(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20231215BHJP
【FI】
H01H33/662 R
(21)【出願番号】P 2022541127
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2021020710
(87)【国際公開番号】W WO2022030086
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020132939
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 直也
(72)【発明者】
【氏名】道念 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大竹 泰智
(72)【発明者】
【氏名】神野 勝也
(72)【発明者】
【氏名】古賀 博美
(72)【発明者】
【氏名】三木 真一
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-075940(JP,U)
【文献】特開平3-179627(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059435(WO,A1)
【文献】特開2018-166066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁容器内に配置される可動側電極と、
前記絶縁容器内に、前記可動側電極と対向して配置される固定側電極と、
前記可動側電極と前記固定側電極の周囲に配置されるアークシールドとを備え、
前記絶縁容器の少なくとも一部の周囲を覆うように線形抵抗層と非線形抵抗層とが配置されており、
前記非線形抵抗層の動作電界未満における非線形抵抗率が前記線形抵抗層の線形抵抗率より大き
く、
前記非線形抵抗層の動作電界未満における抵抗率をR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率をR2、前記線形抵抗層の抵抗率をR3としたとき、各抵抗率の大小関係はR1>R3>R2である、真空バルブ。
【請求項2】
前記非線形抵抗率および前記線形抵抗率が10
9Ωm以上である請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
筒状の絶縁容器と、
前記絶縁容器の一方側端部を閉塞する可動側端板と、
前記絶縁容器の他方側端部を閉塞する固定側端板と、
前記可動側端板を貫通して配設された可動側通電軸の先端部に設けられた可動側電極と、
前記固定側端板を貫通して配設された固定側通電軸の先端部に前記可動側電極と相対向して設けられた固定側電極と、
前記可動側電極と前記固定側電極との周囲を取り囲むように配置されたアークシールドとを備え、
前記絶縁容器の少なくとも一部の周囲を覆うように線形抵抗層と非線形抵抗層とが配置されており、
前記非線形抵抗層の動作電界未満における抵抗率をR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率をR2、前記線形抵抗層の抵抗率をR3としたとき、各抵抗率の大小関係はR1>R3>R2であることを特徴とする真空バルブ。
【請求項4】
前記線形抵抗層と前記非線形抵抗層とは積層されて前記絶縁容器の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記線形抵抗層は前記絶縁容器の内面に、前記非線形抵抗層は前記絶縁容器の外面にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項6】
前記絶縁容器の外面にはさらに金属層が形成されていることを特徴とする請求項
5記載の真空バルブ。
【請求項7】
前記絶縁容器は、第1の固定電極側絶縁部材と第2の固定電極側絶縁部材と第1の可動電極側絶縁部材と第2の可動電極側絶縁部材とから構成され、
前記固定側端板側に配置されている前記第1の固定電極側絶縁部材と前記可動側端板側に配置されている前記第2の可動電極側絶縁部材の周囲を覆うように、前記絶縁容器の内面に前記線形抵抗層と前記絶縁容器の外面に前記非線形抵抗層とが配置されていることを特徴とする請求項
3に記載の真空バルブ。
【請求項8】
前記線形抵抗層は、Cu、Ag、Cr、Ni、Mo、W、V、Nb、およびTaの少なくともいずれか1つを含む金属もしくは金属化合物であることを特徴とした請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項9】
前記非線形抵抗層は、酸化亜鉛または炭化ケイ素のいずれか1つであることを特徴とした請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項10】
前記非線形抵抗層は、前記金属層の端部に重ねられている、請求項
6に記載の真空バルブ。
【請求項11】
前記線形抵抗層は前記絶縁容器の内面に、前記非線形抵抗層は前記絶縁容器の外面にそれぞれ配置され、
前記絶縁容器の外面にはさらに金属層が形成され、
固定側電界緩和用リングと、
可動側電界緩和用リングと、
中間電界緩和用リングとをさらに備え、
前記固定側電界緩和用リングは、前記絶縁容器の前記他方側端部を取り囲んでおり、
