重合コーティング方法を実行するように配置され、基材90の表面91にポリマーフィルム層92を形成し、本発明による第1好適な実施例に記載されるものである。より具体的に、前記コーティング機器は、反応チャンバ11を規定したチャンバ体10と、前記反応チャンバ11に連通しており、ガスモノマー又はモノマー蒸気であるフィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に導入するためのモノマー放出ソース20と、前記反応チャンバ11の内部において誘導電界を生成し、プラズマ体を形成するように操作されるプラズマ励起ソース30とを含み、前記プラズマ励起ソース30が前記フィルム層形成材料201に電気エネルギーを印加し、前記フィルム層形成材料201を励起するように、前記フィルム層形成材料201を分解させ、活性前駆体を形成し、これによって、前記フィルム層形成材料201は、プラズマ体状態に活性化され、活性前駆体とモノマーとの間の反応、及び前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11における活性前駆体の間の反応を誘発し、前記基材90の前記表面91に前記ポリマーフィルム層92を堆積して形成する。
【0035】
本発明の当該好適な実施例によれば、図2Bに示すように、前記プラズマ励起ソース30は、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11において前記モノマー放出ソース20から離れた位置に配置される。前記チャンバ体10は前記モノマー放出ソース20とプラズマ励起ソース30との間に配置される基材位置決め領域12を有し、これによって、少なくとも1つの前記基材90は前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間の前記反応チャンバ11に配置され、本発明のプラズマ体重合コーティング方法で、前記基材90の前記表面91の前記ポリマーフィルム層92を形成するために用いられる。
【0036】
相応的に、前記基材90のプラズマ体重合コーティング方法で、1つ又は複数の前記基材90は、前記モノマー放出ソース20が前記チャンバ体10の前記基材位置決め領域12の第1側に配置され、前記プラズマ励起ソース30が前記基材90の相対する第2側に位置するように、チャンバ体10の前記基材位置決め領域12に設けられることで、前記フィルム層形成材料201が前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に放出される場合、前記フィルム層形成材料201は前記基材90に達する前、前記プラズマ励起ソース30を通過する必要がなくなり、前記フィルム層形成材料201の過度分解を避ける。
【0037】
具体的に、前記モノマー放出ソース20が前記フィルム層形成材料201を放出するように操作される場合、前記フィルム層形成材料201は前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に分散し、まず、チャンバ体10の前記基材位置決め領域12に達し、一部の前記フィルム層形成材料201のみが前記プラズマ励起ソース30により励起され、前記フィルム層形成材料201を分解して重合させ、基材の前記表面91に堆積させ、前記ポリマーフィルム層92を形成する。
【0038】
本発明のプラズマ体重合コーティング方法で、前記基材90は、前記モノマー放出ソース20から前記プラズマ励起ソース30へ流れる前記フィルム層形成材料201の流動経路に配置され、前記基材90と前記モノマー放出ソース20との距離は、前記基材90と前記プラズマ励起ソース30との間の距離より小さく、全ての前記フィルム層形成材料201はいずれも前記プラズマ励起ソース30により励起されていないため、前記フィルム層形成材料201の過度分解を避ける。
【0039】
前記基材90は直接的に前記チャンバ体10の前記基材位置決め領域12に配置されてもよい。又は、図2Bに示すように、複数の前記基材90は前記支持フレーム40に配置され、複数の前記基材90が積載された前記支持フレーム40は、前記チャンバ体10の前記基材位置決め領域12に配置されるとともに、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に収容される。又は、前記支持フレーム40は前記チャンバ体10の前記基材位置決め領域12に配置されるとともに、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に収容され、複数の前記基材90は前記支持フレーム40に配置される。別の実施可能な形態において、前記支持フレーム40は前記チャンバ体10に装着されるとともに、前記反応チャンバ11に配置され、コーティングプロセスで、複数の前記基材90は前記支持フレーム40に配置される。
【0040】
前記支持フレーム40は、多層の前記基材90を支持するための複数の支持プラットフォームを有する担持スタンド41を含む。前記担持スタンド41は前記基材90を配置して支持するための支持領域411を有し、前記支持領域411は前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間に配置される。実施可能な形態において、前記支持フレーム40全体は前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間に配置されるわけではなく、前記基材90を支持するための前記支持フレーム40の前記支持領域411は、前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間に配置され、前記支持フレームの前記支持領域411に配置される前記基材90は、前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間に配置されてもよい。
【0041】
当業者が理解すべきなのは、前記チャンバ体10の前記基材位置決め領域12は1つ又は複数の前記基材90を直接的に支持するための領域、或いは1つ又は複数の前記基材90が積載される前記支持フレーム40を支持して収容するための領域である。
【0042】
本発明のチャンバ体10は前記反応チャンバ11を限定するハウジングである。前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11の横断面は、円、楕円形、多角形、例えば矩形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、及び十角形であってもよいが、これらに限定されていない。当該好適な実施例の1つの実施例として、前記チャンバ体10は、矩形の反応チャンバ11を有するように構造される。前記モノマー放出ソース20は矩形の前記反応チャンバ11の第1側に配置され、前記プラズマ励起ソース30は矩形の前記反応チャンバ11の相対する第2側に配置される。図面に示すように、前記プラズマ励起ソース30が前記モノマー放出ソース20から離間すると同時に、前記モノマー放出ソース20は前記チャンバ体10の前記第1側壁101に隣接するように配置され、前記プラズマ励起ソース30は前記チャンバ体10の前記第2側壁102に配置され、前記第2側壁102と前記チャンバ体10の前記第1側壁101とは対向する。
【0043】
前記モノマー放出ソース20は、前記フィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に導入するための少なくとも1つの放出入口21を有する。前記放出入口21は前記チャンバ体10の壁に形成され、前記チャンバ体10の壁層を突き通す。任意に選べることとして、前記放出入口21は供給ノズルに形成され、前記チャンバ体10に嵌め込まれる。任意に選べることとして、前記放出入口21は供給ノズルに形成され、1つの原料供給ヘッドは原料供給管の遠位に位置し、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に延在する。
【0044】
本発明の当該好適な実施例によれば、前記コーティング装置は、前記フィルム層形成材料201を前記モノマー放出ソース20に供給するためのモノマー供給ユニット50をさらに含む。より具体的に、当該好適な実施例の前記モノマー供給ユニット50は、前記フィルム層形成材料201の原材料202を貯蔵するための材料貯蔵器51と、原材料202を気化するための気化器52と、前記原材料202を前記材料貯蔵器51から前記モノマー放出ソース20に搬送するための搬送管システム53と、を含む。相応的に、前記モノマー放出ソース20によって放出される前記フィルム層形成材料201は、気化されたモノマー材料である。前記フィルム層形成材料201の前記原料202は単一又は混合された液体、或いは液体/固体スラリーであってもよく、前記気化器52は、霧化装置、加熱装置、及び超音波ノズル又は噴霧器を含んでもよい。例えば、前記気化器52は、前記原料202を前記搬送管システム53に加熱し、気化モノマー材料を生成するように提供される加熱装置を含む。前記加熱装置は前記搬送管システム53の任意位置で提供されてもよい。具体的に、前記加熱装置は、液体前記原料202が前記モノマー放出ソース20に搬送された場合、前記原料202が前記加熱装置により加熱され、前記反応チャンバ11に放出される気化モノマー材料を生成するように、前記モノマー放出ソース20に対応する位置に提供される。
【0045】
前記フィルム層形成材料201の前記原料202は粉末であってもよく、前記気化器52はフラットスプレ一ガス噴射気化器であってもよい。また、前記フィルム層形成材料201とともに、キャリアガスを供給してもよい。前記材料貯蔵器51、前記気化器52、前記搬送管システム53及び前記モノマー放出ソース20の数は限定されず、いくつかの実施例において、1つ又は複数の前記材料貯蔵器51、前記気化器52、前記搬送管システム53及び前記モノマー放出ソース20を採用してもよい。
【0046】