前記可動側電界緩和用リングは、前記絶縁容器の前記一方側端部を取り囲んでおり、
前記中間電界緩和用リングは、前記アークシールドとで前記絶縁容器を挟み込んでおり、
前記金属層は、前記固定側電界緩和用リング、前記可動側電界緩和用リングおよび前記中間電界緩和用リングの各々に向かい合うように配置されている、請求項
3に記載の真空バルブ。
【請求項12】
前記R2は、10
9Ωmよりも小さい、請求項
1、3、11のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばセラミックスからなる絶縁容器内に固定側電極および可動側電極が配置され、回路の遮断および接続を行う真空バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空バルブとは、1対の固定側電極および可動側電極を接触および開極させて、回路の接続および遮断を行う機器である。各電極は筒状のセラミックスからなる絶縁容器内に配置されており、絶縁容器内は真空状態に保たれている。漏電や短絡等の事故が発生したときに、1対の固定側電極および可動側電極を開極させることで、回路を遮断し事故電流を防ぐことができる。このとき、電極が発熱し、接点表面から金属蒸気が発生し電流が流れることでアークが発生する。アークは電極表面全体に拡散し、絶縁容器を構成するセラミックスに金属蒸気が付着した場合、絶縁破壊に至る可能性がある。そのため、電極の周囲に筒状の金属(アークシールド)を配置することで、絶縁容器を構成するセラミックスへの付着を防止している。
【0003】
このアークシールドは、セラミックスからなる絶縁容器に挟まれて配置されているため、電気的に浮遊している状態となる。この状態ではアークシールドの浮遊電位が接地側で低くなり、アークシールドの近くに配置される電極に高い電界強度が発生するため、真空中で絶縁破壊に至る可能性がある。これを避けるためには、外付けの電圧分担素子(コンデンサあるいは抵抗)を用いて、アークシールドの浮遊電位を制御し、各電極に均等な電界をかける必要があるが、この方法では真空バルブが大型化する問題がある。
【0004】
ここで、真空バルブを大型化しない方法として、特許文献1の真空バルブにおいては、セラミックスからなる絶縁容器の内面または外面に酸化亜鉛(ZnO)や炭化ケイ素(SiC)等の非線形抵抗体を形成する技術が開示されている。非線形抵抗体は、ある動作電界以上の電界が加わったとき抵抗率が急激に低下するという特徴を有している。したがって、雷インパルス(高周波)等の高電圧印加時に非線形抵抗の抵抗率が真空バルブ内部のインピーダンスを下回るように設計することでアークシールドの浮遊電位を均等にすることができ、各電極に均等な電界をかけることができ、真空中の絶縁破壊耐性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の真空バルブでは、交流電圧(低周波)印加時においては、非線形抵抗体に加わる電界が動作電界未満となる。よって、非線形抵抗体の抵抗率が真空バルブ内部のインピーダンスを上回り、アークシールドの浮遊電位が接地側に偏るため、絶縁破壊に至るといった課題がある。
【0007】
本開示は、この課題を解決するためになされたものであり、コンデンサ等の外付けの電圧分担素子を用いず、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時おいても、アークシールドの浮遊電位を制御可能となるため、真空バルブの小型化と絶縁破壊耐性との両立を図ることが出来る真空バルブを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る真空バルブは、筒状の絶縁容器と、絶縁容器の一方側端部を閉塞する可動側端板と、絶縁容器の他方側端部を閉塞する固定側端板と、可動側端板を貫通して配設された可動側通電軸の先端部に設けられた可動側電極と、固定側端板を貫通して配設された固定側通電軸の先端部に可動側電極と相対向して設けられた固定側電極と、可動側電極と固定側電極との周囲を取り囲むように配置されたアークシールドとを備え、絶縁容器の少なくとも一部の周囲を覆うように線形抵抗層と非線形抵抗層とが配置されており、非線形抵抗層の動作電界未満における抵抗率をR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率をR2、線形抵抗層の抵抗率をR3としたとき、各抵抗率の大小関係はR1>R3>R2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る真空バルブによれば、絶縁容器の少なくとも一部の周囲を覆うように線形抵抗層もしくは非線形抵抗層の少なくともいずれか一方が配置されているため、真空バルブの小型化と、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時における絶縁破壊耐性との両立を図ることが出来る真空バルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る真空バルブ100の断面図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る真空バルブのインピーダンスと電界との関係を示す分布図である。
【
図3】本開示の実施の形態2に係る真空バルブ101の断面図である。