前記プラズマ励起ソース30の放電方式は、直流放電、交流放電、オーディオ放電、容量結合又は誘導結合による無線周波放電、共振キャビティマイクロ波放電、表面波結合或いは電子サイクロトロン共鳴、中間周波放電、ペニング放電、火花放電及びパルス放電を含むが、これらに限定されていない。また、前記プラズマ励起ソース30は連続的又はパルス方式で放電するように操作される。
【0047】
図2A及び図2Bに示すように、前記プラズマ励起ソース30は、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11にプラズマ体を生成するように、前記反応チャンバ11に電界を生成するための電極装置31を含む。当該好適な実施例において、前記電極装置31は第1電極311と第2電極312とを含み、第1電極311と第2電極312との間には放出場313が画成される。例示として、当該好適な実施例の1対の電極311、312は正負電極として、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11において前記モノマー放出ソース20から離れた位置に設けられるとともに、チャンバの外側に配置される、例えばRF発生器のようなエネルギー源に接続される。任意に選べることとして、前記第1電極311は前記エネルギー源に電気接続され、前記第2電極312は接地できる。好ましくは、各前記第1電極311及び第2電極312は、前記反応チャンバ11内の前記放出場313に連通する複数の孔を有する多孔質電極として実施されてもよい。
【0048】
前記フィルム層形成材料201自体は、プラズマ体ソースガスとして機能してもよい。また、前記コーティング機器はプラズマ体ソースガス供給ユニットをさらに含み、不活性ガス及び窒素を含むが、これらに限定されていないプラズマ体ソースガスを、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に供給する。前記モノマー放出ソース20は前記フィルム層形成材料201を前記反応チャンバ11に供給する前、前記プラズマ励起ソース30の作用で、プラズマ体ソースガスを前記反応チャンバ11に注入し、プラズマ体を生成することで、プラズマ体環境を提供する。また、キャリアガスをプラズマ体ソースガスとし、前記フィルム層形成材料201を前記反応チャンバ11に供給する前、キャリアガスを前記反応チャンバ11に導入し、プラズマ体を生成する。
【0049】
特筆に値するのは、当業者が理解できるように、フィルム層形成材料201を放出するための1つ又は複数の別途の放出ソースは、前記プラズマ励起ソース30が前記基材90と前記フィルム層形成材料201を放出するための付加的な放出ソースとの間に位置するように、チャンバ体10に配置される。これらの実施例において、一部の前記フィルム層形成材料201は、前記チャンバ体の基材位置決め領域12に隣り合う位置で、前記モノマー放出ソース20から放出される。他の一部の前記フィルム層形成材料201は付加的な放出ソースから放出され、前記基材90に達する前、前記プラズマ励起ソース30を通過し、これによって、全ての前記フィルム層形成材料201がいずれも前記プラズマ励起ソース30により励起されるわけではなく、全ての前記フィルム層形成材料201を小さい物質に分解することを防止する。
【0050】
また、前記コーティング機器は他の部材、例えば、前記プラズマ励起ソース30に隣接するとともに、前記モノマー放出ソース20から離れており、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11内の圧力を調節するための圧力調節ユニット60と、前記コーティング機器の操作を制御するための制御ユニットと、排気ガスを収集するための排気ガス管と、を含んでもよい。本発明のプラズマ体重合コーティング方法で、前記フィルム層形成材料201を前記反応チャンバ11に供給する前、圧力調節ユニット60の作用で、前記反応チャンバ11は真空室になる。用語「真空室」は、チャンバがチャンバの外部より、低い空気圧を有することを指し、前記用語は必ずしも、チャンバが真空状態に排気されることを意味するとは限らない。
【0051】
本発明の前記基材90は金属、ガラス、セラミック、ポリマー、織物、繊維、粉末、及び半導体を含み、電子素子又は電子機器、機械部材或いは機械機器、編み物であってもよいが、これらに限定されず、例えば、電子部材又は電子機器は、携帯電話、ポケットベル、ラジオ、スピーカー、マイク、リンガー、ブザー、補聴器、オーディオプレイヤー、テレビ、ノートブック、ノートブック、タブレット、キーボード、PCB基板、ディスプレイ又はセンサーであってもよいが、これらに限定されていない。前記ポリマーフィルム層92は疎水性コート層、親水性コート層、疎油性コート層、防錆コート層、防カビコート層、防湿コート層、電気/熱伝導性コート層、生物医学コート層、光学コート層及び摩擦コート層であってもよいが、これらに限定されていない。前記ポリマーフィルム層92は前記基材90の前記表面91に堆積し、前記基材90の表面全体、又は前記基材90の表面全体の一部の領域であってもよい。
【0052】
前記ポリマーフィルム層92はアクリル酸コート層、エポキシコート層、有機シリコーンコート層、ポリウレタンコート層又はパラキシレンコート層であってもよく、典型的な前記ポリマーフィルム層92は疎水性ポリマーコート層であり、前記フィルム層形成材料201はCF3ベースの過フッ素化化合物、パーフルオロオレフィン、水素含有不飽和化合物、任意選択で置換されたアルキン、ポリエーテル置換オレフィン、2つの二重結合を含む有機化合物、飽和有機化合物を含む。少なくとも5つの炭素原子を有しており、任意選択で置換されたアルキン鎖は、任意に選べることとして、ヘテロ原子が挿入され、少なくとも1つのヘテロ原子の大環状化合物を含む。
【0053】
前記フィルム層形成材料201は単一分子のモノマー、オリゴマー又はその組成物などであってもよく、例えば、オリゴマーはダブルポリマー、如Parylene C、Parylene Nなどである。前記フィルム層形成材料201の実施例として、モノマーは一種又は複数種の単官能性不飽和フルオロ化合物と一種又は複数種の多官能性不飽和炭化水素誘導体との混合物である。フルオロ化合物はメタクリル3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルエステル、メタクリル2-(パーフルオロデシル)エチルエステル、メタクリル2-(パーフルオロヘキシル)エチルエステル、1,1,2,2-アクリル酸テトラヒドロパーフルオロテトラデシルエステル、アクリル酸1H、1H、2H、2H-ヘプタデカフルオロデシル、アクリル酸1H、1H、2H、2H-パーフルオロオクチル、アクリル酸2-(パーフルオロブチル)エチル、(2H-パーフルオロプロピル)-2-アクリレート、(パーフルオロシクロヘキシル)アクリル酸メチル、1-プロピン、3、3、3-トリフルオロ-、1-エチニル基-3、5-ジフルオロベンゼン及び4-エチニル基-トリフルオロトルエンを含むが、これらに限定されていない。前記多官能性不飽和炭化水素誘導体は、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、1、6-ヘキシレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル及びネオペンチルグリコールジアクリラートを含むが、これらに限定されていない。
【0054】
別の示例として、前記表面91を化学腐食から保護し、疎水性能を強めるために、前記ポリマーフィルム層92は前記基材90の前記表面91に形成される。より具体的に、モノマーは以下の式で示される構成をする。
【0055】
【化1】
【0056】
ただし、R1、R2及びR3は疎水基であり、個別に水素、アルキル、ハロゲン、又はハロアルキルから選択され、mは0~8の整数であり、nは1~15の整数であり、XはH又はハロゲン、さらに、ハロゲンFである。
【0057】
図2Cに示すように、上記第1好適な実施例による前記コーティング機器の実施可能な形態を記載する。前記支持フレーム40は前記室体10の前記反応チャンバ11に移動可能に設けられる。具体的な実施例において、前記支持フレーム40はその中心軸周りに回転するように操作されることで、前記基材90の、前記反応チャンバ11での位置を調節でき、これによって、前記基材90と前記プラズマ励起ソース30との間の距離を調節し、さらに、前記基材90と前記モノマー放出ソース20との間の距離を調節し、前記基材90の前記表面91に堆積形成されるポリマー材料の構成を制御及び調節する。
【0058】
上記第1好適な実施例によれば、図2Dに示すように、前記コーティング装置の別の実施可能な形態である。前記実施形態において、前記モノマー供給ユニット50は気化器を必要せず、前記フィルム層形成材料201のガス原料を貯蔵するための材料貯蔵装置51を含む。言い換えると、前記フィルム層形成材料201は前記材料貯蔵装置51に貯蔵され、前記搬送管システム53によって直接的に前記モノマー放出ソース20に送られる。
【0059】
例えば、当該好適な実施例の前記コーティング機器は、前記基材90の前記表面91にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を形成する。主にガス状炭化水素からなる前記フィルム層形成材料201を直接的に前記コーティング機器の前記反応チャンバ11に導入することで、PECVDプロセスを実施する。
【0060】
相応的に、本発明は、前記コーティング装置が前記基材90でコーティングを行うためのコーティング方法を提供し、前記コーティング方法は、
(a)前記基材90を、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11における前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間の位置に配置するステップと、
(b)前記モノマー放出ソース20によって、前記フィルム層形成材料201を前記反応チャンバ11に導入し、PECVDプロセスを実施することで、前記プラズマ励起ソース30の作用で、前記基材90の前記表面91に前記ポリマーフィルム層92を形成するステップと、を含む。
【0061】
ステップ(a)は、1つ又は複数の前記基材90をチャンバ体の前記基材位置決め領域12に配置するステップを含み、前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30がそれぞれ1つ又は複数の前記基材90の両側に設けられる。
【0062】
好ましくは、ステップ(a)は、1つ又は複数の前記基材90を前記支持フレーム40に配置し、前記支持フレーム40及び前記基材90をともに、チャンバ体の前記基材位置決め領域12に配置するステップを含み、前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30がそれぞれ前記支持フレーム40の両側に設けられる。
【0063】
任意に選べることとして、ステップ(a)は、前記反応チャンバ11における前記チャンバ体10の前記基材位置決め領域12に前記支持フレーム40を構成し、前記支持フレーム40に1つ又は複数の前記基材90を積載するステップを含み、前記支持フレーム40は前記チャンバ体10に装着又は固定され、或いは単に前記反応チャンバ11に配置される。
【0064】
特筆に値するのは、1つ又は複数の前記基材90は水平、傾斜又は垂直に前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に配置される。
【0065】
ステップ(a)において、前記コーティング方法は、間隔をあけて前記反応チャンバ11に前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30を配置し、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11の2つの対向側では、前記フィルム層形成材料201が前記モノマー放出ソース20からプラズマ励起ソース30へ流れる流動経路に、少なくとも一部の前記フィルム層形成材料201が、前記プラズマ励起ソース30に達する前、基材を配置した前記基材位置決め領域12を通過する必要があるように、1つ又は複数の前記基材90を配置するステップを含む。
【0066】
ステップ(b)は、前記原料202を気化することで、気化モノマーとしての前記フィルム層形成材料201を形成し、前記フィルム層形成材料201を前記モノマー放出ソース20に搬送し、これによって、前記フィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に供給するステップを含む。相応的に、前記フィルム層形成材料201はポンプによって、前記反応チャンバ11に注入され、又は前記反応チャンバ11の圧力の低下のため、前記反応チャンバ11に吸入される。
【0067】
ステップ(b)は、ガスモノマーとしての前記フィルム層形成材料201を前記モノマー放出ソース20に供給することで、前記フィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に供給するステップを含む。
【0068】
当該好適な実施例によれば、ステップ(b)において、図2Bに示すように、前記フィルム層形成材料201は前記モノマー放出ソース20によって、前記プラズマ励起ソース30に向いて前記チャンバ体10に散布する。例えば、前記プラズマ励起ソース30に向いて、前記フィルム層形成材料201を水平に前記チャンバ体10に注入するが、前記支持フレーム40は前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間に配置され、前記フィルム層形成材料201は、前記基材90に対してプラズマ体処理を行うための前記基材90に達する前、前記プラズマ励起ソース30を通過する必要がなくなるため、全ての前記フィルム層形成材料201はいずれも前記プラズマ励起ソース30により活性化されて励起されるわけではない。
【0069】
図3A図3Cに示すように、本発明の第2好適な実施例による前記コーティング機器を記載する。当該好適な実施例の前記コーティング機器は、反応チャンバ11を有するチャンバ体10と、ガスフィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に放出するためのモノマー放出ソース20と、前記反応チャンバ11から離れたプラズマ励起ソース30とを含む。前記プラズマ励起ソース30は、前記フィルム層形成材料201を活性化して励起し、且つ支持領域411Aに基材90の支持フレーム40Aを支持及び担持するように操作されることで、前記プラズマ励起ソース30は操作され、前記フィルム層形成材料201は前記反応チャンバ11に注入された場合、前記ポリマーフィルム層92が前記基材90の前記表面91に堆積して形成されることを許可するように、前記基材90は前記プラズマ励起ソース30から生成したプラズマ体に曝される。
【0070】
当該好適な実施例において、前記支持フレーム40Aは、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11内で移動可能な支持部材として実施される。特に、前記支持フレーム40Aは前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間を移動できる。前記支持フレーム40の運動方式は、線形運動、曲線運動、摺動運動又は回転運動であってもよいが、これらに限定されず、これによって、前記反応チャンバ11内の前記基材90の位置を調整し、前記基材90に堆積されるモノマー、及び分解される前駆体の量を調節し、前記基材90の前記表面91に形成される前記ポリマーフィルム層92の品質を向上させる。いくつかの実施例において、前記支持フレーム40Aの移動は、基本的に同様なプラズマ体重合環境を複数の前記基材90に提供し、前記基材90に形成される前記ポリマーフィルム層92の均一性を向上させる。
【0071】
前記支持フレーム40Aの移動は、前記基材90と前記モノマー放出ソース20との間に相対変位を発生させ、又は前記基材90と前記プラズマ励起ソース30との間に相対変位を発生させ、或いは上記2つの等価状態を発生させるように構造され、前記基材90に達した、前記プラズマ励起ソース30により励起されていないモノマーの量、或いはモノマーを分解させることによって、生成した活性前駆体の量を調節でき、前駆体と活性前駆体との十分な反応を確保する。
【0072】
特筆に値するのは、前記支持フレーム40Aの運動は制御ユニットにより制御され、前記制御ユニットは移動、移動時間間隔又は移動速度を調整するようにプログラムされ、これによって、前記基材90に所望のプラズマ体重合環境を提供し、前記ポリマーフィルム層92の分子構成から、必要な分岐及び架橋を取得し、高品質を有するポリマーフィルム層92を形成する。
【0073】
当該好適な実施例によれば、図3A図3Cに示すように、前記支持フレーム40Aは移動可能な支持部材として実現され、移動可能な前記支持部材は前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間で繰り返し移動できることで、前記基材90と前記モノマー放出ソース20との間の距離、及び前記基材90と前記プラズマ励起ソース30との間の距離を調節する。
【0074】
具体的な実施例において、前記チャンバ体10は矩形の前記反応チャンバ11を有し、前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30とは前記チャンバ体10の同一側壁に配置され、間隔をあけて互いに離間される。例えば、前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30とは前記チャンバ体10の頂側壁103に配置される。プラズマ体重合コーティング方法で、前記モノマー放出ソース20は前記フィルム層形成材料201を放出し、モノマー領域は前記モノマー放出ソース20の前面に規定され、運転過程で、前記プラズマ励起ソース30はその周囲にプラズマ体発生領域を形成し、前記支持フレーム40Aはモノマー領域とプラズマ体領域との間で往復移動する。
【0075】
図面に示すように、当該好適な実施例において、前記フィルム層形成材料201は前記モノマー放出ソース20によって前記プラズマ励起ソース30に向いて、前記反応チャンバ11に分散していなく、横方向に前記反応チャンバ11に導入されてから、縦方向に沿って前記基材90及び前記プラズマ励起ソース30に分散し、これによって、前記モノマー放出ソース20から放出した前記フィルム層形成材料201の気流は、直接的に前記プラズマ励起ソース30の周囲に生成したプラズマ体に吹き付けることなく、モノマーから分解された反応前駆体物質及びモノマーは理想な混合性能を具備する。
【0076】
当業者が理解すべきなのは、前記支持フレーム40Aは、前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間を移動するように操作され、電動モータ、空気圧駆動システム、又は油圧駆動システムを利用してもよい。前記チャンバ体10には、前記支持フレーム40Aを適切な位置に保持し、且つ前記支持フレーム40Aの運動を案内して限定するためのガイドレール又は案内溝が設けられる。
【0077】
図面に示すように、当該好適な実施例の前記プラズマ励起ソース30の前記電極装置31は、前記反応チャンバ11に延在する平面電極、又は電界を発生させる他の電極装置として構造されてもよい。
【0078】
相応的に、本発明の当該好適な実施例は、前記ポリマーフィルム層92を前記基材90の前記表面91に堆積させるためのコーティング方法を提供し、前記コーティング方法は、
(A)前記プラズマ励起ソース30から離れた前記モノマー放出ソース20によって、前記フィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に供給するステップと、
(B)前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間で前記基材90を移動させるステップと、
(C)前記プラズマ励起ソース30を活性化し、前記基材90に対してプラズマ体処理を行うことで、前記基材90の前記表面91に前記ポリマーフィルム層92を形成するステップと、を含む。
【0079】