【
図4】本開示の実施の形態3に係る真空バルブ102の断面図である。
【
図5】本開示の実施の形態4に係る真空バルブ103の断面図である。
【
図6】本開示の実施の形態5に係る真空バルブ104の断面図である。
【
図7】本開示の実施の形態6に係る真空バルブ105の断面図である。
【
図8】本開示の実施の形態6における沿面電界とセラミック沿面距離との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本開示の実施の形態1に係る真空バルブについて図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本開示の実施の形態1に係る真空バルブ100の断面図であり、
図2は、本開示の実施の形態1に係る真空バルブのインピーダンスと電界との関係を示す分布図である。
【0012】
はじめに、
図1を参照して、実施の形態1に係る真空バルブ100の構成を説明する。真空バルブ100は、筒状の絶縁容器1と、絶縁容器1の一方側端部を閉塞する可動側端板3と、絶縁容器1の他方側端部を閉塞する固定側端板2と、可動側端板3を貫通して配設された可動側通電軸の先端部に設けられた可動側電極51と、固定側端板2を貫通して配設された固定側通電軸の先端部に可動側電極51と相対向して設けられた固定側電極41と、可動側電極51と固定側電極41との周囲を取り囲むように配置されたアークシールド9とを備えている。筒状の絶縁容器1は、セラミックスなどの絶縁性の部材で構成される。絶縁容器1の一方の端部に、可動側端板3が配置され、絶縁容器1の端部と可動側端板3の端部とが接続される。さらに、絶縁容器1の他方の端部に、固定側端板2が配置され、絶縁容器1の端部と固定側端板2の端部とが接続される。固定側端板2および可動側端板3はそれぞれ、円板の外周端部を折り曲げた状態で構成されている。なお、
図1では、絶縁容器1を単一の部品で構成しているが、絶縁容器1を2つもしくはそれ以上の複数の部品で構成してもよい。
【0013】
さらに、絶縁容器1の周囲は、線形抵抗層10と非線形抵抗層11とが積層されて覆われるように配置されている。本実施の形態1の構成では、絶縁容器1と接するように非線形抵抗層11が配置され、その外周に線形抵抗層10が積層されて配置されているが、絶縁容器1と接するように線形抵抗層10が配置され、その外周に非線形抵抗層11が積層されて配置されていても構わない。また、絶縁容器1の内部には、絶縁容器1の支持部13により支持されたアークシールド9を備える。支持部13は、絶縁容器1の外側の線形抵抗層10及び非線形抵抗層11の両方に接触している。また、支持部13を境界として、絶縁容器1を2つ用いてもよい。アークシールド9は、金属などの導電性部材で形成され、後述する可動側電極51と固定側電極41とを覆うように設置される。
【0014】
可動側端板3には、紙面の左右に伸縮自在のベローズ5の一端側が取り付けれ、ベローズ5のもう一端側には、ベローズシールド14が取り付けられる。さらに、ベローズシールド14および可動側端板3を貫通するように、可動側通電軸6が取り付けられる。また、アークシールド9に覆われる可動側通電軸6の端部には、可動側電極51を有する。さらに、可動側端板3には、可動側シールド8が、可動側端板3の端部と可動側通電軸6との間に、可動側通電軸6を取り囲むように取り付けられる。なお、可動側端板3、ベローズ5、ベローズシールド14、可動側通電軸6、可動側電極51、および可動側シールド8は、電気的に接続される。
【0015】
可動側シールド8は、可動側端板3の端部に発生する電界強度を緩和する効果を現す。可動側シールド8を可動側端板3に備えない場合、可動側通電軸6に電圧が印加されると、可動側端板3の端部に局所的に高い電界強度が発生し絶縁破壊の至る可能性がある。この観点から、可動側端板3は、線形抵抗層10及び非線形抵抗層11を介し、絶縁容器1に接触していることが望ましい。
【0016】
固定側端板2には、固定側端板2を貫通するように、固定側通電軸4が取り付けられる。また、アークシールド9に覆われる固定側通電軸4の端部には、固定側電極41を有する。さらに、固定側端板2には、固定側シールド7が、固定側端板2の端部と固定側端板2との間に、固定側通電軸4を取り囲むように取り付けられる。なお、固定側端板2、固定側通電軸4、固定側電極41、および固定側シールド7は、電気的に接続される。
【0017】
固定側シールド7は、固定側端板2の端部に発生する電界強度を緩和する効果を現す。固定側シールド7を固定側端板2に備えない場合、固定側通電軸4に電圧が印加されると、固定側端板2の端部に局所的に高い電界強度が発生し絶縁破壊に至る可能性がある。この観点から、固定側端板2は、線形抵抗層10及び非線形抵抗層11を介し、絶縁容器1に接触していることが望ましい。
【0018】
また、アークシールド9は、可動側電極51と固定側電極41との間にアークが発生した場合、アークの熱により可動側電極51と固定側電極41とから飛散する金属蒸気および金属粒子から他の部位を保護するために設置される。
【0019】