ここで、上記ステップ(A)、(B)及び(C)のステップの順序は限定されていない。ステップ(B)において、前記ステップは、前記基材90を前記支持フレーム40Aに担持し、前記支持フレーム40Aを前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間を繰り返して往復移動させるように駆動するステップを含む。好適な示例として、前記支持フレーム40Aを移動させるように駆動することで、前記基材90と前記モノマー放出ソース20との間の距離、及び前記基材90と前記プラズマ励起ソース30との間の距離を調節する。
【0080】
図4Aに示すように、別の実施可能な形態において、前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30は、前記チャンバ体10の2つの対向する側壁に隣り合うように配置される。例えば、前記モノマー放出ソース20は頂側壁103に隣接するように配置され、前記プラズマ励起ソース30は前記チャンバ体10の底側壁104に装着される。図4Bに示すように、別の実施可能な形態として、前記基材90に前記フィルム層形成材料201を放出するように、前記モノマー放出ソース20は前記チャンバ体10の端側壁101に隣り合うように配置され、前記プラズマ励起ソース30は前記チャンバ体10の底壁104に配置される。言い換えると、前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30は前記チャンバ体10の隣接側壁101、104に配置される。
【0081】
図5A及び図5Bに示すように、上記好適な実施例において、前記プラズマ励起ソース30は前記支持フレーム40Aの側面に装着され、別の実施可能な形態として、前記モノマー放出ソース20に対向する。前記支持フレーム40Aは移動不可であり、又は好ましくは、前記支持フレーム40Aは移動可能に配置されることで、前記支持フレーム40Aと前記モノマー放出ソース20との間の距離、及び前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間の距離を調節する。当該好適な実施例によれば、前記基材90と前記プラズマ励起ソース30との間の相対位置を固定できるが、前記プラズマ励起ソース30は前記支持フレーム40Aとともに移動でき、プラズマ体の、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11内でのプラズマ体生成環境を変更する。
【0082】
図6A及び図6Bに示すように、前記コーティング装置の別の実施可能な形態を示す。前記実施例において、当業者が理解すべきなのは、前記支持フレーム40Aは、前記プラズマ励起ソース30が前記モノマー放出ソース20と前記基材90との間に位置するように、ある位置に移動してもよい。ところが、前記支持フレーム40Aが前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間を移動する過程で、全てのフィルム層形成材料201が前記基材90に達する前、前記プラズマ励起ソース30を通過するわけではないように、前記フィルム層形成材料201は前記プラズマ励起ソース30に達する前、前記支持フレーム40Aを通過する必要がある。
【0083】
言い換えると、当該好適な実施例は、前記ポリマーフィルム層92を前記基材90の前記表面91に堆積させるためのコーティング方法を提供し、当該方法は以下のステップを含む。
【0084】
前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11で前記基材90を移動させる。これによって、前記基材90の移動経路を限定し、少なくとも一部の移動経路期間において、前記基材90は前記モノマー放出ソース20と前記プラズマ励起ソース30との間に位置する。
【0085】
前記フィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の反応チャンバに放出する。これによって、前記プラズマ励起ソース30の操作期間において、前記基材90に対するプラズマ体処理を活性化する。
【0086】
相応的に、前記基材90の移動経路を第1部分及び第2部分に区画し、第1部分において前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30はそれぞれ前記基材90の両側にあり、第2部分において前記モノマー放出ソース20及び前記基材90はそれぞれ前記プラズマ励起ソース30の両側にあり、前記支持フレーム40Aにより担持される前記基材90の移動経路の第1部分は明らかに第2部分より大きい。
【0087】
図7は本発明の第3好適な実施例によるコーティング装置を示す。より具体的に、当該好適な実施例の前記コーティング機器は、反応チャンバ11を有するチャンバ体10と、ガスフィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に放出するための1つ又は複数のモノマー放出ソース20と、前記フィルム層形成材料201を励起するためのプラズマ励起ソース30と、前記基材90を支持して搬送するための支持フレーム40Bであって、前記プラズマ励起ソース30Bが操作され、且つ前記フィルム層形成材料201が1つ又は複数の前記モノマー放出ソース20によって前記反応チャンバ11に送られた場合、前記基材90の前記表面91に前記ポリマーフィルム層92を堆積して形成する支持フレーム40Bと、を含む。
【0088】
当該好適な実施例によれば、前記プラズマ励起ソース30Bは前記支持フレーム40Bの略中央領域に配置される。好ましくは、前記プラズマ励起ソース30Bは前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11の中心に配置されてもよく、前記ポリマーフィルム層92が堆積される複数の前記基材90は、前記プラズマ励起ソース30Bの周囲に配置される。前記基材90は前記プラズマ励起ソース30Bを取り囲むことで、前記プラズマ励起ソース30Bと前記モノマー放出ソース20との間に配置される。
【0089】
具体的に、複数、例えば、4つの前記モノマー放出ソース20は、前記チャンバ体10の内壁に隣り合う位置に配置され、前記フィルム層形成材料201は前記チャンバ体10の内部周辺の隣接位置に放出され、前記チャンバ体10の中心位置にある前記プラズマ励起ソース30Bに流れる。複数の前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30Bは前記基材90の2つの対向する側に設けられるため、前記フィルム層形成材料201の過度分解を防止する。
【0090】
本発明の当該好適な実施例の前記プラズマ励起ソース30Bは、電力を前記チャンバ体10内に放出された前記フィルム層形成材料201に印加するための電極装置31Bを含む。より具体的に、1つの実施例として、前記電極装置31Bは少なくとも1対の電極を含み、好ましくは、多対第1電極311B及び第2電極312Bは前記反応チャンバ11の中央に設けられる。図7に示すように、各前記第1電極311B及び前記第2電極312Bはそれぞれ前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に垂直に配置される細長い電極板として実施される。前記例示的な実施例において、4つの前記第1電極311B及び4つの前記第2電極312Bは円周方向に沿って交互に配置される。
【0091】
前記第1電極311B、前記第2電極311Bは正電極及び負電極であり、それぞれ前記チャンバ体10の外側にある、RF発生器のようなエネルギー源の2つの接続端に電気接続される。任意に選べることとして、前記第1電極311Bはエネルギー源に電気接続され、第2電極312Bは接地できる。
【0092】
本実施形態の前記支持フレーム40Bは、1つ又は複数の前記基材90を搬送するための1つ又は複数の担持スタンド41Bを含む。各前記担持スタンド41Bは前記基材90を位置決めるための支持領域411Bを有し、前記基材90は水平方向、傾斜、及び垂直で、支持領域411Bに配置されてもよい。本実施例において、前記基材90は前記支持領域411Bに水平配置されるとともに、前記支持領域411Bに保持され支持される。
【0093】
当該好適な実施例において、1つ又は複数の担持スタンド41Bの複数の前記支持領域411Bは前記プラズマ励起ソース30Bと前記モノマー放出ソース20との間に設けられることで、1つ又は複数の前記基材90が相応する前記支持領域411Bに配置される場合、前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30Bはそれぞれ対応する前記基材90の2つの対向側に配置される。
【0094】
また、当該好適な実施例の前記支持フレーム40Bの各前記担持スタンド41Bは複数の前記基材90を搬送し、前記反応チャンバ11を移動でき、各前記担持スタンド41Bの運動方式は線形運動、曲線運動、摺動運動及び回転運動であってもよいが、これらに限定されていない。当該好適な実施例の具体的な例示として、前記支持フレーム40Bの各前記担持スタンド41Bはその中心軸線Y周りに回転するように操作される。
【0095】
本実施形態の前記支持フレーム40Bは、1つ又は複数の担持スタンド41Bを支持するための可動スタンド42Bをさらに含む。前記可動スタンド42Bの移動も線形運動、曲線運動、摺動運動及び回転運動であってもよいが、これらに限定されていない。
【0096】
当該好適な実施例によれば、前記可動スタンド42Bは回転台として、円形室の反応チャンバにおいて中心軸線X周りに回転するように実施され、担持スタンド41Bは可動スタンド42Bに支持されるため、各前記担持スタンドは移動架42Bに連れて移動するとともに、その中心軸線Yに対して自転し、このように、前記担持スタンド41Bの2つの移動は、各前記基材90と前記プラズマ励起ソース30との間の相対位置を変更する。
【0097】