絶縁容器1の周囲を覆うように線形抵抗層10と非線形抵抗層11とが積層されて配置されている。線形抵抗層10とは、電界に対して、一定の抵抗率を示す層をいい、具体的な線形抵抗層10の構成材料としては、Cu、Ag、Cr、Ni、Mo、W、V、Nb、およびTaの少なくともいずれか1つを含む金属であり、蒸着法あるいはスパッタリング法により形成することができる。また、酸化物に代表されるような上記金属化合物あるいは合金を材料として使用してもよい。非線形抵抗層11とは、ある動作電界以上の高い電界が加わったとき、抵抗率が低下する性質を有する層をいい、具体的な非線形抵抗層11の構成材料としては、酸化亜鉛(ZnO)または炭化ケイ素(SiC)があり、蒸着法あるいはスパッタリング法により形成することができる。
【0020】
つぎに、真空バルブ100の動作について説明する。真空バルブ100の内部は、高い絶縁状態を維持するために、1×10
-3パスカル未満の真空状態に保たれる。また、可動側電極51と固定側電極41とを接続する閉状態と、可動側電極51と固定側電極41とを開放する開状態とを、切り替えることが可能である。
図1は、可動側電極51と固定側電極41とが接続していない開状態である。外部から可動側通電軸6に、紙面右から左へ押圧が印加されることにより、可動側通電軸6が移動し、可動側電極51と固定側電極41とが接続する閉状態となる。すなわち、可動側通電軸6を移動することにより、開状態から閉状態への切り替え、あるいは閉状態から開状態への切り替えることが可能である。
【0021】
つぎに、絶縁破壊現象について説明する。開状態において、可動側通電軸6と固定側通電軸4との間に電圧が印加される場合、可動側シールド8の表面および固定側シールド7の表面の電界強度が高くなり、可動側シールド8の表面および固定側シールド7の表面から1次電子が真空バルブ100の内部に向かって放出される。この1次電子が、絶縁容器1の内面上に衝突すると、絶縁容器1の内面から2次電子が放出される。この2次電子の放出により、絶縁容器1の内面が正極性に帯電する。2次電子が放出され続け、内面の正極性の帯電が進行すれば、可動側通電軸6と固定側通電軸4との間の絶縁状態が維持できなくなることがある。すなわち、絶縁破壊現象に至ることがある。なお、2次電子の放出量は、1次電子の運動エネルギーに依存する。すなわち、絶縁容器1の内面上の電界強度に依存し、電界強度が高くなると、2次電子の放出量が増えることになる。言い換えると、絶縁容器1の内面上の電界強度が高い場合、絶縁破壊現象に至る可能性が高くなる。
【0022】
特に、真空バルブにおいて高い電界強度が発生する箇所は、固定側電極41と可動側電極51との接触点及びアークシールド9の固定側通電軸4と可動側通電軸6との接触点である。これは、アークシールド9が、セラミックスからなる絶縁容器に挟まれて配置されており、電気的に浮遊している状態となっており、この状態ではアークシールドの浮遊電位が接地側で低くなり、アークシールドの近くに配置される電極に高い電界強度が発生するからである。
【0023】
真空バルブに要求される絶縁破壊耐性には、主に交流(日本国内では50Hz及び60Hz)電圧(低周波)と雷インパルス(印加直後で1.2us)電圧(高周波)の印加時に対して要求される。真空バルブ内の抵抗を表すインピーダンスは以下の数式で表される。ここで、Zはインピーダンス、Rは抵抗率、fは周波数、Cは容量成分を示す。
【0024】
【0025】
周波数fが低い交流ではインピーダンスが高くなり、周波数fが高い雷インパルスでは容量成分Cが支配的となりインピーダンスは低くなるという特性をもつ。外付けの電圧分担素子としてコンデンサを並列に接続した場合、コンデンサのインピーダンスが周波数依存性を示すため、交流と雷インパルスのどちらの周波数領域においてもアークシールド9の浮遊電位を制御できる。しかしこの場合、真空バルブ自体の大型化や定期的なメンテナンス作業を必要とするという問題が生じる。
【0026】
絶縁容器1の少なくとも一部の周囲を覆うように線形抵抗層10と非線形抵抗層11とが配置されている場合には、アークシールド9の浮遊電位を制御でき、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時おいても絶縁破壊耐性を保つことが出来る。
図2は、本開示の実施の形態1係る線形抵抗層10と非線形抵抗層11を絶縁容器1の少なくとも一部の周囲を覆うように線形抵抗層10もしくは非線形抵抗層11の少なくともいずれか一方が配置されている場合の真空バルブのインピーダンスと電界との関係を示す分布図である。線形抵抗層10は電界に対して一定の抵抗率R3を示すのに対し、非線形抵抗層11はある動作電界以上の高い電界が加わったとき、抵抗率R1から抵抗率R2へ急激に低下する特性を示す。
図2に示されるように、非線形抵抗層11の動作電界未満における抵抗率をR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率をR2、線形抵抗層10の抵抗率をR3としたときに、抵抗率の大小関係はR1>R3>R2となっている。
【0027】
絶縁容器1の周囲に線形抵抗層10のみが形成された場合、周波数fの低い交流電圧印加時は、線形抵抗層10の抵抗率が真空バルブのインピーダンスを下回るように設計することで、アークシールド9の浮遊電位を制御できる。しかし、周波数fが高い雷インパルス電圧印加時においては、線形抵抗層10の抵抗率が真空バルブのインピーダンスを上回るため、アークシールド9の浮遊電位を制御できない。また、非線形抵抗層11のみが形成された場合、周波数fの低い交流電圧印加時は、非線形抵抗層11の抵抗率が真空バルブのインピーダンスを上回るため、アークシールド9の浮遊電位を制御できない。一方で、周波数fが高い雷インパルス電圧印加時においては、非線形抵抗層11の抵抗率が真空バルブのインピーダンスを下回るように設計することで、アークシールド9の浮遊電位を制御できる。
【0028】
絶縁容器1の少なくとも一部の周囲を覆うように線形抵抗層10と非線形抵抗層11とが配置されている場合には、交流電圧(低周波)に対しては線形抵抗層10の抵抗率R3、雷インパルス電圧(高周波)に対しては非線形抵抗層11の抵抗率R3の抵抗分圧によりアークシールド9の浮遊電位を制御でき、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時おいても絶縁破壊耐性との両立を図ることが出来る真空バルブを提供することができる。
【0029】
本開示の実施の形態1に係る真空バルブ100は、絶縁容器1の周囲が線形抵抗層10と非線形抵抗層11とが積層されて覆われるように配置されており、非線形抵抗層の動作電界未満における抵抗率をR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率をR2、線形抵抗層の抵抗率をR3としたとき、各抵抗率の大小関係はR1>R3>R2である。これにより、真空バルブの小型化と、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時おいても絶縁破壊耐性との両立を図ることが出来る真空バルブを提供することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、絶縁容器の周囲を覆うように線形抵抗層と非線形抵抗層とが積層され配置されている形態を説明した。本実施の形態2では、絶縁容器の周囲を覆うように、絶縁容器の内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11を配置している形態を説明する。
図3を参照して、実施の形態2に係る真空バルブ101の構成を説明する。なお、
図3において、
図1と同一番号あるいは同一符号は、実施の形態1に示す構成要素と同一品あるいは同等品であるので、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図3に示されるように、実施の形態2の真空バルブでは、絶縁容器の周囲を覆うように、絶縁容器の内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11を配置している。真空バルブでは、その内部を真空状態に保つために、製造過程において真空炉内で高温加熱する必要がある。本実施の形態の真空バルブは、絶縁容器の内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11を配置しており、非線形抵抗層の動作電界未満における抵抗率をR1、動作電界以上における抵抗率をR2、線形抵抗層の抵抗率をR3としたとき、各抵抗率の大小関係はR1>R3>R2である。これにより、高温加熱時に抵抗率の非線形性を損なうことなく、真空バルブの小型化と、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時おいても絶縁破壊耐性との両立を図ることが出来る真空バルブを提供することができる。
実施の形態3.
実施の形態2では、絶縁容器の周囲を覆うように、絶縁容器の内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11を配置している形態を説明した。本実施の形態3では、絶縁容器の周囲を覆うように、絶縁容器の内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11と金属層15とを配置している形態を説明する。
図4を参照して、実施の形態3に係る真空バルブ102の構成を説明する。なお、
図3において、
図1と同一番号あるいは同一符号は、実施の形態1に示す構成要素と同一品あるいは同等品であるので、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図4に示されるように、実施の形態3の真空バルブでは、絶縁容器の周囲を覆うように、絶縁容器の内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11を配置している。また、絶縁容器の外側の固定側シールド7、可動側シールド8、アークシールド9に対向する部分には、導電性をもった金属で構成される金属層15が形成されている。また、非線形抵抗層の動作電界未満における抵抗率をR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率をR2、線形抵抗層の抵抗率をR3としたとき、各抵抗率の大小関係はR1>R3>R2である。これにより、これにより、真空バルブの小型化と、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時おいても絶縁破壊耐性との両立を図ることが出来るとともに、等電位面が絶縁容器1沿面方向に対して垂直方向に入り、絶縁容器1の内面と外面における電位差が小さくなるため、貫通破壊を防止することができる。
実施の形態4.