図8に示すように、本発明の上記第3好適な実施例の可能な形態として、前記コーティング機器はプラズマ励起ソース30Cと、電極装置31Cとを含む。当該好適な実施例の前記電極装置31Cは第1電極311Cと第2電極312Cとを含み、各電極はいずれも円柱状電極として実施され、前記第1電極311Cは前記第2電極312Cの周囲に外嵌されることで、前記第1電極311Cと前記第2電極312Cとの間に円形放出場313Cを規定する。前記第1電極311Cは、例えばRF発生器のようなエネルギー源に電気接続され、前記第2電極312Cは接地できる。
【0098】
また、前記第1電極311Cは、前記反応チャンバ11内の前記放出場313Cに連通する複数の孔を有する多孔質電極として実施される。前記第2電極312Cは前記反応チャンバ11に連通する連通孔を有する細長い管として形成されることで、前記第2電極312Cは前記チャンバ体の前記反応チャンバ11の外側に連通する抽気管として、前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11からガス混合物を抽出し、前記反応チャンバ11内の圧力を調節し、前記反応チャンバ11における排気ガスを除去する。
【0099】
図9に示すように、上記本発明の好適な実施例の別の実施可能な形態によれば、前記フィルム層機器は前記プラズマ励起ソース30Cと支持フレーム40Cとを含む。当該好適な実施例において、前記支持フレーム40Cはその中心軸線X周りに回転する回転台として機能し、前記担持スタンド41Bを必要せず、複数の前記基材90は直接的に前記支持フレーム40Cに配置されることができる。前記支持フレーム40Cの回転は複数の前記基材90の移動を起こす。
【0100】
本発明の当該好適な実施例によれば、複数の前記基材90の各前記表面91に前記ポリマーフィルム層92を堆積させるためのコーティング方法は、
(α)複数の前記基材90によって前記プラズマ励起ソース30B/30Cを取り囲んで、前記基材90の2つの対向側に前記モノマー放出ソース20及び前記プラズマ励起ソース30B/30Cを配置するステップと、
(β)前記フィルム層形成材料201を前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に放出することで、前記プラズマ励起ソース30B/30Cによって前記基材90に対してプラズマ体処理を行うステップと、を含む。
【0101】
相応的に、ステップ(α)において、前記プラズマ励起ソース30B/30Cは前記基材90の内側に配置され、前記モノマー放出ソース20は前記基材90の外側に配置される。前記プラズマ励起ソース30B/30Cは前記反応チャンバ11の中央領域に配置され、前記基材90は前記プラズマ励起ソース30B/30Cを取り囲む。
【0102】
ステップ(β)において、前記プラズマ励起ソース30B/30Cに達する前、少なくとも一部の前記フィルム層形成材料201は、前記基材90が携帯される前記支持フレーム40B/40Cを通過する必要がある。
【0103】
ステップ(β)は、複数の前記モノマー放出ソース20を周方向で反応の中心領域に配置し、前記モノマー放出ソース20によって、前記プラズマ励起ソース30B/30Cに向いて、前記フィルム層形成材料201を径方向で前記チャンバ体10の前記反応チャンバ11に放出するステップをさらに含む。
【0104】
前記コーティング方法は、中心軸線X周りに回転台42Bを回転させ、中心軸線Y周りに前記担持スタンド41Bを回転させるステップをさらに含む。このとき、各前記担持スタンド41Bは、前記基材90を担持しており、回転台42Bに支持され、前記回転台42Bとともに、軸線X周りに回転し、その同時、自体の軸線Y周りに回転する。
【0105】
図10及び図11は本発明の第4好適な実施例のコーティング機器7100を示し、前記コーティング機器7100はコーティングチャンバ710、少なくとも1つのモノマーソース720及びプラズマ体励起場730を含み、前記コーティングチャンバ710は、基材を配置するためのコーティング領域7101を有し、前記モノマーソース720は前記コーティングチャンバ710に連通し、前記コーティングチャンバ710にモノマーを導入し、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710に設けられ、モノマーを活性化し、前記プラズマ体励起場730及び前記モノマーソース720はそれぞれ前記コーティング領域7101の両側に位置し、基材の表面に薄膜を製造する。本実施例において、前記チャンバ体は前記コーティングチャンバ710として実施され、前記モノマー放出ソースは前記モノマーソース720として実施され、前記プラズマ励起ソースは前記プラズマ体励起場730として実施される。
【0106】
コーティング過程で、前記コーティングチャンバ710にプラズマ体ソースガスを導入し、前記プラズマ体励起場730は放電し、プラズマ体を生成することで、プラズマ体環境を提供し、前記ガスモノマーは前記コーティング領域7101を介して前記プラズマ体励起場730に入って活性化されるので、ガスモノマーが直接的に前記プラズマ体励起場730に過度に活性化されることによって、分子鎖構成が断片化又は過度に分解されるなどの現象を避け、基材の表面に性能がよい薄膜又はコート層を製造する。言い換えると、前記ガスモノマーが前記コーティングチャンバ710に注入された後、前記コーティング領域7101に拡散してから、前記プラズマ体励起場730に拡散する。前記プラズマ体は前記コーティング領域7101に拡散する。前記ガスモノマーは前記プラズマ体励起場730に拡散して活性化され、活性化されたガスモノマーは前記コーティング領域7101に拡散し、活性化されていないガスモノマーとともに、前記基材の表面に堆積し、性能がよい薄膜又はコート層を形成し、また、堆積速度を高める。
【0107】
さらに、前記ガスモノマー又はモノマー蒸気が前記コーティング領域7101の径方向に沿って拡散する濃度は漸減し、同一方向で、前記プラズマ体励起場730の放電によって生成したプラズマ体が、前記コーティング領域7101の径方向に沿って拡散する濃度は漸増し、これによって、活性化されたモノマーの濃度を安定に保持し、前記基材の表面に高品質の薄膜又はコート層を製造する。
【0108】
前記コーティング機器7100はプラズマ体化学気相成長法を採用し、前記基材の表面に前記薄膜又はフィルム層を製造する。即ち、前記薄膜は前記基材の表面に堆積成形され、前記基材の表面の力学、光学又は化学などの性質を高め、前記基材は、例えば所定形状構成を有しており、コーティングを必要とする製品であり、例えばPCB基板、携帯電話、電子機器、電子製品蓋板、電子製品ディスプレイ、携帯電話ガラススクリーン、コンピュータスクリーン、携帯電話リアカバー、電子機器ハウジング、キーボードカバー又は機械部材、服装などコーティングを必要とする他のタイプの製品であり、ここで、限定していない。例えば、前記コーティング機器は電子製品で前記薄膜を製造し、製品の防水、耐食性、耐摩耗性などの保護性能を効果的に向上させ、表面保護のコストが高いという問題を解決できる。
【0109】
任意に選べることとして、前記薄膜は前記基材の表面にコーティングされる1層、又は多層膜、薄膜或いはナノフィルム層などを含む。任意に選べることとして、前記薄膜又はコート層は無機薄膜、有機薄膜、有機シリコーンナノ保護フィルム層、有機シリコーン超硬ナノ保護フィルム層、複合構造高絶縁超硬ナノ保護フィルム層、調製構造を有する高絶縁ナノ保護フィルム層、プラズマ体ポリマーフィルム層、勾配増加構造撥液フィルム層、勾配減少構造撥液フィルム層、架橋度制御可能なフィルム層、耐水性と耐電気的破壊性を有するフィルム層、低接着性/耐食性フィルム層、多層構造を有する撥液フィルム層、ポリウレタンナノフィルム層、アクリルアミドナノフィルム層、耐静電気撥液ナノフィルム層、エポキシナノフィルム層、高透明度/低色差ナノフィルム層、高接着性/耐老化性ナノフィルム層、シリコーン含有共重体ナノフィルム層又はポリイミドナノフィルム層、ダイヤモンドライクカーボン膜などであってもよく、ここで、限定していない。又は、IPCの定義によれば、前記コート層又は薄膜はAR(アクリル酸)、ER(エポキシ樹脂)、SR(有機シリコーン)、UR(ポリウレタン)及びXY(パラキシレン)などのタイプのコート層又は薄膜であってもよく、さらに、パラキシレン又はパリレンタイプのコート層は、優れた化学、電気或いは物理の保護効果を提供できる。
【0110】
前記モノマーソース720の原料供給口は、前記コーティングチャンバ710の、前記コーティング領域7101に近接する側に連通し、即ち、前記プラズマ体励起場730の反対側にあり、これによって、前記ガスモノマー又はモノマー蒸気の拡散経路は前記コーティング領域7101から前記プラズマ体励起場730に至ることを確保する。
【0111】
任意に選べることとして、前記モノマー成分は少なくとも一種の単官能性不飽和フルオロカーボンと少なくとも一種の多官能性不飽和炭化水素誘導体との混合物、又は二重結合、Si-Cl、Si-O-C、Si-N-Si、Si-O-Siの構成或いは環状構成を含有する有機シリコーンモノマーであり、前記モノマーにおいて多官能性不飽和炭化水素誘導体が占有する質量割合は30~50%であり、前記単官能性不飽和フルオロカーボンは、3-(パーフルオロ-5-メチルエチル)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチルメチルアクリレート、2-(パーフルオロエチル)エチルメチルアクリレート、2-(パーフルオロドデシル)エチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルアクリル酸エチル、1H、1H、2H、2H-パーフルオロオクタノールアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、(2H-パーフルオロプロピル)-2-アクリレート、(パーフルオロシクロエチル)メチルアクリレート、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、1-エチニル基-3,5-ジフルオロベンゼン又は4-エチニル基トリフルオロトルエンを含む。前記多官能性不飽和炭化水素誘導体はエトキシル化トリカルボキシメチルプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-エチレングリコールジアクリレート、ジアクリレートグリコール、ジエチレングリコールジビニルエーテル又はネオペンチルグリコールジアクリラートを含み、前記多官能性不飽和炭化水素誘導体は、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレンジアクリレート和ジエチレングリコールジビニルエーテルエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキシレングリコールジアクリレート、又はネオペンチルグリコールジアクリラートを含む。