実施の形態1および実施の形態2では、絶縁容器1を単一の部品で構成する形態について説明した。本実施の形態4では、絶縁容器1を複数の部品で構成する形態について説明する。
図5を参照して、本実施の形態4に係る真空バルブ103の構成を説明する。なお、
図5において、
図1と同一番号あるいは同一符号は、実施の形態1および実施の形態2に示す構成要素と同一品あるいは同等品であるので、その詳細な説明は省略する。
【0032】
第1の固定電極側絶縁部材1a、第2の固定電極側絶縁部材1b、第1の可動電極側絶縁部材1c、第2の可動電極側絶縁部材1dは、セラミックスなどの絶縁性の部材で構成される。第1の固定電極側絶縁部材1a及び第2の固定電極側絶縁部材1bの間は封着部材で封着されており、さらに封着部材は第1の浮遊シールド12aの接続具に接続され、第1の浮遊シールド12aを保持している。また、第1の可動電極側絶縁部材1c及び第2の可動電極側絶縁部材1dの間は封着部材で封着されており、さらに封着部材は第2の浮遊シールド12bの接続具に接続され、第2の浮遊シールド12bを保持している。また、第2の固定電極側絶縁部材1b及び第1の可動電極側絶縁部材1cの間は封着部材で封着されており、さらに封着部材は支持部13に接続され、アークシールド9を保持している。すなわち、実施の形態1~実施の形態3では、絶縁容器1を単一の部品で構成するが、本実施の形態4では、絶縁容器1を、第1の固定電極側絶縁部材1a、第2の固定電極側絶縁部材1b、第1の可動電極側絶縁部材1c、第2の可動電極側絶縁部材1dで構成し、封着部材が、第1の固定電極側絶縁部材1a及び第2の固定電極側絶縁部材1bの間、第1の可動電極側絶縁部材1cび第2の可動電極側絶縁部材1dの間、第2の固定電極側絶縁部材1b及び第1の可動電極側絶縁部材1cの間に封着されており、第1の浮遊シールド12a、第2の浮遊シールド12b、アークシールド9を保持している。第1の浮遊シールド12a及び第2の浮遊シールド12bの支持部は、絶縁容器1の外側の線形抵抗層10及び非線形抵抗層11の両方に接触している。
【0033】
さらに、固定側端板2側に配置されている第1の固定電極側絶縁部材1a及び可動側端板3側に配置されている第2の可動電極側絶縁部材1dの絶縁容器の周囲を覆うように、内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11が配置されている。また、非線形抵抗層の動作電界未満における抵抗率をR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率をR2、線形抵抗層の抵抗率をR3としたとき、各抵抗率の大小関係はR1>R3>R2である。これにより、実施の形態1~3においては真空バルブ中央のアークシールド9の浮遊電位を制御するのに対して、本実施の形態4においては、第1の浮遊シールド12a、第2の浮遊シールド12bの浮遊電位を制御することとなる。実施の形態4の真空バルブでは、固定側端板2側に配置されている第1の固定電極側絶縁部材1a及び可動側端板3側に配置されている第2の可動電極側絶縁部材1dの絶縁容器の周囲を覆うように、内面に線形抵抗層10を、外面に非線形抵抗層11が配置されているため、真空バルブの小型化と、交流電圧(低周波)と雷インパルス電圧(高周波)のいずれの条件の印加時おいても絶縁破壊耐性との両立を図ることが出来るとともに、電流が第1の浮遊シールド12a、第2の浮遊シールド12bで折り返す通電経路となり、漏れ電流を防止することができる。さらに、雷インパルス電圧が印加されたときでも、固定側端板2及び可動側端板3へ導通させることで、帯電を防止できる。さらに、電極への高電圧印加が可能となる効果が得られる。
【0034】
実施の形態5.
次に、
図6を用いて、実施の形態5に係る真空バルブ104の構成を説明する。実施の形態5は、特に説明しない限り、上記の実施の形態3と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態3と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0035】
図6に示されるように、本実施の形態において、線形抵抗層10は、絶縁容器1の内面に配置されている。非線形抵抗層11は、絶縁容器1の周囲を覆うように絶縁容器1の外面に配置されている。金属層15は、絶縁容器1の周囲を覆うように絶縁容器1の外面に配置されている。
【0036】
金属層15は、絶縁容器1の内側に配置された固定側シールド7、可動側シールド8およびアークシールド9の各々に対向するように配置されている。金属層15は、導電性を有する金属によって構成されている。本実施の形態において、非線形抵抗層11は、金属層15の端部に重ねられている。非線形抵抗層11は、金属層15の端部を被覆している。金属層15の端部は、非線形抵抗層11と絶縁容器1の外面とに挟み込まれている。なお、図示されないが、金属層15の端部が非線形抵抗層11を覆っていてもよい。
【0037】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る真空バルブ104によれば、
図6に示されるように、非線形抵抗層11は、金属層15に重ねられている。このため、非線形抵抗層11と金属層15との接触面積を大きくすることができる。非線形抵抗層11と金属層15とを面接触させることができる。よって、非線形抵抗層11と金属層15との接触抵抗を改善(低減)することができる。これにより、雷インパルス印加時における非線形抵抗層11への導通を向上させることができる。したがって、アークシールド9の浮遊電位を制御することができる。
【0038】
金属層15は、固定側シールド7、可動側シールド8およびアークシールド9に対向するように配置されている。このため、等電位面を、金属層15から固定側シールド7に向かう方向、金属層15から可動側シールド8に向かう方向および金属層15からアークシールド9のに向かう方向の各々に沿って形成することができる。すなわち、等電位面を、金属層15が被覆する絶縁容器1の沿面方向に対して交差するように形成することができる。よって、絶縁容器1の内面と外面との電位差を小さくすることができる。したがって、貫通破壊(絶縁破壊)を防止することができる。
【0039】
非線形抵抗層11の動作電界未満における抵抗率がR1、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率がR2、線形抵抗層10の抵抗率がR3である場合に、R1、R3およびR2は、この順に大きい。これにより、真空バルブ104の小型化の達成と、交流電圧(低周波)が印加される条件および雷インパルス(高周波)が印加される条件の各々における絶縁破壊耐性の達成とを両立することができる。
【0040】
実施の形態6.
次に、
図7および
図8を用いて、実施の形態6に係る真空バルブ105の構成を説明する。実施の形態6は、特に説明しない限り、上記の実施の形態3と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態3と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0041】
図7に示されるように、本実施の形態に係る真空バルブ105は、固定側電界緩和用リング71と、可動側電界緩和用リング81と、中間電界緩和用リング91とをさらに含んでいる。固定側電界緩和用リング71、可動側電界緩和用リング81および中間電界緩和用リング91の各々は、金属製の環状の部材によって構成されている。固定側電界緩和用リング71、可動側電界緩和用リング81および中間電界緩和用リング91の各々は、絶縁容器1の外側にそれぞれ配置されている。
【0042】
固定側電界緩和用リング71は、絶縁容器1の他方側端部を取り囲んでいる。固定側電界緩和用リング71は、絶縁容器1の外側において絶縁容器1の他方側端部を取り囲んでいる。固定側電界緩和用リング71は、固定側シールド7とで絶縁容器1を挟み込んでいる。固定側電界緩和用リング71によって、絶縁容器1の内側の固定側シールド7の端部によって強調される電界を緩和することができる。
【0043】
可動側電界緩和用リング81は、絶縁容器1の一方側端部を取り囲んでいる。可動側電界緩和用リング81は、絶縁容器1の外側において絶縁容器1の一方側端部を取り囲んでいる。可動側電界緩和用リング81は、可動側シールド8とで絶縁容器1を挟み込んでいる。可動側電界緩和用リング81によって、絶縁容器1の内側の可動側シールド8の端部によって強調される電界を緩和することができる。
【0044】
中間電界緩和用リング91は、アークシールド9とで絶縁容器1を挟み込んでいる。中間電界緩和用リング91によって、アークシールド9と絶縁容器1との間の三重点において強調される電界を緩和することができる。
【0045】