【0112】
任意に選べることとして、前記モノマーは反応性官能基を有する炭素含有化合物を含み、さらに基本的に-CFを主とするパーフルオロ化合物(WO 97/38801を参照)、パーフルオロオレフィン(Wangなど、Chem Mater 1996、2212-2214を参照)を含む。任意に選べることとして、前記モノマーは、ハロゲン原子を含有する水素含有不飽和化合物、又は少なくとも10つの炭素原子の完全ハロゲン化有機化合物(WO 98/58117を参照)、2つの二重結合を含有する有機化合物(WO 99/64662を参照)、少なくとも5つの炭素原子のアルキル鎖(好ましくは、ヘテロ原子が挿入される)を経る飽和有機化合物(WO 00/05000を参照)、アルキン(WO 00/20130を参照)、ポリエーテルに置換されたオレフィン(US6482531Bを参照)、又は少なくとも1つのヘテロ原子を含有する大環状化合物を含む(US6329024Bを参照)。
【0113】
任意に選べることとして、前記薄膜はダイヤモンドライクカーボン薄膜である(DLC薄膜)。DLC薄膜を製造するガスモノマーは、例えば水素、炭化水素ガスなどの反応ガス、又はN、Si、F、Bなどのドーピング要素の補助ガス或いは媒体材料などである。前記炭化水素ガスは、例えば1-6又はより多くの炭素原子数のアルカン、オレフィン、アルキンなどである。ここで、限定していない。任意に選べることとして、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710の中間領域又は位置にあり、前記モノマーソース720の原料供給口は前記コーティングチャンバ710の周囲側面に位置する。前記原料供給口は複数であり、前記コーティングチャンバ710の周囲側面に均一に配列されてもよく、前記コーティング領域7101は前記コーティングチャンバ710の中間位置と前記周囲側面との間にある。
【0114】
任意に選べることとして、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710の一側に位置し、前記モノマーソース720の原料供給口は前記コーティングチャンバ710の反対側に位置する。任意に選べることとして、前記ガス源720と前記プラズマ体励起場730とは並設され、相互の間には一定の距離があるが、重畳していない。任意に選べることとして、前記コーティングチャンバ710は円形、角形又は他の形状であってもよい。
【0115】
さらに、前記モノマーソース720は、ガスモノマー又はモノマー蒸気が前記コーティングチャンバに入る原料供給ソースであり、搬送管路によってガス状態のガスモノマーを貯蔵するためのガス貯蔵器に連通し、ガス状態のガスモノマーを前記コーティングチャンバ710に導入する。又は、前記モノマーソース720は搬送管路を介して、液体状態のモノマーを貯蔵する液体貯蔵器に連通し、液体状態のモノマーは気化装置(例えば加熱装置)によって気化された後、ガス状態のモノマー蒸気に形成され、前記モノマーソース720によって前記コーティングチャンバ710に導入される。任意に選べることとして、前記貯蔵器はモノマー原料を貯蔵する貯蔵器、貯蔵瓶又は貯蔵缶などの貯蔵装置であってもよい。
【0116】
前記プラズマ体励起場730は電極装置731を含み、前記コーティング機器は、前記コーティングチャンバ710に連通しており、前記コーティングチャンバ710にプラズマ体ソースガスを注入するためのプラズマ体ソースをさらに含み、前記電極装置731は無線周波及び/又はパルス電圧を提供し、ガスを放電させることで、プラズマ体環境を生成する。さらに、前記電極装置731と前記モノマーソース720とはそれぞれ前記コーティング領域7101の両側にあり、これによって、前記コーティング領域7101内の基材は直接的に前記プラズマ体環境の中心に位置していなく、即ち、前記コーティング領域7101内の基材は前記プラズマ体励起場730から生成したプラズマ体環境のエッジ領域又は位置にあり、前記基材の表面のガスモノマーは直接的に前記プラズマ体励起場730の中心で過度に活性化されることによって、分子鎖構成が断片化され、又は過度に分解されるなどの現象を避けるとともに、前記基材の表面に性能がよい薄膜又はコート層を製造できる。
【0117】
前記プラズマ体ソースは前記コーティングチャンバ710の、前記電極装置731に近接する側に連通し、これによって、前記電極装置731の位置に放電し、前記プラズマ体励起場730を形成し、前記プラズマ体ソースガスは、例えば窒素、四フッ化炭素又はヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスのプラズマ体ソースガスである。任意に選べることとして、前記プラズマ体ソースはガスを搬送するための管路に連通する。任意に選べることとして、前記プラズマ体ソースはさらに、プラズマ体ソースガスを貯蔵するための貯蔵装置に連通する。
【0118】
任意に選べることとして、前記プラズマ体励起場730の前記電極装置731の放電方式は直流、交流、無線周波、マイクロ波、中間周波、電気火花又はパルスなどの放電方式であってもよい。例えば、前記プラズマ体励起場730が無線周波放電を採用する方式は容量結合又は誘導結合であってもよい。例えば、前記プラズマ体励起場730がマイクロ波放電を採用する方式は共振キャビティ、表面波結合及び電子サイクロトロン共鳴などであってもよい。例えば、前記プラズマ体励起場730の放電方式は連続放電、又はパルス放電であってもよい。
【0119】
好ましくは、前記電極装置731は第1電極7311と第2電極7312とを含み、前記第1電極7311と前記第2電極7312との間は無線周波電圧を提供する。例えば、前記電極装置731は無線周波電圧を提供し、前記第1電極7311は無線周波電極であり、無線周波電圧を提供し、前記第2電極7312は接地電極である。つまり、前記第1電極7311と前記第2電極7312との間の領域は、電圧が強い無線周波電圧を生成し、周囲領域の無線周波電圧が低く、即ち、前記コーティング領域7101が位置するプラズマ体環境が弱く、これによって、ガスモノマー又はモノマー蒸気は過度に活性化され、又は分解されることを避ける。
【0120】
さらに、前記第1電極7311と前記第2電極7312とは対向し、一定の対向面積を有し、一定空間領域を有する前記プラズマ体励起場730を形成し、これによって、プラズマ体ガスソースのガスが、前記プラズマ体励起場730の前記電極の間に放電し、プラズマ体を生成する。
【0121】
さらに、前記電極装置731はパルス電源をさらに含み、前記パルス電源は前記コーティングチャンバ710に設けられ、活性化されたガスに作用するパルス電圧を提供し、堆積速度を速めにして、コーティング効率を向上させる。
【0122】
任意に選べることとして、前記電極装置731は、前記プラズマ体ソースガスに作用するマイクロ波放電を生成することで、プラズマ体環境を発生させるためのマイクロ波放電電極である。任意に選べることとして、前記電極装置731は、中間周波放電によってプラズマ体環境を発生させるための中間周波放電電極である。任意に選べることとして、前記電極装置731は、電気火花放電によってプラズマ体環境を発生させる電気火花放電電極である。
【0123】
さらに、前記コーティング機器7100はスタンド740をさらに含み、即ち、本実施例において、上記支持フレームは前記スタンド740として実施され、前記スタンド740は前記コーティング領域7101に設けられ、前記基材を支持する。本実施例において、前記スタンド740は前記コーティング領域7101に係脱可能に固定され、即ち、前記スタンド740は前記モノマーソース720の原料供給口と前記プラズマ体励起場730の前記電極装置731との間に固定される。
【0124】
さらに、前記パルス電源は正極電極と負極電極とを含み、前記負極電極は前記スタンド740に設けられ、負極パルス電圧を提供し、前記正極電極は前記コーティングチャンバ710に接続されるとともに、接地し、正極パルス電圧を提供し、これによって、前記スタンド740に配置される基材の表面に薄膜を製造する速度を速めにする。
【0125】
任意に選べることとして、前記スタンド740は層状構成であり、層ごとに前記基材を配置する。任意に選べることとして、前記スタンド740は環状スタンド、角形スタンド、平板状スタンド又は網状スタンドなどであってもよい、ここで、限定していない。
【0126】
さらに、前記コーティング機器7100は抽気装置をさらに含み、前記抽気装置は前記コーティングチャンバ710の抽気口に連通し、コーティング過程で、前記コーティングチャンバ710の空気圧を制御する。任意に選べることとして、前記抽気装置はドライポンプ、分子ポンプ又はルーツポンプなどである。
【0127】
さらに、本実施例は前記コーティング機器7100のコーティング方法をさらに提供し、当該コーティング方法は、
前記コーティングチャンバ710にガスモノマー又はモノマー蒸気を注入するステップであって、前記コーティングチャンバ710は基材を配置するための前記コーティング領域7101を有する、前記コーティングチャンバ710にガスモノマー又はモノマー蒸気を注入するステップと、
前記コーティングチャンバ710内に前記プラズマ体励起場730を発生させるステップと、
前記ガスモノマー又はモノマー蒸気は前記コーティング領域7101を介して前記プラズマ体励起場30に入って、活性化されることで、基材の表面に薄膜を製造するステップと、を含む。
【0128】