金属層15は、固定側電界緩和用リング71、可動側電界緩和用リング81および中間電界緩和用リング91の各々に向かい合うように配置されている。金属層15は、固定側電界緩和用リング71と絶縁容器1との間に配置されている。金属層15は、可動側電界緩和用リング81と絶縁容器1との間に配置されている。金属層15は、中間電界緩和用リング91と絶縁容器1との間に配置されている。
【0046】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る真空バルブ105によれば、
図7に示されるように、金属層15は、固定側電界緩和用リング71、可動側電界緩和用リング81および中間電界緩和用リング91の各々に向かい合うように配置されている。このため、金属層15の電位を、固定側電界緩和用リング71の電位、可動側電界緩和用リング81の電位および中間電界緩和用リング91の電位と同じにすることができる。よって、金属層15の電位の増加を抑制することができる。したがって、金属層15と固定側電界緩和用リング71との間、金属層15と可動側電界緩和用リング81との間および金属層15と中間電界緩和用リング91との間において絶縁破壊が生じることを抑制することができる。
【0047】
仮に、金属層15が設けられていない場合、非線形抵抗層11において沿面電界の分布に偏りが生じる。
図8は、雷インパルスの電圧値が最も高い時間(1.2μs)における絶縁容器1の沿面電界の分布の一例を示している。
図8の実線は、金属層15が設けられている場合における沿面電界の分布を示している。
図8の破線は、金属層15が設けられていない場合における沿面電界の分布を示している。
図8の一点鎖線は、非線形抵抗層11の動作電界を示している。
図8の横軸は、中間電界緩和用リング91から可動側電界緩和用リング81に向かう方向における絶縁容器1の表面の位置を示している。
図8の横軸の左端は、絶縁容器1の表面の線形抵抗層10と中間電界緩和用リング91との交点の位置である。
図8の横軸の右端は、絶縁容器1の表面の線形抵抗層10の可動側電界緩和用リング81側の端部の位置である。
【0048】
図8に示されるように、仮に、金属層15が設けられていない場合には、絶縁容器1の表面の線形抵抗層10と中間電界緩和用リング91との交点の位置(横軸の左端)における沿面電界は、非線形抵抗層11の動作電界よりも小さい。また、金属層15が設けられていない場合には、絶縁容器1の表面の可動側電界緩和用リング81側の端部の位置(横軸の右端)における沿面電界は、非線形抵抗層11の動作電界よりも小さい。このため、金属層15が設けられていない場合には、当該2つの位置における抵抗率は、R1である。また、金属層15が設けられていない場合には、絶縁容器1の表面の非線形抵抗層11側の位置における沿面電界は、非線形抵抗層11の動作電界よりも大きくなることがある。このため、金属層15が設けられていない場合には、絶縁容器1の表面の非線形抵抗層11側の位置における抵抗率は、R2になることがある。よって、絶縁容器1の表面の抵抗率の分布には、偏りが生じ得る。なお、絶縁容器1の表面における抵抗率の分布の偏りは、固定側シールド7、可動側シールド8、アークシールド9、固定側電界緩和用リング71、可動側電界緩和用リング81および中間電界緩和用リング91によって、絶縁容器1の表面に入る等電位面に偏りが生じることで生じる。このため、雷インパルスの電圧値が最も高い時間(1.2μs)において非線形抵抗層11の導通が確保されない可能性がある。したがって、アークシールド9の浮遊電位の制御が困難である。
【0049】
これに対して、本実施の形態に係る真空バルブ105によれば、
図7に示されるように、金属層15は、固定側電界緩和用リング71、可動側電界緩和用リング81および中間電界緩和用リング91の各々に向かい合うように配置されている。このため、金属層15の電位が固定側電界緩和用リング71の電位、可動側電界緩和用リング81の電位および中間電界緩和用リング91の電位をそれぞれ同じ電位にすることができる。よって、沿面電界は金属層15に生じず、かつ非線形抵抗層11にのみ均一に生じる。したがって、雷インパルスの電圧値が最も高い時間(1.2μs)において非線形抵抗層11の全体の抵抗率をR2にすることができる。言い換えると、雷インパルスの電圧値が最も高い時間(1.2μs)において非線形抵抗層11の全体の抵抗率を均一にすることができる。これにより、時間遅延なしにアークシールド9の浮遊電位を容易に制御することができる。
【0050】
なお、上記の各実施の形態において、雷インパルス印加時のインピーダンス以下の抵抗率R2は、109Ωmよりも小さいことが望ましい。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 絶縁容器、1a 第1の固定電極側絶縁部材、1b 第2の固定電極側絶縁部材、1c 第1の可動電極側絶縁部材、1d 第2の可動電極側絶縁部材、2 固定側端板、3 可動側端板、4 固定側通電軸、5 ベローズ、6 可動側通電軸、7 固定側シールド、8 可動側シールド、9 アークシールド、10 線形抵抗層、11 非線形抵抗層、12a 第1の浮遊シールド、12b 第2の浮遊シールド、13 支持部、14 ベローズシールド、15 金属層、41 固定側電極、51 可動側電極、100、101、102、103 真空バルブ。