図12は本出願の第1変形実施例のコーティング機器7100Aを示し、本出願の好適な実施例との相違点は以下の通り、前記コーティング機器7100Aはコーティングチャンバ710、少なくとも1つのモノマーソース720、プラズマ体励起場730及び少なくとも1つのスタンド740Aを含み、前記スタンド740Aは前記コーティングチャンバ710に設けられ、基材を支持するための少なくとも1つの支持ユニット741Aを有し、前記モノマーソース720は前記コーティングチャンバ710に連通し、前記コーティングチャンバ710にガスモノマー又はモノマー蒸気を導入し、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710に設けられ、ガスモノマー又はモノマー蒸気を活性化し、前記スタンド740Aの前記支持ユニット741Aは、前記プラズマ体励起場730と相対的に往復して近接及び離間することで、基材の表面に薄膜を製造する。
【0129】
本実施例において、前記スタンド740Aは前記コーティングチャンバ710に移動可能に設けられ、前記スタンド740Aの前記支持ユニット741Aは前記プラズマ体励起場730へ移動可能に近接し、又は離間する。任意に選べることとして、前記支持ユニット741Aは1つ又は複数である。
【0130】
前記モノマーソース720の原料供給口と前記プラズマ体励起場730とは一定の距離があり、互いに重畳していなく、これによって、適切な移動距離を前記スタンド740Aに提供し、前記支持ユニット741Aは前記プラズマ体励起場730に出入りすることができる。
【0131】
言い換えると、前記コーティングチャンバ710内で、前記モノマーソース720の原料供給口付近の空間領域(第1空間領域)には大量のガスモノマー又はモノマー蒸気が充満され、前記プラズマ体励起場730の前記電極装置731付近の空間領域(第2空間領域)には大量の前記プラズマ体ソースガスが充満され、電圧の作用で放電し、大量のプラズマ体を生成し、プラズマ体環境を形成する。前記第1空間領域は前記第2空間領域に隣接し、前記第1空間領域内の分子は主にガスモノマー又はモノマー蒸気であり、前記第2空間領域内の分子は主にプラズマ体であり、前記支持ユニット741Aは前記第1空間領域と前記第2空間領域との間で往復的に運動する。理解するように、前記第1空間領域と前記第2空間領域とは交差し重畳する領域を有してもよいが、完全に重畳していない。
【0132】
前記スタンド740Aは可動スタンドであり、基材を前記プラズマ体励起場730に出入りさせるように移動させることができる。
【0133】
具体的に、前記スタンド740Aは前記支持ユニット741Aと可動ユニット742Aとを含み、前記支持ユニット741Aは基材を支持し、前記可動ユニット742Aに接続され、前記可動ユニット742Aは、前記プラズマ体励起場730と近接及び離間するように、前記コーティングチャンバ内を移動する。即ち、上記実施例において、前記担持スタンドは前記支持ユニット741Aとして実施され、前記可動スタンドは前記可動ユニット742Aとして実施される。
【0134】
任意に選べることとして、前記可動ユニット742Aはプーリ又はスライド構成である。任意に選べることとして、前記可動ユニット742Aは伸縮可能な構成などである。
【0135】
任意に選べることとして、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710に移動可能に設けられることで、前記スタンド740Aは相対的に前記プラズマ体励起場730と近接及び離間する。
【0136】
さらに、前記モノマーソース720の原料供給口及び前記プラズマ体励起場730は前記スタンド740Aの移動経路の両側にある。さらに、前記スタンド740Aは往復運動を行って、前記スタンド740Aの前記支持ユニット741Aは、前記プラズマ体励起場730と前記モノマーソース720の前記原料供給口との間で往復的に移動することで、前記基材を交互可能に前記プラズマ体励起場730又は前記モノマーソース720の前記原料供給口に近接させるように、往復的に移動させる。任意に選べることとして、前記モノマーソース720の原料供給口及び前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710の両側にある。又は、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710の中間にあり、前記モノマーソース720の原料供給口は前記コーティングチャンバ710の周囲側面に分布される。
【0137】
コーティング過程で、前記モノマーソース720の原料供給口は前記コーティングチャンバ710にガスモノマー又はモノマー蒸気を持続的に注入し、前記プラズマ体励起場730はプラズマ体ソースガスを持続的に放出し、電圧を提供し放電し、プラズマ体を生成し、プラズマ体環境を形成し、前記スタンド740Aの前記支持ユニット741Aは、前記プラズマ体励起場730から形成される前記プラズマ体環境に往復的に出入りする。前記支持ユニット741Aが前記モノマーソース720に近接する場合、ガスモノマー又はモノマー蒸気は前記基材の表面に付着し、薄層を形成し、即ち、ガスモノマー又はモノマー蒸気は前記基材の表面に吸着される。前記支持ユニット741Aが前記プラズマ体励起場730に近接する場合、前記基材の表面に付着されるガスモノマー又はモノマー蒸気は、前記プラズマ体により活性化される。前記支持ユニット741Aが再び前記モノマーソース720に近接する場合、ガスモノマー又はモノマー蒸気は、前記基材の表面の活性化された分子とグラフト又は重合を行って、フィルム層は成長し、厚くなり、このように、前記基材の表面に所定厚さの薄膜又はコート層を製造するまで、継続的に繰り返す。
【0138】
本発明と従来技術との相違点は以下の通り、従来技術において、プラズマ体を利用して、空間のガスモノマー又はモノマー蒸気に作用しており、ガスモノマー又はモノマー蒸気分子は完全にプラズマ体に曝され、空間に分解を発生させ、各種の重合製品を生成し、基材の表面に堆積し、薄膜又はコート層を製造するため、薄膜又はコート層における分子完全性が低く、薄膜又はコート層の性能が悪く、これに対して、本発明において、前記プラズマ体励起場730から生成したプラズマ体は、基材の表面に吸着されるガスモノマー又はモノマー蒸気分子のみに作用し、プラズマ体により作用されていないガスモノマー又はモノマー蒸気分子とグラフト又は重合成長を行って、薄膜又はコート層を製造し、分子完全性が高いため、薄膜又はコート層の性能がよりよくなる。
【0139】
また、一部のモノマー蒸気はプラズマ体領域に拡散し、プラズマ体領域空間に分解重合し、基材が移動した場合、その表面に堆積し、コート層の一部を構成する。当該部分の重合製品は、高い程度の分岐及び架橋構成を具備する。コート層にはある程度の分岐及び架橋が存在すると、重合効率及びコート層の安定性を向上させる。本発明は、基材の、モノマーソースとプラズマ体ソースとの間の移動速度及び滞留時間を調節することで、コート層における分岐及び架橋比例を便利に制御し、最適なコート層特性を取得する。
【0140】
特筆に値するのは、前記支持ユニット741Aの移動経路、移動速度、リズム、滞留時間、循環時間及び移動時間はいずれも予め設定されることができ、これによって、製造されたコート層における分子の間の分岐及び架橋の比例を制御し、性能を保証し、必要な薄膜又はコート層などを製造する。
【0141】
本実施例において、前記モノマーソース720及び前記プラズマ体励起場730の構成原理は、当該好適な実施例と一致するため、ここで、贅言していない。
【0142】
実験から分かるように、本出願の前記コーティング機器により製造された薄膜の均一性及び速度は、従来のコーティング機器に対していずれも向上する。例えば、前記ガスモノマー又はモノマー蒸気の原料供給速度が300uL/3000sであるという条件で、本出願に記載のコーティング機器が製造した三種(例1、例2、例3)の前記薄膜の上層、中層、下層の厚さ(以下の表1)と、従来の前記コーティング機器が製造した三種(例1、例2、例3)の前記薄膜の上層、中層、下層の厚さ(以下の表2)とのいくつかの比較は以下の表に示される。表1は、本出願のコーティング機器が製造した薄膜を示し、表2は、従来のコーティング機器が製造した薄膜を示している。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
以上から分かるように、本出願に記載のコーティング機器が製造した薄膜の厚さ及び速度は、従来のコーティング機器より、1.5~2倍向上し、前記薄膜の上層、中層及び下層の間の厚さの偏差が低く、均一性が高い。
【0146】
図13は本出願の第2変形実施例のコーティング機器7100Bであり、上記実施例との相違点は以下の通り、即ち、当該第2変形実施例の前記コーティング機器7100Bはコーティングチャンバ710、少なくとも1つのモノマーソース720、プラズマ体励起場730及び少なくとも1つのスタンド740Bを含み、前記スタンド740Bは前記コーティングチャンバ710に設けられ、基材を支持するための少なくとも1つの支持ユニット741Bを有し、前記モノマーソース720は前記コーティングチャンバ710に連通し、前記コーティングチャンバ710にガスモノマー又はモノマー蒸気を導入し、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710に設けられ、ガスモノマー又はモノマー蒸気を活性化し、前記スタンド740Bの前記支持ユニット741Bは、前記プラズマ体励起場730と相対的に往復して近接及び離間し、基材の表面に薄膜を製造する。
【0147】
さらに、前記スタンド740Bは前記コーティングチャンバ710に回転可能に設けられ、前記スタンド740Bの回転に連れて、前記支持ユニット741Bは往復的に前記プラズマ体励起場730に近接するか、又は前記プラズマ体励起場730から離間する。つまり、前記スタンド740Bは回転可能な構成である。
【0148】
具体的に、前記スタンド740Bは前記支持ユニット741Bと回転可能ユニット742Bとを含み、前記支持ユニット741Bは前記回転可能ユニット742Bに接続され、前記回転可能ユニット742Bは前記コーティングチャンバ710に回転可能に装着され、前記回転可能ユニット742Bの回転に連れて、前記支持ユニット41Bは往復的に前記プラズマ体励起場730に近接するか、又は前記プラズマ体励起場730から離間する。
【0149】
さらに、前記支持ユニット741Bは複数であり、各前記支持ユニット741Bは前記回転可能ユニット742Bに環状配列され、前記スタンド740Bの前記回転可能ユニット742Bは前記プラズマ体励起場730と前記モノマーソース720の原料供給口との間にあり、前記スタンド740Bの前記回転可能ユニット742Bの回転に連れて、各前記支持ユニット741Bは、前記モノマーソース720の原料供給口付近の空間領域(第1空間領域)と前記プラズマ体励起場730付近の空間領域(第2空間領域)との間で順次且つ交互的に往復運動する。
【0150】
理解するように、前記回転可能ユニット742Bの回転軸は前記コーティングチャンバ710の中間位置にあり、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710の一側にあり、前記モノマーソース720は前記コーティングチャンバ710の他側にあるとともに、前記プラズマ体励起場730と重なっていない。
【0151】
コーティング過程で、前記支持ユニット741Bが前記モノマーソース720の原料供給口に近接し、即ち、前記第1空間領域に入った場合、ガスモノマー又はモノマー蒸気は前記基材の表面に付着し、薄層を形成し、即ち、ガスモノマー又はモノマー蒸気は前記基材の表面に吸着される。前記支持ユニット741Bが前記プラズマ体励起場730に近接し、即ち、前記第2空間領域に入った場合、前記基材の表面に付着されたガスモノマー又はモノマー蒸気は、前記プラズマ体により活性化される。前記支持ユニット741Bは再び前記モノマーソース720に近接し、即ち、前記第1空間領域に入った場合、ガスモノマー又はモノマー蒸気は、前記基材の表面の活性化された分子とグラフト又は重合を行って、フィルム層は成長し、厚くなり、このように、前記基材の表面に所定厚さの薄膜又はコート層を製造するまで、継続的に繰り返する。
【0152】
つまり、前記スタンド740Bは円周運動又は楕円周運動を行って、各前記基材は前記スタンド740Bの円周位置にあり、前記スタンド740Bに連れて円周運動又は楕円周運動を往復的に行って、円周運動又は楕円周運動を行うように、交互に前記プラズマ体励起場730に出入りする。
【0153】
特筆に値するのは、前記回転可能ユニット742Bの回転速度、リズム、循環時間及び前記支持ユニット741Bの回転半径、並びに第1空間領域と前記第2空間領域のそれぞれでの滞留時間は何れも予め設定されることができ、これによって、製造されたコート層における分子の間の分岐及び架橋の比例を制御して調整し、性能を保証し、性能がよい必要な薄膜又はコート層などを製造する。
【0154】
図14及び図15は本出願の第2変形実施例の変形実施形態であり、前記プラズマ体励起場730は前記コーティングチャンバ710の中間位置にあり、複数の前記モノマーソース720はそれぞれ前記コーティングチャンバ710の周囲側面にあり、複数の前記スタンド740Bはそれぞれ対応するように、前記モノマーソース720と前記プラズマ体励起場730との間にあり、各前記スタンド740Bは互いに干渉しない。つまり、前記コーティングチャンバ710の中間領域は前記第2空間領域であり、大量のプラズマが充填され、前記コーティングチャンバ710の周囲領域は前記第1空間領域であり、大量のガスモノマー又はモノマー蒸気分子が充填され、各前記スタンド740Bは前記コーティングチャンバ710内に環状配列され、各前記スタンド740Bの前記支持ユニット741Bは何れも、前記第1空間領域と前記第2空間領域との間で交互に移動することで、ロットのコーティングを実現する。
【0155】
さらに、前記プラズマ体励起場730の前記電極装置731は前記コーティングチャンバ710の中間位置に設けられ、前記電極装置731は柱状構成であり、前記電極装置731は各前記スタンド740Bの中間にあり、各前記スタンド740Bの前記支持ユニット741Bは前記電極装置731の軸周りに回転する。前記電極装置731の第1電極7311と第2電極7312とは並設され、前記第1電極7311は無線周波電極であり、前記第2電極7312は接地される。さらに、前記第1電極7311は、環状配列される複数の横断面が直角状である柱状構成であり、又は他の形状の構成であり、ここで、限定していない。前記コーティングチャンバ710の抽気口は前記電極装置731の上方又は下方にあり、コーティング過程で、前記コーティングチャンバ710内のガスを排出する。
【0156】
任意に選べることとして、前記プラズマ体励起場730の前記電極装置731は前記コーティングチャンバ710の中間位置に設けられ、前記コーティングチャンバ710の中間位置には抽気柱が設けられ、前記抽気柱の側壁は外部に連通する排気孔を有し、前記抽気柱は前記抽気装置に接続され、前記コーティングチャンバ710内のガスを抽気し、空気圧を制御する。前記電極装置731の前記第2電極7311は前記抽気柱に電気接続されるとともに、接地され、前記第1電極7312は無線周波電極として前記抽気柱の外側に設けられる。
【0157】
任意に選べることとして、前記抽気柱は前記電極装置731の前記第2電極7312として接地され、前記第1電極7311は前記抽気柱の外側に設けられ、前記抽気柱の外側に外嵌されるために、前記第1電極7311は円筒形の柱状構成である。前記第1電極7311の側壁は複数の通孔を有することで、前記コーティングチャンバ710内のガスが前記抽気柱から排出される速度を保証する。
【0158】
任意に選べることとして、前記電極装置731の前記第1電極7311は前記スタンド740Bに設けられ、前記第2電極7312は前記抽気柱に電気接続されるとともに、接地することで、前記抽気柱を前記第2電極とする。例えば、前記スタンド740Bは導電材料から製造される電極素子を含み、前記電極素子は前記第1電極7311に電気接続され、又は、前記スタンド740Bは導電材料から製造され、前記第1電極7311に電気接続される。
【0159】
さらに、前記コーティングチャンバ710は円筒形構成である。
【0160】
図15に示すように、さらに、前記コーティング機器7100Bは公転フレーム750Bをさらに含み、前記公転フレーム750Bは前記コーティングチャンバ710に回転可能に設けられ、前記コーティングチャンバ710の中心を軸とし、各前記スタンド70Bの前記回転可能ユニット742Bは前記公転フレーム750Bに環状配列されるように装着され、前記公転フレーム750Bの回転に連れて回転し、即ち、前記スタンド740Bは前記コーティングチャンバ710の中心を軸として公転する。
【0161】
任意に選べることとして、前記回転可能ユニット742Bの回転軸は前記コーティングチャンバ710の半径の二分の一の位置にあり、各前記スタンド740Bは自体の軸線周りに自転する。自転過程で、各前記支持ユニット741Bに支持される基材はそれぞれ前記第1空間領域と前記第2空間領域との間で交互に移動して、コーティングを実現する。
【0162】
つまり、前記スタンド740B及び前記公転フレーム750Bは各前記基材に遊星運動又は略遊星運動を行わせており、前記プラズマ体励起場730は前記基材が通過した経路に設けられることで、各前記基材は前記プラズマ体励起場730に交互に出入りする。
【0163】
特筆に値するのは、前記公転フレーム750Bの公転速度は予め設定されることができ、前記スタンド740Bの公転半径は予め設定されることができる。さらに、前記公転フレーム750Bと前記スタンド740Bとの間の公転と自転との速度比、公転と自転との回転数比はいずれも予め設定されることができることで、前記基材の、前記第1空間領域又は前記第2空間領域内での滞留時間又は移動速度などを調節し、コーティングを制御する。
【0164】
任意に選べることとして、前記基材を支持し且つ移動させるための前記スタンド、或いは構成は、球面運動を行うことができる構成として実施され、各前記基材が前記コーティングチャンバ710内で球面運動するように支持されて駆動され、前記プラズマ体励起場730は前記球面の局所領域に設けられることで、前記基材が通過した経路に位置し、これによって、前記基材は前記プラズマ体励起場730に交互に出入りする。
【0165】
任意に選べることとして、前記基材を支持し且つ移動させるための前記スタンド、或いは構成は往復揺動可能な構成として実施され、各前記基材が前記コーティングチャンバ710内で往復揺動するように支持されて駆動され、前記プラズマ体励起場730は前記揺動経路に設けられ、これによって、前記基材は揺動するように前記プラズマ体励起場730に往復に出入りする。
【0166】
当業者であれば理解するように、前記基材を支持するためのスタンド又は構成は、前記コーティングチャンバに固定されてもよく、前記プラズマ体励起場は移動可能に実施され、前記プラズマ体励起場の電極装置は移動可能な構成によって前記コーティングチャンバ710内を移動することで、前記基材は相対的に前記プラズマ体励起場に出入りし、当該可動構成は往復移動構成、往復揺動構成、円周運動構成、球面運動構成、遊星運動構成などであってもよく、ここで、限定していない。
【0167】
さらに、本出願は前記コーティング機器のコーティング方法を提供し、当該コーティング方法は、
前記コーティングチャンバにガスモノマー又はモノマー蒸気を注入するステップと、
前記コーティングチャンバ内に前記プラズマ体励起場を形成するステップと、
前記プラズマ体励起場に近接又は離間するように、前記スタンドを相対的に移動又は回転させるステップであって、前記スタンドは基材を支持し、基材の表面に薄膜を製造するためのものである、前記プラズマ体励起場に近接又は離間するように、前記スタンドを相対的に移動又は回転させるステップと、を含む。
【0168】
当業者が理解すべきなのは、前記の記載および添付図面に示す本発明の実施例は、あくまでも例示であって、本発明を限定するものではない。本発明の利点は、完全に効果的に達成される。本発明の機能および構成原理は、実施例に示されて説明したが、本発明の実施形態は、前記原理を逸脱しない範囲において、様々な変形または修正を行なうことができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15